○小林(進)
委員 先ほどは、ヤルタ協定に基づいて北方領土をルーズベルトがスターリンにやって、その約束があるからサンフランシスコ条約にいかに吉田全権が血みどろになって要求しても、歯舞、色丹だけは北海道の
固有の領土だが、あとは千島、これはだめだと言って、
日本の要求をついに入れてくれなかったというところまで私は質問をいたしました。
その後、ひとつこれも外務省にぜひ資料を要求するのだけれども、鳩山さんが五六年、三十一年十月十九日ですか、モスクワへ行っていわゆる日ソ共同宣言をおやりになったのだが、その前に
日本とソ連との条約調停のために
外務大臣の重光さんと元駐英大使の松本さんの二人がモスクワへ行かれた。そこで日ソの平和交渉をされたときに、ソ連は歯舞、色丹の二島は確かに条約が成立すれば
日本にやるが、あとはもうだめだ。強硬でどうも話が進展しないということで、そこで重光さんも松本さんも、事ここに至ればきわまれりだ、もはや相手も強硬だから、この二島返還で日ソ平和条約を締結する以外に打開の道がない。そこで腹を決められた。それを当時の鳩山
一郎総理に電文で
報告しながら、最後の打ち合わせをするためにモスクワから
日本へ帰国の途につかれた。
当時は、今のような
航空機も発達していないからロンドン経由で帰る以外にないということで、モスクワを出てロンドンへ寄られた。そのときに
アメリカのダレスがロンドンにいて、そこでそれをつかまえた。重光さんと松本さんは、ロンドンの
アメリカ大使館へ来いと言って呼びつけられた。そこで呼びつけられたのは、あなたたちは結論を持ちながら今
日本へ帰路を急いでいるが、もしそのとおり二島返還でいわゆる日ソの平和条約を結ぶということになれば
アメリカは了承できない、やるのならば
アメリカは沖縄を
日本に返すわけにはいきませんよ、永久に沖縄は返しませんよ、私の言葉をもってすればダレスは重光を恫喝した。それで重光さんはびっくりして、これではたまらぬというので急遽腹構えを変えて
日本へ帰ってきて、条約はやめた、いわゆる日ソ共同宣言でいこうということで
態度が変わって、そこで鳩山さんが足を引きずりモスクワへ乗り込んでいって、平和条約の下ごしらえの話をやめて共同宣言にこれを切りかえている。こういう事実が歴史的事実。
時間がないからこれ以上言わぬけれども、外務省はこれを資料にして、いいですか、これは欧亜局が、
西山君のところだな、君はごまかすのが一番上手だけれども、そういうことのないように、この資料はきちっと私の手によこすようにしてくれたまえ。いつもよこさない。こういうような重大な問題を、きょうびの
外務大臣に基礎的知識をぶち込んでおかなくちゃいけない。
アメリカは自分の都合で、一方では我が
日本に北方四島を放棄させておきながら、今度は
日本とソ連が近づいて仲よくしようとすることになって二島で話を決めようとすれば、そんなことをやるんならだめだと言って、話のぶち壊しにかかっておる。
そこで、
アメリカという国も神様でないからやはり自国本位だろうけれども、実に時勢の動きによって常に
日本は手玉にかけられているじゃないか。こういう事実をいま少し国民の前に私は明らかにして、そして問題を処理していく必要があるということを申し上げたい。
外務大臣、あなたこれいかがですか、私の言うことがうそだとお
考えになっておりますか、うそじゃありませんよ。これは
答弁なさらないならば次に移りますけれども、それではひとつ資料を
調査して、私はそれを持っているのだから改めて対決してもよろしゅうございます。
それからいま一つ、
外務大臣が日ソ交渉でどうしても腹を決めてもらいたいことは二島論なんだな。二島をも含めて領土問題は全部解決した、問題にならないとソ連が言ったということは、
日本側から言わせれば、これは共同宣言、鳩山宣言の違反行為です。私が園田さんにやかましく言ったのが、これを違反と見るか見ないかということなんだ。そんなことは全部済んだんだ、領土問題はもうないんだということは、二島も返さぬということの言葉の裏づけじゃないか。それでは共同宣言違反じゃないか。違反ならば、ひとつそれを確認をしながら
日本にも出方があるじゃないか、頭ばかり下げないで。右を向いては
アメリカに頭を下げ、左を向いてはソ連に頭を下げ、今度はまた我が敬愛する
外務大臣がソ連に行って頭を下げるのではないかという心配があるから、私は今あなたに言っているんだ。
どっちを向いても頭を下げているんだが、あなたに言いたいことは、もしソ連が二島も返さない、済んだと言うならば、共同宣言を履行しないならば、やめにいたしましょう。やめにするというのは、両国はそれぞれの持っている請求権といいますか、権限を全部放棄するというのがあの宣言の中に含まれているのだから、
日本は放棄をするのをやめる。それで何をやめるか。言わずもがなでしょう。戦争が済んだときに中立条約を違反して、我が旧満州、北鮮にいる六十万人に近い我々の同胞をシベリアに連れていったじゃないですか、モンゴルに連れていったじゃないですか。そして、その中の六万人に近い我々の同胞が死んだじゃないですか。
あれは、明らかにポツダム宣言違反じゃないですか。特殊な戦犯を除いて、
日本の国民はすべてふるさとへ帰って安らかに送れるというのがポツダム宣言の内容だ。それを我々は受諾した。しかし、ソ連だけは満州における我々の同胞を六十万も連れていった。長いのは十一年間も抑留生活をやらされた。そして、徹底的な弾圧と重労働で、人間の命に変わりはないだろうけれども、まあ近衛さんのせがれさんを初め六万人もあそこで死んだ。六万人と言えば六個師団ですよ、あなた。大きな戦争の敗北のようなことが戦争が済んでからやられたのだ。これを一体何で、私どもはいま少し物が言えないんだ。
鳩山さんがあの共同宣言で、一切の請求権を両国とも放棄すると言ったから、私どもは涙をのんでこれはやむを得ないと思ったのだけれども、相手方の方が領土の問題なんかもう済んだとか言って約束を守らないのなら、こっちも原点に返ってこういう問題をなぜ堂々とその交渉の場で言えないのかということが、私があなたに言いたいことなんですよ。いいですか、あなた、これはヘーグ条約にも違反です、捕虜条約にも違反です、
国際法にも違反です、戦時
国際法にも違反です、ポツダム宣言またしかり。こういう違反なことを堂々とやられて、我々の同胞が戦後に六万も死んでいることに対して、物一つ言えないなどというばかな話がありますか。
北方領土の問題に関連して、ひとつあなたに堂々と言ってもらいたいというのが私の主張なんです。これに対してはまだ長い話があるけれども、十分じゃ言えないから結論だけ申し上げておきますが、いかがでございましょうか、この問題は。