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1985-10-23 第103回国会 参議院 決算委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十年十月二十三日(水曜日)    午前十時開会     —————————————    委員異動  十月二十二日     辞任         補欠選任      上田耕一郎君     安武 洋子君      関  嘉彦君     三治 重信君  十月二十三日     辞任         補欠選任      喜屋武眞榮君     下村  泰君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         丸谷 金保君     理 事                 出口 廣光君                 林  ゆう君                 松尾 官平君                目黒今朝次郎君                 服部 信吾君     委 員                 大浜 方栄君                 後藤 正夫君                 斎藤栄三郎君                 杉元 恒雄君                 曽根田郁夫君                 原 文兵衛君                 平井 卓志君                 福田 宏一君                 星  長治君                 矢野俊比古君                 梶原 敬義君                 菅野 久光君                 本岡 昭次君                 刈田 貞子君                 田代富士男君                 佐藤 昭夫君                 井上  計君                 下村  泰君    国務大臣        法 務 大 臣  嶋崎  均君    政府委員        法務政務次官   村上 茂利君        法務大臣官房長  岡村 泰孝君        法務省民事局長  枇杷田泰助君        法務省刑事局長  筧  榮一君        法務省人権擁護        局長       野崎 幸雄君        法務省入国管理        局長       小林 俊二君        厚生省保健医療        局長       仲村 英一君        通商産業省生活        産業局長     浜岡 平一君    最高裁判所長官代理者        最高裁判所事務        総長       勝見 嘉美君        最高裁判所事務        総局経理局長   川嵜 義徳君    事務局側        常任委員会専門        員        小島 和夫君    説明員        警察庁刑事局捜        査第二課長    国松 孝次君        警察庁刑事局保        安部保安課長   伊藤 一実君        青少年対策本部        参事官      金沢 章夫君        経済企画庁国民        生活局消費者行        政第一課長    里田 武臣君        法務大臣官房司        法法制調査部長  井嶋 一友君        大蔵省理財局国        有財産審査課長  藤村 英樹君        国税庁聴衆部徴        収課長      加藤 廣忠君        文部省初等中等        教育局高等学校        課長       阿部 憲司君        文部省初等中等        教育局中学校課        長        林田 英樹君        文部省教育助成        局財務課長    逸見 博昌君        厚生省社会局保        護課長      萩原  昇君        農林水産省農蚕        園芸局植物防疫        課長       岩本  毅君        通商産業省産業        政策局商政課長  山下 弘文君        会計検査院事務        総局第二局長   天野 基巳君        会計検査院事務        総局第五局長   秋本 勝彦君    参考人        商工組合中央金        庫理事長     佐々木 敏君     —————————————   本日の会議に付した案件昭和五十八年度一般会計歳入歳出決算昭和五  十八年度特別会計歳入歳出決算昭和五十八年  度国税収納金整理資金受払計算書昭和五十八  年度政府関係機関決算書(第百二回国会内閣提  出)(継続案件) ○昭和五十八年度国有財産増減及び現在額総計算  書(第百二回国会内閣提出)(継続案件) ○昭和五十八年度国有財産無償貸付状況計算書  (第百二回国会内閣提出)(継続案件)     —————————————
  2. 丸谷金保

    委員長丸谷金保君) ただいまから決算委員会保を開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  昨二十二日、上田耕一郎言及び関嘉彦君が委員辞任され、その補欠として安武洋子君及び三治重信君が選任されました。  また本日、喜屋武眞榮君が委員辞任され、その補欠として下村泰君が選任されました。     —————————————
  3. 丸谷金保

    委員長丸谷金保君) 昭和五十八年度決算外二件を議題といたします。  本日は、法務省及び裁判所決算について審査を行います。     —————————————
  4. 丸谷金保

    委員長丸谷金保君) この際、お諮りいたします。  議事の都合により、これらの決算概要説明及び決算検査概要説明は、いずれもこれを省略して、本日の会議録の末尾に掲載することにいたしたいと存じますが、御異議ございませんか、    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 丸谷金保

    委員長丸谷金保君) 御異議ないと認め、さよう取り計らいます。     —————————————
  6. 丸谷金保

    委員長丸谷金保君) それでは、これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。
  7. 本岡昭次

    本岡昭次君 本日は、法務省最高裁判所関係のある幾つかの問題についてお尋ねを申し上げます。  在日朝鮮人の方々の問題、児童生徒の問題、さらには精神障害者の問題にかかわって、広く人権のあり方について伺いたいと思います、  まず、在日外国人に課せられている指紋押捺制度及び外国人登録法の運用について伺います。  我が国には現在約八十万人の在日外国人生活しています。しかし、これらの人々のうち大部分は、日本国民一般と全く同様に日本生活の基盤を持ち、一生を日本生活するのであります。このような在日外国人に対して差別的に課せられております指紋押捺制度はまさに重大な人権問題であります。外国人に対してのみ差別的に指紋を強制し、しかも二世、三世を初め子々孫々に至るまで指紋を課している国は、世界広しといえども日本だけではないかと思います、このような制度は、内外人平等を規定した国際人権規約違反するものであります。この点について政府見解をお聞かせ願いたいと思います。  また、日本指紋押捺制度国連差別防止条項違反しているとして、国連差別防止及び少数者の保護に関する小委員会正式案件として討議されることになったという新聞報道がありました。政府は、このような国際的な動きをどのように受けとめておられますか、お伺いします。
  8. 小林俊二

    政府委員小林俊二君) お答え申し上げます。  御承知のとおり、我が国国籍法血統主義をその原則といたしております、したがいまして、外国人の子として我が国出生したいわゆる二世、三世は、帰化をしない限り、引き続き外国人として我が国に在住することになります。その結果、これらの人々外国人登録法適用を受けることになるわけであります。在日外国人の二世、三世指紋押捺を引き続き義務づけられるというのは、国籍法の立脚するこうした原則がたまたまもたらした結果なのであります。出生地主義をとる国におきましても、在留外国人の子がその国に出生しながら、所定の手続を経まして両親の国籍を保持することを選ぶ場合には、引き続き外国人登録法適用を受けることは当然でございまして、単にその国における出生という事実のみをもって外国人登録適用を免除している国は存しないのであります、現行指紋押捺制度は正確を外国人登録を維持するために必要な制度でございまして、こうした合理的な理由が存する限り、外国人に課せられた指紋押捺義務国際人権規約違反するものではございませんし、この点は昨年の横浜地裁あるいは東京地裁、また本年の福団地裁小倉支部における判決においても明瞭に判示されているところでございます。  また、ジュネーブの人権担当国連事務局からの承知するところによりますと、本年七月中旬に韓国民間団体から、また本年八月中旬には朝総連から、この事務局に対しまして、我が国指紋制度に関する申し立て提出された由でございます。しかしながら、この種の申し立ては、いかなる個人民間団体も自由に行い得るものでございまして、この事務局といたしましては、提出があり次第これを整理して、差別小委員会、すなわち人権委員会下部機構でございますいわゆる差別小委員会の次回会議提出することになるのであります。差別小委員会では、まずその下部機関である作業部会におきましてこれを審査し、小委員会でこれを取り上げるべきか否かを決定するわけでございます。したがって、事務局申し立てを受理して小委員会に付託をする手続をとったということ自体は、国連としてはもとより、事務局としても別段何らの意思も表示したことにはならないのであります。また、実際に指紋制度に関する在日韓国人団体等からの同種の申し立ては過去にも行われております。その都度作業部会において、その上部機構である差別小委員会提出するかどうかという審議を行っておりますが、今日までのところ、その都度、提出しない、上程しないという決定が行われておるのであります。
  9. 本岡昭次

    本岡昭次君 今の法務省見解、納得できませんが、それは別の機会にまた論議をすることにしまして、この七月以降外国人登録の大量切りかえが行われてきました。これに際して、指紋押捺拒否し、また留保される方が多数に上っています。現在、その数は全国で何名に達していますか。
  10. 小林俊二

    政府委員小林俊二君) 入国管理当局におきましては、市町村から都道府県を経由いたしまして、個人別に、ただいま御指摘のございましたような案件につき報告を受けております、この報告当局において集計した結果によりますと、十月十八日現在で、指紋押捺拒否者は千八百三名、指紋押捺の意向を表明していわゆる説得期間中にある者が四千九百五十六名ございます、
  11. 本岡昭次

    本岡昭次君 今の報告と私どもの知り得た情報では非常に差があります、私どもの得た情報では、拒否者保留者の累計は実に一万名を超えるものと推計されております、いずれにせよ、大量の拒否者保留者が発生したことについてどのように受けとめておられるか、お伺いしたいと思いますし、また一方、兵庫西宮市では、八二年拒否者である金善恵さんが、西宮市からの告発もないまま、時効が近づいているとの理由で見せしめ的に逮捕され、一晩留置されるという事態が起こっています。この経過から見て、警察の拒否者つぶしをねらった弾圧としか考えられません。また、この指紋押捺拒否したため、自治体首長告発もないまま逮捕された李相鎬さんは法廷で、意見陳述では次のように述べています。指紋押捺拒否は、決して押す、押さないの問題ではなく、排外意識のない日本社会のあるべき姿を推しはかっていく問題だ。三世、四世が胸を張って日本人とともに生きる社会土台づくりをしていきたい。この裁判で問われるべきは、拒否者でなく、日本政府だ。この在日外国人からのこの問いかけを政府はどのようにとらえておられるか、お聞きしたいものであります、
  12. 小林俊二

    政府委員小林俊二君) 御承知のように、在日韓国人の一部の人々は、指紋押捺制度の改廃を求めることを目的といたしまして指紋押捺拒否しておる次第であります。しかしながら、我が国は、言論の自由の保障された法治国家でございまして、特定の政治的な意見を表明するために違法行為を公然と犯すということを正当化し得る余地は存しないのであります、したがって、こうした行為は極めて遺憾と言うほかございません、また、こうした違法行為の繰り返しが国内においては少なからず反発も呼んでおるのでございまして、いわゆる留保運動目的を達成する上からは逆効果をもたらすという面も存することは否定し得ないのであります。  ただいま御指摘の川崎で逮捕された韓国人青年の主張につきましては、公判の席上、公判中の事件について法廷で行われた陳述でございますので、当然法廷論議すべき問題と存じます。したがいまして、この場におきましてはコメントを差し控えたいと存じます、
  13. 本岡昭次

    本岡昭次君 今、あなたは、こうした指紋拒否が、留保運動というんですか、そういうものの障害になるとおっしゃいましたが、しかしこれは何も在日外国人だけでなく、多くの日本人もこの運動に参加し、賛成しておる事実があることは認めなければならぬと思います。  その端的なあらわれが、外国人登録法改正を求める地方自治体議会決議であります。この十月十六日現在で、実に九百八十六自治体議会がこの決議を行っております。その内容は、二府十一県十五区四百十三市四百五十三町九十二村でありまして、全国の総地方自治体三千三百二のうち二九・八%を占めております、これを居住する人口で見ますと、我が国の総人口のうち七〇%の住む地方自治体がその決議に参加しておるという状態にあります。これらの決議は、我々社会党の地方議員はもちろん積極的に推進しておりますが、それだけでなく、自民党の議員の方も含む全会一致でなされているものがほとんどであります。  このように、この在日外国人はもとより、幅広い日本国民からも要求されている指紋押捺制度の全面的な廃止の問題について、当局としても今こそ決断を下していくべき時期であると考えますが、これはひとつ法務大臣にお考えをお聞かせいただきたい、このように思います。
  14. 嶋崎均

    国務大臣嶋崎均君) お答えいたします。  外国人の法的な地位待遇の問題につきましては、単に国内的な事情だけじゃなしに、国際的な事情というようなものも十分判断をして対処をしなきゃならぬものであるというふうに我々は思っておるわけでございます。しかし、御承知のように、我が国指紋制度の問題につきましては、相当長い歴史を持っておりまして、戦後、どうしてもきちっと外国人登録の姿で問題を整理をしていく場合に、指紋制度をとらなければいけなかったという背景がありまして、この制度ができたわけでございます。  御承知のように、昭和二十七年の四月一日から実施しようということでございましたが、それがいろんな経過がありまして、三十年から実施されるというような状況になっておるわけでございます、その後、いろんな経緯があったわけでございます、特に最近におきましては、昭和五十七年に外国人登録法の全面的な改正が行われたことは、皆様方承知のとおりでございまして、そのときは野党の皆さん方もこの制度について御賛成をいただいたという経緯もあるわけでございます。その際、御承知のように、三年での切りかえを五年に切りかえるというようなこと等を中心としました改正が行われておるわけでございます。ちょうど、ことしがその三年を五年に切りかえたピークになるわけでございます、そういうことで、この問題が大きく論議をされるという背景はあったわけでございますけれども、そういう経過があったということは、ぜひ御承知を願いたいというふうに思っておるわけでございます。  ところで、最近、この問題が非常に深刻な状況になりましたのは、ごく一部の方は昭和五十五年ぐらいから拒否をされるというような方がありましたけれども、昨年、韓国の大統領がこちらにお見えになったときに、日韓共同声明の中で、在日韓国人の法的な地位及び待遇の問題については引き続き努力をするというような経過がありまして、これは指紋制度を直接とらえておる話ではありませんけれども、そういう背景の中でこの問題を考えていこうというような背景ができたわけでございます。実は、そういう話以後、非常に拒否者がふえてきているというのも、非常に話が厄介なことであろうというふうに私は思っておるわけでございます。  そういう中で、この問題についていろいろ工夫検討をしたわけでございますけれども、結果的に政府の各省庁間の中でもいろんな論議をやってまいりました。何しろ制度改正をして最初の改定期に当たるというようなときに、もう決まった法律をすぐまた直すという話も、いささか朝令暮改の感がなきにしもあらずというような感じもするわけでございます、  また、この制度がとられたことについては相当の背景があるわけでございまして、私は一々中身の詳細は申し上げませんけれども、現在でも相当異動登録というものは多うございますし、また、登録票自体の書きかえというのも年間には相当の数になっておるわけです。中でも、その中で氏名をかえるというような例も、一年に平均しますと二千五百件もある。日本人の場合には、御承知のように氏名をかえるというようなことになると、司法手続をとらなければ改定ができないわけでございます。それくらい日本の中では戸籍制度その他がきっちり整理をされておるという状況があるわけでございます。  そういう中でこの問題を考えていくと、やはりこの制度というのは維持をしなきゃならぬことである。しかし、一方、この問題をめぐってはいろんな議論があることを私も承知をしておるわけでございます。御承知のように、この五月十四日に、従来は回転指紋であったのを平面指紋に直す、それから汚れた指の痛みというようなことが世の中で言われておるわけでございますから、なるべくそういう手に墨をつけるというような感覚を脱しようということで、特殊の用紙を使いましてその上にやっていただくというようなことで、そういう問題をも回避できるというような背景の中でこの問題の処理を図ってきたわけでございます。したがいまして、できるだけ我が国に居住をされる外国人皆さん方は、やはり日本制度背景があるわけでございますから、できるだけその制度をきちっと守っていただきたいということを申し上げて今日までまいったわけでございます。  今、御指摘のように、ことしは相当の大量切りかえになっておりまして、そういう意味在日韓国人皆さん方中心にしまして、この問題について非常に深刻な取り扱いをされたという経過があったわけでございます。したがいまして、今事務当局から説明がありましたように、相当数拒否者もありますし、また留保者もあるというのは、まことに残念至極であるというふうに思っておるわけでございます。  いろいろ世の中新聞等にも報ぜられておるわけでございますけれども、だんだんにこの問題の終息に向けての努力というものを我々自身もやっていかなきゃならぬし、また在留外国人皆さん方にもぜひ協力をして処理をしていただきたいというふうに思っておりますけれども、先ほど数字で申し上げましたように、現在、我々が把握しているだけでも拒否者が千八百名を超えておるというような状況にあるわけでございまして、今後とも我々の方で説得努力を続けまして、ぜひこの問題が円満に終息するように努力をしてまいりたいと思っておるわけでございます。  なお、自治体のいろいろな動きがあることもよく承知をしておりますし、一部労働組合の中でもそういう動きをしておるということも承知をしておりますけれども、よく過去の経緯というようなことを踏まえまして、的確な判断の中でこの問題の円滑な処理のためにともに御協力をしていただきたいという気持ちで現在これに対応しておるというのが実態でございます。
  15. 本岡昭次

    本岡昭次君 長い答弁をいただきましたけれども、まあ何か経過報告を聞かしていただいたようなことで、大臣として、今起こっている外国人登録法にかかわる問題、指紋押捺の問題に対する厳しい現状、また自治体がそうした決議をして政府に対して要請している問題を深刻に受けとめておられない。法務大臣、非常に残念でもあります、  ここでその問題に絞って私は論議する余裕がありませんので、今の大臣答弁、本当に不満であるということを申し上げておきたいと思います。  最後に、具体的な問題を一点だけ申し上げて終わります。  姫路市の西播朝鮮人小中学校教員である曹和男さんという方が、切りかえ交付申請がたった三カ月おくれただけで五万円の罰金略式命令を十月一日、姫路簡裁より出されました。指紋押捺拒否事例を見ますと、一万円の罰金ということになっています。それに対し、切りかえ交付申請がちょっとおくれただけで五万円というのは、私は現行外国人登録法を認める立場に仮に立ったとしても、これは非常に重過ぎるのではないか。やはり現在、外国人登録法違反に問われている在日外国人の間において、司法当局が何かさらに差別をして取り扱っているのではないかというふうに考えざるを得ないんです。  ちょっとした不注意で申請がおくれたというだけであえて起訴した検察官の態度、あるいはまた五万円という罰金を安易にかぶせていく問題、何か非常にこの問題が人権ということから起こっている問題ということについての非常に配慮に欠けたものではないかというふうに思うんですが、この点について一言法務省考えを聞かしていただいて終わりたいと思います。
  16. 筧榮一

    政府委員筧榮一君) 御質問の事項は、裁判という司法権の具体的な発動にかかわる問題でありますので、私どもとしてその適否を詳細にお答えすることは差し控えるべきであると思います。ただ二点だけ御指摘の点について、私ども立場から申し上げたいと思います。  一つは、御指摘の切りかえ交付申請違反の件でございますが、切りかえ交付申請義務と申しますのは、外国人登録正確性を維持するための外国人登録法の基本的な義務であるわけであります。これを怠ったという意味におきまして、申請は行いましたが、その際指紋押捺しなかったという指紋押捺事件と比較いたしました場合に、その違反の態様あるいは刑事責任の程度に差があるのではないかと考えられるというのが第一点でございます。  それから、指紋押捺事案について、従来罰金一万円あるいは二万円という刑が言い渡されている事例がほとんどでございます。これに対しまして、今回御指摘事案罰金五万円というふうになっておるわけでございますが、指紋押捺事件、これはいずれも昭和五十七年法律七十五号によります改正前の外国人登録法違反事件でございます、したがいまして、指紋押捺事案法定刑罰金刑最高三万円でございます、三万円以下の罰金と定められていた当時の事案でございます、これに対しまして、御指摘の切りかえ交付申請の事実、これは昭和五十七年の改正後の行為でございまして、この改正法によりまして、法定刑のうち罰金刑の上限を二十万円に、三万円以下が二十万円以下というふうに昭和五十七年に改正された以後の事件でございます、したがいまして、それぞれの法定刑を前提として適正な判断がなされたものではないかというふうに考えておる次第でございます。
  17. 本岡昭次

    本岡昭次君 次に、高等学校における体罰という名の教師の暴力について、暴行について伺います、  兵庫県立西宮北高校の卒業生、在校生から教師暴行について、いろいろな形で私ども告発が行われています、その中で、特にひどいものを五点ばかり申し上げてみたいと思います。  まず一つは、A君が体育教官室に、次の体育は何かと聞きに行きますと、N教師が出てきて、君の服装は何だと服装の注意をした。黙っていたら、教官室へ連れ込まれて、その場にいた教師五、六人に取り囲まれ、まずY教師が二、三発どついて、それが教師に対する態度かと、腹、顔を二十発ぐらいどつかれ、おれはヤーさんと一緒やぞと言って、体育科をなめぬなや、学校やめさしたろかと言われた。にらみ返すと、またどつかれた。一週間ぐらい口の中が切れて痛かった。  二番目に、バイクの免許状を取ったのがばれて、一緒に免許を取った友人の名前を言えといってどつかれた。教官室に連れ込まれて、三、四人の教師に取り囲まれ、ナイフをテーブルの上にぐっと刺して、そしておどして、ナイフで刺したろかと、こういう脅迫の中で名前を言えということが続けられ、そしてまたこのNという教師に投げ飛ばされて、背中を強打して大変だったという。  三番目に、今度はまたクラブ活動を五時に終えて、家に帰りたいと言ったら、Yという教師がちょっと来いと腕を持って振り回して、内出血するまでどつき、ナイフをちらつかせて、さあかかってこいと言ってまたおどすというようなことをやった。  四番目に、たばこを吸っているのを町で何人かで集団で見つかって、たまたま一人の名前がわかっていたので呼び出された、それで、おまえと一緒にいた名前を言えと、こう言われて、その子供は死んでも友だちの名前は言えないと言ったら、そこにあったプロパンガスのホースを口へ入れて、おまえ死んでも言えぬと言うたなと、このバルブ緩めたらおまえ死ぬんやぞと、こういうような形で友だちの名前を言うように脅迫したというんです。  また、林間学校で、昼間、教育活動の中で教師に注意された生徒に対して、別の教師が今度は夜、酒を飲んで酔って、その生徒の宿舎を訪れて、おまえは昼間何しておったんやということで、殴る、けるの暴行。そのあげく、縁側から突き落とす、そういうようなことをされて歯を二本折ってしまった。この子供は百発ぐらい殴られたというようなことを言っているわけで、この高校ではここ数年間、こうした生徒に対して殴る、ける、ナイフで脅迫するなどの暴行が、あるいは体罰ということで、日常茶飯事行われているというふうに私たちの情報としては入ってきております。  文部省に実態を調査するよう依頼しておきましたが、文部省の調査結果を簡単に報告してもらいたい。
  18. 阿部憲司

    説明員(阿部憲司君) ただいま先生から西宮高等学校の体罰問題についていろいろ御指摘をいただいたわけでございます、文部省といたしましても、最近の新聞で報道されたことなどを踏まえまして、その事実関係の調査を県の教育委員会に求めたところでございます、県の教育委員会報告では、この学校におきまして、昭和五十七年の九月に無免許運転をした生徒を指導中の教員が、たまたま机の上にあった果物ナイフを生徒にちらつかせながら説諭したという事実がございまして、そのことにつきまして当該生徒の保護者からの抗議によりまして学校が陳謝したと。また、県教育委員会といたしましても学校に、生徒の指導における教師の対応方について十分指導したということがございます、また、その後、当該教員につきましては、本年度におきましても生徒を平手でたたいたという事実が確認されておりまして、これに関連して報道された内容につきましては必ずしも事実関係を正確に伝えてない面もあるということでございますけれども、いずれにいたしましても当該教員の体罰が行われたという事実にかんがみまして、県教委から最近、本人に対して厳重注意を行ったということでございます。  今、先生からいろいろ御指摘された点につきましては、初めて私耳にする内容も含まれておりまして、これらの点につきましては、また県教委に問い合わしてみたいと思っておりますけれども、いずれにいたしましても、体罰ということは厳に学校教育におきましては慎まなければならないことでございまして、今後、県教委を通じまして適切な指導方に努めてまいりたいというふうに考えております。
  19. 本岡昭次

    本岡昭次君 私のところへ来ているものでは教師の名前も皆書いてあるんですよ。それで、私、職員録で調べたら皆実在の教師ですしね。それは一人やない。絶えず集団で生徒に暴行を加え、ナイフもたまたまやない、突き刺し、ちらつかせ、教室でナイフをいつもこないして投げて、そういうこともやっているというんですよ、大変な県立高校ですよ。きちっと調べてください。それで、事情が許せば私も行きたいと思っているんです、  それからまた、週刊現代に三重県の私立高校である日生学園においてすさまじい教師のリンチがあり、その結果、自殺に追い込まれた子供がいる。また、集団脱走というようなことまでが行われているということが報道されています、私は連載の二つを読んで、これは大変だと思いました。したがって、日生学園についても、これ文部省に調査を依頼しておいたんでありますが、この週刊誌を見ると、現場の教師が匿名で告発しているということで、ホッチキスを体の中に打ち込むとかいうリンチ、あるいはゴキブリや大便を食わしていくリンチ、これは事実だと現場の教師が言い、教師に殴られてあごや鼻の骨を折るというような鉄拳制裁というのは氷山の一角だというまことに恐ろしい状態があるわけでありまして、私は精神病院の中の精神障害者人権問題を論議するんですが、こうなったら学校と精神病院を置きかえても変わらぬというようなことが起こっておるという、本当にもう考えられないような気持ちがするわけであります。そして、結果として七月と八月、連続発生した生徒二人の自殺、これも不可解な死であるというふうにこの事実関係を週刊誌は追っておりますけれども、文部省どうでしたか、調査の結果。
  20. 阿部憲司

    説明員(阿部憲司君) 日生学園にかかわる事件につきましては、上級生による下級生集団暴行事件、食堂のシャッターによる生徒の圧死事件、また生徒の自殺等が新聞、テレビ、週刊誌で報道されておりまして、文部省としても所轄庁であります三重県に対して、報道された事実の有無につきまして現在調査を求めておるところでございます。  現段階におきましては、週刊誌等で指摘されております点につきまして確認できていないものがかなりあるわけでございますけれども、上級生による下級生集団暴行事件で九月に三年生五人が津の地方検察庁に書類送検された、また七月に、空腹のために食堂へ食物をとりに入った三年生が電動シャッターに首を挟まれて圧死したこと、また八月に、学内における剣道部の合宿に参加してお りました一年生が時計塔から飛びおり自殺したこと等につきましては、そういう事実があった旨の報告は受けておるところでございます。なお、週刊誌等で報道されました内容と報告の内容とが異なるという部分もありまして、三重県を通しましてそこら辺の事実につきまして確認するよう現在依頼しておるところでございます。  三重県といたしましては、この八月の二十九日付で総務部長名の文書によりまして、日生学園第二高等学校長に対しまして、学校の管理体制の見直しを指導するとともに、改善に早急に取り組むように指導しておりまして、学校においてもそれを受けまして、特別委員会を設ける等しながら具体的な改善に現在取り組んでいるという報告を受けておるところでありますけれども、文部省としても今後とも三重県と連絡をとりつつ適切な対応が図られるよう努めてまいりたいというふうに考えております。
  21. 本岡昭次

    本岡昭次君 法務大臣に伺います。  今問題にした教師の生徒への暴行は学校教育法第十一条に禁止する体罰であります。しかし、学校側の表現というのは、体罰に行き過ぎがあったというような表現がよく使われるんですね。体罰そのものが禁止されているのに、体罰の行き過ぎがあったというようなことをやる学校そのものの認識を私は非常に問題にしたいのでおります。生徒指導上やむを得なかったとか、行き過ぎであったとかということでもって許されないのが人権だ、私はこう思っているんです。特に、人間を育て伸ばしていく教育の場にあって、人間を真に人間らしく扱うことの国家社会的保障である人権が根本的に大切なものとして踏まえられていなければならぬと思います、残念ながら今日の教育行政は、広く人間生活に通じる一般人権すらいまだに基本的に踏まえられないところにこういうようなことが広がり、そして体罰の行き過ぎというふうな言葉でもって教師暴行を許容していくというふうな風潮は絶対に改めさせなければならぬと思います。もちろん、学校に今強まっている教職員に対する管理体制の強化や、子供たちの教育権を保障する十分な教育の諸条件が整っていないということの中で、いろいろやむを得ないとかいうふうなことがある、そのこともよくわかるのでありますが、しかし、人権擁護という立場に立てば絶対に容認できない事態でありまして、人権擁護の最高責任者であります法務大臣として、学校に起こっているこうした生徒児童に対する人権侵害、こういうような問題についてどういうようにお考えになりますか。
  22. 嶋崎均

    国務大臣嶋崎均君) 学校における教職員の児童に対する体罰その他の人権侵害の案件につきましては、我々の方としましても従来から人権侵害事件として的確に調査をし、所要の措置をとってきた経過があるわけでございます。もちろん、法務省の仕事の中で人権擁護に従事をしている人間というのは非常に限られた人間でありますけれども人権擁護委員全国に一万一千五百人おられるわけでございまして、これらの人との関連の中でそういう事案についてはそれぞれの対策をとるように進めて今日まできているというような実情にあるわけでございます、  したがいまして、今後とも教職員による体罰等の問題につきましては、やはり学校における児童生徒人権を侵害する行為であるということは間違いのない事実でございますから、十分そういう面で学校の中でもいろいろな努力を積み重ねていただぎたいと思いますが、当方といたしましても、これらの問題について啓発を一層進めますとともに、人権侵害事件として取り上げなきゃならぬというようなものが生じましたら、的確にこれに対応して処置をしていかなきゃならぬというふうに思っておる次第でございます。
  23. 本岡昭次

    本岡昭次君 文部省の方、関連してお伺いします。  この西宮北高校、日生学園を特に取り上げましたが、この二つの学校に対して今後さらに具体的な人権侵害の事実というものを調査をしていただきたいと思うんですが、いかがですか、
  24. 阿部憲司

    説明員(阿部憲司君) 学校においてこのような体罰が起こることは極めて遺憾でございます。言うまでもなく、体罰というものは法律により厳に禁止されておるところでございまして、教師は生徒の生活実態のきめ細かな把握に基づきまして、生徒との信頼関係の上に立って指導することが必要であることは言うまでもないところでございます。  こういう観点から、文部省といたしましても、この六月に初等中等教育局長通知で、学校において体罰が行われることのないよう指導したところでございます。この二つの学校におきます事件につきましても、大変遺憾なことでございまして、今後ともこうしたことが起きないよう、関係の教育委員会等を通じまして適切な指導に努めてまいりたいというふうに考えております、
  25. 本岡昭次

    本岡昭次君 法務大臣が、学校に起こっている状態は人権侵害ということになるというふうにおっしゃいましたので、これからそういう立場法務省としてやっていただきたいんですが、文部省の方も今引き続き調べようということのようであります、ひとつ、きょうここで問題にしました西宮北高校、日生学園に対して、法務省も生徒の人権を擁護するという立場から積極的にこれにかかわっていただきたい、こう思うんですが、いかがですか。
  26. 野崎幸雄

    政府委員(野崎幸雄君) 学校内における体罰につきましては、これは一切許されないものであるということでこれまでも厳正に対応してまいったところでございます。御指摘事件につきましても、早速情報収集に努めまして、その結果により適正な処置を講じたい、かように考えております。
  27. 本岡昭次

    本岡昭次君 次に、精神障害者人権の問題について伺ってまいります。  まず、法務大臣に基本的な問題として見解を伺います、この件につきましては、衆議院の法務委員会でも論議がありますので御承知のことと思います。経済大国の裏側にあるブラックホールの問題でありまして、一度この精神病院というところに入りましたら最後、下手をすれば一生出てくることが不可能というふうなことの状態になります。生きながらにして、私立精神病院の、まあ表現は適切でないかもしれませんが、私は率直に、精神病院の肥やしにされてしまう状態ではないかと考えています。しかも、最近に至っては正常な人や、本来精神薄弱者福祉法の対象である人まで、あるいはまた高齢者、お年寄りなど見境なく同意入院制度を悪用して違法拘禁をしている実態が次々と出てきております、そういう意味では精神衛生法がありながらまさに無法地帯の状況を呈しております。  人権擁護の立場からこうした問題についてどのようにお考えになっておられるか、法務大臣見解をまず伺っておきたいと思います、
  28. 嶋崎均

    国務大臣嶋崎均君) なかなかこの精神病院関係の問題につきましては、幾つかの問題点が指摘もされておりますし、また、今御指摘のようないろんな問題点もあろうかというふうに存じておるわけでございます。したがいまして、所管の厚生省の方でも十分御検討を願わないと、どうも我々のところへ話が降ってきますと治療処分だとか保安処分だとかいうことを重ねて論議をされますので、どうも余り積極的にお話を申し上げにくいような感じもするわけでございますが、十分そういう意味で厚生省の方でこの問題について御検討願いたいというふうに思っておるわけでございますが、今般、「精神病院入院患者の通信・面会に関するガイドライン」が明らかになっておるわけでございまして、我々の側から見ましても精神病院入院患者の人権擁護の観点から考えましてやはりそういう整理がきちっとされるということは非常に望ましいことであるというふうに思っておるわけでございます。  しかし、いろんな問題点が残っておるわけでございまして、今後とも厚生省の方で十分検討していただきますとともに、我々の方でもこれらの問題については関心を持って対応してまいりたいというふうに思っておる次第でございます。
  29. 本岡昭次

    本岡昭次君 次に、厚生省にも来ていただいておりますので、関連して厚生省に伺います。  先月二十日の本委員会におきましても名古屋の紘仁病院の問題を質問いたしました。その資料もいただいておりますので、関連してそれを質問していきます。  まず、厚生省にお伺いします、  入院届の件なんですが、このAさんの入院年月日は四十年十一月二十三日で、名古屋市長の同意書が出たのは四十一年の四月二十五日、それは間違いありませんか。
  30. 仲村英一

    政府委員(仲村英一君) ただいまお尋ねのAさんの入院年月日でございますが、四十年の十一月二十三日でございます。それから、名古屋市長の同意書が出されましたのは四十一年四月二十五日でございます。
  31. 本岡昭次

    本岡昭次君 次に、朝日新聞の八月二十六日付夕刊によりますと、この病院から中村保健所にAさんの市長同意を求める申請書が出たのが入院から三カ月後の四十一年二月二十六日とありますが、このとおりでいいのですか。
  32. 仲村英一

    政府委員(仲村英一君) 病院から名古屋市長への同意の申請につきましては、病院側の記録によりますと四十年の十一月二十三日付になっておりますが、名古屋市中村保健所の受付印には四十一年の二月二十六日となっておりまして、この点につきましてはいささか時点も古いために現在のところいずれとも判断しかねるところでございます。
  33. 本岡昭次

    本岡昭次君 実に大変なことが明らかになりました。  四十年の十一月二十三日に病院は申請を出したと言い、中村保健所は四十一年の二月二十六日に申請を出したと言い、まあ古いことでわかりませんということですが、これはどうしても明らかにしてもらわなきゃいけません、どちらかがこれは間違っているんですからね。二つの申請書が同じ日に出るんならいいんですが全然日が違うんですから、この事実をひとつ解明していただきたいと思うんですが、よろしゅうございますか、局長
  34. 仲村英一

    政府委員(仲村英一君) ただいま申し上げましたのは病院側の資料に基づきます申請書でございまして、病院側の日付は十一月二十三日になっておりますが、保健所の受け付けが二月二十六日ということでございます。
  35. 本岡昭次

    本岡昭次君 だから二つもあったらおかしいでしょう、一つ申請書を出すのにね。だから、どちらが事実なのかということを確認をしてくださいと、こう言っているんです。
  36. 仲村英一

    政府委員(仲村英一君) おっしゃるように事務手続上の問題もあろうかと思いますけれども、なお確認するように努めたいと思います。
  37. 本岡昭次

    本岡昭次君 それからもう一つ昭和四十一年四月二十五日にAさんの市長同意書が出た。これは市長同意が四月二十五日付であって、入院届を出している四十年の十一月二十三日にさかのぼって市長同意はしていない、このように理解してよろしいか。
  38. 仲村英一

    政府委員(仲村英一君) 名古屋市長の同意書でございますが、おっしゃるように四十一年の四月二十五日付になっておりますので、同意書の作成が入院後約五カ月を経て作成をされているということは事実のようでございますし、同意入院制度の運用に適切を欠いておったというふうに考えるわけでございますが、名古屋市長の同意自体については患者の入院時点で電話により、所轄の保健所でございますけれども、同意を得たものというふうに理解しておるわけでございます。
  39. 本岡昭次

    本岡昭次君 この資料として提出された入院届なんですが、これはどこに保存されていたものを写しとしてこちらに出していただいたんですか。
  40. 仲村英一

    政府委員(仲村英一君) 先生に御提出申し上げました資料のAさんの入院届の写しでございますけれども、当該病院に保存されておったものでございます。
  41. 本岡昭次

    本岡昭次君 今の事実関係の中でいろんな問題があるわけなんですが、やはり最大の問題は四十年十一月二十三日の入院届に保護義務者を記載する欄がございますが、ここに氏名として杉戸清、名古屋市長というふうにこの段階でもう既に保護義務者が選任をされた形の中で届け出がなされているという事実であります。それで今局長は、それは電話で了解をとったと、こうおっしゃいましたが、名古屋市長にこのAさんの保護義務者としてなっていただきたいということを直接電話でやったのかどうかという事柄からまず問題になってぐるのであります。それはきょうはここでは言いません。もうあなた方は次々とうそで丸めていきますから、うそが拡大していってどうしょうもなくなるんですよ。私はそういうことよりもっと基本的なことをこのことについて問題にしたいんです、これは人権上の問題としてね。  まず、名古屋市長が十一月二十三日に保護義務者になったとされている事柄と、実際は五カ月後に市長が出していたというその間五カ月間、完全に違法な形で入院がされていた、手続上。精神病患者であるかないかわからないということなんです、はっきりそう言えば。その人が違法に五カ月入院させられていた、にもかかわらず市長が保護義務者になったという間、一体だれがこの問題の本当の責任者であったのかということの事実、どんなことがあってもこれを解明をしてもらわなければなりませんし、この入院届を受理した側が正式の市長の同意書もないままにそれを受理してそのまま五カ月も放置していたという事実、これも行政上許されるべきことではありません、そしてまた、これは法務大臣にもよく聞いておいていただきたいんですが、保護義務者というものは一体どういうものなのかということです、精神衛生法三十三条に言う、保護義務者は、病院の管理者が判断をしたのと別に、自分の判断に基づいて入院に対して同意を与えるということでなければ、保護義務者の意味がないんであります。だから、保護義務者が市町村長の場合、本人を知らないというのが当たり前なんです。だから当然その本人を知らないんですから、市町村長は精神病院の管理者から同意の申し出があった時点でその対象とされている人がそもそも精神病患者なのかどうかということを自分が確かめて、そしてイエスかノーかの判断をまずしなければならぬ。そんなこと電話でできますか。さらに自分が、ああこれは精神障害者だなという判断をしたとしても、その次に、その本人の利益のために病院に入院させることがいいのか悪いのかということについての判断を次にして、それから保護義務者になる、こういうことでなければならぬと思う。そして保護義務者になった以上は、その人の保護義務者なんですから、一年に一遍は最低行って、どうかという状態を聞き、病院に対して、私が保護義務者になっている人はどういう状態ですかと言って、保護義務者としての責任も引き続き果たさなければならぬと、このように私は思っております。ところが、ほとんどの市町村長は、この対象の人と面接することも面会することも、恐らく話をすることもないまま保護義務者になっているということであり、そういう意味では、面接もなくして保護義務者としての同意を与えていくことそれ自体が、私は精神衛生法に対する重大な違反であり、その入院をさせられていくという人の人権法律によって守り得ていない、こう思うんです。  そういう意味で、名古屋市長は一体どういう独自の判断でもってこのAさんを精神障害者判断し、そして紘仁病院へ入れることが本人の利益にどうかなうと、こう判断したのか、またその後二十年にわたってその人がいるということについて名古屋市長がどう責任を持ち得たのかということもはっきりしなければ、これは大変なことだと、こう思うんです。どうですか、弁解があったら言ってください。
  42. 仲村英一

    政府委員(仲村英一君) 先ほどお答えいたしましたように、名古屋市の記録によりますと、病院からの名古屋市に対する同意を求める申請書が入院の約三カ月後に提出されておるということでございますし、それからこれを受けまして、名古屋市長の同意書がさらにその後二カ月間を要しまして四十一年の四月二十五日に出されております が、このように相当長い時日を要している点は、ただいまおっしゃいました同意入院制度の運用に適正を欠いておったというふうに認めざるを得ないと思います。
  43. 本岡昭次

    本岡昭次君 適切を欠いていたんじゃなくて違反しているんですよ。適切を欠いたのじゃなく違反しているというあなた方は認識に立たなければいかぬですよ。保護義務者としての当然やるべき手続判断をやっていないで、まさにめくら判、めくらの名前をかしたということでしょう、不適切じゃないんです。違反しているんですよ、そこのところをはっきりあなたはしなければいかぬと思います。  それから、ちょっと法務省に聞きます。こうした状態、これをどう法務省としてとらえるかという問題なんです、  昭和五十七年五月に八王子市長が同じようなことをやっているんです。しかし、これは五カ月もというふうな長期ではありません。面接も両方ともやっていない、ここで問題になったのは、市長が面接をしなかったじゃないかということが問題になったのと、それから市長同意を入院のときにさかのぼってしたということが問題になって訴えられた。そのときは東京法務局人権擁護部が該当の成田病院あるいはまた八王子市に対して調査をやって、そしてそこで何が起こったかという問題を明らかにしているんですよ。だから私は、この名古屋の紘仁病院の問題、随分古い問題でありますけれども、同様に名古屋法務局の人権擁護部も、今我々が問題にしている紘仁病院なり名古屋市の市長同意の問題をやはり調査をして、そして法務省としての人権擁護の立場からの見解なり、あるいは勧告なりという活動をやってもらいたいと思うんですが、いかがですか。
  44. 野崎幸雄

    政府委員(野崎幸雄君) ただいま御指摘事案につきましては、同意入院についての市長の同意があったのが入院後五カ月間経過した後であるということのようでございますので、人権擁護の観点から見ても大きな疑問がございます。そこで私どもの方では、現在名古屋法務局に指示をいたしまして情報を収集しておるところでございます、その結果を待って措置を考えていきたいと、かように考えております。
  45. 本岡昭次

    本岡昭次君 ひとつしっかりやっていただきたいと思います。  厚生省、今問題にしております名古屋市長の同意ですね、えらい名古屋市長さんばかりやり玉に上げて申しわけないんですが、事例ですからやむを得ません。昭和四十年から五十九年まで一体何件の市長同意をしたのか、各年度、それから合計、それから同意は入院時にさかのぼったのかあるいはさかのぼらなかったのか、またその同意について名古屋市長は、これは同意できない、保護義務者になれない、こうした拒否した事例はあるのかないのか、ひとつ報告してください、
  46. 仲村英一

    政府委員(仲村英一君) 四十年から資料がございますが、四十年度で申し上げますと、名古屋市長の同意の件数九十五件、それから四十五年で申し上げますと三百二十五件、五十年度で申し上げますと百七十八件、五十五年度で二百七十三件、それから五十九年度は三百五十一件でございます、これらの名古屋市の同意によります同意書の手続は、終了後、施行年月日、つまりさかのぼらないで作成されております。  それから第三点でございますが、名古屋市長が同意を拒否した件数というのはゼロでございます。  四十年から五十九年度まで累計四千九百九十四件でございます。
  47. 本岡昭次

    本岡昭次君 法務大臣お聞きになりましたか。四千九百、約五千人にわたる同意をやっているんですね。これは大変なことなんです。特に今も年度をちょっと飛ばしておっしゃいましたが、五十五年が二百七十三、五十六が二百八十五、五十七が三百六十、五十八が三百三十、五十九年が三百五十一というふうにここ三年全部三百台をオーバーしているんですね。一年に三百五十件、三百六十件もの保護義務者、毎日一日に一人ずつの保護義務者になっているということで、今言いましたようにそれはやっぱり面接をしなければいけないと思う、基本的に。しかし、そんなことほとんどできていない。だから、どんな病院であれ何であれ精神病院の方から申請があったら、もうそれは自動的に一〇〇%オーケーを出していっているというんですよ、これは。またそうでなければできないような状態が今起こっております。そして、その中身が法律違反的なもの、こういうことでありまして、一体これをどうすればいいのかという問題について、地方人権擁護局あるいはその地域の弁護士会などとタイアップして、法律にある事柄が具体的に施行できないような状態ではどうしようもないわけで、ひとつ事態の改善について方法を考えていただけないか、こういうことなんですが、いかがですか。
  48. 嶋崎均

    国務大臣嶋崎均君) 保護義務者が例えば大きい都市の市長であるというような場合、今お聞きしたような数字でございまして、その人が一人一人に対応することはもちろんできないことは当然のことであろうと思うのでございます。そうした場合に、やはり役所の書式でございますから、それぞれの担当のところで十分問題を念査をして順次処理していく体制というものが基本的に私は大切なことであり、また多分そういうぐあいに運用されておるんではないだろうかというふうに思っておるわけでございます。しかし、いろいろ具体的な事案になりますと難しいこともありますし、実は私の家自身にも相当そういう手紙が舞い込んできまして、その処理を秘書を通していろいろ整理をするというようなこともないわけではないわけでございます。  したがいまして、今後それらの取り扱いにつきましては、十分厚生省の方でも仕事の立て方等について御勉強を願いまして、的確な処理がなされるようにすることが必要なのではないかというふうに思っております、
  49. 本岡昭次

    本岡昭次君 もう少し論議をしていきたいんですが、時間があと十分余りになりましたので、具体的な問題をちょっと聞かせていただきたいと思います。  それは青梅の成木台病院の件であります。この成木台病院、これは精神病院であります。この病院は、タレントの院長と前事務局長と病院再建屋さんが三つどもえになって堂々めぐりしているうちに病院が倒産をしてしまったということで、最近新聞をにぎわしております。いずれにせよ一番迷惑をこうむったのは患者さんたちでありまして、患者の医療保障、それはどうなっていますか。
  50. 仲村英一

    政府委員(仲村英一君) 東京都が直接の担当となりまして、青梅成木台病院の入院患者につきましては病院の倒産後も引き続き入院も含めました適正な医療が保障されるように現在作業を進めているところでございます。私どもといたしましても、このような事件で入院患者さんの医療に支障が生じないようにさらに東京都を指導してまいりたいと考えております。
  51. 本岡昭次

    本岡昭次君 警察に伺いますが、前事務局長が横領した金額とその流出先、おわかりであったらここで教えていただきたいんですが。
  52. 国松孝次

    説明員(国松孝次君) お答えをいたします。  青梅成木台病院の件につきましては、既に新聞報道等で私ども承知しているところでございまして、現在警視庁において、先生ただいまお尋ねの点を含めまして広く情報収集を行って事実関係の掌握に努めているところでございます。
  53. 本岡昭次

    本岡昭次君 厚生省、この成木台病院で無断で流用された患者さんの個人の預貯金と生活保護の日用品費、それぞれ幾らになっていますか。  それから、この実地審査の結果と同意入院患者中保護義務者の選任を要する者の数、つまり保護義務者がないまま入っておったという人ですね、そういう人はどうなっていますか。
  54. 萩原昇

    説明員(萩原昇君) 患者の預貯金等生活保護の日用品費につきまして、生活保護担当の課長の方からまとめて便宜お答えいたします。  十月八日の段階で、患者の預かり金という意味で通帳に現実に入っております金と、病院が個人 ごとに台帳に控えておりますが、その差という意味でのこれが流用額と考えられるわけですが、合わせまして千百二十五万七千円、そのうち生活保護の患者についての額は九百五十八万六千円でございます、
  55. 仲村英一

    政府委員(仲村英一君) 後段のお尋ねにお答えいたします。  東京都が六十年の十月十六日から十八日までの三日間にわたりまして当該病院の入院患者百六十四人に対しまして実地審査を行ったわけでございますが、その結果、継続入院を要する者百三十一人、継続入院を要しない者が三十三人という報告を受けております。  また、同意入院患者についての保護義務者の選任状況をお尋ねでございましたけれども、六十年八月三十一日現在の東京都の調査によりますと、保護義務者につき家裁の選任を要しない者が四十七人、家裁の選任済みのものが四十五人、家裁の選任の有無等につき未確認のものが八十二人ということでございます。なお、このように手続の不備の者については転院に当たりまして適切な手続を行うよう東京都に指示しておるところでございます。
  56. 本岡昭次

    本岡昭次君 法務省及び法務大臣、今の実例ですね、一つの精神病院が倒産して倒れた、中を調べてみると患者の預貯金を流用したという問題は問題として重要です、それと今我々が論議していることの中と関連するのは、継続入院を必要としない者が三十三人おるということなんですよね。これはなぜこういうことが起こるかというと、次の関連で出てくるように、保護義務者について家裁の選任を必要とするのにそれを受けないで入っている者が八十二人もおるということですよ。この八十二人というのが病院の管理者が君は精神病患者だとこうしただけで、同意する側の人がそういう認定を行ったかどうかということが全然ないということでやはりこういうことが起こるんですね、だから、今私たちが論議していることは、これはもう人権上極めて重要な問題であり、こういうふうに一つ一つの病院を調べればみんなこういうことが出てくると思う、それで東京都の担当の者が新聞でしゃべった話を聞きますと、どこでも精神病院には一割か二割精神病患者でない人が入っていても仕方がないというようなことを言うんですよね。行き先のないお年寄り、あるいは精薄者というのが入っているというんですよ。そんなことが公然と語られるような精神病院というのは一体どうなっているんだということなんですよ。その事実がここに今解明されているというふうにひとつ認識をいただきたいと思います。  関連して、生活保護の日用品費が出ましたが、全国の精神病院、年間どれほどの金額が政府から支出されているのか。また、それを病院が管理している間に利子というものをどのぐらい生み出すものか。わかっていれば教えてください、
  57. 萩原昇

    説明員(萩原昇君) 昭和五十九年度で大体月平均八万人余の精神病の入院患者がございまして、これに対しまして一万九千円余りの日用品費の支給を行っておりますので、月に十五億円程度、年間にいたしますと約百八十億円でございます。  利子がどれぐらいあるかということでございますが、これは患者の個人個人の需要に応じまして日々費消されておりますので、どの程度通帳というか預金という形で帯有をされているか必ずしもわかりませんので利子については把握しておりません、
  58. 本岡昭次

    本岡昭次君 警察に再度お願いしますが、この患者個人の預貯金を勝手に引き出してそれを流用するというふうなことは、これはもう刑事事件の範疇に入っていくのではないかと思いますが、この問題についても厳しくひとつ取り締まっていただきたいと思います。いかがですか。
  59. 国松孝次

    説明員(国松孝次君) 先ほどもお答え申しましたように、本件につきましては現在幅広く情報収集を行っているところでございまして、先生御指摘の点につきましての調査をいたしまして、その過程で刑事法令に触れる事実が把握された場合には厳正に対処してまいりたいと思っております。
  60. 本岡昭次

    本岡昭次君 厚生省の方も成木台病院の今起こっている問題、事実関係をきちっと整理をして、そして日用品費も個人の預貯金も戻らないまま患者が他の病院に移っていくことなどがないようにきちんとやっていただきたいと思いますが、いかがですか。
  61. 仲村英一

    政府委員(仲村英一君) ただいま御指摘のとおりでございまして、医療の確保も同様大事でございますけれども、患者さんの個人の財産がしかるべき患者さんの手に戻るように、私どもとしても十分対応してまいりたいと考えております。
  62. 本岡昭次

    本岡昭次君 厚生省に最後にお伺いしておきますが、この精神障害者人権を保障するためには、精神衛生法の抜本の改正が必要であるというふうに思います。今も論議した問題の結論もそういうことになると思います。どういう内容でいつまでやるのかという問題はまだはっきりしておりません。  そこで、私どもの方も待っているわけにいきませんので、来年の春ごろまでに改正案を私たちの手でつくってみようと今思っておりますが、私たちが今考えておることを五点ばかり申し上げまして、厚生省の考えも聞いておきたいと思います。  まず一は、入院患者に対する救済適正手続の確立と精神衛生行政から独立した指導監査機関の設立。二番として、同意入院制度の抜本的な見直し、市町村長同意入院制度の再検討。行動制限規定の全面的改廃。精神障害者社会復帰体制の確立とその財源の確保。地域精神衛生対策の確立、こうしたものを軸にして改正法をまとめていくことが精神障害者人権あるいは医療という立場に立って極めて重要であると私たちは考えております、厚生省にもぜひこれらの問題を取り入れてほしいと思います。いかがですか。
  63. 仲村英一

    政府委員(仲村英一君) 厚生省といたしましては、今後早急にいろいろ議論になっております精神衛生法にかかわります基本的な問題につきまして、広く各層から意見をいただくように現在準備をしているところでございます。  ただいま御指摘になりました幾つかの点のうち、御示唆に富んだものが多いわけでございますが、同意入院制度の見直しでございますとか、地域精神保健対策の確立等、いろいろお知恵をいただければ私ども今後の法改正のための検討の中で十分参考にしていきたいと考えております、
  64. 本岡昭次

    本岡昭次君 最後に法務大臣に一言伺って終わります。  法務大臣、長時間にわたって精神障害者人権問題についていろいろ厚生省とのやりとりも聞いていただいて、その実態を把握をしていただいたと考えます。精神障害者人権の問題については、官房長官等にも機会があるたびに要請をして、政府を挙げてこの問題について取り組んでもらいたいという要請をしております、官房長官も、国家的優先事項という考え方でやっていかなければならないというふうな答弁もいただいておるのでございます。したがって、法務大臣法務省としても、この精神障害者人権擁護の問題について積極的にかかわっていただきたい。単に厚生省だけに医療の面から任せておけば済むというふうなことじゃないという認識もきょうしていただいたんじゃないかと思いますので、一言人権擁護の問題に対する決意を伺って終わりたいと思います。
  65. 嶋崎均

    国務大臣嶋崎均君) 先ほど御答弁申し上げましたように、この問題につきましては幾つかの精神病関係の病院についての問題があるわけでございますし、その取り扱い等につきましても先ほど来御指摘のようないろんな問題があることを十分承知をしておるわけでございます。したがいまして、我々といたしましても先ほど申し上げましたように、厚生省の方でもいろんな形で、特に入院患者の通信、面会に関するガイドラインを決めていただきました。まだいろいろ、例えば保護室等の使用をどうするかとか、作業療法のあり方とかというようなことにも議論が残っておりますし、これらの問題について厚生省の方でも問題を詰めていくというふうに伺っておるわけでございます。したがいまして、その仕事が十分厚生省の中で進捗することを期待申し上げますとともに、我々の方としましても、いろいろ犯罪関係の事柄から考えても非常に重要な問題も含んでおるわけでございまして、それらの取り扱いについて十分協力をし協議を遂げて、うまく運用されるように努力してまいりたいと思っておる次第でございます。
  66. 目黒今朝次郎

    ○目黒今朝次郎君 私は、この前の九月二十日の質問の際に提起しました撚糸工連の巨額使い込み事件の問題についてきょうは集中的にお伺いしたいと思います。  本件問題はこの前の委員会で東京地検に告訴されておる事件である、そういうことにかんがみまして、検察庁の立場考えながら私が入手した資料に従って若干質問をしたいと思います。関係者にお願いしますが、こういう事件でありますから、俗称馬蹄形答弁、形容詞だけいっぱい並べて問題の答えを逃げてしまう、そういう馬蹄形答弁は時間の関係上ぜひ避けてもらいたい。あったはあった、なかったはなかった、検討するは検討するというふうに端的にお答え願いたいと存じます。  まず最初に、この三谷健一使い込み事件について、その金額について法務省に確認を求めます。これは一般会計七億五千六百四万円、現金、特別会計八億二千八百七十六万円、利付商工債券、撚糸会館口座一億二百九十四万円、現金、合計で十六億八千七百七十四万円の使途不明金が挙げられております。そのうち十一億五千九百万円について連合会が告訴していると聞いておりますが、法務省、この金額に間違いありませんか、
  67. 筧榮一

    政府委員筧榮一君) 去る九月に日本撚糸工業組合連合会から、同組合の元経理課長三谷健一を被告訴人として告訴状が提出されております。  告訴事実の要旨を申し上げますと、三谷元課長は、この連合会が購入して商工中金東京支店に保護預かりさせていた利付商工債券百五十九枚、額面合計十一億五千九百万円、この利付商工債券を保護預かり払い戻し請求書に理事長の印を押捺するなどいたしまして請求書を偽造し、これを行使して、商工中金東京支店から今申し上げました額面合計十一億五千九百万円の利付商工債券を騙取したという私文書偽造、行使、詐欺の告訴、事実でございます。
  68. 目黒今朝次郎

    ○目黒今朝次郎君 通産省は、この撚糸工連の巨額使い込み事件でいろいろ御相談を受けておるようでありますが、今法務省が言った十一億五千九百万円、総体との差五億二千八百七十四万円、これは使途不明金というふうになると思うのでありますが、これについて通産省御存じですか。
  69. 浜岡平一

    政府委員(浜岡平一君) 基本的には御指摘のような事実があろうかと思います。ただ、一言申し述べさせていただきますと、連合会が告訴いたしております金額は、商工中金からだまし取ったという次元でとらえた金額でございます、この中には、事後的に正当な使途に使用されたものもございまして、告訴いたしました金額の中からこの正当な支出に充てられたものを差し引きますと、約八億円という損失が推定をいたしますと横領金額というようなことになるだろうと承知いたしております。それ以外に先生御指摘のようななお使い込みのファクターがございまして、その金額が約九億円ぐらいということになりまして、両方合わせますといわゆる横領といいますか使い込みといいますか、その金額が十七億円ぐらいになるというぐあいに連合会から説明を受けております。
  70. 目黒今朝次郎

    ○目黒今朝次郎君 私はずばり言いましょう。これは六十年九月十四日、午後二時、石川県繊維会館、いわゆる石川県の連合会の百九十四回理事会、これは顧問、参与を集めた理事会、秘密会だかどうかは知りませんが、この会議の全貌の原本を入手しています、ですから、あなたの名前も数々に出てまいりますし、法務大臣の名前も出てまいります。全部石川県の繊維会館でやった議事録、中身はみんな私は証拠物件で持っているのですから、数字のやつはもういろいろごまかしたってしようがないですから、やはり余りごまかさないで言ってもらいたい。私は、その差額の五億二千八百七十四万円というのは一体どうなったのですかと聞いているのですよ。わからないならわからないで結構なのです、通産省に、告発した十一億五千九百万円との差、五億二千八百七十四万円についてはお調べですかと、こう聞いているのですから、今の八億何とかということは私は聞いておりません、この五億二千八百七十四万円の差額は一体どうなっているのですかと。わからないならわからないで結構です。
  71. 浜岡平一

    政府委員(浜岡平一君) 私が告訴状で見ております金額は、一般会計及び撚糸会館に関係いたします会計の合計金額といたしまして約九億円の使い込み的な要素があるというぐあいに聞いておりますが、その使い込みの行方がどうなっておるかということにつきましては私ども承知いたしておりません。関係司直の手による御解明を期待いたしておるところでございます。
  72. 目黒今朝次郎

    ○目黒今朝次郎君 わからなければわからないで結構です。  では法務大臣にお伺いしますが、このメモによりますと、法務大臣に本件問題についてどうするかということを相談に来た、こういうようになっていますが、そういう相談を受けたのかどうか。それから相談をされた際に、いろいろあるけれども、これは告発する以外に方法はなかろうというのが法務大臣見解であったというふうにこのメモは述べておりますが、この関係について大臣見解をお願いします。
  73. 嶋崎均

    国務大臣嶋崎均君) 何が御指摘のようにこの撚糸工業連合会から相談を受けたというようなことではなしに、御承知だと思うのですが今の連合会長は私の郷里である石川県小松市、しかも合併前は粟津村という同じ村の出身者の方でございます。そういう方が時には私の部屋にお寄りになるわけでございますが、たまたまそういう不幸な事件があって、そういうことについてどう処理したものでしょうかというような話を承った経過がありました。そのときに私は、事件の性格から見まして当然告発をしてきちっと整理をしなければこういう問題の処理はできないでしょう、したがいまして的確にそれを処理した方がよろしかろうということで、検察庁に相談をした方がいいのじゃないかということを申し上げたという経過があります。
  74. 目黒今朝次郎

    ○目黒今朝次郎君 はい、わかりました。  それで、通産省にお伺いしますが、私は九月二十日質問をしたんですが、それ以降今日まで三谷本人に会って事情を聞いたのか、行方不明でわからないのか、その辺を事実関係だけで結構ですから。
  75. 浜岡平一

    政府委員(浜岡平一君) いろいろ御判断はあろうかと思いますが、私どもは組合の幹部から事情聴取をいたしておりまして、三谷氏本人にはお目にかかっておりません。
  76. 目黒今朝次郎

    ○目黒今朝次郎君 それで、前回の九月二十日の質問の際に、五十五年ころから一千万円の使途不明金があって国税庁の指摘を受けた、こういう問題について私が質問をしたところ、それも通産省からこの問題については五十三、五十四、五十五、三年分の約一千万、これは交際費に計上するのが正しい、こういう御指摘を受けたので交際費に計上いたしましたと、こういううちの秘書に説明があったわけでありますが、この関係については間違いありませんか。
  77. 浜岡平一

    政府委員(浜岡平一君) 前回あのような御質問がございましたものですから、私どもの担当者の方で組合の方に説明を求めましたところ、ただいま先生からお話のございましたような説明がございましたのでその旨を先生の秘書の方にお伝えしたと承知いたしております。
  78. 目黒今朝次郎

    ○目黒今朝次郎君 その交際費の中身については御存じですか。
  79. 浜岡平一

    政府委員(浜岡平一君) かなり過去のことでもございますし、比較的少額の金額が多様に支出されているというような説明ではございますが、その詳細にわたりましての説明は連合会サイドでも避けておりまして私ども承知いたしておりません。
  80. 目黒今朝次郎

    ○目黒今朝次郎君 我々のいろんな接見調査、あちこちからとった資料がありますが、それを総括しますと我々が確認した限りではその交際費の中身は冠婚葬祭、盆、暮れなどを口実にした政治献金絡みの金であった、こういうふうに関係者は証言しているんですが、これは確認できますか、通産省。
  81. 浜岡平一

    政府委員(浜岡平一君) 現在私どもといたしては確認いたしておりません。
  82. 目黒今朝次郎

    ○目黒今朝次郎君 では参考までにいろいろ関係ありますが、四十六年以降の今日までの連合会の交際費の年度別支出額、これらについて連合会にお話しして資料として提出願いたい、こう思うのですがいかがですか。四十六年以降の交際費の年度別支出額。
  83. 浜岡平一

    政府委員(浜岡平一君) 個々の組合の経理内容につきまして対外的にその詳細を明らかにするということは基本的には回避すべきことだと考えておりまして御容赦願えればと思っておりますが、国会の御意向として提出するようにということでございましたら、私どもといたしましても検討しなければならないと思っております。
  84. 目黒今朝次郎

    ○目黒今朝次郎君 検討して努力をお願いします。  それで、これはまあ誤解も受けますから大臣の田舎の郷里のことですから私はやっぱり国会で明らかにしておいた方が大臣のためによかろうと思ってあえて質問します。  この撚糸工業組合会館の入り口に大臣の看板が立っておりますし、あなたのいろいろな問題についてもそれなりの措置をしていると、こういう証言があります、私の持っているメモによりますと、まあ目黒も政治家だから政治献金のことにがたがた言わないだろうという前提で好意ある解釈をされておりますが、しかしまあ繊維業界がいろいろ苦しいので昭和四十六年以来いろいろなことをやってきたと、しかしここではっきり言っていますのは政治献金はしたと、しかし全部交際費に計上して決算書に全部出していると、こう答えているんですね、決算書に、ところが決算書を出せと言っても通産省は決算書出さないというからこういう意地悪質問になるのでありますが、まあ献金はしていると、繊維産業のために。しかし一回数十万円から、人数では大体五、六十人だとは○○さんには○○万円と、こういう格好で嶋崎大臣のことも出ておるわけでありますが、そういう問題について私は政治上のルールの政治献金行為ということはあったんではないかと、そういうことについてはこれは公に認めていることですから、そういうことについて、パーティー券などを含めてそういう関係についてはそれなりの関係があったということについては大臣は否定しないだろうと思うんですが、いかがですか。
  85. 嶋崎均

    国務大臣嶋崎均君) 御指摘の問題でございますが、看板がかかっているというのは多分小松市の撚糸工連だろうと思うのでございます、何しろ石川県というのは撚糸に関する限りは少なくとも全国の三分の一ぐらいのウエートを占めておりますし、その中で私の生まれた地域は圧倒的に高いウエートを占めておりましてたしか八百三、四十軒撚糸をやっていた人もおります。今業界が厳しくなりまして、特に生糸の撚糸については減少しておるという状況になっておりますから、実は私の身内か親戚の者も随分やっておるというのが実態でございます、一般的に我々が看板を掲げる場所というのは石川県で十二カ所か何かというような規制になっておりまして、小松市はたしかそこしか上がっていないように私は思っておるわけでございまして、そういうことであろうと思うのでございます。  それから私はそんなに撚糸工連からたくさんのものをいただいておるという実は記憶はないわけでございますけれども、パーティー券等については事務所の方で六年に一遍かあるいは短くても私は四年に一遍まではやっておらぬと思いますけれども、そういう際に話しに行った場所であろうかというふうに思っております。しかしそんなに多くの額ではないように思っておりますけれども詳細な数字は存じておりません。
  86. 目黒今朝次郎

    ○目黒今朝次郎君 我々がつかんでいる数字でも今大臣が言っているものとほぼ間違いありません、しかし撚糸関係では御三家と言われる、まあ私も政治家の端くれでありますから名前は申し上げませんが、Iさん、Kさん、Mさん、まあ全部衆議院です、参議院に関係ありません、全部衆議院。この方々が全国的に撚糸工業政治献金の御三家と、こう言われておってその中には嶋崎大臣は入っておりません。こういう御三家がありまして、相当この問題でいろいろ水面下のことでありますからこれはもう私はきょうは名前は言いません、そういうことを頭に置いて検察庁の方でも関連事項として検討してほしいということを、これは返事は要りません。申し述べて置くだけです。御三家大体わかります。  それで、ひとつ具体的内容に入るんですが、私は前回の通産省のレクチャーの際に、この使い込みは使い込みかもしれないけれども、その背景についてやっぱりメスを入れる。必要があると、こう考えまして通産省にこれはレクチャーしました。それは昭和五十三年後半から名古屋の大和証券を舞台に、小田理事長、井上専務理事、井上氏の御夫人、岡田栄さん、それから使い込みの三谷健一、この五人の名義で大和証券名古屋支店長古市取締役の指導で活発な株取引をやっていた事実があると、これは単なる株取引ではなくて、大和証券名古屋支店において連合会の名義で多額の債券を購入し、それを五人の個人口座に移して株取引をやっていると、この問題について、公式にしないからこれを調べたらどうかといって善意に問題を提起したのでありますが、その後、通産省から私には一片の通知も連絡もありません、したがって、この委員会で公にしますは人が善意をもって非公開で調べると言ったならば、先生、こういうことでありましたと、あったらあった、なかったらなかったというぐらいに来るのが、私は問題提起者への筋ではないかと思うのでありますが、こっちが善意でやっているのにおたくの方はそれを善意に受け取りませんから、あえて公表いたします。  この事実について通産省は調べたかどうか、その内容について御答弁願いたい。
  87. 浜岡平一

    政府委員(浜岡平一君) 御指摘のような事実があったかどうかということにつきまして、連合会の方に確認を求めたところでございます、  私どもが連合会から受けております説明によりますと、当時、組合の経理上若干の余裕金がございまして、この余裕金を活用いたしまして、可能な範囲で組合の経理基盤を強化したいというようなことで、一銘柄と承知いたしておりますけれども、何回かに分けまして株の取得を行ったという事実は存在しておるようでございます。  ただ、先生が御指摘のように、五名の名義を使っていたかということにつきましては、私ども承知しております事実では四名ではないかと聞いておりますけれども、証券会社まで行って確かめておりませんので、あえて事実の違いとしては申し上げませんが、私ども聞いておりますところでは四人の名義ではないかと承知しております。
  88. 目黒今朝次郎

    ○目黒今朝次郎君 随分遠慮しながら御答弁しましたが、そうならそのように、私がちゃんと九月二十日にレクチャーに言っているんですから、表に出る前に、やあ目黒議員こうだったと言ってくればきょうのようなことにはならないですよ。だからその点は、こっちの善意をやっぱり、あなたの方は見くびっているかどうか知りませんが、あなたの言ったとおりです。  これは私も十月の○日、本人の名誉のために隠します、私の方で機会がありまして井上専務理事、もうやめましたね、この人から事実を厳粛に確認いたしました。あなたの言うとおり、ゆとり資金といいますか、これをもって株のやりとりをやっておったということはあなたも認めたとおり。ただ、五人か四人かについては、これは何というか、この使い込みをやったのは本当は五人なんだけれども、この三谷も入っておったとなるとちょっとおかしくなるから四人にしてくれという話はわからないわけではありませんが、正当は五人、会社が言っている四人は三谷を除いて今発表しておると、こういうことだけ事実関係で申し上げておきます。  そうだとすると、通産省にお伺いしますが、この株取引、理事長さんもあっちこっちの証拠物件で株取引を認めています、この株取引をやってもいいというのは定款にあるんですかな。連合会の金を使って株の売買をやっていいというのは、私も定款を見たんですが、どこにも定款にないんですが、この点は、株をやってよろしいという定款のどこにあるんですか、教えてください。
  89. 浜岡平一

    政府委員(浜岡平一君) 定款その他組合の関係規定の中には、余裕金を株式で運用していいとも悪いとも御指摘のように書いてないと存じております。
  90. 目黒今朝次郎

    ○目黒今朝次郎君 私の方の調べですが、この株取引は初めから証券会社と組んだ売買制限、これは年間五十回以下二十万株未満で両方の条件を満たさなければ所得申告の必要なし、いわゆる税務署に申告しなくてもいいと、そういう証券会社と組んだ売買制限を考えて、利益が出れば自分の口座に入れる、損をすれば連合会の方にかぶせる、そういう、極めて巧妙に使い分けて五人でやっておった、こういうことなんだと思うんでありますが、これについては通産省は確認していますか、どういう株の運用をやったと聞いていますか。
  91. 浜岡平一

    政府委員(浜岡平一君) 私ども承知いたしておりますところでは、ただいま先生が御指摘になったのとは全く逆でございまして、組合の経理基盤の強化という観点でやっておりますので、もし利益が出れば組合の経理基盤の確保に寄与させる、もし損が出ればこれは管理者サイドにおきまして穴埋めをするという考え方のもとにそういう行為を行ったと承知いたしております、
  92. 目黒今朝次郎

    ○目黒今朝次郎君 おりますのなら、なぜ会社の株を買うのに、株を買うんなら理事長なら理事長、専務なら専務の代表名でやればいいじゃありませんか、会社の金を使って、何で五人の口座に、個人口座を設けてやっているんですか、理不尽だとは思いませんか。確かに理事長は、我々と接触のこのメモでは、私は株をやったと、やったことは認めています。しかしそんな悪質な株をやっていないと、こう言って釈明しているんですが、会社のためにやるというんなら、代表を一名か専務理事一名でいいんじゃありませんか一銀行の口座は、何で五人の口座に分散しているんですか。これを何と解きますか。あなたも専門家でしょうから、どうですか、私はわかりませんから答えてください。
  93. 浜岡平一

    政府委員(浜岡平一君) 私もなせ何人かの名義に分けたかということについては御説明申し上げる能力はございません。ただ、推察でございますが、多分企業名を使うのは適当でないということで、組合の役員としての個人の名義が使われたんではないかと推察をいたしております。
  94. 目黒今朝次郎

    ○目黒今朝次郎君 では具体的に問題を挙げましょう。  これは五十六年の税務調査は、五十五年の税務調査に異常があってひっかかって二年連続で税務調査を受けているわけでありますが、その中身というのは五十三年から五十四年にかけて株の取引で五千万円の穴をあけた。この五千万円の穴の始末について、これは連合会自体の株の取引で穴になったのか、連合会から五人に貸し付けて、さっき言った五人に貸し付けて穴があいたのか、どっちなんだと税務署から言われて、連合会は答弁できなかったと。それですったもんだやった結果、今回限りというような情けもあって、連合会がやった取引の赤字ということに税務署と話がやっとついてそういう財務処理をした、こういう経過があったわけでありますが、この経過は通産省に説明があったのですか。事実は御存じありませんか。我々は確認しています。
  95. 浜岡平一

    政府委員(浜岡平一君) ただいま御指摘のありました事実は、申しわけございませんが、私は初耳でございます。
  96. 目黒今朝次郎

    ○目黒今朝次郎君 まあ初耳ならしようがない。この税務調査をやった税務署とよく連携をとって、五千万円の欠損ということで処理した、これは五人の貸し付けでなくて連合会の株取引ということで税務署と話がついてやったということは、これは言いっ放しにします、後で調べてください。  知らない人に聞くのはやぼでありますが、この会というのは年間一億円ちょっとの経常費ですよ、毎年やっている経常費。それが五千万円の穴ですから大した穴だと思うのですが、この五千万円の穴を、知らない人に聞くのはやぼでありますが、どういうふうに処理したのか。これは答弁要りません、知らない人に聞いてもしようがありませんから。五千万円の処理をどうしたのか、後ほど調べて御回答願えれば結構。その次に譲ります。  それで、今回の事件についていろいろ言われています。ただ、私が三谷氏から聞いた証言によりますと、今回の事件発覚時に、小田理事長は連合会の債券六千万円分をみずから株取引に流用していたが、それを会の口座に戻すとともに、済まなかった、私のことはなかったことにしてほしいということを三谷に頼んで六千万円の債券を会の口座に戻した、こういう事実関係を我々が掌握しています。こういう点から見ますと、私は、会が債券を使って株取引をする、こういうことについては理事会の承認を受けてやっておったのかどうか非常に疑問に思います。どうも裏でやっておったことであるから理事会の承認は私は得てなかったんではないか。したがって税務署に対する申告と会に対する申告と二重帳簿でもつけておったんではないか、こんな疑いを私はどうしても金の流れから見て持たざるを得ない。  それで、私は、これを確認するために通産省に五十年以降今日までの決算書、税務署に対する届け出、そういう証拠書類を出してほしい、検証したいからということを再三お願いしているわけでありますが、この決算書の提出を通産省が拒んでいるのか連合会が拒んでいるのか知りませんが、まだ私のところに決算書は来ておりません。この二重帳簿の件を検証するために、また冒頭申し上げたこの差額の五億二千八百七十四万円、この問題もいわゆる決算書を見ればそこから自然にわかってくる、こういう意味で私は決算書の提出を要求しているんですが、いまだ出しません。改めて要求いたしますが、五十年以降の決算提出、いかがでしょうか、通産省。
  97. 浜岡平一

    政府委員(浜岡平一君) ただいまの先生の御質問の中に、一つの事実指摘一つの御要求があったわけでございます。  第一番目の事実の問題につきまして、先生の秘書の方からそういった御指摘がございましたので、私どもの方も連合会の方からその事実関係の有無を確認をいたしましたが、先生御指摘になったような流れの事実は連合会サイドでは覚えがないというようなことを申しておりまして、さらに関係方面による解明が必要なんではないかというぐあいに思っております。  それから第二点につきましては、これは先ほどお答え申し上げましたのと同じでございまして、個別の組合の経理内容を対外的に明らかにするということにつきましては慎重な姿勢を御指摘のようにとってきております。しかし、これも国会の御方針として、当委員会の御方針として提出せよというような御指示があるということでございましたら、先ほどの問題と同様に検討をさせていただきます。
  98. 目黒今朝次郎

    ○目黒今朝次郎君 決算書の提出についてはさらに努力をお願いします。  覚えがない、覚えがあるということは、私もだてに政治やっているわけではありませんから、相当程度の接触したあれ、あるいは私のところに来て説明した最高幹部、皆さんの意見などを総合して確認を求めておるのでありますから、覚えがないということは、それなら法務省の方でそれがどちらが本当か調べてもらえばいいことだ、こう思ってそれ以上追及いたしません。  それで、内部の最高幹部の証言によりますと、遺憾ながら、名前書いてありますが名前は言いません、だれそれさんと、名誉のために。やっぱり何といっても債券の売買で会に対する帳簿上は一回だけ債券を売り買いしたというだけ載せる、実際はもうけて納める、また買う、また納めると、数回、五、六回、これ証言では数回です。数回債券を動かしたけれども、会の帳簿には一回だけ売買したというふうに記帳しておって、あとの四回、五回は全部我がポケットに入った、そういうことを繰り返しておりましたというのが最高幹部の内部証言です、まあ、最高幹部と言えば理事長、専務理事、その辺ですよね。大臣が言ったように、石川県は全国の三分の一持っている。その辺らの最高幹部の証言で、そういう運用をしておりましたということを私は確証をとっているんです、確証を、ですから、覚えがないということは覚えがないで結構ですから、そういう確証を私が最高幹部からもう受けているということを念頭に置いて会の方に再度調べてもらうということを、これは答弁要りません、要請しておきます、要望です。  次へ移ります、石川県の理事会、これを聞きましても、この三谷さんは五十九年十月以降金を使った、こういうことも出ておるんですが、どうもこれも我々の調査ではごまかしておるんではないか、こう思うんです。今回の使い込み事件で、三谷さんは、五十九年、六十年度分の約三億六千万円の利子税還付金を流用した、こう言われておりますが、これは井上専務理事も認めておるところでありますが、さらに我々の調査では、ここに撚糸工連の徴収税額五十五年、五十六年分あります。この金額は四億一千七百七十万六千九百三十九円、これあります。我々の調べでは、この金も三谷氏が使い込んでおった、こういう情報を入手いたしまして、これは井上専務理事に確認を求めました。ところが、彼は、最初は否定しておりましたが、しぶしぶこの金も使っておったということを私の前で認めておるわけでありますが、この関係については通産省御存じですか。いわゆる五十九年十月以降ということでなくて、現にもう五十五年、五十六年にも四億に及ぶ使い込みをしておった、どういうふうに丸めたのかは知りませんが。そういう事実を通産省は確認できますか。
  99. 浜岡平一

    政府委員(浜岡平一君) 先ほど来幾つかの事実について確認を求められておるわけでございますが、若干前の御質問にもさかのぼらしていただいて恐縮でございますが、株式の売買に伴う収益が生じたかどうか、またその収益をどう扱ったかということにつきましては、私ども承知しておりますところと先ほどの先生の御指摘、かなりギャップがございますので、さらに解明をさしていただきたいというぐあいに思っております。  それから御指摘のような税金の還付金につきまして、手がつけられたというような事実があるということは承知いたしております。  なお、五十五、六年度に使い込みがあったという事実は私は承知いたしておりませんので、よく勉強いたしておきます。
  100. 目黒今朝次郎

    ○目黒今朝次郎君 承知していなければぜひ調べてほしいと思います。  ここに私はそれを裏づけるようなある証拠物件を提供します、これは私の調査によるものでありまして、どこどことは言いません。これは三谷さんの関係であります。五十五年八月十五日一億五万三千六百九十九円、(資料を示す)この通帳、銭この証拠物件、これで、金額の多いところで私はもうぶったまげて調べました。八月十五日が一億五万三千六百九十九円、十一月二十一日七百万円、十一月二十二日七千七百三十八万円、五十六年三月三十日二千九百万円、同じ日七百万円、三月三十一日五千九百万円、五十六年四月二十三日四千百六十八万三千八百六円、同年五月十二日三千万円、五十七年十月二十日五百万円、五十八年四月四日三千四百九十九万九千二百円、五十八年五月六日五百万、同年の五月二十日九百九十九万九千二百円、同年十二月二十三日二千三百万円、五十九年一月十一日四千万円、五十九年の二月十八日二千二百六十五万五千百九十円、ここまで締めて四億九千百七十七万円と。もう先ほど私が言った税金の四億に手をつけた、手をつけたと言ったそのときからもう一億五万三千六百九十九円を筆頭にこれだけで四億九千百七十七万円という金額が通帳に載っておるわけであります、私はね、月給二十万円弱ボーナス年間百万円程度の三谷氏の立場から考えると異常な入金じゃありませんか、異常な入金。これはいわゆるこの五十五年、五十六年の税金四億千七百七十万円に手をつけておった。これをもとに株の操作をやりながらぽんぽこぽんぽこ自分の通帳に入れていたと、こういうことではありませんか。なら、五十九年十月一日以降というのはどうもあなた方の逃げではないのか。私としてはやっぱり相当以前からこの方は手をつけておった。さらに記録を見ますと、六十年四月二日八百五十万、同年四月十一日四千九百万、同日一千万、四月三十日五千万、六十年五月七日一千万一千六百三円、七月十七日千九百七十万二千九百八十七円、八月十七日九百八十五万三千六十九円。それから非常にこの三谷さんと仲のいいある女性がやっているこれがあります。これは非常に仲のいい方であります。ある会社の社長をやっています。これを見ますと、六十年六月二十七日一億五千万円、七月三十一日九百九十四万千八百三十九円、八月一日九百九十四万八千十四円、この女の方だけで一億六千九百八十八万円、締めて八億一千八百六十七万円という莫大な財産がこの三谷さん及びそのダミーの関係であることを私はつかみました。これから見ると、五十九年十月からやっておったという連合会とか商工中金の話は、何のためにかばうのかしりませんが、やはり相当以前から、冒頭申し上げた名古屋の大和証券といわゆる五人組ということでいろいろやっぱりあれやこれやをやっておった内部の矛盾が浮き彫りにされるんじゃないかど、こう思うんですが、この辺の話は浜岡局長いろいろ御相談にあずかっておるようでありますが、この辺の事情は全然耳に入りませんでしたか。いかがでしょうか。これはれっきとした○○金融機関のあれですから。
  101. 浜岡平一

    政府委員(浜岡平一君) まず基本的には私どもの方には、何らかの事実関係について何人かをかばい立てするというような意図は全くございません。一日も早く事態が解明されることを望んでおりまして、連合会に対しましても告訴するように強くアドバイスをした次第でございます、  なお、私どもが昨年の十月から十一月にかけてというようなコメントを幾つかの方面にいたしておるかもしれませんけれども、これにつきましては設備廃棄に関係をいたします、特別会計に関係をいたします商工中金債が引き出されたのがその時期に集中して行われているという説明をいたしておるわけでございまして、それ以外の部分の問題につきましては、告訴状を見ましても、連合会自身が実態の解明を急いでおるという状況でございますので、そこのところの私ども説明部分につきましては誤解を生じないようにお願い申し上げたいと思います。
  102. 目黒今朝次郎

    ○目黒今朝次郎君 だってね、あなたね、月給二十万円弱、年間ボーナス百万の方が預金残高八億円もあるというのは異常に思いませんか。預金残高ね、どういう財産か知りませんが、まあ答弁要りません。そういう事実があると。その公金を使い込んだ人が、今までの業績を調べてみると、八億円の預金残高を持っているということについて私は異常に感ずると。ですから、問題提起しますからおたくで調べてください。    〔委員長退席、理事林道君着席〕  それからなぜ今回の事件があったのかということについていろいろ新聞などを見ますと、私はある証拠を持って言っているのですが、それは理事長の印鑑の偽造だという話が言われております。しかし私はここにこういうものを持っています。これは本物です。約束手形——金融機関借入用、理事長小田、これは全部実印が押されています。これは債券戻し、これも実印が押されております。これは普通預金払い戻し。これだけあります、一、二、三、何ぼだこれ、全部連合会の判こと理事長の実印が押されています。金額欄は全部空欄です。日にちと金額は空欄。そんなこと絶対ないと、それは三谷が印鑑偽造だと、こういうことを、九月十四日のこの石川県における連合会で印鑑偽造だと、こう言って釈明しておるようでありますが、この証拠物件はどういうふうに解明できるのです かね。これは会の公印と理事長の実印ですよ、全部判こ押されています。これ証拠物件。債券も預金も皆落とせるんですよ。目黒今朝次郎がこれに五億円と、来年選挙があるから五億円もらおうなんということで五億円と書けば、これ持っていけば五億円もらえるんですよ、これは、そういう証拠物件ですよ、これは。これを勝手に預けておって、結局会の管理がずさんなのか、あるいは会計課長を信頼しておったのか、こういう国民の税金から貸し付けを受けておって、それで金の管理をやる連合会なり商工中金がこういうことで金がどんどん出ておったんですよ、これは。これは私も今でもポケットして使いたい気持ちですよ、これは。大臣見てください。これでは金があんた滝のごとく流れるのは当たり前じゃありませんか。これについて通産省はどう解明しますか、この問題について。    〔理事林過君退席、委員長着席〕
  103. 浜岡平一

    政府委員(浜岡平一君) 理事長の印が偽造をされて使われた、理事長印が偽造されたという事実は私どもはないと承知いたしております。正しい理事長印がみだりに押されたということだと承知いたしております、私どもが受けております説明では何らかの機会に御指摘のような必要書類にまとめて理事長印が押されてしまいまして、いわば白紙で理事長印の押された払い戻し請求書等が三谷氏が行使できるという状態になっておったということだと承知いたしております。御指摘のとおり、非常に重要な金融機関との取引等にも使われます理事長印の管理体制が不適格、不適切であったことは歪みようがないわけでございまして、私どももこの点は極めて遺憾だというぐあいに思っておりますし、また連合会の方からも、少なくともこの理事長印の管理体制については極めて重大な手落ちがあったと、遺憾であるという意向の表明を受けておるところでございます。
  104. 目黒今朝次郎

    ○目黒今朝次郎君 私もこれはあきれて物が言えないね。こんな大事な金、こんなでかい金額を扱うのにこんなずさんな現金の出し入れが行われておったかということになりますと、やっぱりいわゆる使い込みした彼に何か弱いところを握られておってなかなか強く言えないと。例えば理事長が六千万円の債券流用をなかったことにしてくれなんという謝ることは、裏を返せばやっぱり共同謀議といいますか、共同でやっておって痛いところ、きんたま握られているということの裏づけがこんなことにはね返ってくるんじゃないですか。あなたが今答弁したね、一つでいい判こを本人が三つも四つも押したんだと、これも言いがかり、判この偽造も言いがかり、裏を返えば、いかにこの連合会の金の管理がずさんであったかということに帰結するんじゃないですか。いわゆるやってはならないことをやっておって、本人にきんたま握られておったということがやっぱり背景にある、そう言っても私は過言ではない。  それで、商工中金にお伺いしますが、こういうものを持っていってお願いしますという場合には、例えば勧進元だね、理事長とか専務理事とか。金額が一億とか二億という際に、その際にはこういうものを持ってきても、連合会の責任者に確認を求めるとか、そういう形で金を出しているのか、持ってきたからはいと言って出しているのか、この辺は商工中金としてはどういう取り扱いをしたんでしょうか聞かしてもらいたい、こう思うんです。
  105. 佐々木敏

    参考人(佐々木敏君) お答えします。  本件につきましては保護預かりでございまして、所定の手続によりますと、原則として払い戻すということに相なっております。かつ、持ってこられた方が十数年来の撚工連の担当者でございまして、私どもしょっちゅう御面識をいただいている方でございますから、手続に従いましてこれに応じた次第でございます。
  106. 目黒今朝次郎

    ○目黒今朝次郎君 そうすると、長年つき合った経理課長さんだから、判こを押したやつを持ってこられれば、長年のあれですから保護預かりを解除してお渡ししたと、そういうことですかな。
  107. 佐々木敏

    参考人(佐々木敏君) はい。
  108. 目黒今朝次郎

    ○目黒今朝次郎君 それで、参考までにお伺いしますが、これは保護預かりであるけれども、間違いのないように安全に運用する義務といいますか、そういうことが商工中金にあるわけですね、この点は。ですから、まあ何というかな、詐欺、ごまかし、そういうことで引き出されることなども防ぐためにいろいろ対応もされていると思うんでありますが、そこらの点は今回の事件との関係でどうなんでしょうか。意見があればお聞かせ願いたい。
  109. 佐々木敏

    参考人(佐々木敏君) 保護預かりでございますが、本件は先生おっしゃったような債券管理のための債券でございます、そういった意味におきまして、私ども債券の払い出しにつきましては年二回、九月と三月におきまして残高のチェックをいたしておる次第でございます。
  110. 目黒今朝次郎

    ○目黒今朝次郎君 じゃ、ほかの問題もあるから、ちょっと参考までにお伺いしますが、商工中金、これは通産省に聞いたところ、今回のような撚糸の関係の同じ形態が、業種が二十九業種ありまして、四十七年から五十九年までの間の助成金総額が驚くなかれ二千百十一億一千四百万、これは莫大な金が出ているんですね。二千百十一億一千四百万に対して利付商工債券の購入が義務づけられておるわけでありますが、これが四カ月とか三カ月とかと巷間で言われておるわけですが、大体二千百十一億の助成金に対してどの程度の債券の購入総額となっているか、参考までに教えてもらいたい、こう思うんです。
  111. 佐々木敏

    参考人(佐々木敏君) 先生おっしゃいました全体の設備廃棄融資実績につきましては、都道府県分も入っているかと思いますから答弁を差し控えたいと思いますが、私どもが設備廃棄融資にかかわる返済財源といたしまして管理をいたしております商工債券の残高は、九月三十日現在におきまして千二百二十七億円でございます。
  112. 目黒今朝次郎

    ○目黒今朝次郎君 はい、わかりました。  それで、もう時間がありませんから途中ははしょって、せっかく商工中金の理事長さんが来ていますからお伺いしますが、この九月十四日の石川県の議事録を拝見いたしますと、田端さんという石川県の理事長さんがこういうことを言っておるんですが、これは三谷氏が使い込んだとされる特別会計の八億二千八百七十六万円は商工中金の今言った保護預かり分となっているので、撚工連としては何ら心配しないでいるもので——ここからです、商工中金が出してはならないものを出したんだから、この八億の問題はおれたちには責任ない、出した商工中金の責任だ、こういうことを言っておりまして、この八億の問題については我々には責任ない、こういうことを田端理事長さんが表明しているんですが、この関係はどうなんですか、今言ったおたくは保護預かりだから正当な手続をすれば出すだけだ、こう言っているし、理事長の方は、本来商工中金が出してはならない金を出したんだから、おれたちの責任じゃない、こう逃げているんですが、この辺の関係はどっちに責任があるんだろうか、理事長さんの意見を聞かしてもらいたい、こう思います。
  113. 佐々木敏

    参考人(佐々木敏君) 繰り返しになりますが、本商工債券は撚糸工連の名義でございます。撚糸工連の所有でございまして、私どもは保護預かりをいたしておるわけでございます。したがいまして、正規の手続、正規の判こ、また、その払い出し請求の方が信頼に足る方であるというふうな今までの関係におきまして、そういったことを私の立場から判断をいたしまして払い出しをいたした次第でございます。
  114. 目黒今朝次郎

    ○目黒今朝次郎君 そうしますと、今理事長の言ったとおり正規の手続、正規の判こ、しかもその人が長い面識で信用できる人、そういう三つの条件が整えば保護預かりであるから出しただけだ、いわゆる正当な手続だということを言われます。そうしますと、これは通産省にお伺いしますが、この田端理事長が出してはならないものを出したんだということで商工中金の責任だ、犠牲者が出るとすれば商工中金の方から犠牲者が出るんだ、こういうふうに説明しているんですよ、九月十四日の理事会で、その前段に、お役所の調査によればと、こういう言葉が使われているんですがね、お役所の調査によればということは、私は通産省の浜岡局長の調査ではないか、こう推測するんですが、今のやりとりの関係で通産省は御相談にあずかったかどうか、あずかってあなたが、通産省の方がそういう注意をしたのならわかりますが、田端理事長さんという人は何を根拠に八億の問題はおれの責任じゃないと言ったのか。前段で、まくら言葉で、お役所の調査によればと。このお役所というのは通産省じゃなかったんですか、どうですか、聞いていませんか。
  115. 浜岡平一

    政府委員(浜岡平一君) ただいまの問答につきまして、田端さんと私の間で何らかのコミュニケーションがあったという事実はございません。私どもとしましては、事の経緯に照らしますと、保護預かりのもとでの商工中金の善管義務というものは果たされておるんではないかというぐあいに思っておりますが、若干推察をいたしますと一般的には返済に充てますために購入いたしております債券類等につきましては、中小企業事業団の担保権が設定されておるのが通例でございますので、そういうような事実関係を念願に置きましで御発言があったんではないかというぐあいに思っておるわけでございます。
  116. 目黒今朝次郎

    ○目黒今朝次郎君 このお役所というのはどこを指しているのか、これもまあ捜査当局に。どっちにしても、これは石川県の田端理事長の発言では、この八億円の問題については商工中金だ、こう言うし、商工中金の理事長は、正規の手続をされて出したんだから正規のルートで出しただけだと、こう両方食い違っているわけですね。だから、これはどっちの責任かということについては、もう時間がありませんが、そういう食い違いがあるということだけははっきりしました。通産省は相談にあずかっていない、これだけははっきりしましたから、これ以後はもう検察庁の手にゆだねるしかないでしょう。  それからもう一つ浜岡局長ね、九月十四日の理事会で田端理事長はこう言っているんですが、浜岡局長は小田理事長に対し、三億六千万円一商工中金の利子税還付金一を入れなければ資金交付関係は難しい、こういう発言をされていることが議事録に、メモに載っているんですが、これはどういう意味なんですか。これは納められて交付をしたのかどうか、この関係についてちょっと説明をしてもらいたい、こう思うんです。
  117. 浜岡平一

    政府委員(浜岡平一君) ただいまの御指摘関係は多分こういうことだろうと存じます。  撚糸工業組合は、現在問題になっております四十九年度から五十年度にかけましての設備廃棄事業だけではございませんで、それ以降も設備廃棄事業をやっておりますことは御高承のとおりでございます。六十年度から六十二年度にかけましての設備廃棄事業というものも現在動いておるわけでございます。六十年度の事業につきましては、御指摘の時点におきまして既に約千三百の企業が設備を廃棄をいたしておりまして、そのための資金交付を待っておったというような状況でございます、今回のトラブルがそういうように既に設備を廃棄をいたしまして資金交付を待っている千三百に近い中小企業に迷惑をかけることは大変大きな問題だと当時考えておりました、そういう意味で、設備廃棄事業関係につきましての特別会計にあいております穴は何らかの形で必ず埋めるというような方針を明らかにする必要がある、そうしないと首を長くして待っておられる方々の期待にこたえることができないということで、幾つかのアイテムについて幾つかの考え方を連合会に申し上げたことがございますが、その中の一部を引用されたものだと考えております。
  118. 目黒今朝次郎

    ○目黒今朝次郎君 納めたんでしょう、その金額は現在納めておるんですか。
  119. 浜岡平一

    政府委員(浜岡平一君) 設備廃棄に関係をいたします特別会計関係の資金返済につきましては、いろいろと方法はございますが、何らかの方法で必ずカバーできるという見通しを立てておりまして、その結果資金交付には支障は生じておらないわけでございます。
  120. 目黒今朝次郎

    ○目黒今朝次郎君 資金運用に支障してない。まあそこまではちょっとわかりませんが、じゃ、もう時間がありませんから会計検査院にお伺いします。  この金は設備のスクラップを促進するために中小企業向けに貸した貸付金でありまして、その性格は前回の委員会で言いましたから言いません。しかし、この金は最終的には、貸した金でありますから、四年据え置き十二年分割ということで算術計算で十六年ですか、十六年後にはきちっと国に返さなければならない、そういう国民の税金の一環だ、こういうように理解して間違いありませんか、したがって、肩越し検査も含めて、昭和五十三年の検査報告書もらっていますが、肩越し検査も含めて会計検査院の検査対象であるということについては間違いないと思うんですが、いかがでしょうか。
  121. 秋本勝彦

    説明員(秋本勝彦君) 今回の後始末の関係で、もし事業団に対する貸付金の回収が不能になるというような事態があった場合には、私どもも事業団の協力のもとに同連合会を検査することもあります。
  122. 目黒今朝次郎

    ○目黒今朝次郎君 貸付金でありますから一定の年限がありますが、やっぱり十分に、返されない場合には、肩越し検査を含めて会計検査の対象になる、あるいは、指導する、こういうふうに理解していいわけですね。  それで、浜岡局長ね、ちょっと私、失念しちゃったんだけれども、今、金の貸し付けの返還の関係ね、支障のないように行われているという一般論で言ったんですが、私が提起したこの三億六千万、これは連合会からもういつどのくらい入っているかわかりますか、
  123. 浜岡平一

    政府委員(浜岡平一君) ただいま御指摘の三億六千万ばかりの金額は、先ほど先生が御指摘になっておりました税金の還付金でございまして、これはいずれ特別会計に入れるべきものなわけでございますけれども、それが繰り入れられてないというのがあの時点の状況でございました。これにつきまして、組合役員の保証等によりまして必要な資金をいずれ手当てをいたしまして特別会計の方に手当てをするという方針をあの時点で確認を受けたということでございます。     。
  124. 目黒今朝次郎

    ○目黒今朝次郎君 そうすると、方針、納めますということを保証しただけであって、現実はまだ入ってない、きょう時点でまだ入ってないわけですな。
  125. 浜岡平一

    政府委員(浜岡平一君) 今日の時点では特別会計の方に入れるべき金額は入っております。
  126. 目黒今朝次郎

    ○目黒今朝次郎君 入っておる、全額。
  127. 浜岡平一

    政府委員(浜岡平一君) はい。
  128. 目黒今朝次郎

    ○目黒今朝次郎君 そうすると、今日時点でこの三億六千万円全額特別会計に入っている、そういうふうに確認していいんですか。
  129. 浜岡平一

    政府委員(浜岡平一君) ただいま申し上げましたのは、ちょっと事実関係をごたごた申し上げたかもしれませんが、四十九年度、五十年度の事業にかかわる特別会計の問題と、それ以降の事業にかかわる特別会計の問題とあるわけでございますけれども、今御指摘の問題は後者にかかわるものでございますけれども、これにつきましては必要な繰り入れが行われまして、特別会計には何らの傷はないわけでございます。
  130. 目黒今朝次郎

    ○目黒今朝次郎君 いつ納めたか。納めたら納めだて結構だけれども、いつどのくらい入ったんですか。
  131. 浜岡平一

    政府委員(浜岡平一君) 繰り入れられたのは九月二十六日だったということでございます。
  132. 目黒今朝次郎

    ○目黒今朝次郎君 九月二十六日に三億六千万円入った、こう確認していいですね。
  133. 浜岡平一

    政府委員(浜岡平一君) はい。
  134. 目黒今朝次郎

    ○目黒今朝次郎君 じゃあ確認します。  それで、時間が来ましたから、最後に。  私は、本件問題は、まだ捜査の段階でありますから、言いたいことも、また、個人的な名前を挙げることも遠慮をいたしました、しかし、私といたしましても、九月十四日の、これは非公開だか公 開だか知りませんが、相当際どいところまで述べておりますから多分非公開の理事会だと思うんでありますが、こういう問題なども含め、あるいは、こういう問題を含め幾つかの内容はわかったけれども、対立点もあります。また事実関係もはっきりしてないところもあります。しかしそれは、この使い込み事件で三谷氏が告訴されておるから、私は少しは遠慮しながらしゃべったつもりでありますが、やはり、この使い込み事件と同時に、それに絡む連合会のやり方などについても浮き彫りにされたと思っております。  したがって、法務省にお伺いしますが、こういう問題について、しかし中小企業の皆さんがスクラップの問題で苦しんでいることもこれは否定できません、ですから、そういう方々を救援するという面も社会的に非常にありますが、だからといって、不正なり、国民の金を自分の私欲のために使うということも許さるべきではない、こう思うんでありますから、そういう両面から早急にきょうの問題を含めて事実の解明、事件の解明に全力を投入してもらって、必要があれば、私は、ここに持っている資料で、きょうは遠慮してしゃべりましたが、ネタも提供する用意があります、事実解明のために、そういう点で検察庁の決意を聞いて、ちょうど時間になりましたから終わりたいと思いますが、法務大臣の決意をひとつ聞かしてもらいたい、こう思うんです。
  135. 浜岡平一

    政府委員(浜岡平一君) 恐れ入りますが一点だけ、事実関係。  先ほど九月二十六日と申し上げましたが、二十六、二十七の両日にまたがっております。
  136. 目黒今朝次郎

    ○目黒今朝次郎君 二十六、二十七ね、わかりました。
  137. 筧榮一

    政府委員筧榮一君) 本件につきましては、目黒委員承知のとおり、東京地検で告訴を受理しておるところでございます、告訴を受理して以来、事案の解明のために現在まで鋭意捜査を続けているところでございます。今後も所要の捜査を遂げまして本件の実態を解明した上、その事実に即した適切な処理ができるだけ早急になされるものというふうに考えております。
  138. 嶋崎均

    国務大臣嶋崎均君) ただいま目黒委員から指摘がありましたとおり、この問題につきましては設備廃棄等というようなこととかかわる問題であります。したがって、そういうことはもちろん非常に大切なことであると我々も思うのでございますが、事件の内容につきましては早急に調査をして、適切な処理を終えたいと思っておる次第でございます。
  139. 丸谷金保

    委員長丸谷金保君) 午前の審査はこの程度とし、午後一時二十分まで休憩いたします。    午後零時二十一分休憩      —————・—————    午後一時二十三分開会
  140. 丸谷金保

    委員長丸谷金保君) ただいまから決算委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、昭和五十八年度決算外二件を議題とし、法務省及び裁判所決算について審査を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  141. 田代富士男

    田代富士男君 最初に、私はいじめの問題についてお伺いをしたいと思います。  もう御承知のとおりに、陰湿ないじめ事件の続発する中で、今月の十四日。群馬県で、所属する運動部の同級生などからのいじめに耐え切れず農薬自殺を図った中学二年生が、入院先の病院で死亡したことが報じられております。また、同じ日に栃木県内におきましても、くしくも運動部員の中学三年生が服毒自殺をしたことが明らかになりましたけれども、このような相次ぐ事件をどのように受けとめられておるのか、まず最初に大臣からお尋ねをしたいと思います。
  142. 嶋崎均

    国務大臣嶋崎均君) いじめの問題につきましては、これが大きな社会問題になっておるという現実もあるわけでございまして、我々も非常にその対処の仕方をどういうぐあいに考えるかということをかねて心配をしておったわけでございます。基本的には、私は、学校教育の問題の一環であろうと、また、その中で処理がされるというのが基本的な方向でああというふうに思っておったわけでございますけれども人権擁護というような考え方から申しましても、どうもこのごろの社会、相手の立場というものを十分尊重をして、いいところを引き立てていくというような感じが薄くなってきておると、そういうようなことから考えまして、今後心身ともに健全に生育していかなきゃならない児童、生徒の問題にかかわってきておることである、まあ、そんな考え方から、ことしの三月の十七日だったろうと思いますけれども法務省としてもこの問題を取り上げまして、できるだけ人権擁護委員皆さん方にも我々の考えている趣旨というものを徹底をしまして、法務省でこの人権擁護関係の仕事をやっている人の数は、まあ二百二十名というような非常に少ない人数しかいませんけれども人権擁護委員の方々はともかく一万一千五百人もおいでになるわけでございますから、こういう人にもひとつそれを認識をしていただきまして、対処をした方がいいのではないかというようなことでこの問題を取り上げて、できるだけ今後ともこのいじめの問題の解消のために努力をしてまいりたいというふうに思っておるわけでございます。  幸いにして、そういう取り上げ方を法務省でやりましたことが因縁になりまして、警察関係でもそういう窓口をつくっていただくというようなことになり、また、文部省の関係でも、つい先ごろまでも非常に議論が大きく取り上げられて、この問題を真剣に処理をしようという態勢ができてきましたということを大変喜んでおるわけでございます。したがって、もうこれを放置するということは、結局我々が心配している差別というような問題にも連なるというようなことでもあろうと思いますので、人権擁護委員皆さん方と今後とも協力をし、また、学校あるいはその地域の皆さん方とよく連絡をして、十分この問題に対応していかなければいけないというふうに思っておる次第でございます。
  143. 田代富士男

    田代富士男君 このいじめとかいたずらといった現象というものは、洋の東西を問わず古くから起こっている問題でありますけれども、それが現在大きな社会問題となっているのは、このいじめを直接原因といたしまして、今も問題提起いたしました自殺や、あるいは仕返しによる殺人や殺人未遂というような深刻な事態を惹起しているところにあるのではないかと思うのでございます。  そこで、まず、現在問題となっているいじめはどのような特徴を持っていると考えていらっしゃるのか、法務省と文部省からお考えをお伺いしたいと思います。
  144. 野崎幸雄

    政府委員(野崎幸雄君) 昔から子供は成長過程におきまして、お互いにいじめたりいじめられたりしながら成長してきておるわけでございます。そして、そういう過程でいろいろな社会のルールというようなものも学んでくることがあったわけでございますが、最近問題になっておりますいじめというものは、そういったものとは全く質を異にいたしまして、非常に陰湿で徹底的で、その結果、いじめられる子供は心身ともに傷つき、中には自殺を図り、あるいは傷害事件を起こすといったようなことになっておるわけであります。  私どもは、こういったものは、既に社会的、常識的に見て容認されるべき範囲をはるかに超えておるというふうに考えるのでありまして、私どもはこういったものを特にいじめと呼んで、それを人権侵害、人権問題であるとみなして、これに真剣に取り組んでおるのであります。法務省人権擁護機関は人権意識の高揚を図る啓発機関でございます。私どもは、いじめというものが非常に人権を侵害する行為であるということを声を大にして啓発することによりこの問題の解決に努力していきたい、かように考えておるところでございます。
  145. 林田英樹

    説明員(林田英樹君) いじめの問題でございま すけれども、近時いじめの問題が非常に憂慮される状況となっておりまして、私どもといたしましても非常に重要な課題であると考えまして取り組みを進めているところでございます。  この問題は児童生徒間だけの問題として、顕在化しにくいということがございまして、その発生状況、実態というものの把握は必ずしも容易ではないわけでございますけれども、最近の各種の調査によりますと、学校におきましていじめがかなり一般化してきておるというような深刻な状況にあると受けとめておるわけでございます。  特に各種の調査結果などによりますと、いじめの問題は小、中、高等学校を通じまして広範に見られるわけでございますし、また特定の児童生徒に対しまして継続的に長期にわたり陰湿、残忍な方法で行われるというような、児童生徒の人格形成に大きな影響を及ぼすなどの深刻な問題であると、こう理解しております。  文部省としましては従来から、この問題につきまして対処するため、教師向けの指導資料の作成でございますとか教育相談活動の推進というようなことを通じまして、指導の徹底を図ってきておるところでございます。今後とも関係者と、学校、教育委員会協力いたしまして、まず第一に学校でしっかり受けとめた対応をしなければならないということで指導の充実を図ってまいるように努めてまいりたいと思っております。
  146. 田代富士男

    田代富士男君 警察庁は去る六月五日の衆議院の文教委員会におきまして、「単独または複数で単独または複数の特定人に対しまして、身体に対する物理的攻撃または言動によるおどし、嫌がらせ、仲間外れ、無視、こういったような心理的圧迫を反復、継続して加えることによって苦痛を与えること」と、いじめの定義をされております。  また松永文部大臣は、反復、継続、陰湿などが問題の中心と、このように答弁をされております。  一方、都教委の本年五月のいじめに対する調査では、自分より弱い立場にある者に対して身体的、心理的な攻撃を繰り返し行い、相手に深刻な苦痛を与えるいじめを対象としていると、このようにいろいろ定義づけがされておりますけれども、文部省が全国調査をより的確に行うには、このいじめに対する定義というものを定めまして都道府県間で調査対象の範囲をきちんとしなければ、これは結論を出すのに難しいのではないかと思いますけれども、こういうことに対してお考えはいかがでございましょうか。
  147. 林田英樹

    説明員(林田英樹君) 御質問のいじめの定義でございますが、文部省といたしましては今までいじめの定義を公に示したということはないわけでございますが、今も御指摘がございましたけれども、教育関係者の間でいろんな場を通じまして協議を進めながら対策を進めてまいっておるわけでございますけれども、おおよそ教育関係者の間で合意が得られておる考え方といたしましては、今もおっしゃいましたけれども、自分はやられる立場にはなくて、自分より弱い者に対しまして身体的、心理的な攻撃を継続的に与えるということで、その相手が深刻な苦痛を感じているというようなことがいじめかどうかの一応の目安ということになるのではないかと考えております。  各都道府県の生徒指導の関係者の会議などでも取り上げまして協議を行いまして、各都道府県問におきます共通理解が図られるように私どもとしても考えてまいっておりますし、このような考え方につきましてはおおよそ関係者の間では合意が得られているものと私どもとしては理解しておるわけでございます、ただ、現実に個々の事例をいじめかどうかという判断をいたします場合には、非常にすそ野の広い問題でもあるわけでございまして、特に攻撃を加えられた者が深刻な苦痛を感じているかどうかという、一面、判断にかかるところもあるわけでございますので、人によりまして具体的に判断する場合に難しい面はあるわけでございますけれども、おおよその考え方の合意というものは得られているのではないかと理解しているわけでございます。
  148. 田代富士男

    田代富士男君 もう一度いじめの定義のことでお尋ねいたしますけれども、これは文部省の省内にとどまらなくて、関係する各省庁間でも統一できるかどうかという問題は大変な問題だと思うんです、これは。これが一番大事なことじゃないかと思います。そうしないと、例えば調査統計上省庁間で足並みがそろわなくなってまいりますし、対策もまちまちになってくるのではないかと、こういう心配される面があるわけなんですけれども、各省庁間のお考えを聞きたいと思いますし、御出席の範囲内で結構でございます。
  149. 野崎幸雄

    政府委員(野崎幸雄君) 確かに今委員が御指摘になりましたように、いじめにつきましてはいろいろな機関でいろいろな定義づけをやっておるわけでございますが、よくそれを読んでみますと、ほぼその内容はいじめの特徴というものをつかんでおって、同じことを表現するのに少し表現の仕方が変わっているというふうに見ることもできるのではないかというふうに考えます。  ただ、私どもの方は人権擁護機関としてこれに取り組んでおるわけでございますが、人権擁護機関はいじめというものを人権侵犯事件に当たるかどうかといった観点から処理してまいるわけであります、その場合に問題になりますのは、憲法の保障する基本的人権というものがある行為によって侵害されているかどうかということが問題になるわけであります、もしこれが犯罪行為に当たるかどうかということになるといたしますと、その行為が構成要件に該当するかどうかといった観点から非常に厳しい検討が必要になるわけでございますけれども、私どもの方は、今も申し上げましたように、ある行為が被害者の人権を侵害しているかどうかという観点から考えますので、現在の段階としては、もとよりそのいじめというものの定義がいろいろな議論を通じて確定的になっていくことは好ましいことかと思いますけれども、我々は人権侵犯に当たるかどうか、あるいは人権侵害のおそれがあるかどうかという観点に立ちまして、この問題を人権問題として取り組んでいくという姿勢でおるわけでございます。
  150. 伊藤一実

    説明員(伊藤一実君) 警察におきましては、先ほども田代委員指摘のとおり、いじめを単独または複数で単独または複数の特定人に対しまして、身体に対する物理的攻撃または言動によるおどし、嫌がらせ、無視等の心理的圧迫を反復、継続して加えることにより苦痛を与えることととりあえず定義いたしまして、その上で、先般来全国の各都道府県警察が事件あるいは事故として処理したものの中から該当するものを抽出するという方法によりまして、いじめに起因する事件等の実態調査を行ったところであります。私ども警察では、主として事件や事故と自殺との関連におきまして、少年の非行を防止して、少年の生命や身体を保護するという観点からいじめへの対応が必要となりますし、他のこの種の問題に対応されております省庁におかれましても、それぞれの所掌事務の観点からいじめへの対応が求められているというふうに考えます。
  151. 田代富士男

    田代富士男君 今、法務省立場あるいは警察庁の立場からのお話でございます。法務省とするならばいじめの問題が人権にかかわるかどうかと、また警察庁としては犯罪にかかわるかどうかと、こういう面で重点が置かれておるかと思いますけれども、やはりこれはお互いの連携を密にとってこの問題を解決するというものがなければ根本的解決にはならないと、私はあえてこれを強く申し上げておきたいと思います。  そこで、法務省は去る九月の二十日、全国の法務局を通じて収集した児童生徒間のいじめの実態の処理状況をまとめられました。私もその資料を全部細かく読ましていただきましたが、そこで、最近のいじめの傾向、性質及びいじめ問題の解決ポイントなどについてどのようにお考えになっているのか、お聞かせいただきたいと思います。
  152. 野崎幸雄

    政府委員(野崎幸雄君) 法務省では、去る九月二十日に全国の地方法務局の人権護課長を招集いたしまして人権護課長会同を開催し、その際各法務局が取り扱っておるいじめ事象を持ち寄ってもらいまして、これを人権擁護局で一応集計いたし分類いたしました、  その総数は八百七十七件でございまして、これを生徒別に見ますると、中学生間におけるいじめが四五%四百七件、次に小学生間のいじめが三五%三百五件、高校生間におけるいじめが一七%百四十九件、その他と申しますのは幼稚園児とか専門学校等におけるいじめでございますが、これが三%十六件でございました。  いじめの形態といたしましては、殴る、けるといった暴行傷害によるものが四〇・四%で三百五十四件、物を隠したり壊したりしているものが二五・七%で二百二十五件、デブであるとか無州であるとか死ねといった言葉によるいじめが一四・七%で百二十九件であり、集団によって、集団がいじめられっ子を無視するという方法によるものが一一・二%九十八件、それから金品の強要が七・三%で六十四件、その他が〇・七%で七件となっておりました。  また、いじめの形態を生徒別に見ますると、小学生の間では物隠し、物壊しというものが一番多くて三三%百一件を占め、次に言葉によるいじめが二六%七十九件、暴力を振るうものが一八%で五十五件という順になっております。中学生の間では、暴行によるものが最も多く五二%で二百十二件、次に物隠し、物壊しが一九%で七十七件、言葉によるいじめが八%で三十三件となっております。高校生の間では、暴行が五三%で七十九件、次に物隠し、物壊しが二六%で三十九件、言葉によるいじめが一一%で十七件となっております。  また、男女別に見ますると、いじめの現象は男女ともに見られますが、件数としては、男が六〇%の五百二十七件、女子の場合が四〇%で三百五十件ということになっております。  以上のことから申し上げることができますことは、小中学校の義務教育課程でいじめが最も多く、その割合は八一・一%七百十二件に上がっております。高校生となりますと一六・九%百四十九件で、ぐんと減少をしてくることになるわけであります。また、中学校、高等学校におけるいじめの形態では暴行が一番多く、五〇%をいずれも超えておるというのがその実態でございます、  私どもはいじめというものを人権問題として取り上げるに至りましたのは、いじめというものが相手方に対する思いやり、いたわりの心を欠くものである、つまり人権感覚が欠けるからこういう陰湿で徹底的ないじめが行われておるのであるという認識に立っておるからであります。  私どもは先ほども申し上げましたように、人権思想の普及、高揚を図る啓発機関でございますので、いろいろな方法を通しまして、小、中、高校生はもとより、その父兄及び地域社会に対しましていじめというものは放置できない人権侵害なのだと、こういうことは許されないんだということを声を大きくして啓発をしてまいりたい、かように考えておるところでございまして、その方法といたしまして、各地で関係機関と協議会を開く、講演会、講習会を開く、あるいは人権侵犯事件情報を集めてそれを学校に通報し、また父兄や地域社会に対する啓発を行うという運動を展開しておるところでございます。
  153. 田代富士男

    田代富士男君 警察庁も九月二十一日、本年一月から六月までの上半期に全国の警察が扱いました小、中、高校生のいじめに起因する事件二百七十四件について詳細な実態調査結果を発表されましたが、それによりますと、五十九年の年間五百三十一件を上回る勢いではないかと思いますが、昨年と比較してどのような変化が見られたのか。今回の分析を通していじめ問題の防止及び解決の方途についてお聞かせいただきたいと思います。
  154. 伊藤一実

    説明員(伊藤一実君) ただいま先生から御指摘ありました調査でございますけれども、先ほどの定義に基づきまして昨年一年間、さらに本年上半期、全国警察で扱ったいじめに起因する事件、事故を実態分析したわけでありますけれども、本年上半期の総数はほぼ前年並みで、特に件数として急増しているという状況はございませんけれども、いじめに対する仕返しによる事件、これが昨年一年間で二十九件に対しまして本年上半期で既に二十三件ということでこの点の事件の増加、それから小学生によりますいじめによる事件が昨年一年間で三十七人補導いたしましたけれども、本年上半期で既に四十五人という状況で、小学生間でのいじめによる事件、これがふえている状況がうかがわれます。  私どもといたしましては、今回の調査によりまして、警察の処理した事件を通じてではございますけれども、いじめの実態を国民の前に提示していじめについての問題提起がある程度できているのではないかというふうに考えております。  いじめの問題の防止策とかあるいは解決策につきましては、何といいましてもより多くの人々にこの問題を検討していただくということが望ましいと思うわけであります。  調査結果から見ますと、大した理由もないのにいじめがしつこく繰り返されている。他人をいたわる気持ちとか、あるいは物事の善悪を判断する力の欠けている少年が多いというふうに私ども考えております。また、いじめられましてもじっと我慢している子や、保護者等に相談しても適切な措置をとってもらえないということで悩んでいる子が、どちらかといえば事件を起こしているという割合も高い状況がうかがわれるわけであります。今後は私ども行政含めまして、少年の周辺にいるすべての人々がこのいじめの事態の深刻さというものを十分認識いたしますとともに、少年や保護者に対しましてその身近にある各種の相談機関、これを積極的に利用するようにあらゆる機会を通じて呼びかけるこの広報の必要性が大変高いんではないかと私ども存じております。
  155. 田代富士男

    田代富士男君 今度は都教委でもこの五月にいじめの実態調査を行っておりまして、五十九年度中の九千五百三十九件について分析を行いましていじめに関する指導の手引を出しておるわけなんです。このようにされておりますけれども、文部省としてこの児童生徒のいじめに関する実態調査を行ったことがあるのか、なければなぜやらなかったのか、そこをお聞かせいただきたいと思うんです。
  156. 林田英樹

    説明員(林田英樹君) いじめにつきましての実態調査の問題でございますが、私どもといたしましては個別に具体的な事件といたしまして、大人社会に把握されたものにつきましてどういう実態があるかということにつきましては比較的把握がしやすい面があるわけでございますけれども、いじめの全体像を把握するためにどのようなアプローチをするのが適切かということにつきましては、どうしてもいじめの判断にあいまいさがつきまとう場面があるわけでございまして、なかなか困難な面があるわけでございます。こういう考え方から、文部省としましては現在児童生徒の問題行動に関する検討会議という検討会議を設けまして、この会議の作業といたしまして、いじめに関しまして抽出で実態調査をお願いしたいと思っておるわけでございます、この実態調査におきましては、父兄、教員それから児童生徒を対象にいたしました実態調査をお願いしておるわけでございます。さらにこれとあわせまして、個別のいじめの事例につきまして具体的な原因、背景、形態、そういうものにつきまして研究いただきまして、いじめに対します調査等の実施方法等も含めて検討をお願いしておるわけでございます。  なお、各都道府県におきましては今先生御指摘のように、かなりの数の県でいろんな形で実態調査が行われております。私どもといたしましても各都道府県の調査の方法を検討いたしまして、文部省としても何らかの調査方法が可能であるかどうか具体的に検討してみたいと思っておるところでございます。
  157. 田代富士男

    田代富士男君 ことしの六月二十八日に、文部省の児童生徒の問題行動に関する検討会議の緊急提言がされまして、その冒頭に、いじめの実態についてはさらに詳細な把握が必要である、こういう意味のことが述べられておりますけれども、衆議院の文教委員会での答弁では、各県の教育委員会、教育研究所に相談に来たいじめの件数を全部集めて、内容別、要因別、また原因別に集約している段階である、このように言われておりますけれども、分析の結果はいつ出るのか、やはりこれは早く出して対応すべき、参考資料にもすべきであると思いますけれども、どうですか、お答えいただきたいと思います。
  158. 林田英樹

    説明員(林田英樹君) 御指摘をいただきました教育相談の件数の調査でございますけれども、これにつきましては現在ほぼ作業が終わりまして、印刷も完了しておりますので、近日中に、ごく近々に発表をさせていただけると思っております。  御参考までに教育相談の実態をかいつまんで申し上げますると、昭和五十九年度に都道府県、各県の教育委員会、教育研究所等で受けました教育相談の合計件数が一万四千三百九十件あったわけでございますけれども、このうちいじめに関します教育相談の件数が五百二十三件あったわけでございます、さらにまた、このうち約六〇%に当たりますものは登校拒否に関する相談もあわせて行われていたということで、教育相談で受けましたいじめの実態といたしましては相当に深刻なものが多かったということが私どもとしてもうかがわれるわけでございます。  なお、その他個別の指導の困難であった事例等につきまして実態を各県で詳細なものをいただきまして、文部省として分析し、現場の参考になるような資料といたしまして編集しまして近々に公表する予定にいたしております。
  159. 田代富士男

    田代富士男君 ぜひやっていただきたいと思います。  次に、日本青少年研究所と生命保険文化センターは、ことしの二月に中学生と母親の日米比較調査の報告書を出しておりますけれども、それを見てみますと、いじめを見たり聞いたりしたというのが日本の中学生で八二・四%、アメリカでは九八%、またいじめられたことがあるというのは日本の三九・一%に対しましてアメリカが五八・一%といずれもアメリカの方がいじめの機会が多く出ております。しかし、いじめの内容は若干異なっておりまして、例えば殴られたりけられたりしたのは日本では全体の二割であるのに対しましてアメリカでは七・七%であります。さらに注目すべきことはこのいじめの対応で、日本で一番多いのはそっと慰めるというのが三六%、そして見て見ぬふりをするというのが二九・四%、このような消極的な対応であるのに対しまして、アメリカではとめに入るというのが三九・一%、日本の一九・七%の二倍になっているわけでございます。  そこで、このようないじめのことに対しまして、日本とアメリカの格差がありますけれども、これをどのように考えていらっしゃるのか、法務省、文部省の立場からお伺いしたいと思います。
  160. 野崎幸雄

    政府委員(野崎幸雄君) 我が国でいじめの問題がこのように大きな問題となりましたことにつきましては、いろいろな指摘がなされております。いじめというものは実は親にも先生にもなかなか目につかないところで進行しているんだと言われておるのでありますけれども、実は子供の間ではだれがいじめっ子でありだれがいじめられっ子であるということは非常にはっきりと皆認識をしておるのであります。にもかかわらず、周囲の人は後難を恐れてこれを先生にも親にも言っていかない、また家庭に帰って子供がいじめの話をしましても、父兄は自分の子供がいじめの対象になっていないときは「ああよかった、あなたはいじめられるんじゃないよ」ということで終わっちゃっている場合が非常に多いんだと、つまり親の方もこれを公の場に持ち出して徹底的に議論をするという態度にない。それが非常にいじめというものをさらに誘発して大きな社会問題としたというふうに言われております。  ただいま御指摘になりましたいじめに対する反応でも、日本ではそっと慰める、見て見ぬふりをするというのが非常に多いのに対し、アメリカではとめに入るというものが三九・一%あって、日本の倍にもなっておるということは、つまり日本の場合、周囲の人がこれを見逃して、そうして自分に降りかからないと黙って知らぬふりをしている傾向が強いということを非常に端的にあらわしているものと思われます。  私どもはこういったことが改まらない限り、いじめというものはなくならないという認識に立って現在いじめの問題と取り組んでおるわけでありまして、父兄や生徒に対しましてもまた周囲の地域住民に対しましても、いじめを見たときにはそれをそのまま放置しないで、それを取り上げてその解消のためにみんなで努力をしていこうという呼びかけをしてまいっておるのも、ただいま申し上げました風潮に対しましてこれを改めたいという強い希望を持っておるからでございます。
  161. 林田英樹

    説明員(林田英樹君) いじめの態様やこれに対します対応というものが国際的にいろいろ差があるということでございますけれども、この背景がどうかという御質問でございますけれども社会や文化のあり方に深くかかわっていることと思われますので、簡単には私どもとしまして断定しかねるわけでございますけれども、いずれにいたしましても、日本におきまして御指摘のございましたように、いじめを見た者のうちこれをとめに入る者が少ないということは私どもとしましても重大な問題であると考えておるわけでございます、  先ほど申しました、文部省でお願いしております検討会議の緊急提言におきましても、学校全体に正義を行き渡らせ、「いじめを見てもそれをはやしたり、見て見ぬふりをする傍観者的存在をなくし、正義と勇気に目覚めさせることが肝要である。」ということが指摘されております。文部省としましても学校教育全体を通じて提言の指摘が生かされるように今後指導してまいりたいと思っております。
  162. 田代富士男

    田代富士男君 次に、体罰の問題に質問を移りたいと思いますが、最初に報道によりますと、昨日山梨県の富士吉田の県立高校で、体育教師の体罰によりまして女子高生が重傷で入院していたことが明らかになっております。しかもこの体罰には、テニスラケットの柄の方で殴られた傷害であることが明らかになりまして、行き過ぎではないか、これはテレビでもニュースとして言われておりましたけれども、この担当の先生が今鳥取の国体に行っているということで、この真相が詳しく聞かれないというような現在の状況でございますけれども、一番最初にいじめの問題のこの問題を御質問しましたけれども、この体罰事件に対しまして、法務大臣としていかに受けとめていらっしゃるのか、まず最初にお聞かせいただきたいと思います。
  163. 嶋崎均

    国務大臣嶋崎均君) 具体的のお話につきましては、けさの新聞に出ておるところでございますけれども、学校の中で児童生徒が傷害を受けるというようなことというのはあってならないことでありますし、またそういう体罰規定というようなことにつきましては禁止をされておるというような現実もあるわけでございます、したがいまして、そういうことがないようにぜひ対処をしていただきたいと思いますし、我々の方としましてはそういう事案が出てきました場合には、具体的な案件につきましてよく検討さしていただいて、的確な対処をしなきゃならぬというふうに思っております。
  164. 田代富士男

    田代富士男君 ことしの六月の五日、法務局の人権擁護部長合同会議の席上におきまして、人権擁護局長から学校における教職員の体罰がいじめに深い影響を与えている旨指摘されたようでございますけれども、どのような内容であったのか御説明をいただきたい。それと同時に、この体罰が児童生徒のいじめにどのような影響を及ぼしておるのか、この問題とあわせてお答えをいただきたいと思います。
  165. 野崎幸雄

    政府委員(野崎幸雄君) 体罰につきましては、学校教育法十一条がこれを厳に禁じておるところでございます。私どもは体罰はいかなる場合にも許されないんだということで、これまで体罰事件人権侵犯事件として取り上げ、適正に処理をしてまいりました。しかしながら、体罰につきましては最近ますます新聞紙上をにぎわすようになりまして、体罰というものがより広く横行しておるように思われます。私どもといたしましては、これを重大な人権侵害であると考え、今後とも人権侵犯事件として取り扱ってまいりたい、かように考えておるところでございます。  ところで、去る六月五日開かれました法務局の人権擁護部長会同の席でも、いじめの問題と絡んで体罰の問題が議論されました。御承知のように、先生が法に違反する体罰をやっておいて、生徒にいじめをやめろと言ってもそれは無理ではないか、あるいは体罰のやり方によっては、体罰のあり方が時にはいじめ以上に陰湿なものがあるではないかといった指摘が、これまでも多くなされてきたことは委員も御承知のとおりであります、  私どももこれまでの体罰事件をいろいろ検討してみましたが、体罰というものはだんだんエスカレートしていく傾向があるのでありまして、果たしてその内容が教育的効果を持つのであろうかというふうに首をかしげざるを得ない事件もたくさんございます、例えば、忘れ物の多い小学校の子供に、担任の教師が赤色のフェルトペンで現金袋とほっぺたに書いて家に帰らせた。あるいは後片づけをしない小学校の三年の子供に、罰としてズボンとパンツをひざまでおろさせて授業を受けさせた。あるいは小学校四年の担任の先生が、忘れ物を繰り返す児童に、懲罰としてみんなでぬれぞうきんをぶつけることを提案して、それを実行した。その場合には、子供の中から、それはやめた方がいいんじゃないかということを言っておるのにもかかわらず、それをあえて敢行しておるといったような事例が見られるのでありまして、これらは果たして教育的効果を上げるためになされたのかどうかということになると極めて疑問なのでありまして、むしろその内容は陰湿で徹底的でいじめと酷似をしておると言わざるを得ないわけであります。  その会同における議論におきましては、これらの例が挙げられまして、やはり体罰というものがいじめに影を落としておるという議論を否定し去ることは難しいのではないかというふうに皆が考えたことでございました。
  166. 田代富士男

    田代富士男君 今御答弁がありましたとおりに、学校教育法第十一条には、「体罰を加えることはできない」と、このように定められておりますけれども、現実にはこれが横行していると今もお話がありましたとおりでございまして、そこで、茨城大学の今橋教授が五十八年に行われたアンケートによりますと、対象の大学一年生でございましたが、これらの人々が小学校から高校までの間に体罰を受けたことがないと言った学生はわずか三%であったという、こういう数字がアンケート調査の結果出ております。  今、御答弁法務省からもありましたとおりに、文部省といたしましても、このような体罰の実情を把握する必要があるのではないかと思いますけれども、いかがでございますか。
  167. 林田英樹

    説明員(林田英樹君) 御指摘のように、体罰が法律で禁止されていることは事実でございます。私どもといたしましても、この点につきましては繰り返し指導を通じまして徹底を図ってきたところでございまして、本年六月二十九日に初等中等教育局長通知を発しまして、体罰の根絶について指導をしたところでございます。  体罰の実態ということでございますけれども、文部省といたしましては、従来から体罰により処分されました教員数や問題となった体罰事件についての調査を行ってきたところでございますけれども、今後とも教育委員会等を通じまして、体罰の実態をできるだけ把握に努めてまいるとともに、体罰が行われることのないよう指導の充実に努めてまいりたいと思っております。
  168. 田代富士男

    田代富士男君 先週、日弁連が「学校生活と子ども人権」と題する報告書を出しておりますけれども、その中で、全国の公立の中学校、高等学校の体罰の事例報告されております。私も目を通しましたが、その中で、もう御承知かと思いますが、ある母親の手記として、「教師が、理由があるから体罰を加えるという考えは、子どもにも理由がある時には、暴力も許されると教えている事にならないでしょうか。」との叫びがありましたけれども、このような叫びを、文部省としてこのような報告書をどのように受けとめていらっしゃるのか、今も体罰を把握して、ないように指導していくと言われますけれども、これは悲痛な叫びでありますけれども、いかがですか。
  169. 林田英樹

    説明員(林田英樹君) 日本弁護士連合会の報告書にあらわれておりますような体罰が実際に行われているといたしますと、私どもとしてまことに遺憾なことだと思います、今後とも、体罰の根絶につきまして、指導の充実を図ってまいるつもりでございます。この明後日には、文部省といたしまして、特にいじめの問題を中心にいたしまして各都道府県の生徒指導の担当主管課長会議を緊急に招集いたしたわけでございまして、この会議の席におきましても、体罰の根絶に向けてのお取り組みを一層進めていただくように特にお願いをいたしたいと思っております。
  170. 田代富士男

    田代富士男君 この子供のいじめと体罰との相関関係は、ストレートには言えないのではないかと思いますけれども、しかしこれは根絶しなくちゃならない。今も御答弁の中に、根絶していく根絶していくということでございますけれども、さらに具体的に、そこまでは我々も理解をいたしますけれども、具体的にどうするのか、今まで、文部省として余りそういう措置が取り上げられてない面を私はいろいろな立場から提示いたしましたけれども、具体的にはどうするのか。一歩突っ込んだお答えをいただきたいと思います。
  171. 林田英樹

    説明員(林田英樹君) 体罰の根絶のためには、各種の指導体制が一致協力して体罰の禁止の趣旨を教員に十分周知させますとともに、本来の生徒指導の充実を図るということが肝要であるわけでございまして、私どもといたしましても、あらゆる機会をとらえまして、体罰の根絶に向けて取り組みを進めておるわけでございます。先ほど申しました初中局長の通知で、この点を特に強調いたしたわけでございますし、さらに予定しております生徒指導主管課長会議におきましても、この点特に強調いたしまして指導をお願いするつもりにしております、特に、各都道府県におきます実態の把握の努力ということを一層やっていただくような形をお願いをしたいと思っております。  具体的に、今回の会議でどういう指導のやり方をお願いするか、現在鋭意検討中でございますけれども、この点につきましては従来より一歩踏み込んだ形のお願いを何らかの形でできないかということで、現在検討中でございます。  さらにまた、中学校の特に校長先生方にも、ぜひこの点については職員の指導をお願いをしたいと思っておるところでございまして、さきの十月の十七、十八日に山形で開かれました全日本中学校長会の大会があったわけでございますけれども、このような場所へも私も参りまして、この点につきまして改めまして校長先生方にも一層の指導をお願いをいたしたわけでございます。  このような各種の指導を総合いたしまして、体罰が根絶に向かいますよう、引き続き努力をしてまいりたいと思っております。
  172. 田代富士男

    田代富士男君 それで本当に解決できるだろうかと、私は疑問を持たざるを得ません、しかし、質問の時間がありますから次へ移ります、  五月の五日、警視庁ではいじめ相談コーナーを開設されまして、二カ月間で北海道から九州まで、八百四十六件の相談があったと報じられておりますけれども、この九月の警察庁の調査結果などを見てみますと、いじめの場所というのが圧倒的に学校内が多いという、これは一つの特色じゃないかと思うんです。それと、いじめられた子供の対応は、だれにも話さずじっと我慢していたというのが一番でありまして、保護者に相談、そして三番目に教師に相談と。教師への相談率が低い感じがするわけでございますけれども、これはなぜかと。また、けさのテレビでもやっておりましたが、学校の先生が何もしてくれなかった、これが四。四%あったというようなデータもちょっとけさのテレビで見たところでございますけれども、このような結果をどのように受けとめていらっしゃるのか、これは、警察庁と文部省からお聞きしたいと思います。
  173. 伊藤一実

    説明員(伊藤一実君) 先生方への相談が少ない理由につきまして御質問でございますけれども、警察の立場からお答えするのは適切かどうかわかりませんが、とりあえず私どもの調査は事件や自殺に至るというひどいいじめを受けていた少年がどのような対応をしていたかということでございますので、いじめられている少年の一般的な対応と言えるかどうか必ずしも明らかではないということをひとつ御理解をいただきたいと思います。  そこで、調査結果から見ますと、いじめられている少年がだれにも相談に行けずに、いじめている少年たちがだれにもその非を指摘されずに、あるいはまたたとえ注意されても通り一遍のもので真に反省させられることがないということが、さらにいじめを執拗なものにしているという面もあろうかと思われます。他方、少年たちの間ではいじめられていることを保護者とか先生に話すと、いわゆる彼らの仲間の言葉でちくった、要するに密告したということでより一層ひどいいじめを受けるということもあるようでございます。したがいまして、学校の先生方だけでなく保護者を初めとして、少年の身近にいる大人がいじめについての相談を受けるということがなかなか難しい状況にあるんではないかとも私ども考えております。いずれにいたしましても、学校の先生とか保護者等、少年の周りにいる私ども大人が一人一人の少年の日常の活動を常に注意深く観察して、いじめを認知したときには相互に連携、協力する。一方、だれからいじめのことを知ったかを秘匿するなどの事案の内容に応じた適切な対応を行うことによりまして、以後のいじめを何とか解消することが一番重要ではないかというふうに考えております。
  174. 林田英樹

    説明員(林田英樹君) 何と申しましても、教師児童生徒に慈善的に接しまして生徒の理解を図ることにより、児童生徒との間に信頼関係を築くことが、児童生徒が気軽に教師に対し相談するため必要なことであると思います。この点におきます学校の取り組みに十分でない点があったものと考えます。さらにまた、教師の対応の未熟さが指摘されてもやむを得ないものと思っております。文部省としては従来から教師向けの指導資料の作成でございますとか、毎年一万人以上に上ります教育相談担当教員の研修というようなことを通じまして、学校における教育相談体制の充実に努めてきたところでございますけれども、さらに二十五日に開催することを予定しております生徒指導主管課長会議におきましては、今後さらに学校全体としての取り組みや教育委員会の指導の充実等につきまして、一層充実を図るよう具体的な点検項目をお示しして、指導体制の総点検をお願いするということを通じまして、一層の充実を図ってまいりたいと思っております。
  175. 田代富士男

    田代富士男君 文部省といたしまして今まで以上に教職員が子供や母親から相談を受けやすいようにするために具体的にどうすればよいか、例えば中曽根総理が今アメリカを訪問しまして、ニューヨークで小学校を視察しております。二十人学級であると、これは参考にしなければならないというようなことが報道されております。そのように一人一人と直接そういうような触れ合いができるような、そういう環境づくりをするというのも一つでありましょう、これは一度にはいかないかわかりません。そういうことも本当に検討しなくちゃならないし、今御答弁もありますとおりに、先生のやる気も必要でありますし、またこのような相談コーナーを学校内に設けるというような具体的なやり方をしなくちゃならないと思いますが、いかがですか。
  176. 林田英樹

    説明員(林田英樹君) 御指摘のように、いずれにしましても本来の生徒指導の充実を図るということが基本でございます。おっしゃいましたように学級編成を含めます教育諸条件の整備ということも必要であろうかと思いますし、教師にカウンセリングマインドなどを持たせます、かつまた、児童生徒の理解に立った指導を徹底するというふうなことも必要でございます。さらにまた、学校内におきます教育相談を受ける体制、やり方はいろいろあろうかと思いますけれども、いずれにいたしましても、学校内における教育相談を受ける体制というのは、もっと学校全体として見直しをしてほしいというふうに思っているわけでございまして、そういう点につきまして今回も二十五日の会議でもぜひ徹底を図りたいと思っておるところでございます。
  177. 田代富士男

    田代富士男君 この教育相談所の問題でございますけれども、御承知のとおりにこの利用率が非常に低い。なぜそのように教育相談所の利用率が低いのか、その低い理由はどこにあるとお考えになっているのか、あるいはその対応を今後どのようにするかという、こういうことに対してお考えを聞かしていただきたいと思いますし、去る六月二十九日には、初中局長通知で学校や教育委員会においていじめによる悩みを相談できる教育相談窓口の整備を要請されましたけれども、窓口新設は一部だけ実施されているというような実態です。私がお聞きしたのでは熊本県だけではなかったかと思いまして、このような文部省からの通知も空回りしているように思いますけれども、現在までの学校や教育委員会の対応の状況、今後の対応、あわせてお聞かせいただきたいと思います。
  178. 林田英樹

    説明員(林田英樹君) 教育相談の体制でございますが、現在教育委員会関係で教育相談を受けております機関といたしましては教育センター、それから青少年センター、巡回教育相談事業というようなものが行われておるわけでございまして、これらの相談窓口で実際相談を受けておる者の数は二十万件を超えるというふうな実態にあるわけでございまして、私どもといたしましては教育関係の教育相談も相当活動しておると思ってはおるわけでございます、しかしながら、このような教育相談の窓口が必ずしも一般に広く知られていないという面があることも事実でございますので、文部省として今後特に周知を図りたいと、こういう面での周知を図るような事業活動を進めていく努力をいたしたいと思っております。  さらに、文部省の通知以降の各県の措置でございますけれども、これにつきましては各都道府県で必ずしも窓口の新設というような形でこたえたところは少ないと思いますけれども、それぞれの県におきまして各種の教育相談機能の充実ということが努力をされておるところでございます。  文部省といたしましても、文部省の通知以降の各県の具体的な取り組みがどのようになっておるかということの把握をする必要があると思っておりますので、この点につきましても明後日どのような事業が行われたか具体的に調査項目を示しまして、調査の回答をお願いするということにしております、このようなことを通じまして教育相談機能の充実に今後とも努めてまいりたいと思っております。
  179. 田代富士男

    田代富士男君 臨教審の第三部会はいじめ問題でその考え方をまとめました。その中で、相談窓口につきましては既存の相談窓口が利用しにくいので半官半民の団体をつくるなど、また女性のボランティアによるソフトな窓口をつくることを提案するようになっておりますけれども、相談窓口が利用されやすいようにするための提案でございますけれども、文部省としてどのようにお考えでございましょうか。
  180. 林田英樹

    説明員(林田英樹君) 教育相談の窓口が利用しやすいものになるという必要は、私どもも認識しておるわけでございますし、文部省の先般の緊急提言や通知においても、特にこの点を強調しておるところでございますが、特に父母や子供が利用しやすいものといたしますためには、今後教育相談機関の存在や機能につきまして積極的なPR活動を行うということ、それから巡回教育相談、これは文部省の予算をもちまして補助事業として二十五都道府県につきまして実施をしておるわけでございますけれども、こういう外部の教育相談の専門家によります教育相談も実施するというふうなこと、それから教育相談員にはカウンセリングにつきまして専門家を配置するというふうなこと、こういうことが必要であろうかと思います。さらにまた、基本的には学校におきまして教育相談の充実を図るというのが一番大切なことであろうかと思うわけですけれども、この点につきましても教師と父母、児童生徒の信頼関係をより深くする、素直に悩みを打ち明けるような人間関係を形成していくというふうな努力が必要であろうかと思っております、この点につきましても今後一層指導してまいりたいと思っております。
  181. 田代富士男

    田代富士男君 いじめ問題の多種多様性や、また一部の事例に見られますように学校ぐるみ、地域ぐるみの臭い物にはふたをというようなこういう式の対応などもあることも事実でございまして、相談窓口を多元化しておくことは必要であると思うのでございます。  それと同時に、学校、警察、法務省などが行う相談窓口など種々の対策におきまして大事なことは、私一番最初にも質問をいたしましたけれども、相互の密接な連携がなければいじめの問題解決の有効な対策をとり得ることはできないと思うわけなんです。そういうわけで、これは今明示いたしました省庁だけでなくして、政府間におきましてその調整役をやっている総務庁の立場というものは非常に大事になってまいりますし、総務庁といたしまして、二十一世紀の日本を背負っていくべきそういうような子供の問題でもありますから、どのようにお考えになっているのか、総務庁のお考えをお聞きしたいと思います。
  182. 金沢章夫

    説明員(金沢章夫君) 総務庁の青少年対策本部の方から御説明申し上げます。  少年相談の窓口につきましては関係省庁におきましてそれぞれ設置、運用に当たっておりまして、これらの相談窓口が相互に連携をしながら、より有効な機能を発揮することが必要と考えておりまして、総務庁といたしましては従来から都道府県の主管課長会議等を通じまして連絡体制づくりを指導してまいってきております。今後この相談窓口の相互連携につきましてさらに強化するため関係省庁と協議いたしまして、相談窓口の効果的な連絡体制づくりについて検討を行うなど所要の措置を推進してまいりたいと考えております。
  183. 田代富士男

    田代富士男君 いじめの問題あるいは体罰の問題について質問をしてまいりましたが、特にいじめの問題は文部省の検討会議の緊急提言が指摘されたごとく、その背景には学校の指導のあり方、家庭におけるしつけの問題、社会的風潮、またこのように学校、家庭、社会、それぞれの要因というものが複雑に絡み合っているのであって、そういうところからも我々は目を離すわけにはいかないのでございます。それと同時にまた、物質的な豊かさの中で我々大人自身が他人を思いやるといった心の豊かさを見失いがちな今日の社会ではないかと思うんです、そういう風潮や都市化の進行によりまして連帯感の希薄化などが介在している、こういうような複合的な原因であることは間違いありません。それは端的に言うならば日本社会人権意識の貧しさを物語っているとも言えるのではないかと思うのでございます、そのあらわれがテレビ朝日のやらせリンチ事件が如実に物語っているのではないかと私はそのように痛感をしておりますが、来るべき二十一世紀が弱者に対する人権を無視するような、また生命尊厳の荒廃した社会とならないよう、学校、地域、マスコミなど各般の人々が手を組みまして、いじめや体罰のこういう問題解決に当たるべきであると思いますが、行政はともに一体となって解決実現のために手だてを用意すべきであると思いますし、これらの問題に対する基本的見解と今後の取り組みにつきまして御出席の法務大臣にお答えをいただきたいと思います。
  184. 嶋崎均

    国務大臣嶋崎均君) ただいま田代委員からお話がありましたように、法務省としては人権擁護関係の仕事を分担をし、特にその普及的な役割を担って仕事をしておるわけでございまして、今後とも御指摘のような考え方でその充実に努めてまいらなければならないというふうに思っておるわけでございます。しかし、御指摘のように非常に多様化した社会で、そのいじめというようなことの内容も非常に複雑なものになっておるように思うのでございます。そういう意味で、基本的には学校が中心であろうと思いますけれども、やはりそれを支えておる他人に対する思いやりというんですか、悪いところを指摘をするのじゃなしにいいところを引き上げるというようなそういう感覚で、人権擁護の立場から考えてもそういうことがぜひとも必要なことであろうと私は思っておるわけでございます。したがいまして、今後とも法務省としてもこのいじめ問題ということをずっと後づけをして整理が進むように努力をしてまいりたいと思っておる次第でございます。
  185. 田代富士男

    田代富士男君 次に、裁判記録の保存につきまして質問をいたします。  この裁判記録の保存の問題につきまして法務大臣は去る四月十日衆議院の法務委員会で立法化に努力すると、このような答弁をされておりますけれども、その決意はお変わりないのか、進捗状況はどうであるか、まずお答えいただきたいと思います。
  186. 嶋崎均

    国務大臣嶋崎均君) 御指摘のように、この裁判記録の保存の問題につきましてはぜひとも早期に刑事訴訟記録の保管に関する法律を整備をしたいという考え方をとっておるわけでございます。そんな立場から事務当局に対しましても、いろいろ諸外国での保存の状態というものがどういうような形になっておるか、また国内的にもそういうことの整備を進めていくために必要な調査なり検討なりをぜひ早期に進めていただきたいということとともに、関係機関との協議を十分やりまして、できるだけ問題を早目に煮詰めましてぜひとも立法化を進めたいというふうに考えておる次第でございます、
  187. 田代富士男

    田代富士男君 既に指摘をいたしましたが、この記録の保管のためにあるべき法律というの点、御承知のとおりに刑訴法制定後三十六年を経過するもいまだに存在しないわけでございまして、制定されない理由をもうちょっと詳しくお聞かせいただけたらと思います。
  188. 筧榮一

    政府委員筧榮一君) 御指摘のように現行刑事訴訟法が制定された当時からの問題でございます。制定当時にこの法律についても検討はされたようでございますけれども、その際に、やはりその保管すべき機関について従来のいきさつ等もございますので、関係機関の間で意見の調整を図る必要があったということ、それから新刑事訴訟法の施行でございますので、各訴訟記録の保存期間についてやはり新法の相当期間の運用実績を見た上で、どういうものについてはどれぐらいの保存期間にするかというようなことを法律で定めるのが妥当であるというようなことから、法律制定に至らなかったというふうに承知いたしております。  その後私どもといたしましても、この法律に定められております法律の制定につきまして検討を続けてきておるところでございますが、やはりその保存機関、これをどこにするかという問題、あるいは保管方法をどのようにするか、原本を保管すると膨大になりますが、その場合にどの程度のものをマイクロ化することがいいか悪いかというような点、あるいは個々の訴訟の記録の内容に応じまして保存期間をどの程度にするのが妥当であるかというような多くの問題がございまして、現在まで慎重に検討を続けてきたというのが実情でございます。今大臣からお話もございましたように、四月十日の法務委員会で私どもも申し上げましたように早急に立法を図るという考えを固めまして、現在関係機関との調整あるいは諸外国の立法の調査を鋭意続けておるところでございまして、できるだけ早期にその立法化を図りたいと考えておる次第でございます。
  189. 田代富士男

    田代富士男君 法務省はこの訴訟記録保存に関する法律の立案作業中であるということでございますが、そのために種々の調査検討を行っていらっしゃるわけでありますけれども、まず諸外国におきます事件終結後の記録保存に関する法制というのはどうなっているのか、また閲覧に関する 法制はどうなっているのか、現在までにわかっている限りで結構でございますからお答えいただきたいと思います。
  190. 筧榮一

    政府委員筧榮一君) 現在調査中でございますのでまだ詳細にはお答えできないわけでございますが、オランダ、イギリスあるいは西独等につきまして現在承知している限りで申し上げますと、まず西ドイツにおきましては、司法大臣会議決議、連邦司法大臣と各州の司法大臣会議だと思いますが、そこの決議によって保存期間が定められております、無期刑の言い渡された事件の訴訟記録は永久保存、御承知のように西独は死刑がございません、無期刑の場合は永久保存、その他の記録はその性質、事件の軽重等に従いまして三十年以下の範囲でそれぞれに保存期間が定められており、当該訴訟記録は検事局が保管しているという実情でございますしまた閲覧につきましては、犯人の更生あるいは関係者のプライバシー保護の観点から、閲覧について正当な理由が認められる場合に限り弁護士に対して原則として特定部分に限定して閲覧を認めているというふうに承知いたしております。  次にオランダでございますが、これは司法省の取扱準則によって一年を超える自由刑の言い渡しのあった事件の訴訟記録は永久保存とされております。その他の訴訟記録は西ドイツ同様三十年以下の期間で事件に応じて保存期間が定められております、閲覧についてはやはり西ドイツ同様に正当な理由のある者に限って閲覧を認めておるわけですが、オランダでは百年を経過したときは一般公開というふうに定められておるようでございます。  イギリスにおきましては裁判所の取扱準則によりまして訴訟記録の保存が定められておりますけれども、起訴状等の基本的な書類は永久保存されるわけでありますが、証拠書類等は特に重要な事件や資料的価値のあるものを除きその性質に応じて期間が定められており、そしてその訴訟記録は裁判所が保管しておるということでございます。閲覧につきましては正当な利害関係を有する者に限って認められるというのが原則でございまして、訴訟記録の情報の開示については種々の制限が設けられているようでございます。永久保存される記録につきましては三十年を経過したときは一般に公開され得るわけですが、関係人の保護のために必要があるときは右の期間を延長できるとされているというふうに承知いたしております。  その他の国については現在調査中でございます。
  191. 田代富士男

    田代富士男君 では、現在刑事訴訟記録は事件終結後どのように利用されているのか、お答えいただきたいと思います。
  192. 筧榮一

    政府委員筧榮一君) 刑事訴訟記録は事件が終結をいたしました後には、主として裁判の執行その他検察官の事務の円滑適正な遂行の確保のために利用されているわけでございます。具体的に申し上げますと、まず懲役、禁錮等の自由刑あるいは罰金等の財産刑の執行、すなわち裁判の執行はこれは検察官の指揮命令によって行うこととされておりますので、検察官が訴訟記録を利用して指揮命令を行う。これはもちろんのことでございますが、そのほかに検察官の権限とされております自由刑の執行停止の指揮、あるいは執行猶予の取り消し請求、あるいは仮出獄等の意見提出、あるいは恩赦の上申、それから判決原本への恩赦の付記、それから当該事件の証拠品の処分、犯歴事務、これら検察官の仕事のために確定後も相当長期間刑事訴訟記録を利用しているところでございます。それに加えまして、刑事訴訟法五十三条に基づきまして閲覧の申し出があったときには、同条の制限事由に該当する場合を除いては閲覧に供していることはもちろんでございます。
  193. 田代富士男

    田代富士男君 現行の刑訴法五十三条一項は、確定後の訴訟記録につきましてだれでも訴訟記録を閲覧することができるとするとともに、一定の場合には閲覧を制限することができるともしているところでありますけれども、訴訟記録を将来の長きにわたりまして一般公開するときは、刑の言い渡しを受けた者の更生の妨げになったりあるいは事件関係者の名誉やプライバシーを傷つけたりすることにもなりかねない面もございますから、この立法に当たりましては、そのような点についても配慮していく必要があるのではないかと思いますけれども、お考えを聞かせていただきたいと思います。
  194. 筧榮一

    政府委員筧榮一君) 現在の刑事訴訟法五十三条一項によりますと、「何人も、被告事件の終結後、訴訟記録を閲覧することができる。」と定められております。他方、この訴訟記録中には生の証拠書類そのものを含んでおりますため、無制限の閲覧を許した場合には公序良俗に反する、あるいは犯人の更生を妨げ、あるいは関係人の名誉、プライバシーを侵害するなど不当な結果を招来することとなる場合もあり得るわけでございます。そこで同条の二項では、「一般の閲覧に適しないものとしてその閲覧が禁止された訴訟記録」等については訴訟関係人等でなければ閲覧することはできないと定めて、一般的な公開を制限しているところでございます。  実際の現実の実務の運用におきましても、例えば犯行が極めて巧妙であるというような理由から、それを閲覧させることにより模倣を生むおそれの顕著な事件の記録、あるいは犯行が残忍またはわいせつなどの事由によって公開が善良の風俗に反すると認められる事件の記録、あるいは閲覧に供することにより犯人の更生を妨げる、あるいは関係者の名誉、プライバシーを著しく害するというようなおそれのある事件の記録につきましては一般の閲覧に適しないということで、訴訟関係人または閲覧につき正当な理由のある者以外の者には閲覧を制限する扱いをしておりまして、委員指摘の犯人の更生と関係者のプライバシーの保護には十分な配慮を加えているところでございます。今後の立法に当たりましても、この趣旨を十分踏まえつつ、御指摘の点について遺憾のないように十分に配慮を加えるつもりでございます。
  195. 田代富士男

    田代富士男君 最後の質問でございますが、刑訴法の五十二条四項に規定しました記録保管のための法律が、現在までその立法化がなされてなかったのはまことに遺憾に思うのでございます。そのために制度上不備な点やあいまいな点があると思われるところでありますし、これらの点を解決するためにも早急な立法が望まれるのでございます、その際私は、次の点を考慮する必要があると思いますし、当局見解をお伺いしたいと思います。  まず、訴訟記録は当該事件の重要な記録であるばかりでなく、特に社会を揺るがし大きな話題となった事件におきましては、その時代の世相を刻んでいく重要な文化遺産としての側面も持っていると思うのでございます。このような資料については別途方法を講じて、例えば学者等を含む保存のための委員会などを特に指定いたしまして、永久保存を図るべきではないかと思うのでございますし、さらにこの訴訟記録は特に冤罪、再審審査などにおいては保存期間経過後でも必要になる場合もあると思うのでありますから、したがって、何らかの基準を設け、特別保存規定を入れるべきではないかと思うんですが、これに対する見解をお聞かせいただきまして、私の質問を終わりたいと思います。
  196. 筧榮一

    政府委員筧榮一君) まず御指摘の第一点でございますが、刑事事件の訴訟記録の中には、犯罪史上顕著な事件あるいは社会の耳目を引いた事件、あるいは犯罪捜査上特に将来の参考となる事件の記録などのように、当該事件の性質、内容等にかんがみまして刑事法制あるいは刑事司法関係制度及び犯罪情勢の調査研究、その他刑事政策の調査研究の資料として保存するのが適当なものがあることは言うまでもないところであります、このような記録につきましては現在でも刑事参考記録として長期間保存しているところでございます。御指摘の点も十分考えまして今後の立法作業に当たっては十分に配慮し、検討いたしたいと思っております。  それから第二点でございますが、現行の運用におきましても、一定の定められております保存期間が満了した場合でも、必要があると認められる場合にはこの期間を超えて保存すべきものとして、期間が来れば機械的に廃棄するというような形式的な処理をしないよう配慮をいたしておるわけでございます。例えば再審請求がある場合はもちろん、あるいは再審請求が確定的に予想されるような場合は、保存期間が満了後においてもこれを直ちに廃棄することのないような取り扱いを現実にいたしておるわけでございます。今後の立法に当たりましても、この点も十分配慮いたして立法に当たりたいというふうに考えております。
  197. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 豊田商事問題から質問をいたします。  まず、現在大阪地検を中心に進められている豊田商事に対する捜査状況について説明を願いたいと思います。どのような容疑、捜査はいつごろ終結をする見通しか御説明ください。
  198. 筧榮一

    政府委員筧榮一君) 豊田商事の関係で御指摘の大阪地検における関係を申し上げたいと思います。  まず豊田商事、それからその関連会社として鹿島商事というのがございます。これを合わせまして、豊田商事あるいは鹿島商事のその商い方法が詐欺に当たる、あるいは出資法違反、預かり金に該当するという趣旨の告訴、告発が現在まで大阪地検に十件なされておりまして、現在これは捜査中でございます。  そのほかといたしましては、豊田商事関係者による強制執行不正見脱事件につきまして警察から役員、従業員等五名の送致を受けまして、本年八月七日にうち二名、銀河計画の副社長薮内博と同社の専務取締役山元博美、この二名を大阪地裁に起訴いたしました。その余の三名につきましては不起訴処分としております。この二名の起訴した公訴事実の要旨は、御承知のように、被告人らは共謀の上、豊田商事の預金口座に対する強制執行を免れる目的をもって、昭和六十年六月三日、新たに個人名義の別口座を設け、以後豊田商事各支店からの送金をこの口座あてにさせるなどして合計九億二千八百六十一万円余りを隠匿したという事実でございます。この事実は現在公判係属中でございます。  最初に申し上げました告訴、告発十件につきましては現在鋭意捜査中でございます。
  199. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 捜査の開始以来既に一年半余を経過をしているのに、いまだ結論が出ないというのは極めて納得ができません。  ここに御存じの昭和六十年六月二十七日、秋田地裁本荘支部及び六十年七月十九日、名古屋地裁における豊田商事を相手取って詐欺、出資法違反による不法行為に対する損害賠償を請求した事件の判決文があります。裁判所はいずれも原告の主張を認め、原告勝訴、損害賠償の支払いを命じています。そしてどちらも金の現物まがい商法の異常さを詳しく解明して、出資法及び公序良俗に違反するとし、名古屋判決は詐欺罪にも当たるとしています。  もちろん、これらは民事事件ではありますが、刑事訴追を進めていく上でも十分参考に値する重要な資料価値を持つものである。法務省、検察としてはこれらの判決を重要な参考として捜査に当たっていく意思はあるんでしょうか、
  200. 筧榮一

    政府委員筧榮一君) 御指摘の秋田地裁の本荘支部の判決あるいは名古屋の判決は私ども承知しておりますし、検察当局においても十分承知していると思います。このような判断がなされたことも参考としながら現在も捜査を進めているものと考えております。
  201. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 そこで、この豊田商事問題については、我が党は既に昭和五十六年から取り上げてきました。国会でも五十七年以来議論に上り、その詐欺的商法が名指しで追及されてきたにもかかわらず、政府が的確な対応をせず、結局、今日全国では被害者総数一万五千三百七十二名、被害総額一千百十七億円、ことしの八月現在でありますが、ここに達するまで事件が放置をされてきたわけであります。特に重大なのは、警察、検察ともに被害者の詐欺の訴えを容易に受理せず、社会的に大問題になって初めて捜査に着手をしたということであります。  去る九月の二十一日、宮城県警は宮城県内の被害者百八十七名から出されました詐欺、出資法違反の告訴状の受理を拒否した、こういう大きな報道がありますが、警察庁、これは事実でしょうか。
  202. 国松孝次

    説明員(国松孝次君) お答えをいたします。  豊田商事に対する詐欺罪等の告訴は、既に大阪府警など数府県警察で既に受理をいたしまして、現在捜査中のところでございます。  お尋ねの宮城県警察における被害者からの告訴につきましても同県警察で告訴相談を受けまして、現在これを受理する方向で被害者側と対応しているところでございます。
  203. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 その後の関係者からの抗議、また私が質問通告をするということをやる中でいろいろ思案をされたんでありましょう。宮城におけるこういった不当な態度を是正をするということは出かかっています。しかし、少なくとも九月二十一日の段階では告訴状の受理を拒否をするという例のない、新聞の書き方でも異例の事態だと、こういうことが起こったわけでありますし、しかも県警側は警察庁東北管区警察局と相談の上受理をしないことにしたんだ、こういう発言をして、大変事は紛糾したわけであります。これは同行した弁護士からきのうも私が直接確かめたことでありますから、こういう発言がされておるということは事実。警察庁は一体受理するなという指導をしたんですか。
  204. 国松孝次

    説明員(国松孝次君) そのような指導をいたした事実はございません。警察は申すまでもないことでございますが、刑事訴訟法に基づく告訴、告発がなされた場合には必要な手続をとり、所要の捜査を行いまして検察庁に送付することをもって基本方針としているところでございます。
  205. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 そうしますと、なお確認をしておきますが、今後とも警察庁として告発状の受理をするなというような指導は絶対にしないということでここで確認できますね。
  206. 国松孝次

    説明員(国松孝次君) 告訴、告発を受ける場合、もちろん機械的にこれを受理するというようなことではございませんで、それぞれの告訴要件等を検討の上受理するかどうかを決めておるというのが実務のやり方でございます。今後各県でいろいろ告訴、告発がもしあります場合につきましても、そのような方針にのっとりまして具体的な事案に即して対処してまいりたいと思っております。
  207. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 しかし、後半言われたことちょっと気になるんですけれども、告訴状を受理するかどうかに当たって、犯罪の構成要件を完全に立証をする、そういう証拠が全部そろっていないと、これは受理の必要条件を満たしてない、こんな考え方をするわけじゃありませんね。
  208. 国松孝次

    説明員(国松孝次君) そのように考えているわけではございません。
  209. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 いずれにしましても、この宮城県警だけじゃありません。私の地元の京都府警も、正式受理は難しいけれども、とにかくお預りをしておきますという、制度上、受理か不受理しかないんでありますから、預かりという制度はないんでありますから、そういう言い方で対応をしておるそういう事例全国各地にかなりあります。こういう点、ひとつ実情をよくつかんで、警察庁としての誤りなき指導を徹底をしてもらうよう要求をしておきたいと思います。  ところで、政府が豊田商事問題についてもっと早く対策を講じておれば、これほど被害が広がらなかったことは明白であります。にもかかわらず、ただでさえわずかしか残っていない豊田商事の資産の中から、国が社員の所得税源泉徴収の未納分、これを優先して取り上げるなど、そういうまことに人の心も解さないそういう不当な発言に対して、たびたび今日までも抗議が国会の中でも寄せられていることだと思いますけれども、大蔵省こういうことをやめて、被害者の救済に積極的に回すと、こういう方向での検討を始めていますか。
  210. 加藤廣忠

    説明員(加藤廣忠君) お答えいたします。  ただいまの御質問でございますが、国税の債権につきましては、その納税義務を、国税を課税する場合にも、これを免除する場合にも、当然法律の規定に根拠がなければならないわけでございます。国税の免除につきましては、これは免除することができる場合は、例えば災害に納税者が遭った場合の、災害被害者に対する租税の減免、徴収猶予等に関する法律というのがございますが、そういう場合に、災害に遭った年度の税金の全部または一部を免除できるというようなことがございますが、本件のような場合はこれにはもちろん該当しないわけでございまして、あと法律上、免除そのものではございませんが、滞納処分の執行を停止することができるという規定もございますが、この規定に該当するためには、滞納者が法人の場合であれば、滞納処分を執行できる財産が全くないと、こういう客観的事実がある場合には、滞納処分の執行を停止することができるという規定がございますが、本件の場合はもちろん豊田商事には財産がございまして、これを現に差し押さえしておるわけでございまして、いずれも法定の要件に該当しないということで、滞納処分の続行をするというのが我々の責務であるというふうに考えております。
  211. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 先ほども強調したところでありますけれども、早くから国会でもこの問題が議論に上りながら、国としての的確な対応が放置をされてきた、ここまで被害が蔓延をしたということで、国としてのいわば国家賠償責任の責めを負うとも言うべき今日の問題の事態だと思うんです。ですから今のような答弁ではなくて、ひとつ大蔵省として、国として問題の積極的な打開、被害者の救援策を講じていくという方向で引き続き検討をやってもらいたいと思うんです。  そこで、経企庁お尋ねをしますが、今までの国会審議の中で経企庁長官は、生活困窮者に対しては何がしかの対策を考えたいということを言明をしてきたわけでありますけれども、どのような具体策を検討していますか。
  212. 里田武臣

    説明員里田武臣君) 大臣が国会で答弁いたしておりましたのは、豊田商事の被害者の中で生活に困窮するようなことがあった場合には、生活扶助、医療補助というようなことで、現行制度で的確に対応してまいりたい、こういうことを申しておりまして、私どもとしては二つの対応を考えておりますけれども一つ関係の五省庁にそういう処置を的確にとっていただくということをお願いするということと、それからもう一つは消費者の実際に被害に遭った方々に対して相談に応じていくということでやってまいりました。  前者につきましては、私ども六省庁の会議もございますけれども、厚生省にもおいでいただきましてお願いをいたします。それから、直接私どもも都道府県に対してお願いをするということで、これは適切に対応していただいているのではないかというふうに思います。  それから後者につきましては、消費者被害の豊田商事一一〇番という電話相談を受けておりましたけれども、この中でも、生活が困窮した場合には福祉事務所の方に相談に行かれるように、そういう相談をやっておりますし、現在一一〇番はもう終わっておりますけれども、引き続き一般の生活相談の中でそういう対応をさしていただいている次第でございます。
  213. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 現行制度のもとで医療費保障だとか生活保護だとか、こんなことは当たり前のことで、問題は、さっきも言いました国税庁がとにかく所得税源泉徴収の未納分があるということでそれをもう真っ先に取り上げていくと、こういうことも片一方でやろうという、このことをだれも納得をしているものではないわけだけれども、そういうことをやろうというんだったら、せめて何らかの特別措置をこういう被害者の人たちに対して講ずべきではないか。また講じてもらいたいと、こういう意見が強く出ておるということに対してどういう対応をするかという問題だと思うんです。ぜひひとつそういうことで引き続き検討をやってもらいたいと思う。  最後に、法務大臣にお聞きをいたします。  この豊田商事には数人の顧問弁護士がついていろいろと法律指導をしています、法に触れないような指導をするならともかく、実質的には違法なことを外形上はさも違法でないかのごとき指導をやりつつ、そういう装いをしつつ実質的には違法なことの指導をやっている。そこで、彼らが所属をいたします弁護士会から日弁連に対して今懲戒の請求が出ておるところでありますけれども、これはいわば弁護士倫理からいっても当然のことだと思います。この問題について大臣の所見はどうでしょう。
  214. 嶋崎均

    国務大臣嶋崎均君) 弁護士のいろいろな行為が刑罰法令に違反をする、触れているというような場合は、司直によって裁かれることは当然のことであると思うわけでございます。しかし、御承知のように弁護士法上弁護士の指導監督、懲戒の権限というのは弁護士会及び日本弁護士連合会の自治にゆだねられておるというような形をとっておるのでございまして、政府として、現に弁護士会が行っている懲戒手続についていろいろな意見を申し上げるということは遠慮申し上げたいというふうに思っておるわけでございます。一般的に申すならば、弁護士倫理を遵守するよう会員を指導監督し、また弁護士に非違行為があった場合には迅速かつ適正に懲戒処分を行うことは弁護士会及び弁護士連合会に課せられた重大な責任であると思いますので、御指摘案件についても関係の弁護士会においてその責任を果たすべく努力をされていくものであろうというふうに思っておる次第でございます。
  215. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 大臣としても、弁護士倫理は十分大切にされ、貫かれなくちゃならぬという、このことは大いに御同感でしょうね。
  216. 嶋崎均

    国務大臣嶋崎均君) 当然のことだというふうに思っています。
  217. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 それでは次に旧司法研修所の跡地処分問題で質問いたします。  まず法務大臣にお尋ねをしますが、国有財産、国有地の処分については処分の方法がルーズであったり、一部の者の利権が絡むなど、いささかも国民からの疑惑を招くことがないように厳正、民主的に行われなければならないと思いますが、国務大臣の一人としてまずこの点の御所見を聞きます。
  218. 嶋崎均

    国務大臣嶋崎均君) 法務大臣としてお答えするのが適当であるかどうかよくわからぬわけでございますが、言うまでもなく国有地は国民共有の財産であるわけでございます。したがって、それが有効適切に運用まれるということは必要なことであろうというふうに思っておる次第でございます。
  219. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 厳正でなくちゃならぬということは確認をするまでもないと思いますけれども、確認をしておきます。
  220. 嶋崎均

    国務大臣嶋崎均君) 当然そうあらねばならぬと思っています。
  221. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 そこで、今中曽根総理の民間活力論に基づく国有地の切り売りが始まっているわけでありますけれども、まず大蔵省、国有地を管理をしている立場で、お尋ねをします。  大蔵省の今日までの説明では、国有地を売却する場合、本省承認を要するのは、市街化区域の場合二千平米以上、一般入札にかけるものは五千平米以上で、五十九年四月以降、そのうち民間へ売ることを本省として承認したのは六件、これ間違いないと思いますが、その場合、境界未画定のまま売却したケースはあるんですか。
  222. 藤村英樹

    説明員(藤村英樹君) 先生今お尋ねの件数は六件でございますが、この六件のうち、これは五十九年度と本年度の四月から九月までの上半期の合計の数字でございますが、このうちの五件につきましては、それまで過去におきまして実測を行っていなかったために処分時に実測図を作製しております。そのために、結果的に見ますと現隣接地主と境界協議を行ったことになっております。
  223. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 そうすると、隣接地との境界未画定のまま売ったケース。
  224. 藤村英樹

    説明員(藤村英樹君) はい、境界確認はすべて行われているという趣旨でございます。
  225. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 ことしの八月の八日、新聞にも大きく報道されましたように、民活第一号として、私の宿舎のすぐ近く、千代田区の紀尾井町、ここにありました旧司法研修所の跡地六千七百八十六平米、二千五十六坪、これを五百七十五億円、坪二千八百万円で大京観光に落札、売却をした。間違いありませんね。
  226. 藤村英樹

    説明員(藤村英樹君) 先生ただいま御指摘のとおりでございます。
  227. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 この入札に応札したのは十四社で、一番札が大京観光、二番札が鹿島建設で五百三十四億円、以下野村、第一不動産等々、こういうことですね。
  228. 藤村英樹

    説明員(藤村英樹君) 一番札のいわゆる落札者につきましては、私どもこれを公表いたしておりますけれども、入札状況の詳細につきましては、二番札以下を含めまして、これまでも公表しておりませんので、具体的な確認につきましては差し控えさしていただければと思います。
  229. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 それはもう業界の新聞なんかにでかでかと載っているんですから、天下周知のことじゃありませんか。  国有地の管理責任者であります大蔵省理財局長の私的諮問機関、例の公務員宿舎問題研究会、これがありますが、この今回の入札に応募しました十四社の役員で今の公務員宿舎問題研究会のメンバーになっている人は何人、どの社の役員ですか。
  230. 藤村英樹

    説明員(藤村英樹君) 公務員宿舎問題研究会のメンバーは、先生御承知のように、まず研究会を直接構成するメンバーが九名、専門部会を構成するメンバーが十二名でございまして、なお、この間には一部の方が両方に参加されているという重複関係になっております。  先生の御指摘の趣旨でございますけれども、今回の入札に参加したものがこの研究会のメンバーの中に何人入っているかということでございますが、ただいま申し上げましたように、入札状況との関連におきましては、内容は公表を差し控えさしていただければと思います。  なお、付言いたしますると、今回の旧司法研修所跡地の落札者であります大京観光の社長でございます横山修二さん、この方はこの研究会の専門部会の方のメンバーとして在籍でございます。
  231. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 そのようなものは、別に隠したところで天下周知の問題でありますから、隠そうというところに何かあるんじゃないか、こういうことにならざるを得ない。  いずれにしても、研究会九人、専門部会十二人、このうちの半分が今回の跡地の入札に応募してきた。だから、研究会に集まってわいわいたくらみをやりつつ、この甘い汁を目指して研修所の跡地の入札へ群がってくる、こういう現象が起こっているということは明瞭なんですよ。いずれにしましても、この大京観光は、中曽根総理と極めて親しかった児玉誉士夫氏、これをかつて顧問にしておったという会社、そして、大京観光の横山社長、今のとおり研究会のメンバーだと、そして、国会でもしばしば問題になりました新宿の西戸山公務員宿舎用地払い下げの受け皿会社、新宿西戸山開発、この発起人のメンバーでもあったわけです。間違いないですね。
  232. 藤村英樹

    説明員(藤村英樹君) ただいまのメンバーの件につきましては、先生の御指摘のとおりでございます。
  233. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 ところで、問題のこの跡地でありますけれども、先ほどの説明によりますと、司法研修所跡地売却の問題も含めて境界の未確定のまま売ったというケースはなかったということになりますけれども、実際は二カ所、今回の問題のケース、司法研修所跡地、これについては二カ所境界未確定部分があったんじゃないですか。
  234. 藤村英樹

    説明員(藤村英樹君) 先生御指摘の二カ所と申しますのは、恐らく境界の標識が欠けている部分のことを御指摘じゃないかと思います。この本地の、旧司法研修所跡地につきましては、三十九年の三月の段階でございますが、当事者が立ち会いの上、当時の財産管理者でございます最高裁判所と隣接地主との間で境界協議を行いました上、実測図を作製しております。今回の売却につきましても、この実測図に基づく数量によって行ったものでございます。  なお、境界の現状等につきましては、八月八日の入札に先立ちまして七月末に現場説明を行っております。また、入札当日の事前冒頭説明等におきまして、この現状につきまして十分説明の上、落札者も承知の上で売却を行っているところでございまして、私どもといたしましては、特に問題が生ずるようなことはない、かように考えております。
  235. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 そのような生易しい問題じゃないんです。私は今、大蔵省当局が入札に先立って応札業者等に説明をした、その説明を録音したテープを起こしたものを持っているんです。そこの説明はこういうことで始まっている。 「定刻になりましたので、これから現場説明を行います。」ということで以下始まって、入札物件の所在、区分、数量、権利の種類及び内容、登記簿記載事項、以下ずっとこういろいろ説明をやって、で問題の部分、「次に境界、地役権及び崖地の状況についてご説明いたします。」ということで入って、「このたび一般競争入札を実施するに当りまして、当該実測図をもとに現地調査をしましたところ、皆さんにおくばりした境界標示図を見ていただきますとおわかりになると思いますが、まず、進入路に当たる標示ナンバー1、ナンバー2の部分、すなわち道路に接する部分の境界査定が未済でありました。また、図面上ナンバー5、ナンバー7、ナンバー8、ナンバー9、ナンバー14、ナンバー16の箇所については、境界標石が見当たりませんでしたが、これらの堺界については、ナンバー17、ナンバー18を除いては、昭和三十九年三月二十六日に隣接者と境界協議を下しております。  なお、いま申しあげましたナンバー17、ナンバー18については、昭和三十九年に境界協議が整わなかった」と。そこで、昭和四十八年に再度境界協議を行って、境界確定協議書の取り交わしをしたんだが、「しかし、この境界協議は第三者である現所有者に所有権が移転した後に、前所有者と取りかわしたものでありまして、現所有者とは、現時点において境界の復元について合意はえられておりません。」、こういうふうに説明しているんですね。間違いありませんね。
  236. 藤村英樹

    説明員(藤村英樹君) ただいま先生おっしゃったとおりでございます。
  237. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 そうしますと、あなたが、いかにも昭和三十九年の段階で協議をして実測を行って図面もつくったと言うんですけれども、このときには、現にこの文章の中でも出てくるように、境界すべての部分にわたって合意が成立はしてないわけですね。未済部分あるわけでしょう。そして、しかも昭和四十八年の段階で再度協議をやると、こういうんだけれども、協議をやったその相手がそのときの隣接地所有者じゃなくて前の所有者とやっておるというんです。こんなことで、一体、国有財産法に定める境界確定を厳正に行って厳正な国有地の処分をやっていく、こういうやり方になるんですか。この国有財産法の第三章の二、わざわざ一章を設けて国有地境界の確定の重要性、手続を規定をする、それほど重視をしている問題です。どうですか。
  238. 藤村英樹

    説明員(藤村英樹君) 先生今御指摘の特にポイントになる点は、旧隣接地主ではなく現在の隣接地主の同意を得るべきであるという点にあろうかと思います。  この点につきましては、先ほども若干申し上げましたけれども、既に旧隣接地主との間では、境界の協議——若干道路の境界査定については未済という部分が残っていることは確かでございますが、この点は別にいたしまして、既に実測図面がつくられ、先ほど申し上げました約六千八百平米という形の数量の確定も済んでおりまして、これに基づいて保存登記もなされているところでございます。したがいまして、売却するに当たりましては、手続的には特に支障がないという状況にあったと判断されたわけでございまして、改めて境界の確認を行うために国費を使うということについてはいかがなものかというふうに判断をした次第でございます。
  239. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 そんなへ理屈は通らないですよ。実測の地図もつくった、数量も確認をしてきた、しかしそれは、さっきあなたが言うように昭和三十九年でしょう。このときにすべての部分について境界の確認ができたわけじゃないということをみずから述べているじゃないですか。そういう状況のもとでつくられた地図が、これが未来に向かって本当に信用性のある実測図だということが一体どこで言えるのか、言えないじゃないですか。そういうものが、非常に手落ちの形でとにかく図をつくっていたと。しかも、それをもとにして相談を四十八年でやるというんですけれども、相談をやった相手が、今隣接地を持っておる所有者と相談をして合意ができたんじゃなくて、昔持っていた人と話をつけたってそんなものが通用しますか、そんなことが通用するんだったら、これから次々国有地の売却をやるでしょう、中曽根民活論に基づいて。そのときに今の隣接地の所有者と話がつかなんだら、昔々の所有者にさかのぼって、その人と話をつけたらそれでもう事が通ると。こんなことになったら大問題じゃないか。しかも、もう一遍いろいろ作業のやり直しをしたらお金がかかるからと。そんなことを、この国有財産の管理について厳正たるべしということで国民からの負託を受けている大蔵省がそんなことを言えた義理がと私は言わざるを得ないですね。とても納得できませんよ、こんなことは。
  240. 藤村英樹

    説明員(藤村英樹君) ただいま先生御指摘の件でございますけれども、処分後におきまして。処分後の所有者と現在の隣接地主との間に法律上その他のトラブルが生じてはいけないということを踏まえまして、この契約が成立する段階におきまして、当方から具体的に土地の引き渡しの前に落札者から受領書というものをいただいております。その受領書の中に先ほどまで申し上げました境界あるいは先生御指摘のあった地役権、がけ地の問題等につきましてこういう状況になっているということを、この受領書に明確に明記いたしまして、これを承知の上で、わかりましたということで、この土地を引き受けていただいております。したがいまして、以後におきまして具体的なトラブルというものは生じないというふうに私ども考えております。
  241. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 ますます詭弁の上塗りですよ、重々こういう事情がありますということを承知の上で買いますという受領書を書いてもらいました。受領書を書いたのは大京観光でしょう。隣接地の所有者が書いたわけじゃないでしょう、受領書を書いたのは。大京観光はあとからも触れますけれども、大体この実勢価格よりも安い値段で土地が入ったということでほくほくしているんですから。だから、ちょっと部分的にあやしいところあったって、まあトータルで見たら大もうけだということで受領書を喜んで書くでしょう。問題は現在の隣接地の所有者が、そことは何の相談をやったわけでもない。協議をして合意をとったわけじゃない。だからこそ、あれじゃないですか、この現在の隣接地の所有者は秀和ですね。この秀和が入札説明会の当日も将来トラブルが起こったら大蔵省は責任をとってくれるかと、こういう発言をしたら大蔵省は、いやそれはもう売った先のことだから、それは買い主とよう話してくださいと、こういう態度をとっている。こんな、将来紛争の種を壊すようなそういう形で、極めてずさんな方法で、なぜあえて売却を急ぐのか。踏むべき手続をちゃんと踏んで厳正、公正にやらないのか。私はとってもこんなもの納得できる問題じゃありません。こんなやり方がもし適法だということでまかり通るんだったら、それこそさっきも言いましたけれども、今後次々国有地の売却をしていくときに、隣接地の所有者と境界で話がつかぬというときには、昔の地主と話をつけて、昔の地主と話がつきましたから、これでもう適法ですと。こんな論法がまかり通ったら本当におそるべきことが起こる。こういうやり方でとにかく売却を急ごうということをやったその理由にはね、やっぱり中曽根民活第一号を早く形にしたいと、こういう政治的思惑が先行したんじゃないかというふうに判断をせざるを得ない。そして、さっきもちょっと触れましたが、この買い主の大京観光、さっき初め確認しましたように、中曽根構想の中心プレーンですね。そして、購入価格が坪二千八百万円。不動産業界の中では近く赤坂見付のあっち、ホテルニュージャパン、そこらは坪五千万円と、こういう値がついているときに大京はうまくやったなと、こういう声が上がっている。現に大京の横山社長は九月六日付の日刊工業新聞のインタビューで、この土地でのビル建設について、「採算としては御の字です。」ということを新聞にもちゃんとインタビューで談話を載せているんですよ。本当に政府の側とそして大企業の側と双方の思惑が強く働いて、こういうずさんな形で、国民に疑惑を招く形で、将来に禍根を残す形で売却を急いだというに違いないと私思うんです。  そこで、ちょっとついでに聞いておきますが、千代田区の側からは定住人口確保の観点から住宅の併設が強く要望されておると思いますが、そのとおりですね。
  242. 藤村英樹

    説明員(藤村英樹君) ただいま先生お話のとおりでございまして、千代田区及び千代田区議会の方から、入札に先立ちまして、千代田区内におきます夜間人口と申しますか、定住人口の確保あるいは町づくりという観点から、ぜひ住宅の併設をお願いしたいという要望書が提出されております。
  243. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 しかし、大京観光はそんなものには拘束されないと、超高層の貸しビル、専用ビルをつくった方がもうかると、こういう動きを示しているんじゃないですか。
  244. 藤村英樹

    説明員(藤村英樹君) 今大京観光さんの方でどういう計画内容になっているかということにつきましては、つぶさには承知しておりませんが、現在千代田区の方が事実上の指導を行っておりまして、私どもが現在承っておるところによりますと、住宅の併設、あるいは前にございます清水谷公園への通路、こういったもの、内容的には千代田区の要望事項でございますが、こういうものについて十分考慮するという立場で検討していただいていると、このように承っております。
  245. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 とにかく大京観光側の思惑については紛れのない証拠があるんです。日経ビジネス九月の三十日号、「NBリポート」、そこに「千代田区に大京が新たにマンションを建設するという約束をすることによって、」、ほかにマンションをつくるということによって、「横山社長は住居併設条件の見直しを」打ち出していると、こういうことがちゃんと出てくるんですから、大体大京観光の側の魂胆、思惑というのは明瞭だと思うんです。  さらに付言をしますと、新宿西戸山開発をめぐっての中曽根政治団体への政治献金問題について、過日我が党の安武議員指摘をし、警察も捜査を行うことを確認するに至っていますが、私はこういう非常に無理な形、不正常な形であえて強行をする、こういう背景に今回の司法研修所跡地売却についても類似の疑惑があるんではないかという危惧を持っているんであります。  そこで、法務大臣、最後にお尋ねします。そもそもこれの最初の持ち主は、法の厳正な番人である最高裁所管の旧研修所跡地の売却問題であります。これが利権と疑惑の温床となるというようなことになれば、これは法務大臣としても黙視できない御心情だろうというふうに思うわけでありますけれども、そうした点でぜひ法務大臣として、また国務大臣の一人としてこうした問題についての必要な調査、研究、監視、こういうことを行われるよう強く求めたいと思いますが、どうでしょうか。
  246. 嶋崎均

    国務大臣嶋崎均君) 私自身、余りどういう評価でどれが適当であるかというようなことについてはよくわかりませんわけでございますけれども、そういうものの売却等についてもし非違な事実があるならば、それは十分調査を徹底していかなきゃならぬというふうに思っておるわけでございます。
  247. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 とにかく最初に、大臣も聞いておられたように、境界未確定で売るというようなそんなケースはありませんとこう言いながら、ずっと聞いていったら出てきたわけでしょう。そうして、しかも相手が隣接地との境界を確定しようというこの問題について、現在の隣接地の所有者と何の話もできていないというんですから、こんな人をばかにした話はないですよ。国民を愚弄したやり方ですよ、こんなことがまかり通っていけば、そういう問題としてぜひ大臣注意を向けていただきたいと思うんです。  そこで、最後に人権擁護行政に関して若干質問をしたいと思いますが、その第一、子供のいじめ問題であります。  同僚委員からも話がありましたとおり、法務省としてもこの問題について一定の取り組みをやっておるという報告があったところでありますが、私はこの法務省の取り組みは今日積極的意義を持つものとして評価するのにやぶさかではありません。しかし、大臣、私きのうもここ二、三日来、法務省からいろいろ文書類をいただきまして、取り組みをやっておられる。ずっと読ましていただきました。また、ジュリストですか、あそこに課長さんがかなり六ページぐらいにわたる論文を書いておられるのを読んでみたんですが、奇妙なことに子供の人権を論ずるのであれば、その基本として憲法とか教育基本法とか児童憲章とか、こういう言葉が出てきてしかるべきであると思うんですけれども、こういう文言はただの一つも出てこぬのであります、そこで、大臣法務省の進めていく人権擁護行政、いじめ問題に対する対処の当然の前提として憲法、教育基本法、児童憲章の理念があるということは確認してよろしいんでしょうね、文章に言葉として出てこなくとも、基本問題ですから、大臣に聞きます。
  248. 嶋崎均

    国務大臣嶋崎均君) 法務省というのは、ある意味法律の番人でありますし、そういう重要な法案については十二分に念頭に置いておる事柄でございますから、当然物を考えるときに、そういう背景承知した上での対処の仕方をやっていることは当然であります。
  249. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 ところで、最近の中曽根首相の発言や文部省、臨教審などの動きを見ますと、いじめ問題の責任を学校と教師の側にだけ求める傾向が強い。もちろん、私も学校と教師の役割の重要性をいささかも否定するものではありません。しかし、これも文部省のいろいろ指導文書をいただいて見ました。これまた憲法、教育基本法重視という、そういう視点は全然ないんであります、同時に、学校と教師の責任が全うされるためにも、一人一人の子供によく目を配っていくことのできるような四十人学級の早期実施とか、マンモス校解消など教育条件の整備が急務であると思いますが、ところが、この点についてきのうも文部省に伺いますと、四十人学級問題であれば完成年度昭和六十六年と、こういうことですね。それからマンモス校解消について言えば三十一学級以上の学校を解消する。かつて文部省は八百人から千人、こんなところをマンモス校解消のめどにしたいということを言っておった時期もある。これに比べてみれば非常にスローテンポ。これほど今社会的重大問題として起こってきておりますいじめ問題などの解決のたれに急がなくちゃならぬ四十人学級、マンモス校解消、極めて手ぬるいというふうに言わざるを得ないと思いますので、ぜひ今日的情勢に立ってこの計画と方針の見直しについて文部省としてよく検討してもらいたいと思うのですが、一言で答えてください。
  250. 逸見博昌

    説明員(逸見博昌君) お答えいたします。  私もそのいじめの問題、これは原因、背景等さまざまなものがございまして、教育条件がその大きな比重を占めるというふうには考えていないものでございます。しかしながら、教育条件の問題、教育指導上大変重要な問題でございますから、着実に改善を図ってまいりたいと考えているところでございます。  四十人学級の問題でございますが、五十五年度から六十六年度までの十二年間にかけて実施をするという内容、それから終期決まっておるわけでございますが、途中段階で若干五十七、五十八、五十九年、これは行革関連特例法、これによってブレーキがかかりまして、したがいまして今前半半分は終わったわけでございますけれども、残り半分に残された課題が極めて大きいということで、私どもといたしましてはこの残された問題を完全に果たすということに何よりも重点を置いてまいりたいと考えておるところでございます。  過大規模校の解消につきましても着実に進めておりまして用地の買収費、これが大変大きなウエートを占める問題でございますので、過大規模校の分離、それを行う市町村が用地買収費が大変な場合には、これに対しまして補助をしてまいるというふうなことも、来年度予算の要求の中に含めているところでございます。そういったことでさまざまな施策を講じまして、過大規模校の解消に前向きに取り組んでまいりたいと考えております。
  251. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 さらに重大な問題としてこのいじめ問題がエスカレートして、これを苦にした中学生が自殺すると、群馬県や栃木県で発生しています。また夏以来、毒入りドリンク剤による無差別殺人事件、私の地元の京都でも宇治や福知山で既に三件も発生して大きな社会的不安を呼んでいるということで、警察庁の説明でもことしだけでも十月の二十日までにこの種事件三十件、死者九人、こういう事態になっていまして、緊急の対策が求められているわけであります。  そこで、農水省にお尋ねをいたします、この中の大きな部分であります除草剤パラコート、これについて医学家や研究者からは濃度を現在の二四%を五%程度に薄めて出荷したら、多少は安全が保てるんじゃないかという、こういう意見が出ていると、ことしから催吐剤や着臭剤の添加をしているようでありますけれども、この濃度を薄めるという問題についてもぜひひとつ検討の俎上にのぽせてやってもらいたい。  それからもう一つは、販売手続が一応規制されているということにはなっているんですが、実際は三文判一つで買えるとかスーパーでも売られているということでルーズな面がありますから、こうした面についても改善を考えてもらいたいと思うんでありますが、農水省簡単にお答えください。
  252. 岩本毅

    説明員(岩本毅君) お答え申し上げます、  先生御指摘のパラコートの問題でございますが、濃度を薄めて販売したらどうかということでございます。御承知のように、濃度を薄めますと量が約三倍あるいは四倍程度にふえてくるということがございます。それだけ流通量もふえてまいります。現在は非常に高度に進んだ情報化時代でございます。流通量が多くなることによって今御指摘のありましたような不幸な事態がふえるということも一つには予想されますし、かえって適正な保管、管理が難しくなるというようなことが考えられるわけです。そういうようなことがございまして、私どもといたしましては、従前からパラコート剤に催吐剤を入れるとか、あるいは色をつけるとか、あるいは最近、極めて不快感を与えるようなにおいをつけるといったような対策をとりまして、そういった事故が未然に防止されるような措置をとっておるところでございます。これからもこういった措置を通じてそういった事態が起こらないように対応してまいりたいというふうに考えております。  それから、販売店に対する指導の問題でございます。  農薬を扱っておる販売店の数は多くあるわけですが、私どもといたしましては、農薬取締法の規定に基づきまして販売業者の届け出の義務を課しておりますし、販売店において売った農薬については、どういった形で売られたか帳簿に記載をさせております。さらに、他の関係法令によってもパラコート剤の販売に対しては一定の規制措置がとられております。こういったさまざまな措置を十分動かすことによって対応しますと同時に、販売業者に対するこれからの指導を一層強めてまいりたいというふうに考えておるところでございます。
  253. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 次の問題、人権擁護行政とのかかわりで、同和問題に対する対処でありますが、最近、この部落解放同盟などの団体が部落解放基本法の制定を主張して、地方の法務局や人権擁護委員会に対して基本法制定促進運動への協力、集会への参加やカンパなど、こういうことを持ち込んでいるんでありますが、基本法に対する個人意見のいかんにかかわらず、行政機関が法制定促進運動に参加するということは私はいかがなものか、こういうふうに思うわけでありますが、この点の見解。  それから、これまた最近、同和を名のる一部の団体が地方法務局に対して登記事務の優先扱いとか、地目変更の無条件承認、こういう要求が出されておりますけれども、公正な法務行政という立場法務省としてはどのように対処をするのか、
  254. 野崎幸雄

    政府委員(野崎幸雄君) 政治的な行動に対しましては、その運動がいずれの団体によるものであるとしましても、私どもは行政機関として常に中立、公正の立場を堅持してまいってきております。  また、登記申請等におきまして、御指摘のように、同和を名のる団体から不当な処理をするような要求がなされた事実があることも承知をいたしておりますが、これらに対しましても、法務局においては厳正に対処し、適正な処理がなされておると聞いております。このような行為は、昨年六月十九日の地域改善対策協議会意見具申にもあるとおり、同和問題の解決のための長年の努力を踏みにじるものであり、これを阻害するものと考えますので、国民や企業に対しましても、こういった不当な要求には屈することのないよう、勇気を持って対処するようにと啓発を行っていく所存でおります。
  255. 井上計

    ○井上計君 大臣政府委員も大分お疲れのようですから、五分提供しますから休憩していただいたらいかがでしょうか。
  256. 丸谷金保

    委員長丸谷金保君) 速記をとめて、    〔速記中止〕
  257. 丸谷金保

    委員長丸谷金保君) 速記を起こして。
  258. 井上計

    ○井上計君 先ほど同僚委員から豊田商事の問題等についての御質問がありました。したがって、若干重複する点があろうかと思いますけれども御了承いただきまして、豊田商事問題等を含めた悪徳商法問題等につきましていろいろとお伺いをいたしたい、こう思います。  今臨時国会の冒頭、中曽根総理の所信表明演説におきまして、こういう提言があります、「国民が安心して日常生活を造ることができるよう、治安の確保や、交通安全対策、災害対策を充実させ、さらに、最近大きな社会問題となっている高齢者などを対象とする悪質な商法に対する対策など、消費者関連施策の一層の充実に努めることにより、安全な社会づくりを進めてまいります。」と、こういう文言で、総理は所信表明演説の中で述べておられます、また、さきの国会で豊田商事問題等が非常に大きな社会問題として多くの論議がなされましたが、その論議の中で、総理はやはり答弁で、「非人道的な犯罪行為である」と、このように豊田商事の悪質商法については所見を述べておられるわけでありますが、改めて法務大臣にお伺いいたしますけれども法務大臣、この問題等につきましてはどのような御所見をお持ちであるか、まず冒頭お伺いいたします。
  259. 嶋崎均

    国務大臣嶋崎均君) これらの問題につきましては、御承知のように老齢者の方あるいは婦人の方というようなところに食い入った、ある意味では非常に私は悪質な商法であるというように思っておるわけでございます。その内容等についても、現在調査が進められておるわけでございますけれども、非常に一般の社会的な感覚から申しましても問題のあるものであるというふうに思っておるわけでございまして、したがいまして、豊田商事あるいはそれに関連するいろいろなところも含めまして、一般にやはりよくPRに努めて、これらの問題について一般の人も十分な理解を持って対応されることが望ましいとともに、また、そういう非違な事項につきましては、的確な調査を進めて整理を進めていかなければいけないのではないかというふうに思っております、
  260. 井上計

    ○井上計君 先ほども同僚議員からの質問にありましたけれども、豊田商事事件の捜査状況については先ほど御答弁ございました。そこで、豊田商事グループの中核会社でありますベルギーダイヤモンド社あるいは鹿島商事等の捜査状況についてお伺いをいたしたいと思いますが、新聞報道によりますと、去る十九日に愛知県警がベルギーダイヤモンド社の社長ら幹部五人を、俗に言うネズミ講禁止法違反の疑いで名古屋地検に書類送検をいたしましたけれども、県警と合わして捜査をしてきた他の十三都道府県のうち、神奈川、沖縄両県を除いては、十一都道府県警も一斉に支店長クラス二十人を書類送検したと、こうあります。ところが愛知県警では起訴相当の意見つきで送検をしたわけでありますが、法務省など法務当局はネズミ講防止法の適用は困難という見解を示しておられる。したがって、今後の判断は検察当局にゆだねられるわけでありますけれども、ここらあたり新聞報道等解説によりますと、まずほとんど起訴は見込み薄いであろうというふうな報道をしております。その他の新聞等におきましても、不発だったダイヤ商法の捜査というふうな形で社説等も出ておりますが、とすると国民感情から言ってどうにも合点がいかない。あれだけ大きな事件、いわば全く詐欺と言えるような商法、それによって、先ほど来お話がありましたけれども、多くの人たちが被害に遭っておる。しかも、その被害に遭った人の大半が、大部分がいわば老後の生活の安定を図るためにいささか少しでもというふうな形で利殖を考えた人たち、それらの人たちをだましたことは明白でありますが、ところが、そういう人たちが果たして納得するであろうかと、こういう感じを私は強く持っておるわけであります、そこで、このような問題等について、先ほど豊田商事の捜査状況については御説明がありましたけれども、このベルギーダイヤモンド等のこのようなネズミ講違反容疑についての捜査状況、また、法務省、検察当局の現時点でのお考え等についてひとつお聞かせをいただきたいと、こう思います。
  261. 筧榮一

    政府委員筧榮一君) まず、前段の豊田商事、鹿島商事の関係でございますが、先ほどお答えいたしましたのは大阪地検関係だけで申し上げました。これは全国的に見ますと、大阪地検に十件、それから福団地検に二件、千葉地検及び神戸地検に各一件の告訴、告発がなされております。これはいずれも当該地検において捜査中でございます、  それからベルギーダイヤモンドの関係でございますが、ベルギーダイヤモンドの無限連鎖講防止違反事件につきましては、今委員指摘のとおり、名古屋地検他十二地検の警察から事件送致を当該地検が受けて捜査中でございます。なお、横浜、那覇についてはまだ送致をされておりませんが、後日送致される予定のように承知いたしております。この点につきまして、捜査を断念したとか、あるいは無限連鎖講防止法に違反するについては法務省が消極の判断をしたというようなことが報ぜられておりますけれども、無限連鎖講防止法に違反するかどうか、これは捜査の結果どのような事実が認定できるか、その認定された事実、これと法律とのかかわり合いと申しますか、その事実に法律適用して初めて結論が出る問題でございます。現在警察において一応の捜査を遂げ、検察庁の方でこれを送致を受けた段階でございます。これから事実関係についてもさらに捜査が行われるわけでございまして、その捜査の結果を見ませんと判断のしようがないわけでございます。したがいまして、現在までに法務省としてこれについて消極だとか積極だとかいうような結論を出したような事実はございません。捜査の結果を見で検察当局判断する、その際に私ども意見を求められれば意見を述べるということになろうかと思います。  なお、一部の新聞等にはそれで逮捕しなかったということが報ぜられておりますけれども事件 の捜査におきましては、御承知のように任意捜査が原則でございます。当該事件で強制捜査をいつするかというのは、その事件の内容、その事件の捜査の進展状況等によるものでございまして、それが任意捜査で強制捜査をしなかったから結論は消極だというようなことにはならないというふうに考えておるところでございます。
  262. 井上計

    ○井上計君 まあ新聞報道が若干違うといいますか、新聞報道の少し行き過ぎというふうな御説明でありますから、これはわかります。ただ、そこで一般の感情から言いますとね、例の投資ジャーナル、あの容疑者等については強制逮捕による起訴ということがなされておる。ところが、ベルギーダイヤモンドあるいは豊田商事等の一連の問題についても任意捜査であると。これについて大変わからないという声が多いんですが、その違いをひとつ御説明いただけませんか。
  263. 筧榮一

    政府委員筧榮一君) 結局、具体的な事件の内容によるとしかお答えしようがないかと思います、今も申し上げましたように、捜査は任意捜査を原則とする。そして、逃亡のおそれあるいは証拠隠滅のおそれというようなことがあります場合に当該被疑者を逮捕するという必要が生じ、その必要性が本当にあるかどうか、これについて裁判官の判断を得て、逮捕状を得て強制捜査にするわけでございます。まあ個々の事件についてはそれぞれにすべての時点においてその判断が常になされておるということであろうかと思います。したがいまして、ダイヤモンドについてなぜ強制捜査をせず、投資ジャーナルは逮捕したではないかということも、その両者の事件の内容の違いあるいはその捜査の進展状況の違いということとしか説明のしようがないかと考えております。
  264. 井上計

    ○井上計君 まあ事件の違いということは、私自身は素人ですが若干理解できますけれども、一般にはそういうふうなことについてのいわば懸念といいますか、不満といいますかね、そういうふうな声が実はあることは事実なんですね。  そこで、じゃあお伺いいたしますけれども、このベルギーダイヤモンドについては、まずセールスマンが必ずもうかると言っていろんな勧誘をしておる。その結果の実態は約六百六十四億円という売り上げがあった。ところが、このうち二百七十億円は会員の手数料として払われておって、その中には最上位の会員の中には一人で八千六百万円を手にした者がいるというふうに報道されております。また、売り上げの残りは役員報酬あるいは同社親会社である豊田商事グループの元締めである銀河計画の運転資金に流れた、このようにはっきり愛知県警はつかんでおるわけですね。とすると、もう全くのこれは詐欺商法であるということは明白なわけですが、これでもなおかつ出資法違反あるいはネズミ講違反とならないのかということになると、まことに私どもとしては不可解だという気がするわけですね。ただ、今もちろんこれからの段階でありますから、これが起訴されるのかされないのかということについてこれをお答えいただくということは、これは不可能ですからいたしませんけれども、いずれにしてもこの問題がもし万一不起訴ということになった場合には、事実上このような悪徳商法に対する免罪符を与えることになると思うんですね。そこで、私は考えていかなくちゃいけないのは、現在のこれらのいわば取り締まり法律で全く起訴できない、すなから罰することができないとするならば、私は新しいやっぱり立法措置が必要であろうと、このように考えるんですが、これについては法務省あるいは法務大臣、いかがお考えでありますか、お伺いいたします。
  265. 筧榮一

    政府委員筧榮一君) 今先生御指摘のように、このベルギーダイヤモンド事件、これからもさらに捜査が続けられるわけでございまして、その事実関係を確定いたしました上で無限連鎖講防止法あるいは詐欺というものの成立の成否を検討するという段階になろうかと思います。その段階でございますので、果たしてこれが免罪符になるあるいは現在の法律でどこに不備があるかという点は、現段階で私どもから申し上げることはその段階でもございませんし、差し控えさしていただきたいと思います、しかし、このようなものを罰するといいますか処罰する上において、何かの現行法上不備があるということの結論が出ました場合には、当然そういう立法化を図るべく努力をしなければならないとは考えております。
  266. 井上計

    ○井上計君 慎重なお答え当然だと理解はできますけれども、実際には法の不備があったからこういう事件が至るところに発生をしておる。また大きな事件として、しかも数年前から問題になっておるにかかわらず、今日までこのようにずっといわばある意味では野放しにされておったということになるわけですからね。だから私は結果においてどうしてもこれで起訴できない。だから、現行法に不備があるということで、それから新しい立法措置を検討するということでなしに、既に新しい立法が必要であろうというふうなこと、当然お考えになっておると思うんですね、だから、それらについて既に何らかの検討がなされておっていいんではないかと、こう考えておるんですが、現段階ではまだ検討がされていないということですか。
  267. 筧榮一

    政府委員筧榮一君) この問題につきましては、かねてから六省庁会議その他で、いろいろ関係省庁で協議がなされておるところでございます。このような悪徳商法の絶滅といいますか防止につきましては、罰則のみでなく、いろんな行政措置その他各般の広範な措置が必要であろうというふうに考えております。今後の事態の推移によりまして立法が必要であるというふうに結論が出ました場合には、私どもとしてもできる限りの協力をいたしたいと考えております。
  268. 井上計

    ○井上計君 経企庁にお伺いをいたしますけれども、去る七月に資産形成と消費者トラブルに関する調査報告というものをまとめられました。これはいただきました。ずっと読みましたけれども、要するにこういうふうな問題が過去にあっていろいろと斧鉞あって、いろいろ問題があってというふうなこと等についてのこれは報告書でありまして、これについて今後対策として具体的にこういうものを防ぐためにどうするかということになると、若干まだ物足りないなという感じがするわけでありますが、経企庁としてはこれらの悪徳商法いわば詐欺的な商法、このようなまがい的な商法等についての取り締まり、規制等々について現在どういう対策をお考えであるのか。また、今法務省にお伺いしましたけれども、新しい立法措置が、現行法ではもうだめだということでお考えとするならば、新しい立法措置を必要とお考えであるかどうか、その点をお伺いいたします。
  269. 里田武臣

    説明員里田武臣君) 今お尋ねのその調査は、私どもが所管しております国民生活センターに参りました苦情の多い順番から拾ったものでございますけれども、内容は幾つか多岐にわたっておりまして、現行法でほとんど対応できるものとなかなか難しいもの、いろいろございます。  悪徳商法といいますのは、この低成長下で物がだんだん売りにくくなったということも背景にございまして最近急増の傾向にありまして、私どもも非常に苦慮しているんでございますが、実はこの十一月の初めごろにも消費者保護会議を開催していただくことになってございまして、その消費者保護会議の最大のテーマがこの悪徳商法に対する総合的な対策ということで、現在各省庁で協議をしているところでございます。そういうことで消費者保護会議では相当の内容の処置を決定していただくということにしてございます。  それから現行法で適用できない問題、特に先ほど先生御指摘になりました豊田の問題等につきましては、これは現在まだ警察並びに検察の方で御検討中でございますので、私ども現行法は厳正に運用するということで関係六省庁対応しておりますけれども、これがなかなか非常に難しいというのも半ば一方事実だと思います、そういうことで行政的にもこういうことが後手にならないように、そういう問題になった場合でも対応できるように、現在関係省庁とお話は進めているというところでございます。
  270. 井上計

    ○井上計君 通産省に伺います。  おとといの新聞でありますけれども、通産省が情報提供制度を初適用をすると、こういう報道を新聞で見ました。まあ、いろいろと問題が多い、この新聞見ましても随分といろんな問題があるなということでありますが、通産省としては、この情報提供制度を初適用されるということは、今後ともさらにこの問題がふえるであろう、いや既にもうふえているということからであろうと思いますけれども、これについての状況等をひとつ御説明いただきたいと思います。
  271. 山下弘文

    説明員(山下弘文君) 先生ただいま御指摘新聞報道で言われておりますトラブル情報の提供制度でございますが、昨年以来私どもの中で検討いたしまして、訪問販売法の適用対象に関しましてトラブルが続発するようなケースを公表しようということで仕組みをつくったわけでございます。それでそれを、ことしの四月だったと思いますが、実施に移したわけでございますが、具体的な適用をする段階ということで現在整理をしているところでございます。
  272. 井上計

    ○井上計君 これはこの新聞報道ですけれども、「詐欺まがいの手口や押しつけ販売で苦情が多い五業種十数社の責任者と業界団体の代表を二十一日以降、順次同省に呼び、不当な販売方法を即刻中止するよう警告する。」と、このような新聞報道でありますが、そうなんですか。
  273. 山下弘文

    説明員(山下弘文君) 私どもの今の情報提供制度の仕組みを御説明申し上げますと、私どもの消費者相談窓口に参ります苦情の中で非常に目立つもの、そういうものの中で特に違法すれすれ、勧誘の段階で非常に際どい、まあうそか本当かなかなかわからないようなところを言うとか、幾つか基準がございますけれども、そういう勧誘段階での基準に該当するもの、それに起因するトラブルがたくさんあるものを集めてまいりまして、第一の段階ではこういう分野でこの種のトラブルが多いということを発表するということにしております。それを発表すると同時に、そこのその問題を生んでおります会社を個別に呼びまして指導をするという予定にしております。そして、さらにその指導の結果改善が見込まれませんでした場合には企業の名前を公表すると、そういう手順になっておりまして、新聞報道で報道され、先ほど私ども整理中と申し上げましたのは、その最初の段階を今やっておるというところでございます。
  274. 井上計

    ○井上計君 これ、だから指導する、警告する、そこで警告に応じない場合には三カ月程度の猶予期間を置いて業者名を公表して被害の拡大を防ぐという方針、これはこれでよくわかります。また、現状では通産省としてはこれ以上の方法、処置というものはとられぬであろうと、こう思いますけれども、この業者が警告をして聞けばいいですし、聞かない場合三カ月程度の猶予期間を置いてこれを公表して効果があればいいですが、ただそこで、公表の仕方いろいろありますけれども、どんな公表をしても、豊田商事等の問題から考えても被害者、特にお年寄りの被害者というのは新聞も見ない、テレビも見ない、全くそういうふうないわば情報ということとは無縁な人が多いんですね。だからそういう人たちが実は一番被害者として多いわけなんですが、罰則が何もなくて、ただ公表するだけで効果が上がると、このようにお考えかどうか、ちょっとお伺いします。
  275. 山下弘文

    説明員(山下弘文君) 先生御指摘のとおり、仕組みの限界というのは御指摘のとおりあるわけでございますけれども、正常な商売のつもりでやっておる企業の場合には、やはり企業名公表というのは大変効く部分だというふうに思っております。  実は私ども、大分前でございますが、マルチ商法につきまして公表制度というものを、法律の規制をさしていただいた上に、公表制度というものをつくってやっております、そこでやりました結果、最初はかなり公表の該当案件がございましたけれども、事実上マルチ商売そのものがなかなか成り立たなくなってきている。現段階ではそういうトラブルになるようなケースはなくなってきているというような実績もございます。御指摘のようにいろいろ限界はあろうかと思いますけれども、公表の段階で具体的な企業の名前を、さらに御指摘のお年寄りとかいうところまで伝わるようなこともなるべく工夫をいたしまして、成果を上げたいというふうに思っておる次第でございます。
  276. 井上計

    ○井上計君 先ほどやはり同僚議員からの質問の中にもありましたけれども、私、六月の二十一日の商工委員会でも、これは法務省のどなたかであったと思います、説明員であったかと思いますけれども、申し上げたわけなんですが、今度の一連の豊田商事関係の問題いろいろありますけれども、原因がいろいろありますし、また被害を受けた人の側にももちろん問題なしとは言いません。いろんな問題があります。しかし、私は、考えてみるとまだ三十歳そこそこのいわば青年が、幾ら優秀であってもあれだけの大がかりな、まあ大仕掛けな詐欺的商法はなかなかできぬであろう。やはりその陰には優秀な参謀、まあ優秀と言っていいかどうか知りませんが、あるいは悪才にたけた、こう言っていいかと思いますけれども、そういう参謀がやはり数多く介在しておった事実、これはまあ確かに新聞で明らかになりました。しかも、その中に大変高額な報酬を得ておる弁護士が数人おったということ、これは新聞報道でも明らかになっておるわけでありますが、したがってそのような悪徳商法に加担をしたというよりも、悪徳商法を推進をした弁護士あるいは税理士、会計士等もいたかどうか知りませんが、それらの国家資格によってそのような業をなしておる人たちについては、それの資格の取り消しあるいは一定期間の停止というふうなものが当然加えられるべきであるということを私提言をしお尋ねしたわけであります。  ところが、この問題、弁護士会の問題でありますから、法務省としては全くお答えがありませんでした。これはないのもいたし方ない、こう思って、その問題特に法務省にはそのときにもお尋ねをいたしておりませんが、ただその数日後、弁護士会において豊田商事の顧問をやっておったという弁護士に対して、何らかの調査を行うということを新聞報道で見たわけでありますが、その後弁護士会のこの問題についての委員会が開設をされたのか、あるいはどういう形でそれについての審査あるいは調査あるいは懲戒等々の委員会が進めているのかどうか、それらについておわかりであればひとつお答えをいただきたい、こう思います。
  277. 井嶋一友

    説明員井嶋一友君) 委員御案内のとおり、弁護士法上弁護士の指導監督あるいは懲戒につきましては、弁護士会及び日弁連の自治にゆだねられておるわけでございまして、政府はこれに関与できない仕組みになっておるわけでございますが、これは御案内のように弁護士の使命あるいは職務の特殊性等からその自主性を保障するということのためにでき上がっておる制度でございます。  そこで、お尋ねの豊田商事の顧問弁護士に関する件でございますが、既に新聞報道等でも明らかにされておもところでございますけれども、東京弁護士会におきましては、本年七月上旬にその所属弁護士一名に対し、さらに仙台弁護士会におきまして、本年八月下旬に所属弁護士二名に対しそれぞれ綱紀委員会に調査を開始させております。  この綱紀委員会と申しますのは、要するに懲戒手続の一環をなすものでございまして、現在この綱紀委員会におきまして事実関係等を調査しておるというふうに承知をいたしております。
  278. 井上計

    ○井上計君 今お答えの前段の中に、弁護士法についての弁護士の資格といいますか、そのようなことについてのお話がありました。私、実は法律素人でありますけれども、また改めて二、三日前から弁護士法について実はずっと読んで、私なりの勉強をいたしました。  率直に私の所感を申し上げますと、これについてはいろいろと弁護士会との問題ありますから法務省当局、御答弁いただけなければいただけなくてやむを得ませんが、端的に申し上げますと、この現在の弁護士法というのは全く治外法権に置かれておると、こういう感じがするんてすわ、さらにもっと言いますと、憲法に丸々違反しておる、完全な憲法違反である、こうとしか思えないんですね。  その第一は「弁護士名簿」、「弁護士の登録」は、「弁護士となるには、日本弁護士連合会に備えた弁護士名簿に登録されなければならない。」「弁護士となるには、入会しようとする弁護士会を経て、日本弁護士連合会に登録の請求をしなければならない。」いろいろあります、ところが弁護士の資格を取るのは「司法修習生の修習を終えた者は、弁護士となる資格を有する、」。したがって、一定の国家試験に合格し司法修習生の修習を終えて弁護士となる資格を持っても、実は弁護士として弁護士会に登録をしなければ弁護士業務ができないと明らかに規定されておるわけですね。これは憲法の明らかな違反であると、こう感じるわけです、  それから前文を見ましても、弁護士会をいわば監督指導等はどこもできないわけですね。立法府もできなければ、行政府もできなければ、司法もできない。したがって、弁護士会がもうあらゆることを独自で行えばいいと、弁護士会のやることについてどこからも文句のつけようがない。裁判官については国会に裁判官弾劾裁判所がありますけれども、弁護士業務あるいは不適格な弁護士あるいは「弁護士の使命及び職務」、いろいろありますけれども、「1 弁護士は、基本的人権を擁護し、社会正義を実現することを使命とする。 2弁護士は、前項の使命に基き、誠実にその職務を行い、社会秩序の維持及び法律制度の改善に努力しなければならない。」「弁護士の職責の根本基準」は、「弁護士は、常に、深い教養の保持と高い品性の陶やに努め、法令及び法律事務に精通しなければならない。」以下いろいろあります。ところが、こういうふうなものを、「使命及び職務」というものが明確になっており、弁護士の資格というものが明確になっておるにかかわらず、「弁護士名簿」というのが、こういうふうないわば規定がある。したがって、弁護士としてこの使命に違反した行為等々やった場合でも、それは弁護士会の綱紀委員会、あるいは懲戒委員会の決定によらなければこの戒告、二年以内の業務の停止、あるいは退会命令、除名ということができない。明らかにこれは治外法権である。こう実は考えざるを得ないわけでありますが、これについて法務大臣法務省もちょっとお答えはできにくいと思いますけれども、この新しい弁護士法ができた昭和二十四年、占領時代の法律が現在に全く適合しないんではないか。こういうふうないわば保護といいますか、明らかにもう逸脱した権限を与えておるから、豊田商事の顧問弁護士のようないわばふらちな弁護士がやはり発生するんだと、そういうふうないわば新聞報道を時に見ますけれども、悪質な、弁護士の資格の全くない、条件を整えていないような悪質な弁護士がやはり私は、多くとは言いませんけれども、いるんではないかという気がしてならぬわけでありますが、これらについて私はやはり国会の問題であるのか、法務省の問題だかわかりませんけれども、今後ともさらに検討をひとつする必要がある、こんなふうに改めて今回感じたわけであります。したがって、これらのずっと何か見ますと、例えて言うと酔っぱらい運転で、まあ人を死なした、交通事故で相手方を死なしたと、その場合、刑法によって酔っぱらい運転としてのいろいろな刑法上の措置はされますけれども、これは禁錮以上の刑にならなかったら弁護士資格を停止とか剥奪、これは別の問題ですね、全く。こんな矛盾があるであろうかなという気がするんでありますが、そういう感じがしておる。どうお考えか知りませんが、こういう感じがしておるということをひとつまず私の率直な気持ちを申し上げておきます。  それで、これは御返事いただけると思うんですけれども、第五十八条に、これは細かい質問通告してませんけれども法務省は専門家だからおわかりだと思いますが、「懲戒の請求、調査及び審査」という項目、第五十八条「何人も、弁護士について懲戒の事由があると思料するときは、その事由の説明を添えて、その弁護士の所属弁護士会にこれを懲戒することを求めることができる。」とこういう項目がありますが、この「何人も」というのは法務省もと、このような解釈をしてもよろしいのですか、どうですか。これはお答えいただけると思いますが、どうでしょう。
  279. 井嶋一友

    説明員井嶋一友君) 御指摘のとおり、弁護士法五十八条には、「何人も」ということが書いてございまして、この趣旨は弁護士の職務の公益性、公益的な性格から、要するに何人でも弁護士の懲戒事由があると思料した場合には請求ができるという規定でございまして、これは要するに自治の乱用と申しますかそういうことがないように、つまり同僚裁判のようなものがないようにという趣旨から、この請求制度というものができておるわけでございます。これに法務省が入るかどうかというお話でございますけれども、これは法務省と申しますとこれは役所でございますので、そういった意味でいかがなものかな、入るかどうかという点につきましてはいかがなものかと思いますけれども考え方といたしましては公益的性格から何人でも請求ができるという趣旨であるというふうに解釈をいたしております。  なお、先ほど前段で先生述べられました点でございますけれども、これは昭和二十四年に法律ができましたときにできました弁護士自治の問題でございますけれども、これはいろいろな歴史的な背景もございますし、やはり弁護士の職務の特殊性と申しますが御指摘のあったようないろいろな観点から、やはり、しかもその弁護士は高度の自治能力を持っておるものだということが前提となってできあがった外国にも例のない制度でございます。これはしかし法律でそのように定められておるわけでございますから、私どもは憲法に違反するものだというふうには考えておりませんけれども、要はその自治の機能が適正に行使されるかどうかという実態ではなかろうかと思います。そういった意味で、それぞれ一つの被疑事件があったような場合に懲戒制度が有効に活用されていくということが期待されるわけでございますし、それはまた弁護士会の責務であるというふうに考えておるわけでございます。
  280. 井上計

    ○井上計君 お答えの「何人も」というのは、果たして法務省が「何人も」に該当するかどうかということについては、ひとつ一度御検討いただきたいと思います。私は、ここに「何人も」というふうな解釈の中で、法務省あるいは国会の決算委員会なら決算委員会あるいは法務委員会というようなものがこの「何人も」に入るなら、私はそのような弁護士についての懲戒の申し立てを弁護士会にするということができますけれども、解釈によって「何人も」という解釈がもう狭く解釈されると、やはり従来の常識のように外部からまず立ち入ることは全く不可能だというふうなことになるので、ますます問題が今後とも残っていくのではなかろうかという気もします。今お答えの中でこの弁護士法を制定されました昭和二十四年当時は、仮にも弁護士たる人は高度の自治能力を持っておるという、こういう大前提のもとにこの法律がつくられた、これはわかるのですね。しかし、現実は必ずしも高度どころか低度の自治能力しか持たぬ人が実は弁護士の中にかなりあるという事実があるわけです。だから、いつまでも高度の自治能力を持っておる人ばかりだということで、これが金科玉条的に今後もずっといくことについては問題があるかなと、こんな気がしてならぬわけであります。  そこで、もう一つ、これはお尋ねいたしますけれども、第九章の「懲戒委員会及び綱紀委員会」という項目の中に「懲戒委員会の設置及び機能」というのがずっとあります、ところが、この懲戒委員会あるいは綱紀委員会の運営あるいはこのようにどういうふうなものが懲戒に値するかどうとかというようなことだとかそれから多数決によってやるのか全会一致はどうとかという規定が全く弁護士法にはないのですが、これはなぜないのか。あるいは別個にそれぞれ弁護士会においてそのような委員会の運用規定が設けられておって、それで行われておるのか、その点をお答えいただけますか。
  281. 井嶋一友

    説明員井嶋一友君) まず規定の点でございますが、これは詳細な点は日弁連会則あるいは弁護士会会則にゆだねられておりまして、それぞれの会則におきまして詳細に規定がございます。  それから綱紀委員会、調査委員会関係で一言付言をしておきますけれども、この組織は弁護士だけではなくて、弁護士のほかに裁判官、検察官及び学識経験者らを委員に加えるということになっておりまして、審査会、懲戒委員会はそれなりに公正な機関ということにされておるわけでございまして、これも弁護士の自治とは申しましても、やはり公正な機関が議決をすべきであるという観点から、そういった外部の委員も加わっておるということを付言さしていただきます。
  282. 井上計

    ○井上計君 懲戒委員会には外部というか学識経験者あるいは裁判官、検事ですか、これはわかる。ところが懲戒委員会へ付託をする前の委員会は弁護士会だけでやるんでしょう。そうじゃないんですか。
  283. 井嶋一友

    説明員井嶋一友君) お尋ねの付託する前の手続というのは、先ほど来申しております綱紀委員会を指すわけでございますが、綱紀委員会の構成につきましては、確かに法律上は弁護士のみということになっておるわけでございますけれども、これも御案内のとおり昭和五十四年に例の弁護士抜き裁判特例法案というのが出ました際に、その処理の段階で法曹三者の協議の了解事項ということで、懲戒機関につきまして公正な機関にすべきであるということが議論になりまして、それを受けまして現在綱紀委員会におきましても裁判官、検察官、学識経験者の参与という制度を取り入れておりますし、さらに日弁連自体の綱紀委員会には、委員として裁判官、検察官、学識経験者がそれぞれ二名ずつ委員として参加をいたしておる、五十四年からそのように変わっております。
  284. 井上計

    ○井上計君 まあ、なかなか、言えば二階から何か目薬を差すような、靴の上から足の裏をかいておるようなお尋ねとお答えになりますから、この問題これでいいです。  ただ、もう一つお伺いしたいのは、国家試験等によって資格を得る職業が随分とあります、その中で医師あるいは会計士、弁理士、それから税理士とありますね。これらのものはそれぞれの、もしそういうふうな職務に違反した場合の取り消しというのは、それらの会が独自でやるのでなくて、やはりそれぞれの監督官庁等々によってなされますね。ということは、弁護士だけはどこからも手がつけられぬということになるかと思いますが、その点どうなんですか。確認のためにお尋ねいたします。
  285. 井嶋一友

    説明員井嶋一友君) 委員指摘のとおり、その資格の喪失あるいは懲戒といった手続について団体の自治にすべてをゆだねているというのは、この弁護士の制度だけであるというふうに承知をいたしております。
  286. 井上計

    ○井上計君 弁護士会の問題はこれ以上突っ込んでお尋ねすることもむだでありますからやめます。ただ、大臣、心のどこかに、現在の弁護士法でいいのかどうか、このようなやはり複雑な多様化した社会の中でいいのかどうかということは、ひとつお考えいただく必要があると、これはあえてお願いをしておきます。  次いで商法の問題に移ります。  これもやはり六月二十一日の商工委員会でお尋ねをしたわけであります。現在の商法等からいきますと、類似商号の使用をされた場合、いわば被害を受ける側からこれについての使用をとめることを請求することができるという程度の条文であります。法律によって類似商号使用、悪質な類似商号使用についての取り締まりがないわけですね。だから商法の改正考えるべきではないですかということを、六月の二十一日の商工委員会では提言をしたことがあるのですが、全く検討されていないであろうと思いますが、私は今度の豊田商事の問題も、豊田商事という名前にもともと彼らが詐欺的な行為をやる、まず前提があったわけですね。豊田商事の名古屋支社というのは、御承知のトヨタ系の豊田通商と同じ番地なんです。豊田通商の本社ビルのすぐ隣のビルなんですね。だから、ほとんどの人が、豊田商事というのはトヨタ自動車系の有力な会社である、だから絶対心配ない、このように思っておったらしいです、事実、この問題がいろいろと俎上にのぼってきてから、もう数年前からであります、特に昨年あたりから豊田通商の本社に随分と抗議の電話がかかってきておる、あるいは豊田通商の社長や役員の自宅にも抗議の電話が随分かかってきたという事実があるわけですね。明らかに類似商号によって被害をこうむっておるが、しかし、それを経済的な面で被害をこうむっておるということを立証しなければこの商法の違反にならぬということでどうにもならぬ、こういうことがあるわけですね。だから、ちまたには類似商号を使っておるいろんな会社がいっぱいありますよね、この豊田商事系の鹿島商事もそうなんです。それからベルギーダイヤモンドというのも、日本の商号じゃありませんが、そうなんですね。いっぱいあるわけですよ。だから、三井商事だとか三菱物産だとか住友何とかいうのがいっぱいありますよ。みんなそういう類似商号によって言えば詐欺的商法をやっておる、全部とは言いませんが、そういうようなケースが非常に多いと思うんです。現在の商法についても、これもやはり改めて検討し見直すべき時期に来ておるんではないかということを先般も提案しましたが、きょう現在、法務省としてはどういうふうなお考えでおられますか、お伺いいたします。
  287. 枇杷田泰助

    政府委員枇杷田泰助君) ただいま御指摘のように、類似商号によって世人が惑わされるというふうな傾向があることは私ども承知いたしております。そのような現象が現実問題として起こりますのは、現在の商法のあるいは商業登記法の規定によりまして、同一商号あるいは類似商号は同一市町村というものを単位として、その範囲の中で同一のものを使ってはいけないということがありますために、他の市町村で類似の商号の登記をしてしまえばそれが世間に通用するということになる、そこに根本の問題があるのではないかというふうに認識をいたしております。現在、会社の商号と申しますものは、広く見ますともう世界に通用するという広さを持っておるわけでありますし、少なくとも日本なら日本全土あるいはさらに少なくともその都道府県単位というふうな範囲で、商号というもののその使用の範囲を決めるべきではないかというふうな問題点は、かねがね私どもも十分認識をいたしておるところでございます。ところが、実際問題といたしますと、全国に会社数といたしまして二百万社以上のものがもう現に存在いたします。これをその使用制限の範囲の単位を広げようということになりますと、それ自体が大混乱になるということが一つございます。それからまた、もし全国一本で考えるという場合には、それを審査をし、類似商号をチェックするシステムが一カ所に集中しなければならないという問題があるわけです、そういう点で、実際問題としますと、私どもの方では、現在の仕組みの中では、非常に残念だけれども、そういうところに手がかからないということで、実は大きな課題としては考えながら、実際上の手をつけることができないという状況でございます。将来、登記制度の仕組みその他を改善するにつれまして、その問題についても逐次また前向きに研究するというふうなことはしていかなければならないと思っております。
  288. 井上計

    ○井上計君 今お答えいただきましたが、私の認識と大体同じであります、しかし、二百万という商号があるわけですけれども、最近のコンピューターの利用等々からいって、従来だめだと、不可能だと言われておった事務的な処理が、あるいは審査処理が、必ずしも不可能でないようなこともあるわけですね。しかし、いろいろとまた問題もありますから当然わかりますけれども、ぜひこれはお考えをいただく、検討をしていただくということと、もう一つは、少なくとも類似商号を、あるいは同一商号もありますが、使われて被害をこうむったということが立証されて初めてそれを使ってはいけない、困るんだということの、いわば提訴でしょう、被害者から。それを何か速やかにそれが行えるような、この程度の何か法改正考えられないであろうか、こう思いますから、これはひとつ提言としてさようはしておきます。  それからもう一つついでに、類似商号の問題と関連をいたしますが、これは通産省に質問通告をしてませんからお考えいただくということでよろしいかと思いますが、商標法、登録商標の商標、それから不正競争防止法等についてもやはり関連をすることがあるわけです。  現在、例の商標は物が対象になっている、物につける、あるいは包装紙だとか、あるいはいろんな商品だとか、物につけるようになってますが、会社のマークとして使った場合、違反でないですよね。でもこれは問題があると思うんですね。  だから仮に、そういうふうな不正な詐欺的な商法を考える者が、ある有名デパートのマークをそのまま使って会社の看板にしておっても、あるいはテレビでコマーシャル出しても、これは問題にならぬでしょう、現在の商標法では。やはりこれも問題だと、こう考えるんです。  それから不正競争防止法でも、とにかくここにいろいろありますけれども、これには要するに法の谷間というか、盲点というのがいっぱいあると思うんです、だからますますこういうふうな悪徳商法が今後ともはびこっていく、このままでは、それは石川五右衛門が言った浜の真砂どころか、ある意味では今度の豊田商事問題に関連して、一連の問題で、先ほどまだ決まっていないようでありますが、もし万一これが不起訴になったら、それこそ一斉にこれは免罪符を与えたということで、そういうふうな今若干まだ遠慮しながらやっているような悪徳商法がありますが、大っぴらにやるおそれがあると思うんですね。そういうふうなことの事態が起きないように、豊田商事関係の一連の問題等についても検察当局はひとつ十分慎重にお考えをいただく、これはもう何も感情によって法を曲げるわけにはいきませんけれども、お考えいただくということと、いずれにしても新しい立法措置が必要であろう、そう考えますので、その点についての御検討をいただきたい、こう思います。  大臣から御所見を承れれば大変ありがたいですが、以上で私の質問は終わります。
  289. 嶋崎均

    国務大臣嶋崎均君) ただいま御指摘のいろいろな問題があるわけでございますが、なかなか技術的に詰めるというときに、例えばその商号問題なんというのはなかなか難しい問題がある。また、現に逆のような話がありまして、もう少しそれはきちっと守られなきゃならないという逆の論理も実は世の中にあったりしまして、容易なことではないように思うのでございます。  また、弁護士会その他の問題についての御発言もありましたけれども、これについては先ほど来の説明にありましたように、議員立法としてあの弁護士法ができたときからの長い歴史があるわけでございまして、そういう自治権を運用していくために、どうして弁護士会自体がそれに的確に対応していくかというようなこととも絡まってきているような問題もあるわけでございます。  したがいまして、いろいろな御指摘の点につきましては、今後ともいろいろな面で我々としても問題を整理をして対処をしていきたいというふうに思っておる次第でございます。
  290. 下村泰

    下村泰君 私は、今月に入りまして、十四、十五、あるいは先月の八日あたりに新聞に発表されました、今法制審議会の民法部会身分法小委員会で草案がまとまりつつあるのでございましょう、特別養子制度、これにつきまして質問をしたいと思います。  これは報道によりますると、まだ六十二年、それからまだ時間がかかるように承っておりますので、今急にどうのこうのということではなくて、私の希望を少し交えながら法務省の御見解を承りたいと思います。  昭和五十年の十一月七日の参議院の予算委員会で私が質問を行いまして、優生保護法の中絶時期を一カ月短縮していただきました。  本来は、優生保護法の第二条に二つの項目がございます。これに該当する場合その中の第二項でございましたか、母体外生存不可能は八カ月未満というふうにされていたのを七カ月に、一カ月縮めさせていただきました。このときたまたま最終的に時間がありませんで、当時の法務大臣稻葉修先生に結論を出していただけませんでしたけれども法務大臣に伺いたいということを申し上げて話を閉じたんですけれども、その後にそのときの法務大臣稻葉先生から私的な書簡をいただきまして、もし私があの場で質問されれば、この妊娠中絶八カ月未満はあくまでも罪に問う、殺人罪であると、こういうふうに私は明らかに断言するというような書簡を後からいただいたことがございます。そして当時の厚生大臣田中正巳先生によりまして次官通達で一カ月縮めまして七カ月未満と。ですから、五十一年からたしか七カ月未満でやられていると思います。  ここでひとつお尋ねしたいんですが、特別養子制度につきましては、既に三十四年に法務大臣の諮問機関である法制審議会の民法部会身分法小委員会でやられたはずなんですが、それ以後五十七年までどういうような過程で審議されたのか、あるいは審議されなかったのか、これをまず伺いたいんですが。
  291. 枇杷田泰助

    政府委員枇杷田泰助君) 法制審議会の民法部会におきまして身分法関係の審議をずっと続けておるわけでありますが、養子制度に関しましては、昭和三十四年当時にひとつ洗い直しという意味で検討を加えました。そのときに現在言われておりますような特別養子の制度を導入したらどうかというふうな意見も出たわけでございますけれども、当時はなかなかそういうようなことについての委員会内部での合意が得られないといいましょうか、意見が非常に分かれまして、そして方向が出ないままで終わったというようなことがございます。そのうちに身分法関係につきましても、相続関係であるとかそういうような問題がいろいろ緊急に改正しなきゃならない問題が出てまいりました。例えば配偶者の相続分を三分の一から二分の一にするとか、あるいは離婚した場合に、結婚している間の姓を引き続き名のれるようにするとか、そういうような改正の作業が入りましたので、養子の問題につきましては、ただいま申し上げましたように、余り会内でのコンセンサスが得られないというままで、休んでいるままでずっときたわけでございます。しかしながら、五十七年に入りましてまた養子制度をさらに取り上げて検討してみようということになりまして、そしていろいろ検討しているうちにただいまの特別養子というような構想を、現在の普通養子のほかに一つの選択の方法として認めることがどうだろうかというふうなことが議論がされまして、そしてともかくそういう案をつくってみて、そして世の中に問うてみたらどうだろうかと。世間一般の御意見をまたそれで受けとめて審議を進めたいということで、世間に問うための試案づくりを現在やっておるわけでございます、大体その試案の骨子ができまして、近く民法部会にお諮りをして、もしそこで試案を出すということの御了承が得られれば、法務省の民事局参事官室の名前でその試案を公表し、御意見を各界からお寄せいただくというふうな運びにしたいという段階まできておるわけであります。
  292. 下村泰

    下村泰君 と申しますのは、昭和三十四年に審議されたときに項目がございますけれども、「特別養子はすべての関係において養親の実子として取り扱うものとし、戸籍上も実子として記載する。」、ここのところが大変問題になるところなんですね。現在でございますと、その戸籍の上にははっきり養子であるとかあるいはその他が記載されます。そして産んだ人の方の戸籍もそういう状態になるわけですね。ここのところが非常に微妙な問題で、それはもちろん大方の方の御意見がち例えば、結婚もしていないで妊娠をするいわゆる婚前妊娠、こういうものはふらちである、そういうふしだらな女はどうのこうのということが一般的に言われるわけなんです。しかし、中には結婚の約束をしていながら男に去られてしまうとかあるいは破棄されるとかというふうにして、やむにやまれず産まなきゃならなくなったという女性の立場もあるわけですね。こういう女性が自分の戸籍が汚れる、あるいは再婚もおぼつかなくなるというようなことでこれを中絶に参ります。そうしますと産婦人科の方は、約束した以上お医者さんはこれは中絶せにゃいかぬわけです。中には随分過ぎている方もいるそうですよ。そういうことを調べるために私もかつては各産婦人科に関係のある病院を回ったことがあります。日本赤十字、愛育病院、日大、慶応大学、東京厚生年金病院、賛育会病院の婦人科、こういうところを回りましていろいろ尋ねました。さすがにこういう大きなところでは時期を過ぎている人は取り扱いません。ところがそうでないところでは結構やるんですね。その場合にその産まれてくる、早産させるんですから当然産まれるという状態になるわけです。七カ月に入りますと軽いのでも一キロあるそうです。そして重たい胎児になると一・六キロぐらいあるそうです。中にはオギャーという声を発する胎児もあるんだそうです、そういうときにどうするんだと、泣いたからお土産に持って帰れと言うお医者さんは一人もいない、全部始末するわけです。どういうような状態で始末するか、これはお医者さん自体は教えてくれません。看護婦さんにいろいろと聞いてみました。そうしますと、ビニールの袋へ入れて口を閉じてたたきの上へ置いて凍死を待つ、あるいは窒息するのを待つ、ひどいのになると深いおけの中に入れて殺してしまう、あるいは麻酔を打って殺してしまう、この麻酔を打った事件が実は気仙沼で起きたわけです。こういったことから四十八年に宮城県の石巻の菊田昇という医師が赤ちゃんあっせんをした、これがまた一つの契機にもなりまして、大きな社会問題になったことはもう御存じのことだと思います。しかしそれが、その菊田医師の行為があったからといって私はこの制度が早くつくらなければならないというような機運になったとは思いません。今御説明にあったとおりの機運でそうなったんだろうと思います。ただここで考えなきゃならぬことは、この三十四年に「特別養子はすべての関係において養親の実子として取り扱うものとし、戸籍上も実子として記載する。」、ここの項目が一番養い親に、養子をもらう人にしても、あるいは渡す方にしてもネックだったわけですね、ここのところが。こういうふうになればこの問題はわりかた早く解決したんではないか、いろんな問題が起きてこなかったんじゃなかったか。いまだに親子関係不存在確認という訴訟が年間三千も四千もあるというように承っておりますけれども法務省の方はどういうふうに受け取っていましょうか、やっぱりそのくらいございますか、年間、親子関係不存在確認。
  293. 枇杷田泰助

    政府委員枇杷田泰助君) 私ども正確な統計の数字は存じておりませんけれども、ただいまおっしゃったように親子関係不存在確認の事件裁判所にはかなりの数が出ておるということは承知いたしております。
  294. 下村泰

    下村泰君 たまたま法務委員をさせていただいたときもそのことについてお話を申し上げたんですけれども、中には非常に理不尽な親がおりましてね、御自分にたまたま何年間か子供ができなかった、そして養子にした、ところが外の女性にできてしまった、さてある程度の財産を持つようになったときに養子にした者に財産を渡したくない、日本人というのは血は水よりも濃いなんてこと言いますからね、そうすると外につくった子供に自分の財産を渡したい。ところがこの養子になった男性がその養い親よりも働くんです、能力もある、そのために、まあ単純計算で言えば一億の財産が十億になっておるわけですね、それでその息子さんとその養い親との間に今言った親子関係不存在確認の訴訟が起きたんですけれども、そのお子さんがいなければそれだけの財産はふえなかった、ふえたからこそ財産を余計その自分の養子にやるよりも血のつながった方にやりたい、これは人情ですわね。これによって最高裁までいった。ちょうど私がこういう質問をして、その結果はどうなりましたかと申し上げたら、最高裁で目下係争中でございますからお答えできませんという答えだったんです。こういう事件がしばしば起きておるわけですわね。確かにそれは養子になれば実親の方の相続権もある。養い親の相続権もある。ところが、実親を養わなければならない、養い親も養わなければならないという二つの面がございます。しかも、その養子という文字がつくことによって、いろいろ御意見はございましょうけれども、養子に対するやゆとか批判とかからかい言葉というのがたくさんございますわね。これはもう江戸時代からずっとあります。いまだにあります。そうしますと、本日の委員会でも問題にされておりますけれども、いじめなんという問題はそこからも出てきますわな、あいつは養子だという言葉一つで、それから大きな会社へ参ります。大きな会社へ参りましても養親であのやろうは出世したと、養子だから出世したというようなことで、会社の中でいじめというのがあるそうですよ、今、社員いじめというのが。大人のいじめ方だから非常に陰湿です、子供よりももっと。こんなようなことも起きてくる。というのは、一人しゃべりで申しわけございませんでしたけれども、この項目が三十四年に審議されたときにこれがもう少し早くこの制度ができておったならば、随分救われた方々もいるだろうと思うのです。  そこで質問させていただきますが、十四日の月曜日の新聞によりますると、「出産直後の特別養子縁組は、そのまま養親の実子として扱われ、実母の戸籍に記載されない」。この実母の戸籍に記載されない、こういうふうになるんでしょうか。まだ草案ですから、この先どうなるかわかりませんけれども、こんなような感触で受けとめてよろしいんでしょうか、これは。
  295. 枇杷田泰助

    政府委員枇杷田泰助君) 戸籍にどういうふうな扱いにするかということは、いろいろ戸籍上の技術的な問題もございますので、まだ私どもの方ではっきりした案を持っておるわけではございません。それがまた戸籍が養親子関係が特別養子の場合に、離縁ということは認めないという方向で考えておりますけれども、それにかわる廃止というふうなものが一つの案の中にあるわけです。廃止した場合にはもとの実親子関係に戻るというようなことも予定しておるわけです。そういたしますと、実親子との関係が戸籍の上でつながっておりませんと、そこがまたうまくいかないという面もございますので、そういう面でどういうふうにして戸籍の技術的な組み立て方をしたらいいのかということが、実は民法の特別養子制度というものが固まりませんと実は決まらないという問題がございます。そういうことでございます。  また一方、なるべく戸籍の面では養親子との関係だけが親子の関係だということが表現されるということが望ましいという面がございますので、その調整をどこでとるかというのが実はかなりの難しい問題でございますが、ただいま申し上げましたような二つの方向を満たすような仕組みを考えていかなきゃならないというふうに考えております。
  296. 下村泰

    下村泰君 ほかには戸籍の信頼性が乱れるとか、あるいは近親婚ですか、こういう心配もなきにしもあらず。あるいは実親の遺伝が不明になる。こういうことも困る。諸々ございますので、そう簡単にはまいらないとは思いますけれども、ここのところが一番大事なところなんですね。ですから、ここのところができるだけそういった方たちの希望に沿うような結果になってくれればいいなとは思っております。アメリカの方では一九二五年というから大正十四年なんですね、このデンバーの少年家庭裁判所におったリンゼイという判事が百例の赤ちゃんをあっせんしたといい、一九三〇年、昭和五年に秘密に行っていた実子あっせんを公けに行ってアメリカに大きなセンセーションを起こしたというような記事も出ておりますけれども、アメリカでは既にこういうふうな経過を経て今日になっております。そして、世界じゅうでもほとんどがこの今の特別養子制度を扱っております。むしろ扱ってないのは日本がおくれているんですね、こういう面では。  そこで、一つお尋ねをしたいんですけれども、「フランスでは新しい出生証明書は交付されず、判決が出生証明書に謄記される。しかしそれには実親についてのいかなる表示や暗示もなされず、もとの出生証明書は無効とされる。そして有名な「言論・出版の自由に関する一八八一年七月二九日の法律」は、養子の死後、少なくとも三〇年間は、書籍、出版物などを問わず養子のもとの親子関係に関する情報を公にすることを禁止し、これに違反する者を処罰するむね定めています。」、あるいは「ソビエトでは一九七〇年以来、養親の意思に反して縁組の秘密をもらした者に刑事罰を加える措置をとっています。」というふうに個人のプライバシーを非常に現実に厳粛に守っているわけですけれども、果たしてそこまで日本の場合にはいけそうなんですか。
  297. 枇杷田泰助

    政府委員枇杷田泰助君) 日本の場合にそこまでいくということは今のところ考えておらないわけでございます。なるべく通常の書類その他でははっきりわからないというようなところまでの工夫はしておかなければならないと思いますけれども、一方では議論といたしまして、人間である以上、何か自分の親だと思っている者が本当の親ではないんだという疑惑が出てきたときに、実の親を捜し当てたいという、そういう気持ちをも伏せてしまうことはまた問題ではないかというような議論もあるわけでございます。そういうようなこと、それからまた、欧米の人たちの何といいますか気持ちと、日本人社会における気持ちというものはかなり違うわけでございますので、何もかも実親であるかのごとくに全部をつくってしまう、書類から何から全部そういうふうにつくってしまうということまですることが、日本社会の中になじむかどうかということもかなり問題でございますので、この試案段階ではただいま御指摘のような徹底したやり方と申しましょうか、そういうことまでは考えておらない次第でございます。
  298. 下村泰

    下村泰君 今もおっしゃったとおりなんですよね。例えば自分の育ての親を実の親と信じて育ってきた、これが中学校へ入るあるいは高校へ入るときになって、自分がそうでなかったということに愕然とするわけなんです。しかし、戸籍の上にそれがはっきりわからないようになっていればこれはないわけなんですよ。この問題が起きてこない。ですから、前にも何回も申し上げたんですけれども、そういった書類というものは裁判所なら裁判所に預かっていただいて、本当に婚姻その他のときにこれを見ることができるというふうにして、一般には公開できないようにしておく、こうすれば近親相姦も何もないんですよね。そのくらいの手続と手間をとってくださるとこの法はうまく生かされるんですけれども、ただ簡単に身分がすぐに割れてしまう、あるいは自分がそうでなかったというようなことが簡単に割れてしまうんですと、この特別養子制度というのは何ら私はっくった意味がないというような気がするんです。ですから、できるだけそういったことが抑えられることによって、安心して養い親が子供を育てることができる、子供の方も実の親としてその養い親になついていくということが一番望ましい形なんですよ。ですから、ここをどういうふうにやってくださるのか、ここのところが一番問題なんですけれども、目下草案であってまだまだ何年か先になるだろうという御意見でございますので、これ以上ここでもう申し上げてもこれは無理でございますし、ただそういったことが願わくばなってほしい、またそういう線に近づくことによって心情的にそういった感情的にも心理的にも養う方も養われる方も、安心して生活ができるというような状態にしていただきたいというのが私の願いなんです。これに関しまして大臣の所見を一言受け取って、終わりにしたいと思います。
  299. 嶋崎均

    国務大臣嶋崎均君) 先ほど来民事局長から説明がありましたように、現在の段階では案を練って、参事官室の案として報告をし、そしてそれを世の中に問うてどういう整理をしようかというような段階の話であるわけでございます。しかし、一方、今御指摘のようないろんな養子をめぐる幾つかの問題点があるわけでございまして、そういう問題を日本の実情に合った形の中でどう処理をしていくのかという意見もあるわけでございますので、そういう点を十分意見を聞き上げまして、そういう中でこの制度を適正に運用するように今後いろいろ積み重ね努力をしていかなきゃならぬというふうに思っておる次第でございます。
  300. 丸谷金保

    委員長丸谷金保君) 他に御発言もないようですから、法務省及び裁判所決算についての審査はこの程度といたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後五時散会      —————・—————