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1986-04-09 第104回国会 衆議院 安全保障特別委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十一年四月九日(水曜日)     午前十時開議 出席委員   委員長 栗原 祐幸君    理事 有馬 元治君 理事 椎名 素夫君    理事 上田  哲君 理事 左近 正男君    理事 渡部 一郎君 理事 吉田 之久君       石原慎太郎君    衛藤征士郎君       大村 襄治君    増岡 博之君       箕輪  登君    森下 元晴君       奥野 一雄君    小林  進君       前川  旦君    神崎 武法君       山田 英介君    東中 光雄君  出席国務大臣         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 加藤 紘一君  出席政府委員         防衛庁参事官  瀬木 博基君         防衛庁参事官  千秋  健君         防衛庁長官官房         長       宍倉 宗夫君         防衛庁防衛局長 西廣 整輝君         防衛庁教育訓練         局長      大高 時男君         防衛庁人事局長 友藤 一隆君         防衛庁経理局長 池田 久克君         防衛庁装備局長 山田 勝久君         防衛施設庁長官 佐々 淳行君         防衛施設庁総務         部長      平   晃君         防衛施設庁施設         部長      宇都 信義君         防衛施設庁建設         部長      大原 舜世君         防衛施設庁労務         部長      岩見 秀男君  委員外出席者         外務省北米局安         全保障課長   岡本 行夫君         大蔵省主計局主         計官      西村 吉正君         気象庁地震火山         部地震火山業務         課長      鈴置 哲朗君         特別委員会第三         調査室長    鎌田  昇君     ————————————— 本日の会議に付した案件  国の安全保障に関する件      ————◇—————
  2. 有馬元治

    有馬委員長代理 これより会議を開きます。  本日は、委員長が所用のため出席がおくれますので、委員長の指定により、私が委員長の職務を行います。  国の安全保障に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。小林進君。
  3. 小林進

    小林(進)委員 私は、当委員会は初めてでございますので、質問は山ほど持っております。どれから始めようかと思ってしばし悩んだのでありますが、いずれにいたしましても新米ですから、やはり過去のこの委員会の歴史を知らなければならぬぞということで、五十八年十二月二十八日に当委員会が設置せられましてから今日に至るまで、この委員会の経過と質問内容をくまなく精査をいたしてまいりました。でありまするから、私自身質問は後回しにいたしまして、過去からずっと続いてきたこの委員会内容について、まず質問いたしたいと思うのであります。  第百一回にはこの委員会は七回開かれております。随分勉強しない委員会だということが明らかだ。それから、第百二通常国会には八回開かれておる。百五十日以上にわたる長い間に、実に勉強しない委員会だということがこの回数でまず明らかになる。去年の臨時国会は辛うじて二回だけ行われている。その百一回の七回開かれた中でも、第一回は、委員会の構成、委員長を選ぶだけで事が終わっている。第二回目になると、外務大臣やら防衛庁長官のつまらない話を聞いてそれで終わっている。また、その中の一回は、歴代防衛庁長官——栗原君がまだ来ないけれども、来たら栗原君にも聞きたいが、アメリカ御機嫌伺いに行って帰ってきた報告、それも二人で同じような報告をやっている。でありまするから、内容を詰めてみると、本当に委員会らしい質問を展開しての会合というものはせいぜい二回か三回だ。その二回か三回も、中を調べてみるとおもしろいんだ。ほかの委員会にない新しい現象としては、与党諸君が実に気楽にしゃべっているということなんだ。ほかの委員会では与党諸君は努めてしゃべらないのに、この委員会は逆なんだ。しかも、しゃべっていることは——余り悪口はいけないからひとつかげんしますけれども、肯綮に当たるような質問一つもない。そういう状況ですから、残念ながらこの委員会を運営する面において委員長は要らない。委員長は前の防衛庁長官だからなおさら内容を知っているわけだ。いま少し密度の濃い内容の深い委員会に改めることをまず第一に希望しておきます。委員長、よろしゅうございますか。
  4. 有馬元治

    有馬委員長代理 承りました。
  5. 小林進

    小林(進)委員 私はなお言いたいのでありますけれども、見ていくと、この委員会は大体言いっ放し、聞きっ放しだな。ちょうどどこかの弁論大会でも聞いているようだ。我が国会における委員会弁論大会じゃありません。しゃべって能事終われりという委員会じゃ困る。  そこで私は具体的にお聞きしますが、百一回のときの第二回、昭和五十九年二月二十九日、この中でPS1の事故の問題について当時の栗原防衛庁長官から説明があって、事故の究明を精力的にやって報告いたしますと約束している。その報告はどうなったか、まずこれをお聞きしましょう。報告しましたか。
  6. 西廣整輝

    西廣政府委員 私所掌でございませんが、当時やっておりましたのでお答えいたしますが、防衛庁として事故調査をやりましてまとめたものを国会に御報告いたしました。
  7. 小林進

    小林(進)委員 私もこのメンバーになったのですから、遅まきながら私にもその資料を届けるようにしてもらいたい。  それから、五十九年四月二十四日、第四回の三沢基地等中心とする質問が行われているが、その中で、核を用いない、通常兵器による戦争が、世界的に見て大規模なものが七十回行われている、こういう数字はむだに聞かしてはいけない。この七十回という数字を具体的に書類で私の方へ届けてもらいたい。単なる言いっ放し、聞きっ放してはいけません。こういうことは重大ですから、具体的な名前を挙げて私のところへ通知をしてもらいたい。  それから、五十九年の八月三日、第五回の会合です。そのときには安保条約四条と六条の問題を中心質問が行われているが、その中で中央指揮所見学について委員の中から要望が出ている。これに対して十分考慮いたしますと返事がされているが、その後この問題はどうなりましたか。
  8. 西廣整輝

    西廣政府委員 中央指揮所見学につきましては幾つかの委員会から御要望がございまして、具体的な御要望があった点については終わっております。  当委員会については、まだ具体的な御要望が出ておりませんので実施はいたしておりませんが、いつでもできるような状況になっております。(「行ったよ」と呼ぶ者あり)失礼しました。衆議院の安保特の方は既にごらんいただいております。
  9. 小林進

    小林(進)委員 行ったのか——行ったんだな。おれは耳が少し遠いから、日本語でなければ聞こえないんだ。日本語で答えてもらいたい。行ったんですな。
  10. 有馬元治

    有馬委員長代理 小林委員、当委員会は行きました。
  11. 小林進

    小林(進)委員 あの答弁にこたえて行った。これは我が党の委員から発案されたのです。我が党というのはおもしろい党で、自衛隊防衛には反対だから、反対のものは余り見るなという一つの原則がある。     〔有馬委員長代理退席委員長着席〕  加藤君、私は物事は反対するにしても賛成するにしてもまず実事求是といって、実際に物を知らなければだめだ、こういう考えで実は自衛隊のいわゆるデモンストレーションというか、そういうのを見たいと思ってあなたに申し込んだことがある。事実を見た上で論陣を張ろうと思ったら、我が党から、自衛隊のそういうデモンストレーションは見てはいけないといって歯どめをかけられたから、残念ながら、あなたに申し込んだけれども私は取り消したことがある、あなた記憶があるでしょう。ところが、中央指揮所というのは我が党はどうなったのか知らないけれども、見に行ったのか。——見に行ったならそれでよろしい、我が党の朝令暮改みたいなものかもしれない。それはそれでいいが、それなら私もこれを一回見せてもらいますから、今要望いたしておきます。  それから、栗原委員長、今ちょうどお帰りになった。私は今あなたの防衛庁長官時代のことを質問しているのです。私は、この速記録を全部読んだのです。初年兵だから読まなければ、過去のことを知らないで、のこのこ来て出しゃばって質問しては先輩各位に対して失礼だから、ちゃんと読んできました。その中で一つ私は感心したことがある。それは防衛庁長官が十月十六日、閉会中の質問に、我が党の左近君の質問に対してあなたがこういう回答をしているんだよ。ソ連に対する脅威論については日米の間に受け取り方の違いがあると言っている。あなたが言ったでしょう。記憶があるでしょう。アメリカベトナム等やその他の問題でお互いに血を流しているから非常に感ずるけれども、我が日本はどうもそれほど脅威感を身につまされて考えていない、ソ連脅威というものに対して、云々という答弁がある。これは私は非常にいい答弁だと思っている。いい答弁じゃない、正直な答弁だと思っている。その後はよくないがね。その後へいくというと、だから国民を教育してやっぱりソ連脅威というものをもっとうんと浸透させなければならないなんということを言っている。あれがなければ立派なんだ。国民というものは主権者なんだよ。いかに自民党が扇動しようとアメリカが扇動しようと、国民というものはソ連というものが日本にどれほどの圧力を加え、どれほど危険であるかということは彼らが一番敏感なんだ。一番正直なんだ。そういう正直なのを、努めて過剰ないわゆる恐怖論脅威論を出して国民を扇動しているというのが今の日本のいわゆる防衛体制、いみじくもそこをあなたは言っただけ、まだ栗原君は加藤君より見込みがあるわいと私は感じたから、一応ひとつ敬意を表しておきます。  それから第百二回、八回の開催をやっている。その中の第一回というのはいつも言うように委員長就任で、森下君の就任だけで終わっているのだが、第三回目のときに青木日出雄田久保忠衛、これは米ソ首脳会談に関する参考人としての長い解説を承って、それぞれの質問をされているんだけれども、一体このメンバーを選んだのはどういう観点からこの二人を選ばれたのですか。これを選んだのは委員会で選ばれたのですか。——理事会でお選びになった、これは仕方がないな。  そこで私は質問をするのでありますが、五十九年の八月三日の第五回の、これは我が上田委員が主として四条、六条の問題で実にきめの細かい論陣を張っていられるんだが、その中で、陸海空の日本自衛隊のいわゆる定数補充率だな、補充率というかこれがどこまでいっているのかということに対して、陸上は十八万人ですかに対して八六二三二%、充足率といいましょうか補充率といいましょうか。それから海上、航空は九六%、まあまあ定員満願までにほど返しというところまでいっておるという、こういう問題なんだな。この問題について、六十年にはこの増員重点項目にするということを、これは当時の防衛庁長官も官僚も繰り返し答弁をしている。ところが今度はその六十年に至って、六十年の四月八日のこれは自民党の中川君の質問なんだが、自衛隊充足率はどうなっているかということをまた同じく繰り返している。その中の答弁が、八六%強でございますと軽く流している。これは一体どういうことなんだ。その前には、六十年にはこういうふうにまだ八六・三三%だがこの充足をやります、重点項目にしてやるんです、こういうことをこの委員会で明確に約束しておきながら、一年たったその六十年の四月八日には八六%強でございますと軽く受け流している。これは一体どういうことだ。繰り返して言うようにこの委員会は何も弁論大会じゃないんだ。聞きっ放し、言いっ放しで終わるわけじゃない。充足をしますと言ったからにはどこかに形があらわれていなければならぬはずだが、一体どうなっているんですか。それをちょっと……。
  12. 加藤紘一

    加藤国務大臣 陸上自衛隊は現在十八万人の定員を持っておりますけれども、八六・三三%なものですから、これの充足率向上は私たち栗原長官時代にも私の時代にもできるだけ上げたいという希望を持って、その旨この委員会でお話し申し上げました。そして現実に、六十年度の予算要求のときも六十一年度の予算要求のときもそれを私たちは強く要望いたしましたけれども、財政当局の資源の配分の件それから限られた防衛費予算増の中で他の政策との関連もございまして、どうしても六十年、六十一年ではあきらめざるを得ませんでした。六十二年におきましても増員要求のために今後とも努力していきたい、こう思っておりますが、なかなか財源的に厳しいところがございます。
  13. 小林進

    小林(進)委員 私はそういう官僚的な言い逃れみたいな答弁を聞くためにこの委員会へ来たわけじゃないのです。できないならできないていいじゃないですか。五十九年のこの委員会で、重点項目なんだ、重点項目ですから翌年には増員を必ず要求いたしますと速記録つけて答弁しているじゃないか。それでその六十年度には六%なり七%なりのちゃんと自衛隊予算というものは増枠になっている。なっていろんならその増枠の中で、重点項目ですから八六・三三%では了承できないからこれを増員いたします、そういうことを要求するのならばちゃんとそれを実行して、かくなりましたという結果を見せなければいけない。できないならそのとき言えばいいじゃないか。我々は要求は持っておりますけれども、予算の這般の事情、アメリカ圧力、そういうことでどうも困難と思いますというならそういうように答弁すればよろしい。人をだましたりその場限りの答弁なんというものは国会の中じゃ許されないという、そういう責任ある態度でひとつ終始をしてもらいたいね。さもなければ我々は何も貴重な時間を持ってここでしゃべる理由はないのだ。どうです、一体。
  14. 加藤紘一

    加藤国務大臣 全般的にはそういう充足率向上、なかなか難しいのですが、先ほどの答弁を若干補足いたしますと、本年度はいわゆるスーパーピューマ陸上自衛隊で運用するようになりましたので、充足率は〇・〇二%ほど上がります。しかしそれはごく限られた数字でございます。どうしても全体の予算配分という問題の中で厳しい壁があるということは率直に申し上げなければいけないと思います。  そこで、では海と空の方はどうなのかといいますと、そっちの方は比較的装備自身を運用するためにどうしても人が要るという部分がありますので、そっちの方は上がっていきますけれども、陸の場合には必ずしも諸外国、平時のときには定員どおりになっていない。充足率につきましては、そのときどきの状況に応じてというのを諸外国とっているように思いますけれども、そういった配慮もございまして、必ずしも現在陸の充足率向上がここ近々一〇〇%近いというところまでいくということはなかなか難しいと思っております。
  15. 小林進

    小林(進)委員 私は今年度の充足を聞いているんじゃないんだ、六十一年度の予算を聞いているんじゃないんだ。私は先ほどから言うように五十九年度、六十年度にこの委員会で繰り返された前後十七回の速記録を眺めて、その速記録がいかにまじめに実施し行動されているか、聞く方もどれだけのまじめさをもって質問し、答える方もどれだけそれを受けとめているかということを私は今聞いているんですよ。ところが、その中には、言いっ放しでちっとも事実上行われていないじゃないかということを言っている。ことしは何%ふやせばということを私は聞いているんではない。  まだこの中に、私は、この十七回繰り返された質疑の中では矛盾だらけ質問したいことがたくさんあるけれども、もう紙が回ってきたから、これは後日に譲りまして、きょうはほんの序の口にして終わりますが、それにしても、きのうの本会議においてあなたは何ですか。また陸上自衛隊員六百有余名をふやすというのでしょう。定数の十八万に対してもまだ八六%もいかないで、いわゆる能事に追われているときに、何で新しく——それは任務が違うといったって、六百有余名もふやす必要があるのか。通信は別ですよ。通信の問題は別だが、陸上自衛隊がこれほども欠員だらけなのにもかかわらず、なぜこれをふやす必要があるかということは、どうあなたたちが抗弁しようとも、了承できない。ちゃんと人数だけ満たしておいて、なお足りないから、それだからやらせてくれと言うのならともかく、穴だらけにしておいて、そしてペーパーの人員だけをふやして、いやしくも国民をどうも扇動するような小手先細工は了承できないというんだ。それとも、言い分があるのか。聞けば、それで質問時間が終わりだろう。
  16. 加藤紘一

    加藤国務大臣 若干御説明させていただきますけれども、きのう私たちが本会議趣旨説明し、お願い申し上げましたのは定員増ではありますけれども、それは海と空のものそれから統幕のものでございまして、陸の方につきましては定員を満たしておりませんから、定員増要求しておりません。  ただ、先生今御指摘のように、陸の充足率がなぜ上がらないのかというような問題につきましては、御指摘のように幾つかここで討議されました。時間がないので、若干走りの答弁に過去なっているかと思いますが、なぜ陸の場合の充足率が現在の状況であるのか、その本質というものを、平時体制のこと、有事体制のことも含めて、内容にわたって本来はもっと私たちも御議論に応じなければならないのではないかな、こう思っております。
  17. 小林進

    小林(進)委員 今の回答にも満足を得ませんから、一切を留保いたしまして、時間が参りましたから、これで私の質問を終わります。
  18. 栗原祐幸

  19. 上田哲

    上田(哲)委員 ワインバーガー長官が四月三日から来日いたしました。そこで、長官あるいは総理との会談をされた趣でありますが、SDIについて御論議があったようであります。ワインバーガー長官は、「日本のように技術水準の高い国の参加は極めて有意義である、日本参加を強く促した」と伝えられているわけでありますが、これに対して長官はどのようにお答えになった、あるいはどのようにお受け取りになったか。
  20. 加藤紘一

    加藤国務大臣 ワインバーガー長官は、私との会談におきましてもSDIについての概括的な構想を述べられ、それがいろいろなところでなかなか理解してくれない人も一部にはいる、しかし、自分たちとしては、防御兵器を主体で考えるということが国際的な安定のために寄与することであろうと思うし、そのためには、日本の大変高い技術水準というものは、参加していただければ非常に役立つものであるというような趣旨のことを述べられました。ただ、私たちの方からは、SDIというものは日本では外務省外務大臣中心にまとめられておりますので、特にコメントはいたしませんで、防衛庁としても、SDI構想全体につきましては非常に強い関心を持って勉強いたしております、そういうことだけ申し上げた次第です。
  21. 上田哲

    上田(哲)委員 極めて端的にお伺いすると、ワインバーガー長官は今までよりは強くSDIへの参加を促された、そして、日本側としてはこれまでどおりで変わらなかった、こういうふうにとらえていいのでしょうか。
  22. 加藤紘一

    加藤国務大臣 全体的に、ワインバーガー長官から日本外務大臣参加を招請されたかつての書簡とか従来の発言から見ましたら、強くもなっていないし弱くもなっていないというのが正直な感じではないかな、こう思っております。(上田(哲)委員日本側としては」と呼ぶ)日本側態度は、外務大臣総理お答えになっておりますように、ここ二、三カ月は特に変わってないのじゃないかなと思います。
  23. 上田哲

    上田(哲)委員 御答弁趣旨は、アメリカ側ワインバーガー長官はこれまで以上に強く要求したわけではない、日本側も変わらなかった、こういうことだというふうに理解いたしました。  アメリカに行っている第三次調査団渡辺外務省北米局審議官がワシントンで記者会見をして、二つのことを言っております。アメリカ政府アメリカ企業の間に協力体制ががっちり固まって、一緒にどっとやろうとしているようであると思った。それから、我々日本側としてはSDI研究に理解を深めた。この発言は、いわばこの調査団のリーダーである渡辺審議官発言としては、非常に前向きに踏み込んだ、こういうふうに受け取るべきではないかと思うのですが。
  24. 加藤紘一

    加藤国務大臣 調査団はたしか十一日前後に帰ってくるのではないかと思いますけれども、その報告を聞いてみないと、なかなかコメントできないことだと思います。
  25. 上田哲

    上田(哲)委員 日本側アメリカ側も変わってないのだとすると、国会でも発言され注目をされている、いわば最終的だと言われている第三次調査団責任者がこういう発言をしたということは、やや不謹慎ではないか、あるいは本音を述べたのではないか。これはいかがでしょうか。
  26. 岡本行夫

    岡本説明員 ただいま第三次官民合同調査団が訪米中でございます。その調査団目的は、これまで我が方としていろいろSDIの持つ意味、それからアメリカでの研究進展ぐあい等研究してきたものでございますけれども、技術的な側面につきまして、専門的な知見を有する民間専門家の方々においでいただいて、今やっておるわけでございます。  そこで、御質問渡辺団長発言でございますけれども、これは一般的な形で、米側研究の成果が今進展しつつあるという印象を述べ、かつ米側受け入れ態勢について満足の意を表した。一応今回の調査団目的は達することができた、このような発言であったと了解しております。
  27. 上田哲

    上田(哲)委員 そんな答弁は聞いてもしようがないのだ。何のために行ったかぐらいのことは、既に国会質疑が行われている。そういう上に立った調査団長がこういう発言をするということは、一歩踏み込んだと受け取るのが常識ではないか。これは大臣に承っておる。こういう発言というのは、当然、民間主導という形ではありながら、SDIへの参加に一歩踏み込んだ表現であると受け取らなければならぬと思うのですが、大臣、いかがですか。
  28. 加藤紘一

    加藤国務大臣 繰り返しますけれども、やはり調査団が来て、外務省中心にその報告を聞くわけですけれども、コメントはその報告を聞いてからにさせていただきたいと思っております。  しかし、いずれにしろ、この調査団アメリカに行きましたのは、一体どういう研究をしているんだろうかとか、それぞれ政府側民間企業、特に研究所との間にどういうコンビネーションがとれているんだろうかとか、そういう事実を調査に行ったわけでありまして、その調査というものの目的から、そういった研究体制の進みぐあいがよくわかったというような意味なんではないかな、僕は新聞を読みながらそう感じましたけれども、そこから先のことは、やはり調査団が来て、正式に政府部内で聞いてからにさせていただきたいと思います。
  29. 上田哲

    上田(哲)委員 我々はそういうふうに受け取るのが常識だと思っていますが、今の長官の御答弁を受けて言えば、帰ってきてから報告を聞く。すぐ帰ってくるわけですから、帰ってきてから報告を聞く、あるいは報告書を出すということのために、政府としては閣僚級各省連絡会議を設置されるというふうに私の方は了解をしております。そういうことでしょうか、端的に答えてください。
  30. 岡本行夫

    岡本説明員 調査団報告が出まして、その後それをもとにして我が方の対応ぶりを慎重に検討していくということでございまして、そのやり方等についてはまだ決まった合意があるわけではございません。
  31. 上田哲

    上田(哲)委員 大臣閣僚級連絡会議を設けることは政府ではもう決まっているわけでしょう。そうなれば閣僚級各省連絡会議には防衛庁が当然入るわけですから、大臣としてその辺をひとつ明確にしてください。そうでないとずるずるといってしまうのだろうと思うから、慎重にやるのだと言われるのであれば、その報告をどういう形に受け取るのかということをしっかり聞いておかなければならない。閣僚級各省連絡会議が持たれるのだと私は理解しておるのですが、そうでしょう。
  32. 加藤紘一

    加藤国務大臣 いずれ政府部内、関係省庁で討議をしなければならないと思いますけれども、それがどういう形になるかということは、外務省が幹事役、中心でございまして、私たちの方にはまだ連絡が来ておりません。
  33. 上田哲

    上田(哲)委員 連絡会議を持たれる情報をキャッチをして、私は聞いておるのであります。  それでは角度を変えますが、いつごろまでに報告書を出させる、あるいはいつごろまでに報告書が出るものと期待をされていますか。またこれは先のことだからわからぬなんということじゃなくて、ぴしっと答えてください。
  34. 岡本行夫

    岡本説明員 先ほど来防衛庁長官が御答弁なさっておりますように、調査団が帰国いたしましてその報告を聞きましてから、我々の方としても報告書がいつごろまでにあるいは報告がいつごろまでにまとまるかというめどがつけられるものと思っておりまして、現時点では確かなお答えはいたしかねるところでございます。
  35. 上田哲

    上田(哲)委員 そういう答弁は要らないから、関係閣僚として大臣に承っておきます。報告書はどんな形であれ東京サミットまでに出ますか。
  36. 加藤紘一

    加藤国務大臣 これは事務局が外務省でございますので、私たちの方から申し上げることはちょっと無理だろうと思います、
  37. 上田哲

    上田(哲)委員 私は非常にテンポが速くなっていると思うし、それが渡辺審議官のワシントンにおける発言であると判断します。こういう発言をすることは不謹慎であるということを一本くぎを刺しておきます。  そこで三宅島でありますが、四月三日、ワインバーガー長官が、藤尾政調会長の言葉によれば一つのめどをつけるために来日をいたしました。同日、私ども社会党は党としての代表団を三宅島に送りました。私は団長として参加いたしましたが、昼夜千五百人に及ぶ大集会が行われまして、その席上、寺沢村長から、総理及び防衛庁長官あてにワインバーガー国防長官あての、NLP設置反対、空港反対説明会を受けることができないという申し入れの打電をいたしました。野党第一党の全員の署名をもって行った申し入れでもありますから十分に伝えられたものと思いますが、ワインバーガー長官にどのような形でどのようにお伝えになったか、承りたい。
  38. 加藤紘一

    加藤国務大臣 NLPの訓練場の問題については、ワインバーガ一長官の方からも大変強い関心と期待が表明されております。念のために申し上げておきますが、アメリカ側としては三宅島にしてほしいとかどこにしてほしいとかという具体的な地名はございません。ただ、今の厚木飛行場では米軍としても訓練に支障があるし、御迷惑もかけているので、この問題の解決は何とかお願いできないかということでございました。そして、アメリカ側も私たちが現実に三宅島ということでお願いしていることは存じておりまして、また、それについての反対も現在強いことはワインバーガー長官もよく知っておりまして話題になりました。  そこで私の方から、現在でもまだ非常に強い反対があります、私たちは理解を求めるために努力しております、村長さんも反対ですしと正式の会談でそういうことを言いまして、また、その強い意向が表明されておりますということは伝えでございます。現に、その前日だったと思いますけれども、私のところに社会党代表団ということで、上田哲先生、上田卓三先生、井上一成先生、後藤茂先生、佐藤徳雄先生、左近正男先生、沢田広先生その他の連名の電報を正式にいただいておりますし、同日、寺沢村長からの電報も届いておりまして、その点は、私とワインバーガー長官との昼食の席で、二人で二、三時間もしゃべっておるものですから、具体的にちゃんと伝えでございます。
  39. 上田哲

    上田(哲)委員 社会党が、浅沼稲次郎元委員長の生地であり銅像も建っている、その銅像の前に、衆参両院全員の署名を携えてお誓いし、そして正式に総理防衛庁長官を通じてワインバーガー長官に意思表示するように依頼し、お伝えいただいたということでありますが、社会党国会議員全員が漏れなく署名し浅沼元委員長の志も含めて断固反対であるということを申し上げたことを、長官としてはどのように把握して理解しておられますか。
  40. 加藤紘一

    加藤国務大臣 それは大きな事実として米側にも状況説明はしてありますし、だからこそ私たちはこれから精いっぱいの説得、御理解をいただくように努力しなければならぬ、こんなふうに思っております。  問題なのは、私が電報を見ても感じましたのは、直接会ってお話ししないとなかなか誤解が解けない部分があるなどいう感じがいたしました。先生の電文にもありますけれども、電文の中に基地という言葉が使ってありますが、基地という言葉の持つイメージではないのでございます。それは、確かに基地といいますとカービン銃を持った米兵が何十人も駐屯し、鉄条網が張りめぐらされるという感じでございますけれども、官民共同の飛行場でございまして、そこで年間何十日か一日数時間の訓練をさせていただきたい、それで飛行機はすぐその日のうちに帰ってしまう、常駐する人間は訓練の前後に十人かそこいらは誘導要員でいるかもしれませんが、そういった種類のものであって、例えば婦女暴行で綱紀が乱れるような話ではないということを私は直接お話し申し上げたいなという感じを、私はあの電文で受けました。
  41. 上田哲

    上田(哲)委員 かりにも野党第一党が委員長以下全員の署名で申し入れているということの意味をどのくらい重く受け取っておられるかということを私は質問したわけでありますが、長官のPRの場にされては甚だ心外であります。  もう少し具体的にお伺いいたしますが、これまでも政府側説明では、いかなる日米間の会談においてもアメリカ側からは三宅島という地名は出ておらぬということでありました。今回もワインバーガー長官から三宅島という具体的な地名は出なかった、こういうふうに理解していいですね。
  42. 加藤紘一

    加藤国務大臣 あくまでも米側は、厚木の現状というものは問題があろうと思うのでほかに適当な場所がないかということでずっと一貫しております。今回も、ワインバーガーさんは日本側が三宅に候補地を絞ってお願いしているということはもちろん百も承知でございますが、米側が三宅にしてほしいとかどこどこにしてほしいと言う立場にはないということをよく承知しておりまして、ぜひ三宅につくってくれという話ではありません。私たちが候補地をいろいろ探した結果、確かに三宅島に大変な御迷惑をかけるが何とかお願いできないかと言っておるものでございます。
  43. 上田哲

    上田(哲)委員 百も承知というところが問題なのでありまして、百も承知だがあえて向こう側から言われたのではないという形のために地名を言及しないということであるとしても、私たちは三宅という言葉をアメリカ側がまだ言及するに至っていないということを一つ手がかりとしてポイントにいたします。  なおまた、国防長官は三宅島における話し合いなり工作なりの進捗状況、あるいは期限などについて言及されていますか、いませんか。
  44. 加藤紘一

    加藤国務大臣 言及いたしておりません。
  45. 上田哲

    上田(哲)委員 そうしますと、藤尾政調会長が現地へ行かれてワインバーガー長官の来日、あるいは東京サミットまでという幾つかの期限、めどをつけたいと言われている。総理は私に対してもこの国会の場でめどはない、めどの内容はないと言われたのだが、どうも本音は藤尾政調会長の言葉の中から酌み取らざるを得ない。そうすると、今のお話を聞いていると、ワインバーガー長官が来日されたことにおいて三宅島NLP問題については何らかのめどがついたとか、そういう意味で、あるめどをつくるべく前進をしたとかという事態はないというふうに理解できますね。
  46. 加藤紘一

    加藤国務大臣 私たちは、厚木の現状等いろいろな事情を考慮しますと、できるだけ早くこの問題は解決しなければならないと思っておりますけれども、特にいつまでとか、そういう期限を切ったものではございません。できるだけ早く解決し、またそのためにも三宅島の方々といろいろ直接お話し申し上げて御理解をいただけるように努力していきたい、こう思っております。
  47. 上田哲

    上田(哲)委員 少なくともこの来日によって日米防衛首脳会談あるいは総理との会談の中でも何らかのめどというものが前進したのではないんだということを理解しておきます。  七百億円の問題であります。七百億円というまことに乱暴というべき中身のない見返り事業案が出された。これについては、伝えられるところによりますと、総理防衛庁長官、都議会自民党との間に大変綿密な根回しが行われたと言われておりまして、四月四日の参議院予算委員会で、総理は村の負担にならないよう特別措置をとりたい、こういう言葉を丁寧に発言された。その前に、四日午前に総理防衛庁長官が合意をされて、三宅島だけを対象とする特別立法を考えるということがあって、このような総理発言となった、こういうふうに伝えられておりますが、いかがですか。
  48. 加藤紘一

    加藤国務大臣 その三宅島に仮に設置することを島の皆々様が受け入れていただけるならば、私たちとしては、その分御迷惑をかけるわけですから、地域の発展、島の振興策についてできる限りの御協力を申し上げなければならない、こう思っております。そういう私たちとか、党の気持ちを藤尾政調会長が素案としていろいろな形で案を提示をされたわけでございますが、政府側としてもこの問題は真剣に考えております。  そうした場合に、二つ問題がございまして、一つは、一体島の方々が本当にどんな事業を御希望なのであろうか。余り大きな事業ではなくて、逆に言えば、ある地区には火葬場がないからそれの設置の方がいいのではないかというような誘致賛成派の方のお言葉もあって、そうなるとやはり島の中にいる人たちのお気持ちを聞いてその政策を立てるのが一番いいのだな、こんなふうに思っております。  それから二番目の問題は、実際にいろいろな国等が事業をやってくれるといっても、必ず地元負担が伴うではないか。確かに離島であり、なおかつ防衛施設の関係だから補助率は高いといっても、何らかの地元負担があるので、それが島の財政からいって負担できるわけがないという心配が島の中に非常に強くあるということを私たち承知しております。東京都からもそう言われております。そこで、この問題をどうしようかということをその当日、総理大臣と私が話し合いまして、そして総理大臣もそこは真剣に考えていかなければいけないということで、その結果、私と正式に打ち合わせた結果の答弁が、実はその日の午前でしたか、三宅の地元負担の問題についての総理答弁となったものでありまして、総理は十分にお考えの上、あの表現を使われたものでございます。
  49. 上田哲

    上田(哲)委員 それは私はそうではないと思うのです。事実関係としては、今お認めになりましたように、総理長官でこの問題についての十分な合意があると言われる。確かに三月二十五日の都議会で東京都の鈴木知事がそのような答弁をしております。そしてまた、四月の初めに都議会の自民党最高幹部なる方が防衛庁長官とも相談をされた、その上に立っての長官総理の合意であると言われるわけでありましょう。しかし実際には、例えば三月四日、都議会の本会議で鈴木知事は七百億円などということは全く聞いておらぬという答弁をしております。この短期間でこんな形ですいすいと話が進んでいくのはおかしい。特に鈴木知事の言動をずっと追ってみますと、三月二十五日の発言というのが大きく取り上げられ、そこから国が動いたというのですが、知事は自民党質疑に対して答えたものでありますし、言葉としては特別立法などというようなものも考えねばならぬという非常にあいまいな言い方でありまして、それやこれやを考え合わせながら、日本じゅうにたくさんの米軍基地が星の数ほど散らばっている中で、とりわけ三宅島だけを対象とする特別立法などというものは不可能であるというふうに私は考えるのです。長官に承り、また財政当局からもそういうことが可能なのかどうか、伺っておきたいと思います。
  50. 加藤紘一

    加藤国務大臣 私たちは、総理答弁されましたように、仮にお引き受けいただけるならば種々の事業をし、そしてその中で村の御負担が余りかからないように特別な措置、つまりいろいろなことを考えて実態的に余り御迷惑にならぬようにすべての知恵を使うという心づもりでおりまして、そのことはこういう正式の委員会で申し上げていることでございますし、総理大臣予算委員会の場で総理としてお答えになっておるわけでございますので、その意は十分にお酌み取りいただきたいと思います。
  51. 上田哲

    上田(哲)委員 大蔵省。
  52. 西村吉正

    ○西村説明員 三宅島の問題につきまして各方面にいろいろなお考え方なり構想があることは、私どもも興味を持って注目はしておりますが、いまだ私どもに御相談があるとかいうことはございません。先生御指摘のような問題については、そういう御相談がありましたら私どもとしても十分に慎重に検討してまいりたいと思っております。
  53. 上田哲

    上田(哲)委員 再三にわたって防衛庁長官がこういう公式の席で言っているんだからといわれ、総理発言が既に参議院の予算委員会段階で行われているわけであります。これは十分ここで判断できるわけですから、では一般論として承っておくが、こういう特別立法なんというものはできますか。また、できるとすれば財源はどこから持ってきますか、大蔵省。
  54. 西村吉正

    ○西村説明員 繰り返しになって恐縮でございますが、私ども、三宅島の問題についてどういう形でどういう内容の御相談があるかということを今の段階で前提を置きまして考えるというのはなかなか難しいわけでございまして、現段階でそのような点についての財政当局としてのコメントは差し控えさしていただきたいと存じます。
  55. 上田哲

    上田(哲)委員 そんなばかなことはない。一般論として伺うが、たくさんある基地の中で三宅島だけに特別立法をするなんということが財政論上できますか。あるいは政治的にそうしたことが引き起こしてくるさまざまな問題を考えた場合に、そのようなことが少なくとも望ましいと思いますか。一般論としては答えられるでしょう、大蔵省。
  56. 西村吉正

    ○西村説明員 一般論としてという御指摘ではございますけれども、事が三宅島という具体的な問題についての問題提起でございますので、一般論ということでもなかなかお答えが難しいのではないかと存じますけれども、いずれにいたしましても、どういうお考えに基づく御提案なのか、その辺を十分承った上で判断させていただきたいと存じております。
  57. 上田哲

    上田(哲)委員 新聞も読んでいないような大蔵省の答弁ではどうしようもないのだが、もう一遍だけ、時間のむだとは思いながら、ほっておくわけにはいかないから聞くのだが、ではこのような種類の特別立法が現在までどこかにありますか。
  58. 西村吉正

    ○西村説明員 まさにこのようなという、このようなという趣旨がどういう趣旨なのかということを、(上田(哲)委員一つの基地に対する特別立法」と呼ぶ)基地という意味もございましょうし、あるいはある地域という意味もございましょうし、防衛施設だけではなくて、例えば飛行場、成田の問題だとか、琵琶湖の問題だとか、いろいろある地域についての特別な対策ということは、立法するか予算措置をするかそういうことは別問題としまして、方法として全く例がないわけではないとは思いますが、しかしいずれにいたしましても、どういう考え方でこの問題に臨むのかということは、私ども問題提起を受けた上で判断をさせていただきたいというふうに考えておるわけでございます。
  59. 上田哲

    上田(哲)委員 だから、そんなことは聞いていない。いいですか。一般論として、三宅島ということは切り離していいから、あなたは財政当局責任者なんだから、言葉としては基地なのか施設なのか云々と言うから米軍の施設としましょう。米軍の軍事施設に対して特別立法、特別措置なんということは聞いていない、はっきり言いますよ。米軍の軍事施設に対する特別立法という例があるか。これは一般論だから答えられぬはずないでしょう。
  60. 西村吉正

    ○西村説明員 米軍施設に対する特別立法という意味でございましたら、私、逐一全部検討したわけではございませんが、今私の知識の範囲では思い浮かぶものはございません。
  61. 上田哲

    上田(哲)委員 ようやくここまで来た。そんなことはできないですよ。おやりになるのだったら、それこそ日本じゅう基地の周りで大変なことが起きる。基地周辺整備費あるいは思いやり予算なんかは適用されるものではない、これは大変なことになる。しかもまだ、これがどこから財源をひねり出すのかということになれば、予算委員会をやり直さなければならない。私はこういうことをぜひこういう形で立法したらよかろうと言っているのでは全然ないのですよ。七百億円というのが全く中身のないものであった。札束でほっぺたをたたくためだけのアドバルーンでしかなかった。それを言われて慌てて今度は中身を、それこそ出任せに総理長官が一緒になって十分に討議をしてしっかり責任を持つんだとおっしゃるけれども、特別立法なんということは前例もない。できようはずもない。いかに何でも国会の権威にかけて、そんなことは国会を通さなければできないことでありますし、やれようはずがないのであります。答弁できないからこれ以上追及しないけれども、具体的な例をついていけば、まだ具体的には提起をされていないからということ以外には答弁できないぐらいめちゃくちゃな話なんだ。私はこういうやり方が許せないと言っているのでありまして、明らかにこうした札束でほっぺたをぶん殴る、しかもその札束は本物ではない、慌てて後から突っかい棒をする、こういうやり方自身が適法でない、あるいは妥当でないのみならず、政治的にもまことにとるべき姿ではない。  この問題について結論をしっかり言っておきます。たとえこれがそのような裏打ちがあって地元の負担が全くないという処置がとられたとしても、七百億であろうが一千億であろうがもっと多額であろうが、そういうものによって三宅島のNLPの空港建設をオーケーするという立場、条件は生まれません。島民は電報等々でも何遍も意思表示しておりますように、金によって問題を解決しようという気持ちは全くないのですから、そういう形での提案、このことは直ちに撤回されることが正しい。長官答弁を求めます。
  62. 加藤紘一

    加藤国務大臣 三宅島で空母艦載機の訓練をさしていただきますならば、時期は限定されておりましてもその間は確かに騒音の御迷惑をおかけするということは事実でございます。しかし、私たち日米安保条約を有効に運用することがこの国の防衛政策から見て、そして憲法の精神から見ていい政策だという自信を持っておりますので、何とかこの訓練をさせる場所を見つけなければならない、こう思っております。そういう観点から見ますと、国全体のために三宅の皆様に多少なりとも御迷惑をおかけするわけですから、それを補うために、その村の振興のために国の予算を使うということは国民的に許されることであろうと私は思っております。  ただ、それがどういう事業であるべきなのかということはよく考えなければいけません。そして多額の予算がつけられればそれでいいというものでもないと思います。したがって、一番重要なことは、その村に若者が残るような政策を考えていきたい。生業につながるものを考えていきたい。今私たちの承知している限りでは、三宅島の高校の卒業生で島に残る人は少ないわけでございます。したがって、島に若者たちが残って、家族を守り、村を守っていけるような雇用機会をふやせるようなもの、それは意外にきめの細かいものであろうかなと思います。そしてそういうことをやる場合に、どんなことをやっても、国の事業、都の事業が絡みますと地元負担が出てまいりますので、その点につきましては、私たちは真剣に考えるということを総理大臣から言っていただいたわけでございまして、私たちしっかりとやっていきたいと思っておりますので、その点はぜひ御理解をいただきたいと思います。
  63. 上田哲

    上田(哲)委員 島がどんどん過疎になるとか、これは要らざるコメントであります。島では今が適正規模だと思っているし、少しずつでも島へ帰ってくるあるいは嫁いでくる人たちもいる。しかも島は自分たちの今の農業、漁業あるいは観光で立派にこの状態で生きていきたいと言っている。政府がその島をこのNLPとは関係なくぜひ住みやすい島にしてやりたいと言っていただくなら、ひとつうんと離島振興で金を出してください。しかし、NLPをつくらせてくれるならこれをやるなどということは、まことに島民の主権、島民の自主性を侵害するものであります。  私は、なおそうおっしゃるから重ねて確認しておきます。特別立法などというものはこれまでの経過や状況判断からしても、そして前例として一つもない。長官は胸を張って、総理と十分話をして公の席で言っているんだからとおっしゃるが、全然前例もない。それでもなお特別立法をやるなどということをおっしゃるのですか。そんなことは到底できないであろうことをわかった上で強弁されるのか、その点にひとつ絞ってお答えいただきます。
  64. 加藤紘一

    加藤国務大臣 島の皆さんにできる限り御迷惑をかけないように、村の財政の中でできるようにするために、私たちは特別の措置をいろいろな知恵を使って考えていきたい。そういうことは私たちの決意として変わりございません。
  65. 上田哲

    上田(哲)委員 じゃ、少なくとも特別立法ではないわけですな。
  66. 加藤紘一

    加藤国務大臣 総理大臣は特別立法という言葉は使っておりません。その法をつくらなくてもできるのかどうか、私たち防衛庁でそこも含めまして検討いたしておりますけれども、いずれにいたしましても村の財政で負担のできないような負担をかけるということはやらないでやっていきたい、こう思っておりますし、総理もそういう決意を述べられております。
  67. 上田哲

    上田(哲)委員 半分わかった。特別立法はできないのです。特別立法はあり得ないのです。じゃ、どんな方法があるのか。私たちには考えつきません。少なくともそれは国会を通らなければなりません。国会を通らないでそうした問題を処理することはできませんね。
  68. 加藤紘一

    加藤国務大臣 法律が国会を通らないで施行できるということはあり得ません。それはあえて言わなくてもおわかりのとおりであります。  それから、現在の予算の中でそういうものはないじゃないかという先生のお言葉でございましたけれども、それは当然のことながら現在の予算にはありません、六十一年度予算には。それはこれから事業を決め、どういうことをするかということを決めるわけでございますので、これからお話し合いをし、そして受け入れていただけるならば、六十二年度予算に早急に私たちは計上していきたいと思っております。
  69. 上田哲

    上田(哲)委員 だからそれをどんなふうに国費によって負担しようとしても全く裏づけがない。こうした形で島に向かって説得をする、しかも先ほどの言葉じりをとらえるわけではありませんけれども、まずNLPをオーケーしてくれればこういうことをやる、こっちの無理を聞いてくれればこういうあめ玉をやる、こういう体質が問題なんでありますから、今この七百億円という言葉に象徴されるような札束の島民への説得工作という方法は撤回されるべきだ。島民はそれについては絶対首肯しないということを申し上げている。七百億円的なこういう形の説得方式は直ちにおやめになるべきだと私は思います。いかがですか。
  70. 加藤紘一

    加藤国務大臣 私たちは、日本国民全員にかわってそういう現在ない騒音をお引き受けいただかなければならないような事態であるわけですから、国民全員がそのためには、三宅のために、振興のために、ほかの地域にはないようなより濃密な施策をすることを許してくれるものだと私は思っております。もちろん予算でございますから、また仮に法律をいろいろ考えるとしてもそれは立法でございますから、国会の場を通さなければできないということは御承知のとおりであります。  しかし私は、若干お言葉を返しますけれども、今三宅の島で若者がある程度は帰ってくるけれども、この程度の規模で島の人たちはいいと思っているというふうには思いません、やはり村の人々は若い者がもっと残ってくれることを希望しているのだと思いますし、そのための施策というものは、私も過疎地出身の代議士でございますので、一生懸命やるということが三宅のためになると考えております。
  71. 上田哲

    上田(哲)委員 そんな余計なことを言ってもらわぬでもいい。そんなにあなたのところが大事ならあなたのところへ持っていけばいい。三宅では言っていますよ。それなら全国公募してくれ、七百億円に飛びつくところがあればそっちへ行ってくれ、三宅だけ言ってきて三宅がうんと言わないから七百億だ一千億だ、そんな人をばかにした話はないじゃないか。今はっきりしたことは、とにかく特別立法はできない。そうするとそれ以外の何らかの方法をとる、しかしそれはこの年度ではなくて次の年度の予算に出して国会の承認を得たい、こういう話なんだ。だったら七百億円なんというものを自民党議員が持っていってこれでどうだというのは随分責任のないめちゃくちゃな話じゃありませんか。こういうやり方は私は非常に僭越であり、不見識であるということを申し上げておくし、三宅島は絶対にそんなことで賛成になることはあり得ませんから、金を持っていけばいいという発想は全く無意味であるということをここにはっきり宣言しておきます。  しかもそういうことの中にあわせて申し上げたいことは、ワインバーガー長官防衛庁長官総理大臣がお目にかかられるときには、その場では向こう側からは三宅の名前は出ていないけれども、四月五日に自民党本部で自民党安全保障調査会の三原朝雄会長らとワインバーガー長官が面談された場合には、「三宅島や逗子はアジアの平和につながる問題で死活問題とすら思っている」ということを堂々と言っておるのであります。政府に対するあり方と党に対する表現とを使いわけておる。私はこういうやり方で非常に不明朗な、言うならば弱い者いじめが進む形というものを許容できない。政治の姿勢として間違っていると思うのですが、特にこの中でワインバーガー長官が「アジアの平和にとっての死活問題」という言葉を使われていることに注目をしたいと思うのであります。  いっぱい例を出したいのですけれども、目の前に出てきた例を一つ取り上げたいのは、四月七日の午後二時半過ぎ、三宅島東方およそ二十キロの地点でアメリカの軍用機が墜落をいたしました。どのような飛行機がどんなことをしているときに墜落をしたのか、概要を御報告いただきたい。
  72. 佐々淳行

    ○佐々政府委員 お答えいたします。  先生御指摘のとおり四月の七日午後二時三十六分ごろ、第五空母航空団所属のEA6B、これはA6と言われておるものの改良型でございますが、電子偵察機が三宅島の東約十八キロの海上に墜落をいたしました。この原因等は米軍において現在調査中でございますが、通常飛行訓練のために午後一時四十分厚木飛行場を離陸して訓練空域チャーリー116に向かって飛行中墜落したと承知しております。
  73. 上田哲

    上田(哲)委員 まさにそのとおりなんですね。これは空母ミッドウェーの艦載機で俗称プラウラー。今おっしゃったようにA6を改良したEA6Bでありますね。厚木基地を飛び立って、今ミッドウェーが来ていますから、それでEA6Bが飛んでいった。まさにこれは、今三宅島十八キロという話でありましたが、そういう近いところで墜落事故が起きておる。伺いたいのは、これはたしかミッドウェーに四機だけ載っておる高性能の電子偵察機でありますが、ここで何をしていたんですか。
  74. 佐々淳行

    ○佐々政府委員 お答えいたします。  チャーリー116は御承知のように三宅島の東南の空域にございますところの訓練場でございまして、米側に照会したところ通常の飛行訓練ということでございました。三宅島を特に偵察をしたとかそういうことではないと承知しております。
  75. 上田哲

    上田(哲)委員 それはそのとおりですよ。私はそこで問題にしているのは、今佐々長官が二回も言われた「通常の」ということが問題なんです。通常の、この飛行機は何をやるかというと、艦上攻撃機グラマンA6を電子戦用に改装したものであって、ミッドウェーの攻撃機と同行して電波妨害をかけたり、電子偵察に当たったりする飛行機であります。通常のことをやっていたということは、まさにこの海域でいつも電子偵察あるいは電波妨害の訓練調査等を行っていたということになる。三宅島そのものを偵察するなんてことはさらさらないのですが、大事なことは、この電子偵察機がいつも飛んでいるということです。この海域に飛んでいる必要があるということでありまして、これは単純な訓練その他ではない。既にシーレーン、南東レーンの重要な海域であるこの海、空で通常のものとしてミッドウェーに四機積まれているプラウラーがこのような行動をとっている。この海域が非常に重要になっているということを見事に裏打ちしていることではありませんか。
  76. 佐々淳行

    ○佐々政府委員 お答えいたします。  安保条約による地位協定によりますと、米軍はいわゆる交通権を保有いたしておりまして、昔は至るところで訓練を行っておったようでございますが、その後民間航空の航路の増大等から航空安全上の見地から、訓練空域を指定してそこでやっていただくようになってまいりました。このチャーリー116は厚木に最も近く、この空域において訓練が行われるということでございました。三宅問題が出るずっと前からある訓練空域でございますので、たまたま全国のそういう空域の割り当て、その中で入港中は厚木に基地を持つところのミッドウェーの艦載機の訓練場としては最も適しておる、こういうことで使用しておるものでございます。
  77. 上田哲

    上田(哲)委員 これが墜落したからじかに立証されたのは、この海域が必要だということなんですよ。この海域が必要なのであり、その海域の真っただ中に今三宅島の基地、基地ではないという言葉をしきりに言われるけれども、基地予定地といってもいい、そういうNLP空港がつくられようとしておる。今のところは飛行機が離着陸訓練はする、タッチ・アンド・ゴーはするけれどもおりることはないとか、駐機しないとかあるいはエプロンを持たないとか、鉄条網を張らないとか現段階では言うでしょう。あらゆる例からいってそれが基地化していくことは常識中の常識なんだ。さなきだに、シーレーン海域として非常に重要なこの海域にNLP基地を設けるということになれば、それがそうした意味を持ってくるということを今回のこのプラウラーの通常の飛行が裏づけたということになる。これはどのように否定されようと、そういう形になっていくということを墜落事故が見せてしまっている。従来から米軍ではなくて自衛隊がそれぞれの島に上陸用舟艇を持っていったり飛行機を飛ばしたりしているが、海難訓練のためだということでそれぞれの島当局、村当局はオーケー出しているんです。そういうものが飛んできているのだと思っていたら、実は専門家が見ればはっきりしているのだが、この海域は通常のようにこういう米軍機が飛んでいるのですよ。母港を横須賀に置いているミッドウェー、さらに増派されるであろう複数空母によって百五十キロないし百六十キロ範囲の中にこうした基地を持たなければならないという必然性が浮かび上がってくるのですよ。ここでこの墜落事故が起きたから、まさに三宅島の位置というものがどういうことになっていくのかということが立証されたことになるじゃないですか。今十八キロと言われたが、三宅島からすぐ向こうに浮かんでいる御蔵島、これは二十キロですよ。こんなものは指呼の間です。声をかければ通ずるようなところです。海上二十キロなんというのは本当に目の前です。これがそこへ落ちたから島へ落ちないという保証がありますか。こういう事故が皆さん方が今まで安全だ、大丈夫だ、ほかの目的には使わないと言っていることを逆にそうではないと裏書きしてしまったではありませんか。反論がありますか。
  78. 加藤紘一

    加藤国務大臣 私たちが三宅島にお願いしているのが特別ないわゆる哨戒空域だとかシーレーンだとかという観点なのではないかという点でございましたが、そういうことではございませんで、この日本列島の周辺は防衛上、自衛隊も常に偵察行動をしておりますし、そういう一部でございます。  ではなぜ三宅島かということでございますが、母港の横須賀から百五十キロとか二百キロとかそういう圏内でなければいけないという一つの制約がございます。北海道でもいいのかもしれません。しかし、北海道に行きますと、そこに飛んでいく間でガソリンが切れてほとんど訓練せずにこっちに帰ってこざるを得ないというようなことでございまして、そういう意味ですと横須賀の近辺ということになっていろいろ考えざるを得ないということであります。それでどこどこの島には可能性はないかということでこの周辺の島を私たちは全部調べました。そしてある地域についてはそこでだめなのかなと言って風洞実験までして可能性を考えましたけれども技術的に無理だということであります。沖に浮体を乗っけて浮体飛行場、浮かぶドックでやれないかということも私たち真剣に考えてみましたけれども、これは技術的にまだ解明できてないところがあったりそれこそ膨大な費用がかかって何十年もかかってしまいます。そういうこともあっていろいろなことを考えてどうしても三宅島に何とかお願いできないかという観点で私たちが検討の上、お願いしているものでございますので、ぜひ御理解いただきたいと思っております。それで、三宅の島が人口が少ないからここだったらいいじゃないかということでやっているのではないかという御議論もありますけれども、そういうつもりはないということをぜひ御理解をいただきたい、こう思います。
  79. 上田哲

    上田(哲)委員 このプラウラーの墜落事故が示したように三宅は単なる訓練をするだけじゃない。あなたは非常に注意して言葉を訂正されようとしておられるが、基地そのものである。しかも最も危険な基地である。北西太平洋というものがそういう形でもって米ソ戦略の重要な海域になっているということの中に三宅が位置づけられているということ。電子偵察の飛行機が通常のように飛んでおる、ここで三宅の位置というものは当然に強力な基地として浮かび上がる可能性を持っているじゃないかということを言っているのですが、どうもそれへのお答えじゃなくていかに三宅島が米軍にとって具体的に適しているか、我慢してくれみたいな話しかなさらぬ。  それならもう一つだけ言っておきます。この三宅島というのはその程度の判断で犠牲にされては困る一つの理由に地震観測の重要な拠点だということがあるのです。気象庁の常時観測火山、全国で十七ですけれども、その一つに指定されていて年三回、島内の二つの地点で地熱の測定、四つの地点で湧水の観測、一つの地点で高感度の地震計、こういうものをテレメーターによって観測しておるわけであります。特に三宅島は島の中のどこからでも噴火する可能性のある火山でありますから、前兆現象があらわれる時間がごく短い性質の火山であって学問的には非常に重要なのであります。一九八三年五月に測地学審議会が行った「第三次火山噴火予知計画の推進について」によりますと、三宅島など十二火山を活動的で特に重点的に観測、研究を行うべき火山、こういうふうに言っているのです。したがって、こういう観測体制の強化をこそしなければならない重要な課題があるのであって、ここでそのことを不可能にしてしまうような基地の建設というのはその面からも特に避けられるべきものなんです。  二、三点の問題を挙げておきますけれども、第一に直径十キロメートル弱の狭い島内のその一部に米軍基地としてこれが提供されますと、地震計などの計測器を適切に配置することがもうできなくなる。  第二に、航空機のエンジンの音というのは私たちが耳にする以外にも低周波の成分を含んでいるんで、これが空気中を伝わって地震計に達しますと、火山性微動と間違うようなことになる、これは非常に問題なんであります。  第三に、このNLP基地にレーダーや通信関係の電子装備が設置されることになりますと、電気的なノイズになりまして地磁気や地電流関係などの観測を行うことが不可能になります。  こういうものがぶんぶん飛び回るだけで、関東地震とか東海地震とかいろいろなことが言われている中で、非常に重要な観測地点を失うことになる。そういうものを犠牲にしてでも今過疎を何とか救おうとか百六十キロ範囲なら云々だとかと言われるようなことでぜひともこの無理を押し切る理由があるとお考えですか。伺っておきます。
  80. 佐々淳行

    ○佐々政府委員 お答えいたします。  私ども、やはり三宅島は火山の島、災害の島でございますので、この訓練場の設置がその地震観測に悪影響があってはならないと考えております。私ども所管ではございませんが、私どもの承知しております限りでは、現在地震計は地上設置式のものが神着地区に存在していると承知をいたしております。私ども予定しております建設予定地はその反対側の西南側、阿古地区でございまして、その間には雄山という八百十四メーターの山がございます。旋回をする訓練の場合の高度は二百メーター程度でございますので、その山のすそを回っている、こういう関係になります。  私ども、この点について現地調査をまだいたしておりませんので、また所管外でございますので、当然気象庁の方と十分協議をいたしたいと考えておりますが、二月二十四日の衆議院決算委員会における気象庁の答弁によりますと、適切な方策を講ずるならば現在の火山監視の水準を維持することができる、また、必要になったときには火山観測に影響がないよう関係機関と十分協議をして対応してまいりたいという御答弁がございますので、この気象庁の見解を我々十分尊重いたしまして、そういう障害のないようなことを考えさせていただきたいと考えております。
  81. 上田哲

    上田(哲)委員 気象庁がそういうことを言っているのはおかしいですよ。私が示したのは気象庁のデータなんです。気象庁答えてください。
  82. 鈴置哲朗

    ○鈴置説明員 御説明申し上げます。  観測状況を申し上げますと、現在二点に火山性振動観測装置を設置しておりまして、これは三宅の測候所にテレメーターして常時監視をしております。  先ほどの件でございますが、まだ訓練の詳しい内容等承知しておりませんけれども、現在の観測に多少の影響が出る可能性もあるというふうに考えてはおりますが、これに関しましては今御説明がありましたように適切な方策を講ずれば現在我々が維持しておる監視の水準というのは保てるのではないかというふうに考えております。その適切な方策と申しますのは少し説明させていただきますと、例えば振動観測点、今地上に設置してございますが、これらを地下埋設あるいはこれをまたさらに多点化するというようなことが考えられます。どの程度の規模のものにするかということにつきましては、例えば今後の訓練がもしありましたら、その影響の程度等を見まして検討を進めていきたいというふうに考えておるわけでございます。  ノイズの問題に関しましては、科学的にできるだけ完全に解明して対策を講ずることが一般的に大変重要であると思いますが、三宅島の問題に関しましては、計画が具体化いたしました段階で関係省庁と協議いたしまして、十分調査を行いまして、具体的にどの程度の対応策をとればよいかを決めていきたいと考えております。
  83. 上田哲

    上田(哲)委員 困るじゃないですか。気象庁はっきりしておいてもらいたいけれども、三宅島というところが火山地震観測のために非常に重要だということは間違いありませんね。
  84. 鈴置哲朗

    ○鈴置説明員 三宅島は実は火山の観測地点でございまして、地震計を設置しておりますのは火山現象の細かな現象を見るために非常に火山特有のものを使ってございますので、地震の全体のネットワークの地震計とはちょっと違ったものでございます。
  85. 上田哲

    上田(哲)委員 言葉の問題はともかくとして、非常に重要な観測地点であるということは間違いありませんね。それなのにまだ調査してないじゃないですか。計画が定まりましたら調査いたしますと言うが、全く調査してないじゃないですか。動いてしまってから後調査して適切な処置を講ずればというのはどういうことですか。気象庁というのはもう少し科学的な省庁だと思っているけれども、政治的な官庁になったとは思わなかった。それじゃ気象政治庁とでも言いなさい。科学的にやってもらわなければ困る。火山国であり地震国なんです。観測をほっておいてしまっては困るだろうというのは当然なことなんです。それを主張するのはあなた方に与えられている国民的任務でしょう。これが、基地になったら後に調査するじゃ困るじゃないか。そうなったら調査をして適切な処置を講ずればいい、こんなばかな話がありますか。順序が逆ですよ。調査をしてないじゃないですか。ちゃんとした調査をしてからでなければ言えないことを先に言ってもらっては困る。これもおたくの方から出ている資料なんだ。気象庁の方から出ている資料だから、私はこれを持ってあなた方に御答弁を承っているんだ。調査をしなければそういうことは言えないはずなんです。そうですね。長官といえども火山や地震のことはどうでもよろしい、まず建設をやってしまうんだとは言えないでしょう。ちょうど七百億も同じように先にオーケーと言ってくれれば後で考える、おかしいじゃないですか。七百億が千億でもいけませんよ。そんなものは金目の問題ではないということを誤解のないように言っておくけれども、何でもまずオーケーをしてくれればそこから始める、初めにNLP基地ありき、そんなばかなことはない。調査をする、調査をした後でなければ言えないことだ。あなたは今すぐ調査を約束しなくてもいいが、調査をした後でなければ科学的なことは言えないということはしっかりお答えなさい。——時間がなくなってしまう。こんなことが言えなかったらとんでもない話だ。
  86. 鈴置哲朗

    ○鈴置説明員 具体的な内容等についてどのような影響が出るかということについては具体的なイメージがございませんが、一般論といたしまして、いろいろな開発に伴う人工ノイズの増加というのがございます。我々としてはそういうものを十分検討を続けているところでございますが、今後ともその点については十分検討していきたいと考えております。(上田(哲)委員調査しなければ言えないでしょう」と呼ぶ)関連の現象につきまして調査を進めていきたいと思っております。(上田(哲)委員「関連というのは三宅島じゃないということですか」と呼ぶ)具体的な現象がございませんので、人工ノイズの一つと考えておりますので、そういった立場から検討を進めてまいりたいと思っております。
  87. 上田哲

    上田(哲)委員 何を言っているんだ、一体。三宅島のことじゃないか。三宅島を調査しないでほかでどういうことができるんだ。調査もしてないでほかのデータを見ながら適切なことをやればいいだろうなんてことは、三宅島四千三百人だけの問題じゃない。火山の問題や地震の問題で心配をしている国民全体に対する大変な責任放棄じゃありませんか。こんなことで心配ない心配ないなんて言われるのはとんでもない話だ。ここには何ホンであるとか低周波の問題であるとか、数字が全部出ている。あなたの方に届けるから、しっかりそれを見て、少なくとも科学官庁として政治的な発言でもって非科学的なことを言わないように、しっかり責任を持つことを十分に戒めておきます。  時間がありませんから最後に詰めますけれども、ワインバーガー長官が来るときには何らかのめどをつけたいと言っていた。だから七百億——七百億の内容は瓦解した。しかも、それについての特別立法もできまいと思う。どういう方法があるかは国会を通さなければできぬ。——これをもってみだりに札束をちらちらと三宅島に向かって攻めていくことは許されないと思うのだけれども、心配することは先ほどのSDIのこともあり、どうも来月行われる東京サミットまでにさまざまな政治懸案を解決してしまいたい、そこで三宅に何らかのめどをつけたいというふうに力ずくで進められるような気配を感ずる。長官に、最後にしっかり承っておきたい。あくまでも東京サミットなどを目指して何らかのめどをつけようという力ずくの工作をされることがないことを要望いたします。そのように理解しておいていいでありましょうか。
  88. 加藤紘一

    加藤国務大臣 東京サミットとか特別な時期を定めてこれを強引にやろうというつもりはございません。ただ、私たちとしてはできるだけ早くこの問題の解決をしなければ、厚木の問題もございますので、精いっぱい慎重に、かつできるだけ早くこの事態を解決していきたいと思っております。そして、そのためには地元にいろいろ御迷惑をおかけしますので、その地元負担が大きくかぶらないように現行の制度の中で精いっぱいのことをやってまいりたい、特別の措置を考えていきたいと思いますし、またそれができなければ、また現行の法体系の中でできるかどうかも含めて私たち防衛庁としては真剣に考えていきたいと思っております。そして、それは三宅島の振興の対策になる措置であり、また我々の政策である部分が非常に多いわけでございますので、そのときには先生にもぜひ御協力をお願い申し上げたいと思う次第でございます。
  89. 上田哲

    上田(哲)委員 それじゃ一言。厚木の騒音訴訟の控訴審判決がつい今ほど出たようであります。まだ詳細はつまびらかにしておりませんが、原告側の敗訴になったようであります。住民権利の訴えが安保条約あるいは軍事目的政府の恣意によって甚だしく損傷されていく、これは民主主義の原理に照らして非常に危険なことだと思います。私たち国民主権、住民の意思を最大に尊重するという立場からもろもろの施策が講ぜられるべきであって、国会はまたそのためにあるべきだと思います。厚木のNLPを含めて原告敗訴となったということをとらえて、権力側がまたこれに力を得て、力ずくの三宅島圧迫などをすることがないように、逗子においてもしかりでありますけれども、あくまでも権力を持つ者は最も謙虚に。特に三宅島では土地の老人たちまで参加して、「金は一時土地は末代」、どうしても私たちは今のままでいいのだ、政府が押しつけて島をよくしてやろう、楽しくしてやろう、地上の楽園にしてやろうなんて真っ平だ、キヌサヤをつくり里芋をつくり観光と漁業でしっかりやっていく、その漁業を空港によってだめにされてしまっては困るんだ、このままでいいんだと言っているのが主権在民の意思でありますから、こういう立場を素直に受け取られて、七百億円も当然のことでありますけれども、この計画そのものをぜひ再考される、撤回されるということを強く求めて、私の本日の質疑を終わります。
  90. 栗原祐幸

    栗原委員長 奥野一雄君。
  91. 奥野一雄

    ○奥野(一)委員 質問するに当たりまして、若干当惑している点があるのですけれども、それはこの前防衛庁長官の方から所信表明がございました。その中でこの安保特別委員会国会等においては日本の国情にふさわしい防衛力のあり方、防衛戦略体系といった高い視点から論議をしてもらって防衛問題についての国民の理解が深められることを願う、こう長官から述べられているわけであります。また、外務大臣の方からはこの安保委の皆さんは安全保障問題に精通されている方々である、こう言われているわけですが、私自身まだ勉強中でありまして、今も系統的に戦後からずっと調べているのですが、この安保問題というのはなかなか幅が広いわけでございまして、高い視点からの議論ということになりますとどうもそれにふさわしいかどうか大変疑問に思っているわけです。ただ、戦後もうこれで四十一年になるわけですが、私は一貫して非武装中立という立場で運動をずっと続けてきております。そういう面では、私は結党時からの社会党の党員ですから、非武装中立ということでは石橋委員長よりも若干歴史が古いのではないかと思っている一人でございます。  私の持論というのは、前回の安保委員会でも申し上げましたけれども、軍備というものは一たん認めますとどうしても際限なく拡大をしていく性格を持っているものだ、こういうふうに感じているわけです。したがって、そういう視点を忘れて防衛戦略などという論議に入りますと、これはどうしても精度の高い優秀な武器を準備しておかなければならないんじゃないかというふうに行ってしまう危険性があるのですね。そういうような面から考えてみたいとも思っているわけです。  それから長官、高い視点から国民に理解を与えるように、こういうことを言っているのですが、実際に国民はそういう高度な議論を通して防衛問題についての理解を深めていくということになっているのかどうか、私大変疑問に思っているのですね。それは、例えば国会審議の中ではもう既に決着がついているんだと一般的に言われております専守防衛という問題、憲法九条などに関係するようなことですね。しかし果たしてそうなのか。そういうような原則的な問題であっても、完全に理解されているのかどうかということは私自身まだ疑問に思っているわけなんですよ。例えば確かに自衛隊の存在を認めるという国民は世論調査だと大体八割ぐらい存在しているというふうに承知しているわけです。しかしその反面、それでは今度は逆に防衛予算というものはどうなんだ、こういう調査、五十九年十一月の総理府の調査などを見ますと、いや現状でいい、あるいはこれ以上ふやしては困る、その二つを足せば七一%にもなっているわけなんです。そうすると、国民の皆さん方というものは完全に理解して例えば自衛隊の存在を八割ぐらいが認める、こうなっているとは必ずしも思われないのですね、今言ったように、一面においてはいやいやもうこれ以上ふやしてもらっては困るんだという意見がまた圧倒的に多いわけですから。ですから、私は決して国会の議論が先走るとかなんとかということは申し上げませんけれども、国会が余り高度な高いレベルでもってどんどん展開をしていって、政府の方ではまたそれによってどんどん解釈を拡大させていくような形の中で国民は完全に防衛問題について理解を深めることができるかどうか、そういう意味では私は大変疑問に思っているわけでございます。  ですから、きょうはそういうような観点から——今まで国会の中ではもうその議論は言い尽くされた問題だ、こういうものだと思うのです。しかし、私自身の性格とすれば自分が一つ一つ関係者と質疑をして確認をしておかないと納得しないという性格なものですから、今までの議論の中ではもう卒業しているという問題かもしれませんけれども、二、三少し原則に戻ってお尋ねをしていきたいと思っているわけでございます。  一つは、今申し上げました憲法九条との関係でございます。  これについては政府の統一見解というものを今までずっと読ませていただいてきております。率直に言って、憲法制定の当時から比べると解釈は物すごく拡大をされたなという印象を持っているわけです。政府の統一見解ということになりますと、憲法九条の関係、いわゆる自衛権の存在の関係については鳩山内閣のときの統一見解というのが出ているわけでありますけれども、独立国だから自衛権はあるんだ、したがって国土を防衛するために必要最小限度の軍隊を保持することができるんだ、これは憲法の前文を初め全体の趣旨に照らしてみて明らかだという答弁などもあるわけでありますが、私は頭が悪いせいか憲法の前文なりを読みますと決してそういうふうに、なるほど軍隊というものはある程度持たなければならないんだというふうにはどうしても受け取れないのですよ。  これは今さら申し上げるまでもありませんけれども、憲法制定当時の経過というのを今考えてみますと、あの悲惨な第二次大戦を経験した我々日本国民とすれば当然すべての戦争を放棄する、こういうところから始まったと思うのですね。そして「恒久の平和を念願し、人間相互の関係を支配する崇高な理想を深く自覚するのであって、平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。」これが前文にあるわけです。これは何を意味するかというと、私は平和外交あるいは中立外交の精神だと思うのですね。いわゆる武力によらない、力の均衡によらない平和外交なり中立外交というのがこの憲法の精神だと思っているわけなんです。これは憲法制定当時のいろいろな資料というものにも目を通してみましたけれども、今さら申し上げるまでもないと思うのです。当時マッカーサー・ノートというのが出されて、その中ではいわゆる、今言われている自衛のための軍隊だって持つことはできないということは明確になっているわけですね。その後マッカーサーの草案が出されたりあるいは三月二日案なんというのが出されたり憲法改正の草案あるいはまた改正草案、改正案、あるいは帝国議会における修正案、こういう経過を経て現行憲法というのが制定をされてきているわけです。  この第九十帝国議会の議事録を見ましても、当時の吉田総理はそのことについてはきちんとはっきり答えているわけですね。それは自衛のための軍隊を持つことはできないんだ、一切の戦争というものは、交戦ということについては否定をしているんだ、こういうことを明確に述べているわけです。  特にこの中では、当時の共産党の野坂参三さんが、戦争には侵略戦争とそうでない戦争があるんだ、侵略戦争は放棄してもいいけれども、正当な戦争まで放棄するのはけしからぬということで反対の意見を述べているわけです。それに対して吉田総理の方では、従来正当防衛という名前で戦争が始まってきたのだからそのこと自体もだめだ、それが今度の憲法の趣旨だということを明快に当時答えているわけですね。  なぜ私はこんなことを、皆さん御承知のことを長々と申し上げたかというと、最近の防衛庁当局あるいは政府のいろんな解釈をずっと聞いてきておりますと、憲法制定当時から比べると非常に拡大をされてきたな、どうしていつの間にこんなに拡大をされてきたのだろう、そういう心配があるものですから、私は今そう申し上げたわけでございます。  そうして、今までこういうふうに拡大解釈をされてきたことが、では本当に国民は理解をしてそれに合意を与えているのかということなんですよ。例えばシーレーンの問題にしてもあるいはOTHレーダーなんかの問題にしても、国民はそのことについて理解をしているか。防衛庁としては、国民は理解をしている、国民の合意を得ているというふうに自信を持って言えるかどうか、そのことをまずお尋ねをしておきたいと思うのです。
  92. 加藤紘一

    加藤国務大臣 国会における防衛論争というものが国民に十分に理解されているかどうだろうかという御質問でございます。国民は確かに自衛隊の存在を八二%ぐらい支持しているけれども、しかし同時に片方でいろんな惑いもあるのではないか、そういう中で拡大解釈が進んでいるのではないかという御指摘でございます。確かに私たち国会の論議と国民の間の防衛についての議論の意識という点を考えてみますと、まだまだ一生懸命PR申し上げなければならぬところがあるように思います。  その第一は、私たちがどうも難しい言葉を使い過ぎているのではないだろうかなというような感じがしまして、それをいかにわかりやすく説明するかというのが一つのポイントだろうと思います。現に、わかりやすい言葉で説明するというのは非常に難しいことだと思います。  例えば専守防衛という言葉を言いましても、国民の皆さんの中からは、時には、専守防衛といってもいざというときには攻撃は最大の防御だよといって飛び出ていくんではないのというような質問を受けたりします。しかし、私たち自衛隊装備自身が守りに完全に徹しておりまして、長距離爆撃機も私たちは持たないわけでございますし、それから船に飛行機をいっぱい載っけて外国の沖まで行って飛ばすような、奇襲をさせるような、そんな大型攻撃空母も持たないようになっているわけですから、そういったような事実なんかも、専守防衛という言葉一つで私たちはしゃべってしまいますけれども、しかし、やはり一つ一つをかみ砕いて御説明していくとわかっていただけるようになるのではないかなという思いをいたしております。  それから、ますます拡大していくのではないかということにつきましても、戦前と違いまして、私たちのこの防衛政策、それから特に防衛力整備につきましては完全に国会のコントロールを受けておりますので、それをやろうとしても国会を通らなければできないことなんだよという部分も実はもっともっと丁寧に説明する必要があるのでないかなと思っております。  ただ、憲法九条につきまして、昔から比べて拡大解釈が進んでいるのではないかという御指摘でございますが、後ほど政府委員から的確に、詳細に答弁させますけれども、私たちは、自衛隊ができるときにおきましては、憲法九条との関係で吉田さんと芦田さんの論争、吉田さんと野坂さんの論争等、先生が今御指摘になったような幾つかの論点はあったと思いますし、いろいろな経過があったと思いますが、それで自衛隊ができて今日までの三十年ぐらいは私たちは憲法解釈については大きな変化はなく、また私たちも大きくそれを踏み出しているというようなことは全くないといって、一〇〇%自信を持って言えるのではないかな、こう思っております。  詳細につきましては、政府委員より答弁いたさせます。
  93. 宍倉宗夫

    ○宍倉政府委員 憲法九条のことに関しまして幾つ質問でお触れになられましたので、お答えいたします。  まず吉田総理のことでございますが、これは私から申し上げるよりも、引用させていただければその方が正確かと存じますが、八十四国会で法制局の政府委員から御答弁申し上げてある例がございます。読みますと、  吉田総理の真意は、近年の戦争は多く自衛権の名において戦われだということを強調し、自衛権の名においてわが国としては将来そのような戦争をすることは絶対にないということを明確にしたいということにあったのだったと考えられます。  そうしてみますると、憲法第九条は自衛権は放棄していないし、外国からの急迫不正の侵害があったときに、それを排除して、わが国土、国民を守るための必要最小限度の武力行使は許されるという現在の政府の解釈と矛盾しているものではないというふうに考えられるのでございます。 このような御答弁がございます。それが政府としての考え方かと存じます。  それから、憲法前文と自衛権との関係でございますが、これにつきましては、三十四年の十二月に出されました砂川事件に関します最高裁判所の判決でそのことについて触れておりまして、憲法の前文からいたしますと、「わが国が、自国の平和と安全を維持しその存立を全うするために必要な自衛のための措置をとりうることは、国家固有の機能の行使として当然のことといわなければならない。」こういうふうに判決の中で言っておりますので、私どももそのように考えている次第でございます。
  94. 奥野一雄

    ○奥野(一)委員 私は憲法九条の解釈について、例えば、いや、自衛権は否定しているとかしていないとか、そんな議論を今やろうということで申し上げたのではないので、その点は誤解しないでいただきたいと思うのですが、私の申し上げましたのは、この制定当時のいわゆる自衛のためのいろいろな考え方というのがあるわけですね。そういうような考え方からすると、最近はぐっとそれが物すごい勢いで拡大をされてきているのでないか。その拡大をされてきていることに対する心配なんですよ。  例えば、かつては日米が共同で訓練をするということについてだって国会で相当議論があった。今もうそのことが既成事実になってしまっている。もう何ともない。それはもう自衛権の範囲内に入ってしまう。今度はシーレーンの、この前予算委員会で公明党の矢野書記長に対する答弁、ああいうふうにしてだんだん拡大をされていっておる。そこに私は大変一つの危惧を感ずるわけなんですね。そういう拡大をされていっていることが、防衛庁長官国民防衛問題についての理解を深めていただきたい、こう言っていることと——国民はそういうことをまだ理解をしてないでしょう。してないのだけれども、防衛庁の方の解釈でもってどんどんそれが既成事実化されていっているのではないか、そのことを私は心配するのです。  だから、本来であれば、もし国民の合意を得るということであったら、一つの何かを考えたら、そういうことについてどうだ、これは技術的には非常に難しいと思いますよ。技術的には非常に難しいと思うのだけれども、それに対して国民からの何か判断が示されてくる。いや、それはちょっと防衛庁さん行き過ぎじゃないかとか、国民としてはそこまで考えてませんよと、そういうのが、フィードバックというのですか、何かそんなようなことを考えてやっていかないと、防衛庁の方だけが先走ってしまいますと、あるいは国会だって当然そのことについて議論していくわけですから、そうすると、国会の議論は国民の目から見ると、何か自分たちがまだ何が何だかわからないうちにそういうような高度なことだけがどんどん進んでいってしまっている。それが果たして今国民が考えている防衛という考え方と一致するのかどうか。もし完全に一致していれば、あるいは国民の皆さん方は防衛費をもっとふやせという意見がほうはいとして出てくるかもわからない。しかし私の受ける感じでは、実際の人たちと会ってみますと、そういう高度な議論なんか全然別であって、今言ったような例えば憲法九条とか、そんな基本的なことさえ完全にまだ理解をされてないというような認識を私は持っているわけなんですよ。だから、防衛庁がそういうふうにしてどんどん拡大解釈をしていかれるということについては非常に危険だというような感じを私は持っているわけなんです。  例えばこの前、二月六日の予算委員会で、公明党の矢野書記長の質問に対して長官の方から、日本防衛のための行動をとる米艦を自衛艦が守ることはできるのだ、こういう答弁をされているわけなんですよ。これはそのとおりですね。これは新聞にも出ておったわけですから。その場合に、私どもこれは外務省の見解も聞きたいと思っているのですが、今の日本の外交方針、私は全面的には賛成ではございません。全面的に賛成でないというのは、先ほど引用いたしました憲法の前文からいいますと、これは思想的にはやはり平和外交とか中立外交ということが基本になるものだというふうに理解をするのですね、あの憲法の前文を読んでいきますと。ですから、そうであれば、本来なら中立的な立場に立って外交政策というのは進めなければならないはずだ。しかし今はいわゆる西側の一員というのですか、そういう立場の中で外交をやられている。その点についての不満はありますけれども、しかし、まあまあ曲がりなりにも日本の外交の場合には世界各国との平和ということを一つの考え方にしながら進めてきているのだ。そうすれば、今、日本日本独自の問題でもって外国から侵略をされたり攻撃をされる、そういう問題はないだろう、また将来も起こらないという確信を私は持っているわけなんですね、今の形の中でいけば。  ただ恐れられるのは、今も申し上げましたように、日本の場合には西側の一員ということで、しかも日米安保条約という形の中で、我々から言わせますというと、アメリカの対ソ戦略の一環に日本は組み込まれてしまっているというようにほかの国が理解した場合に、そのことによって起きるトラブルというのは考えられるのじゃないか。ですから、もし日本防衛するためにアメリカの軍艦がどこかの洋上におってそれが攻撃される、そんなようなことが果たして起こり得るのかどうか。日本独自の問題という形の中では出てくる可能性というのはないだろうというふうに私は理解をしているわけです。だから、あるとすれば今言ったようにアメリカの戦略体制の中に引き込まれてきているということによる紛争である。ですからアメリカの軍艦が何かの攻撃の目標にさらされた、そのアメリカの軍艦が日本を守るためという、そこのところがちょっと理解できないのですが、日本を守るためにアメリカの軍艦が行動している、それを攻撃された場合には日本の自衛艦が護衛することができる、こういうわけでしょう。大体どんなことが想定されるかということなんです。ちょっと私は想定できないのですね。日本の外交問題の中で、将来そういうふうにして日本独自の問題がもつれていって国際的にトラブルを起こして日本独自の問題として攻撃されるというような何かおそれのあるような問題というのは今ありますか。そこのところがちょっとわからない。
  95. 加藤紘一

    加藤国務大臣 よく現在のこの状況日本が独自に、いかなる小規模なものであっても攻撃されることがあるのだろうか、それはもうないじゃないかという御議論がございますけれども、現在そういうおそれがないという状況がなぜあるかといいますと、私たちがそれ相応の自衛力を持ち、そしそそれを超えるものについては日米安保条約によってアメリカの来援が受けられる、かつそれが条約上の義務になっている、必ず助けに来なければならないと安保条約第五条に書いてある、そういった状況が抑えになって、言うならば抑止力になってそして我が国の現在の安全が保たれているのだろう、こう思っております。したがいまして、空気があると空気というのはごく自然にあるように思われますけれども、やはり自衛隊の存在と安保体制というものがしっかりとすき間のなくきっちりとした形であるからこそ、今の我が国の安全は保障されているのではないか。保障されているものですから皆さん、まあ攻められることはないんじゃないのというような感じになっているのではないだろうかな、こんなふうに思っております。  それから二番目の問題の、いわゆるアメリカの船をどういったケースで護衛するのだろうというような御質問でございますが、これはあくまで我が国が攻撃を受けている場合、そして私たち米側の来援を求めて米側が来援しているときに起こり得る話でございまして、我が国が攻撃されてないときに自衛隊の船または航空機が米側の船を支援するために出動するということはございません。そこは矢野質問に対する私たち答弁の点を踏まえまして防衛局長から詳細に御答弁をさせます。
  96. 西廣整輝

    西廣政府委員 我が国が自衛権を行使する場合には、先生御承知のように、自衛権行使の三要件というのがございます。これは繰り返すまでもございませんけれども、日本に対して急迫不正の侵害があること、そしてまた他にこれを排除すべき適当な手段がない場合、そしてまた行使の中身としては必要最小限にとどめるという三つの要件がありまして、特に前段の二つは自衛権を発動する最初の段階で、それがない場合には発動ができないという発動の要件になっております。ということは、先ほど来大臣が申しましたように、仮に米艦を護衛する、つまりそういう自衛行動をするということは自衛権発動の要件にかなったという前提がなければいけませんので、それを前々から申し上げているように、既に日本の国土が侵攻されておる、あるいは公海上において組織的、計画的に特定の国から日本を特に対象とした攻撃がなされておってそれが我が国に対する武力攻撃であるというように認定して、そして我が国が武力行使をしている段階は既にその前に存在しているわけであります。そしてその上で米側日本を支援するために来援し、日本とともに共同の対処行動をしておる、そういった際に米艦を守るということは、共同対処行動している米艦を護衛するということは我が国の個別的自衛権の範囲内であればそれはできるということを前々から申し上げておるわけでございます。
  97. 奥野一雄

    ○奥野(一)委員 今のお答えでは私、ちょっとのみ込めないのですよ。  私がお聞きしたのは、長官が言われましたように、私の考え方はちょっと違うのです。日米安保条約があって、アメリカが一たん有事の際には日本を守ってくれるから日本は今平和でいられるんだ。私は逆なんですよ。むしろこの安保条約があるために日本が攻撃目標にされる危険性があるのではないんだろうか。米艦が日本を守るために洋上にいる、それを攻撃されている、それを日本の自衛艦が守りに行くことはできるんだ、こういうようなこの前のお答えでしょう。だから私は、その前の、日本日本の独自の問題で攻撃をされるというような可能性というのが今の国際間の中で何か問題が残っているんだろうか。私は今の外務省の外交努力というものは、さっき言ったようにちょっと不満はあるけれども、積極的に平和的な外交をやっておられるんだろう。仮にそういうような気配があったら積極的に友好外交の中で解消する努力をするというのが第一条件でしょう。  そうすると、今そういうことは考えられない。だから逆に、考えられるとすれば、日本アメリカの戦略の一環に組み込まれてしまっていわゆる対ソ戦略構想の中に入り込んでいるというふうにどこかの国が思った場合に日本に対する脅威感というのが出てくるのですよ。だと思うのです。だからトラブルがあるとすれば、むしろそっちの方ではないのか。そうした場合に、それでは今防衛局長が言われました自衛権発動の三要素の一体どこに当てはまるんだ。日本の独自の問題ではない。対アメリカとの関係の中で、例えばそういう問題が発生してそのことによって日本が攻撃を受けるということになったら、これはそっちの方に原因があるのではないか。そうすれば、この自衛権の三要素というものの中の一体どれにぶつかってくるんだ、そんな疑問があるわけですね。だからそのことについての質問なんです。ちょっと私の言い方もうまく表現してないかもしれませんけれども。
  98. 西廣整輝

    西廣政府委員 先生のお話は、自分が特に何もしなければ日本自身が侵略されるようなことは全くないであろうという前提でお話しをされておりますけれども、現在の国際社会というものは、国連とかいろいろな活動は続けておりますけれども、御承知のようにいろいろなところで紛争が起きておるわけであります。その際に、ある国、ある地域が極端に軍事力がないというか防衛力がないといいますか力の空白になっておりますと、そこが発火点になるということは往々にしてあることでございますし、そういうことがないようにするということが一つのバランスを保つこと、平和を保つことの理由になっておるわけであります。  さらに日本について申しますれば、日本自身、好むと好まざるとにかかわらず、この東アジアにおいて戦略的に非常に重要な地理的条件を占めておるということでありまして、それぞれの国あるいはそれぞれの勢力が自分の勢力圏といいますか、あるいは自分の防衛圏というものを広げようと思いますと、日本というものが極東においては非常に重要な立場におるということで、日本が何もしなければあるいは日本が中立的であれば日本に対して何らの侵害も起きないというのは余りにも空想的な考えではないかというふうに考えておるわけであります。
  99. 奥野一雄

    ○奥野(一)委員 そういう面の見解の違うところは幾ら議論したって平行線ですからどうにもならぬと思うのですが、先ほどから申し上げておりますように、今までの日本の外交方針というのはそういう方針だったろうと思うのです。外務省で違うということであれば、これはまた考え直さなければならないけれども、外交努力というものはそういうものだと思うのですよ。例えば日ソ漁業交渉なら交渉が行き詰まるとすると、行き詰まったからといって、これは戦前なら帝国海軍でも引き連れていって多少威圧するなどということをやったかもしれないけれども、今はそんなことは考えられないわけですから、お互いに精力的に話し合いを詰めていって外交の中で解決していくということになるわけですね。今我々の周囲を取り巻いている国際情勢の中で、貿易摩擦の問題にしたって、まさか武力によって解決するなどということは考えられないわけですね。今、日本の場合は、仮にどこかの国との間でもって外交上まずい問題があるとしたって、それは最大限の外交努力でもって解決をするという方向をとっておるのだろうと思うのですよ。  だから、そういうようなことを判断していくというと、日本の独自の問題でトラブルが起きるというふうにはどうしても理解できない。仮にトラブルが出てくるとすれば、それは何回も言っているように、むしろ日米の戦略体制ということによるトラブルの方が可能性が強いのではないか、私はそういう心配をしているわけなんですよ。先ほどから言っていますように、日本が攻撃目標にされてアメリカの軍艦が応援に来る、それが攻撃されたら日本の自衛艦が出かけていってそれを護衛する、これはいわゆる国際紛争を武力によって解決するということにつながっていくのじゃないですか。そうしたら、これは憲法九条で否定している国際紛争に対する武力解決につながっていってしまうのではないですか。そういう可能性、おそれは全然ないわけですか。
  100. 加藤紘一

    加藤国務大臣 私たち防衛政策というのは、当然のことながら政府部内でいろいろ相談してやっていることでございますから、日本の外交政策と相反するような政策をとるわけはございません。ですから、委員もお読みいただいたかと思いますけれども、私たち防衛政策の基本文書として「国防の基本方針」というものがございます。ごく簡単なものでございますが、その第一に書いてありますのがいわゆる国際協調、できるだけけんかしないようにしましょう、仲よく諸外国とつき合いましょうというのが第一であります。第二番目には、立派な国内の社会的、経済的な基盤をつくって、守るに値するような、守る力を持つぐらいのちゃんとした国になりましょう、こう書いてあるわけです。三番目に、力の真空が生じたらだめだから、ある程度の防衛力を身につけましょう。四番目に、それで防ぎ切れなかったら日米安保条約アメリカの支援を求めましょう。こう書いてあるわけでございまして、第一番目に国際協調というふうに、昭和三十二年につくられた「国防の基本方針」にあることはよく御理解いただきたいと思いますし、これは現在までも私たち防衛庁の憲法に次ぐ基本的な文書になっているわけでございます。  そこで、次のポイントで、トラブルが起きっこないんだから、また漁業交渉、貿易交渉で言うことを聞かないからといって攻めてくるような時代ではないから、日本にはもうそういった防衛力なくたっていいんじゃないかという御質問でございますけれども、これは今防衛局長が二つの点をお答えしたところに尽きると思います。具体的なトラブルがなくても、力の真空があるとトラブルが起こる可能性があるということではないでしょうか。それからもう一つ、具体的に侵略を考えなくても、自国の安全というものをより強く強く考えている立場の人たちが、できるだけ自分の勢力圏を拡大した方が自国の安全をより確保できるという意味で、それぞれの地域、その周辺地域を勢力下に置こうとする発想が生まれることは今の世界の中で往々にしてあることではないでしょうか。そういった意味のトラブルが起きないようにするためにある種の防衛九を持ち、抑止力を持つということが私たちにとって必要なのではないだろうか、こう考えております。
  101. 奥野一雄

    ○奥野(一)委員 本当はその辺のところを、私は一つの基本になるだろうと思っておりまして、大いに議論をしたいと思っておるのですが、時間が経過しておりますし、次回あたりから少し具体的なことでお尋ねしたいと思っているので、きょうは入り口に入る前に、政府防衛庁の考え方をもう一遍確かめておきたいということを前段申し上げたので、余り今その論議に突っ込んでいきませんが、あと二、三簡単に考え方だけを聞いておきたいと思うのです。  一つはGNP一%の問題。私なら、例えば一%を守るか、自分に絶対守らなければならないという気持ちがあったら、絶対守ると答えるのです。しかし、去年あたりから少しニュアンスが変わってきているのですね。新聞なんかでも言われておりますように、また我々が受け取っておりますように変わってきている。実際上は、防衛庁は一%枠を守るという考え方は捨ててしまっているのではないか、ただ、今一%枠を突破しますなんてなかなか言い切れないから、我々の表現を使えば嫌々ながら、何とか守りたいと思います、こういうふうに変わっているのではないかと私は思うのです。絶対一%枠を守るのだということだったら、何もちゅうちょすることないと思うのです。断固守ります、こう答えればいいと思うのですが、その辺はどうですか。
  102. 加藤紘一

    加藤国務大臣 GNP一%問題についての昭和五十一年の三木内閣の閣議決定の方針は、六十一年度の当初予算編成の際に私たちは守ってまいりました。それで、今後ともできる限り私たちは守ってまいりたい、こう思っております。GNP一%につきましては昨年来いろいろ議論がございましたし、国会での総理答弁、いろいろなやりとりもございますし、私たちとしては現在そのようなつもりで、できる限り守ってまいりたい、こう思っている次第でございます。
  103. 奥野一雄

    ○奥野(一)委員 やはりできる限りという言葉が入るわけですね。できる限りという言葉が入るということは、その考え方の中に、できないときはしようがないんだというふうに受け取れるのです。そうでなかったら、絶対守りますということになっていくのですね。それが、できる限りということは、できなくなったときには突破してもやむを得ないということにつながっていくわけでしょう。現実に今までの議論の中では、それじゃ〇・九九九と一・〇〇一と幾ら違うんだ、それから長官もたしか一・〇〇一になったからといって決して軍事大国になるのではない、こんな意味のことを言われておりますね。私も決して、一・〇〇一になったから軍事大国だなんて、そんな短絡的な物の考え方は持っていないのです。それは一%枠だって、私個人では認めたくないと思うのですよ。この前大蔵大臣にも予算の分科会で、何で防衛費だけがマイナスシーリングの対象から外されるんだ、これは国民が非常に不思議に思っていることなんだ、こういうふうなことを言いました。問題は、〇・九九九だからよくて、一・〇〇一だからだめだ、そんな簡単なことではなくて、そういうふうに、〇・九九九と一・〇〇一では何も違わないではないか、だから一・〇〇一になってもいいじゃないかというその考え方が私は危険だと思うのです。そういうふうになってくると、次は一・〇〇一と一・〇〇二と何ぼ違うんだ、こうなっていくわけです。私は、歯どめというのはそのことについては絶対守るという基本がなければだめだと思うのですよ。  例えば、前に、戦力に関する政府統一見解というのが二十七年の十一月二十五日に閣議決定されているわけですよ。このときには、「戦力とは、近代戦を有効適切に遂行しうる総合実力」だ、こう言っておったのですね。今はそういう言葉は使っていない。「必要最小限度」というような形になっているわけですよ。「必要最小限度」と言うと何か聞こえがいいのですね、ああ必要最小限度か。ところが、この「必要最小限度」というのには何にも歯どめがないわけですよ。そうでしょう。「必要最小限度」に歯どめないでしょう。私、一番最初に申し上げましたように、解釈がだんだん拡大されてきているんではないかと言うのは、そこなんですよ。  「必要最小限度」なんというのは何も歯どめになっていない。それは、そのときの情勢、相手国と思われるところの軍備の状況、そういうものによってこっちはまた拡大されていくわけだ。相手はこれだけのものを持っています、だから、我が国もこれだけのものを持たなければ「必要最小限度」の防衛力になりません、こうなっていく。相手の方がまたこれだけになると、日本はまたこれだけ、こうなる。だから、「必要最小限度」そのものにだって歯どめがない。だから、このGNP一%の問題だって、絶対守るという基本線でなければ、できる限りですから、これはいつか崩されていく可能性というものはどうしても残ってくる、そういうことですね。これは、いいですよ。時間の関係がありますから、そういうふうに指摘をしておきたいと思います。  それから次は、これは外務省の方だと思うのですけれども、後で防衛庁の方にも関係してまいりますけれども、行政権と国民主権というものがございます。これは憲法上明確になっているわけですが、行政権と国民主権というのはどっちが重いのかということなんですよ。これをちょっと聞かせてもらいたいと思います。
  104. 宍倉宗夫

    ○宍倉政府委員 どちらが重いのかというのは、私、有権的な御答弁を申し上げられま軌が、国民主権というのは憲法にございますように、日本国の基本的な物の考え方だと思いますし、行政権というのは、国民主権のもとで立法権があり、行政権があり、司法権がある、三権分立の一つだ、こういうことだと思います。
  105. 奥野一雄

    ○奥野(一)委員 きょうは外務省の方は見えてなかったですか。——それはちょっと困ったですね。打ち合わせの中ではこの点については外務省に聞きますからというようなことを言ったんだけれども。そうですか、それじゃ、これは後でまたいつかの機会にお尋ねをしておきたいというふうに思います。  お聞きしたかったのは、非核三原則という問題、これも防衛庁は直接に関係ないですね。このことは外務省だな。後でなければだめだ。  それじゃ、文民統制でちょっとお尋ねします。これは防衛庁いいですね。  だから、なぜ最初に行政権と国民主権の問題を聞いたかというと、これは文民統制にも絡んできているわけです。このほかに非核三原則にも絡んできていますし、このほかにも絡んできているのだけれども、そっちは外務省がいないからしようがないということになるのですが、文民統制ということから考えた場合に、その文民統制をする最高の責任の所在というのは、いわゆる行政権を持っているところが最高なのか、あるいは国民主権が最高の責任所在なのか。国民主権というと、当然国会ということになると思うのですね、国権の最高機関ということになるわけですから。主権者である国民から我々は負託をされているという感じでしょう。だから、文民統制の最高責任所在は行政権にあるのか、国民主権にあるのか。この点はどうでしょう。
  106. 加藤紘一

    加藤国務大臣 文民統制の最後の権威というものは、国会にあると思っております。
  107. 奥野一雄

    ○奥野(一)委員 私もそうだと思うのですね。そういうことになりますと、例えば予算委員会や何かでも、いろいろ防衛に関する資料を提出してくれと言うと、出せないと言うのが随分あるわけですね。これはどういうふうに判断すればいいのですか。
  108. 宍倉宗夫

    ○宍倉政府委員 国会で資料提出をお求めになられることがよくあるわけでございますが、それは国政調査権に基づく権限の一つかと存じます。結局、この問題は、国政調査権と私ども国家公務員の守秘義務との間の関係の問題かと存じます。  この問題につきましては、昭和四十九年の七十四国会でやはり政府の統一見解がございまして、守秘義務によって守られるべき公益と国政調査権の行使によって得られるべき公益とを個々の事案ごとに比較考量することにより決定されるべきものと考える、こういうことになっております。政府といたしましては、国会の国政調査活動が十分その目的を達成できるよう、政府の立場から許される最大限の御協力を申すべきものという御答弁になってございます。私どもこの見解に基づきまして、それぞれの各事案ごとにその判断をいたしているわけでございます。したがいまして、提出できるものももちろんたくさんあるわけでございます。ケースによればかなり多くの、大部分のものが御提出申し上げられていると思いますが、個々の事案によりましては、先生御指摘のようなことで残念ながらお出しできないものもある、こういうのが現状かと存じます。
  109. 奥野一雄

    ○奥野(一)委員 ちょっとわからないのですけれども、いわゆる国民主権、国会は国権の最高機関だ。これは憲法にそういう規定になっているわけで、憲法の前文に主権は国民にあるのだと書いてあるわけです。ですから私どもは、国会というのはそういう国民主権というものを代表する機関だ、国政調査権というのとはちょっと違うのではないかという印象を持ったのです。この解釈が違うかどうかは私自身もよくわからないのですけれども、国政調査権というふうに置きかえられるのと、今防衛庁長官も言われましたが、シビリアンコントロールの最高責任ということになると、これは国会だ。これがシビリアンコントロールの最終責任所在だ。こうなってきますと、私は、国政調査権だとかなんとかということではないのではないかと思うのですよ。当然、シビリアンコントロールという立場の中から必要だ。ということは、行政府はみんな知っているわけでしょう、関係の行政機関というのは。行政権を持っているところは国会に提出できない秘密資料だって知っているわけでしょう。これは防衛庁長官は当然知っているはずだ。その行政機関である防衛庁長官が知っていて、それを国会には出せないということになると、私は、シビリアンコントロールの最終責任はどこなんだと疑わざるを得ないということにつながっていくわけなんですよ。それはどうなんですか。
  110. 加藤紘一

    加藤国務大臣 シビリアンコントロールと、それから防衛上のある種の情報とか、ぎりぎりの我が方の対処方針とかということについての資料提出の関係というのは大分御議論をいただいております。私たちとしてもできる限りそれを提出すべきであろうと思っておりますけれども、ある種のものはそれを国会の場に御提出し、そしてそれをこれだけ広いところで議論いたしておるわけでございますし、当然のことながらテレビでの放映もあったりして外国に伝わることによってそれが国益を害するのではないかと思われるよう唐資料の問題が当然出てくるわけでございます。そういうものは行政府内の限られた人間、例えば防衛庁で言えば私とか数人の人間、また担当者しか知らないという仕組みにいたしているものもございます。そういったぎりぎりのものについては提出することの是非というものを私たちも当然考えざるを得ないので、ある種のものにつきましては提出を見合わさせていただくということはぜひ御理解いただきたいと思います。  例えば私たちがどのような事態になったらどのように対処するかというようなこととか、我が方はどの程度対処できるかということの手の内を明らかにしますと、当然それを読んでそれ以上の対処をしようというふうなことを思う国もあるかもしれません。それは抑止のバランスという意味からはより高いレベルの力のバランスに移行することになりまして、それは決して世界の平和と安定のために寄与しないのではないか、そんな配慮があることは御理解いただきたいと思います。
  111. 奥野一雄

    ○奥野(一)委員 言葉ではシビリアンコントロールというのは国権の最高機関である国会にある、こう言われておっても、肝心のところになるとそれはできないんだ、こういうことになってしまうわけですね。  私、これはやりようがあると思うのですよ。守秘義務というものをきちんとすればいいということが一つありますね。  それから、政府のいろいろな行政の中で、大体防衛関係、外交関係でも若干ありますかな、あとどこの常任委員会だってほとんど行政機関の知っているものは最大限まず知ることができる、そういう状況になっているわけですが、防衛関係についてだけはいろいろな制限がある。例えば漏れることが国益を害する、今こう言われる。逆にそういう国益を害するほど重要なものについて我々は何も知らされていないということになるわけですね。そういうことにもなるわけでしょう。だから、もしそう言うのであったら、守秘義務というものをきちんとして、そして例えば秘密会なら秘密会でも開くとか、そういうようなことだって考えられていいと思うのです。  それからもう一つ国会というものがそういうふうにしてシビリアンコントロールの最高の責任所在であるならば、例えばこういう委員会なんかについてもむしろ防衛庁の方から、この問題について安保特別委員会の方に報告をしたいから開いてくれというくらいのことがあっていいと私は思うのですね。  それから、時間がないからちょっと今はしょって言いますけれども、行政権の方が優先しているんじゃないかという観念が私は取れないのですよ。シビリアンコントロールというようなことを言っているけれども、どうもそれは国権の最高機関である国会ではなくて、行政権を持っている行政府ということで考えているのではないか、そう思われる面がたくさんある。  これは先ほど外務省がいなくて質問できなかったけれども、例えば非核三原則の問題で、核積載可能の米艦の入港や何かの問題についてだって全然見解が違っている。あれは国民主権の問題だと思うのだけれども、行政の立場でやられる。先ほど上田先生の方から言われた三宅島の問題にしても逗子の池子の問題にしても、国民主権ということではなくて、むしろ行政権の方が飛び抜けていって物事が進められていっているではないか、こういう感じがぬぐい切れないから、なおここに結びついてくるわけなんですよ。そういう面については再考を要するんじゃないかと思うのですが、本格的に防衛問題を議論しようということになりますとそのくらいのことを考えてくれないと、防衛庁長官が言われますように、高度な防衛戦略を高い視点から議論してくれなんと言ったって、それはできないことになっていくんじゃないですか。どうでしょう。
  112. 加藤紘一

    加藤国務大臣 防衛政策を遂行する際に行政権の方が優位に立っているのではないかということは決してございません。例えば私たち防衛基本政策を定めるときも国会の場で十分に御議論いただいて、そして国会の中で御同意いただけないものは私たちはなかなか遂行できないわけであります。もっと具体的に申しますと、ちゃんと国会の中でオーケーをとらないと飛行機一機買えないわけです。これは予算の統制になっているわけでございまして、そしてそれは隊員の給料一つたって払えないし、飛行場一つたって建設ができないわけでございます。したがって、私たち国会というものは防衛政策を立案し運用する際に最も大切なところだと思っております。その前にもちろん防衛庁の内部で内局がシビリアンコントロールの機能を果たし、それから国防会議というところにすべてを報告し、そのコントロールを受け、そして閣議の決定を受けて、そこでコントロールを受け、そして最後に国会でまた大変なコントロールを受けるわけでございます。ですから、私たち防衛庁国会でこういった御質問を受けていることが実はまさにシビリアンコントロールを受けている現場なわけですけれども、きょうのこの答弁もその最たるものの一つだと思いますけれども、これについて私たちが費やしている時間と精神力の総和というものは防衛庁の中の最大のものでございますので、そこはぜひ御理解をいただきたいと思います。  それじゃ、資料のある一部のものを隠しているじゃないか、一番重要なものを隠してなぜシビリアンコントロールだとおっしゃいますけれども、最も大切だから隠しているというものでないものもあるのです。例えば我が方の手の内、いざというときにどういうふうにどの地点で対処しようかとかというようなことは、実はこれは運用上の問題でございまして、ある意味では現場の話かもしれませんが、しかしそれは外に出したら大変国益に反するから言わない、外には大っぴらにはできませんというものもあるわけでございまして、一番重要な防衛の基本政策と、これがなければ何もできない予算につきましては、もう完全にコントロールをされているということはぜひ御理解いただきたいと思います。
  113. 奥野一雄

    ○奥野(一)委員 時間が参りましたのでまた後日に譲りたいと思いますが、私が前段で申し上げましたように、昔から解釈そのものは変わっていないのですね。例えば憲法九条なら九条に対する解釈そのものは政府の方も今まで変わっていないけれども、我々は中身がどんどんどんどん何か拡大をされていっているという印象をどうしてもぬぐい切れないのですね。そのことが、前段で申し上げましたように、国民が果たして合意をしているのか、あるいは国会がそのことについて一〇〇%合意をしているのか、こうなるとちょっと疑問がある。だから、そういう面についてはやはり慎重にやってもらいたい。  それから、できる限り国民の前にそれを明らかにしていくという努力というものもやってもらわなければ困るんじゃないか。そうでないと防衛庁だけがひとり歩きをしてしまって、国民の方から支持をされないということに当然つながっていくということも感じましたので、あえて申し上げたわけでございます。  時間が来ましたので、終わります。
  114. 栗原祐幸

    栗原委員長 午後一時三十分より再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時三十分休憩      ————◇—————     午後一時三十二分開議
  115. 栗原祐幸

    栗原委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。渡部一郎君。
  116. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 私は、きょうはSDIの問題につきまして、まとめてお尋ねしたいと思っておるわけでございます。  最近、SDIの問題につきまして各所で論議され、また報道によりますと、SDI日本国の国あるいは企業参加について、アメリカ政府から直接あるいは間接にいろいろな形で慫慂されておられるようでございますし、この問題に対する扱いを、いよいよ政府としても数次にわたる調査団の結果、お決めになる直前のように伺っているわけでございます。したがって、この問題を一体我々としてどう扱うか、論議を絞って申し上げたいと思っておるわけでございます。なるべく話を散らさないように申し上げたいと思いますので、よろしくお願いしたいと存じます。  第一に、英国あるいは西独は、米国との間でSDI研究のための政府間協定を結んでおりますが、SDIが有効な防衛システムたり得るか否かを判断するには、私どもの手元に到着した資料だけでは不確定な要素が多過ぎるなというのが実感であります。といいますのは、相当数、相当量にわたっていろいろな情報をかき集めておるのでありますけれども、費用対効果の観点であるとか、あるいは日本や西欧の対ソ防衛の有効性についての基本的な疑問だとか、まだ余り私どもはわかっていない。それであるにもかかわらず、近代的な科学技術の増強のために、SDIに対するコミットを急いだ方がいいという考え方の議論と、いやもうちょっと慎重にしろという議論と、両者が交錯しておるという状況ではないかと思っておるわけでございます。  この問題に対する政府側の意見が統一されたものであるのかどうか、あるいは閣議で一致したお考えであるのかどうかもまだ不明でございますが、現在時点における対応の仕方、御意見の収束、それを国務大臣として、また防衛庁長官として御説明いただきたいと思います。
  117. 加藤紘一

    加藤国務大臣 申すまでもなく、SDIの取りまとめは、日本政府においては外務大臣が行っておられます。したがいまして、私の方から特にまとめてお話しする立場にありませんけれども、御承知のように、現在の政府の立場は、アメリカSDIというものの概念を研究することについては理解をするという立場でありまして、政府全体の意見としてまとまったものは現在その限りであると承知しております。  御承知のように、今行っております調査団報告を待って、ただいま先生が御指摘されたようないろんな技術面の話だとか、それに伴うアメリカ政府の取り組み方だとか、そういったことをいろいろ報告を受けるわけですけれども、それから政府部内で議論がなされていくのでないかなと思っております。
  118. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 今回出された団は、第三回の調査団で官民合同のものである。民間側の参加は二十一社であるというように報道されておりますが、これらの情報はおおむね正確なものでございますか。  また、この調査団報告は、いつ日本に対して、国内に対して行われるものであり、その結論はいつごろ出るものであるか、その辺のところを御説明ください。
  119. 岡本行夫

    岡本説明員 ただいま訪米中の官民合同調査団は総勢五十五名でございまして、中に四十六名の民間専門家の方々が入っておられます。出身の会社は二十一社で間違いございません。  調査団が帰国いたしまして報告を取りまとめることになるわけでございますが、その作業のスケジュールがどのぐらいのものになるか、これは調査団が帰ってきてからおおむねのめどがつく話でございまして、現段階で確たる見通しは有しておりません。
  120. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 昨年の毎日新聞の世論調査でも、核廃絶につながるから賛成という方が一八%、軍拡を助長するから反対というのが三二%に対して、わからない方が四八%、実に半分を占めておられるという状況でございまして、国民の大多数もまた情報不足に悩んでおるという状況が如実に出ておると思っておるわけでございます。  また、アメリカの物理学者のアンケートを見ましても、三分の二の方々がSDIの有効性に疑問を持つ、これは憂慮する科学者同盟がレーガン大統領のスターウォーズ演説から三年目に調査したものでございますから、必ずしもその三分の二というところに重点を置いて言うのは間違いでございましょうが、相当の反論があるらしいということもうなずけるわけであります。そして、これに対して幾つかのテキスト等もございますが、八五年一月三日、レーガン大統領の戦略防衛構想に対する説明の中でも、これに対して言及されております。  私は、ここで改めて伺いたいのでありますけれども、このSDIに対して防衛庁長官としてどういう認識を持っておられるか、数項目お尋ねしてみたいと思います。  第一は、SDIアメリカの軍事、政治戦略の基本的概念を変えるものなのであるかどうか。今までの間、アメリカの基本的なやり方というものは、抑止力によって戦争を回避するものであったと我々は聞いておるわけでございますが、この際、攻撃システムと防御システムを取りまぜてかえって猛烈な、高められた攻撃力の軍事体になってしまうということになりますと、今までの抑止力戦略とは全然種類を異にしたアメリカの軍事戦略というものが登場するのではないかと思っておるわけであります。これが第一。  また第二に、アメリカは、アメリカの同盟国というのをことごとく無防備にしてしまって、実際上本当に攻撃力と防衛力と両方持ち合わせているのはアメリカだけだという形で、アメリカ中心体制というものを一挙にこの際つくり上げる方向で行っているのであるのかないのかという点であります。  第三番目は、専門家の意見が何種類がございますけれども、日本でも著名なこうした問題の研究家の意見も数日前も伺ってみてわかったのですけれども、SDIにおいて阻止されるICBMの数量はたかだか一〇%ダウンするにすぎない、実際はICBMの大半は当たってしまうのだ、だからむだなのだ、三回殺されるのと二回殺されるのとの差なのだ、だからこれは、自分の死骸が粉々になる権利を捨てて、粉々にならない、しかばねとなって横たわる権利を保証するにすぎないという意見もあるわけであります。事実、攻撃に対して防御しようとすることはむだなのではないかという基本的な議論が物理学者の間にも出ているようでございまして、その辺いかがなものか。  また、こうしたSDIによって、軍備競争というのは盾と矛の両面が進んでいくものでありますが、これはしばらく均衡状態にあったものを急激に軍備競争を拡大するものになっているのではないか。こうした基礎的なイメージはSDI研究のスタートの時点で解決されなければならぬ問題でございましょうから、またそれに対しての御見識はお持ちのことだろうと推察しまして、長官から御返事を承りたいと思っているわけでございます。
  121. 加藤紘一

    加藤国務大臣 繰り返しますけれども、私たちは、外務省中心に検討がなされて、そして政府部内でもまた近々そういったSDIについての議論が行われるものだと思いますので、防衛庁防衛庁なりに、防衛庁の意見をまとめるというのではなくて、いろいろな問題点について我々なりに勉強しておかなければならないなと思っております。  第一の、これはアメリカの軍事戦略を基本的に大きく変えるものではないかということでございますが、もちろんこれができ上がるかどうかというのが、まさに今私たち調査し、またアメリカ自体も調査しているわけですからわかりませんけれども、八五年一月の大統領の演説なんかを見ますと、かなり大きな戦略的な転換ということで大統領自身がこの構想を考えているという気はいたします。  例えば、たしかあのときの年頭教書だったと思いますけれども、相手の国が何百万人殺せるならば、こちらの方も核によって何百万人殺せるというような、いわゆるMAD、相互確証破壊の概念というものが本当にヒューマンなものであろうかということを大統領みずから言いつつ、そしてやはりここでは防御に主点を置いたものを考えていかなければならないと演説しておりますけれども、あの辺については本当に戦略構想の基本をどうするかという深い側面で考えているのではないかなという気がいたします。  同盟国につきましての配慮も、米大統領自身が、これはアメリカだけが守られるものではなくて、同盟国に対する配慮も十分に考えておると言っておりますけれども、その辺が問題点になっていることもアメリカはよく承知しているのではないかなと思います。  それから、本当にこれが技術的に可能であるのか、もし可能でなかったならばこれは逆に攻撃兵力の拡大をもたらすのではないかという論点もよく聞く論点でございまして、私たちもその辺も注目しながらいろいろ調査し、勉強し、また議論しなければならないのではないかなと思っております。  今度のSDIというものを見ますと、つい盾と矛の関係、いわゆる矛盾という言葉が出てきた中国の故事を思い出してしまうわけです。御承知のように、ある中国の武器の商人が、この盾はいかなる矛からも守ってしまう、同時にこの矛はいかなる盾をも貫き通すという二つの矛と盾を売っていたそうですけれども、ある客が、ではその二つを相戦わせたらどうなるのと尋ねたら、ぎゃふんと言ってわからなかったというのが矛盾の語源だと何かの本に書いてありましたけれども、本当に盾というものがしっかりできるのかどうか。それがまたコストとの関係がどうなるのか。今先生が御指摘なされた点は、まさに私たちがこの問題を考えるときによく論議をしなければならない大半の問題を御指摘になったのではないだろうかという気がいたします。いずれにしても、かなり基本的な議論が必要なのではないかと思っております。
  122. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 先ほど申しましたように、SDIについて詳細を今取材しなければならない段階で、余り詳細な話よりも、むしろ基本的なスタンスをよく決めておかなければいかぬなということを実は痛感するわけです。  軍備競争というのは、必ず一方が進むと相手が進む、こっちが進むと向こうが進むという段階になる。SDIの議論が出てきた当初から恐らくそれに対抗する軍事勢力の軍部は懸命になって中間的対策としてそれを突き破るための方策を考える。例えばソビエトの軍事首脳の演説によれば、SDIができるのは相当先だ、その間我々はミサイルを少数ふやすことによって米軍のSDIを全部突破することができるとみずから述べた事実がある。  私もこう見ておりますと、例えばアメリカのプロクシマイアー上院議員ら民主党のメンバー二名が、レーガン政権が推進しているSDI参加している中心的科学者の証言として、一九九〇年代半ばから後半にかけての実戦配備は困難だという六十二ページの報告書を公表された。公表されたのは三月末のようでございます。八三年三月にレーガン大統領がこれを発表してから五つの主要研究計画はそれぞれ顕著な進展が見られるけれども、驚嘆するべきほどのものではない。むしろ包括的な核ミサイルの攻撃システムを宇宙に配備する上で乗り越えがたい障害というものがあるのがわかった。また、解決のめどの立っていない問題として、SDIシステムの衛星を敵の攻撃から防衛するシステムがない、第二に、発射された大量の核弾頭の中からおとりの弾頭と本物の弾頭を区別することができない、三番目に、システム全体の打ち上げと維持管理に要する費用を妥当な水準に抑えることが難しいというようなことが表示されている。  これは、当初我々が聞かせてもらったときにも、相当困難な問題だなということは私たち常識的な、定性的な話の聞き方でも表面にクローズアップされてきたところだと思うわけです。そうすると、むしろSDISDIと連呼されるたびに一番効果として出てくるのは何か。それは軍拡競争をやろうよという世界に対する叫びかけのように聞こえてならない。要するに、今の軍備だけではだめだぞ、大変だぞという両国の軍事担当者に対する強迫観念のようなものを増強する、ひいては国家方針を曲げてしまうという効果もまた十分恐れなければならないのではないかという感じがするわけです。今矛と盾の問題で見識ある御答弁をいただきましたが、さらに今度は、そういう軍備拡大の競争をどうしたらとめることができるのか、我々今考えなければならぬ瀬戸際に立っている。二十世紀後半の政治担当者の一人として、我々はどうしたら相互不信のこういう安全保障問題の中に信頼というものを回復し、相互に信頼を回復するためのさまざまな手続というものを安全保障体系の中に組み込んでいくかという重大な問題がある。このSDIの問題は、そういう配慮なくしては単に人類の相互せん滅作戦にしかならない。SDIをもじって、ストラテジック・ディフェンス・イニシアチブという言葉なんだそうでございますが、スーパー・ディストラクション・イニシアチブだと批評した人があるそうでございますが、完璧にして最高なぶち壊し大構想とでも言うのでしょうか、そういうふうに名づけられてもしようがない点を含んでおる。我々日本がこれを扱う場合には、そうした信頼回復のための手続をこれにどう加えなければならぬかということを日本の外交、安全保障担当者は、それこそまさに研究して、世界の中に一石を投ずるということで、この問題の取り組みの基本的なスタンスをつくるべきではないかと思いますが、どうお考えですか。
  123. 岡本行夫

    岡本説明員 私どもといたしましては、先ほど防衛庁長官の御答弁にもございましたけれども、現在米ソ間のいわゆる核戦略というものが基本的には相互確証破壊理論、すなわち先制攻撃を行えば耐えがたい損害をこうむることを相手に明確に認識させることにより抑止を図るという考えに基づいて行われているわけでございます。これを防御システムによりますより安全な抑止の体系に移行し、究極的には核兵器を使用する意味をなくする可能性について研究しているものと理解しております。完全性についてはいろいろアメリカの国内でも議論があるようでありますけれども、これは、このような研究を続けることによりまして攻撃力としての弾道ミサイルの有用性が減少すれば、その削減への道が開けてくることになる、これが米国の理解と認識しております。
  124. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 僕はそういう抹消的なことを課長とやりとりしようと思って今質問したのではない。課長は、今の答弁で極めてよろしくないのは、日本はまだSDIの導入を決めたわけではないのです。ないでしょう。そうすると、防衛の部分を強烈に増加させることによってMAD戦略を破壊させ、そして安定させるというのは、これはレーガンさんの意見だよね。レーガンさんの意見だ。まだ日本の意見ではない。あなたは、そもそもそれがうまくいっているかのごとく発言されたのは、それはまずい。討論の話にならないです。我々のスタンスとして、今長官の言われたところまでは、僕は非常にいいと思うのは、盾と矛、今矛が非常に大きいのを、盾を増強するという形の構想があることによって検討を開始されたというのはわかる。しかし、今あなたが言ったのは、盾がものすごい大きなレベルになったときに、やりはもう役がなくなっちゃった、盾が余りにもすごいから、防衛力がすごいからやりが刺さらなくなったという事態をつくろうというレーガンの叫び声に対して、私は先ほどから言っているように、一九九〇年代までは配備はできない、乗り越えられない問題が多いとか、金額がかかり過ぎるとか、致命的な問題が今アメリカの報道としても出ているわけでしょう。そのときに、あなたはそれをわざわざ捨象して、捨てちゃって、さもできるかのごとく演説する。これは、私はよろしくないと思う。だから、今、私が大臣に問いかけているのは抹消の議論をしているのではない。抹消的な話をしているのではない。人類を生き残らすためには、こうした問題を扱うときに、それと一緒にアメリカ側が何にも言わない一つのテーマを日本として議論しなければならない。どうしたらこういう日本安全保障体系あるいはアメリカ安全保障体系の実際的な配備、訓練、計画等の中において信頼を醸成していき、相互の戦闘意思というものを次第次第に下げていくかという問題について研究していかなければだめなんじゃないですかと今聞いているんだ。その途中で余計な割り込みはやめてもらいたい。  だから、改めて私が大臣に伺うのは、そういう問題についてどうお考えになるか伺いたい。基本的な立場を伺っているのです。
  125. 加藤紘一

    加藤国務大臣 先ほど申しましたように、私は、アメリカの大統領が、本当に相互確証破壊を続けていっていいのだろうかというような演説を、たしか教書だったと思いますが、そこで述べつつSDI構想を出したことは、かなり真剣に考えて提起した問題であろうと思っております。よくSDIというのはスターウォーズだ、宇宙の中に単に軍拡をもたらし、そして、何となくテレビゲームの世界のような話だねというようなとらえ方もアメリカの中にもありますし、我が国の中にもありますけれども、私たちは、やはり盾と矛の関係、そして人類がどういうふうにして生存を守るためにいろいろな防衛装備を研究してきたかというような、基本の問題を論ずるのにいいテーマなのではないだろうかなと思っております。まじめに議論しなければならない側面であろうし、だからこそ我が国の政府部内でも真剣に議論されることになるのではないかなと思います。  もちろん、この仕組みは、我が国が持つ仕組みではなくて、戦略的な体系を有しているアメリカ研究し、その装備をする、そういうものであろうと思いますから、我が国が導入するという話にはならぬのだろうと思うのですけれども、いずれにしても、世界の軍縮、軍備の問題は我々にとりましても大変大きな関心を持たなければならない分野でございますので、我々としては、それを十分にいろいろな側面から議論できるように勉強を続けたいと思います。その際に、今先生おっしゃいましたように、これがフィージブルであるか、本当に実現可能であるのかどうかというような技術的な側面もかなり重要な部分でありますし、今度の第三次調査団というものがどういった結果を持ってくるのかも非常に興味のあるところではないかと思っております。
  126. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 マスコミに出た話を二つ次に承るわけでありますが、この五日来日されたワインバーガーさんと大臣がお会いになったときのことが、全部は出てないのでしょうから、非常に派手な話が出ているわけです。国防長官は、SDIは「レーガン大統領の信念であり、これに対する反対意見は無知に基づいている」と述べたというふうにあっさり報道されているわけであります。無知に基づいているというふうに反対意見を一発で決めつけることは、まああの人のふだんの言動からなさそうだと私は思うのでございますが、これはかなり、私はすべての意見がワインバーガー氏と一致するわけではありませんけれども、ちょっとひど過ぎるようだなという感じもする。一問一答全部、大臣同士の話し合いをしゃべるというわけにはいかぬけれども、これぐらいはある程度全貌を伝えておかれてもいいのではないかなと思うわけであります。そのチャンスを大臣に差し上げたいと思いますが、いかがですか。
  127. 加藤紘一

    加藤国務大臣 チャンスを本当にいただきましたので、ちょっと訂正させていただきますが、ワインバーガーさんは、無知という言葉はちょっと使わなかったように思います。自分たち構想、それから研究しているいろいろなことについて十分なるインフォメーションを与えてないもので、そこから誤解を生じている部分もあるし、十分に人々に理解されてないところがあるというような表現を使ったように思いますが、具体的には、記録をとっております国際参事官からお話し申し上げます。  しかし、いずれにしてもSDIの問題は、我が方の政府を代表して、特に国外に発言するときには外務大臣に一本に絞っておかなければいけませんので、会談のテーブルにおきましては、私の方からは余りといいますか、できるだけコメントしないようにしておりましたので、隠れているようなやりとりがもっといっぱいあったのではないかということを時々言われますけれども、正直のところ余りないのでございますので、その辺は御理解いただきたいと思います。
  128. 瀬木博基

    ○瀬木政府委員 概要は今長官から申したとおりでございますが、無知云々というのは、私が新聞記者諸公に御説明したときに恐らく私の言葉が足りなかったのだろうと思いますが、ワインバーガーが申しておりましたのはまさに長官が申したとおり、アメリカの中でもこのプロジェクトがうまくいかないんじゃないか、いわゆるフィージブルでないんではないかという意見を持っている人もあるけれども、実際問題としてはこの研究は非常に順調にいっている、そういう面から見るとうまくいかないと思う人はやはり十分な情報を持っていないためにそういう理解をしているのではないだろうか、そういう趣旨のお話でございました。それ以外につきましては、ただいま長官が申したとおりでございます。
  129. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 加藤長官は、SDI研究参加問題を技術面だけでなく軍事的見地からも十分検討を加えられるように庁内において指示されていると漏れ承っているわけでございますが、防衛研究所が長官命を受けて、SDIに関する戦略論についてと題するレポートを集め、それが近々土台となって庁内の議論が固められるというふうに報道されております。ところが、報道に対しては、そんなレポートの作成を指示した覚えはないというふうに御説明になっておられるように聞いておるわけでございます。  私は、長官がこの問題について研究をするように庁内で指揮をとっておられるということは想像にかたくない。そんなこともしないような長官なら長官意味がない。職務熱心の余りいろいろなことをやっておられるのはわかっておる。研究が悪いとは言えぬだろうと私は思っている。非常に警戒的な目をして私の発言を見ておられるけれども、前任者にはしばしばこういうテーマでけがをされた方がおられるから警戒されるのも無理ないけれども。実際、あっさり聞くのですけれども、どの程度研究してどの程度お勉強が進んでおって、どういう考えをいつごろ抱こうとされておるのか、承りたい。
  130. 西廣整輝

    西廣政府委員 私どもは、SDIに限るわけじゃございませんが、米ソの核戦略であるとか軍備管理交渉、そういったものにつきまして、それが世界的な軍事環境というものにさまざまな影響を及ぼす、ひいては我が国の防衛についてもいろいろな問題といいますか影響を及ぼすということで、常々そういったことについて関心も持っておりますし、また研究もいたしております。防衛研究所でもその中の一環としてそういったものについて研究をいたしていることは事実でございます。  ところで、そのSDI研究はどうかということでございますが、この点につきましては、我々自身このSDI構想なりその内容というものをまだ十分に知っていないということもございますし、先ほど来お話がありますようにこの問題についての技術的なフィージビリティーがどうかというようなこととも関連をすることもあります。  さらに言えば、このSDIそのものがこれを始めるぞという段階、さらに研究開発の段階あるいはポイントディフェンスができるようになった段階、さらには戦略攻撃力というものが無力化してしまうというか無意味化してしまうような段階といったようないろいろな段階におけるそれぞれの意味合いがあろうかと思います。そういったいろいろな段階の中でさらに多くの観点といいますか視点からこの問題を見ていかなくてはいかぬと思いますが、我々が非常に関心を持っております点は、やはりこのSDIというものが現在のMADといいますか、そういったものを中心にした抑止の体制等、現在ある程度の抑止効果を生んでおるわけですが、そういったものの安定性にどういう影響を及ぼすんだろうか、そういった観点。さらには米ソの戦略バランスに対してどういった影響を与えるのだろうか。さらに核の軍備管理なり軍縮への影響はどういう形で出てくるのであろうかといったような問題もございますし、先ほど先生の申された米国の同盟国に対する核抑止力といいますか、そういったものを中心とした同盟国にどういった影響を与えていくのかということもございます。  さらには、通常兵力に対して、このSDIが進められていくということで、今後軍事関係のより多くのものがこの通常兵力の関係に移っていくのか、逆にSDI研究等に多額の経費が投ぜられて通常兵力というものがより縮小されていく傾向になるのかといったような問題もございます。  さらに言えば、より現実的な問題として、ソ連自身この問題についてアメリカよりもっと早くから研究をしている現実があるというように聞いておりますが、そういったソ連SDI研究あるいはABM条約から離脱するかしないかといったような問題を牽制するという意味でどういう意味合いがあるのだろうかとか、いろいろな観点からの検討が必要だろうと思います。  そうして、軍事戦略だけでなくてそのほか技術的なスピンオフの問題もあろうかと思いますけれども、そういったもろもろの問題がございますので、とても私どもがこれについて一つの見解を述べるなどという大それたことを考えておるわけではございません。我々としては知り得る限りの情報を集めて勉強はしてみたいということで、今申し上げたようないろいろな観点について、それぞれ肯定的な意見また反対の意見いろいろございます、そういったものを整理し、かつ我々としても考えてみたいということで勉強しているところでございます。
  131. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 その勉強は特定の部局でやっているのか、総合してやっているのか、研究所みたいなところに委託しておられるのか、どういう形でやっておられるのですか。
  132. 西廣整輝

    西廣政府委員 それほど、チームをつくったというほどではございませんが、例えば六十年度の防衛研究所の一つの課題として防衛局の方から研究所にもお願いをしておる。研究所ではそういった何人かの担当者をつくってそれなりの勉強をし、防衛局は防衛局でやる。それぞれでやっておるわけですが、いつか完結するというものではございませんので、でき上がったものをそれぞれ持ち寄っては討議をしたり、お互いに意見交換をするといったような進め方をいたしております。
  133. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 それは局でいうと防衛局の担当なんですか、装備局の担当なんですか、どこの担当ですか。
  134. 西廣整輝

    西廣政府委員 今申し上げたような主として戦略面については、防衛局が担当いたしております。
  135. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 初めてはっきりしたわけですね。そうしますと、今述べられたテーマはSDIをめぐる相当な問題点である。予算委員会やその他における答弁は、SDI問題については目下調査中である、調査中であるからお答えできないというような形の御答弁が、質問の仕方にもよるのでしょうが多過ぎまして、この問題についての論議を抑え過ぎた嫌いがあるのではないか。もう少しフランクにこうした問題についての国民の論議、国民の英知を結集する方向で討議があってしかるべきであったのではないかな。  委員長にもぜひお願いしたいのでございますが、当安全保障特別委員会は非常にレベルの高い論議のできる機能を持ち合わせているわけでございますから、防衛庁を締め上げるためにこの委員会を使うというだけでなく、積極的に先進的な人々の意見も集めてここで十分討議をすることによってこの戦略問題あるいは装備問題の基礎的なテーマについて論議をする、そして広義のシビリアンコントロールの機能を発揮するように導入していくのがいいのではないかと思いますが、委員長、その点もひとつお含みをいただきたいと思います。この部分は委員長に対する要望でございますが、いかがでしょうか。
  136. 栗原祐幸

    栗原委員長 ただいまの御趣旨の点につきましては大変参考になることが多いわけでございますが、具体的な取り扱いにつきましては理事会で御検討いただきたいと考えております。
  137. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 さて、これで防衛庁に対してSDIの問題について闊達な議論ができる準備が全部でき上がったわけでございます。これからいろいろ申し上げたいわけでございますが、SDI研究によって、まず長官、この前米ソ首脳会談というものが行われたのは、SDIというものをアメリカが表示することによってソビエト側がむしろ引き出されてきた、そういう政治的効果も発揮したものだというふうにお考えですか、どうですか。
  138. 加藤紘一

    加藤国務大臣 この点につきましては外務省が所管し、その判断をすることになっておりますので、非常に申しわけございませんが、安保課長から答弁させていただきたいと思います。
  139. 岡本行夫

    岡本説明員 先生御承知のとおり、一九八三年の末に、ソ連はINF及びSTARTの交渉のテーブルから一方的に引き揚げたわけでございます。そしてその後、我が国も含めまして西側諸国がソ連に対し交渉復帰を粘り強く訴え続けてまいりました。そして昨年三月、米ソ間で新たな交渉が開始され、それが昨年十一月の米ソ首脳会談につながっていったわけでございますけれども、私どもといたしましても、このソ連の交渉再開の姿勢というのは西側の結束によるところが大きく、またさらに、米国によりますSDI研究というものもこの事態を促した一つの要因であったということは否定できないところだろうと認識しております。
  140. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 最近アメリカでは日本SDIに対する参加の問題につきまして議論が起こっているそうでありまして、ワシントン・ポストによると、むしろ日本研究参加によってアメリカの軍事産業が打撃を受けるのじゃないか。したがって、打撃を受けるのだから、そのままフランクに入ってもらうのではなくて、将来の企業に対する波及効果等を考えるならば、むしろ参加料を少し高く取って、その参加料でかげんしてもらうべきであって、そう簡単に入りてもらわない方がいいんではないかという議論もある。そういうお話があるんだそうであります。これについてどうお考えでございましょうか。長官としてはどういう見解をお持ちでございますか。
  141. 山田勝久

    山田(勝)政府委員 SDI研究につきましては、米国内におきましてもさまざまな意見がございます。先ほど防衛庁長官が申し上げましたように、あるいは先生が御指摘になったように、いろんな情報がまだ浸透していない。したがって、いろいろ誤解がある。そういう点もございますし、ただいまのような御議論があるいはあるのかもしれません。しかし、先般のワインバーガー長官の訪日の際の、日本参加を期待するというアメリカ側としての希望、そういうものがしばしば表明されるわけでございます。  もちろんアメリカにおきましても、政府部内、そしてそれに参加をしている企業、関係者いろいろあるわけでございますけれども、SDI研究参加問題につきましては、今累々申し上げておりますように、第三次の官民合同調査団が出かけておりまして、近く帰国し、報告を私ども受けることになっております。日本側企業参加しておりますし、向こうの説明側にも企業の方々も入っておりますので、そういった状況を踏まえまして検討を重ねていくことになろうかと思います。今先生の御指摘のような点がアメリカ側の意見として非常に強く反映されているという、そういう確証というか印象をまだ持っておりませんけれども、いろいろ情報を持ち寄りまして検討を続けたいと思っております。
  142. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 今のお話ではまだ御検討中ということでございますけれども、アメリカ側に対する今の交渉のしぶりから見ていると、企業参加する、日本政府としては参加しない、そして財政負担としてある程度の金額を出すというような可能性があるんでしょうか。私どもとしてみると、ただでさえ、世界的に平和憲法を持つ日本の精神から言うならば、戦争の研究のために余り多額の費用を出したり負担をしたりするということについては、日本国民の大きく非難するところであり、忌避するところであろうかと私どもは思うわけでございますし、私自身としても何か釈然としない気持ちがあるわけでございますが、その企業参加、財政負担、そして日本政府が財政負担を保証するというような形になる可能性があるんでしょうか。
  143. 岡本行夫

    岡本説明員 ただいま先生の御指摘の点につきましては、私どもも今参加問題について検討中で結論を出しておりませんので、お答えいたしかねますが、ただ一点説明させていただきますと、政府によります財政負担という事態は現在のところ想定されておりません。
  144. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 思い切って言いましたな。  きょうは画期的な御答弁が先ほどから続いているわけでございますが、それではミサイルの問題に入ります。  昨年の六月に加藤長官が訪米された際に、ミサイルの追尾誘導装置というものが対米武器技術供与の第一号として明らかにされたと聞いておるわけでございますが、実際に供与するための個別取り決めをめぐる交渉の中において価格交渉が折り合いがつかなかったと報道されております。そして、その結果として、安上がりなリース方式を長官がお考えになってアメリカ側に示唆された。非常に御親切なことだと思っておるわけでございますが、財政負担を問題にするときに、この対米武器技術供与第一号の例に見られるように、財政負担の問題に長官が不用意に言及されますと、日本防衛庁長官というのは財政負担のところまでよく考えてくれるかわいい人ではないか、今回もひとつかわいく考えでくれよというきっかけになるのではないか、それが私はちょっと心配な筋だな、こう思っておるわけでございます。こうした問題について長官のお立場をひとつ表明していただいた方がいいのではないか。私の今の言い回しは長官の真意からはるかに離れたゆがんだ見方であるというふうに先ほどから首を振っておられますので、その点も含めてどうぞおっしゃっていただきたい。
  145. 加藤紘一

    加藤国務大臣 SDI問題の流れから今の武器技術交流の話、それの第一号の話になりましたので、誤解を避けるために一言申し上げたいと思うのですが、今回の武器技術交流の第一号案件とSDIとは全然別個に動いているものでございますので、そこは御理解いただきたいと思います。  それから、第二番目のリース料の話とかその交流に伴っての対価の話は向こう側からいただく話でございます。そこはこっちが負担するのではなくて、向こうから取る話でございますので、そこは詳細につきまして担当の装備局長に御説明させます。
  146. 山田勝久

    山田(勝)政府委員 武器技術供与の問題は、従来は一方的にアメリカから日本へ技術が流れてきた。技術立国日本になったんだから、アメリカ防衛あるいは日米安全保障の有効な運用という観点から、日本からの武器技術の供与の道も開いてほしいということから始まりました。  ちょうど昭和五十八年の十一月に交換公文ができまして、その後、実施細目取り決めの交渉をやってまいりました。先生御指摘のように、昨年十二月二十七日にその細目取り決めができ上がったわけでございます。さて、それとやや並行してでございますけれども、第一号案件につきまして、昨年でございますが、アメリカから外交ルートを通じまして供与方の要請がございました。その具体的な案件名はアメリカ側が公表しないでほしいということでございますので、ただいま申し上げられませんけれども、私どもアメリカ側の当事者と話し合いを行っている最中でございます。  そのときに、いろいろなパターンがある。例えば、もともと言えば技術でございますから、技術の提供、技術資料あるいはノーハウの提供になりますが、それに伴いまして見本品あるいはテストするための機材というものを向こうが欲しいという場合がございます。そういったときに、その費用なども含めまして、果たして売り渡し方式というパターンがいいのか、あるいは先生御指摘のリース・レンタル方式で私どもが所有しておりますものを一時お貸しする、後で返していただくという方式がいいのか、いろいろ議論の対象になっております。売り渡し方式の方が当然でございますけれども高くつくし、リース・レンタル料というものは安くつくということも含めまして、いろいろ話し合いの過程で出てまいったものでございます。まだ結論に至っておりませんけれども、鋭意交渉、話し合いを行っているところでございます。
  147. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 SDI構想の生みの親と言われておられるエドワード・テラー博士、フーバー研究所の主任研究員が、三月二十一日、海外記者団と会見した際に、米国の同盟国がSDI研究参加しても、財政面での協力を行わない場合、研究から得られた特許技術などはすべて米国に帰属する、これは日本についても例外でない、こう強く述べたという報道が行われているわけであります。こうした考え方については既に情報として承知されておられるか、また防衛庁内のSDI研究グループではこれに対してどういう考え方をお持ちなのであるか。
  148. 岡本行夫

    岡本説明員 ただいま御指摘のテラー博士はフーバー研究所の主任研究員と承知しておりますけれども、この方が海外記者団との記者会見におきまして、今先生がおっしゃられたようなことを言ったわけでございますけれども、これがアメリカ政府の公的見解をあらわすものかどうかは私ども必ずしも承知してはございません。現在私どもといたしましては、アメリカとの間では参加を前提とした話し合いは行っておりませんので、米国政府のこの問題に対する公式な態度は承知しておらないわけでございます。
  149. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 対米武器技術供与の法的枠組みの中においてSDI研究参加というものは可能なのであるか、つまり対米武器技術供与の枠組みの中にSDIが入ってくるのか、SDIのために新しい協定が必要なのか、そこのところはどういうふうに目下のところお考えですか。
  150. 岡本行夫

    岡本説明員 対米武器技術供与取り決めは、御承知のように昭和五十八年に、我が国としても防衛分野における米国との技術の相互交流を図ることが日米安保体制の効果的運用を確保する上で極めて重要となっているという認識のもとに、相互交流の一環として米国に武器技術を供与する道を開くこととし、その供与に当たっては武器輸出三原則によらないこととしたわけでございます。武器技術供与取り決めはかようなものでございますが、現実にSDIにつきまして私どもといたしまして今後どのような対応の仕方をするのか、ここのところがまだ白紙でございますので、ただいまの先生の御質問に対しましても、そういった諸点も含めましてすべて検討中と申し上げるよりほかはないわけでございます。
  151. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 御研究の深い両省でございますから、参加するとすればこれは旧来の枠組みでいいのか、研究参加のための新協定が必要か、そこのところはいかがですか。
  152. 岡本行夫

    岡本説明員 繰り返しになりまして恐縮でございますが、私どもといたしましては日本参加を前提としたような話し合いは米側とまだやっておらず、したがって私どもの検討作業もさようなものと御承知おきいただきたいと思います。したがいまして、ただいまの御質問に仮定の前提を置きまして私どもとしてお答えする立場にはまだないわけでございます。
  153. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 そういう仮定の状況については、確定の状況について研究していないというのと、仮定の状況であるからまだ取りかかっていないのだというのとは相当差があるわけです。だから勉強しているのですか、勉強していないのですかと聞いているのです。
  154. 岡本行夫

    岡本説明員 SDI参加問題というのは極めて重要な問題でございますので、当然私どもといたしましてはあらゆる角度からこの問題について検討を加えているところでございます。ただ、その検討状況内容につきましてまだお答えできる立場にないということでございます。
  155. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 きょうここで答えさすのは無理でしょう。無理ですけれども、私はこの問題は非常に難問が多いと実は思っておるのです。  大臣、ちょっとこの次にはこの先を答えていただかなければなりません。私のペーパーのその先にある質問をちょっと読んでおきまして、後の御参考に供したいと思います。  というのは、西独と米国が政府間協定を締結したのですが、西独企業SDI研究開発における契約に参入できることを条件として国内のスパイ制圧のための治安手続を強化する秘密協定を結んだとニューズウイークが伝えております。ワインバーガー長官日本で講演した際、対ソ戦略上からの技術協力の必要性を強調したというのと非常によく符合するわけでございますが、日米間のSDI参加のための協議が行われる場合には、当然として表側の協定、裏協定といいますか、公表される協定、公表されない協定、いろいろな協定が出てくることは想像にかたくない、それがよい悪いは別にして。それが我々にとっては非常に不愉快をきわめる協定になる可能性がある。  というのは、公明党の竹入委員長が訪米した際にワインバーガー国防長官は、日本においては秘密保護の問題についてはMDAでかなりカバーできる、日本に求めているのは汎用技術が多い、秘密保護協定は必要ない、必要にならぬ、こういう言い回してございました。そしてまた日本におけるケリー氏だちの記者会見の言葉遣いを見れば、日本においては秘密保護のレベルというものは非常に高いレベルである、これ以上我々が何か言うことのできないほど高いレベルである、十分信頼性がある、だから大体問題ないんだ、そういうことについては日本側の皆さんは心配する必要はないというような言い回しで、一段とトーンを高くしてこれを言っておられる。ここへ喚問できないのが甚だ残念なのでございますが、私はこの言葉遣いの中にいろいろな含みがあるのを何通りも感ずるのであります。  といいますのは、会社間の協定の際においても、現在は企業における最高レベルの研究事項については高度の情報漏えい防止策がとられるのが常であります。そしてその情報漏えい防止策というものは我々の場合に、日本民間企業中心とするわけでございますから、その民間企業が知り得た情報というものを、あるいは研究した情報というものを民需品あるいは汎用品に使う。そしてさらに非常に大きなレベルで科学的レベルを増進させていくということは日本ではもう常識化している問題であります。しかしその常識化された品物の一つ一つについて、先方のように極めて軍事的技術に対して優先度を与え、それに対する高いガードを築く国においては、その情報を秘匿するために高度の防衛線を張っておるというのはもう認められているとおりであります。したがって、従来あった事実では、日本企業がある種の技術を米側に渡した、その米側に渡した技術についてアメリカ側は機密保護法で判こを押した、そうすると日本側の会社が今度はその技術を使って他国に品物を売った場合に非常に大きなクレームがつけられている事実が何通りもある。我々はむしろその問題については十分注目しなければいけない。この問題については特別な問い合わせを必要とすると私は思うのです。そうでないと、協力はした、協力会社は全部機密保護法の網をかけられて身動きがつかないというケースになりかねない。  また、日本企業アメリカ企業を買収した、非常に喜んでおった。そしたらその企業の買収した、被買収の米系小企業の持っている技術の中に、米軍の機密保護法に触れる部分の技術がその会社に所有されていた。それに対してクレームがついて、とうとう企業合併をした会社を放棄して撤退しなければならなくなったという事件が、つい先日起こったばかりである。  だから、軍事情報に対するレベルの非常に格差のある両国が協定を結ぼうとした場合に、我が国の企業が何の防衛もなくアメリカ側と接触した場合の障害というのは当然予想される。この問題については、十分な研究どころか、それこそ身構えた交渉というものが必要なのではないか、そうでないと日本は非常に大きな打撃を受けざるを得ないと私は思っているわけです。そこのところを、長官、十分に考えていただいておるのかどうなのか。SDI参加が決まってからその問題について触れるというのでは困るのであって、参加するかどうかの前にそうした問題に触れなければならない。もし私の心配が単なる杞憂に終わらないとすれば、これに参加することによって大きなハイテクメリットというものを考えている産業界に対しても、そのメリットを失わせるほどの打撃となることでありましょうし、考慮すべき事態ではないかと私は思うのですが、いかがでしょうか。
  156. 岡本行夫

    岡本説明員 先生のおっしゃる御趣旨は私どもとしても理解いたしましたけれども、このSDI参加問題がどのような形で決着がつくか、たびたび同じ答弁で恐縮でございますが、私どもといたしましてはまだ決めていない。そして秘密保護の問題にいたしましても、ワインバーガー長官を初めといたします米国政府関係者が、一般的な形で秘密保護に関する発言を種々行っていることは承知しておりますけれども、私どもといたしましては、現段階で私どもの最終決定が行われた際の具体的対応についてあれこれ述べるのは差し控えさせていただきたいと思います。ただ、先生が御指摘になりましたように、参加を決定する前にそのような問題をすべて研究して結論を出せという御趣旨は、私どももそのとおりだと思っております。
  157. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 防衛庁長官の御意見はどうですか。
  158. 加藤紘一

    加藤国務大臣 SDI参加するかどうか、それから仮にそうした場合にはどう対応するかも含めまして、今現在政府は白紙だと思います。  そういう中で、我々としては全く白紙の状態でいろいろ勉強いたしておるわけでございますけれども、先生の指摘のようなポイントにつきましては、当然のことながら、政府部内でも十分検討し、その点も含めましてSDIに対する政府態度を決める際の多くある要因の中の一つになるのじゃないだろうかな、こう思っております。
  159. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 私は、新聞で報道されているSDI官民調査団に加わっている二十一の日本民間企業のイメージについて御配慮を求めたいと思います。  なぜイメージを問題にするかといいますと、この調査団に加わる人たちは、会社は、今回加わったこと自体について十分隠しておきたかった会社がたくさんあるわけであります。また、隠しておきたかっただけではなく、取材に対してだれが行ったかを答えないとか、そうした取材は困るとか猛烈に抵抗を示されたところもたくさんあると聞いていもわけであります。防衛庁は、もう初めから軍事問題の専門部局でありますから、何の痛痒も感じておられないことでございましょうけれども、企業からいいますと、この二十幾つ企業日本を代表する企業でございますし、その中で軍需産業として位置づけられ、そして下手すればロケット弾か何かを投げ込まれるような事態になれば、歓迎するとは言えないだろうと私は思っているわけであります。  こういう日本の平和憲法下における日本国民の平和的な気分の中で、企業を選抜し、その企業を連れていく際に、この企業防衛庁と同じ縦に並べて、一線に並べて、散兵線に並べて、これからSDIを含む軍需産業に我々は突撃するぞと並べて見せるのがいいのか、もうちょっと穏やかにそろそろやるのがいいのか。企業に対する配慮もあるのではなかろうかと私は思っている。そうでないと、いたずらに犠牲ばかりが多くなるのではないか。研究の段階、では済ましておれないことになる。こうやって新聞記事に出てくれば、これを見て、あらまあ、これは何という会社なんだろう、SDIに入るのか、あのスターウォーズの会社だね、こういうことになるでしょう。またそれで名前が上がる会社もあるのかもしれない。しかし、名前を出したくない会社もあるのかもしれない。そういうところについて余り御配慮なくどんどんおやりになった形跡がある。この辺はどなたに答弁していただいたらよろしいでしょうか。
  160. 岡本行夫

    岡本説明員  御指摘の二十一社につきましては、調査団が出発する前に私どもの方で名前を公表したわけでございますが、その際、特に問題は生じておらないわけでございます。  今回の調査団は、あくまでもSDI研究計画の現状につきまして、その技術的な側面を中心にさらに私どもの検討材料を集めてくる、先端技術についての知見を有する民間専門家の方々に入っていただくということでございまして、調査団である。これがすなわちSDI参加企業になるかどうかといったような次元のお話とはまた関係がない点を御理解いただきたいと思います。
  161. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 そんなことを聞いているのではないことをよくおわかりになって答弁しているのでしょう。私は、安保課長に答えさせるのは気の毒で、前途のある人ですからこの辺でやめておきますよ。だけれども、ちょっと、企業というものと官民調査団を組むやり方は、防衛庁はどうやらなれてないようだな、簡単に私の批評を言えば。また、外務省もなれてないようですね。  こうした問題についての企業側の決断というものは、軽々に扱うべきではなかろうと私は思うのです。そうでなかったら、週刊誌あたりの取材に対して右往左往して逃げ隠れする何企業がというものを生ずるはずがない、私はそう思う。その点はもうちょっと慎重なお取り組みが要るのではないか。つまり、慎重に取り組むということは、なるべく隠してあげろよと言っているのではない。このような世界的な宇宙戦争を引き起こすような研究開発というものに対して、我が国民がどれだけ繊細な神経を持ち合わせているかという背景があるということを御理解いただかなければならない。だから、企業参加させれば済むというだけでは終わらないということを私は強く注意を喚起しておきたい、こう思っているわけです。そうでないと、防衛庁栄えて企業つぶれ、企業が栄えて社員は逃げ隠れするというような事態になるでしょう。決してそれはいい状況ではない。  私は、この問題についての発表の仕方というのはうまくないなと思わざるを得ない。そこのところは今後ひとつ十分の御配慮をいただきたい。
  162. 山田勝久

    山田(勝)政府委員 先ほど外務省の安保課長お答えしたとおりでございますが、私どもは二十一社の方々に、おまえ一緒に行けとか参加しろと言って強制したことはございません。会社の自由意思で、行ってみたいがいかがでございましょうか、ちょうど、そうか、あなたの会社はそれだけの学識経験があるということで御参加願ったわけでございまして、防衛庁ある雑務省・通産省が強制して、行きたくないのを行けと言ったということではございませんので、その辺は誤解のないようお願い申し上げます。
  163. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 それでは、対米武器技術供与の問題について少し話を詰めておきたいと思います。  これは我が党の神崎議員が細かく詰められたのですが、答弁を幾ら読んでも不明という不思議な議事録ができ上がっておる。これは何の問題でわけがわからなくなっているかというと、武器の共同研究開発に関する定義が過去に出ておりますけれども、このSDIへの研究参加というものは、SDI研究ででき上がってくる武器についてこの定義が当てはまるかというのが第一の問題であります。  第二の問題は、第三国を加えた武器の共同研究開発ができないという立場で安倍外務大臣答弁を一貫しておられるわけであります。ところが、最近、第三国を加えた武器の共同研究開発ができるかのごときニュアンスの答弁がある。つまり、SDIの協議の席上で、日米関係は対米武器技術供与の枠内である、ほかの国とはアメリカがやっておるのだ、私の方はやっているわけではないよ、アメリカ人にこちらが物を言い、相談しておるのだ、アメリカ人はほかの方と相談しておるのだ、その声が何となく聞こえる、データも見える、けれども、見ているわけじゃないのだ、私が見ているのはアメリカ人と相談したものだけだよと、まるっきりくし刺しだんごのように日本は端のだんご一つだけと接触しているのであって、向こう側のだんごは知らぬという架空的な答弁が続けられているように見えるわけであります。大臣、この点を整備してお答えをいただけますか。そうでないと、この武器輸出三原則で言う武器の定義、武器技術供与の法的な論拠というものが全部壊れるわけであります。お互いのやりとりを見ますと、どうやらこの件は余り整備されておらないようにも、サインが何となく見えるのであります。答弁できますか。できなかったらできないでいいから、この次にかっちり詰めますから、かきんと返事してもらいたい。きょうは、この次の答弁に支障のない程度の答弁をされたい。どうぞ。
  164. 岡本行夫

    岡本説明員 SDIが武器に該当するかという御質問でございますけれども、これはあくまでも個別的、具体的な貨物の形状、属性等を見て判断するものでございまして、再々申し上げておりますようにSDIはまだ研究段階にありますもので、そこで実際に用いられることとなるものが特定されておりませんので、断定的には申し上げられないわけでございます。  第二点の、第三国との共同開発の問題につきましては、武器ないし武器技術の共同研究開発にはさまざまな形態がございます。したがいまして、これを抽象的、一般的に論ずることは必ずしも適当ではございませんで、具体的な事例に即して判断されるべきものでございます。  私どもが国会で御答弁申し上げておりますのは、米国に対する武器技術の供与につきましては、武器輸出三原則等の例外としてその道が開かれているわけでございますが、米国以外の第三国との関係におきましては、従来どおり武器輸出三原則等が堅持されるわけでございます。このことを踏まえまして、あえて全くの一般論として、我が国から米国以外の第三国への武器技術の供与を伴うような共同研究開発に我が国が参加することは武器輸出三原則等のもとにおいてはないという趣旨を述べてきたものでございます。
  165. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 その最後の答弁、よかったですね。それは今までの答弁どおりで、きちんと直りました。具体的な問題を扱うと、脱線してくる。例えばSDI協議の席上に日本が行った、日本人の研究者が行った、日本企業が行った。アメリカ研究者が出てきた。両方の軍人もいた。そこへたまたまヨーロッパの研究開発員がいた。その瞬間日本は、あの人とあの人がいるのでしゃべれない、資料提出できないと言わなければならぬ義務を負わざるを得ない。そうなると、この辺は現実問題と今の答弁が甚だ適切でない適用状況が生まれることを示している。それを重ねて聞くと俄然あいまいになってきて、端っこがぼけてきてさっぱりわからない答弁が続いておる。私は、その問題はこの次にはきちんと答弁されるように希望します。そうでないと、日本のせっかくの武器三原則はこの内閣において空洞化し、破壊される、そして中曽根内閣の右傾化傾向は今や極点まで来たと言わざるを得ない。  最後に申し上げたいと思うのですけれども、今数々の問題点について一応お尋ねしまして、いろいろな面について随分はっきりお話があったので国民の理解を深めることができたと私は思っているわけでございますが、最近の核あるいはSDI等の研究、最近のハイテクと称せられる軍事技術の研究レベルは上がる一方であります。言うまでもないことながら、この状況を放置するということは人類の絶滅に手をかすという極めて望ましからざる結論に結びつく可能性がある。我々は、我が国を守るというだけではなく、人類を守るという視点を失わないでやりませんと何もかも御破算にしてしまう可能性は極めて高い。要するに、その重大な反省をしょっちゅう脳裏に描いていなければいけないと思うのです。例えば「核の冬」の問題について、「核の冬」の話はきょうの主テーマではございませんが、カール・セーガンたちTTAPSの五人の科学者のつくった「核の冬」というスローガンは全世界に大流行いたしましたけれども、今コロラド州のポールダーの全米大気研究所などが詳細にトレースしたところによれば、五千メガトンの核爆発で北半球の気温は平均摂氏十二度低下すると言っている。十二度低下するとどんなことになるかというと、冬にはならない。冬にはならないけれども、小麦は生育期に気温が三度下がれば全滅する。七度で農業はほとんど全滅する。お米などは一晩十六度下がると何にもならなくなってしまう。平均気温が十二度下がるということは、地球上の全農業地帯が砂漠化することを実質上意味する。砂漠でも何でもないのに、緑もあるのに何も実らないという状態が生まれてくるという状況に突っ込もうとしている。これは現代の生態系に対する反逆であるし、人類に対する挑戦と言わざるを得ない。我々がSDIを取り扱うときに気をつけなければならないのは、そのSDIに不用意にしり馬に乗ることによって全人類的な災厄を巻き起こす最初の引き金——最初の引き金というのはいつも小さくて平和的なものだ。しかし、その小さな火種が大きくなってひとり歩きするとき、子々孫々に至る大災厄になるということはしばしばあることだ、この点を十分御考慮いただいて、SDI問題についての研究は慎重の上にも慎重でなければならないと私は思いますが、慎重のもう一つ前に——慎重と言う人は研究しないで慎重と言う場合がしばしばある。十分に考慮し、十分に調査し、ありとあらゆる疑いを突き詰めていく中での慎重であってもらいたい。そうでないと、時間が来るまでは慎重で、ある日一気に、何も考えないで決断をしていくというやり方で人類は悪魔の扉を開いてきた、ここのところを十分お考えいただきたいと思うのです。  きょうは基本的な問題、いろいろ申し上げましたが、長官はふだんの質疑応答のときの私の質問と調子が違うので、大変お困りになったかもしれないけれども、きょうは基本的な問題についてお尋ねしたわけであり、長官の今後の行政判断の基礎にこうした大きな視点を取り入れられるように特に希望したいと思うのです。もしよろしければ……。
  166. 加藤紘一

    加藤国務大臣 SDI参加問題というのは大変大きな政府部内での討議のテーマでございますので、きょう御議論いただいた点等につきましても十分、我々政府部内でも討議しなければならない問題であろうと思います。  —外務大臣ともども、防衛庁としてもよく調査し、よく検討し、よく論点を整理し、誤りなきようにしてまいりたいと思っております。
  167. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 以上です。
  168. 栗原祐幸

    栗原委員長 吉田之久君。
  169. 吉田之久

    ○吉田委員 私は、このほど民社党の第八次東南アジア調査団の一員に加わりまして、フィリピン、マレーシア、タイの三国を視察いたしてまいりました。そこで、特に今政変直後のフィリピン、この国の米軍基地の存廃問題、これが我々日本国民にとりましても大変関心の深いところでありますし、特に長官もこのことに関しましてはいろいろと気を配っておられることではないかというふうに推察するわけでございます。  参考までに申し上げますと、まずフィリピンのアメリカ大使、ボスワースという方がいらっしゃいますけれども、その方に会いましていろいろ聞きました。そういたしますと、一九九一年、アキノ大統領はこの基地の存続について検討すべき時期だ、こういうことを選挙でも公約し、またその後もはっきりそう物申しておられるわけでございますが、これに関しまして、ボスワース、フィリピンにいらっしゃるアメリカ大使は、今すぐの深刻な問題ではないと思う、二年ぐらいたてば話し合うことができるだろうと思う、こうおっしゃっておりました。  その後、エンリレ国防大臣に会いまして、やはりこの基地の問題等をお話しいたしましたら、この国防大臣も、アキノさんは原則的に、また理想論からそのことを申しておられますけれども、フィリピンの国防の任に当たるエンリレ大臣としては、やはり一九九一年以降もこのまま基地を存続せざるを得ないでしょう、私はそう思いますとこの辺のことをおっしゃっておったわけでございます。  同時に、日米安全保障条約、それからフィリピンと米国の安全保障条約、この辺につきましてもいろいろとお互いの認識の交換をいたしました。エンリレ国防大臣は、大変日本の今日の防衛の現状をよく理解しておられました。我々は同じアンクル、おじさんを持っているようなものだ、こうおっしゃっておったわけでございます。その点、日本の国防の現状を非常によく理解してくださっているなとは思いました。加藤長官にもよろしくとの伝言でございましたが、こういう中で長官は、フィリピンと日本の関係、あるいはフィリピンの基地の将来、そういうことについていろいろお考えいただいていることと思います。  また、過日、ワインバーガーさんともお会いになっておりますが、このフィリピン問題等につきましてどのような意見を交換されたのか、あるいはフィリピンの今後について、特に防衛上どのような御認識をお持ちになっているのか、承っておきたいと思います。
  170. 加藤紘一

    加藤国務大臣 先般、フィリピンの国内情勢が、非常に平和裏に政権交代が成ったことは、私たちとしては喜ばしいことだと思っております。特にあれが幾つかの軍事的な衝突になりますと、アジアの隣国として、私たちとしても非常に憂慮にたえないことであったと思いますし、また同時に、やはりあの国が不安定になりますことは、アジア全体の平和と安定のためにも望ましいことではないと思っております。  また、我が国の防衛にとって、フィリピンのスビック基地であるとかクラーク基地は、直接関係のあるものではございませんけれども、私たちが我が国のシーレーン防衛を考えるときに、一千マイル以上のところにつきましては米軍の防衛力というものに期待せざるを得ません。そうした場合に、その米軍の防衛力とそれぞれのスビック、クラーク基地というのは大きな関係があるわけでございますので、そういった意味で、私たちは間接的にこのフィリピンの情勢及びそのスビック、クラークの情勢については、防衛当局として大きな関心を持たざるを得ない、そういった認識を持っております。  それで、ワインバーガーさんとの会談につきましては、我々の方からもそのような関心を述べましたし、それよりも前にワインバーガーさんの方からフィリピン情勢全般についての認識を述べられ、そしてアキノ政権は少なくとも一九九一年までは米軍基地の存続に合意しているし、その後も恐らくは存続に同意するであろうということを期待しているという旨の表明がはっきりとなされておりました。  私たちの方からは、我が国としてもフィリピン情勢の安定のためにいろんな協力をすべきであろうと思いますし、この点は、我が国は特に防衛的な協力ができるわけではありませんので、外務大臣中心にその点は真剣にお考えいただいているものであろうと思います、ということを述べたわけでございます。
  171. 吉田之久

    ○吉田委員 今お話がありましたクラーク基地も訪問いたしてまいりました。まことに壮大な基地でありまして、顧みて我が国の基地の狭隘さと申しますか、いろいろ考えさせられる点が多うございました、事情が違いますから同じようなわけにはまいらないと思いますけれども。今後、日本の米軍基地をどのように整備し、かつまた同時に、周辺の日本国民の日常生活に支障を来さないようにどう配慮していくかという大変難しい問題があると思うわけなんでございますが、同時に、カムラン湾がソ連の基地になっておるわけでありまして、これと相対峙する位置にフィリピンが存在すると思うわけであります。かつ、今長官がお述べになりましたとおり、まさに我が国の大事なシーレーンの延長上でありまして、また我が国の今後の通商関係、国家の存続のためにも大事な生命線を握る地帯だと思うわけでございます。  この機会に、カムラン湾にどの程度の種類の兵力あるいは艦艇が存在していると認識なさっているのか、あわせて聞いておきたいと思います。
  172. 瀬木博基

    ○瀬木政府委員 カムラン湾はただいま先生御指摘のとおりソ連の有力な基地になっておりまして、ソビエトの海外における基地としては最大の規模になっていると言われております。ここには常時海軍勢力にいたしまして二十隻から三十隻の船が出入りしている。出入りするのみならず、極東海軍というところに配属になるときには必ずここへ立ち寄っていくという意味においても、非常に重要な役割を果たしているということであります。  他方空軍といたしまして、バジャーとかベアというような爆撃機、偵察機、またミグ23というような戦闘機も配属になっておりまして、この地域でいろいろな哨戒活動等を行っているという実態でございます。
  173. 吉田之久

    ○吉田委員 今お答えがありましたとおり、フィリピンというのは我が国にとりまして極めて重要な国であることに間違いはありません。この際、長官はエンリレ国防大臣と近き将来なるべく早く会おうとなさっておられませんか、その辺はいかがでございますか。
  174. 加藤紘一

    加藤国務大臣 私たちもフィリピンの情勢には関心を持っておりますけれども、近い将来に例えば私たちの方からフィリピンに出向いていくという予定は現在のところございません。  もし何かのチャンスでフィリピンの国防相のエンリレさんが日本に来られた場合には、他の国の国防大臣と常にお会いしておるわけでございますので、当然私たちもエンリレさんにはお会いしていろいろ意見交換をしたいと考えております。
  175. 吉田之久

    ○吉田委員 次に、今度上程されております自衛隊法の一部改正につきまして若干質問をいたしたいと思うわけでございます。  まず、予備自衛官の員数を千三百人増加して四万四千九百人に改める。予備自衛官を逐次増員なさいますことは結構だと私は思うわけでございますが、この予備自衛官というのは大綱の別表には別に規定してないですね。ないとするならば、いわゆる自衛官とかかわりのある予備自衛官、有事の際には当然我が国防衛の任に当たっていただくべき一つの戦力であると思います。この辺を、何人であっていいのか、どの辺までふやしていこうとするのか、その総体が全然確定していないのでは、形式上も理論的にも我が国の防衛の編成に一つの問題点を残しているのではないかという気が私はするのです。その辺長官はどうお考えですか。
  176. 西廣整輝

    西廣政府委員 予備自衛官につきまして、どういった職域について、どの程度の規模でという基本的な考え方でございますが、これはかねがね自衛隊として、特に陸上自衛隊としては輸送あるいは補給その他のいわゆる後方支援部隊、平時は余り必要がなく有事に編成すればいいという、その種の部隊、それから戦闘部隊が前線に出た後の警備を主体とする部隊、そういったものについては予備自衛官で充てるということで考えておったわけですが、要は予備自衛官、いわゆる自衛官を勤め上げて退職した人間、そういった者の全体のソースの中から予備自衛官に採用して、有事自衛官としてある程度使える年齢層があるわけですが、そういったソースとの関係、それから所要、そういった両者からにらみ合わせざるを得ないということで常々検討をいたしておるわけであります。当然のことながら、そういった予備的な柔軟性というものは多いにこしたことはないわけですが、現在の予備自衛官制度というものを前提といたしますと、どうしてもおのずからソースが限られておるということで現在は、先ほど申したような有事急速に必要になってくる後方支援部隊と前線に出た後の警備のための部隊、それから海空について言いますと、同様に、例えばレーダーサイ小寺の防空のための要員あるいは後方支援等に当たる臨時編成する部隊の要員といったものを中心に考えておるわけでございまして、今後まだ検討する余地はございますが、今の予備自衛官制度のもとではそれほど規模は広げられないのではないか、そろそろ限界に近づいていをのではないかと考えております。
  177. 吉田之久

    ○吉田委員 過去の日本の場合、あるいは現在の諸外国の場合、はっきり軍隊というものがあって、その後方に、昔で言えば在郷軍人といいますか、あるいは諸外国におきましてもいろいろな予備軍を持っておりますね。質は別として量は相当なものだと思うのです。一方、いろいろな制約を持っている特殊な国家である日本ではありますが、そこに自衛隊がある。しかも当然自衛隊は有事のときに対応しなければならない。その有事のときに対応する予備自衛官がこの程度の存在でいいのか悪いのかという問題はそろそろお互いに考えなければならないと思うのです。現在の予備自衛官の存在というものは、今も御答弁がありましたように、自衛官のOB、なお当面使用にたえる人たち、使用という言葉がいいのか悪いのかわかりませんが、役立つ能力を持っておる人たちと完全に縁を切りたくはないという意味で少しつないでおこうというぐらいの認識というか実感しかない存在だと思うのです。それはそれなりに意味があると思うのではありますけれども、国を守る場合にいわゆる後方支援をする、有事の際に加わってもらうべき兵力というものはその程度でいいと考えるのか、考えないのか、あるいはこの問題はどうあるべきか、そろそろ検討すべき時期に来ているとは思わないか、この辺をお尋ねいたします。
  178. 西廣整輝

    西廣政府委員 この点につきましては先般防衛庁で設置されました業務・運営自主監査委員会の中でも指摘されておりまして、これは二つの側面がございまして、現在定員である実員で賄っておる業務を一部外部に出していく、その裏づけとしてその人たちを予備自衛官にしていくという考え方もございますし、一方我々の防衛サイドの問題といたしましては、例えば陸上自衛隊の部隊編成なり充員のあり方として、各国とも予備役とかいろいろな問題があるわけでございますが、有事必要な編成と人員に対して、平時どれだけの者を現役として持ち、それ以外の者を予備として置くかといったような点についていろいろな工夫が必要かと思いますが、そういった点について現在自主監査委員会の勧告もございましたので研究いたしておりますし、また陸海空自衛隊の今後の編成のあり方として我々としても現在勉強を始めたところでございます。その際に現在のような、自衛官として勤め上げた者の中から選ぶということだけで果たして賄えるのかどうか。そうでないとすれば、どういう制度が成り立ち得るのか。またその人たちの教育訓練なりをどうするかといったようないろいろな難しい問題が生じてまいりますが、そういった点についても勉強を始めておるというところでございます。
  179. 吉田之久

    ○吉田委員 正直に実情をおっしゃったと思うのですが、しかし、いつまでもそうであっていいのかどうか。  長官、まず防衛大綱に基づく別表、それをきちんと整えるために今政府が精いっぱい努力をして今日に至っているわけですね。実は、それにばかり目が行って、それはそれでいいんですけれども、しかし、自衛隊だけで国は守れないと思うのですね。広く国民の協力、しかも、その周辺にあって経験者が、予備自衛官のような人たちがいろいろとやはり手伝わなければ、有事のときに本当に自衛隊が機能をすると私は思わないのですね。そうならば、もう少しこの自衛官というものを、ただ少しOBがふえたからふやしておこうかという程度の、大変、いわば思いつき程度の、行き当たりばったり程度のことでいいのかどうか。これは、そろそろ長官が真剣に考えられなければならない問題ではないかと思うのです。  なぜこんなことを申し上げるかといいますと、例えば、訓練参加、それが完全にやられているかどうか。なかなか時間がとれない。だから、予定されている期間がとれなくて、二回に分けたりあるいは半分でお茶を濁しておくと言うと言葉が余り適切でないかもしれませんが、ともかく、その辺のところで続いておる。また、いざ有事の際に予備自衛官が自衛隊の傘下に入ろうとしても、やはりそのときの生活保障というものがきちんとしていませんと、これは本人もなかなか決断しにくい問題だし、家族もためらうだろうし、また、それぞれ会社や仕事を持っているわけですね。その会社が、出ないでくれというような条件があったときにはなかなかやはり応じにくいと思うのですね。そういう基本的なことは何にもきちんとしてないと思うのですね。そういうことでは、私はやはり大変問題があると思います。  固めて質問して恐縮なんですが、最近私どもの耳に入ってまいりますのには、今時代の変化の中で警備保障の会社が随分ありますね。この警備保障の会社の人たちが、あるいは会社そのものが、予備自衛官とイコールでなくてもいいけれども、場合によれば我々も予備自衛官的な訓練を受け、いざ有事のときには国家のためにお手伝いできる、そういう素地を持ってもいいという動きがあるのです。こういうところにどう対処しようとなさるのか。これもそろそろ考えでみていいと思うのですね。そういう方式をとるのか、とらないのか。私はどちらとも言いませんけれども。この辺、長官、少しお考えになりませんか。
  180. 宍倉宗夫

    ○宍倉政府委員 先ほど御答弁申し上げましたよに、自主監査委員会で予備自衛官のあり方ということをテーマにして検討してもらっているわけでございます。その場合に、今は予備自衛官は自衛隊の経験のある方ということに法律でなっておりますけれども、何といいますか、その条件というものをもう少し広げて考えられないだろうかということも同時に検討をいたしているわけでございます。そういうことになりますれば、当然法律改正も必要になってくる問題でございますだけに、腰を据えて勉強してみようということでございます。その際に、今私も初めてお伺いを申し上げたわけでございますが、先生がおっしゃいましたような、そういうソースというものが現実にあるというようなことでありますれば、そういったことも、今何もかも全部ひっくるめて、限定をせずに勉強しているところでございますから、勉強はさせていただきたいと思います。  ただ、実際問題として、その勉強した結果どういうふうになるかというところまでは勉強してみての上の話ということにしていただきたいと存じます。
  181. 吉田之久

    ○吉田委員 官房長の答弁はそれで結構でございますが、私は長官に、一人の政治家として、防衛の任に当たる一番の責任者の一人として、あなたのこの問題についての現時点における考え方を述べていただきたいと思うわけでございますから、今度の答弁長官自身がやっていただきたいと思うのです。  例えば、せっかく予備自衛官であっても、先ほど申しましたように、訓練にさえなかなか応じがたい。これは今日これほど競争の激しい社会に生きている国民としてはやむを得ない一面があると思うのです。しかし、国家の命はもっと大事であります。したがって、政府が指導して、予備自衛官に値するような人たちを努めて県庁とか、市役所とか、町役場でありますとかあるいは消防署でありますとか、そういうところに就職させておく。そういう場合は民間に勤めるサラリーマンやその他の立場の人たちとは大分事情が違いますね。いざというときにさっと応じてくれる、そういう素地をつくっておく必要もある。ただぽつんと自衛隊だけがあって国は守れないと思います。また、そういうような取り巻くいろいろな自衛の組織というものを確立することによって、国民は国を守る実感というものを理解することができると思います。私のそういう考え方に対して、長官自身どうお考えになりますか。
  182. 加藤紘一

    加藤国務大臣 予備自衛官のあり方につきましては、先ほど防衛局長、官房長が申しましたように、従来の制度のままでいいのか今検討いたしているところでございまして、これにつきましては、来年の四月まで時間をかけて本格的に検討をしてみようと思って今作業をしているところでございます。  その際の最大のテーマというのは、予備自衛官というものが単純に自衛隊員としての経験者のみでいいのかという問題がありますことは今御答弁申し上げたとおりでありますが、ある意味ではそれ以外の方の新しい、第二予備自衛官制度みたいなものも一つではないかなと思って、検討の対象にはなっております。ただその際に、訓練をどの程度やるのかという問題があります。自衛官になって、そして任期制で退役した人は、仮に退役したといっても、例えば最小限十週間、教育隊で激しい訓練を受けておるわけで、それに耐え抜いた人間でございますので、第二予備自衛官という制度をつくった場合に、これはもちろん仮称でありますけれども、そうした場合にその訓練をちゃんと受けさせることができるのかとか、そういうのは人生のどういう時期に受けるべきなのであろうかとか、そういった多くの問題がございますので、今全く白紙の状態で検討いたしております。  その際に、いわゆる従来の予備自衛官であっても、それから新しい自衛官であっても、それを公的な機関に就職させておいたら訓練にもより出やすいのではないかという御指摘でございますけれども、私の感じとしては、必ずしも公的なところに限らないで、そういった自衛隊経験者だとか予備自衛官が各地の企業だとか民間に行って、そして自衛隊の存在というものを身をもって感じて知った人たちがその体験をいろいろ語るということに、より幅広い防衛についてのシンパの人たちができるのではないだろうかなというふうに考えております。その辺の、より訓練しやすいではないか、訓練に出てきやすいではないかというような問題もまた、今の先生の御指摘でもありますので考えてはみたいと思いますけれども、現在は今申し上げたように思っておるところでございます。
  183. 吉田之久

    ○吉田委員 長官の御答弁にもちょっとはしなくもにじみ出ているわけでございますが、予備自衛官というのは、言うならばOBの立場から国民自衛隊をいろいろPRし、よりよく理解してもらうという役割を果たしてもらうための存在である、確かにそれは重要であります。その時代はそろそろ終わってもいいと思うのですね。むしろ国民の目から見て、こういう憲法を持っている専守防御の国が、しかも近代都市国家であるこの国が、いよいよ侵略されようとする場合に、自衛隊がより完璧な形で戦うとしても、それをどう支援するのかという仕組みと機能が理解されないと、こんな国守れるのということで結局いろいろと論議が、認識が空転してしまうおそれがあると思うのです。したがって、もう少し現実的にこの予備自衛官というものをお考えになった方がいいのではないか。有時立法の問題もそうでありますけれども、往々にして我が国の政府は、検討いたしております、検討いたしておりますということで、五年、十年ただ日がたっていくだけなのであります。今、長官が来年までにでもこの問題を検討したいと時期を名言されたことは、非常にいいことだと思います。要するに自衛隊を取り巻く周辺のいろいろな組織、機能をどう整えていくかということをそろそろ政府自身として真剣に考えるべき時期に来ているのではないか、そういう基本や哲学なしに、ただ兵器をそろえればいいのですということでは国民は納得しない時代に来ているのではないかと思うわけでございますので、その辺を特に申し添えておきます。  さて、今回の自衛隊法の改正案で、武器等の防護のための武器使用の対象に通信設備などを加えられた理由は何であるか。憶測すれば、過激派のゲリラに対してどう対応するかということなのかなと思うわけでございますが、実は五十六年四月の有事法制に関する第一回目の中間報告でも、通信設備などを加えよという指摘は既になされているわけでございます。それから五年間の日が流れております。しかも、この中間報告の中にはその他の面でもいろいろな指摘があったはずでございます。ところが、中間報告でいろいろな改正の必要性が指摘をされた諸点の中から、この機会に特にこれだけが加えられたというのはどういうことでございましょうか。
  184. 宍倉宗夫

    ○宍倉政府委員 お答えいたします。  先生御指摘のように、五十六年四月に公表いたしました「有事法制の研究について」というのには幾つかの項目がございますが、今回の法改正では確かにそのうちの九十五条の追加についてのみお願いをしているわけでございます。と申しますのは、この有事法制の研究全体のことにつきましてはいろいろ難しい御判断をいただかなければならない状況にございまして、直ちに有事法制そのものの法制化というものを最初からねらってといいますか、そういうことを考えてこの研究をしたわけではないという出発点のこともございますので、なお高度の御判断、国会の御議論あるいは国民のお考え、そういったものを待ちまして、これを法制化するかどうか、実際に動き出すのはそれからだ、こういうふうに私どもとしては考えておるわけでございます。  ただ、この九十五条の問題につきましては、昭和五十六年の公表のときにも書いてございますように、直接有事法制の研究と関連するものではございません。「関連するものではないが、」というふうに明言をしておるわけでございます。これは、有事にも若干そういったこともあろうかと思いますが、主として平時の問題でございます。平時にこうした防衛力を構成する中で、重要なものにつきまして防護する体制をきちんとしておかなければならないという要請があり、かつ、先生が今御指摘になられましたように最近における事象にかんがみまして、これについてはできるだけ早急にお手当て願いたい、こういうことで改正案を御提出申し上げている次第でございます。
  185. 吉田之久

    ○吉田委員 有事と平時に分けて、いろいろと改正すべき点は改正されるべきだと思います。  それはそれで結構なんですけれども、平時の場合、特にゲリラが頻々として起こりそうなのでということで通信設備などの確保を加えられた点はわかります。わかりますが、国民の目から見ましたら、何かつまみ食いしかなさっていない。全体として平時の問題点はこうだ、有事の場合はこうなんだということに本格的に取り組もうとする姿勢がどうも感じられないのですね。その都度当面する問題だけ何とかひとつ処理していこう、そんな感じがいたします。  皮肉った見方では、この中間報告自衛隊の隊員の防護のための武器使用の規定が必要であるとされているにもかかわらず、今度それが立法化されていないということは、武器の防護の方が大事であって、隊員はどうでもいいのか、隊員より武器を大事にするのか、それが自衛隊なのか、こういう疑問も出てくるわけなんですね。ですから、この辺をもっときちんと系統的に見直していく、全体のスタンスをきちんと決めるということをなさらないと、こうした自衛隊法の改正などを何回繰り返したって、問題がもう一つきちんと整理されないのではないかと思いますが、いかがですか。
  186. 宍倉宗夫

    ○宍倉政府委員 御指摘の隊員防護のお話でございますが、これは先ほど申し上げた報告の中で書いてございますように、防衛出動待機命令下にある部隊が侵害を受けた場合の対応措置として新たな規定を追加したらどうだろうか、こういう問題でございます。この問題は、先ほど私が申し上げましたように有事法制そのものの話ということになりますので、それは先生おっしゃいますように全体的な取り組みというものが必要かと存じます。ただ、今の段階では、その有事法制の実現に着手するのにはまだ機が熟していないのではないか、このように判断しているわけであります。
  187. 吉田之久

    ○吉田委員 有事法制は有事法制で着手されればいいのですよ。  しかし、武器を防護するために防衛出動待機状態においてこうするという改正をなさるのでしょう。そのときに武器だけが襲われるのですか。待機状態で隊員も襲われることがありますよ。それについては何も触れない。それは人があってこそ防衛できるのですから、もちろんそういうゲリラが攻撃をかけてくるならば隊員は当然のこととして隊を守るでありましょうけれども、それは当たり前のことだから書かなくていいというものではないと思いますし、下手をすれば、過剰防衛とか大変問題になるところなんでございます。武器だけを対象にして人はどうでもいいのか。いや、人は有事法制で決めます、そんな答弁ないですよ。そうでしょう。
  188. 宍倉宗夫

    ○宍倉政府委員 私のお答えが舌足らずだったかと存じますが、今私どもがお願いをしております問題は、相手の武力行使に対応する措置としてお願いをしている性格のものではないわけであります。今九十五条で追加的にお願いをしておりますのは、警察権の行使として武器を使用し得る防護対象を拡大したい、こういうことをお願いをしているわけであります。先生の御議論は、その武力行使があった場合の対応措置について、なおすべきことが多いのではないかということでございますが、それは先生御指摘のとおりかと思います。それは、有事法制の研究で私どもが公表したたくさんの事項がございますけれども、そのことに対する措置としてはまだとっていないという意味におきまして先生のおっしゃるとおりと思いますが、そのことにつきましては、先ほど来申し上げておりますように、なお時期ではない、このように判断をしているわけであります。
  189. 吉田之久

    ○吉田委員 我々が心配していることは、あなた方はそれの専門家責任者でありますから、もう少し真剣に検討を重ねられなければならないということです。我々素朴な国民の側から見て、これはアンバランスじゃないのというような問題点をばらばら残したままで、国を守る備えを進めておりますと言ったって通用しませんよ。だから、その時期に来てないならばその時期に来てないという理由をもっと明確にされなければなりません。ともあれ、防衛庁答弁というのはこの種の答弁が非常に多い。それが国民には、そして日本防衛のためには余りいい結果を与えていないということを強く指摘いたしておきます。  最後に、今回の自衛隊法の改正案では、政府専用機の自衛隊の保有と国賓や総理などの航空輸送を任務に加えることになっています。もし将来、政府専用の大型旅客機が導入され、総理がこれで外国に行くような場合もそれを運航するのは自衛隊なのかどうかですね。この辺はっきりしませんと、日航機などをチャーターして特別機にしておくのと余り変わらないような気がするのですね。自衛隊がその大型旅客機を専有するということは、自衛隊ならでは果たせない任務が付加されると思うのですね。自衛隊総理や国賓を運ぶということは、それだけ一般の旅客機とは違った護衛の意味が付加されると思うのですね。ならば、どの辺でそういう護衛の意味が実際持たれるようにするのか。護衛機をつけるのですか、そうでもない。パイロットだけが自衛隊員である方がいいのか。民間とどこが違うのか。この辺が釈然としませんね。どこが意味が変わるのか、自衛隊の専用機でなければならない理由はどこにあるのか、御説明いただきたい。
  190. 宍倉宗夫

    ○宍倉政府委員 将来、政府専用機として大型の飛行機を持った場合の話でございますが、私が申し上げるまでもないことでありますけれども、現在のところ政府としてそのような計画がないのは先生御承知のとおりでございます。それで、将来、仮定の話としてそういう飛行機を持つといった場合に、どういう形のものを持つのかというのはそのときにお決めになることになると思います。  それで、仮に国賓等の輸送の用に主として供するという目的で航空機を持つということの場合におきましては自衛隊が持つことが可能かと存じます。その目的が、他にもいろいろあろうかと思いますけれども、そういうことでなくて決められた場合におきましては、自衛隊がそれを持つことになるのかどうかということについてはそのときの判断の問題かと思います。  それで、国賓等の輸送をするのに自衛隊が仮にそれを持ち、かつ自衛隊員が運航する、それは一体どういう意味があるんだというお尋ねでございましたが、諸外国におきましてはそういった種類の専用機がございまして、これは各国とも自衛隊と似たような性格の軍隊で運用しておるというのが事実多いわけでございます。そういった場合におきまして、私どものところでその種の航空機を取得するということになりますれば、今回の法改正がお認めいただけますれば、それを自衛隊が保有し、かつ運航することができる、こういうことになろうかと思います。
  191. 吉田之久

    ○吉田委員 時間がありませんのでまたの機会にいたしますが、何を御答弁なさっているのかわからない。そんなことなら、なぜ自衛隊法の一部改正をここでやるのか、それもわからない。防衛庁長官は、国の機関から依頼があった場合には、航空機による国賓等の輸送を行うことができることとするという法改正をしておきながら、別に政府が専用機を持とうとまで考えていることでもありませんとか、あるいはそういう国賓を直ちに送らなければならないような要請を受けているわけでもありませんとか、わからないのですね。先ほど申しましたような大事な、平時、有事におけるいろんな法の欠落している部分を後回しにしておいて、差し迫ってもいないこんな改正をやるのか。全然アンバランスですね。  もう時間がありませんし、私ちょっと所用で出なければならないので、少し時間を残して失礼いたしますけれども、長官、もっと大事なことがありますね。それからちょっと意味不明のことが多いですね。本当にこれを契機に国賓とか総理の送り迎えなんかは自衛隊が責任を持つとか、あるいは海外で有事の際には邦人の救出に赴くとか、そういう展望を持ってのことなんですか。どうなんですか。何のためにこれを今やるのですか。
  192. 加藤紘一

    加藤国務大臣 御承知のように、現在でも自衛隊の隊務に使うヘリコプター等で総理大臣ほか依頼されましたら若干の政府の要人等の輸送をいたしているわけでございますが、今度、自衛隊といいますか政府の方でスーパーピューマを導入するということで、こういう正式な話になりますと、自衛隊法には従来、要人輸送というのは書いてないので、やはりここはけじめをつけておかなければならないというところで今度の法改正の問題が出てきたわけでございます。今度これが導入されたことによりまして正式にその仕事ができるというのが今度の改正でありまして、そういう意味では、基本的な防衛政策の変更に至るような部分ではないと思います。  そこで、先生がおっしゃいますのは、将来、例えば海外の邦人救出というような場合にまでつながるのかということでございますが、現在はそれにつなげた改正だとは思っておりません。この問題は国民世論等を踏まえて、正式に議論して、そして正式に別の法改正をしないとできないことなんじゃないか、こう思っております。重要な点だと思いますが、現在は考えておりません。
  193. 吉田之久

    ○吉田委員 ありがとうございました。
  194. 栗原祐幸

    栗原委員長 東中光雄君。
  195. 東中光雄

    ○東中委員 OTHレーダーの設置問題に関連をしまして、横浜の上瀬谷通信基地の増強が今重要な問題になっていると思うのですが、最初にお伺いしたいのですけれども、この間ワインバーガー長官が見えて日米防衛首脳会議がやられたようですが、そこでOTHレーダーのソフトの問題等も含めて何か話し合いがされたように伝えられておるのですが、結局はどういうことなのでしょうか、防衛庁長官にお伺いしたいと思います。
  196. 瀬木博基

    ○瀬木政府委員 お答え申し上げます。  OTHレーダーにつきましては、ワインバーガー長官の方より、OTHレーダーを日本が導入するかどうかという問題は、これは日本がお決めになる問題であるけれども、OTHレーダーの性能からして日本のシーレーンまた領土の防衛のためには極めて有用であろうと思われるということをおっしゃられた上、仮に日本が導入されるということになるのであれば、その運用は日本の主権の範囲内で行われるということはもちろん当然のことであるというようなお話がございました。
  197. 東中光雄

    ○東中委員 まあそう伺っておきましょう。  それで、在日米海軍の上瀬谷の通信基地の増強問題についてですが、艦隊作戦統制センターが建設されるということ、そういう計画が出されておって、先日の三月二十八日の参議院の予算委員会で北米局長にその内容についてお聞きをしているわけですが、そういう中で、今度設置される上瀬谷の通信基地の中に、艦隊海洋監視情報施設といいますか、あるいは艦隊海洋監視情報システムというのですか、そういうものがあるということ、それを現代化していくということの答弁があったわけでありますけれども、この海洋監視情報システムなり施設なりの任務、あるいはどういう機能を持って動くのかということについて、まずお伺いしたいと思います。
  198. 岡本行夫

    岡本説明員 私どもといたしましては、米軍の施設の個々の内容あるいはその運用状況につきその詳細を一々承知する立場にございません。私ども、上瀬谷通信施設は一般的に海軍の受信施設やあるいは第七艦隊の哨戒偵察部隊、司令部等が置かれているということは存じておりますけれども、お尋ねの艦隊海洋監視情報施設が具体的にどのようなものであり、どのような機能を持つかといったことは承知しておりません。
  199. 東中光雄

    ○東中委員 この間の参議院の予算委員会の審議でも、一般的には、有権的にはそういう任務とかなんとかということについては承知していないけれども、例えばアーミテージ米国防次官補の昨年三月の下院歳出委員会での証言とか雑誌の「シグナル」の内容を引用しての答弁をされておりますね。そういう点で、この艦隊海洋監視情報施設とは一体どういう任務を持ったものなのかということについて外務省は全然知らぬということではないはずでありますから、それを明らかにしていただきたい。
  200. 岡本行夫

    岡本説明員 繰り返しで恐縮でございますけれども、政府といたしましては米軍施設の内容に立ち入って詳細を承知しているわけではございません。御指摘のアーミテージ国防次官補の発言は存じておりますし、その中で艦隊海洋監視情報施設の名前が言及されたことは承知しております。また、ただいま先生の御指摘の雑誌の中にやはり「海軍指揮統制システム・戦術艦隊指揮」という題で論文が出ていることは承知してございますが、政府といたしましては民間の雑誌の論文の一々についてコメントする立場にはございませんので、御理解をいただきたいと思います。
  201. 東中光雄

    ○東中委員 この間の参議院の審議では、アメリカの電子協会発行の雑誌「シグナル」で、例えば上瀬谷の通信基地は全世界の六つの通信基地とリンクしたものだということで、例えばノーフォークあるいはパールハーバーあるいはロタ、ロンドン、スートランドそれから上瀬谷ということで、北米局長が名前を挙げてそういう説明をしていますね。そういう連携をとってやっているんだということを言っておるでしょう。同じ「シグナル」に書いてあるそういう任務について全く知らぬじゃ余りにも無責任じゃないですか。その点を外務省の承知しておる範囲で明らかにしてほしい、こういうことを言っておるのです。
  202. 岡本行夫

    岡本説明員 御指摘の雑誌の論文の内容については私どもも承知しておりますが、上瀬谷通信施設に具体的にいかなる施設があり、どのような機能を有しているかということは、同じ答弁で恐縮でございますが、政府としては承知する立場にはないわけでございます。
  203. 東中光雄

    ○東中委員 その施設を聞いているのじゃないのですよ。任務、機能を聞いている。  例えば八〇年八月の「シグナル」によりますと、海洋監視情報システム、OSISは六カ所のすべての主情報を統合するセンターになるというふうな位置づけをしています。そして、これらのセンターは指揮、支援のために海軍情報組織によって運用、維持される。上瀬谷はまさにその一つであるということになるわけです。  そこで、この上瀬谷の情報センターは、部隊に対して海洋の上空、洋上ということでしょう、それから海洋の上、海面ということだと思うのですが、及び下、海面下の移動する標的、ターゲットに関する解析をやって、その情報を各部隊に与えるんだ、こういうことが書かれています。そのほか、これは八二年十月の「シグナル」でありますけれども、海洋監視情報システムは要員、施設、コンピューター、通信及び手続のネットワークから成り、受信、処理、相関及び解析された海洋監視情報の配布をするように構成されているということを言っています。  ここで私たちが非常に関心を持っておりますのは、このシステムはすべての生兆候、主情報、それから警報、脅威の評価、位置、陣地と移動情報及び超水平線の標的、OTHですね、オーバー・ザ・ホライゾンのターゲティングを提供して国家レベル、戦域レベル、艦隊レベルの使用者を支援する、こういうことになっています。ということになれば、上瀬谷の監視情報施設というのはあらゆる主情報をここに持ってきて、そしてアメリカの国家レベル、戦域レベル及び艦隊レベルのところへ情報を出していく、そういうセンターなんだということになるわけでありますが、「シグナル」といえば民間といえども一応権威のある雑誌でありますから、そういうものとして見ていいのかどうかという点をお聞きしたいと思います。
  204. 岡本行夫

    岡本説明員 先ほども申し上げましたとおり、私どもとしては民間雑誌の一々にコメントする立場にはございませんが、仮にその内容が正しいとすれば、そのようなものは艦隊との連絡、通信に用いられる施設であろうという想像はつくわけでございます。ただ、一般論といたしましては、我が国は安保条約によりましてアメリカの抑止力に国の安全保障を依存しております。したがいまして、アメリカがその抑止力の効果的な維持のために、通信機能を有するそのような施設を日本国内に有しておりましてもこれは当然のことと考えております。
  205. 東中光雄

    ○東中委員 当然か当然でないかの評価の前に、事実を聞いているわけです、日本の基地がどういう機能を持ってどういう任務であるのかということについての。個々の細かいことを聞いているのじゃないです。その情報の内容を聞いているわけじゃないのです。その機能なり任務なりを外務省としてつかんでいるのかつかんでいないのかということを聞いているわけです。  今の「シグナル」の点からいきますと、この海洋監視情報施設あるいはシステムというのは、要するに洋上あるいは海上あるいは海面下のソ連の軍用機、軍艦、潜水艦、こういったものの主情報をキャッチしたものを一元的に集中して統合する、そこで解析をやる。例えばOTHレーダーでつかんだ情報、P3Gの情報、海中固定ソナーのつかんだ情報、これは海面下の情報になるわけですが、あるいは空軍の偵察機といったようなところから来た情報を上瀬谷へ集中してここで解析をして、そしてしかるべき部隊に送る、こういう任務を持ち、機能を果たしている通信基地ではないのかということです。いかがですか。
  206. 岡本行夫

    岡本説明員 再々お答え申し上げておりますとおり、私どもといたしましては、上瀬谷の施設というのは主として艦隊との通信、連絡、統制、指揮等に関する機能を総合した施設であるということは承知しておりますが、それ以上に詳細な個々の機能につきましては承知する立場にはないわけで、その点、御理解をいただきたいと思います。
  207. 東中光雄

    ○東中委員 防衛庁にお伺いします。  防衛庁はOTHレーダーを設置した場合に、まだ設置することについて検討しておる段階ですけれども、設置した場合に得たデータをみずから解析し、それを適用するということになるのか、あるいは上瀬谷へ主情報を送って、そこで解析をしてもらうということになるのか、そういう点はどういう方向なのでしょうか。
  208. 西廣整輝

    西廣政府委員 先生今申されたとおり、OTHレーダーにつきましては、この五カ年計画の中で整備するかしないかを検討して、その結果によって整備に着手をするということでございますから、どういった運用をするかというようなことについてはまだお答えできる段階にないわけでございます。  いずれにいたしましても、我が方が設置をするということは我が国の防衛のために設置をするわけでございますから、設置をしたものについての情報というものはまず第一義的には我が方が使うということでございますし、また一般的を言い方をすれば、我が方が持っておる情報というものを我が国の国益に即して、それを場合によってはよその国に提供したり、交換をするということも当然あろうというふうに考えております。
  209. 東中光雄

    ○東中委員 OTHレーダーで情報が入った分、その情報をとにかく解析しなければどうにもならぬですね。だから、それが送られてくる、電離層から反射してくるいろいろなものを解析するそのソフトは日本は持つことになるのですか、持たないことになるのですか。OTHレーダーを設置するということになれば、それは持つことになるのですか、持たないことになるのですか。
  210. 西廣整輝

    西廣政府委員 いろいろな委員会でソフトのことをお聞きになるわけですが、私どもレーダーのソフトというものをそう難しく考えてないのです。レーダーで得られた情報を解析するということがそれほど、例えば暗号解析であるとかそういうことと違って、レーダーというものはそれなりにレーダーの反射によってあるものの位置がわかるというものでございますから、非常に難しいソフトを通して解析するというようには理解をしておらないわけでございます。私どもは、OTHレーダーというものを運用し、それによって所期の目的である航空機なり、水上艦なり、そういったものの所在が判定できるだけのソフトというものは、OTHレーダーを整備するということになればアメリカから提供されるというように理解しているわけであります。
  211. 東中光雄

    ○東中委員 航空機であるかミサイルであるかあるいは艦船であるか、どっちにしてもそういうことの区別がつく程度の解析をするソフトはアメリカから提供されると思っておる、こういうように今言われたと思うのですが、航空機といったって何の航空機かさっぱりわからぬというんじゃないわけでしょう。ある程度わからなければいかぬわけですから、そういうもののソフトは提供されるというふうに考えてやっておる、こういうことですか。
  212. 西廣整輝

    西廣政府委員 レーダーで得られます情報というのはOTHレーダーに限るわけじゃございませんが、もっと端的にレーダー反射が得られる通常のレーダーでも、その航空機がどういう機種であるかとか、どこの国のものであるかということはわからないわけであります。したがいまして、OTHレーダーについても当然そういうことでございまして、わかるのはどの程度のスピードでどちらに向かっておるかということでございますから、それが極めて速いものであれば船ではなくて航空機だとかあるいはミサイルだとかいうことになるわけでございまして、何らかのソフトにかければそれがミサイルだということがわかったり、どこの国のものだというのがわかったりというものでは決してないというように私は理解をいたしております。
  213. 東中光雄

    ○東中委員 P3Cについて聞きましょう。  P3Cを日本は百機体制で今どんどん入れているわけですけれども、これはP3Cを買うあるいはライセンス生産にしろ、要するに買うについて、潜水艦の音紋はついてきておるのですか。これも一種のソフトですね。これはどうなんでしょう。
  214. 西廣整輝

    西廣政府委員 P3Cを運用します際のソフトウェア、それにどの種のものがあるかということについては、具体的にその種類等を申し上げるのは差し控えさせていただきたいわけでございますが、アメリカからP3Cの技術を提供されてライセンス生産をし、これを整備する際に、我が方がP3Cを運用し、しかるべき成果を得るといいますか、役立たせるための必要なソフト、その種のものは全部手に入れております。
  215. 東中光雄

    ○東中委員 そうすると、これは初めてお聞きしたことなのですが、潜水艦を哨戒しキャッチして、場合によっては攻撃するというのがP3Cの任務ですから、相手方の潜水艦の音紋は必要なものとして全部アメリカから送ってきているということを今言われたように思うのですが、そうですね。
  216. 西廣整輝

    西廣政府委員 先ほど申し上げたように、どの種のものが提供されておるかということについては、私は種類は申し上げないということでございますので、先生が音紋と言われるのがどういう意味か、私も何となく理解できるような気がしますが、私が申し上げておるのは、P3Cを自衛隊として運用し、日本の海上交通の保護、対潜作戦に使用するに必要なノーハウは提供されておるということでございます。
  217. 東中光雄

    ○東中委員 そうすると、OTHレーダーと結局同じだということですね。P3Cが対潜哨戒なり対潜攻撃をするについて、キャッチをするに必要なデータというのは全部送られてきておる。そして、OTHレーダーにしても、そういうことで得たものは、必要なものはアメリカに送るという趣旨のことを先ほど言われたのですが、結局OTHレーダーを設置して、それで得た情報は上瀬谷へ送るということになるのですか、ならないのですか。
  218. 西廣整輝

    西廣政府委員 私、上瀬谷の機能をよく知りませんが、先ほど来申し上げているように、情報交換というのは、一般的に申しまして、我が方が我が国防衛のために得た情報については、それは第一義的に我が国の自衛隊が利用をし、かつ、それについて情報交換等を行うことが日本の国益に合うという判断をされれば、それを提供することもあり得るということを申し上げておるわけであります。
  219. 東中光雄

    ○東中委員 我が国は、水中固定ソナーを対馬あるいは津軽に設置をしておりますね。そうして、水中固定ソナーで得た情報も、上瀬谷の海洋監視情報センターには送られてくるように「シグナル」なんかの論文ではなっているわけですが、我が国が水中固定ソナーで得た自衛隊の情報は、これは上瀬谷なり米軍の通信基地に送るということはやられておるのでしょうか、やられていないのですか。
  220. 西廣整輝

    西廣政府委員 先生の御質問を伺っていますと、どうも上瀬谷にこだわっておられるようでありますけれども、アメリカが、上瀬谷があるいは本国にあるかわかりませんけれども、各種の情報を集約するセンターを持つことは、私は何ら不思議でないわけでございますけれども、それはあくまでアメリカの組織でありまして、先ほど来先生、すべての情報と言われますが、それはアメリカがみずから得たすべての情報はということで、決して、ソ連の情報とかそういうものが入ってくる、ソ連が提供するとかいうことじゃないと思いますので、アメリカの国自身が得られた情報はすべてそこに集約されるというような意味であろうと思います。同じように、日本で得た情報をアメリカのその種のところにすべて提供しなくちゃいけないとかいういわれも全くないわけでございまして、情報の提供なり交換というのは、あくまで我が国の国益に照らして、自主的な判断によって必要なものを提供するということになろうと思います。
  221. 東中光雄

    ○東中委員 私、当てずっぽうに言っているのではなくて、例えば松前のソナー基地には再三米軍人が立ち入っているというのは、現地の人たちはもう皆知っていることですね。自衛隊の基地になぜ米軍人が入るのか。結局上瀬谷の海軍通信基地というものは、全世界に、六カ所に配備されている通信基地のセンターの一つであって、そこから米艦隊あるいはあらゆる部隊に情報を送っている、そういうシステムの中へ入っているのじゃないかということを聞いているのであって、あなたはそれを否定はしなかった。必要があれば送るし、日本自身として判断してやるのだということのようでありますけれども、直結しておるということはないのですね。
  222. 西廣整輝

    西廣政府委員 先ほど来申し上げておりますように、アメリカ通信なり情報の組織はアメリカの組織でありますし、自衛隊なり日本の国の情報というものはそれなりの組織でございまして、それは全く別個のものでございます。したがって、得られた情報を提供する、しない、どういう形で提供するか、日本で得られたその種のものについては、日本の国益に即して判断をして行うということでございます。
  223. 東中光雄

    ○東中委員 そこで、アメリカ有事の際で日本有事でない場合でも、日本の有事、平時にかかわらず、日本が得た情報は、日本が独自に判断をして、そして情報交換もするし、交換というのは、送ることもあるし、向こうからもらうこともある。これは今までも言われているわけですが、こういった水中ソナーの場合もそうであるし、P3Cもそうであるし、OTHレーダーもそうである、そういう交換はやる、こういうことなんですね。一般的な情報じゃなくて、具体的なもの、津軽における水中ソナー基地の情報というふうなものもやはり交換することはある、同盟国である以上はあるのだ。長官、今まで答弁されているのは、具体的に言えば、そういう趣旨なんですね。
  224. 西廣整輝

    西廣政府委員 この種の質問のたびにお答え申し上げているように、私は一般論として申し上げているわけでありまして、具体的な個々の事例であれば、その事例に即して申し上げなくちゃいかぬと思いますし、その種の事例が現在あるわけではございませんので、それは差し控えさせていただきますが、いずれにしましてもケース・バイ・ケース、そのものについて提供の可否等については、我が国の国益なりから自主的に判断をいたすということでございます。
  225. 東中光雄

    ○東中委員 もう一点お伺いしておきたいのですが、ことしの二月十日付官報で、「防衛施設庁告示第一号」「昭和六十一年二月十日」稚内通信施設のアメリカへの使用転換ですね。今まで地位協定の二4(b)の基地であったものを二1(a)に転換をするということがやられたわけでありますが、その状態、何をどういう理由でそういう基地の使用転換が行われたのか、お伺いしたいと思います。
  226. 佐々淳行

    ○佐々政府委員 お答えいたします。  稚内の通信施設は、かつては米軍の施設でございましたが、四十七年に返還になりまして、航空自衛隊通信施設として使用されております。この地位協定二4(b)によりまして共同使用、こういう地域でございましたが、今回鉄塔等の設置によりまして、その一部について米側が専用使用をする、その使用目的通信施設、こういうことでございましたので、この地域のうちの八千平米、これは全部で七十七万平米あるわけでございますが、そのうちの八千平米を鉄塔一基、その他の附帯通信施設一式、建物一棟、これにつきまして米軍の専用地域二1(a)に使用転換をしたものでございまして、御指摘のとおり日米合同委員会合意年月日は六十一年一月二十七日で、閣議決定を経まして官報告示と相なったものでございます。
  227. 東中光雄

    ○東中委員 今度使用転換された、専用基地になった鉄塔部分と、二カ所ありますが、それは結局どこからどういう部隊が来るのですか。三沢基地の米空軍六九二〇の電子保安群の分遣隊がここに位置するのだということが北海道等では報道されておりますが、それはどうなのですか。
  228. 佐々淳行

    ○佐々政府委員 お答えいたします。  防衛施設庁の職務権限は、安保条約第六条、それからさらに地位協定によりまして、施設、区域を日米合同委員会等で合意に達したものを提供する、こういういわば入れ物を提供するのが私どもの任務でございまして、その配備、運用の中身がどうなるかということは所管外でございます。
  229. 東中光雄

    ○東中委員 防衛庁にお伺いしますが、何も施設庁に答えてくれと言っているわけじゃないのです。稚内の通信基地、電子戦をやるオペレーション施設がありますね。自衛隊通信操作室というふうに言われておりますけれども、ここは一体何をやっておるところですか。
  230. 西廣整輝

    西廣政府委員 稚内に通信操作室というような組織は、私どもは持っておりません。電波情報の関係でありますれば、航空自衛隊が稚内に第一収集隊というものを設置をいたしております。そこではレーダーとかそういった電波関係の資料の収集を行っております。
  231. 東中光雄

    ○東中委員 防衛施設庁に聞いたんですがね、通信操作室というものがありますと。その前に電子測定所という言葉を言われて、後で訂正をされてきたので、担当の人がどういう趣旨で言われたのかよくわかりませんけれども、要するに自衛隊の電子戦をやるオペレーションが、この二4(b)になっておる、今度専用基地にされたその周辺にあるわけですね。七十七万平米のうちの八千平米が今専用になった、その残っておる分の中には電子戦をやるオペレーション施設があるわけですよ。いろいろ情報収集するそういう施設の真ん中に米軍専用の鉄塔が立って、パラボラアンテナでこれが直接送っていくということになりますと、結局、自衛隊の基地で、電子戦のオペレーションで得たそういう情報を、今度はその真ん中に来る米軍のほんの小さな専用基地を通じて、全部米軍の、例えば三沢なら三沢というところへ送られていく、そういうシステム、体制になっているのじゃないか。これは地理的に見ても極めて明瞭だと私たちは思うのですが、そういう関係は一体どうなっているのか。もう時間が来ておりますので、稚内のこの専用の基地使用転換がやられた段階における自衛隊の電子戦オペレーションとこの専用基地との関係についてお伺いをして、質問を終わりたいと思います。
  232. 西廣整輝

    西廣政府委員 先生の御質問の施設は、私が先ほど申し上げた第一収集隊の施設でありまして、その隣の余積を米側に今度提供したというふうに私は理解いたしておりますが、隣の空き地によその家が建ったら、自分の家のものが全部共有になるというようなことではございませんので、その点は御心配なく、御懸念ないように願います。
  233. 東中光雄

    ○東中委員 情報交換するんじゃないの。
  234. 西廣整輝

    西廣政府委員 第一収集隊と、今回米側がつくるものとは関係がないものと私は思っております。
  235. 東中光雄

    ○東中委員 終わります。
  236. 栗原祐幸

  237. 衛藤征士郎

    ○衛藤委員 しんがりを務めます。大変遅くなって申しわけありませんが、御協力をお願いいたしたいと思います。  私は、まず最初に、先般行われました加藤防衛庁長官とワインバーガー国防長官とのいわゆる日米防衛首脳会談の概要につきましてお伺いいたしたいと思います。  なお、私、きょう委員会が別にありまして、この委員会に出たり向こうの委員会に出たりしましたので、重複するような質問をお願いするかもしれませんが、あらかじめお許しをいただきたいと思います。
  238. 加藤紘一

    加藤国務大臣 私とワインバーガー長官との会談の主なところは、第一は、双方が現在の国際情勢、また国際軍事情勢についての意見を交換いたしました。  第二につきましては、それぞれの国の防衛政策の現状、それからそれぞれの国内におきまして、防衛に関して行われております論議の状況等を手短にお互いに報告し、意見の交換をしました。  第三番目は、日米双方の間に幾つかの懸案の事項がございます。その点につきまして、お互いにその問題処理の進行状況等につき話し合ったわけでございますが、その中には、例えば米軍艦載機の着陸訓練場の問題、それから池子住宅の問題もございましたし、それから最近の状況にかんがみまして、日米防衛分担の問題等が話し合われたわけです。  全体的に、現在日米防衛関係というのは非常に順調にいっておりますので、会談自体は非常に和やかなものであったと思います。そして、双方で確認できましたことは、現在、日米間で貿易問題についていろいろ摩擦がありますけれども、防衛問題どこの貿易問題、この二つをできるだけ絡ませないようにして処理していくことが、今の日米にとって大変重要なことではないかというような点も確認し合えたのは有益であったと思っております。
  239. 衛藤征士郎

    ○衛藤委員 昨年十一月、ジュネーブで米ソ首脳会談があったわけでありますが、私どもは、デタントに向かうかな、このように判断をしておったところでありますが、どうもデタントに向かいそうにもないという今日の情勢であると私は思っております。  こういうときに当たりまして、加藤・ワインバーガー日米防衛首脳会談が行われたわけでありますが、特にワインバーガー国防長官の方から極東ソ連軍の増強についてお話があったかどうか。また、防衛庁としましては、極東ソ連軍の増強についてどのような認識をお持ちであるのか。この二点についてお伺いいたしたいと思います。
  240. 瀬木博基

    ○瀬木政府委員 ワインバーガー長官の方からは、現在の国際情勢において一番困難な問題は、引き続くソ連軍の増強である、これはNATO正面ばかりではなく極東方面、太平洋方面において非常に増強が続けられているということについて憂慮の念が表明されました。加藤長官の方からは、我が国の周辺においても極東ソ連軍の活動が非常に活発化しておる。これは空軍の動きを見ても、また極東ソ連海軍の増強ぐあいを見てもそういうことが見られるということで、これまた憂慮が表明されたということでございます。
  241. 衛藤征士郎

    ○衛藤委員 次に、ワインバーガー国防長官との話の中で、当然SDI研究参加問題が出たと思うわけでありますが、ワインバーガー長官は中曽根総理、また安倍外務大臣とも会談した、このように承っておりますし、またこの際日本SDI研究参加についての要請をされたやに報道がなされております。  このSDI研究については核戦略への影響あるいは対ソ政策との関係、我が国が参加した場合における技術移転の問題等々いろいろと検討しなければならない問題はたくさんございますが、弾道ミサイルを無力化して、究極的には核兵器の廃絶を目指すということが私ども人類の悲願である、このように思っております。  ワインバーガー長官からSDI研究への参加招請の書簡が我が国に送られてから既に一年を経過していると思うわけでございますが、このSDI研究参加問題に対する防衛庁長官のお考えをお伺いいたしたいと思います。
  242. 加藤紘一

    加藤国務大臣 SDIの問題につきましては、今から約三年ほど前、レーガン大統領がそのスピーチをして以来、米側はいろいろな研究をやっておるように思います。また、昨年度その研究参加することを招請する書簡が我が国の方にも参りましたけれども、全世界でワインバーガー書簡というのは全部カウンターパート、相手側ということで国防長官、国務大臣に行っておるわけですが、日本だけはこの問題は外務大臣の所管なものですから、日本だけは外務大臣に来ております。この問題は現在外務省中心にいろいろな角度から討議されております。  私とワインバーガー長官との会談におきましては、ワインバーガー長官は従来からのSDIについての概括的な考えをまた繰り返されて、日本の先端的な技術というものがそれに参画してくれたならば大変有益なことのように思う、したがってその辺についてぜひ参加してもらいたいという従来と同じトーンの発言がございました。我が方としましては、これは外務大臣中心に取りまとめられておりますのでということで、ただ防衛庁としては、このSDIというものについて興味を持って研究しているということだけを述べるにとどめました。  全般的に現在政府の立場は、アメリカSDI、戦略防衛構想というものを研究するということは理解するという立場の表明をいたしておるわけでございまして、そこから先、日本側参加するかどうかということについては現在まだ未定でございまして、防衛庁としても今後参加するかどうかについてのいろいろな政府部内の論議がある場合、我々としてもよく勉強しておかなければなりませんので、いろいろな各種の情報や論点の整理をしているにとどまっております。
  243. 衛藤征士郎

    ○衛藤委員 次に、いわゆる大綱の問題につきましてお尋ねいたしたいと思います。  我が国が防衛力の整備を進めるに当たっては、周辺諸国の軍備の動向とか、あるいは諸外国の技術的水準の動向等を踏まえてこれに十分対応し得る防衛力を整備しなければならない、このことは当然であると思います。このためには自由な発想に立って将来の防衛力のあり方を検討していく必要がある、私はこのように考えております。  政府は、いわゆる大綱というものは、その基本的な考え方に従いつつ情勢の変化に応じて変更することが可能であるとの趣旨を過般述べられておりますが、その考え方につきましてお伺いいたしたいと思います。
  244. 西廣整輝

    西廣政府委員 ただいま先生御質問の点につきましては、今国会においていろいろな立場でお答え申し上げたわけですが、せっかくの機会ですので、少し整理してお答え申し上げたいと思います。  実は、大綱をつくります際のまず前提とする国際情勢でございますが、当時の国際情勢として、これは現在も続いておると我々は考えておるわけですが、東西の関係、あるいは地域の関係において、それなりの一つのバランスといいますか抑止状況にある、そういう前提で、直ちに軍事力を使って現状変更をしようといったようなことは起きないだろうという前提に立って、我が国として平時から持つべき防衛力というものをともかく基盤的防衛力という考え方で整備すべきだという考え方に立ったわけであります。  しからば、その基盤的防衛力の基本とは何かと申しますと、第一に、防衛上必要なすべてのといいますか、各種の機能というものがそろっていなくちゃいけない、そして組織なり配備について均衡のとれたものにしておきたいということが第一点であります。  第二点は、そういった防衛力によりまして少なくとも限定的でかつ小規模な侵略に対しては、原則として独力でこれに対処し得るものであるという能力を持っている必要がある。さらにつけ加えれば、情勢が非常に大きく変わってきた場合に、新しい防衛力の体制に円滑に移行し得るような点もある程度配意された基盤的なものであるといったようなことを中心につくられておるものであるわけです。したがって、一口に申しますと、大綱というのは、能力的に言えば限定的かつ小規模な侵略に原則として独力で対応し得る防衛力であるということになります。  としますと、この限定的な小規模侵略の規模あるいは内容というものは、周辺諸国の軍備の動向でありますとか、あるいは軍事技術の水準の変化、そういったことによって変動する性格のものであろうというように考えております。したがって、これに原則として独力で対処し得る防衛力というものも当然のことながら変化をせざるを得ないということもまた事実であろうと思います。そこで、大綱はそういった状況の変化にある程度弾力的に対応できるようにつくられておるというように私どもは考えております。  それはどういう点であるかと申しますと、まず第一点は、御存じのように大綱の基本的な考え方に基づいて大綱別表というもので基幹部隊であるとか主要装備というものが定められております。ただ、それはあくまで今申したように基幹部隊、主要装備でありまして、小銃何丁とか、船はどういう装備をしているとかいったそういう細かなところまで決めておるわけではございません。主要な部隊と主要装備の総数が決めてあるということでありますので、防衛力整備に当たってはその枠内で質的な充実向上を行っていくということで、別表というものを全くそのままにして相当長期間にわたって情勢の変化に対応し得るものじゃないかというように考えております。  第二点は、さらに科学技術等が進歩いたしまして装備体系そのものが大きく変わってきたといったような場合には大綱そのものを変え得るということで、大綱の別表のところに注記をいたしておりますが、あくまでこの別表というのは現在、というのは大綱ができたときでございますが、あるいは現に予想しておる装備体系というものを前提としておるのですよという断り書きがなされておることからも明らかなように、そういった軍事技術等の進歩に伴う装備体系の変化に伴って別表が変わることあるべしということを予定しておるというように私どもは考えております。  なお、さらに申し上げれば、防衛技術であるとか、あるいは情勢の変化に伴いまして防衛力を一層効率化をしていこう、図っていこうということで、仮に今申し上げたような装備体系の変更に至らない段階であっても、各自衛隊の境といいますかそういったものをある程度変更をして、より効率化を図るとか一部の数量が若干動くとかといったようなことも可能であろうというように考えております。  そういったように大綱というのは、情勢の変化に対応いたしまして最も有効にかつ効率的な防衛力というものを大綱の基本的な考え方に基づいて整備し維持できるようにつくられておるということでありますが、それはあくまで、最初に申しましたような小規模・限定侵略に独力で対応し得る能力とかいったような大綱の基本的な枠組みの中の問題でございますので、おのずからその変化というものは限界があるということになろうかと思います。  さらに念のために申し上げますが、そういったことで大綱というものにある程度の弾力性があることはその性格上御説明申し上げたとおりでありますけれども、別表であろうとそういった修正があるとすれば、いずれにしましてもそれは閣議決定なり国防会議決定といった慎重な審議を経て行われるものでありますし、そういう手続的な問題もございますし、さらに申せば、先般五カ年計画ができたばかりで、それは現在の大綱の別表の中でそのままでつくっておりますので、現在政府として別表にしろ見直しをしたい、変えたいということでおるというわけでございませんで、今申し上げた説明はすべて大綱がどういう仕組みでつくられておるかということを御説明申し上げたわけであります。
  245. 衛藤征士郎

    ○衛藤委員 ただいまの御説明を聞いておりますと、別表のいわゆる中身は変え得る、こういうようなことでございますが、特に一般国民が心配しておることは、量的にも変わるといいますか量的にも変え得るというように理解をしておるわけでありまして、もちろん政府答弁にも量的にもこれは変わるんだというような答弁が過去なされておりますが、それでありますと歯どめがなくなることになるのではないかというような一般国民の不安があるわけでございまして、この辺のところにつきまして一般の皆さんにわかるように防衛庁長官の見解をお伺いいたしたい、このように思います。
  246. 加藤紘一

    加藤国務大臣 「防衛計画の大綱」というものがいわゆる我が国の節度のある防衛力整備のベースになっておることは御承知のとおりでありまして、その中には二つあって、一つは大綱の本文の基本的な考え方という部分だろうと思います。これはいわゆる基盤的防衛力整備の考え方でありまして、外国の防衛力の増強にそのまま即時全部一〇〇%対応するということは考えない。またそれを我が国でやるだけの地理的な条件もなければ財政的な問題の壁もあるというようなことで「防衛計画の大綱」がつくられておるわけでございます。それはあくまでも限定的な小規模に対応するものであり、弾力性は持つけれどもそんなに大きなものを目指すものではないという発想になっておるわけです。  そして同時に、今局長が申しましたように別表の中で主要な装備についての数が書いてあるわけでございますが、よくこの別表というものが、これが装備の数の上限なんでこれが非常に安心感を与えてきたものだ、だからその別表を将来変えるのならばそれは歯どめがないじゃないかという議論は私たちもよく聞きます。現在、私たちがこの別表の改定を考えておるわけではございませんし、その別表の規模の到達を目指してしっかり中期防衛力整備計画をつくってその初年度として頑張っておるわけですから、我々が今考えられることは、とにかくこの水準の達成を目指すことだと思っております。そして水準の達成を目指したらその後はきっと、毎年毎年それでも防衛費がかかるのだから、防衛費をとっていくのだろうから、それによってまた大きな大きなものをつくっていくのではないかという議論がよくあるのですけれども、ここが若干御理解いただけない部分なのです。  現在私たちがいただいております防衛費の中で実は七五%は装備費以外のものにかかって、いわゆる正面装備というものは二五、六%になっております。その二五、六%の予算額の中で実は七〇%前後は、現在持っております水準を維持するためだけにかかるものでございます。したがって、全体の九二、三%は現状維持のためにかかる経費だと思っていただいていいと思うのです。ですから、「防衛計画の大綱」の水準に仮に五年以内に到達したら、その後は予算かぜ口でいいわけはないので、現実に人件費も四六%ありますから、その後でも現在の防衛費のかなりの部分がかかるものと思っております。したがって、水準に達成したら全額一〇〇%を今度規模の拡大に使うのだろうというような誤解は何とか解かなければならないのではないかなと思って私たち努力している次第でございます。  そこで、今別表の水準に達成する、そして達成した後でもその水準を維持するのは大変なことだと申し上げましたけれども、それでも何らかの効率化、合理化のために別表内の内枠を若干変動させてその数を変えたりする場合もあるのではないか、そういう仕組みがあるではないかということを時々議論いただくわけです。しかし、そういった別表の数字というものは確かに一種のメルクマールだといって国民の中に定着している部分もありますので、そのときには正規のちゃんとした手続を、例えば国防会議の手続を経るとか閣議の手続を経るとか、そういったことをしっかりと議論の上やってからでないといけないことであろうと思っております。そういう仕組みであろうと思っておりまして、現在私たちはその別表の改定を考えているわけではございません。
  247. 衛藤征士郎

    ○衛藤委員 関連することでありますが、陸上自衛隊の方では師団の配置あるいは編成の見直しを中期防衛力整備計画に基づいてせざるを得ない。それも先ほど申し上げましたいわゆる北の守りを強化しなければいけないということで、北の守りを固めるための現行の北海道四個師団体制を改編あるいは強化するやに承っておるわけでございます。これについて、例えば九州の第四師団とか第八師団の戦車隊あるいは対戦車隊というものを配置あるいは再編成の枠の中で、別表の枠の中で動かすというような問題が出てきておるように承っております。またこの師団については、昭和三十七年当時の陸上自衛隊ソ連の一個師団との差はほとんどなかったと聞いておりますが、現在では我が方の師団のいわゆる火力はソ連に対して三分の一くらいのものだというふうにも聞いておるわけであります。  こういうようなことからいたしますと、いわゆる師団の強化とかそういうようなことも出てくるのではないか。あるいは編成、再配置というような問題もあるとすれば、例えば第四師団の第四戦車隊あるいは対戦車隊というものを移すということになれば具体的にはどういうような作業をして移していくのか、見通し等についてお伺いをしておきたいと思います。
  248. 西廣整輝

    西廣政府委員 先生御指摘のように、陸上自衛隊につきましてもこの五カ年計画によってある程度の改編をし、かつ近代化を図っていくということを考えております。そのねらいは、島国であるという日本の地理的特性に合わせまして、それに即した、できるだけ洋上、水際で撃破し得るようなものを追求していくということもございますし、日本の現在置かれておる戦略環境からいって、やはり北部方面にある程度重点を志向した部隊の配備なりあるいは編成なりも考えていかなくちゃいけないということで、この五カ年においてもそのうちの一部について手をつけたいというふうに考えております。  その中の一つとしまして、ただいま御質問の、例えば戦車等の重車両については、できる限り北海道方面に厚くしていく。そして本土については、より移動に容易な、軽い師団にしていったらどうだろうかといったような着意も持っております。その意味で師団につきましては、現在機甲師団を除きますと、九千師団と七千師団という画一の師団を本土も北海道もとっておりますけれども、それを幾つかの種類に分けていこうということで、戦車等の重装備を中心にした師団と、そうではなくて例えば対戦車ロケット等を中心にした編成に変えていく師団とに分けていこうというふうに考えております。  そして、具体的に御質問のあった、例えば四師団あるいは八師団等の戦車部隊等について言えば、この五カ年間で約四分の一のものを北海道の方に移したいというふうに考えております。それをどういう形で北海道で編成するかは今後の検討でございますが、いずれにしましても五カ年の間に四分の一程度のものについては北海道の方に移動させたい。そのかわりということでは必ずしもございませんが、九州の師団については、対戦車部隊というものを現在よりも増強したいというように考えております。
  249. 衛藤征士郎

    ○衛藤委員 中期防衛力整備計画においては、「効率的な洋上防空体制の在り方について、速やかに検討を行う。」このように書いてあるわけでありますが、この検討は、最近の軍事技術の進歩と我が国の地理的特性等を考慮した防衛態勢を追求していく上で極めて重要であると私は考えております。この検討の実施状況を踏まえまして今後の検討の見通しというものをお伺いいたしたいと思います。
  250. 西廣整輝

    西廣政府委員 御承知のように、我が国の防衛力整備の一つの非常に大きな柱であります海上交通の保護に関しましては、従来はその大部分を対潜作戦、潜水艦による船舶攻撃をどう排除するかということを中心に考えておったわけでございます。  それに対しまして、最近の趨勢として諸外国の航空機というものが非常に航続距離が延びてきた、あるいはハイスピードの、航続距離の長い飛行機が出現してきたということが第一点。もう一つは、航空機から発射いたしますクルージングミサイル、対艦ミサイル等が、これまた非常に射程の長い、数百キロという射程の対艦ミサイルというものが出現をしてきたというようなことから、従来余り洋上で航空機からの攻撃というものを配慮しなくてよかった状況がだんだん変わってきて、相当空からの脅威というものに対応しなくちゃいけないということが今回の洋上防空の検討の主たる要因であります。  そこで、この洋上防空の考え方としましては、大きく分けて二つございます。  一つは、北西太平洋という非常に広い海域、広い地域、そこの防空ということでございますので、これを地域全体としてべったり守るというようなことはとても不可能でございます。ということは、相手がどういう形で空から攻撃をかけてくるかということをできるだけ早い時期に察知をする、偵知をするということがまずもって必要であるということになろうかと思います。そこで、そういった監視といいますか警戒機能というものが何はともあれ必要であるということで、我々としてはOTHレーダー、これがそのための装備として非常に有効ではないだろうかという点に着目しまして、まずこれの検討を急ぎたいというように考えておるわけであります。  そして、このOTHレーダーで早い時期に得られる情報というものを前提とした一つのウエポンズシステムが成り立つのではないか。その際は、戦闘機であるとかあるいは早期警戒機とかそういった組み合わせも含めてどういうユニットが最適であるかといったような点にも将来研究を進めていきたいというように考えております。それが広域の洋上防空に対応する一つ研究の方向であろうかと考えております。  もう一点は、先ほど申したように、クルージングミサイル等の出現によってかなり遠い地域から攻撃を艦船が受ける。ということになりますと、現在の艦船等が持っております対空装備、対空の大砲でありますとかあるいは対空ミサイルといったものでは対応しにくくなってしまうという問題がございます。例えば北海道等で戦闘が行われているときに人員なり装備の増援をするといったときに、そういう我が方の輸送船団を仮に護衛をしていくといった場合は、どうしても戦場に近いところでございますので、その上空の航空優勢を維持し続けるということは非常に困難であります。そういった相手方の航空優勢も当然考慮しなくちゃいけない地域に進出しなくちゃいけない。そういったときの艦隊防空をどうするかといった点について、現在の艦艇に装備しております各種の対空兵器というものについて今後どういったものが必要であろうかといったような点を研究をしていきたい。  こういったような二つの点が、現在研究し、かつ研究しようとしている大きな項目になろうかと思います。
  251. 衛藤征士郎

    ○衛藤委員 次に、次期支援戦闘機FSXにつきまして、今度は再度質問書を出す、このように承っております。海外に資料収集チームを派遣するとかあるいは再度質問書を出すとかこのように承っておりますが、その目的、さらにはその時期をお伺いしておきたいと思います。
  252. 西廣整輝

    西廣政府委員 FSXにつきましては、先生御承知のように、国内で開発をするという案と、現用機を転用しようという案、そしてさらに外国機のしかるべきものがあれば導入をするという、大きく分けて三つの案について比較検討しようということで、現在、その外国機を導入する場合の資料を収集しているところでございます。  昨年、外国機を導入する場合の候補機を三機種に絞りまして、それぞれ外務省を通じてその検討に必要な資料の提供を、質問書を出したわけであります。それが二月末に着きまして、我が方でいろいろ分析、解析をしてみましたところ、まだ、先ほど言った三案の比較をするに十分なデータが全部そろっていないということがわかりましたので、先般さらに追加の質問をつくりまして、これは例えばその飛行機を日本でライセンス生産する場合にどのくらいになるかとか、そういった細かい技術的なあるいは経済的なデータでございますが、そういった再質問書をつくりまして、外務省を通じてそれぞれの関係の国に送付をしたというところであります。  なお、これが届きました相手方もいろいろ準備をしてくれると思いますが、こういった検討をできるだけ早く、正確に実施するために、彼らが再質問を十分見て、ある程度準備ができた段階で我が方から調査団といいますか調査チームをそれぞれの国に派遣をしたらいいのではないかというように現在考えております。したがって、時期といたしましては五月ごろになろうかなと思いますが、調査団としましては、パイロットを中心としたいわゆる運用サイドの人間、それから技術の人間、それから経費の関係がございますのでそういった経費関係の人間、そういった者で編成をした調査チームを派遣して、質問書等について向こうに再質問があればまたいろいろ説明し、かつこちらからはこういった資料も欲しいというようなことも含めて、より詳細なデータの収集に当たらせたいというように考えております。
  253. 衛藤征士郎

    ○衛藤委員 昨年九月に中期防衛力整備計画が閣議決定されたわけでありますが、この当該整備計画を遂行していくために、防衛庁あるいは自衛隊の業務運営に関して一層の効率化、合理化を推進していくという立場から、防衛庁は昨年十月に業務・運営自主監査委員会を設置した、このように聞いておるわけでありますが、これについての防衛庁の所見をお伺いしておきたいと思います。
  254. 宍倉宗夫

    ○宍倉政府委員 今おっしゃいましたように、中期防衛力整備計画の中に、効率化、合理化を図るということが書いてございます。中期防衛力整備計画は六十年価格で十八兆四千億ということになっておりますが、おおむねそれを限度としてその中ということになりますと、実際にやっていきます場合に十分それでできるかどうかということも心配がありますし、もともと防衛庁自衛隊につきましては、特に自衛隊の運用の中身につきましては、臨時行政調査会の御審議の方も、我々に任せていただいている部面もございましたものですから、これはどうしても自分たちの手でしっかりした検討をしていかなければならない、こういう決意のもとに昨年の十月に発足をいたしたわけでございます。  その発足いたしましたときに、まずガイドラインをつくりましてそのガイドラインに従った形で検討を続けてまいりたい、このように考えまして、そのガイドラインがことしの一月にできました。ガイドラインの中には、検討項目、検討の方向、目標のスケジュールといったものを明らかにしております。目標のスケジュールからいたしますと、ことしの四月に一つの目標時点を置き、それから来年の四月に別の目標時点を置き、大体そのくらいのところで実施計画なり検討計画なりをつくって、それぞれ実施に移せるものはなるべく早く、予算上の措置も要るかもしれませんし、あるいは法律上の措置も要るかもしれませんし、そういった手当てをしていきたいというふうに考えているところでございます。ただいまのところ検討は進んでおりますが、もう四月に入っておりますので、ことしの一回目の分につきましては最終段階にかかっております。したがいまして、目下鋭意督励をしているところでございます。
  255. 衛藤征士郎

    ○衛藤委員 次に、自衛隊の隊舎並びに隊員の宿舎の整備についてお伺いをいたしたいと思います。  言うまでもなく、自衛隊の隊舎並びに隊員の宿舎というものは隊員の日常生活の基盤でありまして、その整備は隊員の士気に大きく影響するわけでございます。承りますと、隊舎の一部には老朽あるいは狭隘なものがある、あるいは隊員にとりまして極めて不便なところに駐屯地があるために大変不便をかこっておる、こういう隊員も多いというふうに聞いておるわけでありますが、この隊舎の整備あるいは宿舎の整備につきまして実態をお伺いし、また今後の取り組みについてお考えを承りたいと思います。
  256. 友藤一隆

    友藤政府委員 お答えをいたします。  自衛隊の隊舎、宿舎等の生活関連施設でございますが、これは隊員の処遇改善策といたしまして従来から私どもとして大変意を注いできたところでございます。装備の充実や教育訓練の推進とともに、質の高い防衛力を整備いたします上で重要であるというふうに考えております。  そこで、現在の自衛隊の宿舎の状況でございますが、昭和六十年度末現在で宿舎所要数が約五万五千六百戸要るわけでございますが、保有宿舎数が四万七千戸ということで、充足率が現在八四・五%と、他省庁に比較いたしまして充足率は低くなっております。また現在保有いたしております宿舎の四万七千戸の中には建設後二十年以上経過いたしました老朽の木造宿舎というものも約三千二百戸ばかりございまして、このうち現在で約四百三十戸はいわゆる九・五坪型の狭隘なものというような現状でございます。  私どもとしては何とか早くこれを改善したいということで今日まで来ておるわけでございますが、御案内のとおり厳しい財政事情のもとでございまして、こういった宿舎あるいは隊舎の整備充実がぎりぎりまで抑制されてきておったというのが現状でございますが、隊員の士気の維持等を図りますためには今後格段の努力が必要であると考えております。このような観点から、六十年度から相当力を入れてきたわけでございますが、六十年度に引き続きまして六十一年度におきましても、隊舎につきましては曹クラスの二段ベッドが十八カ所、九百七十人分の増設、また宿舎の整備につきましても、九・五坪型、先ほど申し上げました狭隘な木造老朽宿舎でございますが、これが六十年度当初で約五百三十戸ばかりあったわけでございますが、これを五カ年で建てかえるということで、その第二年度分といたしまして百十六戸を含みます全体で七百七十八戸の宿舎の設置を計画いたしております。これによりまして二段ベッドあるいは九・五坪型宿舎等の段階的解消を図っていくこととしております。  いずれにいたしましても、こういった隊舎、宿舎の整備は士気の向上に大きく貢献するところでございますので、今後とも力を入れてやってまいりたいというふうに考えております。
  257. 衛藤征士郎

    ○衛藤委員 処遇の改善につきましてもう二点お伺いいたしたいと思うのですが、一つは自衛官の年金についてでございます。  御案内のとおり、先般共済年金制度の改正がありまして若年定年制が考慮され五十五歳支給、年金支給開始年齢が特例ということで決まったわけでございますが、自衛官については他の公務員に比べまして掛金を納める期間が短くて長い期間年金を受給する、こういうぐあいになっておるわけでありまして、これから先掛金がだんだん高くなってくる。果たして現状のままで現行の特例制度を維持できるかどうかと大変心配しておるところでございます。御案内のとおりに幹部、百クラスの隊員も五十歳代前半で定年が設定されている、大部分の者は五十三歳で自衛隊を退職しておる。この実態を見ますと、子弟の教育出費等大変かさむ時期でありまして、この時期に国家の要請で強制的に退職をさせられる、こういうことになっておるわけであります。この点再就職、賃金等、共済年金の早期受給に依存をする自衛官の生活維持というのは大変なものがあると思うわけでございまして、いずれにいたしましても、自衛官の退職後の生活を維持するための特例措置が必要ということであれば、この措置は国が当然講ずべきものではないか、このように考えるわけでありまして、この点につきまして防衛庁のお考えをお伺いいたしたいと思います。これが第一点であります。  それからもう一点は、関連でありますが、再就職するいわゆる就職援護対策は万全であるか、大変気になっておるわけでありまして、この二点につきまして大変自衛隊員の士気にかかわる問題でもありますので、手短にお答えをお願いをいたしたいと思います。
  258. 加藤紘一

    加藤国務大臣 年金問題と申しますのは自衛隊にとって大変大きな問題であろうと思います。若年定年制で早く退職するわけでございますし、それから年金をもらえるまでの時間が、仮に将来特例措置が終わったりしますと、大変長くなります。また、その掛金をいわゆる保険数理という観点だけでやっては、将来ますます物すごい高い掛金になっていくという問題がありますので、私たちは単なる保険の範囲内以外のある種のことを考えなければならないのではないかな、こう考えておりまして、関係省庁、特に財政当局とこの問題は深刻に検討をしていかなければならないし、隊員の士気にもかかわる問題ではないかと思っております。  また、隊員の定年退職後の就職の問題でございますが、この辺も最近経済、労働事情の逼迫化の中から再就職というものを一生懸命面倒は見ておりまして、今のところうまくいっておりますけれども、今後ともなかなか難しい問題を抱えるおそれがございます。したがって、今後とも防衛庁としては援護施策をきめ細かく実施するとともに、内部部局に援護の企画室を新設して、統一的、効率的な就職援護行政をしっかりやっていきたい、こう思っております。
  259. 衛藤征士郎

    ○衛藤委員 最後に、個別的な問題で恐縮でございますが、大分市内に敷戸弾薬庫というのがあるわけでございますが、この敷戸弾薬庫の移転の問題につきましてお伺いをいたしたい、このように考えております。  私が手元に持ちますこの資料によりますと、この大分弾薬庫、これは大分分屯地というわけでございますが、昭和三十二年に開設されて、面積は百四十三万八千平米、TNT火薬換算で約千トン、三十三棟から成っておる、このように記されておりますし、また、主として陸上自衛隊の弾薬をここに保管してある、このように書いてあります。さらには、この大分の敷戸の弾薬庫は西部方面区内の部隊に対する弾薬類の保管、補給、整備等を行う、中でも約八〇%は日出生台演習場向けに使われておる、あとは別府の十文字原あるいは大矢野原というところが残りの二〇%ぐらいである、平均して月大体一車両ぐらいが弾薬庫の出入りをしておる、こういうことが書かれておるわけでございますが、これには間違いございませんか。
  260. 千秋健

    ○千秋政府委員 お答え申し上げます。  ただいま先生御指摘の事実、そのとおりでございます。
  261. 衛藤征士郎

    ○衛藤委員 実はこの大分弾薬庫、これは敷戸と言うのですが、敷戸弾薬庫は昔は大分の市街地のいわゆる端の方という感じでございましたけれども、現在は大分市のど真ん中に位置しておる。しかもこの弾薬庫の前には大分大学がある。また弾薬庫の横には大きな敷戸の団地がある。また弾薬庫の向こうにも今度団地開発が行われる。ちょうど団地に囲まれるような形に相なるわけでございまして、しかもこの弾薬庫に通ずる道路はたった一本、国道十号線という極めて大混雑をする道路がたった一本。しかも、大分大学の前に交差点がありまして、朝夕、日中でも大変、大混雑をするところでございます。ここに弾薬庫があるわけでございますが、緊急の、有事のときにこの弾薬庫がうまく運用できるのかなということと、もう一つは、この大分の市街地のど真ん中に、しかも団地に囲まれる形であるこの百四十三万八千平米の弾薬庫でありますが、もし県下におきまして他の地域が要望するといいますか、この弾薬庫を受け入れてもいいという町村がもしあるとするならば、仮に町村議会で、この大分の弾薬庫、大変不便でございましょうね、それじゃ我が町、我が村でこの弾薬庫をお引き受けしましょうというような町や村、自治体がある、そして町議会で具体的に議決をされる、そういうことを仮定した場合、そういう事実がもしできたとするならば、この大分の弾薬庫の移転につきましては、将来どのようなお取り組みをされるのか、まず防衛庁長官にお尋ねをいたしたいと思います。
  262. 加藤紘一

    加藤国務大臣 御指摘のとおり、大分弾薬庫支処の周辺、これは現地では敷戸弾薬庫とお呼びいただいているものだと思いますが、その周辺は市街化が進んでおりまして、防衛庁としても将来にわたりこの弾薬支処を安定的に使用できるかどうか懸念いたしているところでございますが、では実際に移転するということになりますと、その移転のためには適当な移転先の土地があるか、あるいは移転経費がどの程度必要か、種々検討しなければならない問題があろうと思います。そしてその移転先も支処として、弾薬庫として適当な場所でなければいけないという問題もあろうかと思います。  したがって、このために、大分弾薬支処について今直ちに移転をお約束するわけにはいきませんけれども、ほかに仮に適地があれば今後検討してまいりたいと思っております。
  263. 衛藤征士郎

    ○衛藤委員 先ほど事実の確認をいただきましたように、この約一千トンの弾薬が使用される場所は、主として日出生台演習場である。八割の弾薬。さらには、残りの二割のうちに十文字原がまあ一〇%くらいあるのでしょうか。そうすると、九割近くは大分県内の日出生台演習場と隣接する十文字原演習場で使用されるとするならば、御案内のとおり、今、長崎−大分を結ぶ九州横断高速自動車道ができておりまして、日出生台演習場を囲むように湯布院のインターチェンジ、九重町のインターチェンジ、そして玖珠町のインターチェンジ、実はこの三つの高速道路のインターチェンジが、ちょうど日出生台演習場を取り囲む形でできるわけであります。  こういうことを考えますと、この弾薬支処の運用を考えたときに、もし仮にこの受け入れ先があったとした場合、これにつきましてはいろいろと条件は難しい問題はあると思いますけれども、果たして弾薬支処に適しているかどうかということが第一でありましょうが、大所高所からいろいろ総合的に判断をして、地方自治体で受け入れてもよろしいというようなところがあった場合には、具体的な事案として前向きのお取り組みをいただきますように、むしろ、国家財政がこういう事情でありますから、大変厳しいことはよくわかっております。しかし、大分市街の真ん中にある百四十三万八千平米の地価は大変な財産でありましょうし、その代替地はこれで十分に相補えるものではないかな、このようにも考えております。結果的にはこの弾薬支処を移した方が、防衛庁にもよろしいし、大分市民にもよろしいし、関係の自治体にもよろしいというものであれば、前向きにお取り組みいただきますように重ねてお願いいたしまして、もう一度長官の御答弁を求めまして終わりにいたしたいと思います。
  264. 加藤紘一

    加藤国務大臣 弾薬庫適地というのはなかなか難しいことでございますし、かなり広大な土地が必要なものでございますので、その両面にわたっていろいろ検討しなければならないし、なかなか難しい問題ではあろうと思います。しかし、ほかに仮に適地がございまして、そしてそれぞれの自治体の合意が得られてそういう環境が整う条件がございましたならば、先ほど申しましたように私たちも真剣に検討してみたいと思っております。
  265. 衛藤征士郎

    ○衛藤委員 この弾薬庫の点につきましては、私は地元の一県民といたしまして真剣にこれから取り組んでまいりたい、このように考えておりますので、長官におかれましても、大所高所の御判断をいただきまして、力強い御指導をいただきますようにお願い申し上げて、質問を終わります。
  266. 栗原祐幸

    栗原委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時十一分散会