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政府委員(勝村
坦郎君) 二十一世紀に向けましての貿易構造、産業構造はどういうふうになっているかという非常に難しい御質問でございますので、十分お答えできるかどうかわかりませんけれども、一応手がかりといたしましては、これは五十七年でございますが、経済審議会の中に長期展望
委員会というのをつくりまして「二〇〇〇年の
日本」という成果を一応
発表いたしております。それから、最近やはり総合
計画局に研究会を設けまして、二〇〇〇年にかけましての「太平洋地域の発展と
課題」という作業もいたしているわけでございます。産業構造がどの程度になるか、例えばサービス産業が何%ぐらいになるか、先端産業は何%になるか、そこまでの詳しい作業はちょっといたしておりませんものですから、世界経済、国際経済の中での
日本の位置というものをどういうふうに見ているかということをお答えさせていただきたいと思います。
それで、両方の研究ともほぼ共通した結論を出しておりますが、貿易ということで申しますと、やはりこれは今後
日本が例えば四%ぐらい、それからアメリカが二ないし三%ぐらいの経済成長を続ける、そういう中で、特に現在のNICSでございますね、それから今後NICS化してくる国、そういう国の経済成長あるいは貿易の伸びというのが恐らく、もちろんこれは一応順調な国際環境ということを前提にした上でありますが、一番伸びとしては高いんではないだろうか。そういう中で、さらに水平分業的な構造が発達をいたしまして、一部の進んだNICS等は資本財の輸出国にもなってくるだろう。それから、特に地域ということで申しますと太平洋地域、環太平洋地域という言い方もございますが、太平洋地域の伸びというのは、
日本それからNICS、それから現在はまだ発展途上国である国々も含めまして、恐らく国際的には一番成長力の高い地域として発展していくだろうということでございます。
そういう中で
日本がどういう形で今後の世界経済の発展に対応していかなければならないか。これはいろんな問題がございますけれども、思いつくままに幾つかの問題を拾い上げますと、やはり今
通産省の方からも御指摘のありました相互依存
関係の一層の進展という中で、大きな対外不均衡をいつまでも
日本が続けていくというのはこれは不可能、それはもう経済的にも外交的にも不可能であろうと思うわけであります。したがいまして、現在経済審議会でも御討議をいただいているのでありますが、今後長期的な形で内外にわたっての
基本的な均衡を保った
日本の経済成長というものをどうやって維持していくか、これが今後の
基本的な
政策課題になるだろうというふうに思うわけであります。
そういう対外均衡の維持の問題がございますが、同時に技術の問題などになりますと、
日本はよく技術の問題につきましては、ほかの国々からいわば輸入技術で実際の製造
段階の技術を発達させて、みずからは開発の
コストを余り負わないで発展しているじゃないかという非難がよくあります。これには相当誤解もまじっていると思いますが、否定できない面もあるのではないだろうか、ですから、そういう意味ではやはりこれから世界最先端の技術開発というものをやりまして、それを発展途上国のみならず、ほかの先進国に対しても技術移転していける。
日本というのは、そういう意味で非常に国際的に貴重な国だという形をつくり上げていかなければいけないだろうというふうに思うわけであります。
それから、やはりそういう中で、同時に市場の開放ということをもっと積極的に、これはもう必然的な命題として続けていかなければならないだろうと思うわけであります。
日本の競争力の強さあるいは産業発展力の強さということは御指摘のとおりでありますが、今までの世界の工業品貿易の中での
日本のシェアというものを考えてみますと、最近は輸出のシェア、工業品の世界輸出に占めるシェアはどんどん上がってまいりまして、最近ではむしろアメリカをしのぐという形になっておりますが、実は工業
製品の中での輸入のシェアということになりますと、これはもう七〇年ごろからほとんど上がっていないということがございます。いわゆる
製品輸入比率の低さという
考え方もありますが、やはり世界工業品貿易の中でのシェアが輸入としては上がっていないという問題はやはり何とかしていかなければならないことではないだろうかというふうに考えております。
それで、国内の産業ということで申しますと、いわゆる積極的な産業調整ということを進めていくのは当然でございますが、その点について二、三申しますと、
日本はOECD等で五十六、七年に産業調整の議論が進められていたわけでありますが、結果として見ますと、
日本というのはむしろ産業調整の優等生であったとも言えるわけでございます。典型的に言いますと、かつての石炭とか、繊維とか、そういうふうに規模を、雇用を縮小してまでも産業調整をやってきたというのは、
日本が一番積極的にやってきたわけでありまして、そういう意味で
日本が保護主義的な体質を持っているという非難は必ずしも当たらない面があろうかと思います、もちろん一次産品等の問題につきましては問題が残されておりますが。
ただ積極的産業調整を進めてまいりますと、これは御指摘のような
貿易摩擦の問題というのはどうしても起こってくるわけでありまして、例えばアメリカの問題を考えてみますと、いろいろな問題がございます。特に最近はドル高の問題がございますが、やはり長期的に見ますと、成熟産業がだんだん衰退してきた、あるいはいわゆる先進国病にかかってきたということで、鉄鋼、自動車等に典型的に見られますように、競争力をむしろ失ってきたという問題がございます。それにもかかわらず、例えばアメリカの自動車産業などはいまだに八十万の雇用を抱えておりまして、調整をしろ、縮小しろと言われても、そう容易にできることではない。
そういう問題が、やはり積極的産業調整といいながら、既存の成熟産業をそう急に縮小するというようなことはできない。それはOECD等の議論でも、一定の調整期間を与えながら積極的にやれと、これは公式論でございますが、現にアメリカの産業を見ますと、そういう産業は徐々に保護主義の中に浸って安定化を図るという形が出てきているわけでございます。
そういういろいろな問題は今後とも起こってくると思いますが、やはり
日本が、
一つはさっき申しました太平洋地域で、そこの
指導者という言葉はちょっと語弊を生じますけれども、一番進んだ国としてそこの発展に寄与していくということを申しますと、もちろん技術移転も援助も必要でありますが、やはり市場を積極的に与えていく、
日本を非常にありがたい市場だと思ってもらうように開いていくということが、やっぱりこういう今後の国際社会の中での一番の安全保障の要素にもなってくると思うわけでございます。
それから、最後に
一つだけつけ加えますと、対外均衡を図っていくことはもちろんでありますし、それから国際通貨制度のより有効な機能というものを協調的な
政策で回復していくということはもちろんでありますが、それをやりましても、
日本はやはり世界最大の債権国家にもう既になりつつあるわけでございまして、今後五年、十年ということを考えますと、一体どういうふうに処理したらいいかというぐらいの、これはちょっと推定の額を申し上げるのは差し控えますが、それぐらいの大幅な債権国になる可能性があるわけでございます。そういう中で
日本としての責務をどう果たしていくか、これは真剣に考えなければならない問題だろうというふうに考えております。