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杉浦説明員 国鉄の長い歴史の過程の大部分は、いわば官営
鉄道、公共性というものを頭に置きながら、役所的な
運営ということが多かったかと思います。
昭和二十四年から現在まで参りました公共
企業体というものも、
企業的な能率性を追求しつつ、なおかつ中身としましては、かなり役所的な
運営であった、今
先生おっしゃったとおりであります。そうした中に働いております何十万という職員、やはり働くためには一つの目標といいますか、そういうものをしっかりと与えませんと、大きな
企業でございますのでなかなか動くことができません。そういう
意味におきまして、戦後に限って見ましても、現場の職員はまじめに
国民にサービスをしっかりやる、安全にサービスよくやるんだというような精神を持って、これは代々培われた
鉄道の魂だと思うのですが、そういうようなことで今までやってきた
状況だと思います。またある時期まではそれで十分であったというような感じもするわけでございます。
ところが、今
先生もお触れになりましたように、日本の国の中全体の交通
機関に占める
国鉄の役割というものは、近時、この二十年ぐらいの間でございますが、大変変化をいたしたわけであります。これは日本の経済社会の変化の中におきまして、特に交通
企業の相互間の変化というような中におきまして、従来の独占形態というものは全くそれを変えて、他の輸送手段、特に自動車あるいは航空機との間の激烈な競争裏に置かれるようになったという、その
状況の変化があるわけでございます。
国鉄といえども一つの
企業でございます。本来ならば、その
企業を発展させるためには、あるいは維持させるためには、そうした外界の変化への対応を的確にする必要がある。それがまさしく
民間企業の
企業人のいつも気をつけているところだというふうに私は思うわけでございますが、残念ながら
国鉄の今までの形を見ますと、我々の責任もございますけれども、そうした外界の激烈な変化に的確に対応することがなかったというところ、この辺は深く反省をするわけでございます。今後の
国鉄企業あるいは将来
民間になる場合の
民間企業にいたしましても、問題の中心はこの変化にあると私は思うわけでございます。いわば時代の変化をよく見届けて、その変化に適応し、それを先取りするような、そういう
企業的な精神あるいは常にコスト意識を持ち、他との競争の中で安くサービスを提供するという精神、こういうものが
基本でなければならないというふうに思うわけでございます。
現在の
国鉄におきましても、そういう精神は絶対に必要であるということで、就任以来私なりに、最高幹部あるいは現場、本社におきます管理者諸君等を通じまして、
国鉄の全職員に対しまして、そういうような方向づけというものが絶対必要なのであるということをいろいろな機会に申し上げてきたところであるわけでございます。しかしながら、長い歴史を抱え、大きな
経営体でございます。全職員にこれが浸透することは大変難しい。私、やってみまして非常に痛感をいたしております。しかしながら、そういう方向というものは、やはり絶対に必要であるというふうに思うわけでございまして、今後ともこの辺の職員の意識の
改革につきましては、いろいろな
方法によりまして十分に徹底してまいりたいというふうに思うわけでございます。
今まで
余剰人員対策の一環といたしまして、例えば派遣というような形あるいは直営売店というような形、こういう中に、実は今まで
国鉄としてやってきた仕事と違った新しい仕事につかれた方が随分あるわけであります。そういう人たちの意見を聞きますと、つらいことではあったけれども、今後のあり方について大変参考になって勉強になった、振り返ってみますと、
国鉄で自分らがやってきたことについての能率ある働き度合いというものについて反省すべき点がよくわかったというようなこともお伺いしておるわけでございまして、こういう
意味における一つの気持ちの切りかえ、それが派遣なり直営売店への参加によりまして、参加した諸君あるいはその諸君がもとの職場に復帰して、その周りに与える影響というものは非常にあったというふうに私は思うわけでございます。しかし、これは限られた人数でございまして、全体に及ぼすことはできません。全般的な教育というものは、これからもっとやっていかなければならぬと思います。先ほど来、一つの試みをもちまして、
企業人教育ということで職員七万人を対象にして、今申し上げたような今後のあり方について、これから勉強をしてもらおうということを決めましたのも、その一つのあらわれでございます。
いずれにいたしましても、一つの
企業は、従業員、職員全体の気持ちと
経営者の気持ちとが一体となりまして
運営されなきゃならぬというふうに思います。そういう
意味におきましても、労使というものがこの
企業の
経営というものについて一つの土俵に上がって十分に話し合えるような環境にもしていきたいというふうに思っておるところでございます。
いろいろと難しい
状況ではございますが、諸
先生の御指導、御叱正をいただきながら、私ども頑張っていきたいというふうに思っておるところでございます。