○
国務大臣(加藤紘一君)
中期防衛力整備計画について御報告申し上げます。
政府は、去る九月十八日、国防会議及び閣議において昭和六十一年度から昭和六十五年度までを対象とする
中期防衛力整備計画を決定いたしました。以下、これについて御報告申し上げます。
政府は、総合的な安全保障政策を推進するとともに、
防衛力の整備に当たっては、従来から「国防の基本方針」(昭和三十二年五月二十日閣議決定)にのっとり、専守
防衛の理念を堅持して他国に脅威を与えるような軍事大国とならないとの立場を内外に明らかにしてきました。今後ともこの立場を堅持するとともに、文民統制を確保し、
防衛に関する
国会の決議を尊重し、そのときどきの経済財政事情に応じ、
防衛関係費と他の諸経費との調和を図りつつ、節度あり、かつ有効な
防衛力の整備を図るとの方針のもとに、この
中期防衛力整備計画を決定したものであります。
この
計画は、「
防衛計画の大綱」(昭和五十一年十月二十九日閣議決定)の基本的枠組みのもと、これに定める
防衛力の
水準の達成を図ることを目標とするものであり、作成に当たっては、次の点に留意しております。すなわち、国際軍事情勢及び諸外国の技術的
水準の動向を考慮し、これに対応し得る効率的な
防衛力の整備を図るため、陸上、海上及び航空自衛隊のそれぞれの各種
防衛機能について改めて精査し、資源の重点配分に努めること、さらに各自衛隊の有機的協力体制の促進、統合運用効果の発揮につき配慮することというものであります。
また、具体的事業の推進に当たっては、次の点を重視しております。すなわち、
要撃戦闘機、地対空誘導弾等の充実近代化による本土防空能力の向上に努めること
護衛艦、固定翼対潜哨戒機等の充実近代化による我が国周辺の海域における海上交通の安全確保能力の向上に努めること
我が国の地理的特性を踏まえ、師団の近代化・編成の多様化、洋上・水際撃破能力等の強化による着上陸侵攻対処能力の向上に努めること
正面と後方の均衡のとれた質の高い
防衛力の整備を図ること。特に、情報・偵察・指揮通信能力、継戦能力、即応態勢及び抗堪性の向上並びに技術研究開発の推進を重視するとともに、教育訓練体制等の充実による練度向上及び隊員の
生活環境の
改善に配慮すること
防衛力の整備、運用の両面にわたる効率化、合理化の徹底を図ることというものであります。
このような方針のもとに
計画した具体的整備内容は、お手元に配付した閣議決定資料にあるとおりであります。この
計画の完成時の勢力を見ますと、全体として、「
防衛計画の大綱」に定める
防衛力の
水準の達成が図られ、我が国の
防衛能力は、現状と比較して大きく向上するものと期待できる状況にあります。
この
計画の実施に必要な
防衛関係費の総額の
限度は、昭和六十年度価格でおおむね十八兆四千億円
程度をめどとすることが決定されております。
また、各年度ごとの予算編成に際しては、一層の効率化、合理化に努め、極力経費を抑制するよう努力するとともに、そのときどきの経済財政事情等を勘案し、国の他の諸施策との調和を図りつつ、これを決定することとされております。
なお、
政府としては、
計画期間中において、「当面の
防衛力整備について」(昭和五十一年十一月五日閣議決定)の
趣旨を尊重するよう努めてまいる所存であります。
また、この
計画については、中期的な
防衛力整備を効率的に実施し得るよう随時必要に応じて
見直しを行い、三年後には、その
時点における経済財政事情、国際情勢、技術的
水準の動向等を踏まえ、新たに作成し直すことについて
検討することといたしております。
中期防衛力整備計画については以上のとおりでありますが、このたび、この
計画の決定を見たことは、今後の我が国の
防衛力整備を進める上で大きな意味を持つものと考えております。
第一は、これまで、
防衛に関する中期
計画が、
防衛庁の内部資料にとどまっておりましたが、今回、
政府レベルのものとして新たに策定されたことであります。これは、
政府がその責任において、我が国の
防衛力整備の内容と
防衛関係経費について中期的見通しを明らかにしたことであり、シビリアンコントロールの充実を図るという立場からも、また我が国
防衛に関する内外の
理解を促進することからも有意義であると考えております。
第二は、今回の
計画は、昭和五十一年に策定された「
防衛計画の大綱」に定める
防衛力の
水準の達成を図ることを目標としたものであることであります。御承知のとおり、「大綱」は、我が国が平時から保有すべき
防衛力の
水準を定めたものであり、この
計画によって、その
水準達成に向けての中期的な見通しを得たことは、我が国の平和と安全を確保する上で意義深いものがあります。
これからの
課題は、このたび決定されたこの
計画を、今後いかに実施していくかということであります。今後とも各年度の予算編成においては、さらに創意工夫を凝らし、最小限の経費で質の高い
防衛力の建設を目指す努力を傾注してまいりたいと考えております。
以上でございます。