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神谷信之助君 私は、日本共産党を代表して、政府提出の
地方公務員等共済組合法の一部を改正する
法律案並びに自由民主党・自由国民
会議、民社党・国民連合共同提出の修正案に反対の討論を行います。
今回の
地方公務員共済年金制度の改正は、
国民年金、
厚生年金に続く
公的年金制度の大改悪の総仕上げとなるものであります。この一連の改悪の結果、昭和九十年度における国庫負担、自治体負担は、
国民年金、
厚生年金では五十九年度価格で二兆三千億円、国公、地公など四
共済年金では同じく三千三百億円、合わせて二兆六千三百億円も削減されることに端的に明らかなように、国庫負担の削減が最大のねらいであります。このため、
年金の給付水準は大幅に引き下げられる一方、組合員の負担となる
掛金は二・四七倍にも引き上げられ、その期待権、既得権を踏みにじるのであります。これは、まさに軍事費拡大、国民生活犠牲の中曽根臨調行革政治の反国民性を証明するものにほかなりません。しかも、このような一連の大改悪案の
審議の
状況は前例のない短時間の
審議が行われたにすぎず、到底
審議が十分尽くされたものとは言いがたいのであります。したがって、立法府の
責任を果たす上からも、本
法案は
審議未了、廃案とすべきことをまず冒頭に強く主張するものであります。
以下、本改正案に対する反対理由を具体的に述べます。
反対理由の第一は、給付水準の大幅な切り下げであります。
自治省モデルでも妻が専業主婦の場合一五%、夫婦共働きの場合約四〇%も給付水準が引き下げられ、また、私が当
委員会で明らかにした試算では、高卒で二十歳の
職員が四十年間
掛金を掛け続けた場合、八十歳まで生存したとしても独身者では三千二百九万円、妻帯者では千七百万円ももらわずじまいになるという結果になるのであります。これは国庫負担どころか、自分の
掛金と自分のために使用者が負担した負担分さえ保障されない極めて低い給付水準であることを示すものにほかなりません。
反対理由の第二は、保険料の大幅な引き上げによる負担の増大であります。現行の
掛金は組合員の
給与の六・九%でありますが、地公
共済組合連合会の試算によれば、これが昭和九十五年度には
給与の一七・二五%と実に二・四七倍にもなるのであります。このため、昨年の
財源率再計算によって
掛金は現行の六・九%に引き上げたばかりであるにもかかわらず、今後毎年のように
掛金の引き上げが行われるおそれがあることは政府も否定できないのであります。
反対理由の第三は、冒頭に述べた国庫負担、自治体負担の大幅な削減であります。そもそも
共済年金制度を含む
公的年金制度は、国または
地方公共団体がその
責任に応じて費用を負担することが原則であります。しかるに、今回の改正案ではこの公費負担分は
基礎年金の三分の一に限られることにより、現行の一五・八五%から一一%にまで引き下げられるのであります。当
委員会においても毎年のごとく公費負担分を
厚生年金並みの二〇%に引き上げるよう決議されてきたにもかかわらず、これに逆行し、昭和九十年には地公
共済の
公的負担が政府の計算によっても千八百億円も削減されるような今回の改正は断じて認められるものではありません。
反対理由の第四は、
年金全体の約八%にしかすぎないわずかな
職域年金の上乗せによって、
共済年金全体を
地方公務員制度の一環として公務報償的なものに
性格づけようとしていることであります。この
職域年金部分は報酬比例
部分に対しては約二〇%でありますが、厚生省によれば
厚生年金に上乗せされる企業
年金は報酬比例の約三一%になるとされており、これと比較しても
公務員の数々の制約の代償というには、全くその名にも値しないほど低いものと言わざるを得ません。しかも、この
職域年金部分は労使折半の負担であるにもかかわらず、
懲戒処分あるいは禁固以上の刑を受けた受給権者に対して、労働者負担分まで含めて
支給停止されることになっているのは極めて不当な
措置であり、労働運動に対する不当処分が今なお発生していることに照らしても断じて容認することはできません。
反対理由の第五は、いわゆる既得権、期待権が多くの箇所で侵害されていることであります。例えば、改正案では既
裁定年金までを
通年方式によって
年金額を算定し直し、この算定額が従来の
方式による計算額になるまで物価スライドを停止し、凍結することとしています。また、
施行日までに勤続二十年を経て受給資格を持つ現役の
職員も、給付水準の引き下げにより今後の
掛金は掛け捨て同然になるのであります。このような既得権、期待権の侵害は
公的年金制度に対する国民の信頼を損ない、その崩壊の道を歩むものであり、断じて許されるものではありません。
以上、改正案に対する反対理由を述べてまいりましたが、最後に、政府は口を開けば
高齢化社会の到来により現役の負担が耐えられなくなる、そのため
年金財政の長期安定と、給付と負担の適正化が必要であると言いますが、私は国庫負担の大幅な増額と労使の負担割合を三対七にするならばこれは根本的に解決する問題であると
考えます。また、修正案も政府原案を
基本的に認めた上でのごく一部の修正であり、反対であります。
なお、後ほど議題となります自民、社会、公明、民社五党共同提出の附帯決議案について、二項以下の各項は不十分であるが改善を要求するものであり、賛成できるのでありますが、第一項は、本改悪案を我慢して納得させるようにせよとも言うべきもので、我が党は賛同することはできません。この点をつけ加えて討論を終わります。