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佐々木満君 去る九月三日から五日までの三日間、
岩崎委員長、
高杉理事及び
石井、
和田、
中西、
佐藤、
下村の各
委員と私の八名は、老人保健医療・
福祉と最近の
雇用失業情勢等の実情
調査のため、石川、富山の両県に行ってまいりました。
まず、両県における老人保健医療・
福祉の概要について申し上げます。
石川県の六十五歳以上人口は、総人口比で一一・六%と全国
水準の一〇・三%を上回っており、このうちの一・六%が在宅寝たきり老人で、痴呆老人の出現率は二・四%と推定されております。
老人保健医療対策につきましては、予防を軸とした体制づくるに努めており、老人保健法に基づく医療対象者のほか、六十九歳の低所得者に対し県単で老人医療費の公費負担を行うとともに、老人病棟の
整備充実を図っております。
五十八年度における健康診査の受診率の実績は二三・七%と、全国平均の二〇・七%を上回っておりますが、逆に胃がん及び子宮がん検診では平均を下回り、今後の課題となっております。がん対策としては、県の対がん協会が実施している
調査研究や検診事業に対し県費助成を行っているほか、生涯にわたる健康づくり対策の一環として、
二十歳の男女を対象とした成年健康
調査事業のほか、能登
地域の出稼ぎ者に対する健康診査も実施しており、保健婦一人当たりの担当人口でも平均より良好な配置がなされております。
また、健康づくりの基盤
整備としては、
地域リーダー育成のための県民健康づくり
推進員の設置のほか、健康増進保健指導事業を実施する等の工夫をしておるところであります。
人口十万人当たりの医師数は百九十九・三人で全国第二位に位置しており、病床数も平均を大きく上回っておりますが、加賀、能登地区間にかなりの
地域格差が見られるのが問題と思われます。
次に、老人
福祉対策について御
報告いたします。
在宅の要援護老人に対する在宅対策としては、多数の老人が居宅での生活を希望している実情を踏まえ、国庫補助事業のほか、在宅寝たきり老人介護慰労金の支給、入浴車巡回事業、老人
福祉連絡員設置事業等の県独自の
施策をきめ細かく実施しているとのことであります。
一方、特別養護老人ホームの
整備につきましては、県の設定した
整備目標を六十年度末においてほぼ達成すると見込まれているほか、本年度には、痴呆老人対策を含め県内施設の指導的、中心的施設としての県立基幹特別養護老人ホームの建設を行うこととしております。
また、痴呆老人対策としては、痴呆老人短期保護事業、介護研修、テレホン相談事業、介護読本配布事業等を県独自で実施しているところであります。
次に、富山県の概況について申し上げます。
本県の老年人口比率は、石川県より約一ポイント高い一二・七%であります。在宅寝たきり老人の
割合は一・五%と、両県ともに全国平均の三・一%を大きく下回っておりますが、富山県の痴呆老人の出現率は在宅者の五・六%と若干高めの
傾向があります。
保健医療対策としては、二十一
世紀を目指した
日本一の健康県の実現に向けて
努力しているとのことで、特に、五十九年度における老人保健事業の一般診査の受診率は四七・九%と極めて高い
水準にあり、国が定めた六十一年度までの目標受診率五〇%は本年度中に達成される
見通してありますが、胃がん・子宮がん検診については、いま一歩の
努力が望まれるところであります。
保健事業の実施体制では、市町村保健センターの設置率が全国第一位であるのに加え、人口当たりの保健婦数においても全国
水準をかなり上回る
状況にあります。また、老人医療費の助成
制度に関しては、六十五歳以上の重度・中度の
障害を有する者に対する老人保健法による一部負担金の肩がわりのほか、六十五歳から六十九歳までの軽度
障害老人については、県単で医療費の公費負担
制度を存続させていますが、法によるものと同額の一部負担金は患者負担となっております。成人病予防や健康づくり対策としては、総合健康教育、ライフステージに応じた健康づくり活動の
推進やそのための基盤
整備についてそれぞれの
施策を実施しているところであり、本県の特色ある事業としては、市町村が開催する健康づくり大会や健康生活展に対し県が補助する生き活き健康フェスティバル開催事業、主婦等に対する
実践教育やヘルスボランティアの養成を行う健民運動モデル事業等の実施に努めておるところであります。
医療
関係従事者の充足
状況は、歯科医師以外は比較的高い
水準にあり、特に薬剤師については薬業県富山という特殊性を反映し、人口当たりでは全国第二位の配置となっています。
次に、在宅の要援護老人対策としては、
地域福祉活動
推進モデル事業や、市町村が
地域の実情に応じて入浴、給食サービス事業等を行う要援護対策メニュー事業等を県単で実施しているところであり、今後においては、家庭奉仕員派遣事業やデイサービス事業を特に充実したいとの意向が示されたほか、痴呆老人
関係では、全国でも本県だけの
施策として痴呆性老人検診・適所指導事業を実施し、ショートステイで痴呆老人を預かる場合には県単で介護加算の上乗せを行っておるところであります。
一方、施設対策では、本県の持ち家率や一住宅当たりの居住面積が全国一で、多世代同居の
割合も高い等の事情から、老人ホームの
整備率の全国順位は特別養護老人ホーム四十二位、養護老人ホームで四十六位と低位にありますが、将来においては家庭の介護機能の低下が予測されるため、特養の
整備が急務とのことでありました。
なお、両県より、退職者医療
制度の対象者数が当初見込みを下回ること等による市町村国保財政への
影響に対し、必要な
措置を講ぜられたい旨の要望がありました。
次に、
雇用情勢の現況等について申し上げます。
まず、石川県の
雇用動向は、本県の基幹
産業である繊維工業の不況等から
求人は伸び悩む一方で、これらの
企業の人員整理等から
求職者はふえ、本年度の第一・四半期で見ると対前年同期比で二・九%の増となるなど、全国的
傾向からは逆現象となっており、
求人倍率も下降する等、全体として厳しい情勢にあります。
高
年齢者の実
雇用率は八・五%と全国平均を上回っているものの、達成
企業の
割合では若干下回るため、特に今年度より県単で高
年齢者雇用率達成指導コンサルタントを設置し、未達成
企業の指導に当たっておるところであります。また、一律
定年制を採用している
企業のうち、六十歳以上としているのは五八%と全国平均を上回る
状況にありますが、なお、六十歳
定年推進会議を開催する等、事業主の啓発に
努力しております。
次に、身体
障害者
雇用関係では、対象
企業トータルでの
雇用率は一・五四%、達成
企業の
割合でも六二・七%とそれぞれ全国平均を大きく上回っておりますが、さらに県独自で
心身障害者職業相談員及び手話協力員の配置等の諸
施策を
推進しておるところであります。
労働時間の実情は、繊維
産業を初めとして
中小企業が多いこと、
サービス産業のウエートが高いこと等の
影響により、五十九年度における一人当たりの年間総実
労働時間は二千百六十九時間と全国平均を五十三時間上回る
状況にあるため、県としては
労働基準局と連携を図りながら、
労働時間の
短縮に
努力したいとの意向でありました。
次に、富山県の情勢を本年度の第一・四半期と前年同期と比較してみると、
求人の増加幅が〇・九%と全国平均より少ないにもかかわらず、人員整理の減少等もあり、求職の減少が一段と大きいため、
求人倍率が新規、有効ともに平均を大きく上回る
状況にあります。
高
年齢者の実
雇用率は五・八%と石川県とは逆に全国
水準を下回るばかりか、法定
雇用率達成
企業の
割合も四二%であるため、再就職の促進対策として、中高
年齢者集団面接選考会の開催、高
年齢者特別
求人開拓員の設置等の事業を県単で行うなどの
努力をしているとのことでありました。また、六十歳以上の
定年制を採用している
企業の
割合も平均を下回る
状況にあり、高
年齢者の
雇用面で本県の一層の奮起が望まれるところであります。
次に、
障害者の
雇用面を見ると、身体
障害者
雇用率は一・四八%と法定
雇用率にわずかに及ばないものの、
雇用促進キャンペーンの実施等により全国平均に比べ良好な
状況にあるほか、本年度より特に精神薄弱者についても
雇用奨励
制度を全国初の試みとしてスタートさせておりますが、発足後日が浅いこともあり、実績は今のところございません。
労働時間
関係では、完全週休二日制の
普及率や年休の取得率が全国平均より低いこと、さらには
女子の勤務時間が長く
労働力率も高いなどの諸事情を反映し、年間の総実
労働時間は石川県よりは
短縮されてはいるものの、なお全国平均を三十八時間上回っているため、
労働省の示した「
労働時間
短縮の展望と指針」に基づき、
関係機関との連携を深めながら、諸
施策の充実に努めたいとの御説明でありました。
次に、関連して視察いたしました箇所について簡単に申し述べます。
まず、石川県立高松病院は、
昭和四十一年に開設された精神病院であり、その後においても老人病床百床の増床やデイケアセンターの開所、さらには運動療法棟の完成など逐次施設の
整備を行う一方で、臨床研修施設として国の指定を受けみなど、精神科治療の完全実施はもとより、患者の社会復帰のための
努力と研究を進めておるところであります。さらに、本年の十月からは、入院を要する痴呆老人に対するニーズの高まりにこたえるため、五十床の痴呆老人病棟が増設されるほか、
都道府県立精神病院として初めてアルコール症専門病棟が開設される運びとなっております。
なお、精神病院の
経営に関連し、特に集団精神療法が診療報酬の上で全く点数化されていないなど、精神科の診療報酬上の評価が全体として低いとの
指摘がなされ、
改善についての要望がございました。
次に、石川県辰口町においては、来年度において老人保健法の
改正が
予定されていることもあり、老人保健事業の実施
状況等について町長以下現地の
関係者の
意見を聴取してまいりました。
同町は「自分の健康は自分で守る」という基本理念のもとに、健康診査の受診率の向上のために特
定年齢に着目した節目検診の実施のほか、町民健康づくり
推進員の地区組織の育成等により、住民の健康意識の高揚に努めておるところであります。
その結果、六十年度においては一般診査の五二・三%を初めとして、胃がん・子宮がん検診についても二割を上回る受診を
計画するなど、健康診査事業は全体的に良好な
状況にあります。
なお、町当局より、退職者医療
制度の創設に伴う国保財政への
影響について必要な
措置をとること、保健事業の実績を勘案した国庫補助を実施すること等の要望がございました。
次に視察した富山シルバーホームは、社会
福祉法人光風会が
経営する特別養護老人ホームであり、五十七年の事業開始以来収容定員に対する利用率は常時高く、ショートステイ部門でも一日平均で一・一七人の利用があります。職員も国の基準三十六名に対し五十名が配置されているほか、設備面でも各フロアごとに談話室が設けられ、入所者同士の
話し合いやカラオケ大会等に利用され、老人痴呆の防止に大変役立っている等の説明がありました。
本施設に併設されている富山市デイサービスセンターは、利用者の七割が重症者であるため、国の指導による利用定員二十五名に対し、一日の平均利用人員が八名程度にとどまり、デイサービスの登録者がサービスを受けられたのは三週間に一回程度とのことでありましたが、本年の七月に他の施設が開設されたため、十日に一回程度に
改善されております。
最後に、独自の完全一貫生産システムのもとに、ファスナー、アルミ建材等を生産する国際的
企業である吉田工業株式会社黒部工場のほか、石川県工業試験場、同県立中央病院及び富山県総合体育センター等を視察いたしましたことを申し添えます。
以上が
調査の概要でありますが、石川、富山の両県から提出されました要望事項の
会議録末尾掲載方を、
委員長においてお取り計らいくださいますようお願い申し上げまして、
報告を終わります。