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仲田政府委員 一般的な景気の情勢で申しますと、現在幸いアメリカの景気は決して落ち込んでおりませんし、思っているよりも力強い足取りで成長していると言うことができまして、世界経済もまあ順調な推移であると一般的には言えると思うのですが、
海運は不幸にして非常に世界的な規模で悪い状態にあります。この状態は、何度も申し上げておりますが、
船腹の過剰、そういう現象がもたらしたものであるということは疑いがない。そうすると、今後の
海運不況の将来を考えるに当たりまして、
船腹過剰状態がいつどうなるんだという
見通しをつけることが一番大事かと思います。
船腹過剰をもたらした
一つの
要因であります商社による船への投資とか、金融が非常に活発に
船腹建造のために資金を回していたという状態がかなりあったわけでございますが、現在の
状況を見ますと、そういう面からのサポートといいますか、
船腹をふやすという
意味での圧力というのはかなり消えつつある、手を引きつつあるということが見えているのではないかと思います。つまり
船腹投資一般に対しての熱が冷えてきた。これは
日本だけではございませんで、香港その他ほかの国においても事実である。こういうことは、翻ってみますと、長期的な
意味で
海運不況が回復するかどうかということを占うに当たっては、逆にいい傾向ではないかというふうに見る見方もございまして、当面、銀行とか金融筋が手を引くということは、
海運の個別的な問題といたしましては、非常に都合が悪い、また痛みを伴うという面がございますが、長期的な
海運全体の方向といたしましては、決して悪くはないのではないかという見方もあるわけでございます。
そうしますと、あとは、そういうサポートがないとすると、現在の船隊、
船腹、定期船、不定期船、それからタンカーがどんな船齢構成になっているか、どんな形でもって自然減耗が行われていくかということが今後を占う
一つの手がかりになるかと思います。
そういう面から見ますと、先ほどから
数字で示しておりますように、老朽化という点では、タンカーの場合には、世界でもかなりのレベルに達しておりまして、もしも十年以上のタンカーは、この五年以内にスクラップされると仮定すると、四割程度のものがなくなる。そんなことが起こるのだったら、かつ石油の荷動き量がこのまま動かないとしても、これはむしろ世界の
海運のマーケットに対して非常なプラスであるという机上の
計算は成り立つわけでございます。
一方、不定期船の方は、御承知のようないろいろな形のばら積み船の
建造がございまして、これはまた非常に性能のいい船でございます。これと、あとはリプレースの
関係でございます。これは将来を占うに当たっては、タンカーにおけるごときいい状態には決してないと思いますが、不定期の場合、特に小さな形のバルカー、三万トンクラスのバルカーの場合には、これは景気そのものといいますよりも、お天気によるといいますか、例えば穀物がどのくらい豊作であるかとか、そんなものによってこのマーケットが支配されることが非常に大きゅうございますので、そういうような需要面の変動ということがこれからのマーケットを占うに当たっての
一つのかぎではないかと思います。
また、定期船につきましては、これは
船腹の過剰ということと同時に、
一つは制度的なもの、アメリカの
海運法の動きというような
行政ベースの話も実はございますが、これはそれなりに
対応することによって、ようやく各定期船会社の間で、現在のようなダンピング競争はやめて、ちゃんともうかるような適正運賃にしようやという機運が出始めてきたような気がいたします、これは楽観的かもしれませんが。こういうような方向がこれからも
促進されれば、年間何百億というようなレベルの欠損が生じながら過当競争をやっているという
状況からは抜け出せるのではないかというふうに考えております。
それから、この
法律自身が三カ年の期限立法である、もう少し長期的に考えたらどうかという御
指摘がございましたが、これは
海運のマーケットを回復するためには早く手を打つ、普通の
ベースに任せていたら二年後、四年後の船も、なるべく早くスクラップしてもらう、三年間に優遇措置を限るということで、それよりも後と予定していたのが前倒しになる、そういう効果を期待しながら期限を切ったわけでございまして、短期的にしか働かない
対策によって長期的な
不況をなるべく早く回復しようという趣旨でございます。