○左近
委員 私は、日本社会党・護憲共同を代表し、本案に反対の討論を行うものであります。
今や、膨大な長期債務を抱え、危機的
状況にある
国鉄の改革は、現下の国政上、緊急の大課題であります。しかしながら、これに取り組む
政府及び
国鉄は、
国鉄の分割・民営化があたかも既成事実かのごとく宣伝し、そのための準備作業と称して、
国鉄職員はもとより国民の気持ちを踏みにじる施策を次々と強行してきております。このような
政府及び
国鉄の
姿勢は、国会軽視も甚だしく、法治国家たる我が国の議会制民主主義のルールを無視するものであって、極めて遺憾なことであり、即刻改めるべきものであります。準備作業といえ
ども、
国鉄改革をいかに行うべきかという
国鉄改革
法案の国会
審議も経ず、立法府の意向を無視して行い得るものでないことは論をまたないところであります。
本案に反対する理由の第一は、まさにこの点にあります。昨年の仁杉
国鉄総裁などの
国鉄幹部の更迭以降の
政府及び
国鉄の一連の対応を見ておりますと、本案が分割・民営化のための
条件整備として提案されたものではないかとの疑念が消しがたいのであります。このような性格を有する本案には、我が党としては断固反対するものであります。
政府及び
国鉄は、来年四月一日実施を
目標に分割・民営化のための準備作業として、現在実施している一連の行動を直ちに中止し、行
政府として真摯な
姿勢で、原点に返って、国民の立場に立った
国鉄改革に取り組むべきであります。
反対理由の第二は、本案による
国鉄の長期債務に係る負担の軽減
措置が極めて不十分であり、緊急にその解決が求められている
国鉄の長期債務問題の根本的な解決にはなり得ない点であります。
なるほど、資金運用部資金に係る債務の一部の
一般会計への承継や、
一般会計からの一定の無利子貸付金に係る債務の償還
期限等の延長については、確かに
国鉄の長期債務に係る負担の軽減に資することになるものではありましょうが、いずれの
措置も、
一般会計の
国鉄に対する貸し付けという形の長期債務として残ることには変わりがなく、
国鉄の長期債務に係る負担の根本的な軽減や解決のための
措置とは言えないのであります。真の
国鉄改革が求められている今日、かかる程度の
措置では、まさに場当たり的な
措置として、単にその解決を先送りするものなどの国民の批判を免れないものであり、到底納得できるものではありません。
反対理由の第三は、現在、
国鉄の
職員が著しく過剰である状態との認識のもとで、二万人という大量の
希望退職者を、労使間における円満な話し合いも行われないまま一方的に
募集しようとしている点であります。
言うまでもなく、
職員が過剰な状態とは、正常な業務の処理のための所要人員に対して実在員が多い状態を指すものでありますが、現状を見ると、
国鉄当局は、業務の外注化や駅の無人化等を強引に進め、運輸
事業の
基本ともいうべき安全面やサービス面での業務を切り捨てることにより、業務量を殊さら減少させるなどして、無理やり著しい過剰状態を作り出していると言っても過言ではないのであります。このように、所要人員そのものが本来の使命を忘れた
国鉄当局の恣意により変動するような状態で、果たして真の
意味での著しい過剰状態だと言えるでしょうか。本案は、このようないいかげんな認識のもとで雇用調整を行おうとするものであり、極めて不適切と言わざるを得ません。
また、
政府及び
国鉄が来年三月までに
希望退職者として募ろうとしている二万人についても、
予算的に二万人分の
特別給付金を計上したので、それだけ
募集する予定であるとの
政府答弁のごとく、その根拠が極めてあいまい、かつずさんなものであります。
さらにまた、本
委員会でも種々の問題点の指摘のあった
職員の広域配転を含めて、現在、
国鉄当局が実施している
余剰人員対策は、
国鉄職員の七割を組織する
国鉄労働組合との間で十分な話し合いも行われず、その意向を無視したままで有無を言わせず強引に行われておりますが、このことが
国鉄改革の円滑な実施のために不可欠な正常な労使
関係の形成を阻害しているとともに、
全国の職場に異常な混乱を生じさせ、
職員に度を超した雇用不安をもたらし、自殺者が続出するという
状況に立ち至っている原因ではないかと思うのであります。
私が今最も心配していることは、こうした
状況下で、安全やサービスなどの面で大きな事故が起きないかということであります。本案による
希望退職者の
募集も同様の延長線上で断行されようとしているものであり、余りにも異常というほかなく、到底容認できないものであります。
反対理由の第四は、二万人の再就職の保証が明確でないという点であります。
三塚運輸大臣は、
退職者についてはいささかも不安をかけないよう就職先について万全の
措置を講じ、一人も路頭に迷わすことはしないと言っているが、現在、
政府において就職先を確保しているのは、
昭和六十一年度分としては、
関連企業への八千人を含め、二万人の半数にも満たない極めて心細い状態であります。
職員の
退職の促進を図るために、手厚い
特別給付金の
支給と相まって、再就職先の確保が車の両輪のごとく整合が保たれつつ実施されなければ実効が上がらないのは言うまでもありません。このような再就職先の確保が不十分な体制のもとで
希望退職者を
募集することは、
職員の雇用不安をますます募らせるばかりであり、断固反対するものであります。
反対理由の第五は、
特別給付金の額が少ないという点であります。
特別給付金の額を十カ月分としたのは、
昭和三十八年当時の旧
電電公社の電話自動化に伴う
電話交換手の
退職促進を図るために設けられた
特別給付金制度等を参考にしたものであるが、その当時はそれは
それなりの理由があったとしても、その後の経済社会情勢の変化や現在の
国鉄職員の業務の内容、さらにその置かれている社会的立場等にかんがみ、決して妥当なものとは認めがたいものであります。
以上をもって、私の反対討論を終わります。(拍手)