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1986-04-11 第104回国会 衆議院 外務委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十一年四月十一日(金曜日)     午前十時二分開議 出席委員   委員長 北川 石松君    理事 奥田 敬和君 理事 田中 秀征君    理事 村田敬次郎君 理事 河上 民雄君    理事 玉城 栄一君 理事 渡辺  朗君       愛野興一郎君    鍵田忠三郎君       鯨岡 兵輔君    佐藤 一郎君       竹内 黎一君    中山 正暉君       仲村 正治君    山下 元利君       岡田 春夫君    小林  進君       高沢 寅男君    藤田 高敏君       渡部 一郎君    岡崎万寿秀君       田中美智子君  出席国務大臣         外 務 大 臣 安倍晋太郎君  出席政府委員         外務大臣官房外         務報道官    波多野敬雄君         外務大臣官房審         議官      福田  博君         外務大臣官房審         議官      斉藤 邦彦君         外務大臣官房領         事移住部長   妹尾 正毅君         外務省北米局長 藤井 宏昭君         外務省欧亜局長 西山 健彦君         外務省経済協力         局長      藤田 公郎君  委員外出席者         防衛施設庁施設         部施設取得第一         課長      加賀山一郎君         防衛施設庁施設         部連絡調整官  森山 浩二君         沖縄開発庁総務         局企画課長   櫻井  溥君         外務大臣官房外         務参事官    赤尾 信敏君         大蔵省主税局国         際租税課長   杉崎 重光君         大蔵省理財局国         有財産第二課特         別財産室長   柿沼 敏夫君         国税庁長官官房         企画官     藤井 保憲君         通商産業省貿易         局輸出課長   白川  進君         外務委員会調査         室長      門田 省三君     ————————————— 四月十一日  非核三原則完全実施等に関する請願(三浦久君  紹介)(第三〇四二号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  所得に対する租税に関する二重課税回避のた  めの日本国政府ソヴィエト社会主義共和国連  邦政府との間の条約締結について承認を求め  るの件(条約第四号)      ————◇—————
  2. 北川石松

    北川委員長 これより会議を開きます。  所得に対する租税に関する二重課税回避のための日本国政府ソヴィエト社会主義共和国連邦政府との間の条約締結について承認を求めるの件を議題といたします。  これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。高沢寅男君。
  3. 高沢寅男

    高沢委員 初めに、租税条約前提として、全体の日ソ関係ということで大臣お尋ねをいたしたいと思います。  ことしの一月、シェワルナゼ外相が来日いたしまして、そして外務大臣会談をされて、会談成果は大変あったというふうに両方で評価をされまして、今度はその成果を踏まえて安倍外務大臣ソ連訪問して、そしてまた外相会談をやられるというふうな順番になるわけでありますが、外務大臣ソ連訪問されるのはいつごろという、そういう御予定はどうなっているのか、そのことでソ連側と打ち合わせを既にされているのかどうか、この辺の関係はいかがでしょうか。
  4. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 ことし一月に行われました日ソ外相会談の際の合意に基づきまして、今度は私がモスクワ訪問をいたしまして引き続いて定期外相会談を行う、こういうことになっておりまして、私自身も、ぜひとも一月に引き続きまして領土問題を含めた平和条約交渉モスクワで継続してまいりたい、こういうふうに思っておりますし、同時にまた、北方領土への墓参の問題であるとかさらに文化協定締結の問題であるとか、その他経済あるいはまた国際情勢全般についての話し合いをしてまいりたい、こういうふうに思っておりまして、その時期については双方都合のいいときということで今協議をいたしております。実は今、具体的にその時期を詰めようと思いましてソ連側の意向も聞きながら、日本側の考えられる都合のいい時期を提案をいたしておるわけでありまして、これから実質的な協議に入っていくことになっております。
  5. 高沢寅男

    高沢委員 その時期について、相手側との協議も当然ありましょうが、しかしまた、今度はこちら側とすれば、閣内において中曽根総理大臣外務大臣の間で、いつごろの時期がいいかというふうなことの御協議は恐らくされているだろうと思いますし、この日ソ問題が動き始めた昨年には、中曽根総理がおれも行くんだということまで言われた経緯もありますが、その辺の関連を含めて、総理との間でそういうソ連訪問、その時期等々についてどういう御相談をされているか、お尋ねしたいと思います。
  6. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 この問題につきましては中曽根総理との間でも相談をいたしておりまして、私が行くということについてはもちろん総理の異存はありません。これは日ソ約束済みでありますし、それは大変結構だということでございます。時期の点については、日ソ間で今話し合いをしておりますということを報告しておるわけでございまして、あくまでも私の訪ソということを前提、そしてまた、これももちろん総理の了解も得まして話し合いを行っておる、こういう段階であります。
  7. 高沢寅男

    高沢委員 その時期との関係でどうしてもここでお尋ねしたいことは、六月には参議院の選挙がある、これは一つの確定的な事実でありますが、それと同時に衆議院の解散・総選挙もということが盛んに今話題になっておりますし、総理なりあるいは与党の幹事長なりあるいはまた官房長官なり、随分いろいろなその点についての発言がなされて、我々の気持ちとしては、我々は反対ではあるが、どうも来るんじゃないかな、こんなような気持ちもみんな持っておるわけでありますが、それとの関連において、例えば五月の下旬ごろに行かれるとかいうようなことが、外務大臣のお立場として、また、外務大臣のみならず政治家安倍晋太郎さんのお立場として、その辺の御判断をどういうふうにされているか、お尋ねしたいと思います。
  8. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 同時選挙とか総選挙とか、そういうことを考えますと日程一つなかなか組めないということでございますから、私自身は、そういう問題はそういう問題でこれからどうなるかわからぬことでありますが、しかし、少なくとも日ソ間で取り決めた約束だけは果たしたいということで、そうした政治問題は政治問題、別にそこに余り神経を使わないで、実は話し合いを進めておるということであります。
  9. 高沢寅男

    高沢委員 外務大臣が非常に重要な任務を持ってソ連訪問されている、仮にその留守中に解散になってしまったとかいうふうなことは、当然あるべきではないわけでありまして、そういう点においては解散の言うならば大義名分も、あるいはそういうふうな条件も今はない、むしろそうした重要な外交課題を初め国政の課題を最優先しなければならぬ、こういう段階ではないかと思いますが、この点は御所見、いかがですか。
  10. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 中曽根総理解散は考えていない、こういうことを言っておられますし、我々閣僚も、総理言葉でありますからそれを踏まえて、今まさにおっしゃるように重要案件国会に山積しておりますし、それからサミットもありますし、また、先ほどから申し上げました日ソの問題もありますし、そういう国の大きな課題一路邁進をしていかなければならぬ、そういう時期であろうと思っております。
  11. 高沢寅男

    高沢委員 その訪ソを今度された場合、先ほど外務大臣から、文化協定の問題とかあるいは墓参問題等々のそういう課題もあるというお話がありましたが、特にこの四月は、もう間もなく日ソの大きな経済合同委員会が始まるというふうな状況でございますけれども、こうした経済課題、また、中でも例えばサハリン石油ガス引き取り問題等、いろいろな課題がありますが、これらの課題も行かれれば当然協議の対象になる、こう思うのですけれども、その取り組みはどういう気持ちで行かれるか、お尋ねしたいと思います。
  12. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これは一月の日ソ外相会談のとき、両国間の、もちろん領土問題が中心でありますが、その他の課題経済文化日ソ間のいろいろな問題を総合して話し合っておるわけでございますし、これでもって例えば科学技術委員会等は再開するということに合意もいたしましたし、あるいはまた北方領土への墓参の問題についても、シェワルナゼ外相は好意を持ってこれを検討するという回答も得ておるわけであります。さらに文化協定につきましても、大体話が詰まってきておるという状況でございます。サハリンの問題についても、実は意見の交換もいたしております。こういう問題も、引き続いて日ソ間で話し合う必要があるのじゃないかと考えて、当然話し合いの中には出てくるというふうに考えております。
  13. 高沢寅男

    高沢委員 先般、シェワルナゼ外務大臣が見えたときに、租税条約サインが行われた。今度また安倍大臣が行かれたときに、例えば文化協定サインとか何かそんなようなスケジュールになるのかどうか、その辺はいかがですか。
  14. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 租税協定につきましてこの国会で御審議をお願いしているわけですが、日ソ間でいろいろと論議をいたしまして、シェワルナゼさんがおいでになったときに調印をしたわけでございます。文化協定も、実は一月に間に合わせようということで随分努力いたしましたけれども両国間の話し合い、議が合わないで結局今日に至っておりますが、大体の目鼻もついてまいっておるという状況になってきております。ですから、これは何とか私が行ったときに調印をしたいものだ、こういうふうな期待を持っております。しかし問題は残ってはおるわけでありますけれども、そういう期待を持ってこれから最後詰めに入るところであります。
  15. 高沢寅男

    高沢委員 漁業の問題ですが、大変大詰め段階に来ていて、羽田農水大臣モスクワへ行かれて今最後詰め段階に入っておると承知しておりますが、けさの新聞報道では、ある新聞などは事実上の決裂かというふうな言い方まで書いております。この辺の状況判断向こうで進行している問題ではありますが、今外務省としてぎりぎりどういう認識判断をされているか、この機会にお尋ねしたいと思います。
  16. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 今、日ソ漁業交渉羽田農水大臣が行きまして最後努力を行っております。その状況につきましては、刻一刻外務省にも情報が入ってきておるわけでございますが、今のところはっきりした見通しを申し上げられる段階になっておりません。最後のぎりぎりの交渉というふうに考えておりますし、羽田農水大臣も精魂振り絞って頑張っておるようであります。  これは外務省も全面的な協力をいたしまして、何としても日ソ関係が少なくとも改善する方向に向いてきている、シェワルナゼさんも日本訪問されたということもあって、これに弾みをつけていくためにはやはり漁業交渉が決着する、両国合意するというのは非常に大事だという意味でも、私が訪ソするにしてもやはりこの漁業問題というのが決着することが非常に重要な意味を持つということで、私も全力を挙げて努力をいたしました。その結果として羽田農水大臣訪ソされるということになって、向こうもこれを受け入れたわけでありますから、恐らくソ連側としても、日本責任者を受け入れた以上は何とかこれは決着したいという気持ちがある、こういうふうに私は思っております。  しかし、まだまだ最後段階で、まさに今しのぎを削っておるということで楽観は禁物でございますが、最後の望みを失わないで羽田農水大臣も頑張っておると思いますし、我々としても、何とかこれが両国の譲歩といいますか妥協でもって解決を見ることを、心から期待をいたしておるわけであります。
  17. 高沢寅男

    高沢委員 ぜひ、そういうまとめるための御努力はお願いしたいと思います。  この日ソ漁業関係というのは、非常な歴史があってここまで来ておるということでありますが、同時に国際海洋法というものができた、そういう時代に入ってきております。そういう時代の中で、例えば日本アメリカ、カナダの関係でも、刻々この漁業関係は難しい状態になっておるという中で、日ソもあるいは日米加もその他の世界各国における日本漁業との関係を、国際海洋法条約との関係で一度根本的に洗い直すというか、根本的にあり方を考えるというふうなことがもう必要になってきている段階じゃないのか、これは外務省当局もあるいは当外務委員会としても、そういうレベルの勉強を大いにやる必要があるのじゃないか、こんなふうに考えますが、大臣の御所見はいかがでしょうか。
  18. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これは農水省としましても、真剣に取り組んでおられると思います。しかし、世界的な一つの新しい海洋秩序との関係もあるわけで、特に外交交渉によって問題が決まっていくという状況が非常に強くなってきておりますので、我々も非常に関心を持ってこれは取り組んでいかなければならない。まさに新海洋法時代を迎えまして、今までの日本アメリカ関係を見ましても大変厳しくなっておりますし、特に日ソ関係ソ連のいわゆる新海洋法に対する非常に厳しい姿勢が打ち出された結果として、大変日ソ漁業関係が厳しくなってきている。  私も農林大臣をやった経験がありますが、日ソ漁業関係はこれまで日ソの政治問題に左右されないで、毎年毎年厳しい交渉ではあったとしても、実務的には非常に円満に解決してきたわけですが、ことしに限ってこのような状況になったという背景には、まさに新海洋法に伴うソ連の新しい取り組み方があるようにも思うわけでございますし、日本としてもそうした環境を十分検討しながら、日本日本なりに漁業国家としてのこれからの世界的な体制を、漁業政策をいろいろな面で考えていかなければならない。  これは日韓についてもそうです。日中についても、こちらは今二百海里はないわけでございますが、そういう問題がいつまでも続くかどうかということにもなるわけでございますし、その他の太平洋諸国家との間の漁業問題をめぐってのいろいろな交渉等も、これから出てくるのじゃないだろうかと思いますし、まさにおっしゃるように、全体的にこれから私としても関心を持って取り組んでまいらなければならない非常に重要な課題であろう、こういうふうに認識をしております。
  19. 高沢寅男

    高沢委員 もう一つ大臣訪ソされた場合必ず出てくるのは、やはり何といっても領土問題だと思いますが、この領土の問題については、先般シェワルナゼ外務大臣が来日されたとき、ソ連側が、平和条約交渉日本側領土問題を提起することを禁止する権利ソ連側にはない、こういうふうなことを表明したということで、したがって平和条約交渉の中で日本側領土問題をどんどん提起する、こういう意味で今までとは違った一つの前進した段階に入った、こういう評価をされているわけですが、これはソ連側日ソの間には領土問題があるということを認めたというふうに受け取っていいんでしょうか。いかがでしょう。
  20. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 この日ソ外相会談合意につきましては、共同コミュニケということで発表しております。これは、日ソが完全に合意したということで発表しておることは御承知のとおりで、領土問題に関する件についてはこういうふうになっております。「両大臣は、一九七三年十月十日付けの日ソ共同声明において確定した合意に基づいて、日ソ平和条約内容となり得べき諸問題を含め、同条約締結に関する交渉を行った。双方は、モスクワにおいて行われる次回協議の際にこれを継続する旨合意した。」こういうことになっておりまして、この「日ソ平和条約内容となり得べき諸問題を含め、同条約締結に関する交渉を行った。」というのが一月の日ソ外相会談でございますが、その外相会談において、我々は領土問題について三時間を費やしてまさに論議をしたわけでございます。  その際、今おっしゃるようにこの領土問題について、日本側がこれを主張することを我々としては阻む権利はないのだということで、彼らもテーブルに着いて論争することは認めたわけで、これは行ったということをコミュニケではっきり打ち出しておるわけでございますし、今後も引き続いてやるということもこの共同声明合意したわけでございます。しかし、同時にソ連としては、領土問題に対するソ連側態度は依然としてこれまでと変わらないという強い姿勢を打ち出したことは事実でございます。  ですから、いずれにしても、これまでのように領土問題はもう解決済みであってテーブルに着くことすらがえんじなかったソ連が、今回の交渉をもって、少なくとも両国間で基本的な対立はあったとしてもとにかくテーブルに着いて話し合う、論議をするという点についてはソ連側もこれを認めて、そして共同声明にその旨を盛り込んだということになっておるわけで、そういう立場からようやく領土問題でこれから堂々と話し合う、そういう平和条約交渉をめぐっての一つの舞台を、場をつくることができた、私はこういうふうに思っております。  せっかくこれは東京でやったわけですから、ぜひともモスクワで引き続いてこれはやりたい、こういう熱意に燃えておるわけでございます。
  21. 高沢寅男

    高沢委員 平和条約交渉の中で、日本側領土問題を提起することをソ連側も認めるというふうになったということは、私も確かに大きな前進だと思いますが、ただそうはなったけれどもソ連側としてはやはり領土問題は日本との関係では解決済みなのだ、こういう立場は依然として変わっていないということではないかと思います。  これはもう外務大臣も当然御承知かと思いますが、そういうことを非常にはっきり出したのが三月十三日の朝日新聞の記事であります。プラウダ編集長アファナシエフ氏が朝日新聞白井特派員とのインタビューの中で、しかもこれはソ連共産党大会が済んだ後の、ソ連対外政策というものが大会で決まった、それを踏まえての非常に重要なインタビューであった、こう思うのですが、その中ではっきり日本側との間における領土問題というのはないのだ、ソ連領土問題で妥協することはないのだ、しかも歯舞色丹の二島返還もそういうことはないのだということを言っている、こういう新聞報道であるわけですが、一つは、このことの事実関係確認外務省としてどうされているのか。それからまた、そういうソ連側態度、これはプラウダ編集長ではありますが、あの国は当然政府と一体の関係ですから、こういうソ連側態度というものに対して、こちらの外務省としてはどういう見解評価を持たれているか、それをお尋ねしたいと思います。
  22. 西山健彦

    西山政府委員 ただいま御指摘がございましたように、三月十三日、プラウダ編集長でありますアファナシエフ氏が先ほど言及されましたような発言をしたことは、私ども報道によってこれを承知しております。しかし、相手プラウダとはいえ新聞編集長でございますので、政府としてこれについて正式にコメントをするという立場ではございません。  しかしながら、先ほど大臣からお答え申し上げましたように、一月のシェワルナゼ外務大臣の訪日に際しまして、実に三時間にもわたってこの領土問題についてのやりとりがございまして、その過程においてソ連側は、先ほども既に大臣から申し上げましたとおり、日本に返還すべき領土というものはないのである、そういう立場を非常にはっきりさせております。したがいまして、ソ連側立場は明らかである、こういうふうに認識いたしております。  我が方のこれに対します立場は、これももう既に大臣からお答え申し上げたとおりでございますけれども、いかなる点から見てもまことに根拠のない態度でございまして、我々としては強くソ連外務大臣自身に対して反駁し、十二分にこれらの態度を明らかにしている次第でございます。
  23. 高沢寅男

    高沢委員 ソ連側は、日本との関係領土問題は解決済み、こう言うわけですが、その向こうの言う解決済みという言葉は一体どういうことを踏まえて言っているのか、そこのところを日本側としてソ連側にちゃんと詰めたことがあるのかどうか。解決済み日本に返す領土はもう何もないのだ、こういう言い方は、例えば歯舞色丹も、択捉、国後も、とにかくそういうものは一切返す余地はないのだ、そういう意味解決済み、こう言っているのか。あるいは、日ソ共同宣言を結んだことはソ連だって当然認めているわけですから、共同宣言では、平和条約を結べば歯舞色丹は返す、こうなっています。そこで、向こうの言う解決済みという意味は、共同宣言に沿って歯舞色丹は返す、しかしもうそれで終わり、それ以上はもうないよ、こういう意味解決済みと言っているのか。  つまり、向こうの言う解決済みという言葉法的立場といいますか、そういうものは一体どっちなんだということをこちらでソ連側にちゃんと詰めて、我々の言う解決済みというのはこういう意味ですということをちゃんと向こうからとってあるのかどうか、それをひとつお尋ねしたいと思います。
  24. 西山健彦

    西山政府委員 この問題につきましては、先般も田邊書記長の方から御質問がございましたし、その後も井上一成議員からお尋ねがあった次第でございます。そのときに私どもとしてお答え申し上げましたのは、そういうふうな形での確認の仕方ということは我々の方としてはしなかった。なぜしなかったかと申しますと、まず第一に、とれは五六年の共同宣言という国際的な取り決めによってはっきりと合意されているそういう事項は、先方が一方的な発言なり一方的な書簡なりによって変えられる性質のものではない。したがいまして、我が方から改めて解決済みというのはどういう意味であるかということを聞くことはそもそもおかしい、こういう認識でございます。したがいまして、あえてどういう意味解決済みと言っているのかということをこちら側の方からわざわざ聞くことはしなかったというのが、第一の理由でございます。  それから第二には、事実上先方態度は既に明らかになっていたということがございます。これは、先ほど大臣並びに私がお答え申し上げたとおりでございまして、先方は何らその根拠ないし解決済みということの中身を明確にすることないままに、解決済みと言っているわけでございまして、その点ははっきりしていたからでございます。
  25. 高沢寅男

    高沢委員 これからそういう交渉をやろうとする相手解決済みと言っている、その解決済みというのは一体どういう意味なんだということを私はむしろ詰めるべきではないかと思いますよ。プラウダ編集長言い方によれば、日本サンフランシスコ条約を結んだじゃないか、だからこれは一切解決済みだ、こういう言い方をしています。しかし、そのサンフランシスコの後で日ソ共同宣言が結ばれている、そしてそこに二島の平和条約との関連が出ておるということですから、ソビエトにあなた方はサンフランシスコ条約の後でこれを結んだということを確認を求めていく。相手は、恐らくそれはノーとは言わぬでしょう、それはそのとおりと言うに決まっている。しかし、それはそのとおりならば、その共同宣言というのは今は一体どうなんだということをむしろ詰めていくのが、領土交渉のあるべきことじゃないですか。  確かに、六〇年のあの安保のときにソ連側は、こうなってくれば日ソ共同宣言ももう効力はないという言い方をした。日本外務省はそれに対して、そういうソ連側見解は認めない、こういうやりとりがあったわけです。しかし、そういうやりとりがあったにせよ、その前提共同宣言はまさに条約と等しい、そういう性格、効力を持っているわけですから、そこのところをしっかりと押さえるということが、この場合まず出発点じゃないですか。  ことしの予算委員会田邊書記長の質問も、そこのところをしっかり押さえて、そしてその上に立って、歯舞色丹、さらには日本立場とすれば択捉、国後もありますが、千島全体は日本が戦争でとった領土ではないという我が方の積み上げの主張というものが当然そこからスタートするじゃないかということで、確認をずっと求めたわけですが、どうも予算委員会外務省の答弁というものは、はっきり煮え切った答弁になっていないと私は思うわけです。  きょうもそのことで私はお尋ねするわけですが、その辺をむしろはっきりと確認させることが大前提だということは一体どう考えますか。この点は、局長もいいですが、大臣の御見解お尋ねしたいと思います。
  26. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 シェワルナゼさんとの領土問題についての論議に当たりましては、実は私から幕末のときの日魯通好条約、さらに明治に入ってからの棒太千島交換条約、それ以降の日ソ共同宣言等歴史を回顧しながら、条約的にあるいはまた歴史的に北方四島が日本国有の領土であるということを、その論拠を示して詳細に説明いたしました。これはあくまでも名実ともに日本国有の領土であるということについて何か議論がありますかと。ですから我々としては、あなた方はあなた方としての論拠があるとしても、少なくともこの問題は話し合って決めなければならない筋合いのものではないかということを主張いたしました。これは時間をかけて詳細に述べたわけでございます。  その間に、もちろん日ソ共同宣言につきましても、当然これは二国間で結んだ国際的な条約である、それによって日ソの国交回復が行われたことは、今日に至るまで日ソ間ではっきり認識していることではないか、こういう約束もきちっと守ってもらわなければならぬ、お互いに守らなければならぬのは当然だ、こういうことを踏まえてちょうちょっとして十分説明いたしたわけでございます。  これに対しまして、ソ連側もいろいろと反駁もしました。北方四島は一番初め発見したのはソ連人だ、ロシア人だという意味の説明もあったように思いますが、我々が十分納得し得る説明はなかったわけでございまして、その場でさらにこの問題を議論するということについては、時間も足りないという点もありました。とにかく、これはテーブルに着いて今後ともやろうじゃないかということで合意を見て、この次の会談にさらに持ち越したということでございます。  今おっしゃるような点等につきましては、我々も十分踏まえて、歴史的な、条約的な論拠というものを踏まえて、これからソ連との間で腰を据えて議論しなければならない点であろうと考えております。
  27. 高沢寅男

    高沢委員 ぎりぎり詰めて、つまりそうしたやりとりの中でソ連側は、あの日ソ共同宣言はもう死んでいるんだ、そういうふうに言っておりますか、その辺をお聞きしたいと思います。
  28. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これは、そういう発言はもちろんありません。日ソ共同宣言によって領土問題、こうして現実的に国交が回復しておるわけですし、それによって国連加盟というものが実現されているわけです。ですからソ連としては、そういうことはもちろん言える立場ではありませんし、そういうことは言っておりません。
  29. 高沢寅男

    高沢委員 では逆に、日ソ共同宣言は生きているんだ、こういうふうにソ連側発言がありましたか、いかがでしょうか。
  30. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 それはもう、生きているも死んでいるも当然至極のことである。少なくとも、これは国際的な条約に等しい宣言であって、それによってすべての既成事実が今日成り立ってきておるわけですから、当然ソ連もそれを否定する何物もないということは明らかなことで、これは何も確認するとかしないとかいう問題以前のことではないだろうか、こういうふうに思います。
  31. 高沢寅男

    高沢委員 どうもそこで何かうやむやになっちゃうのですね。つまり、生きているに決まっているということは、こっち側の見解を今大臣が述べられたわけで、ソ連側だってそれを守るべきものだということは、こちら側の見解を述べられた。ソ連が確かに日ソ共同宣言は生きています、我々もそのことを踏まえています、こういうふうに向こうから一本発言があって、初めてそれならばこうだという話がそこから進むわけなんで、これが今までないのですか、生きていますという向こう発言はないのですか、いかがでしょう。
  32. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 先ほど申し上げましたように、これは日本としても、これまでもそうでありましたろうが、国際条約に等しい共同宣言でございますし、そしてこの共同宣言が発出されたことによって少なくとも日ソの国交がスタートを切った。国連の加盟も行われたわけでありますし、その他のいろいろな問題が進んだわけでございますから、これはもう何も生きているとか死んでいるとか確認し合う問題ではなくて、両国で批准しているわけですから、これは当然至極の既成の問題である。こちらからむしろ、そういうのは生きていますかと聞くのは妙なことではないだろうか、生きている、そして存在しているということは当然のことじゃないか、そういうふうに思います。
  33. 高沢寅男

    高沢委員 どうもすれ違いになっちゃっている感じですが、例え話で言えば心臓移植とか何かするにしても、この人の脳死という状態が生きているのか死んでいるのか、この判定は最大の決め手になるわけです。今の日ソ領土問題というのもそういう意味において、生きているか死んでいるかの判定が大事だということで、今度外務大臣モスクワに行かれるときはそういうことも十分考慮の中に入れながら、そういうものをソ連からはっきりととるというふうなことを踏まえて、臨んでいただきたいと思います。  それとの関連ですが、一九七八年の一月、当時福田内閣で、当時の園田外務大臣訪ソされて、そして当時のグロムイコ外務大臣との間で領土問題のやりとりがありました。そのとき向こうからは、日ソの善隣協力条約の案をぱっと出された。園田さんは、それは一応持ってきたけれども、そんなものは検討の対象にならぬといって金庫へ入れてしまった、こういうことになっています。そして、それに対して今度はこちら側からは、日ソ平和条約の案を向こうに渡した、こうなっていますね。グロムイコ外務大臣は、当時これは検討の材料になりませんと言いながら、しかし相手は受け取った。だから、これは恐らくソ連外務省の金庫の中にあるんだろう、こう思いますが、このときにこちらから渡した日ソ平和条約の案、日本側の案というものは一体どういう性格、どういう内容のものであったか、それをひとつお尋ねしたいと思います。
  34. 西山健彦

    西山政府委員 当時の経緯は先生もよく御承知のことと存じますけれども先方は我が国と平和条約を結ぶにやぶさかではない、ただその平和条約を結ぶための根拠が異なる、そういう言い方をいたしまして、我が方が主張しております平和条約のかわりに先ほどの善隣協力条約案なるものを持ってきたわけでございます。それに対して我が方は、そういうようなものを受け取るわけにはいかない、あくまでも領土をきちんと定めた平和条約というものを結ぶべきであるということでもって、この交渉は成立しないままに終わった、そういう経緯になっております。  したがいまして、我が方が先方の善隣協力条約案を受け取って検討をしたということではございませんで、外交儀礼上これを一応受納したけれども、正式にこれを検討するということで受け取ったわけではない。他方、それをただ受け取っただけでございますと誤解を与える余地もございますので、我が方がその当時念頭に持っておりましたところの平和条約案を先方にも渡したわけでございます。ところが先方はこれを、我が方が先方の案を受け取ったのと同じ了解のもとに受納するということになっております。  したがいましてこの我が方案というものは、平和条約交渉の過程の一環という性格を持っておりますので、現在の段階においてその内容がどういうものであったかということは、申し上げることを差し控えさせていただきたいと存じております。しかしながら、ただいま申し上げましたような経緯からも明らかなとおり、我が方案は領土の問題をはっきりと規定している内容となっているわけでございます。
  35. 高沢寅男

    高沢委員 そういう経過があって、しかしその後善隣協力条約の案はソ連側としては発表したわけですね。我々はこういうものを渡したのだということを発表したわけです。そういたしますと、我が方もこちらから渡した日ソ平和条約の案を、私はむしろ発表すべきじゃないか。つまり、こういう問題はよく政府も言われる、国際世論にも訴えてというようなことを言われるわけで、当然そういう我が方の平和条約案が正当なものであるという立場ですから、それならばそういうものを発表して、そして日本の国民にあるいは世界の世論に我々の立場はこうだということを明らかにする、こういうことも当然あるべきじゃないかと思うのですが、これは大臣、いかがでしょうか。
  36. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 その当時としては、そういう判断もあったと思いますが、今日では、少なくとも一月の日ソ外相会談では両国平和条約締結しようじゃないか、そういうことで交渉に入ったわけでございまして、まさに日ソ両国間で平和条約交渉ということで一つ合意ができておりますから、この段階においてはむしろこの平和条約を進める、そのためのこれからの論議を具体的に詰めていくということの方が大事じゃないだろうか、こういうふうに思います。
  37. 高沢寅男

    高沢委員 そうすると、これからいよいよそういうもっと詰めた話に入るというふうになってくると、この前にやったそういう我が方の日ソ平和条約の案をどこかの段階で、今度はちゃんとした外交文書として検討の対象にするものとして相手側に渡す、こういう段階が当然来る、またそういうふうにするんだ、こういうお考えと見ていいですか。
  38. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 そういう段階を経て平和条約締結されるということが望ましいわけでありまして、そのために政府としても全力を尽くしていかなければならない、そういうふうに考えております。
  39. 高沢寅男

    高沢委員 今後のそういう御努力を大いに要望しながら、この租税条約内容にひとつ入りたいと思います。  この租税条約は、一九七八年、昭和五十三年の五月に、ソ連で外国法人に関する税法が施行された。そこで、それを受けてこういう条約が結ばれたというふうになってくるわけですが、その施行される以前のソ連における外国人に対する課税のそういうふうなものは一体どういうふうな状態であったのか、そういう法律がないという状態の中では、ソ連ではそういう関係はどういうふうに実際上行われていたのか、まずそういう実態をお聞きしたいと思います。
  40. 斉藤邦彦

    ○斉藤(邦)政府委員 ただいま御指摘のありました幹部会令ができる前は、ソ連におきましては外国人、外国法人に対する所得課税は行われていなかったと承知しております。
  41. 高沢寅男

    高沢委員 そうすると、この一九七八年にそうした税法ができた、その後は今度は課税が行われるようになった、こういうふうに理解していいですか。
  42. 斉藤邦彦

    ○斉藤(邦)政府委員 この法律ができました後は、ソ連といたしましては外国人及び外国法人に対して課税をできる体制になったわけでございますけれども、私ども承知しておりますところでは、実際上は商社等の駐在員に対する課税のみが行われてその他の部分の課税は行われていなかった、あるいは現在もそうでございますが、行われていないというふうに承知しております。
  43. 高沢寅男

    高沢委員 今言われた商社等の駐在員への課税というのは、要するに所得税、こういうふうに見ていいわけですか。
  44. 斉藤邦彦

    ○斉藤(邦)政府委員 そのとおりでございます。
  45. 高沢寅男

    高沢委員 ソ連側が一九七八年に新たにそういう外国人税法を制定したという、これは向こう側としてはどういう状況判断からそうしたのか。相手の問題ではありますが、こちらとしてはそれをどういうふうに認識されていますか。
  46. 斉藤邦彦

    ○斉藤(邦)政府委員 ソ連側といたしましては、近年多くの外国人がソ連に滞在することとなりまして、ソ連といたしましてもこれらの者が数がふえてまいりましたので、何らかの課税措置をとらざるを得なくなったというふうに判断しております。  ソ連側の説明によれば、外国との友好関係促進の見地から、今までは、一九七八年までは外国人課税は実施していなかったけれどもソ連の法人及び個人が外国において課税されるケースが多く、相互主義の見地から外国人に対し課税すべく、この本件幹部会令を採択したという説明をしております。
  47. 高沢寅男

    高沢委員 そういたしますと、今度の日ソ租税条約でございますが、ソ連日本以外のどういう国々との間にこの租税条約を結んでいるのか、その状況はどうですか。
  48. 斉藤邦彦

    ○斉藤(邦)政府委員 ソ連が今までに結んでおります租税条約は八つございまして、相手国は米国、フィンランド、イギリス、西独、ノルウェー、オーストリア、スウェーデン、キプロスでございます。
  49. 高沢寅男

    高沢委員 これはいずれも既に批准の終わったものですね。すると、日本のようにまだこれから批准するというふうなものはどういうものがございますか。
  50. 斉藤邦彦

    ○斉藤(邦)政府委員 ただいま申し上げました八つの条約は、いずれも発効しております。署名だけ済みましてまだ発効していない租税条約日本を含めまして七つございまして、日本、フランス、イタリア、スペイン、オランダ、スリランカ、カナダとのものでございます。
  51. 高沢寅男

    高沢委員 先ほどソ連の外国人税法ですね、この税法の仕組みというか内容というか、それはどんなふうなものになっていますか。
  52. 斉藤邦彦

    ○斉藤(邦)政府委員 この一九七八年の幹部会令の主要点といたしましては、まず外国法人につきましては、ソ連における所得に対して四〇%の税率で課税するということになっております。それから個人の所得につきましては、所得を給与所得とか著作権料等の所得とかあるいは個人労働による所得とか五種類に分類いたしまして、それぞれの種類に応じまして異なる税率を決めて、それに基づいて課税するということを定めております。
  53. 高沢寅男

    高沢委員 例えば、今の個人に対する給与所得への課税のパーセント、それはソ連の一般の国民の所得、給与に対する課税のパーセントと同じような税率になるのですか。
  54. 斉藤邦彦

    ○斉藤(邦)政府委員 同じでございます。
  55. 高沢寅男

    高沢委員 きょう、我々はこうやって批准の手続のために国会審議をやっておりますが、こうやってこちら側としては批准のための手続が完了した、結んだ相手側が今度はどういう事情か、何かの事情があってなかなか批准の手続をとらないというふうなケース、私の承知するところでは、今までにそういうものとして日本とフィリピンの通商航海条約、これは昭和三十六年の十月にこちら例日本では承認されて批准の条件が整った、しかし実際に発効し批准が行われたのは昭和四十九年の一月、その間に約十三年の時間がたっています。どうしてこういうふうにおくれたのか。  あるいは、今度は日ソ関係でも日ソの渡り鳥条約というのがありますが、これは昭和四十九年の四月に日本側では国会承認が終わっている。しかし、まだこれはいまだに発効していない。つまり、相手側で批准の手続がとられていない、こういうふうなことで、これは万々今度の日ソ租税条約でそういうことはないと思いますが、こういうふうな、こちらはちゃんと批准のための条件ができた、相手が非常におくれる、できない、こういうのは一体どんなふうな事情でこうなるのか。特に、ソ連の渡り鳥条約の場合にはどうしてそうなっているのか、この辺はおわかりでしょうか。
  56. 斉藤邦彦

    ○斉藤(邦)政府委員 我が国が批准をできる態勢になったにもかかわらず、相手国が批准しないことの結果条約の発効がおくれる例というのは、数はそれほどはございませんが、ときどきございます。その事情はそれぞれによって異なると存じますが、例えばただいま御指摘がございましたフィリピンとの通商航海条約につきましては、フィリピンが交渉を終了いたしまして署名をして内容を確定したにもかかわらず、その後に一部の内容の修正、これをフィリピン側に有利なように修正することを改めて要請してまいりまして、それについて交渉と申しますか話し合いを行っていたために、先方の批准がおくれたというふうに記憶しております。結果といたしましては、フィリピン側は修正なしで批准したわけでございます。  それから、ただいま御指摘ございました日ソ渡り鳥保護条約、これにつきましては実はソ連側も批准を下しております。発効しておりませんのは、批准書を交換していないからでございまして、なぜ批准書を交換していないかと申しますと、批准書の交換と同時に、保護の対象となります絶滅のおそれのある鳥のリストを相互通報することになっておりますけれども、このリストの作成につきまして日ソ間の調整がまだついておりません。このために、まだ批准書の交換を行うに至っていないという事情でございます。
  57. 高沢寅男

    高沢委員 では、それは政治的な理由というものでは全くなくて非常に技術的な理由である、こう見ていいわけですね。
  58. 斉藤邦彦

    ○斉藤(邦)政府委員 政治的か技術的かというお尋ねでございますれば、技術的な理由というふうにお答えできるかと思います。
  59. 高沢寅男

    高沢委員 条約の二十五条でございますが、「この条約は、批准書の交換の日の後三十日目の日に効力を生ずるものとし、この条約効力を生ずる年の翌年の一月一日以後に開始する各課税年度の所得について適用する。」こうあるわけですが、これがことし批准の手続が完了すれば、この文言によると、来年の一月一日からそうした二重課税回避の措置がとられるというようなことになるわけでありますが、そうすると日ソの間においては、そういう二重課税回避の措置はまだ現状ではとられていない、そういう場合に、損得と言ってはおかしいのですが、日本側が損する面、ソ連側が損する面、こちらが得する、相手が得する、こういうバランスというのは一体どんなふうになっているのか。いかがでしょうか。
  60. 杉崎重光

    ○杉崎説明員 租税条約と申しますものは、お互いの課税権を調整することによりまして、経済あるいは文化の交流の促進を図るということがねらいでございまして、これによりまして税収に対してどのくらいの影響があるかということは、にわかにはかりがたいわけでございますけれども、それはお互いに課税権をある程度放棄する、あるいは制限し合うということでございますので、先方が放棄した課税権につきましては、ある意味では当方の増収ということになろうかと思いますし、また当方が放棄した限りにおいては、先方においてその分の課税権が生まれるという面もございます。そういうふうに考えますと、両国間の経済交流の実態等を見て、むしろ税収に対する影響というよりも経済関係、人的交流の基盤、環境整備に資するという観点で考えております。
  61. 高沢寅男

    高沢委員 それは、そうした条約の性格は確かに今言われるとおりだと思いますが、そのことによって、本来日本側に入るべき税収がこれによって入らなくなったというふうな、そういう意味のマイナス、そんな大きなものじゃないと思いますけれども、そういうふうなことは、当然税務当局としてはそれなりに掌握されているのじゃないですか。いかがでしょうか。
  62. 杉崎重光

    ○杉崎説明員 日ソ間について考えてみますと、現在の交流の実態から見まして、先生も御指摘なさいましたとおり、我が国の減収につながるものは余り多くないというふうに考えております。
  63. 高沢寅男

    高沢委員 もう既に日本は、三十五カ国とこうした租税条約を結んでいるわけで、その結んでいる相手には例えばアメリカのように、その間における日米のそうした経済関係が非常に大きな、密接な相手もあるわけですから、そういうふうなものを仮にとってみれば、租税条約によって本来得るべき税収が免除されたというふうな面はかなり大きなものになる、私はこういうふうに思いますが、そういうものを税務当局としては当然それなりに掌握されているということではないかと思いますが、どうですか。
  64. 杉崎重光

    ○杉崎説明員 我が国が条約締結する際に、例えば利子でございますとか配当でございますとか、あるいは特許権等の使用料等に対する制限税率をどういうふうに決めていくかというような場合には、確かに両国間の経済交流の実態から見て、我々としてはどのくらいに設定することが適当かということを考えつつ条約は結んでおるわけでございます。非常にマクロ的に考えてみますと、最近我が国の経済の国際化が進展いたしまして、海外に対するいろいろな形での投資ということもふえてまいっておりますので、個別の国とのそれぞれの関係ではともかくといたしまして、全体で見ますと、我が国は今や資本輸出国というふうに考えてよろしいのではないかと思います。
  65. 高沢寅男

    高沢委員 いや、ですから私の言っているのは、今あなたは個別はともかく全体として、こう言われましたが、全体としてというものをつかむには個々の、アメリカがどうだ、イギリスはこうだ、フランスは日本とはこうなっている、そういう一つ一つの掌握があってそれで全体、こうなるのだと思うのですが、一つ一つの、租税条約を結んだ国別の、それによって得るべき税収がこれだけ減っているというような掌握は当然あると思いますが、どうですか。
  66. 藤井保憲

    藤井説明員 お答えいたします。  租税条約でこの条項が適用されましてそれで幾ら減収になったか、例えば制限税率が適用されてどうであるとか、そういう数字は把握いたしておりません。また国別に、その減収額あるいは増収額といったものを把握することもいたしておりません。  私どもといたしまして、例えば租税条約の適用ということでは必ずしもございませんけれども、二重課税の排除ということで外国税額控除、国内法の規定もございます。それに基づいてやっておるわけでございますけれども、これが五十九年分で約四千八百億ということでございまして、これは条約の減収額ということではございませんが一つの目安になろうか、このように思います。
  67. 高沢寅男

    高沢委員 国別に掌握してないというのは、そういうことを本当にやるとすれば大変煩瑣な手がかかる、こういう理由ですか。——はい、わかりました。  OECDモデル条約では、この二重課税回避するやり方として、外国所得免税制度というやり方と外国税額控除制度というやり方と両方ある、そのいずれかをとることになっている、こういうことですが、我が国は外国税額控除制度をとるということになっているわけですが、今度相手ソ連の場合はこのいずれかを選択するという、これは一体どういう選択になるのでしょうか。
  68. 斉藤邦彦

    ○斉藤(邦)政府委員 この条約におきまして、ソ連におきます二重課税排除方法につきましては、ソ連の国内法令によるとのみ規定されております。これはどうしてそういう規定になりましたかと申しますと、ソ連は従来よりソ連国内法に定める方法によるということを述べておりましたけれども、その方法が非常に多岐にわたって、その方法を具体的にすべて条約に明示することが困難でありましたために、条約上はソ連国内法令によるとのみ規定することとしたわけでございます。  ソ連における二重課税の排除の具体的な方法といたしましては、納税義務を負っております各機関の納税義務はその属する各省ごとに個別的に定められておりまして、統一的方式で行われることにはなっていないというふうに承知しております。ただ、ただいま御指摘ございましたOECDのモデル条約にございます二つの方式とこのソ連の方式とを比べました場合、ソ連の説明によれば、機関の場合、国営企業の場合でございますが、むしろ外国税額控除方式に類似のものと考えられまして、それから個人の場合、ソ連人の場合でございますが、これはいわゆる所得免除方式、こちらに類似した方式であるというふうに説明を受けております。
  69. 高沢寅男

    高沢委員 今のことは、要するにソ連側の国内のそういう税体系の関係からきておるということだとすると、今までにソ連アメリカやフィンランドやノルウェー、そういう国々との間に結んだ租税条約でも同じような規定になっているのか、この辺はいかがですか。
  70. 斉藤邦彦

    ○斉藤(邦)政府委員 ソ連が他の国と結びました租税条約につきましても、同様の規定になっております。
  71. 高沢寅男

    高沢委員 我が国が今までに諸外国と結んだ租税条約の中に恒久的施設という条項がありますが、そこでは企業という言葉が用いられているわけです。ところが、この日ソ租税条約の第四条では企業という言葉ではなくて「居住者」、こういう用語になっているわけですが、この点はなぜそうなっているのか。例えば日中の租税条約でも、これは企業という言葉が使われているわけですし、また本条約外務省の提案の趣旨説明の中では企業という言葉が出ているのですね。そこで企業と居住者、この関係というのは一体どういうことなのか、お尋ねしたいと思います。
  72. 杉崎重光

    ○杉崎説明員 我が国の条約例におきまして、企業という言葉は事業を行う者という意味で使っているわけでございますが、今回日ソ租税条約におきましては、企業というような表現を使いたくないと先方から申し出がございました。それは、先方においてなじみのないものだということかと思いますが、そこで私どもも、企業という言葉を使わなくても、居住者あるいは者といった言葉によって対応することは可能だというふうに考えまして、このような姿になっているわけでございます。
  73. 高沢寅男

    高沢委員 では、それは要するにソ連側言葉の一種の使い方というか好みというか、そういう問題と理解していいわけですね。  第四条には「恒久的施設」、これについて規定されております。「事業を行う一定の場所であって一方の締約国の居住者がその事業の全部又は一部を打っている場所」、こういうふうに恒久的施設の定義づけがあるわけでありますが、我が国が他の国々との間に結んだ租税条約では、その場所というものが例えば工場であるのか事業所であるのか倉庫であるのか、いろいろなそういうふうな具体的な例示が出されているわけでありますが、今度のこの日ソ租税条約はそういうふうな例示がない。これはどういう理由によるのか。いかがです。
  74. 杉崎重光

    ○杉崎説明員 恒久的施設の例示といたしまして、例えば工場でございますとかあるいは天然資源を採取する場所等が掲げられていることが多いわけでございますが、現在ソ連におきましては外国企業の工場等が存在しないといったような理由から、ソ連側としてはそのような例示は置きにくいという事情があるという話がございました。  私どもといたしまして、そのような例示を設けなくても、工場あるいは天然資源を採取する場所等の施設が恒久的施設に該当するということは明らかでございますので、現在そのような点を考えましてこのような形で条約をつくったわけでございます。
  75. 高沢寅男

    高沢委員 今の事情はわかりましたが、ソ連側にある日本の恒久的施設というのはどういうものがあるのか、商社の事務所とか等々ではあろうと思いますが、今度は逆に日本にあるソ連側の恒久的施設というのは一体どんなものがあるのか、それをお聞きしたいと思います。
  76. 藤井保憲

    藤井説明員 お答えいたします。  先生の御質問のうち、日本の方の状況を御説明させていただきます。  これまでのところ、ソ連との間には条約はございません。こういう状況でございましたので、このような場合には、御案内のとおり国内法の規定によりまして恒久的施設の判定をいたしておるところでございます。我が国の税法上、恒久的施設につきましては、支店、工場その他事業を行う一定の場所等々幾つかの規定がございます。この規定に該当するものにつきましては、当然のことながら恒久的施設として取り扱っておる、こういうことでございます。
  77. 高沢寅男

    高沢委員 今あなたの言われたもので、具体的にはどういうものがありますか、言うならばその例示をしてもらいたい、こういうことです。
  78. 藤井保憲

    藤井説明員 お答えいたします。  恒久的施設につきまして、我々この税法を適用いたしまして把握いたしております、六十年七月一日現在で私どもが把握しております日本課税関係のある国内源泉を有する恒久的施設を持っておる外国法人というのが、約千社ございます。この中で国別の状況、例えばソ連の恒久的施設がどうなっておるかといった数字については、私ども把握しておりません。したがいまして、当然税法上の適用をきちんとやっておる、このように御理解いただきたいと思います。
  79. 高沢寅男

    高沢委員 それは、やっていることは間違いないだろうと思いますがね。具体的に、例えばインツーリストの事務所というふうなものがそうですとか、アエロフロートの東京にある事務所がそうですとか、そういう例を聞けば、ああなるほどとわかるわけです。それを私はお聞きしているわけです。いかがですか。
  80. 藤井保憲

    藤井説明員 お答えいたします。  大変恐縮でございますが、具体的にこの法人につきましてどうということにつきまして、大変お答えしにくいということを御理解いただきたいと思いますし、私ども国別について、こういうものが具体的にありますということにつきまして答弁を差し控えさせていただいておる、この点御理解いただきたいと思います。
  81. 高沢寅男

    高沢委員 それはいわゆる守秘義務、こういうあれに関連するのですか。そういうことを言えないということは、ちょっと私は了解できないのですがね。
  82. 藤井保憲

    藤井説明員 お答えいたします。  守秘義務ということを振りかざしておるわけではございませんけれども、基本的に国別の状況というものは私ども把握するようにしておりません。これはそれぞれ任せております。したがいまして、どれがどういという状況は実際把握していない。おっしゃいますような、例えば支店とか工場とかそういう形態をとっておりますれば、当然これは恒久的施設に該当する、このように御理解いただきたいと思います。
  83. 高沢寅男

    高沢委員 もう、私がいただいた時間が終わりました。それで、委員長も御承知のとおりまだ全くこの条約の質問の途中でありまして、続いて御質問したいことがたくさんありますので、また次にそういう機会をいただきますように委員長にお願いをしながら、きょうはこれで終了いたしたいと思います。どうもありがとうございました。
  84. 北川石松

    北川委員長 次に、玉城栄一君。
  85. 玉城栄一

    ○玉城委員 日ソ租税条約につきまして若干お伺いしたいわけでありますが、この条約は、安倍外務大臣とことし一月ソ連シェワルナゼ外相が来日された際署名された条約で、今後の日ソの交流ということを考えますと、やはり二重課税回避しなくてはならないという立場から大変結構な条約だと思うわけでありますが、基本的な点についてちょっとお伺いしておきたいのは、これはOECDモデル条約案に沿った条約である、こう説明書には書いてあるわけです。  OECD、これは自由主義諸国が主でありますが、ソビエトという国は社会主義の国でありますので、いろいろな意味先ほどの御説明を伺っておりましても、税体系あるいは税そのものに対する考え方、さっき企業という言葉の使い方についてもいろいろ工夫するということで、根本的に体制が違うわけですね。ですから、果たしてこういうOECDモデル条約案に沿った条約で、今後我が国側の権益というものが本当に擁護できるのかどうか。もし、今後そういう意味で具体的にトラブルが発生した場合に、どういうふうに救済できるという保障がこの条約の中で講じられているのかどうか、その点へ基本的な点お伺いしたいと思います。
  86. 斉藤邦彦

    ○斉藤(邦)政府委員 説明書にもございますとおり、この日ソ租税条約は、基本的にはOECDモデル条約に沿ってできたものでございます。御指摘のとおりソ連は社会主義国家でございまして、体制が我が国とは異なっておりますので、そのようなソ連の特殊事情を考慮いたしまして、モデル条約から一部内容が違うものになっているところもございます。しかしながら、ソ連が今までほかの国と結びました租税条約もそうでございますけれども、基本的にはOECDモデル条約に沿った内容につきまして合意に達した次第でございます。その結果、何か条約の運用に支障が出るのではないかという御質問でございますけれども、万が一そういうことになりました場合には、この条約の中に協議条項がございますので、それに基づきまして日ソ政府間で話し合いをして解決を図るというふうになるかと存じます。
  87. 玉城栄一

    ○玉城委員 そこでもう一つ、この条約の二十三条には、この条約実施のために必要な情報の交換を双方することができるという趣旨の規定があるわけですが、ソビエトにつきましては、例えば国民一人当たりGNPが一体正確にはどういうことなのか、いろいろな統計資料等も余り公開をされていない。我が国の場合は、これはいろいろな意味で公開されているわけですが、そういう中でこの条約等の実施のために必要な情報交換をするということで、実効ある情報交換ということをうたわれておりますけれども、果たしてそういうことができるかどうかという疑問があるのですが、いかがでしょうか。
  88. 杉崎重光

    ○杉崎説明員 二十三条に規定ございますとおり、日ソ間でこの条約またはこの条約で対象となっている租税に関する国内法令の実施のために必要な情報を交換し合うということが書かれておるわけでございますが、この規定を設けるに当たっては、ソ連側もまさに今の文言の考え方に立ってこの条約締結したわけでございます。  現時点で一体ソ連が、それではどういうふうに条約、この情報交換について対応してくるのかということをあらかじめ予測するのは困難でございますけれども、私どもといたしましては、やはり情報交換というのは相互に行うべきものだ、相互主義的な考え方に立って行っていくということが望ましいと思っております。
  89. 玉城栄一

    ○玉城委員 同じこの条約の十八条だったと思いますが、双方学生等についての免税措置が講じられておるわけですが、今日本ソ連との学生等の実態と申しますか、数だとか概略、簡単でよろしいですから御説明お願いします。
  90. 斉藤邦彦

    ○斉藤(邦)政府委員 現在日ソ間では、政府ベースによる学生の交換は行われておりませんが、我が国の大学とソ連の大学の間の個々の取り決めに基づいて学生の交換が行われております。外務省として把握しているところによりますと、現在約二十名のソ連人学生が我が国に滞在しており、また同じく約二十名の日本人学生がソ連に滞在しております。
  91. 玉城栄一

    ○玉城委員 大臣にお伺いしたいのですが、この日ソ租税条約関係しまして、日ソ関係について先ほど大臣は改善の方向に向かっているというお話があったわけでありますが、この日ソ関係というものは米ソ関係を映した鏡のようなものである、いわゆる米ソ関係が緊張状態になると日ソ関係も冷え切っていく、今度は米ソ関係が緊張緩和の状態になっていくと、日ソ関係はまた良好な状態になっていく、いわゆる独自の日ソ関係というものはなかなか難しいのではないか、こう言われるわけでありますが、大臣はどうお考えでしょうか。
  92. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 確かに日ソ関係は、東西関係あるいはまた米ソ関係の影響を受けてきたことは、これは歴史の流れの中で認めざるを得ないところであろうと思います。しかしそういう中にあっても、日本ソ連との間には、国交が回復した後の関係というのは持続をしてきておりますし、また日ソ関係では、米ソとかあるいは東西関係にない領土問題という特殊な基本的な問題が横たわっておるわけでございまして、我々はそういう意味で、この領土問題を解決して平和条約を結ぶということを外交の基本としておりますし、これが解決に進んでいけば、いろいろ確かに微妙な変化、情勢の影響というものは受けるわけでございますが、しかし、日ソの間においても確実な前進ということは期待できるのじゃないだろうか、こういうふうに私は考えております。
  93. 玉城栄一

    ○玉城委員 一九七九年の暮れ、ソ連のアフガニスタン侵攻からまた米ソ関係が、新冷戦時代といいましょうか、非常に冷え切った、ある意味での緊張関係に入っていったわけですね。我が国も西側の一員として、そういう日ソ関係というもの、冷却という時代が来たわけです。ところが、ゴルバチョフ書記長が登場してから、昨年の米ソ首脳会談あるいはシェワルナゼ外相の来日ということで春の兆しというような、そういう意味で改善の方向というふうに大臣がおっしゃっていると思うのですが、そういう御認識はやはりきちんと持っていらっしゃるわけですね。
  94. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 米ソ関係でいわゆる軍縮が軌道に乗るといいますか、会議が進む、そして首脳会談も行われる、東西関係もゴルバチョフ新政権の登場によって緊張緩和の方向が出てくる、そういう状況の中で、日ソ間においても関係改善を求める一つの空気というものが醸成されたことは事実でございます。そういう空気が結局結実して、シェワルナゼ外相の訪日ということにつながったわけであろうと思います。  しかし、そうした東西関係、米ソ関係日ソ関係というのは微妙な影響を受けながらも、同時に日ソ関係日ソ関係として、また独特な領土問題といった大きな基本的な問題を持っております。この問題についても、今度の会議テーブルに着くということが一つ合意になったことは、東西の緊張緩和とともに日ソ関係一つの改善の道を開くことにつながっていっている、こういうことで歓迎をしております。しかし、決して安心できるという状況ではないわけですけれども、我々としては一つのそうした期待を持ちながら、そういう改善への空気が出てきたということを歓迎しながら、これから努力を重ねていかなければならない。そういう意味では、一つのチャンスということも言えるのじゃないだろうか、こういうふうに思っております。
  95. 玉城栄一

    ○玉城委員 大臣の今おっしゃられたことを前提にしまして、今後日ソ関係の改善ということで、経済交流の拡大といいますか、これはやはり時の流れだ、こう思うわけです。一九六〇年から七〇年代の前半、我が国は対共産圏に対する貿易についてはいわゆる政経分離、政治と経済を切り離す。ところが、一九七〇年代後半でしょうか、日中国交回復であるとかあるいはソ連軍の増強、いわゆる脅威論等からして、政経不可分という原則に立ってきているという感じなんです。ところが西欧諸国を見ますと、従来からずっと独自の利害で対ソ関係は維持しているということからしますと、我が国としても政経分離ということも考えて、いわゆる経済の交流という面は考えるときに来ているのではないかという感じもするのですが、いかがでしょうか。
  96. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 日ソ間には、貿易関係もありますし経済の交流等も行われております。今度も民間の経済委員会モスクワで行われ、我が国から大量の民間の使節団が訪問することになっておるわけでございます。私は、そういう意味では、日ソのこうした経済、貿易が進むことは望ましいことであると思いますが、しかし今おっしゃいましたように、それでは政治とは全然別にこれはどんどん発展させるべきであるということについては、政府としては違った立場をとっておるわけでございます。といいますのは、先ほどから申し上げておりますように、日本の場合は、いわゆる領土問題を解決して平和条約締結するのが日ソ関係を確立する基本であるというのが不動の認識でございます。したがって、そのために我々は粒々苦心、努力を続けておるわけでございます。  ですから、こうした領土問題を解決して平和条約を結ぶという日ソ間の基本の問題が後に取り残されるような形で経済とか貿易が進むということは、むしろ日ソ間の真の友好関係を確立するゆえんではないというのが我々の考え方でございます。あくまでも領土問題を解決して平和条約を結ぶという基本が進みながら、そういう中での経済あるいは貿易というものが進められなければならない、そういう考えでございますから、いわば政経不可分という、政経を分けてということじゃなくて政経一体という形で、日本政府としては日ソ関係に対処してまいってきておりますし、今後ともこの道を進むことが真の日ソの友好関係確立につながるものである、私はこういうふうに考えておるものであります。
  97. 玉城栄一

    ○玉城委員 大臣、もうしばらく結構です。  先月ですか、日ソの次官級会議でいわゆる日ソ貿易経済協議ですか、開かれたということを伺っているわけですが、ソ連側が我が国に対して従来よりも際立って強調している点はどういう点であったのか、御説明いただきたいと思います。
  98. 西山健彦

    西山政府委員 先般の貿易経済協議先方が非常に強く出してまいりました点は、これが双方にとって互恵的な経済、貿易関係をつくるものでなければならないという点でございます。それは別室言葉で申しますと、現在日ソ間の貿易関係は片貿易でございまして、大体二対一ぐらいの比率になっているわけでございます。その日本からの出超に対しまして、何とかこれを改善してもらうことが必要である、その点を非常に強く言った点が特記されるところでございます。
  99. 玉城栄一

    ○玉城委員 やはり日ソ間の経済あるいは貿易関係をさらに強化拡大もしなくてはならないということからしますと、今の片側貿易いわゆる二対一ということ、これは決してソ連だけじゃなくて我が国が世界的に問われている問題なんですが、輸出促進、輸出振興というだけでは当然成り立たない、今後そういう日ソ経済関係というものは維持できない。あるいは、むしろ我が国がソ連からの輸入促進ということも兼ね備えてやっていかなくてはならないというふうに今のお話からうかがえるのですが、その点どうなんでしょうか。
  100. 西山健彦

    西山政府委員 先生も御指摘になりましたとおり、私どもも全くそのとおりだと思います。  特に、ソ連側は貿易の方式といたしまして、英語でもってカウンターパーチェスあるいはコンペンセーションというような呼ばれ方をしておりますように、こちらが輸出した分に見合う分を輸入しなければならないという制度を、個別の契約ごとに、各関係の我が方当事者にそれを求めてきているわけでございます。したがって、相手の必要性に応じましてカウンターパーチェスの比率というものはある程度変わるようでございますけれども、原則的には一〇〇%同額になるまで先方は買うことを求めてくる。そうしますと、問題は、そういうものを日本の中で買う人を見つけることができるかということになってまいりますので、そこに非常に大きな問題があるわけでございます。  日本経済が現在のように、いわゆる短小軽薄というふうな構造になってまいりますと、ますますその問題が重要性を帯びてまいりますので、その点が、我々日ソ貿易の将来を考えます者にとりましては、非常に大きな問題と現在意識されているわけでございます。
  101. 玉城栄一

    ○玉城委員 これは大蔵省の方に伺いたいのですけれども、大蔵省いらっしゃっていますね。こういう一つの流れの中で、我が国の一角に自由貿易地域が設置されるということについてはどういう評価をされますか。
  102. 柿沼敏夫

    ○柿沼説明員 お答えいたします。  自由貿易地域の設置につきましては、これは沖縄振興開発特別措置法に定められているわけでございまして、沖縄県の産業振興開発のために有益な制度であるというふうに我々は考えております。
  103. 玉城栄一

    ○玉城委員 では、沖縄開発庁いらっしゃっていますか。その有益な制度が今全然進んでいない理由を、簡単でいいですからおっしゃってください。
  104. 櫻井溥

    ○櫻井説明員 ただいまお話がございました自由貿易地域の制度につきましては、先ほど大蔵省の方からお答えいたしましたように、我が国におきまして沖縄だけに認められた制度でございます。  なぜ、これがまだ創設されていないかという御指摘でございますが、御案内のとおり、実はこの制度は復帰前に沖縄に存在しておったわけでございますが、その存在の形は、どちらかといいますと輸出加工型の自由貿易地域だったわけでございます。沖縄が復帰いたしまして、いろいろな経済環境が変わりましたことによりまして、そういう形での自由貿易地域の存在は非常に難しくなりまして、したがいまして、今現地の沖縄県におきまして志向しております型は輸出加工型ではなくて、輸入型の自由貿易地域というものを志向して現在検討中ということでございます。
  105. 玉城栄一

    ○玉城委員 そういうことは私よくわかりますよ。何で進まないのですかと聞いているのです。
  106. 櫻井溥

    ○櫻井説明員 自由貿易地域をどこに設置するかということが非常に大きな要素でございます。現在、沖縄県におきまして予定しております場所は、沖縄の港と空港の間ぐらいの地点を想定しておるわけでございますが、たまたまそこが現在米軍に対する提供施設でもありますし、それから、民有地と国有地との位置境界がまだ明確化されていない等々の事情もございまして、まだ完全に使える状態になっていないということが一つのハードルとして、乗り越えなければならない問題点というふうに理解しております。
  107. 玉城栄一

    ○玉城委員 米軍提供施設、区域内における地籍明確化の事業主体というのは防衛施設庁だと思うのですが、これは法律ができて十年余りたっていますね、なぜできないのですか。達成率は九七・五%ぐらいですね。ところが、今の部分についてはどうして地籍明確化ができないか、理由を簡単に言ってください。
  108. 加賀山一郎

    ○加賀山説明員 お答えいたします。  那覇市の崎原地区につきましては、昭和五十年から行政措置によりまして地籍明確化作業に着手いたしまして、昭和十九年に米軍が撮影いたしました航空写真等をもとにしまして地図を作製し、地図編さんの基礎作業をいたしたわけでございますが、それが終わりましたところ、昭和五十二年五月に位置境界明確化法の制定を見ましたので、以後は同法の規定によりまして明確化作業を進めてきたところでございます。その結果、昭和五十四年二月、同法第十条による関係所有者の位置境界の確認協議を求め、また、昭和五十六年一月、同法第十二条の規定によりまして関係所有者の現地立ち会いを得まして、署名、押印を求めてきたところでございます。  しかし、総合事務局は、当該地域内で位置境界明確化作業によって国有地とされました一筆の土地、約五千二百平方メートルでございますが、この位置境界につきましては異議はないものの、同地域内の他の国有地、これは総合事務局と高良実業社との間の所有権確認請求事件におきまして国側勝訴となった約九千五百平方メートルの土地を含むものでございますが、その国有地と民有地との位置境界につきまして見解の相違があるとして、いまだ認証手続がとれない状況で今日に至っているものでございます。
  109. 玉城栄一

    ○玉城委員 大変具体的なお話で恐縮ですが、自由貿易地域設定ということは、先ほどからそういうローカル的な話で限定されていますけれども、決して私はそうではないということを、この委員会総理が出席されましたときにも、また外務大臣にもこの問題をお話をしてきているわけです。具体的で大変恐縮なんですが、今、ここは国有地である、民有地である、その争いを数字を挙げておっしゃいましたけれども、大蔵省、国有地であると主張するあなた方の根拠。しかし防衛施設庁は、そこは民有地であるという前提のもとに、借料については支払いしていますね。そういうところは一体どうなんですか。政府という一つの役所の中において、大蔵省はここは国有地である、防衛施設庁はここは民有地であるという前提のもとに地料を民間に払っている、これは重大問題だと思う。この点は掘り下げようと思いません。別の機会にやりますが、国有地と主張する根拠ですね。
  110. 柿沼敏夫

    ○柿沼説明員 お答え申し上げます。  今先生御指摘の、沖縄県がフリーゾーンとして要望しております地域でございますが、これは沖縄が本土復帰されました際に、アメリカ合衆国政府から日本政府に引き継がれました埋立地でございまして、現在米軍に提供しているということでございます。  それで、先ほど防衛施設庁の方から御答弁がございましたけれども、当該地区につきましては、位置境界明確化作業というのが行われておるわけでございますけれども、その位置境界明確化作業の結果出されました境界ですね、官民境界である旧海岸線、これが防衛施設庁と当省との間に見解が分かれておりまして、現在埋め立て前における航空写真等の資料をいろいろ収集調査をいたしまして、旧海岸線を復元する等の方法によって解決を図るということで、現地機関におきまして鋭意協議を続けているところでございます。
  111. 玉城栄一

    ○玉城委員 国有地ということを主張された。そのとおり国有地であれば国民の財産ですから、これは非常に大事ですよ。ところが、同じ防衛施設庁は、いやそこは民間地であるということで、その地料は民間に支払っている。これも、出てくるその地料は全部国民の税金ですね。そういう問題が十年余りも片づかない。そういうことが問題になって、施設庁としては土地の明確化もできない。また、それが問題になって、今言うフリーゾーンの設置もできない。全く、こんなおかしな話はないですね。  それで、トラブルはトラブルでぜひ早目にやっていただきたい。大蔵省それから防衛施設庁、早目にやっていただきたいのですよ。ところがこれまでの経過を見ると、これまた時間が多少かかると思うのです。それを待つというわけにいかない。大蔵省の方に私はお願いしておきたいのは、ここは間違いなく国有地であるという部分について、県の方からその部分をフリーゾーンに使用したいという要請があった場合はどうしますか。
  112. 柿沼敏夫

    ○柿沼説明員 お答え申し上げます。  まず最初にお断りしておきたいのでございますが、フリーゾーンの予定地は米軍への提供財産でございます。その窓口は一応防衛施設庁ということになっておりまして、私どもはその協議を受けまして処理をするという立場でございます。  今先生から御指摘のありました早期処理のための一つの方策でございますが、この点につきましては、もしそういうことで要望が出されて防衛施設庁の方から大蔵省の方に協議が参りました場合には、前向きに検討してまいりたいと考えております。
  113. 玉城栄一

    ○玉城委員 提供施設であることを前提にして、さっきから話をしているわけですよ。防衛施設庁は、防衛施設庁に今言ったような要請がされたら、大蔵省は今、前向きに検討しますということですから、いかがですか。
  114. 森山浩二

    ○森山説明員 防衛施設庁といたしましては、ただいまのところ県の方から具体的な要請がまだ出ておらない段階でございますので、返還等について県から要請があった時点で、米側あるいは関係先とも協議してまいりたいと考えております。
  115. 玉城栄一

    ○玉城委員 県側から、国有地について自由貿易地域に使いたい、したがって提供施設から外してもらいたい、返還してもらいたいという要請が来たら、関係当局の大蔵省も、開発庁もでしょうね、大蔵省は前向きにそれをするということですから、返還について前向きに対応する、こういうことですね。
  116. 森山浩二

    ○森山説明員 そのとおりでございます。
  117. 玉城栄一

    ○玉城委員 今度はまた、手続的には外務省アメリカ側と折衝することになるわけですから、今お聞きになったとおりでありますので、現在提供地内における国有地の一部について、明確な国有地であるという部分について、大蔵省は前向きにやりたい、防衛施設庁も前向きにやりたい、だから、そういうことがなされてきたときには、外務省としては米側との折衝についてどうなさるのですか。
  118. 藤井宏昭

    藤井(宏)政府委員 本件につきましては、昨年十二月に当委員会で先生の御質問にお答え申し上げたとおりでございまして、沖縄県民が安保条約の大きな負担を負っているということを外務省はよく存じておりまして、関係者の間でこの自由貿易地域について調整ができますれば、外務省としてもこの点についてアメリカを含めまして、いろいろな可能性があり得ると思いますが、二4(a)の可能性も含めまして、あるいは返還とか、できるだけの努力はしていきたいということでございます。
  119. 玉城栄一

    ○玉城委員 私が、なぜ租税条約関係しましてこの問題を取り上げたかといいますと、先ほどもちょっとありましたとおり、これは輸出促進という、大臣はどこかに行かれたけれども大臣もあしたから総理アメリカに行かれるようですが、深刻な日米の経済摩擦問題、報道で伝えられるところによりますと、総理はキャンプ・デービッドで内需拡大のための大胆な我が国経済構造の転換とか、開放経済体制をどうするということも打ち上げるという話等もあるわけです。こういう十四年前に設定された制度がせっかくあるにもかかわらず、今までこれができなかった。なぜ、こんな制度があるのに活用しないのか、これは政府自体がやる気がなかった。ところがこういう国際情勢になりまして、せっかくあるこういう制度をどんどん活用しながら、我が国としての経済開放体制の一つのあかしにすべきじゃないか、私は長年この委員会でも主張してきておるわけです。大臣、いかがですかと言いたいのだが、いないから、だれか答えてください。そうでないと、私は座れなくなります。
  120. 藤井宏昭

    藤井(宏)政府委員 先ほど御答弁申しましたように、関係者が本件について前向きに対処いたして具体的な話が上がってきましたら、外務省としては先ほど申しましたような見地から、アメリカの安保条約の運営等もございますけれども、できるだけ前向きに努力いたしたいと思います。
  121. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 今局長が答弁いたしましたように、全体的に前向きに対応するように外務省としても取り組んでいきたいと思います。
  122. 玉城栄一

    ○玉城委員 最後に、大蔵省と防衛施設庁に強く要望しておきますが、さっさとやってください。こういうことでもたもたしているというのは大問題です。一方は国の財産だ、いや民間だ、地料はまた民間に払う、こう長年やっている。これは職務怠慢としか言いようがない。明確化作業もできない、そして今言う設置も進まない、こういうことですから、強く要望して質問を終わります。
  123. 北川石松

    北川委員長 次に、渡辺朗君。
  124. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 日ソ租税条約に入る前に、関連いたしまして二、三、お尋ねさせていただきたいと思います。  一つは、これは政治問題でありますが、昨年来、ソ連が核実験の凍結を提唱してまいりました。そして、ことしにまでずっと至っておるわけでありますが、三月二十二日でございましたか、アメリカ側のネバダにおける地下実験を行ったということを契機にいたしまして、ソ連側は、このような状態では自分たちの方も核実験を再開せざるを得ないというような立場を表明しているやに聞いております。日本政府として、公式に非公式にそのような点を確認しておられるのでございましょうか、そこら辺をまず先にお聞かせください。
  125. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 ゴルバチョフ書記長が核実験全面停止を提案いたしました。これに対してレーガン大統領から、査証体制を確立すべきであるという逆提案が出されまして、ソ連の提案を拒否するということに相なったわけでございます。そういう中でアメリカの核実験が行われるという状況になったことは、私は大変残念に思っております。  日本といたしましては、核実験の全面禁止というのはこれまでの日本の長い主張でございますし、核廃絶のためには全面禁止を行わなければならぬ。そのためにも、ステップ・バイ・ステップ方式をとろうという提案を現実的に軍縮会議でいたしておるわけでございまして、そういう中で米ソが実験を行うということは、せっかく米ソ間で首脳会議も行われ、そして核軍縮、軍備管理について話し合いも進もうかという状況にあるだけに、極めて残念に思っておりますし、米ソ両国に対して核実験の停止を強く求めたいと思います。
  126. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 それに関連してもう一つ。今お尋ねしたのは、ソ連政府が再開するようなことをにおわしているということであると悪循環になってまいりますので、その点を外務省として公式に何か確認しておられますか。
  127. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 外務省としては、まだ正式には確認をしていない、こういう状況でございます。
  128. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 外務大臣、来月の下旬に訪ソされるというふうに伺っておりますが、その際にいろいろな問題が討議されるでありましょうけれども、聞くところによりますと新聞報道なんかでは、かなり盛りだくさんのいろいろなお話も行われるであろうし、それからまた、何か両国の大使が相互にテレビにも出演するというような計画もあるやに報道されております。  まず、大臣訪ソは確実でございますか、日程は決まっておりますか。
  129. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 まだ具体的な日程は決まっておりませんが、ぜひとも訪ソしたい、こういう考えのもとに両国間で話を今詰めておる、こういう段階であります。
  130. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 その場合に、外務大臣、特に中心にお話し合いをされたいというものは何でございましょうかということをまず私は聞くと同時に、もう一つ外務大臣に一緒に答えていただきたいのですが、昨年十月でございましたか、中曽根総理は、ニューヨークにおいて突然というふうな感じでございましたが、訪ソへの意欲を表明されました。あるいはまた、その後もSDIの研究参加の問題にしましても、外務大臣のおっしゃっている分とそれから方向と総理のおっしゃっている問題とが、何かちょっと食い違っているような、あるいは時にこれは二元外交という感じで我々受け取らざるを得ないような事態がたまたまございました。最近においても、そのようなことが起こっているやに感じます。  これは大臣、行かれて何をお話しなされるのか、その場合に日本政府としてどのようなスタンスといいますか基本的な方向で、国論をまとめて持っていかないといけないのではなかろうかと思うものですからその点も含めて、何をお話し合いをされようとしているのか、聞かせていただきたいと思います。
  131. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 今回の私の訪ソにつきましては、何としても基本は領土問題を含めた平和条約交渉を継続する、東京において行ったわけでございますし、引き続いてモスクワにおいても行いたいというのが大眼目でございます。同時に、日ソ関係の改善を進めるための文化協定、できれば調印までこぎつけたいと思います。あるいはまた、北方領土から戦後離れられた人たち一万数千人、そういう方々の中で、何としても北方領土の先祖の地、墓へ参りたいという非常に熱烈な希望は、本当に胸に迫る思いがするわけでございます。そうした方々の希望をかなえさせていただきたい。北方領土墓参をこれまでにやったわけでございますから、十年前と同じ形で実行できるような話し合いもぜひとも日ソ間で行いたい。その他、国際経済あるいはまた国際政治等につきましても忌憚のない意見の交換をしたい、こういうふうに思っているわけでございます。  なお、こうした日ソ外交あるいはまた対米外交、その他の外交につきまして、総理大臣との間には別に二元外交的な食い違いはございません。それは、多少個人でそれぞれニュアンス、人間は一緒じゃありませんから言葉のニュアンス等は多少ありますけれども、基本的な考え方といいますか、日本の外交の方向は変わっていないわけですし、その辺は十分私自身も心得て対応いたしております。
  132. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 今お話聞きますと、ビザなし墓参のことも、国際経済のこれからもいろいろ話し合いをされるようであります。ぜひぜひ、成果を上げていただきたいと思います。  特に、ビザなし墓参は、これは成算ありという感触で行かれますか。
  133. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これは、シェワルナゼ外相との一月の会談では私から強く求めたわけでございますし、シェワルナゼ外相もこの点については、日本国民の気持ちは理解している、人道問題としてこの問題に対応をしてまいりたいと、非常に好意的な回答を得たように思っております。そして、これはさらにモスクワでも相談しましょうということになっておりますので、私は、会議の雰囲気からいたしまして、ソ連側としても十分配慮していただけるというふうに思っておりますし、何とかしてひとつここで実現をしたいものだ、こういう気持ちでいっぱいでございます。
  134. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 私どもも、期待を込めて外務大臣成果を待っておりますので、大いに頑張っていただきたいと思います。  今さっきお話があったように、二元外交のおそれはないとおっしゃいました。そうあってほしいと思います。特にどこの国というわけではございませんけれども、いずれの国に対してでも外交は、殊さらにソ連のようなお国柄に対しては、私どもは、やはり二元外交的な要素が少しでもあれば、これは単なる個人のニュアンスの違いなんという次元の問題であろうとも、やはり大変こちらの方が足をすくわれるという結果になりはしないか、こういうことも考えますので、十分な御配慮をして取り組んでいただきたい、御要望させてもらいます。  さて、租税の問題の方、この条約の方に入るわけでありますが、今いろいろ同僚の議員さんの方からもお話が出ておりました。日ソ経済関係、これから一体どうなるのかな、こういうふうな関係がスムーズに進んでいくためにプラスになるならば大変結構だと思うのですが、ゴルバチョフ政権になってからの新政策、これがいろいろ打ち出されておりますけれども、具体的に一体どう進んでいるのだろうかという点がよくわかりません。これは後で外務大臣にも、どういうふうな見通しを持っておられるのかお聞かせいただきたいと思いますけれども、その前に外務省の方々から、現状の問題点だとかあるいはどういう改革を今取り組んでいるのか、そこら辺、要約で結構でございますから教えていただきたいと思います。
  135. 西山健彦

    西山政府委員 ソ連がどういう方向に向かって自国の経済並びに対外経済関係を進めていこうとしているか、この問題を一番はっきりと示しておりますのは、御承知のとおり、先般開かれました第二十七回のソ連共産党中央委員会におきますゴルバチョフ書記長の政治報告でございます。  これを見ますと、ゴルバチョフ書記長が非常に強調しておられますことは、要するに経済の活性化ということでございまして、活性化という言葉を加速という言葉でもって言っておられます。しかも、加速をするために何が必要かといえば、そのためには科学技術の進歩ということをフルに活用すべきである、そしてそれによって社会の生産力の根本的改造、これは英語でラジカルリフォームというふうに訳されております、そういうものをしなければならないという点を強調しておられるわけでございます。  しかしながら、書記長の政治的意図はそういうことで、以下そのラインに従いまして、さまざまな具体的な改良策にも触れておられるわけでございますけれども、我々が見まして問題と思いますのは、まず第一に、ソ連におきましては労働力の増加というものが次第に低減しております。それからエネルギー資源、なかんずく石油の産出というものがやはり頭打ちになってきております。御承知のとおり、この石油がソ連の外貨獲得量のほぼ六〇%を占めるわけでございますし、東欧の経済との結びつきもこれによって従来行われてきたということでございますので、その辺に非常に難しい問題があろうかと思います。  したがいまして、どこまでこういう問題を、現在の社会主義経済体制それ自身のシステム、体制それ自身はかたく守りつつ進め得るのか、書記長は、労働者といいますか勤労者の勤労意欲をもっと鼓舞するという面になかんずく重点を置いて指揮をしておられますけれども、そういう形でどこまでこういう問題に対応できるのか、これから注目してまいりたいところと思っております。
  136. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 今のようなお話を聞いておりますと、ソ連がゴルバチョフ体制のもとで大変意欲的に取り組もうとしていることはわかります。それに対して、科学技術をどんどん導入し、生産力の、今のお言葉をかりますと根本的な改革もやっていく、経済の進歩を図ろうというソ連に対して、外務大臣は、日本はどのような対応をすべきだとお考えですか。これは積極的に協力すべきなのか、どのようなお考えでございましょう。
  137. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 日ソ関係につきましては、これはやはり隣国でありますし、国交を持って今日に至っております。経済体制といいますか国の体制は異なっておりますけれども、将来に向かってやはり友好関係を確立をしていかなきゃならない、こういうふうに基本的には思っておるわけです。  ただ、日ソ間には、御承知のように領土問題が横たわっております。日本としては北方四島を回復していく、そして平和条約を結ぶということを対ソ外交の基本にいたしておるわけでございます。したがって、こうした基本を貫くことが真の日ソの友好につながっていくという立場で、対ソ外交に取り組んでおります。したがって、こうした平和条約交渉を今後とも粘り強く続けていく、そういう中で日ソ間のその他の経済文化の交流等も進めていかなければならない、こういうふうに考えておりまして、あくまでも領土問題を解決して、平和条約締結するということの基本を中心にして日ソ関係の改善を図ってまいりたい、こういうふうに考えております。  対ソ関係経済につきましても、これまでもそうした角度から展開をされてまいりました。今、関係も徐々に改善の方向にありまして、今回も日ソ経済委員会モスクワで行われるということで、民間から大量に使節団がモスクワ訪問しようという段階にあるわけでございます。これは好ましい状況であろう、こういうふうに感じておるわけでございます。
  138. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 大臣、今お話を聞いていると僕はちょっと混乱をしてくるのですけれども、これは隣国として協力することも基本だとおっしゃるし、他方、平和条約締結がまた基本であるとおっしゃるし、それは二つ二本立てでいくのか、あるいは平和条約が目標で、そのための手段としての経済協力であり技術協力になっていくのか、あるいは条件が整えば我々は経済協力を積極的にやるんだということなのか、そこら辺の関係をどう整理したらいいのか、大臣、もう一遍はっきりとひとつおっしゃってください。
  139. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 日ソ関係は、先ほど申し上げましたように、これは隣国である、そして、体制は違いますけれども本来的に友好関係を進めたい、しかし、それにはやはり基本問題が横たわっているのだ、その友好関係を真に確立するためには基本問題を解決しなければならぬ、その基本問題は何かといえば、領土問題を解決して平和条約を結ぶということだということを申し上げているわけです。これが基本であります。したがって、そうした基本を貫くということを主眼にして、その他の文化あるいは経済の問題に対応していくのが日本の対ソ外交のあり方であろう、またあり方でなければならないというのが政府の考え方でございます。  したがって、我々は領土問題の解決といいますか、これを抜きにして経済の交流あるいはまた貿易を一方的に進めるという立場はとっていないわけでございます。これを一言で言えば、政経分離ではなくて政経一体という立場で対ソ外交をとらえておるということを、ひとつ御理解をいただきたいと思います。
  140. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 確認いたしますけれども、そうすると、我が国としては領土問題の解決、これなしに政経分離で経済の方が先行することはだめだ、あるいは技術協力が進むということはだめだというふうな考え方に立っている、そういう理解をするわけでありますが、そうすると、例えば今お話がありました、今度十六年ぶりでございましょうか、モスクワで開かれるという日本産業総合展、いわゆる見本市でありますが、これに対して日本経済界の方から大変強い意欲が表明されているようであります。それに対しても今のおっしゃったような方針が適用される、こういうふうに考えてよろしいですね。
  141. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 いわゆる領土問題の解決というのを置き去りにした形で経済、貿易だけを進めるというわけにはいかない、こういうことを申し上げているわけでございますが、幸いにして領土問題につきましても、テーブルに着いて話し合いをしようという段階合意を見ておるわけでございます。その点では、平和条約交渉への道が一つ開けてきたといいますか、そういう舞台ができたことは事実でございます。これは、日ソ間におけるここ数年来の一つの進歩であろうと私は思います。  そうしたことを受けて、経済あるいは文化その他の面においていろいろの進展がある、改善が行われるということは、これはそれなりに理解ができるわけで、これはやっていくということは必要ではないか、私もこういう認識を持ってとらえておるわけでございます。
  142. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 この点で特に通産省の立場では、今回産業見本市、総合展に対して出品する品物、戦略物資というようなものに対する内規といいますか、そういうもので今までは一時輸出の形で承認してきておられる。今回のモスクワ見本市開催に当たっては、今度はどうも新たな指針を設定して、従来の内規を格上げして通達にしておられるように聞いております。これは事実でしょうか。そしてそれは、今の外務大臣の言われた方向というものを進めるという意図で行っておられる措置でございましょうか。ここら辺ちょっと聞かしてください。
  143. 白川進

    ○白川説明員 ソ連に限りませず共産圏で開かれますところの見本市、これへの戦略物資の出品につきましては、かねてから通常の輸出案件に関する審査とは異なりまして、一時輸出という形で出品について承認を与えてきておるところでございます。今先生からお話のありました、これを通達に格上げする、あるいは運用の内容を強化するといったような報道がかつてなされましたけれども、私どもといたしましては、従来からのこの扱いぶりを変える考えはございませんし、通達に格上げしたというような事実もございません。
  144. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 外務大臣、その点では全然従来と変更はないわけでございますか。一遍確認しますけれども、本当にそうですか。
  145. 白川進

    ○白川説明員 従来と変更はございません。
  146. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 こういう記事が出たのですけれども、では、これは間違った報道であったのですね。ことしの三月一日、「ココム規制順守へ指針」ということで、見本市の出品規制をハイテクの流出を防ぐという観点から、通産省ではガイドラインを打ち出すという報道が行われておりましたけれども、これはなかったことでございますね。
  147. 白川進

    ○白川説明員 この点につきましては、日本産業展に今度は約四十社、あるいは団体が御参加なさる、こういった見本市への出品が初めての方々もいらっしゃるということで、これまでとっておりました出品に関する扱いについて御説明を申し上げたわけでございますが、その中身は先ほど来御説明申し上げておりますように、従来の扱いと全く同様のことを御説明申し上げたわけでございますけれども、それが一部に強化あるいはガイドラインというふうに受けとめられて、このような報道になったものと承知いたしております。
  148. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 今確認させていただきました。私も、そこら辺ちょっとけげんに感じていたものですから、二度三度とお尋ねをしたわけです。  外務大臣、やはり領土問題を前進させるためにも、両国関係を良好なものにして持っていく必要がある。特に、緊張緩和の状態もつくり出し、話し合いのムードをつくっていく、大事なことだ。あるいは、信頼感醸成措置をいろいろな分野で講じていく。そういう可能性が広げられるということによって、話し合いもまた進展するだろうと私は思いますけれども、もしそのような立場に立つとすれば、規制の強化が行われる、特にココム規制というようなものをうんと厳しくするということは、国際情勢が激変した事態ならばともかくも、私は現状の中ではちょっと矛盾する動きではなかろうかと思っておりました。  大臣、ではその点は、今回の産業見本市のようなものが盛大に行われることはこれは大いに歓迎、そしてまた日ソのために、将来のためにこれは進めていくべきだというふうな立場で今受けとめてよろしいですね。
  149. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 日ソ関係では、広範にわたりましていろいろな協力関係があるわけでございますし、それは進めることが私は大変いいことだ、こういうふうに思っております。しかし、基本については、先ほどから申し上げたとおりであります。また、国際的にはココムというような問題は日本だけの問題ではなくて、関係各国が話し合って決めるべきであることは、もう御承知のとおりでございます。我々としては、今後とも平和条約交渉を進めながら、同時にまた、日ソ間の関係改善をいろいろの面で進めてまいりたい、展開をしてまいりたい、こういうふうに考えております。
  150. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 米国主導の対ソ経済措置がございます。その上さらに、対ソ技術移転に制約を加えるココムの規制があります。そういった規制がある中で、制約された中で日ソ経済関係を前進させる、あるいは拡大を図ろう、これは大変厳しい、また難しい仕事であろうと思いますけれども大臣、ぜひそういうものを進めていただいて、所期の目標であります領土問題の解決平和条約締結、これには一層の御努力をいただきたいと思います。ついては、時間が来てしまいましたので、いろいろな点を質問したいと思いましたが、一点だけ御質問させていただいて、お答えいただいて終わりにしたいと思います。  現在、日ソ漁業交渉でございますが、これはどうでしょうか、今妥結できるのでしょうか、どういうふうになっておりますでしょうか、きょうの時点についての御見解を聞かせてください。
  151. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 今最後段階最後交渉が行われております。羽田農水大臣も、何としてもこれは解決したいという決意でソ連、カメンツェフ漁業相とやり合っておるわけでございまして、時々刻々その情報が入っておりますが、まだまだ決着、解決という情報、知らせは入っておりません。しかし私は、ソ連側羽田農水大臣を受け入れた、そしてソ連側としても何とか解決したいのじゃないか、こういう空気は感じておりますし、我々としても全力を尽くして、外交当局としても取り組んでおるわけでございます。そうした中で、羽田農水大臣努力というものも実る可能性もあるのではないかという期待を持って、今最後交渉を見守っておる、こういうことでございます。近いうちに、この結果は判明するものと考えております。
  152. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 ありがとうございました。終わります。
  153. 北川石松

    北川委員長 次に、岡崎万寿秀君。
  154. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 本条約の提案理由の説明によりますと、「この条約締結によって日ソ間の二重課税回避されることにより、両国間の経済活動の円滑化が図られ、また、両国間の交流が促進されるものと期待されます。」このようになっております。この中には、当然両国間の科学技術の交流も入っているというふうに思いますが、政府としてはこれをどう促進されようとなさっているのか、その方向についてお聞かせ願いたいと思うのです。
  155. 西山健彦

    西山政府委員 科学技術の面につきましても、御承知のとおり科学技術協力委員会というものの再開も今や検討されている、そういう状況になっております。したがいまして、我々といたしましても、いろいろと制約的な条件はございますけれども、できる限りこの面での協力も進めてまいりたい、そういうふうに考えております。
  156. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 自民党が出しています「総合政策情報」によりますと、アメリカ国防総省は昨年九月十八日に「ソ連による西側主要軍事技術の取得」というレポートを発表して、その際ワインバーカー国防長官は「ココム加盟国に対しても対ソ流出規制の強化を要請」したというふうに書かれています。日本はこの要請、来ていますか。
  157. 赤尾信敏

    ○赤尾説明員 お答えいたします。  ソ連等向けの輸出につきましては、ココム諸国の間で緊密に協議しつつやっております。そういう軍事的にセンシノティブな物資につきましても、いろいろと協議をしてきております。アメリカを含むココム参加国の間で、密接な協議をしてきております。ただ、詳細につきましては、各国との申し合わせもありますので御説明できません。
  158. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 この要請を受けたかということを聞いているのですよ。要請を受けましたか。
  159. 赤尾信敏

    ○赤尾説明員 お答えいたします。  要請は来ておりません。
  160. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 しかし、いずれにせよ今ココムの制約の中で、そういう各国間で協議されているというわけですから、大体こういう見地でなさることになろうと思うのです。そうしますと、こういう租税条約を結んでも、科学技術の交流の面ではなかなかスムーズに広がっていかないというのが状況じゃないかというふうに思います。  ところが一方、西側の方は、ハイテクを集中して宇宙軍拡を進めることにもなるSDIという形で、大いにそういう交流が広がろうとしているわけですね。今回、第三次の訪米調査団、九日に帰国されたようですけれども、きょうの毎日新聞によりますと、外務省が、このSDIを防衛兵器と評価する外務省見解を発表されています。公式見解ではないというふうに言われていますけれども、これは今回の訪米調査団の調査結果を踏まえたものなんでしょうか。
  161. 藤井宏昭

    藤井(宏)政府委員 まことに申しわけございませんが、私、毎日新聞を詳しく読んでおりませんけれども、見出しだけけさ読ませていただきましたが、外務省がSDIに関しまして何らか意見を申し述べた事実は全くございません。国会において、累次SDIにつきまして御質問がありまして、それに対して意見を述べたということはございますけれども、何らかの意見をその他の面で述べているということはございません。まして調査団の結果、帰国とは、何らの関係もございません。
  162. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 それでは、これまで二回、そして今回は民間代表団も含めて第三次の調査であったわけですが、大体これで最終判断をされるおつもりなんでしょうか。
  163. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 第三次調査団で一応の調査は終わったわけでございますし、これは調査団の報告がどれだけかかって作成されるのか、その作成をした段階で、政府としてこれを受けてどうするかはその段階でいろいろと協議をしたい、こういうふうに思っております。
  164. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 そうしますと、第三次をもって調査は終わった、これからどうするかは協議中だというふうになるわけでございますね。これは非常に大事だと思いますが、十三日に安倍さんも中曽根首相と御一緒にレーガンさんとお会いになるわけです。また、五月初めには東京サミットもございますけれども、ここで研究参加を表明なさるようなことはまさかあるまいと思いますけれども、そう判断してよろしゅうございますか。
  165. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 先ほどちょっと申し上げましたが、この調査といいますか、技術的な調査は終わりましたけれども、これだけの大きな問題ですから、まだ引き続いていろいろと研究しなければならぬ点があることはそのとおりでございます。そういう今の状況ですから、アメリカにおいて総理大臣が、SDIについて研究というものに対して理解という日本政府の方針を、さらに新しい形で表明されるということはあり得ないわけです。
  166. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 それは、東京サミットにおいてもそうでございますか。
  167. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 東京サミットまでと、何も東京サミットまでに決めなければならぬという筋合いのものじゃありませんし、その辺は別に頭の中にあるわけではございません。
  168. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 昨年十一月八日の当委員会で私の質問に対して栗山北米局長は、技術面、制度面、法律面、そういう点について種々詰めるべき点があるというふうに答弁されたわけです。今、安倍外相の話によりますと、技術面についてはほぼ調査が終わったけれどもというふうに答弁なさいましたが、そうしますと、制度面、法律面がまだ残っているというふうに考えてよろしいですか。
  169. 藤井宏昭

    藤井(宏)政府委員 ただいま大臣が御答弁申し上げましたように、技術面につきましては第三次のミッションが派遣されまして、昨日大体みんな帰ってまいったわけでございますが、その報告書等もございますし、これからそれをさらにそしゃくするという段階があるわけでございます。したがいまして、今終わったということはそういう意味でございまして、既に技術面の調査がこの段階ですべてわかったということではなくて、それをそしゃくする、報告書をさらにそしゃくするということがあると思います。さらにそういうものに基づきまして、そういうことが一つでございますけれども、それ以外に制度面とかいろいろな面があるわけでございます。
  170. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 調査は終わったけれども、まだあれこれの問題点があるというふうな御答弁のようでございますが、その一つに、一九六九年五月の衆議院本会議における「わが国における宇宙の開発及び利用の基本に関する決議」というのがございますが、これはSDI研究参加との関連が当然出てくる決議でございまして、この問題も当然この中に、つまり詰めるべき問題の一つに入っているわけでございますね。
  171. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 国会の決議につきましては、これは政府としては当然尊重していかなければならぬ、これは当然のことだと思います。
  172. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 ただいま尊重するという御答弁でございますが、そうしますと、当然民間企業が参加する場合においてもこの決議は拘束力を持つ、こういうふうに判断してよろしゅうございますか。
  173. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 参加するか参加しないか、そんなことをまだ決めていない段階ですから、この点について申し上げる段階ではありません。
  174. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 尊重するということになっていますので、当然尊重する立場で検討をしていただく以外はないと思いますが、この決議の中身は、「平和の目的に限り」というふうにうたっているわけです。この「平和の目的に限り」というのは、国会でのいろいろな答弁を見ましても、非軍事であり非核であるというふうに御答弁されていますし、さらに国会の有権的解釈も、一九六九年五月十五日の参議院の科学技術特別委員会に石川議員が出席して衆議院における修正について説明していますが、その際「平和の目的に限り」というその平和の中身ですけれども、「平和の概念は、国際的に、非侵略という考えと非軍事という考え方がございますけれども、これははっきりと、非軍事である、非核である、こういうことを明確にしております」というふうに報告していますが、このことは外務省も御承知なんですか。
  175. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 いずれにしても、SDIについては今まだ研究を理解するということで、政府としては、さらにこれに対して新しい考え方をまだ決めておるわけじゃありませんし、今、調査団も帰りまして、まだまだこれから検討すべき問題がたくさんあるわけでございますから、そういう状況の中で国会の決議等との関連政府として申し上げる立場にないことは、先ほどから申し上げたとおりでございます。  いずれにいたしましても、国会の決議は尊重していくという政府の方針が変わらないことは、毎回申し上げているところであります。
  176. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 これは外相じゃなくて結構ですけれども、この国会決議の有権的解釈が、「平和の目的に限り」というのは非軍事であり、非核であるということ、この中身についてはそのとおりと理解してよろしいですか。
  177. 藤井宏昭

    藤井(宏)政府委員 国会においていろいろ御議論があったことは承知しておりますけれども、SDIとの関連におきまして、我々はあらゆる側面を慎重に検討中でございまして、現段階国会決議について、ただいま大臣が申し述べましたように、コメントするという段階にないわけでございます。
  178. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 国会の有権的解釈は既に答弁されていますし、答える段階にないという筋合いのものじゃないというふうに思うのです。既に国会自身でそのことを表明しているわけですから、それを尊重してもらわなくちゃいけないと思うのですよ。  そこで、お聞きしますけれども、SDIというのは、これは公式のものじゃないというふうにおっしゃいましたが、防御兵器だというふうに書かれているわけです。攻撃兵器じゃなくて防御兵器であったにしても、これは軍事兵器システムであることについては変わりないというふうに思うのですね。もう既に三回も調査団を出されて、調査そのものが終わったとおっしゃっているので、これがやはり軍事兵器システムだというふうに見てよろしゅうございますね。
  179. 藤井宏昭

    藤井(宏)政府委員 SDIの目的は、これは非核ということでございまして、相互確証破壊という現在の状態を変えていこうということでございます。それにつきましての一つの構想でございまして、現段階におきましては、そういう構想がいろいろな意味で可能であるかということを探ります研究の段階でございます。したがいまして、SDIというものが完成した時点においてどういうシステムであるかということについて、現段階で、先生の今御指摘になったような意味で兵器体系であるというようなことを申し述べるのは、時期尚早かと思います。
  180. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 非核かどうかについてはこれまでも議論してきまして、私たちはこれは核兵器であるし、宇宙への核軍拡を広げるものだという批判をしているわけですが、今お聞きしているのは、そういう核にかかわる問題じゃなくて、兵器かどうか、軍事兵器体系かどうかということについて聞いているのですよ。それさえも答えられないような状況ですか。
  181. 藤井宏昭

    藤井(宏)政府委員 軍事兵器体系とはそもそも何であるかということの定義などをはっきりさせませんと、これは一つの構想で、研究でございますので、仮想に一つの概念規定を行うということは、いろいろ慎重に検討をしている段階では、時期尚早であるということを申し上げているわけでございます。
  182. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 そういうふうな御答弁ですけれども、いずれにせよ国会決議は、宇宙の利用というのは非核であり、非軍事に限るというふうになっていますので、これと矛盾するようなSDIへの研究参加は厳しく戒めていただく、これが国会決議を尊重する態度であろうというふうに思うのです。  時間も来ましたので、最後に、一九八三年のウィリアムズバーグ・サミットにおきまして中曽根首相は、これは有名な話ですけれども、戦域核を欧州に配備せよ、そういう積極的な御発言をなさっているのです。さらに、昨年五月、ボン・サミットでは、SDIに関連して政府は五条件を示されて、当時フランスなどにSDIの問題について説得するような役割を果たされたということも報道されているわけです。しかし、今回は日本は議長国なんですね。被爆国日本で開かれる東京サミットでございます。国会決議も、今申したとおり、ありますし、非核三原則も国是としてあるわけなんで、こういう中でレーガン大統領からの要請があったにしても、私は、SDIの問題で日本政府がまとめ役とか、まして推進役などを絶対にやるべきじゃないというふうに思いますが、外相の決意のほどを承りたいと思います。
  183. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 SDIの研究に参加するかしないかというのは、あくまでも日本の独自な、また自主的な判断によるものでございます。これは当然のことであろう。そういう基本的な立場で対応していかなければならぬと考えております。
  184. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 中曽根さんは、ウィリアムズバーグ・サミットでもボン・サミットでも、レーガンさんの意向を受けて核兵器問題についてはなかなか積極的な御発言等もなさっていますので、質問をしてみたわけです。  今の安倍外相の御答弁を聞きますと、日本が自主的な立場でやるので、たとえレーガン大統領からのそういう要請等があったにしても、東京サミットでそれを促進するような役割を果たすとか、まして日本が研究参加に踏み切るとか、そういうことは絶対ない、このように理解してよろしゅうございますか。
  185. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 そういうふうに飛躍的に言われても困るのです。日本は、SDIの問題については、研究に参加する、しないというのは独自に、自主的に判断して決める、そしてまた、これは慎重に決めるということは一貫して言ってまいりました。今でもそういう考えで対処している、今後も対処してまいりたい、こういうことであります。
  186. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 時間が参りましたので終わりますけれども、そのことは東京サミットについても同じなんですね。東京サミットについても同じような姿勢で貫いていく、したがって、ここで研究参加するようなことはしないということなんでしょう。
  187. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 東京サミットまでに決めるとか、東京サミットが終わってから決めるとか、そういう東京サミットをターゲットにしてSDIを考えてはいない、こういうことです。
  188. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 東京サミットで、かつて中曽根総理がウィリアムズバーグ・サミットやボン・サミットで話されたような、非核国日本の国民の意思に反するような態度をとられないことを強く要望しまして、質問を終わります。
  189. 北川石松

    北川委員長 次に、高沢寅男君。
  190. 高沢寅男

    高沢委員 日ソ租税条約について追加の質問の機会をいただきまして、大変ありがとうございます。大変時間が迫っておりますから、条約については一つだけお尋ねをいたしたいと思います。  この条約には議定書がついております。この議定書は、「条約の不可分の一部を成す次の規定を協定した。」こうなっておるわけでありますが、この議定書の目指す内容、及びこういうふうなことならば条約本文に入ってしかるべきでなかったか、本文に入らずに別に議定書という形をとったのはなぜか、そういう内容と形の両面でひとつ御説明を願いたいと思います。
  191. 斉藤邦彦

    ○斉藤(邦)政府委員 御指摘のとおりこの条約には議定書がついておりまして、数点の内容をここに規定してございます。例えば二項におきましては、この条約の基本をなします駐在員事務所の性格、恒久的施設の判定に関する規定がございます。  この規定が、なぜ本文になくて議定書にあるかという点でございますけれども、これは全く条約作成技術の問題でございまして、法律的には御指摘のとおり条約に書くこともできるわけでございます。ただ、今例として申し上げました二項の規定というのは、条約の四条、五条に書いてあります基本原則に対する一種の例外と申しますか、一部修正を図る内容でございますので、従来の租税条約におきますこの条約作成の形式にのっとりまして、この部分だけ議定書に規定した次第でございます。
  192. 高沢寅男

    高沢委員 私、本来は、日ソ租税条約について御質問をして、あと日比の租税条約関連してフィリピンの問題について御質問したいと実は思っていたわけでありますが、既に時間もこういうあれになっておりますから、そのことはきょうはやめにいたしまして、また別途国際情勢の審議などの機会にそういう面もやらせていただきたいと考えております。ただ、それとの関連で、当委員会では各委員の皆さんから、今のマルコス疑惑の関連の中でいろいろの資料提出の要求があるわけでございます。そういう点におきまして、こういう問題の今後の当委員会における十分な審議が進むために、資料の提出につきましてはひとつ積極的な御協力、対応をいただきたいと考える次第でありますが、ひとつ大臣のお立場から、この点についての御見解お尋ねしたいと思います。
  193. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 資料の御提出につきましては、今後とも誠意を持ってできる限りの協力をいたしたいと考えております。
  194. 高沢寅男

    高沢委員 それでは今大臣の言われましたとおり、いろいろ審議において必要な資料がそのたびにあると思いますが、御提出を願いたいと思いますし、また日ソ関係全体については、きょうのこの租税条約との関連で今後のますますの大臣の御努力もお願いをしながら、私の質問を終わりたいと思います。
  195. 北川石松

    北川委員長 これにて本件に対する質疑は終了いたしました。     —————————————
  196. 北川石松

    北川委員長 これより本件に対する討論に入るのでありますが、別に討論の申し出もありませんので、直ちに採決いたします。  本件は承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  197. 北川石松

    北川委員長 起立総員。よって、本件は承認すべきものと決しました。  お諮りいたします。  ただいま議決いたしました本件に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  198. 北川石松

    北川委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     —————————————     〔報告書は附録に掲載〕     —————————————
  199. 北川石松

    北川委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後零時四十三分散会