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山川参考人 もう
一つの問題は、SDIがどういうことであるのかという関連の御
質問でございますが、まず御承知おき願いたいのは、
レーガン大統領が八三年、今からほぼ三年前の三月二十三日に初めて戦略防衛構想というものを持ち出しましたときに、ヨーロッパの反響というのはどういうことだったかといいますと、今まで
アメリカはいわゆる核抑止力論を中心とした戦略構想を持っておった。つまり、核の力で平和を守るという
考え方であった。それを捨てるのではないのか、つまり核の傘でヨーロッパを守ってやるという
考え方を捨てたのではないのか、
アメリカ一国だけを
ソ連のICBMその他の攻撃から守るという
考え方に転じたのではないかという疑問がヨーロッパでは噴出をしたわけですね。
同じ
考え方は、きょうは防衛庁
関係の方はおられませんが、正直言って防衛庁の中の本音でございます。これは御承知おき願いたいと思います。つまり、
SDI計画というものは
アメリカ一国を守るための計画なんではないか、
世界じゅうを核の傘で守ってやりますよという今までの
考え方を切りかえたのではないかという疑問が、ヨーロッパでも
日本の防衛庁の本筋のところでも出ておった。これは証拠を挙げろと言われれば、私は挙げることができます。防衛庁内部の文献に出ておりますから、証拠を挙げろと言われれば挙げることができますけれ
ども、そういうものなんだということをまず押さえておいていただきたいと思いますね。
その上でSDIの問題について、全面的なことは申し上げられませんけれ
ども、多少申し上げますと、御承知のように
ソ連から打ち出してくる長距離ミサイルというものを、宇宙空間に置いた衛星あるいはその他の施設をもって、そこから発する鏡などを使いながらレーザー光線あるいはビーム粒子で破壊してしまおうということでございますね。
アメリカだって
ソ連だって同じでありますが、ロケットが打ち上がったときにはほぼ真っすぐに上空に向かって打ち上がっていく、これがブーストの
段階、噴射の
段階と申します。ややしばらく上に上がって斜めに傾いてまいりますね、これがポストブースト、噴射後の
段階と言う。それから一定の与えられた高さまで行って、後はミッドウエーコース、水平で、これは大体二十分くらい飛ぶわけでございますが、そこから最終のターミナルフェースに入る、つまり目標に向かって飛び込んでいく。大まかに言うとこの四
段階で飛んでいく。細かく言われると七
段階に分かれますが、大きく言うと四
段階に分かれる。
そのそれぞれにそれぞれの手法で対応していこうという構想でありますけれ
ども、一番ねらい日なのはブーストの
段階である。つまり噴射直後の
段階、これがそうでございまして、テレビで私たちが素人で見るように、ミサイルだといっても非常にゆっくりゆっくりと上がってまいります。そして後ろ側に猛烈な噴射光を出しているわけでありますから、宇宙空間に張りめぐらされたレーダーその他で非常にキャッチしやすい。しかも今では、ミサイルというのはミッドウエーコースのところに入ってまいりまして、ターミナルフエースに入る直前のところになりますと、例のMaRVということになります。つまり、一発のミサイルから十発以上の核弾頭が出ていくということになりますから、そこではらまかれた後で一発一発の弾頭に対して対処しているというのでは、それは大変手間暇のかかることである。わかりやすく言えば、乗り合いバスに乗っているところで、まだ分解されない前にやっつけてしまった方がいいということになりますから、つまりさっき言った四つの
段階の中の初めの
段階のところ、とりわけてブーストの
段階、噴射の
段階でほとんどを撃ち落としてしまおう。これが
アメリカの
考え方でいえば、六〇%から八〇%まではブーストの
段階で破壊をしてしまおうということになるわけですね。
ところが、そのブーストの
段階というのは、真上に向かって飛び上がっていく
段階というのは、時間でいいますと六十秒から九十秒ぐらいしかありません。その間に、飛び上がったミサイルが演習用なのか、本当に
アメリカに飛んでくるミサイルなのか、ミサイルの頭に本物の核弾頭がついておるのか、おとり、にせものがついておるのか、一体どこに飛んでこようとしておるのか、すべてを
判断をして攻撃をするということになります。それは、これだけ
科学技術が進歩していてもほとんど不可能であろうと思うのですね。それを
判断をして、よし、ならば本当に来るぞ、だからSDIの機能を発揮してよろしいと大統領が命令を下す、それが六十秒ないし九十秒の間にその大統領命令まで含めて取りつけることができるのかどうか、これはほとんどできないと思います。要するに、これはコンピューターで解析する以外にない。だから、
状況が起きた、ばたばたとインプットしたコンピューターで
判断してはっといく。
つまり私の
理解で言えば、SDIというのは核戦争ないし核戦争を誘導するきっかけの発生のための自動装置であります。ほとんどオートメーション装置だ。それを宇宙空間に張りめぐらして平和を守るという言い分がいかにそら恐ろしい得物の言いようであるか、あるいはそれに向かって
協力をするということがいかに人類の幸せに対して反人類的なものであるかということは明確であろうというふうに思います。しかも、SDIというものが一方に構成されれば、一方はそれに対応する
技術を持たないということはありません。対応するものを持つ。
それから、SDIの問題でレーザー光線、ビーム粒子というものを申しましたけれ
ども、レーザー光線を使うと攻撃のスピードはどのくらいの速さになるのか。音速の何十倍か、違います。光線でありますから、光のスピードで攻撃力が飛んでいくわけです。これは、ほとんど人間がこの世に存在をしてから
考えることのできなかった
軍事技術上の大転換を
意味すると思うのですね。光のスピードで攻撃力が飛んでいく。その攻撃力は、福手ミサイルを破壊できる能力があるならば、クレムリンの真ん中に飛び込ましてもいいわけであります。あるいは
ソ連の
軍事基地そのものに、何もICBMに限る必要はないわけでありまして、SDIというものは防御的だということは全く根拠がない。それを防ぐ能力というものを
ソ連側が持ちましょう、対抗側が持ちましょう、それじゃそれを突破する能力をまたつくらなければいかぬということになりますよ。
恐らく盾と矛の
関係、つまり矛盾の
関係でありますけれ
ども、兵器というものは常にそういうふうにして競り上がり、際限のない無限のところに進んできたわけでございますね。それを先ほど言ったようなレベル、宇宙空間まで含めたレベルのところまでその法則を適用していくということでありますから、
SDI計画というのは
レーガン大統領がいかに平和のためだ、防衛のためだというふうに言おうとも、それは僕は許さるべきものではないというふうに
考えます。
時間がございましたらもっと詳細なことを申し上げることもできると思いますけれ
ども、要点そういうことを
お話をして御
判断いただきたいと思います。
もう一点若干つけ加えて申しますと、広義SDI
概念というものは決して宇宙衛星あるいは人工衛星、それから地上から発射したレーザー光線を宇宙空間に張りめぐらした鏡で反射させてというような構想だけではありませんで、アンチサテライト、ASATと申しますけれ
ども、つまり
ソ連側の宇宙衛星を
アメリカ側が事前に攻撃する、そういうプログラムも広義SDIの中には入っております。その場合の攻撃力はどこからやるかといいますと、これは超音速の戦闘機でやるわけでありまして、
アメリカが今
考えておりますのはF15でやるわけであります。
ソ連の衛星というのは地球を回っておりますけれ
ども、南北の軸に非常に近い形で回っておりまして、北極圏の方では上空二千キロぐらいのところを飛びます。ところが、南極は二百キロぐらいの高さを飛ぶわけですね。だから、南極を飛んでいるところで
アメリカの持っておりますF15でそれを撃ち壊してしまう。私の知っておる限りでは、F15をそのために発進させる地政学的な
意味における最大の適地はどこだという問題が
アメリカで
研究されておりますが、その
結論はマルビナス、つまりフォークランドであります。先年紛争の起きましたフォークランドというのは
日本にとっては非常に遠い感じでありますけれ
ども、
SDI計画の中では
軍事的に非常に重要な
意味を持つ。二番目がニュージーランドであります。
それからもう
一つ言いますが、ではそのF15というのは
世界じゅうどこに配備されているのか、
日本はそれとのかかわりはないのかというふうなことも、SDIの問題を
考える場合には重要なことの
一つであるということを申しつけ加えておきます。