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1985-12-19 第103回国会 参議院 内閣委員会,地方行政委員会,文教委員会,農林水産委員会連合審査会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十年十二月十九日(木曜日)    午後一時二分開会     —————————————   出席者は左のとおり。    内閣委員会     委員長         亀長 友義君     理 事                 曽根田郁夫君                 堀江 正夫君                 野田  哲君                 原田  立君     委 員                 板垣  正君                 岡田  広君                 川原新次郎君                 源田  実君                 沢田 一精君                 桧垣徳太郎君                 穐山  篤君                 小野  明君                 矢田部 理君                 太田 淳夫君                 内藤  功君                 井上  計君    地方行政委員会     委員長         増岡 康治君     理 事                 松浦  功君                 吉川 芳男君                 佐藤 三吾君     委 員                 井上  孝君                 上田  稔君                大河原太一郎君                 加藤 武徳君                 金丸 三郎君                 上條 勝久君                 出口 廣光君                 上野 雄文君                 中野  明君                 神谷信之助君                 抜山 映子君    文教委員会     委員長         林  寛子君     理 事                 杉山 令肇君                 柳川 覺治君                 粕谷 照美君                 吉川 春子君     委 員                 井上  裕君                 山東 昭子君                 仲川 幸男君                 林 健太郎君                 林  ゆう君                 真鍋 賢二君                 久保  亘君                 中村  哲君                 中西 珠子君                 関  嘉彦君    農林水産委員会     委員長         成相 善十君     理 事                 浦田  勝君                 北  修二君                 星  長治君                 村沢  牧君                 藤原 房雄君     委 員                 大城 眞順君                 岡部 三郎君                 熊谷太三郎君                 小林 国司君                 坂野 重信君                 坂元 親男君                 谷川 寛三君                 初村滝一郎君                 水谷  力君                 稲村 稔夫君                 菅野 久光君                 刈田 貞子君                 塩出 啓典君                 下田 京子君                 田渕 哲也君                 喜屋武眞榮君    国務大臣        内閣総理大臣   中曽根康弘君        大 蔵 大 臣  竹下  登君        文 部 大 臣  松永  光君        厚 生 大 臣  増岡 博之君        農林水産大臣   佐藤 守良君        自 治 大 臣  古屋  亨君    政府委員        内閣審議官    平井  清君        内閣法制局第三        部長       大出 峻郎君        総務庁恩給局長  佐々木晴夫君        経済企画庁総合        計画局長     及川 昭伍君        法務省刑事局長  岡村 泰孝君        外務省北米局長  藤井 宏昭君        大蔵政務次官   江島  淳君        大蔵大臣官房総        務審議官     北村 恭二君        大蔵大臣官房審        議官        兼内閣審議官   門田  實君        大蔵省主計局次        長        保田  博君        大蔵省主税局長  水野  勝君        大蔵省理財局次        長        足立 和基君        大蔵省銀行局長  吉田 正輝君        文部大臣官房総        務審議官     五十嵐耕一君        厚生大臣官房審        議官        兼内閣審議官   山内 豊徳君        社会保険庁年金        保健部長        兼内閣審議官   長尾 立子君        農林水産省経済        局長       後藤 康夫君        労働省職業安定        局長       白井晋太郎君        自治省行政局公        務員部長     中島 忠能君    事務局側        常任委員会専門        員        林  利雄君        常任委員会専門        員        高池 忠和君        常任委員会専門        員        佐々木定典君        常任委員会専門        員        安達  正君    説明員        日本国有鉄道道共        済事務局長    小玉 俊一君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○国家公務員等共済組合法等の一部を改正する法  律案(第百二回国会内閣提出、第百三回国会衆  議院送付) ○地方公務員等共済組合法等の一部を改正する法  律案(第百二回国会内閣提出、第百三回国会衆  議院送付) ○私立学校教職員共済組合法等の一部を改正する  法律案(第百二回国会内閣提出、第百三回国会  衆議院送付) ○農林漁業団体職員共済組合法の一部を改正する  法律案(第百二回国会内閣提出、第百三回国会  衆議院送付)     —————————————    〔内閣委員長亀長友義委員長席に着く〕
  2. 亀長友義

    委員長亀長友義君) これより内閣委員会地方行政委員会文教委員会農林水産委員会連合審査会を開会いたします。  連合理事会の協議によりまして、私、内閣委員長連合審査会会議を主宰いたします。  国家公務員等共済組合法等の一部を改正する法律案地方公務員等共済組合法等の一部を改正する法律案私立学校教職員共済組合法等の一部を改正する法律案農林漁業団体職員共済組合法の一部を改正する法律案、以上四案を一括して議題といたします。  四案の趣旨説明は既にお配りいたしました資料により御了承願い、その聴取は省略いたします。  これより四案の質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  3. 野田哲

    野田哲君 まず、社会保障制度の前提となる経済社会情勢について総理の御見解をお伺いいたしたいと思います。  まず、「一九八〇年代経済社会展望指針」の中で、「我が国の社会保障は、昭和三十六年に国民保険国民年金が実現して以後、昭和四十年代に大幅な改善が図られてきた結果、欧米諸国と比較してほぼ遜色のない水準に達している。」、こういうふうに記述されているわけであります。今の日本社会保障制度について政府がこういう認識を持っておられるとすれば、私は大変問題があるんじゃないかというふうに思うわけであります。総理は、日本年金制度水準について、欧米諸国と比較して本当に遜色のない水準であるというふうにお考えになっておられるのか、一体どの程度水準にあると考えておられるのか、まず総理のこれに対する御見解を伺いたいと思います。
  4. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 昭和三十年代、四十年代に続く高度成長等の結果、日本も富がかなり進んでまいりました。そういうような考えもあり、福祉充実させる必要があるという与野党の一致した意見もありまして、社会保障制度充実には国会を挙げて努力をしてきたと思います。たしか昭和四十九年でございましたか、福祉元年ということも言われたと記憶しておりますが、大体その前後において欧米水準並みには一応達していると、そういうように承知いたしております。
  5. 野田哲

    野田哲君 この比較論をここでやると際限がないわけでありますから、これは今の総理の御見解を、そういう見解であるということを承って、また機会を見て議論の場を考えたいと思うわけでありますが、今日本年金水準欧米諸国と同水準である、こういう点については問題があるんじゃないか、こういう点だけを私は意見として述べておきたいと思うんです。  昨日、経済審議会報告を出されて、総理もその席へ同席されておられたようでありますが、きのう出された「展望指針」の見直し報告の中で、この中に「長寿社会到来に対応した経済社会システムの構築」、こういう項があるわけであります。この中で、六十歳の定年基礎に、六十五歳まで就業機会確保することによって、雇用年金政策との連携を積極的に進めること、それから被用者年金支給開始年齢の引き上げについては、定年制など高齢者雇用の動向などを踏まえた長期的な視点に立って総合的な検討を進めていく必要がある、こういうふうに述べているわけであります。しかし、現実の年金制度、今審議している共済年金改革案についても、ここに述べられているような形にはなっていないわけであります。六十歳の定年公務員の場合にはそうなっているわけでありますけれども、民間がすべてそういう状態にあるとは言いがたい、かなりまだほど遠い状態にあるわけであります。そういう状態の中で、年金支給開始は六十五歳から。五年間のここに空白期間があるわけであります。きのうの出された「展望指針」の中の見直し報告の中ではこの点について、雇用年金開始との連携考えると、こういうふうに述べているわけでありますし、そうしてさらに高齢者雇用確保、これを考えると、こういうふうに指摘しているわけでありますが、これらの点について総理は、年金制度全体を考えていく場合に、どのような見識をお持ちでございましょうか。
  6. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 経済審議会中間報告については御指摘のような内容がございます。政府といたしましては、長寿社会到来を迎えまして、活力ある社会を維持していく上で、六十五歳程度までの高年齢者雇用就業の場の確保は早急に対処すべき重要な国民的課題であると思っております。このために六十歳定年を基盤として、六十五歳程度まで雇用就業の場の確保が図られるようにするために、高年齢者雇用就業対策に関する総合的な法律案次期通常国会に提出して施策の一層の充実強化に努めてまいりたいと思います。  また、長寿社会に対応する社会保障制度充実につきましては、来年六月ぐらいまでに答申を得まして政策充実さしていきたいと、そう考えておる次第でございます。
  7. 野田哲

    野田哲君 同じく昨日の報告書で「むすび」として、「拡大均衡の下での新しい成長」、この達成を八〇年代後半の基本的政策課題として位置づけていると思います。この報告書の副題も「拡大均衡の下での新しい成長」、こういう表題をつけているわけであります。そして「拡大均衡の下での新しい成長」とは「内需中心持続的成長であること」、このことを強調して、そのための中期的な対策として、「GNPの約六割を占める個人消費拡大を図るため、技術革新など経済発展の成果を賃金と労働時間短縮に適切に配分すること等を通ずる可処分所得や自由時間の適度な増加、物価の安定等を図る」、こういうふうになっているわけであります。このような政策が中長期的に進められることは、年金制度にも非常に大きく寄与することになると思います。そういう点から政府として、この「拡大均衡の下での新しい成長」、その具体策として述べている「内需中心持続的成長」、このことについて、具体的な施策についてどのようにお考えになっているのか。何かきのう総理がこの経済審議会へ出席されての発言、新聞に報道されている限りでは金利問題を発言された、こういうふうに報道されておりますが、内需拡大ということになれば、GNPの六割を占める個人消費拡大、具体的には賃金あるいは社会保障制度充実、こういうことが非常に重要な政策課題のファクターになってくると思うんですが、総理はどうお考えでしょうか。
  8. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 昨日いただきました経済審議会中間報告はおおむね妥当なものであると私、考えまして、これを検討の上実施してまいりたい、そう思っております。特にこれからの経済指針として拡大均衡下の新しい成長、そういう表題の路線を明示しましたことは同感しておるところでございます。  拡大均衡に持っていくために、現在の国際経済摩擦等状況考えてみますと、何としても内需振興は必要であり、あるいはさらに日本社会資本の未開発の部分も相当ございますから、そういう部面を我々は強化するという必要もこれあり、両々相まって内需中心にする拡大均衡へ向けて積極的に努力していきたい、そう考えておるわけであります。  しかし、一面において、我々は今財政改革あるいは行政改革を実施中でございまして、この財政改革あるいは臨調答申基本線の上に立ってこれを行うということも申し上げました。そういう観点からいたしまして、やる方法にはある程度の制限が加えられます。その一つとしていわゆる総需要刺激政策的政策は行わない、こういうことも申したのでございます。個別的にプロジェクトごとにこれを拡大均衡に活用していく、特に民活あるいは民間の蓄積、そういうようなものを思い切って活用する方法を編み出しまして、そして民需、民活というものを活発に動かしていきたい、そう考えておるわけでございます。  もとより政府といたしましては、あの中にありまする雇用問題あるいは賃金問題、あるいは休暇の問題等々についても慎重な関心を払いつつ、これを適切に推進していくということも大事であると思います。消費関係というものが需要相当大宗を占め、約六割近くを占めているということを考えますと、実質賃金確保して、そして消費を刺激するということも経済政策の一環として考うべきポイントでもあると思います。  また一面におきまして、今のような状況のもとに内需を起こすという面を考えますと、何といっても金利の問題というものが大事でございます。しかし、日本が一方的に金利を下げるということは、せっかく今安定しつつある円・ドル関係を攪乱させる要因もございます。そういう意味において、アメリカヨーロッパがこの間G5で国際金融体制について合意をやって、その政治的決定のもとに思い切った措置を講じたのが功を奏しまして、思い切った変化が起こりました。それと同じように、金利の問題につきましてもそういう協調的行動先進各国がとるという時期が来ていると、私はそう思います。日本だけやったんでは、また日本の外貨が流出するということもありますから、アメリカ日本ヨーロッパも一、二、三でやれば、そうすれば内需振興にもなりますし、一番喜ぶのは債務を持っておる南米や、あるいはアジアやその他の国々でございます。そういう意味からいたしまして、この間のG5の次に我々がやるべき国際的協調行動というものは金利問題というものがあると思っておるのであります。その点を強調した次第なのでございます。
  9. 野田哲

    野田哲君 拡大均衡下の新しい成長ということでの内需拡大について、今総理はいろいろ述べられたわけでありますが、個人消費拡大を図っていく、こういう意味でもぜひこの提言にある点を妥当として受けとめて推進するということでありますから、賃金抑制策とか社会保障抑制策、こういう点での可処分所得抑制に通ずるような政策はぜひとらないように、そのことが年金制度の今後にも大きく影響をもたらすことになるわけでありますから、その点を特に私は要望しておきたいと思います。  さらに、総合的な問題の中で、総理はことしの初頭の施政方針演説で、「国民年金厚生年金保険等改革に加え、共済年金改革を実施することにより、昭和七十年を目途として公的年金制度全体の一元化を実現し」、そして「これらの制度改革を根幹として、定年延長など、高齢者の能力や経験ができる限り社会に生かされる仕組みを工夫し、その積極的な社会参加を促進することが重要」だと、こういうふうに述べておられるわけです。そうして、この改革によって「今次行政改革の大きな柱が実現するもの」、こういうふうに位置づけられているわけであります。  しかし、この行政改革について臨調答申は単に年金制度一元化だけを言っているのではなくて、年金制度改革に関連して、先ほども総理から答弁がありましたが、定年延長の問題とかさらに恩給制度、このことにも触れて、恩給制度については公的年金制度とのバランスを考慮した見直しなどもあわせて提起されている、あるいはまた年金問題担当大臣決定タイムスケジュールの設定、こういう点について述べているわけであります。  高齢者問題、定年制の問題は先ほど述べられたわけでありますが、恩給制度の問題についてまた改めて伺いたいと思いますが、恩給制度については全く手を染めない、こういうことで進められるわけですか。
  10. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 恩給制度というものは年金制度と本質的に性格を異にしているものがあると私、考えております。恩給制度は主として戦前ありました恩給法に基づきまして「恩給受クルノ権利」とたしか法律に書いてあったと思います。これは自分もお金を出してそして退職後は恩給を受けるという形で国家が約束したことでありまして、そういう意味においてこの約束を履行するということは国家としても責任がある、そういう基礎的枠組みを変えることは適当でないと、そう考えております。  また一面におきましては、しかし公的年金と類似する面もなきにしもあらずであります。そういう点は鋭意検討を行っていくべきものであると、そうとも考えており、まだ結論は出ておりませんが、しかし本質的なそういう性格の差というものは我々は考えていかなければならない。恩給についてはもう既裁定者ばかりでございまして、しかも相当みんな年齢がお年寄りで七十を超している人たちが多いと思います。数も毎年毎年減っていくわけでございます。そうすると、これから新しく年金受給者が出てくるという、こういう循環関係でない要素もございまして、年金体系恩給体系というものは性格が異なると、そういうふうに考えておる次第であります。
  11. 野田哲

    野田哲君 そうすると行政改革について、恩給制度についても公的年金制度とのバランスを考慮した見直しもあわせて検討するように提起されているわけですが、これは恩給制度については当分手をつけないと、こういうふうなお考えだと受けとめていいんですか。
  12. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 先ほど申し上げましたように、基本的性格の違うものでございますから、したがって、我々はこの基本的枠組みというものは堅持して国としての責任は果たしていかなければならない、そう思っております。しかし、今申し上げましたように、年金制度と類似した点も多少なきにしもあらずで、そういう点については検討していくと、そういうことでございます。
  13. 野田哲

    野田哲君 恩給制度年金との問題につきましてはまた後ほど具体的に私も問題提起して見解を伺いたいと思うんですが、今総理は、恩給制度については基本的な性格が違う、そして恩給受給者恩給を受ける権利があるんだと、こういうふうに述べておられるわけです。国鉄退職した人たち、同じ公務員共済年金制度のもとでも非常に厳しい抑制措置を受けているわけです。それから文官で恩給共済年金制度両方制度にまたがっての既裁定年金者がいるわけであります。そういう人たち共済年金を受ける権利を持っていると思います。特に国鉄退職した人たちの場合、まさか国鉄だけが他の公務員共済年金人たちと差別をされて扱われるということを想定してやめた人は一人もいないと思うんです。こういう人たちには共済年金を受ける権利はないというふうに考えておられるんでしょうか。恩給受給者には恩給を受ける権利があって、共済年金受給者国鉄職員など退職した人は共済年金を受ける権利はない、こういうふうにお考えなんでしょうか。
  14. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 恩給の場合は、恩給法という戦前からの法律もございまして国が責任をしょって約束している、公的義務を国が法律でしょっているという性格を持っておるわけでございます。年金の場合は、いわゆる社会保険保険的色彩が強うございまして、みんなで相互扶助相互連帯のもとに保障体系をつくっている、そういう性格があると思うのであります。  国鉄の場合は年金体系の中に入っておりまして、そういう相互扶助相互連帯という形で長期的安定を目指してやっているものであります。その国鉄自体がさまざまな事情によりまして年金を支払うことは非常に困難な状態になってきております。そういう社会保険的性格を持っておる国鉄年金体系に対しましては、どうして国鉄退職なすった皆さんに年金を保障してあげるかという点については、社会保険の精神にある連帯性と申しますか、そういうような考えにも立ちましてみんなで支え合っていこうではないかということで、御迷惑とは知りながらも、それらの国鉄退職者に対する年金をある程度確保していくために我々としては努力しておると、そういうことなのであります。
  15. 野田哲

    野田哲君 後ほどまた具体的に今の総理答弁に関連した問題については私も伺いたいと思いますが、具体的なこれから年金制度内容の問題に入っていきたいと思うんです。  公的年金一元化計画政府昭和七十年を目途とした公的年金一元化を言っているわけでありますけれども、この公的年金一元化ということの内容が明確になっていないんじゃないかと思うんです。制度的な枠組みとして今度の共済年金四法案によって共済年金基礎年金を導入した、その上に報酬比例制度ができてこれも厚年と同じような形になった、その上に職域年金、こういう形になるわけですが、こういう形の制度ができたことによってこれで大筋一元化の道筋は終わったというふうに理解していいわけですね。どうでしょうか。
  16. 増岡博之

    国務大臣増岡博之君) お答えいたします。  公的年金一元化のことにつきましては、まず今回の改正で基礎年金を導入することによりまして、その部分につきましては一元化ができたと考えてよろしいかと思います。なお、いわゆる二階建てと称しております報酬比例部分につきましても、給付と負担の面で適正化を行っておるわけでございます。これによってある程度大筋方向性というものは決まってきたように思いますけれども、まだなおかつ制度間にいろいろな差異がございますので、給付と負担の公平、制度安定等々勘案しながらこれから政府部内でいろいろ議論を詰めていかなければならないというふうに考えております。
  17. 野田哲

    野田哲君 そのことについて大蔵大臣にお伺いしたいんです。今四つの共済年金制度があるわけでありますが、この四つの共済年金制度は、今厚生大臣がお答えになったような形で大筋年金制度としての基礎年金、それから二階建て、三階建て、こういう形で年金性格によって制度をそろえた、そしてそのもとでの共済年金制度というのはこれからも存続をしていく、そういう中で制度間調整をやっていくんだと、こういうことで理解しておいていいんですか。
  18. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) 今厚生大臣からお答えございましたが、私の側面から申しますと、これは閣議決定以前ではございましたが、国家公務員等共済組合、すなわち国鉄共済の統合の際を仮に第一弾といたしまして、そして厚年、国年の改正、本当は閣議決定から言いますとこの方が第一弾と言えるかもしれませんが、そして今度は共済に基礎年金制度を導入した。したがって給付の面から見るとほぼ一元化の方向に来た。したがって将来、今度の問題は七十年に向かっての負担の面ということに特に注意を払わなきゃならぬ。そうすると今御指摘がありましたように制度間調整というようなものが出てまいります。本当は一元化というのが、あるいは統合とか一体化とかいう言葉であったとすれば、何となく一元化というものの姿が描けるような気がいたしますが、今言っております一元化ということの概念を念頭に置いて見ますと、何分においても共済年金制度にはそれぞれの歴史、沿革がございますので、現時点であえて申し上げるといたしますならば、国家公務員等共済年金制度というのは存続せざるを得ないではないか。こんなところが現在の私の御答弁を申し上げる土台ではないかなというふうに考えております。
  19. 野田哲

    野田哲君 共済年金制度というのは公務員制度の一環として存在しております。そしてその一つの特徴としては、使用者側といいますか管理者側といいますか、それから職員側といいますか労働者側、この両方が参加した自主運営という性格を持っているわけでありますから、こういう自主的な運営の性格を持っている年金制度の運営上の性格というものについては、これからもこの制度を生かして尊重していくように考えてよろしゅうございますか。
  20. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) これは運営については、組合員等の生活の安定と福祉の向上に寄与するとともに、職務の能率的運営に資することを目的とする相互救済組織として設けられたものでございますので、したがってその運営については、組合員を構成員とします運営審議会の意見を聞きながら適切な運営に今日までも努めておるところでございますが、この運営方式というのは共済制度が組合方式を維持する限り今後も尊重さるべきものである、その適切な運営に引き続き努めるべきものである、このように考えております。
  21. 野田哲

    野田哲君 この共済年金の掛金負担の問題でありますけれども、これは今言われているように労使が参加した自主的な運営の中でそれぞれの共済組合が経営努力を行い、国家公務員共済制度、それからNTT、それから前のたばこ専売、これによる国鉄共済への財政調整を行ってきているわけでありますし、また地方公務員共済では、八十九の単位共済が財政安定のために財政調整などを行い努力をしているわけであります。こうしたことを勘案して、一律に厚生年金保険料率に合わせていく、こういうやり方ではなくて、各共済組合の運営の自主性というものを負担の面でもできる限り最大限に尊重していくべきだと思いますが、どうお考えでしょうか。
  22. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) これは一元化という言葉から来ますイメージのごとく、可能な限り似た形に持っていきたいということはまずは言えることであろうと思いますが、何分にも今日まで参りました歴史的経過等から見ますと、今御指摘のありました自主性の尊重というのは、今日までも尊重してきておりますが、今後も尊重していくべきものであろうというふうに考えております。
  23. 野田哲

    野田哲君 総理に各省庁にまたがる問題について伺いたいわけです。御出席の各大臣全部お考えを伺いたいんですが、時間の関係もありますので省略をいたし、もし総理答弁いかんによっては個々にお伺いしたいと思うんです。  行政改革の一括法案、これは総理が非常に強く進められたわけですね。あのときに 済年金についても公的負担分が四分の一カットされているわけです。現在までの累積額を午前中の内閣委員会で大蔵大臣から伺いますと、厚年について九千四百七十億、船員保険六十七億、国公共済三百七十八億、地公共済二百七十二億、私学共済が七十六億、農業団体共済が二百二十七億、合計で一兆四百九十億、こういう累積額になっているわけであります。これは元金、利息とも合わせて返還することになっているわけでありますが、大蔵大臣に伺いますと、まだこれはめどが立っていない、いつどういう形で返還できるかよくわからない、不明だ、できるだけ早くというような抽象的な答弁であったわけです。厚生大臣も出席をされてお答えになっていたわけでありますが、どうも厚生大臣は余り積極的に返せ、返せと言っておられないような感じがするわけであります。しかし、これはそれぞれの共済組合員が掛けた金であって、各省の関係の大臣はそれを管理する立場にあるだけであって、これは債権者の立場ではないわけですから、行政上の監督者としてもっと厳しく返還を求める態度を持ってもらわなければいけないんじゃないか、こういうふうに考えるわけです。  総理、こういう借金の仕方、いつ返すかわかりませんよ、一兆円を超える金をいつ返すかわかりませんよというような借金の仕方というのは、これは国家といいますか大蔵省だから言えることであって、これは金を借りる立場からいえばいかがなものかと、こういうふうに思うんです。総理としてはこれをどうなさるのが一番いいとお考えになっておられますか。
  24. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) その点はまことに恐縮な次第でございまして、皆様方には御迷惑をおかけしないようにいたしますと政府も公約しておるところでございます。誠意を持ってこれに対応して、今後積立金運用収入の減額分を含む年金国庫負担の減額分、できる限り速やかに繰り入れに着手する所存でございますと申し上げておりますが、このことを私も重ねてお約束申し上げる次第でございます。何しろ国家財政が火の車でございまして、なかなか速やかにこれを現実的に着手するという余裕がございませんが、しかし政府としてはあらゆる可能性を探りまして、財政関係を整えてこれがお返しできるような環境に持っていきたいと、そう思っておる次第でございます。
  25. 野田哲

    野田哲君 それぞれの共済組合あるいは厚生年金や船員保険の財政もそれぞれ努力をしているわけですね。余った金をどうぞ使ってくださいというような性格のものではないと思うんで、普通ならばこれは耳をそろえて早くということなんですが、なかなか国家財政が厳しいからそう右から左にはいかないにしても、計画ぐらいは示さなければいけないんじゃないか、こういうふうに思うんですが、重ねてどうお考えでしょうか。
  26. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 先ほど申し上げましたような情勢で国家財政が火の車で、年末になると借金返済に国民の皆さんの一部も苦しむように、政府も今野田さんに追っ立てられて弁解これ努めているという姿で、まことに申しわけない状態でございますが、ともかく財政を早く整えまして、そしてお返しする時期をできるだけ早く繰り上げるように努力していきたいと申し上げる次第でございます。
  27. 野田哲

    野田哲君 国鉄の問題について伺いたいと思います。  衆議院の審議を通じて、国鉄共済問題につきまして、   国鉄共済年金については、財政調整五カ年計  画の終わる昭和六十四年度までは、政府として、  国鉄の経営形態等の動向を踏まえつつ国鉄の自  助努力と国の負担を含め、諸般の検討を加え、  支払いに支障のないようにいたします。   以上につきましては、昭和六十一年度中に結  論を得、その後できるだけ速やかに具体的立法  措置に入ることといたします。   なお、昭和六十五年度以降分につきまして  は、その後速やかに対策を講じ、支払いの維持  ができるよう措置いたします。こういう見解を述べられているわけでありますが、この「昭和六十一年度中に結論を得」というのは、そこに何か各階層といいますか、関係者、学識経験者あるいはいろんな関係者も含めた参加を求めた言うならば審議会というような検討の場を設けることを考えておられるのかどうか。これはいかがでしょうか。
  28. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) この国鉄共済問題につきましては、これは責任を持って検討できる場を考えていくという基本的な考え方でございます。
  29. 野田哲

    野田哲君 大蔵大臣、その責任を持って検討できる場というのがよくわからないんですが。
  30. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) まあ一つは閣僚協議会のようなものがございます。しかし今御指摘なすっておる意見、そして連合審査の場ではなく、内閣委員会等で出ました意見等を踏まえながら、ただ閣僚協議会だけでやっていくことはできぬじゃなかろうかと、こういう感じがいたしますので、そういうのをかれこれ勘案した適切な場、今のところ抽象的に言えば、適切な場以上の適切な場はないと、こういうことではないかと思います。
  31. 野田哲

    野田哲君 よくわかりませんがね。閣僚協というのは、これは内輪の場ですから、その内輪の場でなくて、私は国鉄関係についてのできるだけ英知が結集できるような場を考えてもらいたいと思うんです。解体しようというときだけ再建監理委員会というような場を設けられておられるわけですが、国鉄共済年金もまさに解体寸前のような危機的な状態にあるわけですから、これをあとどうするか、こういうことについては閣僚協というような内輪の場ではなくて、いろんな学識経験者や国鉄関係のいろんな労働組合やあるいは退職者の協議といいますか、団体もあるわけでありますから、そういうところも含めた場というものをぜひ検討していただきたいものだと、こういうふうに思っているわけですが、重ねて伺います。
  32. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) 国鉄監理委員会におきましても共済の点において触れられておりますけれども、確かに私はあの際も感じましたのは、共済ということになるとまた特別な関係者、それからプロ的知識も要るだろう、だから国鉄監理委員会でも一つの方向を示された、あれが限度だろうなという感じを当時持っておりました。したがって、今度はこの国鉄共済救済策ということになりますと、思想、哲学もさることながら、非常に専門的な知識も有する必要があろうかと思います。そして今御指摘なさいましたような方々の既裁定者の方とかいろんな意見も聞く必要もありましょうし、したがって、今どういう委員会構成のものをつくりますというところまでもとより来ておるわけではございませんけれども、今の御主張のような意見を体してそれこそ適切な場をつくろうと、こう考えております。
  33. 野田哲

    野田哲君 大蔵大臣、結論を出さなければならない問題が二つあるわけですね。一つは、当面する問題について六十一年度中に結論を得る、この課題がある。もう一つは、六十五年度以降について一体どうするのか。これについても、速やかな対策を講じ、支払いの維持ができるような措置をいたしますと、こうなっているわけです。六十五年度以降の速やかな対策を講じるのは、これは一体どういう場でお考えになるんでしょうか。これも割にもう近いことですから伺っておきたいと思うんです。
  34. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) まずは六十一年度中にこの答えを出して、そしてそれによって六十四年度までの一応対応がついたといたします。そうするとその推移を見ながら、それまで検討した適切な場の延長線上に置くべきものか、あるいはイーファン掛けた——この言葉は取り消します。もう一回り角度を広げたものにするかというのは、その段階で検討すべき問題ではないかなと思っております。
  35. 野田哲

    野田哲君 そこで、当面の問題とそのイーファン掛けた後の問題も、問題は国鉄共済年金の問題。議論していくそれこそ基本的な哲学といいますか、哲学というわけでもないが、基本的な認識として、国鉄共済年金が支払いの非常に不自由な状態になっていること、このことについて現にそれで国鉄退職者が他の共済年金受給者に比べると非常な不利益を受けているわけであります。しかしこの不利益というのは、別に長い間国鉄で苦労してこられた人に責任があるからこういう不利益が出ているわけではないわけであります。特に今国鉄共済年金を受けている人たち、それこそ当時の国策によって満鉄とか鮮鉄とか、こういう海外に輸送業務で派遣されていた人たち、こういう人たちが着のみ着のままで引き揚げてきて、これを国家政策として雇用対策として国鉄が受け入れて、あの日本列島全体が荒廃している中での輸送業務の復興に携わってきた人たちだと思うわけであります。  つまり、こういう状態になっているのは国の政策、ここに大きな責任があると思うわけであります。国の政策によって犠牲を受ける、こういう立場に今あるわけでありますから、これから六十一年度の問題の結論を得るにしても、その後の六十五年度以降の問題の対策を講じていくにしても、そういう基本的な認識というものをぜひ持っていかなければ、そこから先も国鉄の対職者に犠牲をしわ寄せしていくということになるんじゃないかと思うんですが、国の政策責任、こういう点を念頭に置いて、国鉄の問題、年金財政の今後の維持安定、こういうものを検討すべきではないかと思うんですが、いかがでしょうか。
  36. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) 国鉄退職者の皆さん、非常にその層の厚いところ、私や野田さんと同年齢者がその辺に入っておると思っております。したがって、そういう同年齢意識からくる気持ちでは決してございませんけれども、今おっしゃったとおり、まさに戦後大きな雇用の場を提供し、そして、いつも言う話でございますけれども、あごひもをきちんと締めて軍手をきちっとはめまして、デッキに力強くそして体で乗客を押し込んで、あの日本経済復興の大動脈を支えられた方々ばかりであります。いつも涙が出るほど感謝をいたしております。しかも昭和三十八年までは国鉄は赤字でもございません。三十九年から赤字でございます。ただ、モータリゼーションの差等によって国鉄が今のような状態になった。これはあるいは経済社会情勢の変化の中でやむを得なかったことではなかろうかと、こういう感じは私もいつも持っておるところでございます。  したがって、これに対応する措置といたしましても、まずは国共済の統合によってこれが一時的に救われております。それこそ、私は当時審議会の懇談会等にも出ておりましたが、まさに労働者連帯とはここにありという感じを強く持ちました。したがって、それには感謝しながらも、その後いろんな話を聞いておりますと、率直に申しまして、他共済に比べて年金水準が一割程度低くなるまでのスライドを行わないということは、これは御理解をいただかなければならないではなかろうか。そして国鉄共済の財政負担を増すだけでなく、財政援助のために別途に特別の費用負担を行っておる他組合の理解と納得を得るというのは、大体あのときの審議会の労働者連帯というのがおおむね限界ではなかったかと、こんな感じがいたしますので、我慢してくださいと申し上げておるところであります。
  37. 穐山篤

    ○穐山篤君 関連して。  大蔵大臣、今野田議員からも経緯が述べられました、十分労働者連帯については理解をしますが、ただ、今回法律が改正になりますと、マイナスの部分で言いますと一〇%格差の問題は当分の間続くわけですね。それから制度的に言うと職域年金三階建てがしばらくの間適用にならない。みなし従前保障のルールについてもこれが適用にならない、そういう問題点が片方に当分の間続くわけです。それからもう一つは、掛金負担の面において現在は千分の百二でありまして、これが将来どうなるかわかりません。千分の百二というのはそれぞれの共済組合、厚生年金に比べて最高の負担でありました。マイナスの部分においても負担の部分においてももはや限界であると思うんです。そうなりますと、これから退職するであろう人についての勤労意欲にも重大な影響を及ぼすわけです。したがって、一〇%格差をいつから八%にするというふうな議論もあるでしょうけれども、まとめて国鉄共済年金の給付について何らかの工夫をしなければ、これは国鉄の経営全体がうまくいかないというふうに思うわけです。したがって、これはあくまでも政策的な、政治的な判断になる問題だろう。以上の点から、大蔵大臣の考え方を明らかにしておいてもらいたいと思います。
  38. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) いろいろ歴史的経過もございますが、基本的には年金一元化の方向に沿って今日まで歩んできて、厚生年金水準確保するということを基本的に踏まえて対応をしなきゃならぬというふうに思っております。
  39. 穐山篤

    ○穐山篤君 簡単に物理的に言いますと、一〇%格差をいつまで適用するかということによりましては、厚生年金の給付水準を下回るものも可能性として出てくるわけです。ですから大蔵大臣、その点を十分に考えて、政治的な決断が必要になろう、こういうふうに指摘をしておきたいんですが、再度その点について考え方を明らかにしてもらいたい。
  40. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) 穐山さんのおっしゃる意味は私も十分理解ができます。が、財政調整委員会でまずは検討さるものであろうというふうに考えております。その際、今のような御議論が出てくるであろうことも私もおよそ予測の中に入れております。
  41. 野田哲

    野田哲君 国鉄問題の最後に総理見解を承っておきたいと思うんです。  お聞きのようなことで、国鉄退職者は現に他の共済年金制度受給者に比較して非常な不遇を受けているわけです。差別的な処遇を受けているわけであります。しかしこの人たち国鉄赤字の責任はないわけであります。国鉄が黒字の時代に退職した人が今は同じような犠牲を受けているわけであります。これは大蔵大臣も述べられたように、モータリゼーションとかいろんな交通政策全体の政策の影響を受けた赤字だと思うわけです。そういう点から、これからとりあえずの六十一年度に結論を得る当面の措置検討するにしても、六十五年度以降の問題を検討するにしても、そこのところの基本的な認識を持ってもらわなければまた受給者に重ねての負担をしわ寄せしていくことになるんじゃないか、こういう懸念を持つわけであります。そういう点で総理としても国鉄問題をこれからどうするかということについての御見解を承っておきたいと思うんです。
  42. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 国鉄年金受給者の皆様方の中に、ともかくそれらの方々からお考えになれば不平等な扱いを受けていると言われるような政策であることは我々も理解ができ、こういう政策はとりたくないと思っておるのでございます。しかし今の諸般の情勢を考えてみましてまことにやむを得ざる措置として御理解をいただき、ともかくこの年金制度というものは中期的にも安定的に維持できるようにしていく、それが一番大事なことでございますから、その場合といえども、今大蔵大臣が御答弁申し上げましたように、厚生年金水準は維持すると、こういう水準だけは申し上げておるのでございまして、我々としては今後も御趣旨を体しましてできるだけの努力はいたしてみたいと思うわけであります。
  43. 野田哲

    野田哲君 厚生年金水準を維持するということをおっしゃっているわけですが、それぞれの企業についても、厚生年金水準といわゆる職域加算、企業年金、こういうものがあるわけであります。国鉄退職者の場合には、厚生年金に相当する二階の部分だけでありまして、三階はゼロと、こういう扱いを受けているわけでありますから、厚生年金水準は維持するといっても、民間や他の共済年金水準にははるかに及ばない非常な不当な扱いを受けているんだということをぜひ念頭に持ってもらいたいと、こういうふうに思うわけです。  次の問題に入りたいと思うんです。  まず厚生大臣に伺いたいと思いますが、基礎年金見直しについてどう考えているかということでありまして、基礎年金水準それから費用負担のあり方等については、国民年金法の附則に基づいて再検討することになっているわけでありますが、これはいつごろまでにやる予定になっているわけですか。
  44. 増岡博之

    国務大臣増岡博之君) 基礎年金水準につきましては、国会でいろいろ御議論がございました結果、国会修正により附則に規定が設けられたことでございますので、今後その御議論の趣旨を踏まえて十分検討を行ってまいりたいと考えておりますけれども、水準そのものにつきましては、保険料負担とのバランスもございますし、また国民の生活水準その他の諸事情も勘案しなければなりませんし、関係審議会等の意見も承りながらやらなくてはなりませんので、次の財政再計算期に見直しを図ることといたしたいというふうに考えております。
  45. 野田哲

    野田哲君 厚生大臣、その見直しの手続、手順というのはどういうふうな手続を経ておやりになるわけですか。
  46. 増岡博之

    国務大臣増岡博之君) まず私どもの部内でいろいろ議論いたしましたものを関係審議会に持ち込みまして、その御意見も承りながらやってまいることに相なろうかと思います。
  47. 野田哲

    野田哲君 この基礎年金水準ですけれども、少なくとも基礎年金水準というのは生活保護の基準よりは下回らない、こういう形で定額支給というものを考えるべきじゃないかと思うんですが、この点はどうですか。
  48. 増岡博之

    国務大臣増岡博之君) 私どもの基礎年金水準考え方は、生活保護のような考え方ではございませんで、したがって国民の最低限度の生活を保障するという制度ではございません。基礎年金は、老後の生活の基本的な部分を保障するという立場から、高齢者の現実の生計費等を総合的に勘案して定めたわけでございますので、必ずしも水準が生活保護の基準を上回るべきものとは考えていない次第でございます。
  49. 野田哲

    野田哲君 その考え方はちょっと問題を感じるんです。  基礎年金への国庫負担について伺いたいわけですが、基礎年金への三分の一国庫負担については、本来これは全額国庫負担とすべきではないのか。当面、少なくとも現行の公的負担率まで引き上げて国庫負担の増額を図るべきではないかと思うんですが、これはいかがでしょうか。
  50. 増岡博之

    国務大臣増岡博之君) 基礎年金の国庫負担につきましては、負担の公平を期するという意味から基礎年金に集中をいたしたわけでございまして、その際国民年金と同じ三分の一といたしたわけでございますが、これを今後国庫負担をふやすということにつきましては、極めて厳しい財政状況のもとでございますので困難と言わざるを得ない。  なお、国庫負担をふやすということは、これまで我が国においてやってきました社会保険方式の基本を変えることでもございますのでなかなか困難であろうかというふうに考えております。
  51. 野田哲

    野田哲君 厚生大臣を一生懸命に応援しているつもりなんだけれども、ちっともかみ合わないですね。  別の問題ですが、無年金者の解消策については何か具体的に考えておられるわけですか。
  52. 長尾立子

    政府委員(長尾立子君) お答えを申し上げます。  今回の国民年金法の改正の中で、制度的な無年金者の解消のための改正が行われております。制度的な無年金になります可能性があります状況と申しますのは、一つは外国に行かれたということによりまして、本来必要とされます資格期間の一部が在外であるために期間として算入されないというケースでございますが、今回の改正によりまして、在外の場合にも国民年金に任意加入することができるという改正が行われまして、この部分の解消の対策がとられております。  もう一つは、現役でおられたときに、または六十歳前に滞納されまして期間が足らなくなったという場合でございますが、六十歳から六十五歳の間に任意加入をされましてこの期間を満たすということも今回の制度の改正の中で実施をいたしておるわけでございます。  この二つの方法によりまして相当程度年金者問題というのは解決されたのではないかと思いますが、それでも年金制度の加入手続をとっておられない、またとっておられても保険料を滞納される、これは国民年金の被保険者の方でございますけれども、そういったケースが考えられるわけでございます。  年金制度への加入手続をとっておられないという方につきましては、市町村におきまして国民健康保険の被保険者台帳、住民基本台帳等から未加入であると思われる者の名簿を作成いたしまして、これらの方々に文書、電話等によりまして適用促進を図っております。また一般的には新聞雑誌等の広報活動を実施いたしております。  また、滞納による無年金者の発生の問題でございますが、これは被保険者ができるだけ保険料を納めやすいような環境づくりという意味で毎月納付、それから口座振替の推進といったような方法を講ずるようにいたしたいと思っております。
  53. 野田哲

    野田哲君 今、大体推定としてどのくらい無年金者がいるという予測をしているわけですか。
  54. 長尾立子

    政府委員(長尾立子君) 厚生行政基礎調査によりますと、六十五歳以上の人口のうち御自分の名義で年金を受けておられないという方が七・七%程度というふうに推計されております。
  55. 野田哲

    野田哲君 人数でどのくらいになるんですか。
  56. 長尾立子

    政府委員(長尾立子君) 一千万人程度でございますから、そのうちの七・七ということでございます。
  57. 野田哲

    野田哲君 七十万。  総理にもう一回冒頭の方で議論いたしました恩給の問題について重ねて伺いたいと思うんです。  昭和五十九年七月二十五日、行革審が「当面の行政改革推進方策に関する意見」、こういうのを出されておりますね。この中に「共済年金制度について公的年金制度一元化を目指した改革案を早急に作成するとともに」、つまり今回の措置ですね、今回の措置を「作成するとともに、恩給制度について公的年金制度改正とのバランスを考慮し必要な見直しを行う。」と、こういう意見が出されているわけですが、この意見については今のところ、そうすると先ほどの総理答弁では具体的な措置については考えていない、こういうことでございますか。
  58. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 恩給に対する基本的考え方、年金に関する基本的考え方、その差については申し上げたところでございます。さりながら、恩給体系の中にも年金的な類似の性格的要素もなきにしもあらずの部分もあるから、その点は検討してみようと、そういう形で検討の用意があるということでございます。
  59. 野田哲

    野田哲君 まあ、それ以上の具体的なことを総理に聞くのもいかがかと思いますが、ぜひ認識をしておいていただきたいと思いますのは、私は恩給を下げなさいということを言っているんじゃないんです。共済年金との間にアンバランスが生じますよと。特に、公務員は前の文官の恩給の時代と共済年金の期間の両方にまたがった人たちがいるわけです。恩給期間だけの人は今までと同じような形で上がっていく。そして恩給期間と共済年金期間にまたがった人たちについてはそこでセーブがかかる。こういうことになると、そこにアンバランスが生じますよ。だから、そういうアンバランス措置はよくないんじゃないですか、何とか考えるべき課題ではないでしょうか、こういうふうに申し上げておりますので、その点で誤解がないように認識をしておいていただきたい。  特に午前中大蔵大臣にも申し上げたわけですが、私は今度の年金制度ではワーストツーがある。ワーストツーの一つは既裁定者のスライドの停止、それからもう一つは国公共済の算定基礎がワーストツーだ、こういうふうに申し上げているわけであります。特にこの既裁定者年金のスライド停止、これは私も大変重要な問題だというふうに考えておりますので、ぜひこれは総理としてもそういうことで今後恩給の問題の検討に当たっては、そういう立場から私は申し上げているのだということをぜひ念頭に置いていただきたいと思いますが、いかがでしょう。
  60. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 野田さんがおっしゃいまする論点はよく理解をいたしております。よく傾聴して記憶にとどめておきたいと思います。
  61. 野田哲

    野田哲君 最後に大蔵大臣に伺っておきたいと思うのですが、公務員の負担の問題であります。大蔵省の資料を見ると、現行制度でいけばこの掛金は、一番ピークの時点では現在の四倍にもなるというふうになっているわけであります。今度の改正案によってもピーク時で現在の三倍になる、こういうふうな推計になっているわけですが、これからの賃金の上昇率にもよるわけでありますけれども、負担の限界というものがあると思うのですね。一体、負担と言えば、共済年金の掛金の問題だけではなくて税負担もあるし、その他義務的な負担があるわけでありますけれども、今の公務員の給与水準の中での負担の限界とその中での掛金率というものはどの程度考えていけばいいのか、何か見解があれば伺っておきたいと思います。  以上で時間がまいりましたので終わりたいと思います。
  62. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) 結論から申しますと、いわゆる国民負担率というものを念頭に考えるべき問題ではなかろうか。そうしますと、従来の臨調答申等にもございますように、この問題についてはヨーロッパをかなり下回る、こういう水準ということになりましょう。その当時の臨調の答申の出たときから見ても、また四%ぐらいヨーロッパは総じて上がってきております。したがって、それこそ適当な水準は那辺にあるか、こういうことになりますと、国会の問答等を通じながら国民のコンセンサスはおよそこの辺で得られるなということを見定めていかなければならぬ。四〇%を念頭において議論をなさる人もございますし、あるいは四〇%弱のところで議論をなさる人もございます、四五%で議論をなさる人もございます、あるいは五〇%弱で議論をなさる人もございますが、それこそ一番重要な問題でございますので、国民のコンセンサスは那辺に得られるかということをこれからも国会の問答等を通じながら見定めていかなきゃならぬ問題だというふうに考えております。  それをいわゆる年金の負担ということで計算しますと、いろんな計算がございますが、仮に将来支給開始年齢を六十五歳に引き上げることと仮定いたしますと二四・六にとどまる、こういう計算もあるわけでございますが、一義的にこれが適切であるということには、国民負担率全体の中で位置づけすべきものでありますので、にわかに断定しがたいというのが現状でございます。
  63. 中西珠子

    ○中西珠子君 私はまず婦人の年金権について総理にお伺いしたいと思います。  前国会における厚生年金等の改正だとか、ただいま議題となっております共済四法案などの一連の公的年金制度の改正によりまして、政府は婦人の年金権が確立されるのだと説明されておられますが、果たしてそうなのでしょうか。私は婦人の年金権が確立されるとは思いません。  まず第一に、夫が厚年や共済など被用者保険の加入者である場合は、その妻は夫が保険料を払えば専業主婦であり無業の妻は保険料を払わなくても妻名義で基礎年金が支給されることになる。ですから婦人の年金権が確立されるのだと、このように御説明になっているわけですが、四十年夫が保険料を掛けまして、そして基礎年金としてもらえるものは五万円ということでございます。この五万円というのは生活保護の二級地の生活扶助水準の五万三千円よりも低い。そして保険料支払い期間が四十年以下の場合は、これよりもっと低くなって一万円になるか二万円になるかわからない、非常に低い給付額となるわけでございます。これでは老後の生活保障には満たない。憲法第二十五条で保障している生存権をも脅かすことになるというふうに考えますが、この基礎年金水準を引き上げない限り婦人の年金権の確立などは言えないと思うわけでございます。  第二に、夫の就業状況によりまして婦人の年金の給付と負担というものが違ってくるのは、これは公平さを欠くと思うわけでございます。例えば夫が自営業者の場合は保険料を専業主婦であっても払わなければ年金は支給されない。しかし夫が被用者であって厚年共済年金に入っている場合には、夫の被扶養者である妻は保険料を支払わなくても年金が支給される。これは公平性を欠く。また被用者保険加入者の被扶養されている妻の場合には、夫の保険料でカバーされるからよいのではないかと言われるわけですけれども、夫の保険料だけでカバーされるのではなくて、同じ保険に加入している独身者、男性も女性も含めて独身者と、また共働きの妻の保険料というものによってもカバーされているわけでありますから、これは給付と負担の公平性を欠いている。殊に独身女性とか共働きの妻の中から、なぜ我々が専業主婦の年金の面倒を見なければならないのかという不満の声が出ているわけでございます。  また第三に、併給の一律禁止で、夫に先立たれた共働きの妻は、自分自身の年金と夫の遺族年金どちらかを選ばなければならないわけでございますけれども、御承知のとおりに女性の平均賃金は非常に低うございまして、大体男性の平均賃金の約半分、五二%ぐらいにすぎません。そのような現状のもとで夫の遺族年金の方が高い場合の方が多い。それで自分自身の自分が保険料を支払ってきた固有の年金というものを放棄して、夫の遺族年金の方を選ばざるを得ないという場合も出てくる。その場合、本当に自分の固有の年金は低いがゆえに嫌々ながらも放棄しなければならない、保険料は掛け捨てになるということにもなります。また夫の遺族年金も自分自身の年金も低い場合には、この併給の一律禁止によりまして非常に老後の生活が困窮をきわめるという女性も出てくる場合が多いわけでございます。  このような例を挙げますと、不合理がたくさんある中で、女性の年金権が確立するのだ、もう厚年などの改正によりましてあちらは確立したのだ、これから共済四法案改正によって確立するのだということがおっしゃれるのかどうか。婦人に対しては大変御理解がおありになり、また婦人問題企画推進本部の本部長でいらっしゃいます総理の御所見をお伺いしたいと思います。
  64. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 婦人の年金に関しましては、従来サラリーマンの妻は任意加入とされていたために、障害者となったり離婚したときに年金保障に非常に不安定な面がありましたのを、今回の改正で、すべての婦人が国民年金の加入者となり、各自に基礎年金が保障されることになっており、これにより婦人の年金権は確立したものと考えております。  中西さんおっしゃいますように、そういう御指摘のような面もなきにしもあらずでありますが、それは理想的な、ある程度年金財政が充実している姿でそういうことは考えられると思いますけれども、今のような状態では、国としては基礎年金の三分の一を負担さしていただきつつ、これを長期、安定的に持続していきたい、そういう考えに立ちまして、ともかくも今のような年金をもらえない方々に対する、しかもサラリーマンという膨大な層に対するある程度の保障措置をこの際前進させよう、そういう考えで仕組んだやり方でありまして、私は女性の経済的保障という問題については大きく一歩前進する制度であると考えております。
  65. 増岡博之

    国務大臣増岡博之君) 総理からお話がございましたとおりでございますが、今回の改正において、サラリーマンの無業の妻の基礎年金の費用につきましては、夫の加入する年金集団がまとめて負担することという仕組みになっておりまして、独身者や共働きの女性が無業の妻の保険料も負担しているのではないかという御指摘につきましては、独身者や共働きの女性もそれぞれ厚生年金の事業所等に勤務しており、相当の報酬を得ています以上、その年金制度の一員として同等の負担を求められるということで、やむを得ない処置であることを御理解いただきたいと思います。  また、給付水準につきましては、一定の額を保障する給付の必要性に見合った水準というものを考えておりまして、例えば加入期間が短くて遺族になった場合や過去の報酬が低かった場合などにそのような措置を設定しておるわけでございます。そのような基本的な姿勢、考え方に立ちましてそれぞれの水準が設定されておりますので、一部併給を認めるということは給付水準の整合性という観点からもどり得ないものでございますので、御理解をいただきたいと思います。  ただ、一人一年金の例外として、遺族年金につきましては、受給者本人の老齢基礎年金との併給が認められているところでありますので、御理解をいただきたいというふうに思うわけでございます。
  66. 中西珠子

    ○中西珠子君 婦人の年金権の確立ということと内容充実につきましては、今後一層検討し、努力していただけるというふうに私は要望したいと思いますが、総理、いかがでございましょう。
  67. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) ただいま申し上げましたように、これは大きな前進でありますと申し上げましたが、これで完璧なものとは思っておりません。今後とも充実していくことに努力していきたいと思います。
  68. 中西珠子

    ○中西珠子君 私は余り時間がございませんが、私学共済のことについてちょっとお聞きいたしたいと思います。  現在提出されております法案の中の本則の第二十三条、それから附則の第四条によりまして、非常に不利になる組合員が出てくる、それも六万人以上ということでございますが、これにつきまして年金の算定基礎というものを修正する必要があるのではないかと考えておりますが、文部大臣はどのようにお考えでいらっしゃいますか。
  69. 松永光

    国務大臣(松永光君) 御指摘の点は、先生を初め各委員の先生方からしばしば議論をいただいたところでございます。  官民格差をできるだけ是正すべしという視点、あるいはこれから組合員になる若い人たちは全期間平均方式で算定されるというような点がありますので、世代内、世代間の給付の公正を図るという視点等からすれば、理論的には厚生年金方式の方が筋が通るのかもしれません。しかし私どもとしては、私学共済には先生御承知のとおり三百十人でございましたかな、給与の過去記録のない人がいるということ、それから従来から私学共済が準ずることとしておった国共済が五年掛ける補正率方式を採用したこと、それから一般的に言って私学に働いていらっしゃる教職員の給与は昔は低かったが、私学助成が始まってからどんどん充実してきて現在では国立学校の教職員に追いついてきたというようなこと等からすれば、国共済と同じ方式をとった方が実際上私学関係者にプラスであろう、それに私学関係者からも強い要望があったということで、現在御提案を申し上げているような方式を採用したわけであります。しかし御指摘のように一部、六万人という数字を挙げられましたが、それに近い者たちが厚生年金方式よりも低くなるという点の指摘がございます。これは同じ私学共済の中で別々の算定方式をとるのは公正の点からいかがなものであろうかと言う者もございますが、しかし御指摘の点につきましても理解できないわけじゃございません。しかし、この点につきましては御議論を踏まえ、また現在与野党間でいろんな協議がなされているというふうに漏れ承っておりますので、その合意が成立いたしましたならば、その合意に私は従う所存でございます。
  70. 中西珠子

    ○中西珠子君 私学共済は非常に独自の歴史を持って、そして特殊な性格も持っているわけでございますが、職域年金部分につきましては、そういった独特の歴史、性格というものを勘案して、もう少し自由裁量を許す、自由設計をさせてもよいのではないかと思うのですが、それが不可能であるとすれば、もう少し緩和して、例えば組合員期間が二十五年以上でないと共済年金の職域加算部分がフルに千分の一・五支給はされない、二十五年未満の場合は二分の一にするというふうな点はもう少し緩和して二十年以上というふうなことにできないものでしょうか。
  71. 松永光

    国務大臣(松永光君) 私学すなわち学校法人は、大きなものは大学から小さいのは幼稚園までございまして種々雑多でございます。その種々雑多な私学について職域年金部分考えるわけでありますから、御提案申し上げているような国共済に準ずる措置の方が現実的であるし妥当であるというふうに考えるわけであります。  なお、職域年金部分の給付をする期間の計算の問題でございますが、二十五年ということでお願いをし、二十五年未満のものにつきましては半額になるということでございますが、二十五年にせずに二十年にしてあげたらどうだという御所論でございますけれども、この点も与野党間でいろいろ協議がなされているというふうに承っておりますので、与野党間の合意が成立をいたしましたならば、その合意を我々は尊重し、従う考えでございます。
  72. 中西珠子

    ○中西珠子君 私の時間が参りましたので、最後に私学共済につきましては、先ほども申しましたように特別の歴史、特殊性というものを持って発展してきたわけでございますので、私学共済設立の目的、私立学校の教職員の福利厚生、また福祉の向上に資する、そしてひいては私学の振興に寄与するというその目的と趣旨というものを体して、私学共済が公正で安定した年金として一層の発展を遂げていくように文部大臣としては御努力いただきたいと思うわけでございます。総理としても御努力いただきたいと思うわけでございますが、いかがでございますか。これをもって私の質問を終えますので一言ずつどうぞ。
  73. 松永光

    国務大臣(松永光君) 先生の御指摘はごもっともと思いますので、先生の御指摘を十分体しまして私学の発展に尽くしてまいりたいと考えております。
  74. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 文部大臣と同様に考えております。
  75. 中西珠子

    ○中西珠子君 どうもありがとうございました。
  76. 中野明

    ○中野明君 まず、今回の国家公務員共済組合法等四法案につきまして基礎年金が導入されるということにつきましては、我が党としてもかねがね主張してきたところでございます。世論も大勢はそうだろうと思っておりますが、しかし国民年金法の改正のときに導入されました基礎年金そのものについては、国民がひとしく保障される基礎年金導入の基本理念に十分沿うものではないということで、私ども非常にその欠陥を指摘してきたところでございます。  そこで、きょうは総理も御出席でございますので、まず、今回の公的年金制度改革についての閣議決定で、六十一年度以降においては、「給付と負担の両面において制度間調整を進める。これらの進展に対応して年金現業業務の一元化等の整備を推進するものとし、昭和七十年を目途公的年金制度全体の一元化を完了させる。」、このように閣議決定されているわけでございます。大蔵大臣も先ほど少しそのことを述べておられましたが、当然閣議決定をしたわけですから、それぞれの大臣も七十年を目途公的年金制度全体の一元化をするという決定に参画された以上、大体どういう格好になるのかな、こういうことをそれぞれ胸にお持ちだろうと思うんですが、きょうは総理に、この閣議決定責任者でございますので、七十年には大体公的年金制度全体の一元化というのはどういう姿というものを総理としてお考えになっているか、最初にお伺いいたします。
  77. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 公的年金制度一元化の問題は、たしか昨年二月の閣議で決定したと思っております。さきの国民年金、厚生年金保険の改正及び現在御審議いただいておりまする共済年金法の改正を踏まえて六十一年度以降さらに制度間調整を進めるとしておりますが、その具体的内容や手順については今後政府部内で検討しているところであります。公的年金の将来についてどういう形で一元化するかというめどにつきましても、同じように政府においてこれから慎重に検討するところであります。いずれにせよ、公的年金制度全体について長期的安定と給付と負担の公平性を確保して、整合性のとれた発展を図ることが基本と考えております。
  78. 中野明

    ○中野明君 総理も今お答えになりましたが、そういうことで今回この四法案それぞれ各委員会に分かれて審議しておるわけですけれども、いろいろと不安といいますか、将来どうなっていくのかということについて質疑が出るわけです。一番長期に安定した年金制度ということになりますと、財布を一つにした方が一番長期に安定するんじゃないか、このようにも考えるわけですが、いろいろ言われるところによりますと、六十五年をめどに共済グループは一本化した方がいいんじゃないかと、そういう説もあるやに聞いているんですが、この辺はどうお考えになっていますか。
  79. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) 自民党のプロの会議のときにも今おっしゃったような議論があったことはございますが、さてそこまで断定できるか、こういうことになりますと、諸制度の沿革、歴史から見ますとそこまで断定するのは少し早いんではないか。しかし、先ほど来総理にお尋ねになっておりましたが、私どもも、本当の姿というのはその後検討するということで、今回で給付の一元化がほぼできたかな、こんな感じでございますので、そこまで踏み込んだというところにはまだ至っていない、こんな感じ、私は国共済側から見てそういう印象でもって今対応しておるところであります。
  80. 中野明

    ○中野明君 その辺が四共済とも今回の改正に当たって給付の水準も下がるし掛金はふえる、そういうことで非常に今までよりは不利な状態になっている。その上に将来の見通しがないというところに不安があるんじゃないかというような心配があって議論がどの委員会でも出ているんじゃないか、そういうふうに思います。いずれにしても、これは長期に安定させる上からぜひ早い機会に結論を出していただいて、そして理解と協力を得ていかなければならない問題だろうと思います。  そこで、次の問題は、今回のこの共済四法案の改正というのは共済制度創設以来の大改革だと思います。ところが、政府一元化という大方針をもって措置されているわけなんですが、地方共済の中で警察職員と公立学校の教職員の共済、これがまだ連合体に入っていないわけです。これは今回を入れてチャンスが二回あったわけです。政府一元化とおっしゃっているんですが、そういう二回のチャンスにも、聞くところによりますと、警察は大分準備ができておるようですが、公立の教職員共済がまだ十分説得ができていないというようなことなんですが、この二回のチャンスに外れ、一本化という大方針の中でどうしてそんなに説得ができないんだろうかということなんですが、文部大臣、説明していただけますか。
  81. 松永光

    国務大臣(松永光君) 先生御指摘のように公立学校共済が連合会に入っていないのでありますけれども、連合会の設置というものが公的年金制度一元化ということで設置されたものでありますから、公立学校共済も連合会に加入する必要があると考えております。しかし公立学校共済は百十三万人もおるということもございまして、公立学校共済関係者の合意形成がまだできていない、段階的に合意形成を積み上げにゃならぬわけでありますが、私どもといたしましては、さらに公的年金制度一元化という方向で進んでおるわけでありますので、精力的に関係者に説得し協議をして、そして連合会加入に向けて一層の努力をしていきたいというふうに考えておるところでございます。
  82. 中野明

    ○中野明君 総理、お聞きのとおりでして、一元化という政府の大方針に対して、過去二回、今回を入れて二回チャンスがあったわけなんですが、それがまた説得できないということは、政府一元化という大方針の取り組みということについて本当にそのつもりでやっているんだろうかという一抹の不安といいますか、あいまいさを感じるんですが、一日も早くこれは今大臣が答えられたような方向に総理からも督励をしていただきたいなと、こう思っております。  その次の問題なんですが、国鉄の余剰人員という問題があります。余剰人員ということは、先日も新聞の社説で私も見ましたが、今働いている人たち、一生懸命国鉄で骨を埋めようと思った人たちに余剰人員という呼び方はどうも、というような異論もあるようですが、現在既にその言葉が言いならされておりますので私も余剰人員という言葉を使いますが、当初私どもがいろいろ聞いておったところでは、国家公務員一方、それから地方公共団体で一方、二万が限界だろうというようなことを聞いておったんです。先日の閣議では余剰人員を三万人公的部門に受け入れすることを決定されているわけですが、この二万というふうにいろいろ伝えられておったのが三万になったことの何か裏付け、根拠があってそうなさったのか、それともただ多い方がいいだろうということでなさったのか、その辺は総理、どういう裏付けを持っておられるんですか。
  83. 平井清

    政府委員(平井清君) 国家公務員を初めとします公的部門への受け入れということにつきましては、国鉄改革の一つの大きな問題といたしましてまず国を初めとする公的部門への受け入れを固めてまいらねばならないということで鋭意検討してまいったところでございますが、先生のお尋ねのようにいろいろ検討はございましたけれども、今の現段階におきましては、新しい国鉄改革の新経営体の要員計画を初めといたしましてまだ未確定の部分が非常にたくさんございます。現段階におきましては三万人を一つの目標といたしまして政府が一丸となって頑張ろうということで閣議決定後の官房長官の談話の形で政府の決意を明らかにいたしたところでございます。
  84. 中野明

    ○中野明君 何か余り根拠がないような感じはするわけですが、いずれにしましても、きょう私、大蔵大臣に特にお聞きしておきたいんですが、国鉄職員が結局、国家公務員あるいは地方公務員共済に来るわけですね。あるいは民間の会社にも行くでしょう。そのときに、要するに人間だけ来て積立金も一緒に来てくれないと受け入れる方の共済が困るわけなんです。ところが、先ほど来議論が出ておりますように、国鉄共済はどうしようもないような状況になっておる、こういうことなんですが、大蔵大臣としてこれはどういうふうに処理されようとお考えになっているか。ただ人間だけ来たんじゃ受け入れる方も困るわけでして、その辺はどういう見通しを持っておられますか。
  85. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) 確かに、いわば余剰人員という言葉をやめて、仮に公的部門移籍人員とでも申しますか、その方たちが一挙にどんと行くとしたら国鉄の積立金自身がそれは不足いたします。今考えておりますのは、いずれ積立金の移しかえは行わなければならぬ。そこで具体的にどの程度実際必要になってくるのか、それを見定めながら移換する。その時期を今度はどうするかということになりますと、理論的にはその移籍された瞬間に積立金を持っていかれるというのと、そこを将来おやめになって給付がそれから生じてくる、そのときに持っていくか。これはいずれにいたしましても検討課題であって、移換しなきゃならぬことだけは事実でございますので、したがって国鉄改革の関連で全体的な形でこれは検討していこうということでございますので、これは国家公務員の場合も、地方公務員の場合も同じでございます。
  86. 中野明

    ○中野明君 相手方に負担がかからないようなそういう措置責任を持ってやってもらいたい、これは特に要望しておきます。  時間が制限されておりますので、最後に総理にお尋ねをいたします。  年金一元化定年制についてはこれはもう車の両輪だと思います。ところが、受給開始年齢六十五歳という観点から見ますと、今日まで労使の努力と行政指導等もあって六〇%ぐらいまでが六十歳定年制が整備されているというふうに私ども聞いておりますが、しかし年金一元化ということになって、七十年までに、先ほども話がありますように、きちんとしていこうということになる。そうなりますと六十五で年金がもらえる、定年は六十。この五年間ですね。やめてから、退職共済年金ですね、退職共済年金だからやめたらすぐもらえるようになるのが理想の姿であるんですが、これは制度として非常に矛盾があると思うんです。総理として、将来、今すぐにというわけにはなかなか大変だと思いますけれども、将来にわたって、これは定年制延長ということになるんですか、それとも年金開始定年に合わせるというんですか、その辺の総理の基本的なお考えを示していただきたいと思います。
  87. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) サラリーマンに支給される年金は今回の改正法においても六十歳支給となっておるところであります。今後の高齢化社会展望するとき、雇用年金連携を図ることは御指摘のとおり極めて重要であると考えておりまして、この点については今後とも関係当局間で十分協議を進めてまいる所存でございます。実際問題としてインターバルができるということは、退職にしてみると仕事がほしい、そういう意味で仕事が優先すると思うんです。しかし仕事のない方も出てくる。その問題を御指摘だろうと思いますが、政府としては長寿社会のための閣僚会議で研究を進めましてできるだけ仕事を保障するように我々としては努力してみたい。しかし、それでも職のないという方のインターバルをどうするか、こういう問題については御指摘の点についてよく検討を加えていきたいと思っております。
  88. 太田淳夫

    ○太田淳夫君 せっかく総理が御出席をされましたので、最初に総理にちょっとお尋ねをしたいんです。  サミットを前にしまして、あと残る主要国はカナダ。このカナダを訪問される予定が一月と聞いておりましたけれども、日程は決定されておるんでございますか。
  89. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) まだ決めておりません。なぜ新聞やテレビにああいうのが出たのか不思議に思っておるところであります。
  90. 太田淳夫

    ○太田淳夫君 まだ決めてないということでございますけれども、しかし一月というともう来月でございますし、相手国のいろんな事情等もあるんでございますから、もう陰では決まっているんじゃないですか。国会が終わった途端にぽんと発表されるようなことはないんでしょうね。
  91. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) なかなか仕事も山積していますし、政局も微妙なところでもありますから、様子をじっと見ているというのが現状であります。
  92. 太田淳夫

    ○太田淳夫君 それから政府税制調査会が十七日に六十一年度税制改正を答申されたわけでございますけれども、それを見ますと、総理の施政方針にありましたと思いますが、大幅な所得税減税は見送られてしまったということでございます。その他いろんな内需拡大に必要な点が先送りされているんじゃないかと思うのです。これは六十二年以降予定をされている大型間接税導入と所得税減税の抱き合わせを次の税制改正でもくろんでいるんじゃないか、こう言わざるを得ないわけでございます。ことしに続きます来年度の所得税減税ということは、今内需拡大が迫られております。そういう実情を無視することでは私は納得ができないんです。その他今いろんなことが年金審議の中で出てまいりましたが、国民の皆様方の生活そのものも実質的な増税とか、あるいは社会保険料の増額であるとか、あるいは所得の伸び悩みで、これからますます来年はつらい生活を送らざるを得なくなってくるんじゃないかと思うのです。私たちの党も、国民生活を守るためと内需拡大を図るために二兆円の減税ということを政府に申し入れをしておりますけれども、総理としてはどのようにお考えになりますか。
  93. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 思い切った減税を断行したいと考えておりまして、来年度はその案を着実につくっていただき、また政府としてもつくっていきたい、そのように考えております。  この間の政府税調の答申は、六十一年度予算に関する部分答申でありますけれども、前から申し上げておりますように、シャウプ税制以来の税の不公正やゆがみを是正し、重税感から国民の皆様をお救いするということは政治の大事な仕事に今なっておる、そう心得まして思い切った減税を行いたい。そういう意味で六十一年度予算に関する税調の仕事が終わったら政府税調は引き続いて抜本改正、抜本的減税に向かって作業を開始する予定でございまして、そして来年の春ごろまでにまず減税に関する所見を聞きたい、そう思っておるところであります。
  94. 太田淳夫

    ○太田淳夫君 もう一点、法案と離れてお聞きしたいんです。  総理はきのうの経済審議会総会で特に発言を求められて、「金利低下を日米の協調により実現する時期がきている。金利下げはわが国の内需拡大に大切」、こういうふうに強調されたと新聞に報道されておりますけれども、この点について日銀総裁は、慎重な対処が必要である、このように述べられています。総理が日米協調で金利を下げる時期と判断した理由と、それを行ったとき今までせっかく努力し実現されてきましたドル高是正の政策が崩れることになりはしないか、こういう心配をするんですが、その点はどうでしょうか。
  95. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 日米欧協調して一斉にえいっとやればそういう心配はなくなるわけです。格差が出てくると今のような乱調が出てくるわけであります。先般G5によりまして、先進国の大蔵大臣、我が国では竹下大蔵大臣の主導によりましてああいうような為替問題に関する画期的措置がある程度成功したはずであります。  次の課題は何かと考えてみますと、一つには、各国ともみんな内需振興をやらなきゃならぬというときであり、かつまた南米やそのほかの債務国の債務問題というものが国際的に大問題でありまして、これを解決する一番早い方法金利を下げてあげることであります。そういう点も考えまして、国際的協調の仕事として我々はこれを大きな課題として次に受け取って進めていきたい、そう思っておるんです。  日銀総裁は現場屋でありまして実務者でもありますから、それをすぐやれというような話とはもちろんとっていないと思いますが、立場も違うとは思います。しかし両方が、あるいは三極が一緒にやるというような場合には為替に対して悪影響を及ぼすようなことはない、そう思っておるわけであります。
  96. 太田淳夫

    ○太田淳夫君 私たち考えてみますと、総理の発言をされました背景には、六十一年度経済財政運営の最大の課題であります内需拡大施策が、総理の言うなれば節約一本やりの財政運営によって見るべき施策がなく効果が上げられない、こういうことがもう既にはっきりと予想されますので、そのために内需拡大を金融政策、日銀に押しつけようとされているんじゃないかと、こう思うのですが、その点はどうですか。
  97. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 世界的に見ますと、物価は漸次低落の傾向に進んでおります。石油ごときは非常に下がりつつあるわけであります。世界的にもインフレは終えんしつつありまして、物価は低落の方向へ進んでおる。日本もそういう状況で健全な経済情勢をその点については示しておる。金利も物の値段の一つでありまして、一般の物価が下がれば金の値も下がっていいはずなのであります。そういう意味において、一般物価は下がったけれども金利だけそのまま高いというのは、これは理屈からいっても変な話でありまして、金利も一種の物の値段であると、そう考えて物価が下がれば金利も下がるべきである、これは筋ではないかと思うんです。
  98. 太田淳夫

    ○太田淳夫君 議論は後にしまして、一面から考えますと、総理はしばしば解散権というのは総理の専権であると、こうおっしゃっていますね、きょうも何かおっしゃったようですが。この公定歩合の操作ということは、これは中央銀行のまさに専権ではないかと私は思うんです。これは重要な金融政策のキーになるわけでございますから、総理といえども中央銀行の中立性あるいは金融政策の中立性を尊重する、そういう立場であるべきじゃないかと思うんです。そういう点から見ますと、総理のきのうの発言は多少勇み足ではないかと、このように思いますが、その点はどうでしょうか。
  99. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 財政金融政策というものは、内閣や総理大臣が受け持つ大きな仕事でありまして、個々の公定歩合を上げたり下げたりするという現場の業務というものは日銀総裁の専権事項でありますが、中長期的な財政政策というものは総理大臣としては最も大事な仕事であり、世界経済や国内経済の前途に対するある程度考え方も明らかにしておくということは責任であると思いまして、決して私は自分の管轄を逸脱したことをやっているとは思わない。むしろそういうことは積極的にやるべきである、またそういう方向に、いい方向へ誘導すべきである、そう思いましたから経済審議会という大事なそういうふさわしい場所で申し上げた次第なのであります。
  100. 太田淳夫

    ○太田淳夫君 先ほど我が党の委員の方から、婦人の年金権の確立の問題あるいは一元化のプロセスの問題、国鉄共済年金の救済の問題についてそれぞれ質疑がございましたけれども、私も国鉄共済年金の救済の問題につきましては委員会でも質問いたしてまいりました。これから公的年金一元化に重大な影響を及ぼすものですが、衆議院の統一見解を出された中でも、六十五年度以降につきましてはなお書きになっているわけですね。委員会でも質問して、大蔵省の方からこの六十五年度以降の対応についても六十四年度までの問題と同時に、ほとんど同時に並行してこの問題についての検討を始めるべきだという見解も承ったわけですが、総理としても国鉄のこの問題については今まで熱心に取り組んでおみえになりましたのですから、そういうお考えでいらっしゃいますね。
  101. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) これは国会の場で官房長官が正式に御答弁申し上げましたように、六十一年度の仕事、六十五年度以降の仕事、そういう問題についてはっきり政府としての考えを申し上げているとおりでございます。六十五年度以降の問題につきましては、非常に総合的に、また四年に至るまでの経過等も踏まえまして検討する必要もありますので、今詳細に内容まで申し上げるという、そこまでは至っていないわけであります。
  102. 太田淳夫

    ○太田淳夫君 ですから、そこはだんだんあいまいになってくる点でございます。申し上げましたように審議する機関としてはどのような機関がつくられるか検討されると思いますが、一元化に対するいろんな問題が国鉄救済の問題に絡んできているのじゃないかと思うのですね、実情申し上げますと。ですから、この問題については国鉄共済を救済するのだというような気持ちだけじゃなくて、全年金をどのように一元化するかというスケジュールの中に組み込まれてくるものですから、これは六十四年度までの問題もやるけれども、同時にスタートして六十五年度以降についても当然政府として、総理としても強く進めるべきじゃないか。もう一度答弁いただきたいと思います。
  103. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 七十年に一元化を目標として進むという方針は決まっておるわけであります。その線に向かって前進する考えでおります。  ただ、しかし共済や年金関係の中にはそういう重症を負っておる者と一緒に行くのはいやだという声がなきにしもあらずであります。我々は連帯とか協調とかという面もぜひお考えをお願いしたいとも考えておりますが、さまざまな声もあるわけでありまして、そういう方々の声もまたよく聞く必要もあります。そういう意味におきまして、よく慎重に検討してまいりたいと申し上げておるのであります。
  104. 太田淳夫

    ○太田淳夫君 それは当然であります。そういう声がいろいろあるからこそ、それだけにまたいろんなスケジュールを進める上において障壁が多いんじゃないかと思うんです。ですから、早くスタートを切らなければそのあなたのおっしゃるようなスケジュールまでに間に合わなくなってしまうところが起きるんじゃないか、これが私の申し上げたいところです。  次に、国民の負担率の問題についてお聞きいたします。  今回の一連の年金改革を見ますと、将来における保険料率あるいは掛金率というのは急上昇することになっているんじゃないかと思うんですが、このほか医療など社会保障費あるいは租税負担を合わせますと、国民所得に対する国民の負担というのは相当なものになってくると思うんです。そこで将来の社会保障負担と租税負担を合わせた国民負担率の見通しをどのように政府としては考え、またその限界ラインをどの辺に置いているんでしょうか。
  105. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) 租税負担率、社会保障負担率、この目標値につきましては、これは究極的には政府部門、それから民間部門に資源をどう配分するのが適当かという問題と裏腹になるわけであります。国民が必要とする公共支出の水準に従って対応して定まっていく、こういう性格であります。  そこで、このようにあるべき公共支出の水準と、それを裏づける国民負担の水準は、結局、今日までのところ、年々の予算編成過程において国民の選択を通じて明らかにされていくべきものであって、これをあらかじめ固定的に考えることは適当でないということが一つございます。  そこで、租税負担率と社会保障負担率を合わせた全体としての国民負担率という水準の中長期的なあり方につきましては、「一九八〇年代経済社会展望指針」、それから臨調最終答申、そして本年一月に「財政改革を進めるに当たっての基本的考え方」で、「今後、高齢化社会の進展等により、現状よりは上昇することとならざるを得ないが、徹底的な制度改革の推進により、ヨーロッパ諸国の水準よりはかなり低い水準にとどめるよう努める。」、こういうことが決まっておるわけであります。そこでその水準とは四十五か四十か、いろんな議論がございますが、それは国民のコンセンサスが那辺にあるかということを見定めながら、早急に飛びついて決めるべきものではない、じっくり国会の問答なんかを承りながら相互のコンセンサスを得ていくべき課題だというふうに考えております。
  106. 太田淳夫

    ○太田淳夫君 最後になりましたが、先ほども同僚の委員から公経済としての国庫負担のカットの問題が提示されました。私もこの問題につきましては、早く返還すべきである、このように考えております。これは六十一年以降返還ができないとなりますと、今後の年金財政に影響を及ぼすことになるんじゃないか。そして年金の信頼性が揺らいでいくんじゃないか。あるいは新制度への保険料率等に将来負担増が出てくるのじゃないか、こういう心配をするんですが、その点最後に御回答をいただきたいと思います。
  107. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) いわゆる国庫の繰り入れを繰り延べさせていただいておる、借りておるということにもなりますが、その問題につきましては、とにかく当面の給付にいささかも支障を来してはならぬ、支障を来さないということだから繰り延べをした、こうとも言えるわけでございますので、これは何たびが御指摘があっておりますように、財政改革を進めでできるだけ早い機会にこの返済計画でもって今度は繰り戻しをすべきものである。将来にわたっての年金財政に影響があっては断じてならない、これが基本的な考え方であります。
  108. 神谷信之助

    神谷信之助君 まず国鉄共済の赤字の問題でお伺いをしたいと思います。  物の順序としましてまず国鉄当局にお聞きをしますが、赤字の原因はどのように考えておられますか。
  109. 小玉俊一

    説明員(小玉俊一君) 端的に申し上げますと、年金をいただく受給者と掛金を払う職員の数の比率が急速に悪化したということだと思います。つまり年金をいただく受給者の方から申し上げますと、戦中戦後に大量に職員を採用したわけでありますが、それがここのところ退職する年齢になりまして、大量退職時代というべきときを迎えておるというのが一つでございます。  一方、掛金を払う職員の方から申し上げますと、合理化を非常に進めておりまして、特にこれから国鉄経営改革というのを進めますと、職員数が急激に減ってくるということで、その比率が十年前には大体二人で一人の年金受給者を抱えればよかったものがむしろ逆転して、職員一人が年金受給者を二人抱えなければいけないというようになった点に求められると思います。
  110. 神谷信之助

    神谷信之助君 総理、今お聞きのようなことなんですが、だから、そういう国鉄共済の赤字を生む原因の責任は、今聞いてみますと、国鉄退職なさった方も、あるいは現に働いておられる方にもないということは明らかだと思うんです。そういう点で私は国の責任というのが非常に大きいのではないかと思いますが、総理はどういうようにお考えですか。
  111. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 時代の流れと申しますか、栄枯盛衰は世の流れと申しますか、オリンピックの昭和三十九年までは黒字を生んでおったんですけれども、その後モータリゼーションが急激に進んだりして、クロネコヤマトというものまで出てくる。これで国鉄はとても太刀打ちできないような情勢も出てきた。そういう時の流れもあったと思います。
  112. 神谷信之助

    神谷信之助君 だから、時の流れであって政府責任はない、感じておられない、そういうことですか。
  113. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) そういう時の流れに対応する処置を適切にやれなかったというのに国鉄責任もあるし、政府の監督責任もあると思います。
  114. 神谷信之助

    神谷信之助君 まず戦中戦後の国鉄職員の大量採用、これはまさに中国大陸への侵略政策といいますか、その結果といいますか、その必要に迫まられて行われたものでしょう。まさにその当時の政府責任というものは非常に大きいものがあるでしょう。  それから対応が国鉄は不十分だというのは、国鉄が自由に独自に判断してできる問題ではなしに、政府の承認なしには何一つできない国鉄状況だったでしょう。この点でも政府責任は大きいんじゃありませんか。
  115. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 戦争が終わって帰ってきて、各省が収容したというのは国鉄だけでなくて、専売でも同じであり、あるいは各省庁でも似たようなものがあるわけであります。しかし国鉄はかなり数が多かったという点もあるように思います。しかしいろいろ総合的に考えてみますと、国鉄の責めに帰すべきものもあり、帰すべからざるものもある、そういうふうに考えられます。
  116. 神谷信之助

    神谷信之助君 国鉄の責めに帰すべきものもあり、帰すべきでないものもあると。政府の方はどうなんですかと聞いているんです。
  117. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 政府側は監督責任もありますし、運賃値上げがなかなか通らなかったという政治力の薄弱であったという点もあります。
  118. 神谷信之助

    神谷信之助君 だから、そういう点で私は政府責任が大きいと思うんです。ところが、先ほどからも同僚議員から出ておりますように、制服を着、そしてあごひもをかけ、軍手をつけて、特に戦争中に。大蔵大臣がさっき言っていた話ですね。私もそのことを知っていますけれども、まさに戦争中は準軍隊、軍隊に準ずるようなそういう任務に敢然とつくというような、そういう苦労をしてきた人が、今逆にその人自身に責任はないのに年金がカットされる、あるいは現職の組合員が特別の負担をさせられる。これがずっと今広がってきているわけでしょう。それに対して一体政府の方はどういうような措置をなさってきたのか、あるいはこれからなさろうとするのか、この辺はどういうようにお考えですか。
  119. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) それこそ藤波内閣官房長官から統一見解をお示ししましたように、それは社会保険制度でございますから、自助努力、その自助努力の中には資産処分等も含まれるでありましょう。そして政府支出、すなわち一般会計から支出ということも、それは国民連帯とすれば当然あり得ることでございますが、それはそれなりの正当性が国会の場等でも十分御認識いただけるような形のものでないといかぬ。それらを総合してこれから支障がないように少なくとも対応していこうという考え方であります。
  120. 神谷信之助

    神谷信之助君 社会保険制度というようにおっしゃるんですけれども、社会保険の方式は取り入れてやっていますよ。しかし公的年金制度というのは本来そういうものじゃないんじゃないのかというように私は思うんですよ。公的年金制度というのは、労働者の労働力の喪失とか、あるいは減退という事態が起こる、例えば障害とか事故に遭うとか、あるいは高齢になる、老齢化する、そういう事態になった場合に、およそ一人たりとも最低生活以下の状態に放置をされてはいけない、そういう崇高な社会正義の理念に基づく国家責任による公的年金制度というそういう側面と、それからもう一つは、従来の生活水準が、そういう事故なり何なりによって急激に後退するということではなしに、だれも従来の生活を維持したいという人間の本質的な願望というものがあり、これにこたえるという側面。こういう二つの側面から公的年金制度として国家が管掌する年金制度というものを法制化してつくっているわけでしょう。こういうように思うんですけれども、この辺の総理見解はいかがですか。
  121. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 物的待遇の問題というものはできるだけ現状は維持してあげる、これが為政者としての、我々としての努力目標でなければならない、そういうような考えに立って努力してまいりたいと思います。
  122. 神谷信之助

    神谷信之助君 だから、今までの生活水準というのを維持したいという欲望、望願、これにこたえるというその側面はわかりますよ。私の言っているのは、もう一つ、そういう事故に遭った場合といいますか、老齢あるいは高齢になりその労働力が十分に機能できない状態になった場合、それを少なくとも最低生活以下にしてはならぬという、そういう国家責任といいますか、崇高な社会正義といいますか、それに基づく国家責任、こういう側面があるということはお認めになりますか。
  123. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 病気やあるいは事故等にお遭いになって不幸な立場におなりになった方につきましても、政府としては、それはいろいろな社会的な仕組みがございますから、その仕組みの趣旨に沿って、そのラインに乗るようにできるだけ努力していくということは正しいと思います。
  124. 神谷信之助

    神谷信之助君 総理は、さっきの国鉄共済の問題でもそうですが、政府責任なり国の責任というのをできるだけはっきり、きっぱりと言うのを避けよう避けようとされるんですね。きっぱり言えば言うほど金を持たなきゃいかぬという気になっているのか知らぬけれども、そういう感じがしますよ。しかし私は、この考え方というのは大事な公的年金制度についての理念だというように思うんです。したがって我が党は、この問題について最低保障年金制度というものの確立を提案しております。これは六十歳以上のすべての国民に月額五万円を保障して、夫婦で十万円、単身者は七万円、その財源は国と企業とで負担する。その上に厚生年金とか国民年金とか共済年金を上積みをする。その水準はそれまでの賃金の七割以上を保障する。それからその財源は労使が三対七の負担でそれをやっていく。こういうことを提案しておるわけです。ところが、今回、厚年国民年金の前の改悪に続いて、今度行われる共済年金の改悪というものを見ますと、まさに昭和九十年で厚生年金国民年金合わせて国庫負担は二兆三千億円減る、四共済では三千三百億円減る、合計約二兆六千三百億円減るということになりますよ。だから、政府のおやりになっている公的年金制度のやり方というもの、今度の改革というのは、まさに国の負担、国庫負担をどうやって減らすか、それに基づいてつくられているというものであって、だから、政治は本来国民生活の安定を基本にして進めなきゃならぬというこの根本理念からいっても私は外れている提案だというように思うんですが、その点はどういうようにお考えですか、総理
  125. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) その点は政府委員から答弁していただきたいと思いますが、それは年全体系全般を考えまして、もしこのまま推移していった場合には、これは負担金も相当大きくなりますし、国家の財政負担というものも大きくなる。その場合の負担に国民の皆さんが耐えられるであろうか。そういう考慮もし、また制度自体の安定性、長期持続性というものも考えて、そして一面においては負担増もできるだけ抑制する。そのかわり国の方も多少は節減もできる。そのかわり今度は給付の方もそれほど大きくぐっと伸びるということはないが、モデレートなもので我慢していただく。そういうような全般を考えて、まあまあこれが大体公平な線だな、そして長く続けてやれるものだなというラインを考えてやった妥当な線であると考えております。
  126. 神谷信之助

    神谷信之助君 これは今まで委員会でも私も明らかにしてきたんですけれども、結局、共済の場合ですと、公的負担が今言ったように昭和九十年には三千三百億円減る、それを減らすためには、逆に今の給付水準を維持したら、労使折半ですから労働者の負担が耐えられなくなる、だから給付をダウンさせる。だから、今まで年金をもらえるし来年またスライドで上がるだろうと思っている人はストップになるわけでしょう、既裁定者は。オーバーしている人は全部ストップになる。平均三年、長い人で五年ぐらいストップになると、こういう状態が起こるわけだ。しかしその公的負担をさらにふやし、それから労使の負担を半々じゃなしに——もう既に民間ではぐっと変わってきていますよ。短期もありますから、短期と長期あわせるとややこしいことになりますけれども、いずれにしても短期の方の関係ですと、もう大体五十何%と四十何%の負担に大体平均的にはなってきているでしょう。いわゆる事業主負担がずっと大きくなっている。それから年金の方でいきますと、もうほとんど九〇%余りが全額事業主負担という状況も出てきていますから、だからそいう負担の割合を考えれば、結局どこが問題がいったら、公的負担をいかに減らすか、そこに主眼を置いたのが今回の改悪だということになる、全体として言いますとね、将来、負担と給付の適正化とおっしゃるけれども、給付の現状を仮に維持したとしても、労使の負担の割合を考える、あるいは公的負担をふやす、こういうことになれば何も負担に耐えられないという状態は起こらない。だから詭弁だというように私は思いますよ。いかがですか。
  127. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 新聞でごらんのように、社会保障制度の本尊であったいわゆるヒバリッジの社会保障制度を戦後画期的につくった英国においてすらも、御存じのように給付の削減という方向に力が最近入っておりまして、今までやってきた制度の相当大きな改革をやっておるわけであります。名だたる英国においてすらしかりである。日本の場合は、財政の状況がこういう状況でもあり、しかも長期的な安定を持続的にやっていくという面から、大体公平で、この程度ならば皆さんが我慢、納得していただけるという公平を一番考えたラインを中心に案がつくられているのでありまして、日本が極楽浄土であるならば好きなことが言えると思いますけれども、現にこういう財政状況で政治をやり、社会が動いているというその仕組みというものを考えてみると、それは何でも企業に負担させろ、国家に負担させると言っていればこんな気楽なことはありませんけれども、実際、じゃ現実の政治をつかさどってみると、共産党の言うようなことは言ってはおれないのであります。
  128. 神谷信之助

    神谷信之助君 まさにそれは総理考え。憲法で禁止されている戦力を自衛隊という名前に変えて、そしてどんどんどんどん軍事費を一方ではふやすんでしょう。いかに財政が赤字だといってもそれだけはふやすんですからね。来年度予算でもふやす、ほかは切っても。それから我々何遍も指摘している大企業のための奉仕のそういう予算の使い方、これはちっとも変わらない。ますますそれは進めている、そういう状況でしょう。  それから、さらに申し上げるならば、自分の出した掛金あるいは自分のために負担している自治体の出している負担分をオーバーしても取り戻すこともできない、掛け損になるという状態が生まれてくると、これは企業年金やあるいは個人年金、こっちの方が得だということになってきて、公的年金制度自身が崩壊せざるを得ない。そういう事態を招くその第一歩を今度やろうとしているんだというように私は思うんです。ですからこの点では、総理がどのようにおっしゃろうとも、これは大変な問題だというように思います。  イギリスの例をおっしゃるけれども、だからそういう悪い例に見習うんじゃなしに、そうではなしに、我々がこれからどうやっていくかということを我々は提案している。極楽の世界を死んでから我々夢見たってだめなんで、私は生きているうちにつくりたい、こう思っています。  以上で時間が来ましたので終わります。
  129. 井上計

    井上計君 限られた時間でありますから、私の意見を交えまして総理のまず御所見を承りたいと、かように考えます。  政治の最終最大の目的は、平和で健康で、そうして自由な、さらにより高度の福祉社会の実現にあることは、今さら論ずるまでもありません。そのためには、政治の目的は、国の安全保障、産業経済の発展、財政基盤の安定、正しい教育の確立、あるいは治安の確立、あるいは良好な環境の保全、国民を災害から守る国土保全、そのほかにもいろいろあるわけでありますけれども、それらに向かって今後一層最善の努力を払うべきは、これはもう当然でありましょう。同時にまた言われておりますような長寿社会が実現いたしまして、まじめに一生懸命働いてきた方が第一線から勇退した後の第二の人生、これをいかに豊かに過ごしていくかということが高度社会実現の絶対な必要条件であろうと、このように考えます。  人生八十年時代になりまして、六十歳あるいは六十五歳で第一線の職場を終えた人たちの第二の人生が、いわば老後社会、これが二十年あるいは二十年以上に現在なっており、また今後その老後社会がさらに延びるわけでありますから、これからの政治の最重要課題としては、長寿社会政策、例えて言うと私はこのような表現をしたいと思いますが、これをもっと第一義的に最重要課題として掲げていく必要があると、このように考えるわけであります。  国民のすべてが願望しておりますのは、老後の幸せ、これを求めておるわけであります。老後の幸せとは、私なりの考えでありますけれども、他人に迷惑をかけないような健全な心身、子供や孫たちと遠慮なく生活できるような円満な家庭、年をとってはいても社会からまだまだ必要だとされており、また社会に奉仕できるというふうな気力と意欲、これらのものが絶対必要であろうと思います。さらに、それに加えて経済的基盤、以上四つの条件を満たさなければ本当の老後の幸せはあり得ないと、こう考えるわけであります。私は従来から、健康、家庭、気力、そうして経済、これを四Kの条件と、こう言っておるわけでありますが、しかしこの条件を満たすということは容易なことではもちろんありません。本人の努力、あるいは家族や職場、その他周囲の人たちの協力が絶対必要ではありますけれども、しかしこれだけでもまた実現が不可能でありまして、これらの条件を満たし、整えるためには、さらに一層政治の持つ役割といいますか、行政の責任、これらがさらに重要になってまいります。またそれらに頼らなければこの実現は不可能だと、このように考えます。  そこで、それらの点を意見として申し上げまして、今後、政治のあり方あるいは政治の役割等について総理はどのようにお考えになっておられますか、いわば総理の政治哲学とでも申しましょうか、まずこれをひとつお伺いをいたしたいと、こう思います。
  130. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 民主主義社会を堅持いたしまして、そして平和と福祉、生活のぬくみと申しますか、喜びと申しますか、そういうものが保障される。さらにもう一つ大事な点は、精神の自由という問題があると思います。サハロフ博士の例をまつまでもなく、世界じゅうが人権と自由という問題、精神の自由という問題については、人の国のことでも心配しているという状況でもあります。そういうようなことが満たされて、ああ生きていてよかったなと、晩年になって御老人の皆様方がそういう生きがいを感ずるような社会を形成していくというのが政治の目標ではないか。  もう一つは、そのときに生きていた、大事な仕事は、何のために生きていたかということを考えると、人間が全知全能の能力を発揮して文化を形成していった、子孫に残していったというところでありまして、政治権力というものは文化に奉仕するものであるという面もまた考えております。
  131. 井上計

    井上計君 総理の御所見を伺って全く同感でありますし、また大いに意を強ういたしました。  そこで、老後の経済設計の中心でありますが、先ほど申し上げましたように、四つの条件の重要な一つは何といっても経済的な基盤の確立であろう、こう思います。老後の経済設計の中でまたさらにその中心は何といっても公的年金であることは、これは当然であるわけであります。先般の通常国会で厚生年金あるいは国民年金法等々の改正が行われました。また現在審議しております各種の共済年金法の改正、これらは年金制度一元化へ向かっての一里塚、私はこのように理解しておるわけであります。  しかし同時にここで考えていかなくちゃいけないことは、現在、厚生あるいは国民年金は厚生省の所管であります。国公、公営企業は大蔵省、地公は自治省、私学は文部省、農林漁業は農水省、さらに恩給については総理府というふうに所管がばらばらであります。ばらばらに分かれておりますから、従来はいろいろな意味での矛盾やあるいは年金制度一元化が早くから叫ばれておりましたけれども、なかなかこのような抜本改正に踏み切れない大きな障害になっておったんではなかろうか、こう考えます。従来、表面化しておった問題点のほかにも、今後一元化に向かっての新しい状況の中で多くのまた矛盾や問題点が発生するであろう、このように考えるわけであります。  したがって、七十年の一元化を目指していくためにどうしても必要なことは、現在所管がばらばらになっておりますところの各種の年金等々をこの際一本にしていくということをぜひ考えるべきではなかろうか、こう思うわけであります。現在、年金担当大臣がおられます。しかし年金担当大臣の立場は、失礼でありますけれども、連絡あるいは調整的な程度であろう、こう考えますから、これは所管を一カ所に集中していく、そうしてそういうような矛盾だとかあるいは縦割り等々によって起きる障害、そのようなもの等を排除していくことを今から考えていく必要があるわけであります。さらにその上に、年金問題のほかに加えて、先ほど総理もお答えいただきましたけれども、今後の長寿社会についてのあり方という高度な政策も含めたような、例えて言うと福祉年金省とでもいいますか、そのような省庁を設立して、従来ばらばらなそのような年金政策あるいは年金財政、あるいはまたそのような政策等々を一元化していく、こういう機構改革をすべきではないか、こう考えるわけであります。これは今まで言われておりますような財政、歳出を節約するための行政改革という形での機構改革という、後ろ向きといいますか、消極的なものでなくて、二十一世紀に向かって、あるいは五十年後、百年後の日本の方向を目指す積極的な前向きな機構改革としてこういうことを考えるべきである、こう考えますけれども、この点について総理はどのようにお考えでありましょうか。
  132. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 井上さんのおっしゃることは、行革をやっている折からスクラップ・アンド・ビルドでそういうことは考えなさい、スクラップ・アンド・ビルドを前提にしたお話であるとしますれば、これは私たちも傾聴しなければならぬ御議論であると思います。これから大統合に向けて進む上についていろいろな問題が起きると思います。おっしゃるように、具体的にどういうふうにこの大統合を内閣全体として適切に進めていくか、そのやり方についてはよく検討してみたいと思います。
  133. 井上計

    井上計君 もちろん私はスクラップ・アンド・ビルド方式で考えるべきだということでありました。現在の機構をそのままにして新しく屋上屋を重ねるようなそのようなものの設立ということじゃないわけでありますから、十分ひとつ政府として今後とも御検討をいただきたい、こう考えるわけであります。  そこで厚生大臣に伺います。今、私が総理に提言し、総理のお答えをいただきましたけれども、このような年金の行政の一元化年金財政の一元化、さらには長寿社会政策一元化等々について厚生大臣はどうお考えでありますか、お伺いいたします。
  134. 増岡博之

    国務大臣増岡博之君) 総理のお答えになったとおりでございますけれども、今後の年金一つを取り上げてみましても、一元化をするということにつきましては、お考えのようなこともいろいろ頭に入れながらやっていかなくてはならないと思うわけでございます。何にしましても、この大事な社会保障の問題が有効に機能するようなそういう制度考えていかなくてはならないというふうに思います。
  135. 井上計

    井上計君 厚生大臣、もう一問お伺いをいたします。  先ほど来同僚議員からもいろいろと質問がありました。また委員会等におきましてもしばしば言われておることでありますが、何といっても今度の年金法の改正、また先般の厚生年金あるいは国民年金法の改正等からして、国民は新しい期待と同時にまた新しい大きな不安を持っておることは確かなんですね。だから、自分たちが一生懸命働いて、そうして保険料を払って、本当にもらえるのかどうかというふうな不安が事実あることは、これはもう間違いないんですね。ますますその不安がある意味では増幅しておる、こういうことも言えるかと思うんであります。だから、同僚議員からも御質問がありましたけれども、一元化に向かってのスケジュールあるいはビジョンというものをできるだけ早く発表して国民に安心してもらう、さらに新しい期待をしてもらうということが必要であろう、こう思います。もちろん二年、三年で長期的なビジョンあるいは具体的なスケジュールの確定的なものを発表するということは困難でおりましょうけれども、漸次改善していくというふうなことでもそういうスケジュールを早く発表すべきだと考えますが、改めて私からもその点をお伺いいたしたいと思います。担当大臣としてはこれらの点について現状ではどうお考えであるのか、あるいはまたいつごろある程度のそのような具体的なスケジュールあるいは将来ビジョン等についての構想が発表できるのか、またしようとされておるのか、それらの点についてお伺いをいたしたいと思います。
  136. 増岡博之

    国務大臣増岡博之君) 御指摘のような年金の将来に対して不安があるということではいけませんので、今回の改正におきましても、給付と負担の適正化ということでもってその不安の解消を図ろうという考え方でおるわけでございます。したがいまして、今回行いました基礎年金の導入によりまして基礎年金部分では一元化ができたわけでございますし、また給付と負担の両面におきましても大方の方向性は出てきたというふうに思うわけでございますが、しかしまだ各制度の間にいろいろ差異があることも事実でありまして、基礎年金のいわば上積みであります二階建て部分、あるいは負担の面でのこの整合性をこれから図っていかなければならないというふうに思うわけでございます。しかしその具体的な方法となりますと、制度そのものというものがそれぞれの関係者の利害関係に密着しておる問題でございまして、そのいろいろな意見国民的な合意を得るための政府内部での議論が必要であろうかと思いますので、今日ただいま具体的にお答え申し上げることはできかねますが、お説のように一日も早くそのようなことができますことを期待し、また努力しなけりゃならぬというふうに思っております。
  137. 井上計

    井上計君 最後に、もう一度総理に一つ要望しておきます。  総理は御就任以来、戦後政治の総決算ということを唱えて強力にいろいろと各政策を推進してこられましたことについては私は高く評価しております。この年金制度の抜本的な改正、さらに一元化の方向に向かっていくことも戦後政治の総決算の重要な一つであろう、こう考えるわけでありますから、今回の抜本改正によって——まあ抜本改正と言えるかどうかという面もありますけれども、これであとは七十年の一元化へ向かっての方向をいわばなだらかに歩めばいいんだということであってはならぬ、こう思います。七十年一元化というふうな目標を一応置いてはありますけれども、できれば早い方がいいわけでありますから、今後さらに積極的にこれらの点についてお進めをいただく。失礼でありますが、総理の任期が限られておりますから、これから三年も五年も総理大臣としておやりいただくというふうな意味ではありませんけれども、そういうお考えで今後とも御努力をいただきたい、こう考えますが、これについての御所見を承って終わりといたします。
  138. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 円滑に大きな一元化ができれば、それは理想でございますから、自民党内閣としては相受け相継いでその線で努力していくであろうと確信しております。
  139. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 私の総理への質問は三問ございます。時間の関係がありますので、私は一括してその三間を尋ねます。それに漏れなく総理はお答え願いたい。  まず、総理は、今国会の冒頭の所信表明の演説の中で、「国民生活における安心、安全、安定の確保こそ政府責任であり、政治の原点である」と強調しておられます。しかし今回の四つの共済年金制度の改正案を初めとする一連の年金制度改革社会保障制度の後退を招くものである。国民の老後に不安、安心どころか不安を与えるものではないのか。なぜならば、今回の改正は給付水準の引き下げを内容としておるということを思いますときに、一体どう結びつくものだろうかと思われてなりません。一方、総理は防衛力の整備については他の施策との調和を図りつつ行うと言いながら、実際には防衛予算のみを異常に突出させて福祉予算を切り詰めておられる。このようなことでは総理の説かれる「豊かで、安心、安全、安定が確保された国民生活の実現」に逆行するものではないかと思われるのでありますが、総理見解はいかがなものでしょうかというのが第一問であります。  次に、第二問は、総理は所信表明の中でこう述べておられます。「内外にわたる困難な時期に当たり、政治は、国民とともにあり、喜びも悲しみも分かち合い、ともに前進するものでなければならないと思います。政治の第一の仕事は、国民共通の政策目的を確立することであります。第二の仕事は、その目的実現のための方法や手段について、公正、民主的に、国民合意を形成することであります。」と述べておられる。このことはまことに結構なことであると思うわけですが、ところが、一方では国家秘密にかかわるスパイ行為等の防止に関する法律案のような国民権利を不当に抑圧するおそれのある悪法の成立を図っておられる。これはさきの総理のお言葉に照らすときに、羊頭を掲げて狗肉を売るものであると言わざるを得ません。この法案には、在野の法律専門家の団体である日本弁護士連合会を初め、新聞協会などの言論機関や広く国民各界各層の反対の声が上がっておりますことは重々御承知かと思います。そこで、総理が言われるように、民主的な国民合意の形成が政治の仕事であるならば、悪法案でありますこの法案は当然廃案とすべきではないでしょうかというわけですが、総理の率直な御見解を承りたいというのが二問。  次に三つ目、最後にお伺いいたしたいことは、防衛予算の突出ということと関連して日米関係を見ると、政府は、日米安保は定着している、さらに長期的に安定させるためには沖縄における米軍基地は必要であると言っておられます。そこで問題は、生命、財産、人権侵害の不安と危険はもろに沖縄県民に犠牲と差別の形で吹きだまりつつあります。総理は喜びも悲しみも分かち合うと述べておられるが、この現状をどのように受けとめておられるのであるか、率直に御見解を求めて私の質問を終わります。
  140. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) まず第一に、安心、安全、安定の国民生活の確保の問題でございますが、これにつきましては、政府は苦しい財政の中でもあらゆる努力をしまして、公平でしかも長期的、持続的安定を目指した福祉制度の維持、改革を目指して進んでおるところでございます。現在の情勢で見ましても、防衛費や社会福祉費の比率を見ますれば、六十年度当初予算等を見ますると、社会保障費は九兆五千七百億、文教科学費が四兆八千四百億、防衛費は三兆一千三百億、こういう状況でありまして、大体社会保障関係の約三分の一ぐらいが防衛費でありまして、この比率を見ますと、我が国の社会保障費に対する防衛費の比率というものは非常に防衛費が低いのであります。そして一%の枠を守ろう、そういうことで懸命の努力をしておる。先進工業国家においてこういう国はほかにはないのであります。  そういうような状況もぜひ御認識いただきまして、日本の今の政策自体が防衛に偏しているという考えは私はとらない、ほかの経費との調和を常に考えつつ行っておる。先般五カ年の防衛計画をつくるに際しましても、一%問題については、これは三木内閣の決定をできるだけ将来も守るように努力していくということも厳命しておるところであります。そういうような世界の工業国家の中でアメリカに次いでGNPにおいて第二位、ソ連も追い越したというくらいの膨大な経済大国である日本の防衛費というものを、予算あるいはGNPの比率において列国に比べてみれば著しくこれを低い水準にとどめておる。このことも御認識願いたいと思うのであります。しかし社会福祉については、憲法の精神にかんがみまして今後とも持続的、積極的に努力していく、特に老人とか身体障害者とか難病の方々とか、そういう方々に対する手当ては十分を期して今後とも努力してまいりたいと思っておるところでございます。  それから秘密保護法の問題につきましては、本院におきましても言明いたしておりますように、私は秘密保護は必要である、日本ぐらいスパイ天国はないのだ、これをそのまま放置することは独立国家の平和、安全を維持するためにもそれはとるところではない、したがって秘密保護は必要であると申し上げておるのです。しかし、我々が自民党として提案しました案については、国会の中の御論議あるいは社会の御批判等も十分よく耳を傾けて拝聴いたしまして、そして我々はその上で適切な判断をして処理いたしたいと思う、検討もいたしますということを本院におきまして言明いたしておるのであります。私は、そういうような点からは今日の各党及び世論の情勢等を見まして現行の提案した案は抜本的にこれを再検討し直して、そして国会に御審議していただこうと、そういうふうに考え、党も大体そういう方向に動いてきておる。しかしスパイを我々は許してはならない、国家の秘密は適切に守らなければならない、このことははっきり申し上げなければならないのであります。  沖縄の問題につきましては、沖縄の民生の問題等については我々も常に配慮しておかなければならぬと思っております。振興法がございますけれども、あの振興法の力によってかなり回復して水準は上がってきておりますが、本土と比べればまだ落差がございます。そういう点におきましては、我々は今後ともあらゆる部面におきましてよく検討していかなけりゃならぬと思います。  また、基地の問題等につきまして若干の不祥事件が米軍との間に起きたこともよく知っております。そのたびごとに米軍に対しては我々も注意喚起をいたしておりますが、日米安全保障条約を有効に機能していくためにも、沖縄の皆様方にはまことに恐縮でございますが、ぜひとも御理解をいただきまして御協力を今後ともいただきたいと思いますが、沖縄の現地の御要望に対しましては、我々としても適切に対処して、米国側に話すべきは話し、直すべきは直してもらうように努力してまいるつもりであります。
  141. 亀長友義

    委員長亀長友義君) 他に御発言もなければ、本連合審査会はこれにて終了いたします。  これにて散会します。    午後四時一分散会