○新村(源)
委員 私は、主として
北方領土問題で、これは
外務省が
中心になろうかと思いますが、お
伺いいたします。
この問題は、発生いたしましてから既に四十一年の歳月が流れておるわけです。
領土の持つ意義というのは、私から申し上げるまでもなく、国民がそこに定住をして生計を営む、そしてそういうことを通じて国家社会の
発展に寄与する、こういう国家の基本的な問題であるわけです。第二次大戦で我が国の失ったものは、莫大な、はかり知れないものがあるわけですが、特にそのうちで、いわゆる千島、これは世界三大
漁場の
一つで、なお今日も非常に大きな問題になっております
北洋漁業との関連で、この
領土問題は
日本の将来にとっても非常に大きな問題であろう、こういうように思われるわけです。
私は、世界地図の
北方のここだけをコピーしまして、そして
日本の失われたものはどのくらいあるかということで、おおよそで線を引いてみました。今、
政府が進めております択捉、国後、歯舞、色丹、この四島を
中心にして二百海里を描いてみますと、北海道は御案内のように全国の約二割の面積を持っているわけですが、優にこれの倍以上の区域になるわけです。さらに、これを我が党が主張しております全千島に広げてみますと、これは
日本列島の大体半分以上に匹敵するくらいの大きな
領土問題になってくるわけです。しかも、ここで最も
代表的な資源は海洋資源でございますから、これは地下資源と異なって、掘ればなくなるというものではなくて、農林
漁業資源として再生産をされておる。平たい言葉で言えば、永久にそこから生産される資源ははかり知れない膨大なものがあるわけです。こういうように、我が国にとっては非常に大きな問題でありながら、四十年間の
領土問題に対する経過を見てまいりますと、非常に残念な経過をたどっておるわけです。
これは北海道がつくりました「
北方領土のあらまし」という本でございますが、この中の「
日本の主張」「
ソ連の主張」の変遷を見てまいりますと、一九五六年、これは鳩山さん、河野さんが訪ソされて、
日ソ共同宣言がされたときですが、従来までの
ソ連の主張は、
領土問題というのはもう
解決済みだ、こういうように言っておりましたが、このときには、歯舞、色丹は、
日ソ平和条約が結ばれれば
返還をする、こういうように明確に言っておるわけです。しかしその後、一九六〇年代あるいはそれ以降について、グロムイコ書簡あるいはフルシチョフ書簡を見ますと、もう
領土問題は
解決済みである、こういうように態度が変わってきております。しかしその後、一九七三年に田中元首相が訪ソいたしまして、
日ソ共同声明を発表しております。この中では、また前の言葉を翻して、「双方は第二次大戦後から未
解決の諸問題を
解決し、
平和条約を
締結することが両国間の真の善隣友好
関係の確立に寄与する」云々と、こういうようにまた大きく変わってきておる。
そこで、このように変わっております背景というものを見てまいりますと、
ソビエトがポーランドに介入をした、あるいはアフガニスタンに侵攻した、あるいは大韓航空機が撃墜されたこと等々、こういう問題が起きるたびに今まで積み上げてきたものが、いわゆる
日本の外交姿勢としてアメリカに追随をするということから、そのたびごとに変わって逆戻りをしていっているわけです。
一九八〇年でございますが、私の友人の息子が北洋海域で拿捕されまして、
早期釈放についてぜひひとつ力をかしてくれぬかということで、私は
ソビエト大使館に伺ったことがあります。そのとき対応してくれましたのは、ちょうど大使がいなくて、一等書記官でございましたが、私に会ったときの第一の言葉は、新村さん、
日本はなぜオリンピックに参加してくれないのですか、こういうことが一番最初の問題として投げかけられてくる。こういうようなことが繰り返し繰り返し行われてきて、一体こういう状態で
北方領土が
解決するというような前進があるのか。
そこで私は、
日本は日米安保条約という建前から、あるいは
日本とアメリカとの
経済の緊密化といいますか、こういう立場から、今アメリカにどうしても協調しなければならないという立場があります。しかし、考えてみますと、アメリカと
ソビエトというのは世界の二大国でございますから、世界の各国というのは直接間接にいずれかにかかわり合いを持っておるわけです。いずれかにかかわり合いを持っておりますから、どこかで何か問題が起きると、それは即アメリカと
ソビエトとの
関係に
発展をしてくる。そうすれば、アメリカ側に協調するという立場からいえば、
ソビエトからは必ず反発が出てくる。こういうような外交姿勢で
北方領土というものは、前段に申し上げましたように
日本民族の未来にとって欠くことのできないこういう重要な問題が
解決されていくのかどうか、こういうことを私は改めて考えていかなければならないと考えるわけですが、この点について、長官は直接の
担当大臣ではございませんが、内閣の責任ある立場として御意見をお
伺いしたいし、それからまた、
外務省から
都甲審
議官もいらしておりますから、こういう点についてそういう反省を含めて一体どうだったか、これからどうしていくべきかということをお
伺いしたいと思います。