○石橋参考人
日本弁護士連合会の石橋でございます。
日弁連では、昨年の四月から
六ケ所村に
立地予定されております核
燃料サイクル
施設に関する
調査研究をしてまいりました。その主な項目は次のとおりです。
一番目は再
処理の実態について、二番目は電事連と県
知事が環境影響
調査をする前に
立地要請と受諾
決定をしたことについて、三番目は県
知事の県論の集約の過程について、四番目は電事連と原燃二社、電力
会社との関係について、五番目は一般的なことでありますが、
原子力の政策
決定のシステムと法体制についてであります。
これらの項目について現在までに実態
調査をしたところは、次のとおりであります。動燃
事業団の東海
事業所、
青森県庁、
六ケ所村役場、県農協中央会、県商工会連合会、県労
会議、
六ケ所村商工会、漁業協同組合、酪農協同組合、県内住民団体、
日本原燃サービス東京本社、
六ケ所建設準備事務所、
日本原燃産業東京本社、
六ケ所建設準備事務所、
電気事業連合会、
アメリカ・ニューヨーク州ウエストバレー再
処理工場、
アメリカ・ワシントン州ハンフォードサイト、
アメリカの
エネルギー省と
原子力規制委員会、以上でございます。
その
内容なり結果ということでございますが、まだ
調査は継続中でございますので、意見については差し控えさせていただきますけれ
ども、
調査によって得られた主な
内容について申し上げます。
まず再
処理については、先ほど高木さんの方からもお話がありましたが、動燃は年間の再
処理目標を当初二百十トンにしておりました。そこで、五十二年から六十年までの再
処理の合計数量が二百二十トンでございます。これは年間にならしますと約二十四トンということで、年間目標の一割強ということになっております。御存じのとおり、五十八年にはR10とR11の溶解槽の事故がございまして、再
処理の仕事はほとんどやっておりません。この再
処理勘定はどうなっているかといいますと、五十七年度は総費用が二百七十一億円、そのうち、再
処理によって得られた
プルトニウムなんかを売っておりますが、それが四十四億円、純損失が百七十一億円、五十八年度は事故な
どもございまして、総費用が二百七十二億円、再
処理収益が二億五千万円ほど、純損失が二百二十億円というふうになっております。
一方、
アメリカでは、
民間の初めての再
処理工場と言われますニューヨーク州のウエストバレー再
処理工場、これはニュークリア・フュエル・サービスという
会社が始めたものですが、一九六六年から一九七二年まで操業をして、その後は中止しております。それから、南カロライナ州のアライドケミカル社が建設いたしましたバーンウェル再
処理工場は、相当の費用を使って建設途中で中止になっております。そのほか、
政府が始めましたテネシー州のクリンチリバー
高速増殖炉は、八割方できておったわけですけれ
ども、
連邦議会が一九八三年に追加予算の計上を否決いたしまして、結局、建設は中止となっております。
二番目に、環境影響
調査をする前に
立地の
決定をされたということであります。
電事連なり県当局のお話によりますと、むつ小川原
開発計画の際の
調査結果を参考にしたということでございます。そこで、むつ小川原
開発は
石油化学プラントのプロジェクトでございますので、核
燃料サイクル
施設の環境影響
調査対象とはおのずと違うのではないか、こういう御意見もございました。そのほか、地質
調査所の
調査によりますと、この一帯は湖沼が散在しておりまして、降雨あるいは積雪が極めて多く、帯水性に富んでおるという報告がございます。また、むつ小川原
開発の環境アセスメントの報告書によっても、約八十メートル近くまで地下が泥砂性の地質になっているということでございます。それから、この
立地サイトに活断層があるのではないかという弘前大学教授の御
指摘もございます。また、つい最近、隣の国家備蓄基地に不等沈下の問題が起こったわけですが、これらについては県の御回答では、
調査したことはないし、今後もその予定はないということでございます。それから、原燃二社、電事連からの御報告では、現在やっている
事業アセスメントの結果を公開するかという
質問を申し上げたのですが、結果を公開するかどうかは未定であるというお話であります。
三番目に、県論の集約という問題でございます。
これは、先ほど県
知事さんがお話しされておりました。このことについては、例えば組合長とか市町村長がそれぞれの組織を代表して意見を表明されておるわけですけれ
ども、組合長が意見を出すに当たって組合内部で何か
検討したかということについては、
検討していないというようなところもございました。あるいは、この土地は酪農などが盛んでございますが、その酪農協とか農協の中には意見を求められていないということもございました。そのほか、
地元住民への
説明会も、これは県と電事連の共催という形だと思うのですが、各地で一回ございましたけれ
ども、しかし
質問する時間がなかった、あるいは
地元住民で
安全性に対する疑問を持っている方も多いわけですが、講師の方を呼んできて電事連の方と一緒の場でいろいろとお話を聞きたいということを
お願いしているのだが電事連の方では来てくれない、こういうことでございました。これは電事連なり原燃二社の方に私
どもも後に確認したのですが、そういう場には出る予定はないということでございました。
ちなみに、県内世論アンケートについては、五十九年九月十三日付の朝日新聞、結論を「急がない方がよい」が四七%、「早い方がよい」が二七%。それから六十年に入りまして、受諾
決定の前でございますけれ
ども、一月一日の東奥日報、「反対」が三六・四%、「賛成」が二九・二%、「わからない」という層が三三・七%ございました。
四番目に、電事連と原燃二社、電力
会社との関係でございます。
この点は、六十年四月十八日の基本
協定書、五者
協定というふうに呼ばれておりますが、これは原燃二社と県と
六ケ所村役場、それから立会人として電事連が参加されております。そういうことで
地元では、例えば風評被害なり損害があった場合に電事連が何かしてくれるんじゃないか、こういう期待といいますか、気持ちを抱いておるわけですが、去る四月初めの電事連に対する
調査では、電事連は任意団体である、したがいまして
核燃サイクルの費用は電力
会社が負担するのだ、こういう御回答になっております。そういたしますと、この基本
協定書で言う風評被害とか何かは、電事連と原燃二社とか電力
会社とのつながりというのが法的にはまだ
一つ不明ではないか、こういう御意見も聞いております。それから、核
燃料サイクルについての損益に関する
目論見書は
事業主体なり電事連が持っているか、こういう
質問をさしていただいたわけですが、現在のところはないということであります。
最後の、
原子力の政策
決定のシステムあるいは法体制の問題でございます。これは、
日本の
原子力政策というものがどのようなプロセスを経て
決定されて、それが実行に移されているか、こういうことでございます。
まず第一には、
我が国では通産大臣の諮問機関である総合
エネルギー調査会、このあたりで大枠が決まっているのじゃないか、その後で科技庁、
原子力委員会、安全
委員会で指針とか基本
計画、こういうものを策定される、そして実施に移されるわけです。これは例えば本件に関しますと、
昭和五十九年七月二日に総エネの報告書が出ております。「自主的核
燃料サイクルの確立に向けて」こういうサブタイトルがついておりますが、この後
六ケ所の
核燃サイクルが大きく動き
出しております。また、去る三月にも
軽水炉技術高度化
計画、こういうのも
出したりしております。
そこで、申し上げるまでもなくして
原子力は
エネルギー源であると同時に放射能を排出する、こういうマイナスというか、負の側面を持っているわけで、安全の問題というのは避けることはできない、こういうことであります。そこで、
安全審査はじゃどうなっているのかということ、これは行政庁である総理大臣あるいは主務大臣がこの
安全審査をする。今回のこの
改正案についても五十一条の二、
廃棄事業の
許可をするときは、総理大臣は
原子力委員会及び安全
委員会の意見を聞いてこれを尊重するというふうになっています。これは、安全
委員会は安全に関するいろんな所管事項がございますけれ
ども、独立の審査権限を持っていない、こういうことであります。
この点、
アメリカでは一九八〇年に低
レベル放射性廃棄物政策法というのが御
承知のとおり成立をしております。その後、一九八二年に核
廃棄物政策法が成立いたしまして、これらについては
原子力規制委員会がライセンスを発行しないとすべてが動かない、こういうことになっております。また、
連邦議会は核不拡散法によって環境庁なり
原子力規制委員会、こういうような
安全審査について評価あるいは承認をする、こういうことになっております。これは国家の安全という面もございますけれ
ども、
連邦議会がこのように最終的な評価、承認権限を持っている。その過程において相当大がかりな
公聴会を実施しております。そのほかに、環境保護庁は独自の審査
基準を持っております。
これを
日本に置きかえますと、私の
理解するところでは、環境庁は
原子力に関しましてはほとんど審査の
基準なり権限を持っていない。それから国民を代表する国会でございますけれ
ども、これも日々変動する
原子力政策、これの
決定なり推進なりについては余り関与の機会が少ない。専ら内閣総理大臣が
決定して、そして
安全審査もやっていく、こういうことでありまして、若干それぞれの任務なり機能というのを分けた方がいいのじゃないかという気持ちを持っております。
最後に、今後のことでございますけれ
ども、今後は科技庁、
原子力委員会、安全
委員会、
通産省、
資源エネルギー庁、運輸省、防衛庁、防衛
施設庁、これらに対する実態
調査を踏まえまして、六十一年度内に報告書を出す予定でございます。
以上です。