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1986-04-22 第104回国会 衆議院 外務委員会 第9号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十一年四月二十二日(火曜日)     午後四時一分開議 出席委員   委員長 北川 石松君    理事 田中 秀征君 理事 西山敬次郎君    理事 村田敬次郎君 理事 河上 民雄君    理事 土井たか子君 理事 玉城 栄一君    理事 渡辺  朗君       愛野興一郎君    鍵田忠三郎君       佐藤 一郎君    竹内 黎一君       仲村 正治君    山下 元利君       小林  進君    高沢 寅男君       藤田 高敏君    渡部 一郎君       永末 英一君    岡崎万寿秀君       田中美智子君  出席国務大臣         外 務 大 臣 安倍晋太郎君  出席政府委員         防衛庁参事官  瀬木 博基君         外務省北米局長 藤井 宏昭君         外務省欧亜局長 西山 健彦君         外務省中近東ア         フリカ局長   三宅 和助君         外務省経済局長 国広 道彦君         外務省経済協力         局長      藤田 公郎君         外務省条約局長 小和田 恒君  委員外出席者         外務委員会調査         室長      門田 省三君     ————————————— 委員の異動 四月十八日  辞任         補欠選任   石川 要三君     伊東 正義君   鍵田忠三郎君     櫻内 義雄君   仲村 正治君     森山 欽司君   町村 信孝君     佐々木義武君 同日  辞任         補欠選任   伊東 正義君     石川 要三君   佐々木義武君     町村 信孝君   櫻内 義雄君     鍵田忠三郎君   森山 欽司君     仲村 正治君     ————————————— 四月十四日  核兵器全面禁止に関する請願瀬長亀次郎君紹  介)(第三一八六号) 同月十八日  核兵器廃絶に関する請願阿部昭吾紹介)  (第三四二〇号)  同(江田五月紹介)(第三四二一号)  核兵器廃絶等に関する請願外三件(阿部昭吾君  紹介)(第三四二二号)  同外一件(江田五月紹介)(第三四二三号)  同外七件(菅直人紹介)(第三四二四号)  同(駒谷明紹介)(第三四二五号)  同(権藤恒夫紹介)(第三四二六号)  同(西中清紹介)(第三四二七号)  同(伏木和雄紹介)(第三四二八号)  核兵器全面禁止等に関する請願武田一夫君紹  介)(第三四九五号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  国際情勢に関する件      ————◇—————
  2. 北川石松

    北川委員長 これより会議を開きます。  国際情勢に関する件について調査を進めます。  この際、外務大臣より発言を求められておりますので、これを許します。外務大臣安倍晋太郎君。
  3. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 私は、今般国会のお許しを得て、四月十二日より十五日まで中曽根総理大臣に同行してワシントンを訪れ、十二日、シュルツ国務長官と二十二回目の日米外相会談を行い、引き続き、四月十七日、十八日両日パリで開催された第二十五回OECD閣僚理事会平泉経済企画庁長官及び田原通商産業政務次官とともに出席し、四月二十日帰国いたしました。ここに、その概要を御報告申し上げます。  ワシントンで行われました日米外相会談では、経済問題を中心とした日米国間関係及び国際情勢等につき幅広く有意義な意見交換を行うとともに、東京サミットのための意見調整を行いました。また、同日、キャンプ・デービッドにおいてプッシュ副大統領シュルツ国務長官等と昼食をともにしつつ懇談をいたしました。  今次会談においては、日米経済関係につき、シュルツ長官より、MOSS協議円ドルレート等に関する最近の成果及び国際協調のための経済構造調整研究会報告書に対する積極的評価が述べられるとともに、こうした動きが結実するには時間を要し、それまでの間も保護主義との闘いを続ける必要があるとの発言があり、私より、特に個別問題で保護主義につけ入られることのないよう、引き続き誠実に話し合いで解決していきたい旨述べました。また、シュルツ長官との間で、MOSS協議を継続していくこと及び日米構造問題対話を行うことで意見一致を見ました。  なお、日本貨物航空の増便問題につきましては、さらに引き続き交渉を行っていくこととなりました。  国際情勢に関しましては、私より、INFに関する米国立場に対する我が国評価及び最近の日ソ関係等につきシュルツ長官説明し、また、フィリピン情勢経済協力等についても意見交換を行いました。  OECD閣僚理事会においては、例年どおりマクロ経済開発途上国との関係及び貿易の三つの議題をめぐって討議が行われ、コミュニケが採択されました。  本年は、回復基調にある世界経済が、為替レートの不均衡の是正、金利低下石油価格下落による成長押し上げ等の好材料により、さらにインフレなき持続的成長へ向かうことが予想される一方、依然として、財政赤字、失業、経常収支の不均衡等懸念材料がありますところ、これに対してOECD加盟国が全体として最近のよい兆候をいかにして中長期的な持続的成長につなげていくかが大きな論点でありました。この点に関して各国が、マクロ経済政策運営構造調整政策の推進、対開発途上国への協力、開放的な多角的貿易体制の強化という四つの分野において国際協調が不可欠であるとされたことはまことに有意義でありました。  なお、我が国の大幅な経常黒字に対する批判に対しましては、アクション・プログラムを初めとした市場開放努力内需拡大努力など、世界経済との調和を目指して真摯な努力を続けていることを明らかにし、各国理解が深まったと確信しております。  また、開発途上国との関係につきましても、我が国から、一九八六年以降も、政府開発援助に関する第三次中期目標を設定するなど、ODAの着実な拡充に努めるとの姿勢を明らかにし、これに対し各国から積極的な評価が得られたものと考えます。  貿易面ではニューラウンド開始必要性につき意見一致があり、また、保護主義のロールバックとスタンドスティルは新ラウンドの積極的な環境づくりに必要であることが再確認されました。  なお、私はパリ滞在中にミッテラン大統領シラク首相を表敬訪問し、東京サミットに臨む具体的姿勢につき話し合いを行ったほか、日仏外相会談及び日・EC議長国外相協議を行いましたが、東京サミット開始を間近に控え、仏政府要人と忌憚のない意見交換が行えたことは、まことに有意義であったと考えます。  最後に、例年OECD閣僚理サミットの直前に開催され、そこでの討議の内容はサミットの地ならしとなります。来る東京サミットは、世界経済の明るい展望をより確かなものにしていくことを目標としているところ、この点でも今次閣僚理の意義は高く評価してよいと考えます。  ありがとうございました。(拍手)
  4. 北川石松

    北川委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。河上民雄君。
  5. 河上民雄

    河上委員 外務大臣、最近米国訪問及びOECD閣僚理事会においでになられまして、その帰国御報告をいただいたわけでございますが、きょうの本会議でもこの問題につきましていろいろ質疑応答がございました。もう既にいろいろなことが明らかになっているわけでございますが、きょうは時間も限られておりますので問題を絞って、主としてリビアの問題に関して先般来の御答弁をもう少し確認させていただきたい、こんなふうに思っております。  まず、アメリカ軍機リビア爆撃したということを国際法上どのようにとらえておられますか。
  6. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 御承知のように、米国が今回リビアを攻撃したわけでありますが、これについては、米国自衛のための措置であると説明していることについては理由があると思うわけですが、我が国としては事実関係の詳細を把握していないということでございます。なお、したがって法的判断を行う立場にはありませんで、いずれにしても事態推移を重大な関心を持って見守ってまいりたい、こういうふうに考えております。
  7. 河上民雄

    河上委員 レーガン大統領は、これはテロリズムに対する断固たる措置、こういうふうに言っておるわけです。またサッチャー首相は、これは固有自衛権行使だ、こんなような解釈をしているわけであります。  今回のことをまだ十分な時間がないからということで、今日まで今のようなお話でございましたけれども、あれ以来もう大分時間がたっておるわけですし、これに類似のケース幾つもあるわけでございます。外務大臣、これはやはり報復措置というふうにごらんになりますか、それとも固有自衛権行使というふうにごらんになりますか。
  8. 小和田恒

    小和田政府委員 ただいま外務大臣からお答えいたしましたように、米国は、これは自衛権行使である、こういう説明をしておるわけでございます。この点につきましては、レーガン大統領がこの行動の直後に行いました記者会見の席におきましても、国連憲章第五十一条に基づく措置であるということをはっきり言っておりますし、それから、国連安全保障理事会に対して米国が提出した書簡におきましても国連憲章五十一条を引いて、そのもとにおける措置として報告をしておる、こういうふうに理解しております。
  9. 河上民雄

    河上委員 条約局長としては、こういう問題が起こった場合に、国際法上の規定というものは必ず明らかにするのがその職務じゃないかと思うのですけれども、外務大臣はいろいろ政治的な配慮で言葉を濁されるかもしれないのですが、条約局長として、これを支持するとか批判するとかいうことじゃなくて、こういうケースはどちらに当たるというふうにお考えになりますか。
  10. 小和田恒

    小和田政府委員 先ほど外務大臣から御答弁申し上げましたように、我が国はこの問題、この事件当事者でもございませんし、また、この事件をめぐっての具体的な事実関係の詳細を承知しているわけではありませんので、そういう意味我が国としては、具体的な状況における法的判断というものを差し控えものが適当であろうということを申し上げたわけでございます。  ただ、もちろん一般論としてどうかというお尋ねでございますならば、御承知のように現在の国連憲章のもとにおいて一定の状況のもとにおいて武力行使が許される、こういうことでございまして、そういう自衛権行使として正当化されるものについては要件がいろいろございます。第一には、外部からの急迫不正の侵害があるということ、侵害を排除するのに適当な手段がほかにはないということ、それから武力行使必要最小限度にとどまるものであるということが必要とされておるということは、河上委員承知のとおりであると思います。
  11. 河上民雄

    河上委員 こういうテロに対していわゆる報復措置というのは、国際的なテロそのものが最近の現象かもしれないのですが、イスラエルがこれはお家芸としておったのでございまして、今回アメリカがその同じ戦術をとるようになった、こういうことで、次も同じ行動をとる可能性があると思うのですけれども、外務大臣、こういう報復テロがなくなるというふうにお考えでいらっしゃいますか。
  12. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これはアメリカに言わせれば自衛措置ということでありますし、こうしたリビアによるテロがさらに続くならば、これに対してさらに自衛措置を講ずるということをアメリカ大統領がはっきり言っておるわけでございます。しかし、日本としましては、私の談話でも明らかにしておりますように、こうした事態悪化をし、拡大をしないことを念願をしておる、こういう日本立場でございます。お互いにこれがどんどん広がっていくということは、世思のために不幸であるというふうに思います。テロは憎むべきである、こういうふうに思うわけでございますが、事態悪化する、そういうことはやはり避けなければならない、こういうふうに思います。
  13. 河上民雄

    河上委員 それでは、もし拡大した場合には、日本政府としては何らかの行動をおとりになりますか。
  14. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 今、そういう状況を予想する事態といいますか状況にはない、こういうふうに思います。
  15. 河上民雄

    河上委員 先ほど来、我々は当事者でないから法的判断を下す立場にないということでおっしゃっておるんでございますけれども、一九八一年にイスラエルイラク原子炉爆撃した場合、これは日本政府イスラエル行動を非難しておるんですわ。直接関係がないはずでありまするけれども、それを非難しておるのです。あのときはどうして非難されたのですか。
  16. 小和田恒

    小和田政府委員 先ほど来お答えしておりますことの趣旨をもう少し敷衍して申し上げた方がよろしいかと思いますが、今回の事件につきましては、米国はこれは自衛権行使である、こういう説明をしているわけでございます。先ほど私が申し上げましたように、自衛権行使国際法上認められるためには、一般的に申しましていろいろな要件があるということは先ほどお答えをしたとおりでございます。問題は、そういう要件に合致するような状況が具体的に存在しておったかどうかということでありまして、そういう見地から申しますと、今回の事件につきましては御承知のような状況のもとでテロが続発をしておった、そういう一連テロが続発する状況の中におきまして、米国としてはそれがリビアによる組織的、計画的なテロ一連行動である、こういうことを言っており、かつそのための証拠も持っておる、こういうことを言っているわけです。そこで、そういう状況のもとにおいて自衛権としての武力行使が許されるということは、理論的、一般的に言えば全くあり得ないことではないわけでございます。  ただ私どもとして、今度の事件の具体的な状況のもとにおきまして、例えばそういう一連テロ行為リビアの手によるものであるか、あるいはリビアが本当に関与していたのかどうかというようなこと、あるいはさらにリビアがどういうテロ行為を今後具体的に計画をしておって、それがどういう状況の中で起ころうとしておったのかというような具体的状況承知しているわけではない。それは、我が国がこの事件当事国でもないし、また、そういう具体的状況について情報を持っておるわけでもない。ということでございまして、そういう中において我が国として、確定的な法的な判断を下すことはできないことであるということを申し上げているわけでございます。  ですから、一般論として申し上げております自衛権行使というものが、具体的な状況の中において説明し得るがし得ないかということは個々の具体的なケースによるわけでございまして、河上委員が先ほど御指摘になりましたようなケースは、そういう状況が極めて単純明快であって、判断を下すことが極めて容易であるというようなケースであったというふうに思われるわけでございます。
  17. 河上民雄

    河上委員 イラクケースの場合は、イラク側も余り被害を明らかにしていないような状況で、どうも私は日本政府が十分な情報提供を受けていたとは思われないのです。それは、自衛権行使というものについては幾つかの制限があって、当然その相当性ということがないとこれはみだりに認めるべきではないというのが、今日の国際法上の通念だと思うのです。それに照らしてあのときは非難した、こういうことだろうと思うのですね。今回なぜ非難しないのか。今回の外務大臣あるいは総理大臣答弁を見ておりますると、日本対応というのはいわば事態推移を見守るということでございますけれども、我々としては、これは当然反対すべきことであったと思いますが、一応それを別にいたしまして、日本対応というのは推移を見守るという、いわば白紙状態ということでございますか。
  18. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 我が国対応につきましては、これはもうしばしば国会でも答弁しておると思いますが、私が十五日ワシントン談話を発表いたしました、それに尽きておると思うわけでございます。それはこういうことです。米国が今回の攻撃をリビアテロに対する自衛のための措置であると説明していることについては、米国としての理由があるのであろうが、詳細については承知していないので、事態推移を重大な関心を持って見守る。我が国としては、国際テロ事件が頻発し、今後事態が一層悪化拡大することを深く憂慮し、事態正常化鎮静化を強く希望する。これに尽きているということであります。
  19. 河上民雄

    河上委員 イスラエルイラクの場合は、先ほど言ったように明確な非難という立場をとられましたね。今回はどうしてそれがとれないのか。日米関係、一方石油の問題もございますし、いろいろな意味で中東との関係も失いたくない、そういう気持ちが察せられる。これはきょうの毎日新聞にも書いてありますけれども、大臣名文というふうに言っております。「“名文”にはりめぐらされた配慮」こうなっておりまして、安倍外務大臣の苦心というものをそこでも察することができるのでございます。我々は、はっきりとこれは非難すべきだ、断るべきであった、こういうふうに思いますが、それはそれといたしまして、外務大臣がこういういわば白紙状態で臨んでおられるのは、やはりそれが日本国益に合致しているというふうなお考えで、このような配慮を込めた名文をつくられたのでしょうか。
  20. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これは、あのときの事態というものを冷静にとらえ、どういうふうにこれを解釈して日本立場を表明すべきかということでいろいろと議論をいたしました結果、私の結論として、このような談話を出すことが日本政府としては正しい、最も適切である、こういうふうに思いまして出したわけでございます。
  21. 河上民雄

    河上委員 当面、それが適切であるというふうにお考えになったというお話でございますが、今後もその態度を堅持されていくおつもりですか。
  22. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 今後といいますか現在の時点では、今の私の談話政府のいわば見解ということになっておるわけでございますし、今これを変えるような状況はない、こういうふうに考えております。
  23. 河上民雄

    河上委員 ちょっとしつこいようでございますけれども、それが適切ということは、やはりそれが日本国益考えれば適切という意味理解してよろしいわけですか。
  24. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 我が国立場からいたしますれば、こうした談話我が国立場の最も適切な表現である、こういうふうに考えています。
  25. 河上民雄

    河上委員 東京サミットが現実のスケジュールとして近づいておるわけですけれども、日本政府は今回議長国となりますね。東京サミットでも、まだ政治的議題は固まっていないというきょうの本会議での御答弁でございましたが、恐らくこういう国際テロの問題が議題になると思うのでありますが、そのときに安倍外務大臣談話の線をさらに引き続き堅持されるおつもりでございましょうか。
  26. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 先ほど本会議でも答弁いたしましたように、まだ最終的には今回の東京サミット議題が整理されてない、特に政治議題については整理されてないと言った方がいいのじゃないかと思いますが、予想としては、こういう国際情勢の中ですから、国際テロの問題は当然首脳間で議題になる、あるいはまた外務大臣間で議論になるというふうに私は思っております。そういう中で我が国は、従来より理由のいかんを問わずいかなる形の国際テロにも断固反対をしており、今後とも国際社会全体の問題として、これらテロ防止のための国際協力を積極的に推進していきたいと考えておるということを我が国姿勢として述べております。こういう姿勢を貫いてまいりたい、私はこういうふうに思っております。  各国との間で国際テロ問題をめぐってコンセンサスができるかどうか、これは議論してみなければわからないわけでございますし、これはサミットに当たりまして、それまでの間にまだまだ予備的に議論される時間もあるでありましょうし、これからも状況を注目しながらサミットに臨みたい、こういうように思います。
  27. 河上民雄

    河上委員 国際テロの問題が今度の東京サミットで当然議論されると思うのですが、今回の事件につきまして東京サミット参加国首脳対応というものを見てみますと、はっきり言ってイギリス以外積極的に賛成したところは一つもないわけでございます。日本の場合は、どうもアメリカのスピークス副報道官によれば非常に理解を示した、こういうふうに伝えられておりまして、その後日本政府外務大臣なり総理から訂正が出ておりますけれども、新聞の訂正記事同様果たして世界人たちにどれだけ徹底しているか、非常に疑問のあるところでございます。EC諸国は、フランスのごときははっきりと、イギリスの基地から出動する軍用機上空の通過を断っております。  そういうような状況でございますが、国際テロに対してどう対応するかという場合、やはり基本においてこれが報復措置であるのか、固有自衛権行使であるのか、あるいは国際テロに対する制裁行動であるのか、その点はきちんと腹に据えておかなければ、基本が決まっていないと対応はできないのじゃないかと思うのです、これは条約局長いかがでございますか。
  28. 小和田恒

    小和田政府委員 先ほど来たびたび申し上げていることでございますけれども、米国はこれが報復措置ということで説明しているのではなくて、自衛権の正当な行使である、こういうことを言っているわけでございます。先ほどお答えいたしましたように、特に国際テロのような事件の場合におきまして、そういう事件一連事件として続発しておるというパターンが繰り返されておるような状況の中で、自衛権行使というものが許される事態というものは一般的に申しますとあり得るわけで、今度のケースについてアメリカ行動がそれに当たるかどうかということにつきましては、我が国は先ほど来申し上げておりますような理由で確定的な法的判断を下す立場にないということでございます。
  29. 河上民雄

    河上委員 それでは、東京サミット議長国として今度東京サミットを迎えるに当たって、リビアに対するアメリカ軍による爆撃の問題については、安倍外務大臣談話、いわゆる推移を見守るということがやはり日本立場外務大臣国益というふうにははっきり言われませんでしたが、日本国益に照らして適切なものだ、そういう態度を今後とも堅持していくというふうに理解してよろしゅうございますか。
  30. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 今度のサミットでは日本がいわゆる主催国ですから、各国意見をできればまとめてコンセンサスに持っていきたい、こういうことでございます。そういう中で、あるいはリビアの問題がストレートに出てくるかもしれませんし、あるいは最近の国際テロ一般について問題が出てくるかもしれません。  リビアの問題については、御承知のように、ヨーロッパとアメリカとの間には相当意見の差異があるわけです。しかし、国際テロについては、一般的にこれを防圧するということについてのコンセンサスというものは可能性があるんじゃないか。私はフランスミッテラン大統領シラク首相に会った際も、フランスは一番国際テロ被害を受けている、ですから、国際テロというものに対して、断固として協力体制をつくっていかなければならぬということを大いに言っておられました。しかし、リビアに対するアメリカ爆撃については、フランスフランスとしての、フランスの外交という立場から上空航空を認めなかった、こういうことも言っておられたわけでございます。ですからリビア問題については、なかなか意見一致は見られるとは思っておりませんが、しかし、国際テロについては可能性はあるんじゃないか。その辺を大いに議論をしながら、どういうふうにまとめていくかというのは、これは主催国である日本立場だろうと思います。  そういう中で、もちろん日本立場も、主権国家としてのはっきりしたものを持っておかなければならぬわけで、それは今申し上げましたような立場日本姿勢として貫かれなければならぬ、こういうふうに思っております。
  31. 河上民雄

    河上委員 今そういうお話でございましたが、私ども非常に心配しておりますのは、やはり報復ではテロというのはなくならない。そして、それはどうしてもベトナム戦争の苦い経験からも、次第に拡大していくという心配があるわけでして、ひとつこれは絶対アメリカ行動に対してははっきりとした立場を示すことが、やはり世界の中の日本姿勢というものを明らかにするんだ、私はそう思うのでございます。ただ推移を見守るだけではどうか、こんなふうに思うのでございますが、大臣、その点いかがでございますか。
  32. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これは事態を重大な関心を持って見守るだけではなくて、事態悪化拡大することがないように、状態鎮静化することを望むということを述べておりまして、そういう日本立場といいますか、基本認識というのは談話の中では明らかになっておる、こういうふうに私は思います。
  33. 河上民雄

    河上委員 きょうは余り時間もございませんので、リビアについて局限されたようなことでございますが、今度は、アメリカへおいでになられたので、きょうの本会議での質問でも、いわゆる経構研の報告が大変問題になっておりました。総理大臣意見というのはそこで述べられたのでありますが、外務大臣はこれについて余りお答えになっておらなかったのでございますけれども、もう時間が余りありませんので一つだけ伺いたいのでありますが、新聞報道によりますと、大河原前大使がこれを英文にしてあちこち持ち回った、そしてその反応を見ながら根回しをしたということが伝えられておるのであります。これは外務大臣が指示をしてそうされたのかどうか、これだけ一つ伺っておきたい。——外務大臣にお願いします。
  34. 国広道彦

    ○国広政府委員 これの担当は内閣でございまして、私どもが承知しておりますのは、経構研グループの中で話し合って、これはある程度事前にしかるべき説明をすることが大切だ、有効であるという判断に達しまして、あのグループとして派遣した。それについては、総理大臣も結構であるとおっしゃったというふうに聞いております。
  35. 河上民雄

    河上委員 今、大変大事なことでございますが、総理大臣は結構だと言われたのですが、外務大臣は結構だと言われたのですか。
  36. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 私も結構だと思います。
  37. 河上民雄

    河上委員 いや、結構だと言われたのかどうか。
  38. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これは経構研そのものが総理大臣の私的諮問機関、その実際の業務について関係があるのは総理官邸ですから、派遣とかそういうことはそちらの方で行われたわけでありますが、私も、それはせっかくの立派な報告書ですから、その要旨をアメリカ説明するのは結構なことである、このように思います。
  39. 河上民雄

    河上委員 一言だけ。外務大臣は事前には御存じなかったのですか。
  40. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 おいでになる前に私のところにもあいさつに見えました。大変結構です、よく説明してください、こういうことを申し上げておきました。
  41. 河上民雄

    河上委員 時間が参りましたので、これで次の方に時間を譲りたいと思います。
  42. 北川石松

    北川委員長 次に、小林進君。
  43. 小林進

    ○小林(進)委員 外務大臣にお伺いしますけれども、五月の下旬には何かソ連においでになるという計画である、何かまた中曽根さんが不規則な。発言をするので、びっくりしてそれを中止されたというような情報も流れておりますけれども、真意はどこなんでございますか。おいでになるのでございますか。
  44. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これは先般、西山欧亜局長がソ連に行きまして、カピッツァ次官との間で打ち合わせをしたわけですが、その際、私の訪ソについて日ソ間で話がはっきり決まらなかった、こういうことで、今のところは確定して訪ソということを申し上げられる状況にないということであります。
  45. 小林進

    ○小林(進)委員 私も、外務大臣はソ連においでになった方がいいということで、間接にもお勧めしていたという経緯もありますが、何しろ中曽根さん、同時選挙などということで、大分みんな慌てておりますが、これは率直に言って憲法違反、二院制否定、それで解散する大義名分もなし。それが総理大臣の意欲や自分の政党を膨張させたいということでやったということになりますと、これは民主政治の否定だから、野党は団結をいたしまして一つになりまして、野党には総裁を選ぶ権利はないけれども総理を選ぶ権利はありますから、そこでひとつ非常に強力なるプロジェクトをつくって、そういう陰謀をたくましゅうする総理は国家百年の大計のためにつくらない。ニューリーダーの中には、そういう同時選挙に同調するような者が一、二名いるようでありますが、そういう者も大義名分に基づいてひとつ天罰を与えねばならぬという空気、これは私の発言ではありませんが、そういう空気があるということも、賢明な外務大臣、ひとつよく事情を御省察を賜りまして、最も賢明かつ正大公明に動かれんことをまず希望いたしまして、それで私は申し上げる。  私は、実はこのソ連の問題といえば北方領土、この問題に対して政府の取り組み方が大変甘いという多年の主張を持っておりまして、ここにも全部記録を集めてみましたが、前にも園田外務大臣等、福田内閣のときにも私はこの問題を随分質問いたしましたが、その後一つも前進をいたしておりません。  限られた時間ですから、余り長くしゃべっているわけにはいかない。私は本当にこれだけでも、党の役員にせめて半日や一日ぐらい時町をくれないか、私は落ちついてこの問題をひとつ掘り下げてお話をしたいと言うのですけれども、頑迷固陋な党の役員諸君は私になかなか時間をくれないものでありますから、やむを得ず二十分か二十五分の駆け足で申し上げるのであります。  私はこの問題は、率直に言って交渉の相手はソ連じゃないと見ている。私はこれはアメリカだと思っている。アメリカが北方領土をソ連に提供をしたというのがヤルタ協定ですよ。ここに記録は全部ありますが、昭和二十年、一九四五年二月四日から十一日までヤルタの会談が開かれた。そこでルーズベルト、チャーチルそしてスターリンの三人で会談をしたが、そのときの英文、全部ありますよ。ルーズベルトの英文では、ともかくドイツを降伏させてから日本を降伏せしめるのにまた一年かかる、アメリカの軍隊がそのために百万人の大きな犠性を負わなくちゃいけない、そのためにはソ連をこの際日本との戦争におびき寄せなければならない、そのためにはスターリンに彼の欲しい物を上げなければならないというのがヤルタ協定の内容なんだ。  ヤルタ協定というのはソ連参戦を目的とした協定であることは、これは外務大臣もよく御存じだろうけれども、そういう資料がちっとも外務官僚当局から流れてこないんですな。それで国民に向かって、ソ連が不当に北方領土を占領したのだ、占領したのだとソ連だけを悪者にしていたのでは、問題の解決にならぬ。おっしゃるとおり、ソ連の方は、いわゆる国際条約に基づいて正当にソ連が獲得したのだから、今さら日本にいちゃもんをつけられる理由はないと彼らが言っていることは、私はこのヤルタ協定の国際性を言っているのだと思う。このヤルタ協定に対してだって、日本の外務官僚は、あれは日本が参加をしてない、だからあの条約はやみ条約だなどと言っているけれども、ヤルタ協定がやみ条約だというこの官僚一流の詭弁にも私は了承できない。ちゃんとチャーチルさんもスターリンもルーズベルトも参加をして、正当な会議方式、手続を経てこれを成立せしめているのですから。  そこで、その問題に関連をいたしまして、ヤルタ協定が四五年二月四日から十一日、その前の一九四四年の十月にチャーチルがロンドンからモスクワへ行って、いわゆるチャーチル・スターリン会談、これは国際条約でもないから二者会談が行われた。この記録がありますか。ありましたら、時間がありませんから急いで外務官僚から、ちょっとこれをお聞きをしておきたいと思う。
  46. 西山健彦

    西山政府委員 申しわけありませんけれども、ただいま手元にそういう記録はございません。
  47. 小林進

    ○小林(進)委員 かくのごとく、彼らは勉強しないんですよ。何にも勉強しないのだ。勉強しないで人をごまかそうとするから話がうまくいかない。外務大臣も苦労される。ちゃんと十月に行っているのです。そこでチャーチルは戦争処理のために、ヨーロッパ、東亜圏の問題をスターリンの了解を求めている。スターリンは、中国や日本に対する彼らの要求を出した。そこで、もはやヤルタ協定の一つの瀬踏みがややでき上がっている。決して突然にでき上がった問題ではない。そして、翌年の二月の四日から十一日になった。そのときにはもはやチャーチルもわきっちょに置いて、専らルーズベルトとスターリンの間で、日本の南樺太あるいは千島、それから中国については大連とか旅順とか南満州鉄道とか、それをソ連にやると言う、ソ連はそれが欲しいと言う、そういう話をやっている。これを御存じですかな。  外務省、これは一体だれがやっているのだ。私は、そんないろいろなことをやっていると時間がないから後で言うけれども、資料は全部見つけて私のところによこしてもらいたい。私の持っている資料と一致するかしないか、やってみる。  まだ加えると、そのときにはチャーチルは、そういう機微な談話の中に入れていないわけだ。そこで、チャーチルについていった外務大臣、ついに総理大臣になった英国の外務大臣のイーデンが、あれはルーズベルトとスターリンだけの取引で、親分チャーチル、おまえは機微の会議に入っていないから、このヤルタ協定には調印すべきじゃないとやかましくチャーチルに言っている。これが、できた後の記録の中に全部出てくるのです。私はうそを言っているわけじゃないから、あなた方ひとつこれを調べて私のところによこしてもらいたい。調印すべきじゃないと言っている。  ところが、イーデン外務大臣の要求に対してチャーチルは、いや待て待て、なるほどおれも不愉快だけれども、これから戦後処理でアジアや太平洋地域に英国の利益を守らねばならぬ場合があるから、そう一挙に調印をしないでこの会議を壊して帰すわけにはいかぬと言って泣き泣き調印した、こういう記録がある。  この問題はどうですか。アメリカのルーズベルトがソ連を参戦せしめるために、日本国有の北方領土をスターリンにやったのだ。この事実を認めますか。
  48. 西山健彦

    西山政府委員 第二次世界大戦の終末を迎えるに当たりまして、いろいろ歴史的な経緯があったということは、私もいろいろな本で承知いたしております。しかしながら、いわゆるヤルタ協定というものは、その当事国の当時の首脳が共通の目的を陳述した、そういう文書でございまして、その当事国にとってすら何らの最終的決定というものをなすものではないし、また、その領土移転のどのような法律的効果を持つものでもないというふうに我々は考えております。  これは米国が、現に一九五六年の九月、日ソ交渉に関する米国覚書というものを出しまして、明らかに知る見解でもございます。
  49. 小林進

    ○小林(進)委員 ともかく、戦争に負けて無条件降伏した国が、今日ここへ来て、当事国に相談なしに戦勝国だけで国際条約を結んだからけしからぬ、そんなのはへ理屈ですよ。そういう理屈を持って外務大臣が国際条約に行ったところで、それは通る理屈じゃないのだ。そういうところを君たちが補助者として、きちっと勉強してかからねばだめだと私は言っているのだ。そんなわけのわからぬ子供だましみたいなことではだめだ。  そこで、そのヤルタ協定でアメリカが、ルーズベルトがスターリンにやったというこの事実を確かめて、もしあなたが来月の終わりにソ連へ行かれるならば、まずアメリカにこの問題をチェックして、そしてアメリカ態度をちゃんと決めてからモスクワへ乗り込んでいかなければ、これは話になりません。  これは私だけが言っていることではありませんよ。私は、この前もこの問題の研究会へ行ってきました。もうお名前を言ってもよろしい。東大の名誉教授の大内先生もみんなおいでになって、そしてこのヤルタ協定の問題がやはり北方領土の一番のネックであるということは、学者の陣営でもある程度理論は構成されつつありますから、やはりこういうことをきちっとやっていただかなくちゃいかぬ。駆け足で申し上げますけれども、この問題はどうしてもきちっとやっていってもらいたい。  私は飛び飛びで言いますよ。  それから第二番目は、これは園田さんの速記録もあるが、あの人も死んでしまったけれども、へなへなとよく下手な答弁したものだと思って、その答弁書を見ながら私も昔を思い出しております。  北方領土の問題でも、三十一年、五六年に鳩山さんが行かれて、そこでその北方領土のときに、二島は講和条約の成立、平和条約の成立後に日本に返還する、あとの問題がまだ決定してないということに対して、日本政府は四島一括返還ということを言っているから、四島一括返還とは何だ、そのうちの二島はソ連は返すと、かつては鳩山さんの条約で言ったじゃないかということで言ったのだが、それを園田さんは、そうだ、これは生きているんだと言うのだ。二島返還は生きているんだ、何ぼついても答弁書でそう答えている。しかし、ソ連側から見ればもはやこれは終わったんだ、全部解決済みで一島も返す理由なし、こう言っているのだ。大きな食い違いがある。だから、ソ連の言い分と違うじゃないかということを園田さんに言うけれども、園田さんは二島は生きていると言う。あなたはどうお考えになりますか。ソ連の言い分は、北方領土の問題はオール解決済みだ、二島も一島も三島も四島もないと言っているんだが、日本政府は、今まではまだ二島は生きていると言っている。あなたはどうお考えになりますか。
  50. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 まず、アメリカが北方四島に対してどういう考えを持っているかということですが、この点について私も実はシュルツ国務長官と話をいたしました。そして、北方四島についての米国の見解を聞いたわけですが、その際シュルツ長官は明確に、北方四島は日本の領土であるということをはっきりと私にも述べました。その後、グロムイコ外相とシュルツ長官との会談においてもアメリカ側からこれを持ち出して、グロムイコ外相はこれに対して大変興奮して怒ったという話を後でシュルツ長官から聞かされました。  また同時に、中国の呉学謙外相ともこの北方四島問題について話をいたしました。中国側も、北方四島は日本固有の領土であるという解釈をはっきりいたしておりまして、それに基づいてまた呉学謙外相はグロムイコ外相に、北方四島を日本に返すべきである、そのことによって日ソが初めて真の友好関係を樹立することができるということを主張されたわけですが、これまたグロムイコ外相の大変な反撃に遭ったということでございまして、これも、そのときの交渉の実情も呉学謙外相から私、直接聞いたわけでございます。したがって、アメリカあるいはまた中国は、北方四島問題については極めて明快な立場をとっておると言って過言ではないと思います。  同時にまた、一九五六年のいわゆる日ソ共同宣言、これはまさに国家間の条約に等しい共同宣言でありまして、そしてこれは両国において批准をしておるわけでございますから、当然国家間の約束事として今日に至るまで守られなければならないし、また守られるのは当然のことである、こういうふうに私は認識しております。
  51. 小林進

    ○小林(進)委員 時間がないのでまことに残念なんですが、今、シュルツさんが四島は日本国有のものだと明確に言われた、これは大変ありがたい。それから中国の兵学謙さんは、亡くなられた毛沢東氏自身が日本固有の領土である、ソ連はけしからぬということを言っておられましたから、これは新しく出た問題ではないと思う。  だけれども、そこまで言われたからシュルツの発言にけちをつけるわけではありませんけれども、そこで私は外務官僚にも何回も言ったんだ。そのサンフランシスコ条約の前に、吉田さんが北方領土の問題に関連をしてダレスのところへ、アメリカの国務省に三十何通の、親書ではありません、これは公文書でしょうけれども、文書を送られておる。その中に、北方領土だけはソ連にやらぬでくれという、北方領土に関する書簡だけでも二十何通あるのです。ところが、外務省はこれを発表しないのだ。領土の問題は、国民とともにやらなければならぬから発表せい、発表せいと言っているけれども、まだ発表の余地はないと言って発表しない。しかし吉田さんは、ダレスに泣くがごとくともかく頼んだ。ところが、サンフランシスコ条約ができてみたらどうですか、発表しますかと私はあなたにも言った。これは発表して、国民とともに領土問題は解決しなければだめですから、発表しなさいということを私はあなたにも言った。けれども、まだあなたはおやりにならないが、これはひとつ発表してもらわなければいかぬ。  サンフランシスコ条約の記録を見ればいいじゃないですか。歯舞、色丹だけに対しては当時のアメリカは、ダレスも、これは北海道の領土で千島列島ではないということはしているけれども、あとのいわゆる国後、択捉島は、何ぼ言ってもちっとも日本の援助はしておりません、あの記録は全部。それはそのとおりだ。アメリカはちゃんとソ連にやったんだから、今さら日本の吉田さんが全権として、北方領土は日本のものだからと叫んだところで、アメリカ日本の味方をするわけではない、あのサンフランシスコ条約で明らかに北方領土四島はソ連にやるように決定したんだ。それをその後外務省は何とか言っているから、あのサンフランシスコ条約の吉田発言あるいはその後の西村条約局長発言、この資料を私のところに持ってこいと言ったが、持ってこない。だから、あのサンフランシスコ条約が済んだ後には、日本国会の中でも吉田さんも当時の条約局長も、残念ながら北方領土は日本は放棄をいたしましたと発言したじゃないですか。その事実を、それはアメリカが放棄——発言中ですけれども、これは時間が来たからやめましょう。また、あと外務大臣が戻りましたら、今の続きをやらせていただきます。
  52. 北川石松

    北川委員長 この際、暫時休憩いたします。    午後四時五十六分休憩      ————◇—————    午後五時三十五分開議
  53. 北川石松

    北川委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。小林進君。
  54. 小林進

    ○小林(進)委員 先ほどは、ヤルタ協定に基づいて北方領土をルーズベルトがスターリンにやって、その約束があるからサンフランシスコ条約にいかに吉田全権が血みどろになって要求しても、歯舞、色丹だけは北海道の固有の領土だが、あとは千島、これはだめだと言って、日本の要求をついに入れてくれなかったというところまで私は質問をいたしました。  その後、ひとつこれも外務省にぜひ資料を要求するのだけれども、鳩山さんが五六年、三十一年十月十九日ですか、モスクワへ行っていわゆる日ソ共同宣言をおやりになったのだが、その前に日本とソ連との条約調停のために外務大臣の重光さんと元駐英大使の松本さんの二人がモスクワへ行かれた。そこで日ソの平和交渉をされたときに、ソ連は歯舞、色丹の二島は確かに条約が成立すれば日本にやるが、あとはもうだめだ。強硬でどうも話が進展しないということで、そこで重光さんも松本さんも、事ここに至ればきわまれりだ、もはや相手も強硬だから、この二島返還で日ソ平和条約を締結する以外に打開の道がない。そこで腹を決められた。それを当時の鳩山一郎総理に電文で報告しながら、最後の打ち合わせをするためにモスクワから日本へ帰国の途につかれた。  当時は、今のような航空機も発達していないからロンドン経由で帰る以外にないということで、モスクワを出てロンドンへ寄られた。そのときにアメリカのダレスがロンドンにいて、そこでそれをつかまえた。重光さんと松本さんは、ロンドンのアメリカ大使館へ来いと言って呼びつけられた。そこで呼びつけられたのは、あなたたちは結論を持ちながら今日本へ帰路を急いでいるが、もしそのとおり二島返還でいわゆる日ソの平和条約を結ぶということになればアメリカは了承できない、やるのならばアメリカは沖縄を日本に返すわけにはいきませんよ、永久に沖縄は返しませんよ、私の言葉をもってすればダレスは重光を恫喝した。それで重光さんはびっくりして、これではたまらぬというので急遽腹構えを変えて日本へ帰ってきて、条約はやめた、いわゆる日ソ共同宣言でいこうということで態度が変わって、そこで鳩山さんが足を引きずりモスクワへ乗り込んでいって、平和条約の下ごしらえの話をやめて共同宣言にこれを切りかえている。こういう事実が歴史的事実。  時間がないからこれ以上言わぬけれども、外務省はこれを資料にして、いいですか、これは欧亜局が、西山君のところだな、君はごまかすのが一番上手だけれども、そういうことのないように、この資料はきちっと私の手によこすようにしてくれたまえ。いつもよこさない。こういうような重大な問題を、きょうびの外務大臣に基礎的知識をぶち込んでおかなくちゃいけない。アメリカは自分の都合で、一方では我が日本に北方四島を放棄させておきながら、今度は日本とソ連が近づいて仲よくしようとすることになって二島で話を決めようとすれば、そんなことをやるんならだめだと言って、話のぶち壊しにかかっておる。  そこで、アメリカという国も神様でないからやはり自国本位だろうけれども、実に時勢の動きによって常に日本は手玉にかけられているじゃないか。こういう事実をいま少し国民の前に私は明らかにして、そして問題を処理していく必要があるということを申し上げたい。外務大臣、あなたこれいかがですか、私の言うことがうそだとお考えになっておりますか、うそじゃありませんよ。これは答弁なさらないならば次に移りますけれども、それではひとつ資料を調査して、私はそれを持っているのだから改めて対決してもよろしゅうございます。  それからいま一つ、外務大臣が日ソ交渉でどうしても腹を決めてもらいたいことは二島論なんだな。二島をも含めて領土問題は全部解決した、問題にならないとソ連が言ったということは、日本側から言わせれば、これは共同宣言、鳩山宣言の違反行為です。私が園田さんにやかましく言ったのが、これを違反と見るか見ないかということなんだ。そんなことは全部済んだんだ、領土問題はもうないんだということは、二島も返さぬということの言葉の裏づけじゃないか。それでは共同宣言違反じゃないか。違反ならば、ひとつそれを確認をしながら日本にも出方があるじゃないか、頭ばかり下げないで。右を向いてはアメリカに頭を下げ、左を向いてはソ連に頭を下げ、今度はまた我が敬愛する外務大臣がソ連に行って頭を下げるのではないかという心配があるから、私は今あなたに言っているんだ。  どっちを向いても頭を下げているんだが、あなたに言いたいことは、もしソ連が二島も返さない、済んだと言うならば、共同宣言を履行しないならば、やめにいたしましょう。やめにするというのは、両国はそれぞれの持っている請求権といいますか、権限を全部放棄するというのがあの宣言の中に含まれているのだから、日本は放棄をするのをやめる。それで何をやめるか。言わずもがなでしょう。戦争が済んだときに中立条約を違反して、我が旧満州、北鮮にいる六十万人に近い我々の同胞をシベリアに連れていったじゃないですか、モンゴルに連れていったじゃないですか。そして、その中の六万人に近い我々の同胞が死んだじゃないですか。  あれは、明らかにポツダム宣言違反じゃないですか。特殊な戦犯を除いて、日本の国民はすべてふるさとへ帰って安らかに送れるというのがポツダム宣言の内容だ。それを我々は受諾した。しかし、ソ連だけは満州における我々の同胞を六十万も連れていった。長いのは十一年間も抑留生活をやらされた。そして、徹底的な弾圧と重労働で、人間の命に変わりはないだろうけれども、まあ近衛さんのせがれさんを初め六万人もあそこで死んだ。六万人と言えば六個師団ですよ、あなた。大きな戦争の敗北のようなことが戦争が済んでからやられたのだ。これを一体何で、私どもはいま少し物が言えないんだ。  鳩山さんがあの共同宣言で、一切の請求権を両国とも放棄すると言ったから、私どもは涙をのんでこれはやむを得ないと思ったのだけれども、相手方の方が領土の問題なんかもう済んだとか言って約束を守らないのなら、こっちも原点に返ってこういう問題をなぜ堂々とその交渉の場で言えないのかということが、私があなたに言いたいことなんですよ。いいですか、あなた、これはヘーグ条約にも違反です、捕虜条約にも違反です、国際法にも違反です、戦時国際法にも違反です、ポツダム宣言またしかり。こういう違反なことを堂々とやられて、我々の同胞が戦後に六万も死んでいることに対して、物一つ言えないなどというばかな話がありますか。  北方領土の問題に関連して、ひとつあなたに堂々と言ってもらいたいというのが私の主張なんです。これに対してはまだ長い話があるけれども、十分じゃ言えないから結論だけ申し上げておきますが、いかがでございましょうか、この問題は。
  55. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 先ほどからいろいろとお話がございましたけれども、実は私もちょうど日ソ共同宣言ができたとき新聞記者をしておりまして、外務省担当でありました。あの当時の記憶からすれば、確かに重光外務大臣がソ連との交渉の結果、どうしても四島は無理だ、歯舞、色丹の二島でなければソ連との間に条約が結べない、こういうような判断でもって日本政府に請訓をされたというふうに私は承知しております。しかし、政府・与党としましては、当時は、あくまでも四島は日本固有の領土である、これを分割して二島だけ返還ということで条約を結ぶことは到底認めるわけにはいかない、こういうことに相なって、鳩山総理が出かけていかれまして、条約でなくていわゆる共同宣言という形で、四島については継続協議ということでもって結局国交回復が相なったというふうに私は承知いたしておるわけです。その間に、おっしゃるようなダレスの恫喝があったとかいうことも、伝記その他でいろいろと出されていることは私も承知しておりますが、具体的には今私が申し上げたのが一つの本質的な議論ではなかったか、こういうように思います。  日本政府としては、あくまでも北方四島は日本固有の領土であるし、歴史的にも条約的にも日本の領土以外であった日は一日たりともあり得ない、こういう観点に立って、これまた長い話になるわけでありますが、我々は北方四島一括返還を今日に至るまで主張しております。ソ連はその後いろいろ態度を変更しましたが、ようやく領土問題も含めて平和条約交渉をしようという姿勢で、実は今回シェワルナゼ外相が一月に訪問したときに領土問題についての議論も行ったわけでありますし、ぜひとも私はこの続きをソ連のモスクワでやりたいと思っておるわけでございます。  そういう中でシベリア抑留者の問題が、今日もいわゆる戦後処理の問題としていろいろと言われておるわけでございます。私もその点については、御苦労をされている方々に対して非常にお気の毒だと存じております。シベリアに抑留された方々が強制労働を強いられたということでありますし、大変な苦労をされた、これは本当に遺憾であったと考えるわけですが、抑留にかかわる請求権の問題につきましては、一九五六年の日ソ共同宣言第六項第二文により、両国間において既に決着済みであるということが条約的にははっきりしておるわけでございます。したがって、日ソ共同宣言は、日ソ両国間の基本的な関係を規律する厳粛な国際約束として、現在も日ソ両国を有効に拘束しておることは論をまたないところでありまして、政府としては、今後ともソ連がこれを遵守しその国際義務を履行するように求めていかなければならぬと思っておりますが、今の抑留問題については、こうした条約の条文の中で決着済みであるというのが両国の公式的な立場であるということを申し上げざるを得ないわけであります。
  56. 小林進

    ○小林(進)委員 そのとおりなんです。これまた役人の書いた文章を読んだだけなんだ。今おっしゃるように、第六項で捕虜の問題等日本の請求権を放棄した。第九項では二島の問題が入っているのです。それを、二島の問題はない、決着済みだと言ってソ連が九項を否定している限りは、我々だけが六項を守る必要ないじゃないかというのが私の質問なんです。役人のその文章はすぐそういうことをごまかして、さわりのいいことだけをあなたにしゃべらそうとするから、役人、特に欧亜局長には気をつけなさいよと言っているのです。ソ連が本当にその九項の二島はまだ生きていると言うならば、私は第六項のことは言いませんよ。それを兼ね合いで、こっちも六項の問題をいま少し強く出てもらってもいいじゃないか、これが一つ。  ヤルタ協定その他にはアメリカが絡んでおりますよ。そのアメリカが、サンフランシスコでは北方領土を放棄さしておいて、その北方領土の二島を日本が取って条約を結ぼうとしたら、ダレスがロンドンで待っていて、重光さんと松本さんに、恫喝という言葉は私の形容詞であるかもしれませんけれども、会っていることは事実です。条約を結ぶならばこっちの沖縄の領土は返しませんよと言ったことも事実だから、うそならその資料を早く持ってきてください。そういうことも含めて、私はあなたの日ソ交渉に非常に期待している。あなたをもってしなければなかなか成功しないと思っているから、そのためにもいま少し役人に勉強させて資料を腹の中にいっぱい入れて、そして五月の同時解散なんかやらせないように、五月早々というか中旬にもひとつモスクワへ出かけていっていただきたいということを申し上げて、時間が参りましたから私の質問を終わります。
  57. 北川石松

    北川委員長 次に、玉城栄一君。
  58. 玉城栄一

    ○玉城委員 先日の日米首脳会談については、きょうの衆議院の本会議総理からもその経過の御報告質疑もあったわけでありますし、また、大臣自身も御同席されて、OECD閣僚理事会報告もこの委員会であったわけでありますが、今度の日米首脳会談で非常に私たちが重大な関心を持っておりますのは、やはり我が国の経済構造を歴史的に転換するということであります。したがいまして、その経過の報告あるいは総理自身の記者会見レーガン大統領記者会見等を見ましても、これは明確にそういうことがきちっと約束をされている、こう理解するわけでありますが、外務大臣はいかがでしょうか。
  59. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 私も首脳会談で同席をしたわけでございます。いわゆる経構研報告につきましては、これはもう既にアメリカ側にも説明をしております、その骨子を総理からも説明をして、これは重要な参考資料として、日本は今後とも思い切った経済構造についての改革を行う努力をしなければならぬ、しかし、それには当面やらなければならぬことと中期的にやらなければならぬことと長期的にやらなければならぬこと、そういう面もあって、そしてまた、いろいろと手続もあるのでそう簡単にはいかないけれども、自分としては今の日本のあり方、今後のあり方というものを考えるときに、日本世界の中で生き抜いていくためには思い切った構造改革を実行していかなければならぬ、こういうふうに考えておるということを述べられたわけでありまして、何もアメリカとの間で、何をする、何をするというような約束をされた、コミットしたということではない、私はこういうふうに思っております。  アメリカ側としても、日本総理大臣の諮問機関である経構研の報告についてはなかなかよくできていると言って評価をした、こういうことでございます。ただアメリカは、よくできているけれどもこれは実行されなければ意味がありませんよということは、シュルツさんも私に言ったことを私もよく覚えているわけでございます。
  60. 玉城栄一

    ○玉城委員 これ以上、このお話をしましてもなんでしょうけれども、極めて奇異に感じますのは、我が国にとって非常に重要な経済構造の転換などという基本的な問題について、我々が何も知らないままに首脳会談でどんどん話し合われていく。よく見ますと、これは大問題がいろいろと含まれているわけです。それを前提にしまして、これは大臣の御報告の中にもありますけれども、MOSS協議についても話を今後していくんだ、こういうことでありますが、具体的にどういうものがMOSS協議の対象分野として入ってくるのか、その辺はいかがでしょうか。
  61. 国広道彦

    ○国広政府委員 MOSS協議につきましては、御存じのとおりの四分野につきまして昨年一年間作業をしてまいりました。これは大体いいところまで作業が来ましたので、新分野について継続してやりたい、やったらどうかという提案がかねてより米側からございまして、私ども日本側としましては、個々の分野につき合意ができる分野があればやりましょうということでございます。新聞にも伝えられておるような話が実はあるわけでございます。しかしながら、まだ具体的にどの分野を取り上げるかということについて我が方、日本側内部でまとまっておりませんので、そこまで相談が進んでおりません。
  62. 玉城栄一

    ○玉城委員 今、新聞に報道されていることについて、向こうからの要望なり要請がある、例えば自動車部品とか背高コンテナとかワインとか、そういうものですか。
  63. 国広道彦

    ○国広政府委員 私、現在まだいろいろ話をしている段階でございますので、公にどれとどれと固定して申し上げることは困難でございますけれども、そういう種類の話は向こう側のサゼスチョンとして私どもも内々聞いてはおります。
  64. 玉城栄一

    ○玉城委員 例えば自動車部品等について、これは申し上げるまでもなく中小零細業者ですわね。今はもう関税もゼロになっている、そういうものがまた新しく入ってくると、これはそういう関係業者にとっては重大な問題になるわけですね。例えばワインとか、そういうものがもし入ってくるとなりますと、これは経営は非常に悪化していますし、ワイン業者というのは壊滅的な打撃を受けることは間違いないですね。いかがでしょうか。
  65. 国広道彦

    ○国広政府委員 今御指摘の、例えば自動車部品について申しますと、現実は我が方から多数の、二百何十万台の自動車がアメリカに輸出されているわけでございます。最近は現地企業もできましたので、随分たくさんの部品が日本からアメリカに輸出されているわけでございます。アメリカ側からしてみますと、アメリカの部品をもうちょっと使ってくれたらいいではないか、そうでないと余りにも貿易が一方交通ではないかということが不満としてあるわけでございます。御指摘のとおりに、関係の中小企業で輸入が急にふえると困るということは、もちろん我々もそうだと思いますけれども、しかし貿易というのはやはり両面交通であって、いい部品があれば買うというようなことは、自動車のみならずほかの分野でもあって当然のことであろうと思います。そこら辺の兼ね合いが非常に難しいのでございますが、やはり貿易というのは両面交通であるということが基本ではないかと思っております。
  66. 玉城栄一

    ○玉城委員 ですから、非常にびっくりしていますのは、歴史的な構造転換をする、こういう約束をしてきているわけですから、我が国として輸入をさらに拡大していくとなりますと、その輸入製品に関係する国内の中小零細企業は整理縮小か廃止か転換かという、非常に重大な問題があるわけですね。ですから、その辺を本当にきちっとやっていただかないと大変な問題がある、この問題はこの程度にしておきますが……。  そこで、今度は大臣にお伺いしたいのですが、先ほどは小林先生もおっしゃっておられたのですが、大臣が訪ソされる問題ですね。その前に、いわゆる米ソ首脳会談の前に米ソの外相会談の中止という問題があるわけです。去年暮れだったですか、米ソの首脳会談は大変明るい期待が持たれたわけですが、その後軍縮問題とか核実験の問題とか、つい最近のリビアへの爆撃の問題等で何かきしみがある。そういうこともあって、米ソ首脳会談アメリカで本当にいつ行われるのかという危惧もありますね。ですから、その前の米ソの外相会談の中止になった理由については、外務大臣はどのような御認識を持っていらっしゃるのか、お伺いいたします。
  67. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これはもうアメリカリビアに対する攻撃、これが米ソ外相会談を中止に至らしめた直接的な原因であろう、こういうふうに思います。
  68. 玉城栄一

    ○玉城委員 ということは、米ソの首脳会談の見通しについても五分五分であるという御認識なんでしょうか。
  69. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これは、確かにアメリカリビア攻撃によって中止にはなったわけでございますが、私はむしろ中止というよりは、全体の状況から見ると、延期と言った方がいいのじゃないかという見通しを持っております。それから米ソ首脳会談につきましては、その後の、ごく最近の米ソ両首脳発言、演説等を拝聴しますと、両首脳とも、今年じゅうには何とか会談をしたいという意欲がにじみ出ておるわけでございまして、両国間にはリビアに対する問題あるいはまた軍備管理・軍縮交渉等についての相当な開き等もあって、必ずしもいい雰囲気ではないと私は思いますけれども、しかし両国の首脳は、ことしじゅうには会談をしたいという熱意は持っておる。その熱意が大事であって、そういう熱意がある限りはことしじゅうに会談可能性は出てくる、こういうふうに、楽観と言えば楽観かもしれませんが、そういう見通しを持っておるわけであります。
  70. 玉城栄一

    ○玉城委員 そこでまた、大臣が来月下旬の訪ソについて、報道では断念とかあるいは慎重とか、一月の大臣とシェワルナゼ外相と共同声明まで出されて大成功であったという、期待もあったし、日ソ間の政治対話も再開されたということで、大きくこれから日ソ関係は前進していくんだ——ところが大臣は、断念か慎重があるいは延期かよくわかりませんけれども、あれほど鳴り物入りとまではいかなくても本当に雪解けムードで、日ソのこれからの関係が前進していくのではないかという期待を持っていたやさき、大臣は訪ソはちょっと慎重に考えるという理由がはっきりわからないのですが、どういうことでしょうか。
  71. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 直接的な理由としては、西山欧亜局長が最近ソ連を訪問しまして、カピッツァ次官と私の訪ソ問題についていろいろと会談をしたわけでございます。そして、最終的には私の訪ソについて結論に至らなかった、こういうことで、時日等の設定をするに至らないという状況である以上は、今後にまたなければならないという姿勢で今臨んでおるわけでございまして、決して今私が訪ソを断念したということを言っておるわけではありません。私は、基本的には共同声明にも書いてありますように、ぜひとも私が在任中に訪ソして東京でやった会談の続きをやりたい、同時にまた、東京でいろいろとシェワルナゼ外相との間で友好的に話し合って一つの実りも出そうになった諸問題をモスクワにおいて解決したい、そういう気持ちは持ち続けておることは変わりはないわけでございます。ただ、そういう環境がこれからできてくるかどうか、熟するかどうかということが今後の事態であろうと思うわけでございます。
  72. 玉城栄一

    ○玉城委員 ですから、あのときの日ソ共同声明でも、日ソの首脳の相互公式訪問の確認とか、また、大臣が相互に訪問するというようなこともちゃんと言ってあるが、今の状況からすると、一月の日ソ外相定期会議から後退しているというような感じがするのです。報道では北方の墓参問題がうまくいかない、あるいは日ソの文化協定がうまく前進しているのかしてないのかよくわかりませんけれども、そういうことが理由でしょうか、それともさっきもお話がありましたとおり、五月の下旬というのは選挙もあるからということなのか、ちょっとその辺大臣いかがでしょうか。
  73. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 私は、こういう問題は余り政局にひっかけたりとらわれたりして決めてはならぬと思っておりまして、あくまでも国と国との間の外交関係でございますから、行くということがはっきり決まればどういう事態になっても行かなければならぬ、そういうような姿勢でおりますし、そういう基本的な立場でいろいろと折衝させておったわけですが、ただ、全体にまだ客観情勢が熟してない、私が行くということについては共同声明でお互いに確認し合っておるわけですが、そういう共同声明を実行する環境がまだ私の目から見ると熟してない、こういうふうに考えて、ですから、今ここで日にちを決めるという段階にならなかったことを非常に残念に思っております。
  74. 玉城栄一

    ○玉城委員 これは、西山さんが御専門で行っておられるわけです。大臣は、客観的な環境が整ってないというお話ですが、それはさっき申し上げたように、北方の墓参問題の進展がうまくいってないとか文化協定の問題とかということですか。具体的な障害といいますか、当初予定しておられた訪ソができないということは、できないか延期か。
  75. 西山健彦

    西山政府委員 全体の状況につきましては、ただいま大臣から御答弁があったとおりでございます。もちろん、今先生が御指摘になりましたような問題を含めまして、全般的な総合判断からこの際慎重に状況を見きわめたいというのが理由でございます。
  76. 玉城栄一

    ○玉城委員 ですから、そういう抽象的な、総合的に慎重でなくて、その話はわかるわけですから、共同声明に墓参の問題はどういうふうに書いてありましたか。
  77. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これは二国間の外交交渉の問題ですし、私が行く以上は、それなりの日ソ間で改善の大きな成果を上げたいという気持ちを十分持っておりますし、ソ連側も恐らくそうだろうと思っておるわけでございますし、そのために西山局長も苦労しておるわけでございます。非常に微妙な段階にありますし、外交交渉の内容についてここでいろいろと申し上げるということは適切ではない。しかし、今御質問もありまして、私から総合的な立場お話を申し上げたということで御理解をいただきたいと思います。
  78. 玉城栄一

    ○玉城委員 日ソ共同声明に北方の墓参の問題については、「ソ連側は人道的見地からこの問題をしかるべき注意をもって検討していく旨述べた。」と書いてあるわけですね。それはそのままでとまっているのか、それよりも後退しておるのか。非常に疑問に思いますのは、せっかく日ソ間で外相定期会議で共同声明にこういうふうに書いたというのは、双方詰まっているからこういう表現で書いたと思うのです。これより今は後退しているということですか。
  79. 西山健彦

    西山政府委員 後退しているというわけではございません。先方は、共同声明に書いてありますとおりの態度で本件に対応しております。ただ、細かいいろいろな話につきまして、まだ話し合いが進行中ということでございます。
  80. 玉城栄一

    ○玉城委員 そうすると、細かい話が詰まってないことが、大臣が訪ソに慎重になる理由の一つなんですか。
  81. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 それは理由の一つです。
  82. 玉城栄一

    ○玉城委員 これはプロの外交官でいらっしゃいますから、外交的な努力がこちら側にも足りないと指摘されても返す言葉がないと私は思います。ですから、せっかく例の一月の日ソ定期協議から日ソ関係の改善を期待していた、ところがわずか三カ月くらいになってくるとそれは余り前進していないということは、非常に疑問なんですね。西山さん、そう思いませんか。
  83. 西山健彦

    西山政府委員 御承知のようにソ連という国は、さまざまな状況を常に頭の上に置いて、その総合判断の上に立って個別の案件に取り組むというのが例でございます。したがいまして、この国と外交交渉をする場合には、こちらも総合的状況をすべて頭に入れた上で立ち向かう必要がある次第でございますので、現段階で個別の問題についていろいろコメントを申し上げることは差し控えさせていただきたいと存じます。
  84. 玉城栄一

    ○玉城委員 いずれにしても、あの時点よりは前進していない、ある意味では後退しているという感じを率直に受けるわけですね。  それで、日ソ文化協定のその後の推捗状況というのはいかがでしょうか。
  85. 西山健彦

    西山政府委員 その問題につきましても、ただいま申し上げたことと同様にお答えする以外にない次第でございます。しかしながら、決して後退したということではございません、なお交渉を続けているということでございます。
  86. 玉城栄一

    ○玉城委員 我が国は、こういう文化協定を何カ国ぐらいと締結しているのでしょうか。
  87. 小和田恒

    小和田政府委員 突然のお尋ねでございますので正確な数字は承知しておりませんが、かなりの国と締結をしております。  ただ、文化協定は必ずしも一つのパターンではございませんで、相手の国の社会体制であるとか制度であるとかいうものに合わせまして締結をするわけでございますが、ソ連の場合には特にその点でほかの国と状況が違っておりますので、そういう面でいろいろ交渉上難しいところがございます。
  88. 玉城栄一

    ○玉城委員 大体二十八カ国じゃないか、これは間違っていたらまた訂正をお願いしたいのですが、文化協定の条文のパターンが十条ぐらいで大体同じスタイルといいますか、今おっしゃられた日ソの文化協定については、従来のスタイルといいますかパターンと特別に変わった条文が出てきているのでしょうか、それとも大体同じ形なんでしょうか。
  89. 小和田恒

    小和田政府委員 現に交渉中の問題でございますので、余り具体的なことにわたるのは差し控えさせていただきたいと思いますが、先ほども申し上げましたように、ソ連の場合には社会体制が違うとか制度が違うという問題がございます。したがいまして、文化協定がカバーする領域あるいは文化協定が目的とするところは基本的に同じでございますので、そういう意味ではソ連の文化協定がほかのものと非常に違うということではございませんけれども、日ソ間の特殊な問題あるいはソ連の持っております特別な制度上の問題ということを念頭に置いて、それなりのソ連と日本との間の文化交流を律するにふさわしいような面というものを取り込んだ案文になっているわけでございます。
  90. 玉城栄一

    ○玉城委員 ですから、今条約局長さんがおっしゃいましたように、条文の構成といいますか文化協定の従来のパターンからすると、そんなに日ソ間であっても変わりはない、しかし、実際上はいろいろな体制の違い等で、文化交流としていろいろな特徴的なものがあるという意味じゃないかとも私は受け取ったわけであります。  それで、一九七二年のグロムイコ外相と福田外相との政府間の文化交流交換公文というのですか、これは現在まできちっと有効に機能しているのでしょうか。
  91. 西山健彦

    西山政府委員 文化取り決めそれ自身は、更新され続けて今日に至っております。その内容の実施につきましてはなかなか難しいところもございますが、おおむね全般的には、その取り決めの枠内においては機能していると申し上げることができると思います。  ただ、今回改めて文化協定をつくろうということに我々が考えるに至りましたのは、ソ連との間ではもう少し別な基礎の上に立って、より平等な立場といいますか、コミュニケーションにおける平等性といいますか、それを拡大したいということで努力しよう、そういう認識に立っている次第でございます。
  92. 玉城栄一

    ○玉城委員 日本とソ連の場合、そういう情報の問題とか学者の方々の公文書の利用の問題とか、いろいろな問題点があるというふうに聞いているのですが、やはりそういう点があるのでしょうか。
  93. 西山健彦

    西山政府委員 交流一般について申し上げれば、先方から我が国にいろいろな情報が入ることは我が国の体制からいいまして比較的自由でございますけれども、反面、我が方の情報をソ連の中に、それが人であれ書き物であれ、いろいろな形でもって入れようといたしますと、非常に制約的な条件にぶつかるわけでございます。したがいまして、現状が平等でないというふうに申し上げたのはそういう点を念頭に置いてのことでございます。
  94. 玉城栄一

    ○玉城委員 大臣も、せっかく来月の下旬でしょうか訪ソの御予定であったわけですが、そういうもろもろの理由でその時期がまだ熟していないということであるわけです。共同声明にせっかくうたわれて、また今後の日ソ関係が非常に前進すると期待もされている中で、外相が当初予定どおり訪ソされないことについては後退したという感じを受けるわけです。  したがって、もちろん外務省御当局もそうですが、もろもろの問題があるだけに、どんどん精力的にそういう詰めをやっていただいて前進していただけないものかという感じでいるわけですけれども、大臣、最後にひとつ。
  95. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 私は、決して訪ソしないということを言っているわけではなしに、むしろ訪ソしたいという意欲を強く持っておるわけでございます。それには条件が整う必要がある、そのためにこれからも日ソ間でいろいろと話し合いもするであろうと思っておりますし、その結果を踏まえてできるような関係になれば喜んで訪ソしたい、そういうふうに考えております。目標は、まさに訪ソというところに置いて努力を続けてまいりたいと思います。
  96. 玉城栄一

    ○玉城委員 重ねてその点で、これは政局がどういう形になるか予想はっかないわけですが、外務大臣とされましても、ちゃんと共同声明にあるわけですから、約束ですから年内にはされなくちゃいけないと思うのです。そうすると、もし五月が機が熟さないということになりますと大体いつごろというふうに考えていらっしゃるのですか、あと全然わからないということなのかどうか。
  97. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 いや、まだいつということを最終的に確定して発表もしておるわけじゃありませんで、それについて今まさに交渉中であるし、そういう状況をつくるために交渉しているという段階でございます。
  98. 玉城栄一

    ○玉城委員 以上です。
  99. 北川石松

    北川委員長 次に、渡辺朗君。
  100. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 外務大臣日米首脳会談に引き続いてOECDの会議、御苦労さまでございました。  のっけからOECDの方を聞かしてください。  この御報告によりますと、「我が国から、」「ODAの着実な拡充に努めるとの姿勢を明らかにし、これに対し各国から積極的な評価が得られたものと考えます。」ということで、開発途上国我が国との関係について「各国から積極的な評価が得られた」と書いてありますが、私どもが日本におりまして報道その他から見ておりますと、むしろ日本の援助の質の問題が問われた、あるいはグラントエレメントの問題について日本として大変苦しい立場をいろいろ表明せざるを得なかったというようなことも報道されておりました。実際のところはどうでございましたでしょうか。
  101. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 私は、外務大臣になりましてOECDの閣僚理事会に四度続けて行っておるわけでございますが、その中で一番環境というか、日本に対して厳しい空気であったのは去年のように思います。去年は、いわば日本がターゲットになって集中攻撃を受けたというような感じでありました。そういう意味では大変嫌な思いをしたわけですが、ことしは去年に比べると空気は大変よかった。これは大前提としましては、やはり先進国の経済の状況がよくなっておる、さらにその背景としては、金利が下がってきた、あるいはまた為替の調整も進んだ、あるいはまた石油が非常に低落をしている、こういうふうな状況が続いたということで、先進国に多少の余裕ができたということではないだろうか。  しかし同時に、日本の黒字はそういう中で膨大になっておるということについては、各国からの指摘もあったことは事実でございますが、同時にまた、日本がそうした自由貿易を守るための市場開放等に対して積極的な努力をしている、あるいはまた為替の調整にも一つ一つの大きな役割を果たしておる、あるいはまた構造調整等に対しても積極的な意欲を示しておる、そういう点についての評価もあったわけでございますから、一方的に日本が批判をされたということじゃなくて、日本に対する一つの評価がありながら注文も出てきた。そして、今後はやはり日本あるいはまたヨーロッパが、今後の世界経済を支える、引っ張る一つの役割を果たしてもらいたいという空気も全体的にはあったように思います。  そういう中で、援助については、むしろ開発途上国の累積債務問題が非常に深刻になってきておりますから、それだけに先進国の役割も大きくなったわけでございますが、その援助のあり方、特にタイド援助のあり方について、残念ながらこれは日本とEC、アメリカとの間で考え方が違ったということで、日本が何か批判を受けたような形になったわけでございます。しかし、日本で出している案は、タイド援助の規制をさらに強化していくということで、これまではグラントエレメント二五%というものをレベルを四〇%に引き上げる、そこまで日本は踏み切ったわけでございますから、私はそういう日本の思い切った姿勢というものは評価されこそすれ、批判されるべき筋合いのものではない、こういうふうに思っておるわけですが、残念ながらヨーロッパとアメリカが組みまして、そして金利に並行してグラントエレメントのあり方を決めていく、そういう姿勢に基づいた案を出したということによって、日本のような低金利国が非常に悪い立場に立って、フランスやイタリーのような高金利国が非常にいい立場に立つということで、むしろその辺に問題があったわけだろう、こういうふうに私は思っておるわけです。  全体的には、この問題はいわばけんか両成敗ということで次に延ばされたわけでございますが、全体的に見て、日本の援助も質的には今後改善をしていかなきゃならぬ、このままでいいというものではない、そういうふうに私は思います。これはフィリピンの援助の問題も出ておるわけでございますが、そういう問題も含めて、全体的にそういう見解を私は持っているわけであります。
  102. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 この問題は、また別の機会にいろいろとお伺いしたいと思います。  今、大臣のお言葉の中にも出てまいりましたフィリピン援助の問題、報道によりますとアキノ政権は、第十三次円借款の十一のプロジェクトのうち二つのプロジェクトは、マルコス前大統領に関連する計画であるからということで、白紙にするというような通告があったやに言われております。これについての事実関係をまず確認をさしていただきたいのですが、そのような通告があったのでしょうか。
  103. 藤田公郎

    藤田(公)政府委員 委員承知のとおり、第十三次の円借款では十一のプロジェクトが交換公文が締結されておりまして、その後新政府が成立いたしまして、新政府のもとでの新しい政策に即してこの十一のプロジェクトの緊急性についてもう一度レビューをする、それでそのレビューの結果、新政策の観点からもうちょっと後回しにしたいというものが二、三あるかもしれないので、その際にはよろしくお願いをしたいというお話が以前からございました。現在、そのような向こう側の意図を伺いながら、詳細、どのプロジェクトをどのような観点から後に延ばすということなのかということを伺おうとしている段階でございまして、先方側からはっきりと幾つ——今、委員から二つというのがございましたが、二つというお話とか四つというお話とかございますので、詳細、先方の御意向を伺いまして、それに対応して我が方の態度を検討しようとしているのが今の過程、今協議の過程にあるというのが現状でございます。
  104. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 今の点で、ひとつもう一遍ちょっとはっきりと言っていただけませんか。向こうからレビューをしたいということの申し出があった、その理由はどのような理由が挙げられておりますか。
  105. 藤田公郎

    藤田(公)政府委員 十一のプロジェクトにつきましては、先方も両国政府間の交換公文ができているということは知っている。他方、新しい政府ができまして、政策も前政府とは異なった重点の置き方等があるので、その新しい政策に即して緊急度等が変わってくることが考えられる。そういう見地から二、三のプロジェクトについては、今すぐというよりももう少し後回しにすることを考え可能性もあるというようなことを当初言っておりまして、その後、二つのプロジェクトくらいは後回しにしようかとか、四つとかというようなことを申してきておりますので、どの機会が次の機会になるかわかりませんが、もし先方の大蔵大臣が来られるというようなことが実現します場合には、また先方からの御説明があるんじゃないかと私どもも考えているのが今の状況でございます。
  106. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 藤田経済協力局長にもう一遍お伺いしますけれども、今のお話を聞いておりますと、何かそういうようなレビューをしたいというような申し出があった、だけれども、一体どこから来たのかということがどうも明確でありません。これは、向こうの政府というのはそういう窓口がまだできておらないんでしょうか、そこら辺、ちょっと教えてください。
  107. 藤田公郎

    藤田(公)政府委員 マルコス大統領の時代には、フィリピン政府では国家経済開発庁、NEDAと申しますが、国家経済開発庁が経済協力面についての窓口ということで、すべての案件はNEDAから当方に来、我が方もNEDAに申し入れるということになっておりました。新政府のもとでもNEDAが存続しておりますし、新しい大臣が御就任になりました。他方、大蔵省も本件にかかわっておりまして、私どもも、前の政権と同じ構成で国家経済開発庁というのが集中して窓口になるのですかということは確認をいたしまして、先方もそうだと言ってはいるんでございますけれども、まだ新政府成立間もないせいでございましょうか、必ずしもそこのところが前政府のようにまだ確立し切ってないという状況にあるように感ぜられます。
  108. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 もう一遍聞きますけれども、そうすると今のような、向こうからレビューをしたいということは一体どこから言ってきたのでしょうか。大統領でしょうか、今のNEDAでしょうか、それとも大蔵大臣の方から言ってきたのですか。
  109. 藤田公郎

    藤田(公)政府委員 私どもがフィリピンに参りまして、協議チームということで各省で先方に参りましたときには、NEDAの方は全部結構である、十一プロジェクトそのまま遂行したいということを言っておりまして、大蔵省の方は、今レビュー中で二、三はちょっと後回しにするかもしれない、こういう話でございました。  したがいまして、私どもも、フィリピンの中で、まだ就任といいますか発生間もない政府でございますから、いろいろと検討しておられるんだろうということで、その検討を待つという状況でございました。その後、大蔵省、NEDAが協議した結果として、今私が申し上げましたようなことをNEDA及び大蔵省の双方から漏らしてきておる、こういう状況でございます。
  110. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 この問題、今の政権の状態というものを占う一つの問題でもありますので、もうちょっといろいろ詳しく聞きたいのですが、時間がなくなりますから……。  もう一遍聞きます。その場合に、二つとか四つとかいう、これは日比友好道路の問題それから通信網の整備の問題、あるいはこれは荷役設備というのでしょうか、あるいは空港整備の問題とかというふうにいろいろ挙げられておりますけれども、どのように日本政府には伝わってきているのでしょうか。
  111. 藤田公郎

    藤田(公)政府委員 委員も御承知のとおり、一応十一プロジェクトにつきましては政府間で協定ができております。その間、先方が再検討すをということを決定しまして、いろいろお話をしまして協議ができました場合には、また新しい両国間の合意みたいなものになるんだと思われますけれども、現在まだその過程であり、かつ、先方の御説明を必ずしもはっきりと伺い終わった状況ではございません。現在までのところ、今、委員のお挙げになりましたようなプロジェクトがいろいろ挙げられているのは事実でございますけれども、先ほど申し上げましたように、緊急度ということから後回しにしたいプロジェクトが二、三あるということは申しておりますけれども、いろいろと挙げられたものがどのような理由で、先方が今後どういう計画を持っているのかというのは、まだはっきり承知してないというのが現在のところでございます。
  112. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 大臣、今のようなお話なんですが、例えば向こうからそういうふうにレビューをしたい、そして交換公文で決めたことの幾つかは白紙にしておきたいという話があった場合に、円借款の締結は不可能になってくるという事態になるのでしょうか。それとも、そういうものは構わない、分離して、それぞれの今まで決めたプロジェクトずつにやるのでしょうか。ここら辺はどういうふうなお考えでございますか。
  113. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 手続的なことですから後から局長から答弁いたさせますが、一応政府間では交換公文で署名をしておるわけですね。交換公文で署名しているわけですが、相手の政権が変わったわけですから、相手の政府から新しい要望が出てくることになれば、その希望を踏まえてこちら側としても対応していく。しかし、それには十分相談をしなければならぬと思っておりますから、時間はかかるのではないだろうか、こういうふうに思います。  これを分けてやれるかどうかについては局長の方から答弁いたさせますが、可能性としてはあるんじゃないだろうか、こういうふうに思います。
  114. 藤田公郎

    藤田(公)政府委員 今、大臣から御答弁申し上げましたように、交換公文で十一合意をしておりますけれども、時間の後先ということでそれを分けて、合意したものについてまず貸付契約を結ぶという例は過去にもございましたし、実際には可能であると考えます。
  115. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 この問題はもうちょっと時間があればお聞きしたいんですが、これはまた別の機会に……。  時間が少なくなりましたので、最後にリビアについて外務大臣の御所見をいただきたいと思います。  今さっきからいろいろお話が出ておりますから重複は避けますけれども、現在の状態で、今後我が国政府リビアとの関係はどのような姿勢、対策をもって臨まれますか。まず、それを聞かせてください。
  116. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 我が国は、現在もリビアとの間には通常の外交関係を有しておりますし、今後ともリビアとの間で適正な関係を維持していきたいと思います。  なお、我が国リビア間の経済関係につきましては、貿易額も非常に少ないわけでございます。現在のところ極めて限定されたものとなっておる、こういうふうに聞いておりますし、また今リビアもああしたアメリカ爆撃があった後で、いろいろと邦人も相当居住しておりますが、邦人の間でも多少の動揺もあるようでございますし、そうした状況等も十分把握して邦人の安全等については万全を期していかなければならない、こういうふうに考えております。
  117. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 両国関係を適正なものにしていきたいとおっしゃいました。なかなかデリケートで、また、なかなか意味深長だと思いますが、お聞かせください。EC外相会議は、リビアの外交官の数であるとかその活動を最小限に制限するという決定をしたと聞いております。あるいは、リビア人の入国ビザの制限も行われる。それからまた、同じころに非同盟の代表がカダフィに会っております。アメリカのこのたびの爆撃というのは暴挙だと抗議しながら、これはインド外相が代表団長だったと言いますけれども、むしろカダフィの立場を守るといいますか擁護するといいますか、そういう姿勢を打ち出している。日本はどちらをとるのでしょうか、あるいはどちらに比重が置かれる外交政策をおとりになるのでしょうか。
  118. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これは、それぞれの国にそれぞれのやり方があると思います、フランスに行って、私、ミッテラン大統領シラク首相に会ったときにも彼らは口をきわめて、フランスフランスの独自の外交政策によってリビア問題に対応しているということを述べておりまして、したがって、アメリカ爆撃機が領空を通過することはフランスの外交という立場から拒否した、しかし、テロに対しては我々としては断固として闘わなければならない、こういうことも言っておりました。同時にまた、国連の安保理事会では、フランスアメリカと同じ立場をとっておるわけであります。同時にまた、ECという枠内では、テロリビアによって行われたということをはっきり言っておりまして、フランスも同様ですが、リビアの外交官に対して制限をいたしておる、こういうことでございます。またECの中でも、EC全体としては同じ枠組みでやっておりますが、イギリスフランスではそれぞれ立場も違っておるわけでございますし、また第三世界もそれなりの対応をいたしております。  日本日本でやはり独自の対応があって当然のことであろう、こういうふうに私は思いますし、日本は先ほどから当委員会で申し上げていますような、私が談話で声明したような基本的な立場でこのリビア問題に今日まで対処してきておりますし、この基本方針は今変える必要はない、こういうふうに思っておるわけであります。
  119. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 これで終わりますが、貿易量は往復四億ドルくらいでございますから確かに少ない。しかし、事はやはりリビア日本との関係、これは日本の外交姿勢、こういうものに関連してくると思います。外務大臣は、一言でお答えいただきたいのですが、今もちょっとお触れになりましたけれども、リビアという国はテロリズムの根拠地であり、テロリストの訓練所という認識をお持ちですか、それともそれについてまだクエスチョンマークですか、今調査中ですか、そこら辺はどういうふうな御判断に立っておられますか。
  120. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 日本リビアとの間では、いわば友好的な外交関係を持っております。去年もリビア外務大臣日本を訪問いたしまして、私も直接会談をし食事もともにいたしまして、二国間の問題、国際情勢等についても忌憚のない意見の交換もいたしました。リビア自体も日本に対して何らの敵意も持ってない、こういう状況でございます。  しかし、そういう中でいろいろと世界事件が起こっておる。それに対してアメリカははっきりした証拠を持って、我々にもこの証拠によってリビアを攻撃するんだということを述べまして、事実爆撃を行ったわけでございますし、またEC諸国テロを行った国として、リビアを具体的に挙げておるということでございます。日本としてはそういう中にあって、直接日本自体が判断をする立場にないわけでございます。したがって、今度のアメリカ爆撃等につきましても、法的に判断する立場にないということを申し上げる以外にないわけでございますし、私は日本として申し上げられるのは、先ほどから申し上げておる日本立場を繰り返し述べる以外には、日本としてのあり方というものはほかにはない、こういうふうに存じておるわけであります。
  121. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 大臣の非常に苦衷に満ちた発言もよくわかりますので、これ以上深追いはしないでおきたいと思いますが、やはりこういうことははっきりしないと、私は日本の外交というもののスタンス、姿勢が問われると思いますので、ひとつまたの機会に議論をさせていただきたいと思います。ありがとうございました。
  122. 北川石松

    北川委員長 次に、田中美智子君。
  123. 田中美智子

    田中(美)委員 アメリカリビア爆撃についてですけれども、五日、ベルリンのディスコが爆弾テロに遭った、この報復なのかそれとも制裁なのか、自衛権なのかそれとも侵略なのか、いろいろな意見があると思うのですが、アメリカ自衛権である、こう言っているのですが、自衛権ならばこれは許されると安倍外相は思っていらっしゃるのでしょうか。
  124. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 アメリカ自衛権の発動だ、こういうふうに言っておるということであります。
  125. 田中美智子

    田中(美)委員 あなたは、制裁や報復や侵略ならばいけないけれども、自衛権ならばいいとか悪いとか、どう思われるのですか。
  126. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 日本立場として、私はいいとも悪いとも言ってない。米国としては、今回の攻撃をリビアテロに対する自衛のための措置である、こういうふうに説明しているわけですが、これについては米国としての理由があるのであろう、しかし、詳細については日本自身も承知しておらないので、事態推移を重大な関心を持って見守っておるというのが私の談話でございまして、そのとおりの解釈でひとつ御理解をいただきたいと思います。
  127. 田中美智子

    田中(美)委員 御理解はできませんけれども、あなたのおっしゃることはお聞きいたしました。  それでは、昨年、八五年の十月に、イスラエルの空軍がチュニジアの首都のチュニスにありますPLOの本部を攻撃したという事件がありました。このとき病院など攻撃しまして、一般の方たちがたくさん死んだというようなことがあったわけです。このとき、外務省としてはどういう態度をとられたんでしょうか。
  128. 三宅和助

    ○三宅政府委員 あのときは外務省から、これは正確なワーティングを今持っておりませんけれども、強く非難いたしました。
  129. 田中美智子

    田中(美)委員 どういう理由で非難したのですか。
  130. 三宅和助

    ○三宅政府委員 これは他国の主権の侵害であるという観点から、主権の侵害としてこういう行為が遺憾であるということで非難声明を出しております。
  131. 田中美智子

    田中(美)委員 どういう理由で主権が侵されたと言うんですか。
  132. 三宅和助

    ○三宅政府委員 その当時、チュニジアの領土を侵しまして、イスラエルの飛行機がチュニジアにおけるPLOの本部を爆撃したということでございます。したがいまして、チュニジアの主権を侵したということで非難したわけでございます。
  133. 田中美智子

    田中(美)委員 これ以上伺ってもあれですけれども、チュニジアの主権を侵したからいけないんだ、今度はやはりリビアの主権を侵したということにはならないのでしょうか。  それでお聞きしたいのですけれども、そのときの外務省の新聞などでの発表で見ますと、理由があってのことだろうが、事情もよくわからないけれども日本政府としては、他国に侵入して爆撃し死傷者を出すという行為は遺憾であり、非難するというふうに言っているのですね。そうすると、リビアとはどう違うのでしょうか。アメリカリビアとの関係とどこが違って、前はそういう態度をとられたんですけれども、今度も非常に似ているというふうに思うのですね。しかし、今度はどうしてなんでしょうか。
  134. 小和田恒

    小和田政府委員 今御指摘になりました昨年の事件の事実関係については、私詳細を承知しておりませんので、それとの比較ということでなしに、今度の事件に関して日本政府がとっております立場について、法的な面だけについてちょっと御説明をしたいと思います。  先ほど大臣からお答えしましたように、米国は、これを自衛権行使であるという立場説明しておるわけでございます。我が方としては、先ほど大臣がお答えになりましたように、アメリカがそういうことを言うのにはそれなりの理由があるのだろうというふうに思うけれども、しかし我が国当事者でもないし、またこの事件をめぐっての具体的な事実関係の詳細を知っているわけではないから、したがって我が国としての確定的な法的判断は差し控える、あるいはそういうことをやる立場にはない、こういうことを言っているわけでございます。  そこで、先ほども……
  135. 田中美智子

    田中(美)委員 聞いていないことをお答えにならないでください。なぜチュニジアの場合とリビアの場合が違うのかと言うのに対して、今事情を知っていないので比較することができませんというふうなお答えですので、もうそれ以上のことは結構です。御存じないならば、お答えになれないというふうに思うのですね。それくらいのことは、どうしてどこが違うのか、あの場合はこうであったけれどもあれとはどう違うのかということを聞いているので、私は時間がありませんので、それでないことはお答えいただかなくて結構です。安倍外相にどこが違うのか、お伺いしたいと思います。
  136. 小和田恒

    小和田政府委員 恐縮でございますが、私が今申し上げておりますのは、そのことにこれから説明として入っていくので、その前段としてリビアについての我が国立場について御説明をしたわけです。  そこで、リビア事件のときの我が国立場というのは、先ほども申し上げましたような状況のもとで、一般的に申しますと、国連憲章上の自衛権行使が許される条件というものを考えてみますと、国際テロが続発をしておってそういう状況が一般的に存在しておる、そういう中におきまして、既に起こった一連テロ行為リビアが関与しておるという事実があったのかどうか、あるいはさらにこのリビアが近い将来において、どういうテロ行為を具体的に計画しておったかというようなことについての事実関係が明らかにならないと、今申し上げたような一般的な自衛権要件に合致する行動であったのかどうかということが判断ができない。しかし、仮にアメリカが言っているようなことが事実であって、そういう状況自衛権行使を正当化するような状況というものがあったとすれば、これは自衛権として許される、こういうことになるわけでございます。その点についての判断をするだけの材料日本政府は持っていない、こういうことを申し上げたわけでございます。  昨年の事件につきましては、そういう意味で、イスラエル自身がこれは自衛権行使であるということを言っているわけでもございませんし、自衛権行使であるという形でその要件についての事実関係説明しているわけでもないのであって、したがって、報復でありますか、その他の理由でありますか、それは別といたしまして、我が国として、これが国際法上合法化され得るような行為であるというふうには判断していないということで、政府立場を申し上げたわけでございます。
  137. 田中美智子

    田中(美)委員 非常によくわかりました。それは、他国を侵略しても自衛権だというふうに言えば許されるし、そして報復だと言えば許されない。このイスラエルの場合には、国連の安保理でもこれに対しては反対はゼロである、すべてが非難していたわけです。アメリカだけは、これは棄権しているわけです。ですから、アメリカ態度というのは、明らかに報復であろうとも自衛権であろうとも、テロが発生した場合には、そこに軍隊を持っていって戦争行為をしてもいいのだという考え方に立っているというふうに私は思うのですが、安倍外相どうでしょうか。アメリカに行ってらして、お話も多少聞いていらっしゃるようですけれども、それはどうでしょうか。
  138. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 アメリカアメリカ立場でこれは自衛権の発動だ、こういうふうに言っておるわけでございます。日本はそういうことを十分に知る立場にないということを申し上げた。ただアメリカ立場については、それはお聞きしました。アメリカ自衛権の発動だ、明らかにこのテロリビアによって行われたものであるから我々はそれに基づいてやったのだということで、国連安保理の議論がどういうふうになっているか、この委員会にずっとおりますからまだ承知しておりませんが、アメリカは恐らく国連憲章に言うところの自衛権の発動を安保理においても主張しておるのではないだろうか、こういうふうに思います。
  139. 田中美智子

    田中(美)委員 一九八六年にレーガン政権は、他国領内にいるテロリストを、正規軍を使って攻撃してもいいという考えを出しているのです。ですから、一貫して、テロがあれば正規軍を出してやっつけるのだ、それが報復であろうとも、制裁であろうとも、侵略であろうとも、自衛権と言おうとも、これはやるということを言っているわけです。ですから、それに対して日本政府が、これは十五日に起きたことですが、今なお白紙状態でいるということは、これは世界の中でこれから日本が国際化とかなんとか言っている中で、日本の外交がいかに主体性がないか、いかにアメリカ配慮しているか。これは各新聞がリビアの問題で、日本外交の姿というものは、日本アメリカにいかに配慮をしながら発言しているかということをほとんどの新聞が書いているのです。これを見ましても、やはりあなたの外交というのは非常に主体性がない。私は、主体性がないという言葉は、単なる言葉でなくて実感として感じているのです。  というのは、いかに女性が今まで主体性がないというふうに言われてきたか。女が自分の頭で自分で物を考えるということは、いろいろな形で社会的にも家庭の中でも、父からも夫からも社会からも抑えられる時代があったわけです。ですから、女は主体性をなくされていたわけなのです。しかし、今は新しい憲法のもとで、御存じのように女の主体性というのは非常に強くなってきたので、主体性という言葉は非常に私は身をもって感じているわけです。しかし、まだ今でも女性の中には多少ですけれども、やはり何かの署名をしてくださいと言っていくと、夫に聞かなければできませんとか、ひどいのになれば子供の運動靴を、お母ちゃん買ってと言ってもお父ちゃんに聞かなければ買えません、こう言っている。こういうふうに、自立ができていないということを女たちは言われたわけですが、日本の外交は非常にそれと似ているというふうに私は感ずるのです。  やはりアメリカに対して非常におどおどして、アメリカの機嫌を損なったら日本の存在がないかのごとく、こうした問題がイスラエルのときだったらばやる、事情がわからないけれどもやる。アメリカの場合だと、これは事情もわからないし、アメリカ自衛権だと言っているのだから、正当かもしれないからということで何も物を言わないでいる。これでは、本当に独立国としての自主的な外交ではない。いつまでもこんな状態をとっていられるのか。今のあなたの談話というものが、一体いつごろまで生きるのですか。
  140. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 婦人の問題と外交をごっちゃにされてもちょっと困るのですけれども、私は、日本のとっておる外交というのは極めて主体性があると思います。特に今度のリビア問題についてもヨーロッパとは違いますし、あるいは第三世界とも違って、日本独自の主体性を発揮した日本の生き方で貫かれておる、そういうふうに思います。それはフランスなんかにいたしましても、フランスは一面においては、アメリカ爆撃機の上空通過は拒否はしたかもしれません。しかし、国連においてはアメリカに同調もしておる、こういうことですし、ミッテランさんと会っていろいろと話をしても、アメリカのやり方については自分はある程度理解はできる、自分はリビアとチャドの問題で、チャドにおけるリビアの飛行場を爆撃する指令を出した、大統領としてそういうことをやったのだ、そういうことも言っておりました。  それぞれの国のそれぞれの生き方というのがあるわけです。ですから、日本日本なりの生き方をしておるわけでございます。ですから、日本は明らかに日本独自の主体性に基づいた判断によって行動しているということは、世界がはっきり認めるところであろう、こういうふうに思います。
  141. 田中美智子

    田中(美)委員 今の話を聞いていても、やはり主体性のなさを暴露しているというふうに思うのですね。安倍さん、そうでしょう。私は、支持せよとか支持するなどか言っているのではないのです。日本態度がわからないというのです。フランスは、フランス態度がいいか悪いかは私は今コメントしていません。しかし、フランスはやはりはっきり物を言っているのです。それからサッチャーさんは、はっきり物を言って支持しているのですね。けれども安倍さんの言葉は、理解はするけれどもと言うから、アメリカのスピークス副報道官、この方にやはり日本は支持だというふうに初め思われているのですね。そうしたら、いやそうじゃないのだ、それでは支持しないのかというと、いやそうでもないのだ、それで結局白紙なんだということは、これははっきり物を言っていないのですよ。  今のように、時代がぐるぐる変わって大変な状態になっているときに、やはりはっきりきちっと物を言っていくということが、私は主体性だと思うのです。間違ったら間違ったのだ、いや調査中なら調査中だと。それがわけのわからぬような、禅問答のようなことをやっているのが日本の特徴であるならば、それは主体性がないと言うより仕方がないと思います。今度はまたテロをやる、イギリスの基地から出たというのでイギリス人がテロに遭う、こんなことが次々とやられていったらこれは大変なことですね。こういうテロをなくすには、日本政府としてどうしたらいいですか。
  142. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 主体性がないと言いますけれども、主体性があるんですよ、私が談話で言っていることは日本の主体性なんですから。はっきりしないということが何か主体性がないと言われますけれども、しかし、日本立場といいますか、日本の外交を守っていくためには、あるいは日本国益を守るためにはそういう立場を貫かなければならぬ。はっきりすることが、日本が危殆に瀕する場合もあるわけですから、それはそれなりに、これまでの日本の平和外交に基づいた主体性を貫いたということなんです。だから、はっきりすることが外交だと言われることは、外交を余り理解されていない言葉じゃないか、こういうふうに思いますね。  それから国際テロについては、これは断固として排撃すべきだ、世界じゅうがそう思っていると思いますよ。とにかく無事の市民をやっつける、爆弾を爆発させて、それでもって死傷者が出てくる、こういうことが世界じゅうに起こっておりますから、そういうテロ行為というものは排撃されなければならぬ。それを排撃するための国際的な協調とか連帯というものは、やはり進めなければならない。今度のサミットでも、恐らく国際テロを防圧するための協力関係をいかにつくるかということは議論になる、私はそういうふうに思っております。世界じゅうからテロをなくすれば、いろいろな問題が世界を不安に陥れるような事態がなくなってくるわけですから、そのために日本としても努力はしなければならぬ、こういうふうに思います。
  143. 田中美智子

    田中(美)委員 私は、どういう努力をするのか。テロは絶対に許されないということ、これは同じ意見だと私は思います。ですから、テロをなくすためにはどうしたらいいかということだと思うのですね。アメリカのように、テロをなくすために正規軍を持っていって爆撃して、それも子供や婦人まで殺している、そうすればテロがなくなるのかということを言っているんですね。むしろ、その後またテロが起きているではないか。それは、アメリカテロを誘発したと私は言いませんよ。言いませんけれども、目には目、歯には歯、力には力ということをやっていたら、ますますテロが起きるではないか。だからそうではなくて、テロが起きるような根本的なものを外交の中でなくしていくという努力を、日本政府がきっちりやっていただきたいというふうに思うのです。  ですから、今度のように力に対して力というようなことでは、お互いに殴り合って、それがちょっと間違えば第三次世界大戦になるかもしれない。あれは初めリビアの問題のときには、本当に日本国じゅうみんなが冷やっとしたと思うのです。特に日本人が冷やっとしたのは、日本にもアメリカの基地がある。もしアメリカが、そういうテロがあるんだ、このテロをつぶすんだという大義名分でもって日本の基地から出ていったというときには、まるでこの間イギリス人が三人テロでやられたように今度は日本人がどこかでやられる。それはやられている人たちというのは、みんな一般の庶民で何の関係もない人たちですから、これは本当に恐るべきテロであり、またそのテロを誘発することだというふうに思うのです。  それで、時間になりましたので、もし日本の基地からアメリカがそのようなことをするということがあるときに、日本政府はどうするのでしょうか、その点をきちっとお答えいただきたい。日本人は今非常に心配しています。
  144. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 我が国としましても、これは我が国だけでテロが防圧できるわけがないので、やはり国際的な場、国連あるいはサミットその他いろいろの国際的な場で、こういう問題についてお互いに話し合って真剣に結論を求めていく、そしてテロを排除していくという努力をしていかなければならぬ。これは我が国だけでできるものじゃない、しかし、我が国としてもその先頭に立ってそういう努力は惜しまないでやらなければならぬ、こういうふうに思っております。  最後に何か言われましたけれども、我が国の基地から出るとか出ないとか、そんなことは何も想像もしておりませんし、全くの仮定の質問ですから、これに対するお答えをする立場にはありません。
  145. 田中美智子

    田中(美)委員 日本の国民はあの問題から、やはりイギリス人が殺されたということは非常にショックなんですね。日本にもアメリカの基地があるということで。もちろん、今すぐそれでお答えになれるとは思っておりませんけれども、国民がそれを心配しているということです。ですから、いつまでも禅問答のような、理解はするけれども支持もしないし反対もしないというような白紙状態が主体的だということを言っていられるときではない。お言葉を返すようですが、外交がわからないとおっしゃいましたけれども、安倍さんの方が余りにも偏見的な立場に立っていらっしゃるので、外交を誤られるのじゃないか。私が多少外交がわからないのは、それほど大きな日本の問題になりませんけれども、あなたが間違った外交の道を歩むということは日本が大変危険な状態にいくわけですので、そうした間違った立場に立たないで、やはり正義立場でもって正しい理論でもって見ていく、たとえそれがアメリカであろうとソ連であろうと一貫した態度でいくということ、これが日本外務大臣立場だと思いますので、その点を強く御忠告申し上げて、私の質問を終わります。
  146. 北川石松

    北川委員長 次回は、来る二十五日金曜日午前九時三十分理事会、午前九時五十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後七時六分散会