運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1985-12-10 第103回国会 参議院 外務委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十年十二月十日(火曜日)    午前十時一分開会     ―――――――――――――    委員異動  十一月十八日     辞任         補欠選任      関  嘉彦君     小西 博行君  十一月二十六日     辞任         補欠選任      小西 博行君     関  嘉彦君  十一月二十七日     辞任         補欠選任      関  嘉彦君     小西 博行君  十一月二十八日     辞任         補欠選任      小西 博行君     関  嘉彦君  十二月五日     辞任         補欠選任      抜山 映子君     三治 重信君  十二月九日     辞任         補欠選任      関  嘉彦君     栗林 卓司君     ―――――――――――――   出席者は左のとおり。     委員長         最上  進君     理 事                 石井 一二君                 宮澤  弘君                 松前 達郎君     委 員                 大鷹 淑子君                 後藤 正夫君                 中山 太郎君                 夏目 忠雄君                 鳩山威一郎君                 秋山 長造君                 久保田真苗君                 黒柳  明君                 和田 教美君                 立木  洋君                 秦   豊君    国務大臣        外 務 大 臣  安倍晋太郎君    政府委員        外務大臣官房長  北村  汎君        外務大臣官房外        務報道官     波多野敬雄君        外務省北米局長  藤井 宏昭君        外務省欧亜局長  西山 健彦君        外務省中近東ア        フリカ局長    三宅 和助君        外務省経済局次        長        池田 廸彦君        外務省経済協力        局長       藤田 公郎君        外務省条約局長  小和田 恒君        外務省国際連合        局長       中平  立君    事務局側        常任委員会専門        員        山本 義彰君    説明員        経済企画庁調整        局経済協力第一        課長       小川 修司君        法務大臣官房司        法法制調査部司        法法制課長    中神 正義君        外務大臣官房審        議官       松田 慶文君        外務大臣官房審        議官       福田  博君        外務大臣官房外        務参事官     荒船 清彦君        大蔵省主計局主        計官       秋山 昌廣君        大蔵省理財局国        庫課長      榊原 英資君        通商産業省通商        政策局西欧アフ        リカ中東課長   藤原武平太君        運輸省航空局監        理部航空事業課        長        黒野 匡彦君        労働省婦人局婦        人政策課長    松原 亘子君        会計検査院事務        総局第五局上席        調査官      深田 烝治君     ―――――――――――――   本日の会議に付した案件 ○国際情勢等に関する調査  (日ソ関係に関する件)  (日米経済摩擦に関する件)  (経済協力青年海外協力隊に関する件)  (ユネスコ改革に関する件)  (アパルトヘイトに関する件)  (婦人の雇用問題に関する件)  (SDIに関する件)  (国際災害救助活動に関する件)  (アフガニスタン問題に関する件)  (米国核戦略上瀬谷通信施設に関する件)  (極東配備のSS20に関する件)  (ソ連北朝鮮関係に関する件)  (日朝関係に関する件等)     ―――――――――――――
  2. 最上進

    委員長最上進君) ただいまから外務委員会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告をいたします。  去る五日、抜山映子君が委員辞任され、その補欠として三治重信君が選任されました。  また、昨日、関嘉彦君が委員辞任され、その補欠として栗林卓司君が選任されました。     ―――――――――――――  国際情勢等に関する調査を議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  3. 石井一二

    石井一二君 私は、我が国外交に関連して、外務大臣初め関係者に若干の質問をしたいと思います。  先般、新聞を読んでおりますと、安倍外務大臣は、昭和五十七年十一月二十七日に御就任以来、かつて藤山外務大臣の持っておられた連続在任期間外務大臣として記録を更新されたという記事が出ておりました。この間の御苦労に対しまして敬意を表するものでございます。ちなみに、その間、訪問国としては四十四カ国、延べ七十三カ国、また移動距離にしておよそ六千六百八十四キロメートル、地球十六周半以上ということで、いろいろ心身とも御苦労があったようにも拝察をいたすわけでございます。いわば、文字どおり安倍外交が展開されておる、何か問題があった場合に、それは前任者外務大臣のことでございますと言うわけにいかない、反面、責任もあるわけでございます。  かかる前提に立って、外相が常に口にされております創造外交外交一元化ということについて、まず現在の御心境を簡単に披瀝していただきたいと思います。
  4. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) おかげさまで、三年以上外務大臣として仕事をさしていただいておるわけでありますが、その間、懸命に我が国の国際的な責任を果たす、世界の平和と繁栄に積極的に貢献するという気持ちで努力を続けております。  私が創造的外交と申し上げておるのは、今、日本世界における発言力というものは非常に、強くなったわけですが、その反面、また非常に責任も重くなっておる、この責任を果たして、世界における重い存在としての日本役割を果たし続けていかなければならないということでございます。それは、やはり今までの日本外交ではなかなかとらえられなかった諸外国との関係、そういうものをさらに幅広く発展をさせていく、そして、日本でなければできないような責任があると思います。そうした責任、そうして平和への貢献、そういうものを今こそ果たしていかなきゃならぬ。これはただ、国際経済の面で日本経済力が強いからといって果たすというだけでなくて、やはり国際政治の面においても日本に対する期待も高まっております。それにもこたえていくということが必要であろう、こういうふうに思うわけで、そうした、いわゆる幅広い外交、同時にまた、日本でなければできない外交、そういうものを積極的に果たしていきたいという念願を込めて言っているわけでございます。  同時に、外交一元化については、これはもう今さら申し上げるまでもないわけでございますが、やはりその国の国益を守って、世界に対して役割を果たしていこうとするならば、その国の外交一体でなければならぬわけでありまして、外国からの信頼、あるいは外国との交渉を行うに当たっても、やはり日本外交というものが一元化されて、そういう中で初めて日本の力というものを発揮できるわけでございます。これがばらばらという形では日本自体に対する信頼感というものにもおのずから問題が出てくるわけですから、そういう意味でもやはり、これはもう当然のことでありますが、あらゆる面において外交一元化というものが外交の基本である、そういうふうに考えてこれを主張してきておるわけであります。
  5. 石井一二

    石井一二君 外務省行政上の要望を聞いておりますと、常に出てくる言葉が約三千八百という現在の外務省員の数は欧米先進国に比べて著しく低いと、こういう増員要求でございますが、行革推進の昨今、現定員最大効果を上げていただくということが、どうしてもやっていただかなければならない大前提であるというように感ずるわけでございます。この事実に対する意気込みと申しましょうか、増枠の見込みをも含めて御所見を賜りたいと思います。
  6. 北村汎

    政府委員北村汎君) 定員拡充というのは、もう私ども外務省実施体制の強化にとりまして一番大事なことでございますので努力はしております。おかげさまで、先生方の御支持やあるいは関係方面の御理解を得まして、現在三千八百八十三人までふえてきております。今年度は八十八名の純増を得ましたが、これは六千四百八十二人の国家公務員が今年度削減されたという厳しい状況のもとで考えますと、非常に外務省には理解があることであったと思いますが、しかし、何分ともまだアメリカの四分の一、あるいはイギリス、ドイツの半分ということでございますので、今後とも外務省定員拡充には全省を挙げて努力をしていきたいと考えております。
  7. 石井一二

    石井一二君 では、総論はこれぐらいにいたしまして、具体的な問題に移っていきたいと思いますが、まず日ソ関係についてお伺いしたいと思います。  既に報道されているごとく、来年一月にはシェワルナゼ外相来日が伝えられております。特に、ソ連外相来日は十年ぶりでもございますし、外相間の定期協議ということでは八年ぶりということにもなり、米ソ首脳会談の後を受けていろいろ注目されている向きもあるわけでございますが、当面の対ソ外交について政府見解をただしておきたいと思います。
  8. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 明年一月中旬に、八年ぶりにいわゆる日ソ外相定期協議が開催される運びとなったわけでございますが、これは日ソ間の対話の一層の進展のために好ましいものであると歓迎しております。  定期協議では、シェワルナゼ外相との間で両国間の基本問題であります領土問題はもとより、二国間及び国際問題につきまして十分に時間をかけて率直な話し合いを行いたいと考えております。また、我が方としましては平和条約締結交渉を早期に再開すべきと考えておりまして、今回の日ソ外相間定期協議の場においても、平和条約交渉再開ソ連に対して強く求めていく考えでございます。  我が国対ソ関係を中長期的に見ました場合に、日ソ間の最大の懸案である北方領土問題が解決して平和条約を締結することが不可欠であります。しかしながら、現在のソ連の態度からすれば一挙にそこまで進めることができるかどうか、なかなか状況は厳しいと思っております。現在の日ソ間においては、まずもって来年一月のシェワルナゼ外相の訪日を成功裏に実施をして、日ソ外相間定期協議を文字どおり定期的なものとして軌道に乗せることが焦眉の課題であると、こういうふうに考えます。そうして、そのような過程において領土問題を含む平和条約交渉再開を実現すべくソ連側と鋭意折衝をしていきたい、こういうふうに考えております。
  9. 石井一二

    石井一二君 次に、日ソ関係が出ましたので、日米関係について二、三点お伺いをいたしたいと思います。  御高承のごとく、今回レーガン大統領輸出解禁を決定したアラスカクックインレット原油の問題がございます。  昨今、新聞を見ておりますと、連日日米貿易アンバランスという問題が大きく報道されておるわけでございますが、この原油は、全量をたとえ日本輸入したとしても、金額は年間五、六千万ドル程度にしかならない。そういった前提のもとに、今年度五百億ドルにも達しようという巨額な日本の対米貿易黒字に比べたら、まさにスズメの源といった感じがするわけでございます。そういった事実を前にして、政府はこの問題の意義をどのように評価しておられるのかお聞きしたいと思います。
  10. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 今回米側輸出解禁の意図を発表しましたのは、アラスカ原油の中でのいわゆるクックインレット原油についてであります。クックインレット原油の現在の生産量日量約四万五千バレルでありますが、その八分の一に当たる約五千六百バレルはアラスカ政府持ち分、こういうことになっておるわけです。このクックインレット原油のうち、どの部分をいかなる方法で輸出解禁するかは現在米側で検討中であると承知しておりますが、例えば、試算として同原油中のアラスカ持ち分が解禁され、仮にそのすべてを日本輸入した場合には、年間約五千六百万ドルということになる。日米貿易関係からいえば極めて微少なものであります。そうしたことで、本措置が日米貿インバランス改善の上で持つ具体的な数字上の影響は限られたものにとどまるわけですが、一方、この動きは現下の厳しい日米経済関係の現状の中で持つ象徴的な意義というものが私はある、こういうふうに存じております。
  11. 石井一二

    石井一二君 このような情勢のもとで、先般、米下院共和議員団が、同じく原油ではございますが、重質油であるノーススローブ原油条件つき輸出解禁を求めた法案議会に提出しておるといった情報もなされておるわけでございます。これは我が国では非常に需要の少ない重質油であると言われておりますが、もし仮に解禁され、その三分の一が日本輸出されるといったような条件でも出されてきて、もしそうなった場合、輸出額年間約五十億ドル。対米不均衡是正には大きな効果があるわけでございますが、こういった問題も含めて、今回のクックインレット原油を皮切りにして、例えば油を運ぶ船を米国船を使えとかいろんな条件が出てくるんではないかという懸念もあるわけでございますが、その辺をどのような感触で受けとめておられるかお伺いしたいと思います。
  12. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) アメリカが、クックインレット輸出解禁だけじゃなくて、広範な形での原油輸出を解禁する、これは議会がこれを許すかどうか、法案の成否にかかっておるわけですが、そういうことになることは、日本としても合いわゆるインバランスの問題が日米間の大きな問題として浮上しておるわけですし、この解決にも役に立つわけですから、基本的には我々は歓迎したい。私もかねがねずっとアメリカ議会あるいはアメリカ政府に対しましては米国原油輸出解禁というものを求め続けてまいりました。そういうことですから、歓迎をしたいと思います。  ただ、輸出入の問題については、これは政府でなくて民間そのもの仕事でございますから、解禁した場合においても、やはり条件が合わなければならないわけでありますし、そうした中でいろいろと日米間の民間での協議が円満に行われて、そして輸入が増大するということになれば、それは大変結構じゃないか、私はそういうふうに考えております。
  13. 石井一二

    石井一二君 次に、日米経済摩擦絡みで、アメリカ弁護士活動自由化の問題についてお伺いをしたいと思います。  御高承のごとく、昨日、日弁連臨時総会が開催され、この問題について、基本的には外国人弁護士活動を認めるということを可決されたわけでございます。改めて申すまでもなく、日米政府間で交わされたアクションプログラムの中のサービス輸入促進等の一項目として、既に外国弁護士への門戸開放ということはうたっておるわけでございまして、もし仮に日弁連がそれを拒否するといったような決議でもしておったならば、政府としては非常に顔がつぶれる事態になったと思うわけでございます、申し上げたようにアクションプログラムでさきに約束をしておるわけでございますから。  私は、この外国弁護士活動自由化の一連の交渉を見ておりまして、どうも交渉日弁連主導型に走り過ぎていないか、外務省存在価値が薄れておるんではないか、内閣制をしく議会制民主主義関係一体どのように解釈しておられるんだろうか、そのような懸念をも持っておるわけでございます。特に、この日弁連自治権については、米国から見れば理解に苦しむものであるのではなかろうかといったような気もいたします。  ちなみに、こういう問題について政府当局がどのような考え方をしておるかという過去の記録を見てみますと、昭和五十二年五月に、提出者鈴木強君という名前で、衆議院議長保利茂氏との間に、弁護士会及び弁護士に対する登録免許税不当課税是正に関する質問主意書、それに対する回答、また、同回答に対する再質問並びに再回答というやりとりがございます。その中の関連の部分をちょっと読んでみますと、「弁護士法が、立法、行政司法の三権のほかに、これと並立する職能公共団体自治権又は弁護士自治権という権限を創設したものとは解されない。」という文言がございます。また同じく、「弁護士法が、日弁連等及び弁護士に対し、団体自治権及び弁護士自治権という国家統治権を付与したものと解すべきではない」、このように当時の保利茂衆議院議長が文書でもって回答をされておるわけでございます。さらに同じ書類の中に次のような文言もございます。「弁護士法は、弁護士自治権という第四権を創設したものではない。また、日弁連等は、政府と対等の地位にあるものではなく、政府と並立する行政機関ないしは行政庁又は弁護士自治を行う国家機関でもない。」このようにはっきりと明言をされておるわけでございます。  こういった前提に立って、では一体日弁連自治権現行法根拠一体どこかということをまさぐってみますと、弁護士法の戦前あった、司法大臣監督権下に置くという言葉が削除されたということ、また、登録登録の取り消し、懲戒を日弁連に独占させるということという文言があるということだけではないかと思うわけでございますが、日米交渉アクションプログラムの中に既に挿入済みであることを踏まえて、この問題について外務省はどのように受けとめておられるのか、御見解を賜りたい。
  14. 池田廸彦

    政府委員池田廸彦君) お答え申し上げます。  これまでアメリカとの間に三回にわたって協議をやってまいりましたが、この協議過程を通じまして、次の諸点につきアメリカ側理解を求めるよう努めております。  第一の点は、そもそも弁護士制度というものはいずれの国におきましてもそれぞれの歴史的背景に基づいた独自の制度となっております。したがって、この日米弁護士問題を解決するに当たっても、まず第一に各国とも相互に相手国制度を尊重する、こういう立場で臨むべきであるというのが第一点でございます。  第二点は、右を踏まえまして、その土台の上に各国ともそれぞれ自国弁護士制度との調和を図りつつ外国弁護士自国における活動を可能な範囲で認めていく、こういう姿勢で取り組むべきである。  第三点は、日弁連弁護士法根拠を有する法的団体であります。この点、米国の例えばアメリカン・バー・アソシエーションとは性格を異にしておる、弁護士監督という観点からはむしろ米国における裁判所と同様の地位にある、また我が国法制に照らしまして、外国弁護士監督日弁連にゆだねましても外国弁護士権利保全に欠けることはない、この点をぜひ理解してほしい。これらの三点からさらに敷衍いたしますといろいろな問題点が出てまいりますが、これまでこういう三点を中心にアメリカとの間の協議を取り進めております。
  15. 石井一二

    石井一二君 私は主に法的根拠についてどう思うかということを聞いたと思いますが、ややすれ違いの感もございますが、時間的制約もありますのでもう一問この問題について質問しておきたいと思います。  昨夜の総会に基づく新聞記事を見ておりますと、受け入れを前提として弁護士法改正案要綱作成日弁連は彩られる、これが出てきた場合に最終的に国会審議になろうかと思いますが、果たして国会はそれを修正する権利があるんですかないんですか、その辺どうお考えですか。
  16. 中神正義

    説明員中神正義君) まだ現段階におきましてはどのような形で法案が提出されるかということも決まっておりませんです。これは政府提案でまいりますか、議員発議でお願いするかも確定いたしておりません。いずれの形にしろ法案が提出された段階におきましては、立法府の権限におきまして十分に御審議を願いたいというふうに考えております。
  17. 石井一二

    石井一二君 この問題の法的根拠についてもう少し掘り下げて論議をしたいと思いますが、時間がなくなるといけませんので一番最後に回します。もう一遍この問題に返ってくる可能性を含めて次に移りたいと思います。  次に、今はやりのODAでございますが、過去一九七八年から三年間で三年倍増計画を発表されて見事達成された。続いて中期倍増計画を八一年から八五年ということでおやりになったけれども、これはどうも倍増ができなかったように私は理解をいたしておりますが、八五年も終わりに近くなった昨今、最終的にどの程度達成率になると予測しておられるのか、まずその辺の数値をお示し願いたいと思います。
  18. 藤田公郎

    政府委員藤田公郎君) ただいま委員御指摘の五年倍増と俗称されております現行中期目標でございますが、実績値、すなわち一九七六年から八〇年までの暦年累計額百六・八億ドルを八一年から八五暦年、本年でございますが、までに倍増以上、すなわち二百十三・六億ドル以上にいだそうという目標値でございますが、これまでのところ、四年間合計額が出ておりまして、百四十二・七億ドルを達成いたしております。本年、八五年年末まで執行に努力をいたしまして、これを本年、暦年の平均の円・ドルレートドルに換算されまして、これはOECDにおきまして換算されまして明年の中葉ぐらいに結果が出てくることになるかと思われます。現在のところ確たる数値はわかりませんが、仮に八五年、本年が四十億ドル程度の支出が行われると仮定をいたしまして、現行の、現行と申しましても今動いておりますけれども、円ドルレートで大体概数をはかってみますと九〇%弱程度達成率かと思われます。  他方、このための政府の方針としまして、一般会計倍増というのもうたっておりますが、この点は御承知のとおり、本六十年度予算をもちまして予算面におきましては九八%達成したという状況になっております。
  19. 石井一二

    石井一二君 この件についてはラストスパート、なお一層の御努力を要望しておきたいと思います。  次いで、今問題のODA第三次中期目標でございますが、これが一九九二年までの実績総額を四百億ドル以上とするということとか、また、一九九二年のODA実績を一九八五年の倍とするというような、非常に前向きな姿勢でございますが、これが絵にかいたもちであっては仕方がないと思うわけでございまして、その辺について国際的な信用も含めてどのような自信と秘策を秘めておられるのか、一言お言葉を賜りたいと思います。
  20. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) ODAにつきましては、日本はこれを積極的に進めていくということがまさに日本の国際的な責任であろう、こういうふうに思っております。  これまで五年倍増、三年倍増を続けてまいりました。大方の期待にこたえたんですが、今後も一つの目標を持ってODAの増強を図っていくということが必要だと考えまして、今回七カ年倍増計画をつくりまして、既に国際的にもこれを説明し、発表もいたしております。これは御承知のように来年度から七年かけて倍増して四百億ドル以上にしようということでありますし、今ODAそのもの実績といいますか、総額の方はアメリカに次いで二番目ということになっておりますが、しかしGNP対比でいきますとまだ〇・三三とか〇・三五というようなところで、目標からいきますと非常に低いということもあってこれもやっぱり高めていかなければならない。そういう目標を掲げてこれからやろうということでございまして、ぜひとも世界も注目しておりますし、いわば国際的な約束事にもなっておるということでもありますから、七カ年のこの倍増計画は是が非でもこれは実行しなければならぬ、実現しなければならぬという固い決意のもとに進んでまいる考えであります。
  21. 石井一二

    石井一二君 ところで、このODA新中期計画を発表されたのは九月でございます。その背景にある概算要求時は一ドル二百三十七円の基準で要求がなされた、その後に約二割近い円高の現象が起こっておる、これはいろいろ計画上外務と大蔵の間において思惑が違うと思うわけでございます。例えばGNP比ということでいったら非常に率が下がってくる可能性もある。大蔵に言わせると、ODA予算の八割強は円高の恩恵を受けない円建て予算だといったようなことを言っておりますけれども、この二割の円高ということに関してどのような問題が起こりつつあるのか御所見を賜りたいと思います。
  22. 藤田公郎

    政府委員藤田公郎君) ただいま委員御指摘のとおり七カ年倍増計画総額で四百億ドル以上、それから実績値で、本年のドル換算の実績を一九九二年に倍増以上にするというドル表示の表明に加えまして、ODAのGNP比の改善ということもあわせて御決定を願っております。  ODAのGNP比の改善ということになりますと、これは円におきましてもGNPの成長以上の伸びを示さなければいけないということがうたわれている次第でございます。したがいまして、そこに円建てでも拡充をしていかなければいけない決定の文脈があるということが第一に申せるかと思います。  それから第二点の円高の恩恵をどの程度受けるかということでございますが、一般会計で見ますと本年五千八百十億円、明年の概算要求を含めまして、大ざっぱなことを申しまして約六千億と置いてみますと、そのうちの大体六分の一、一千億程度が外貨建てと申しますか、ドルで国際関係の機関にドル建てで拠出ないし分担金として提供されるものの円換算という形になっておりますので、二百三十七円で換算されていたものが仮に二〇%円高になりますと、その分だけは円による負担というものは軽くなるということは申せるかと思います。その部分が今申し上げましたように約六分の一ぐらいを全ODA予算で占めているという状況にございます。
  23. 石井一二

    石井一二君 例えば技術研究生の受け入れとか、円建て事業の縮小を迫られる可能性はどうですか。
  24. 藤田公郎

    政府委員藤田公郎君) まさにその点が私どもの申し上げておる点でございまして、仮に一千名の専門家を海外に派遣するとしました場合に、そのドルでの表示額というのが自動的に二〇%ふえるということで、じゃ一千名はやめて八百名にするというわけにはやはりいかないので、事業量をきちんと確保していくという見地から申しますと、円で表示ないし支出をされます事業量を十分に確保するためには円高の恩恵は、先ほど申し上げました六分の一のドル建て分を除きます六分の五、大部分につきましては仮に円高という顕著な現象がございましても従来どおりの伸びというものを確保していく必要があるということで、現在財政当局とお話をしている状況にございます。
  25. 石井一二

    石井一二君 事態の推移を見きわめつつ慎重に対応してもらいたいと思います。  次に、この円借款に対する債務の元利の返済の問題ですが、先ほど来貸す貸す貸すといったような話ばかり出ておるわけでございますが、やはり物事はちゃんとしりぬぐいが必要である。過去において執行された、供与された円借款に対するアジア主要諸国の債務の元利返済状況をちょっと私は心配しておるわけでございますが、ここにサンケイ新聞の「正論」十二月二日付「アジア経済の減速に備えよ」京都大学教授市村真一さんの記事を持っておるわけでございますが、その中でもそういった返済能力が果たしてキープできるのかといったような懸念が表明され、ちなみに中長期の累積債務と国民総生産を比較した場合に、韓国においては累積債務が四百五十三億ドルに対して国民総生産は八百三十二億、フィリピンに至っては債務累積が二百五十九億ドルに対して国民総生産は三百二十五億、なかなか返しにくいんではないかというようなことを暗に表示しておられるわけでございますが、そう詳しくは結構でございますが、主要諸国の元利返済状況について簡単に触れていただきたいと思います。
  26. 藤田公郎

    政府委員藤田公郎君) 各国の詳細な返済の状況ということにつきましては、日本輸出入銀行ないしは海外経済協力基金が金融機関としての業務を行っておりますので、金融機関としての秘密保持という点がございますので詳細私の口から申し上げるわけにはまいりませんが、概要を御報告させていただきますと、アジアの主要な我が国との経済協力関係を持っております国について見ますと、ただいま委員御指摘のフィリピンにつきましては御承知のとおり、円借款を含みます公的債務等の救済、繰り延べ措置についてフィリピン側との協議を行っている状況にございます。したがいまして、フィリピンについては債務繰り延べが今後行われる方向にございます。フィリピンを除きますと、他の主要国からの円借款の債務の元利返済状況はおおむね順調という報告を輸銀及び経済協力基金から受けております。御承知のとおり、一番古い円借款の供与国はインド及びパキスタンでございますけれども、インド及びパキスタン等からの我が国に対する返済はきちんと順調に行われている状況にございます。
  27. 石井一二

    石井一二君 ただいま局長から海外経済協力基金の名前もたまたま出たわけでございます。この基金について若干お伺いをしたいと思います。  私が今手元に持っております昭和五十八年九月五日の、またサンケイ新聞ですが、その「主張」に「経済協力基金の健全化を」という呼びかけがございます。その中身を吟味いたしておりますと、結論として言えることは、政府出資あるいはまた資金運用部の借入金、政府保証債の発行等により集めた資金コストと海外投融資の金利との間に逆ざやがある、――同記事では約二%となっておりますが、実態はもう少し小さいようでございますが、その結果、年々基金の赤字が膨れる一方である、したがって、基金としては無償資金の政府出資をふやすか、あるいは融資金利を上げるかといったような抜本的な対策が打たれるべきであろうというように提案をしておるわけでございます。これからますます円借款の金額がふえてくる、ODAの額もふえていくということになると、やはり抜本的な手術が必要なものについてはそのような手を打っていくことも考えねばならない、もちろん大蔵省との関係もございます。この点についてどのように認識され、またどのような御見解をお持ちか承りたいと思います。
  28. 小川修司

    説明員(小川修司君) ただいま先生御指摘のとおり、海外経済協力基金の赤字につきまして、これは昭和五十六年度から赤字が生じておりまして、原因はまさに御指摘のとおり、非常に厳しい財政難の中で経済協力の事業規模を急速に拡大していかなければならないということで、そのために原資構成の中で借入金の比率を高めていかざるを得ないということによりまして資金の調達コストが上がってきた、他方、援助条件をソフト化するという要請が国際的にもございまして、貸付金の方の利回りは低下したというようなことでこの赤字が生じてきておるわけでございます。  このようなことで年々赤字が出てきておるわけでございますけれども、このような赤字に対する対策といたしまして、基本的にはこの経済協力の円借款の事業規模の拡大に伴いましてできるだけ一般会計資金を確保するということが基本でございまして、その一つといたしましてこの赤字が年々累積するということのないように交付金ということで、二年おくれでございますけれども、二年前の赤字額を予算の交付金という形で補てんするということで、赤字が雪だるま式に累積していくということは防ぐようにいたしております。そのほか、もちろん基本的にはむしろ一般会計の中の出資金というのを増大させるということが重要でございまして、来年度、昭和六十一年度につきましても出資金につきましては千八百六十億、前年度比一〇・一%という額で要求をさせていただいておりますけれども、厳しい財政難の中でできるだけ財政当局の理解を得たいというふうに考えております。  また他方、赤字対策、収支対策といたしまして貸付条件というような面につきましてもいろいろな工夫をいたしておりまして、実は昭和五十八年度にお約束する分から、それまでの金利に比べまして平均にしまして〇・六%の引き上げを行いまして、各途上国の理解を得まして引き上げというようなことをやっておりますが、そういうことも含めましていろいろ対策は講じておる次第でございますが、基本的にはやはり何といいましても一般会計の資金を確保することが重要でございまして、目下財政当局にいろいろ御説明をしているという段階でございます。
  29. 石井一二

    石井一二君 ありがとうございました。ただいま我々はODA絡みの論議をやっておるわけでございまして、先ほど藤田局長もフィリピンについてその返済状況等のお話があったわけでございますが、先般イメルダ夫人が御来日になりまして、私もいろいろお目にかたって話もしたわけでございます。第十三次の円借款が総額約四百九十五億円で交渉中である、これはプロジェクト借款が約三百三十億円、商品借款百六十四億円と聞いておりますけれども、いつこの協定が締結されるのか、またその見込みについて簡単に御説明願いたいと思います。
  30. 藤田公郎

    政府委員藤田公郎君) ただいま御指摘がございましたように、昨年四月第十二次の円借款を供与いたしまして以降、フィリピン側との間に次の第十三次の円借款の問題について要請を受け、調査団の派遣等々を行って準備を進めてまいりましたところ、本年十月八日に至りましてはぼ我が方としての調査を完了いたしまして、十一件のプロジェクトに対しまして合計三百三十・二七億円、それから商品借款といたしまして百六十四・七三億円、合計四百九十五億円の円借款を第十三次の円借款としてフィリピンに供与する旨の意図表明を十月の八日に行いました。現在、交換公文の作成につきまして技術的な詰めを先方政府との間で行っている状況にございます。通常意図表明を行いましてから、ASEAN、中国、韓国等、比較的毎年円借款を供与しかつ我が国の円借款供与制度に習熟しております国との間では、特別に大きな問題がございません場合には一カ月ないし三カ月の間に合意を見ることができますので、私どもといたしましてもできるだけ事務的な詰めを急いで合意に達したいということで、目下交渉中でございます。
  31. 石井一二

    石井一二君 フィリピンという国は昨今いろいろ世界的にも注目を浴びておる国でございます。アキノ事件の裁判の判決もございましたし、また大統領選挙の繰り上げということもいろいろ世界的な世論の対象になっておるということでございますが、私は個人としてはやや内政干渉がましいなと思ったわけでございますが、米国議会は去る十一月十四日にフィリピンの大統領選挙に関し選挙管理委員会の独立性、市民による選挙監視活動の保障、軍の中立の確保等が重要である旨の決議を行っております。外務大臣はこの決議についてどのように受けとめておられるのか、昨今の日比関係をも考慮して御所見があれば承りたいと思います。
  32. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 我が国としましては、フィリピンにおける大統領選挙の具体的な手続につきまして立ち入ったコメントをすることは差し控えるべきであると思いますが、御質問のフィリピンの選挙に限らずすべての国における選挙についての一般論として述べさせていただきますと、御質問の米議会決議に言う選挙方法等の合憲性、選挙管理委員会の独立性、市民による選挙監視活動の保障、すべての政党関係者のマスメディアへのアクセスの保障、軍を含む政府当局の申立性の確保は選挙の公正さを確保する上で望ましいものである、こういうふうに考えております。
  33. 石井一二

    石井一二君 フィリピンについていろいろ世界の注目の的であるということを申し上げたわけですが、私は今手元に昨年の十一月、東京新聞のコピーを持っておるわけですが、「債務三十億ドル海外流出 フィリピン 不動産などに投機」というのがその見出してございます。ちなみにこの記事は、フィリピンの経済紙であるビジネス・デーが特に世銀の同年九月に作成されたフィリピンの経済動向に関する内部報告書の内容を引用した記事で、比較的信頼度が高いというように受け取られておるわけでございますが、先ほど来申しておられる我が国の対比円借款が公正に本来の目的どおりに使われておるという確信がおありかどうか聞いておきたいわけであります。  特に、フィリピンの対外二国間借款のこれまでの合計は一億三千百万ドルでございますが、そのうちの六四・八%が日本からである。二位の西ドイツの一七・八%、三位米国の一四・五%を大きく上回っておる。こういった中でこういった記事あるいはこの種の内容についてどの程度の御確信を持っておられるのか。御所見があれば承りたいと思います。
  34. 藤田公郎

    政府委員藤田公郎君) 我が国の円借款に関しましては、交換公文を締結いたします際に適正使用条項という条項を付しまして、供与される円借款が適正に所期のプロジェクトに使用されるべきであるということを文言として確保するようにいたしております。  これに加えまして、交換公文の締結後、円借款の実施機関でございます海外経済協力基金と相手国との間で貸付契約が締結されますが、この貸付契約におきましても財貨、役務の調達について適正な使用が確保されるような手続が規定をされております。委員が特に御指摘の商品借款につきましては、これが国際収支の非常に困難な国に供与されます輸入金融としての性格を有するものでございますが、この商品借款につきましても、例えば商品借款を用いまして購入、輸入し得る商品の品目につきましては事前に両国政府間で合意をいたしまして、品目が経済開発、民生の安定等に資するものということで我が方としてこれを認めることにいたしております。また、商品借款が具体的に供与されます際には、対象となります輸入契約ごとに合意された品目に適合しているかどうかということを海外経済協力基金が十分確認をいたすことにしております。  商品借款の結果、相手国側には現地通貨が見返り資金として積み立てられることになりますが、この見返り資金の使用につきましては、我が国とフィリピンとの間の合意では、この見返り資金は日本の援助で建設されました事業の現地通貨分に使用するということに合意を見ておりまして、ある程度の額の見返り資金が積み立てられました場合には先方から使用についての要請が参りまして、それをこちらで認め、かつ資金の使用状況について報告を受けるという極めて厳しい姿勢を円借款の使用については手続として規定しているということでございまして、今お話のございましたような投機目的での海外流出等に少なくとも我が国の援助資金が使用されているということは万ないものと確信いたしております。
  35. 石井一二

    石井一二君 局長から確信あるお答えを聞いてほぼ安心しかかっておるわけでございますが、私はここに「選択」という雑誌を持っております。十二月号。出たところのほやほやでございますが、その百二十二ページから以降にわたって次のような記事が載っておるわけでございます。  「海外経済協力基金 なぜ相手国から感謝されないのか」という記事のもとに、この写真はフィリピンの「金銭貸付するな」というプラカードを持った住民のデモの写真でございます。その中を一部読んでみますと、「今日、わが国が毎年実行している途上諸国への公的な経済協力の支出額のうち、ほぼ四〇%前後はこの基金の融資がまかなっている。」という前段に始まって、そこから後が大事なわけでございますが、「基金には、円借款に携わる日本の企業が国内のメーカーから何をどういう価格で購入しているかはチェックする能力がないことがわかった。」それからずっと飛ばして、プロジェクト借款と商品借款に分かれるということは御承知のとおりでございますが、「プロジェクト借款は地下鉄が走ったり、工場が現実に建てられたりするので、ある程度は目で確めることができる。ところが商品借款は必ずしもそうではない。開発途上国が民生安定に不可欠な食糧物資や工業原材料、設備、肥料などを緊急に輸入する必要がある物資の調達のために緊急融資されるのが本来の目的である。ところが、この商品は相手国自国内ですぐに売り、現金化することができるうえ跡もつかない。このため、商品借款をうける時の政権にとっては、恰好の資金捻出の手段となっているといわれ、実際、商品借款にまつわる」いろいろな話がある、こういった話があるわけでございまして、残念ながら執筆者の名前はこの「選択」の記事には載っておりませんけれども、私が聞くところでは政府の役人が匿名で書くのがこの雑誌の特徴である。少なくとも一流雑誌がこういった記事を書くということと今の局長の非常に確信ある御答弁とは相矛盾するものがある。私も一度この編集長に会うなりして事実関係は調べてみたいと思いますけれども、今後ますますこういった面への御配慮も賜りたいということを要望しつつ、御所見があれば再度伺いたい。
  36. 藤田公郎

    政府委員藤田公郎君) ただいま御指摘のございました雑誌の論文を私どもも拝読をいたしました。商品借款と申しますものは、今、委員がお読みになりました部分に触れておりますように、プロジェクト借款が建物が残りましたり、橋が残りましたり、我が国の供与しました援助でつくりました施設が残るということに比較しますと、輸入金融としての作用を持っておりますので、極めてその経済に対しては大きな貢献はしつつも、実際にその商品借款で購入をされたものが形としてなかなか残りにくいということと、それから、先ほど申し上げました見返り資金というものが生じる、したがって、その見返り資金の使用についてかなり厳しい規制をしておく必要がある、この二点は事実として存在すると思います。  そこで、我が国の場合には、極めて国際収支上困難に逢着した国に限りまして商品借款を供与するということでございまして、円借款の供与総額のうち、非常に大ざっぱな平均をいたしますと、大体一割程度しか商品借款というのは供与しておりません。  しかしながら、国際的な潮流から申しますと、むしろこういう商品借款ないしはプログラム借款的なものが開発途上国の必要に一番貢献するんだ、大きなプロジェクトをつくるより、経済危機に逢着している国にはこういうものが実はいいんだということで、こういうプログラム借款ないし商品借款的なものをもっと拡大していくべきだというのが実はDACその他の国際場裏で要望されている声でございます。しかしながら、私どもの場合は、やはりどうしてもプロジェクト借款ないしプロジェクト援助重視の思想というのを、私どもも、それから一般的に日本側としては好む傾向にある。これはどうしてかというと、形が残るということにあるということをちょっとコメントとして申し上げさしていただきます。
  37. 石井一二

    石井一二君 このような問題について、会計検査院は、自分の仕事の対象範囲と考えておられるのかどうか、チェック機能があるかないか、もう時間が残り少なくなってきましたので、ちょっと御所見があれば、もし来ておられねば結構でございますが、いかがですか。
  38. 深田烝治

    説明員(深田烝治君) お答え申し上げます。  基金の経済援助につきましては、基金の本部におきまして、毎年二回ほど検査を実施いたしまして、経済援助に関する契約書等の関係書類の検査を実施してございます。また、海外調査につきましては、過去五年間について見ますと、計六回ほど、延べ十一カ国に赴きまして、相手国の協力も得まして主な経済援助関係の現場も調査している、そういうような状況でございます。
  39. 石井一二

    石井一二君 時間が少なくなってまいりましたので、飛ばして質問したいんですが、国際化時代を迎えて外国との行き来は極めて多くなってきておる。日本からの年間の出国者数は約四百六十万人、入国者の外八数二百万人という数字が出ておりますが、この中で、日本航空を使う方も多いわけでございます。また、六十年度の予算案を見てみましても、外務省独自の海外渡航関係の費用だけでも約九億円というものが計上されており、滞在日数とか宿泊費等もあるわけでございますが、その約七六%が航空運賃である。こういった中で、現在日航が、IATAと言われる国際航空運送協会との、航空会社相互間の運賃精算のベースが一ドル二百九十六円でここ長いことずっとやっておられた。それで、外国の航空会社とか国内の航空他社に聞いてみますと、その間にいわゆる為替差益というものがあるというように言うわけでございますが、こういった事実について何らかの御認識を外務省あるいは運輸省は持っておられるかどうか、またどのように理解しておられるか、簡潔に答弁を願いたいと思います。簡単にやってください、残り時間少ないから。
  40. 黒野匡彦

    説明員(黒野匡彦君) はい、簡単にやります。  まず、日本発の往復の運賃が今三十五万七千三百円でございます。これに対しまして、未発のドル建て運賃が千五百九十八ドルでございまして、この間で仮にバランスさせるといたしますと、一ドル当たり二百二十三円六十銭でバランスする数字になります。したがいまして、昨今の円高の中におきましては、若干未発の方が安くなっておりますが、それまでのドル高の時点におきましては、五十何年以来でございますが、むしろ日発の方が安くなっていると。こういう時々に応じて若干の変動をしていることは事実でございます。
  41. 石井一二

    石井一二君 私は、質問の中で申しましたように、この問題について日航からも二十ページ近い説明ももらっておりますし、日本外国含めて航空会社の専門家にも聞いておる。そういった中で、あなたのおっしゃっていることと全く違う答えが返ってきておるわけです。今おっしゃったようなことを本当の理解として思っておられるのであれば、私はあえて、失礼ですが、やや勉強不足ではないかという表現も使いたいような気持ちなんです。ここは運輸委員会でもございませんから、これをいろいろ論議する時間がありませんけれども、私は、この問題については若干の今後論議の余地があろう、また予算委員会等でもう一質問をさせていただきたいと思います。  続いて、海外協力隊について若干申し述べたいわけでございます。  先般の事故については、極めて私は悲しい思いに浸っております。外務委員会としても、この前国内視察で、どういった気持ちであのようなお方が海外へ出ていかれたかということも存じておりますし、また海外へ行った場合に、国際交流サービス協会の若い方々がいかに献身的に日本外交の手伝いをしておられるかということも認識をいたしております。そういった前提で、このような方が帰国後夢を持って日本に帰ってこられ、また社会の有意義な、やりがいのある仕事につけるような環境を私はつくっていただきたい。何となく、若い何年かを使い捨てのように協力してもらったというだけでは済まない問題だと思いますが、基本的な問題について外務大臣、御所見があれば承りたいと思います。
  42. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 青年海外協力隊員あるいは国際交流サービス協会からの派遣員の帰国後の再就職の問題につきましては、外務省の職員、国際協力事業団の職員としての採用を含めまして、外務省としても従来、その専門的な知識であるとか海外での経験等を十分生かし得るような、有能かつ若い人材活用に配慮してきたところでありまして、今後とも努力してまいりたいと思います。  ちなみに、外務省で本官採用した者は、現在まで、協力隊員五名、派遣員十三名の計十八名であります。国際協力事業団で採用した者は、協力隊員九十三名、派遣員四名の計九十七名となっております。また、派遣員につきましては、国際交流サービス協会に十六名、あるいは商社、銀行等、民間企業に四十九名が採用されておるわけでございまして、こうした開発途上国に対するいわゆる平和部隊として積極的に協力をしていただいておるボランティアの協力隊等の任務が終わって後の再就職については、今後とも、外務省さらにまた政府全体として、できるだけひとつお世話していかなきゃならぬ、これは自治体にもお願いもしておりますし、各企業等にもお願いをしておるところでございます。
  43. 石井一二

    石井一二君 一分過ぎから始まったので一分過ぎまでと思いますが、ユネスコ問題でございます。  米国に続いて英国もユネスコを脱退した。当然、我が国はどうかということを聞きたいわけですが、その前に、過日、ユネスコのムボウ事務局長が来られて、いろいろ約束事なりユネスコ改革案について外相も論議をされたと聞いております。そういった論議が、ただ単なる論議じゃなしに、その後どのように処理されつつあるかということも踏まえて、やはり再検討すべきタイミングではないかと思うわけでございますが、英国脱退に絡んで、ムボウ氏との申し合わせ等も含めて、現在の外務省のユネスコに対する方針を聞いておきたいと思います。
  44. 中平立

    政府委員(中平立君) ムボウ・ユネスコ事務局長が本年四月に日本へ参ったわけでございます。その際大臣から、我が国といたしまして改革の提案をいたしたわけでございます。それは三点ございまして、事業の精選、予算の抑制、事務局運営合理化についてやってほしいということを強く要請したわけでございます。そのことを踏まえまして、この間ソフィアで行われました本年の総会におきまして、次年度の予算の実質ゼロ成長、それから一部事業内容の改善、それから改革監視のための委員会の設置という成果を得たわけでございます。もちろん、この三点の成果を得ましたけれども、これは正しい方向に向けての第一歩でございまして、今後日本政府といたしましては、監視のための委員会のメンバーといたしまして引き続き事務局の行政改革、それから事業内容の一層の改善というものにつきまして努力してまいりたい、こう考えているわけでございます。
  45. 石井一二

    石井一二君 当面は脱退しないと理解いたしておきます。
  46. 中平立

    政府委員(中平立君) はい、さようでございます。
  47. 久保田真苗

    久保田真苗君 私もユネスコ関係に触れたいと思います。  イギリスがユネスコを脱退しました。イギリス下院の外交委員会で脱退しないということを勧告する報告書が出されたにもかかわらず、また安倍外務大臣が思いとどまるように働きかけられたというのに、まことに遺憾なことでございますが、外務大臣はイギリスに対してはどのような働きかけをなさったんでしょうか。
  48. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 先月二十九日に、山崎駐在英大使を通じまして自分からハウ外相あてにメッセージを伝達いたしました。同メッセージにおきまして私は、先般のソフィア総会は一応の成果が得られたものの、右は正常化へのささやかな第一歩にすぎず、まだユネスコ改革に残された課題は多いとの判断のもとに、我が国としては、これまで改革に当たり指導的役割を果たしてきた英国とともに、今後ともユネスコの一層の改革のために努力したい旨の希望を表明したところであります。
  49. 久保田真苗

    久保田真苗君 聞くところによりますと、アメリカがイギリスに強く脱退要請をしたということでございますけれども、このことは外務省は把握していらっしゃるわけでございますか。
  50. 中平立

    政府委員(中平立君) ただいまの御質問の件につきましては、去る十二月五日にイギリスの下院におきまして、イギリスのユネスコを担当しております レイゾン海外開発担当大臣が、ユネスコからの脱退決定を発表いたしました際に質問に答えまして、アメリカからユネスコ脱退について一切圧力は受けなかったというふうに答弁しておる次第でございます。他方、先月の二十二日の下院の審議におきましても同じレイゾン大臣が、その前日の二十一日にハウ外相とそれからシュルツ・アメリカ国務長官と会談いたしましたけれども、そのときもイギリスの脱退問題は話題になっておらない、そういう意味でアメリカからの圧力はなかったというふうに答弁しておる次第でございます。
  51. 久保田真苗

    久保田真苗君 新聞等によりますと、外国紙を含めてこのことが非常に大きく報道されたのはどういうことなのかという疑問を持つわけですが、では日本に対してはアメリカはどういう意見を寄せているのでしょうか。
  52. 中平立

    政府委員(中平立君) 一昨年アメリカはユネスコ脱退を通告いたしまして、昨年脱退したわけでございますが、このユネスコ問題につきましては、日本アメリカと緊密に話し合いをしておったわけでございます。しかしながら、アメリカからは我が方に対して脱退に同調してほしいというような要請をしてきたことは一切ございません。それから、アメリカ政府は一昨年末ユネスコ脱退を通告しました際に、アメリカは他の同盟国の脱退を慫慂するものではないという立場をニューウェル国務次官補のステートメントで明らかにしておる次第でございます。
  53. 久保田真苗

    久保田真苗君 ないということですね。  総会日本はどういう役割を果たし、またその成果をどう評価しておられるか、それを伺いたい。
  54. 中平立

    政府委員(中平立君) 先生御存じのように、この間のソフィアの総会におきまして三つの成果があったと我々は判断しておるわけでございます。一つは、来年度以降の予算につきまして実質ゼロ成長に抑えたということでございます。それからアメリカの分担金は二五%でございますけれども、アメリカの分担金二五%分を削減した予算額を承認したということが一つでございます。次に事業計画の改善でございますが、従来から御存じのように、ユネスコの事業計画は緊急性の乏しい事業とか他の機関と重複しておる事業とか、それから政治的にいろいろ問題があるような事業とか、そういうものがかなりあったわけでございます。そういう事業の一部を今回の総会におきまして凍結ないし削減いたしまして、事業全体として二五%削減したということでございます。それから改革にやはりはずみを持って今後当たっていかなければならないという観点から特別委員会を発足さしたわけでございまして、全部で十八カ国でございますがその特別委員会に我が国も選ばれまして、今後の改革に一層努力してまいりたい、こういうことでございます。
  55. 久保田真苗

    久保田真苗君 今後日本としてはどういう方針でやっていかれるのか、脱退問題を含めて伺いたいと思います。
  56. 中平立

    政府委員(中平立君) 今申し上げましたように三つの分野で成果がございましたけれども、先ほど大臣がお話しされたように、この三つの成果というものも我々は一〇〇%満足しているわけでございませんで、やはり正しい方向への第一歩というふうに判断しておるわけでございます。したがいまして、我が国といたしましては、イギリスは脱退いたしましたけれども、志を同じくする諸国と力を合わせまして改革監視委員会のメンバーとして今後努力してまいりたいと思うわけでございます。具体的には事務局の行政改革、合理化でございますね。それから事業の精選ということは先ほど申しましたけれども、必ずしも十分でないということで、より一層の事業計画の改善ということをやってまいりたいと思うわけでございます。
  57. 久保田真苗

    久保田真苗君 つまり脱退はしないということですね。
  58. 中平立

    政府委員(中平立君) これは先ほど申し上げましたように、我が国といたしましてはユネスコに残りまして志を同じくする国々と力を合わして一層の改革に努力してまいりたいという考えでございまして、望むらくはできるだけそういう改革を達成いたしまして、将来におきましてアメリカとかイギリスとかそういう国が復帰できるような雰囲気をできるだけ早期に醸成いたしたい、そういうふうに考えておるわけでございます。
  59. 久保田真苗

    久保田真苗君 確かに米英の復帰は望ましいのですけれども、日本日本独自の考えで、必ずしも米英の代弁者というのではなく、例えば自分の主張が一〇〇%通らなければ脱退ということでは国際主義というのは私は成り立たないと思うのです。でございますから、日本が独自の考えを立てまして、一番消極的な国に全体が歩調を合わせなければならないというようなことのないようにお願いをしておきたいと思います。  もう一つユネスコについてですけれども、ユネスコ事務局への日本人職員の代表率は甚だ低いわけです。しかし今回の人員削減におきまして相当大幅な削減が行われ、これ以上同本人職員が減らされるということは困ることだと思います。削減の状況が現在日本人に及んでいるのかどうか、今後日本人が減らされないように外務当局としては頑張るのかどうか、その辺を伺いたいと思います。
  60. 中平立

    政府委員(中平立君) 先生御指摘のとおり、ユネスコにおきます我が国の職員、我が国日本人の職員は余り多くないということでございます。これは国連機構全体について言えることでございますけれども、そういうことで、今度ユネスコ職員が削減されるという場合にも、さなきだに職員の数は少ないということで、これが減らないように、減ってはならないという立場から断固として事務当局に申し入れる所存でございます。  他方、一般的に申し上げますと、ユネスコ事務職員はユネスコ事務局との雇用契約に基づいて採用されておるわけでございまして、予算の削減ということはございますけれども、直ちに雇用期間中に解雇されるということはないのではないかと判断しておる次第でございます。
  61. 久保田真苗

    久保田真苗君 事業によって確かに雇用されてはおりますけれども、私はそれは実際問題としてはプログラムの間の配置転換ということも、また機関内での配置転換ということもできるわけでございます。ただし、それには早く手を打たなければならないということでございます。ぜひ早期に手を打って、日本人の犠牲者が出てこれ以上日本人の代表率が減らないように強く要望しておきます。  次に、アパルトヘイトについてお伺いします。  私はこの夏ナイロビの帰りに南ア共和国へ参りました。ちょうど七月二十一日に非常事態宣言が発せられた日に南アへ行ったわけでございます。いろいろな方、各種政党の議員、白人、黒人のジャーナリスト、学者、婦人団体等いろいろお目にかかりました。日本の方々ともお会いしたんですが、ここで感じましたことは、まあだれでもこのままでいいとは思っていないということは感じられたのでございます。しかし、これにつきましては、やはりアパルトヘイトの根幹をなし、最も黒人が問題として暴動の種になっております参政権の問題と、もう一つはホームランドに七五%にも及ぶ黒人の人口を押し込めてその南ア国籍を抹消し、無数の陸の孤島から安価な労働力の供給源とするという、そういう政策は依然として解消されないのみか、昨年の新憲法の人種別三部制議会の体制によって強められたということは、今回ボタ大統領の演説をごらんになってお感じになったことだと思いますが、外務大臣にお伺いしたいのですが、最近の関心がとみに高まっておりますアパルトヘイトについての政府としての基本的な認識をお伺いします。
  62. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 南アのボタ政権は、一九七八年に成立以来アパルトヘイト改革を推進してきたわけですが、その改革を不十分として昨年九月以来多数の黒人の暴動が頻発をしております。今日でも三十地区に非常事態宣言が発布されておりまして、事態は日々流動的となっております。我が国政府としては、南ア政府がアパルトヘイト撤廃に向けての抜本的措置をとることなく、現在のような周辺的な改革措置を小出しにしている限り、到底黒人社会を満足。させることはできず、事態のこれ以上の悪化を懸念いたしております。南ア政府が黒人を代表する指導者との間で無条件に話し合いに入るとともに、黒人側も暴力に訴えることなく平和的解決を目指すことを希望しておる次第であります。
  63. 久保田真苗

    久保田真苗君 政府として強くアパルトヘイトに反対する厳しい措置をとっているという認識を持っておられるわけでございますが、私はひとつここに問題提起したいのでございます。それは政府自身の立場と現場の考え方に大きな乖離があるということなんです。先般国会でも質問に上りました英領事の南ア日本人会の月刊誌に寄せた世界の経済制裁動向への批判論文につきましては、大臣が既に国会で、言いわけはできない、厳重注意したと答えておられるところでございます。私はむしろこの領事が現地の日本人や外交官の意識をある程度まで代表するものではないかという感じを持っているわけでございます。そしてこの六月、七月号に出たものが十月になって初めて新聞紙上でこのことがある方から指摘されるまで何の措置もとられていなかったという、いわば本省と出先との乖離についての、何といいますか、のんきな気分があったんではないかと、そんなふうに私は見ているのでございますけれども、外務省としてはどういうふうにこの辺をごらんになっていらっしゃいますか。
  64. 三宅和助

    政府委員(三宅和助君) まず外務省といたしまして在外公館に対しましては、政府のアパルトヘイト断固たる反対、そのための具体的な措置というものを十分周知徹底する必要があると考えまして、ことしに入りましてからも二月に二回、十月、十一月にそれぞれ文書をもって在外公館に配付してございます。また国会答弁の模様につきましても、総領事館に対しましてはもちろんでございますが、特に九月には中近東の久米参事官を南アに派遣いたしまして日本政府のとっている措置を在外公館、特に総領事館の館員に十分説明しております。また在留邦人との関係におきましては月一回総領事館との定期懇談がございまして、総領事館の方から日本政府の政策及び現在とっている政策につきまして十分周知徹底するような措置を今までとってまいったわけでございますが、まだまだ御指摘の点不十分だと思いますので、今後とも周知徹底方努力してまいりたい、こう考えております。
  65. 久保田真苗

    久保田真苗君 私はこういう非常に激動している問題について、そしていろいろな暴力、弾圧等が行われている情勢の中で、このように出先機関が外務本省から遠く切り離れたものになっているということは非常に問題があると思うんです。つまりアウト・オブ・コントロールだということではないかと、そういう感じを持つものです。もしそうでないとすれば、あるいは日本政府は表向きの建前は非常に強い反アパルトヘイトの姿勢を言っておられるけれども、実際には本音は別のところにあるから、だから、それを現地が敏感に感じてそのように行動しているのじゃないか、そういう疑いを持つのでございますけれども、そんなことはないのでしょうか。
  66. 三宅和助

    政府委員(三宅和助君) 日本政府の方針といたしましては、あくまでもアパルトヘイト全廃、断固たるこれに対する、政策に対する反対ということでございまして、裏も表もございません。これはいろいろな措置につきまして、最も西欧諸国の中でも日本政府は厳しい措置をとってまいりましたし、今後とも断固たる反対の態度をとってまいりたいと思いますので、本音も裏も全くございません。
  67. 久保田真苗

    久保田真苗君 だといたしますと、現地でもって私はどなたがどうということは言いませんけれども、相変わらず日本人の間では領事館の大使館昇格ですとか、日本航空、南ア航空の相互乗り入れということが話題になっておりますし、黒人参政権は南ア経済を崩壊に導くといったような議論もあるわけです。また個人的な面でも南アは非常にいい国だ、ゴルフができるし、サーバントが自由に使えると、そういう黒人の搾取の上に成り立っている事柄につきまして、名誉白人であり、かつ外交特権も有しているという、そういう立場の方が非常に居心地がいいということはわかるんですけれども、このような声が非常に声高であって、そしてむしろ反アパルトヘイトの声を潜めなければならないというような、そのような雰囲気自体に私はどうも納得のいかないものがあるんですね。  このことにつきまして、まあ古いことを言うようですけれども、例えばスプリングボッククラブに外交官が入っていらしたとか、あるいはいろいろな運動の試合にお出になった方もあるとかいったような、そういうこれまでの、割合に最近の出来事も頻々としてあるわけです。そうしますとやはり、アパルトヘイトに反対して正式な外交関係を結ばないと言っている政府姿勢とは非常に乖離したことが日常生活の中で平然と行われているんじゃないか、そういうことを思います。しかも、それが非常に無邪気に逸脱しているというところにこそ問題があると思うんです。  私はこの際お願いしておきたいんですけれども、もし本省がダブルゲームをやっていらっしゃらないのならば、自分の出先さえコントロールできないというようなそういうことでなく、もっと厳重な査察、もっと厳重な職員教育があってしかるべきだと思うんですね。そして、こういう問題の、非常に激動している地域へ出ていく外交官の方は、この問題について本当に良識を持った方が適任だと思います。私は、例えば南ア政府とか南アの企業とか、そういったものとのつき合いまでも含めまして、ぜひ総合的な査察をやっていただきたいと思うんですが、どんなものでしょうか。
  68. 三宅和助

    政府委員(三宅和助君) 既に御説明いたしましたように、ことしの九月には久米参事官をわざわざ南アに派遣いたしまして、十分日本側のこの空気、それから政府の基本的な方針、それから具体的な現在とっておる措置ということを説明するとともに、同参事官が在留邦人の代表を集めまして、そこで十分、総領事館は当然のことでございますが、在留邦人に対しましても政府の説明をしたわけでございます。  今後の推移を見まして、その点は先生御指摘のとおり、遠く離れていますとどうしても日本の感覚から若干在留邦人を含めましてずれてくるというおそれがあるものでございますので、これは常時、国会の答弁の模様とか、あるいはすべての資料を刻々と送ってまいりますけれども、将来の問題といたしまして、さらに周知徹底方のいろいろな抜本的なことも考えてみたいと考えております。
  69. 久保田真苗

    久保田真苗君 お願いします。  昨日、大臣は衆議院の方で、南アの黒人に対する奨学基金を設けるというようなお考えを発表なさいました。私は新聞記事で見ておるんですけれども、この一億円規模の奨学基金を民間の協力を得て現地日本総領事館などに設け、利子で学費を賄うとありますけれども、その内容をちょっとお聞かせいただきたいんです。
  70. 三宅和助

    政府委員(三宅和助君) きのう大臣が御説明しましたのは、黒人の地位向上のために、現地におきまして貧しい黒人、有能な黒人というものに教育の機会をもう少し与えようというための奨学金を、例えばアフリカ協会――これは外務省の認可している社団法人でございますが、アフリカ協会を通じまして民間の募金を集めまして、そこで今後そういう黒人のための奨学金を与えたいということで、とりあえず一億円ぐらいでスタートしたらどうか、これは全く試案の段階でございますが、現地での状況、それからどういう仕組みでやるかにつきましては現在構想をまとめたばかりでございまして、まだ具体的には検討を進めているという段階でございます。
  71. 久保田真苗

    久保田真苗君 この「民間の協力を得て」の中には日本の企業を含みますか。つまり、基金の拠出を企業に依頼するということになりますか。
  72. 三宅和助

    政府委員(三宅和助君) 当然南アに関係している企業の御協力を仰ぎながらやっていきたいと現在考えております。
  73. 久保田真苗

    久保田真苗君 そういたしますと、この基金についての責任者はどなたですか。外務省ですか、それとも民間ですか。
  74. 三宅和助

    政府委員(三宅和助君) アフリカ協会が奨学金の実施を行うということで、現在いろんな対応がございまして確定しておりませんけれども、一応現在におきまして考えている構想は、アフリカ協会が民間の協力を得て実施するという体制が一番適当ではなかろうかと考えております。
  75. 久保田真苗

    久保田真苗君 在外公館が企業から寄附を集めて、法人になりますのか――そういうものを在外公館に置くという例はほかにございますか。
  76. 三宅和助

    政府委員(三宅和助君) 私はいろいろなケースを全部把握する立場にございませんが、私が承知している限りにおきましては具体的なそういうケースは、外務省それ自体が民間の寄附を募ってこの種の制度実施しているということは承知しておりません。
  77. 久保田真苗

    久保田真苗君 そうしますと、その場所は総領事館に置くということで理解してよろしいわけですね。
  78. 三宅和助

    政府委員(三宅和助君) 現在構想の段階でございますが、アフリカ協会ということになりますと、アフリカ協会が口座を設けて、南アにおけるしかるべきそのための執行機関をこれから組織して、そこを通じて資金を流すということになろうかと思いますが、何分まだいろいろな側面を検討しながらやっている段階でございまして、私の申し上げたことも一つの考え方でございますが、一番有効な方法は何かということで現在詰めているという段階でございます。
  79. 久保田真苗

    久保田真苗君 企業がアメリカと肩を並べて日本世界第二位になる南アに対する大きな貿易量を持っているわけでございまして、そういう意味での免罪符的なものも必要なのかもしれませんけれども、私はまずこういうことをなさる場合に、これを管理なさる方、あるいはこれに協力なさる方、こういう身内の教育からひとつ先にやっていただかなければならないというふうに思うわけでございます。でございますから、今後もこの点を十分に心に置いていただきまして、私もまた見守ってまいりたいと思うわけです。  これにつきましては、公的資金を使うということはできないわけですか。
  80. 三宅和助

    政府委員(三宅和助君) これにつきましても、今後公的資金の可能性が果たしてあり得るかどうかということを含めて検討したいと思いますが、私たちが今まで研究したところでは非常に難しいんじゃないかとの結論でございますが、なおもう少し調べまして、その道があるかどうかも検討してまいりたいと思いますが、現在までのところの検討状況では非常に難しいということでございます。
  81. 久保田真苗

    久保田真苗君 難しい理由は何でしょうか。
  82. 三宅和助

    政府委員(三宅和助君) 一つは、南ア自体が開発途上国ということでないということからくる援助の問題がございます。それからそれ以外にも、そういうことを実施するような十分な仕組みないし予算ができていないということがございますが、ただこれは十分研究しておりませんので検討いたしまして、その可能性があるかどうかをさらに検討してまいりたいと思っております。
  83. 久保田真苗

    久保田真苗君 一人当たりGNPというようなこともあるのかもしれませんけれども、南アの場合は極端なアパルトヘイトでございますから、白人と黒人の所得を合算して平均したものは何ら意味がないと私は考えます。  黒人青年二人を招き二、三週間の滞在日程で国内企業で研修委託をするとありますが、これは国費で行われるのでしょうか。たった二、三週間というのは果たしてどんな効果があるものか。これは新聞記事でございますから誤りがあったら御訂正ください。
  84. 三宅和助

    政府委員(三宅和助君) これは今年度予算の中に計上されておりますアフリカ青年招聘計画で、五名が今年度予算の中に計上されております。そのうち三名につきましては既に消化してございますので、残り二名につきましては今年度中にもこの予算、これは外務省予算でございますが、アフリカ青年招聘計画、外務省予算を使いましてこの二人の青年をまずとりあえず今年度予算において実施したいということでございます。
  85. 久保田真苗

    久保田真苗君 国費による黒人留学生の受け入れとありますが、人数とかどういうルートで選んでいくのかというようなことをお聞かせください。どういう学校へ行くのか。
  86. 三宅和助

    政府委員(三宅和助君) 国費留学生につきましては、その問題につきまして鋭意現在文部省と協議中でございまして、全体の枠の中でどの程度呼べるか、あるいはこれを呼びます場合にいろんな技術的な困難な面も、難しい問題も種々ございますものですから、そのあたりを十分検討しながら実現の方向に向けて現在文部省と協議中でございまして、まだ詳細なことは全く決まっておりません。
  87. 久保田真苗

    久保田真苗君 例えばアメリカなどでは年百人からの南アの黒人学生を大学教育でいい教育をする、そういう長期のプログラムをやっているはずでございますが、私はせっかくやるのならば国費のむだにならないように、非常に短期間の企業研修、見学といったようなものよりは、むしろ長期間じっくりとやれるようなそういう方向へ進んでいただきたいと思うわけでございます。そしてなおかつ現地における奨学金の設営につきましては、その設営の方法についてよほどよくお考えいただきたいということをお願いしておきます。  ついでにお願いなんですけれども、一般にアフリカは従来日本が余り大きな関係を持ってこなかったためか、とかく在外公館等も軽視されているんじゃないか、そういう感じを持ちます。大使館等の設備も非常に劣っておりますし、文化財なども極めて少ない。職員は生活環境の劣悪さから生活防衛に懸命になっているというようなところもございます。また外部施設も衛生上の問題から、あるいは物資がないという問題から使用できないというような困難な外交活動をしておられるところもあるんですね。それからまた情報収集の点でも果たしてどうなのかと思うことがございます。  例えば、ちょうど私がナイロビにおりましたときのことですけれども、政務次官がウガンダヘ行かれまして大統領と経済協力問題を話されたんですけれども、その一週間後にクーデターで大統領はいなくなってしまったというような状況、まあこのことの理由を伺っている暇はございませんけれども、そういった外交活動効果的にするための情報収集なども必要なんじゃないか、こんなふうに思うわけです。全般的に十分に査察していただきまして改善に取り組んでいただきたいと思うんですが、今何かそういう御計画がありますでしょうか。
  88. 北村汎

    政府委員北村汎君) 委員御指摘のように、アフリカ地域の公館は気候風土の点で非常に厳しい状況にございまして、私どもこのアフリカ対策につきましては省全体として抜本的に改善していきたいということを考えまして、本年度予算におきまして初めてアフリカ対策専用の予算として二億九千万円が認められた次第でございます。これについては大臣が最後まで最重点事項として予算折衝していただいた結果でございますが、こういう予算が認められたことによりまして、緊急を要する設備の修繕とか改良とか、そういう在外公館の施設の改善とかあるいは技術者の派遣を含めていろいろ実施しておりまして、かなりの改善を図ることができると考えております。  また在外職員の勤務環境の改善につきましても、不健康地対策の予算、これが前年度に比べて三七%増加いたしました。そういう点でも改善を実現することができるようになっております。しかしながらまだまだアフリカ地域におきましてはいろんな点で不備なことが多うございますので、我々としても所要の改善に努めております。  ただいま御指摘になりました査察というような問題もございます。私どもは公館の活動とかあるいは運営状況、それからさっきおっしゃいました館員の情報収集の状況、そういうようなものをいろいろ具体的に査察をいたすために査察使を派遣いたしております。一昨年は二度にわたってアフリカ公館を査察いたした実績がございます。今後ともアフリカにつきましてはいろんな不備な状況を改善しつつ、この面での改良を図っていきたいと考えております。
  89. 久保田真苗

    久保田真苗君 外務大臣は非常にアフリカの緑化、砂漠化防止あるいは緑の戦士を送り出すといったような新しいアイデアを次々に打ち出しておられます。それにつけましてもやはりこのアフリカという土地は地質の上からも政情の上からも非常に難しい土地だと思いますのでひとつ全般的に、そして特に南アの問題につきましては十分本省でこれを把握し、コントロールしていただき、また改善を加えていただくことをお願いしたいと思います。いかがでしょうか。
  90. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 外交はやはり本省から出先に至るまで一貫して進めていかなきゃならぬわけでございます。そういう中でいろいろと不協和音があったりしてはいけないので一本になって、一体となって日本外交というものを積極的に進めていかなきゃならぬと思います。そういう意味におきましても外交のこの自主態勢というものをアフリカ等においては特に強化していかなきゃならぬということは御指摘のとおりで、これまでも最大努力をしております。  同時にまたアフリカ全体については、これは何としましても今お話しのようにまだまだ飢餓に直面をしておる、あるいはまた将来のことを考えると非常に問題を多く含んでおる。やはり、今現実に対症療法として食糧の援助とかあるいはまた医療の援助とかそういうことを積極的に行っていかなきゃならぬのは当然ですが、同時にまあやはり中長期的に立ってアフリカの将来、特に農業改革について協力をしていく、それはやはり日本の大きな役割だろう、こういうふうに思って緑の革命構想等を国連でも打ち上げまして、各国の協力を今求めておるわけでございます。何とかこれは実現をしていきたいと。日本も既に調査団等を出しましたし、農水省と協力していろいろとこれからのプロジェクト等を考えてまいりたい、こういうふうに思います。  同時に、今アフリカに現存しておるところの南アフリカ、そしてアパルトヘイト政策、これは日本としてはもう何としても受け入れることのできない政策でありまして、世界に対しても、あるいは日本独自として南ア政府に対してもしばしばアパルトヘイト政策の撤廃を求めております。これは、今後とも主張し続け抗議を行って、そしてアパルトヘイト政策というものがアフリカから一掃される、なくなるというための外交はこれからも進めていかなきゃならぬ、積極的に展開していかなきゃならぬ、こういうふうに思っております。
  91. 久保田真苗

    久保田真苗君 通産省、簡単にお答えいただきたいんですが、通産のとられた反アパルトヘイト措置のその後の履行状況、いかがでしょうか。
  92. 藤原武平太

    説明員藤原武平太君) お答えいたします。  まず、コンピューターの輸出でございますが、十月九日に軍隊あるいは警察などのアパルトヘイト実施機関に対するコンピューターの輸出を認めないという旨の決定をいたしました。その後、細目を詰めまして、十一月一日から輸出貿易管理令の運用により実施をいたしております。現在のところ、特に問題はございません。今後とも確実に実施をしていく方針でございます。  第二は、クルーガーランド金貨の輸入に関してでございますが、これも十月九日にクルーガーランド金貨の輸入の禁止、自粛を決定いたしまして、即日輸入業者及び業界団体に対し自粛の要請をいたしております。その後確認をしておりますが、一切輸入していないという報告を受けております。今後とも、的確に把握していく所存でございます。  第三に、公正労働基準の問題でございますが、これも十月九日、社団法人日本在外企業協会並びに南アに事務所を有する企業に対しまして、通産省の産業政策局長名で通達を発出いたしております。在外企業協会は、会長名で海外企業に対しまして周知徹底を図った旨報告を受けております。現地総領事館からも、本件に関し特に問題があるとの報告を受けておりません。遵守されているものと承知をいたしております。今後とも、注意深く見守ってまいる所存でございます。
  93. 久保田真苗

    久保田真苗君 大蔵省に伺います。天皇在位六十年記念金貨につきまして御発表になりましたけれども、地金の量と調達方法についてお答えください。
  94. 榊原英資

    説明員(榊原英資君) 金貨幣の発行につきましては、次期国会に法律を提出する予定にしておりまして、具体的な調達方法につきましては、法案及び予算が成立した後になると思います。そういうわけで、現段階で具体的な調達方法を決定するわけにはいかないわけでございますけれども、御指摘の点については十分配慮してまいりたいと思います。
  95. 久保田真苗

    久保田真苗君 日銀の手持ちの金が七百トン余りあるから、それで調達するというようなことを言っておられますね。
  96. 榊原英資

    説明員(榊原英資君) 先ほど申し上げましたように、具体的な調達方法については、法案予算が成立しない段階で決定することはできません。ただ、御指摘のように、我が国の公的部門は今回の金貨発行に十分な金準備を持っております。
  97. 久保田真苗

    久保田真苗君 国内市場での調達はする必要がないと考えておられるわけですね。
  98. 榊原英資

    説明員(榊原英資君) 具体的な調達方法については、これは法案を御審議いただき、予算が通った後に決定することになるということでございます。
  99. 久保田真苗

    久保田真苗君 一応、その必要はなく、また南アからの輸入が増大を招かないことを希望しておきます。  最後になりましたけれども、婦人問題についてちょっとお伺いいたします。  今回お出しになった均等法の大臣指針におきまして、男子のみ募集が原則的に否定されていることは評価いたしますけれども、しかし、パートタイマーとか補助職など低賃金の職種について女子のみ募集は差し支えないというような見解がばっと出されまして、世上問題になっているわけです。私はやはりこれは問題になるのが当然だと思うんですね。女子のみ募集ということは、そういう低位の職種に女子の集中を促していく、企業もそれらの職種を女子で埋めることに力を入れるというふうなことで、こういう方向で進められますと、婦人地位の向上ということとは離れていくと思うんです。  そこで、今回のナイロビで採択された将来戦略の中で、すべての職種の男女均等を確保するための立法や活動を行い、パートタイム労働等の女性化、搾取を防止することというのがございますね。労働省はこれをどういうふうに受けとめておられますか。
  100. 松原亘子

    説明員(松原亘子君) 私どもがお出しいたしました均等法に基づきます指針の考え方、先生がおっしゃいましたとおりに女子のみ募集採用については触れておらないということでございますが、これは必ずしも指針だけの問題ではございませんで、法律そのものが女子が現在置かれております不利な立場といいますか、そういうものに着目してそれを引き上げるということを主眼としているところからきているわけでございます。そういうことで、今パートタイマーのことをおっしゃいましたので、それを例にとりますと、フルタイマーについて女子にも機会があるという場合で、かつそれに追加的にパートタイマーについても女子について機会がある、たまたまパートタイマーの機会が男子にはないということを見てみますと、機会均等という観点から見れば女子の機会の方がより広いということは疑い得ないわけでございます。先生がおっしゃいましたのは、機会の問題だけではなくて結果としてそういうことであればパートタイマーに女子が押し込まれるのではないかということかもしれませんが、それはあくまでも結果的にどうなるかという問題でございまして、法律の機会均等という問題とは直接関係はないというふうに私どもは認識いたしております。  しかしながら、先生がおっしゃいましたようにナイロビ会議で採択されました文章それのみならず、最近の諸外国婦人問題についての取り組みの姿勢を見てみますと、必ずしも機会の均等だけでは女子の地位は職場で上がっていかない。特に職域を拡大していくことの必要性ということは非常に重要なポイントになってきております。そういうことにつきまして私どもも当然必要だと思っております。そういうことで企業については従来の女子向き職種というようなことにこだわらず、女子をいろんな分野に配置をしてほしいということで今まで啓発指導をやっておりますし、また女子自身についても従来の、女性はこういった職業を選ぶのがいいんではないかといったような考え方にとらわれず、いろんな分野に進出するようにということで啓発活動を行っているわけでございます。  そういうことから、先生おっしゃいましたような点についての必要性は私どもも重々考えておりますし、機会均等法が施行されますれば、企業がさらに女子に機会を開くということを促すことにもなりますし、それは就業分野の拡大ということにも資するものだというふうに思っております。また同時に、私どもがやっております調査等を見ますと、必ずしもこの就業分野の拡大というのは企業に要請するだけでは解決できないというふうに思っております。といいますのは、例えば四年制大卒の女子について門戸が狭いということがよく問題になりますけれども、なぜかということを企業に聞きますと、例えば勤続年数が短いとか専攻する学科が偏っているというようなことも指摘されるわけでございます。そういうことについて女子の職業についての考え方とか意識、そういったものについての啓発活動もあわせて必要ではないかというふうに思っております。
  101. 久保田真苗

    久保田真苗君 わかりました。時間がないんです、済みませんけれども。  私、一つ強調しておきたいことがあるんです。それは、女子差別撤廃条約が一条を初め主要な条文ごとに「男女の平等を基礎として」ということを繰り返し繰り返しくどいくらい各条文に入れているということなんですね。「男女の平等を基礎として」なんですよ。だから、幾ら女子に追加的だといってもお茶くみ訓練だとか、それから何というのですか、臨時工だとかパートタイマーだとか非常に劣悪な条件にあるところに女子を誘導していくようなそういう行政指導は絶対とっていただきたくない。それは逆にそういうことは男女平等を基礎として、そういう募集の仕方をすることが望ましいと、積極的な行政指導をしていただきたい。よろしいですか。
  102. 松原亘子

    説明員(松原亘子君) 先生おっしゃいましたように、そういうところに女子を押し込める、そういう方向に向かって行政指導をするというようなことは私どもは全く考えておりません。あくまでも女子についても男子に与えられている機会と同じ機会を与えてほしいということがこの法律の趣旨でもございますし、先生おっしゃいましたような「男女の平等を基礎として」という条約の精神、それを最終的な目指す姿として行政の展開をしていきたいというふうに思っているところでございます。
  103. 久保田真苗

    久保田真苗君 時間がなくなりましたから、最後に外務大臣に御要望申し上げておきたいんですけれども、今回ナイロビの世界会議で将来戦略が二〇〇〇年までに向かって採択されました。しかし、それを実行するメカニズムについては必ずしもはっきりしないで、今後の国連総会にげだが預けられたということなんです。政府としましては私もそれを要望しましたし、政府の方針としても今後も全加盟国が参加する世界会議などをそういう形で定期的に開催するという方向で臨まれました。まだ条約の批准国もやっと半分になったところなんですから、今後もこの政府の方針を貫いていただきまして、全加盟国参加の会議の早期の実現に向かってひとつ御支持お願いしたいし、次の世界会議は日本でという呼び声もあるやに聞いております。ひとつそういうことも含めまして、日本でやるくらいの意気込みで臨んでいただきたい、こう思いますんですが、いかがでございましょうか。
  104. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 我が国は従来より「国連婦人の一〇年」後の婦人地位向上のための活動を定期的に、かつ全国連加盟国の参加のもとに見直していくことが必要との立場をとっております。世界会議開催につきましては、今後国連総会等におきまして具体的に決定をされる予定でありますが、我が国としては、世界会議が過度に政治化されず、婦人問題を実質的に討議する場となることを確保することが重要であるという考えのもとに、国連の財政事情等もありますが、そういう点も踏まえながら他の加盟国と十分協議の上対処していきたいと思います。
  105. 最上進

    委員長最上進君) 午前中の質疑はこの程度にとどめ、午後二時まで休憩いたします。    午前十一時五十三分休憩      ―――――・―――――    午後二時開会
  106. 最上進

    委員長最上進君) ただいまから外務委員会再開いたします。  午前に引き続き、国際情勢等に関する調査を議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  107. 松前達郎

    ○松前達郎君 きょうはソ連との関係、またアメリカとの関係あるいは中国との関係、こういう非常に重要な関係に関して質問さしていただきたいと思うんですが、まず最初にソ連との関係でありますが、最近新しい日ソ関係というのがどうも展開されそうな気配が出てきておるわけであります。とりわけその中で経済協力ですね、これが比較的抵抗が少ない分野であるかもしれませんが、こういった経済協力の展望、今後の日ソ間の展望、それからさらにそれを含めた日本としての外交姿勢ですね、こういったようなものについてまず最初に、これは大まかでありますが、外務大臣から所感を聞かしていただきたいと思います。
  108. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 今回の一月に行われる日ソ外相会談は、お話しのように何とか新しい日ソ関係のスタートに持っていきたいと私も思っておりまして、いろいろと準備をしております。ソ連日本との関係を改善したいという意欲が非常に十分でありまして、これはゴルバチョフ書記長の発言にも、あるいはまたシェワルナゼ外相の発言にも見られておりますし、あるいはソ連新聞等においても散見をされております。ですから、やはりそういう意味では一つの大きなチャンスだと、こういうふうに思っておりまして、幅広くひとつ真剣に率直に時間をかけて論議してみたいと思います。  問題点は国際問題とそれから二国間問題に絞られるわけでございますが、ただ何回もここで申し上げておりますように、二国間の問題につきましては、やはり領土問題を解決して平和条約を締結するという日本の基本姿勢はこれは変わらないわけでございますし、そういう点で平和条約締結交渉へ向かってソ連側の同意をひとつ求めたい、こういうふうに思うわけでございますが、同時に、その他今お話しの経済、貿易、さらに文化交流、文化交流の方は文化協定が今交渉で大詰めに近づいておりまして、私は、何とか日ソ外相会談に間に合うように合意が見られないものか、そういうふうに思って期待しておりますけれども、これは交渉事でありますし、なかなか問題点も残っておりますから、そう簡単にいくかどうか、これからであります。  経済交流については、これまでも日ソ間ではいろいろと経済交流が行われてきました。これは非常に大きく行われた時代もありますし、非常に狭くなった時代もあるわけでありますが、経済交流については、やはり体制が違うだけになかなか難しい面もあるわけですけれども、しかしこの点についてはケース・バイ・ケースで今後とも進められるものは進めていくような、そういう状況ができることをこれは期待をいたしております。  貿易も、ソ連シェワルナゼ外相も私がニューヨークで会いましたときは、日ソ間の貿易を非常に拡大したいということでありました。日ソ間の貿易については摩擦が起こらないから大丈夫だというようなことを言っておりましたが、これもやはり今後の状況次第によっては拡大する可能性がある。それから雰囲気がよくなればいろいろな面がやっぱり出てくるんじゃないか、こういうふうに思っております。
  109. 松前達郎

    ○松前達郎君 そこで、ソ連の方から大型訪日団がやってくる、もう間もなく来るんじゃないかと思うんですが、これのテーマで、新聞報道だとサハリン開発が含まれている。とりわけこの問題、かねてからいろいろと懸案になっている事項だとも思うわけでありますが、サハリンの大陸棚石油、天然ガスの開発ですね、これもエネルギー事情が大分変わってはきておりますが、こういったような問題が恐らく出てくるというふうに予測をされると報道されているんですが、これについて外務省としてどういうふうな対応を、もしかそういうことがあれば対応されるつもりか。いかがでしょうか。
  110. 西山健彦

    政府委員(西山健彦君) 現在懸案になっております御指摘のようなプロジェクト、なかんずくサハリンの石油及び天然ガスの開発プロジェクトにつきましては、これは政府間でも現行の法律の範囲内でその実現のためにできるだけの協力をするという趣旨の約束をいたしております。したがいまして、私どもといたしましてもその実現のためにできるだけの協力をしてまいりたいと思っておりますし、また現在までもしてきたわけでございます。しかしながら、問題は関係の業界間の話し合いというところにございまして、まさしく委員も御指摘になりましたとおり、我が方の需給の状況がこのプロジェクトが発足いたしました当初と比べまして変わってきておりますので、目下鋭意関係者間でもって話し合いが進められている最中でございますけれども、まだ最終的結論に到達していないというふうに了解しております。
  111. 松前達郎

    ○松前達郎君 そういったような懸案の問題ですね、これも恐らく出てくると思いますが、もう一つ、最近東側の国々をずっと行ってみますと、例えば一つ例を挙げればハンガリーですね、こういう国がすべて国有化といったような状況で進んできた、そういったようなものを開放――開放といっちゃおかしいんですが、個人が経営できるような、それは細かいものでいえばレストランとか会社とかそういうものを含めてそういうようなことに切りかえているわけですね。しかもそれを切りかえたことによって経済が非常に活性化をしてくるという結果をどうも生んでいるんじゃないかと私は思います。もっとはっきり言えば、自由競争の原理をある程度取り入れてきた、これに対して中国が非常に関心を持ちながら今そういった問題についての実例として研究をするような団体をハンガリーに送り込んでいる、こういうふうな状況も見たわけでありますけれども、ソ連も恐らく将来そういった方向に少しずつ移っていくんじゃないか。今のようなシステムの中で果たして経済が活性化するかというとなかなかそう簡単にいかない。農業の生産にしろ何にしろすべてそうだと思うんですが、そういうところに新しいソ連の改革の動きというものがあるだろうと私は思っておったわけです。ところが、そういうやさきに、今度経済改革の推進をするために指南番を送れ、指導者を送れというようなことをソ連側から、これは民間を通じてだと思うんですが、申し入れがあったやに伺っておるんですけれども、この点外務省としてはそういうことについて承知しておられますか。
  112. 西山健彦

    政府委員(西山健彦君) 御指摘のような事実が新聞で報道されておりますのは私どもも拝見いたしましたけれども、政府レベルでそのようなお話があったことはございません。
  113. 松前達郎

    ○松前達郎君 そうしますと、これがもしか例えば政府レベルでの協議の中にこういった問題が盛り込まれてきた場合の対応ですね、これについては前向きに外務省としては対応されますか。
  114. 西山健彦

    政府委員(西山健彦君) それはお話し合いの内容次第であろうと存じます。そういうふうに特定の部門について具体的にお話があった場合にはそれに即して検討さしていただきたいと存じます。
  115. 松前達郎

    ○松前達郎君 恐らく来年の一月十五日、シェワルナゼ外相が来られたときの議題といいますか協議の事項ですね、協議事項については、これはソ連との関係の中で果たしてそういう慣習的なことが行われているかどうか知りませんけれども、ある程度の内容というのは予測がついているんじゃないか、こう思うんです。もう既にその前哨戦みたいなもので通信社の皆さんがたくさん押し寄せてきたり、あるいは例えば要人がもう既に日本に来られていろいろと接触を始めるという、こういうことが、これは当然の話だと思うんですが、協議を成功させるための一つの下打ち合わせというか、そういうものがある程度行われているんじゃないかとも私は思うんですが、もしか行われているとしても、ここでおっしゃる必要はありません。しかし、そういったような前向きの姿勢で今度の外相協議に取り組んでいかれる、これは安倍外務大臣の今申された姿勢の中に十分感じ取られるわけでございます。  ただし、そこで一つ大きな問題があるのは、やはり前から言っておられる領土問題というのがどうしても引っかかってくる、これを解決してから平和条約という、まず入り口に領土問題があるんだということを今までずっと言い続けてこられたんじゃないかと思うんです。恐らく今度の会談でも、まずそれをしょっぱなにぶっつけますとそれでストップしてしまう可能性があるので、この辺のやりとりですね、協議の進め方というのは非常に難しい。せっかくこれは開くわけですから、難しい進行だと思うんですけれども、これを最初にぶつける。今まで言われているようないわゆる領土問題を解決した後に新しい発展状況に入るんだと、こういうふうな進め方をされるのか。あるいは、その領土問題というのは一応とにかく前からの懸案事項、我が国としては懸案であるということを頭に置いて、多少は言うことも言うでしょうが、そういうふうな程度の取り扱いでこの協議を進めていかれるのか。それとも、かつての共同声明なりいろいろなあれがありましたね、田中・ブレジネフ会談とか、鳩山さんのもございました。そういったところまで、時間的に少し引き戻したような時点まで戻って、それをソ連としては配慮しようということになった場合はまた情勢が多少変わってくると思うんですが、そういうことを提案されるのか。これは余り細かいことをおっしゃる必要もないと思いますが、できる範囲でひとつお答えいただきたい。
  116. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 協議のやり方につきましては、これは相手のあることですし、ソ連側ともこれから詰めていきたい、こういうふうに思っておりますが、しかし領土問題については避けて通れない日本外交の基本でございますし、これは二国間の中で十分やはり話をしなきゃならぬ、こういうふうに思っております。しかし、全体としては何とかこの会談を実りあるものに持っていきたい。そうして、これが再開された第一回会談として、これから今度は日本外務大臣ソ連を訪問するというような、やはりこれからの会談の一つの道程というものが確立されるということがこれからの日ソ関係にとっては非常に大事なことじゃないか。それは、何としても一つの道筋だけはつけておかなきゃならぬな、こういうふうに考えております。同時に、話し合いの中でいろいろと問題が出てくると思いますが、そういう問題についても、やはり日ソ改善という立場からいろいろと努力、検討、協議はしなきゃならぬ、こういうふうに思います。
  117. 松前達郎

    ○松前達郎君 いずれにしたって、日本ソ連関係というのは今までは冷え切っていた状態でしたから、それを打開していって両国の国益に合うような内容を引きずり出していく、これは当然の話だと思います。  それで、もう一つ問題があるのは、これはアメリカが貿易経済会議をモスコーで始めていると思うんですけれども、どうも今までの米ソあるいは米中の関係を見ましても、日本に対しては相当厳しいことを言いながら、アメリカが、自分のところは今度頭越しにぼんといろんなことを、新しい動きを展開していくというような気配が今まであったわけですね。もう幾つかそういう実例もあるわけなんですが、この貿易経済協議、これが我々としても今後、先ほども申されたような日ソ間の経済関係というものを拡大していくというそれとの関連と、非常に大きな関係を持っているんじゃないか、こういうふうに思います。これについては、どういうふうにお考えでしょうか。この米ソの貿易経済協議ですね、これについて。
  118. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 今ボルドリッジ商務長官もモスクワを訪問していると聞いておりますし、私は米ソ首脳会談の結果、米ソの二国間の関係が随分改善されたと思います、実際に。そして、その一環として今の経済協議も行われておると思います。やはり世界の緊張緩和という上から見てこれは歓迎すべきことだろう、こういうふうに思いますし、そうした米ソのいい関係というのが日ソ関係に反映されることが非常に期待されるわけで、それを我々も念願をしておるわけであります。
  119. 松前達郎

    ○松前達郎君 そこで、全体的に見渡してみまして、これからの対ソ外交といいますか、これの姿勢、一言で言いますとこれは総理が包括交渉という言葉を使っておられるかと思いますけれども、包括的に見ていこうじゃないかと。ですから、かつて外務省がとっておられた方針といいますか、いわゆる政治と経済の分離といいますかね、こういうことじゃなくて、その分離とかそういうことじゃなくて、全体的に物を見て対応していこう、こういうふうに見ていいのかどうか、これは外務大臣としての御意見いかがでしょうか。
  120. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 総理も包括交渉ということを言っておりますが、これは私はやはり総理大臣とか外務大臣の立場というのは包括的でなきゃならぬと思うんですね。ただ、外交、政治問題だけでなくて経済の問題、文化の問題、その他万般の問題について包括した形で相手と話をするというのが外交のあり方であろうと思います。特に総理大臣というのはそういう立場だろうと思っておるわけでありますが、しかし、これは全体としてはそういうことですけれども、しかし、日ソ間にはやはり基本的な問題として未解決な懸案があるということは、これはもう日本外交の不動の考え方でございますから、これを避けて通るということは私はできない、こういうふうに思っておるわけであります。何とかひとつ日ソ関係においてもこの問題で一歩の前進が見られることを念願しております。それは総理大臣も私もその点については基本的には全く相違はない、こういうふうに思います。
  121. 松前達郎

    ○松前達郎君 領土問題は避けて通れない、こういうことでしょうが、領土問題と経済問題、その他文化交流問題、いろんな問題をパラレルに進めていくというふうに理解してよろしゅうございますか。
  122. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) パラレルというと非常に何かまた町題が同じような扱いだというふうなとられ方になるわけですが、私はやはりさっきからしばしば申し上げましたように、領土問題というのは日ソ関係にとって、日本にとってはまず基本的な問題だというのが我々の認識であります。
  123. 松前達郎

    ○松前達郎君 そうしますと、この辺は解釈いろいろありますが、これは領土問題を入口の門にしないという会談のやり方ですね。そういうふうにしてしまうと恐らくそこで行き詰まってしまう可能性がある。もしか行き詰まるようなことを避けるとすれば、それは非常に重要な問題として、領土問題は厳然として一番重要な問題としてある、それ以外にはいろいろな問題がある、これもそれじゃ一緒に考えていきましょうとこういうふうな、パラレルという意味がちょっと重さが違うようなパラレルの意味で私は申し上げたのですけれども、そういうふうなことで恐らく進めていかれるのじゃないか、そうしなければ協議する意味がないということになると思いますが、ひとつもうベテランの外務大臣ですから十分その点は御配慮しながらやられると思いますけれども、期待をしております。  それで、もう一つ問題があります。これはココム、これも設定された時期というのは非常に古いんですけれども、対共産圏貿易というか、これに関しては時代がどんどん変わり、技術的なレベルも変わり、製品も変わり、いろいろと変化が多く、非常に変化をしてきた今日ですから、これについても例えば半導体一つ挙げても、半導体のチップを輸出するとこれに引っかかるとか、こういう問題がもしかあるとすれば、チップなんというのはこれはどこでもパソコンなんかに入っていますから、そんなものは手に入れるのは簡単である、ごく当たり前のものになってきた。例えばこういうふうなものがもしか対象になっているとすればこの辺は多少見直していかなきゃならない、こういうふうに思うわけなんです。これは何もソビエトだけの貿易じゃなくてその他の国々全部含まれてのことですから、ココムに関して今後その内容を見直しながら提案をしていくというふうなおつもりはございませんか。
  124. 池田廸彦

    政府委員池田廸彦君) 先生御指摘のように、技術の進歩というのは最近非常に速いものがございます。ココムは決して静態的な機関ではございませんで、技術進歩の実態を踏まえまして逐次見直し作業を行っております。この中におきまして、我が国は、真に規制の必要があるものは漏れないように、他方規制の必要がなくなったものは規制対象から外していく、こういう方針で対処してきております。今後ともこの方針で臨むつもりでございます。
  125. 松前達郎

    ○松前達郎君 この辺見直しておられるということであれば結構なんですが、技術の進歩は物すごく速いですから、それに相応したものに切りかえていくという作業を常にやっていないとまずいんじゃないか、こう思ったものですから。  それと同時に、貿易摩擦とかいろんな問題がありますと、やはり日本は貿易立国ですから、それなりにあらゆるところとの貿易というものを盛んにしていく、これが一つの生きる道なんですね。余り特定のものに集中するから集中豪雨的にやればそれぞれ問題が出るでしょうけれども、貿易摩擦がないような状態で日本は生きていくわけにいかないんで、私はこれは自分でそう思っているんですが、ゼロにすると日本の生活レベルは下がってしまう。ですからその辺も配慮して、ココムも量からいくと大したことないといえばそれきりなんですけれども、しかし今おっしゃったような方向で検討しながら前向きにひとつ展開していっていただきたい、こういうふうに思うわけであります。  さて、次にSDIですが、これもきのう衆議院の委員会で外務大臣も大分お答えになっておられますので、また繰り返しになる部分もあるかもしれませんが、これは基本的な問題として宇宙開発に関しては平和目的に限るんだという国会決議があるわけですね。こういった決議をしている、そういう姿勢で我々は臨むんだということでありますから、SDIというのはいわゆるスターウォーズというか宇宙に対する防衛計画でありますから、当然これについては平和目的ではない、これはもうはっきりしているわけです。ですから、SDIというタイトルのもとにアメリカ側から日本に参加の要請があるといった場合、私はこれは断るべきだと思うんですね。というのは、断らざるを得ない状況である。ただ、技術協力とか新しい先端技術の開発等についてのSDI関係外、そういうふうなタイトルではないものについてはこれは多少の道が残っているんじゃないか、こういうふうに思うわけです。最近になりますとアメリカ側の方でも、例えば各大学の研究者がSDIに協力をしたくないというので拒否をするといいますか、研究に協力しないという署名運動をやっているんですね。これがMITですとかあるいはコーネル、タフツなんという大学で随分広がってきておりますから、そういう面で米国内においてもSDIに対する多少の批判というものがあるわけでありますが、日本の場合は当然SDIに参加するか、協力するかとなれば私は拒否するべきである。ただし、恐らく言ってくるであろうしもう既に言ってきたんじゃないかと思いますが、研究に対して参加しないかということですね。これは一歩下がったといいますか、やわらかくなったような言い回してありますが、その点いかがなんでしょうか。もう既に来ていると伺っております、その要請については。ところが、日本側としてそれに対してどう対応するかというものについては、きのうの外務大臣の発言ですとまだ決めていない、そんなものはまだ後だと、こういうことをおっしゃっておるんですが、しかし精神的といいますか、一つの我々の方針として一体どういう方針を貫いていきたい、参加するしないというよりも貫いていくべきだとお考えでしょうか。その点安倍外務大臣から御意見を聞かせていただきたいと思います。
  126. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) これは極めて重要な決定でございますから、日本としてはいろんな角度から検討し尽くした上での結論でなきゃならぬ。今お話しのように、日本のいろいろな法制とかこれまでの政策の基本であるとか、さらにSDIそのものの実態であるとか、各国の反応であるとか、そういうものの実態を十分知り尽くして結論を出すべきじゃないか、こういうふうに思っておりまして、今いろいろと調査団を日本が受け入れたり、調査団を派遣したりしまして目下その辺のところを研究しておりまして、いつの時点で結論が出るかということは今ここで言える段階でごいませんが、いずれにしても自主的にそして慎重に検討して結論を出したい、こういうふうに思います。
  127. 松前達郎

    ○松前達郎君 いずれにしても、SDIという名のもとに協力要請が来た場合、多分来ているんじゃないかと思いますが、これに対してはさっき申し上げたように、我が国の今後の宇宙開発の姿勢としては平和目的に限るんだということは尊重していかれるつもりかどうか、この点をひとつお伺いしたいんです。
  128. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) もう既にSDIの研究に対する協力要請は来ております。これに制して我が国としてどういう態度をとるか。日本は御承知のように理解というところにとどめておるわけでございます。これを研究に参加ということになると新しい決定になるわけでございますが、この点について、先ほどから申し上げますように、さらに自主的に慎重に検討して結論を出したい、こういうふうに思っております。
  129. 松前達郎

    ○松前達郎君 国会決議は尊重される、宇宙開発は平和目的に限るという国会決議ですね、その点はいかがでしょうか。
  130. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) もちろん国会の決議というのは、これは政府としても尊重してまいらなきゃならない、こういうふうに思います。
  131. 松前達郎

    ○松前達郎君 時間がありません。次に日中関係で一つだけお伺いしておきたいんですが、日中原子力協定ですね、これに関しての経過と、それから今後国会に提出をされる予定もあるんじゃないかと思いますが、その辺ひとつお聞かせいただきたいと思います。
  132. 松田慶文

    説明員(松田慶文君) お答え申し上げます。  二年前、五十八年の第三回日中閣僚会議におきまして原子力の平和利用分野における協力を推進しようという政府間の合意が成立いたしまして、これを受けて同年の十月から合計五回の交渉を行ってまいりました。この結果本年七月にこの協定の内容につきまして合意が成立いたしまして、七月五日北京において仮署名、引き続きまして七月三十一日、第四回日中閣僚会議の機会に安倍外務大臣と呉学謙外交部長との間で署名が行われました。  これを受けまして現在日中双方でこの効力発生のための国内手続を進行中でございますが、私どもの側におきましては、この協定につき早急に国会の御承認を賜るべく次の通常国会に御審議を賜るよう準備を進めている次第でございます。
  133. 松前達郎

    ○松前達郎君 日中の原子力協定といいますか、これに関しては次の国会国会承認という段取りにしたいということですね。  そのほかの国とは別に新たなそういった原子力関係の協力の動きというのはございませんか。
  134. 松田慶文

    説明員(松田慶文君) 御質問日本とその他の国と了解いたしますが、現在我が国米国との間に現行原子力協定の改定交渉を進めてございます。これが中国の次の唯一の案件でございます。
  135. 松前達郎

    ○松前達郎君 それじゃ時間が来ましたのでこれで終わらせていただきます。
  136. 黒柳明

    ○黒柳明君 外務大臣、国際的な自然災害の発生について外務大臣が災害救助隊みたいなものの御構想をお持ちという一部報道がありました。あるいはまた、事務当局に指示をしたのか、あるいは関係各省とも協議もと、こんなことも出ておりました。メキシコ、コロンビアはいざ知らず、お金だけではだめなんだ、こういう考えもお持ちだと、こんなことも報道されておりましたが、外務大臣、そういう国際自然災害に対する日本としての経済的援助だけじゃなくて、実際的なそういう救助隊みたいな構想をお持ちでしょうか。
  137. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) これは、実は衆議院の外務委員会で、渡部一郎議員からの質問で、コロンビアの災害とかメキシコの災害等を振り返ってみると、日本は、援助は相当思い切ってやっているけれども、非常にタイミングでおくれる点があるので、やはりもっとめり張りがついた、本当に感謝されるようなそういう俊敏な体制をつくる必要がある。それにはやはり事前にそうした体制を準備していく必要があるんじゃないか、こういう御指摘がありました。実は、私もかねがねそれを考えておりまして、これは、日本の場合は、医療の方は前から国内のお医者さんでJICAに登録をして、いつでも出動体制ができるようになっておりますけれども、その他は何にもできておりません。ですから、まとまってすぐ行くということがなかなか難しいわけでございますので、やはりJICAを中心にひとつ何か総合的な援助体制を平生からつくっておって、そうした海外に災害があるときは組織してさっと行ける、こういうふうなことができないものかということで、今、実はJICAに指示しまして検討を進めておるわけです。具体的にどうしようという答えはまだ返ってきておりませんけれども、鋭意検討している、こういうふうに承知しています。
  138. 黒柳明

    ○黒柳明君 当然、外務省内部だけの検討ではこれは済まない問題で、各省庁との検討もあるかと思いますけれども、今までの対応は、必ずしも速やかに行われた、こういう感じではないわけでありまして、フランスやスイスは、それなりのものを常設で持っているわけですから、速やかな対応はして当たり前だと思うんですけれども、我が国の場合には、そうじゃなくても経済大国でいろんな批判を受けているわけでありますから、そういう国際的な災害、困ったところには速やかに、ほかの国以上に対応しなければならない基本的な責任がある、こういうふうに思うので、内部だけの検討も当然ですけれども、外務大臣がかねてからのそういう考え、これはまた政府の特別機の保持ということにも当たるかと思うんですけれども、そういうことを含めまして、かねてから検討しているというふうなことじゃなくて、災害ですから、外務大臣の具体的構想、日本政府の具体的な対応を待たずして、またどこかに出てくる可能性がありますものですから、ひとつ当面そういうふうなことで、真剣にお考えをお持ちの閣僚の方が、外務大臣が速やかにこの対応策を、政府内部にこういうものをつくって、今までの懸案、今の政府機の保有等も含めまして、各省庁との連絡も含めまして、至急こういう準備委員会みたいなものを設立して、それで対応していかなきゃならないんじゃないか、こんなふうに思うんですけれども、実力閣僚としてこういう考え政府内部に普遍していくなんということは考えませんか。
  139. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) これは、実はJICAでやはり経済協力もやっていますし、そして技術援助、災害援助等もやっていますから、JICAを中心に、外務省だけじゃなくて各省と協議をしてやった方がいいんじゃないかということで、今JICAを通じまして各省との――実は消防庁なんかとの協議もやらしておるわけでありまして、ただ、問題はやはり予算の問題がありまして、これから予算編成に入りますし、そういう中で、私も、予算措置を必要とするならばどの程度やっていけるか、しかしなかなか厳しい財政の状況ですから、新しいそうした面がなかなか難しい点もあると思います。  特に、例えば航空機等については、これはその他の用務も含めて、専用機等があればもっと機敏な措置がとれるわけです。しかし、これなんかも予算措置ということになると、果たして早急にできるかどうかということについては、私も自信を持っているわけじゃありませんけれども、いずれにしても、やはり構想はいい構想ですし、何とかこれはひとつ実現する方向で努力は重ねていきたい、こういうふうに思っています。とにかく、芽を早く出さなきゃいかぬ、こういう考えで今進めておるところです。
  140. 黒柳明

    ○黒柳明君 当然、予算編成がもう目前に迫っているわけで、概算の要求は各省しておりますけれども、外務大臣、積極的に、どのぐらいかかるかわかりませんが、そんなに大した金額でなくて当初スタートすればいいわけですから、そこらあたりの予算の獲得にひとつ力を入れていただきたい。  それから、当然その予算云々待つまでもなく、かねてから自衛隊が、こういう医療活動あるいは国連のいろんな監視的な活動、要するに、鉄砲をシャベルにかえて、スコップにかえてと、こういう考えについて賛否両論が今まであったわけでありますが、当然プロ中のプロですし、予算の裏づけがあるわけですし、いついかなるときでもすっ飛んで行ける立場にあるわけですし、そういう面において、なかなかこれが予算の問題で進まないというようなことと相まって、裏腹のこととしてこの自衛隊の派遣なんていうことはもう大臣の頭の中にありますか。
  141. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) これは、たしか自衛隊法の改正を伴うんじゃないかと思うのです。ですから、その辺がまた国会の方の議論とかあるいは御協力も願わねばならぬと思いますが、個人的に考えますと、平和のためのそうした自衛隊員の派遣、本当に純粋な平和あるいは災害対策、そういう点については、これは一つの大きなやはり課題として、政府の中でも、あるいはまた国会の中でも論議していただきたいものだ、こういうふうに思います。
  142. 黒柳明

    ○黒柳明君 かねてからこれは議論になっていたところで、基本的には野党は反対、与党内部――自民党の中でも賛否両論ということが今までの経緯ですけれども、やはりこういう国際自然災害なんかに現実に直面してみますと、果たして、ただ単に自衛隊法があるから、それで賛成だ反対だと言っていていいのかなという嫌いもないではないというふうな感じもしますが、これは後の問題になるかと思います。  それで、日ソの問題ですけれども、先日来日しました世界経済国際関係研究所の所長プリマコフさん、これはソ連の対外政策のブレーンが集まっているところだと、こう言われております。私もかつて会ったことがございますけれども、あの人が、マスコミとの対話の中で北方領土問題について、正確にどう発言したかちょっとあれですけれども、要するに日本政府が今までと同じような態度で出るならば、これはソ連も、もうわかり切ったことであろうなんて漠然とした抽象的な発言。ただし、ひっくり返してみると、日本政府が変わったといっても、何も卑屈になって変わったという意味じゃありませんけれども、日本政府の態度が変わればソ連も変わるんじゃないか、こういうような、ただ単に変わるといったって、日本政府変わりようがないよと、こういう意見も、嫌いもあるかと思いますけれども、その基本的なものは、要するにゴルバチョフ政権というのは必ずしも従来のかたくなな姿勢じゃないんだぞと、こういうことを暗示したような発言もしておりますけれども、先ほども論じられましたけれども、これはもう避けて通れない。しかし、避けて通らないけれども、それだけを飛び越えなきゃゴールがないんだということでもないわけでありまして、いろんなコースのゴールがあるわけでありますから、いわゆるそういうものが解決できるような友好的な雰囲気、条件、こういうものもこちらが主体的につくる、こういうことも必要なんじゃなかろうかというような感じがするんです。総理大臣が、戦後四十年間の清算と言って行革やいろんな公社公団の解体、民営化なんかやっておりますけれども、この日ソ問題の解決なくして戦後の解決はないわけであります。何か私、失礼ですけれども、もう中曽根政権の中で、国内的な問題についてはプロジェクトを組んだり、相当前向きに、一応らしくやっているんですけれども、この外交問題、なかんづく中国が終わってソ連の問題については、何か来たときに任せて対処するというような感じですよ。もうちょっと前向きに、一生懸命に取り組んでいる姿勢をもっと具体的な行動にあらわす。ということは、中曽根さんはすぐ自分のブレーンを集めて何か審議会をつくる。もう安倍外務大臣も、戦後四十年の総決算は日ソ問題の解決なんだと、中曽根政権と次期政権と張り合うぐらいな気持ちでブレーンを集めて、それでソ連問題を徹底的に研究して対応するとか、難しい問題にせよ、何かそういう具体的な行動、積極姿勢に、漠然とした私の意見で恐縮ですけれども、欠けているんじゃなかろうかなと、そんな嫌いがするんです。  一月十五日からの会談を、先ほど午前中には定期会談に持っていくんだ、それがまず当面の問題だと、これは私もそうだと思うんです。だけれども、その根本を貫く姿勢は今がやはり一つの潮どきであり、チャンスだと思うんですよ。向こうの政権がかわって国際的に変化があるんだろう、あり得る、こういう判断が強いわけですね、柔軟な姿勢がとれる、アフガン問題もと。その中で日ソ問題も別な範疇じゃないと思うんです。こういうときこそ、従来からハト派外交をやっている外務大臣日ソ関係を打開して、その次の政権はおれなんだと、このくらいのファイトをひとつここで示すために一月十五日の外相会談を迎えてほしいなと、フレー、フレーと外野から応援する者にとってはそんなような感じもするんです。抽象的な発言ですけれども、どうですか、外務大臣
  143. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) これは、私は一つの確かにチャンスだと思いますし、私もファイトを持ってこれに取り組んで、これまでもきましたし、いきたいと思います。  日ソ関係、この半年、ゴルバチョフ体制ができまして急速に変化が出ております。ですから、例えば租税協定だとか貿易支払い協定等は調印寸前というところまでいきましたし、それから、文化協定ももう最後の交渉に入っていますから、こうしたこれまでの懸案が解決の可能性が非常に出てきた。それから、先ほどからお話があった貿易、経済の面も、これはやはり今後の空気次第では相当進展していくんであろう、こういうふうに思っておりますが、日本としまして、領土問題は、これだけは避けて通れない。これは日ソ間にも確かに、ここで今議論をすることよりも、何か実りを持たせるということが大事でしょうが、田中・ブレジネフ会談においては、少なくとも未解決の懸案は解決して平和条約を結ぼうという合意があったわけですしね。ですから、私は、ソ連日ソ関係を真の友好関係に持っていくには、やはりこの問題というものにソ連自体も取り組んでいただかなきゃならぬ、こういうふうに思っています。日本は避けて通れない問題だということでこれは持ち出すことはもう当然であります。そういう中で、全体として、しかし何とか日ソ間の今度の会談というものを実りあるものにして、そしてこれからの定期会談への道筋を確立していく。米ソの関係等、いろいろと改善が進んでおりますから、そういう状況もあって、やはり私は今回の会談を今までにない明るい見通しを持ってこれに取り組んでいけるんじゃないか、明るい見通しも持ち得るんじゃないか、こういうふうに思うわけです。しかし、相手のあることですから、これから会談をしてみなきゃわかりませんが、私はそういう多少楽観的な気持ちでこの問題に一生懸命取り組む、そういう考えております。
  144. 黒柳明

    ○黒柳明君 領土問題は当然話に出るんでしょうし、SS20の問題だってまた出さざるを得ないでしょうし、この問題でも安保絡みで、また向こうは安保があるから、あるいはこちらはSS20が脅威になっているからと言ったんじゃ、これはまた領土問題と同じように前進がないところか全く改善が見られないわけです、手法を変えるといっても、同じ問題をいつまでも温めているわけですから。ですけれども、そこのところは、やはり英知を集めて、向こうの姿勢が変わったらこちらの姿勢も変えていくことが今回の外相会議の大きな基本姿勢だと思うんですけれどもね。SS20の問題、この問題なんかも当然話題に出して、向こうどの応酬の中に入ってくるんじゃないんでしょうか、外務大臣いかがでしょうか。
  145. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) これもやはり国際情勢とか、いわゆるアジア・極東の情勢等について意見交換をする場合に、日本の立場もありますし、ソ連の立場もあろうと思います。そういう点はやはり率直に出し合って議論した方がいいんじゃないだろうか、当然そういう意味では一つの議論の要素であろう、こういうふうに思います。
  146. 黒柳明

    ○黒柳明君 先ほどの南アのアパルトヘイトの問題ですけれども、あそこに日本の企業が五十四社ですか、今ありますね、通信社が一社ありますからね。それで問題なのは、せんだって国連の反アパルトヘイトの委員長、ちょっと名前は忘れましたが、日本政府のやり方はなまぬるい、こういうふうに言って、帰りましたですけれども、往復で三十五、六億ですか、貿易がありますね。これはアメリカに次いで第二位。ここらあたりがやっぱりアメリカ、ヨーロッパ、アジアの貿易摩擦に対して日本政府がクレームをつけられると同じようなことになっているんじゃないかと思うんです。  例えば、これは五十四社の一つずつ挙げてもどうかと思いますけれども、ある大手の商社の内部社報というんですか、こんなことが書いてあるんです。いずれの国もそれぞれの国内事情を有しており、アパルトヘイト政策も南アの国有の特殊性である、我々もそれを理解せざるを得ないとか、某電機メーカーは、内政不干渉という外交政策の基本理念があり、南アのアパルトヘイトもそれに準じて考えるべきだとか――民間民間でもうけ仕事ですからあれしなきゃなりませんけれども、政府の、先ほどアパルトヘイトを徹底的に私たちはもうなくすんだ、こういう姿勢が、一、二勇み足があって、領事が変なことを言ったりなんかする姿勢にあらわれているわけですけれども、やはり貿易高が三十五、六億という多量な経済関係を持っているその日本の出先の商社がアパルトヘイトについて是認するような発言をしているということについては、まあこれは先ほど通産省が十月にはコンピューターあるいは金貨の云々なんということをおっしゃいましたけれども、こういうところに外務省が視点を合わせて、それで出先のいろんな行動を監視する中で監視する点としてやはり注視していなきゃならないんじゃなかろうかな、こういう気がするんですが、いかがですか。
  147. 三宅和助

    政府委員(三宅和助君) 先生御指摘のとおり、各商社の中での情報は私たち必ずしも個々に承知しておりませんけれども、ありとあらゆる機会をとらえまして現在の日本政府の立場、それから世界の世論というものを私たちは説明してまいりまして、私自身も最近商社の代表を集めまして実は東京において説明したところでございますし、また、中近東アフリカ局の久米参事官が現地に行きまして、現地の商社の代表に対しましても、日本政府の認識、基本的な立場というものを十分説明してまいりましたが、今後ともありとあらゆる機会をとらえまして周知徹底方を図っていきたい、こう考えております。
  148. 和田教美

    ○和田教美君 私も日ソ関係の改善の問題について少しお尋ねしたいと思います。  十一月の米ソ首脳会談、これをどう評価するかということについてはいろんな見方がございますけれども、私は明らかに新しいデタントヘの出発点だというふうに評価しております。それだけに日本外交として今取り組む一番の大きな問題は、来年の一月のシェワルナゼ外務大臣来日を受けての日ソ関係の改善であるということは言うまでもないことだというふうに思っております。ところが、どうも日本の国内には、米ソの次は日ソだ、つまり米ソ関係の改善が日ソ関係改善に連動するというふうな考え方は甘いんだという見方が依然としてあるわけです。そして、その例として、例えば最近原子力巡洋艦のフルンゼが太平洋艦隊に配備されたというふうな事実、あるいはまた、SS20の問題などを取り上げて、軍事的な緊張関係は依然として続いているんじゃないかというふうなことを強調する人もあるわけでございます。  私は、この点については、中曽根総理が、とにかくソ連側に対話の機運が生まれつつある、これを受けて、米ソの情勢の変化に合うように動かすのが合理的であって、日ソ関係打開のチャンスが来ているというふうな認識をお述べになったこともありますし、今の答弁でも、外務大臣は、確かに今度のシェワルナゼ外相来日は打開のチャンスだということをおっしゃっているんですが、その点は私は、外務大臣や総理大臣の見解に全く賛成なんですが、その辺について、改めて基本的な認識をお尋ねいたしたいと思います。
  149. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 私も、やはり米ソ首脳会談のいい雰囲気が日ソ外相会談に反映されるということを期待しております。しかし、日ソ間には、御承知のような領土問題もありますから、それはまた、おのずから米ソ首脳会談とは違った面もあるわけです。しかし同時に、ソ連日本との改善を非常に強く求めておりますし、日本もやはりこの際改善をしたいということでありますし、領土問題といいましても一挙にこれを解決して平和条約をすぐ結べるというようなことを期待できる状況に私はないと思うんです。しかし、日本の基本方針は変えるわけにいかない。これはしかし、そう性急に、それじゃすぐ決着するということでもないと私は思います。  ですから、今度の会談というものは、こうした問題も十分話し合うとともに、幅広く、その他二国間の問題、さらにまた国際情勢等を話し合って、十分お互いの意思の疎通を行って、そうして、今度の会談が、いわば再開第一回目の会談だと、これから連続して続いていく定期外相会談への一つのスタートだと、そういうものに持っていくことが、いろいろな面についてこれからの関係を進めていく大きな雰囲気づくりになっていくんじゃないだろうか。外相会談がとぎれておるという状況では日ソ間で改善の道を探ろうと思ったって、それはなかなかできないわけですから、ある意味においては、日ソ外相会談の定期的な会談の実現というのが、非常に私は、その辺ではポイントだと思うんです。そこからいろいろな面が出発していくであろうと思うんです。  しかし、これからどういう方向になるかということについては、これは外相会談をやってみないとそこはわからぬ点も随分ありますし、確かにゴルバチョフ政権になって、私もシェワルナゼ外相とも会いました。今までのグロムイコさんとはやはり変わった雰囲気で、私自身からすれば非常に話しやすい相手だというふうな感じがします、私も同年配ですし。ですけれども、これはこれから会ってみていろいろ話したことによってこれからのいろいろな展望が生まれてくるんじゃないか、こういうふうに思います。
  150. 和田教美

    ○和田教美君 北方領土問題が避けて通れない問題だということはまさにそのとおりだと思います。さっきも外務大臣が触れられたように、ブレジネフ・田中会談の際にブレジネフが、とにかく領土問題は未解決の問題ということを認めたわけですから、少なくともその線まで押し返すということは絶対に必要だと思うんですけれども、しかし、かといって領土問題だけで、この大前提が解決を見ない限りもう一切だめだというふうなことはこれはまたかたくな過ぎる。そこで、さっきも出ておりましたいわゆる入り口論というふうなことではなくて、やはりそれ以外の文化、経済あるいは科学技術の問題等いろいろな問題の懸案を要するに進めていくということと、並行という言葉外務大臣は嫌われるようだけれども、そういう中で領土問題についても解決の手がかりをつかんでいくという外交戦略ということはあり得ると思うんですね。  その点に関連して、どうも先ほどからの議論を開いておりまして、中曽根さんはこの問題について非常に積極的で、包括的に話し合いをしていくと、こういうことをおっしゃっているわけですね。その包括的な話し合いという解釈について、どうも今の外務大臣見解と中曽根さんの見解にはニュアンスの違いがあるように思うんですね。外務省の事務当局がかなり足を引っ張っているというか、そういう感じを持たざるを得ないわけなんですけれども、例えば、領土問題と同列に置くということは誤解を与えるとか、そういう考え方ではないかと思うんですが、果たして、外務省と首相官邸との間にはそういう見解の違いはないんですか。
  151. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 私も今、日ソ問題についてまだ総理とも話し合っておりませんけれども、基本的な差はないと思いますね。真の日ソ友好関係というものを樹立するには、やはり領土問題が解決して平和条約が結ばれなければ真の日ソ関係は生まれないと、これはそのとおりだと私は思っておりますし、総理もそれを、いや、それは違うなんと言われる立場に私はないと思いますね。  ただ、だからといって何もしないということじゃありませんで、今文化協定も進んでいますし、租税協定だとかあるいは支払い協定だとかをやりましたし、日ソ間には貿易も厳然として存在しているわけですから、それはそれで進んでいっているわけですよね。これはまた、今後こういう空気の中ではこれを拡大していくことはできると思いますし、さらに改善する点も相当広いと思います。  しかし、私が言っているのは、本当に日ソ関係というのは、例えば日中関係のように体制が違ってもこういう関係に入れるというのは、やはり領土問題というものが解決されなければ入れないんじゃないか、これはもう外務省の影響とかそういうことじゃなくて、私自身も全くそれはそのとおりだ、こういうふうに思っております。包括的なというのは、総理大臣はよく言われるんですけれども、これは何でも包括的と言われるので、総理大臣が会談するときは包括的に会談するのだろう、こういうふうに思っているんですがね。
  152. 和田教美

    ○和田教美君 それで、一月の日ソ外相定期協議で、今の論議を聞いておりますと、文化協定はひょっとするとこれは仮調印ぐらいまで行けるかもしれぬという期待をされておるようですけれども、それ以外に何か特に前進をするというふうなことが考えられるわけですか。例えば、経済の関係で言えば工業用チップパルブ材の開発協力プロジェクトの契約の取り決めというものが最近できましたね、民間で。しかし、例えば長期経済協力というふうな問題については、向こうはかなり長期間の経済協力協定を望んでおるわけですけれども、こちらは領土問題との絡みでそれはだめだという態度を今までとってきたわけですが、そういう問題についても新しい前進があり得るのかどうか、その辺はいかがですか。
  153. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 私は、とにかく外務大臣同士が会って、長時間にわたって国際問題、二国間の問題を話し合うということが極めて大事なことじゃないか。そういう中で、おのずから意思疎通というものも生まれてくる面もある、また違いも明らかになる点も私はあると、こういうふうに思います。そういう重大な意見の相違はあるとしても全体的にはいい空気、そうして二国間の関係が改善されていくことにつながっていくことを期待しているわけです。  これは、例えば米ソ首脳会談でも、SDIについては首脳の間は我々が見ておりましても全く対立して、見解の相違、対立ということですけれども、やはり二人の間でいろいろ二国間の改善というのは相当具体的に進んだわけですし、その他の点でも随分意見の一致したところがありますから、重大な差違は残しながら、両国の関係、軍縮だとかその他の面で相当前進があったということですから、日ソの場合だってそういうことはやはりあり得ると、そういうふうに思っております。それはそれでいいんじゃないかと思っています。  ですから、話し合って、まあいろいろの議題が出ると思います、経済の問題、貿易の問題、あるいは今基本的な、我々がなさなきゃならぬ領土の問題、あるいは今の例えば国際情勢の中で、これはゴルバチョフさんが提案しているアジア安保、これなんかブレジネフさんの提案したものとどう違うのか、我々もその辺のところを知りたいわけですね。ですから、そんないろいろな問題をやっているうちに、日本もある程度理解できる点が出てくるかもしれませんし、これはやはり会談をするということが非常に大きな意義があると思いますね。問題が続けば次の会談に続けていけばいいんだからと、こういうふうに思います。
  154. 和田教美

    ○和田教美君 今度の定期協議で、ソ連側に対してゴルバチョフ書記長の訪日ということを要請されるというふうな記事が出ておりましたけれども、それは事実ですか。それからもう一つ、中曽根総理もソ連に行ってもいいということでなかなか意欲的なんだけれども、今度はゴルバチョフさんが先に来て、それから中曽根総理が行く番だなんて、例によって順序ですね、こういうことを非常にやかましく言うのか、それにはこだわらずに、場合によっては中曽根さんが先に行くということもあり得ると考えておるのか、その辺はどうでございますか。
  155. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) これは、私はゴルバチョフさんに日本に来てもらいたいということについては、ブレジネフさんのとき以来の日本が招待しましてずっと今日まで来ている継続案件だと思っていますから、ですからゴルバチョフさんにも来てもらいたいという気持ちを持っておりますが、どういう形で表現するかは相談してからだと思いますが、ゴルバチョフ書記長もフランスに行かれましたし、それから今度はワシントンに行かれますし、イタリーにもまた来年行かれるわけですから、そしてゴルバチョフさん自体もやはり日本というものを非常に重要に考えておるということは演説にも明らかになっておりますから、そういうことを考えますと、相当意欲的に世界各国を訪問しようという意欲を持っておられるんじゃないか、気持ちは持っておるんじゃないか、そういう感じを持って、日本に来ていただくことも決して不可能な問題では私はない、こういうふうに思いますね。総理の訪問ということもそれは全然否定するわけでもありません。しかし、これはあくまでもやはり日ソ外相会談が前提だと思うんですね。この前提で今後の展望が開けてくるかどうかということじゃないだろうか、こういうふうに今のところは見ておりますがね。
  156. 和田教美

    ○和田教美君 アフガニスタンからのソ連軍の撤退の可能性という問題が米ソ首脳会談以来米側あたりからかなり情報として流れてきておりますね。特に私が注目しているのは、この間来日したラジブ・ガンジー・インド首相が滞日中の記者会見で、ソ連はアフガニスタンから手を引く用意があると信ずる、そのためには米側の保証措置が必要だが、私は米国ソ連軍の撤退と保証を同時に話し合う用意があると思うというふうなことをかなり自信を持って記者会見で述べているわけですね。米側のシュルツ国務長官の発言などもありますけれども、この撤退問題ということについては、外務省としてはどういう情勢判断、あるいは情報を得ておられるのか。それとまたその場合の条件ですね。そういうことについてどういう分析をされておるのかお聞かせ願いたいと思います。
  157. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 我が国の基本的な立場はアフガン問題の解決にはやはりソ連軍の全面的な撤退、それからアフガニスタンの政治的な独立及び非同盟としての立場の回復、アフガニスタン国民の自決権尊重、アフガニスタン難民の安全かつ名誉ある帰還の四条件が満たされる必要がある、こういう立場であります。我が国はこれまでもソ連に対してこうした解決の必要性を訴えるとともに、国連の場においても機会をとらえて立場を明らかにさしておるわけですが、そういう我が国の立場は立場として、今米ソ間で、首脳会議でアフガン問題が相当長時間にわたって議論されたということも聞いておりますし、多少その内容についても情報も持っておるわけですが、ラジブ・ガンジーさんの記者会見でもそうですし、私もお聞きをしましたが、ガンジーさんは相当自信も持っておられるようです。これはソ連に行かれましたし、いろいろとその辺で感触を得ておられるんじゃないか、アメリカとの関係がありますし、そしてアメリカからのいろいろな情報も伝わっておるわけですし、やはり何らかの動きが私はことし米あるいは来年ということにかけて出てくるんじゃないだろうか。これが完全にそれじゃ解決できるかどうかということになると、それは今私が申し上げました日本の方針もそうですし、米ソ間で解決されるということになると、米ソが合意をする、そして、今私が申し上げましたような条件が相当満たされるということでないと解決にならないんじゃないだろうか、こういうふうな感じを持っておりますが、動きは私は出てくるんじゃないか、こういうふうに思っております。
  158. 和田教美

    ○和田教美君 先ほど午前中も質問が出ておりましたけれども、JICAの一部門である青年海外協力隊、この活動は私は非常に評価しているわけなんですが、非常に不幸なことに、最近アフリカでバス衝突事故で六人の隊員が亡くなったということがございました。まことに遺憾なことだという、非常に哀悼にたえないことだと思っております。  そこで、今度の事故を機会にやはり私は青年海外協力隊員の現在の制度、ボランティアということを中心にしているわけですけれども、こういう万一の場合の補償制度というふうなものが果たして十分なのかどうか、あるいはまた、今の協力隊メンバーへの待遇が十分であるかどうかというような問題をもう一度考える機会じゃないかというふうに思っておるわけです。例えば犠牲隊員に対する補償措置ということで見ますと、団体生命保険、これは一番上限が三千五百万円だそうですが、それに労災保険が仮につくとして一千万ちょっと、それがなかった場合には共済給付制度九百三十万円ということなんで、大体全部で四千五百万から四千六百万ぐらいということになるんだそうですが、それだけで十分なのか。これは要するにいずれにしても団体生命保険にしてもあるいは共済給付制度にしても半分の掛金は隊員が掛けているわけですから、自分で掛けた保険を自分がもらうという形になるわけで、国として何か見舞い金というふうなものの制度考えていく必要がないかどうかということが一つでございます。  それからもう一つ、きのうの朝日新聞の夕刊にも大きく出ておりましたけれども、「身分保障に泣く青年海外協力隊」という記事が出ておりましたが、要するに二年間の任期で出かけていく場合に、民間企業から応募する人は大体ほとんどが一度退職せざるを得ない。それで、五十九年度の例によると、引き続き休職扱いで海外協力隊に出かけていくという人はわずかに一七%にすぎなかった、あとはほとんど退職ということになったということなんですが、午前中の答弁でも、二年間の任期を終えて帰ってきた人に対する再就職という問題については非常に一生懸命努力しているというお答えでございましたけれども、問題は前よりもいいところに果たして全部就職できるかどうかというような問題もあるわけで、その辺のところはもっと積極的に対策を考えなきゃいかぬのじゃないか、それがやはり青年海外協力隊員の一番の不安の種じゃないかというふうに思うので、その点はどうでございますか。
  159. 藤田公郎

    政府委員藤田公郎君) 委員の御指摘になりました第一の点でございますが、今御言及がございましたように犠牲になりました青年海外協力隊員に対しましては、保険という形、これは弔慰金という性格も持っておりますけれども、最高額が死亡された場合に三千五百万円まで、それから業務上の事故という認定がございます場合には労働者災害補償保険、俗に申します労災保険に特別加入いたしておりますので、この適用では先ほどおっしゃられた金額の適用がございます。仮に業務上の災害であるという認定が得られません場合には共済の給付ということで若干金額的には少なくなりますけれども補償を行うという制度を維持しております。もう少し災害がありました場合の補償についてより優遇する措置をとるべきではないかという委員の御指摘かと思いますけれども、その点御示唆を踏まえまして検討させていただきたいと存じます。  それから、第二番目の身分保障の点でございます。再就職の状況、まあ新聞にあらわれました記事で、いわゆる休職扱い、現職に復帰する道というのがなかなかないではないかという御指摘でございます。確かに青年協力隊帰ってまいりました後現職に復帰ないしは新しい職場につくという形で、数字の上では一年間で九八%がいわゆる職につくという形にはなっておりますが、やはりもう少し現職に復帰するという制度面での努力を行うべきではないかという御指摘、まさにそのとおりだと存じます。  国家公務員につきましては派遣法、国家公務員の国際機関への派遣法でございます、この適用への努力、また地方公共団体につきましては、四十七都道府県のうちもう既に四十四県で休職条例というものを制定していただいております。そのほか民間及び公社、公団では、休職という現職に復帰する道をつくっていただいておりますのが、NTT、日産、国鉄等十二社、それから制度化は行っておりませんが、休職措置の適用というものを認めてくだすっている企業、団体が三百三十九社という状況になっておりまして、私どもも今御指摘がございましたように、新たな就職の道の開拓もさることながら、やはり基本的には現職に復帰する道というものがきちんと開かれているというままでの隊員の派遣というものができますように制度面での改善をお願いし、かつ図ってまいりたいと思っています。
  160. 和田教美

    ○和田教美君 これは黒柳さんが既に取り上げられた問題で詳しく申し上げませんけれども、海外における大規模自然災害に対する国際救助隊の設置の問題ですが、これは公明党も衆議院で盛んに強調した問題なんですが、安倍外務大臣も非常に前向きにこれを取り組んでおられるという答弁がございました。どうもしかし、JICAを中心に考えるということで、具体的な話になると、六十一年度予算で果たしてどの程度できるか、ちょっとあやふやなようなお話もございましたけれども、もう少し具体的に大体どの程度の規模のものをどういうふうにやっていこうとされておるのか、大体の構想ができつつあるんだろうと思いますが、それをお聞かせ願いたいと思います。
  161. 藤田公郎

    政府委員藤田公郎君) 先ほど外務大臣の御答弁にございましたように、救急医療チームにつきましては既に国際協力事業団、二百六十名のお医者様及び看護婦さん、その他放射線技師等々の方が登録をしてくだすっておりまして、経費としましては四億円がこのために計上されております。この予算及び人員を用いまして、昨年末のアフリカの飢餓にあらわれました経済災害、それから本年のメキシコ及びコロンビアに、対する緊急医療チームの派遣を行っております。  それから、医療にとどまらず、いわゆる災害救助隊という形での検討を行うようにという外務大臣の御指示が先般コロンビアの災害を機にございまして、現在消防庁と具体的な救助隊の派遣の手法、どういうような形で行っていくか、それから先ほども御質問ございましたが、輸送手段でございますが、どうしていくかというような詰めを行っております。これは国際協力事業団に現実には予算面、それから何と申しますか具体的なオペレーションはお願いをすることになると思いますが、実際の企画、立案、対応、派遣の決定等は、当然のことながら政府外務省で行うということになりますので、すべて国際協力事業団に任せっきりということではございません。
  162. 和田教美

    ○和田教美君 ぜひ来年度予算で相当額を具体化するように、それからさっき輸送の問題、確かに問題だと思うんですが、これはやはりとりあえずは民間機をチャーターして持っていくとか、そういうことも考えていいことだと思うのでお願いをしたいと思います。  そこで次に、もう時間もたってまいりましたから、これまた午前中の石井委員のお話にあったことですが、ODA予算来年度概算要求と円高調整の問題、これについてひとつお聞きしたいんですが、大蔵省はどうもこのODA予算の六十一年度概算要求に対して、とにかく概算要求を出したときの基準レートが二百二十七円ですから、それよりも大体二割方円高になっているんだから、その分だけ要するに割り引くというふうな考え方だという報道が出ておるわけなんですが、先ほどの局長の答弁ですと、そういうつまり恩恵を受けるのは大体六分の一だと、それ以外はやはり円建てなんだからこれをさわられちゃ困るということで調整を進めているというお話でしたけれども、その辺は大蔵省もそれでいいということなのか、大蔵省の方も来ておられるのだろうと思うんですけれども、外務省見解と大蔵省の見解が何か対立しているような記事が出ておりましたので、双方のお話をお聞きしたいと思います。
  163. 藤田公郎

    政府委員藤田公郎君) 現在の急激な円高の状況にかんがみまして、七カ年中期目標総額明示は四百億ドル以上というドル表示であり、かつ七年目の倍増ということもドルで表示されておる。したがって、ドルでの国際的な意図表明であるので、円の価値が上がることによってそれだけ円での負担が軽くなるということは、先ほど申し上げましたように、ドルで表示されているものないしはドルで約束している部分につきましてはある程度の適合性はあるかと存じます。  しかしながら、先ほども御説明申し上げましたようにODAの対GNP比の改善ということも中期目標では同時にうたっておりますし、それからまさに委員御指摘のとおり事業量のかなりの部分が、六分の五程度は円で表示されているということで、その分については我が国の政治的な意思を示すという意味からも一般会計におけるかなりの程度の増加というものが必要であるということで、今財政当局とお話をしているという状況でございます。まあ予算の折衝でございますので、財政当局は当然のことながら一番厳しい線をまず冒頭打ち出してこられますし、私どもは第一線で折衝いたします立場でございますので一番激しい立場で折衝を行っているというのが今の状況でございます。います。
  164. 秋山昌廣

    説明員秋山昌廣君) 今藤田局長の方から答弁がありましたように、実は芸を九月にODAの第三次中期目標が設定されたわけですけれども、その冒頭に「政府は、我が国が厳しい財政事情の下で今後ともその経済規模に応じい政府開発援助の拡充を通じ、我が国に課された国際的責任を果たしていく」ということが書いてございまして、これは財政当局も含めて基本的にそういうことでこのODA拡充について考えていく、こういうことは変わりがないわけでございます。  このために、この第三次の中期目標では来年から七年間の間に財政状況を勘案しつつ四百億ドル以上のODAを援助していくということを目指すという目標が立てられたわけでございますが、御案内のように六十一年度の予算ということになりますと、毎年毎年異例というのはあれでございますが、大変厳しい異例な財政状況でございまして、財政当局といたしましては、最近における円高基調への転換、これは実際そういうことがございまして、ODA予算の中に外貨予算というのがございますので、円高というのがODA予算に少なからず大きな影響を与える。そういう意味で円高状況というもの、と同時に、先ほど申し上げましたように政府全体として設定に合意いたしました中期目標に沿ったODAの着実な拡充というものを考えながら、これから関係省庁とよく相談をして適切に対処してまいりたい、かように考えております。
  165. 立木洋

    ○立木洋君 最初に、アメリカの戦略に関連して若干の問題をお尋ねしたいと思いますが、最近我が国に寄港するアメリカの原子力潜水艦の寄港回数というのが非常にふえていると思うんですが、ことしになってから今日まで何回寄港しているのか、まず数から。
  166. 藤井宏昭

    政府委員(藤井宏昭君) 本年に入りましてから今日まで、日本に入港いたしましたアメリカの原子力潜水艦の回数は三十三回でございます。
  167. 立木洋

    ○立木洋君 そのうち、巡航ミサイル・トマホークの配備が予定されているクラスの原潜、これの寄港は何回になりますか。
  168. 藤井宏昭

    政府委員(藤井宏昭君) 巡航ミサイル・トマホークは、ロサンゼルス級及びスタージョン級に配備されるというふうに承知しておりますけれども、ロサンゼルス級は七隻、十三回、それからスタージョン級につきましては五隻、九回というふうに承知しております。
  169. 立木洋

    ○立木洋君 これまで七年間にこのアメリカの原子力潜水鑑が寄港した回数は、七年間どういうふうなデータになっていますか。
  170. 藤井宏昭

    政府委員(藤井宏昭君) 昭和三十九年から今日までの間の寄港実績でございますが、全体の寄港実績といたしましては三十九隻、二百六十一回でございます。
  171. 立木洋

    ○立木洋君 各年ごとに、この七年間、何年何回、何年何回、おたくからいただいた資料に書いてある。
  172. 藤井宏昭

    政府委員(藤井宏昭君) 昭和五十四年、潜水艦、原子力潜水艦は七回でございます。それから、五十五年十回、五十六年七回、五十七年二十一回、五十八年二十五回、五十九年二十三回、六十年三十三回ということでございます。
  173. 立木洋

    ○立木洋君 五十七年以降、アメリカの原子力潜水艦の寄港回数というのが急激にふえている、まあ五、六年前に比べると今日の時点では三倍ないし四倍以上になっているという状態ですが、このように急激にふえている事情について、アメリカの側から何らかの説明が日本側にあったのでしょうか。また、それについてどのようにお考えになっているのか。
  174. 藤井宏昭

    政府委員(藤井宏昭君) 八〇年代に入りまして、米国の原子力潜水艦の本邦寄港数がその以前に比べまして趨勢として増加していることは委員御指摘のとおりでございます。これは一般的に米軍の我が国周辺地域におけるプレゼンスの強化を反映したものというふうに考えられますけれども、その詳細につきましては、これはどこの国でもそうでございますけれども、米国はその艦船、なかんずく特に機密性を要する原子力潜水艦というようなものの運用、配備というような点につきましての詳細を公表いたしませんし、我が方といたしましてもそれを承知する立場にないということでございます。
  175. 立木洋

    ○立木洋君 大臣、ちょっとお尋ねしますが、今お聞きしたように非常にアメリカの原子力潜水艦の寄港が急増しているわけですね。それで、この急増した五十七年、この年の三月にロング太平洋司令官がアメリカの下院歳出委員会で次のように述べているわけですがね。太平洋司令部としては、包括的な戦域核戦力の強化、近代化、これがどうしても必要だと、これは既に着手した、こういうことが述べられて、巡航ミサイルはしかるべき組み合わせで配備することによって、我が太平洋軍の打撃能力の向上にとって画期的なものになる、これは五十七年に述べたんですね。昨年、ホステットラー巡航ミサイル計画主任は、アメリカの下院軍事委員会の調達・核システム小委員会で述べているわけですが、ここでは、アメリカの海軍はこれまで十四の攻撃プラットホームに集中していた艦隊から――この十四の攻撃プラットホームというのは空母ですね、当時十四隻の空母があったという意味ですが、その艦隊から核トマホークの配備によって、現在カバーできない巨大な陸地を攻撃できる百四十以上の攻撃プラットホームを持つ艦隊になる、こういうふうに昨年の三月十四日に証言しているわけです。つまり、十倍以上に上る空母並みの核攻撃能力を持つ艦隊が核トマホークの配備によって実現できる、こういうようなアメリカ海軍の質的な強化、大きな変化を証言しているわけですね。こうした事態をどのようにお考えになるのかという問題。  それからもう一つは、このような核戦力の強化ということは必然的にソ連の対抗措置を招いて、ソ連もアジアに核をさらに配備を強化する、またそれを受けてアメリカ側が配備を強化する、こういう悪循環を招きますと、これは今日の米ソ会談で御承知のように、これに逆行する事態が進行するということになりかねないわけですね。ですから、こうしたような事態を大臣はどのようにお考えになっているのか、今日の米ソ首脳会談を踏まえた上に立ってどのようにお考えになっているのか、大臣の御見解をお聞きしたい。
  176. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 八〇年代に入りまして、この米原子力潜水艦の本邦寄港回数は、今お話しのように、七〇年代後半との比較において趨勢として増加していることは、これは事実です。我が国としましては、米軍艦、なかんずく米原子力潜水艦の運用の詳細を承知する立場にはございません。したがって、各年の米原子力潜水艦本邦寄港回数の変化の理由は承知をしておらないところでありますが、しかし、一般的に言えば、この事実は我が国周辺地域における米軍プレゼンスの強化を反映したものであると考えられるわけであります。また、米国政府は、政治、経済、文化のみならず戦略面においても太平洋地域を重視している旨繰り返し述べておるところであります。我々は、そういう見解に立っておるということでございます。
  177. 立木洋

    ○立木洋君 この問題については、もう少し先にまたもう一度戻って質問いたしたいと思いますが、アメリカの海軍当局が一九八四年、つまり昨年の六月からいわゆる複数の艦船に核トマホークの配備を開始したというふうに発表されています。先ほどの藤井局長の説明にありましたように、ロサンゼルス級、スタージョン級、これらについてはトマホークを配備すると。これは核とは申していませんが、核、非核両様のトマホークを配備するというふうに言われております。八四年には、この原潜にトマホークが配備されたのは四隻だというふうにアメリカは発表していました。ところが、八五年九月三十日までに十二隻に配備するということを、先ほど私が引用しましたホステットラー巡航ミサイル計画主任が議会で証言をしております。最近日本の横須賀に初めて寄港した攻撃型原潜の中には、バーミンガム、ヒューストン、バッファローなどが入っております。これはロサンゼルス級だというふうに考えますが、間違いありませんか。
  178. 藤井宏昭

    政府委員(藤井宏昭君) そのように了解いたします。
  179. 立木洋

    ○立木洋君 これらはすべてことしになって太平洋に配備されたものであるというふうに理解しますが、どうですか。
  180. 藤井宏昭

    政府委員(藤井宏昭君) 先ほど御答弁申し上げましたように、アメリカは米原子力潜水艦の詳細に具体的な配備につきまして通常これを公表しておりません。したがいまして、それを承知する立場にございません。
  181. 立木洋

    ○立木洋君 あなたの方で言われなければ、これはすべてことしになって太平洋に配備されたものであるというふうに私たちは理解しています。また、昨年就役した新造艦もこの中に入っているというふうに私たちは承知しております。問題は、先ほどのロング太平洋司令官の発言を引用したように、またホステットラー巡航ミサイル計画主任の証言で述べたように、この核トマホークの配備ということを非常に重視して、去年からこれをアメリカの原潜に配備強化が開始されたという状況を踏まえて、このようにいわゆるロサンゼルス級しかも新型の原潜が日本に相次いで寄港するということですから、こうした核トマホークの配備によって巨大な攻撃力を持つように考えているという証言と兼ね合わせると、これは核トマホークを積載したアメリカの原潜の寄港ではないかというふうに疑うのは極めて当然だろうと思うんです。こういう点から横須賀の市民あるいは横須賀の市長等々が繰り返し外務省に対してこの核トマホークの有無を米側に問い合わせるよう要請してきている。これは当然のことであり、非核三原則を厳守する立場からいってもこうした事態を明らかにする責任外務省にあるというふうに考えますが、大臣、いかがでしょうか。
  182. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) このトマホークを装備しているかどうかについてはつまびらかにしておりませんが、しかし、トマホークにしても核、非核両用あるわけであります。同時に、またトマホークで核を装備するということになれば、これはもう何回もここで議論しましたように、事前協議の対象ですから事前協議なしに持ち込むことはできませんし、日本の立場は事前協議を受けた場合に核持ち込みはノーという立場でございます。したがって、こうした事前協議制度がそれは安保条約によってある、そして事前協議というのは忠実にこれは履行されておる、これはもう両国の合意ですから、そういうことからすればアメリカから相談も受けていない、そういう事前協議の相談も受けていない核の持ち込みということはあり得ない、こういう立場が日本政府の立場であります。
  183. 立木洋

    ○立木洋君 この問題でいろいろと論議を繰り返すということはいたしませんけれども、しかし、少なくとも先ほど大臣が認められたように、いわゆる軍備が強化されてきているということはこれは事実ですし、しかも先ほど私が二人の証言、アメリカの軍部の発言を引用しましたように、核トマホークの配備の強化ということが極めて重視されている、それが展開されてきている、そういう疑いのあるアメリカの原潜が寄港して国民が不安に感じているわけですから、政府としては少なくともこれまで重要な時期には米側にも問い合わせをするということもあったわけですから、必要な機会にこうした事態について日本側の立場を再度明確に述べ、アメリカ側にその有無を確かめるというふうな態度があって私はしかるべきだというふうに思いますが、重ねてもう一回そのことについての大臣のお考えをお聞かせいただきます。
  184. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 核持ち込み問題につきましては、これは私も外務大臣になりましてやはりこの事前協議の遵守、安保条約をお互いに守るということは日米信頼関係を確保する上において極めて重大である、こういうふうに考えまして、それまでにいろいろと国会の論議もありましたし、いろいろ問題も提起されました。そういうことも踏まえて、マンスフィールド大使との間で安保条約のお互いに遵守を、そして事前協議制度というものを守っていこう、日本にはこうした核については三原則を持っておる、こういう日本の基本方針、日米間の約束事、これを改めて私から強調した経緯があります。したがって、アメリカもこの点については十分理解をする、日米安保条約はこれを守っていくと、こういうことでございますし、その後我々は日米関係から見てこうした安保条約、そしてまたそれに関連する規定、さらにまた事前協議条項、これは確実に守られておる、こういう見解を持っておりまして、したがって原子力潜水艦が日本にふえたからといって、ここでアメリカ政府に対してこの問題をとらえて話をする、説明を求めるということは考えておりません。
  185. 立木洋

    ○立木洋君 外務大臣のそういう姿勢は極めて遺憾だ。御承知のように、最近の世論を見ても三原則は守られていないんじゃないかという疑問を持っている国民が七割以上だというふうな統計も出ていますし、このことをやはりアメリカに確かめるべきだということを重ねて強く要求しておきたいと思います。  次の問題ですが、横浜の上瀬谷の通信施設ですね、これはどのような機能を持っているというふうに理解しているのか、御説明いただきたいと思います。
  186. 藤井宏昭

    政府委員(藤井宏昭君) 横浜の上瀬谷には海軍の通信施設や、それから第七艦隊の哨戒偵察部隊司令部などが置かれているというふうに了解しております。
  187. 立木洋

    ○立木洋君 上瀬谷のこの通信施設ですね、これの増改築の計画がアメリカで明らかにされていますが、この計画の内容をどのように承知しているのか、計画の内容について御説明いただきたい。
  188. 藤井宏昭

    政府委員(藤井宏昭君) この計画の詳細については存じておりませんけれども、計画の趣旨は、上瀬谷通信施設の既存の施設が老朽化いたしまして手狭になっておるので、その改善を図る必要があるということであるというふうに了解しております。
  189. 立木洋

    ○立木洋君 詳細承知していないと言いますけれども、ことしの三月三十一日のアメリカの下院歳出委員会、国防建設小委員会の公聴会の記録をごらんになればわかるはずなんですが、局長さんはまだお読みになっていませんか。
  190. 藤井宏昭

    政府委員(藤井宏昭君) その記録は拝見しております。
  191. 立木洋

    ○立木洋君 そうしたら、これからどういうふうな計画になっているのか、その計画の内容は、読んでいるというものでもう少し説明していただきたいのですが。
  192. 藤井宏昭

    政府委員(藤井宏昭君) いずれにしましても、その計画はアメリカ議会におきまして現在予算化されていないというふうに了解しておりますし、私どもの方からその計画の中身について云々することは避けさせていただきたいと思います。
  193. 立木洋

    ○立木洋君 いや、計画がどのようにアメリカで発表されているのかということをあなたがお読みになっておれば、アメリカとしてはこういう計画のようですということは発言できるんじゃないかと私は思うのですが、それをどのようにあなたが考えるかということを聞いているんではないんです。アメリカがどういう計画を持っているというふうにあなたが承知しているのか、読んでおられるなら読んでいる内容を述べていただきたい。余り回りくどくならないようにひとつ端的にお答えいただきたいのですが。
  194. 藤井宏昭

    政府委員(藤井宏昭君) アメリカにおきましては一定の予算を要求しておりますけれども、その趣旨は私がただいま申し述べたことと同様の趣旨であるというふうに了解しております。
  195. 立木洋

    ○立木洋君 そうしたら私は聞きますが、八六年度のセンター建設の内容として、電磁パルス防護設備という項目が記載されておりますが、ごらんになりましたか。
  196. 藤井宏昭

    政府委員(藤井宏昭君) そういう項目が要求されているというふうに承知しております。
  197. 立木洋

    ○立木洋君 八六会計年度に予定されている電磁パルスの防護設備、この電磁パルス防護設備というのはどうして必要になるものでしょうか。
  198. 藤井宏昭

    政府委員(藤井宏昭君) 電磁パルス防護遮断装置は外部からの電磁波による影響を防ぐとともに、保秘の観点からの内部の信号の外部への漏出を防ぐというものであるというふうに了解しております。
  199. 立木洋

    ○立木洋君 今までの通信施設、日本で建設されている通信施設その他にこの電磁パルス防護設備なるものが設置されているところがあるでしょうか。
  200. 藤井宏昭

    政府委員(藤井宏昭君) その件については存じません。
  201. 立木洋

    ○立木洋君 電磁パルスというのは、これは私はもちろん専門家じゃありませんけれども、一般的な常識としても核爆発時に発生する電磁波、これは強烈なエネルギーを持っているというんですね。これはもういろいろ新聞でも報道されましたように、核実験が行われたときにいわゆる通信だとか送電施設だとかいろいろなものに影響するということがいろいろ報道されておりますけれども、この核爆発時に発生する電磁波を防備する施設であるというふうに一般的に言われていますが、藤井局長もそのように理解されていますか。どうでしょうか。
  202. 藤井宏昭

    政府委員(藤井宏昭君) その点につきましては、アメリカ側との日常的な接触の中での米側の話によりますと、ただいま私が申し述べたような趣旨の装置でありまして、特に核戦争を想定したものではないというふうに我々は了解しています。
  203. 立木洋

    ○立木洋君 局長さんがそういうふうに逃げておられるという内容はわかりますけれども、これは明確に初めて上瀬谷という通信施設の中に装備されるんです。そうすると、これまでも問題になってきました例えば大和田通信施設あるいは横田などの施設、そこではどのようないわゆる電波障害の影響を和らげる施設が配備されているでしょうか。
  204. 藤井宏昭

    政府委員(藤井宏昭君) 私、現在手元にその資料を持ち合わせておりません。申しわけありません。
  205. 立木洋

    ○立木洋君 アメリカの計画によれば、八六会計年度国防報告は九〇年までにヨーロッパ及び太平洋地域に電磁パルス防護型の短波無線システムを導入するというふうに言われており、いわゆる電磁パルスの防護対策施設というのは核攻撃、核兵器とその影響を除去するものとしてこれは明確にアメリカのいろいろな資料の中で出されております。ここでそのすべてを挙げることはいたしませんが、アメリカが提起しておるいわゆる指揮、統制、通信、情報、このような問題を強化しなければならないということで八四年三月、上院軍事委員会の国防長官補佐官の報告の中では、我々は核爆発や放射性降下物の影響が持続するような最初の核攻撃の次の段階にもこの指揮、統制、通信、情報システムを生き残らせなければならないということが明記されて、その内容として電磁パルスの防護設備ということが問題になってきているわけです。このことをあなたは否定なさいますか。
  206. 藤井宏昭

    政府委員(藤井宏昭君) ただいま委員御指摘の点につきましては、私現段階で特にコメントを加える立場にございませんけれども、上瀬谷につきましての電磁パルス防御装置につきましては、先ほど私が申し述べたとおり了解しておるわけでございます。
  207. 立木洋

    ○立木洋君 読んでいない、承知していないということでしたらこれ以上質問してもあれでしょうから、つまり藤井局長、もう一遍そこらあたりをよく読んで、次の機会にまたお尋ねしますからよく調べておいていただきたい。その上でお尋ねすることにします。  さて、この問題に関して横須賀の市民団体の方々が外務省にこうした建設計画というのが危険だからこれを除去するようにということを要請に行ったときに、対応された岡本安保課長さんが、それらの建設が存在しているということを認めながら、これらがすべて核抑止力であるというふうに述べていますが、この通信施設がどういう意味で核抑止力というふうになるのか、この点はいかがでしょうか。
  208. 藤井宏昭

    政府委員(藤井宏昭君) 岡本課長がそれらはすべて核抑止力であるというふうに述べたかどうか、その点だだいまの先生のその言葉につきまして私は正確に承知しておりませんけれども、一般論といたしまして、この通信施設が仮に日本存在する以外の核に関連しての通信あるいは統制に関連したといたしましても、それは核抑止を米軍に頼るという日本の立場、それと矛盾しないという趣旨がそこにはあるかと思います。しかしただいま申し述べましたように、岡本課長が正確にどういう表現を申し述べたか私は正確に存じておりませんので、それ自体についてのコメントは差し控えさしていただきたいと思います。
  209. 立木洋

    ○立木洋君 局長、核抑止力であるというふうにお認めになるのか、どうなのか。核抑止力でないというふうにお答えにないのか、いかがでしょうか。
  210. 藤井宏昭

    政府委員(藤井宏昭君) 先ほどから申し述べておりますように、上瀬谷通信所の機能につきまして政府といたしまして詳細を承知する立場にないわけでございますから、これにつきましての具体的なコメントは差し控えさせていただきたいと思います。ただ全くの一般論といたしまして、安保条約によって核を含むアメリカの抑止力に国の安全保障を依存している我が国としては、米軍が日本の外にある核の抑止力の効果を維持するために行う通信あるいは統制、指揮という各種の機能の保持というものは当然のことであるというふうに了解しておるわけでございます。
  211. 立木洋

    ○立木洋君 それからもう一つ、これに関して、この増改築に関してアメリカ側から非公式に、あなた方の方で予算で見てくれないかという要請があったというふうに聞いておりますが、それは事実でしょうか。
  212. 藤井宏昭

    政府委員(藤井宏昭君) 本年六月に米軍から施設庁の方に、極めて日常的な接触の過程で非公式に話があったというふうに聞いております。
  213. 立木洋

    ○立木洋君 もう最後ですから大臣にコメントしていただきたいんですが、今申し述べましたように藤井局長はなかなかうまいぐあいに逃げましたね。直接的な答弁をなされていないんですけれども、この上瀬谷に建設されるという新しい今度の計画というのは核戦争の場合でも生き残れるような設備をする、いわゆる電磁パルス防護装置を整えるというものであって、大変なものなんです。P3Cからいわゆる受信するとそれを直ちに第七艦隊に指令をして攻撃が開始する。それから核攻撃を受ける場合でもそれが生き残れる。そういう大変な施設がここで建設されるということで現地の人々はこれに対して反対だということを外務省側にも要求に来ているわけです。また同時にこれがいわゆる思いやり予算などでやられるなんということはとんでもない、そういうこともやめるべきだということも言われているわけです。その点について最後に、ましてや思いやり予算を組んでやるなどというようなことはしないと、それからこういう危険なものについてはいわゆる撤去を求めるべきだという市民の要求にこたえていただきたいと思いますが、その点最後に大臣のコメントをいただいて私の質問を終わります。
  214. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 我が国はこれは御承知のように安保条約によりましてアメリカの抑止力に国の安全保障を依存することとしておりまして、上瀬谷通信所を初の米軍がその抑止力の効果的な維持のために必要な施設を我が国に置くことは当然のことと考えております。
  215. 秦豊

    ○秦豊君 外務大臣、私も最初にただいま外相在任記録更新中のあなたに祝意と敬意を表しておきたいと思います。  日ソ問題が大分論ぜられましたけれども、私もあえて重複を避けません。いろんな見方があると思います。全体的には米ソ関係がフレッシュスタートであるならば、日ソ関係についてもキャッチフレーズ的に言えばフレッシュスタートであってほしいと願う一人ではありますけれども、やはり最近のゴルバチョフ氏の演説、それからシェワルナゼ外相のさまざまな場における答え方、話し方、確かにスタイルとイメージの変化は私にも感得できますけれども、それは何ら例えば対日外交のウエートが急速に倍加したとか、あるいは日本重視についてのクレムリンの最高戦略が変わったんだとか、そういうものを裏づける証左というものは全くないんじゃないだろうか、早計に過ぎやせぬだろうかというのが私の少しかたい見方なんですが、大臣いかがですか。
  216. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) しかし、ゴルバチョフ書記長の日本に関する発言とか、あるいはまたシェワルナゼさんと私との国連総会の際の会談、あるいはソ連から要人がしばしば日本に来ておりますが、そうした要人との会談、これは私だけじゃなくて各方面との会談、さらにソ連の報道関係の報道ぶり等を見ますとこれまでの体制のときのソ連日本に対するアプローチとはやはり変わってきているように思いますね。これはソ連外務省とのいわゆる接触これも大きいポイントですが、こういうのを見ましても大分変わったなという、空気が変わったなという感じは率直に言って持っております。ただしかし、これがそれじゃ日ソ外相会談にどれだけ具体的に大きな成果に結びついていくかということについてはやはりまさに会談を始めてみなければわからない、そういうふうに思います。
  217. 秦豊

    ○秦豊君 前のグロムイコ氏在任当時は仮に日本を訪問することあらばというのでさまざまな条件がついていましたね。例えば妨害的な行動は抑制されたしとか、北方領土問題は触れてほしくないとか等々ございましたね。今回は言うまでもないことですが、シェワルナゼ氏については一切無条件ですね。
  218. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) これは私は心から歓迎しますということを申し上げたので、日本のやはり責任において歓迎し、そして静かな雰囲気の中で会談をしたい、こういうふうに思っております。
  219. 秦豊

    ○秦豊君 じゃ、一部報道がありましたけれども、右翼団体がいかに軍艦マーチを高鳴らそうとも、会談場所は都内であるというふうに理解していいですか。
  220. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) この辺のところは今詰めている最中ですが、やはり具体的な会談場所をまだ決めておるわけではございませんけれども、静かな雰囲気で十分時間をかけてやりたいと、こういうふうに思っております。
  221. 秦豊

    ○秦豊君 その静かな、警備上の心配も懸念のない場所は都内にも十分あり得るわけですね。
  222. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) そのとおりです。
  223. 秦豊

    ○秦豊君 さっきちょっと話が出ておりましたけれども、私これ提案を含めた質問ですが、やはり外務大臣、ゴルバチョフという人はパーソナリティーとしてはかなり感度がよろしいのではないか、かなりリーダーシップ、ガバナビリティーにも富んでいるようにも感得されるわけです。思い切って、シェワルナゼ外相日本を訪問する前に、例えば中曽根総理と安倍外相がよく練られた上で早目に、来年のゴルバチョフ訪米の後にでも日本をぜひ訪問されたいという意味のことを網羅した、それを基調にした、中心にした例えば公式書簡を送るとか、あるいは外交ルートを通じてあらかじめ正式訪日招請の意向を伝達をするとかされておいて、そしてシェワルナゼ氏が日本を訪問したときには何らかのリアクションが日本側として受け取れるというふうに早目早目に手を打って、日ソ打開の一つの契機にされてはどうか。もしゴルバチョフ氏が日本を彼の目で見た場合にはかなり鮮烈な印象を受ける、それこそ日本重視への一つの引き金になると私は思っているのであえて申し上げますが、そこまで踏み込まれてみては大臣いかがでしょうか。
  224. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) やはりソ連という国の最高実力者ですし、そう簡単にことしで来年という関係にもまいらぬのじゃないか。特に今日ソ外相会談がようやく十年ぶりに来年スタートする、こういうことですから、そのスタートをして、そういう会談の中で、これはもうずっと日本がこれまでソ連の書記長の訪日要請はしておりますから、そういう延長線上に我々ひとつ話をしてみたいこういうふうに思っております。このゴルバチョフ書記長の日本訪問の可能性というものは、これはやはりフランスとかイタリーに行かれるわけですし、今のゴルバチョフさんの感覚から見て、日本に来る可能性というのは私は十分あるんじゃないか、そういう感じは持っております。しかし、問題はこれからだと思います。
  225. 秦豊

    ○秦豊君 ですから確かに可能性がかなり高いというふうに期待したいと思いますけれども、ならばなおさらやはりめり張りをつけてちゃんと意思表示を早目にされるということが外交の手数としていかがでしょうか。重ねて、どうでしょうか。
  226. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) しかし、こういう問題はやはり首脳間の会談とかあるいはまた外相間の会談において大体打ち出されるという筋合いのものでありますし、今の段階外相会談が迫っておるわけですから、まず外相会談を片づける、これをうまく持っていくというのが今日本にとっては最大の一つの課題じゃないかというふうに思います。
  227. 秦豊

    ○秦豊君 ならば、つまり外務大臣こういうことですね、安倍・シェワルナゼ会談、何回か持たれると思いますが、その中で、日本政府としてはゴルバチョフ書記長の来日を心から期待したい、歓迎したいということは正式に上せるわけですね。
  228. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) そういうこともあり得ると、こういうことです。
  229. 秦豊

    ○秦豊君 今度言いたいことは全部言っておく必要のある会談ですよね。ですから当然私はさっきもだれかが言っていたアジア地域のSS20の削減問題であろうが、あるいは場合によっては北方四島、これは不法駐留ですからね、我が国の固有の見解からすれば。ならば、北方四島からの兵力削減ないし撤退、こういうことは堂々と、激しく対立していいから言うべきことを言う、会談の前段で外務大臣としては当然主張をされるというふうに理解してよろしゅうございますか。
  230. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) これは日本からもやはりせっかくの会談でありますし、十分ひとつ率直に話し合おうじゃないかというシェワルナゼさんの話でもありますし、私もそういうふうに思っておりますから、やはり言うべきことはお互いに言ったらいいんじゃないか、言うべきじゃないかこういうふうに思っております。
  231. 秦豊

    ○秦豊君 くどいようですが、じゃSS20であろうが、北方四島からの撤退問題であろうが、それも当然含まれるということですね。
  232. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 二国間の問題、それはやはり焦点として我々は北方領土問題、それを取り上げて考えております。あるいはまた、極東情勢の中ではソ連の極東における軍事力の問題、そういう点等もこれは当然お互いに話し合いの中では出てくる課題だろうと思います。
  233. 秦豊

    ○秦豊君 それから外務大臣、クレムリンは来年からたしかあれは、第十二次になりましたか、新しい五カ年プランの策定の大詰めに今きていると思いますけれども、当然シェワルナゼ氏が安倍外相と会談を重ねる中で、その第十二次五カ年計画経済建設の中に日本の協力をどの程度インプットが可能かということは、かなり大きな私はマターだと思うんです。したがって、彼が来日するまでに日本政府としてどの程度の協力が可能かどうか、ああいはなすべきかどうか、なすべきであるという合意が仮に政府部内で形成された場合にはどの部門かと、資金量はどうかとかいうふうなこと、これを例えば科学技術協力協定であるとか、あるいはさっきも同僚議員が触れたソ連側の希望としては十年ないし十五カ年をフィックスした長期経済協力協定等についてもこたえ得るような政府の部内の合意をあらかじめ固めておくべきではないかと思いますが、これについては大臣いかがですか。
  234. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) まだ会談の内容までについて話し合いをしておりません。これはやはり事前にいろいろどういう問題でやるかということはある程度事務当局間で話し合いをするというのがこれまでの慣例でありますし、ぜひともそういうふうに問題を整理しておきたいと思っておりますからしたいと思うんですが、まだそこまで至っておりません。そういう中で日本がどういう姿勢、どういう対応をするかということは、これは日本政府の問題としてこれからいろいろと会談に備えて、どういう問題が出てもこれに対応できるように、少なくとも日本政府の問題は日本政府として立場をはっきりさせなきゃならぬと、そういう立場で勉強してまいりたいと思っております。
  235. 秦豊

    ○秦豊君 じゃあ、そういう予算編成と並行しながら、忙しい年末年始の日程を縫ってそういう対応を政府協議されるというふうに理解をしておきたいと思います。  それから、これはちょっと細かい質問ですけれども、シェワルナゼ氏はモスクワ-東京-ピョンヤンというコースを組んでいるらしいんですよね。その場合に一九七七年にはフィッシャー東独外相の先例もあり、それから七九年五月にはたしかワルトハイム当時国連事務総長の直行便という先例が実はあるんですけれども、このシェワルナゼ氏がピョンヤンに直行便で行きたいと言った場合には、私は日本政府もニェットではなくて、ダーという回答をされていいのではないかと思うんです。また、そのことは小さな一石のように見えて今後の対朝鮮外交へのシグナルの一つになり得ると僕は思っているんです。大臣、どういうお考えですか。
  236. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) まだ実は、北朝鮮に行かれるのじゃないかという情報程度はありますけれども、確認したわけではありません。日本に来られるわけですから、その後の行程については日本で図れる便宜は図ってあげるのが、これが礼儀だと、こういうふうに思います。
  237. 秦豊

    ○秦豊君 日本が図ってあげるべき外交上の配慮並びに政府ソ連政府に与える便益の中にピョンヤンヘの直行便もあり得るということですね。
  238. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) いや、具体的にまだそこまで何も決まっているわけじゃないんです。しかし、それはせっかくの賓客を迎えるわけですから、賓客の行程について日本が図れる便宜は図るのはこれはもう日本の礼儀だと、外交上の儀礼であると、こういうふうに思います。
  239. 秦豊

    ○秦豊君 私がこう申し上げますのは、私は何も外務省じゃないけれども、私なりのチャネルの中で金日成ジュニアがやがて明年訪ソ日程を組みつつあるわけです。それに関連した特別列車の改造についての引き合いが我が国につまり現実に来ているわけですね。そういうふうなことを考えた場合に、この前の、去年はカピッツァ次官が瀬踏みをしてきましてね、今度シェワルナゼ氏がここまで来てピョンヤンに寄ると、これはモスクワ筋ではかなり大っぴらに論じられている問題ですから、必ずそういう要請が公式化すると思います。今の答弁で私は十分によくわかりました。  そこで、次の問題ですけれども、今も話に出ました極東配備のSS20ということ、この問題で日本アメリカ関係にちょっと触れておきたいと思うんですが、元来アメリカの公式な態度というのは、極東配備のSS20については日本側とも協議を続けながらジュネーブでの軍縮交渉で規制を求めていくと、これがいわば表立った態度なんですよね。そうすると、先日の米ソ首脳会談の前には、そのことに絞って日米間の接触というか、協議はあったんですか。
  240. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) INFの配備の問題については、これまでしばしば日米関係で話しもしております。首脳会談でも出ておりますが、あくまでもグローバルな立場でINF問題については対応すべきだ、そして極東が犠牲にならない、日本が犠牲にならない、こういうような解決をすべきだということはしばしばアメリカに申し込んで、アメリカも十分それを理解して、そういう趣旨でINFの問題に対応するということを確言しておるわけでございます。したがって、この点については米ソ首脳会談の前にもアメリカ日本との間では合意ができておりますから、これを踏まえてアメリカ側の方も対応している、これからも対応していく、こういうふうに我々は考えております。
  241. 秦豊

    ○秦豊君 今の外務大臣の答弁のように私も一外務委員として承知をしておったんですが、それにしては去る十一月十五日付でしたかの夕刊各紙が報道した中で、ニッツ・アメリカ軍縮顧問が十一月十三日にワシントンのフォーリン・プレスセンターで、これは公式な会見ですよ、私的な座談会じゃないんですよね。そこで述べている中で、今の安倍外相の答弁の趣旨から明らかにそれた答弁を繰り返しているんです。つまり、ニッツ氏によると、アジアを犠牲にして削減均衡を図らないと言いながら、一方ではアメリカが求めようとしているのは均衡、つまりバランスヘの法的な権利であって、このことは必ずしも現実の配備のバランスを意味したものではないと。これを日本語に直訳すると、アジアにおけるソ連側の、ソ連極東軍のINF戦力の一方的優位は事実上黙認する、こういう文脈になるのが素直な国語の解釈だと私は思うんですよ。いかがですか。
  242. 中平立

    政府委員(中平立君) 実はニッツ大使が十一月十三日にそういう、日本新聞に報ぜられたというよりか、私たちは英文を持っているわけでございますけれども、その前、アメリカは既に一昨年からこういう趣旨を言っているわけでございます。その趣旨は、先生御存じのように、アメリカがINFミサイルを欧州に配備するということによってソ連の全土のINFミサイルと相殺するということではなくて、現に米ソのグローバルベースの均等を確保するというためにそういう権利は主張するけれども、実際はソ連の数までやるというわけじゃないんで、そういう意味で将来グローバル枠というものを、法的な権利を主張して、将来配備の権利を留保するということは、そのとき十一月十二日に言っておりますし、一昨年九月からそういうことを言っております。しかし、そういうことを言っておりますけれども、これは必ずしも極東を軽視するということではございませんで、現に十一月一日の米ソ首脳会談の直前にアメリカがソビエトに提案したわけでございますけれども、その提案の中でもアジアにおけるSS20につきましては、ヨーロッパのSS20と同率の削減を求めている、そういう提案をしているわけでございまして、従来からのアメリカ考え方は変わっていないというのが私たちの判断でございます。
  243. 秦豊

    ○秦豊君 ジュネーブはなかなか進みません、カタツムリだと思うけれども、この問題はジュネーブを横にらみしながら、また当委員会で時間をかけてやりましょう。  きょう防衛庁にあえて私さわっておりませんので外務省伺いたいんですけれども、最近のソ連、北朝鮮間の軍事提携、協力、これは空海にわたって非常に目覚ましいのではないか、私自身はそう思っていますが、外務省の観測はいかがなんですか。
  244. 福田博

    説明員(福田博君) ソ連と北朝鮮の関係につきましては、昨年の五月に、二十三年ぶりということでございますが、金日成主席がソ連を公式訪問したことあたりを契機としてその二国間の関係が非常に進展している、そういうように受け取れるというふうに見ております。報道等によればソ連からのミグの供与とか、あるいはあとピョンヤン放送によればソ連の艦隊が元山という港に入ったとか、あるいは相互に空軍飛行隊が交歓飛行をしたというようなことを報じておりますし、そういう関係が発展しているというふうに伝えられていることは十分承知しております。
  245. 秦豊

    ○秦豊君 もうちょっと具体的に、例えば航空自衛隊の今のレーダー性能からすると、TU16バジャーが仮にウラジオ近くの基地から発進して高度をかなりとった場合、朝鮮半島を黄海側に横断している時点からフォローできるわけですよ。そして今度はコースを変えてベトナム方向に転進をして、恐らくカムランだと思うがコースをとる。これは去年の十二月中旬に防衛庁は確認しているはずなんですよ。その程度の能力はある。現在そのコースがより頻繁になっているんじゃないかと思うんです。それはどうですか。
  246. 福田博

    説明員(福田博君) そういう報道とかうわさがあることは十分承知しておりますが、具体的に確認はいたしておりません。
  247. 秦豊

    ○秦豊君 私がこういうことを申し上げる意味は、つまりピョンヤンを中心にして北京、モスクワ、こういう振り子あるいはバランスの大きな枠組みの中にあって、南北朝鮮の自主的な会談のムードが醸成されつつある中で、軍事的には強化、あるいはソ朝の緊密化、北京もやきもきしているわけだけれども、ミグ23の供与数も、スコードロンで言うと二ないし三スコードロンが目標らしいからかなり強力なんですよね。あとは日本海側の元山であるとか清津、黄海側の南浦への寄港が繰り返されていたり、ピョンヤン南方の黄州、この空軍基地にミグ23がかなり長い間とどまったり、ゼスチャーや儀礼を超えた軍事提携が行われている、この辺がどうも理解しにくいものだから、外務省の認識を聞いておいたわけです。
  248. 福田博

    説明員(福田博君) うわさとか情報とかは別にしまして、そのようにソ連と北朝鮮の間が接近しているということは私どもも認識をしておりまして、それではなぜこういうふうに接近が行われたのかということにつきましては、非常に一般的な言い方で恐縮でございますが、双方の政治的あるいは軍事的な思惑というものがそれなりに一致した結果ではないかと思っております。いずれにいたしましても、私どもとしては引き続き今後の動向に注目して見ていきたいと考えております。
  249. 秦豊

    ○秦豊君 そこで北朝鮮ですが、北朝鮮の対日債務というのは、残高どれぐらいあるんですか。
  250. 福田博

    説明員(福田博君) 対日債務は、円換算で申しますとおよそ五百億円程度と言われております。ただし、具体的な正確な金額については、民間レベルの交渉の当事者間でこれを公表しないという約束があるようでございますので、政府としてはその詳細は承知しておりません。
  251. 秦豊

    ○秦豊君 ではあなたが言われた推定ないし推計五百億円、これらについて民間が心配いたしておりますのは、輸出保険適用の可能性というのは将来とも全くあり得ないのか、あるいはある事態によっては可能なのか、その辺を非常に憂慮していますが、いかがですか。
  252. 福田博

    説明員(福田博君) この債務に関しまして付されている輸出保険の保険金支払いの可能性については、現在関係の当局において検討中であると承知しております。
  253. 秦豊

    ○秦豊君 それからこれは外務大臣伺いたいのですが、最近財界人がピョンヤンに往来しているいろいろな話、私も実は聞きました。その中で最大関心事は、そろそろこの時期であれば、またこれからを考えた場合には、貿易事務所くらいは相互に設置できないだろうかなということで財界人の胸をたたいているわけだ。けれども、これは財界人が答えられる問題じゃない、政治のマターですから。あるいはジャーナリストの相互交換ぐらいは絶えて久しい懸案だが、そろそろ小規模に実行してみてはどうかとか、そういうふうな打診が行われた由聞きますけれども、そろそろ安倍外交の中でもこういうことは現実化するというようなお考えはございませんか。
  254. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 外交関係がありませんし、民間で交流を進めておるわけでありますが、今の貿易事務所の相互設置については私もいろいろと意見を聞いておりますし、一都それを推進しておる人たちもおります。しかしまた同時に、今の北朝鮮に対する膨大な債務というところから非常にそれに対して消極的な声もあるわけでありますが、これはやはり朝鮮半島をめぐるところの国際情勢、あるいはまた我が国と友好国との関係であるとか、さらに南北対談、この推移というものを総合的に見ながら対応していくべきじゃないだろうか、こういうふうに考えております。
  255. 秦豊

    ○秦豊君 きょうはそれ以上の答弁はちょっと期待できない状況のようですから触れません。  北朝鮮に残留する日本人孤児の問題、私もかつて取り上げましたけれども、これも推定二千人くらいだと思われているわけですが、これは国交がなくても人道の領域ですから、どう解決していかれましょうか。
  256. 福田博

    説明員(福田博君) 政府は従来から日本赤十字社等を通じまして北朝鮮に残留邦人がいるかいないか、それの消息等の調査を依頼しておるわけですが、残念ながらいまだそういう回答はございません。他方最近、留守家族の会というようなものが結成されたというようなことも聞き及んでおりますので、今厚生省とか日赤等とどういうことができるかということを検討しております。
  257. 秦豊

    ○秦豊君 まだ二分ありますから、中国課長の顔も見えるし、中国の確認しておきたいことがちょっとあるのです。  これは一部のジャーナリズムが小さく伝えて、大きな見出しになっていないのだけれども、去る九月二十六日の深夜に陝西省の西安を訪問中の二人の日本人旅行者が、西安の人民大屋のゲストハウスに宿泊中に襲われて、一人は刃物らしき物で襲われて重傷を負った。迎賓館の隣は省の公安庁で、省のそういう保安機構があるにもかかわらず起こった事件として一部では非常に目をばっと開いたのだけれども、犯人は逮捕に至っていない。しかしこんなショッキングなことが事実あったのですかどうなのですか。
  258. 荒船清彦

    説明員(荒船清彦君) 御指摘の九月の事件ということでございますけれども、このような事件の被害届は出ておりません。ただ、中国側の関係当局に照会したところによりますと、本年八月の下旬に日本人二名が西安の滞在先のホテルにおきまして金品を奪われ、その際に犯人ともみ合った一人が軽傷を負った、こういうような事件があった趣でございますけれども、御指摘のように本年九月下旬に日本人が西安で暴漢に襲われだというような事件は承知しておりません。
  259. 秦豊

    ○秦豊君 残り少々ですが、これは外務大臣無理に御答弁求めませんけれども、作家の山崎さんと胡耀邦さんが会ったときに、靖国の解決には万事時間の経過だと、まだ四十年だということがあるし、中国要人の中曽根観は、中曽根さんの政治家としての資質と価値観の中で一番問題なのは戦前的秩序、価値観へのノスタルジーが強過ぎると。まさにあの人は戦前的価値観を清算していないという点に大きな論理的こだわりを、理念的こだわりを持っているようです。したがってこういう四十年発言になるんだが、まあ今度の西安の事件はどういうことかわからない。中国各地に起こった出来事については報道管制もしておりますから、ブラックアウトではないが、真相はわからない。わからないけれども、非常に深いものは今後とも、地下水のようにあって、時々ある契機でほとばしるというふうに、非常に慎重に構えた方がいいと私は思っていますが、最後に、委員長のお許しがあれば、大臣のお答えをいただいて終わりたいと思います。
  260. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) おっしゃるように日中関係は極めて大事でありますし、靖国の問題等も決着がついたと私は言えないと思っております。やはりお互いに十分話し合いを進めながら、何とか日中間の基本の関係を壊さないように努力していく必要がある、こういうように感じております。
  261. 最上進

    委員長最上進君) 本日の質疑はこの程度にとどめ、これにて散会いたします。    午後四時二十一分散会      ―――――・―――――