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1985-11-14 第103回国会 参議院 社会労働委員会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十年十一月十四日(木曜日)    午前十時三分開会     ―――――――――――――    委員氏名     委員長         岩崎 純三君     理 事         大浜 方栄君     理 事         佐々木 満君     理 事         高杉 廸忠君                 石井 道子君                 遠藤 政夫君                 斎藤 十朗君                 関口 恵造君                 田代由紀男君                 田中 正巳君                 前島英三郎君                 村上 正邦君                 森下  泰君                 糸久八重子君                 浜本 万三君                 和田 静夫君                 中西 珠子君                 中野 鉄造君                 佐藤 昭夫君                 藤井 恒男君                 下村  泰君     ―――――――――――――    出席者は左のとおり。     委員長         岩崎 純三君     理 事                 大浜 方栄君                 佐々木 満君                 高杉 廸忠君                 中野 鉄造君     委 員                 石井 道子君                 遠藤 政夫君                 斎藤 十朗君                 関口 恵造君                 田中 正巳君                 前島英三郎君                 村上 正邦君                 糸久八重子君                 浜本 万三君                 和田 静夫君                 中西 珠子君                 佐藤 昭夫君                 藤井 恒男君                 下村  泰君    国務大臣        労 働 大 臣  山口 敏夫君    政府委員        労働大臣官房長  岡部 晃三君        労働省労政局長  加藤  孝君        労働省労働基準        局長       小粥 義朗君        労働省婦人局長  赤松 良子君        労働省職業安定        局長       白井晋太郎君        労働省職業安定        局高齢者対策部        長        清水 傳雄君        労働省職業能力        開発局長     野見山眞之君    事務局側        常任委員会専門        員        此村 友一君    説明員        警察庁交通局交        通企画課長    越智 俊典君        警察庁交通局運        転企画課長    徳宿 恭男君        運輸省地域交通        局陸上技術安全        部技術企画課長  福田 安孝君        日本国有鉄道総        裁秘書課長    白川 俊一君     ―――――――――――――   本日の会議に付した案件 ○理事補欠選任の件 ○国政調査に関する件 ○労働問題に関する調査  (最近の雇用失業情勢と今後の雇用対策に関す  る件)  (茨城友部自動車学校における労働争議に関  する件)  (昭和六十一年度労働省予算概算要求における  重点施策に関する件)  (男女雇用機会均等法の指針案と省令案に関す  る件)  (国鉄改革についての職員の意見調査の問題に  関する件)  (心身障害者雇用対策に関する件)  (タクシー運転者シートベルト装着に伴う労  働安全衛生対策に関する件) ○派遣委員報告     ―――――――――――――
  2. 岩崎純三

    委員長岩崎純三君) ただいまから社会労働委員会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  去る八月十五日、安武洋子君が委員を辞任され、その補欠として佐藤昭夫君が選任されました。     ―――――――――――――
  3. 岩崎純三

    委員長岩崎純三君) 次に、理事補欠選任についてお諮りいたします。  委員異動に伴い理事が一名欠員となっておりますので、その補欠選任を行いたいと存じます。  理事選任につきましては、先例によりまして、委員長の指名に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 岩崎純三

    委員長岩崎純三君) 御異議ないと認めます。  それでは、理事中野鉄造君を指名いたします。     ―――――――――――――
  5. 岩崎純三

    委員長岩崎純三君) 次に、国政調査に関する件についてお諮りします。  本委員会は、今期国会におきましても、社会保障制度等に関する調査及び労働問題に関する調査を行いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 岩崎純三

    委員長岩崎純三君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ―――――――――――――
  7. 岩崎純三

    委員長岩崎純三君) 労働問題に関する調査を議題といたします。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  8. 高杉廸忠

    高杉廸忠君 私は、労働行政一般について、労働大臣並びに関係当局にただしたいと存じます。  山口労働大臣は、中曽根内閣の閣僚として就任をされて満一年を迎えるに至りました。御就任以来意欲的に労働行政推進のために取り組まれて、積極的なその姿勢とその情熱は多といたしますが、今日なお多くの課題と問題が山積していると思います。  そこで私は、最近の雇用失業情勢と今後の見通しを初め、定年制、高年齢者対策労働時間短縮、さらに茨城友部自動車学校問題などについて、以下順次ただしたいと存じます。  まず、最近の雇用失業情勢の特徴と背景及び今 後の動向の見通しについて伺います。  また、改正雇用保険法改正身体障害者雇用促進法雇用機会均等法職業能力開発促進法、そして労働者派遣法等々が、長期的に見て今後の雇用失業構造にどのような影響があるのか、その与える影響についで、この際具体的に示していただきたいと思います。いかがですか。
  9. 白井晋太郎

    政府委員白井晋太郎君) お答えいたします。  最近の雇用失業情勢状況でございますが、経済の推移は、いろいろと貿易摩擦その他ございますけれども、一般的には緩やかな拡大を続けているというふうに評価されております。雇用失業情勢もこれを受けまして、一般的には緩やかな改善を示しているということでございますが、最近の傾向といたしましては、昨年からことしの当初にまいりまして、特に電気等産業におきまして、求人が既に伸び切っているという状態もございまして、そういう面での頭打ち傾向状況が見られます。  しかし、失業者等につきましては前年の水準を下回っておりまして、全体的には先ほど申し上げましたように、総じて緩やかな改善傾向を示していると言えるのではないかと思います。  今申し上げましたように、求人頭打ち傾向が見られますが、求職者が減少しているということで、有効求人倍率は六十年九月で〇・六八倍、大体横ばい状況を続けております。  それから、完全失業者につきましては、このところ前年水準を下回って推移しておりまして、六十年九月には百五十八万人、前年比一万人減で、完全失業率は二・七%となっております。  その次に、今後の問題でございますが、今後につきましては、適切な経済運営による内需を中心とした経済成長が望まれるわけでございますが、雇用失業情勢も引き続き級やかに改善していくものと期待しております。  ただ、今お話しにもございましたが、高齢化の進展、女子職場進出産業構造転換等各般構造変化背景として、それらの面での失業増加圧力等考えられますので、労働省といたしましては、そういう構造変化対応した失業の予防、再就職の促進等雇用対策を積極的に推進してまいりたいというふうに考えているわけでございます。  その後御質問ございました雇用保険法改正その他、派遣法までに及びます現在までの法改正その他の問題等、これが長期的に見てどういうふうに影響を与えるかということでございますが、今申し上げましたような雇用失業情勢背景といたしまして、特に最近の労働市場におきます高齢化女子の問題、サービス経済化技術革新産業構造の問題、これらの労働力需給両面にわたります態様の変化対応いたしまして、先ほど先生が挙げられました法律の改正、その他制度改正を行ってきたわけでございまして、これらの各種雇用法制整備によりまして、今申し上げましたような変化対応していこうということでございます。今後も、特に高齢化を目指しますようなそういう状況をとらえまして、適切に対応してまいりたいというふうに考えております。
  10. 高杉廸忠

    高杉廸忠君 労働大臣に伺いますが、大臣は、全国的に都道府県を回って労働問題について講演を行っているのが新聞で報道されております。  この際、その趣旨と具体的な演説の内容、そして国民あるいは県民の反応、これについて伺いたいんです。そしてまた、講演の後に労働団体等代表との懇談も行っているということでありますが、この団体等代表から具体的に大臣にどのような要望があったのか、あるいはまたそれらに対して労働大臣としてはどのように対処してきたのか、この際あわせまして伺います。
  11. 山口敏夫

    国務大臣山口敏夫君) 高杉先生もいろいろ国会で御指摘いただいておりますように、今日人生八十年時代を迎えましての高齢者雇用対策、特に定年制延長、あるいは雇用延長の問題、さらには労働福祉条件改善意味からも労働時間短縮、週休二日制の拡大、これは同時に今日大きな経済政策としても大変論議を呼んでおるところでもございます。さらには、国会で御審議いただきまして成立させていただいた男女雇用機会均等法普及実践、こういう問題もございます。また、これは労働大臣が申し上げるということではございませんが、やはり最低賃金などへの取り組みも、例が適当かどうかと思いますけれども、生活保護給付水準最低賃金一つ基準価格が背中がおっつかっつになりつつある、こういういろいろ問題がございます。  これは、御承知いただいておりますように、どれ一つとりましても、事業者側から見ますると経営上の死活問題にもなりかねない、こういう中小小規模企業がたくさんあるわけでもございますし、しかし同時に、これは労働者福祉改善労働政策推進という立場だけではなくて、日本経済政策、わけても中小企業小規模事業所におきましてもこうした問題をクリアしていただかないことには新しい経済の活力、安定というものがまた維持でき得ない、こういう両面性もあるわけでございまして、それぞれ国会での御論議、あるいは各地方労働局といいますか、各局の労働基準監督署、あるいは安定課長、また婦人少年室長、それぞれ御努力いただいておるわけでございますけれども、やはり労働大臣として、地域経済地域労働事情を十分把握すると同時に、そういう総論、総括的な論議を持ちかけることによって、それぞれの地域レベルにおける労使代表方々に大いに問題点を共有していただき、解決していただくための一つのてこにもしていただけるのではないか、こういうことでもございます。  それから、私自身一つ考えとしましては、やはり第三次産業、わけてもサービス産業大変比率が高くなっておりまして、これから将来に向けては八〇%あるいはそれを超える第三次産業がふえてくる、非常にストをしにくい労使関係にあるわけでございまして、その公労働側福祉改善のために、やはり話し合いでそうした問題の大きな改善前進が見られるということが必要なのではないか、こういう期待もございまして、百聞は一見にしかずじゃございませんけれども、我々自身も、全国知事会議とかあるいは各町村長会議などでの意見交換もございますけれども、我々自身が現地に出向くということが大事ではないかということで、一日労働省のような趣旨を踏まえて、いろいろ関係局長なども同行しつつそれぞれの県を回って、各県の経済団体労働団体の幹部の皆さん方、また各種婦人団体皆さんとの意見交換をさしていただいておるわけでございます。  その折に労働団体などからも要望されている点は、やはり労働時間短縮の問題でございますとか、あるいは男女雇用機会均等拡大実践の問題でございますとか、最低賃金問題等ございます。そうした問題も経営者団体代表の方も踏まえていろいろ率直な意見交換の場をつくらしていただいておる、こういうことでございまして、これを契機に、労働経済政策分野においてさらに労働省一つの責任あるいはなすべきことというものを一層また省内にも徹底をして、国会での御論議一つの実行というものを進めていくことが大変大事なことじゃないかということで、私自身も微力でございますけれども、今あと四県で、大分と鹿児島、沖縄、京都ということで四十七都道府県の各労働団体経営団体皆さんとの懇談の場を終了させていただく、こういう予定になっておるわけでございます。
  12. 高杉廸忠

    高杉廸忠君 次に、先般開催されましたマイクロエレクトロニクス労働に関する国際シンポジウム成果並びに我が国の得た教訓、どういうような教訓を得たのか伺いたいと思うんです。そしてまた、それらの成果教訓を踏まえて、大臣として労働外交面国内労働行政面ME労働力に関してどのような施策を展開する方針であるのか、この際労働大臣の所見を伺いたいと思うんです。
  13. 白井晋太郎

    政府委員白井晋太郎君) 今御指摘になりました国際シンポジウム、この秋に開催さしていただいたわけでございますが、世界各国国際機関を含めまして約五百十名の多数の参加者を得まして 活発な意見交換が行われました。そして大きな成果を上げたものと我々では評価しております。  具体的成果としましては、ME化労働問題については、労使が十分に意思の疎通を図りながら、技術革新成果労働質的向上に結びつけるという国際的なコンセンサス形成がなされたということと、それから、その中で特にME化雇用量全体に与える影響につきましては、なかなかこれは計量も難しいわけでございますけれども、しかし我が国の現状を踏まえますと、必ずしも減ってきているわけではなくて、ME化が進む中で雇用量が全体としてはふえているというような状況もございます。それらの状況を説明しながら、国際的には労使対応経済環境等の要因に大きく左右されるものであり、必ずしもME化雇用量全体を減少させるということではないということで意見が一致しております。  それから二番目としましては、労使努力により企業内部雇用維持に努めること、企業内部雇用維持を図っていくということをコンセンサスとして得ております。  それから三番目としましては、ME化のもたらす職務内容変化等対応して、幅広い知識、技能を持つ労働者を養成する、労働者の継続的な能力開発を促進すること、ME化対応するには、二極分解していくのではなくて、労働者がいろいろな知識を広く持つということが必要であって、そのためには能力開発が必要であるというような、この三つの点につきまして参加者の中で合意を得ておりまして、これは非常に意味の大きいことだと考えております。  労働省としましては、このシンポジウムでの成果を踏まえながら、今後とも国際機関活動への積極的参加等によりまして、国際的なコンセンサス形成促進努力しますとともに、ME化への対応について、雇用能力開発安全衛生等分野具体的施策を講じてまいりたい、このように考えております。
  14. 山口敏夫

    国務大臣山口敏夫君) また、今のME労働の問題につきましては、労使双方で、我が国におきましてはMEの五原則ということの労使協定の上に立ちまして、世界の中におきましても最大のMEへの取り組みというものが円滑に進んでおる国でございますが、同時に、これはサミットなどの会議でもME労働の問題が大変関心を持って論議もされておるわけでございます。そういう今、安定局長の御報告申し上げましたような内容あるいは成果というものを、各国のそういう労使関係方々あるいはサミット会議などの論議にも供することができ得ますように、労働外交といいますか、労働政策立場から日本実践あるいはシンポジウム成果もひとつ御報告を申し上げつつ、ME化に備える雇用の問題と、新たな労働災害障害というものの防止というものに役立つような一つ役割も果たさなければならない、かように考えておるところでございます。
  15. 高杉廸忠

    高杉廸忠君 次に、定年延長立法化問題についての雇用審議会答申について伺いますが、答申では、「六十歳定年及び六十歳台前半層を含めた高年齢者雇用就業の場の維持拡大推進に関する規定を設けるという体系の法的整備を図ることが妥当である。」としています。  そこで伺いますが、六十歳定年法制化では人生八十年時代にそぐわないと思いますが、いかがでしょう。その見解を伺います。
  16. 山口敏夫

    国務大臣山口敏夫君) 私も、高杉先生の御指摘のように、人生八十年時代ということでございますけれども、これが縮小されるということは将来ともないわけでございまして、むしろ人生九十年時代、あるいは二十一世紀までには日本人は人生世紀時代というような超々高齢化時代を迎えるということも十分予測されるわけでございまして、その中における労働分野における役割というものは非常に重要だという認識を私自身も持っておるわけでございます。  しかし、実際の企業状況などからいいましても、今日、六十歳までの定年制を採用している企業がようやっと半分に到達をした、これが現実でもございまして、雇用審議会の第十九号答申では、六十歳台前半層も含めた高年齢者層雇用就業対策の拡充ということを提唱していただいておるわけでございまして、私どもとしましては、当面六十歳定年法制化というものを国会の御審議をいただきまして、ぜひこれを各企業事業所周知徹底をしていただく、そして底固めを終えつつ、六十歳前半層、六十歳の後半層までの雇用延長という一つの社会的な職業社会における環境条件をぜひ普及をしていきたい、こういう決意でこの国会における定年制の問題の御審議も早々にお願いをしなければならない、こういう今取り組みをしておるところでございます。
  17. 高杉廸忠

    高杉廸忠君 大臣からお答えがありましたが、労働省としては昭和六十年度には六十歳定年一般化する、こういうように定年延長を積極的に推進してきた、このところは基本的な姿勢だと思います。  そこで、具体的にそれならば伺いますが、今日現在、第一として、六十歳以上定年制企業割合、これはどのぐらいになっているか。それから第二として、またその割合は六十歳定年一般化と称して妥当なのかどうか。この際、その見解を伺います。
  18. 白井晋太郎

    政府委員白井晋太郎君) お答えいたします。  労働省雇用管理調査によりますと、昭和六十年一月現在では、六十歳以上の定年制を採用している企業割合は、先ほど大臣が申し上げましたように、五五・四%と半数を超える状態になっております。五十五歳以下定年制を採用する企業割合は二七・一%でございますので、三〇ポイント近く上回っているということでございます。それからまた、今後定年を六十歳以上に引き上げることを決定または予定している企業もたくさんございまして、これを含めますと、近い将来六十歳以上定年制は六八・七%と、七割近くになることが見込まれているわけでございます。したがって、六十歳以上定年が主流となってきつつある、そういう傾向にあるということは言えるのではないかと思います。  ただ、規模別に見ますと、大企業定年延長の設定が進んでおりまして、五千人以上では、先ほどの今後の予定を入れまして九七・一%、それから千人-四百九十九人規模では八六・二%、これらの企業は近い将来六十歳予定になるということが見込まれております。  そういうような状況でございますが、今、先生のおっしゃいました六十歳定年一般化という点から見てどういうふうに評価するかということでございますが、これはそれぞれ国民の意識と申しますか、コンセンサスの問題でございまして、定年が六十歳であるという一般的な認識形成される、そういう状態が六十歳定年一般化ではないかと思いますが、これはそれぞれの立場で、労働者サイドからいえば九割から一〇〇%いかなければならないということでございましょうし、事業主サイドその他からいえば五〇%を超えれば主流ではないかという意見もいろいろあるかと思います。一般的には具体的数字で表現することは非常に困難でございまして、労働省としましては、先ほど申し上げましたように、社会的コンセンサスとして一つでも多くの企業定年延長を行っていくという高いレベル一般化を図っていきたいというように考えている次第でございます。
  19. 高杉廸忠

    高杉廸忠君 答申では、六十歳未満定年企業に対する定年年齢引き上げ要請、それからその引き上げ計画作成命令、それから計画適正実施勧告、正当な理由なく命令勧告に従わない場合の事業主名の公表、こういうような行政措置を提言しているわけですね。それは現行の中高年齢者雇用促進法延長線上という措置にすぎない。六十歳定年法制化の点もあわせて考えてみますと、私はやっぱりこうした具体的な法制化を含めて時代要請にこたえるべきだと、こう思うんですが、どうもその辺が、まだ六十歳が、さっきも質問したように一般化と見て妥当かどうかという点も含めてお尋ねしたんですが、明快なお答えがないんですが、そういうような答申姿勢に ついてはどういうふうにお考えになっていますか。
  20. 白井晋太郎

    政府委員白井晋太郎君) お答えいたします。  先生おっしゃいますように、定年制の問題につきましては、一般化について明確な数字でなかなかあらわせるものではないというふうに思うわけでございますが、先ほど大臣も申し上げましたように、労働省としましては、さらに六十歳定年制が進むことを今後の目標といたしているわけでございまして、したがってさらに進めるということは、一般化についてもう少し率を上げていくということだというふうに考えております。  答申の問題でございますが、御存じのとおり、定年制の問題につきましては労使鋭く対立いたしまして、意見の分かれたところでございまして、特に労働側罰則つき強行規定、それから使用者側は、定年制というものは労使話し合いで行うべきものであって、立法化にはなじまないものだということで現在まで対立してきたわけでございます。しかし、先ほどの雇用審議会の十九号答申におきまして、長い論議の末に、大局的見地に立ちまして一応ああいう答申が出ましたということは、我々としては高く評価し得るのではないかというふうに思っているわけでございます。  しかし、中身につきましては、今のような対立問題もございますし、定年制につきましては、終身雇用年功的賃金人事管理という我が国特有雇用慣行と一体になった深い関連もございますし、定年延長に伴います企業経営労働条件に大きな影響を及ぼすという問題もございまして、答申では努力義務ということになったわけでございますけれども、しかし、これを法的に整備しろということは一つ前進でございますし、従来の行政指導と違った一つの効果を持つものだと思います。その上にさらに今、先生がいろいろ挙げられました行政措置を段階的に行っていくということは、正当な理由なく従わない事業主に対しましては企業名の公表までいくわけでございまして、一応現在の努力義務に対する法的措置、それからそれに伴います行政措置としては進んだところではないかというふうに思うわけでございまして、この雇用審議会答申は、それらを踏まえまして現実を見た適切なものではないかというふうに我々は考えている次第でございます。
  21. 高杉廸忠

    高杉廸忠君 次に、高年齢者雇用就業対策の充実強化について伺いますが、中央職業安定審議会の建議あるいは最近の労働行政の動向を見ますと、高年齢者雇用就業対策といいながら、どうも就業対策に力点が傾いていくように思われるんです。また、シルバー人材センターに過大な期待を抱いているようにも見えるんです。  そこで私は、高年齢者対策の基本というものは、高年齢者雇用の確保対策でなければならないと考えるんです。この点についてはいかがですか。
  22. 白井晋太郎

    政府委員白井晋太郎君) 我々としましても、先生の御意見と同じ意見を持っているわけでございまして、今回の建議におきましても基本的な考え方は、本格的な高齢者社会の到来を迎えまして、高年齢者雇用就業対策の充実強化を図ることが急務であるという認識に立ちまして、今後六十五歳程度までの雇用就業の場の確保を図ることが必要であり、そのためには、我が国雇用慣行等から見て、まず同一企業または同一企業グループにおける継続雇用推進を図っていくことが重要である。それから二番目には、離職を余儀なくされた高年齢者については早期再就職の促進が図れるような体制を整備することが重要である。そして三番目に、さらに定年退職後においても任意的就業を希望する高年齢者就業ニーズに応じた就業の場の確保を図っていくことが重要であるということで、これも先ほど大臣がちょっと申し上げましたが、六十歳、それから六十歳台前半層、これらの大きな高齢化の波が移ってきます層についての雇用の確保を図りますとともに、長い職業生涯の中でいよいよ退任していく場合にも、任意的就業その他スムーズに引退していけるという形をとっていこうということでございまして、そこに、最後のところにシルバー人材センターが出てまいりますが、全体的には、先生のおっしゃいましたような継続雇用推進を柱としまして雇用の確保を図っていくということに重点が置かれるものでございまして、先生の御指摘と異なるものではないというふうに考えております。
  23. 高杉廸忠

    高杉廸忠君 ことしの高年齢者雇用状況調査結果によりますと、高年齢労働者雇用率ですね、七・五%、前年に比べて〇・二%上昇している。また、法定雇用率の六%に達しない企業割合というのは四六・六%と昨年より〇・八%減少しているんですね。これらの数字についてどのように評価しているのか、伺います。
  24. 白井晋太郎

    政府委員白井晋太郎君) お答えいたします。  高年齢者雇用状況報告によりますと、今、先生がおっしゃいましたように、全体の実雇用率につきましては昨年から比較しまして〇・二ポイント上昇いたしております。それから、未達成企業割合も昨年に比較いたしまして減少いたしております。全体的には着実に改善が進んでいるものというふうに考えているわけでございます。
  25. 高杉廸忠

    高杉廸忠君 局長からのお答え数字について私の率直な感想を言いますと、極めて不満な数字であると言わざるを得ないんです。しかも、この実雇用率を企業別に見ますと、第一に大企業ほど低い水準にとどまっている、第二に、法定雇用率未達成企業割合も大企業ほど高くなっている、これが指摘できるんです。経済的優位にあって、中小企業、零細企業に範を示すべき大企業が極めて成績が悪いこと、これは旧態依然とした状況で、そういう意味で極めて遺憾である、このように思います。この点についてはどうでしょう。
  26. 白井晋太郎

    政府委員白井晋太郎君) 今、先生指摘のとおり、現状としましては大企業の方が未達成企業割合が悪くなっているわけでございますが、しかし最近の傾向といたしましては、特に大企業におきましてこの雇用率の上昇、それから未達成企業の減少というものが進んでいるのでございまして、現状としましては大企業の方が低くはなっておりますけれども、漸次進んでいくものというふうに評価いたしているわけでございます。今後なお、その点につきましては努力していかなければならないというふうに考えている次第でございます。  なぜ大企業中小企業に比して雇用率が低いのかという問題がございますが、原因としましては、新規学卒者等若年労働者の採用が容易であること、それから、定年到達前の者について系列会社や下請会社への出向あるいは再就職のあっせんといった道を講ずることが可能であること、それから、数年前までは定年延長取り組みがおくれていたことなどが挙げられると思いますが、しかし本格的な高齢化社会の到来に伴いまして、この高年齢者の経験や技術を生かすということで、比較的従来に比べますと大企業においても近年急速に定年延長が進んできて、今のような漸次改善が行われるということだと思います。今後ともそういう面で力を入れてまいりたいというふうに思っております。
  27. 高杉廸忠

    高杉廸忠君 時間の関係で先に進めますけれども、これはぜひ労働大臣からお答えいただきたいと思っているんですが、いらっしゃいませんから局長でも結構ですが、雇用審議会定年延長部会、本年六月十三日に「今後の高齢者雇用就業問題について」、これを総会に提出している。その中で、「二十一世紀を展望した今後の高齢者雇用就業のあり方としては、当面、六十五歳程度までは雇用就業の場の確保が図られ、六十五歳を超える者については、その他の分野での社会参加活動ができるような社会、すなわち、高年齢者就業社会をめざすことを基本とする」と、こうしているんですね。  そこで伺いますが、この点に対する基本的な考え見解、これを伺います。
  28. 白井晋太郎

    政府委員白井晋太郎君) 雇用審議会におきましては定年延長部会を設置いたしまして、そこでことしの初め以来いろいろ検討をしていただきました。その定年延長部会におきまして、まず、六 十歳定年の問題を議論する前に、高年齢者の最近の状況、それから今後の労働力人口の中に占めます高年齢者の推移その他いろいろ分析いたしまして、「今後の高年齢者雇用就業問題について」という中間報告を出していただいたわけでございます。これに基づきまして、先ほど先生がおっしゃいましたような意見がそこに集約されております。  我々としましては、本格的な高齢者社会の到来を控えまして、我が国経済社会の活力を維持発展させるためには、我が国の高年齢者の高い就業意欲を生かし、その能力を有効に発揮させていくことが必要不可欠である、そこに六十五歳までの雇用の場を確保していくということが出てくるわけでございますが、それから二番目には、早期引退志向の強い西欧諸国では、社会保障負担の増大や勤労意欲の低下の問題に直面しているのが現状であることを指摘いたしておりまして、高齢者雇用の確保ということを基本とするというふうに言っているわけでございます。それから、これは先ほども申し上げましたが、円満に雇用の場から引退していくために、その後、ボランティアまではいきませんでも、任意就業その他社会的参加を求める者に対する施策を配慮すべきだということを言っております。  この審議会の答申考え方は適切であって、しかも現実的な指摘であるというふうに我々は考えているわけでございます。
  29. 高杉廸忠

    高杉廸忠君 次に、労働争議の事実関係についてただしたいと思います。  茨城県西茨城郡友部町の友部自動車学校における不当解雇事件について伺います。  友部自動車学校代表取締役常井貞利氏が、昭和六十年八月同校において労働組合が結成されるや、第一に組合員に対する脱退の強要、第二に組合員家族に対する支配介入、第三に組合活動妨害のための暴力団とも思われるような人たちを動員するなど、数々の違法とも思われる行為を重ね、ついには、学校を閉鎖することを理由として従業員九名の一方的解雇を行い、現在に至っています。  そこで伺いますが、本件について労働省として事実関係をどのように把握しているのか、まず伺います。
  30. 加藤孝

    政府委員(加藤孝君) 御指摘のございました茨城県の友部自動車学校におきまして、ことしの八月二十日に労働組合が結成をされた。その後八月二十六日に組合の分会長を学歴詐称、高校卒と言っておるけれども、実際は高校卒じゃないじゃないか、こういうことで学歴詐称を理由に懲戒解雇をした。さらに九月八日になりまして、組合員である従業員一名を会社の施設棄損ということを理由に懲戒解雇をする。そしてまた十月十日には、従業員十三名、そのうち組合員九名を学校閉鎖ということで解雇をしたというふうに聞いております。  なお、この間におきまして、茨城の地労委のあっせんのもとに、両者の組合と経営者との団体交渉が行われておりますが、それが、話し合いが進む、問題解決するというような形には至っていない。  また、解雇されました組合員のうち九名の方は、現在解雇無効確認等の訴訟を水戸地裁に提起をされておりまして、本日第一回の公判が開かれる、こんなふうに事情を伺っておるところでございます。
  31. 高杉廸忠

    高杉廸忠君 この際警察庁に伺いますが、道路交通法第九十八条では、公安委員会は自動車教習所の指定をすることができるとなっているわけですね。さらに、指定基準に違反したときは指定の解除等の措置を行うことができると同法九十八条十項においてなっているわけです。したがって公安委員会としては、この教習所の運営状況を正確に把握していると思うんです。  そこで伺いますが、友部自動車学校の会社の概要並びに運営状況について、第一として、昭和六十年一月から十一月現在までの毎月別の生徒数、教員数、一人当たりの稼働率、これを明らかにしていただきたい。  第二に、同様の数字を近隣の自動車学校である羽鳥自動車学校、笠間自動車学校についても明らかに示していただきたいと思うんです。  ただ、限られた時間、貴重な時間でありますから、詳細については資料をぜひいただければありがたい、こう思います。したがって簡潔で結構であります、お答えをいただければありがたいと思うんです。
  32. 徳宿恭男

    説明員(徳宿恭男君) ただいま御質問をいただきました友部、羽鳥、笠間の三つの自動車学校の月別の生徒数、指導員数、それから稼働率という点につきましては、月別にお答えいたしますと時間がかかりますので、本年一月から十月までの一カ月平均でもって申し上げたいと思います。  まず、友部自動車学校でありますが、一カ月平均で見ますと、教習生の数は約二百五名、指導員の数は十九名、指導員一人当たりの教習時限数百七十六時限。  次に、羽鳥自動車学校でありますが、教習生の数約百六十名、指導員の数十九名、指導員一人当たりの教習時限百三十二時限。  笠間自動車学校でありますが、教習生の数は約百六十名、指導員の数十九名、指導員一人当たりの教習時限百六十二時限となっております。
  33. 高杉廸忠

    高杉廸忠君 詳細についてはまだ資料をいただきたいと思います。  次に、事件に対する茨城県公安委員会措置状況について伺いますが、友部自動車学校において昭和六十年八月二十日労働組合が結成され、十月十一日付の解雇通告までの間、経営側による数々の不当とも思われる行為があったと考えるんです。私は、このような不当行為のようなものが行われるとしますと、適正な教習を実施していく上で障害となっているんではないかと、こう危惧するんです。  そこで伺いますが、自動車学校の適正な運営について監督官庁として当然何らかの指導監督の措置を行ったと思います。いかがでしょう。  そして、学校閉鎖の現況をあわせまして伺うんですが、当自動車学校は経営不振を理由に学校の閉鎖を行おうとしたと聞きますが、現況はどうなっていますか。
  34. 徳宿恭男

    説明員(徳宿恭男君) お答えいたします。  茨城県公安委員会友部自動車学校に対しまして、労使紛争が始まった当初から学校当局に対しまして、一つには、労使問題により教習内容や教習方法の水準の低下を来さないようにすること、それから二つには、教習体制を確立して教習生に迷惑がかからないようにすること等につきまして五回にわたりまして指導いたしますとともに、指導担当者を四回立ち入りさせまして、適正な教習が維持できるよう指導監督を強化したというふうに報告を受けております。  それから現況でございますが、経営者側は職員に対しまして、九月十日、経営困難ということを理由にいたしまして学校閉鎖を通告し、十月十一日には閉校式を行ったようであります。しかし、学校閉鎖の同意を求めるために十月三十一日に開催されました臨時の株主総会におきまして、閉鎖反対の意見が圧倒的多数を占めたところから、前社長の辞任を認め、新役員を選任した上、学校を存続させることを満場一致で決定いたしております。これに伴いまして友部自動車学校では、七十日間中止しておりました教習生の募集を十一月一日から再開することとなったというような内容茨城県警から報告を受けているところでございます。
  35. 高杉廸忠

    高杉廸忠君 確認しますが、閉鎖はしてないんですね。
  36. 徳宿恭男

    説明員(徳宿恭男君) 閉鎖はしておりません。
  37. 高杉廸忠

    高杉廸忠君 そこで労働省に伺いますが、さっき局長から、解雇理由については学校閉鎖が理由だ、こういうふうな解雇理由が述べられたんです。閉鎖していないのに閉鎖する解雇理由これはどういうふうになるんですか。
  38. 加藤孝

    政府委員(加藤孝君) 今、警察の方からお話がございましたように、学校閉鎖をするという一応 前提で解雇したということでございまして、その後閉鎖しないということでまた存続が決まっておるようでございますので、そういう意味では学校閉鎖という形になっていない状態での解雇が行われた、こういうことになろうかと思います。
  39. 高杉廸忠

    高杉廸忠君 そうすると局長、解雇理由とした学校閉鎖がないんだから、その解雇理由というのは無効だ、こういうふうに理解していいんですね。
  40. 加藤孝

    政府委員(加藤孝君) 少なくとも事実の流れとしては、学校閉鎖をするという理由で解雇をしたわけでございますが、結果としては閉鎖されていないということでございますので、その理由は現時点から見れば問題があるということであろうと思います。
  41. 高杉廸忠

    高杉廸忠君 論争をしても、これは訴訟になっているようでありますが、要するに解雇の理由が学校閉鎖をするという理由、学校は現に存続し閉鎖していないんだから、当然その解雇の理由はない、したがって解雇は無効である、こういうふうなことになると思うんです。  そこで大臣、時間がありませんから簡潔に伺うんですが、不当労働行為なとについて、今お聞きしているように、友部自動車学校経営者の一連の労働組合対策を見ると、数多くの不当労働行為とも思われる行為があるんです。この点について現地の労働委員会が団交促進のあっせんを行った、こういうふうに聞いているんです。その結果は照会されているかどうか。また、そのとき経営者側の責任者、これは出席をしていたのかどうか。労働委員会のあっせんの場に責任者が出席しない、出てこない、こういうふうになるとこの点甚だ遺憾だと思うんですが、労働大臣としてはどのようにお考えになりますか、この際伺います。
  42. 山口敏夫

    国務大臣山口敏夫君) 労働委員会のあっせんの場に十分な当事者能力を持った方が対応されないということであれば、大変これは遺憾なことでございまして、そうした労使の真剣な、真摯な態度での問題解決というものが当然のやはりお互いの責任でございますので、会社側も十分な当事者能力を持った方が対応されるべきである、かように考えるものでございます。
  43. 高杉廸忠

    高杉廸忠君 時間の関係がありますから、こういう不当労働行為あるいは理由なき解雇が起こらないように、大臣にもひとつ積極的な御指導をお願いしたいと思います。  そこで次に、いろんな時間短縮等の問題もお伺いしたかったのですが、時間が迫りましたから最後になろうかと思いますが、昭和六十一年度予算編成について、この際大臣の決意、これをお伺いしたいと思うのです。  私は、本委員会において、今までの質疑を通じて労働者の実態、学励行政の課題、あるいは問題の幾つかを指摘いたしました。労働条件改善雇用の確保など、労働行政推進のために提言も行い、また要請もいたしました。  また私どもは、去る八月八日、文書をもって昭和六十一年度労働省予算の概算要求に関する申し入れをいたしました。そして労働時間短縮雇用失業対策、雇用における男女平等の実現、労働安全衛生対策中小企業退職金共済などの各項目の詳細にわたってその実現を図るべく労働大臣に要求をして、さらに昨日この第二次要求として、昭和六十一年度予算編成に関する要求書、これを提出いたしました。  問題は、労働者の実態を踏まえて労働行政の今日的課題や問題にいかにこたえられるか、どう裏づけされるのかが六十一年度予算である、このように考えるのです。もちろん国家財政や臨調行革の厳しい環境下であることは十分承知はいたしております。しかし、労働行政推進のために意欲的に取り組んでこられ、抜群の行動力と実力のある山口労働大臣の真価を発揮するときであると思います。私どもの要求の実現のために一層の御奮闘を心から願い、激励をし、この場をかりて山口労働大臣にその実現を強く要請するところであります。  最後になりましたが、これらに対して労働大臣の決意、これを伺いまして私の質問を終わります。
  44. 山口敏夫

    国務大臣山口敏夫君) 今、高杉先生からも御指摘、また激励をちょうだいしたわけでございますが、日本社会党から本年の八月に労働省予算の概算要求に対する申し入れ、そしてまた昨日、日本社会党の予算要求行動推進本部と総評予算要求闘争推進本部、こうしたお立場から予算編成に関する第二次の要求書を確かにちょうだいいたしたわけでございます。  そうした中で盛り込まれておるそれぞれの諸政策、諸施策というものは、今日労働省におきましても、本格的な高齢化社会への移行とMEを中心とする技術革新の進展、またサービス経済化の進展、また女子職場進出の増大等々大きな変化の局面にございまして、こうした変化労働面にも多様な影響を及ぼしつつある。労働省といたしましても、こうした変化に十分対応でき得るような諸課題に積極的に取り組まなければならない、こういうことで今後ともの労使の十分話し合いという基盤が確立でき得ますように、他省庁との密接な連携を図りつつ、勤労者の雇用の安定と福祉の向上を図るため、中長期的な展望に立ちました総合的な労働政策を展開してまいりたい。  その具体的な案といたしまして、高齢者の問題、男女雇用機会均等の問題、ME労働の問題、あるいは障害雇用に対する予算的措置問題等を重点といたしまして、厳しい財政事情ではございますけれども、六十一年度予算に十分、一般会計、特別会計含めましてひとつ努力をしていきたい、かように決意して取り組んでおるところでございます。
  45. 糸久八重子

    糸久八重子君 私は、労働省の六十一年度予算の概算要求についてお伺いをいたします。  ただいま大臣がおっしゃいましたとおり、ME化の急速な進行とか高齢化社会の対応、そして女性の職場進出、高失業化における雇用安定対策の緊急性など、大変労働行政の抱える課題は山積をしているわけでございます。  このような社会の変化に的確に即応した労働行政が今日求められているわけでございますけれども、積極的に取り組む姿勢がただいま明らかにされたわけでございますけれども、六十一年度の概算要求の中では何にどう取り組むのか、労働大臣としてその内容を、重点施策、それから重点項目を明らかにしていただきたいと思います。
  46. 山口敏夫

    国務大臣山口敏夫君) ただいまも御答弁申し上げましたように、大変厳しい財政事情でございますけれども、特に労働省としての六十一年度予算編成の一つの重点的な施策といたしましては、一に高齢化社会における雇用と生活安定対策、そして二つ目に勤労者の安全確保対策と労災補償対策、そして三つ目に中小企業労働者福祉対策等の予算の確保に努力をしてまいりたい、かように考えております。  さらに私は、労働時間の短縮と勤労者生活の向上対策、さらには男女雇用機会均等の確保等に伴う女子労働者対策、これは男女雇用機会均等法の円滑な施行、こういう趣旨も踏まえておるわけでございます。  また、経済摩擦が労働摩擦と、こういうレベルまで過熱をいたしませんように、労働外交の展開も積極的に図っていきたい。あらゆるレベルにおける国際交流の推進というのが必要であろうと思います。アメリカなどではカークランド、ちょうど総評と同盟と一緒にしたような大きな労働団体の会長でございますが、こういう労働団体日本に不利益をもたらす保護法案とか課徴金などの法案のロビイストとして大変活動しておるわけでございますが、これらの人も、本年日本に参りまして、いろいろそういう日本の各界の人との意見交換の中で大分日本に対する認識を変えていただいておる、こういう成果もあるわけでございまして、労働外交なども積極的に推進をしていきたい。  さらには、障害者の雇用対策というものもなかなかいま一歩前進が、いろいろ御心配、御指摘国会でいただいておるわけでもございますので、 こうした点につきましても十分予算的な面でひとつ考慮していきたい、かように考えておるところでございます。
  47. 糸久八重子

    糸久八重子君 六十一年度の概算要求を見てみますと、要求総額は四兆二千百八十八億円でございます。そのうち一般会計は四千八百六十億円で全体の一一・五%を占めるにすぎません。六十年度予算で一般会計予算の占める割合は一一・八%でありましたから、概算要求では〇・三ポイント低くなっているわけです。労働省予算がほとんど労働保険特別会計予算に依存している現状にありますね。  労働行政は、国の責任においで展開していくという意味におきましても、一般会計予算を十分に確保していく責務があると考えますけれども、労働大臣の基本的な姿勢をお伺いしたいと存じます。
  48. 山口敏夫

    国務大臣山口敏夫君) 確かに、先生の御指摘のように、一般会計の比率が一一・五%でございますけれども、特別会計と合わせまして、労働保険特別会計との施策と適切に組み合わせて労働政策の積極的な展開を図るということも非常に大切なことではないかと考えるわけでございまして、特に労働経済分野における問題は、労使双方の協定あるいは基本的な話し合いというものを尊重していく、こういうこともございまして、労働省といたしましても、予算の比率というものは御指摘のとおりでございますけれども、特別会計も入れますと四兆二千億を超える額にもなるわけでございまして、こうした点を十分適応させながら、失業の予防あるいは雇用機会の増大、労働者能力開発労働災害の防止などの諸事業をひとつ一層円滑に推進していきたい、かように考えておるわけでございます。
  49. 糸久八重子

    糸久八重子君 労働省の一般会計予算における政策的事業経費というのは大変微々たるものでございます。六十年度予算を例にとってみましても、事業的経費として大きいものは失業対策費の三千六百七十一億円ですね。そのうち雇用保険国庫負担金の二千九百三十一億円がその多くを占めているわけです。六十年度の予算の総額からしてみても大変少ないわけですけれども、特別会計予算と一般会計予算との役割分担のあり方をまず見直ししていかなければならないと思いますし、長期的展望に立った予算編成に取り組む必要があると思いますけれども、この点については大臣いかがでございますか。
  50. 山口敏夫

    国務大臣山口敏夫君) そうした御指摘も当然あるわけでございますが、先生も御承知のとおり、労働行政の場合は、社会保障的な部分における予算的措置というよりも、何といいますか、象徴的な一つ施策を進めながら、労使双方における労働経済分野における活力を一層展開していくということでございまして、私どもといたしましては、労働者の健康面における、あるいは社会体育的な意味も含めまして、勤労者のためのそういう厚生施設などにつきましては極めて重点的に取り組んでおるところでもございますけれども、そういう行政における非常に横幅の広さ、奥行きの深い一つ役割ということでもございますので、予算的な措置とあわせて行政指導的な面において労働福祉改善前進を図っていく、こういう考え方でございますので、他省庁に比べまして予算の規模その他につきましては必ずしも巨額な予算的執行という官庁ではございませんけれども、政策官庁として、サービス官庁としての労働行政をこの予算をてことしてひとつ十分行き届くように取り組んでいきたい、かような考え方でございますので、よろしく御理解のほどをいただきたいと思うわけでございます。
  51. 糸久八重子

    糸久八重子君 先ほどお伺いいたしました労働省の来年度の重点施策として、労働者災害補償保険法の抜本改正とそれから中小企業退職金共済制度改善に取り組むということでございますけれども、これらの制度改正についての検討状況と今後の見通しについて明らかにしていただきたいんですが。
  52. 小粥義朗

    政府委員(小粥義朗君) まず、中小企業退職金共済制度改正でございますが、これは法律によりまして五年ごとに見直しをすることになっております。実は、昨年がその見直しの時期であったわけですが、税制面等で成案を得るに至りませんで、引き続き中小企業退職金共済審議会の中で小委員会を設けて検討を継続していただいております。現在まだ検討は続いている段階でございますが、大分内容も詰まってまいっております。  現在考えております内容としては、いわゆる掛金月額の引き上げ。これは、現在の中小企業退職金共済制度によります給付が極めて低いという実態にもございますので、それを上げられるように掛金月額の引き上げ。あるいは通算制度の充実。企業を転々とした場合には、現在の仕組みでは一たんやめるとそれでもって給付額が決まってしまう。つまり、勤続期間が短いものですから給付が低くなるといった事情にあるわけですけれども、そうした点を改善するための通算制度の充実。さらに、退職金共済制度への加入企業がまだまだ中小企業の全体の数から見ますと非常に低い状況でございます。したがって、加入促進制度を充実させようといった内容を中心にしまして検討を願っております。近々その成案も得られるような段階に来ておりますので、その審議会の建議をいただいた上、次の国会には所要の改正案を提出させていただきたいというふうに考えております。  それから、いま一つの労災保険制度改正でございますが、これは昭和五十七年以来、労災保険審議会の中に基本問題懇談会がつくられまして、そこで労災保険制度全般についての見直しをお願いしております。労使各側からそれぞれ細部にわたる点を含めていろんな意見が出されております。それは労使それぞれ全く違う意見等もございますので、現在公益委員を中心にその意見の整理をやっている段階でございまして、現在のところでは、いわゆる労災保険制度自体が持っておりますいろんな不均衡、例えば若いときに災害に遭いますと、スライド制度はございますけれども、年をとってから災害に遭った人に比べると給付が割安になるといったような傾向があるわけでございますが、そうした点。あるいは他の公的年金制度との給付額との比較において著しく均衡を欠く点。そういったような制度自体が持っております不均衡の是正といった点を第一に、またもう一つは、年金受給者も非常に高齢化が進んできております。今後さらにその傾向が続くと思われますので、高齢化対応して年金受給者の援護対策の充実といったようなことを中心に、今、改正事項の整理をしておりますので、これも近く建議としてまとまってくるんではないかと思っております。それを得ました段階で、これも次の国会にできますれば法案として提出したいというふうに考えている状況でございます。
  53. 糸久八重子

    糸久八重子君 次に、婦人労働対策について、六十一年度概算要求の中で、再雇用制度を促進させるため女子雇用促進給付金の新設を要求しておるわけですが、その内容についてもう少し詳しく説明をお願いしたいと思います。
  54. 赤松良子

    政府委員(赤松良子君) 再雇用特別措置普及に関しまして、男女雇用機会均等法の二十五条で新たに法律上の用語として登場したことは御承知のとおりでございます。そこで、この措置普及するための具体的な方策といたしまして労働省考えておりますのが雇用促進給付金でございます。  その内容でございますが、一定の基準、望ましい基準と申しましょうか、国が奨励するに足る再雇用特別措置というものを考えまして、その基準を満たしている再雇用制度を設けて女子労働者を再雇用したという企業に対しまして促進給付金を支給するというシステムでございます。  内容を申し上げますと、事業主が再雇用を行った場合に、再雇用者一人当たり、中小企業の場合と大企業の場合とは金額が違いまして、中小企業が三十万、大企業が二十万というふうに要求いたしております。  それからもう一種類、離職期間中に教育訓練を受講するという方がございます。これは、再雇用 制度そのものが、かなりの長期間にわたって、二年とか三年とか、あるいはもっと長い場合もございましょうが、長期にわたって休業といいますか、仕事をしないわけでございます、離職しているわけでございますので、その間に従来持っていた技能が低下する、あるいは知識も必要になるというようなことが多く考えられますから、教育訓練をみずから受けようという方も多いわけでございますし、また企業の方もこれを援助するという場合が考えられます。そこで、そういうものには費用がかかるわけでございますから、その費用に対して企業が援助をする、具体的にはお金を支給するということも行われると思います。そこで、そのかかった費用に事業主がお金を支給したという場合には、限度額を五万円といたしまして、その援助のために払った金を事業主に対して国が後で、リファンドと申しましょうか、支払う。それを受講援助費というふうに呼んでおりますが、入学料や受講料として一種類ございます。  それから、受講奨励費として、通学した場合のその通学に要する費用、交通費等でございましょうが、それを一日当たり額を決め、また日数の限度も設けまして、その範囲内で支払う。もう一つ、通信教育の場合もございますので、その場合は交通費はかかりませんが、通信制の場合も費用がかかりますので、それに対して、通学の場合とは別の立て方で、限度を決めて支払う、このように考えている次第でございます。
  55. 糸久八重子

    糸久八重子君 雇用機会均等法国会論議の中でお伺いしたんですが、再雇用制度の実施率が七%とその際伺ったわけです、現在ね。この給付金が何か一億二千万の予算が入っているわけですけれども、この新設でどのくらいまで実施率を上げられるお見通しですか。
  56. 赤松良子

    政府委員(赤松良子君) これはまず、全くこれまでの再雇用制度というものとはかなり中身を限定して進めるわけでございますので、七%というのが果たして今私どもの考えでいる基準に該当するものかどうかもよくわかりませんので、それが制度ができました時点でどのぐらいそういう制度普及しているかということを見る必要があろうかと思います。  一億二千万の概算要求でございますが、これは制度を創設いたしまして最初の三年間は支払うということになっておりますので、一つ企業がずっと引き続きその制度維持している場合には三年にわたって支払うということでもございますし、また数がふえると予想されますので、この額は次第に当然増額をする必要があろうかと思っております。  御質問のどのぐらいふえるかということにつきましては、現在それほど確たる比率というようなものを申し上げるのは無理なのではないかというふうに思います。
  57. 糸久八重子

    糸久八重子君 女子雇用制度普及のあり方につきましては、婦人少年協会というのが労働省の委託で研究を続けてきたということでございますけれども、ことしの十月に最終報告が出ておりますね。その報告の要旨と労働省の受けとめ方についてお伺いをしたいと思います。
  58. 赤松良子

    政府委員(赤松良子君) 御指摘のように、女子雇用に関する研究会の報告を本年の十月に取りまとめられて、この内容についてはただいまいろいろと検討させていただいているところでございます。  これは、この制度が全く我が国で未開発と申しますか、定着していない制度でございますから、どのような制度が望ましいかというようなことを御研究いただいたわけでございます。これに当たりましては、既にいろんな形で、名前などは違うようでございますが、類似の制度がございますので、そういうところの労務担当の方々からのヒアリングも研究会のメンバーの先生方はされて、いろいろと綿密な御研究を重ねていただいたものと承知いたしております。  そこで、この研究会から出されました報告の中で、企業女子雇用制度を実施するに当たって望ましいあり方としては、労働協約または就業規則等によって明文化すること。いろいろ口約束などでなくて、はっきりした形で文章にしてお互いにわかるような形にしておくことが望ましいということ。二番目が、勤務形態は原則として退職前と同様にフルタイムの常用雇用者とすることが望ましいということ。三番目に、再雇用までの離職期間を定める場合は、女子の能力維持と育児期間の確保という両方の違った要請がございますが、そのバランスを考えて、労使双方にとって妥当な期間とすることということ。四番目が、採用予定がある場合には、企業制度対象者を優先して再雇用するよう募集、採用に当たって配慮することでございます。この四つが主な望ましいあり方として指摘されている点でございます。  そこで、こういう御意見を受けまして、労働省としてはこれを非常に有効な御示唆というふうに受けとめておりまして、企業に対してこういう望ましい制度をお勧めするというふうに考えております。  そこで、具体的には国としては、好事例について情報を集めまして、これを取りまとめて発表するというような形で、よい事例の内容がわかるようにする、情報提供をする。それから、普及が進むように国として奨励措置を講ずるということ。これが先ほど先生の御指摘のございました促進給付金の創設ということにつながると思います。奨励措置を講ずる。三番目が能力再開発の推進というようなことでございます。  先ほど申しましたように、この報告書は、この分野では非常に画期的と申しますか、新しい御提言がいろいろあるわけでございますので、女子就業が多様化している中で具体的に再就職希望者が増加しているわけで、その対策の一つとして、この報告書の内容をよりよく実現できるように努めてまいりたい、このように考えております。
  59. 糸久八重子

    糸久八重子君 先ほどもお話が出ましたけれども、男女雇用機会均等法の二十五条二項に、妊娠、出産、育児の理由に限って再雇用特別措置普及に対する国の助言、指導及び援助の義務を規定しているわけですね。女子労働者の退職理由というのは、妊娠、出産、育児ばかりでなくて、このほかに、例えば結婚とか夫の転勤とか病人の看護とかいうのがあるわけです。ただいま御説明いただきました婦人少年協会の報告の中で、やはりこの退職理由としては妊娠、出産、育児のほかに今私が挙げましたようなものが多い。したがって、妊娠、出産、育児のほかに、結婚とか夫の転勤とか家族の看病とかというものも含めるのが適当であるというふうに書かれてあるわけですね。国が援助するに当たって、退職理由の範囲をやはり拡大すべきと考えるわけですけれども、これに対してどう対応していかれるのか。特に日本の国は、高齢化社会の移行が非常に急速なんですけれども、そういう場合に家族の看病というのは特に検討に値するのではないかと思うのですけれども、この点についてはいかがでございますか。
  60. 赤松良子

    政府委員(赤松良子君) お答え申し上げます。  法律で退職理由を妊娠、出産または育児に限定した理由は、こういう理由は女子にだけしか起こりませんが、他の理由というのは男子にも起こる可能性があるわけでございます。男子にも親がある、あるいは転勤があるというようなことはございまして、女子と男子とを平等に取り扱うという観点からいえば、その男子にもある理由を書いて、女子についてだけ特別措置を設けるということの多少のアンバランスというようなことも考慮に入れて、法律にはこれだけを限定いたしましたが、実際には先生のおっしゃったような理由でやめる方はあるわけでございます。事業主がそういう理由を排除して特別措置を設けるということまで要請する必要はないのではないかという考えであろうかと存じます。  したがいまして、妊娠、出産または育児、この三つは必要最低限の条件として、就業規則、労働協約を決める場合にその三つが入っているということは必要条件であるというふうに考えるのがよろしいのではないかということだというふうに理解をいたしております。
  61. 糸久八重子

    糸久八重子君 産む性を持っている女性は妊娠、出産までで、育児はこれは男子にもあると思うのですね。ですから、そういう意味からいいますと、妊娠、出産まではいいといたしましても、育児の問題がちょっと気にかかるわけですけれども、これに関係いたしまして、育児休業制度普及対策について来年度の概算要求の中ではどう取り組んでいらっしゃるのか、その概要を御説明いただきたいんですが。
  62. 赤松良子

    政府委員(赤松良子君) 育児休業制度につきましては、六十年度に新しい要求額を、何と申しますか、制度を変えたといってもいいぐらいの大きな変更をいたしたわけでございます。  これは育児休業奨励金、五十九年度までは中小企業が三十八万、大企業が三十三万で、一企業一回限りの支給といたしておりました。これを六十年度には、中小企業は初年次六十万、二年次が四十万、計百万円、二年間にわたって支給すると、大企業は初年次四十五万、二年次三十五万、計八十万と、制度導入の誘因として実効あるものとするように大幅に増額したわけでございます。あわせて、制度の定着、円滑な運用に対して婦人少年室長がきめ細かい指導が行えるようにという趣旨も込めまして二年にわたって支給すると、このように変更したわけでございます。それは六十年度、もう既に発足しているわけでございます。  そこで、六十一年度はどうするかといいますと、これを、六十年度に発足いたしましたこの制度で少なくとも当分の間はいこうというふうに考えているわけでございます。
  63. 糸久八重子

    糸久八重子君 ことしの一月に総務庁の行政監察局が雇用保険制度の運営に関する行政監察結果報告書を提出いたしましたね。その報告書によりますと、育児休業奨励金については、「育児休業奨励金の受給を主誘因として育児休業制度を導入した企業は少なく、受給している企業の大半が私立保育所となっているなど他分野普及率向上に十分寄与していない。」、そう指摘をしているわけであります。  また、特定職種育児休業利用助成給付金については、支給実績が非常に少ない。何か五十八年度は二件だということだそうでありますけれども、育児休業奨励金への統合等を含めてそのあり方を検討せよとしているわけでありますが、こうした指摘に対する労働省対応と今後の充実策等についてお伺い。したいと思います。
  64. 赤松良子

    政府委員(赤松良子君) ただいま先生のおっしゃいました行監の指摘でございますか、それは多分この六十年度からの育児休業普及に対する奨励金が拡充する前の時点のことであったというふうに記憶いたしております。  確かに、育児休業制度普及がまだ思わしくないということは私どもも認識をしているわけでございまして、育児休業の制度がもっと普及するということが望ましいという前提で、先ほど申し上げました五十九年までの奨励のやり方がインセンティブとして十分でないのではないかという認識で六十年度の予算要求になったわけでございます。  そこで、この内容が、先ほど申し上げましたように、五十九年までのものよりも格段に進んだといいますか、増額されたものであるということに加えまして、育児休業制度普及指導員の増員も六十年度認められ、六十一年度もこれをそのラインで進めているわけでございますので、それと、増額ということの趣旨徹底をし、育児休業普及指導員を活用し、また先生御承知のように、育児休業制度普及促進旬間というものもいたしておりますので、その促進についていろいろな方向から進めているというふうに御理解をいただきたいと思います。
  65. 糸久八重子

    糸久八重子君 大臣にお伺いいたしますけれども、働く女性が非常に多くなりまして、出産後も働き続けられるために、私どもが何度も提出しております育児休業法の早期の成立をぜひとも要望したいわけでありますが、その辺につきまして大臣の御見解をお伺いいたします。
  66. 赤松良子

    政府委員(赤松良子君) 育児休業法案についての社会党提案、何度か国会でなさっておりますので、いろいろと研究をさせていただいているところでございます。  ただ、この点につきましては、五月に成立いたしました雇用機会均等法の中で新たなと申しますか、従来からの育児休業の普及についての条文を二十八条に引き継ぎ、かつ二項に、二十五条二項の規定を準用するというふうに、新たな規定を起こしたわけでございます。二十五条二項の規定というのは、「国は、」「再雇用特別措置普及を促進するため、必要な助言、指導その他の援助を行うように」という規定でございますので、これは育児休業の普及について新たにそういうことを国がやるという姿勢を示したものでございまして、この二項に基づいてただいまの、六十年度の予算要求増額あるいは普及指導員の増員ということが実現したというふうにも思われるわけでございます。  そこで、六十一年度以降は、まさにこのところが発効するわけでもございますので、そのような方法で育児休業の普及をいましばらく進めたい、このように考えております。
  67. 糸久八重子

    糸久八重子君 次に、「国連婦人の十年」が終わりまして、ナイロビ世界会議では二〇〇〇年に向けての将来戦略が採択をされました。メキシコ会議で採択されました世界行動計画、それからコペンハーゲンでの世界行動プログラムに基づいて政府は日本の行動計画を、そしてプログラムを作成してこの「国連婦人の十年」に対応したわけですけれども、二〇〇〇年の将来戦略に対してどう対応していくおつもりなのか、お伺いをしたいと思います。
  68. 赤松良子

    政府委員(赤松良子君) ナイロビへ私も参りまして、その二〇〇〇年に向けての戦略が採択された瞬間にも立ち会ったわけでございますが、これがこれまでのコペンハーゲンのときの後期重点目標などと異なりまして、世界じゅうの方たちがコンセンサスでこの採択に参加をされたということは、大変意義の深いことだというふうに感じた次第でございます。  そこで、我が国では、メキシコの行動計画のときに総理府に事務局を置いております婦人問題企画推進本部が、このメキシコの世界行動計画を国内に取り入れるために国内行動計画を制定し、その線で推進本部が推進してきたわけでございますが、このたび「十年」が終わって新たなストラテジーが設けられたと、戦略が設けられたということでございますので、当然、これまでの行動計画にプラスして何を国内でするべきかというようなことは、この二〇〇〇年に向けての戦略をよく検討いたしまして、内容をつぶさに読み、そして我が国にとって何が必要であり、また何がより重要であるかというようなことを検討しなければならないというふうに考えております。これは、政府内で今後早急に検討がなされるものというふうに私は理解をいたしております。
  69. 糸久八重子

    糸久八重子君 次に、労働省がまとめました男女雇用機会均等法の指針案と省令案につきましてお伺いをしたいと思います。  差別解消のために事業主が行う具体的措置を定めた指針や省令がどのような内容を盛り込むのか大変注目をしてきたところでございます。しかし、その内容は率直に言って非常に問題が多いと言わざるを得ません。均等法の目指すものは、働く女性の地位向上にある、この原則にしっかりと根差した指針、省令でなければならないと思います。  均等法の二条の基本的理念の中には、女子労働者が「母性を尊重されつつしかも性別により差別されることなくその能力を有効に発揮して」と書かれてあるわけです。しかし、今回の指針・省令案は、この基本的理念を十分に反映しているとはとても思えないわけです。この指針・省令案では、現状の男女雇用差別を固定化し、女子の時間外労働が歯どめなく拡大するおそれさえあると思うのですけれども、指針・省令案に対する大臣認識についてお伺いをしたいと思います。
  70. 山口敏夫

    国務大臣山口敏夫君) この男女雇用機会均等 法は、来年の四月から施行される、こういうことでございますが、先生もいろいろ御承知いただいておりますように、六十年の就職戦線におきましても、かなり女子の採用、また雇用拡大というものが顕著に各事業所等において見られるわけでもございます。そういうことで、中身を十分詰めていかなければならないわけでございますけれども、総論としては、各企業また人事担当者に、女子雇用機会をひとつ平等に公平に拡大をしていかなきゃならない、こういう機運が出てまいりましたことは、大変この法律の趣旨からいいましても結構なことではないか、これをさらに趣旨徹底をしていかなきゃならない、かように考えておるわけでございます。  そういう状況の中で、要は実行可能な省令・指針案等を関係審議会に諮問しておるわけでございまして、これは九月中旬から十月初旬にかけまして、労使双方からのヒアリングで出された意見各種の統計調査というものを科学的にもいろいろ把握した企業雇用管理の実態、女子労働者就業の実態、さらに女子就業自身の意識等を踏まえながら、現状を固定的に考えずに、男女の均等な取り扱いの確保を着実に進めていく、こういう認識を持ちまして作成をさしていただいたわけでございます。  これが施行されますと、企業雇用管理の改善が進められるというふうに考えておるわけでございますし、女子労働者がその能力を十分発揮できる仕組みが逐次整っていくものと期待をしたいわけでございます。機会均等実現に向けて一歩一歩前進をしていく、そういう中でいろいろ試行錯誤もございましょうけれども、ひとつ公平な平等な男女の雇用機会の均等というものを大きく前進し、確立をしていきたい、こういう決意もございますので、この経過につきましてもよろしく御理解をいただければと考えるわけでございます。
  71. 糸久八重子

    糸久八重子君 指針案の前書きを見てみますと、「企業雇用管理の実態、労働基準法における女子労働者労働条件に関する特別の規定の現状、女子労働者の平均的な勤続年数等の女子労働者労働条件、意識及び就業の実態等を考慮して」と書かれてあるわけですけれども、これは現状追認的で、真のあるべき姿を追求していこうとする視点が欠けているのではないかと思います。現状重視では前進がないわけでありまして、積極的に現状を変えていく方策をとっていかなければならないのではないかと思いますけれども、指針案の作成に当たっての基本的な態度についてお伺いしたいと思います。
  72. 赤松良子

    政府委員(赤松良子君) ただいま御指摘の前書き、「はじめに」という部分でございますが、具体的には現状をいろいろ考慮する必要があるというふうに私どもは考えだということは御指摘のとおりでございます。現状から余りにも遊離したものはワークをしないということは、法律をつくる場合にも考え方として申し上げたところでございますが、この指針案についてもそのとおり考えているわけでございます。私どもとしては、目指すべき方向はしっかりと目指しつつ、しかし現状から余りに離れないと、それを一歩一歩変えていきたいということでつくられたものでございます。  これは、例えば審議会の建議の中にも示された考え方でございまして、「現状固定的な見地ではなく、長期的な展望の上に立って行うことが必要」であるが、「その内容は将来を見通しつつも現状から遊離したものであってはならず、女子労働者就業実態・職業意識、我が国雇用慣行」等、「社会、経済の現状を十分踏まえたものとすることが必要である。」という考え方をお示しいただいているわけでございます。また、法律の中にも、指針を定める場合には、女子労働者福祉対策基本方針を定める際における注意事項が書かれておりますが、それと同じものを考慮に入れると、読みかえるというふうに書かれているわけでございまして、「女子労働者福祉対策基本方針は、女子労働者労働条件、意識及び就業の実態等を考慮して定められなければならない。」というふうに書かれているところで読み取るわけでございますので、実態から離れたものが機能しないということはこの法律によっても書かれているわけでございます。しかし、それを固定化しようなどと思っているわけでは全くございませんで、これを変えたいという意欲を強く持っているわけでございます。
  73. 糸久八重子

    糸久八重子君 少々具体的な問題について入りたいと思いますけれども、第一に、募集、採用、配置、昇進についての指針案が、事業主に求める努力義務が非常に緩やかである点であります。例えば募集、採用については、何が差別になるかというのを示すのではなくて、女子を排除、不利なものとしないとするにとどまっておりますね。具体的に女子のみ採用とか男女別に募集、採用枠を設けること、補助職女子のみ採用は指針案に照らしてどのような取り扱いになるのでしょうか。
  74. 赤松良子

    政府委員(赤松良子君) 指針案に書かれているのは、非常に具体的に、こういう状態があればそれをなくすようにというふうになっているわけでございます。これは法律では、募集、採用については「女子に対して男子と均等な機会を与えるように努めなければならない。」というふうに書かれているわけでございまして、非常に法律の規定自体は広いわけでございます。指針案はその中で特に、当面と申しますか第一歩として、早くなくすことを企業に対して求めるものを具体的に示したわけでございます。  したがいまして、ただいまお尋ねの点につきましては、男子のみという分野がなくなり、その分野には男女に対して門戸が開放されていれば、それに追加的に女子のみの機会が提供されているということはこの指針案に該当しないわけでございます。
  75. 糸久八重子

    糸久八重子君 男子のみ募集という公募の仕方や、年齢や結婚の有無などを理由として女子を不利に扱うやり方はなくなるわけで、この点は評価ができるとしましても、男女別に募集、採用枠を設けることとか、例えば女子パート募集とか受付嬢募集とかといった女子のみ採用は規制外になる。このことについて、五十七年の男女平等問題専門家会議報告とか、それからさきの国会での労働省の答弁では、男女別枠採用とか女子のみ採用などの是正に積極的な姿勢を示していたわけでございますけれども、そういう意味からいいますと、この部分は後退ではないかと思うのですけれども、いかがでしょうか。
  76. 赤松良子

    政府委員(赤松良子君) 先生指摘の男女平等問題専門家会議報告で掲げられておりますのは、男女異なる取り扱いの事例を全般的に掲げられているわけでございます。したがって、この中には合理的な理由があって排除できないというような異なる取り扱いも含まれていることもあり得るわけでございます。そこで、こういうものを異なる取り扱いとしてとにかくリストアップしたのがこの場所でございます。  そこで、国会お答えいたします際に、こういうものは労働省案を作成する場合に検討の対象となるというふうにお答えしたわけでございまして、こういうものを、異なる取り扱いをすべて私どもは検討の対象にいたしました。その上で、先ほどから大臣お答え申し上げておりますように、一歩一歩変えていくその第一歩としてこのたびの指針案を決めたと申しますか、まだ決めておりませんが、御諮問しているわけでございまして、その第一歩という観点から、ここに掲げられているものすべてを指針案の中に盛り込んでいないということになったわけでございます。
  77. 糸久八重子

    糸久八重子君 女子だけの追加募集というのを労働省がおっしゃっているようですけれども、女子就業機会を広げこそすれ門戸を狭めることにはならない、そうおっしゃっているようですが、この十年間女子雇用率というのは大変ふえているわけですね、男子の三倍以上になっている。ところが、その大半は低賃金のパートとか補助職で、そして企業も女性を雇うのは人件費の節約のために雇っているんだということを率直に認めているわけです。やはりこういうことをしていると、働く女性はふえたけれども、男女の賃金格差 というのは拡大するばかりではないか、そう思うわけです。  だから、このような格差をなくすためには、低賃金の女子雇用者をふやすのではなくて、男と女の領域の枠を外すことが条約の精神ではないかと思います。ですから、男子のみとともに女子のみの募集採用をやめなければ、この低い条件の女子のみの領域というのは温存されてしまうのではないかと思いますけれども、やはりこの規定は、一方の性のみを募集することはやめるというふうにすべきだ、そう私は思うのですが、いかがですか。
  78. 赤松良子

    政府委員(赤松良子君) 仮にパートの募集について男女としたらどうなるかということを考えますと、パートタイムの労働条件等から見て、男子がそれに応募するということはほとんど考えられないのではおいかというふうにも思われるわけでございます。そのようなことを今の段階でして意味があるかということも考えて、最初の第一歩として適当であるとは考えられないというふうに私どもとしては結論を持っているわけでございまして、まず最初すべきことは、女子を排除しているところで女性が排除されないようにすること、それから基準を設けている、それも客観的な基準を設けている場合に女子を不利益な条件にしないこと、これが最初にすべきことではないかというのがこの指針案の考え方でございます。
  79. 糸久八重子

    糸久八重子君 一方で募集、採用の門戸を開放しておきながら、何年もその採用がゼロという場合も想定されるわけですね。例えば募集をしても、転勤がありますよとかそれから海外勤務がありますよとか、それから出張が多いとか得意先とのおつき合いも多いんですよというような、そういう女性が嫌気が差すようなことを言って事実上その採用をゼロにしてしまうという、そういう企業の知恵も出てくるのではないかと思いますけれども、そういう何年も続いて採用がゼロというような場合にどのように対処なさいますか。
  80. 赤松良子

    政府委員(赤松良子君) この法律、指針ともに漸進的に現状を変えていこうという考えが基本にあることは再三申し上げたとおりでございます。  したがって、いろいろな状況が全く変わらないということであれば、この指針が有効に働いていないということにもなるわけでございますから、そのような状況はよく検討をして、実態を見きわめつつ次のステップということは当然考えられ得ると思います。
  81. 糸久八重子

    糸久八重子君 時間が参りました。  この指針・省令案につきましては大変中身に問題のある点が多うございます。審議会もまだ開かれておらないようですけれども、審議会の中でもこれからもんでいくのではないかと思いますが、冒頭申し上げましたとおり、やはり女性が働き続けるためにどのように差別をなくしていかなければならないかということがこの均等法の一番大きな精神でございますから、それに見合うような立派な省令案をこれからも審議会の中で審議していっていただきたいし、また国会の場でもこれから論議をしていきたいと思います。  ありがとうございました。
  82. 岩崎純三

    委員長岩崎純三君) 午前の質疑はこの程度にとどめ、午後一時まで休憩いたします。    正午休憩      ―――――・―――――    午後一時二分開会
  83. 岩崎純三

    委員長岩崎純三君) ただいまから社会労働委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、労働問題に関する調査を議題といたします。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  84. 中西珠子

    中西珠子君 大臣が御都合で後からお見えになるそうでございますので、大臣への御質問は後に譲らしていただいて、ちょっと具体的なことを先にお聞きしたいと思います。  機会均等法とそれから労働基準法改正案にかかわる省令の案と指針の案というものが関係審議会に答申を求めるために諮問になりましたが、それに関しましては、大臣の基本的なお考えとそれから婦人局長の基本的なお考えは、先ほどの糸久委員の質問に対してお答えになりましたので、私はすぐに具体的な問題に入らしていただきたいと思います。  この指針の案の中で、一応男子を女子と同じように扱う、逆に女子は男子と同じように扱うと。そして、やってはいけないことというふうないわゆるネガティブリストの形で列挙されているという点は、これまでの非常に問題になってきました女子労働者に対する差別的な慣行というものを、こういうことはしてはならないという形でお示しになっていて、非常にその点は評価をいたす次第でございますけれども、先ほどもちょっと出ましたけれども、そのネガティブなリストに入っていないもの、例えばパートは女子のみでもよいというそういうやり方というのは、やはり労働条件の悪いパートに女子を固定してしまうというふうな、そういう現状固定ということになるという批判があると同時に、これから高齢化社会に向けて結局中高年の男性のパートもふえてくるのではないかと。女子労働条件が悪いから、女子労働条件のような悪い条件で男性はパートには応募しないだろうというお話も先ほどありましたけれども、しかし労働省としては、高年齢者雇用対策として短時間雇用の助成金をお出しになっておりまして、そして、男性も六十歳以上の定年退職後の人はできる限り短時間労働でも雇用を続けることができれば、そういう雇用に対しては助成をするという方針でいらして、今年度の予算の中にもそれが入っておりますし、また六十一年度の予算の中にもやはり助成金として計上していらっしゃると聞いております。新聞報道などによりまして、女子のみパート募集というふうなことは全然構わないのだというのは、これは男性に対する逆差別ではないかという論調もあるわけでございます。  それで、労働省が現にやっていらっしゃる高年労働者に対する雇用対策として、短時間雇用を助成金をもって奨励しているという政策と、女子のみ募集はパートなら構わないというふうなこととは矛盾するのではないかという感じがするんですけれども、いかがなものでしょうか。
  85. 赤松良子

    政府委員(赤松良子君) お答えいたします。  この指針案は、女子に対する差別をなくすという観点からつくられているわけでございまして、法律の立て方もそのようになっているわけでございます。  女子パートという募集の仕方は、男子フルタイム、女子パートタイムという募集であれば、これはこの指針案からいって当然になくしていただきたいと思っている対象に入るわけでございます。その点を見逃してパート女子がいいというのであれば、それは理解が間違っているというふうに考えるわけでございます。フルタイム男女であれば、パート女子でもよいというにすぎないのでございます。  また、先生の御指摘の後半の方でございました、男子にもパートになりたい人はふえるであろう、それはそのような趨勢にあるかとも存じますが、それについては別途パート男子の老年等の方の就業分野を広げるということは労働省としてしているところでございまして、この指針案が進めようとしていることは、女子の差別をなくしていこうということであるという本質について御理解をいただきたいと思います。
  86. 中西珠子

    中西珠子君 男女の差別をなくしていくということが本旨であるとおっしゃいましたし、また、フルタイム男子のみ、パートは女子のみでなければいいのだというお話はよくわかりました。結局、パートにならざるを得ない女子がふえてくるであろうという見通しは間違いないのではないかと考えているわけで、一方また男性のパート志望者も高齢化社会の進展につれて出てくるのではないかというふうに考えております。  ですから、当分の間はパートは女子のみというやり方は容認されるということでございましょうけれども、これは中長期的に考えると、やはり変えていかなくちゃならないのじゃないか。男女の何々のみという採用の仕方というのは変えていか なければならないのではないかと考えます。  ただ、指針案の適用除外のところでございますが、この適用除外の(2)のところでは、結局保護を理由とする差別を温存することになるのではないかという心配があるのでございますが、これはどうでしょうか。
  87. 赤松良子

    政府委員(赤松良子君) 適用除外のところの(2)でございますが、「いずれかに該当する場合については、この指針を適用しない。」ということで、「労働基準法六十四条の二から六十四条の四まで又は六十四条の五第二項の規定により」ということになっております。「又は禁止されていることから、通常の業務を遂行するために、」という文言も入れてあるわけでございまして、通常の業務を遂行するために必要もないのに口実として使うというようなことはないようにという注意も払ったところでございます。  もともと、労働基準法の保護規定障害になるということがあり得るというのは、このような保護規定があることのやむを得ない結果でもございまして、一定の限度においてやむを得ない。それを理由にして何でもかでも排除するということは当然排さなければならない。そのことは、先ほど申し上げましたように、通常の業務に必要なという表現によってその必要最小の限度を示したものというふうに御理解いただきたいと存じます。  これにつきましては、男女平等問題専門家会議報告にも、既に「雇用における男女平等の判断基準の考え方について」示した部分で、「法律上の男女異なる規定により女子に対し一定の就業制限が課せられるために企業において男女異なる取扱いをする場合には、個々の実態に応じて具体的に判断されるべきであるが、原則としてその取扱いは妥当なもの」であるとされているところでございます。
  88. 中西珠子

    中西珠子君 女子労働者に対する保護というものは、結局女性の母性機能というものに対する保護だということが言えると思うんですね。女性の母性機能というのは、個々人の問題ではなくて、社会的な機能であるということはILOも国連も言っているし、また最近日本が批准いたしました女子差別撤廃条約の中でも言っているわけでございますから、母性機能の保護というものによって男女異なる扱いをしてもいいのだということになると、これまで男女差別の理由として挙げられたものの中に保護法規があるからだという理由が随分挙げられてきたわけですけれども、そういった女の人には保護があるから同じには扱えないという、保護か平等か二者択一というそういう考え方にくみするようなことにならないかという心配があるわけなんですけれども、この点は「通常の業務」ということで限定すれば大丈夫だという今お答えでしたけれども、何か非常に差別を温存するという方向につながらないかなという危険があるわけです。もうお答えがお済みになったのだったら結構ですけれども、まだおっしゃることがあればどうぞ。
  89. 赤松良子

    政府委員(赤松良子君) ここに掲げられておりますのは、労働時間の制限及び深夜業が入っているわけでございまして、この保護については、私どもの考えでは母性保護というふうには考えていないわけでございます。条約におきましても、母性保護と言われるものの範囲は非常に限定して考えられているわけでございまして、産前産後の休業等直接女子の出産ということに関係のある女子についてのみある機能に対する保護ということになっております。  先生御専門でいらっしゃいますから、くどくど申し上げる必要はないと思いますが、母性保護という言葉は大変広く使われるときもございます。また歴史的には余り限定されないで使っていたというような時代もあったというふうに私は理解しております。しかし今日では、特に女子差別撤廃条約の中において、これが国連で議論されておりました委員会等で、これを広く解することはかえって女子の進出との間の矛盾ともなるというようなことから、各国政府代表はこれを限定的に解するという方向で審議が進められたというふうに承知をしているところでございます。我が国も批准をするに当たりまして、この条約の中での母性保護という言葉はそのように限定的に解し、それと軌を一にして機会均等法もつくり、労働基準法の改正も進めたわけでございまして、したがって、先ほど問題になりましたところを母性保護という観点から男女の平等と矛盾をしないというふうにとらえるという考え方は私どもはいたしておりません。ここに掲げられておりますのは、母性保護という観点からの保護ではなくて、女子労働一般についての保護でございます。  そこで、これは基本的には、将来を見通して長い展望に立ては、男女同じにすべき性質のものだというふうに思いますが、なぜ今回の基準法改正でもこの部分について残したかといえば、それは母性保護の観点からではなくて、女子が現在の社会でなお家事負担、育児負担等いわば家庭責任と呼ばれているような責任を男子よりも重く負っているということに着目して、それを直ちに男子と同じにするということは弊害が起こるのではないかという考えから残したものでございますから、その点は明らかにいたしておきたいと存じて再度立った次第でございます。
  90. 中西珠子

    中西珠子君 週四十時間が定着しているような西欧におきましては、労働時間の問題とか、それからまた年次有給休暇も最低が二週間、多いときには三週間、四週間もあるというふうなそういう国におきましては、時間外労働の制限とか深夜業の制限というものが全然なくても母性というものが損なわれないと思うんですけれども、やはり日本はそこまでいっていませんから、欧米諸国、西欧諸国と同じような考え方で、母性保護は出産、妊娠、そういったものだけに限定して、そして出産休暇だけに限定するという考え方は今の日本においては私は無理だと考えているわけです。ですから、母性機能というものは社会機能という考え方なんだから、そういう考え方も日本で少し持っていただいて、そして社会的にやはり保護していくという観点が必要ではないかということを申し上げたわけでございます。  次の適用除外の(3)でございますが、「風俗、風習等の相違により女子が能力を発揮し難い海外での勤務が必要な場合」、これはもういろいろ国情が違いまして、イラン、イラクのように回教徒の国では女性が顔も隠していなければならない、男性と伍して同じような場所に出てくることは全然できないというふうな国もありますから、これはわかるんですけれども、その次に、「その他特別の事情により女子に対して男子と均等な機会を与えること又は女子労働者に対して男子労働者と均等な取扱いをすることが適当でないと認められる場合」、これは、こういうふうに大変抽象的に指針をお決めになりますと、何でもかんでも「その他特別の事情により」ということにされないかという心配があるのですが、これは具体的にはどのような場合をお考えでいらっしゃいますか。
  91. 赤松良子

    政府委員(赤松良子君) これは、例えば通勤不可能な遠隔地で業務をしなければならない、そしてそこには、一般的な宿泊施設などがなくて、事業主が提供する宿泊施設しかない、それを利用する以外にはそこで業務をする方法がない、しかもその当該宿泊施設は男女がともに利用することが不可能、風紀上非常に問題になるとか、そういうような場合を想定しているわけでございまして、とめどなく広がるというようなことは考えていないわけでございます。
  92. 中西珠子

    中西珠子君 とめどなく広がることは考えていないとおっしゃいましても、これは特別の事情であるという主張を使用者側にされた場合困るのではないか。指針である以上、やはり具体的な例示を入れていただきたいと思います。これは要望でございます。  前の方にせっかくネガティブリストとして具体的な例をお入れになっているんですから、適用除外のところにも、「その他特別の事情により」なんというやり方にしないで、「海外での勤務が必要な場合」というのは別個にとっていただきまして、そしてその次に国内での特別の事情として例 示をしていただきたい、具体的な例をやはり挙げていただきたいと思います。これは要望でございます。もう既に審議会にかかってしまっておりますから、労働省の方でどうなさることもできないというお答えが出ればそれでもう仕方がないことですけれども、誘導なさることはできると思うんですね。審議会の方の審議労働省としてはこういうふうにした方がいいと思うというふうなことはおっしゃれるんじゃないかと思いますので、私の希望といたしましては、やはり具体例を挙げていただきたいということを申し上げます。
  93. 赤松良子

    政府委員(赤松良子君) 具体例を挙げるということは不可能なことはないのかもしれません。この場合は、特別の事情により男子と均等な機会を与えることが適当でないということは、この上に掲げたものに準じたような場合を考えているわけでございますが、ただいまの先生の御要望は、審議会ではこれから審議されるわけでございますから、審議会の審議におきましてお伝えするということは可能でございます。
  94. 中西珠子

    中西珠子君 じゃ、どうぞよろしく具体例を挙げるような方向で御努力願いたいと思います。  それから今度は、機会均等法の施行規則の案の方に移らせていただきますが、これは全くの質問なんです。  それで、まず福利厚生のところで、これは差別禁止規定になっておりますけれども、福利厚生の目、「労働者の資産形成のために行われる金銭の給付」、これは具体的にはどういうものを考えていらっしゃいますか。
  95. 赤松良子

    政府委員(赤松良子君) これは労働者の貯蓄あるいは持ち家の取得等に対する援助が考えられるわけでございまして、具体的には、勤労者財産形成促進法に基づいて財形貯蓄がやられる場合に奨励金を支給するというような事業所もあると聞いております。また、自社の株式でございましょうが、株式取得のための奨励金を出す、あるいは社内預金制度に基づいてそういう社内預金をする場合には利息の支払いなどをするというのがこれに当たるものというふうに考えております。
  96. 中西珠子

    中西珠子君 次に、機会均等調停委員会の方に移りたいと思いますけれども、機会均等調停委員会の機能、実効性というものについてはもうさんざん審議の段階で申し上げましたけれども、一応法案が法律として成立したわけでございますし、このような細かい規則をおつくりになったということは評価いたします。殊に調停案の受諾期間というものがないということを盛んに申しましたけれども、今度はその調停案受諾の勧告の(八)のロの中に、受諾すべき期限を定めるというふうなことをお入れいただいたことなどは評価いたしております。  しかし、この機会均等調停委員会の調停にかけるかどうかというふうな問題の判断、それから都道府県婦人少年室長の紛争解決の援助、これはもう現在の都道府県の婦人少年室の現有勢力ではとてもこれだけのものをこなしていくことはできないんじゃないかと思って大変心配をしているわけですけれども、これは、現在の定員とかそういったこともございますでしょうから、どのようにこれからやっていらっしゃるつもりか、人員の増強とかその他のことについてどのようなお考えかということをお聞きしたいわけです。
  97. 赤松良子

    政府委員(赤松良子君) 御指摘のように、この法律の施行、なかんずく調停委員会の事務局としての業務は婦人少年室長の重要な機能になるわけでございまして、これについては先国会、先々国会でその充実強化ということが必要であろうという御指摘がなされたところは私もよく記憶をいたしております。また、それに先立って婦人少年問題審議会などにおきましても建議の中で、同室の体制の充実強化を図ることはぜひとも必要という建議をいただいているところでもございます。  そこで、労働省といたしましては、婦人少年室の体制の強化ということをこの法律の成立後の最大の課題とも考えているところでございまして、本年の十月一日からは機会均等指導官という新しい職務の者でございますが、これはとりあえず六十年度は四人認められた、これは純増でございますが認められましたので、これを直ちに四室に配置をいたしました。来年度以降も職員の増員に努めることとしているわけでございます。  また、単に数がふえるというわけではなくて、その職責を担うに足る資質を持った者が配置されるということが必要であることは言うまでもないことでございますので、その資質の向上のための研修の実施等を重点的に行っていきたいというふうに考えております。
  98. 中西珠子

    中西珠子君 機会均等指導官をたった四人命度はおふやしになるということでございますが、たった四人しか認められなかったというのは本当にひどい話でありまして、これは全都道府県婦人少年室に一人ずつ配置していただきたい、私はこのように希望しております。行財政改革のときで、人数をふやすことも、また予算をふやすことも一挙にはできないということはわかりますけれども、この法律の施行が来年の四月一日からということになりますと、せっかくこの十分とは言えないながらも婦人を差別から救済する救済措置としての婦人少年室の権限の行使、また機会均等調停委員会に対する婦人少年室のいろいろのサービスが必要でしょうし、援助も必要でしょうと思いますので、これはもう早急にやはり人員をふやして、そして十分な体制をとっていただきたいということを心から要望いたします。これは必要でしたら、大蔵省へでもどこへでも出かけていって応援して、そして少しでも予算を多く取りまして、四人などということではなく、もっと人数を多くしていただくように、全県、全日本というわけにはいかなくても、少なくとも四人というのじゃなくて、もっと多くするという方向で私も努力させていただきたいと思います。  次に移りますが、女子労働基準規則、この案でございますが、非工業的事業の時間外労働の上限を四週三十二時間、年間二百時間となすった理由についてお伺いしたいわけでございます。  使用者側は、これでも緩和の仕方が少なくて、もっともっと時間外労働はさせるべきであるという考え方の使用者側が多いというふうに聞いておりますけれども、一日二時間の制限が外れて、一週間についての制限も外れていて、四週三十二時間ということになりますと、一週間に二十時間、三十時間させることも可能だということにもなりますし、先ほど局長もおっしゃいましたけれども、女子労働者で殊に家庭責任を負っているという人は、フルタイムでは働けなくなってしまって、パートにならざるを得ないというふうなことになるのではないかと考えまして、もちろん週四十八時間という上限ではない、また年間三百時間という法律の中の上限ではない、ちょうど真ん中辺になすったという御苦労のほどはわかるんですけれども、これはやはり何か根拠があってこういうふうにしましたという御説明がないと、私の方も婦人の労働者方々にお話しするときに困るので、どのような理由でこういうふうになすったかをお聞かせ願いたいと思います。
  99. 赤松良子

    政府委員(赤松良子君) 先生おっしゃいましたように、これは法律でゆだねられた規則のつくり方として、その限度内におさめたものであることは言うまでもないわけでございます。四週四十八時間に全くなってしまったかのような御質問も私はここで受けた記憶がございますが、そのような極端なことにはすることが適当でないとあのときも思っておりますたが、今もそういうふうに思っているわけでございます。  そこで、この根拠でございますが、まず週単位。で決めるということではやはりこれが非工業的な事業でございますから、いろいろと繁忙期もあるというようなことで、週単位に決めた場合にはそういうことに要請に応じられない、使用者からばかりではなくて、女子労働者自身の中にもそういう声もあるわけでございます。  また一方、男子の時間外労働協定というものを見まして、男子の実態がどういうふうになっているかということを考えることも必要であろうというふうに考えたわけでございまして、男子の場 合、御存じのように、基準法三十六条の協定で、法律上は制限がございませんけれども、労働基準局が時間外協定に対する指導の中で、延長時間に関する指針という形で目安が示されているのは御承知のとおりでございます。その場合、四週単位で協定する場合は四十八時間という目安が示されておりますが、これと直ちに一致させるということは、先ほどの女子の家庭責任を負っている状況等を考慮すればそれは適当ではない、一気にそこまで緩和するのは適当ではないという判断をいたしました。  また、男子の時間外労働協定、実際にどのぐらいやられているかということを見ますと、一カ月の延長時間、協定しているものは結構あるわけでございますが、三十時間以下を協定しているものが三六%、四十時間以下を協定しているものが五四%でございます。また、第三次産業におきまして男子の月間所定外労働の実態を、これは統計でございますが、見ますと、三十二時間以下のものの割合が八五%でございます。また、非工業的事業において、繁忙期の四週について男子の長い法定外労働の実態を見ますと、これは四週間で三十二時間以下のものの割合が七二%でございます。  このような実態あるいは指導の目安などを総合的に判断いたし、勘案はたしまして、繁忙期においても女子が職責を果たすことができるようにという観点も加えまして、四週三十二時間が適当と考えたものでございます。
  100. 中西珠子

    中西珠子君 わかりました。  次に、時間外労働の制限が解除される者の範囲についてでございますが、これは「業務を遂行するための最小単位の組織の長である者又は職務上の地位がその者より上位にある者で、労働者の業務の遂行を指揮命令するものとする」、こう書いてあるんでございますけれども、たくさんの女子労働者の方が私のところにいらっしゃいまして、そしてこの「業務を遂行するための最小単位の組織の長」なんといったって、長という名前だけをつければ、部下がいなくても時間外労働が無制限にやらされることになるんじゃないかと心配している人がいるわけですね。こういうところはどのようにはっきりと指導なさいますかお聞かせいただきたいと思うんです。まだこれ決定しているわけじゃございませんけれども、一応これは法律の中にも書いてある中身をお書きになったわけですから、具体的にそういうことはあり得ないということをお聞かせ願えれば非常にたくさんの人が安心するわけですので、御意見を伺いたいと思います。
  101. 赤松良子

    政府委員(赤松良子君) 「労働者の業務の遂行を指揮命令する職務上の地位にある者」という内容でございますが、「業務を遂行するための最小単位の組織の長」ということでございまして、あるいは「職務上の地位がその者より上位にある者で、労働者の業務の遂行を指揮命令するもの」ということでございますので、少なくとも部下があるということが条件でございます。名前が課長だとかあるいはもっと上の名前がついていても、部下がないと、名前だけが長であるというような者はこれに該当しないわけでございます。
  102. 中西珠子

    中西珠子君 部下が一人いてもよろしいわけですね、一人でもいいわけね。そこの限定はないわけですね。
  103. 赤松良子

    政府委員(赤松良子君) 部下の数についての限定はございません。
  104. 中西珠子

    中西珠子君 それから今度は専門職のところでございますが、(二)のヌのところに「情報処理システム」というのがございますね。この中で結局カバーされるのはシステムエンジニアとアナリストだけで、プログラマーは入らないのでしょうか。
  105. 赤松良子

    政府委員(赤松良子君) おっしゃるとおりでございまして、システムエンジニアとアナリストは入りますが、プログラマーは入らないというふうに解していただきたいと存じます。
  106. 中西珠子

    中西珠子君 では次、深夜業についてお聞きいたしますが、深夜業に従事を申し出た者というものは基準監督署長の許可があればできるということになるわけで、これは結局一応タクシー、ハイヤー業だけというふうにやっていらっしゃるわけでございますが、ここで心配されているのは、これ私は法案審議中にも申しましたけれども、二度も申しまして、そして確認答弁もいただいたわけでございますけれども、強制的に申し出をさせられるという心配がある。これは深夜業をやらなければ雇いませんとか、深夜業をやらなければ解雇するというふうなおどしを受けて、どうしてもそれじゃ深夜業やりますということになって、それで本人が深夜業をやりたいという申し出をしたという形をとられるのではないかということをたくさんの婦人労働者が心配しているわけなんですけれども、そういう心配がないように、果たして深夜業をやるということが労働者の本当の要望なのか、労働者の真意というものが十分確認できるような方法を手続上とりますというふうに、私が六十年四月十一日の社労で申しましたときもお約束されましたけれども、六十年の四月二十五日にも確認をいただいておりますんですが、ここに出ております手続を見ますと、労働者の真意が果たしてこれでわかるかという心配が非常にあるわけですね。そして結局不承認の決定をした場合は、「申出労働者にその旨を通知しなければならない」とありますけれども、その前の段階で、果たして労働者が本当に深夜業に従事することを欲していて申し出たかどうかという点についての確認がこれでできるのかどうかということが心配なんですが、どうですか。
  107. 赤松良子

    政府委員(赤松良子君) この法案審議の段階で、この場所で問題になったことは、一つは、深夜業に申し出によって禁止が解除されるということが非常に広がって、深夜業をだれでもがさせられるようになるのではないかという疑念があったと思いますが、その点につきましては今度の省令で、現在の書き方でタクシー、ハイヤー業においてのみ、これが省令に掲げられたということで、その点についての疑念はなくなったものと信じております。  それから、申し出が労働者本人の真意に基づくものであるかということにつきましては、基本的に申請を書面で出していただくわけで、書面には、女子労働者の署名あるいは記名押印のある書面、要するに本人でなければ書けない申し出の書類を添付することが条件になっているわけでございます。したがって、その書面が添えられているということによって確認し得るものと考えておりますが、しかしなお、その書面だけで真意の存在が疑わしいと考えられるような場合があれば、これは必要に応じて電話等によりまして直接その本人に確認をするということにいたしたいと考えているわけでございます。
  108. 中西珠子

    中西珠子君 この記名捺印というのは、判こも預けてあるし、また向こうで使用者側が便宜上判こをつくっているという場合が非常に多いわけですし、記名というのも、自分で書かなくても人に書かせるということもあるわけですし、この書面によって記名捺印があるから大丈夫だということは言えないと思いますので、やはり電話などで確認をするという手続を御面倒でもとっていただきたいと思います。これは要望です。ぜひとっていただきたいと思います。  それから次に、もう時間もございませんので移りますが、臨時の必要のため坑内で行われる業務について、これは医師、看護婦、それから新聞、出版、放送番組の制作の事業における取材の業務というふうになっておりますね。これを一応妊娠中の女子であれば、こういった業種であっても、またこういう業務に携わっていても、臨時に坑内に入れて業務をさせるということはない。しかし産婦、いわば法律によると「産後一年を経過しない女子」という場合には、業務に従事しないことを申し出たときと書いてあるんですね。この申し出た者だけに限定なすった理由はどういう理由でございますか。そしてまた、申し出るのはいつ申し出ればいいんですか。とにかく坑内に入ってやりなさいと言われたときに申し出たのではもう遅いということで、出産休暇の後すぐ事前に申し出ておくのか、それともやはりその都度その都度言 うのか、そこのところを御説明いただきたいと思います。
  109. 赤松良子

    政府委員(赤松良子君) この申し出につきましては、なぜ妊婦については申し出でなく、産婦について申し出ということにしたかという理由でございますが、坑内の狭いこと、あるいは階段などが多いこと、粉じんが多いこと、高温多湿であること等の状況から、妊婦にとっては全く無条件に好ましくないというふうに考えたわけでございます。    〔委員長退席、理事佐々木満君着席〕しかし、産婦につきましては、母体の回復状況、あるいは授乳をしているかどうか、その他個人差が非常に大きいというふうに専門家の御指摘もございます。そこで、個人の状況に応じた措置をとる方が本人の機会均等という観点からもよいと。そこで母性保護のために本人が必要と思うのであれば、これは禁止し、回復の状況等が非常にいい、別に仕事を坑内ですることが何ら差し支えはないという者にまで禁止するということは、かえって法の趣旨からいってもいかがかという観点で、妊婦と産婦との間に取り扱いの差を設けたものでございます。  それで、申し出の方法につきましては、これは特段の規定は設けておりません。事前のものでありましても、またその都度のものでありましても、女子労働者が業務に従事しないという旨を申し出た場合は、事業主はそれをさせてはならないものでございます。
  110. 中西珠子

    中西珠子君 では、次に移ります。  六十四条の五の第二項ですね。一般の女子労働者就業制限というものが非常に大幅に緩和されまして、そして重量物取扱制限と有毒ガスとか蒸気、粉じんなどを発散する場所における業務の就業制限だけと、この二つだけになってしまった。このような大幅な制限を緩和なすった根拠は何でございましょうか。現在ございます就業制限のそれぞれにつきまして調査をなさいましたのでしょうか、どうでしょうか。それについてどのようなことでこれをお決めになったかということをお教え願いたいと思います。
  111. 赤松良子

    政府委員(赤松良子君) 危険有害業務の就業制限につきましては、これは母性保護の観点から、必要であれば残し、そうでなければ廃するという基本的な考え方は、婦人少年問題審議会における合意があったものと考えております。  そこで、その点で医学的、専門的立場からの検討をお願いいたしておりました。その検討結果によりまして、労働安全衛生関係法令が整備されてきている状況、あるいは安全衛生管理水準の向上が図られてきているというような現在の作業環境におきましては、女子が一般的に従来の女子年少者労働基準規則に定められておりました非常に広範な危険有害業務に従事することを禁止するということは適当ではなく、受胎能があるいは将来の妊娠、分娩、産褥、授乳その他胎児に影響があるというような場合には禁止を続けるということが適当であろうと。それは重量物運搬についてはそのような影響があるというふうに考えられ、また一定の化学物質の暴露を受ける業務の場合もそれに当たるというふうに考えられ、それ以外のものは考えられない、そういう影響があるとは認めがたいという専門家の御意見に従ったものでございます。
  112. 中西珠子

    中西珠子君 何人ぐらいの専門家にお聞きになったんでしょうか。
  113. 赤松良子

    政府委員(赤松良子君) 医学的、専門的観点から見た女子の危険有害業務の就業制限に関する研究会というものをお願いしたわけでございまして、構成員は七名でございます。また検討回数は、検討は昭和五十九年二月から六十年の九月まで十数回にわたってお願いをいたしております。
  114. 中西珠子

    中西珠子君 この研究会の御検討の結果を書きました報告書のようなものはございますか。ございましたら、いただけますでしょうか。
  115. 赤松良子

    政府委員(赤松良子君) これは報告をいただいたものでございまして、この報告は、ただいま婦人少年問題審議会でこの関係の省令は審議をお願いしているわけでございますので、婦人少年問題審議会に提出は、要請があれば、この報告は検討に資するために提出をいたしたいというふうに考えております。
  116. 中西珠子

    中西珠子君 社労の委員会には提出していただけないわけですか。
  117. 赤松良子

    政府委員(赤松良子君) 婦人少年問題審議会にお諮りした上で、審議会への報告の後、御要望に従いたいと思います。
  118. 中西珠子

    中西珠子君 なるたけいろんなものを、秘密になさらないで、その報告書というふうなものは読ましていただきたいと思うわけでございます。と申しますのは、余りにも大幅な緩和であるがゆえに非常に心配をしている向きもございますので、専門家の御意見であると、こういう研究会の報告が出ているからということをやはり知れば、皆さん安心するのではないかと思いますので、そういった意味でできる限り私どもにも見せていただきたいという御要望を重ねて申し上げておきます。  次に、妊婦の就業制限でございますけれども、この妊婦の就業禁止の業務に、レントゲン技師の業務などのような放射線にかかわる業務とか、それからVDTの業務ですね。    〔理事佐々木満君退席、委員長着席〕 このVDT業務につきましては、私は五十九年四月十二日の社労でお願いして、調査をしていただきたいということを申しまして、殊に妊娠中の女子がVDTの業務をいたしますと流産をしたり、死産をしたり、奇形児を出産するという危険があって、この調査は既にアメリカとかカナダにはできておりまして、そして妊娠中の女子労働者はVDT業務から外すという労働協約を結んでいるところも、アメリカにもカナダにもあるわけでございます。そういった意味から、この点について特に調査をしていただきたいというお願いをしてあったわけでございますけれども、その後調査がどうなったのかも伺っておりませんし、それから妊婦の就業制限にそれが入っていないと、VDT業務とか放射線の業務なんということが入っていないというのを拝見いたしまして、なぜだろうかと非常に疑問に思ったわけでございますが、この点に関して御説明願いたいと思います。
  119. 赤松良子

    政府委員(赤松良子君) お答えいたします。  VDT業務につきましては、導入されてからまだ日が浅いということもございまして、いろいろまだ現時点については検討中というようなことでございまして、とりあえず指標でございますか、VDT作業における労働衛生管理のあり方というようなものを公表して、一般的な労働衛生管理についての改善の目安としているところでございます。  現在の時点で調査があるかどうかという御質問かと思いまして確かめましたところ、現在まだないということでございます。
  120. 中西珠子

    中西珠子君 早急に調査をしていただきまして、調査結果に基づいて、また本当にこれは危険だということであれば、妊婦の就業制限というもののリストにお入れになるにやぶさかではございませんでしょうね。
  121. 赤松良子

    政府委員(赤松良子君) 調査の結果そういう必要があればということで、慎重に検討することになろうと存じます。
  122. 中西珠子

    中西珠子君 それでは、産婦の就業制限についてでございますが、産婦の就業制限につきましては、結局のところ無条件の就業制限は重量制限と、それから有毒ガス、蒸気、粉じんを発散する場所における業務、それから身体に著しい振動を与える業務、この三つは無条件で就業制限がございますけれども、これは残してあるわけですけれども、ほかの妊婦には適用するけれども、産婦には無条件では適用しないで、そして申し出たときのみということになっておりますが、これは先ほど御説明になった、個々人の状況が違うという、そういった理由から産婦の就業制限についてはこの三つを除いたものに関しては申し出たときのみとなっているんですか。
  123. 赤松良子

    政府委員(赤松良子君) 御指摘のように、産婦について一律に禁止しなければならないというも のは比較的少ないのではないかと。三業務以外については、産婦の母体の回復状態、授乳の状況、その他先ほど申し上げましたような個人差があるということで、一律就業禁止とするより、個々の状況に応じた措置がとられることがより望ましい、その方が適当であろうというふうに考えて本人の請求にかかわらしめたところでございます。
  124. 中西珠子

    中西珠子君 大臣がお見えになりましたので、ちょっと今度はサブジェクトを変えまして、時短関係についてお聞きしたいと思います。  大臣は、御就任以来時間短縮について大変御熱意をお示しくださいまして、非常な御努力で時間短縮推進していらっしゃるわけでございまして、それに対しては敬意を表しているのでございます。そして十月十五日に発表になりました経済対策閣僚会議の内需振興対策ですね、その中にも週休二日制の拡大ということがうたってございまして、どのようなやり方をやっていくかということが細かく書いてあるわけでございますが、これも労働大臣が御推進になっているものと考えます。  たまたま十一月六日の朝日新聞の記事に、ミサワホームが人材派遣会社を設立しまして、社内に「土日会社」という組織を設けて「土日社員」を募集し始めたという報道があるのでございますが、労働時間短縮というものが労働組合側からも叫ばれているし、また政府の側においても、労働大臣が先頭にお立ちになって時短に力を入れておられるということがこの内需拡大政策からもうかがえるし、五月四日休日案というものを法制化するというお考えもあって、その見通しについても私は承知しておりませんけれども、大変御努力になっていると思いますが、こういう土日社員の募集というふうなことですね、こんな動きについては労働大臣はどのようにお考えになっているか、また労働時間短縮の動きというもの、それから見通しというものについて大臣のお考えをお聞かせ願いたいと思います。
  125. 山口敏夫

    国務大臣山口敏夫君) 御承知のとおり、やはり我が国労働時間というものが西欧諸国に比べまして百数十時間長いと、こういう指摘もございまして、労働者福祉改善立場からも、また中長期的には雇用調整の上からも、労働時間調整、労働時間短縮あるいは週休二日制の拡大が必要である、特に二千時間レベルにこれを近づけるためにはという立場から、幸い政府の経済対策閣僚会議の決定の中にも休日増を盛り込ますことになりまして、週休二日制などの適用を含めまして十日間程度の休日増をひとつ推進していこう、こういうことが対策の中に盛り込まれたわけでございます。  また、一つのそういう機運の取っかかりといたしまして、国会でいろいろ御論議先生方にもいただきましたように、五月四日のゴールデンウイークの労働休日というような形で、この国会において各党の合意の上で、国民の祝日に関する法律の改正の中で処理することで合意がなされていたわけでございますし、これが今までは社労委でございますとか、時短懇の与野党協議であったわけでございますけれども、内閣委員会でこれを措置していただく、こういうことになっておるわけでございます。  私は、今、先生の御指摘の土日会社という、土日社員と、こういうことの報道でございますが、率直に言って労働側にも、労働時間短縮を強く運動をしておる割には、既に与えられた有給休暇の完全消化というものがほとんどなされておらない、こういう現状でございますし、また頭の中で考えますと、今日の時点で、一つの意識革命といいますか、そういう問題認識が十分合意なされていない段階で完全週休二日制というものがなされますと、何か二つ職業を持つような傾向もむしろ労働側にもなきにしもあらず、こういうことでもございます。そういう中で、朝日新聞の報道にございましたような土日社員、土日会社というものがどういう内容、また対象を持ってこれを制度化するか、組織化するかということは、十分まだ承っておらないわけでございますが、週休二日制のサラリーマンに対しましては、雇用契約によりまして労働基準法が週四十八時間、一日八時間の労働制及び毎週少なくとも一回以上休日を与えなければならないことを定めている趣旨から見て、こういう行為にもし外れるとすれば、決してこれは好ましいものではない。ただ、定年の退職者でございますとか、土日を利用しての主婦の仕事、こういうことでございますると、これは一つのルールの確立の上でどういう工夫をされているかということも、十分この事情も聞いてみなければならないというふうに考えております。  いずれにしましても、週休二日制の拡大を進めておる立場から、十分こういう組織についても慎重に事情を伺いたいというふうに考えております。
  126. 中西珠子

    中西珠子君 私の時間が大分短くなってきたんでございますけれども、ちょっとどうしてもお伺いしたいことがございまして、これ、労働者派遣事業の対象業務というものをもうじきお決めになるということだと思いますが、いろいろ職業安定審議会あたりで例示として出された十四業種というふうなものの中でも、情報処理事業とか、それからビルメンテナンスとか、そういった業種におきましては、相当労働者派遣事業の対象業務になるのが嫌だということで抵抗を示しているというふうなことも聞いておりますけれども、この確定はいつごろになるんでしょうか。
  127. 白井晋太郎

    政府委員白井晋太郎君) お答えいたします。  御存じのとおり、労働者派遣法は本年七月五日に公布されまして、公布の日から一年ということで、具体的には来年七月一日に施行されるわけでございますが、今の適用対象業務等につきまして、その他省令関係につきましては来年の三月ごろ公布できるように検討を進めてまいりたいというふうに考えております。
  128. 中西珠子

    中西珠子君 対象業務に指定されても、企業の方の意思で派遣事業ということにしたくない、業務請負ということにしたいということであれば、その業務請負という形態のままで存続を許可なさるということはありますか。
  129. 白井晋太郎

    政府委員白井晋太郎君) 請負として適正に行われているものについては、特段規制を行おうとするものではないわけでございまして、労働者派遣事業の対象業務は、労働者派遣事業を行うことのできる業務を定めるものでございまして、当該業務についても、適正な業務請負であれば自由に行えるということになるわけでございます。
  130. 岩崎純三

    委員長岩崎純三君) 中西君、時間です。
  131. 中西珠子

    中西珠子君 時間がないのでまた次のことをお聞きしたいのでございますけれども、サラリーマンのストレス問題、これは十月一日に、中央労働災害防止協会がストレス関連疾病に関する調査研究というのをやりまして、中間報告が出たわけでございます。それによりますと、レセプトに基づく断面調査だと、サラリーマンの二十人に一人が高血圧や胃潰瘍などのストレス関連の病気にかかっていると。また、七日以上の傷病欠勤をした者を調査対象としたアンケート調査によりますと、非常に傷病欠勤の原因や誘因として、第一位に多忙による心身の過労というものが挙げられていると。それで、欠勤前の一カ月の時間外勤務について調査いたしますと、時間外勤務が長いほどストレスがあるというものの比率が高まっているということでございまして、この調査の結果、長時間労働、心身疲労、疾病という進行過程が明らかになったというふうなことを中間報告が言っているわけでございます。  技術進歩がどんどん進みまして、MEの導入だとか経営側の省力化、管理体制の強化などが進む中で、サラリーマンのストレス問題というものは一層深刻になっていくと考えられますが、労働大臣は、労働行政としてはこの問題についてはどのような取り組みをなさるおつもりでいらっしゃいますか、大臣の御見解をお伺いしたいわけでございます。あわせて、時間がございませんので大変申しわけないんですけれども、先ほど大臣が席をお立ちになっている間に、私は、男女雇用機会均等法の 指針の実と、それから施行規則の実と、また労働基準法の改正にかかわる省令の案というものを局長にいろいろお伺いしておりました。そして、その指針案とそれから規則の案につきましては、労働大臣がどのような基本的なお考えでいらっしゃるかということをお伺いしたかったんでございますが、もう時間もございませんし、先ほど糸久委員の質問に対してお答えになったお答えを私に対するお答えというふうにまた考えていきたいと思いますが、ここでお願い申し上げたいことは、やはり大変多くの省令委任の条項がある法案が成立したわけでございますので、やはりその省令の内容というものは、婦人労働者の健康と安全と福祉に資するようなもの、確保できるようなもの、また地位の向上というものにつながるようなものであってほしいと心から願っているわけでございますが、労働大臣のその点に関する御決意のほどをあわせてお伺いさしていただきます。  時間がなくなりましたので、大変申しわけない質問の仕方になりましたけれども、両方あわせてお願い申し上げます。
  132. 山口敏夫

    国務大臣山口敏夫君) 男女雇用機会均等法の指針、省令の案をいろいろ関係審議会に諮問しているところでございますけれども、私は、こうした法案を御審議いただいておる国会がやはり一番国民の声といいますか、実情、世論というものを十分踏まえての御指摘や御論議をいただいておるわけでございますので、労働省としてもその審議会に対して省令案を出しておるわけでございますけれども、本日も午前、午後、それぞれいろいろ御指摘いただいたような問題も含めまして、ひとつ審議会においてさらに率直にそういう点の情報や御審議の経過などもあわせて御論議もいただいて、せっかくつくられます来年の四月からの雇用機会均等法がより社会に実際的に成果、効果があらわれるような、そういう姿勢で今後ともこの問題について、労働大臣としての立場でひとつ関係局等におきましてもこの問題点として指示をしておきたい、こういう基本的な姿勢考えでございますので、よろしくお願いしたいと思います。  それからまた、ストレスの問題でございますが、御承知のとおり、労働災害等ゼロ、安心して働ける職場、こういうことで労働行政の最重点課題として不断の取り組みをしておるわけでございますけれども、この間も大阪で二万人近い各労使関係者の方を集めて労働災害防止の大会もやらしていただいたわけでございますが、残念ながら九十万件ですか、労働災害関係でのまだ事故が起こっておると、こういうような状況でもございまして、こうしたものも今、先生から御指摘になりましたやはりストレスの問題ともこれは大変陰に陽にのかかわり合いというものも私たちは慎重に見きわめていかなければならないというふうに考えております。特にストレス関連疾病に関する調査研究につきましては、中央労働災害防止協会におきまして昭和五十八年度より三カ年計画でこの調査を実施したものでございまして、我々労働省としても極めて注目をした貴重なものであるという見解考え方でございます。そうした立場に立ちまして、一般の労働者のストレスについて多くの要因があるわけでございますし、関連しているわけでございますので、こうした問題につきましてはさまざまな角度から検討を加えまして、ストレス解消のための的確な対策を労働行政の中におきましてもひとつ推進を図っていくと、こういうことが大事なことだということでございます。
  133. 岩崎純三

    委員長岩崎純三君) もう時間です。
  134. 中西珠子

    中西珠子君 もう時間が参りましたので、パート労働その他につきましての質問はこの次に譲らしていただきます。  ありがとうございました。
  135. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 最初に、労働大臣に所見をお尋ねしますが、一般論として、使用者が職員に対し政治的信条の調査を行うことは憲法に抵触をする許されない問題だと私は思いますが、御所見どうでしょうか。
  136. 山口敏夫

    国務大臣山口敏夫君) そうした一つの主義主張、いろいろなイデオロギーそれぞれあるわけでございまして、それがゆえに雇用関係において不当を取り扱いがなされる、こういうことがあってはならない、かように考えております。
  137. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 また、使用者が労使の重大な争点になっている問題、こういう問題について労働組合の同意もなしに組合員個々の意見調査するということは、労働組合の運営への不当な介入になると言えますね。
  138. 加藤孝

    政府委員(加藤孝君) 人事の調書という形で本人の意向をいろいろ伺うということが、それが合理的なものであれば特に問題はないと思うわけでございますが、おっしゃる思想調査というようなもので、それによって特別にどうこうする意図があってというようなことがあれば問題とはなり得るということでございまして、そんな関係で現在国鉄の問題が不当労働行為として公労委に提訴されていると、こういうことでございます。
  139. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 まだ具体的な問題を聞いてないうちに先走ったお答えをされているんですけれども、私は一般論として聞いているんですよ。  労使意見対立になっている問題について、労働組合の同意もないままに使用者側が直接に組合員個々人に対して調査をやるということは、労働組合の運営に対する不当な介入、労組法が戒めている不当労働行為、こういうことになりますね、そういうことをやったらいかぬですねと一般論を聞いているんです。
  140. 加藤孝

    政府委員(加藤孝君) 従業員のいろいろ意向を聞くという形のものが、これが組合に対する介入ということになるかならないか、これはまさにどういう意図でどんなような形でなされるかということでございますので、一般論として一切だめだとかいいとかというような形ではお答えしにくい問題だと思います。
  141. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 私は言葉を選んで聞いているつもりですよ。従業員についてという言い方はしてないじゃないですか。組合員について組合の同意もなしに使用者側が直接に調査をやるということは許されるのかということを聞いているんですよ。組合の同意が要るでしょう。
  142. 加藤孝

    政府委員(加藤孝君) 問題の性格によるとは思いますが、一般的に、組合の同意なくして一切そういうことができないというものでは必ずしもないと思います。
  143. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 好ましいことじゃないでしょう。
  144. 加藤孝

    政府委員(加藤孝君) 一般論として申し上げれば、組合と使用者との間でいろいろ話し合いが行われる中で問題が円滑に進められるということは、一般的には望ましいことだと考えます。
  145. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 そこで、国鉄に具体的問題でお尋ねをしますが、最近国鉄の労働組合から公労委に対して救済命令の請求が出されている事案でありますけれども、「人事調書」と銘打って職員個々人の国鉄改革に関する意見、すなわち昨今問題になっています国鉄分割・民営化に関する意見、これを記入、提出をさせるという異常な調査が行われているわけでありますが、これは明らかにこの職員の中には組合員も含んでいるわけでありますから労働組合への不当な介入になる。そして明白に、大きく意見の対立している問題について調査するということは、憲法が禁止している思想、信条の自由侵害とも言うべき問題であって、このような調査は中止撤回をすべきだというふうに私は思うわけであります。  このことを基本的な意見の前提とした上で、この際念のために聞いておきますが、国鉄側はこの調査の不当性弁明のために、十一月八日の朝日新聞の報道によりますと、記者の質問に答えて、「組合員らに記入、提出を強制している訳でなく、出さなかったからといって何の不利益も受けない。」と、こういうふうに答えている模様でありますけれども、昨日、私の議員室に来てもらいましてこのことも引用して尋ねましたところ、国鉄側からは同様趣旨の説明を聞きました。  そこで、調査に対する回答の不提出、不記入あるいは記入の内容いかん、こういうことが人事上の不利益になるということは断じて許されない問題だというのは、これはいわば当然のことであり まして、きのう来確認をしておることについて国鉄当局に再確認を求めたいと思いますが、どうぞ。
  146. 白川俊一

    説明員(白川俊一君) お答えいたします。  私どもでとっております「人事調書」につきましては、主要な職員など一部の職員の者を対象にして従来からも実施してきているものでございます。その内容によりまして職員を差別するという趣旨で行っているものではございませんで、その運用方については適正な判断をもって活用してきているつもりでございます。  したがって、今回も従来の趣旨に変わりなく、ぜひ国鉄当局を信頼していただきたいと思っております。
  147. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 私の質問に対してなぜきのうの段階のようにストレートに答えられないのか極めて遺憾でありますが、しかし、えんきょくな表現ではありますけれども、調査の不提出、不記入、回答の内容いかんによって人事上の差別はないということを当然のことながら認められたものとして受け取っておきたいと思います。  しかし、不提出、不記入であっても不利益扱いはしないといっても、あなた方の当局の記入要領文書、こういう要領で記入をしなさいというその文書では、「国鉄改革に関する意見」の部分は必ず記入せよと念を押して書いていますね。また、この種人事調査は従来からやってきたといっても、この項目が入ったのはことしからなんですよ。ですから非常に今問題になっている。こういうような憲法違反、不当労働行為、労組法違反とも言うべきこういうおそれがある調査は、撤回以外にないというふうに私は強く主張をしておくものであります。  この問題は、また国鉄の大臣など責任者に御出席を願って改めて質問をいたしますので、きょうはこの問題はこの程度の質問にとどめておきます。  そこで私は、きょう非常に限られた時間でありますので、障害雇用対策、特に重度の障害者の雇用就業対策に絞って質問をします。  まずお尋ねをしますが、一九八三年のILO総会で我が国の政府も賛成をしました第百五十九号条約、すなわち職業リハビリテーション及び雇用障害者)に関する条約、これでは障害者の定義を「身体的又は精神的障害」と定めています。しかし、我が国の法体制といますか障害者の雇用促進法、ここでは精神薄弱者や精神障害者を適用対象にはしていません。こうした点で障害雇用制度の適用範囲には、ILOの理念と日本の法体制と明白な違いがある。このままでは一体、ILOの百五十九号条約の批准というのは難しくなるんじゃないかと思うんですが、この点のまず見解をお聞きしましょう。
  148. 白井晋太郎

    政府委員白井晋太郎君) お答えいたします。  先生指摘のILO百五十九号条約には、すべての種類の障害者の雇用機会及び待遇の均等を確保し、障害者の地域社会への統合を促進することを目的とするものとして規定されております。本条約の内容につきまして、我が国におきましては身体障害雇用促進法等によりおおむね実施されているところでございますが、精神薄弱者についても、雇用制度の直接の対象とはしておりませんけれども、それ以外の施策についてはほぼ身体障害者と同様に適用されているところでございます。  精神薄弱者の雇用率の問題は、長い間いろいろと議論されてきている問題ではございますが、その対象把握その他雇用率の適用問題、いろいろ難しい問題もございまして、現在、雇用制度の適用問題につきまして、身体障害雇用審議会の中に専門の部会を置きまして検討を願っているところでございます。  それから精神障害者問題につきましては、我が国の身体障害雇用促進法は、厚生省の身体障害者の福祉法との範囲と合わせているわけでございますけれども、この精神障害者の対策を同一に取り扱うという点につきましてはいろいろ問題があるわけでございまして、これに対しましては公共職業安定所における求職登録制度の活用、それからきめの細かな職業相談指導に努めているところでございまして、さらにこの職業問題については検討を進めてまいりたいというふうに思っているわけでございます。
  149. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 雇用促進法の雇用率の適用対象となっていないという、ここがこそ端的な問題で、そこにあらわれているような扱いの明白な違いがあるということは余り弁明なさらぬ方がいいと思うんですよ。  次の問題ですが、身体障害者の雇用状況について労働省の最近の調査報告、これでも六月一日現在で十六万八千二百七十六人の雇用と。前年に比べて八千三百六十七人ふえたということで労働省は評価をしていますけれども、依然として雇用率未達成企業が多い。特に力のある大企業ほど未達成企業数が多いというのはまことに遺憾であります。数字的には、五百人から九百九十九人の事業体、雇用率未達成企業六六・七%、千人以上の企業になりますと未達成七六・八%の企業と、こういうことでありますから、大企業ほどその努力が悪いということは明白であるわけですけれども、むしろその力、能力からいって率先して社会的義務を果たすべきなのが大企業じゃないかと思うんですが、この点についての基本的所見、どういうふうに基本的に見るべきか。大臣どうでしょうか。
  150. 白井晋太郎

    政府委員白井晋太郎君) 今、先生おっしゃいました六十年六月一日現在の雇用状況数字はそのとおりでございます。企業別に見ますと、現状おっしゃるとおりでございますが、大企業を中心としまして、雇い入れ計画の作成命令制度や、その他運用を伴います行政指導を強力に推進しておるところでございまして、大企業におきます実雇用率の経過はだんだんと今、五十二年度〇・八〇であったのが六十年度一・一六までまいっておりまして、雇用率の進歩はかなり進んできているものというふうに思っております。
  151. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 こういう大企業雇用促進がしかく進んでないということの原因に、私は労働省の行政的姿勢、これが大いに関連をしているというふうに思うんです。  例えば、法定雇用率の半分にも達していない〇・七五%の雇用以下、こういう企業に対して雇い入れ計画書の作成命令を出している。これが昭和五十九年度で千百二企業ですね。そのうち雇い入れ計画の不履行あるいは不誠実な企業二百十一企業に誠実履行の勧告を出しているわけでありますけれども、この数字を見ても、実に二割の企業がまことに不誠実、障害雇用促進法の精神に反しているということは明白であります。  そこで、大臣にお尋ねをしますけれども、来年度は雇用促進法の見直し年であります。同時にまた、国際障害者年の中間年にも当たると、こういう時期を迎えるわけでありますので、冒頭に言いました適用障害者の範囲の拡大、それから雇用率の見直し、納入金の見直し、こういう問題とともに、障害雇用について不誠実、悪質な企業は法令的根拠に基づいて公表するということをもういよいよ踏み切ったらどうでしょうか、大臣
  152. 山口敏夫

    国務大臣山口敏夫君) 身体障害者の雇用促進という問題につきましては、先生の御指摘のように、これはやはり各事業所、また特に労使双方の理解と協力の中でこれはぜひぜひ推進をしていかなければならない、こういう非常に大事な問題だという認識は私どもも持っておるわけでございまして、先ほどの午前中の御質疑の中でも、来年度の労働省重点施策一つとして、障害雇用拡大ということも予算的にも十分配慮をしたいというふうに考えておるところでございます。しかし、この雇用率の低い未達成企業に対する雇い入れの計画作成命令、同計画適正実施勧告等により雇用率の達成を指導すると、こういうことで、公表という段階は最後の手段として措置しなければならないというふうに考えているわけでございまして、趣旨は、適正実施勧告、また集中的な個別指導というような努力も行政的な立場において十二分にひとつ進めていきたいと考えておるわけ でございます。  また、特殊法人等につきましては、民間に率先垂範すべき立場にございまして、厳しい行政指導の結果、本年の雇用状況改善されておるわけでございまして、今後とも強力にこれを指導していきたいというふうに考えております。
  153. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 特殊法人の問題に触れられたわけでありますけれども、法を施行して十年を経た今日時点でもなお一七・二%の特殊法人事業体が法定雇用率に達してないわけでしょう。威張った話じゃ全然ないわけですよ。こういった特殊法人に対しては膨大な国からの補助金も出している。当然その運営について国の指導方向を最も、大臣も言われるように率先垂範すべきお立場。にもかかわらずこういう姿になっているということで、この特殊法人について本当にひとつ一日も早く法定雇用率達成をさせるべく、努力不十分な法人名は公表してでもこういうことはまずここはやるというふうに決断ができませんか。
  154. 山口敏夫

    国務大臣山口敏夫君) 公表の問題につきましては、民間も特殊法人も最後の手段としてこれを考えるということは当然のことでございますけれども、要は、障害者の方々が働きやすい一つの受け入れという形の中でお仕事をしていただくということも大事でございますので、その公表の前の段階であります行政指導において、こうした特殊法人の未達成法人に対しましてはさらに強力な行政指導によって雇用の促進、拡大を図りたいということにつきましては、六十一年度の予算の措置だけではなくて、一つの具体的な作業として労働省としては、行政指導立場を強化して雇用拡大を図るということにつきましてはひとつ我々もさらに努力をしたい、かように考えるところでございます。
  155. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 ところで、障害者の小規模作業所といいますか、共同作業所と呼ばれる、この問題について質問を移りたいと思いますが、これら作業所は、規模障害の種別、程度等いろいろありますけれども、いずれにしてもさまざまな障害者が懸命に就業をしています。また、指導員も父母の協力を得て低い処遇で障害者の就業と自立のために頑張っているわけでありますが、労働省はこういう作業所が全国にどれくらいあるというふうにつかんでいますか。
  156. 白井晋太郎

    政府委員白井晋太郎君) 労働省自体の調査ではございませんが、厚生省の児童家庭局の調査によりまして、全国で六百三十八カ所ということをつかまえております。
  157. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 今言われた六百三十八カ所というのは昭和五十六年十月調査ですね。以来調査していないわけです。このことも、一体この問題をどの程度に見ておるかということのあらわれかと思います。  片や、五十九年度地方自治体が補助対象としておるこうした小規模作業所、これは全国で約千百十カ所であります。大臣の選挙区でもあります地域内にも、川越市とか所沢市等々、既に七カ所のこういう作業所があるというふうに、私もこう見ましたらそういうふうに拝見しました。大臣も関心を大きく寄せておられることと思いますけれども、なぜこんなに障害者の小規模作業所が親や関係者の必死の努力に支えられてどんどんとふえてくるのか。さっきの五十六年十月に六百三十八、それが五十九年度千百十カ所。だから三年間で五百カ所、一年間百カ所以上のテンポ、二百カ所近い、そういうテンポでふえてきているわけでしょう。なぜこんなにふえてくるのか。そこはどういうふうに大臣考えておられますか。
  158. 山口敏夫

    国務大臣山口敏夫君) 先ほど先生から御指摘ございましたように、なかなか民間の企業一つ雇用の達成率、こういう問題がおくれておるということとの一つの形の中で、こうした小規模の共同作業所というものが、父兄でございますとか、あるいは障害児、障害者の希望等の中で非常に大事な就労訓練の場として大きな役割を果たしておると、こういうことでもあろうと思うわけでもございますし、先般も下村議員の御案内などもございまして小規模共同作業所の関係者の方々労働大臣室にもお見えになりまして、いろいろ今、先生が御指摘のような問題点も含めて御意見、御要望もいただいたわけでございます。  そういう意味で、こうした一つ役割というものを十分評価すると同時に、先ほど来論議されております実際的な一つ雇用の発展というものを推進していかなければならない、かように考えるものでございます。
  159. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 民間の障害雇用努力の不十分さ、それもあるでしょう。しかし同時に、政府の施策自体に、いよいよ今日新たな見直しをすべき段階に来ているということで、さっき冒頭に企業名の公表の問題を言いましたけれども、現行の雇用促進法は知恵おくれの人たちは雇用率の適用の対象から外れている、重度障害者の人たちというのは事実上雇用が難しい、極めて困難というここをどう打開するかということについての政府の施策対応が大変おくれておるという、ここを今大いに考えてもらう必要があるだろうというふうに思うんですね。  そこで、既に労働省が設置をいたしました重度障害者特別雇用対策研究会報告、既に昭和五十七年一月の段階のこの報告書を見ましても、それからさらにはILOの障害者の職業リハビリテーション及び雇用に関する勧告(第百六十八号)、この勧告の十一項(b)、十一項(d)、十一項(f)、これらの項目を見ましても、「非政府機関が運営する障害者のための職業訓練、職業指導、保護雇用及び職業紹介の事業に対する適当な政府援助を行うこと。」だとか、あるいは「障害者による及び障害者のための小規模産業、協同組合その他の型態の生産作業施設の設立及び発展のために適当な政府援助を行うこと。ただし、このような作業施設は、所定の最低基準を満たすものであることを条件とする。」ということですが、こういう方向で国際的にもまた労働省としてもいよいよ考えなくちゃいかぬと、こういう方向への議論が進んでいるわけですね。  こういう角度からいってひとつ私はこの機会に要望いたしたいのは、とにかく昭和五十六年以来実態さえつかんでいないんですから、まず政府としてこの小規模作業所の実態がどういう姿かということを最低つかむと、この実態調査一つはやってもらいたいというふうに思うんですが、まずどうでしょうか。――ちょっともう余り時間がないので、長い答弁ではなくて、やるかやらぬかだけ。
  160. 白井晋太郎

    政府委員白井晋太郎君) わかりました。  実態としては、全体を把握するのはなかなか難しい問題でございまして、雇用関係があるもの、内職程度のもの、いろいろございまして、労働省だけではなかなか把握できない問題でございます。過去における厚生省の調査等もございますが、関係省庁とも連絡をして、また共同作業所の連合体等とも連携をとりながら、事例収集等を通じて調査をしてまいりたいというふうに思います。
  161. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 ちょっとあいまいですけれども、とにかく関係省庁ともよく相談をして、まず施策を立てる前提としての実態をつかむと、このことに本当にひとつ一生懸命やってください。  それから、さっきも言いましたが、これらの作業所に現在もう既に四十七都道府県中、山梨、高知、徳島の三県を除いてすべて補助金を出しています。これらの三県も近くいよいよ補助制度に踏み切るという方向で検討しているというふうに聞いております。こうなると、全都道府県が補助を出すのに、国の対応が大変おくれておるということはもういよいよもって逃れようがない。本当に一時一日を争って国としての対策を考えなくちゃならぬということで、この報告書にも、重度障害者対策として第三セクターによる方式云々ということがちょっと出てまいりますけれども、しかしこれは非常に限られたもの、限界のあるものですから、こんなことで今全国一千を超える、そして急速なテンポでさらにふえていく小規模作業所、ここに就労をしている障害者が救われるものじゃない。これらの作業所が減少をしていくとい うことにはならぬだろうということで、どうしてもこの対策のためのひとつ一歩進んだ方策がいよいよ迫られているということじゃないかと思うんです。  そして、いわばそういう重度の障害者の就業施設として、本当に地域に根差して、しかも職業的なリハビリの役割も果たし得る、こういう方向での何らかの政策的な位置づけをいよいよ検討すべき段階に来ているんじゃないか。もちろん、それは一定の国としての補助をするというときには基準が要るという、このことを何ら否定するものじゃありません。そういったことも含めつつ、本当にひとつ前向きにこの小規模共同作業所問題について、どこの省だ、どこの省だということでなすり合いじゃなく、労働省労働省としての積極的な対応をすべくその問題を検討に上せるということをぜひやってもらいたい。  これは我が参議院では、私、今回社会労働委員に初めて入らせてもらったんですけれども、ずっと昔のやつを見ますと、この小規模共同作業所問題についての国としてのそういう援助措置をやるべきだということの請願が何回か参議院では採択をされてきておる、この院の意思も政府としてよく酌み取ってもらう必要があるということで、ぜひこの点を強調しておきたいと思うんですけれども、どうでしょう。
  162. 白井晋太郎

    政府委員白井晋太郎君) 今、先生おっしゃいましたような重度障害者がふえてきている、また精薄対策ということで、労働省としましても、第三セクター方式、それから岡山の吉備高原にはリハビリの総合的な施設等をつくって対応を積極的に進めているところでございます。  この小規模共同作業所問題につきましても、労働省関係では、雇用関係があると認められる作業所については、身体障害雇用納付金制度に基づく助成金を活用して援助しているところでございまして、先ほど先生おっしゃいました実態的にそういうものを把握すれば、そういうことで対応してまいりたいというふうに思っております。  なお、請願の問題等につきましては、身体障害福祉法や精神薄弱者福祉法に基づく施設の認可基準に合致するようにするということで、厚生省サイドで請願が処理されているところでございますが、その点につきましても関係省庁と相談をしてまいりたいというふうに思います。
  163. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 そういう対応ではいかぬと言っている。大臣、何か……。
  164. 山口敏夫

    国務大臣山口敏夫君) ただいま安定局長からも御答弁申し上げましたように、雇用関係があるという共同作業所につきましては、身体障害雇用納付金制度に基づく助成金を活用し援助しているところでもございますが、これはILOの百六十八号勧告、あるいは各自治体、先生指摘のようにもう既にやっておられるところもあるわけでございます。  いずれにしましても、障害雇用拡大、これは非常に大事なことでございますけれども、実態はいろいろ御指摘のようになかなかおくれておる面もあるわけでございますし、共同作業所というものが障害者の父母にとりましても御当人にとりましても大変有効に機能しておる、こういう実情は十分我々も承知し、評価もしなければならない点もございます。  そうした点を踏まえまして、十分こうしたものの機能の中での援助というものがどういう形で可能かということにつきましても十分前向きに検討しなければならない。同時に、今まで法律で定められた障害雇用の促進というものの行政指導をさらに強化していきたい、こういう両面からこの問題をとらえて実行方の成果を上げたい、かように考えております。
  165. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 終わります。
  166. 下村泰

    下村泰君 私は、道交法の改正によってシートベルトの着用が義務づけになりましたが、その件に関してお伺いしたいと思います。  労働大臣はこれから党の大会がおありになるんだそうで、私の質問は大体局長さんでも間に合うと思いますし、また、局長さんからいい答えが出て、その答えが大臣に伝えられれば、大臣はそれなりに従わなきゃならないような立場じゃないかと思いますので、本来は逆でしょうけれども。ですから、局長にはよくお話ししておきますから、お引き取りになって結構でございます。どうぞそちらの方へお出かけになってください。委員長、よろしいですね。
  167. 岩崎純三

    委員長岩崎純三君) はい。
  168. 下村泰

    下村泰君 運輸省の方、来ていらっしゃいますか。――おたくさんは一つだけですから、すぐ引き取っていただいて結構です。  今度のシートベルトは結構なんですよ、シートベルトは結構なんですがね、タクシーの場合、あるいは普通の乗用車でも同じですけれども、五人乗りの車がありますよね。五人乗りの車なのにシートベルトは後ろに二つしかない。そうすると、真ん中の人は両脇から支えるのかね、あるいはベルトを伸ばしてつなげるのか、こういう保安基準というのは何にもないんですね。それでいてシートベルトの義務づけはちょっとおかしいんじゃないかと思うんですがね、これに対する対応はどうなっていますか。
  169. 福田安孝

    説明員(福田安孝君) 御説明さしていただきます。  ただいまお尋ねございましたシートベルトのような自動車の構造などにつきましては、道路電送車両法に基づきます保安基準で決められているわけでございます。  従来、乗用車につきましては、運転者席及び助手席に三点式ベルト、それから後席の窓側、御指摘のとおり後ろ側でございます、後ろの二つでございますが、そちらに二点式座席ベルトを装備するというようなことになっておったわけでございます。しかし、最近における交通環境というようなものが変化し出してきておりますので、本年九月をもちまして、中央座席への座席ベルトを義務づけるとともに、着用の容易性を向上させるということで、運転者席等へELR、緊急ロック式巻き取り装置と普通言っておりますけれども、運転操作等に楽なような締め方をしておきまして、緊急の場合にはきちんと体を受けとめるというような装置でございますけれども、そういうような装置を義務づけるというような保安基準の改正をいたしましたもので、今後全座席に座席ベルトが装備されるということになっておるわけでございます。
  170. 下村泰

    下村泰君 運転者の方じゃなくて、後ろもちゃんとそういうふうになるのか。二人分しかないんだよ。
  171. 福田安孝

    説明員(福田安孝君) はい、それも後ろの中央座席へつけるようにということで、本年九月に内容改正いたしましたわけでございます。
  172. 下村泰

    下村泰君 最近のタクシーは、昭和三十年代のあの物すごい、いわゆる好景気にあおられて走りまくった神風タクシーというのはほとんど姿を消したと思うんですね。当時の言葉にこういうのがあるんです。「日の丸通れば桜がよける、それを追い越すハトポッポ」とかね、「もみじ通れば桜がよける、それを追い越す日の丸タクシー」とかね、それぞれそのときの悪いタクシーが一番穴っぺたに走ってそれを追い越すというような表現があったわけです。今あるのは、どちらかというとトラックの方に対してのそういう言葉があるんですね。「足立トラック、品川定期、多摩のダンプが恐ろしい」、こういうようなこともあります。それから、四十年代に入ってからは、「一ヒメ、二トラ、三ダンプ」といって、女性のドライバーが一番恐ろしい、こういうような、いろいろ下世話ではこういう標語があるわけですな。その中でも最も悪かったのが私の記憶によれば志村タクシー、これは一番悪かったんだ。今会社の名前も変えましたがね、年間五人以上のタクシーの運転手さんが死んだなんという記録もあるぐらいだ。  しかし、そういうタクシーの運転手さんがだんだん少なくなりました、現在は。低成長時代になって、安定時代というんですか、運転手さんも一時はもう数が少なくて、空車が多くて、実車が少なかった。近ごろは転職してきた方たちがふえま した。そのおかげで道も知らない運転手さんが多い。乗ったお客さんに、どちらまでいらっしゃいますか、どこそこまで行きます、済みません、不案内ですから案内してください。どっちが運転手だかわからないんだ。そんなような状況で最近は落ちついてきました。ですから、以前のような神風タクシー、乗って恐怖を覚えて途中でおろしてくれなんということは少なくなりました。  それにしても、一般の交通事故はちっとも減っていないんですね。警察庁の方からいだきました資料によりますると、五十九年が九千二百六十二人のとうとい人命を失っております。  タクシー強盗の方を見ますと、こちらもおたくさまの方から、警察庁の方からいただいた資料なんですが、自動車強盗が五十八年に認知件数が二百一件で、検挙件数が百七十八件、検挙人員が二百四十一件、こういうふうになっています。五十九年は出ていないでしょうけれども、昨年の――昨年は出ていそうなものですな。五十九年はどうなっていますか、警察庁の方のお調べございますか。
  173. 越智俊典

    説明員(越智俊典君) 手元には五十八年のしか持っておりません。五十九年のは持っておりません。
  174. 下村泰

    下村泰君 それはいつごろ出ますか。
  175. 越智俊典

    説明員(越智俊典君) 五十九年の数字はもう既に出ておるものと思いますので、調べればすぐわかります。
  176. 下村泰

    下村泰君 今でなくていいですよ。後で教えてくださいね。  さて、道交法の安全基準はこれでいいわけですわね。シートベルトをすることによって、シートベルトをするとしないとでは大分違うということで、私はいろんな参考のものを読ませていただきました。新聞等に投稿なさっている記事も読ませていただきました。賛否両論。しかし、中に一つ際立ってシートベルトというのはなるほどこういう効力があるんだなと思われるのが東京の中央紙に載っておりました。放送大学の教授で加藤秀俊さんという方が実際にアメリカのハイウエーを走っていて、ここでは制限時速が七十マイル、およそ百十キロだ。うらやましいくらいですね、日本はどこを走ったって八十キロですから。百十キロで走っていて、もちろんこの方はそれ以上出していたんじゃないでしょうかね。ただし、車間距離を百メートル以上あけておったと。ところが、前の車がパンクをして、そして燃え出した。それで、この方は一生懸命ブレーキを踏んだ。金属的な音を立てて約五メートル手前でとまったと書いてあります。ところが、家族一同乗っていた者は全部シートベルトをしていたためにかすり傷一つ負わなかったと。こんなのを見ると、なるほどシートベルトというのはいいかと思うんです。  また一方、考え合わせて、もしバスのお客さんがシートベルトをしていたとして、あのこの間落ちたスキー客ですね、長野の。ああいうふうになったときは一体どうなるのか。しかも、仮眠状態に入っていた。そのときにシートベルトをしていたためにもっと人命が失われたんじゃなかろうかなんてことも考えられますわね。たまたま長野県というところはよくあるんですわ、おっこちるのが。この間も観光バスが落ちました。あのとき、もしシートベルトをしていたらどのくらいの人が助かっているか、いろんな考え方があります。  しかし、総じて皆様方の御意見を総合して判断すれば、やはりシートベルトはすべきである、私もそれはそう考えます。ところが、このシートベルトをすることによって動きがとれなくなるんです、あれは。私も事実十八歳のときに免許証を取りまして今日まで、今でも、本日も自分の腕でハンドルを握ってここまで来ました。ところが、シートベルトというのは長時間やると胸を圧迫されるんですね、どうやっても。殊に運転手さんから、もうタクシーに乗るたびに運転手さんに言われるんですよ、これ何とかなりませんかというふうに。皆さん普通のドライバーがそこいらに出かける、買い物に出かけるとか、ちょっと所用に出るとか、あるいは休日を利用してレクリエーションで遊びに行くとか、こういう方たちはいいでしょうと。だけど、私らみたいに四六時中ハンドルを握っている人間、朝から晩まで、二十四時間体制で下手すれば動いていますからね。そういう運転手さんにしてみると、圧迫されてかなわぬと言うんですね。中には気持ち悪くなる人もおると言うんです、体質的に。それからまた身長が余りない人ですな、身長のない人だと、ちょうどシートベルトをかけるべき肩へ来るやつが首へ来るんですね。いろんな方のを拝見しますと、中には西ドイツのある方も言ってましたが、シートベルトが頸部を圧迫した、そのためにむしろ大変な事故になったという記録も出ているわけですね。そういう方たちにとって、これどうすればいいのかというわけですね。  そういうことによって、むしろ安全基準であるべきシートベルトは、今度は労働条件の方から考えると、これは余りいいものじゃない。その点について警察庁でこういうことを、つまり基準を議会に提出して上げる前にどういうお話し合いがあったか、労働省の方と。安全に関しては警察庁だと思うんですよ。だけれども、労働条件の方になるとこれは一応労働省でしょう。どういうようなお話し合いがあったのか、その辺のところをちょっと聞かしてください。
  177. 小粥義朗

    政府委員(小粥義朗君) 労働者の安全、防止対策として労働安全衛生法が労働省の所管としてございます。当然、自動車運転者の安全問題もその意味では一般的には労働省の所管事項の中に入るわけでございますけれども、ただ、自動車運転者それ自体の安全確保についてはむしろ道路交通法との競合問題もございます。ダブル規制を排するというような観点もございますので、今までは道路交通法の体系の中で処理をしてきていただいております。  今回、シートベルト着用については交通安全対策会議でございますか、これは関係省庁もメンバーとして入っている。そこでこうしたものをやろうというような話になって、労働省もメンバーでございますから、私どもとしても、そうしたお話があった際に、少々不自由かもしれなしけれども、率直に言ってシートベルトあるなしで相当運転者が事故にぶつかった場合のけがの度合いも違うというふうにも聞いておりますので、その意味では安全のためには必要な措置であるというふうに考えまして、対策会議の中でのシートベルト着用については賛成をいたしたわけでございます。
  178. 越智俊典

    説明員(越智俊典君) 私どもこのシートベルトの立法をするに当たりまして、非常に関係するところが広いわけでございますので、昨年の十二月に交通警察懇談会ということで各界各層の代表者の意見をいろいろ伺いました。タクシーの業界につきましては、その後一月の段階で全国乗用自動車連合会とも接触の機会を持ちました。十分話し合い、協議をした上で提案をし、先般の国会で議決されたといういきさつでございます。
  179. 下村泰

    下村泰君 警察庁へ来て、あるいはその懇談会に出席した方々というのは実際は現場の人間じゃないわけですよね。もう既に卒業された方々だ、そういう人たちは。ところが、実際に現場で働いているタクシーの運転手さんはこのベルトのおかげで物すごく困っておる、みんな。  例えば、じゃ自動車強盗に遭った場合にどうするかと言うんです。ある運転手さんが、お客さん、ちょっと後ろから殴ってみてくださいよと言うんです。何でと言ったら、お客さんが殴るんだという気配がわかれば私は逃げられると言うんだよ。だけど、一々乗ったお客さんが自動車強盗をするんじゃないかと思いながらうかがっているわけにはいかぬと言うんです。そうすると、体を押さえられていいるから楽にポンコツ食っちゃうわけだな。  自動車強盗というのは、もう戦前と今とは違うんだよね。おたくはお若いでしょうから戦前のことは知らないでしょうけどね。戦前は、自動車強盗というのは運転手がやったんですよ。おわかりですか。運転手の方がお客さんから巻き上げた。例えば銀座に飲みに行く。あるいはそれ以外のと ころに飲みに行く。大体運転手さんが――さんをつけることはないです、強盗なんだから。そういう運転手は必ず人けのないところへお客を引っ張っていくわけだ。だから、自分が帰る道筋でない例えば青山墓地であるとか巣鴨とか、こういう墓地の方へ行ったら気をつけろというような話もあったくらいだ。  戦後は違う。客の方がやるわけ。殊に一番ねらわれるのが個人タクシー。なぜ個人タクシーがねらわれるか御存じですか。なぜねらわれると思いますか。
  180. 越智俊典

    説明員(越智俊典君) 私は交通の方の担当でございまして、ちょっとわからないところです。
  181. 下村泰

    下村泰君 それは、個人タクシーというのは平均年齢を考えてくださいよ。威勢のいいやつは一人もおらぬ。大抵、一生懸命タクシー会社に勤めてある程度の年齢になった、そこから初めて許可されるから、若くたって四十五、六でしょう。下手すれば七十を過ぎてもまだハンドルを握っていますわな。一番やりやすいわけ、ねらいやすいわけだ。しかしそれは個人タクシーに限らず、ほかのタクシーの運転手さんもやられるわけですよね。  ところが、一時はこれが非常に流行と言うとおかしいんですが、ああいうもの具犯罪というものはやっぱり一つの流行があって、おれもやろうなんていうやつが出てくるわけだ。時流の波に乗りおくれちゃ大変だなんていうやつもいるわけだ。その当時は、プラスチックの防壁をつくりましたよね。ちょうど日航のジャンボ機のおしりみたいに隔壁みたいのがあるわけだ。あれは警察の指示でやったんですか、それとも業者の自己防衛でやったんですか。
  182. 越智俊典

    説明員(越智俊典君) この問題も私の所管でございませんので、正確にはお答えできないわけですけれども、恐らく防犯的な観点からの警察の指導を受けて業界の方でやられたものであろうというふうに思っております。
  183. 下村泰

    下村泰君 これが完全に隔離されて、駅の窓口みたいに丸い穴があって、あるいは競馬とか競輪の馬券売り場とか車券売り場がありますわな、手だけすぽっと入るような、このくらいの間隔だったらまだいいわけだよね。ところが、今やもう半分しかないのもあるんですよ。その上に、シートベルトをしていてポンコツ食ったらこれはどうするのかということなんです。こういうことは、一体警察はどういうふうに考えてタクシーの運転手さんにも義務づけしているのか。  それから、今度のシートベルト着用でどこの国を参考になさったのか、それをちょっと伺いたいんですがね。
  184. 越智俊典

    説明員(越智俊典君) シートベルトとタクシー強盗との関係でございますけれども、私ども立法の際にも当然そういうことは頭に置いて議論をしたわけでございます。現在のシートベルトですとワンタッチで外れるような装置になっております。タクシー強盗の際の脱出ということが、シートベルトをしているために脱出が非常に困難になるというような状況というのはないのではないか。もちろんタクシー強盗に襲われるということはありましょうが、シートベルトをしていたから云々という結びつきはほとんどないのではないかというふうに考えております。  なお、シートベルトの法案を策定する場合、既に先進諸外国でかなりの国が義務づけておりますし、また外国では、違反して装着をしていない場合には罰金を取るというところまでいっております。ただ、我が国の場合には、仮にシートベルトをしていなくても罰金を取るところまで踏み込むのはいかがなものかということで、現在は義務を課して、高速道路については、してない場合に行政処分の点数一点を課する、そういう制裁措置だけで臨んでいるわけでございます。
  185. 下村泰

    下村泰君 あなたは命令する方だからいいのよ。そんなあんた簡単に言いなさんな。シートベルトをしていることによって脱出が不可能でとか、あるいはシートベルトをしていたために自動車強盗にはどうのこうのって、そんな簡単なものじゃないんですよ、やられる方は、しているから動けないんだから。ある程度の気配というものがありますよね、人間だれしも感じるんだから。よけ損なって殴られて、それがシートベルトのおかげということはあり得るわけでしょう。だから検討したと言う割には一つも検討してないんだよ。  それから、私が聞いているのは、どこの国を参考になさったのか、あるいは全世界の趨勢がそうだから日本もそうしたんだと、どっちなんですか。
  186. 越智俊典

    説明員(越智俊典君) シートベルトを現在義務づけておる外国の立法例は、五十数カ国ございます。イギリスあたりは相当国会で議論をして制定したわけですけれども、そのイギリスにおいては非常に効果が出ておるというようなこともありまして、世界の趨勢というふうに我々は判断しております。
  187. 下村泰

    下村泰君 それで我が国もシートベルト着用を義務づけた、こういうことになりますね。  そこで伺いますが、これもおたくからいただいた資料なんです。オーストラリア、ニュージーランド、ルクセンブルク、フィンランド、ノルウェー、デンマーク、カナダ、フランス、スイス、イギリス、西ドイツ、この国々は全部タクシーの運転手は除外されておるんですよ。しかも、このスイスという国は反対者が多かったために国民投票までした。国民投票の結果、シートベルトはすべきだという人が勝った。それだけの国でも、タクシーの運転手さんは除外されておる。ニュージーランドもそうだよ。オーストラリアは州によってそれぞれ違いますが、やはりタクシーを除外している州もあります。アメリカはまだ全州やっておりません。しかし、除外している州もあります。このニュージーランド、ルクセンブルク、フィンランド、ノルウェー、デンマーク、カナダ、フランス、今あなたがおっしゃったイギリス、それからスイス、西ドイツ、もちろんこういう国も罰金その他は出ていますよ。けれどもタクシーは除外されている。どうして除外されたのか考えたことがありますか。
  188. 越智俊典

    説明員(越智俊典君) 外国の立法例は私ども今回の法律をつくる場合に参考にいたしました。御指摘のように、諸外国の場合にタクシーの運転者について除外している例がございます。これは私どもいろいろ推測するところ、日本の場合、日本のタクシーというのは、すべてオートドアという形で、ドアが自動的にあくような形になっておりますけれども、外国の場合には、このオートドアがなくて、運転者がドアを開閉するというような形のものもあります。そういうことで除外されたものだというふうに理解しております。
  189. 下村泰

    下村泰君 あなたは、じゃ外国の映画を見たことないね。私もその点は気づいたんだ。今、テレビでも二、三年前の映画を上映していますよね。一々タクシーの運転手がおりてきてドアをあげたのは僕は見たことがない、空港へ着こうが。荷物を出し入れするときだけおりていますよ。それが一般じゃないかと思う。東京駅にいるタクシーの運転手さんはそれを嘆くわけね。ああいうところ、乗降客の方が大きな荷物を持ってこられる。そのたびにシートベルトを外して積まなければならない。  もっとおかしいのは、例えば助手席にいる人にもシートベルトを着用させなければいけませんわな、運転手は。タクシーの場合はどうするんですか、助手席に乗った場合。
  190. 越智俊典

    説明員(越智俊典君) 今回の改正では、運転者は助手席の人にもシートベルトをつけさせるようにしなければならないという規定がございます。  この関係で、むしろタクシーの関係者とのこの法案策定の際に議論になりましたのは、助手席に乗っている人に、いわゆるお客さんにシートベルトを装着させるというのはどこまで運転者としてやればいいのかということが随分議論になりました。一言声をかけて、お客さんベルトをしてくださいというふうに言えば運転者としての義務は果たしたものと判断する、そういうふうな話で現在運用をしておるところでございます。
  191. 下村泰

    下村泰君 そうすると、声をかけただけで、お客さんがしなければ点数には関係ないわけね。
  192. 越智俊典

    説明員(越智俊典君) 声をかければ運転者としての義務は果たしたものというふうに理解しております。
  193. 下村泰

    下村泰君 もっとも、タクシーの運転手さんが事故起こそうと思って走っている人は一人もいませんわな。お客さんを無事に運ばなければならないんだから、だからタクシーの運転手さんがむやみやたらにそう飛ばして人身事故を起こしたり、あるいは物件事故を起こしたり、自分自身が頭めちゃくちゃになるほどというようなことはありませんよ。そして事実、この各国の今申し上げた運転手さんは除外されている国の表を見ましても、シートベルトをすることによって死亡者が少なくなったというのは、これは一般のドライバーなんだ、タクシーの運転手さんじゃないんだ、ほとんどが。  それから、日本の全発生事故件数の中でタクシーの運転手さんの事故というのは一体どのくらいあるかということ、もう微々たるものじゃないかと思いますよ。その我々を安全に運んでくれるタクシーの運転手さんに言わせれば、このお客さんは危ないなと思って、人相、風体を見てよけるわけにもいかぬと。どのお客さんも安心して乗せなきゃいけないんだと、それでポンコツ食ったんじゃかなわぬと。何とかしてタクシーの運転手さんだけはこのシートベルトの着用を除外してもらえないだろうかと、こういう声が大きいわけね。今のところ全然外す気なしですか。
  194. 越智俊典

    説明員(越智俊典君) 今回の立法の際に、その前の段階でシートベルトをできるだけ着装しようとする運動をずっと数年来進めてきたわけですけれども、その際に中心になって推進していただいたのはタクシーの運転手さんでございます。一般的な道路交通の場で、やはり模範的なドライバーとしてタクシー運転者というのは位置づけるべきだというふうに考えておりますし、また、タクシー業界の方もそういうふうな考えを持って、率先してシートベルトの着装に取り組んできたわけでございます。したがいまして、今回その立法に際してタクシーの業界としては率先してシートベルトを推進しようという形で取り組んでいただいておりますので、現在のところこれを適用除外するような考えは持っておりません。
  195. 下村泰

    下村泰君 それは全然違います、現場とは。おたくさんたちはそう言うんだよ。私は聞いたんだ、実際にタクシーの運転手さんに。私らはそんなこと言ってないっていうんだよ。無理やりに朝言われるという、つけろ、つけろ。だから、実際に現場で働いている人とあなた方と接触した業者の方とは全然違うんだ、意見が。だから、本当に下から盛り上がってきているものじゃないということを認識しておいてくださいね。まあそれはそれでいい、しようがない、あきらめましょう。そのかわり、私も今度タクシーの運転手さんに言われたら、そういうふうに答えておきましょう、あなたのかわりに。  さあ、そこで問題になるのは、均等法によって、今度は女性が申し出ることによって女性のドライバーも深夜運転が可能になってきたと、こういうことですね、可能になるわけです。そうすると、労働省の方に伺いますが、今のようなことがもろもろ加味されて、今度女性ドライバーがねらわれる番になるわけだ、一番ねらいやすいんだ。どういうふうにお考えですか。安全対策と労働条件と両方が絡んでくるんですから、これは。
  196. 小粥義朗

    政府委員(小粥義朗君) 一口では非常にお答えしにくい問題でございますが、ただ、女性ドライバーも深夜の勤務ができるようにという強い要請を受けて、基準法の深夜業の禁止の規定をその部分に関して外す案を今関係審議会にお諮りしているわけでございますけれども、その場合に、現実に女性ドライバーでタクシー勤務されている方々のお話を前に伺ったことがございますが、その限りにおいては、必ずしもそうした強盗その他のたぐいの危険性よりも、むしろ深夜勤務ができるような体制をぜひつくってほしいという強い要望でございました。  そこで、今回の問題になりますと、もう御指摘のように、ドライバー自身の安全の問題、つまり、交通事故による安全の問題と、一方で強盗その他の刑事事件による危険との比較の問題になろうかと思いますが、したがって、その面は一方だけに偏して決めかねる問題でもございますけれども、その点は当事者である女性ドライバーの方の意向として、ぜひ深夜勤務を実現してほしいという要望を受けておりますので、そういう方向で労働省としては現在のところ考えているというふうにお答えをせざるを得ない状況でございます。
  197. 下村泰

    下村泰君 警察の方はどういうふうに考えているんですか。これは大変な問題だと思うんですよ。やられてからじゃ遅いんです。どういうふうに考えていますか。
  198. 越智俊典

    説明員(越智俊典君) 現在のシートベルトを着装するという道交法の義務は、これはすべての人にかかってまいりますので、男性である、女性であるということによって差異は出ないものというふうに考えております。
  199. 下村泰

    下村泰君 それはもう、お答えはそれでいいんでしょうけれども、だけれども、女性がシートベルトをして逃げられないために事件が起きたとしたら、あなたどうしますか。そこまで考えていらっしゃいますか。ただ一般的にそういうふうにお答えになるのは結構でしょうけれども、どうなさいますか。
  200. 越智俊典

    説明員(越智俊典君) まあ、これは男性の場合も女性の場合も同じだというふうに私ども基本的に考えております。
  201. 下村泰

    下村泰君 それ以上お答え出ませんな。知りませんぞ、事件が起きてからでは。しかし、本当のことを言ったら、もう一つ踏み込んで考えていただきたいと思うんですよ。  確かに、シートベルトがあるにもかかわらず、ベルトをかけない人が多いんです、それは事実ですわ。私も実際にシートベルトをかけて運転していますけれども、本当に運転しにくい、あれは。もうちょっと何とかならないかということも考えられます。これは運輸省の方にお願いしていろいろと方法も考えてもらわなければならないと思いますよ、さっきも言った背の足らない人とかいろいろあります。シートベルトをしたために首が締まったなんという例も、これ事実あることなんですからね。それからいろいろのまだ問題点があると思います。どうぞひとつ十分に御検討していただきたいと思います。終わります。
  202. 岩崎純三

    委員長岩崎純三君) 本調査に対する本日の質疑はこの程度にとどめます。     ―――――――――――――
  203. 岩崎純三

    委員長岩崎純三君) 次に、去る九月、当委員会が行いました委員派遣について、派遣委員報告を聴取いたします。佐々木満君。
  204. 佐々木満

    佐々木満君 去る九月三日から五日までの三日間、岩崎委員長高杉理事及び石井和田中西佐藤下村の各委員と私の八名は、老人保健医療・福祉と最近の雇用失業情勢等の実情調査のため、石川、富山の両県に行ってまいりました。  まず、両県における老人保健医療・福祉の概要について申し上げます。  石川県の六十五歳以上人口は、総人口比で一一・六%と全国水準の一〇・三%を上回っており、このうちの一・六%が在宅寝たきり老人で、痴呆老人の出現率は二・四%と推定されております。  老人保健医療対策につきましては、予防を軸とした体制づくるに努めており、老人保健法に基づく医療対象者のほか、六十九歳の低所得者に対し県単で老人医療費の公費負担を行うとともに、老人病棟の整備充実を図っております。  五十八年度における健康診査の受診率の実績は二三・七%と、全国平均の二〇・七%を上回っておりますが、逆に胃がん及び子宮がん検診では平均を下回り、今後の課題となっております。がん対策としては、県の対がん協会が実施している調査研究や検診事業に対し県費助成を行っているほか、生涯にわたる健康づくり対策の一環として、 二十歳の男女を対象とした成年健康調査事業のほか、能登地域の出稼ぎ者に対する健康診査も実施しており、保健婦一人当たりの担当人口でも平均より良好な配置がなされております。  また、健康づくりの基盤整備としては、地域リーダー育成のための県民健康づくり推進員の設置のほか、健康増進保健指導事業を実施する等の工夫をしておるところであります。  人口十万人当たりの医師数は百九十九・三人で全国第二位に位置しており、病床数も平均を大きく上回っておりますが、加賀、能登地区間にかなりの地域格差が見られるのが問題と思われます。  次に、老人福祉対策について御報告いたします。  在宅の要援護老人に対する在宅対策としては、多数の老人が居宅での生活を希望している実情を踏まえ、国庫補助事業のほか、在宅寝たきり老人介護慰労金の支給、入浴車巡回事業、老人福祉連絡員設置事業等の県独自の施策をきめ細かく実施しているとのことであります。  一方、特別養護老人ホームの整備につきましては、県の設定した整備目標を六十年度末においてほぼ達成すると見込まれているほか、本年度には、痴呆老人対策を含め県内施設の指導的、中心的施設としての県立基幹特別養護老人ホームの建設を行うこととしております。  また、痴呆老人対策としては、痴呆老人短期保護事業、介護研修、テレホン相談事業、介護読本配布事業等を県独自で実施しているところであります。  次に、富山県の概況について申し上げます。  本県の老年人口比率は、石川県より約一ポイント高い一二・七%であります。在宅寝たきり老人の割合は一・五%と、両県ともに全国平均の三・一%を大きく下回っておりますが、富山県の痴呆老人の出現率は在宅者の五・六%と若干高めの傾向があります。  保健医療対策としては、二十一世紀を目指した日本一の健康県の実現に向けて努力しているとのことで、特に、五十九年度における老人保健事業の一般診査の受診率は四七・九%と極めて高い水準にあり、国が定めた六十一年度までの目標受診率五〇%は本年度中に達成される見通してありますが、胃がん・子宮がん検診については、いま一歩の努力が望まれるところであります。  保健事業の実施体制では、市町村保健センターの設置率が全国第一位であるのに加え、人口当たりの保健婦数においても全国水準をかなり上回る状況にあります。また、老人医療費の助成制度に関しては、六十五歳以上の重度・中度の障害を有する者に対する老人保健法による一部負担金の肩がわりのほか、六十五歳から六十九歳までの軽度障害老人については、県単で医療費の公費負担制度を存続させていますが、法によるものと同額の一部負担金は患者負担となっております。成人病予防や健康づくり対策としては、総合健康教育、ライフステージに応じた健康づくり活動の推進やそのための基盤整備についてそれぞれの施策を実施しているところであり、本県の特色ある事業としては、市町村が開催する健康づくり大会や健康生活展に対し県が補助する生き活き健康フェスティバル開催事業、主婦等に対する実践教育やヘルスボランティアの養成を行う健民運動モデル事業等の実施に努めておるところであります。  医療関係従事者の充足状況は、歯科医師以外は比較的高い水準にあり、特に薬剤師については薬業県富山という特殊性を反映し、人口当たりでは全国第二位の配置となっています。  次に、在宅の要援護老人対策としては、地域福祉活動推進モデル事業や、市町村が地域の実情に応じて入浴、給食サービス事業等を行う要援護対策メニュー事業等を県単で実施しているところであり、今後においては、家庭奉仕員派遣事業やデイサービス事業を特に充実したいとの意向が示されたほか、痴呆老人関係では、全国でも本県だけの施策として痴呆性老人検診・適所指導事業を実施し、ショートステイで痴呆老人を預かる場合には県単で介護加算の上乗せを行っておるところであります。  一方、施設対策では、本県の持ち家率や一住宅当たりの居住面積が全国一で、多世代同居の割合も高い等の事情から、老人ホームの整備率の全国順位は特別養護老人ホーム四十二位、養護老人ホームで四十六位と低位にありますが、将来においては家庭の介護機能の低下が予測されるため、特養の整備が急務とのことでありました。  なお、両県より、退職者医療制度の対象者数が当初見込みを下回ること等による市町村国保財政への影響に対し、必要な措置を講ぜられたい旨の要望がありました。  次に、雇用情勢の現況等について申し上げます。  まず、石川県の雇用動向は、本県の基幹産業である繊維工業の不況等から求人は伸び悩む一方で、これらの企業の人員整理等から求職者はふえ、本年度の第一・四半期で見ると対前年同期比で二・九%の増となるなど、全国的傾向からは逆現象となっており、求人倍率も下降する等、全体として厳しい情勢にあります。  高年齢者の実雇用率は八・五%と全国平均を上回っているものの、達成企業割合では若干下回るため、特に今年度より県単で高年齢者雇用率達成指導コンサルタントを設置し、未達成企業の指導に当たっておるところであります。また、一律定年制を採用している企業のうち、六十歳以上としているのは五八%と全国平均を上回る状況にありますが、なお、六十歳定年推進会議を開催する等、事業主の啓発に努力しております。  次に、身体障害雇用関係では、対象企業トータルでの雇用率は一・五四%、達成企業割合でも六二・七%とそれぞれ全国平均を大きく上回っておりますが、さらに県独自で心身障害者職業相談員及び手話協力員の配置等の諸施策推進しておるところであります。  労働時間の実情は、繊維産業を初めとして中小企業が多いこと、サービス産業のウエートが高いこと等の影響により、五十九年度における一人当たりの年間総実労働時間は二千百六十九時間と全国平均を五十三時間上回る状況にあるため、県としては労働基準局と連携を図りながら、労働時間の短縮努力したいとの意向でありました。  次に、富山県の情勢を本年度の第一・四半期と前年同期と比較してみると、求人の増加幅が〇・九%と全国平均より少ないにもかかわらず、人員整理の減少等もあり、求職の減少が一段と大きいため、求人倍率が新規、有効ともに平均を大きく上回る状況にあります。  高年齢者の実雇用率は五・八%と石川県とは逆に全国水準を下回るばかりか、法定雇用率達成企業割合も四二%であるため、再就職の促進対策として、中高年齢者集団面接選考会の開催、高年齢者特別求人開拓員の設置等の事業を県単で行うなどの努力をしているとのことでありました。また、六十歳以上の定年制を採用している企業割合も平均を下回る状況にあり、高年齢者雇用面で本県の一層の奮起が望まれるところであります。  次に、障害者の雇用面を見ると、身体障害雇用率は一・四八%と法定雇用率にわずかに及ばないものの、雇用促進キャンペーンの実施等により全国平均に比べ良好な状況にあるほか、本年度より特に精神薄弱者についても雇用奨励制度を全国初の試みとしてスタートさせておりますが、発足後日が浅いこともあり、実績は今のところございません。  労働時間関係では、完全週休二日制の普及率や年休の取得率が全国平均より低いこと、さらには女子の勤務時間が長く労働力率も高いなどの諸事情を反映し、年間の総実労働時間は石川県よりは短縮されてはいるものの、なお全国平均を三十八時間上回っているため、労働省の示した「労働時間短縮の展望と指針」に基づき、関係機関との連携を深めながら、諸施策の充実に努めたいとの御説明でありました。  次に、関連して視察いたしました箇所について簡単に申し述べます。  まず、石川県立高松病院は、昭和四十一年に開設された精神病院であり、その後においても老人病床百床の増床やデイケアセンターの開所、さらには運動療法棟の完成など逐次施設の整備を行う一方で、臨床研修施設として国の指定を受けみなど、精神科治療の完全実施はもとより、患者の社会復帰のための努力と研究を進めておるところであります。さらに、本年の十月からは、入院を要する痴呆老人に対するニーズの高まりにこたえるため、五十床の痴呆老人病棟が増設されるほか、都道府県立精神病院として初めてアルコール症専門病棟が開設される運びとなっております。  なお、精神病院の経営に関連し、特に集団精神療法が診療報酬の上で全く点数化されていないなど、精神科の診療報酬上の評価が全体として低いとの指摘がなされ、改善についての要望がございました。  次に、石川県辰口町においては、来年度において老人保健法の改正予定されていることもあり、老人保健事業の実施状況等について町長以下現地の関係者の意見を聴取してまいりました。  同町は「自分の健康は自分で守る」という基本理念のもとに、健康診査の受診率の向上のために特定年齢に着目した節目検診の実施のほか、町民健康づくり推進員の地区組織の育成等により、住民の健康意識の高揚に努めておるところであります。  その結果、六十年度においては一般診査の五二・三%を初めとして、胃がん・子宮がん検診についても二割を上回る受診を計画するなど、健康診査事業は全体的に良好な状況にあります。  なお、町当局より、退職者医療制度の創設に伴う国保財政への影響について必要な措置をとること、保健事業の実績を勘案した国庫補助を実施すること等の要望がございました。  次に視察した富山シルバーホームは、社会福祉法人光風会が経営する特別養護老人ホームであり、五十七年の事業開始以来収容定員に対する利用率は常時高く、ショートステイ部門でも一日平均で一・一七人の利用があります。職員も国の基準三十六名に対し五十名が配置されているほか、設備面でも各フロアごとに談話室が設けられ、入所者同士の話し合いやカラオケ大会等に利用され、老人痴呆の防止に大変役立っている等の説明がありました。  本施設に併設されている富山市デイサービスセンターは、利用者の七割が重症者であるため、国の指導による利用定員二十五名に対し、一日の平均利用人員が八名程度にとどまり、デイサービスの登録者がサービスを受けられたのは三週間に一回程度とのことでありましたが、本年の七月に他の施設が開設されたため、十日に一回程度に改善されております。  最後に、独自の完全一貫生産システムのもとに、ファスナー、アルミ建材等を生産する国際的企業である吉田工業株式会社黒部工場のほか、石川県工業試験場、同県立中央病院及び富山県総合体育センター等を視察いたしましたことを申し添えます。  以上が調査の概要でありますが、石川、富山の両県から提出されました要望事項の会議録末尾掲載方を、委員長においてお取り計らいくださいますようお願い申し上げまして、報告を終わります。
  205. 岩崎純三

    委員長岩崎純三君) 以上をもちまして派遣委員報告は終了いたしました。  なお、佐々木君の報告中御要望のありました石川、富山の両県からの要望事項等を本日の会議録の末尾に掲載することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  206. 岩崎純三

    委員長岩崎純三君) 御異議ないと認め、さよう取り計らいます。  本日はこれにて散会いたします。    午後三時三十二分散会      ―――――・―――――