○吉川春子君 私は、日本共産党を代表して政府提出の
私立学校教職員共済組合法等の一部を
改正する
法律案及び自民党、民社党
提案の修正案に対して反対の討論を行います。
まず、本日の
質疑の打ち切りに強く抗議します。本法案について私に認められた
質問時間は九十分にすぎません。
年金制度全体に関する大改革であり、
私学共済にとってもゆゆしい事態であります。
私学共済がどんな影響を受けるのか等、論議はまだこれからというところです。このような状況で
審議を打ち切ることはまさに立法府の自殺行為と言わなければなりません。
次に、憲法二十五条と豊かな老後を願う
国民の願いに背いて老後の暮らしを根底から脅かすこのような
年金制度の改悪を持ち込もうとする政府に対して私は強い怒りを禁じ得ません。この法案は国鉄
共済年金、
国民年金の破綻という政府の失策のツケを
国民に負わせ国庫
負担を大幅に削減することを目的としたものであり、その被害は現在の
組合員と
年金受給者及び将来にわたって
私学で働くすべての者に及ぶものとなっています。
すなわち、第一は、
給付水準の大幅は切り下げです。
現在の
年金受給者の物価
スライドは停止され、改悪後は四十年間在職した共働きの人の場合を例にとると、受け取る
年金額は実に現行の六割以下に切り下げられます。政府の宣伝するところの無業の妻の
基礎年金月五万円を含めたとしても現行の七割程度にしか達しません。これでは
年金生活者の暮らしが脅かされることは火を見るより明らかです。
第二は、保険料の大幅は引き上げです。
給与に対して現行は一〇・二%ですが、法改悪に伴ってこれを
昭和百十年までに二八・二%にまで引き上げるとしています。こうした保険料の引き上げと
年金給付の切り下げによって
昭和六十一年度新卒の人が私立高校に四十年間在職した場合、六十二歳から八十五歳まで
年金を受けたとしても支払った保険料と実質金利を取り戻すことはできません。それどころか逆に二千七百五十万円も国に寄附することになるのです。これでは銀行に預金をしておいた方が得だという
国民の声がありますが当然です。これが
国民からの収奪でなくて何でしょうか。
公的年金などととても呼べるものではありません。
第三は、国庫
負担の大幅削減です。
国会の意思は本
委員会で十三回にわたって決議しているように国庫
負担を二〇%まで引き上げることにあります。政府はこれを踏みにじり改悪によって
共済年金の本体
部分の国庫
負担をゼロにしてしまうのです。これで社会保障と言えるでしょうか。また、
基礎年金部分の三分の一は国庫
負担とすると言っていますが、行革関連一括法により五十七年度以降カットした国庫
負担分約八十四億さえいまだ返済のめ
ども立てておらずとても信用できるものではありません。
第四は、
年金支給開始年齢を六十歳から六十五歳に引き延ばすことです。加えて、減額
退職年金制度や勧奨
退職者への十年繰り上げ支給の制度が廃止されることによって、
年金支給開始年齢は現行より十数年先に延ばされることになります。
これらのことは、
私学共済が幼稚園教諭など女性が半数を占めており若年
退職者の極めて多い組合であることを考えると、これらの処置は若年
退職者にとっては随分手痛い打撃を与えるものだと言わなくてはなりません。
第五は、政府が法案の目玉としている妻の
年金権なるものについての問題です。
夫と合わせても従来の
年金水準を大幅に切り下げておいて婦人の
年金権の確立と言えるでしょうか。しかもその
負担は三分の二までを労働者に負わせるというものではありませんか。
最後に、政府はこんなにも
国民に不利益をもたらす法案を提出しながら、
国民に対してその内容を具体的に知らせようとしません。私
ども共産党が
国会で明らかにした制度改革の内容が
国民のあまねく知るところとなれば、
共済年金制度改悪反
対の世論がごうごうと起こる、そのことを恐れているのでしょうか。しかしそれでは余りにも無責任であり、民主主義の原則にも反します。加えて、
文部省などが共産党の
質問に対してまともに
答弁せず、
資料の要求さえも拒否したことに強く抗議するものです。
なお、自民党などの修正案は、政府案のこうした重大な制度改悪も何ら抜本的に改善する内容を持たず、そういう点から反対するものです。
やがて来る高齢化社会に向けてすべての
国民に生活できる
年金を保障するためには安定した
年金財政を確立しなくてはなりません。方法としては、
年金財政への国庫
負担を抜本的にふやすこと、また、ふえ続ける軍事費を削ればその財源は十分あるのです。日本において毎年七%前後の軍事費をふやしているということは、例えばNATO諸国において三%の軍備増強の目標を持ちながらそれを達成できないでいることと比較しても異常な軍備増強であり、そのツケの
一つが今回の
共済年金の改悪という形であらわれております。
あわせて、保険料の労使
負担を適切な割合に改めることもどうしても必要です。老後の生活の大切な保障である
年金を情け容赦なく削りお年寄りの暮らしを脅かすようなことに私は絶対賛成できません。弱い者いじめの悪いお手本を政府みずからが示している世の中で、子供の世界からのみいじめをなくしていくことができるでしょうか。
流した汗は、あるいは長年の苦労は報われるそういう
年金、そういう世の中を目指して我が党は奮闘する、そのことを述べて、本法案に対する反対討論を終わります。