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1985-11-20 第103回国会 参議院 環境特別委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十年十一月二十日(水曜日)    午後一時開会     ―――――――――――――   出席者は左のとおり。     委員長         矢田部 理君     理 事                 山東 昭子君                 吉川  博君                 菅野 久光君                 飯田 忠雄君     委 員                 石井 道子君                 上田  稔君                 梶木 又三君                 原 文兵衛君                 藤田  栄君                 星  長治君                 森下  泰君                 矢野俊比古君                 柳川 覺治君                 片山 甚市君                 寺田 熊雄君                 高桑 栄松君                 近藤 忠孝君                 中村 鋭一君    国務大臣        国 務 大 臣        (環境庁長官)  石本  茂君    政府委員        環境庁長官官房        長        古賀 章介君        環境庁企画調整        局長       岡崎  洋君        環境庁企画調整        局環境保健部長  目黒 克己君        環境庁自然保護        局長       加藤 陸美君        環境庁大気保全        局長       林部  弘君        環境庁水質保全        局長       谷野  陽君    説明員        科学技術庁原子        力局政策企画官  結城 章夫君        国立公害研究所        計測技術部水質        計測研究室長   大槻  晃君        法務大臣官房参        事官       米澤 慶治君        法務省人権擁護        局総務課長    井口  衛君        外務省国際連合        局社会協力課長  馬淵 睦夫君        文部省初等中等        教育局企画官   小林 孝男君        厚生省保健医療        局精神保健課長  小林 秀資君        厚生省生活衛生        局水道環境部長  森下 忠幸君        農林水産省構造        改善局建設部開        発課長      吉川  汎君        運輸大臣官房国        有鉄道部施設課        長        高松 良晴君        運輸省航空局監        理部航空事業課        長        黒野 匡彦君        運輸省航空局技        術部運航課長   赤尾 旺之君        建設省都市局下        水道部流域下水        道課長      斉藤健次郎君        日本国有鉄道施        設局長      神谷 牧夫君     ―――――――――――――   本日の会議に付した案件 ○派遣委員報告公害及び環境保全対策樹立に関する調査  (公害及び環境保全対策に関する件)     ―――――――――――――
  2. 矢田部理

    委員長矢田部理君) ただいまから環境特別委員会を開会いたします。  まず、去る九月、当委員会が行いました委員派遣につきまして、派遣委員報告を聴取いたします。菅野久光君。
  3. 菅野久光

    菅野久光君 委員派遣報告を申し上げます。  去る九月二十六日から二十八日までの三日間、鳥取県及び島根県の公害及び環境保全対策実情調査のため、矢田部委員長吉川理事飯田理事寺田委員木本委員及び私菅野の六名による派遣が行われました。  日程の第一日は、鳥取県庁におきまして、県の公害環境行政概況大山隠岐国立公園及び山陰海岸国立公園の概要、中海等湖沼水質状況及び対策中海干拓事業への対応等について説明を聴取し、その後、鳥取砂丘及び大山において国立公園管理状況現地視察、また、湖山池及び東郷池において汚濁状況等調査いたしました。  第二日は、「米子野鳥保護の会」の代表中海に渡来する水鳥状況等について懇談会を持ち意見を交換した後、中海彦名地区に赴き、水質汚濁状況及び水鳥渡来地現況等調査いたしました。次いで中海干拓事業について農水省現地当局説明の聴取と現地視察をした後、島根県庁において、県の公害環境行政概況中海宍道湖水質状況及び対策中海干拓事業への対応等について県当局説明を聴取しました。  第三日には、宍道湖流域下水道東部浄化センター視察した後、「中海宍道湖淡水化に反対する住民団体連絡会」の代表懇談意見の交換を行いました。  以下、これらの調査事項のうち主要な点について報告をいたします。  まず、国立公園管理状況について申し上げます。  山陰海岸国立公園の西端に位置する鳥取砂丘は、南北二キロ、東西十六キロに広がる海岸砂丘ですが、内陸砂丘的な起伏量を持ち、特異な景観と全国随一の規模とで知られています。年間百六十万人ほどの観光客が訪れていますが、滞留時間が平均七十分と短いことが観光収入面でのネックになっているようです。また、漂着する砂が年々少なくなっているため、砂丘が衰退を続けているとの説明もありました。  大山隠岐国立公園の中枢をなす大山地区は、中国山脈の最高峰である伯耆大山中心とする鳥取、岡山両県にまたがる山城から成り、昨年は百九十万人の入り込みがありました。ここでも山ろく一帯開発業者による土地の買い占めが進んでおり、自然破壊が徐々に広がりつつあります。このため、県においては重要な地域民有地買い上げを行っておりまして、現在までに三百八十五ヘクタールを完了、今後も六十五年度までに八十ヘクタールの買い上げを予定しています。  また、点在する四カ所のスキー場駐車場不足を解消するため、重要な地域自然破壊を回避しつつ増設する必要があり、ゲレンデから離れたところに建設してバス連絡することを検討しているとのことであります。  このほか、大山は土質がもろく、毎年七万立方メートルの土砂の崩壊が続いており、稜線の縦走を禁止しているとの説明もありました。  次に、湖沼水質状況について申し上げます。  今回調査した両県の四つの主要な湖沼では、昭和四十六年から四十八年にかけて、いずれも水質環境基準湖沼A類型COD三ppm以下)の指定を受けておりますが、現況は、中海海寄りの二地点を除いては環境基準達成しておりません。すなわち、五十九年度測定結果によりますと、中海では二・四ないし四・七ppm、宍道湖三・九ないし四・六、湖山池五・六ないし七・九、東郷池四・六ないし四・七という状況にあります。  また、富栄養化の指標である窒素、燐について見ますと、五十九年度の湖心での平均値で、T-N宍道湖〇・四九ppm、中海〇・三九、T-Pは両湖とも〇・〇六四となっているなど、いずれも一般富栄養化限界値と言われるT-N〇・二、T-P〇・〇二を大幅に上回っています。  両県当局におきましては、水質汚濁防止法に基づく工場事業場排水規制のほか、下水道整備の促進、底泥除去事業実施などの対策を講じているところであります。特に中海宍道湖については県条例による上乗せ排水規制を行うとともに、去る五十八年に策定した水質管理計画に基づいて総合的かつ計画的に水質保全対策を推進しております。計画によりますと、目標年度昭和七十年度における暫定目標水質を、COD宍道湖で三・三ppm、中海で三・二ppmとしています。  なお、今年三月に施行された湖沼水質保全特別措置法による指定につきましては、両県においては中海宍道湖指定の申し出を準備中であり、このために現在工場事業場排水や畜舎などの実態調査を行っており、また、関係機関との協議調整を進めていくこととしています。  最後に、中海宍道湖干拓淡水化計画に伴う環境問題について申し上げます。  中海宍道湖は、我が国で第五位と第六位の大きな湖であり、また、海との水の交流がある汽水湖であるため、変化に富んだ生物相を持つことで知られています。  ところで、中海のうち総面積の三分の一に当たる二千五百ヘクタールを干拓して農地を造成するとともに、日本海とのつながりを防潮水門で遮断することによって中海残存域宍道湖の全域を淡水化することで農業用水を確保しようとする計画が、昭和三十八年から農水省の手で進められています。現在、干拓予定地の三分の一に当たる部分ではほぼ干陸化を終え、また、防潮水門は四十九年に完成しており、水門さえ閉めればいつでも淡水化に入れる状態になっています。  農水省は、昨年八月、農業土木学会に委託した調査の、「湖外からの流入負荷量現状のまま推移するとすれば、ほぼ現況程度水質を維持しながら淡水化を進めることは可能」とする中間報告を公表すると同時に、両県に対して期間三年程度淡水化試行実施について協議を行っております。両県においては、現在学識経験者の助言を聞きつつ検討を進めているところであります。  これに対して「中海宍道湖淡水化に反対する住民団体連絡会」は、「中間報告」に強い疑問を呈し、干拓によって広大な水面が消滅することのほかに、淡水化によって貴重な生物相が失われ、また、霞ケ浦や児島湖などの先例に照らしてみても、水質が悪化しないという保証はないと指摘しております。  もとより、一たん破壊、汚染された自然の回復は極めて困難であります。淡水化試行については、専門家の有力な反論があり、住民の間に強い危惧がある以上、拙速は厳に避けるべきであります。指摘されている問題点についてなお一層の精密な検討を加え、科学的、客観的で十分に説得力のある論拠に基づく保証を得ることが先決と思われます。  中海はまた、白鳥など水鳥渡来地として重要なところとなっております。「米子野鳥保護の会」などは、彦名地区の三十ヘクタールを干拓途中の浅瀬のまま残し、水鳥自然公園をつくることを求めていますが、鳥害を心配する農業団体との間で折り合いがついておらず、地元の米子市議会でも現状においては結論を出すに至っておりません。なお、「米子野鳥保護の会」からは、本年度干拓工事計画のうち、同会が水鳥公園の設置を要望している箇所については干陸しないということで合意したにもかかわらず、実際はほとんど干陸化してしまったとの指摘がありました。これらの問題につきましては、現地において十分に意思の疎通を図り、信頼関係を維持していくとともに、水鳥の渡来する自然環境人間生活にとっても重要な価値のあることを踏まえて、ぜひ適地にその場を確保する必要があると感じた次第であります。  以上のほか、大気汚染その他の公害現状スパイクタイヤ対策、松枯れ対策都市公園事業等についても調査してまいりましたが、省略させていただきます。  なお、両県よりそれぞれ当委員会に対し、湖沼水質保全特別措置法の実効ある運用等についての要望書を、また、自然保護団体からも要望書や資料をいただいております。こうした要望事項説明資科につきましてはその抄録を会議録末尾に掲載していただきたく、委員長のお取り計らいをお願いいたします。  以上、報告を終わります。
  4. 矢田部理

    委員長矢田部理君) 以上をもちまして派遣委員報告は終了いたしました。  なお、菅野君の報告中御要望のありました鳥取島根の両県及び自然保護団体からの要望事項等を本日の会議録末尾に掲載することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 矢田部理

    委員長矢田部理君) 御異議ないと認め、さよう取り計らいます。     ―――――――――――――
  6. 矢田部理

    委員長矢田部理君) 次に、公害及び環境保全対策樹立に関する調査を議題といたします。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  7. 片山甚市

    片山甚市君 第百三臨時国会での最初の審議でもありますので、前国会までの懸案を含め、最近の環境行政のあり方についてお尋ねしたいと思います。  石本長官が就任されて既に一年余りを経過しましたが、環境行政はこの一年間どのように推移したのかを検証することは、今後の行政を進めるに当たって重要であると思います。  長官が就任された当時、二十二年ぶりの女性閣僚として内外から注目され、私自身も大いに期待したところであります。しかし、一部マスコミは当初から、国民生活環境自然環境を守る環境庁存在をうんとPRしたいとの長官発言を取り上げる一方で、国民の健康、環境整備ばかり言っても、経済の力が伴わなければ今日の日本はあり得なかったとの役所の幹部からのレクチャーで、そういうものかなと思っているとの発言をとらえ、財界寄り姿勢を危ぶむ声もありました。残念ながら、そのとおりの結果に終わったと言わざるを得ないのであります。  なぜならば、NOx、窒素酸化物対策についても、新幹線騒音対策についても、アセスメント法案についても、水質保全対策についても、公害健康被害補償法見直しの動きなどを見ても、重要な環境行政課題は山積しておるままであります。にもかかわらず、環境庁関係省庁経済界に気を使いながら調整と調和のもとで策定した指針や目標さえも無視されるかあるいは挫折するという事態が続いている現状をどう理解すればいいのですか。逆に言えば、環境行政の成果は一体何なのか。最初長官の率直な御所見を承りたいと思います。
  8. 石本茂

    国務大臣石本茂君) ただいま先生のお言葉を拝聴いたしまして、深く胸を打たれるものを覚えておりますが、申すまでもなく環境行政国民の生命と健康を守りますために生活環境を保全するという非常に重要な役割を持っておるところでございます。就任以来、環境庁へ寄せてくださる国民皆様の御要望と申しますか、あるいは御見解と申しますか、そういうものを肌身で受けとめておるところでございまして、非常にその責任の重さをひしひしと感じているところでございます。
  9. 片山甚市

    片山甚市君 私は、長官環境行政に対する基本的な姿勢が誤っていると断定しているのではありません。長官視察にもたびたび行かれ、庁内に対しても行動する環境庁になれと呼びかけておられたことを聞いています。しかし、結果的には環境庁事務局の機能の範囲と称するところに埋没しておりまして、今までの環境行政で言えることは、他の省庁に比べてその権限は極めて弱いようであります。長官がいかに調整を図ろうとしても、足して二で割るどころか、今やお願いでしかない。これでは最初から勝負が決まっているではありませんか。  例えば池子弾薬庫跡地の問題にしても、環境庁権限行政的には全くないと言ってしまえばそれまでではありませんか。長官がわざわざ現地視察され、環境保護に大きな関心を示されたという以上、権限を云々するのでなく、世論と一体となって問題解決具体策を示すぐらいの行動がとられるべきではないでしょうか。国民もまたそのことに大きな期待をかけていたと考えるのですが、このことについてどう考えますか。
  10. 石本茂

    国務大臣石本茂君) 今お言葉にありましたように、環境行政国民生活に極めて密着をしている問題でございますので、機会があるたびにその重要性につきましては訴えてまいったところでございます。  例えば、今お話しのございました池子弾薬庫跡地問題等につきましても本当にお言葉のとおりでございまして、まあこれは例でございますが、住宅建設計画しておりますのが防衛庁でございますので、防衛庁におかれましては我々が期待し希望しているように自然環境を保全するという建前を守りながら慎重に進められるであろうというふうに考えているところでございます。  お言葉のとおり、大きな権限を誇って、それをしてはいけません、これはしてはいけませんと言えるような立場にはございませんけれども、必死で私どもの考えを訴え続けますことによって理解を求めていく、また理解をされるというふうに信じて、そう考えてきょうまで歩いてまいりました。
  11. 片山甚市

    片山甚市君 今の問題が一歩でも前進をしておれば長官のおっしゃることについて理解ができるんでありますが、御承知のように、もう一度選挙しなきゃならぬ、信任を問う状態になっておるような状態でありますから、大変環境庁としては力不足だと思います。それは環境庁長官が力いっぱいやったことについて否定をするのでありませんが、しかし、環境庁政府全体の中でどんな役割を果たしておるのかといえば、非常に弱い。これは我々委員会としては納得できない、委員の一人としてそう思います。  その一つとして、国鉄新幹線騒音公害の問題でも同じことが言えます。新幹線のスピードダウンが騒音対策に最も効果的であるなら、それを命令する権限環境庁にはないと言う前に、十年も経てもなお騒音に悩む人々がいるとき、減速させてでも騒音を減らさせるとなぜ言えないのかであります。運輸省の所管だからと言いつつ運輸省代弁者になっていたのでは、環境庁は要らないと、存在をみずから否定することになるではありませんか。歴代の長官環境行政に一定の役割を果たしたと言われる当時の大石長官鯨岡長官は、役所縄張り根性からいえば恐らくとんでもない大臣であり、関係省庁からは他の問題でしっぺ返しをしてやろうとねらわれていたのかもしれません。しかし、環境庁内の古手官僚は、後難を恐れて、とにもかくにも現状では大臣には役所でつくった振りつけどおり踊ってもらおうということではないのでしょうか。  ある新聞のインタビューの記事によれば、長官厚生省在勤当時、みずからの主張を貫くために五回も辞表を書いたと聞いております。私は、その立場が格段に重くなった現在こそ、環境行政重要性を説き、問題解決を迫る長官の決断と行動が求められているときではないだろうか。先ほど申しました幾つかの課題長官在任中に進展を見るようにやってもらいたいと思いますが、どうでしょうか。
  12. 石本茂

    国務大臣石本茂君) 先生の御意見と申しますか御見解と申しますか、私も本当にそのとおりだと思います。ただ、物を言ったから一朝一夕にその結論が出るというような問題ではありませんものですから、気長に代々の長官も善処されてまいりましたし、私もその後を継ぎまして、とにもかくにも御理解を求める、関係省庁理解を求める、あるいはまた国民皆様の声を率直にお伝えする、そして物事の解決に向かって一歩でも半歩でも、二歩三歩前進できればそれにこしたことはありませんが、とにかく前進を図る努力を精いっぱいにしてまいったつもりでございます。
  13. 片山甚市

    片山甚市君 環境庁長官の任務というものについては明示されたものがありますが、ここで読み上げませんけれども、お願いしたい、理解を求めるだけでなくて、具体的に閣議の中で問題提起をして進めてもらわなきゃならぬと思っています。後から言いますけれどもそれが十分であると思いません。  中曽根総理は格好のよさや言葉遊びがお好きなようでありまして、誠実さに欠け、心がない印象の特に強いお人であります。環境行政については、「花と緑を」などと口にされたこともありますが、総理は自然の豊かさを知らない人であると思います。バラを庭に植えるだけの発想では、人間が自然と調和して生き続けるために環境保護と育成にどれだけの金と時間がかかるか、ましてや環境破壊がどれほど進んでいるかなどについては全く関心のない人のように思います。こんな総理の好みで入閣され、中曽根内閣の単なるアクセサリーのままで終わったのでは長官としても不本意であろうと思いますし、内外期待にこたえることにもならないと思います。残された在任期間中に、石本環境行政がここにあったと言える施策を示す自信をお持ちでありましょうか。ぜひとも示してもらいたい。少し厳しく言いましたけれども。  環境庁が胸を張って仕事をするときには国民は大変助かるのであります。一般行政が胸を張ったらいかぬというのではありませんが、環境庁が他の省庁と肩を並べて物を言い、イニシアチブをとるときに世の中が明るくなる、そう思いますが、その役割を果たす用意がございませんか。
  14. 石本茂

    国務大臣石本茂君) 今先生が申されましたようなことを常に心いたしまして、例えば姿勢は低くしておりましても心の中では必ず私の言うことは聞いてもらうんだと、聞かせるんだというような心持ちできょうまで歩いてまいっております。  私どもの庁の官僚一同も皆そのつもりで、必死で、もがく思いで先を見詰めながら歩かしていただいておりますし、こうした場をかりまして委員先生方の御高見、御高説なども十二分に役立たしていただいておりますので、そのことは十分心して頑張ってまいりたいと思っております。本当にありがとうございます。
  15. 片山甚市

    片山甚市君 長官のお言葉を聞きながら、具体的に今日的問題であります国鉄新幹線騒音公害の問題についてお聞きしたいと思います。  去る十月二十一日環境庁は、「新幹線鉄道騒音に係る環境基準達成状況」の調査結果を関係機関に示し、今後の対策を求められましたが、調査結果と要望した対策とを簡潔に御説明を願いたいと思います。
  16. 林部弘

    政府委員林部弘君) お答えいたします。  本年の七月に達成期限が参りました東海道並びに山陽新幹線につきまして、今年の八月に関係地方公共団体十三都府県の協力を得まして騒音状況等調査を行いました。その結果を申し上げますと、この十年ほどの間に騒音状況そのものは相当改善を見てきておりますし、また、住宅防音工事も七十五ホン対策ということで相当のレベルにまで進んでいるわけでありますが、環境基準達成という観点からマル・バツ式に判断をいたしますれば、その状況は決して芳しいものではございませんで、軌道の中心から側線を引きまして百三十ポイントで測定をいたしておりますが、代表的な二十五メートル離れた地点、それから五十メートル離れた地点につきまして環境基準達成状況は、東海道におきましてはそれぞれ一六%、四九%、山陽につきましては一〇%、二二%ということで、達成率が非常に低い状況でございます。  このような状況を踏まえまして、私どもといたしましては、現在の時点で技術的に用いることのできるものを極力行使していただくということで、音源対策といたしましては、当面七十五ホンレベルを何とかして達成をしていただくということで、一番の重点として七十五ホン達成のために音源対策をやっていただく。その際の重点的な地域といたしましては、名古屋地区におきますように住宅が密集して連携をいたしておりますような地域から優先的に手をつけていただくということで、おおむね五年以内にそういうような問題を解決していただくというようなことをまず申し入れております。  それから、防音工事が当然必要になってまいりますが、七十五ホン対策の問題、まだ一〇%程度残っておるというふうに聞いておりますので、それを一日も早く達成していく。また、できる限り七十ホン達成を可能にできるような技術に向かっても技術開発の推進に努めていただくというようなことで、そういうことについての開発にさらに積極的に取り組んでいただく、おおむねそういったような内容を申し上げております。  そのほか、沿線の適正な土地利用問題等につきましても、運輸省のみならず建設省の方にも要請をいたしておるというところでございます。
  17. 片山甚市

    片山甚市君 環境基準が定められたのは昭和五十年の七月二十九日でありますから、発生原因除去もしくは減殺の対策を求めて既に十年を経過いたしました。これは目標達成期限昭和六十年七月二十九日と定めてあるからでありまして、騒音被害を受けている地域住民にとっては、十年もの長期間にわたって受忍を強いられてきたものであります。この地域住民に対し、長官は今どのような御所感をお持ちですか。
  18. 石本茂

    国務大臣石本茂君) 騒音公害といいますのは、今局長も申しておりましたが、なかなかはかばかしく基準に当てはめることが困難な状況にございますことは御推察をいただいているところだと思うわけでございますけれども、あの沿線で生活なさる皆様の日々を思いますと、私は身が切られるほどに、どう言っていいか表現できませんけれども、本当にお気の毒という言葉は当てはまりませんが、どういうふうにしてあげたらお気が済むのかというぐらいの気持ちで、本当に御苦労さまだというふうに考えております。
  19. 片山甚市

    片山甚市君 今長官がおっしゃったことは、ことしの五月一日の現地調査のときに会場でお話しされて、よくこれまで辛抱してくれました、国鉄に何らかの措置をとることができないかについて申し入れてみたい、こういうようなお言葉でありましたが、私は、そういうような長官一般の人々に会って自分の所信を述べられることは結構なんでありますが、そこで、環境基準達成状況を公表した際の長官の談話については、「基準は達成されていないが、」「沿線の環境はかなり改善されてきた」とあります。ということは、もう少しの努力で基準達成ができるとの理解に立つものと受けとめるが、五月一日におっしゃった、よくこれまで御辛抱願ったなと思うということと今おっしゃったこととについては、私は大きな開きがあるように思うんですが、なぜそうおっしゃるんでしょうか。
  20. 石本茂

    国務大臣石本茂君) 私は、今申されましたように、開きがあるじゃないかとおっしゃいますけれども、私の気持ちはちっとも開いておりません。ただ、この時点で、事務的レベルでホンを改善といいますか、基準はそのままでございますけれども当分七十五ホンという見解を出しました時点で、私は非常に不適切な発言をしたと思っております。そのことで皆様に大変御迷惑をおかけいたしましたことをその時点から深く反省をしておりますし、また、深く今日までおわびをしてきております。私の初めて感じた気持ちとちっとも変わっておりませんことを先生理解いただきたいと思います。
  21. 片山甚市

    片山甚市君 長官のお言葉を聞いておるともっともでありますし、作為的でないのでありますからこれ以上追及することはどうかと思いますが、そうでないならこの文言は、表現としては甚だ適切でないと思います。私は、悪い言葉で言えば、欺瞞的に書かれた表現ではないかと思う。「環境はかなり改善されてきた」とは何を尺度にしているのか理解に苦しむところです。  基準達成に相当な努力を要するものであったなら、十年間の期間中にも適切で効果的な助言や対策を講ずべきではなかったか。国鉄の置かれている現状状況は厳しいとわざわざ理解を示しておられるのに、地域住民の苦痛に目を向けた所感が述べられていない上、今後の努力を期待しお願いするのみであっては、環境行政はだれのためのものであるか。言うまでもなく財界のためであるとの批判を否定できないのではないかと思います。本来ならば、環境庁達成の必要性について基準を示し、期限を設けてまで対策を求めるなら、もっと厳しく未達成の怠慢を指摘し、速やかな対策を求めるべきではないか。  以上について御所見を願いたいんですが。
  22. 石本茂

    国務大臣石本茂君) 今委員のお言葉にもございましたように、国鉄の現状は非常に厳しいものがあると思う、しかしながら環境対策については優先的に取り組んでほしいという意味を含めましての前言でございまして、私はその後で続けて申しましたことは、何よりも環境問題を優先してほしい、それから、苦しんでおられます地域住民の問題も早急に解決への段階をとってほしいということを申し上げております。
  23. 片山甚市

    片山甚市君 局長、「かなり」とはどういうことですか。「かなり改善されてきた」という「かなり」とはどういうことですか。
  24. 林部弘

    政府委員林部弘君) 先ほど調査の問題について申し上げましたが、内容にもう少し立ち入って申し上げます。  対策が行われておりませんでした四十八年当時、それから五十一年当時、それから今回六十年、その経緯を追っかけてみますと、今回百三十ポイントの中でも前回と同じように調査しているところがございまして、音源対策レベルで申しますと、これは平均的な姿ということになりますが、おおむね八ホンないし十ホンぐらいは下がっているということが言えるのではないか。それから防音工事につきましても、先ほどちょっと申し上げましたが、七十五ホン対策として既に九〇%程度まで防音工事が行われている、それから七十ホン対策といたしましても、既に病院、学校といったような福祉施設については防音工事がおおむね完了している、こういったような状況でございますので、先ほど冒頭に申しましたように、達成ができているかできていないかという、私、適切かどうかわかりませんが、マル・バツ式という表現を申し上げましたが、そういう意味では確かに達成率は決して芳しいものではない。しかし、内容としてはやはりそれだけ改善をしてきているというふうに評価をしてもいいのではないか。そういうような評価が改善をしてきていると理解をしてもいいのではないかと、私、そういうように大臣に御説明もいたしました。  先ほど大臣がお答えいたしましたことにもし判断に誤りがあるというのであれば私の説明の仕方が悪かったということになるわけでございますが、私は今までの事実関係についていろいろな対策が積み重ねられて、発生源対策について言えばおおむね八ないし十ホンぐらい軽減してきている。それから、そういう達成ができない状況を踏まえて、次善の策としての防音工事のようなものがかなり行われてきている。そういう点を改善されてきていると評価をしたと、こういうことでございます。
  25. 片山甚市

    片山甚市君 それなら、先ほど聞いたことについて答えてください。本来ならば環境庁達成の必要性について基準を示し、期限を設けてまで対策を求めたものならば、もっと厳しく未達成の怠慢を指摘し、速やかな対策を求めるべきでなかったか。具体的にそれを答えてください。しましたか。
  26. 林部弘

    政府委員林部弘君) こちらから要請をいたしました中には、今先生が御指摘のようなことは当然入っておるわけでございますし、受けとめられます運輸省サイド、国鉄サイドの方でも、厳しい現実を受けとめて、私どもから申し入れました問題につきましてはできるだけ実現を図るという方向で対処していただけるものというふうに私ども承知しておるところでございます。
  27. 片山甚市

    片山甚市君 納得できませんが、公害対策基本法第九条では、環境基準について、「人の健康を保護し、及び生活環境を保全するうえで維持されることが望ましい基準を定めるものとする。」と規定されております。政府に基準確保の努力義務を課しておるのであります。その早期実現は所管省庁の責務であり、長官として基準達成を厳しく勧告すべきではないかと思いますが、いかがですか。  環境庁はこれまで新幹線騒音に関して二回勧告を行っておりますが、今回はなぜ勧告を行わなかったのですか。今後、勧告はどのような場合に行うつもりでありますか。まずお答え願いたい。
  28. 石本茂

    国務大臣石本茂君) なぜ勧告あるいは閣議発言をしなかったかということでございますが、今日までの経過を我々じっと見てきておるわけでございますが、事務レベルでの申し入れという形をとりましても、運輸省あるいは国鉄ではそれを十分に受けとめて、今後とも一層の努力が行われるというふうに確信をしているからでございます。
  29. 片山甚市

    片山甚市君 長官が確信しておるんですから、国民の皆さんは、必ず実行できるということだと聞いたと思います。それは今後の実行状態を見て判断をしますが、これがこの場限りの話にならないように、確信しておったけれども実行できなかったということがないようにしてもらいたい。  そこで危惧を持ちます。長官は十月二十一日の長官談話のほかに、翌日の閣議の前に、関係閣僚、運輸大臣に口頭で要望を行ったとのことでありますが、その趣旨はどのようなものであるか。なぜ閣議で正式に発言されなかったかについてお聞かせを願いたいのです。
  30. 石本茂

    国務大臣石本茂君) ただいま申しましたように、運輸省あるいは国鉄は、環境庁の申し入れてまいっておりますこと、今申し入れますことは必ず聞いてもらえると、そういうふうに信じておりましたものですから、閣議では申しませんで、その後運輸大臣に向かいまして、この申し入れをしておりますことについてぜひ実現できるように配慮をしてくれということを念を押したわけでございます。
  31. 片山甚市

    片山甚市君 このことを、中曽根総理大臣は非常にスマートなお方ですが、その前でなぜ念を押されなかったのですか。
  32. 石本茂

    国務大臣石本茂君) 閣議の席上で申し上げようか、それともこの問題は運輸大臣に直接申した方がいいのか、これちょっと判断に迷いました。けれども、今大きな問題が幾つも重なっております閣議の状況でございますので、遠慮したというわけではございませんけれども、とりあえず運輸大臣に申し入れをしたわけでございます。
  33. 片山甚市

    片山甚市君 運輸大臣はそのことについて肯定的であっただろうと思いますが、もし違ったら後で御返事願いたいと思います。  基準達成率は、東海道新幹線について見ると、軌道の中心からの距離十二・五メートルの地点で八%、二十五メートル地点で一六%、五十メートル地点で四九%、百メートル地点ですら八九%と極めて低く、特に名古屋地区では最悪の八十九ホンが測定されておりますが、このことに対する厳しい指摘がないのに、発表当時記者会見で長官は、先ほどおっしゃったように、人間の習性で沿線の皆さんも騒音になれてしまっているのではないでしょうかという、まあ御本心ではありませんが、そう発言されて、被害者の人たちからも記者からもお話しがあり、訂正されたそうですが、被害地域住民の大きな反発を呼んでおりましたが、この際もう一度、大臣はそんなことを言うつもりはなかったことについてこの席上でお答えを願いたいと思います。
  34. 石本茂

    国務大臣石本茂君) 私はこういう発言をする意思はございませんでしたけれども、事の成り行きと申しますか、私の大変不適切な発言で非常に皆様に御迷惑をおかけしたことを深く反省をしておりますし、現在、ただいまでも深くおわびをしているところでございます。
  35. 片山甚市

    片山甚市君 長官、何回も言って申しわけございませんでした。しかし、この席上で長官からきちんとしたお言葉をいただいた方が後日のためになる、新聞記事の発表もさることながら、委員会でお聞きした方がいいと思って少し乱暴な質問をしましたが、やむを得ませんから、お許しを願いたいと思います。  次の質問に移ります。  環境庁は、調査結果に基づいて運輸省及び建設省に対し必要な対策を推進するとのことであるが、音源対策について、なぜ、環境基準値Ⅰ類型七十ホン以下とするを無視し、住宅集合地域環境基準値Ⅱ類型七十五ホンとするに後退させたのか。さらに、なぜこれを今後五年間の目標としたのか。これでは余りにも被害住民期待と我慢を裏切るものではないか。基準値Ⅰ類型の七十ホン以下は達成不可能と判断したからそうしたのですか。そうであれば、十年間は何のための経過期間だったのかということになります。  七十ホン以下にする努力は全く見られないというのが被害地域の人々の言い分であります。国鉄は、名古屋付近の発生源対策の試験結果を本年五月十八日に示しておりますが、測定条件となる工事は在来工法と同じものでありまして、同種のものであります。やるつもりならいずれも数年以前から着手できたものであり、試験結果は、減速せずおおむね七十五ホンまで下げられるという内容のものであります。在来工法でこれから五年かけて目標にした環境基準に達しないものを長官がお願いするということでは、被害住民が納得しないのは当然でありますが、それについての御所見を承りたいと思います。――長官に聞いているんです。
  36. 石本茂

    国務大臣石本茂君) 基準に関しますことでございますので、事務当局からとりあえずお答えをさせていただきたいと思います。
  37. 林部弘

    政府委員林部弘君) 御説明させていただきます。  先生の御指摘のお言葉ですと、それは在来工法ではないかという御指摘でございますが、現実に開発されていく技術というものが現場で適用されるためには、やはり相当いろいろなところでテストをするという必要もあるわけでございますし、私ども国鉄当局側と技術的な問題について事務レベルで随分話し合いもいたしました。意見の交換もしております。今先生六十年五月十八日ということでおっしゃいましたが、実は、私どもこの名古屋付近で発生源対策の試験をやった結果ということを承知いたしましたのはこの五月十八日以降でございます。テストをずっと前からいろいろやっておるというような話は聞いておりましたけれども、この時点でおまとめになって、ともかく新しい技術を現場に適用できるめどが立った、つまり昔からある構築物である東海道新幹線においてもこれが使えるようなめどが立ったというように私どもは伺ったわけであります。  したがいまして、開発それ自体はもっと以前になされていたのであろうと思いますけれども、この名古屋周辺でもってテストをやって、これが東海道線の沿線においても適用が可能になるということを確認されたというのは、この一連のテストが終わった結果であるというふうに私ども理解をしておるわけでございまして、今先生御指摘になりましたそういった対策が、現在の時点での技術的に最新のものであり、現場に適用できる最新のものである。それは非常に残念であるけれども七十ホン対策という点では、発生源対策としてはそこまではできない。しかし、七十五ホンを何とかやるということについてはある程度見当がついた段階であるというふうに私ども理解をいたしまして、先ほど申しましたように、沿線の名古屋地区のように住宅が密集して連続しているようなところから早急に着手をしていただいてそこの対策を急いでほしい。その考え方はⅠ類型、Ⅱ類型ということではなしに、沿線で住宅の密集しているようなところはやはり被害を受ける住民の方も多いということでございますから、そういうところに新しい技術を早急に投入をして解決をしてほしい。つまり、環境基準達成のステップと申しましょうか、踏むべき手順としてそういうところから確実につぶしていっていただこうということから、具体的にこういう点に重点を置いてやってほしいということを私どもは申し入れたということでございまして、環境基準そのものを変えたとかいうことはないわけでございます。
  38. 片山甚市

    片山甚市君 それでは、七十ホンを七十五ホンにした根拠は何ですか。
  39. 林部弘

    政府委員林部弘君) 今申しましたように、音源対策として七十ホン対策がまだ技術的に可能になっていない。しかし、七十五ホンについては、今回のテストで新しい技術でそれについてはめどがということで、私どもはその結果を現場に適用してほしい、そういう意味でそういうふうに線を引いたということでございます。
  40. 片山甚市

    片山甚市君 今度の工法は在来工法だと私たちは見ておりますが、環境庁の方は新しい工法を入れてやるんだと言っていますから、後日の争いに残しておきます。  この際、減速措置を含めた抜本的対策を勧告すべきであると考えますがいかがでしょう。減速措置は全国的に影響を与え、公共性の高い事業だから無理だと言うが、特に名古屋の場合はその悪い環境に留意をしてほしいということなのであります。例を挙げると、騒音値の極めて高い名古屋の六番町鉄橋、八十九ホンであります。現在では全く対策のないことを国鉄自身も認めておるところです。現状以上に改善の余地がないのかどうか。ないのなら、さらに研究開発の努力を求めるのが環境庁立場でないかと思います。といいますのは、道床のあるものにすれば可能ということで国鉄の技術者が論文に発表しておりますが、具体的に言えば、お金を使えばできるという話があるんですが、それについてどういうような考えを持っておられますか。
  41. 林部弘

    政府委員林部弘君) 私どもとしては、環境基準目標値として七十五ホンあるいは七十ホンを求めておるわけでございますし、今先生の御指摘になりました地域はたしか七十五ホン対策の対象地点だったかと記憶をいたしておりますが、名古屋地区自体はⅠ類型、Ⅱ類型がいろいろと入り組んでおりますので、あるいはⅠ類型相当のところもあるかもしれません。ただ、私どもの現在の考え方といたしましては、いろいろと検討いたしました結論として、技術的に七十五対策のところまで発生源対策はきているということ、次に七十をにらんで新技術開発を求めていくと、こういう段階にきているわけでございまして、冒頭に申しましたように、非常にひどかった時代から見ればあの地域はたしか十ホン以上平均的には下がっているというような状況もあると思いますので、七十五なり七十達成のために減速をしなさいという考え方は現在私どもは持っておらないわけでございます。  つまり、今まで技術的にそこまできているということが一つの判断のポイントでございますし、それからもう一つは、減速の問題につきましては非常に長期間、裁判所におきましても一審、二審にわたって争われて御案内のような結論が出ている。しかも、まだ訴訟そのものは次の段階にまで継続しておる、こういうような状況がございますので、今の時点で私どもから減速についてお勧めするというのは、慎重に扱うべきだと思うし、また、こういう段階では私どもがそういうことを申し上げても国鉄当局の方もなかなか受け入れがたい、こういうような状況にあるのではないかというようなことを判断いたしまして、現在の時点では私ども立場から減速を求めるというつもりはございません。  ただ、御案内のように、原告、被告というお立場でテーブルに着いてお話し合いが続けられているというような状況もございますので、私どもの今の気持ちとしては、そういうテーブルに着いておられる方同士としてはあらゆる問題を話し合うことができるわけでございますから、そういう場面において両者の納得のいくような形の解決が得られるのが最善ではなかろうかというように現在の時点では私どもは考えておるということでございます。
  42. 片山甚市

    片山甚市君 大体騒音が普通に戻れば問題はなくなるのであります。騒音公害を起ししておる間はテーブルに着いても納得できないということにしてもらいたい。通達で納得せよと言っても納得しませんから。話し合いをしようということはわかりましたが、きょうは裁判問題に触れておらないわけです。政策論議をしておるわけです。そうしないとまたいろいろとお答えはできませんと言われるから。環境庁なり運輸省なりがどういうことをやっておるか。環境庁運輸省がよく相談してやっておるから環境庁に集中して聞いておるのであります。  そういうことでもう一度聞きますが、住宅防音工事など具体的な対策は特に七十五ホン以上の区域は速やかに完了させるべきでありますが、具体的なプロセス、完了時期等はどうなっているのか、関係省庁から回答を願いたいと思います。この場合は運輸省環境庁と両方が答えてもらいたい。
  43. 林部弘

    政府委員林部弘君) 私どもが今回要請をいたしました中では、五年以内に完了していただきたい、すべての政策について五年以内に完了していただきたい、こういうことで申し上げておるところでございます。
  44. 高松良晴

    説明員(高松良晴君) お答え申し上げます。  運輸省としましては、現在の住宅防音工事につきましては七十五ホン以上の家屋に対して実施しております。防音工事の申し出のありますものについてはすべて対応しておりますが、住宅の持ち主の御事情でまだ申し出をなされない方も含めまして、大体九〇%程度は進捗しておると考えております。今後とも鋭意その進捗を図るよう国鉄を指導してまいりたいと思っております。  また、先ほど来御議論ございました東海道・山陽新幹線の環境対策につきましては、去る十月の環境庁の要請を受けまして私どもその趣旨を踏まえまして現在国鉄に検討さしておるところでございますし、やはり先ほど長官から再三お話しございましたように、私どももその意を酌み、十分努力してまいりたいと考えております。  以上です。
  45. 片山甚市

    片山甚市君 環境庁に聞きますが、今のようなことで運輸省から回答があったんですか。
  46. 林部弘

    政府委員林部弘君) 私どもはまだ要請をした段階でございまして、正式にお返事はいただいておりません。
  47. 片山甚市

    片山甚市君 いつまでにいただくつもりでおりますか。延ばすわけにいきませんのです。時間が迫っておるんです。
  48. 林部弘

    政府委員林部弘君) できるだけ早急にと考えておりますし、できることなら、年内にお返事がいただければなおいいと思っております。
  49. 片山甚市

    片山甚市君 被害者の方は一日も早くきちんとした返事をいただいて、それを検討して、誠意があるのか、ないのかということについて判断したいと思うんです。長官の方にお願いしますが、年内などと言わずに、今ここでしゃべったんですから、既にしゃべったものを回答したらいいんです。きちんとしてもらいたい。きょうは何月何日と言いませんが、近日の間にやってもらいたいという私の気持ちですが、とにかく文書をもらいたいというふうに言っておきます。返事は要りません。しなかったらしないで、委員会は終わりません、始まったばかりですからこれからたびたび同じことを言います。  新幹線騒音対策は、環境庁の政策目標が十年たっても達成されず、現状を追認するのみで、基準もみずから大幅に後退させた上その見通しもあいまいということは、単に行政責任のみでなく、環境庁存在自体も問われていると先ほどから言ってきました。問題解決に対する長官の決意を再度確認しておきたいのですが、一つは東北新幹線訴訟、東京北区住民提訴の和解事項では、百十キロの運転で七十ホン以下にするということになっております。七十ホン以下を実現するためには減速措置も必要であるとするのが環境庁立場じゃないのか。これについても長官からお答え願いたいと思います。
  50. 石本茂

    国務大臣石本茂君) まず決意でございますが、今回運輸省などに申し入れた措置は、環境基準を着実に達成させるために当面なし得る最大の努力を求めたわけでございます。私としましても、環境基準達成に向けまして今後ともできる限り努力をしていきたいというふうに考えております。  それから、減速の問題でございますが、先刻局長もお答え申しましたように、慎重に考えなければならない問題だということ、この考えは変わっておりません。私といたしましては、二度にわたります判決の社会的重みとこれまでの諸対策の推進によりまして騒音状況が全般的にかなり改善されていることを考えれば、従来の考え方を変えなければならないとは今思っておりません。  以上でございます。
  51. 片山甚市

    片山甚市君 東海道新幹線の問題について申し上げたのは、やはり住民の方々の数が限られておりますだけに、我々国会の中で熱心に取り上げなければ取り上げてくれる者がありません。裁判をしてもあのとおり、公共性が優先をすると。人間の命よりも公共性だと言われると大変悲しゅうございますが、これは日本の国の高度成長をやってきた産業政策でございますし、また、住民を弾圧するために使う公共性だと思っております。  大臣が先ほどから胸の痛むような思いをするとおっしゃっているように、どの問題を取り上げてみても、公害問題は人として生きていくのに大変な苦しみを与えておる。これを除去するのが他の省庁ではありませんで環境庁であります。環境庁の任務は人救いをする、人間の健康な生活を取り戻すための役割、健康を侵させないためのあらかじめの措置をとることのできるガイドラインを出すことだと思っておるんです。その点で大臣におっしゃっていただいても腑に落ちないのは、余りにも各省庁権限が強くて環境庁意見が通っていない。こういうようなことでは日本国民は安心して日本列島の中に住めなくなるじゃないか。環境庁ができたときの日本列島の公害の渦は言うまでもない。環境庁ができてから若干改善されたと思うと、もう一度巻き返しの公健法の見直しを初めいろいろなことが出てまいります。次の時間に質問させていただきますので、きょうはただ一つ新幹線問題だけ取り上げました。大臣がおっしゃったことについて、言葉の端でなく環境庁全体が長官のお言葉のように頑張ってもらうように期待をして、本日の質問を終わります。    〔委員長退席、理事菅野久光君着席〕
  52. 矢田部理

    矢田部理君 これは私の地元の問題でもあり、また国民の健康と生活に日常的にかかわる問題でもありますので、私の方から質問させてもらいます。  実は、つい先日の新聞で、筑波研究学園都市の水道水の中にジベンゾフランという物質が混入されている、あるいは含まれているという極めてショッキングなニュースがございました。地元はもちろんでありますが、各地の水道関係者などにも住民の方々からいろんな問い合わせが実は来ているわけであります。それで、この点に関して幾つかの問題点を伺ってまいりたいと考えております。  まず、この研究は環境庁国立公害研究所の研究から出てきた問題点でありますので、現場の研究者の方に伺いたいのでありますが、そもそもこのジベンゾフランという物質はいかなる物質なのか、どんな性質を持った物質なのかということを端的に御説明をいただきたいと思います。
  53. 大槻晃

    説明員(大槻晃君) それではお答えいたします。  ジベンゾフランと申しますのは、私専門でございませんのではっきりしたことはわかりませんが、私が知ります限りでお話しいたしますと、昔殺菌剤または殺虫剤で使われていたという文献がございます。そういうものでございます。
  54. 矢田部理

    矢田部理君 殺虫剤あるいは殺菌剤として昔使われていたということになりますと、それなりの毒性があると思われるわけでありますが、同時に、発がん性や催奇性という疑いがあるというような指摘もあるのですが、その点はいかがでしょう。
  55. 大槻晃

    説明員(大槻晃君) その点につきましては、私専門ではございませんので、わかりません。
  56. 矢田部理

    矢田部理君 体内に蓄積をするという蓄積性というのでしょうか、残留性という表現をしている人もあるようでありますが、そういう性質はあるのでしょうか。
  57. 大槻晃

    説明員(大槻晃君) その点につきましても、私専門でございませんのではっきりいたしません。
  58. 矢田部理

    矢田部理君 筑波の水道水に発見された物質は、ジベンゾフランと、もう一つ一塩化ジベンゾフラン、二つの物質が発見をされたというのでありますが、一塩化ジベンゾフランというのはどういう性質なり毒性なりを持っているのでしょうか。
  59. 大槻晃

    説明員(大槻晃君) 私自身は分析化学者のために、先ほどからお話ししていますように、化合物を合成する技術の方は持っておりますが、その毒性については私どもちょっと研究しておりませんのでわかりません。
  60. 矢田部理

    矢田部理君 こういう物質が筑波研究学園都市の水道水の中に含まれていた原因については、どんなことが考えられるでしょうか。
  61. 大槻晃

    説明員(大槻晃君) 私どもの研究の目的といいますのは、いわゆる非常に微量な物質の分析方法、特に環境水中の微量物質の分析法の開発、その過程で出てきたものでございまして、たまたま水道水を測定したということでございます。実際には、研究所内の水道水の蛇口から直接水を取りまして、我々が改良してきました方法を用いて測定した結果出てきたということでございまして、原因については、確証を持ってお答えできません。
  62. 矢田部理

    矢田部理君 これは一つの指摘として、水は霞ケ浦の水を取って筑波の水道用水にする。霞ケ浦の原水にはその種物質は発見されず蛇口から取った水に発見をされたということから、水道管そのものに原因があるのではないかということを指摘する向きもあるんですが、この点はいかがでしょうか。
  63. 大槻晃

    説明員(大槻晃君) 私どもの研究結果では、矢田部先生がおっしゃいましたように、原水とそれから蛇口から取った水で出てくるか出てこないかという結果だけでございます。したがいまして、その間で何らかの形のいわゆる汚染があったことは確かでございます。しかし、どこから出てきたかと言われますと、私ども確証実験をやっておりませんのでお答えできません。
  64. 矢田部理

    矢田部理君 水道管、これは鋼管のようでありますが、その鋼管にさびどめ用として塗られているエポキシ樹脂というんですか、塗料が原因なのではないかというような見方もあるようですが、その可能性はあるというふうに考えられますか。
  65. 大槻晃

    説明員(大槻晃君) 私ども、実際の管について確証実験をやっておりませんので、何ともお答えできませんですが。
  66. 矢田部理

    矢田部理君 どうもあなた、少し逃げ回っているんじゃないの。  これはアメリカの雑誌に発表したんですね。
  67. 大槻晃

    説明員(大槻晃君) はい。
  68. 矢田部理

    矢田部理君 あなたもたしか研究者、雑誌に論文を書いた責任者の一人になっていませんか。
  69. 大槻晃

    説明員(大槻晃君) はい、なっております。
  70. 矢田部理

    矢田部理君 なっておりますね。今私が申し上げたことをこの論文そのもので指摘をしているんじゃありませんか。忘れられましたか。
  71. 大槻晃

    説明員(大槻晃君) じゃ、この論文の内容についてちょっと御説明……
  72. 矢田部理

    矢田部理君 いいんだほかのことは。  私が伺っておりますのは、その部分について記述が現にこの論文にありますので、お忘れではないかと、こう伺っておるのです。
  73. 大槻晃

    説明員(大槻晃君) 忘れておりません。
  74. 矢田部理

    矢田部理君 この論文を私なりに訳したところによりますと、いろんなコメントがあるわけでありますが、入り口のところでは発見されず、蛇口から出てきた水で発見をされたので、筑波の上水道の中のpH類というのですか、の発生源が排水システムの中のコールタール塗装のパイプであることを示唆しているということで指摘を論文自身がされているわけですね。ですから、私の質問に対しては、その可能性はあるというふうに答えるのが筋ではなかったんでしょうか。
  75. 大槻晃

    説明員(大槻晃君) それではお答えいたします。  私ども化学的な論文を書く場合に、例えば示唆するというような言葉をしばしば使います。それは、私ども確証がないときに、つまり、今まで持っております私どものデータまたは外国なりで発表された知見を総合して考えたときにそうであろうということでありまして、これは確実に確認したということではございませんので、そうお答えいたしました。
  76. 矢田部理

    矢田部理君 余り行ったり来たりしたくないんですがね。私がお聞きをしたのは、その塗料、タールなどが犯人の可能性があるのではないかという質問をしたわけですから、その可能性は、可能性としてはあるというふうに承ってよろしいんですね。
  77. 大槻晃

    説明員(大槻晃君) はい、おっしゃるとおりでございます。それ自身は外国の論文にもそういう研究報告がございます。
  78. 矢田部理

    矢田部理君 そこで、今度は厚生省に伺っていきたいと思うんでありますが、この水道管は例えば塩ビでつくられておったりそれから鋳鉄管などでつくられておったり、いろいろな種類があるようでありますが、このタール性エポキシ塗料というようなものが塗られている、塗料として使われている水道管というのは、どの程度日本国内にあるものでしょうか。
  79. 森下忠幸

    説明員森下忠幸君) 御説明申し上げます。  これは主として鋼管、スチールのパイプに使われておりますが、一部鋳鉄管の異移管と申しまして、曲がったパイプとか、こういうところに使われております。  全体でどのくらいかということでございますが、鋼管は我が国の水道の配水管の中で約四%使われておりまして、そのうち先生仰せの系統の塗料を使っておりますものがその八〇%。そうしますと、約三%ということでございます。それから、鋳鉄管の曲がり物などに使っておりますものが若干ございます。これは〇・何%ということでございまして、合わせまして日本の水道の配水管の約三・三%程度がこの塗料を使っておると、こういうことでございます。
  80. 矢田部理

    矢田部理君 そこで、この塗料そのものの性質等について、厚生省は分析なり検討なりをされたことはあるんでしょうか。
  81. 森下忠幸

    説明員森下忠幸君) 当然衛生の観点からチェックはしてございますが、今回公害研究所の方で開発された技術というのは、私どもが通常使います技術よりもおよそ一万分の一ぐらいの微量なものまで検出されるということでございまして、従来私どもが使っておりました技術ではそういうものは検出されておらないものでございます。
  82. 矢田部理

    矢田部理君 このタール性樹脂についての化学的な分析結果なり検討をしたものはあるんですか。
  83. 森下忠幸

    説明員森下忠幸君) その樹脂の組成等については、データはございます。
  84. 矢田部理

    矢田部理君 単なる組成ではなくて、樹脂そのものの持つ性質、特性、それから水道の水ですと塩素を使うわけですからね、塩素とそれが結合した場合の効果といいますか、どんな影響が出てくるかなどについて、厚生省自身検討した結果あるいは化学的に分析した結果はございますか。
  85. 森下忠幸

    説明員森下忠幸君) それについてただいま持ち合わせておりません。
  86. 矢田部理

    矢田部理君 先ほどのジベンゾフランにも発がん性の性質があるというようなことが言われているわけでありますが、そのもとになったであろう、あるいはその可能性の一つとして考えられるタール自身ですね、この塗料自体の中にも発がん性物質が含まれているのじゃないか。発がん性の要素があるのではないかという指摘などもなされているのですが、その点はいかがでしょうか。
  87. 森下忠幸

    説明員森下忠幸君) 先ほどの外国文献等で承知はしております。
  88. 矢田部理

    矢田部理君 あるということですか。
  89. 森下忠幸

    説明員森下忠幸君) そういう情報があるということは承知しております。
  90. 矢田部理

    矢田部理君 アメリカなどではかなりこの研究が進んでおりまして、タール性樹脂と、それから塩素、水道の中に、何といいますか、水を飲めるようにするために入れるんですね、この塩素が結合したための検討なり研究なりが相当進んでおるという話も耳にするのでありますが、その実験の結果とか研究の状況などについては、厚生省はつかんでおりませんか。
  91. 森下忠幸

    説明員森下忠幸君) 申しわけありませんが、ただいまのところ持ち合わせておりません。
  92. 矢田部理

    矢田部理君 アメリカでは、その結果として、この種タール性樹脂を使った水道管の取りかえをも検討に入っているというような話も、これは私確認はいたしておりませんが、あるんですが、その点もつかんでおりませんか。
  93. 森下忠幸

    説明員森下忠幸君) アメリカでそういう塗料を禁止したというふうには伺っておりません。申しわけありませんが、それにつきましてただいま情報は持ち合わせておりません。
  94. 矢田部理

    矢田部理君 そこで私は、これは環境庁長官などにもぜひ御検討をいただきたいのでありますが、もともとは確かに水の分析といいますか、水質の分析をやっておられた副産物としてこういう結果が出られたので、いろんな説明の仕方はあると思うのでありますが、いずれにしてもかなりの毒性があるのではないか。それから催奇性とか発がん性というような性質も持っているのではないか。それは塩素と結合した場合によりいろんな可能性が、さらに毒性の可能性がふえるのではないかというような指摘などが実はなされておるわけですね。  私たちも、現に飲む水ですから、余り問題をあおるということをするつもりはないのでありますが、それに対して環境庁御自身は、どちらかというと、いや薄口のものだから、また量が少ないから大したことないと。それは大したことないにこしたことはないし、そのことを期待するわけではありますが、先ほど現場の技術者からお聞きをしますと、専門でないということもおありかもしれませんが、どうもまだまだそういう残留性とか毒性とか、問題の物質の性質についてつかんでおらない。つかんでおらない者が、薄いから大丈夫だとかいっぱい飲まなきゃ大丈夫だということだけど、ちょっとやはり説明が不足なのでありまして、この問題の本質的な究明を、とりわけ研究を緊急にすべきではないのかというふうに思うのですが、長官いかがでしょう。――いや、長官の方から。
  95. 石本茂

    国務大臣石本茂君) ただいま先生申されますように、今回検出されました程度のごく微量であるというようなことから、人体には影響はないであろうというふうに聞いております、素人でございますから。  したがいまして、今回の分析結果から直ちに新たな行政的対応をとるということは考えられませんけれども、今後とも有害化学物質の情報及び知見の集積につきましては、積極的に前に進んでまいりたいと思っております。
  96. 矢田部理

    矢田部理君 私が提起をしたいのは、一つは、どうして水道水にこんな物質が含まれているんだろうかという原因究明の問題がございます。原因の究明ですね。そして、やはり一種の犯人捜しをしてほしいというのが第一点ですね。  それから二番目には、そういう物質の性質について、これは私もアメリカなどから渡って来たいろんな文献もそれなりに当たってみたし、国会図書館にもそういう分野がありますから調べてもらったんですが、率直に言うと、載っていないわけですね。そしてまた現場の化学者の方にもいろいろ聞いたんですが、例えば二種類のうち少なくとも一種類についてはまだ知見が明らかでないというような説明も私が国立公害研に行ったときに伺ったりしておりますので、その点でやはり緊急に検討をする必要がある。少なくとも研究課題にする必要があるというふうに思うんですが、長官、いかがですか。
  97. 石本茂

    国務大臣石本茂君) 今申されました二つの問題、原因の究明、これはもう当然であるというふうに考えます。なぜそういうことになったのか。それから二つ目の物質の性質でございますね。これもやはり手抜かりなく急いで究明していかなければならないというふうに考えておりますので、今後とも全力を挙げまして努力をしてまいります。
  98. 矢田部理

    矢田部理君 既に東京都知事もこの問題の重要性にかんがみて早速研究を指示するというふうに言われておりますし、今の長官のお話のとおり、やはり毎日飲む水に大変な物質が含まれていた。今すぐは健康には大丈夫だというふうに私も思います。思いますというか、そういう説明は一応受けとめますが、やはり長期的に見てどうなのか。残留性などはいかがなのか。それからタール自身にもともと発がん性があるという厚生省自身の説明もあるわけでありますから、そうだとすれば、そういうものを塗料として使うことの是非等々についてもやはりこれは検討をする必要があるというふうに思うわけですが、それはそのとおりでよろしゅうございますね。
  99. 石本茂

    国務大臣石本茂君) 御意見のとおりでございます。
  100. 矢田部理

    矢田部理君 それからもう一つ、これは現場のお考えとして、現場では、この間私が伺ったときには、もともと水質の分析をやっているので、この原因が何であるかとか毒性がいかがかということは、みずからの研究対象では必ずしもないというお話だったのですが、しかし、こういう問題が発見をされた以上、やっぱり研究をより一層強める必要があるとか、やる必要があるというお考えには立っておられるわけですね。
  101. 大槻晃

    説明員(大槻晃君) 今後とも力を入れてやっていきたいと思っております。
  102. 矢田部理

    矢田部理君 現にこの論文も、最後の締めくくりのところで、汚染源を特定するためには今後より一層の研究が必要とされるということでもありますので、長官としても、いろいろ研究の分野とか対象がおありだろうと思いますが、やっぱり少なくとも問題提起、副産物であれ研究の結果として出てきた重要な指摘でもありますので、公害研の方にもこの問題をぜひ指示をしていただきたいと思うんですが、よろしゅうございますか。
  103. 石本茂

    国務大臣石本茂君) このことは非常に重要な問題でございますから、必ず指示をいたしまして、とにかく原因の究明と、そしてその性格についてはできるだけ早い時期にお知らせできるようにというふうに考えております。
  104. 矢田部理

    矢田部理君 最後になりますが、厚生省に先ほど私が聞いたところでも、どうも塗料に使っておりますタールの分析研究がいま一つ不十分なのではないか。そういうものが十分に検討されないまま水道管に使われているとするとこれはまた、今すぐどうかということもありますが、長期的に見て大変なことにもなりかねませんので、厚生省としてもぜひそのことを緊急に、環境庁が一つ舞台としてあるわけでありますが、みずからの所管の分野でもありますから、お帰りになって検討をいただきたいということが一つ。  それから、これは私の希望でありますが、やっぱりそういうことが明白にならない限り、これから余り塗料を塗った鋼管は、ほかにもいろんな管があるわけですから、塩ビとか三種類ぐらい私は伺っておるわけでありますが、そういうより危険のないものを使うこととして、当分これはやっぱり見合わせるというぐらいの対応を検討すべきだと思いますが、厚生省いかがでしょう。
  105. 森下忠幸

    説明員森下忠幸君) 前段のお尋ねでございますが、分析方法が大変今度高度のものが開発されたわけでございますが、これは水道のレベルでございますと市町村の水道の職員が実際には分析をいたしますものですから、そういう方々が実際にできて、しかも今よりもさらに精度の上がるような実用的な方法を開発するということでさらに研究を進めたいと思っております。  それから、鋼管について使用を制限したらどうかという趣旨の御質問でございますが、これにつきましては、さらに事実関係についてもう少し検討したいと思っております。
  106. 矢田部理

    矢田部理君 最後になりますが、薄いから大丈夫だとか、濃度が低いから心配ないとかということではなくて、新しく出てきた化学物質そのものが、いろんなまた塩素の数がふえて毒性がより強くなるというふうな問題点も指摘されておるし、それから長期的に見て残存性というか蓄積性があるというようなことになりますと、これは孫子の代がどうなるのかというような心配もないわけではありませんので、それはもう毎日飲む水でありますから、現に私が聞いたところでは、国立公害研の水は、そういうことを知ったためかどうかは知りませんが、何か特別な薬品処理をして飲んでいる、あるいは使っているというふうな話も伝えられているわけでありまして、国立公害研はそれでもいいかもしらぬが、やっぱり一般の人から見ますと大変な不安材料、パニックとまでは言いませんが、各地の水道当局などにいろんな問い合わせが出てきておりますので、その辺は安全性についてきちっと見きわめる、それまではやっぱり差し控えるという方向をとるのがより望ましいと思いますので、これは強く要望して私の質問を終わりたいと思います。    〔理事菅野久光君退席、委員長着席〕
  107. 菅野久光

    菅野久光君 私は、中海宍道湖淡水化問題について御質問申し上げたいと思います。  先般、当委員会中海視察した際に、米子野鳥保護の会から中海彦名地区の水島の泊地になっている箇所の今年度の工事については千陸化をしないということで合意をしたにもかかわらず、実際はほとんど干陸化してしまったという苦情が出されておりました。実際に我々が現地を見た限りでもそのような状況でありました。現地当局の説明では、日を経れば自然に沈下して水面すれすれになるということで水面が確保できるというようなことでありましたが、中海干拓事業の野鳥の保護については、農水大臣も地元の住民の意向を尊重していく旨を表明しておられます。そういうところからしてもこれは見逃すことのできないことで、農水省及び環境庁それぞれこの事実経過とその後の状況についてまず説明をしていただきたい、そのように思います。農水省の方から先に。
  108. 吉川汎

    説明員吉川汎君) 御説明申し上げます。  水鳥が泊地として、いわゆるねぐらとして使っております彦名工区というのがございます。この彦名工区の工事の実施につきましては、ただいま先生お話しのように、県、米子市あるいは野鳥保護団体と十分打ち合わせの上、事業を実施するというお約束をいたしておりまして、従来から実はそのような取り進めをしてきたわけでございますが、ただいま御指摘がございましたように、本年度の工事の施行に当たりまして、私ども説明が不十分であったというようなこともございまして、意思の疎通に欠けたことがあったということは事実でございます。したがいまして、埋立工事を行いました後再度打ち合わせを行いまして、いずれにしても野鳥が飛来してきまして支障のないような状態にしたいということで、余水吐けの天端を上げるなり対策を講じまして、野鳥が飛来してきまして必要な水の水深を確保するというような対策を講じておりまして、そういった工事を進めた結果、現在も野鳥が飛来してきているというような事実もございますので、御了解をいただいておるものというふうに理解をいたしております。
  109. 加藤陸美

    政府委員(加藤陸美君) ただいま農水省の方からお話しいただいたのをベースにいたしておりますけれども環境庁といたしましては、これは主として水鳥、特に白鳥、コハクチョウの渡来地ということでございまして、地元の自然保護団体を初め野鳥の会等からもかねてから御要望もございますし、農水省の方とも御相談をいたしまして進めてきておるわけでございますが、原則的には地元でどこの場所を、ねぐらとして最も適当なところはどこがいいかというようなこともいろいろ相談が進んできておるように存じます。  なお、現地状況等、いろいろな推移があるようでございますので、その辺も踏まえましてお話し合いといいますか、今後の方策なども相談していただきまして、私どもとしてもこれを推進してまいるように努力してまいりたいと思っております。
  110. 菅野久光

    菅野久光君 農水省の方にお尋ねいたしますが、地元の人たちとも話し合ってという、その時期はいつごろだったのでしょうか。
  111. 吉川汎

    説明員吉川汎君) 中海水鳥公園をつくる連絡協議会というのがございまして、そこの協議会から昨年の五月に公園の実現についての要望が事務所の方へ出されております。その後、六月に至りまして工事の予定とその工法について説明をしてほしいということでございまして、説明を行っております。それから、ことしの三月に入りまして、埋立工法につきましてはいわゆる水面すれすれの標高でとりあえずとめてほしい、こういう御要請もございまして、そのような工事を行うということをお約束したことは事実でございます。
  112. 菅野久光

    菅野久光君 現在水面が確保されているということ――私たちが行ったときにはあの水面が確保されていなかったわけです。ですから、その後地元の人たちと話し合ってというのは、私どもが行った先の話なのか、その後なのかということを聞いているわけです。
  113. 吉川汎

    説明員吉川汎君) 委員現地視察の後でございます。
  114. 菅野久光

    菅野久光君 ここの干陸化の問題については、もう前々から非常に大きな問題になっているわけです。それで、地元の人たちのいろんなそういう問題に配慮をしながら進まなければならないということで事前に地元の人たちと話し合っている。時間がたてば沈下するということは、それは工事をやっている人たちはわかっていても、現実に野鳥保護の会の方たちは積み上げられていく土に対して水面が確保されていないじゃないか、あの約束はどうなったのか、こういう心配をなさるのはこれはもっともだと思うんです。なぜもっと、こういうようなことなのでこういうふうになりますということが話し合われないのか。そうでなくても淡水化の問題についていろんな問題があるだけに、国としても相当な配慮をもってこれはやらなければならない問題だというふうに私は思っているわけです。それを一方的な形で、自分たちだけがわかっているような形で進めたということについては、やはりまた地元の人たちに、一体国がやることはということで政治不信を一層引き起こすことになっていくのではないかというふうに思って私はお尋ねをしているわけであります。  ですから、やはり約束したことは約束したことできちっと守っていく。最終的にその後話し合って水面が確保されているということで、それはそれで結構なわけですけれども、やはりそこに至るまでの手順ですね、こういったようなものを誤らないようにしないと、私は非常に国民の政治に対する不信、国に対する不信というものを一層増大させるのではないかという立場で、今実はその問題についてお伺いをしたわけであります。まあ水面が確保されたということで、私ども視察に行ったときにそういう声があるということで指摘をしたことがきちっとなっていることについてはそれなりに私たちも確認をしておきたいというふうに思います。  それから、海水と淡水がまじり合う汽水湖、これは非常に変化に富んだ生物相、そして生態系を持つ非常に貴重で、しかも数が非常に少ない、そういう水域であります。ところが、かつて日本で二番目に大きな湖であった八郎潟、三番目の霞ケ浦、これはいずれも汽水湖であったわけですけれども、今は淡水化され、いわば汚れた水がめになってしまったと言ってもいいと思うんです。環境庁は、汽水湖の貴重性についてどのように認識しておられるのか。現在国内に残された主な汽水湖、それをお示しいただきたいと思います。  また、長官は、このような数少ない貴重な汽水湖が人為的に次々に失われていくことについてどのような感想をお持ちか、そのことをお伺いいたしたいと思います。
  115. 谷野陽

    政府委員(谷野陽君) それでは、ただいま御質問の前半の汽水湖の現状等について、私の方からお答えを申し上げます。  ただいまお話しがございましたように、汽水湖というのは海水が一部つながりまして出入りをしておる湖ということなのでございますが、どこまで、どの程度つながっているものが汽水湖だということにつきましては、いろいろ学説にも違いがあるようでございます。その辺の問題はその問題といたしまして、海水が一部入っておるというように汽水湖の定義を考えましたときには、現在私どもが、先般自然環境保全基礎調査調査をいたしました、面積一ヘクタール以上の天然湖沼が、我が国に四百八十七の湖沼が数えられるわけでございますが、そのうち六十四湖沼が汽水湖であるというような結果が出ておるわけでございます。ただいま御指摘がございましたように、締め切り等によって既に淡水化が行われたものもございますが、現在汽水湖という状態にあります主なものといたしましては、北海道の方から、能取湖、サロマ湖、網走湖、十三湖、関東の涸沼、浜名湖、それから北陸の北潟湖、久々子湖、水月湖などの湖があるわけでございます。  ただいまお話しがございましたように、汽水湖におきましては、淡水それから塩水双方の中間にあるという特徴的な生物が生息をしておるということはお説のとおりでございまして、私どもといたしましては、そういう生物相淡水化によって変化をするということについてさまざまの御意見があるということは十分承知をいたしておりますが、今後の問題につきましては、それぞれのケースにつきまして水質保全という立場から慎重な検討を加えていきたいというふうに考えておるわけでございます。
  116. 石本茂

    国務大臣石本茂君) ただいま局長からお答えをいたしておりましたように、汽水湖につきましては淡水域とそれから海水域の生物、魚類などがそこに生息をしているということでございまして、これが淡水化などによりますと、当然そういう生態系といいますか、生物の態様が変化していくことはこれは当然でございますので、これがどっちがいいとか悪いとかということでございませんが、具体的な問題につきましては、その地域の実情を踏まえまして、水質保全という立場に立ちまして慎重に検討してまいりたいというふうに考えております。
  117. 菅野久光

    菅野久光君 汽水湖の問題について、水質保全の立場からというようなことでお話しになりましたが、水質保全をすることがひいては豊かな生物相というものを守っていくことになるということで、後の部分は言われないで水質保全ということだけを言われたんだというふうに私は理解をしたいわけですけれども、そういうことでよろしゅうございますか。
  118. 谷野陽

    政府委員(谷野陽君) 汽水湖のほか、それぞれの地域におきましてはそれぞれ特徴ある自然というものがあるわけでございまして、人間の社会生活の拡大に伴いまして各地でいろいろの問題が生じてきておるわけでございます。それぞれの事情があるわけでございますので、私どもといたしましては、そういう事情はそういう事情に即しまして、かつ環境、特に私ども立場としては水質を守っていく、こういう立場でございますので、そういう立場に立って対処してまいりたい、こういうふうに考えておるわけでございます。
  119. 菅野久光

    菅野久光君 淡水化をした湖、汽水湖が淡水化されて、そうした中で汽水湖がまだ残されている。その残された貴重な汽水湖について全国で五番目に大きな湖であります中海と六番目の宍道湖、これがともども近い将来淡水化されようとしている、こういうことについて長官はどのようにお考えになっておられますか、この機会にお伺いしておきたいと思います。
  120. 石本茂

    国務大臣石本茂君) この二つの湖が将来どういうふうに活用されていくのかということも地元ではお考えになっていらっしゃるんじゃないだろうかと、これは私の推察でございます。例えば飲料水の水源地にするとか、そうしたことを考えますので、汽水湖であった方がよいのか、あるいは淡水化していった方がよいのか、これは十分に我が庁としましても慎重に考えていきたいというふうにお答えする以外には現在のところないわけでございますが、慎重に検討してまいりたいと思っております。
  121. 菅野久光

    菅野久光君 慎重に考えていきたいということは非常にいいわけですけれども、やはり自然保護と、今自然がいろんな形で破壊されていく中で、自然を守るということが今我々にとって非常に大事なことだというふうに思うんで、自然というのは一度失われるとそれをもとに戻すということはできない。それだけに今長官のお言葉では慎重に考えていきたいというふうに言われたんだと思いますけれども、ただその前段に水源化だとかそういうことの活用の問題も含めてというようなことが若干ありましたので、そういうことは言えばやっぱり自然を変えていくということにつながっていくようなふうに、私は今前段のお言葉を聞くとそういうふうに思わざるを得ないわけですが、その辺のもっと基本的な考え方というんですか、こういう自然というものに対する基本的な考え方についてお伺いいたしたいと思います。
  122. 石本茂

    国務大臣石本茂君) 今申されますように、基本的にはやはり現状といいますか、自然のままにそれが保護されていくべきであるというふうに私は思います。ただ、もし地元のいろんな問題があるとすれば、これは慎重に考えなければならぬと申し上げたわけでございます。
  123. 菅野久光

    菅野久光君 その基本的な立場をひとつ崩さずに今後とも行政を進めてもらいたいというふうに思います。  いずれにしろ、閉鎖性水域というのはその自然的な条件から非常に汚れやすい、そのために湖沼などは河川に比べて汚濁が著しいわけです。こういう認識の上に立って、閉鎖性水域たる湖沼の危機を打開するための総合的施策を定めたのが湖沼水質保全特別措置法ですね。これが昨年制定されました。国、自治体、住民が一体となってこの問題に取り組んでいるところなわけです。石本環境庁長官もさきの通常国会で、湖沼水質保全対策はますます重要度を加えてきているというふうに表明されております。そのような状況のもとで、狭い水路で海とのつながりを持っていることによって辛うじて現在程度水質を保っている中海宍道湖をあえて人間の手を加えて海とのつながりを断って完全な閉鎖性水域とすることについて、長官はどのようにお考えですか。
  124. 石本茂

    国務大臣石本茂君) 先ほど申し上げましたように、自然はそのまま保護されることが最も最高の状況であり、当然のことだというふうに考えております。ただその辺、その地域の問題などを加味しますと、これは考えなきゃいかぬというふうに思ったわけでございますが、自然はそのまま完全に保護されていくべきであろうというふうに考えております。
  125. 菅野久光

    菅野久光君 全く私もそのとおりだというふうに思っておりまして、今の長官言葉は非常に重みのある言葉だ、本当に大事な言葉だということで確認をいたします。  当然のことでありますが、中海宍道湖は汚濁の著しい湖沼として湖沼法の指定湖沼になることと思いますが、指定の目途及び準備状況をお伺いいたしたいと思います。
  126. 谷野陽

    政府委員(谷野陽君) 先ほど先生からの御質問にもございましたように、湖沼水質保全特別措置法実施されまして、現在、具体的に湖沼指定の手順に入っておるわけでございます。ただいまお話がございましたように、この法律は湖沼水質改善のための計画を各都道府県でおつくりいただくと、こういうことでございまして、その都道府県知事のお申し出に従いまして国がこれを指定するという、こういう手順になっておるわけでございます。また、都道府県知事は、そのお申し出をされますに当たりまして、関係の市町村の御意見等もお聞きをいただくという手順が定められておるわけでございます。  現在の状況を申し上げますと、そういう条件と申しますか前提になっておるわけでございまして、既に過去において各種の条例、計画等をお持ちの関係の湖沼については、五湖沼既にお申し出があって、現在その流域の地域の範囲をどうするかというようなことを含めまして、私どもの方で検討をさしていただいておるというのが現在の段階でございます。この五湖沼につきましては、早急にこれを指定をする方向でやってまいりたい、こういうふうに考えております。  ただいまお尋ねの中海宍道湖についてでございますが、これも私どもといたしましては湖沼法の指定検討すべき湖沼であるというふうに認識をいたしております。ただ、ただいま申し上げましたような諸般の手順が必要でございまして、現在県においてその準備に既に取りかかっていらっしゃるという情報も聞いておりますが、私どもといたしましては、そういう手順が踏まれまして進められるということを期待をいたしておるということでございます。
  127. 菅野久光

    菅野久光君 なるべく早急に指定をして、水質の保全に当たってもらいたいというふうに私も考えております。  今お話しのように、そういうことで準備作業が進められているというふうに言われておるわけで、湖沼法の指定湖沼指定をして、水質改善の総合的施策というものをこれから講じようというような今動きといいますか、そういうことがなされようとしていることをしり目に、水門締め切りによってあえて完全な閉鎖性水域にすることが、国や自治体あるいは住民の浄化努力に対して阻害要因として働くことは私は目に見えているのではないかというふうに思うんです。水門閉鎖をした場合としない場合の浄化目標達成に要する期間及び費用の相違を、環境庁及び農水省はどのように考えておられるか、それをお伺いいたしたいと思います。
  128. 谷野陽

    政府委員(谷野陽君) 確かに、ただいま先生御指摘のように、もともと閉鎖性の水域でございますが、その水門を締めるということになりますと、その閉鎖の度合いは強くなるということは申すまでもないことでございます。また、閉鎖の度合いが強まりますことは、その限りにおきましては水質保全という立場からより厳しい条件になるという要素も加わるわけでございます。私どもといたしましては、いろいろな諸条件、これは中海の自然的な条件というもの、あるいはその流域の社会的な条件、あるいはこれに対します対策の進み方の条件というようなものが総合して最終的な水質というものになるというふうに一般的には判断をいたしておりまして、そういう判断のもとで考えていかなければならない問題であるというふうに考えております。  なお、中海宍道湖のただいまの水門の閉鎖の問題につきましては、既に事業主体でございます農林水産省の方におかれまして、その閉鎖の影響についての研究をされまして中間報告をお出しいただいておるわけでございまして、関係機関に、その中には環境庁も含まれるわけでございますが、御送付をいただいております。現在、私どもといたしましてはその中間報告について検討をしている最中でございまして、いろいろとさらにお尋ねすべき点などを農林水産省にもお問い合わせをし、また、その回答もいただいておりますが、そういうものを踏まえまして慎重にその内容について今後検討をしてまいりたいというふうに考えております。
  129. 吉川汎

    説明員吉川汎君) ただいま環境庁の方からお答えがございましたように、私ども中海干拓事業淡水化計画につきましては、学識経験者による研究会を開いていただきまして、その結果といたしまして、淡水湖化は湖の現況程度水質をほぼ維持しながら進めていくことが可能であろうという総合評価を得ているところでございます。  一方、鳥取島根両県におかれましては、宍道湖中海水質管理計画も策定されておりますが、これは現況の汽水湖を前提として策定されたわけでございますが、それに対しまして私どもは、仮にこれも淡水化をした場合にこういう水質管理計画にどのような影響を与えるであろうかということもトレンドを行っておりまして、その結果によりましても、両県で推測されました将来の水質予測にほぼ同じような数字で推移するであろうというような結果を得ておるわけでございます。その結果につきまして両県にただいま御説明をいたしておりまして、いろいろと御意見、御質問をいただいております。そういった御意見、御質問をこれから私ども検討しながら、さらによく理解をしていただくべく努力をしてまいる所存でございます。
  130. 菅野久光

    菅野久光君 中間報告についての検討環境庁としてもさらにしていく、それから農水省の方もそういったようなことで質問等にも答えながら理解を深めるためにということでありますが、中間報告そのものについては、後から申し上げますけれども、いろいろ問題がある。  その前に、今から十年前の五十年の二月に中国四国農政局長から島根県知事に対して、「松江圏都市計画下水道宍道湖東部流域下水道)の都市計画決定について」という回答の文書が送付されました。この文書は、前年の八月に島根県知事から申し入れのあった協議への回答でありますが、その中に次のように書かれております。「沿岸地域の都市開発が進むにつれ宍道湖東部流域下水道計画に基づき終末処理水を第二次処理のままで大橋川へ放流すれば、やがては処理量が増大することにより現状より更に中海における窒素、リン等の栄養塩類の流入が増大し、富栄養化を促進して水質汚濁が進行すると予想される。よって可及的すみやかに第三次処理の実施あるいは処理水の域外放流のいずれかの措置をするよう検討されたい」と書かれております。干拓計画の推進者であります農水省の当局がこのようなことをわざわざ申し入れるのは、水門閉鎖、それによる淡水化によって汚濁が進行することのしりぬぐいを他に転嫁していることを露呈するものではないでしょうか。この手法は、中間報告の流入負荷が現状のまま推移するとすれば、淡水化してもほぼ現状程度水質を維持できるという結論にもしっかりと踏襲されていると思います。  農水省は、この際このような無責任な態度を改めて、淡水化による水質悪化問題にもっと真摯に取り組んでもらいたいというふうに思いますが、いかがでしょうか。
  131. 吉川汎

    説明員吉川汎君) ただいま御指摘の内容は、五十年の二月の中国四国農政局長からの返事だと思います。当時、私どももこの中海淡水化をするに当たりまして、水質の保全については十分留意をいたしまして、そのような心配があるという照会をしたことも事実でございます。  その後私どもも、十分学識経験者の御意見を伺うなり、あるいは鳥取島根両県におかれましては五十八年に将来の水質予測、いわゆる下水道整備計画を前提といたしましたそういう予測をおやりになりまして、結果としてかなりの水質保全をおやりになるというようなことも私ども確認いたしておりまして、そういった前提で淡水化を進めた場合にどのようになるかというのがこのたびの中間報告の結果でございます。したがいまして、五十年に照会いたしましたそういった思想といいますか中身につきましては、両県で作成されました水質管理計画の中に十分織り込まれておるというふうに理解いたしまして、現在時点におきましてはそれを了としたわけでございます。  したがいまして、私どもはこれからこの淡水化を行う際に、ただいまいろんな御意見をいただいておりますので、その御意見につきましてさらに検討を進めていくということが私どもに課された責任だというふうに理解をいたしております。
  132. 菅野久光

    菅野久光君 そうしますと、このときに申し入れた、「可及的すみやかに第三次処理の実施あるいは処理水の域外放流のいずれかの措置をするよう検討されたい」という申し入れ、これは撤回をされたのですか、そのままなんでしょうか。
  133. 吉川汎

    説明員吉川汎君) 文書として特に撤回をしたというわけではございません。いずれにいたしましても、その水質管理計画の中身を私ども十分聞かしていただいておりますので、その内容をもって私どもとしては理解をしたと、こういう立場にございます。
  134. 菅野久光

    菅野久光君 これはそうすると、第三次処理や域外放流の問題については、いろいろな話し合いの中でそうしなくても水質の問題については十分対応できると、こういうふうに考えたというふうに理解してよろしいですか。
  135. 吉川汎

    説明員吉川汎君) 水質管理計画そのものに一部は域外放流もおやりになっておるようでございますし、三次処理を織り込んでおられるということは私ども聞いておりませんが、その宍道湖中海水質管理計画の中身につきまして私どもが了解をしたと、こういう意味でございます。
  136. 菅野久光

    菅野久光君 これは何といっても浄化対策ですね、湖の浄化対策については下水道整備促進、これがやっぱり重要な柱であることだけは間違いがないわけであります。しかも、下水道農水省の要求するような域外放流や第三次処理は行っていない。このようなことは中海宍道湖に限らずどの湖沼でも行っている極めてオーソドックスで常識的なやり方なんですね。にもかかわらず、この常識的なやり方が通用しないような汚染状態をつくり出すという自然改変をやっておいて、下水道行政に過大な責任負担を要求することに対して、これは建設省及び環境庁はどういうふうに考えるのか。先ほど農水省は、一応そのことは話し合いによってと言いながら、しかしそれまでにはかなりの期間があったわけですね、このことに対してどう対応するかという。その間いろいろ建設省なりあるいは環境庁あたりがこのことについて検討されたというふうに思うんですが、その辺はどのようにお考えでしょうか。
  137. 斉藤健次郎

    説明員斉藤健次郎君) それでは、宍道湖周辺の下水道事業の実施状況について御説明をいたします。  宍道湖流域下水道につきましては、現在、東部の処理区と西部の処理区の二つで事業を実施しております。先生視察いただいたのは東部の処理区の方かと思います。東部の方につきましては、御説明があったかと思いますけれども、四十八年度に事業に着手をいたしまして五十五年から処理を開始しております。もう一つの西部処理区につきましては、出雲市などを中心とした地域でございますけれども、これにつきましては五十五年度から事業を実施しておりまして、まだ通水を開始しておりません。この西部処理区につきましては、地域の下水を集め処理をいたしまして日本海へ直接放流するという計画で事業を実施いたしております。それから東部処理区につきましても、処理水の放流先が閉鎖性水域でございますし、富栄養化防止のために窒素、燐などの高度な除去が必要になるというふうに考えられますので、現在島根県において高度処理の実施に向けまして調査研究を行っているという状況でございます。
  138. 谷野陽

    政府委員(谷野陽君) ただいま建設省の方から中海宍道湖の点について御説明がございましたが、一般論といたしましては、水質保全の立場からいたしますと、湖沼等の閉鎖性水域に流入いたします汚濁負荷の削減のためには、技術開発状況でございますとか地域の実情等いろいろございましょうけれども、より高度の処理が行われるということが一般論としては望ましいというふうに考えておるわけでございます。現に、例えば霞ケ浦でございますとかその他幾つかの湖沼につきましては、建設省の方で格別の御配慮をなさいまして高次の処理が行われておるというふうに承知をいたしております。  中海宍道湖の点につきましては、ただいま建設省から御説明があったとおりでございまして、その後各方面の御努力によりまして高度処理の技術も進歩をいたしてきておりますので、そういう技術進歩の成果を取り入れてより高次の処理がなされることが望ましいというふうに私どもは考えておるわけでございます。
  139. 菅野久光

    菅野久光君 いずれにしても、先ほど中国四国の農政局長から島根県知事に対して出した回答ですね、それはもう明らかに閉鎖性水域にすれば、淡水化をすれば汚濁の状況が進んで三次処理だとか域外放流をしなければだめなんだ、水質は保全できないんだということを農水省自身がみずから認めてこれはやったものなわけですね。その後いろんな話の中でということになれば、まさに淡水化すること自体にやっぱり大きな問題があった。これは、地元の人たちも自然を守るという立場からいろいろ運動もなされていた。そういうことに何かかにか、とにかく計画をしたんだから何が何でも淡水化しなければならないんだという強引なやり方に非常に無理があったということをみずから露呈していることじゃありませんか。しかも、下水道の関係にそういうような非常な負担をかけるようなことを農政局長からやるということ、そのことはやっぱり地元に対する負担の問題その他を含めてこれは大変な問題ですわね。なぜそこまで無理して淡水化をしなければならないのかということにこれはなっていくわけでありますが、そういう意味では、建設関係で、地元に対してこの下水道の建設について負担をかけていくということのやり方についてはやっぱり納得できない。そうまでしなければ、閉鎖性水域になるからもう汚濁がひどくなって水質が保全できないんだということをみずから認めたものだというふうに私は思わざるを得ない。  その後、いろいろ下水道関係を含めてそうしなくてもいいというようなことになったとはいいますけれども、しかし、先ほど言いました自前でつくった研究委員会中間報告ですね、この中間報告で、水門を閉鎖しても淡水化して水質は悪化しないというようなことが言われていますが、しかし常識的に、素人が考えても、水門を締め切って完全な閉鎖性水域にして水質が悪化しないなんということが理解できますか。もう既に先例があるわけですよ。淡水化したために湖水が水がめのような形になって今日の惨状を呈している。そういうことを考えたときに、思い半ばに過ぎるものがあるというふうに私は思うんです。  何としても無理なことをやろうとしている。そこにやっぱりいろんな問題が出てくるのではないかというふうに思いますが、このような農水省の主張について環境庁はどのようにお考えになりますか。
  140. 谷野陽

    政府委員(谷野陽君) ただいま御指摘がございましたように、閉鎖性水域につきましては特別の慎重な配慮を水質保全について講ずべきであるということは御質問のとおりであるというふうに考えております。また、他の湖沼におきまして閉鎖性の度合いが強まった場合に汚染が進んだという例があるということも十分承知をいたしております。ただ、湖沼につきましては、それぞれ湖沼の大きさでございますとか、深さでございますとか、そういうような湖沼自体の問題、例えば水の交換が一年間に何回くらい行われる、そういうような問題を含めまして湖沼自体の問題もございますし、それから流域の産業、人口の状態土地利用状態というような流域の状態もございますし、さらに、その湖沼の将来の水利用についてどのように考えていくか、こういうようないろいろな諸要素が湖沼ごとに異なるわけでございます。  ただいま御指摘の穴道湖、中海淡水化の問題につきましては、私どもといたしましてはそのような考え方を踏まえまして現在農林水産省がお出しになりました中間報告検討いたしておる段階でございます。その検討の段階におきまして、ただいま申し上げましたようないろいろな要素につきまして、その計算の方法を含めまして疑問な点についてはお問い合わせをし、また、そのお答えを受けてさらに検討をするという慎重な検討をしておるわけでございまして、そういう慎重な態勢でこれに対処をしてまいりたいというふうに考えております。
  141. 菅野久光

    菅野久光君 国が一たん決めたことだから何が何でもいろんな理屈をつけてそれをやり遂げなきゃならない、そういう姿勢がやっぱりあるのではないかというふうに思うんです。しかし、人間にはやっぱり間違いもありますし、そのときどきいろいろ考えたことと事情がまた違っていくという場合もあり得る、そういうときに勇気を持って方向を転換するということも、私は政治にとって大事なことだというふうに思うんですよ。今度の構造改善局長は前の環境庁水質保全局長だった佐竹さんですよね。今度は構造改善局長で進める側。そういうことを考えていけば、佐竹局長がやっぱり決断をして、農水大臣に言って、計画をもう一度根本から考え直していくということが私は必要だというふうに思うんです。しかし、それもどうしてもやり切れないということであれば、これはもう今までのやり方を変えていかなければならないのではないでしょうか。  農水省は、昨年の八月研究委員会中間報告を公表するとともに淡水化試行について両県に同意を求めておりますね。中間報告の公表の後、研究会のメンバーの中から報告に対する疑問が出され、これを受けて小委員長会議を開催しています。ことし三月の衆議院予算分科会で農水省局長が、この問題についてはさらに十分検討していく必要がある旨答弁しておられます。中間報告を受けて、大丈夫だからやろうと、こういうことについて、それを出した小委員の人たちから疑問が出されている。それに対して農水省局長がさらにこれは十分検討していく必要があると、こう答えているんですよ。このようなことでは、淡水化に対する住民の疑念は氷解するどころか一層不信を増幅させる、そういうふうに思います。  この際、農水省は、中間報告とそれに基づく両県への協議を凍結して、水質問題に権威のある第三者機関に検討をゆだねるべきだというふうに思いますが、いかがでしょうか。
  142. 吉川汎

    説明員吉川汎君) 穴道湖・中海淡水化計画につきましては、水質の悪化を心配するということで先生御指摘のように大変多くの方がそういう不安を述べておられるということは私ども十分承知いたしております。一方、早く淡水化をいたしまして水を早く持ってきてほしいという地元の強い要望があるということもこれまた事実でございます。そういった中海、穴道湖両方の湖をどのように利用していくかということにつきましては、いずれにしましても鳥取島根両県の知事さんの御意見を伺うことが先決であろうということで、私ども淡水化を試行する前に御意見を伺うということで現在協議を実は進めておるところでございます。  そういう経過を経まして、なおその試行の進め方に当たりましても、一挙にやるのではなくて段階的にやっていこうというような試行というステップも入れまして、こういう方法でいかがでしょうかということを実は御相談申し上げたわけでございます。その結果を出すに当たりましては、私ども委員会学識経験者等の参画を得て委員会を組織いたしておりますし、それから鳥取島根両県におかれましても、それぞれ学界の先生方に委嘱されまして、その先生方の御意見を聞かれた上で鳥取島根両県の結論を出すというふうに私どもも伺っております。そういった意味におきましてこの淡水化試行の問題は、いずれにいたしましても地域の問題であることも事実でございますので、地域の御意見をよく聞きながら私ども対処していくということを過去においても何度か実は申し上げたわけでございます。  既に水門は完成いたしておりましてゲートをおろすだけという段階になっておるわけでございますが、そこでこのような鳥取島根両県の御意見を聞くという期間を置いたことにつきましては、地域の皆さん方の御意見を伺っていくという意味で強行するという意味ではございませんので、その辺は御理解を賜りたいというふうに考えております。
  143. 菅野久光

    菅野久光君 地元の人の意見を十分に聞いて、強行するようなつもりはないというようなこと、そのことだけはしっかり守ってもらいたいというふうに思いますが、今お話しのように、試行なども含めてという、その試行がやっぱり問題だと思うんですね。たとえ何日間にしろそこをとめているということによってあの中海宍道湖に対してどんな影響が出てくるか。私は初めの方でも言ったように、自然というのは一度破壊されると、一度それが変わると、これはもうなかなかもとに戻すということはできないわけですよ。それだけに、確かに言葉で、字で書けば試みの行いということになるわけですけれども、これはそう軽々にやるべきことではないということを申し上げておきたいというふうに思います。  時間がございませんので多少意見も交えながら申し上げたいというふうに思いますが、いろいろきょうの質疑なども含めて、水門の閉鎖とか淡水化によって水は汚れないという保証はやっぱりないように私は思います。ないように思うというよりも、ないと思います。ただ、この問題が八千万トンの農業用水を得るために中海宍道湖合わせて七億五千万トンの水を汚すリスクを冒すということに私はなっていくというふうに思いますので、まあいわば選択としては余りにも愚かな選択ではないかというふうに思わざるを得ません。農業用水が必要なら湖中湖案その他の代替案を真剣に検討すべきだというふうに思いますし、環境庁についても、水質保全の主管官庁でありますから、多くの有能なスタッフを持っている環境庁として独自の主体的な調査を行うべきだということをこの際申し上げておきたいというふうに思います。  最後に、去る五十七年に現地視察した当時の原環境庁長官は、霞ケ浦、八郎潟、児島湖などの先例から見て、中海宍道湖だけが淡水化しても汚れないという保証はない。汚れないことがはっきりしない以上は淡水化実施すべきでないというふうに述べておられます。このことについて長官がどう思われるか。また、長官といろいろお話し合いをいたしまして、やはりこの際、任期はどうなるかは別にしましても、中海宍道湖現地へ行って現状をつぶさに視察されることが必要だというふうに思います。地元で大変大きな問題になっております。長官は機会があったら行きたいというふうに言っておられるのでありますが、機会があったらではなくて、機会をつくってぜひ行っていただきたい。それほど事態は深刻だということを申し上げておきたいというふうに思います。そういったようなことについて長官の所感、それから決意などをお聞かせいただければ大変ありがたいと思います。
  144. 石本茂

    国務大臣石本茂君) ただいまのお話の中にありましたように、昭和五十七年の原長官の御意見、その長官の申し上げているところと私の考え方は同じでございます。  なお、現地へ参りますことにつきましては、そう遠いところでもございませんし、何とか機会を見つけまして行きたいというふうには考えております。  以上です。
  145. 菅野久光

    菅野久光君 終わります。
  146. 飯田忠雄

    飯田忠雄君 本日は人間環境という問題につきまして取り上げてお尋ねをいたしたいと思います。  人間環境につきましては、人間環境宣言というのが出ておりますが、この問題に入ります前に、私はどのように人間環境を理解しておるかということにつきまして見解を述べたいと思います。  例えば、週刊新潮のこれは十月の十七日号がございますが、これの中にいろいろの記事がございまして、精神異常者が突然に子供を殺したり、あるいは通りがかりの人を刺して殺すといういろいろ事件が今までに十四件も起こっておる、ことしになってからですね。ことしだけで十四件も起こっておる、こういうように書いておりまして、その中で、このような事態というものは明らかに精神医学者の怠慢から起こっているというか、あるいは過失から起こっておるというか、そういうものなんだ。そして、それから出てきた根本は、マスコミのいわゆる人権に関するキャンペーンにあるというようなことが述べられておるわけであります。これは学者とかあるいは病院長の意見として引用して述べられております。こういう問題は、明らかに人間環境の問題ではないか。普通安穏な生活ができる環境があるわけですが、そこへ降ってわいたように精神病者によって不安な環境が生ずる。これは保安処分の問題とは別です。保安処分じゃなくて、不安な環境、これは人間環境なんです。そういう人間環境に対してどう対処するかという問題があるのではないか。  また、例えば非核三原則というような問題がございますが、非核三原則にしても、これは決して軍事問題ではなくて人間環境の問題です。人間の命を奪う、そういう状態に対する恐怖心、そういう環境があるわけですね、この問題については。この核の問題につきましては、この人間環境宣言の中でもはっきりと取り上げておりまして、「人とその環境は、核兵器その他すべての大量破壊の手段の影響から免れなければならない。」云々とこう書きまして、「このような兵器の除去と完全な破棄について、すみやかに合意に達するよう努めなければならない。」そういうことが人間環境の問題だということを宣言で述べております。  これは後でまた御質問を申し上げたいと思いますが、例えば放射性廃棄物の研究貯蔵施設を北海道でつくる。これについていろいろな問題が起こっておるということになると、これもまた環境の問題として処理しなきゃならぬことではないかと思われるわけであります。また、最近学校でいじめの問題が起こっております。このいじめの問題はやはり精神環境、人間環境の問題であると思われるわけであります。それで、この問題についても後ほど御質問申し上げますが、こういう人間環境の問題が現実に存在するということです。それから、これは皆さんとっぴだと思われるかもしれませんが、先般の日航機の墜落事故、これも単なる交通事故と解釈すべきものじゃないので、その根底にあるところのやはり人間環境、労使間におけるいざこざの問題、あるいはいろいろ管制に当たったりあるいは整備に当たる人たちの疲労度の問題、そういう環境の問題が生み出した事故である、こう見るのが正しいのではないか。そういういろんな観点から見ていきますというと、人間環境という問題は今日非常に重点的に取り上げるべき問題ではなかろうかと思われるわけであります。  そこで、まず外務省のお方にお尋ねを申し上げますが、一九七二年の六月の国連人間環境会議というのがございました。これはストックホルムで開催されたのでございますが、そこで行われました人間環境宣言というのがございます。この人間環境宣言と我が国とのかかわり合いはどうなっているんでしょうか。つまり、日本はこれを守る義務があるのかないのか。あるいは、こういうものは単なる宣言にすぎぬから無視していいかどうか。こういう問題であります。お尋ねいたします。
  147. 馬淵睦夫

    説明員(馬淵睦夫君) お答え申し上げます。  先生御指摘のように、一九七二年の六月のストックホルムで行われました国連人間環境会議におきまして人間環境宣言というのが採択されております。我が国といたしまして、この人間環境宣言は人間環境問題の基本的な原則等をうたいました重要な国際文書としてその意義を高く評価しているわけでございます。これはその名のとおり人間環境宣言でございまして、いわゆる条約のような各国を法的に縛るものではございません。しかし、これは百カ国以上の国連加盟国が参加いたしまして採択した重要な国際文書でございまして、各国がいろんな環境にかかわります施策をとっていく上でのガイドラインとして尊重されるべきものであると考えておるわけでございます。
  148. 飯田忠雄

    飯田忠雄君 この人間環境宣言の第一号をごらんになっていただきますと、第一号の中には、「自然のままの環境」、それから「人によって作られた環境」と、こういうことが書いてございます。そしてまた第二号をごらんになっていただくと、「人間環境を保護し、改善させることは、」「すべての政府の義務である。」、こういうふうに書かれております。  なるほどこれはおっしゃったように宣言です。宣言ですが、この宣言に我が国の代表も加わって宣言をしたということであるならば、その加わった我が国の人はこれは政府ですから、やはり政府はこの宣言に縛られるのではないか。縛られないような宣言なら加わらなきゃいい、こういうことになるわけですが、いかがですか。
  149. 馬淵睦夫

    説明員(馬淵睦夫君) 先ほども申し上げましたように、縛られる意味でございますが、これは条約とか協定ではございませんので、法的な意味での縛られるということはないのでございますが、今先生御指摘のように、「人間環境を保護し、改善させること」云々は、これは「すべての政府の義務である。」と、こう高らかに宣言しております。そういう趣旨で重みを持って受けとめるべき宣言であるというふうに思っております。
  150. 飯田忠雄

    飯田忠雄君 それでは、外務省の方ではこの宣言をつくられるときに参画されたと思いますが、そのときに、「人によって作られた環境」という文言が宣言に出ておりますね、これについてどういうようなものとして審議されたか、その審議内容を御報告願いたいと思います。
  151. 馬淵睦夫

    説明員(馬淵睦夫君) 御指摘のように、この宣言の基礎作業グループというものができまして、二年近くにわたっていろいろ推敲を重ねてきたということでございまして、我が国もそのメンバーの一カ国として参加してきたわけでございます。  ただ、今御指摘の、「人によって作られた環境」云々、その言葉自体につきましては、特に取り上げられて内容について議論したという記録は持ち合わせておらないわけでございます。
  152. 飯田忠雄

    飯田忠雄君 それでは、外務省の御当局は、この宣言に盛られた「人によって作られた環境」という言葉の意味は、どういうものであるとお考えでしょうか。
  153. 馬淵睦夫

    説明員(馬淵睦夫君) 外務省といたしましては、この「人によって作られた環境」と申しますのは、多数の人間が住むことによりまして、あるいはまた科学技術等の利用によりまして、いわばつくり上げていくと申しますか、そういう環境、言葉をかえますれば、広い意味での人間生活圏でございますとか人間の住む世界というようなものを一般的に指しているのではないか。自然のままの環境に人間が多かれ少なかれ変更を加えてつくり上げていったものであると、そういうふうに理解いたしております。
  154. 飯田忠雄

    飯田忠雄君 それでは、先ほど引用しましたが、この宣言の中の後の方に「原則」というのがございまして、「原則」の二十六号を見ますと、「人とその環境は、核兵器その他すべての大量破壊の手段の影響から免れなければならない。」、こうありまして、「このような兵器の除去と完全な破棄について、すみやかに合意に達するよう」努力せいと、こう書いてありますね。それは単なる宣言の原則だからそれは知らぬと、こういうことではちょっと都合が悪いんですが、政府の方で参画されたものですから。それで、いわゆる非核三原則の問題、この非核三原則の問題をこの宣言に絡ませて御理解になっておるかどうかという問題ですが、いかがですか。
  155. 馬淵睦夫

    説明員(馬淵睦夫君) 今の御質問に関しましては私直接の担当ではございませんのでちょっと、突然のお尋ねでございますが、この二十六につきましては、我々の記憶によりますと、非常に政治的な意味を帯びているということでかなり激しい議論があったようでございまして、最終的には中国はこれには加わらなかったというふうに記憶いたしております。  ここの意味につきましては、もちろん政府として、先ほど申し上げましたように、この宣言の趣旨を体して種々の政策がとられているものというふうに理解はいたしております。
  156. 飯田忠雄

    飯田忠雄君 まあそれはそれで、わけがわかりませんけれども、わかったことにしておきます。  そこで、こういう人間環境についての宣言が出た、そのときにこういう問題について環境庁と御連絡になって話し合われたことがあるでしょうか。
  157. 馬淵睦夫

    説明員(馬淵睦夫君) この人間環境会議には、当時の大石環境庁長官を首席代表といたしまして総数四十五名の大代表団が参加いたしております。それで、その準備の過程におきまして、外務省としても環境庁とは密接に協議して会議に臨んだということでございます。
  158. 飯田忠雄

    飯田忠雄君 外務省の方結構です。  環境庁の方にお尋ねをいたしますが、環境庁設置法というのがございますね。この第三条を見ますと、「環境の保全に関する行政を総合的に推進することをその主たる任務とする。」と、こう書いてありますね。これは環境庁設置法の問題ですから、こういう目的で設置されているんですから、この「環境」という言葉ですね、ここに書いてある「環境」という言葉、これはどういうふうに理解をされておりますか。
  159. 古賀章介

    政府委員(古賀章介君) お答えいたします。  環境と申します言葉は、広義にとります場合には、四囲の外界、周囲の事物を指すというふうに言われておりますけれども環境庁設置法に言いますところの「環境」というのは、主として公害の防止と自然環境の保護、整備という観点からとらえられるいわば狭義のものであるというふうに理解しております。具体的には人間を取り巻く大気でありますとか水、土壌、動植物など、人の健康や生活に影響を及ぼすところの物質的な外界の事物を言うものと理解をいたしております。
  160. 飯田忠雄

    飯田忠雄君 今おっしゃったのはあなたの法律解釈でしょう。これ、環境庁設置法に書いてある言葉というのは、この言葉どおり理解することが私は必要ではないかと思いますよ。  先ほども引用されました人間環境に関する宣言ですね、これは明らかに「人間環境」と「環境」という言葉が使ってある。しかも、これには大石長官も御出席になっておったと、こういうことなんですが、そうしますると、この「環境」という言葉は、ただ自然のままの環境だけではなしに、いわゆる宣言に書いてある自然のままの環境ではなしに、それだけではなしに、人によってつくられた環境、これもあるということは御存じになっておるはずだと私は推測をいたすわけです。  そうしますと、長官が御出席になった会合でできた人間環境宣言の「環境」という言葉と、環境庁設置法というこれは国会でつくった法律ですが、その「環境」という言葉と、それから今お答え願った「環境」という言葉の意味が違うということになるとこれは大変だと思います。これはいかがでしょうか。どうしてそういうことになったのか、お答え願います。
  161. 古賀章介

    政府委員(古賀章介君) 人間環境宣言に言いますところの「人間環境」と申しますのは、先ほどもちょっとお話しありましたけれども人間を取り巻き、また人間の諸活動によって改変されるいわば物質的な環境であるというふうに理解されるわけでございます。  それで、人間環境宣言の「人間環境」と設置法で言うところの「環境」の関係でございますけれども、私どもは、物質的な環境という意味では両方は同じであるけれども、宣言で言うところの「環境」の方が範囲が広いというふうに理解をいたしております。と申しますのは、宣言の「人間環境」のうち主として公害の防止でありますとか自然環境の保護、整備という観点からとらえられるものが設置法の言う「環境」であるのに対しまして、人間環境の宣言でお取り上げになっておりますのは、先ほど先生も御指摘のありましたような核の問題も含まれておりますし、食糧やエネルギーの確保といった問題も含まれておるわけであります。そういうようなものも含めまして人間環境宣言では「人間環境」という概念に入れておるのに対しまして、設置法では、これは主として公害の防止と自然環境の保護を主たるものとしておると、こういうことでございますので、広い狭いの違いがあるというふうに理解をいたしております。
  162. 飯田忠雄

    飯田忠雄君 人間環境宣言の第三号を見ますと、その中にはっきりと、「人工の環境、とくに生活環境、労働環境における人間の肉体的、精神的、社会的健康に害を与えるはなはだしい欠陥」、こういうものも含まれるんですよと書いてあるんですね。ところが、この環境庁設置法には、環境という言葉についての定義が書いてないんです。もしこの環境という言葉について狭い意味で解釈するということであれば、当然環境庁設置法において、ここに言う環境とはこれこれこれこれを言うという注釈がつかなきゃならぬはずです。それがないわけです。ないということになりますと、この「環境」という言葉は広い意味の環境と解釈するのが正しいのではないかと、こう考えますが、いかがでしょう。
  163. 古賀章介

    政府委員(古賀章介君) これも繰り返しになりますけれども人間環境宣言には、公害の防止それから自然環境の保護も当然うたっておりますけれども、それ以外に資源とか人口、エネルギー、核の問題に至るまで広範なものが含まれておるわけでございます。それに対しまして我が国の環境というのは、主として公害の防止と自然環境の保護ということを申し上げたわけでございますが、それは設置法の四条のところでは確かに「環境の保全」という言葉がございますけれども、三条の定義の仕方、これは、「環境庁は、公害の防止、自然環境の保護及び整備その他環境の保全」を図るというふうに、「公害の防止」と「自然環境の保護」というのが二つの大きな柱として書かれておるという規定上の問題、それから環境庁の所掌事務、権限におきましては、一号、二号を除きますと、三号以下はそれぞれの実定法によって個別的に権限が列挙されておるわけでございます。そういう個別的な権限をずっと見ますと、これはやはり物質的な環境を対象にしているということがわかるのではないかということでございます。  それから、さらに言いますれば、立法の趣旨と申しますか立法時の趣旨といたしましては、主として公害の防止と自然環境の保護を主たる内容とするということが当時政府側の考え方として述べられておるわけでございますので、立法の趣旨から見てもそういうことが言えるということでございます。  要するに、実定法の規定から来る解釈、それから実定法全体の整合的な理解、さらには立法当時の趣旨、こういうようなものから総合的に理解いたしますると、やはり設置法で言う「環境」というのは物質的な環境であるという理解をするのが自然ではないかというふうに考えるわけでございます。
  164. 飯田忠雄

    飯田忠雄君 設置法に書いてあるいろいろのことは、あれは例示なんですよ。「その他」云々とあるでしょう。「その他」「環境の保全に関する行政」と書いてある。今私が問題にしておるのは、例示されておるものは一切問題にしていないんです。「その他」云々というところのこれを問題にしている。この解釈の問題なんです。  これは一たん法律ができますと、法律というものは立法のときの立法者の頭で描いたそういうものとは独立しましてひとり歩きしている。この場合、「環境の保全に関する行政を総合的に推進すること」という言葉をこのとおりの言葉として理解をすべきだと私は思うわけですよ。これは法律学者としてそう思う、そう考える、そうしなきゃ解釈ができない。「その他」ということがありますからね。これは環境庁を非難しているんじゃありませんよ。従来は自然環境のことだけをやっておった。それはやっておった事実の問題ですから、それはそれでいいですよ。私がこれから問題にしようとするのは、これからの問題としてお尋ねしようと。つまり、政府に考え直してもらおう、こういうわけですから、そういう頭から私は御質問申し上げているんで、お答えをなさる方もそれはそういう考えでやってくださいよ。そうでないとピントが合わぬ。それじゃ困りますから。  そこで、例えば、先ほど引用しました気の狂った人が放免されておりまして、それがいろいろ人を殺す。何の目的もないのに子供を殺したりしておるでしょう。しかもそれは十四件も起こっている、ことしになって。こういうような問題は明らかに環境なんですよ。犯罪の問題じゃない、環境の問題でしょう。国民が不安な状態に置かれておるという環境の問題。保安処分の問題じゃありませんよ。保安処分というのは、犯罪を犯して、それが気が狂った人が犯した犯罪だから犯人をどうしようかというのが保安処分の問題ですがね。今私が取り上げているのは、そうした保安処分の問題ではなしに、一般的に国民が置かれておる不安なこの環境。いつ町の真ん中で殺されるかもしれぬ、そういう環境に我々が置かれておるということなんですね。明らかに環境ですね。そういう環境をつくり出しておるものは、人間のいろいろな欲心とか過失が生み出しておるんですよ。  例えばこういう精神病者、病院に入っておったのを放免して徘徊させておるということについて、精神病者が例えば私はもう精神病じゃない、治ったと主張すると、精神病院のお医者さんがその主張に負けて、そうかというわけで出す。ところが治っていないんです、これ。だから、治っていないから人殺しやるんでしょう。悪い環境をつくり出しておる。そうすると、悪い環境をつくり出しておるもとは精神病院のお医者さんなんです、そう言わざるを得ない。  本来、こういうような場合に、アメリカでは放免してそれが犯罪を犯しますと、その責任は医者が問われるんです。殺人罪の責任はこれは医者が負うんです。業務上の過失であれば、業務上過失責任はお医者さんが負う。日本の刑法でいけば五年以下の懲役です、これは。もし故意があって、故意ということは未必の故意でもいいんですよ。この人を放免すればあるいは殺すかもしれぬ、こう思うたけれどもマスコミがわあわあ言うので出した。こうなりますと、その人は未必の故意による殺人を犯したことになる。殺人罪です。死刑、無期もしくは三年以上の懲役だ、そういうことになりますね。そういう重大な問題があるんです。ところが、そういう問題について何ら手が打たれないというのは、こういう問題を環境として総合調整すべき問題としてとらえていないからだと私は考えますよ。  それで、今まではそういうことはなかったんだが今後はやっていこうということで、環境庁が音頭をとられて各省、これは各省全部関係しますからね。この問題に関係しない省は一つもないんです。全部関係するんです。そして政府部内で統制された政策を打ち立てていただかないと国民は不安でしょうがないですね。そういう点を私はお尋ねしておるわけです。  こういう点について、どうですか、もうちょっと希望の持てる御答弁はいただけないか、どうですか。これはあなたでもいいし、長官でもいい。おっしゃってもらいたい。
  165. 古賀章介

    政府委員(古賀章介君) 制度論と申しますか、これからの政策論という観点に立ちますればいろいろな御見解なりお立場が出てくるのではないか、こう思うわけでございますが、私どもはやはり現行制度についてお答えをせざるを得ないという制約がどうしてもあるのでございます。  そこで一つ、先生がおっしゃいましたことに関連しますけれども、やはり環境には、言うなれば自然的環境と社会的環境がある。物理的環境、精神的環境と言ってもよろしいかと思いますけれども、そういう場合に、やはり環境行政というのは、これは我が国だけではございませんけれども、諸外国でも自然的環境、物質的な環境を対象にしているというのがこれは世界の通例だろうと思います。我が国はもちろんそうでございます。今おっしゃいました問題は、やはり環境という問題を精神的な環境ないしは社会的環境というような問題に拡大いたしませんと、先生のおっしゃる対応の仕方というのが出てこないのではないかというふうに思うわけでございますけれども、これはなかなか難しい問題があろうかと思います。と申しますのは、はっきり言いますと、いろいろな社会事象がこれはすべて環境の問題だということになるわけでありますが、それを環境庁が全部総合調整をやるということになりますと、これは実際問題として、行政機能から見て難しいのではないかというふうに思うわけでございます。  それで、先生の具体的に御提示になりました精神障害者の問題でございますけれども、これはやはり私どもとしては、市民生活の安全でありますとか精神障害の予防とか医療というような観点から考えるべき問題であって、環境庁が所掌し関与する問題ではないのではないかというふうに考えております。
  166. 飯田忠雄

    飯田忠雄君 今、現在の制度上違うとおっしゃいましたが、現在そんな制度が環境庁設置法からは出てこないんです。これは環境という問題を従来有然環境だけだとおっしゃっていましたが、環境という問題は人間を離れて環境はないんです。例えば公害公害とおっしゃるけれども、どんなガスが出ようがそんなものは人間があって初めて公害なんだ。人間がなければ公害じゃないでしょう。そうしますと、人間の精神なり肉体に害を与えるものが公害ですね。そうでしょう。人間の精神に害を与えるもの、それから肉体に害を与えるもの、これが公害だということになりますと、命を取られていくことは明らかに害を与えられることでしょう。精神病者が命を取る、このぐらい大きな害はないですね。これを公害と言わずして何ぞや。そうでしょう。どう考えますかこの辺の問題は。
  167. 古賀章介

    政府委員(古賀章介君) 例えば騒音のように、環境の悪化が人の精神に不快な影響を与える側面を持つというような意味におきましては、これはやはり環境行政の中に入ってくると思いますけれども、精神障害者の問題とか人間関係などのように人の精神そのものに関与するということは環境庁の仕事としては入ってこないのではないか。これは現行制度でももちろん入ってきませんけれども、それを予測するということはいささか難しいのではないかというふうに考えます。
  168. 飯田忠雄

    飯田忠雄君 人の精神そのものに入るのじゃないでしょう。何とか気違いがうろつくということをなくできないか、こう言っているのだから。気違いがうろつく、これを何とかなくしてくれ、こういう話なんです。――気違いというのは差別語だからこれを取り消しますよ。精神異常者と言うことにしましょう。精神異常者が徘回するということ、このことが一つの悪い環境だということなんですよ。それをなくするためには、やはり厚生省とも御相談願って、精神病院その他にしっかりと、もう治ったという保証がない限り外へ出さないという、そういう指導をなさっていただくことが必要でしょう。厚生省は病気を治すことだけだとおっしゃるから私は環境庁にお願いしているのですよ。環境庁がやっていただかなかったら、やらないんだ、厚生省は。そういう問題なんですよ。  もしそういう問題は一切環境という言葉に含まれないと言うのなら、私は環境庁設置法の改正をお願いいたします。そういうものは含まないという定義を置いてもらわぬと、これは我々は国民としてこのとおり読んで安心していますからね。安心しておったのがこれは違うんだ、おれはそんなこと知らぬ、こう言われたんじゃ困るという問題がありますので、これを改正していただけますか。
  169. 古賀章介

    政府委員(古賀章介君) やはり精神障害者の問題を環境行政の中に取り込むというのは、これは非常に難しい問題だと思います。繰り返すようですけれども騒音などによって精神的な不快感を覚えるというような意味の精神的影響は受けますけれども、それはあくまでも物から受ける精神的な不快感でございます。人から受けるというものは、それはむしろ人と人との関係ということになるわけでございますから、そういうようなものは一種の、ある種の社会環境というようなことでございますので、環境庁はあくまでも自然的な環境、物質的な外界、それを対象にするということが今後も続くと思いますので、先生のせっかくの御提案でございますけれども、なかなか難しい問題ではないかというふうに言わしていただきます。
  170. 飯田忠雄

    飯田忠雄君 においとか音とか、そういうものだけの問題を扱うのが環境庁だと今おっしゃったように思いましたが、精神異常者というものは、刑法上はこれは人間と扱わない。あれは物の一種ですよ。物によって害を加えられるんでしょう、やはり環境じゃありませんか。当然環境庁で考えていただかなきゃならぬものじゃありませんか。どうですか。
  171. 古賀章介

    政府委員(古賀章介君) 専門ではないので答弁を差し控えた方がよろしいかと思いますが、私は、精神障害者も人であると思います。
  172. 飯田忠雄

    飯田忠雄君 人間だから人だという、そういう逃げ口上ではいけないんですよ。今論じておるのは、どうすれば国民の安全が確保されるかという問題を論じているのですからね。これはにおいとか音ばかりじゃない。そういう凶器を持った人、凶器を持った人も気が狂ってどこに出ていくかわからぬ。そういう凶器そのものなんだね、言ってみれば。そういうものに対して何らか手を打つ必要があるんじゃないか。これを法務省だけに任せますとこれは片手落ちになる。法務省は犯罪を犯した者、その者を処理する場合でしょう。今私がお願いしているのは、犯罪を犯した者じゃないんですよ。犯す前にやることがあるのではないか。例えば精神病者は、だれが見ても完全に治ったという保証がない限り病院から出さない、そういう政策をとることが必要ではないかということを私はお尋ねしておるんです。  これは厚生省にちょっとお尋ねしますが、精神異常者がいろいろの犯罪を犯す、しかもその犯罪を犯すのは精神異常者をこの町にほうり出しておるからだ、それが原因だということを週刊新潮は書いているんですよ。そしてキャンペーンをやっています。これはやはり率直にこの訴えを取り上げなきゃならぬのじゃないか、こう思います。その中で、これは難しい名前の人だからどう読むかわからぬが、日向野という人がおられますね。この人はお医者さんなんですよ。病院長なんです。この人ははっきりと、これは精神科医の診断の甘さやミスだとはっきり言っているのですよ。  そういう問題があるわけなんですが、厚生省におかれましても、このような問題の取り扱い及び病院に対する御指導はどのようになさっておられましょうかね。――厚生省おいでにならぬかな。
  173. 小林秀資

    説明員小林秀資君) 最近、精神障害者によると思われます事件が相次いで発生をいたしておりまして、非常に残念なことだと、このように考えております。厚生省では、精神障害者の医療と保護を図る観点から、自傷他害のおそれのある患者さんには措置入院制度というものがありまして、そういう制度を運用する等、現行制度の適正な運用について最大限努めておるところであり、今後も努めてまいりたいと考えております。  ただ、精神障害者の方は、今先生いろいろるる述べられたわけでございますけれども、精神障害者イコール即危険というような先生の御意見でございますけれども、精神障害者の多くの方は私は決して危険ではないと考えております。ただ、精神障害者の方、特に外来に通っていらっしゃる方、または町の中に住んでいらっしゃる方々は病識に乏しいというような面がございまして、ともすると医療が中断をしてしまう。本来なら医療機関に一週間に一遍または二週間に一遍行くところを行かなくなってしまうというような問題がありまして、医学的ケアがなかなか及ばないケースというのがあることも承知をしておりまして、その解決は大変難しい問題と考えております。この種の問題については、何か有効な手だてを考えなくちゃならないということで、今必死に検討をしているところでございます。
  174. 飯田忠雄

    飯田忠雄君 御検討になることはいいんだけれども、現実に精神病者が殺人を犯しているんですからね。こういう問題につきまして私は御処置を願わなきゃならぬのは、県の方で入院させますね。いわゆる入院させました場合に、その人が精神病であるかないかということは今日の医学でわからないのかわかるのか、そういう点ちょっと伺っておきたいのですがね。入ってきた、これは精神病か精神病じゃないか判断がつくのかつかないのか、お尋ねします。
  175. 小林秀資

    説明員小林秀資君) 精神科の先生が診られれば即診断のつく患者さんもいらっしゃいますし、即つかなくて、しばらく観察を必要とする患者さんもあると思っております。
  176. 飯田忠雄

    飯田忠雄君 すぐわかる人、観察してわかる人、それはどちらでもいいんですよ。どちらでもいいが、とにかくわかるのかわからないのかです。わからないのなら、今日の医学のだらしなさですね、と思いますよ。だから、一体わかるのかわからないのか、その点はどうですか。
  177. 小林秀資

    説明員小林秀資君) 精神障害者の方で、精神障害であるかそうでないかということの区別がつかない患者さんもあると存じます。
  178. 飯田忠雄

    飯田忠雄君 精神障害者であるということがわからない人の場合に、そういう人を病院に連れて来るということが現実にはどのくらいありますか。
  179. 小林秀資

    説明員小林秀資君) そういうデータは持ち合わせておりませんのでわかりません。
  180. 飯田忠雄

    飯田忠雄君 この問題は、少なくとも精神病院へ行く以上は、どこかおかしいから連れて行くと思いますよ。少なくともおかしいということだけはわかるんじゃありませんか。おかしいということもわからないのか。その点いかがですか。
  181. 小林秀資

    説明員小林秀資君) 精神病院または精神の診療所へ訪れる患者さんは、みずから見える方もいらっしゃいますし、それから御家族の方に連れられていらっしゃられる方もいらっしゃるわけであります。その方々が――済みません、もう一遍質問のポイントだけ。私どうも混乱してしまいましたので、もう一遍質問をお願いできませんか。
  182. 矢田部理

    委員長矢田部理君) 質問をしかと聞いて下さい。
  183. 飯田忠雄

    飯田忠雄君 私が質問しましたのは、精神病者だということがわからない人がやって来るのか来ないのかということを聞いているんですよ。つまり、病院とか診療所へ来るのは大抵どこか悪いから来るんでしょう。どこか悪いからおいでになりますわね。それをお医者さんが診られて、あなたは悪いと思って来たけれども実は何ともないよ、帰れ帰れとおっしゃるのか。それとも、ひとつよく診てあげるからとおっしゃるのか、そういう問題がある。それから、今我が国における病院、精神病院ですね、数が足らぬから追っ払うのか。あるいは数はあるけれどももう面倒くさいから置かないのかという問題もある。そういう点は御調査になったことはありますか。
  184. 小林秀資

    説明員小林秀資君) そういうことに関する調査をしたものはございません。ただ、今少し言いかかって中断してしまいましたが、精神病院または診療所に見えるのは、御本人が病識があって見える方もありますし、それから御本人が全然病識がなくて、家族の方が見ていらっしゃって、最近どうもおかしいと、こういうことで連れて来られる場合もあります。しかし、それがどの程度あるのかということのお互いの比率、そういうことについてはわかりません。
  185. 飯田忠雄

    飯田忠雄君 精神的に異常のある方は、これは非常に乱暴なことをなさる人とおとなしい人があるんですよ。おとなしい人は犯罪を犯さないことはわかっていますがね。乱暴なことをやる人が、それが自分は精神病じゃないから出せと、こう主張なさってお医者さんが出しちゃう。その結果起こっているのが事件なんですよ。現実に起こっている事件皆そうなんです、調べてみますとね。そういうことが起こらないように厚生省で病院とか精神科医を御指導なさることが必要ではないか。そういうことができないということであれば、なぜできないのかというできない原因を明らかにしていただきたい。  例えば、そういう場合に釈放しないというと、もうわんさとだれかが団体を組んで押しかけて来て、釈放せいと言って強要するということがあるために出せないのか。そういうことはないけれども、これは人権問題で、自分は人権に非常に自覚があるということを世間に認めてもらいたいためにおやりになるのか。そういう私の心、私の心が不祥事件を引き起こしておるように思われるので、そういう点があるのではないですかと、こういう点について詳しくお調べになったことがあるかとお尋ねしておるんですよ。  そして、調べられた結果適切な御指導をしていただかないと、今のような悪い環境、この環境を改善できないという問題があるわけです。厚生省で今おっしゃったようなかたくなな態度をおとりになっているから、環境庁は恐れをなして横の連絡をようやらぬわけだね。それでは日本政府として責任がとれませんよ。日本政府として、国家として責任を負わねばならぬですからね。それが負えない。そういう点についてどうお考えになりますか。
  186. 小林秀資

    説明員小林秀資君) 精神障害者の皆さん方も、先ほど申しましたように大多数の方は特に乱暴な、危険であるわけでもございません。そして、その方々の人権も十分考えなくてはならないわけでございます。  ただ、精神障害者の方は、症状が悪いときには入院をされて、そしてお薬の投与またはその他の治療法によって病気が改善された場合には、当然社会に出て社会復帰を図るということは私は当然のことだろうと思うのであります。ただ、社会に出ましても、なかなか患者さんが病識が弱いとか少ないということから、ときどき医療の中断ということが起きてしまう。そういうときには症状が悪化をしてしまうわけであります。そのときに御家族の方が気づかれて早目に病院へ連れて行かれれば、それは相当数こういう事故がなくなってくる。または保健所等の家庭訪問で指導を申し上げまして、そして医療機関にできるだけ来ていただくということをやれば、相当こういう事故は減らせるのではないかというふうに考えておりますけれども、これをやればどの程度減るのかとか、そういう統計は実はございません。  ただ、こういう精神障害者の管理ということは大変難しい問題もございますので、厚生省としてももちろん頭を痛めていますけれども、今後の検討課題として考えているわけでございます。
  187. 飯田忠雄

    飯田忠雄君 こういう問題は、現に起こって非常な危険な環境が生じているんですから、逃げ口上では済まされないと私は思いますよ。やはり日本政府として責任を負われて、もし病院の数が少ない、少ないために面倒が見きれないとかいうことがあれば、私は国の予算で病院をふやすべきだと思うんです。それから精神科の医者もどんどんふやされたらいい。そして、国民の生命の安全を守ってくれなければどうにもならぬでしょう。だから、現在の病院の数で十分だというのならそれでいいですよ。問題は、お医者さんの判断ができるかどうかという問題が一つある。精神病の判断が実際できる問題がどうかという問題が一つあります。そのほかに、観点を現在の国民の生命の安全ということに置いて考えてくださるかどうかという問題。これは憲法の十三条にはっきりと、国民には生命権があるとはっきり書いてある。それから幸福追求の権利があると書いてあるんですよ。そして、この権利については、国は公共の福祉に反しない限り最大の考慮をするとなっております。これは、政府が最大の考慮を払って人間の命を守らねばならぬ義務があるわけです。だからまじめに考えてやっていただきたいと、こういうことなんですよ。  きょう厚生省のお話を伺って、私は非常に寂しく思うんですがね。こんなことで本当にいいのかいなと、こう思いますよ。それから、全各省が自分たちの責任だということを考えていただかなきゃいけないと思います。あれは厚生省の仕事だ、あれは環境庁の仕事だとぶつけ合う問題じゃない。政府として考えてくれなきゃならぬ問題でしょう。実は、この人間環境についてという問題は、本当は予算委員会でやるべき問題なんです。だけれども、時間がないから環境委員会でやってくれと言うから環境委員会でやるんですよ。これはまじめにひとつ考えていただかないと困ります。  それで厚生省は、こういうような問題が今現に問題になって、週刊誌でも取り上げられておるんだが、こういう問題を解決するためにどういう対策を今後とろうとしておられるのか。その対策についてお伺いいたします。
  188. 小林秀資

    説明員小林秀資君) こういう精神障害者の方々の不幸な犯罪を減らすためにどういう具体的な対策が考えられているのかというおただしでございますけれども、どういう対策を立てたら一番いいのかということについては、まだ確たるものを持ち合わせておりません。しかし、精神障害者の医療中断ということが大変大きな問題であるということはわかっておりますので、その後について何らか有効な対策が立てられるものかどうか、今一生懸命考えているところでございます。
  189. 飯田忠雄

    飯田忠雄君 それでは、環境庁のお方にちょっとお尋ねいたしますが、核廃棄物の処理について環境問題が起こっておりますね。それで、核廃棄物の処理につきましてどういう方法をとって指導していかれようとしておるでしょうか。もしこれが環境庁の所管でなしにほかの所管だということであれば、所管の庁にお尋ねをいたしたいと思います。
  190. 結城章夫

    説明員(結城章夫君) お答え申し上げます。  原子力の開発及び利用を進めてまいりますと、その過程におきまして放射性物質によって汚染されている廃棄物、いわゆる放射性廃棄物が発生してまいるわけでございます。このような放射性廃棄物を適切に処理、処分することが原子力の開発及び利用を進めていく上での大変重要な課題であると考えております。    〔委員長退席、理事菅野久光君着席〕  このため、政府といたしましては、昭和五十七年六月に原子力委員会が決定いたしました原子力開発利用長期計画といったものに基づきまして、放射性廃棄物の処理、処分対策計画的に推進しておるところでございます。  もう少し具体的に申し上げますと、放射性廃棄物は、低レベルのものと高レベルのものに大きく分かれるわけでございます。まず、原子力発電所あるいはその他の核燃料諸施設から出てまいります低レベル放射性廃棄物の問題でございます。この低レベル廃棄物は、現在原子力発電所などの敷地内の貯蔵施設に安全に貯蔵されております。その最終的な処分が問題になるわけでございますが、この最終的な処分の方法といたしましては、海洋処分及び陸地処分、この二つを組み合わせて実施していくんだということが原子力委員会の基本方針でございます。  それで、まず海洋処分でございますが、これにつきましては関係国の懸念を無視して強行はしないんだというのが我が国の従来の方針でございます。こういう方針に基づきまして、海洋投棄規制条約、いわゆるロンドン条約の締約国会議の決議に基づきましてこれから検討が行われるということになっておりまして、この検討に関し関係諸国と協議しながら対処していくということにいたしております。  一方、もう一つの処分のやり方といたしまして陸地処分ということを考えております。これにつきましては、当面原子力発電所の敷地の外におきましてこの低レベル放射性廃棄物を集中的に貯蔵するということを計画しておるわけでございます。それで時間の経過に伴いまして廃棄物の中の放射能が減衰いたしますので、この減衰を待って処分に移行するということを考えております。この処分への移行に当たっては、当然のことですけれども、十分に安全評価を行うということが前提になっております。この陸地処分の具体的な計画といたしましては、現在電気事業者が中心になりまして、青森県の六ケ所村におきましてこの低レベル放射性廃棄物を集中的に最終貯蔵する計画が進められております。これまでに地元青森県及び六ケ所村の受け入れも得られまして、現在立地のための調査等が進められているという状況でございます。  それからもう一つの、これは原子力発電所で発生する使用済み燃料、これを再処理することによって発生する高レベル廃棄物の問題があるわけでございます。この高レベルの廃棄物の処理、処分につきましては、現在三段階でこれに対処していくということを考えております。  まず第一段階が、安定な形態に固化するということで、固化の方法としてはガラスで固めるガラス固化ということを考えております。次に、その次の段階、第二段階といたしまして、三十年から五十年間この固めたガラス固化体を貯蔵するということが考えられております。第三段階、最終段階といたしましては、最終的にこれは地下数百メートルより深い地層中に処分するという、この三段階で対処するというのが基本方針でございます。  それで、まず前段のガラス固化及び二段目のガラス固化体の貯蔵の問題でございますが、これは既にフランスなどにおきまして、フランスでは一九七八年から実用規模での操業が行われているところでございます。我が国におきましても、自前の技術を確立するんだということで、動力炉・核燃料開発事業団などが中心になりまして研究開発を進めております。この結果、一九九〇年、昭和六十五年に運転を開始するということを目途に、この高レベル放射性廃液のガラス固化のプラントを、これは東海村に建設することを計画しておるわけでございます。また、この計画に平仄を合わせましてガラス固化体の貯蔵プラントを建設することも計画いたしております。  最後に、高レベル廃棄物の最終処分でございますけれども、この問題につきましては、やはり動燃事業団が中心になりまして、二〇〇〇年ごろに処分技術実施を行うということを当面の目標に置いて、このための研究開発計画的かつ体系的に手順を追って進めているということが現状でございます。
  191. 飯田忠雄

    飯田忠雄君 いろいろ御答弁をいただきましたが、そこで最近新聞を見ますと、これは十一月十六日の朝日新聞ですが、これに「放射性廃棄物の研究・貯蔵施設」こう書いて、北海道がこの問題で非常に揺れているという記事がございまして、その後、その原因は、研究・貯蔵とこう言っているけれども、これは結局そうした核廃棄物を処分するところにするんじゃないかということで、それが心配でもめている、こういう記事になっておるわけなんですが、こういう問題は御存じですか。もし御存じならばこの問題について経過をちょっと言ってください。
  192. 結城章夫

    説明員(結城章夫君) お答え申し上げます。  先生今御指摘のは貯蔵工学センターというものかと思います。これは動力炉・核燃料開発事業団が計画しておるものでございまして、内容は放射性廃棄物関係の貯蔵・研究をやるための総合センターでございます。  具体的な内容といたしましては、まず、先ほどの高レベル放射性廃棄物、その他の廃棄物も含めましてこれを貯蔵するための施設がございます。二番目に、深地層試験場と申しますと、これは先ほど最終的には地下に埋めるというふうに申し上げましたが、そのための各種実験を行うための地下の実験場でございますが、この深地層試験場といった高レベル廃棄物の最終処分のための試験研究施設でございます。最後に、このセンターに含まれておりますものは、さらに高レベル廃棄物からの放射線熱が出ますので、この放射線熱を有効利用するための各種研究をやるための試験研究施設ということで構成されておる施設でございます。  この貯蔵工学センターは、動力炉・核燃料開発事業団の東海村の再処理工場で発生する高レベル廃棄物、これはガラスで固めたガラス固化体でございますが、これを貯蔵するということ、さらには今申し上げました深地層試験といったことで地下実験を行うということで、我が国がこれから高レベル廃棄物の処分技術を確立するために必要不可欠な試験研究を行っていくものでございまして、我が国がこれから高レベル廃棄物の対策を進めていく上で原子力政策上、あるいは放射性廃棄物政策上きわめて重要なプロジェクトであるというふうに考えておる次第でございます。
  193. 飯田忠雄

    飯田忠雄君 それはそれでいいんですが、この新聞によりますと、高レベル放射性廃棄物という問題について、これは「百万キロワット級の原発一基から約百二十リットルの固化体が年々三十本当る勘定。」、こうなっている。「ストロンチウム90などいわゆる「死の灰」が含まれ、放射能の強さは当初、四十万キュリー。コンクリート壁で放射線を防ぐとすれば、二メートルもの厚さを必要とする。」云々、こういうふうなことが書いてあるんです。新聞にこういうことが載りますと、やっぱり国民は不安に思います。  それで、先ほど液をガラスで固めちゃってそれを深く地下に埋める、こういう御説明でしたが、そういうことをすれば本当に安全なのかどうかという点について、安全に関する問題あるいは保安のために必要な措置を講ずるということが法的に義務づけられているんですが、これは「核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律」、えらい長い名前の法律があるんですね、これの十一条の二の一項です。それによりますと、製錬業者は、その事業を行っている場所以外のところで廃棄する場合は、「総理府令で定めるところにより、保安のために必要な措置を講じなければならない。」、こう書いてあります。北海道のこの場合に、そういう措置は具体的に講じられておるんでしょうか。
  194. 結城章夫

    説明員(結城章夫君) ただいま御質問の安全の問題でございますが、現在、動力炉・核燃料開発事業団がこれからやろうとしておりますのは、北海道の幌延町におきまして、私先ほど申し上げましたような、こういう貯蔵工学センター構想、計画、これが幌延町に立地できるものかどうかということを見きわめたいということでございまして、そのための調査にこれからかかるという段階でございます。  もし将来これができた場合の安全性ということになりますと、これは当然原子力の施設でございますので、先生今読み上げられました長い名の法律、原子炉等規制法というものでございますが、これの規制を受けていくわけでございます。ここで当面行うことを計画しておりますのは、高レベルガラス固化体の貯蔵でございますが、この貯蔵という問題は先ほど私ちょっと申し上げましたように、既にフランスでは実績もできておりますし、我が国もこれまでいろんな研究をやってまいりました。その結果、安全にできるという見通しを持っております。こういうことで地元の方には、安全の心配は要らない、もちろん実際にやる場合には国が法律に基づいて厳重に規制をするんだという説明を申し上げ、今地元の御理解を求めておるところでございます。
  195. 飯田忠雄

    飯田忠雄君 こういうような問題、科学的な問題は、本当に国民にわかるようにいろいろな方法で御説明願わないと、いたずらに混乱を増すと思いますね。その作業をお願いをするわけなんですが、一般論としまして、核廃棄物といいましても人間にとって非常に危険な廃棄物とそうではない廃棄物とございますね。それで、その区別が一般にはわからぬのですよ。どういうものが危険でどういうものが危険でないということをもっと国民によくわからせるような政策をおとりになる必要があるのではないかと思いますが、この点についてどのように処置をとっておいででしょうか。
  196. 結城章夫

    説明員(結城章夫君) 廃棄物自体が危険か危険でないかという議論はなかなか難しいかと思いますが、管理して安全な状態で貯蔵なりあるいは最終処分を行うということかと思っております。  今先生お話しの点は、いわゆる低レベル放射性廃棄物、これも非常に種々雑多でございまして、ほとんど放射性物質で汚染されていないもの、あるいはもともと汚染されていなくても、一たん例えば原子力発電所の中で発生しますとこれは放射性廃棄物であるとみなされまして、放射性廃棄物としての厳重な管理をやらなければいけないということがございます。こういうことにつきましてはこれまで大分検討が進んでおりまして、先ほどの原子力委員会の原子力開発利用長期計画におきましても、こういう極低レベル、非常にレベルの低い極低レベルのものについては、放射能レベルに合った合理的な処分方策を確立しなさいというふうな政策も書かれておるわけでございます。こういうことを踏まえて、その低レベル廃棄物を区分いたしまして、非常に低いものはそれなりに応じた簡単な処分方法、あるいはもう放射性物質として扱わなくてもいいというようなことができるんではないかということになっております。ただ、では具体的にどういう区分値を設けるか、あるいはどういう考え方でいくかということにつきましては、これは原子力安全委員会の方で現在詳細に検討を進めているところでございます。
  197. 飯田忠雄

    飯田忠雄君 最後に一つ聞きますが、新聞によりますと、昨年の七月に北海道の知事は道議会で安全性が確立されていないということを理由に誘致反対を表明された、こう書いてあるんですよ。それで安全性が未確立だからということで誘致反対だということが書いてありますが、こういう問題について、科学技術庁ではどういうふうにお考えでしょうか。
  198. 結城章夫

    説明員(結城章夫君) 繰り返しになりますけれども、この貯蔵工学センターで考えております高レベル廃棄物等の貯蔵につきましては、諸外国の実例あるいは我が国でのこれまでの研究開発の成果から見まして、安全性は確保し得ると思っておりますし、実際にやる場合には、原子炉等規制法に基づく厳重な国の規制を行う、安全規制を行うということで万全を期していきたいと思っております。
  199. 飯田忠雄

    飯田忠雄君 きょうはもうこの程度にしておきます、また将来お尋ねすることにして。  それで今度は文部省の方にちょっとお尋ねしますが、最近、いじめという問題が出ております。これは学校環境の問題だと思いますよ。教師の生活環境と児童の生活環境の間にずれが生じておる。そこから来る問題もあるでしょうし、あるいは今日の児童の考え方の中、生活環境の中にいじめをやるようなそういう事態が、そういう環境ができておる、こういうこともあるでしょうし、いろんな問題があると思いますよ。例えば先生が児童をぶん殴ったんで、ぶん殴られたのが、わしもひとつほかの弱いのぶん殴ってやろうといってぶん殴るかもしれませんね。そういうようなことで環境が醸成されたのではないか。いろいろあると思います。そういういじめが生ずる学校環境について調査されたことがあるでしょうか。
  200. 小林孝男

    説明員小林孝男君) お答えいたします。  いじめに関する調査の件でございますが、文部省といたしましては、過去、各都道府県にございます教育センターにおきます教育相談の事例等についてサンプリング調査等でおおよその動向はとらえております。そのほかに、現在いじめの問題の実態を全国的に把握する、こういう観点から、各都道府県の教育委員会あるいは各学校等を対象にいたしまして、全国的な実態調査をしておるところでございます。このほかに、専門家のグループに委嘱をいたしまして、教師の意識あるいは子供の意識にまで踏み込んだアンケート調査につきましても現在実施しておるところでございます。
  201. 飯田忠雄

    飯田忠雄君 いろいろ御調査を願って対策を講じていただかにゃならぬわけなんですが、現在文部省としてはどういう対策をお立てになっているでしょうか。
  202. 小林孝男

    説明員小林孝男君) このいじめの問題につきましては、その原因とかあるいはその背景というものにつきまして、教師の指導のあり方あるいは幼小児期からのしつけの問題、あるいは社会的な風潮など、学校や家庭、社会、それぞれの要因がございますわけでございまして、これらが複雑に絡み合っているものと考えておるわけでございます。  先生御指摘の学校の環境、特に生徒と教師との人間関係のあり方、こういうような事柄につきましても、いじめに係ります対策として重要なものであると考えておるわけでございまして、今年の六月に文部省が有識者に委嘱して検討いたしました会議におきましても、学校全体の雰囲気を思いやりや助け合いの精神で満たして正義を行き渡らせる、こういうこと、それから全教師が常に児童生徒に受容的に接し、生徒理解の徹底を図ることにより、児童生徒との間に信頼関係を築き、児童生徒が教師にいつでも相談できる雰囲気を醸成することなどの指摘がなされているわけでございます。  文部省といたしましては、従来から教師向けの指導書を作成する等この問題に対する指導を行ってきたところでございますが、この検討会議の緊急提言に基づきまして初等中等教育局長の通知を発するなど、その指導の充実を図っているところでございます。
  203. 飯田忠雄

    飯田忠雄君 いじめの問題に関しまして、本当の真相を研究なさっているかどうかという問題があるんですが、例えば学校でいろいろ非行をする児童がいた場合に、それを注意する先生がいたとする場合に、こういうことがあるかどうかわかりませんが、PTAの方でそれをチェックする、そしてその先生に対して抗議を申し込む。そういうことがしばしば続くので、もう先生は放棄してしまう、そういうことがあるのではないかというふうに言われることもあるんですね。つまり、家庭教育の不徹底が結局は学校まで延長されてきて、しかも先生が無気力であるためにどうにもならぬ状態をつくった、そうではないかというふうに言う人もおるんですが、こういう点についてどうお考えですか。
  204. 小林孝男

    説明員小林孝男君) いじめの問題につきましては、学校、それから地域社会、それから家庭、それぞれに役割分担があると思うわけでございまして、おっしゃるとおり特に家庭と学校との連携ということが大切ではないかと思っております。  それから、特に家庭におきましては、子供のしつけということについて十分にやっていただく、あるいは親は子供の日常生活に十分な目配りをする、あるいは子供の能力等につきまして、一面的な評価に陥らずそれぞれの個性、特性を生かすように配慮する、こういうようなことで家庭側の協力も大切ではないかと思っております。
  205. 飯田忠雄

    飯田忠雄君 この問題は文部省で手に負える問題なのか、それとも法務省に渡した方がいい問題なのか、その点についていかがですか。
  206. 小林孝男

    説明員小林孝男君) いじめの問題につきましては、いろいろの立場から各省庁協力して取り組んでいくべき問題であると思っております。
  207. 飯田忠雄

    飯田忠雄君 それじゃ、ありがとうございました。また将来お尋ねします。  今厚生省とか文部省の方からいろいろ御答弁をいただいたわけですが、こういう人権を侵害するような問題ですね。精神病者によって一般の正常な人が人権を侵害される。精神病者が人権を侵害されるんじゃありませんよ、一般国民が人権を侵害される、こういう事態。それからまじめなおとなしい子供が人権を侵害されるという事態。こういう事態につきまして、その人権を侵害された人に対する保護の問題、それから侵害した人に対する対策の問題があると思いますね。法務省ではこういう問題についてどうお考えでしょうか。
  208. 井口衛

    説明員(井口衛君) お尋ねの人権につきましては、人権擁護機関としては、人権の共存ということに力点を置いてお互いの人権を守ろうという方針でやっておりますので、いじめ問題につきましても、精神障害者問題につきましても、一部の人の人権に重点を置くというようなことはなく、すべての人の人権を尊重するという方針でやっております。
  209. 飯田忠雄

    飯田忠雄君 どうも要領を得ない御答弁だったんですが、そういう事故が起こった場合に、もっと率直に端的に言いますと、加害者を刑事的に処罰する態度をおとりになるのか。あるいはこれはもう病院だとか学校に任せちゃって何もしないでおこうと、こういう御方針なのか。その点はいかがでしょう。
  210. 米澤慶治

    説明員(米澤慶治君) お答えいたします。  まず、精神障害者が犯罪を犯しました場合につきましては、先生御承知のとおり、刑法に責任主義という原則がございまして、仮にその精神障害者が心神喪失ということになりますと、これを起訴して刑罰を科するわけにはまずいかないわけであります。しかしながら、これは厚生省の所管ではございますが、精神衛生法の規定に基づきまして――我々捜査官あるいは裁判所で、仮に無罪になりました場合には裁判所から、それぞれ通報ということをいたします。措置入院が相当であるということで都知事あるいは各県知事に通報いたしますが、その後精神衛生法に基づきまして措置がとられるかどうか決まるわけでございます。  なお、そういった場合を含めまして、先生御承知のように、犯罪の予防、つまり犯罪発生を防止するということは我々法務、検察の仕事の一つでございますので、日ごろから精神障害者の犯罪を含めまして、一般の犯罪者の場合も含めて、犯罪の防止のためのあらゆる措置をとってきております。例えて申し上げますと、これは一年に一回やっておる運動でございますが、「社会を明るくする運動」ということで、各省庁からの御協賛を得まして、しかも各都道府県あるいは市町村の御協力も得まして、日本全国に対しまして犯罪防止活動ということも実施してきておるところでございます。
  211. 飯田忠雄

    飯田忠雄君 どうも要領を得ない御答弁ですが、これはまた法務委員会でゆっくりお尋ねをいたしますが、端的に言いますと、精神病者が犯罪を犯した場合に、精神病者の管理責任を負う者、あるいは精神病者を町に放すことについて故意または過失のあった者、こういう人たちに対する処罰ですね。故意に、精神病者とわかっていて、これが出て行けばあるいはもう人を刺すかもしれぬと思って放せば、放された人が殺人をすれば未必の故意による殺人ですね、これは。そうでしょう。あるいは業務上過失致死か傷害か、こういうのが起こりましょう。それで、こういう問題を、実際にやった人からさかのぼって、管理責任のある者、あるいはそれに対して保護責任なりあるいはいろいろ責任がありますわね。検察官はその責任を問うべきではないか。従来、その責任を放置してきておるから、だから変なことになっているんじゃないか。こういうことをお尋ねしているんです。
  212. 米澤慶治

    説明員(米澤慶治君) 今の点にお答えいたしますが、先生が前提として、例えば精神障害者について十分な管理をすべきお医者さんの故意または過失があるという前提でお話しなさっておりますが、その前提事実を認定することは非常に医療の分野の問題でございまして、我々法律家からしますと、果たしてそこまでの責任を問えることがあるのかないのか、ちょっと実例を私存じ上げませんので仮定のお答えになって恐縮でございますが、まず第一は、民事的にどんな責任があるかということがむしろお医者さんに対して追及されるべき責任の一つかと思っております。もちろん、先生も御専門でございますので、例えば間接正犯としての、精神障害者の行動がそのお医者さん等によって利用された結果として間接正犯が成立する等の余地がないとは言えませんけれども、管理者の責任といいますか、どこまで義務を尽くせば、その注意義務違反があったかなかったかという点では非常に難しい問題があろうかと私思うわけでございまして、具体的な事実を前提にいたしませんというと、結論を軽々に右左に申し上げると、むしろかえって混乱が起こるんではないかと私思っております。
  213. 飯田忠雄

    飯田忠雄君 混乱が起こるのを御心配の御答弁だと思いますけれども、実際に、今まで入っておったその方が治りましたと、出て行ってもよろしいと出した。出したら殺しちゃった。こういう場合はやはり医者の過失ではないか。少なくとも業務上の過失だと判断ができる。殺人が起こればですよ。ところが、一年も二年もたてば、それは過失責任は中断されます、法律はね。中断されるかどうかという判断はやっぱり検察庁がおやりになればいいことで、少なくともそういう問題をけじめをなさらないと、結局責任の所在が不明確になる。そして殺され損だということになるんですから、そういう点を御研究を願いたい。これだけの話です。きょうはいいですよ。まあ一応答弁ください。
  214. 米澤慶治

    説明員(米澤慶治君) 研究はさせていただきます。
  215. 飯田忠雄

    飯田忠雄君 それでは、最後になりましたが、運輸省の方おいででしょうか。――精神環境という点からお尋ねをいたします。  日航機の墜落事故がございましたね。この日航機の墜落事故というのは、どうも単なるああいう事故が偶然に起こったというふうには解されないわけなんですね。あれは人為的な災害だということはもう万人が認めているでしょう。それで、人為的な災害だということになると、だれかが、どこかがおかしいところがあったということになるんですから、そこでお尋ねをするんですが、ああいう事故が起こるのは結局整備でしょう。あれは完全に整備の不十分ですね。整備の不十分が生ずるというようなそういう環境ですわ。あれも環境なんだ。整備が完全になされないような環境でしょう。つまり、そういう整備職員の心的状態整備職員が置かれておる労働条件、そういうもの全部をひっくるめて環境をつくっておる。その環境の悪さがあの事故を引き起こしたんですね、もとは。  そういうことについて、運輸省ではどのようなふうに御理解になって調査をし、あるいは指導をなさっておるか、お尋ねいたします。
  216. 赤尾旺之

    説明員(赤尾旺之君) お答え申し上げます。  六十年八月、日本航空ジャンボジェット機が御巣鷹山に墜落いたしまして多数の人命がなくなりました。まことに遺憾のことと思っております。  私ども、航空会社に対しましては日ごろ安全を呼びかけておりますけれども、実態的に、航空会社の中に入って毎年定期的に安全性確認の検査をいたしております。これは整備上の問題、整備上の職場あるいは運航の職場、こういうところに立ち入りまして検査をするわけでございます。参考までに申し上げますと、実際に各基地におきましては、運航面で昭和五十七年には三十五件、五十八年には四十件、五十九年には四十二件の立ち入りをやっております。  その結果、作業場所あるいは待機場所につきまして特段のふぐあいというものは発見できませんでしたけれども、言いかえますと不都合は見当たりませんということでございますが、今後とも職場を明るく、そして整備しやすいように、また、待機場所につきましては十分リラックスできるよう今後とも航空会社を指導していきたい、かように考えております。
  217. 飯田忠雄

    飯田忠雄君 先般の日航機墜落事故以後、いろいろの日航機の事故が起こっていますね、至るところで。こういうことが日航機にだけよく起こるというんですがね。ほかの機もあるかもしれませんよ。この原因というものはどういうところにあるという点につきまして、御研究なり御指導になったことはありますか。あれば御答弁願います。
  218. 黒野匡彦

    説明員(黒野匡彦君) 大変難しい御質問でございまして、巷間、例えば日本航空が特殊法人であるという特別な地位、あるいは一部では組合が幾つもあって内部の意思疎通が不完全であるとか、いろいろなことが言われておりますが、私どもの知る範囲におきましては、日本航空の事故あるいは故障等がたまたま多いということが、まさにこの点が原因であるというのはなかなか決めにくい、決めつけにくいというのが率直なところでございます。    〔理事菅野久光君退席、委員長着席〕
  219. 飯田忠雄

    飯田忠雄君 難しい難しいとおっしゃるけれども、現実には何かあるはずですね。例えば安全運航をするための人間関係をよくするということにつきまして、例えば飛行機が着いてそれが飛び立つまでに余り時間が短いために整備がうまくいかぬということであれば、これは改善の余地があるでしょう。そういう時間的な研究、どれだけ時間があったら完全な整備ができるかという問題について御研究になり、適当な御指導になることが必要ではないでしょうかね。  それで、例えば遠くへ飛ぶ前には、整備ができなければ機をかえるという手もあるでしょう。二つ整備しておいて、途中で乗りかえで行ってもらう、そういうような対策を講ずべきではないか。安全第一の対策について日航会社にいろいろ指示なさると思いますがね。今までにどういうような指示をなさり、今後どういう措置をなさろうとしておるのでしょうか、お尋ねします。
  220. 赤尾旺之

    説明員(赤尾旺之君) お答え申し上げます。  航空機のステー時間でございますけれども、大型機ですとかあるいはYSのように中型機、それから定期便でございましてもDHC6とか離島路線がございます。それぞれによりましてステーの時間はまちまちでございますが、大体ジェット機クラスでございますと八十分ないし百分のステータイムがございます。外国におきましては一時間半ないし二時間、こういった間に必ず整備がいてやらなければならない点検、室内の点検、清掃、こういった業務がございます。私ども整備関係ではスポット点検と申しております。したがいまして、この時間内にスポット点検が終了しない場合、航空機を遅延させたり、あるいは出発することができないようなふぐあいがございました場合、機材の変更とか、こういうことをやっております。
  221. 飯田忠雄

    飯田忠雄君 最後に一つお尋ねしますが、あの日航機が落ちるときに、かじがだめになったからということが根本的でしょう。ああいうことが未然に防げなかった原因ですがね、これは運輸省で十分お調べになっておりますか。このあたりはどういうことだったでしょうか。
  222. 赤尾旺之

    説明員(赤尾旺之君) 本件につきましては、目下事故調査委員会調査中でございます。  私ども航空局といたしましては、事件当時のデータ等を事故調査委員会にすべて提出し、事故調査委員会では損傷した機体関係等につきまして目下事故調査をしておるところでございますが、その原因の一つとして後部隔壁等のふぐあいということが言われておりますけれども先生御質問の、かじがとれなくなったということでございますけれども、これにつきましては、現在の大型航空機、これは油圧によってフラップですとか、その他がしの系統をつかさどっております、これのパイプが切断されまして、すべて油が漏れてしまったということでございます。  最後になりますけれども、まだ事故調査委員会調査中ということでございますので、結果についてはそちらの方の発表を待ちたいと思います。
  223. 飯田忠雄

    飯田忠雄君 運輸省の方、きょうは時間がないからもうやめます。  長官に最後に一つお尋ねいたしたいんですが、この環境問題というのは、これは聞いておられたらわかりますように、広い意味を持つものなんですね。こういう観点から環境問題を考えていただかないと新しい環境問題の解決はできぬ、こう思います。長官は、こういう問題についてどのようにお考えでしょうか、お尋ねいたします。
  224. 石本茂

    国務大臣石本茂君) 的確にお答えできますかどうか自分でも自信ございませんけれども、心身ともに健康の保持ができるような生活環境、このことにつきまして幅広く今後検討し、そして努力をして、よい結論に導かなければならないのだというふうに、先刻来お話しを承りながら、これはやっぱり生活、家庭環境、そういうものがそういう精神障害者とか思わない事故の原因になる場合もあるのではないだろうか。人間というものの幸せは、心身ともにの健康を守ることだというふうに考えて聞いておりました。
  225. 飯田忠雄

    飯田忠雄君 終わります。
  226. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 環境庁長官の基本的な姿勢に関して質問いたします。一つは、環境基準をどう考え、これをどう達成するのかということ、これは具体的に新幹線騒音問題について質問します。それからもう一つは、公害行政に関する裁判所の判断をどう受けとめ、そして被害者救済をどのように実現するのか、これは水俣病裁判。いずれも具体的事例に沿って質問したいと思います。  まず第一の新幹線騒音問題につきましては、私は当委員会でことしの三月、四月といずれも質問しまして、これは達成期限までに環境基準達成は不可能ではないか、だから事前に十分に勧告したり指導をすべきじゃないかということを申し上げたんです。それに対して林部局長の答弁は、「静かに見守っていきたい」、騒がしいものを静かに見守ったってよくなるはずはないんですね。まさに結果はそのとおりでありまして、これは先ほど片山委員とのやりとりでも明確なとおり、大変な著しい環境基準の未達成という状況が明らかになったわけです。そして、これも先ほど議論の中で明らかになったとおり、大気保全局長から運輸省の国鉄再建総括審議官に対して要請文を出しました。これも先ほど御指摘のとおり、当面七十五ホン以下、しかも五年以内というわけであります。  そこで、私がここで指摘したいことは、もう著しい未達成が明らかであるにもかかわらず、手をこまねいて、その結果が期限が達しても達成できない。しかも七十ホンという環境基準を七十五ホンまでに緩めて、しかも五年後と、これでは一体環境基準は何のためにあるのかということをまず大臣にお伺いしたいと思うんです。
  227. 石本茂

    国務大臣石本茂君) ただいま先生申されますように、現在まだ未達成地域が相当に残されておるというのも事実でございます。これまでの音源対策でございますとか、それから遮断壁でございますとか、あるいは家の中の防音装置でございますとか、そういうふうな全般的なものについての環境というものは、十年前に比べればかなりよくなってきたわけでございますが、今申しましたように、まだまだ目的は達成できておりません。  そういうことで、先般運輸省とか建設省に申し入れをいたしましたのは、目標に向かって、七十ホンというこの基準は変えておりません、それに向かいましてぜひとも適当な措置はとってくれということは申し入れしたわけでございますので、この環境基準達成のためには今後とも一層厳しい努力が必要であるというふうに考えているところでございます。
  228. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 先ほどのやりとりの中で、ではこの七十五ホンなるものの根拠は何かというと、これは国鉄での試験結果七十五ホンは達成可能であるということだというんですね。これが根拠だと。それが達成可能だからそこを目標にしなさいというんじゃ、これは環境基準じゃないんですよね。環境基準というのは、現在達成していないけれどもその高い目標達成する。しかし、期限が来たらばそれが達成不可能で、達成可能なものだから七十五ホンにするなんて、これは大体環境基準の考え方が私は間違っていると思うんです。しかし、このことで議論していると時間がないので、先ほどの議論をもう一歩進めたいと思うんです。  そこで、国鉄にお聞きしたいのは、これは「東海道新幹線名古屋付近発生源対策試験結果」というものがこの七十五ホンが可能であるという根拠になっていると思うんですが、いかがですか。
  229. 神谷牧夫

    説明員(神谷牧夫君) 先生の御指摘のとおりでございます。
  230. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 そこで、これによりますとステップ一からステップ五までありまして、ステップ一は対策前の現状。それからステップ二はレールの更換なんですね。レールの更換であればこれは開業当初からできる技術です。それからステップ三がそれにプラスして重い架線にし、ハンガー間隔の縮小ということですが、これも東北新幹線開発したもので、既に五十四年から五十六年に実験して、供用開始とともにこれは導入している技術であります。それからステップ四のラムダ型防音壁、これも既に昭和五十六年に特許申請があって実用化されているものなんです。そしてステップ五のバラストマット、これも五十五年以前に確立。となりますと、いずれも五十六年以前に実用化された技術ばかりで、ですからできたんですね。なぜ今までやらなかったのか。それは国鉄に対する質問。  それから環境庁に対しては、先ほど、試験結果というものを最近になって知ったというんですが、国鉄は現にできる――これがその資料ですが、できる技術を全部持っておりながらやらないでおいて、そしてやっと七十五ホンなら可能ですというこんなもの見せられて、環境庁だまされたことですよ。これは言わぬこっちゃない、前々からよく調べて勧告すべきだったんです。  それぞれお答えいただきたいと思います。
  231. 神谷牧夫

    説明員(神谷牧夫君) 先生御指摘のとおり、個々の対策につきましては従前から開発されていたものがほとんどでございますが、御承知のように、新幹線騒音につきましては幾つかの発生源がございまして、一つは架線とパンタグラフのする、いわゆる集電音と称しております。それから、これが一番大きいわけでございますけれども、車輪とレールが接触して発生する。それからもう一つは、車両が高架橋などに乗って走行する、その結果として起こります振動。三つの主体となる音源があるわけでございますが、この三つの音源を同じレベルで下げていくということは、騒音対策としてどうしても技術的に必要なことであります。  このケースにおきましては、いわゆるレールと車輪が摩擦して発生する音を減らす。この対策といたしまして新型の防音壁、先生御指摘のとおり数年前に原理的には特許を得ておる工法でございますけれども、このラムダ型防音壁、新型防音壁でございますけれども、これにつきましては、東海道の特に名古屋地区での問題といたしまして、高架橋の防音壁自体が非常に弱いということもございますので、それに乗せるために従来開発されましたこの新型防音壁を軽量化するというような問題がございまして、そういったものの開発、そして実際にそれを東海道名古屋地区において、いろんな諸条件がある中で実際に敷設をして確かめる、こういうふうな手順をとったわけでございまして、工法があってなおかつそれを先延ばししたということでは決してございませんで、将来にわたって有効なかつ耐久性のある対策を講ずる、そういう趣旨でもって慎重な試験をしてまいったということが実態でございます。
  232. 林部弘

    政府委員林部弘君) 近藤先生の御指摘だと、何か私どもだまされたようにおっしゃいますけれども、先ほどこれは片山先生もお示しになった五月十八日の資料、私もこの期日の後にこの結果というものを見ておりますけれども、私はだまされたということではなくて、技術開発というのは、原理的に開発されたものがどこにでも適用できるかどうかということについてはかなり慎重な試験も必要だと思います。まして、新しい技術を導入してもらうということを環境庁として勧告するということになれば、これはもう全線に対して適用できるかどうかという問題がございますし、たしか前回、前々回先生と私とのやりとりの中でも、同じ新幹線といっても一番最初にできた東海道新幹線と新しい上越なり東北新幹線というのは、やっぱり見た感じも違います。ですから、そういう意味では、新幹線の中では最も古い新幹線に非常に新しい技術が直ちにアプライできるのかどうかということについて、新技術についてテストをしているということは私も存じておりました。  ただ、昔から知っておったわけではございませんが、たしかこれは去年の暮れぐらいからいろんなテストをやっているらしいという話を聞いておったのですが、このデータを見ました時点で、この「ラムダ型防音壁」というふうにここに書いてございますが、これは割合に新しい時点で調べているんです。ですから、先生から御質問があった時点では実はまだこのレポートは出てきていなかったわけです。たしか私の記憶では、三月と四月の初め、三月の終わりに先生と私のやりとりの中で、私は国鉄はまだ何か持っているはずだと申し上げたのは、テストをやっているということは知っておりました。また、これが成功すれば、今度のテストの結果もはっきりしているように、やっぱり名古屋地区は悪いんですから、それから非常に住居も密集しておりますので、そういうところから優先的にやっぱりやってもらわなきゃいかぬというようなことが私自身の腹づもりとしても心の中にあったわけです。  ただ、これテストが成功しませんとそれについて云々はできない。だから私は、たしか先生とのやりとりの中でも、実効のある措置をやっぱり勧告しなきゃいけない。その一つのあらわれは、大変残念だけれども七十はできぬということが、これは防音対策しかないわけですから、そういった音源対策としては七十はできないということが明らかになってくれば、東海道名古屋地区でテストして成功をしたというのであれば、それをまず名古屋からやってもらい、名古屋に準ずるようなところについてやってもらう、それをできるだけ近い将来に完了してもらおうと、それが今回の要請をいたしました七十五ホンという音源対策の意味でございまして、私は別にだまされたというのではなくて、私の判断ではその結果がしっかり公表されるのを待っていたというふうに御理解いただきたいと思います。
  233. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 五月十八日段階でだまされておったかどうかは別として、問題は、その後がいかぬですよ。できる、しかも全部もう過去にできるものなんですよね。全部そうなんですよ、ステップ二からステップ五まで。それがなぜ五年後、しかも七十五ホンというぐあいにしたのか。それでもいいということ、今できる技術でよろしいよということなんですよ。努力しなくてもよろしいよということです。  では、お聞きしたいことは、環境基準はいつまでにどのように達成させるのか。それはどうなんですか。
  234. 林部弘

    政府委員林部弘君) 私は、達成期限が来て、私どもが想像していたよりは率直に申し上げて達成状況は悪かったと思います。ただしかし、ひどく予想が狂ったということでは必ずしもなかったように思うんですが、今お話しがありましたように、いつできるかという中で、七十がいつできるかということであれば、今日の時点では、七十ホンに対する音源対策の見通しというのは、今ここで私が的確にお答えすることはできないと思います。  ただ、七十五問題について言えば、こういうことについて技術的なある見通しが立ちそうであるということであれば、このことについては五年以内に完了してほしい。もちろん、五年以内なんですから、三年以内に完了していただければ一番いいわけなんです。ただ、今国鉄がいろいろと問題を抱えているというようなこともあるので、我々としては決して五年以内という期間に満足しているわけではないけれども、国鉄が抱えている諸般の情勢ということもあるので、強いてこれは五年以内ということでお願いをしたということでありますから、私どもが申し入れをした意味からいうと、七十というのは五年以内に達成はできません。しかしそれは結局は、防音工事が現在病院とか学校なんか既に行われておりますように、七十に対する防音工事のようなものを本格的にやるのかどうかという議論が一つあります。ただ、七十五ホン以上の防音工事がまだ若干残っておりますから、それの方を先にやってもらうということになるだろうというふうに考えておりますので、五年以内の問題というのは、新しい技術を導入すべき人口密集地域については五年以内に完了してほしいということを私どもとしては要請したということでございます。
  235. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 七十ホンについてのしっかりした見解を聞けないのは大変残念ですが、これはぜひとも今後ともそれはやってほしいと思うのですね。  時間がないので、最後に国鉄に振動対策。いろいろ問題ありますけれども、一つ有効な方法としては、地中堅をやったらいいんじゃないか。御存じでしょう、地中壁。これは京大の小林教授の説明でも大変効果があるというのですが、もう技術的には可能だというのですね。この点、やるのかやらないのか、できるのかできないのか、端的にお答えいただきたいと思います。
  236. 神谷牧夫

    説明員(神谷牧夫君) 京大の小林先生の御研究につきましては、私どもも十分承知しております。  私どもの判断といいますか、解釈でございますけれども、やはり先生の御提案は、現段階ではまだ原理的なものにとどまっておると解釈いたしております。ただ、考え方としては、私どもも十分検討すべき点があるという判断のもとに、現在私ども技術研究所で実験的な装置をつくりまして、現在検討を重ねておる最中でございますので、その結果を待って判断いたしたいと考えております。
  237. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 じゃ、国鉄結構です。  次に、水俣病の第二次訴訟の控訴審判決に関して質問したいと思います。  まず第一に、今まで二度までも司法判断があって、しかもこれは確定した判決であります。しかもこれは新通知ですね、これが大変判断基準を厳格にして、患者を切り捨てる原因になったという批判を浴びているものですが、そのことが第一審判決で指摘されたけれども、司法判断と行政判断は別だと言ってこれに従おうとしなかった。しかし、今回これが控訴審で判決があり、しかも確定したという点で、事は違うということがまず第一です。  それから、判決の中で、行政の患者認定処分の誤りがあることが明確に指摘をされた。要するに、これは棄却が誤りであるということであります。中身はちょっと省略します。  それから三番目は、現在の認定審査が公害病の対策になっていない。何点か指摘されていますが、その一つは、昭和四十六年の認定要件、これが旧通達、そしてそれが五十二年の判断条件に変わりましたが、これは判決の中でしっかりと指摘されていますが、「認定審査の運用上水俣病の認定要件をきびしくしたもの」、これについて、今まで環境庁の答弁は同じなんですと言っておったけれども、そうじゃないという指摘があった点、これが極めて大事ですね。それから次には、水俣病患者を認定するための要件としては、この新通知は厳格に過ぎる。だから現在の基準そのものが誤っていると、こういう指摘があったこと。そして三番目に、現在のやり方では、公害病救済のための医療的、医学的判断としては役立っていないということなんです。こういう認定の基本としては、水俣病の病像の広がりに応じて認定審査もそれに対応することが必要だと、こういう指摘があること、これは判決にしっかり書いてあるんだから間違いないですね。  問題は、これを受けとめて環境庁がどう対応するか。期待をしていました、率直に言って。また、全患者もこれはかたずをのんでその結果を待っておったんですが、しかしその中身は、医学専門家会議意見を尊重すると称して見直しを拒否をしたわけであります。  そこで、まとめて聞きたいのは、まず、私が今指摘したこの判決の中身、そのとおり理解するかどうか、これがまず第一点です。  そして、もし受けとめたとしますと、司法判断と違うことをやっているんだから、司法判断には従わないということになります。それをお聞きしたいと思います。
  238. 目黒克己

    政府委員(目黒克己君) ただいまの判決の要旨でございますが、私どもそのとおりに理解をいたしております。  それから、この司法判断に対する御質問でございますけれども、この司法判断につきまして、この判決というものについては、一応私どもは、司法判断という一つの御判断というふうに認識をいたしておるところでございます。したがいまして、水俣病のその判断条件は、また他方、医学の専門家による検討の末に医学的なコンセンサスを得たものででき上がっているものでございまして、適切なものであるというふうに私ども考えているところでございます。
  239. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 医学的判断ですが、しかし認定するかどうかはこれは行政処分ですね。純医学的なものじゃないんですよ。医学的な検討に基づいた行政処分、その行政処分をするあなた方の判断が、判決で指摘されているとおり、旧通知でいくべきなんだ、それを厳しくした新通知は間違いだ、これが患者を切り捨てる一番の原因だと、こう指摘をされたんですね。それはそのとおりだと認められた。しかし、依然として変える必要はないということは、新通知でいきますということでしょう。そうすると司法判断に従わないということじゃないですか。これはもう事実審で最終審だし、確定したんですから、事実認定についてはまさに判決に従わなければいけませんね。物事の判断、いろいろ争いがある場合に、その判断も裁判所の判断に従う。だから変えなきゃいかぬです。なぜ変えないのか。ということは司法判断には従わないということになる。そこを端的にお答えいただきたい。
  240. 目黒克己

    政府委員(目黒克己君) お言葉でございますが、水俣病の対策につきましては、これは水俣病という病気に対する対策の問題でございまして、私ども医学を基本としてこの対策を行っていくという考え方に変わりはないわけでございます。  また、この熊本の二次訴訟は、原告及び被告チッソ株式会社を当事者といたします民事上の訴訟でございます。その当事者間の問題でもございますので、環境庁といたしましては、直接判決の当否について申し上げる立場にはないわけでございます。  しかしながら、先ほど来申し上げておりますように、やはり水俣病の判断条件、これはやはり医学の専門家による、さらにまた、先生先ほどおっしゃったような、先般、この十月に専門家会議を開きましてその御判断をいただいた末、私どもその専門家の御意見に従ったわけでございまして、適切なものと考えておるわけでございます。
  241. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 判決の中ではっきりとこう指摘していますね。「昭和五二年の判断条件は、いわば前記協定書に定められた」――これは第一次判決後の被害者とチッソの協定です。その「協定書に定められた補償金を受給するに適する水俣病患者を選別するための判断条件となっているものと許せざるを得ない。従って、昭和五二年の判断条件は前叙のような広範囲の水俣病像の水俣病患者を網羅的に認定するための要件としてはいささか厳格に失しているというべきである」。裁判所が「いささか」という言葉を使っても、「厳格に失している」と言うのは大変なことなんですね。「要するに、昭和五二年の判断条件が審査会における認定審査の指針となっていて、審査会の認定審査が必ずしも公害病救済のための医学的判断に徹していないきらいがあるのも、前記協定書の存在がこれを制約しているから」云々、ということなんです。  だから、たとえ医学的といいながら、やることは行政処分なんだから、その行政処分は間違いだよということを言われておるんです。これはもうそうでしょう。どうですか。それだけ端的に答えていただきたい。
  242. 目黒克己

    政府委員(目黒克己君) 先ほど来申し上げましたように、この判断はやはり司法判断という一つの御判断であるということは私ども認識しているわけでございます。したがいまして、この判断の処分、これは先生御承知のように、審査会の審議を得て知事が処分するものでございますけれども、しかしながら、私どもの考えといたしましては、やはり医学の専門家による判断に従うべきであろう、こういうふうに考えているわけでございます。
  243. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 これはこのまま時間来るまで繰り返しになっちゃうとあれだから、残念だけれども反論はやめます。  医学専門家会議意見の中で、やはり判決の指摘は無視できないとみえまして、「判断条件」のところでこういう指摘をしていますね。「一症候のみのもので、医学的に水俣病の蓋然性が高いものを水俣病と判断することを全く否定しているわけではない」、この一症候か二症候以上かということはまさに大問題だったわけですが、一定候でも否定しているんじゃないというんだから、要するに四肢抹消の知覚障害だけのものも認定してもいいということがこの専門家会議の中では出ておるんです。ただ、その後が何だかんた言っておって結局わからない。どうもこの言葉は、私は常識的には、そう言いながら結果的に否定してしまっているんですね。これはまさに論理矛盾じゃないか。  そこで指摘したいのは、この議論の中で専門家先生方の中に、決してこの意見にまとまる状況じゃなかった、いろんな議論が出て、しかし最後にどさくさにこういうことになってしまったんで、こういう大変論理的にはおかしい文章になっていると私は見ておるんですが、それはどうでしょうか。  そのことの答弁と、時間もないからもう一つついでに質問しちゃいますと、あわせて、その中の委員である井形鹿児島大学教授が、これはその直後に朝日新聞の「論壇」に、医学的判断はこの結論を一応前提としながら、しかしボーダーライン層がある、これを救済していくことが必要だと書いている。私はまさに専門家会議の中のいろんな議論の一端がそこに出ていると思うんですよ。単に一症候と疫学条件だけで、これはまさに水俣病と認定すべきだと言うたくさんのお医者さんがいるんです。そのお医者さんの意見とこの専門家会議の人々の意見、両方を裁判所は見ながら、一定候のみでよろしいと、こういう判断をした。それは大変な影響を与えて、その中でいろんな議論があった結果、専門家だからなかなか自分の説は曲げないにしても、筋を通すことを曲げないにしても、しかしボーダーライン層、それが我々が言うある意味では一症候のみかもしれません、そこを救済すべきだという、これは大変私は貴重な意見だと思うんです。しかも、井形先生は鹿児島の審査会の会長ですからね。みずから審査をしながら大変矛盾を感じたからこそそういう指摘をしていると思うんですね。その辺のことについて、これも端的にお答えいただきたいと思うんです。
  244. 目黒克己

    政府委員(目黒克己君) まず、前段の専門家会議の件でございますが、やはりここでは、先ほど先生がおっしゃっておりましたように、「感覚障害のみが単独で出現することは現時点では医学的に実証されていない」ということと、それから「四肢の感覚障害のみでは水俣病である蓋然性が低く、その症候が水俣病であると判断することは医学的には無理がある」、こういうふうな御意見でございましたが、最後に、「なお、水俣病と診断するには至らないが、医学的に判断困難な事例があることについて留意する必要がある」、こういう御意見でございまして、特に先生が御指摘いただきましたような点ではなくて、医学的な判断ということについては皆さん方一致しておりまして、なお水俣病と診断するには至らない、しかしながら医学的に見て判断困難なものについては留意をするというふうな意見がついたわけでございます。  それから次に、井形先生のボーダーラインの点でございますが、先生御指摘のとおり井形先生は神経内科の専門家でありますと同時に、水俣病の診断治療研究に造詣の深い方でございまして、その御意見についても貴重な御見解の一つとして私ども承っております。
  245. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 時間がないので最後に指摘したい点は、やっぱり行政処分ですから、裁判所の判断を尊重し、その線でやるべきだと思うんです、医学的な専門家意見はどうあれ。ですから、今言ったボーダーラインの問題も、そういう点から私は取り組むべきだと思うんです。  これは水俣病の弁護団が、現在の第三次訴訟の原告の中から棄却及び保留の患者だけを拾い出して、どれくらいの患者が四肢抹消の知覚障害を保有しているか。要するに今回の判決で患者とすべきだと言った条件ですね。それを調べたわけです。そうしますと、三十七人が認定審査を受けて、そのうち三十三人が行政処分、四人が保留。処分の内訳は、認定四人、棄却二十九人。そのうち四肢抹消の知覚障害をどれくらいの人が持っているかというと、棄却二十九人中二十二人。要するに七五・九%。保留は四人全員。平均して約八割の人が今回の判決によれば患者と見るべきだ、こういう状況なんです。  これは弁護団の調査だけではなくて、一方熊本県の公害部長の話によりますと、全体の中から百八十人選んで、その中にたまたま原告の緒方さんという人がおったんですが、これもやっぱり一症候ですが、緒方さんのような人が何人いるか調査をさせましたというんですね。このときは数字が低かったというんですが、そのときに河野という、これは環境庁から行っている首席医療審議員が、いやもっといるはずだと言ったというんです。これが公害患者の代表公害部長の会談の中で出てきた。ですからこれは調べてみればすぐわかると思うんです。こういう事実があるのか。  そこで、これやればできるんです、極めて簡単に。私はそういう状況、せっかく裁判所が示した一症候のみでよろしいという、そういう点で全患者を調べ直してみたらどうか。このことを要望したいと思います。
  246. 目黒克己

    政府委員(目黒克己君) ただいまの御指摘の点でございますが、現在裁判所で係争中でありますので意見を差し控えたいと思っておりますが、一般的に四肢の感覚障害というのは、糖尿病とか、かっけとか、アルコール中毒とか、ヒステリーとか、がんとか、極めて多くの原因で生じる多発性の神経炎の症候の一つと言われているわけでございます。医学的に見て特異性がないし、現時点で可能なさまざまの検査を行ってもその原因を特定できない特発性のものも少なくないというふうに言われているわけでございます。また、先生の御指摘のような点につきましても、これはあくまでも専門家に任せるべきでございまして、個々の、個別のケースごとに判断をしていかなければならないということから、そのような調査は私どもの方では無理ではなかろうかと思っておる次第でございます。  それから、先ほど来熊本県の方の調査というお話がございましたけれども、その点につきましては私ども承知しておりません。
  247. 矢田部理

    委員長矢田部理君) 近藤君、時間が来ておりますので、簡単にお願いします。
  248. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 それは私は指摘をし、調べておくように言ったんだから、しかもテープがあるんですから、それはちゃんと答えてもらいたい。知らないというのはどういうことですか。
  249. 目黒克己

    政府委員(目黒克己君) その点について、熊本県の方へもう一度聞いてみます。
  250. 中村鋭一

    ○中村鋭一君 日ごろ水質保全のために、環境庁を先頭とする諸機関がせっかく努力をされていることに敬意を表する次第でございます。  昭和五十九年度の「公害状況に関する年次報告」を見ますと、カドミウム等の有害物質は五十八年度〇・〇四%、非常に低かったとされておりますが、しかし中には依然として基準値を超えるものもあるわけでございます。これからも基準値の達成に大いに努力をする必要がある、こう思いますけれども環境庁の本来の業務でありますところのこういった基準値の達成につきまして、対処方針をまずお伺いいたします。
  251. 谷野陽

    政府委員(谷野陽君) ただいま御質問にございましたように、水質汚濁法の施行以来、健康項目等につきましてかなりの改善を見ておるわけでございまして、昭和四十六年では検体数の比率で〇・五七%でございましたものが、五十八年には、ただいま御指摘のように、五十八検体、〇・○四%という数字に下がっておるところでございます。しかしながら、まだ現在なお五十八検体という数ではございますが、未達成というものが健康項目について残っておるわけでございまして、この点は私どもといたしましてはその改善に努力をしなければならないというふうに考えております。  現在残っておりますものは、大きく分けて二つの種類がございまして、カドミウム等のうちの相当部分のものにつきましては、鉱山が廃止になった後の坑道から出てくる水でございますとか、そういうような原因のものがございます。これにつきましては、その地点地点の実態に即しまして対策事業等を講じてきておりまして、その数は次第に減ってきておるわけでございますが、何分数が多うございますので、現在まで完全になくなるには至っていない。なお努力していかなければならないというふうに考えております。  また、シアンその他、工場排水に起因をいたしますと思われますものにつきましても、なお毎年ゼロという数字にならないということは大変遺憾に存じておる次第でございまして、これらにつきましては、さらに水質の監視、規制の徹底というものを図っていかなければならないというふうに考えておるわけでございます。
  252. 中村鋭一

    ○中村鋭一君 文字どおり、基準という字は基礎になる水準でございますからね、当然ながら今おっしゃったようにゼロになるために今後とも大いに努力をしてくださることをお願い申し上げたいと思います。  十月に瀬戸内海環境保全審議会の答申が出ましたね。大阪湾の富栄養化レベル、これ、ほかの地域と比べまして非常に高いですね。この図面を見ましても、大阪湾だけが極端に突出しているようです。どういう原因なんでしょうか。
  253. 谷野陽

    政府委員(谷野陽君) ただいま御指摘のございましたように、大阪湾の富栄養化、あるいはCODではかりました水質レベルというのは大変よくないということは御指摘のとおりでございます。瀬戸内海全体から見てみますと、昭和四十年代以来の各方面の御協力もございまして、全体といたしますと、例えば燐、窒素でございますと、燐で〇・〇〇二ミリグラム・パーリットル、窒素で〇・二ミリグラム・パーリットルというような水準にまで落ちてきておるわけでございますが、大阪湾では、燐で〇・〇五七ミリグラム・パーリットル、窒素では〇・七ミリグラム・パーリットルというように、非常に特異に高い数字を示しておるわけでございます。  その原因についてでございますが、やはり大阪湾に流入いたします河川の沿岸というのは、我が国の中でも最も人口も集まっておりますし、またいろいろな人間活動が活発に行われておるというところであるということが一つございます。それからもう一つは、やはり大阪湾というのが淡路島に囲まれておるというようなこともございまして、非常に閉鎖度が他の灘に比べますとかなり厳しい条件にあると、こういうようなことが原因であろうというふうに考えておるわけでございます。
  254. 中村鋭一

    ○中村鋭一君 この燐の発生負荷量の推移を見てみますと、昭和五十四年と五十九年を比べてみますと、産業系が余り減っていない。生活系は相当大幅に減っておりますね。やはり生活系は行政その他諸機関の努力が産業系に比べるとよろしきを得たということなんでしょうかね。
  255. 谷野陽

    政府委員(谷野陽君) この燐の減少の背景でございますが、今御指摘がございましたように、生活系につきましては、昭和五十四年では大阪湾に流入いたします二府二県の数字でございます。多少流域的に申しますと、厳密にはほかに出ておるものもございますが、概数ではおおむねこの数字でよろしいんではないかと思いますが、大阪湾関係の二府二県の数字で申し上げますと、昭和五十四年度では十六・九トン一日当たりが生活系でございました。それが五十九年度には十一・四トンということで、おおむね三分の二まで低下をしておるわけでございます。また、産業系につきましても、大阪湾関係の諸地域につきましては、昭和五十四年度で日量九・五トンでございましたものが、昭和五十九年度には日量六・二トンと、おおむね生活系、産業系、同じぐらいの比率で減少をいたしておるわけでございます。  生活系につきましては、瀬戸内海全域でも同じように大体三分の二ぐらいまで減少しておるわけでございますが、その最も大きな原因は、洗剤の無燐化ではなかろうかというふうに私ども考えておるわけでございます。この間に無燐洗剤が大変普及をいたしまして、もうほとんどすべてというに近い段階に現在はなってきておるわけでございますが、これによる寄与が生活系の負荷量を大幅に切り下げるということに寄与をいたしておる。また、下水道の普及も貢献をしておるというふうに考えております。  なお、産業系の問題につきましても、燐の指導を行っておりまして、その指導に従いまして各工場その他がそれなりに努力をしていただいておるというふうに評価をいたしております。
  256. 中村鋭一

    ○中村鋭一君 恐れ入ります。少し風邪を引きまして発熱をしておりますので、質問がもうろうたるものになってはいけませんので、端的にまとめて質問をいたしますから、きめの細かい御答弁をお願いいたしまして私の質問を終わりたいと思います。  この大阪湾における全燐濃度、全窒素濃度とも今御指摘のように比較的に高い数値があるわけでございます。まず対処方針、それから関係方面との調整をどのように図っていくおつもりなのか。これは燐と窒素の両方についてその対処方針を含めて関係諸機関との調整等々もあわせ御答弁をお願い申し上げ、今後この答申を受けでどのように具体的な対策を講じていかれるおつもりか。単にそれは努力いたしますとか、今後とも精力的に調整を図っていくというようなお答えではなくて、現実、具体的なきめの細かい御答弁をお願い申し上げまして私の質問を終わります。
  257. 谷野陽

    政府委員(谷野陽君) 大阪湾における富栄養化の問題につきましては、先ほど御質問の中でもございましたように、先般審議会の御答申を得まして、私どもといたしましては今後この御答申に即して対策を講じていきたいというふうに考えておるわけでございます。  まず第一に燐の問題でございますが、その中でも最も重要でございますのは燐に関する削減の指導でございます。これにつきましては、現在までの燐の関係の資料を見ますと、瀬戸内海全体といたしましては改善の傾向でございますが、大阪湾につきましては大変厳しい状態になっておるということは先般来お話しに出たとおりでございまして、したがいまして、大阪湾に流入をいたします上流の県、具体的には京都、奈良でございますが、それらの県につきましても、今次の対策といたしましては、これを従来よりももう一段強い減少の方向に持っていくと、こういうようなことで、上流県を含めた燐の削減指導の強化ということをやっていかなければならないというふうに考えておるわけでございます。これにつきましては、私どもの方で考え方を各県に提示をいたしまして各県で具体的な指導の方針を定めていただくと、こういうことになるわけでございまして、その手順を早急に踏んでまいりたいというふうに考えております。  それから、窒素の問題でございますが、これにつきましては答申の過程でいろいろな御議論をいただいたわけでございます。燐に加えまして窒素の削減を進めることが例えば赤潮の防止のためにどういう効果があるのかというような問題を含めまして御議論をいただいたわけでございます。これにつきましては、赤潮の挙動につきましてかなりこの十年の間に研究は進んだわけでございますが、赤潮の種類が大変たくさんございまして、そういうものを総合いたしまして判断をするときに、窒素の削減というものがどういうふうに効果を上げていくかということについてなお検討の必要がある。さらにまた、窒素の排出の実態についてもより詳細な調査をとる必要があるというようなのが御答申の基本になっておる考え方でございます。したがいまして、私どもは早急にこのような問題に取り組みたいというふうに考えておりまして、来年度の予算の中でもそういうことも考えていきたいというふうに考えておりますが、場合によりましてはその前にでもそういうものについての御検討をいただくようなグループをつくっていただきまして、そこで御相談、御研究をいただきたいというふうに考えております。  また、その際には規制という問題に加えまして……
  258. 中村鋭一

    ○中村鋭一君 そのグループというのはどういうグループですか。
  259. 谷野陽

    政府委員(谷野陽君) 対策の事業を進めます際には、例えば生活系の排水でございますと、今までは燐につきまして無燐洗剤というようなことが非常に強い手段としてあったわけでございますが、今後の問題につきましてはやはり下水道の問題になるだろう。また、下水道につきましても、最近の技術の進歩を踏まえましてより高次の処理を行っていく、こういう必要があるわけでございます。そういうことになってまいりますと、これは地域の、地方公共団体の財政を含みます体制というものを強化していただかなければならない、こういうことでございますので、学者の先生ばかりではなく実務にお詳しい地域の方々にも、地方公共団体の方々にも御参加をいただくような実務的な集まりという性格を持ったものを構成していきたい、その中で窒素の問題をできるだけ早く結論を出すように努力をしてまいりたい、こういうように考えておるわけでございます。
  260. 中村鋭一

    ○中村鋭一君 ありがとうございました。終わります。
  261. 矢田部理

    委員長矢田部理君) 本調査に対する本日の質疑はこの程度にとどめます。  本日はこれにて散会いたします。    午後五時二十七分散会      ―――――・―――――