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安倍国務大臣 今
鯨岡さんから御
質問がありました四点につきまして、順次
お答えを申し上げさせていただきます。
まず第一の点は、具体的に申し上げますと、公明党の
矢野書記長が
訪中されたわけでございますが、この
矢野書記長が
胡耀邦中国共産党書記長に会見されたときに、
中曽根総理の
日中友好に対する
熱意が伝達されまして、
皇室の御
訪中については今後の
課題として検討されるべきものである、こういう
総理のお
考えが表明された、こういうふうに承知しておりますし、その問題が
新聞等でも報道されまして、これに対しまして私から、実は
皇太子の
訪中の問題については
外務大臣としては関知しない、こういうふうに答えた、こういうことで
新聞等にもいろいろと出たわけでございます。
それで、いろいろと各方面からも実は
質問とか、あるいは
皇室外交あるいは
日本の
外交の
あり方についての
質問、批判、そういうものが寄せられたわけでございますが、この問題につきましては、実は
中曽根総理も
国会で答弁しておられまして、
韓国に
皇太子御
夫妻がおいでになる、こういうことを前提にして今、
日本と
韓国の
政府間で協議をすることになっておる、
訪中をされるという問題についてはこの次の
課題として
考えられておる、こういうことを
国会でも述べておられるわけです。我々もそういうふうに
考えておるわけでございますが、これは先の話です。その点について恐らく
中曽根総理が触れられた、こういうことでございます。
しかし、またこれは
一つの先の
課題ではありますけれども、また、
中国側におきましても、
皇太子御
夫妻の
訪中を歓迎するという声は大きく聞かれるわけでございますが、まだこの点については実は
外交ルートでは何ら俎上にのっていないわけでありますし、あくまでもやはりこうした問題は、
外交ルートで処理していかなければならぬことは当然のことであります。特に、
皇室が
外国を訪問されるというときは、
外国においてこれは
国民挙げて歓迎される、こういう雰囲気の中で我々としては訪問していただきたい、そういう立場で十分慎重に
外交ルートで話し合わなければならぬ、こういうふうに
考えておるわけでございます。そういうことで、まだ
日中間においてこの問題は話にのっていない、いわば白紙だということであります。しかし、将来の
課題としては
中曽根総理も言われましたように、
一つの
課題として存在する、その
熱意を伝えられたのだろう、こういうふうに理解しております。いずれは
外交ルートで話し合うということにもなると思いますが、現在ではそうした状況にあるということを御理解をいただきたい、こういうふうに思います。
それから、二番目の問題として
援助問題ですが、
援助についてはおっしゃるように、二国間の
援助と
多国間援助と二つあるわけでございますし、
我が国もやはり
国際機関を通じたこの
多国間援助というものを非常に重視しております。二
国間援助だけでなしに、
多国間援助というものを重視しておりますし、
国際機関、こうした
多国間援助についての
出資、
拠出等を着実に今日もふやしておりまして、例えば一九七四年から八四年までの十年間に
国際機関に対する
出資、
拠出等は、二億四千五百八十万ドルから十八億九千百四十万ドル、七・七倍に増加しておる、こういうことですし、我々は、ですから、
多国間と二国間両方並行してこれをやることが非常に有効であると思っているわけです。
そういう中で、今
アメリカとの間で、
援助でいろいろと
協力関係を保っておるわけですが、今の
お話によると、
戦略的な
援助、
アメリカの
戦略構想に
日本の
援助が乗せられていくのじゃないか、こういう御
心配でございますが、これはないわけです。
援助については、我々は
お互いに話し合っております。これは
次官レベルにおいても、あるいはさらに、私とシュルツさんとの間においても
援助問題について話し合っている。しかし、その
基本はあくまでも
アメリカは
アメリカの
やり方、
日本は
日本の
やり方、
アメリカの
援助というのは、
アメリカ自身の
戦略と
考え方に基づいてやられるわけですし、
日本の
援助は、あくまでも
人道主義とか
相互依存とかいうものを
基本的な
理念として進めているわけです。
基本的に違うわけですね。
それは
アメリカ側にもちゃんと言っているわけです。
アメリカは
アメリカの
援助の
考え方がある、
日本は
日本の
援助の
考え方がある。ですから、一緒になれないところがある。しかし、同時にまた、場合によっては
援助についても両国で協力してやった方が、相手の国に対して非常に効率的、効果的な場合は
お互いに協力してやったらいいのじゃないか。例えば農業問題なんか、タイとか
フィリピンなんかでやっているのですから、そういう
援助で協力して
農業開発等をやれば、一国でやるよりは二国間でやった方が効果を上げるということがあるわけですから、そういう点は大いにやろうじゃないか。
これはECともやるわけですが、これからの
援助はそうした
多国間援助と同時に、二
国間援助だけじゃなくて三国とか四国とか協力してやる場合が、案外成果を上げる場合もあるのじゃないか。アフリカなんかについてもそうです。また、エジプトと話し合ってやろうというふうな計画も立てておりますが、そういうことをやるわけでありまして、決して今おっしゃるように
アメリカの
戦略援助に
日本が乗せられる、それに引きずり込まれていってしまうという
自主性をなくした、主体性をなくしたような
援助というものは
日本は絶対にやりませんから、御理解いただきたいし、御信用いただいて結構だと思います。
それから
マルコス疑惑についてでありますが、これは
中曽根総理も私も申し上げているように、この
マルコス文書が発表されまして、特にその中で
日本の
援助について、その
援助の資金の一部が
マルコスさんに流れたとか、いろいろとそういう点で疑問が出されて、
疑惑が出されて今問題になっておるわけでございます。これは我々としても
日本の
援助ですから、非常に重要な、重大な関心を持たざるを得ないわけであります。
日本の
援助はあくまでも、
フィリピン国民の生活の安定あるいはまた
経済の安定のために使われるのは当然のことでありまして、これがもし間違った方向へ使われるということになれば大変なことでありますから、もしそういう
疑惑があるならば
解明をしなければならない。そうしないと、
援助に対する
国民の信頼というものを我々は維持することができない、こう思いまして、今
解明について
政府は
政府なりに
資料を集めて
努力をしております。
国会もこれを非常に重要視されて、
調査特別委員会をつくるという運びになっておりますし、今もあらゆる
委員会においてこの問題で論議が行われております。ですから、そういう中で
政府としては、
国会が追及される場合もこれに対してできるだけ協力したい、
資料等も提供したい、こういうことでございますが、ただ、
援助につきましても、やはり二国間の
外交問題もあるわけでございますし、例えば
資料等についても、
フィリピン政府が発表しないものを
日本政府が一方的に発表するというわけにはいかないわけです。ですから、そういう点で
日本政府だけが発表しろと言われても、
外交関係を
考えるとなかなかそういうわけにはいかない。その辺については、
フィリピン政府との今後の
話し合いの問題もあるわけです。
我々は、
フィリピン政府との間では
十分話し合いをしたいと思いますし、実はこれまでも
政府間のいろいろの
レベルで
話し合いをしている。これまでの
援助、例えば十二次
援助が残っています、十三次
援助はこれからだ、これをどうするか。私は、
フィリピンの
アキノ政権にとって一番大事な
課題は、今の
フィリピンの
経済をいかに早く回復するかということだろうと思います。それには、十二次、十三次というものを早く実施しなければなりません。それから、さらに新しい
援助も行わなければならぬというふうに思っております。その
あり方等についても、これまでの
援助の
あり方というものを十分踏まえて、どういう形がいいんだということは我々としても柔軟に
考えて対応したい、そして積極的に協力したいというふうに実は思っております。ですから、そういう
話し合いは今続けておりますし、せっかくの新しい民主的な
政権ができたのですから、何とかこれに協力していきたい、こういう
基本的な姿勢であらゆる問題に取り組んでまいりたいと思います。
それから、
広島、
長崎の
原爆の
惨禍を
サミットに参加する
首脳の方々にも認識してもらうために
市長が会うとか、
広島、
長崎の
原爆展を
会場で行うとかそういうふうなことをすべきじゃないか、
日本としても
広島、
長崎というものを、もっとそういう
サミットという非常に
世界的に大きく喧伝される場で
世界に訴えるということが必要じゃないかと言われるわけですが、私はそれはそのとおりだと思います。
広島、
長崎の問題は、これは初めて
日本が
惨禍を受けたわけでありますし、
人類の歴史始まって以来のことですし、これは決して忘れることのできない歴史的な事実であります。こういうものを踏まえて、再び戦争をしてはならないという
基本的理念に立って、
日本の
平和国家としての存立があるわけですから、
広島、
長崎を決して避けて通っているわけではありません。
私も
外務大臣をやっている間に、例えば
国連総会で三回も演説いたしまして、必ず
広島、
長崎の問題、そして
原爆の絶滅といった問題を強く訴えておるわけでありますし、
核実験の
全面禁止というのは
日本がずっと主張し続けております。あるいはまた、二国間の会談の際にも
原爆問題は打ち出して、こうした平和、軍縮、特に核軍縮を強調しております。これは
中曽根総理の
国連の演説でもそうであります。ですから、これは決して避けておるわけじゃありません。
ただ、
サミットは、各国で
一つの申し合わせみたいなものがありまして、何かそうした国の
一つのテーマ、国内のテーマを特別にクローズアップしない、話の内容としては利用するわけですが、そういうものの宣伝といいますか、そういうPRの具に使わないというふうな
一つの申し合わせがあるわけです。イギリスはイギリス、ドイツはドイツ、いろいろと言いたいことがあるのですが、それは会談の中ではいろいろ出てくるでしょうけれども、それを殊さらにアピールして
サミットの場とかなんとかでやらないという、
一つの申し合わせみたいなものがあるわけでございます。
したがって、そういう非常にいい時期ですから、今度は
政治の
課題としては、平和と軍縮の問題が中心
課題になるわけですから、これは必ず
総理大臣も私自身も
広島、
長崎の問題についてはもう一回注意を喚起して、そして軍縮を求めていかなければならぬと思いますけれども、今の展覧会みたいなものを
会場でやるとかいうことは、今までの
サミットの長い間の慣例からしてなかなか難しいわけです。しかし、憲政記念館等でやっていただいて、これを
外務省としても各国あるいは各国から来る
新聞社等に宣伝をして、ぜひとも見ていただきたいということでいろいろとお世話をすることはできるのじゃないかと思います。
また、二国間の会談等もありまして、
広島とか
長崎の
市長さんなんかお見えになって、そして
首脳に対してそれぞれアプローチをされる、
首脳が会われるというなら大変結構だと私は思うわけで、そういうことがあれば、そういう点に対してはいろいろと便宜を図ることもできると思います。しかし、まとまってどうだというふうなことはなかなか困難でありまして、その点は今までの
サミットの
あり方から見まして、特に
日本が主催国であるだけに
会議の雰囲気を大事にしてこれを盛り上げていく、コンセンサスを求めるという非常に大事な役割を持っておりますから、
日本だけ一方的にリードしてやっていくということは難しいわけで、今の
お話の点は十分我々は理解をしておりますし、何とかこれは我々としてもできるだけの便宜は図らなければならぬと思っておりますけれども、その辺にもおのずから
サミットのこれまでの
会議の
あり方から見て限界があるということについては、御理解をいただきたいと思います。