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1985-11-13 第103回国会 参議院 外交・総合安全保障に関する調査特別委員会国際経済問題小委員会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十年十一月十三日(水曜日)    午前十時一分開会     —————————————  昭和六十年十月十八日外交総合安全保障に関  する調査特別委員長において本小委員を左のと  おり指名した。                 岩動 道行君                 大坪健一郎君                 倉田 寛之君                 高平 公友君                 曽根田郁夫君                 大木 正吾君                 松前 達郎君                 中西 珠子君                 柳澤 錬造君  同日外交総合安全保障に関する調査特別委員  長は左の者を小委員長に指名した。                 大木 正吾君     —————————————   出席者は左のとおり。     小委員長        大木 正吾君     小委員                 岩動 道行君                 大坪健一郎君                 倉田 寛之君                 松前 達郎君                 中西 珠子君                 柳澤 錬造君     外交総合安全保障に関する調査特別委     員長          植木 光教君     小委員外委員                 安孫子藤吉君                 鳩山威一郎君                 佐藤 三吾君                 上田耕一郎君                 関  嘉彦君    政府委員        外務省経済局長  国広 道彦君        大蔵省国際金融        局長事務代理   橋本 貞夫君    事務局側        常任委員会専門        員        山本 義彰君    説明員        経済企画庁調整        局調整課長    吉川  淳君        通商産業省通商        政策局米州大洋        州課長      渡辺  修君        通商産業省貿易        局輸入課長    石黒 正大君        通商産業省貿易        局輸出保険課長  森清 圀生君        通商産業省産業        政策局商政課長  山下 弘文君        資源エネルギー        庁長官官房企画        調査課長     林  康夫君        中小企業庁長官        官房調査課長   上田 全宏君    参考人        日本銀行総務局        長        深井 道雄君     —————————————   本日の会議に付した案件参考人出席要求に関する件 ○国際経済問題に関する調査  (経済摩擦に関する件)     —————————————
  2. 大木正吾

    ○小委員長大木正吾君) ただいまから外交総合安全保障に関する調査特別委員会国際経済問題小委員会を開会いたします。  一言ごあいさつを申し上げます。  私、このたび国際経済問題小委員長に再び選任されました。小委員会運営につきましては円滑公正に行ってまいりたと思います。皆様の御協力をお願いいたします。     —————————————
  3. 大木正吾

    ○小委員長大木正吾君) 参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  国際経済問題に関する調査のため、必要に応じ参考人出席を求めたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 大木正吾

    ○小委員長大木正吾君) 御異議ないと認めます。  その人選等については、これを小委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 大木正吾

    ○小委員長大木正吾君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     —————————————
  6. 大木正吾

    ○小委員長大木正吾君) 国際経済問題に関する調査のうち、経済摩擦に興する件を議題とし、五カ国蔵相会議経緯及びその内容について大蔵省説明を聴取いたします。橋本国際金融局長事務代理
  7. 橋本貞夫

    政府委員橋本貞夫君) 五カ国蔵相会議に関連した点を二十分くらいお時間をいただいて御説明いたします。  まずその背景として、我が国国際収支円相場でございますけれども我が国国際収支は第二次石油危機の後、昭和五十四年度及び五十五年度赤字を経験いたしましたけれども、その後は黒字を継続しておりまして、経常収支の規模は五十八年度には二百四十二億ドル、五十九年度、昨年度には三百七十億ドルを記録いたしました。本年度に入りまして、上半期で既に二百六十六億ドル黒字でございまして、前年度上半期百八十七億ドル黒字と比べますと、前年度を上回るペースで黒字が続いております。反面、米国経常収支赤字を記録しておりまして、五十八暦年が四百八億ドル赤字、五十九暦年は千十五億ドル赤字、本年の一−六の上半期につきましては六百二十一億ドル赤字、これは季節調整後の数字でございます。我が国の場合は季節調整前の数字で申し上げております。  このように対外均衡が拡大した要因といたしましては、米国経済の急速な拡大、それから米国財政赤字を主因とする高金利によるドル高、第三に一次産品価格の低迷による我が国輸入の伸び悩みなどが挙げられます。  他方長期資本収支について申し上げますと、昭和五十六年度以降流出超過が続いておりまして、五十八年度には二百八億ドル流出、五十九年度には五百四十二億ドル流出、本年度に入りまして上半期で既に三百五十七億ドル流出でございます。昨年度上半期二百六十七億ドルに比べまして一段と拡大し、特に六月、七月に大幅な資本流出がございました。経常収支黒字に見合いまして資本流出するということにつきましては、国際的な流動性をファイナンスするという意味では自然なものと考えられますけれども内外金利差の結果、対外証券投資に対する需要が強く、これを主な原因としました長期資本収支赤字が、本来であれば経常黒字ということによってもたらされる円高要因を相殺する一つ要因になっていたということも否定できないと思います。  昨年来の為替相場でございますが、これも米国経済が持続的に拡大しておりましたし、また、米国高金利等からドルが他の主要通貨、円のみならず欧州通貨等に対しましても上昇し、ドル独歩高という状態になっておりました。本年の二月下旬には一ドルが二百六十三円というピークを記録しました後に、三月以降は米国金利がやや低下する傾向が見えたこと、それから経済成長がやや鈍化する傾向が見えたということから徐々にドル高修正が進みまして、九月の中旬では一ドル二百四十円前後というような動きになっております。しかし、対外均衡是正のためには、さらにドル高是正が行われることが不可欠であるというふうに考えられていたわけでございます。  このような背景におきまして、ことしの九月、五カ国の蔵相会議が開かれたわけでございますけれども、それに至る国際会議流れといたしましては、変動相場制以後約十年を経た八三年の五月、今から二年半前のウィリアムズバーグで行われましたサミットにおきまして、フランスミッテラン大統領提案によりまして、サミット参加七カ国のそれぞれの国の大蔵大臣IMF専務理事と協議しつつ、国際通貨制度改善のための条件を明らかにするといういわば課題を出したわけでございまして、その検討課題が十カ国蔵相会議に受けられまして、十カ国蔵相代理会議と申しておりますが、そこで約二年検討されたわけでございます。  その検討のテーマにつきましては四つございまして、変動相場制機能、それから国際的なサーベーランス強化と言っておりますが、国際的に政策相互に監視するというサーベーランス機能強化、それから国際流動性運営、それからIMFの役割、この四つ課題が投げかけられまして、徹底的な検討の後、本年六月にございました、我が国の東京で開催されました十カ国蔵相会議にその報告書が提出されたわけでございます。その報告書におきましては、全般的な固定相場制に復帰することは非現実的であるけれども、また、ターゲットゾーンといいますか、フランスの提唱していますようなターゲットゾーンについても、我が国を含む過半数の諸国は現状では現実的でないという見解でございましたけれども変動相場制のもとでも、為替相場の一層の安定を図るためには、インフレのない持続的成長への経済パフォーマンスの調和、コンバージェンスと呼んでおりますが、経済政策の国際的な影響についても十分な配慮を払うべきであるという政策協調が強く確認されたわけでございます。  また、その報告書の中でも、これらを担保するために国際的なサーベーランス、つまり各国経済についての相互監視機能強化というものも必要だというふうに合意されております。また、市場への介入につきましても、為替市場に対する当局の姿勢を示すのに有効たり得ると判断されたときにはそういう措置をとるということも書かれております。  そのような十カ国蔵相代理会議検討の結果につきましては、まず蔵相会議で採択された後、先般十月ソウルで行われましたIMF暫定委員会におきまして途上国も加えまして予備的な検討が行われましたけれども、来年四月の次回の暫定委員会で本格的な討議が行われるというふうな決定になったわけでございます。九月に行われました五カ国蔵相会議というのはこのような流れの中で、いわば十カ国蔵相会議で出ました国際的な政策協調あるいはサーベーランスというものの一環として開かれた色彩があるわけでございます。  五カ国蔵相会議は九月二十二日、ニューヨークにおいて五カ国の蔵相及び中央銀行総裁がお集まりになられまして、我が国からは竹下大蔵大臣澄田日銀総裁などが出席したわけでございますけれども、この会合におきましては通貨を初めとする現下世界経済をめぐる諸情勢について意見の交換が行われました結果、各国経済パフォーマンス政策協調が順調であるということ、これはお配りしたアナウンスメントの中にも三または四項に出ておりますが、他方、それが現下為替レートに正しく反映されていない、これは第五項に出ております。それから現在、保護主義圧力が高まっている、これは十一項に出ておりますが、それらについてまず認識一致を見たわけでございます。  このような現状認識を踏まえまして、経済政策協調を一層進めるべきこと、それから為替レート適正化のためより密接に協力すべきこと、それから保護主義に対し強く抵抗することなどについて意見一致を見たわけでございまして、これにつきましては結論部分と掲示されております第十七項及び十八項に出ております。それからまた、各国附属声明というのを、このアナウンスメント附属声明というのがついておりまして、それにつきまして参加各国政策を着実に実施するということも合意されておるわけでございます。  このG5が行われた以後の為替相場動きでございますが、G5の合意に基づきまして、各国経済政策の一層の協調を進めるとともに協調介入を実施し、ドル高是正に向かってより緊密な協力を行うこととした結果、ドル高は御承知のように大幅に是正されたわけでございます。  このようにドル高是正が進んだ背景といたしましては、三月以来ドル高修正が進む中で、九月に入りまして、米国経済指標がいま一つはっきりしないというようなことから、経済指標において今後の成長がいま一つはっきりしないということから、為替市場全体にドル先安感が高まっていたことも挙げられると思います。また、ドル高是正への方向づけが米国のイニシアチブで行われた、あるいは五カ国蔵相会議につきましてもそういうような動きがあったという点、また介入のみでなく、各国政策協調について合意を見ておるという点が挙げられようかと思います。  以上、簡単でございますが、五カ国蔵相会議背景及びその内容について御説明いたしました。
  8. 大木正吾

    ○小委員長大木正吾君) 次に、MOSSの経過につきまして外務省から説明を聴取いたします。国広経済局長
  9. 国広道彦

    政府委員国広道彦君) MOSSが始まった経緯につきましては、ことしの一月の日米首脳会談後にアメリカから、一月末ですが、四人の次官がくつわをそろえてやってまいりまして、今後の日米経済関係に対処する一つ努力としてこういうことをやりたいという提案を持ってきたのがそもそもの始まりでございます。  と申しましても、そのもとになる話というのが日米首脳会談のときにあったわけでございまして、それは一月の日米首脳会談、もともと当時の日米貿易関係がますます大幅な米国から見た対日貿易収支赤字を見つつあるという現実、それから前の年の十一月に行われました大統領選挙までは、アメリカ政府も極力日本との経済摩擦問題をプレーアップすることを差し控えていたと思われるんですが、選挙に勝ちまして、もはやその必要もなくなったといいますか、そういう努力も特に行われなくなって、それまで日本との貿易関係について不満を抱いていた行政府担当レベルの者もまたその批判的な発言をし始めだというような情勢にありまして、このままいけば、年明けて米国議会が再開されたときに大変日米関係がまた厳しいことになるであろうという日米双方認識背景として日米首脳会談が開かれたわけでございます。  その会談におきまして、中曽根総理は、日米間の経済問題はこれは経済問題として解決する必要がある、そういう努力をしようと思っていますということを言ったのに対して、レーガン大統領中曽根総理がそういう積極的姿勢を示されたことを評価すると同時に、午前中の会談の終わりに、米国の方から見ると、日本の方でいま少し、いま少しというか、日本の方で市場開放をしてくれたら、日本に対する輸出が伸ばせると思う分野がありますと。そこで今このMOSS対象になっておりますテレコミとエレクトロニクスと薬品及び医療器械、それから森林製品、その四つ分野を例として挙げられたわけでございます。先ほどの総理発言のときにそれで同時におっしゃったこ とは、日米間の円・ドル委員会というのは非常に成功した、やはりそれぞれの行政のトップが十分話し合って解決策を見出すということが非常にいいのだと思う、だからやはりそれぞれの行政府トップ自分で問題に取り組むというふうに私も怪かの分野でもやったらいいと思うということを言われたのがありますが、それはアメリカ側も、自分らもそう思うと言っておりました。そういうふうな背景のもとに、恐らく三週間ほどかかってアメリカ側ではいろいろな検討をしたのであろうと思います。  そこで、一月の終りにやってきた一行が、MOSSとい言葉を、当時非常に奇異な感がいたしましたが、これはマーケットオリエンテッドセクターセレクティブ、こういう言葉でございますが、それのMOSSととったんです。  まずセクター意味ですけれども、彼らはこういう説明をしました。日本との貿易関係で、個々の品日について問題の解決を図っても余り能率的でない、だから、話すなら、ある分野をまとめて集中的に多角的な検討をしたい、だから、品目じゃありません、セクターです、あるまとまった分野ですと、こういうことを一つ言いました。そうでないと、余り大きな努力をする価値がない。アイテムだけですと、余り大きな輸出金額にならないから大きな労力を費す価値がないということでございます。  それから二番目はセレクティブの意味ですが、そういうセクターを選ぶ基準として、自分らは国際的に見てアメリカ競争力があると思う分野を選びます、つまり、よそにはうんと売れるけれども日本マーケットに問題があって売れない、そういう品目を選びますということでございます。  それから、マーケットオリエンテッドというのは、要するに、日本市場には関税とか輸入制限とか、目に見える貿易障害のほかに、やはりいろいろ日に見えない貿易障害があるというのが、アメリカ側日本に対して輸出している人たちの共通した見方ですと。したがって、今までは、日本輸入制限をやめるという話をして、日本輸入制限をやめても、私が申しましたのは輸入数量制限ですが、数量制限をやめても次は関税がある、関税を下げろ。関税を下げた、それでもやっぱり売れない。そうしたら、どうもスタンダードの問題がある、スタンダードを改善してくれ。スタンダードを改善した、それでも売れない。どうもカルテルか何かあるのじゃなかろうか、カルテルがあるとかないとか言う。しかし、あることを認めた場合、日本側であるということを認めたケースもあることはあるわけでして、カルテルとまでは言わなくても、何かビジネス同士カルテルに至らないまでも、それに近いような話し合いがあって輸入が妨げられているのじゃないか、いろいろな問題があるから、そういうのを全部まとめて話したいのです。つまり、輸入を制約している扉を一つだけあけたんではなかなか輸入に結びつかない、奥の奥まで全部扉を開く、そういう努力をしたいのだ、こういうことでございます。  聞けば聞くほど厄介な話ではありますが、当時の先ほど申し上げた非常に緊迫した情勢にかんがみて、やはりそういうアメリカ側の申し出は受けて立つべきであるという全体的判断をいたしまして、やりましょうという回答をしたわけでございます。  その後、一番我々が時間的に迫られておりましたのはテレコミ分野で、電気通信事業法が四月一日から施行されることになっておりまして、同時に、その結果NTTが、日本電信電話公社が従来の国内通信の独占をやめまして、民間企業に移って国内電気通信事業民間にも開放されるということになったわけで、この開放に当たって、その開放日本国内民間企業だけじゃなくて国際的に開放されるということをはっきりさせる必要がございます。したがって、MOSSの作業の一番大きな努力テレコミュニケーションに向かって注がれたわけでございます。三月末ぎりぎりになりまして大統領特使がやってきたりして新聞をにぎわしたことは御記憶にあると思いますが、本当に最後最後まで大騒動しまして、電気通信事業に関する限りはアメリカ側もほぼ全面的に満足をする、納得をするというところまで我が方のマーケットの整備といいますか市場開放が行われたわけでございます。  その後、他の三つ分野も含めまして、今来るときも、我々は何回やったかなと勘定をしてみようと思ったんですが、ちょっと今思い出せないくらい何回もやりました。  そこでもう一つ、話はさかのぼりますが、森林製品につきましては、ほかの三つがいわば成長産業であるのに反して森林製品は、衰退と言っては言葉が悪いと思いますが、伸びていない製品分野でございます。全体のパイが大きくなるときは問題の解決がやさしいのですが、パイが大きくならないとかむしろ小さくなっているような状態というのは、そこにまた外国の競争が入ってきて市場開放するというのは実は非常に難しいことでございますので、首脳会談に先立ちまして外相レベル朝食会をしたときに、やはりこの四つ分野についてアメリカ輸出を伸ばしたいのだ、だから日本も大いに市場開放をやってくださいという話がシュルツ長官から安倍大臣にあったときも、安倍大臣は、話の筋はわかるけれども木材製品というのは難しい、これはなかなか容易じゃないですよという話をした経緯がございます。予想どおりなかなかその後も、国内的にも難しい話でなかなか進展しなかったわけでございます。  ところがアメリカの方は、この問題につきましては合板等木材、それから紙製品の両方にわたりまして関税を下げろということに非常に執心しておりまして、我が方は木材については、御存じのとおり今、国会に出しております関税引き下げ法案で紙の方は二〇%下げるという案を入れてあるんですが、アメリカ側は、全部下げてゼロにしてほしいということを非常に強く言っておりまして、我が方は下げられないということの、そこだけで非常に問題が難航いたしておりましたし、今日でもしているわけでございます。  ところが、アメリカの方では、MOSSはやっぱりこれもだめだというふうな空気が徐々に強くなってまいりましたので、そういうことも考えまして、それから、これはいつまでもだらだらやっていたんでは余り成果が上がらない、だからある程度タイムテーブルを考えて集中的に努力すべきだという気持ちも私どもにございました。たまたま向こう側からも、このMOSSをやり始めて当初は特定に時期を区切るという気はなかったけれども、やっぱりMOSS成果が見えてこないということで国内的にも非常に困難が伴うから、ぜひとも年内MOSSを終わらせるというふうにやろうではないかという考え方が徐々に出てまいりまして、七月でしたか、日米外相会談がクアラルンプールで行われましたときに、正式にそういう話がありました。私どももその方がいいであろうという判断で、原則の問題、つまり例外はあるにしてもできるだけそういう方向でやりましょうということは私どもの方も答えたわけでございます。  しかし同時に、先ほど申したように、MOSSはどうも余りうまくいっていないということを言う人がアメリカ側で多いものですから、そこも考慮しまして、ひとつ中間報告をつくってみようじゃないか、何が既に合意され何が残っているということをはっきりさして、残っている問題についてこれから精力的に年末まで取り組もうということにしようではないかという話がされたわけです。  そこでは、私どものねらいは、いろいろアメリカ国内応批判する人に対して、これだけ実績が上がったではないか、これは日本が言っているんではなくて双方見解であると言える文章をつくろうと思いましてやったわけですが、これが先ほどのG5のときと前後しまして、安倍シュルツのラインで九月二十六日にこの中間報告ができたわけでございます。  お手元に今差し上げましたが、ここで三つのカテゴリーに分けまして、それぞれの分野ごとにも う合意し、実施されていること、それから合意がされていて今実施に移されてきつつあること、それから残っていて将来討議さるべき未処理案件という、この三つ部分に分けまして整理したわけです。ごらんのとおり未処理案件がそれぞれの部分にやはり残っております。それを目下片づけるべく努力をしておりますが、とれて私どもは、米国議会であろうと新聞記者であろうといろいろ言うけれども。これだけ成果を上げましたというものはできたわけでございます。また同時に、アメリカ側の思惑は、この残ったものをぜひ年内に詰めましょう、その目標といいますか、対象はこれだけですということが確認できたという気持ちもあるんだと思います。日本国内ではまだ残っている問題がこれだけあるということを日本政府はぜひよく国内の理解を得るようにしてくださいというふうな希望を米側は述べておりました。  それからまた同時に、これと前後して九月二十三日でしたが、米国大統領が新通商政策を発表したときに、このMOSSに特に言及しまして、このMOSS年内に終わらせるということを国務長官に指示したということを書いてございます。それから、その大統領通商政策発表文附属してある中に、MOSSについてはまだ新しい分野についてやるんだということも書いてあります。私どもは、新しい分野の問題につきましては、これを直ちにやりましょうということも、また同時にノーということも言っておりません。  実は、前回の日米首脳会談ニューヨークにおける最近の日米首脳会談のときも、我々役人レベルの話のときにこの話が出たんですけれども、私どもは、このMOSSというのはアメリカの一方的アクションではなくて共同作業でしょう、共同作業である以上はお互いの同意によって取り上げるので、今アメリカは何かやりたいのがあるんですかと言ったら、特定の分野はないのだ、それはまたそのときに話しましょうということにしてありまして、特にこの前の日米首脳会談自身では、こういうMOSSの新しい分野の話というのが具体的に出たわけではございません。  そこで、今後でございますけれども年内にぜひともこの四つについて残っている問題を片づけて成果を上げて、来年の初めになりましたら、また議会等で激化してくる日米貿易摩擦の厳しい情勢に対処して、我々はこれだけの成果を上げたという実績を示し得るようにしたい、そしてアメリカ行政府が、議会に対して、議会保護主義立法をしなくても、行政府同士の話し合いでこれだけの成果を上げ得るんだという、その証拠を示し得るようにしたい、こう思っております。  ただ、ここの共同報告の中に書いてありますように、その最後に、「また日米双方は、できる限りの範囲内において、一九八五年末までに未解決案件処理していく決意である。」と書いてあります。このできる限り——フェアーアットオールポシブルというところが苦心のところでございまして、先ほど申し上げました木材製品関税率の問題のみならず、まだ一、二と申しますか二、三と申しますか、若干の点につきまして、本当に年内にきれいに解決合意を見得るところまでいくかどうかということは、必ずしも自信がございませんし、それから見通しを立てることが適当でないこともございますのでこういうふうに書いてあるわけでございますが、そのことはともかくとして、全力を挙げて解決努力をすべきであるということは先ほど申し上げたとおりでございます。  それでは、MOSSというのは、これほど大騒ぎをし、かつ労力を使い時間を使ってどういうメリットがあるんだということに疑問をお持ちだと思いますので、一言それについて御説明申し上げますと、私どもにとっては、こういうふうにアメリカ側日本にやってきて、日本国内のことまでいろいろ質問をして話し合うということは相当厄介なことでございます。ある意味では、何でそんなに人の台所まで入ってくるんだ、我々は玄関で取引をすればいいのに、台所まで入ってこなくてもいいではないか、こう言いたくなることがたびたびあるわけでございます。  しかしながら、基本的にある問題は、ますます強くなりつつある米国内における保護主義でございまして、これをどう処理するかということにつきまして、私どもがこのMOSSの中に認めた利点というのは、これはアメリカ政府日本政府が共同で問題に対処しているということを示す非常に大きな象徴的意義があるということでございます。円・ドル委員会でもそうですが、あれだけアメリカ側自分をインボルブして問題の処理に当たりますと、でき上がったものについては、これを評価し、国内で宣伝せざるを得ない立場になるわけで、これは行政府が、やはり日米間はこうしてうまくいっているんだということを自分で宣伝する立場に置かれるわけでございます。  それから第二は、やはり話し合ってみると、客観的といいますか、相手の方の見解というのがよくわかるわけです。日本は昔からこうやっている、外国は差別していない、これで何が悪いのだという話のときに、向こうから、いやそれでは我我から見たらこういう実質差別になるとか、これでは結局輸出はできないのだとか、それからアメリカではこういうやり方をやっていて、それで何も不都合がないのに何でそういうことをやるんだとか、そういう問題によくぶち当たります。そういうケースが現実によくありました。それで、我我が国内で行っている規制というのは、やみくもにやっているんではありませんで、規制をやる公益というものがあるわけでございます。環境とか安全だとかいろいろな公益があってやっているわけですが、その公益を守るために、その手法じゃなくたって、こういう手法でもっと輸入障害にならない方法があるでしょうということも、なるほどそうかなというものももちろんあるわけでして、そういうふうに客観的というか、第三者の見地を導入して物を考えるということで実質的なメリットもあったろうと思います。結局、その結果は利用者及び消費者の便益ということに結びつくわけでございまして、そういう意味で新しい見地からの作業をしているというメリットはもちろんあるわけでございます。  しかしながら、もちろん国内的にいろいろ社会的、政治的困難を伴う問題にぶつかることもあるわけでございまして、その間の調整をいかにするかというのが、我々が過去においても、それからこれから先においても取り組まなければいかぬ課題でございます。  以上で、とりあえずの説明を終わらせていただきます。
  10. 大木正吾

    ○小委員長大木正吾君) どうもありがとうございました。  次に、アクションプログラムの実施状況及び内需拡大策につきまして、経済企画庁から説明を聴取いたします。吉川調整課長。
  11. 吉川淳

    説明員(吉川淳君) それでは、アクションプログラムの実施状況を先に御説明いたしたいと思います。  アクションプログラムの実施につきましては、政府内にこのアクションプログラムの実行推進のための委員会をつくっておりまして、官房長官が長でございますが、各省の次官をメンバーといたしまして委員会をつくっておりまして、常時実施状況につきましてチェックしてまいっておるところでございます。七月末の決定以来三度ばかりこの委員会を開いておりまして、きょうの御報告はそのうちの一番最近の時点の委員会での実施状況のチェックということで、十月末現在ということで御報告申し上げたいと思います。アクションプログラムは非常に多岐にわたっておりまして、全体を、ある意味ではきのうもきょうも進んでおるかもしれませんけれども、やや、そういうことで時期を決めてその時点でチェックしてございますので、本日の時点で十日ぐらいあるいはそのタイムラグがございますかもしれませんけれども、それについてはお許しを願いたいと存じます。  ちょっとお手元にパンフレットのようなものをお配りしてございまして、そこにアクションプログラムの概要を整理してございますので御参考にしていただければと存じますが、一番初めは関税分野でございます。  関税分野につきましては、新ラウンドの推進のための交渉目標といったこと、それから関税の撤廃、引き下げ、さらには特恵関税制度の改善等がございますけれども、目下力を入れて実施のために作業しておりますのは関税の撤廃、引き下げに関する件でございます。  アクションプログラムによりますと、個別撤廃、引き下げ品目といたしまして七十二品目、それからさらに原則二〇%の関税引き下げを行う品目として千七百九十三品目、合計千八百五十三品目を決定してございます。  これにつきまして、原則として六十一年のできるだけ早い時期に引き下げを行うということをしておりましたが、これにつきまして六十一年でも一番早い時期ということで一月の初めからやりたいということで、十月二十四日に開催されました関税率審議会にこの件をお諮りいたしまして答申をちょうだいしてございます。目下それに基づきまして作業中でございますが、千八百五十三品目のうちワイン関係の四品目は再来年の四月の実施となっておりますので、作業上はこれを除きました千八百四十九品目につきましての作業をしておるところでございます。なお、これは本臨時国会にも御提出申し上げまして御審議をちょうだいしたいと思っておるところでございます。  それから、二番目は輸入制限の問題でございますけれども、アクションプログラムにおきましては、農産品につきましては、ガット等の交渉を踏まえながら我が国の農水産業の実情にも配慮しつつ、国際的動向に即した市場アクセスの改善に努めるということになっておりまして、本件につきましてはそのうち十三品目アメリカとの協定で決まっておるものでございますが、これが来春には期限切れとなる予定でございます。したがいまして、アメリカ側から本件につきまして話し合いを開始したいという提案はございますが、日本側といたしましては、その協議に先立って予備約話し合いに入りたいということでアメリカに回答しておるところでございます。  それから、輸入制限品目のうち鉱工業品につきましては、皮革及び革靴の輸入数量制限でございますけれども、ガットの場で適切に対処するということでございまして、これにつきましては、既にガットに対しましてこの件につきましての交渉と申しますか、そういうことにつきまして申し入れを行っておるところでございます。  それから、三番目の分野が基準・認証、輸入プロセスに関するものでございます。  これにつきましては、基準・認証、輸入プロセスの改善につきまして五つぐらいの大きな項目がございます。政府介入の縮小、特に自己認証制度の拡充、それから外国検査データの受け入れ及び外国検査機関の積極的活用、政策決定における透明性の確保ということで外国の関係者の意見を反映させるということ、それから国際基準への整合化、そして最後輸入手続の簡素化、迅速化でございます。  これにつきましては、アクションプログラムにおきまして合計八十八項目の改善措置を決めておるところでございますが、現時点におきましての整理で申しますと、八十八項目のうち二十六項目、全体の三割に当たりますが、につきまして既に実施済みでございます。残りの六十二項目につきましてなお作業中ということでございます。  それから、本件に関しましては幾つか法律事項がございまして、特に自己認証制度の導入を中心に四つの法律の改正がございます。一つは消費生活用製品安全法、消防法、ガス事業法、電波法の四つでございます。これにつきましては、いわゆる規制緩和関係の一括法案ということの中にこれを組み入れまして御審議をお願いしておるところでございます。  それから、その他各省に基準・認証の実際にやられておる状況につきまして、査察官にその状況を査察させ、そして指導を行わせるということでございまして、この件につきましては各省で既に査察官の方がその方針に沿いまして指導等をやっておりますところでございます。  それから、次の分野は政府調達でございますが、政府調達につきましてはいわゆる契約手続の改善を含めまして、既に決定事項すべてにつきまして本年の十月一日から全項目につきまして実施済みでございます。  それから、金融資本市場に関しましては、これは八項目が決定になっておりまして、預金金利の自由化に始まりまして、債券先物市場の創設、国内における債券発行市場の整備、証券会社による円建てBAの流通の取り扱い、外銀の信託参入、東京証券取引所会員権の拡大、ユーロ円債等の発行の弾力化、金融自由化の環境整備の八項目でございます。  このうち既に四項目ばかりが実施されておりまして、一つは九月に東証の正会員の定数枠の拡大をやっております。それから十月に入りましていわゆる大口の定期預金の自由化、単位十億円以上でございますけれども、自由化が実施になってございます。それから十月の中旬に債券先物市場が発足してございます。それから外銀の信託参入につきましても、既に二行につきまして営業免許が与えられております。  それから、最後がサービス、輸入促進の分野でございます。  これは非常に多岐にわたっておりまして、かいつまんで申し上げたいと存じますが、まずサービス分野につきましては、外国弁護士の問題につきまして、次期の通常国会への法律改正を目途といたしまして、法務省、日弁連の間及びそれにアメリカ側等も加わりまして詰めの作業がなお続いておるところでございます。  それから、サービスの中でやはり法律項目がございまして、航空法の改正というのがございます。これは航空機関士を乗り組ませなければならない航空機の範囲についての規制緩和でございまして、これも先ほど申し上げました規制緩和一括法の中でお願いしておるところでございます。  それから、その他不正商品の取り締まりというのがございまして、これは警察庁の方で本年の十月を不正商品取り締まり等の強化月間といたしまして取り締まり強化に努めたということで、検挙、逮捕等も出ておるようでございます。  それから、輸入促進につきましては、本年十月と十一月を全国的規模での輸入拡大月間といたしまして、インポートバザールを始めまして、全国約千カ所におきまして輸入品バザールを実施中でございます。このうち四百ばかりは既に実施済みということでございます。  それから、輸入金融の方で、財政投融資金利が十月に引き下げになりましたので、製品輸入金融につきまして行っております輸銀の貸し付けの金利を下げております。  それから、投資の促進ということで、開発銀行におきます対日投資促進の融資の金利も同様に引き下げを行っておるところでございます。  以上がほぼ概要でございますが、なお、アクションプログラムにつきましては、これは実施という中に入るかどうかあれでございますけれども、非常に広範かつやや専門的分野にわたる面もございまして、七月以降これは内外に対しまして精力的なPR活動をやっておりまして、PR活動が進行するにつれましてこのアクションプログラムに対する評価が高まっておるというふうに感じておるところでございます。本件につきましては、なお実施及びこの広報活動を引き続き努めてまいりたいと思っております。  それから、内需拡大の対策でございますが、これもお手元に十月十五日に決定になりました対策をお届けしてあるかと思いますけれども、本件はそもそもは対外経済問題諮問委員会におきまして四月に報告書が出されまして、それ以来の課題となっておったものでございまして、アクションプログラムの策定当時にも総理の方から引き続いて内需拡大に取り組むという宣言をされておりまして、それを受けまして採用してまいったものでございます。  考え方といたしましては、経済の拡大均衡を通じて経済摩擦の解消に資するということで、アクションプログラムそれからG5以後の円高の定着、そしてこの内需拡大策と、いわば三位一体の形で対外均衡是正に取り組んでまいりたいということの一環でございます。  本件につきましては、大きく二つの対策に分かれてございまして、「当面早急に実施する対策」と、それから「今後推進する対策」ということでございます。ややその時間的な面を考えておりまして、前者が名前どおり当面の対策ということで、要すれば年度内といったことで考えておるわけでございます。  この「当面早急に実施する対策」も四つの柱がございまして、「民間住宅投資・都市開発の促進」が最初の柱でございます。それからあと「民間設備投資の促進」、それから「個人消費の喚起」、「公共事業の拡大」と四つの柱になっております。  最初の住宅投資、都市開発の関係でございます。ややこの分野一つの目玉かと存じますけれども、これにつきましては五本ばかり考えでございます。これも今、国会での御審議をお願いしておるところでございますけれども、住宅金融公庫の貸し付けにつきまして、特別割り増し貸付制度というのを導入したいと思っておりまして、これはこれまでの貸付枠とは別途に名前どおり特別の貸付枠をつくるものでございます。これによりまして、個々の住宅投資をやりたい方の投資の懐を深くするといいますか、そういうことで増額してまいりたいということでございます。それからさらに、戸数の増加ということで、これは約二万戸ばかりの追加を行いたいといったことで、全体の事業規模としては五千億円程度を考えておるところでございます。これはもし国会の方で御承認をいただけをしたら、早速下期の受け付け期間を三月までずっと続けてやることになっておりまして、すぐに実施に入りたいということでございます。  それから、「宅地開発の円滑化」、「都市開発の促進」、この辺は規制緩和の案件でございまして、それぞれ規制緩和をやることによりまして、宅地開発の円滑化、都市開発の促進に努めたいということでございます。  それから、「国公有地等の有効活用」というのがございまして、これはその数字といたしましては六十年度内で国有地六十九件、それから国鉄用地二件の処分の予定が決まっておりまして、この処分を進めてまいりたいということでございます。その他国公有地の活用を条件といたしました整備事業の活用もあるわけでございます。  それから、これは新しいネットの住宅投資ということじゃないわけでございますけれども、最近増改築等リフォームの促進につきましての需要が上がってきておりますので、こういう増改築等リフォームの促進ということも掲げてございます。  それから、「民間設備投資の促進」につきましては、特に電気事業及びガス事業につきまして追加投資をお願いしたいということで、六十三年までの間でございますが、一兆円程度の追加をお願いしておるところでございます。  それから、その他日本開発銀行の融資の活用、それから十月に発足いたしました基盤技術研究促進センターの活用等がございます。  それから三つ目の柱、「個人消費の喚起」でございますが、本件につきましては特に摩擦等との関係ではカラーテレビ、自動車についての割賦販売標準条件の緩和があるかと存じます。特に自動車につきましては今回割賦販売標準条件をすべて撤廃するということにいたしております。したがいまして、これまで要求されておりました頭金とかそういったものの要求がなくなるわけでございます。輸入車などは非常に頭金が大きいというふうなこともございまして、この辺が効果があればと思っておるところでございます。  それから、「公共事業の拡大」でございますが、公共事業は四件ございまして、一般公共事業についての国庫債務負担行為による増加、それから財投の追加により事業を進捗する公団等への財投の追加、それから災害復旧工事の実施、それからさらに、地方単独事業におきまして地方債の活用によります下水道等の事業の実施ということでございまして、どれが総額一兆八千億円ということになっております。  それから、残りのといいますか、第二部の方が「今後推進する対策」でございまして、これは柱が四つございます。「公共的事業分野への民間活力の導入」、「規制緩和」、「週休二日制の拡大」、「国公有地等の有効活用」でございます。  これは当面実施するべきものもございますが、おおむねやや中期的に着実に実施していかなければならないという種類のものでございまして、「公共的事業分野への民間活力の導入」につきましては、立法措置を含めまして事業の効率的かつ円滑な実施を図るための所要の環境の整備を引き続きやっていくということでございます。  それから、「規制緩和」につきましては、九月の閣議決定におきまして二百五十項目ばかりの規制緩和の項目が決まってございますが、そのうち特に内需拡大と関係がありそうなもの等につきまして三十数項目ばかり選んでおるのが別紙のものでございます。このうち一都は規制緩和一括法律案に載っていくものかと思いますが、また一部は今後さらに着実に措置を実施していくというものでございます。  それから、「週休二日制の拡大」でございますけれども、これにつきましては目標を掲げてございまして、今後五年間に週休日等の年間休日日数が十日程度増加することを目指すということでございまして、それによりまして、年間の休日日数におきまして欧米主要国に近づけたいということでございます。  それから最後が、先ほどの当面の措置に載ってございませんでした「国公有地等の有効活用」でございます。これは土地委託制度の導入等の問題がございます。  今回の対策につきましてどういう効果があるかという御質問がよくございますのでコメントさせていただきたいと存じますが、以上のような対策の中で割合数量化になじむといいますか、ある程度効果を図る手法がございまして、楽ではあってもある程度前提条件を置けば何とか計算ができそうだというものがございます。そういうものにつきまして数字を足しますと、事業規模で先ほどの例えば公共事業の拡大とか、それから住宅投資の追加とかでございますけれども、おおむね三兆一千億円程度の事業規模になるのではないかと存じます。  ただ、これをいわゆるGNPベースに証します際には、土地取得などはGNPベースに乗りませんので、そういうものを修正いたしまして、さらにこれがまた波及効果というものもございますので、そういうことを考えまして、ほぼ今後一年間ぐらいの間にこれが四兆一千億円程度のGNPの増加になるのではないか、これは名目でございますけれども、そういうふうな計算をしてございます。  それから、輸入への効果でございますけれども、こちらの方になりますともっといろいろな前提条件というものが加わってまいりますし、例えば、現に円高の影響等も入ってまいりますのでなかなか難しゅうございます。そういう他の条件をやや変化なしというふうなことで、これもラフな計算でございますけれども、一年間の輸入増加額としては二十億ドル前後かなというふうな計算を経済企画庁の方でやっておるところでございます。  以上でございます。
  12. 大木正吾

    ○小委員長大木正吾君) 以上で説明の聴取は終わりました。  これより質疑を行います。  質疑のある方は、小委員長の許可を得て順次御発言を願います。
  13. 倉田寛之

    倉田寛之君 いろいろ御説明をちょうだいしたわけでございますが、私は、円・ドル問題で数点、さらに、先ごろ来問題になっております精密ベアリングメーカーのミネベアのいわゆる株式公開買い付けの問題等々に絞って御質問申し上げますが、二十五分程度の質疑時間でございますので、簡明にわかりやすくひとつ御答弁のほどをお願い申し上げたいというふうに思うわけでございます。  先ほどお話がございましたように、G5の声明の後に円の急騰というのは進行中でございます。どのような水準で安定するかということを予想することは大変困難な要素があろうと思いますが、ここG5以後の大蔵大臣あるいは日銀総裁のコメントのトーンというのはだんだんと変わってきておることも事実でございます。仮に、現在の水準で推移をいたしたと仮定いたしまして、日米間の貿易収支というのはいつ、どの程度改善をされるという見通しをつけていらっしゃるのか。先ごろ、ある有力な金融筋がそれらについて調査をした結果を発表した資料を私も拝見いたしましたが、実質的には、貿易収支の黒字の縮小という問題については六十二年度以降になるのではないか、こういう見通し等も実は調査の報告等に出ているわけでありますが、この点についてまずお尋ねをしたいと存じます。
  14. 橋本貞夫

    政府委員橋本貞夫君) 一般に、貿易収支の動向につきましては、内外の経済動向とか、あるいは原油などの一次産品価格の動向とかさまざまな要因に左右されるものでございますので、為替レートの動向によりまして日米の貿易にどのような影響を与えるかということを示すことは難しいわけでございますが、円・ドルレートが今後どういうふうに推移したとすれば対米の黒字がどういうふうになるかという試算というのもこれ以上にまた難しいわけでございまして、その点私どもといたしましては、このG5のアナウンスメントにありますように、秩序あるドル高是正基調が定着することによりまして対米貿易黒字が縮小し、対外経済摩擦の解消に資することを期待していると申し上げるにとどめたいというように思っております。
  15. 倉田寛之

    倉田寛之君 それ以上はお伺いをいたしませんけれども最後に、対米資本流出の問題のときにまたそれについてはお伺いをしたいと思うのです。  これは、通産省おいでになっていらっしゃると思うのですが、現実的にこのような状況が続きますと我が国の中小企業あるいは地場産業等々の影響というのは大変深刻であろう。現実に、そういうような中小企業団体中央会が緊急に調査をした結果等々においては大変懸念を持っている状況があるわけでありますけれども、これらに対する対策、対応、救済策というようなものについてどのようにお考えでございますか。
  16. 上田全宏

    説明員上田全宏君) 現在、円相場の急激な上昇によりまして一部中小企業者につきまして経営環境の悪化が予想されるわけでございます。このため、既に、現行施策を前提といたしまして適切かつ機動的に対処するように政府系の中小企業金融三機関、それから全国信用保証協会連合会にあてまして、中小企業庁長官名、大蔵省銀行局長名連名でおのおの通知をいたしたところでございます。これは十月二十一日に既に行ってございます。それから、既に六十一年度の中小企業対策といたしまして、国際経済上の環境変化に対応するために、関連する中小企業者の支援といたしまして、国際経済調整のための特別貸付制度というものを創設することを考えております。それから、現在ございます中小企業事業転換法を拡充、延長いたしまして新しい事業転換法を制定いたしまして、引き続き税制、金融上の助成措置を講じたいというふうに考えておりまして、おのおの予算要求を現在行っておりまして、中小企業庁としては実現に向けて鋭意努力をいたしておるところでございます。  さらに引き続き今後の動向を十分注視する必要があるわけでございますけれども情勢の推移によりましては、六十一年度を待たずに所要の措置を講ずることを検討いたしたいというふうに考えております。
  17. 倉田寛之

    倉田寛之君 その対応というのは極めて大切なことでありますので、なお慎重に対処されることをこの際要望申し上げておきます。  次に、円安というのは直ちに値上げに響く、しかし円高というのは容易に輸入製品等の値下げには結びつかない、そういう感じを私は非常に持っている一人でもあります。そこで、先ごろ電力等等の企業体は非常に慎重であるという報道がなされているわけでありますが、電気、ガス等における差益還元の問題についてどういうふうに行うべきか、お考えでしたらこの際お尋ねをしておきたいというふうに思います。
  18. 林康夫

    説明員(林康夫君) お答え申し上げます。  現在の円高傾向は、今始まったばかりでありますので、私どもとしてはその影響を見通すことは大変困難であると考えております。また、為替レートの変化で実際に電力会社等の収支面に影響が及ぶまでにはタイムラグがございます。直ちに収支に影響が出るわけではございません。しかしながら、いずれにせよ、今後為替レートの動向等事態の推移を慎重に見守ってまいる所存でございます。また、市場商品であります石油製品につきましては、価格は市場メカニズムの中で決定されることが基本でございますので、今お話しのような問題は市場の中で解決されていくのではないかと考えております。
  19. 倉田寛之

    倉田寛之君 また、本委員会でも過去に明らかにされておりますが、製品輸入というものが進まない原因というのは、一つには流通経路あるいは高価格等々に問題があるという指摘を実はされているわけでありまして、先ごろ政府が発表をしたウイスキーの輸入価格のマージンの問題等々の一覧表を拝見いたしますと、この実態というのは改善をされなければならないと私は思うし、また、何らかの指導をなされるべきであろうというように実は思うわけであります。数字的なものは既に報道されておりますから時間の関係で省きますが、この点もひとつこの際お尋ねをしておきたいと思います。
  20. 山下弘文

    説明員(山下弘文君) 通産省の商政課長でございますので、御指摘のウイスキーの問題につきましては、私ども直接調査をしておりませんで大変恐縮でございますが、私どもがやりましたブランド品の方のデータなど若干コメントさしていただきますが、私どもの方ではいわゆるブランド品、有名商品、その辺が外国の原産国の値段に比べて高過ぎるのではないかということで調査をしたわけでございます。そういう種類の商品は比較的消費財全体の中でのウエートというのが小さいわけでございますけれども、その中に原産国に比べてかなり高くなっているというような商品があったことは事実でございます。  私どもといたしましては、そういう価格形成の過程で流通機構がおかしいのかどうかということでチェックをしてみたわけでございますが、卸売とか小売とかいう段階につきましては、輸入品の方がどちらかといえば短い流通経路をとっておるということを見出した次第でございまして、問題は輸入業者の段階、これをどう考えるかということになろうかと思いますが、輸入業者につきましては、特にこういうブランド商品の場合には、広告費の負担ですとか、あるいはアフターサービスの負担ですとか、そういう日本国内品であればメーカーがやっておりますような分野をかなり担当しておるということで、これは流通の方と考えるのか、あるいはメーカー的機能の代行と考えるのか、そこら辺をもう少し詳細にチェックをしなければいけないなという感じがございます。  そして、値段のこれからの問題でございますけれども、私どもはそういう比較的高い価格になっております商品につきましては、売り手側の販売戦略という面に依存しているというような感じを受けておりまして、その辺につきましては、企業にゆだねられた問題ということで、輸出者側に対して、こういう限られたマーケットでの販売のみに満足しないで積極的に商品開発をしてほしいというようなことを期待しておりますし、政府としては、日本市場についての情報の提供、あるいはコンサルティングというようなことを充実してまいりたいというようなことをまとめた次第でございます。
  21. 倉田寛之

    倉田寛之君 せっかく御説明をいただいたんですが、大変具体的にどうなるかということの理解は私できないわけで、これは指摘だけしておきますが、政府が発表された例のウイスキーの問題などは、御案内のように、七百円から九百円のウイスキーが一万円である、いわゆる総流通マージンが七割前後に達しているわけでありまして、こういう実態というものに対していかに指導をしていくかということはやはり今後の課題であろうと思いますから、この次機会があったときにまたお尋ねすることとしまして、指摘をしておくにとどめておきます。  それから次に、御案内のように、現在の円相場というのは、先ほど来のお話をお聞きをしておりまして、私は通貨当局の強い介入姿勢というものを禁じ得ませんし、また、そのとおりだろうと思うわけでありますが、心理相場の感が非常に強いのではないか。ですから、G5声明の前後でこれまでのドル高・円安をつくり出していた基本的な環境というものは変わっていないのじゃないか。要するに、今後も市場介入によって円高基調というものを維持されるのかどうか、この辺についてお尋ねをしてみたいと思います。
  22. 深井道雄

    参考人(深井道雄君) 最近のドル高・円安の修正動きでございますけれども、おっしゃるとおり、G5以降の各国協調以来、非常にピッチが進んだわけでございます。しかしながら、詳細に見てみますと、必ずしもG5以後介入だけによってそれが訂正されてきたということも言えないのじゃないかというふうに我々は考えております。というのは、ことしの二月ぐらいから既に為替市場におきましてはドルがファンダメンタルズに対してちょっと高過ぎるんじゃないかというような警戒感が出ていたことは事実でございます。それがG5のあの五カ国の政策協調によって、それがきっかけになってドルが下がったということだろうと思います。  それからもう一つは、そのG5以降大いにドル高修正されましたのは、これまでドル高というのはいいことだということを言っていたアメリカが、政策をそこである程度変えだということが響いていたということでございまして、そういったこととあわせてG5以降五カ国の協調によってドル高修正が進んだというのが実態だと思います。  ただ、御指摘のように、介入だけによってドル高・円安というのが修正できるかといえばまさにそういうことでございまして、その他の面の政策協調がなければ維持できないということは御指摘のとおりだろうと思います。したがいまして、あのG5の共同声明におきましても、協調介入と同時に、協調介入という言葉は使っていないわけですが、為替調整と同時に各国政策協調ということを五カ国がそれぞれ掲げているわけでございます。なかんずくドル高背景でありましたアメリカ高金利、その背景であります。アメリカの財政収支の赤字ということの削減が重要だということは、五カ国の共通の認識になったようでございます。そのアメリカとしても財政の赤字の削減はなかなか難しいようでございますが、最近の報道によりますと、議会筋においてもかなりその辺のところ真剣になってきたと思われますので、これが進めば現在のドル高修正という動きがだんだん定着していくんじゃないかというふうに思っております。
  23. 倉田寛之

    倉田寛之君 関連して参考人にお答えをちょうだいしたいと思うのですが、日米金利格差の縮小に対する政策というものについてはどうお考えですか。
  24. 深井道雄

    参考人(深井道雄君) 現在日本経常収支黒字なのに円安だというのは、御承知のとおり資本流出しておるということでございまして、その背景には日米金利差があるということでございます。最近は若干減ってまいりましたけれども、それまでは大体四%以上あったということでございますから、どうしても資本流出するということになるとこれが円安の圧力になるという状態が続いているわけでございます。  これをいかに是正するかということでございますが、これは単純に考えればアメリカ金利を下げて日本金利を上げればいいわけでございますけれども金利の上げ下げ、特に金利水準全般の上げ下げとなりますと、単に為替相場だけのことについてやるわけにはいかないということでございまして、アメリカ金利下げには慎重でございますが、これはやはり財政赤字が削減されない限りインフレというのにつながるおそれがあるということでございます。また、日本につきましても、現在の景気の状況、特に経常収支黒字を減らすためには内需の拡大ということも考えなければいけませんから、ここで金利水準一般を上げるというようなことは適当でないというふうに考えております。  そこで、私どもとしては、少なくとも現在の内外金利差が広がらないように、そしてアメリカ側金利の低下を待っておるということでございまして、ただG5以降介入いたしまして短期の金融市場が締まってまいりました。その程度は日本側金利もその市場の引き締まりをレートに反映さしていいではないかというような感じでやっております。
  25. 倉田寛之

    倉田寛之君 円高を定着させるというには、アメリカ財政赤字の削減というのはもちろんであろうと思うし、アメリカばかりではなくて自由主義国各国協調利下げといいますか、そういうものも必要になるのではないだろうか。  今お話を聞いておりまして一点お聞きしたいのですが、現在の公定歩合を下げるべきか上げるべきか、この辺の見解をもしお聞かせいただければお聞かせいただきたいと思います。
  26. 深井道雄

    参考人(深井道雄君) 私どもの金融政策で今運営するに当たりまして一番重要だと考えておりますのは、対外アンバランス、黒字の縮小ということでございまして、そのためには現在進んでおります円高基調というものを定着させることが何よりも重要だということでございますので、ここで金利を下げますことはせっかく進んでまいりました円高の趨勢ということを逆転させるおそれがあるということでございますから、現在のところ公定歩合を含めて金利水準一般を引き下げるという政策をとる考えは私どもとしてはございません。
  27. 倉田寛之

    倉田寛之君 円安の最大の原因であった一つに数えられるのは、私は何といっても我が国の長期資本の対米流出に負うところが大であろうというふうに思っている一人であります。現在は数字的にはいささか変わっているかもしれませんが、毎月四十億ドル近い資金流出が貿易収支黒字国としての我が国においてはある。こういう責任を果たしていくというためには、資金の流出をとめる、そして国内に還流させる、そして円高を誘導するという手だてが必要ではないだろうか。ところが、政府が干渉のできるところというのは簡易保険、郵便年金等々があるわけでありますが、これは数字的に私の把握がいささかずれているかどうかわかりませんが、これらの資金の外国債運用というのは、八四年で約三千七百五十億円であるというふうに言われている。こういうような資金を還流させるということになれば、これらの資金の運用というようなものについて何らかの指導をしなきゃならぬのではないか、こういう実は感じを私は持つものなのですが、その辺について御意見があればお聞かせをいただきたいと思います。
  28. 橋本貞夫

    政府委員橋本貞夫君) 確かに、御指摘のように長期資本流出が大変増加しておりまして、中にはカバーを取ったがために為替市場には影響しないものもございますけれども、やはり為替市場に対して影響があるというふうに見るのが一般的であろうというふうに思っております。  その対策でございますけれども、御指摘のように現在何らかの意味で制約のあるもの、この制約は単に国際収支上の問題ということではなく、それぞれ個々の目的によってあるものでございまして、御指摘のような簡易保険あるいは一般に保険会社とか銀行とかというようなものにつきましても制約があるものもございます。これらにつきましては、その目的はまた国際収支とは別でございますけれども、現時点でそれを緩和するのは当面は適当でないという方針のもとにこのところ運用してきておるわけでございます。  なお、それ以外のもの、一般の民間の事業法人等の資金でございますけれども、最近になって実績を見ますと、そういう制約のあるものにつきましては伸びはかなり少なくなっておりまして、一般の事業法人等のウエートが急激に増加しておるわけでございます。  この一般の事業法人等につきましては、私どもこれを規制する手段ということも大変難しゅうございますし、仮に一部規制しても実効が上がらない、かえって諸外国の円に対する不信を招く、あるいは金融資本市場の自由化に逆行するんではないかというようなことから、これを何らかの形で抑制するのは適当でないというふうに考えております。
  29. 倉田寛之

    倉田寛之君 最後に、精密ベアリングメーカー、ミネベア株式の三割を実質的に手に入れた米英二社による株式公開買い付け問題について御質問を申し上げておきたいと存じます。  時間がありませんから詳しくは申し上げませんけれども、この件はいわゆる外為法によります、第二十七条一項一号の「国の安全を損ない、公の秩序の維持を妨げ、又は公衆の安全の保護に支障を来すことになる」という法律と同時に、対内直接投資等に関する政令というものとの間に実はぽっかり穴があいているわけでありまして、海外で発行する転換社債であるとか、新株引受権付社債を株式転換する場合は例外としているところに大きな問題が実は生じてきているわけでありますが、この政令をもう一度見直すという考え方はございますか。
  30. 橋本貞夫

    政府委員橋本貞夫君) 本件につきましては、まだ当事者から外為法上の対内直接投資の届け出が出ておりませんで、現段階では大蔵省としては事態の推移を見守っているというところでございます。  御指摘の件は、海外で発行された転換社債については一〇%の枠内に含めないという点でございますけれども、これはその証券発行、資金調達の特殊性にかんがみて設けられた制度でございます。しかし、一〇%の中には入っておりますので、それを超えるものにつきましてはたとえわずかでもやはり該当するというふうな運営になっております。
  31. 倉田寛之

    倉田寛之君 終わります。
  32. 松前達郎

    松前達郎君 貿易摩擦に関連する問題について幾つか質問さしていただきたいと思います。  先ほども質問された内容と重なるかもしれませんが、円高問題をまず最初に質問さしていただきたいと思います。  円高を定着させたいという希望があるということ、そうなりますと、やはり円高の定着のレートの値、これについてある程度の期待というものが当然あるべきだと思うのですね、目標といいますか、期待といいますか。これについて期待値というものを持っておられるかどうか。成り行き任せなのか、それともある程度の期待値を設定しながら誘導していこうということなのか、その辺についていかがでしょうか。
  33. 深井道雄

    参考人(深井道雄君) 御質問の点でございますけれども、私ども為替相場の特定の水準はもちろんのこと、一定のゾーンというようなものを念頭に置いて円高の定着を図るという考えは持っておりません。新聞の一部には、G5の合意のときに、そういったところが五カ国の間で合意されたのではないかというようなことも伝えられましたけれども、そういったことはなかったということでございます。  しからば、一体どういうふうにしてやっていくかということなんでございますけれども、既に円高がかなり進んできたということでございます。しかし、まだ為替市場の状況を見ますと必ずしも安定はしておりませんで、ドルが上がってくる、つまり円が安くなってくると介入の警戒感があって、ある程度のところでとまるということでございますけれども、一方円が高くなってくる、ドルが安くなってくると、そこでまたドルの買い需要が出るということで揺り戻しが起こるというようなことが繰り返されておりますので、まだ為替市場が円高基調の方向で定着したとは判断できないということでございます。  私どもといたしましては、為替市場市場観というものは、自然な形で円高基調に定着するというような非常に抽象的な考え方でやっているわけでございまして、それがとりもなおさずG5の共同声明のときに、各国為替相場というものが各国経済のファンダメンタルズを為替相場の面によりよく反映させるということでやろうじゃないかということが合意されたわけでございますから、私どもとしてはそういったことの趣旨に沿って円高の定着を図っていこうということでございます。
  34. 松前達郎

    松前達郎君 そうしますと、期待値というのはなかなかこれは発表するわけにいかぬだろうし、個人的にもおっしゃれない値だと思いますが、他の国の通貨ドルの関係ですね。例えばドイツマルクですとかスイスフラン、あるいはイギリスのポンド等とドルとの関連、関係といいますか、それと円とドルの関係、これを比較して見まして、最近何か特徴がございますか。
  35. 深井道雄

    参考人(深井道雄君) G5以降の動きを見ますと、ドルに対して一番値上がりしているのは当然円でございます。欧州通貨もマルクを中心に値上がりしておりますけれども、それは円に比べると上がり幅は小さいという格好になっております。
  36. 松前達郎

    松前達郎君 その辺の原因といいますか、特別な原因があってそういうふうな円だけが特別に高くなっているという、何か特別な原因があるかどうか、その辺お考えありましたら。
  37. 深井道雄

    参考人(深井道雄君) 繰り返しになりますが、G5の各国、五カ国が合意いたしましたのは、為替相場各国のファンダメンタルズをよりよく反映させていこうということでございますが、そういった点から見て為替調整を最も要するものは円とそれからドルの関係であるということだろうと思います。  つまり、アメリカはあれだけ大きな経常収支赤字であり、日本はこれだけ大きい経常収支黒字であるということでありますから、やはり一般的にはドル高是正ということでございますけれども、最もファンダメンタルズの関係から見て調整を要するのは円とドルの関係だという意識があって、各国ともそういった方向で政策運営していくのであろうと思います。
  38. 松前達郎

    松前達郎君 次にMOSS関係でお伺いしたいと思うのですが、先ほどお話しございました中のマーケットオリエンテッドの問題ですね。これはだんだんとアメリカ側もいろいろな要求をしながら、皆さんは大変精力的に会議をやりながら今日まで詰めてきたということなんですが、最終的にもっと深入りしてきますと、日本の販売組織の問題まで問題とされることになる可能性がある。恐らくいろいろな障壁が取られてきた、なくなってくれば当然先々ときますから、その先にやはり大きな障壁として残るのが国内販売組織があるのじゃないか。この辺についてはまだ問題になっていないでしょうか。
  39. 国広道彦

    政府委員国広道彦君) MOSSの協議の今までの経緯、それからこれからやることはお手元に差し上げました共同報告の中に出ているわけでございます。したがって、今扱っているMOSSで何をやらなければいけないかということは大体わかっております。それから判断しまして林産物製品、特に木材製品と紙の製品の流通経路において深刻な障害がないかということについてはかなり関心を持っております。それは目下検討中でございます。しかしながら、その他の面についてはそこまでの話は今までのところありません。恐らく今回のMOSSの作業は余りそこまで入らないで終わるのではないかと思いますが、これはMOSSといいますか、途中でMOSSかどちらかわからなく、境界がちょっと引きにくい話としましてセミコンダクターの三百一条の提訴がございまして、そこで一つアメリカ側が提起していることは、日本のセミコンダクターの市場は系列化されていて外国製品が非常に売りにくくなっているということを問題提起しております。これはむしろ三百一条のケースの方の問題としてであろうと理解しております。
  40. 松前達郎

    松前達郎君 半導体に関する問題は最近相当クローズアップされてきていたわけですけれども、いろいろ事情がわかってくると、どうやら日本の半導体がなければアメリカのコンピューターができ上がらないといういろいろな事情もあるようで、余り私はそこから先のセンシブルな議論に発展していないような気もするのです。日本における半導体業界の低迷もあるでしょうし、そういったようなものも当然あるものですからセンシブルになっていないような気もするわけですが、半導体を使っている、今度は電気製品ですね、一般的にコンピューターなども含めた。そういうものに関して恐らく販売組織その他の問題がまた出てくるのではないかと思うのですが、この点について電気製品については別にとりわけ問題とされてはいませんか。
  41. 国広道彦

    政府委員国広道彦君) エレクトロニクスを使う電気製品ですか、この電気製品につきましても、流通機構において貿易に影響を及ぼし得る商慣行の検討というのはこれから年末までに討議されるべき未処理案件の中に掲げられてはおります。これは従来の経緯から見まして、先ほど申し上げた木材製品紙製品ほどアメリカ側で強い関心ではないのではないかという気はしますが、項目としてはあると思います。
  42. 松前達郎

    松前達郎君 ちょっと今の林産物関係なんですけれども、これは前にこの委員会参考人の、これはたしかタイ国の方だったと思うのですが、御意見を伺ったときがあるのです。そのときに関税の問題が出てまいりまして、例えばアメリカ関税アメリカの製品を輸入する、あるいはその他の国も含めるかもしれませんが、一三%の関税だ、ところがASEANに関しては一五%だということをおっしゃったんです、今どうか知りませんが。そういった、それが差別だというふうなことをおっしゃったんですが、そういう問題はもう既にないのか、あるいはあったとしたら解決したのか、その辺いかがでしょうか。
  43. 国広道彦

    政府委員国広道彦君) 今日に至るまで米国から入ってくる合板と東南アジアから入ってくる合板、これは合板の種類が違います。種類が違うことにより違う税率でございます。針葉樹の合板は、これはアメリカからくる合板でございますが、一五%で、濶葉樹の合板は二〇%の関税がかかっておりまして、したがいまして結果的には差はあるわけでございます。合板の関税を下げる場合にアメリカと今MOSSをやっていて、下げること自身は既に意思表示をしているわけでございます。今、問題はどこまで下げるかということでございますけれども、そのときに東南アジアからくる合板の関税率をほうっておくというわけにはいかないというふうに我々は理解しておりまして、その関税幅をなくせ、同じ税率にしろと言っている東南アジアのインドネシア、マレーシア等の要求を本当に同じのところまでいけるかどうかという問題はもちろんあるわけですけれども、彼らの要求というのは当然頭に置いて処理しなければいけないというふうに考えております。
  44. 松前達郎

    松前達郎君 日米間の貿易摩擦の問題、これも非常に大きな問題ではありますが、恐らくそういう問題を詰めていって、いろいろな方策が出てきて、ある程度解決策もめどがつきそうになってくると、恐らく今度はECとの問題ですね、これもやはり同じような状況を展開してくるんじゃないかというふうに思うのです。現在ECからの日本に対する要望といいますか、そういうものについて大まかに言ってどういう面が一番大きな問題となってくるでしょうか。
  45. 国広道彦

    政府委員国広道彦君) ECとは、実は日曜日の晩からECの委員会の三人の委員が来まして、我が方と閣僚レベルの協議が行われるわけでございます。公式の見解はその場で出ると思いますが、既に伝えられているところによりますと、ECが非常に重点を置いている一つの要求といいますか、考え方は、日本が製品、これは工業加工品と農産加工品とありますが、製品の輸入を将来何年間ぐらいの間にどのくらいふやすつもりか、ふやすことを日本として目標とするかということについての数量的な目標を示すべきだということを言っております。これは厳格なコミットメントという意味ではありませんで、やはり日本は政府、民間挙げてそういう努力をすべきだ、ただ、すると言ったのではよくわからないので、どのぐらいだという大まかな、しかもそれは来年とかことしとかということじゃなくて、若干中長期的でめどを置いて努力をすべきだ、そういうことを大変強く言っております。  同時に、アクションプログラム関係でECの方で大変重視していたもので、我々が前回の決定で面倒を見得なかったものが若干あります。そういうものはたまたま大変注目されている品目であったがゆえに、ぜひ近い将来同様の措置をとってほしいということを言っております。若干例だけ申しますと、ナチュラルチーズだとかチョコレートだとかスキー靴だとか、まだ幾つかありますけれども、そういうものを挙げて要求しております。私どもはECに対して、米国MOSS等で我々が行った措置というのは当然、米国だけに便益が行くんではなくて全部の国に開放しております、したがって、電気通信市場開放されれば同様にECもその便益を得るわけですから、新しいマーケットの機会を大いに活用してくださいというふうに言っております。
  46. 松前達郎

    松前達郎君 アメリカの方はそれを十分認識しているかどうかですね。どうも今までの状況を見ますと、やはり相当自分のところを中心に考えているような傾向がある。特にアメリカの国会といいますか、議員レベルが相当利益代表的なところがありますから、そういう面でアメリカが十分それを認識しながら日米の貿易摩擦対策をやっているのかどうか、その辺がちょっと私も心配になるんですけれども
  47. 国広道彦

    政府委員国広道彦君) 個々の要求をしている民間会社の人ないしそれをサポートしている米国議会、議員のねらいがどこにあるかというのはそれぞれ違うと思います。ただ、私どもは交渉しておりまして、問題は市場開放であって、対米市場開放ではないぞということは我々もはっきりしておりますし、アメリカもその点誤解はないと思います。例えば、合板の関税を下げたらふえるのはアメリカの合板じゃなくてカナダだと。先ほど申しましたように、濶葉樹の合板の関係もやはり下げなきゃいかぬとしますと、より多くの利益はインドネシアに行くぞというような話をすることもよくございますが、アメリカは、その点はそれで結構ですというふうに言っております。
  48. 松前達郎

    松前達郎君 アメリカ側がそういう認識でやっていただければ結構だと思うのです。  それからもう一つは、貿易摩擦という問題に絡めて考えた場合に、日本の場合は資源もなきゃエネルギーもない国ですから、やはり付加価値でもって生きざるを得ない。ですから、ある意味で言うと貿易摩擦というのはいつまでもつきまとう問題である、ゼロになることはあり得ないと私は思うのです。だから、それに対する理解がお互いに得られるような対策、方策さえ完了して、十分相手方も理解するという状況でのインバランスというのは恐らくある程度は我慢してくれるんじゃないかと思うのです。  そこで、外交政策的な面になりますが、例えば、貿易相手はアメリカばかりじゃない、そのほかの国もあるとしたら、今まで相当制約を受けた国々があるわけですね。最近になるとココムの再検討という問題が出てきておりますけれども、これは対中国貿易の問題、これに特認をするような種類の製品が出てきている。これらの傾向といいますのは一体これからどういうふうに変わっていくだろうか。というのは、時代がどんどん変わって、技術も、いろいろな国でそれぞれ技術レベルも上がってくると、製品そのものを限定してココムの対象にしながら抑えつけておくというのがどうも時代にマッチしないやり方じゃないかというふうに思うのですが、ココムについて我が国が、これは日本だけでやっているわけじゃないのですから、どういう主張を今後していくか、その点についてお考えがありましたらお聞かせいただきたいと思います。
  49. 国広道彦

    政府委員国広道彦君) ココムにつきましてはかなり頻繁にリストの改定が行われております。その改定作業の中で新しい技術の発展段階というものを当然考えるわけでございまして、先ほど御指摘の中国に対する関係はまた若干違う観点からでございますけれども、一般論といたしましては、御指摘の技術の発展段階というものをわきまえた上で最小限必要なこととするという考え方でおります。
  50. 松前達郎

    松前達郎君 そこで中国との経済交流の問題になりますが、今中国との合弁の問題が非常にかけ声ほどは進んでいないというふうに私は聞いているんです。これはある程度国としての担保の仕方がどうも裏づけになっていないから、なかなか皆さん、そこに合弁を推進するということに余り熱心ではないというふうに私は思うのですけれども、そういったような問題も含めて、今後合弁について推進をするための政府としての施策というものが考えられているかどうかということと、ある意味で言うと、これはチャイナカードを使うというような感じのそういう外交的な経済政策というものがあっていいのじゃないか。これは何も中国だけじゃなくてもいいのですが、その辺についてちょっと大まかな話で結構ですからお聞かせいただければと思います。
  51. 国広道彦

    政府委員国広道彦君) 中国との二国間の経済関係は、たまたま私の所管でございませんので、御質問のとおりに大まかなことしか申し上げられませんが、一つはやはり中国の体制、あの中国が今持っている体制のもとで日本民間企業がどういうふうな合弁活動ができるかということについては試行錯誤の状態なんであろうと思います。それは日本だけが試行錯誤ではなくて欧米のほかの国々がやっていることも含めて試行錯誤なんであろうと思います。幸い、極端な困難に陥った例も私は聞いておりませんが、やはり試行錯誤の段階であるという状態は免れないのだろうと思います。  一つの方策として我々が今推し進めておりますことは、投資保護協定を中国との間で結びたいと思いまして、この話はかなり進んでおります。まだ合意が目の前に来たというところまではいきませんが、中国側も関心を持っております。これが一つの我々政府としてやり得ることではないかと思っております。  第二の御指摘のチャイナカードとおっしゃる場合の意味が私は必ずしもよく理解できているかどうか自信がございませんが、もし仮に、例えば米国との関係で、米国がそれほどやかましいことを言うようであれば、我々はもう米国とのつき合いはいいかげんにして中国市場を相手にやるぞというふうな意味が、もしそういうことでありましたら、何分にも市場の規模が違いますし、規模のみならず市場の質、それから行う技術交流、資金の動き方とか、そういうことが余りにも違って、果たしてそういうふうなことでカードになり得るかどうか、それよりもやはりそれぞれのメリットでやった方がいいのではないかという気がいたします。もし御質問に私の誤解がございましたらまた改めて説明いたしたいと思います。
  52. 松前達郎

    松前達郎君 規模が違うから相手にされないだろうというのはこれは当然だと思うのです。ただ私は、外交政策上ということで、金額的な問題、量的な問題じゃなくて、方向の問題でこういうのがないだろうかとちょっと考えていたものですから申し上げたんで、量から言えばまさにそのとおりだと思うのです。しかし、あらゆる国との貿易というものが盛んになるというのがやはり重要なことだと思いますので、先ほどココムの問題も申し上げましたし、中国だけじゃなくてその他の共産圏の問題もあるでしょうが、そういった面も十分考えてやっていく必要があるんじゃないか。ただこれはお金の量、いわゆる経済的な量という問題じゃなくて質の問題ですね。質というのは政策的な問題で考えていった方がいいのじゃないかと私は思ったものですからちょっとお伺いしたわけです。これはお答え要りません。  どうもありがとうございました。
  53. 中西珠子

    中西珠子君 これまでの御質問に重複するかもしれませんけれども、お答えが私はどうもぴんとこなかったということのためにもう一度お伺いするということなんでございますが、非常に協調介入などで円高が進みまして結構な面と同時に、その反面円高が急激に進行したために、殊に中小企業を中心とした輸出産業は大変な打撃をこうむっている。既に新潟の燕市あたりは相当の打撃をこうむっているという例が公明党・国民会議調査などでは出ているわけでございますけれども、そういった中小企業の輸出産業に対しましてやはり政策的な配慮というものも一方でやっていかなくちゃいけないと思うのですが、どのような対応をなさるおつもりなのかということと、また、輸入に依存している産業、殊に電気、ガス事業などは非常に為替差益というものが大きく出てくるということで、これをやはり国民への還元ということを考えていただかなきゃいけないのですが、今回はそういうことはするつもりはない、電気代、ガス代を下げるつもりは全然ないというそれぞれの企業の責任者の発言でございます。この点に関して政府としてはどのように対応するつもりでいらっしゃるかということがまず第一の質問でございます。
  54. 上田全宏

    説明員上田全宏君) お答え申し上げます。  円相場の急激な上昇によりまして、一部中小企業者について経営環境が悪化するということは十分予想されるわけでございます。現在いろいろ調査は行っておりますけれども、とりあえずの措置といたしまして、現行施策を前提といたしまして適切かつ機動的に対処するように政府系の中小企業金融三機関、それから全国信用保証協会の連合会にあてまして、去る十月二十一日に中小企業庁長官、それから大蔵省銀行局長の連名で今の適切かつ機動的に対処するようという趣旨の通達を出してございます。これは当面の行ったところの措置の一つでございます。  それから、今後のことでございますけれども、六十一年度の中小企業予算要求におきまして既に二点ばかり措置を行っております。一つは、国際経済上の環境変化に対応する中小企業がおるわけでございますが、そういった人たちを支援するために特別の貸付制度を創設するということが一つ。それからもう一つは、ただいま中小企業事業転換法がございますけれども、これが来年の十二月に期限切れになりますので、これを拡充、延長いたしまして新しい事業転換法をつくろう、それによりまして税制、金融上の助成措置を引き続きやってまいろうということで現在予算要求を行っておる。それで大蔵当局と鋭意折衝しておるところでございますというのが現状でございます。
  55. 林康夫

    説明員(林康夫君) 後半の部分の御質問に関しましてお答え申し上げます。  現在の円高傾向は始まってまだ一カ月ほどでございます。実際に電力会社の収支面に影響が及ぶまでにはタイムラグがございまして、直ちに収支に円高の影響が出るわけではございません。いずれにしましても、私どもといたしましては今後為替レートの動向等事態の推移を慎重に見守っていきたいと思っております。
  56. 中西珠子

    中西珠子君 どうもありがとうございました。  中長期的にやはり適切で効果的な対応をしていただきたい、それも国民の立場に立って考えていただきたいということをお願いいたしておきます。  次の質問でございますが、基準・認証制度につきまして、これを非常に簡素化したり政府介入を縮小したり、また自己認証制度を導入していくという方向だそうでございますけれども、営利を目的として、そしてこういった企業ばかりじゃないと思うけれども、社会的責任を自覚していない企業に自己認証制度を適用してやらしていくということについて、私ども殊に家庭の主婦などは大変心配する向きもあるわけでございます。例えば健康管理食品とかいろいろ出ていますし、化粧品その他いろいろあります。そういったものについて安全、衛生の確保ができるか、環境保全が果たしてできるのか、また消費者の保護というものがおろそかにならないのかというふうな心配が非常にあるわけでございますけれども、所管の物資がそれぞれ官庁によってお違いになるからこれは企画庁あたりから総括的にお答えいただいたらいかがかと思います。
  57. 吉川淳

    説明員(吉川淳君) お答えいたします。  先生の御質問につきまして、実は今回のアクションプログラムの策定過程あるいはMOSSでも医薬品等が入っておりますので、そういう過程におきまして消費者の方々からいろいろな御意見がございまして、経済企画庁はたまたま国民生活審議会を持っておりまして、その中に消費者政策部会がございます。消費者政策部会の方でアクションプログラムの策定と並行いたしまして国際貿易と消費者の利益についてどういう考え方をしたらいいかということで御検討をいただいておりまして、七月十二日付でその消費者政策部会から御意見をちょうだいしてございます。  その中で、やはり消費者の生命、安全、健康といった面への配慮について具体的な提案がございまして、これは基準・認証の関係で申しますと規格基準の見直しとかそれから外国検査データの受け入れなんかの場合でございます。これにつきましてそういう御意見をいただいておりましたので、私どもといたしましては、基準・認証、輸入プロセス等の種々の規制緩和等の問題につきまして十分消費者の方々のそういう御意見を取り入れておりまして、私どもといたしましては当然こういう点につきましては原則自由、例外制限の全く例外制限ということでございまして、その中で十分な配慮をしたというつもりはしておるわけでございますけれども、なお案件によりましては規制緩和は法律等でも御審議いただいておりますので、引き続き御審議をちょうだいできればと思っております。
  58. 中西珠子

    中西珠子君 どうもありがとうございました。  あくまでやはり国民の健康、安全、衛生というものを考えて、福祉というものも考えて処置をとっていただくということをお願い申し上げておきます。  それから、これまでも御質問があったんでございますけれども大蔵省、日銀としては大体円高をどの辺で定着させたいと思っていらっしゃるのかということと、それから公定歩合はもう当分いじらないというふうなお話でございましたけれども、それでよろしいのでしょうかということをまた重ねてお聞きしたいわけです。
  59. 深井道雄

    参考人(深井道雄君) どの辺の相場を目標にやっておるかという御質問につきましては、先ほど申しましたとおり特定の水準なりゾーンを設けてやっているわけではないということに尽きるわけでございまして、あくまで為替相場が円高方向で自然に定着してくるというような感じに持っていきたいということでございます。その意味でG5以降二百四十円から今二百飛び台まで来たということは、確かに円高が進んできたということは評価するんですけれども、現在のところはまだ今言ったような意味で安定していないから、一層円高基調の定着に努力しなきゃいけないということを考えております。  公定歩合の御質問でございますけれども、現在のところは公定歩合の引き下げということは全く考えておりません。もちろん金融政策の発動というものは常に機動的でなければいけないということは当然でございますから、今後につきましてはそのときどきの情勢を総合的に判断して決めていかなきゃいけないわけでございますけれども、当面は私どもの国にとって最も大切な問題というのはあくまで対外均衡是正である、黒字の解消である、そのために円高基調を図るということであるから、そういった点から言えば、当面は金利の引き下げというのは適当でないという考えでございます。
  60. 中西珠子

    中西珠子君 しかし、国内に対する影響ということをお考えには余りならないのですか。その心配はないと思っていらっしゃるわけですか。
  61. 深井道雄

    参考人(深井道雄君) 総合的に判断するということは当然国内の状況というものを含みます。それについてどう考えているかと申しますと、我が国経済、これは輸出でございますが、これは既にことしに入ってからアメリカの景気が少しスローダウンしてまいりましたからかなり伸び悩みになってきております。その意味で、輸出の景気を押し上げる力というのはだんだん弱くなってきている。今後これで円高が続きますと、その傾向というのは加速されるだろうというふうになっておりますから、その点ではデフレ効果というのがだんだん出てくるということは考えられます。  ところが、当面は幸いなことに内需でございまして、設備投資、個人消費、このあたりはまだかなり底がたいのでございます。設備投資も、もちろん業種や規模によって違いますけれども、一般的に言えば、現在のところかなり企業の収益水準がいいということでございますので、やはり合理化投資とか新製品の開発投資というのは行っていこうというのが一般的な企業の方の考え方のようです。個人消費はそんなに盛り上がっているという意味ではございませんけれども、私どもがいろいろ地方の小売の状況あるいは慣行の状況等から見るとかなり底がたいということでございますので、したがって、輸出のスローダウンを内需が支えておるという状況が当面の状況だと思います。こういった状況がいつまで続くかということはもちろん我々としては十分注目していかなければいけないと思いますけれども、当面は今の基調に大きな変化が生じてこないだろうというふうに考えておるわけでございます。
  62. 中西珠子

    中西珠子君 相当楽観的でいらっしゃるわけですね。私はそう楽観はできないと思っているんですが、これは意見の違いということもありますから。  次の質問に移らしていただきます。  これは外務省にお聞きしたいのでございますが、MOSS関係のことでございまして、林産物の件です。これから実施される事項といたしまして木材製品のところに4というのがございますね。「アクションプログラムに述べられているように、農林物資規格調査会の専門委員として外国関係者の任命及び規格の原案作成段階における外国関係者の参加。」。これは先ほども経済局長がおっしゃったように、話し合いをしてそしてともに決めていくということはお互いの理解も深まるし、大変結構だと思うのですけれども、この四番目を要求したのがアメリカ側だとするとちょっと内政干渉めいた問題というふうに感じるんです。これは日本側からオファーしたわけですか。
  63. 国広道彦

    政府委員国広道彦君) 一般論としてはアメリカからそういう表明があった。つまりこれはアメリカ資本の会社ではありますけれども、出てくる人は日本人なんです。それから日本法人なんですね。ですから、そこで本来外国と日本という関係にあるかどうか非常に疑問だ、そもそも疑問が存在すべきだと思います。一般論としてそういう外国からの輸入、外国製品をここでつくっている人たち、その人たち意見も平等に聞くべきであるというのが正しい態度なんだろうと思います。アメリカからそういう希望があったとき、一般論としてはそれは我々としても同じ考えですから同じ考えで検討しましょうというお答えをいたしました。具体的にこれはもちろん日本が考えて、この場でじゃこういう人たちに参加してもらうのが有益でしょうということで出てきている案でございます。
  64. 中西珠子

    中西珠子君 同じMOSS関係の木材製品、「討議されるべき未処理案件」の次に紙製品がございますね。これについてはちょっと、農水関係かもしれないからお答えがあれかもしれませんけれども、通産からお答えができるかもしれませんね。 「日本の紙産業における過剰生産能力」をどうするかということがありますね。これにつきましてはどのようなことをお考えになっているか、また「産業構造改善法の下でのダンボール原紙についての共同行為」、これもあわせてどのようなことを考えていらっしゃるのか御説明願いたいと思います。
  65. 渡辺修

    説明員(渡辺修君) お答え申し上げます。  御指摘の紙製品の関係でございますが、これから解決すべき案件というので四つ並んでございます。それで、現在までのところアメリカ側が非常に強く求めておりますのは、木材の場合と同様、1に書いている関税のところでございまして、これの引き下げを非常に強く言っております。  それから、二番目、三番目、四番目のところにつきましては、現在段ボール原紙につきましては非常に設備過剰になっておりますものですから、設備の共同廃棄を進めるということで産業構造改善法に基づきまして共同行為を実施しておるのでございますが、それの共同行為を実施する過程で輸入を制限的に仮にすることがあり得るのかどうかという点に焦点を当てまして、非常に専門的に細かく専門家会合で質問を持ってきておりまして、これにつきましては極めて細かく御説明申し上げておる、こういうことになっております。  それに関連いたしまして、過剰生産能力のところにつきましては特段の詰めた議論は進んでおりませんが、一般的なアメリカの疑問というのは、過剰設備を抱えておる企業というのは稼働率が低いわけだから収益が落ちて転廃業をしていかざるを得ないのではないか、それがなぜ日本の紙産業というのはそういうふうにならないで企業が存続しておるのか、そこの経済合理性からいってどういうシステムになっているのかよくわからない、こういう疑問点でございまして、非常に漠然とした疑問点でございます。これにつきましてはこの次以降改めて同じような形で専門家会合でよく説明をし誤解を解いていかなきゃいかぬ、かように考えておるわけでございます。
  66. 中西珠子

    中西珠子君 どうもありがとうございました。  それから、もう一つ最後にお聞きしたいのですけれども、先ほど御質問がありまして、そしてテレビにも出たし、また新聞にも出たことなんですけれども、殊に製品輸入を促進するに当たっての非常に大きな障害要因となっている流通経路の話としてその例示にお酒を挙げられましたね。洋酒。このお答えがとても歯切れが悪くて私は全然納得いかなかったんです。それは結局大蔵省の方の管轄でいらっしゃるから通産にお答えをしていただいたということが間違っていたのかもしれないのですけれども、じゃ通産の方の管轄でいらっしゃることを一つ取り上げますと、例えば化粧品なんか、これもやはり原価は非常に安いのに何万という価格がついて売り出されているという状況があるわけです。ですから、どうしても製品輸入を促進するにはマージンがこう物すごい、それこそちょっとほかの国では考えられないようなマージンで売られる。それはやはり流通経路、流通機構というものの改革を伴わなければだめなんだというふうに私は考えているんですけれども、その点に関して何か行政指導を通産省は御自分の所管物資においてはなさるつもりですか。
  67. 山下弘文

    説明員(山下弘文君) 先ほど御説明が不十分でして大変申しわけございませんでしたが、お酒に関しましては大蔵省ということで遠慮さしていただいたわけでございます。今御指摘の化粧品でございますが、今回私ども調査でも化粧品を取り上げて若干のブランドの何品目かデータを集めてみたわけでございます。その結果で申し上げますと、先生御指摘のとおり、原産国、生産国に比べますと大体二倍ちょっと上の値段になっておる。これはただちょうど私どもが取り上げた品目がそうなっているということで、数品目でございますので余り全体的なことまで申し上げるのはいかがとは思いますけれども、大体そういうことになっております。ただ、それを今度第三国、具体的にはアメリカの値段ということになろうかと思いますが、ヨーロッパの化粧品をアメリカで幾らで売っているかということでアメリカの値段と日本の値段とを比べてみますと、まだ日本の値段がやや高うございますけれども、一・四倍ぐらいのところに下がってくるというようなことは一つございます。  それからもう一つ、実際のコスト、値段の内訳でございますけれども、非常に大ざっぱに申し上げまして化粧品の場合も到着の価格、CIFの価格が、物によりますが、標準小売価格と言われておるものの一〇から二〇%ということでございます。それに総代理店のマージンといいますか、三〇ないし四〇%加わりまして、卸の段階で一〇から一五乗って、さらに小売店の段階で二五から三五乗って、したがって最終的に一〇〇になっているということでございます。この小売価格自身が実際に売られている価格、標準小売価格でございますので、実売価格とはちょっとまた乖離があろうかと思いますけれども、先ほど御説明しましたように、卸と小売の段階というのは国内産の化粧品のマージンと比べてみますとほぼ似たようなものでございまして、例えば卸段階では、国産品の場合でも一〇%程度のマージンを卸が取っております。それから小売段階では二五から三〇取っております。したがって、卸、小売に関する限り特に輸入品が不利に扱われているというような事態はないのではないか。そもそも国産品のマージンがこれだけ本当に要るのかどうかという問題もあろうかと思いますけれども、これは小売店のレベルでそうこれによって大きなもうけをしているというふうには私ども見ておりませんので、それなりのコストがいろいろかかっているということはあるんじゃないかというふうに思います。  問題の総代理店のマークアップのところでございますが、先ほどちょっと申し上げましたように、広告宣伝費を総代理店が実は持っている、原産地のメーカーが出してくれるわけではないというような要素もございますので、そういう要素をいろいろ考えてみますと、三〇とか四〇とかという数字自身がどこまでいいのか悪いのかというところはもう少し調べてみないとわからない。特に今回、総代理店に原産国でのこういうような工場出し値が幾らで、それぞれの流通マージンがどうなっているのだというようなことの資料も求めたわけでございますけれども、なかなかそこまでは出てこない、無理な要求だったようでございまして、十分そこは調べ切れていない。そういう点を含めてもう少し勉強しなきゃいかぬかなと思っております。  先ほどの行政指導の問題でございますけれども、私ども基本的には先ほどちょっと申し上げましたけれども、価格政策の問題について行政府がとやかく言うというところは極めて例外的なケース、例えば石油危機のときの緊急立法がございますけれども、ああいう特殊なケースに限るのが原則なんではないだろうかというふうに考えておりまして、先ほど申し上げましたような情報提供とか、あるいは競争品の例えば並行輸入の問題とか、競争秩序を確立していくような過程を通じて自然に値段が合理的なものになっていく、そういうものを期待したいというような考え方でおります。
  68. 中西珠子

    中西珠子君 化粧品の例は通産がそれは管轄しているとおっしゃったから一つ挙げたんですけれども、これは農水の関係ですからだめですとか、大蔵の関係ですからだめですとか、これは厚生省の関係ですからお答えができませんとかということをおっしゃるのは、お互いに縄張りを荒らさないという紳士協定なのかもしれません。しかし国民の側に立ってみれば、化粧品でもお酒でも、それから食料品、例えば牛肉でも、ほかの農産物、果物、そういったものだって物すごく流通機構が複雑で、マージンをいろいろな段階で取られるということのために非常に高い物を買わされるということになっているわけですね。ですから、どこの縄張りだからこれは知らないというふうな態度ではなくて、総合調整をなさいまして、よく御相談をいただきまして、そして国民のためになるように、もしもっともっと輸入品を買ってくださいと中曽根さんがおっしゃるのならば、やっぱりもう少し値段を下げて買えるようにしてもらいたいという、そういう国民の声があることも申し上げておきます。
  69. 吉川淳

    説明員(吉川淳君) 今の先生の輸入品の流通問題に関する点でございますけれども、実は私、先ほどの御説明でちょっと落としておりましたので補足させていただきまして、やや間接的なお答えになるかもしれませんけれどもお答えさせていただきたいと思います。  輸入品の流通問題につきましては、これまでにもいろいろな要望あるいは苦情その他が来ておりまして、アクションプログラムの中で特にサービスの一環として取り上げております。アクションプログラムの中では特に輸入品の流通過程の問題、それから商慣行も含めましてまず調査を行いまして、それについての検討を加えて結論を出すということになっておりまして、今その作業を進めておるところでございます。それでどういう機関がいいかということで、経済企画庁の方に物価安定政策会議がございまして、その政策部会のもとにこの関係の専門委員会を九月に設置いたしまして、早速お願いしておるところでございます。  実は、きのうのこれに関する発表もその一環として各省で行われましたものでございまして、アクションプログラムでございますから常に実施予定が決まっておりまして、本件につきましても年度内を目途にこの専門委員会におきましてその実態等の調査結果及び検討を加えた結果をちょうだいすることになっております。ちょっと失礼いたしました。
  70. 中西珠子

    中西珠子君 どうもありがとうございました。終わります。
  71. 柳澤錬造

    柳澤錬造君 大蔵省の方にお聞きするんですが、先ほどの九月二十二日の五カ国蔵相会議、その結果によって円高・ドル安に急速に進んだというふうに見るんですけれども、先ほど日銀の方の答弁を聞いておりますと、そこでは何ら人為的に介入はしていないので、自然の成り行きに任したんだというような答弁のお話があったのです。私たちから見れば、この五カ国蔵相会議をやったがゆえにそういう方向に言うならばリードしたというか介入したんだと思うのですが、その辺はいかがでしょうか。
  72. 橋本貞夫

    政府委員橋本貞夫君) G5以後の市場動きでございますけれども、特定の目標またはゾーンを持って介入をしていったということはないというふうに考えておりますけれども、ファンダメンタルズをよりよく反映する方向でより一層の円高・ドル安を期待して、有用であると認める限りにおいては介入する姿勢で臨んだというふうに申し上げてよろしいのじゃないかと思っております。
  73. 深井道雄

    参考人(深井道雄君) ただいま先生のお話で、私が先ほど申し上げたのが若干私の言葉が足りなくて誤解を招いたようなので訂正いたしますけれども、先ほどの御質問で私がお答えいたしましたのは、やはりG5以後の急速なドル高是正というのは明らかに各国協調介入の結果でございます。  先ほどはそれだけで政策的、人為的にやっておると見るのかという御質問でございましたので、いやそうではなくて、既にことしの春ぐらいからドル高の警戒感というものが市場の中に潜在してきた、そこへもってきて各国があわせて協調介入をやろうということだったので、それが契機になって急ピッチにドル高是正が進んだ、こういった意味でございまして、G5以降はこれは数字はちょっと国際信義で申し上げるわけにいかないのですけれども日本アメリカ及び五カ国含めまして相当大量の介入を行っております。  ちょっと補足させていただきました。失礼いたしました。
  74. 柳澤錬造

    柳澤錬造君 その答弁でいいです。そうでないと五カ国蔵相会議の結論の十八番目で言っている、「大臣及び総裁は、為替レート対外インバランスを調整する上で役割を果たすべきであることに合意した。このためには、為替レートは基本的経済条件をこれまで以上によりよく反映しなければならない。」、途中飛んで最後のところで、「主要非ドル通貨の対ドル・レートのある程度の一層の秩序ある上昇が望ましいと信じている。彼らは、そうすることが有用であるときには、これを促進するようより密接に協力する用意がある。」と言っているんですから、そういう点では考え方のあれはあれだけれども介入してその結果があれだけ急速に円高になったわけだからそれで了解をしたいと思います。  そこで、次にお聞きしたいのは、先ほど国広さんも言われましたように、ことしの春は二百六十三円、それがだんだんきて二百五円ぐらいの方に、一年間の間にこれほど大きな幅の中で動くということが日本経済から見てよろしいのかどうか。特にこの五カ国蔵相会議が行われてから今のような形で若干の協調介入という格好で行われたわけだけれども、約二割程度の円高になった。この短期間に二割から円高にというようなことになると、言うなら投機を誘発するようなことにならないのですか。だからいろいろ貿易摩擦の関係もあるけれども日本経済みずからのあり方から考えたときに、このような乱高下と言っちゃなにかと思いますけれども、短期間に急速に円が動くということについては何らかの措置をすべきであると思う。そういうことを放任しておいたならば中小企業も、さっきから話が出ているが、だめになってしまうし、日本の産業自体もおかしくなっていくし、それは結果的に日本経済が大変な不安な状態に陥ることになると思うのですが、その点はいかがですか。
  75. 橋本貞夫

    政府委員橋本貞夫君) 十二年前に変動相場制に移行しまして以来、市場のこういう動きというのはある程度メカニズムの中で吸収されるのではないかという期待もあったわけでございますが、実際に見ると、その後かなりの動きがございました。  ことしに入ってからの動きでございますけれども、むしろ当初例説明いたしたように、ドル独歩高というような関係が大変強く出ておりまして、これについて極端な乱高下がないよう、このときも有用であると認める限りは介入に臨む姿勢でずっとやってきたわけでございまして、今後の推移といたしましても、確かに為替相場というのは難かしいことではありますけれども、こういう制度におきましても、より安定するような形で相場が定着することが望ましいということで考えております。
  76. 柳澤錬造

    柳澤錬造君 その御答弁の御返事、また後で時間があったらもうちょっと突っ込ましていただきたいと思います。  経済企画庁の方にお聞きしたいことは、アクションプログラムのお話がございまして、特に内需拡大にもこういう政策をとるんですがというお話で、これをやれば三兆一千億からの需要効果が出ますというお話があったんです。しかし、私が思うのは、果たしてそうなるんでしょうか。特に、中曽根さんが国民は一人百ドルの外国商品を買ってくれと言ったわけですけれども、あのときにも私は本会議で、総理は何ということを言うのだと言ったのです。国民がそのことをほとんどやらないから私は心配ないと思うのですけれども、あれを本当に総理が言ったときにやったら、あれだけで三兆円でしょう。三兆円の外国商品が売れて貿易摩擦の緩和には役立つかもわからぬけれども国内商品がそれだけ売れない、メーカーはつくらないでよろしいということになったら、そうでなくても不景気なところが大変な不景気になるんであって、その辺のことを考えていったときに、先ほどの三兆一千億ぐらいの内需の拡大ということで景気がよくなるのかどうか。    〔小委員長退席、松前達郎君着席〕 それ以上にアクションプログラムによっての影響の方が私は大きいと思う。  あのときも本会議で、総理は本気でもってアクションプログラムをおやりになる気でいるんですか、それをおやりになったら必ず失業者がふえて景気が後退していくということはもう明らかで、デフレの傾向に走ると思うのだけれども、そういうことは大丈夫なんですかと言ってあれしたんですが、総理はとうとうその肝心な点は御答弁なさらなかった。その辺について経企庁で今いろいろそういうことをはじいて貿易摩擦の緩和もしなきゃいけないのだけれども、果たして日本経済全体のことを考えていって、大丈夫だというふうにお考えかどうかです。
  77. 吉川淳

    説明員(吉川淳君) アクションプログラム、それから内需拡大、さらに円高定着ということで私は先ほど申し上げましたけれども、こういうものの効果が当面は貿易収支にはすぐに出ないで、むしろある程度Jカーブ効果等がございまして、ある月から出てくるのだろうと思われるわけでございますけれども、私ども事務方としてお言葉を返して全く恐縮なんでございますけれども、むしろ心配しておりますのは、なかなか数字には出てこないという状況にございまして、いろいろやっておるんですけれども、ある意味で御心配ほどにはなかなか輸入がふえてこないという状況がございます。  それで、アクションプログラムを先ほど申し上げましたように、着実に実行しつつあるわけでございますけれども、やはりどうもそれだけじゃいかないので、円高の方向にも持っていき、さらに国内での購買力効果のもとになる内需拡大ということでやったわけでございます。私どもも注意深く行方を見ていかにゃならないという姿勢ではおりますけれども、当面の政策的な可能性ということから考えますと、本当に諸外国が言いますように、目に見えた形で効果が出なければならないので、そこがむしろ本当に出てくるのかどうかが、今のところその方の心配があるわけでございます。    〔小委員長代理松前達郎君退席、小委員長    着席〕  ただ、これまでの円高の経験から申しますと、ある程度のタイムラグを置いて出てくることも考えられます。これはアメリカ側はかなり先のようなことも言っておりますけれども、その辺一体いつごろになればそういうことになるのか、これは政府のみならず民間の方々のいろいろな情報等も得まして、慎重に分析してまいりたいと思っておるところでございます。
  78. 柳澤錬造

    柳澤錬造君 よくわからないのだけれども、効果が出るような、目に見えるようなやり方をしなければということは、むしろ私どもが今まで政府にも言ってきたことなんです。それも時間がなんですから後にして、通産省いらっしゃいますね。  通産省が輸出業者を集めて盛んに輸入せい、輸入せいという促進をさせて、それで昭和六十年度だけでも七十三億ドルからの輸入増になるという計算をなさったはずなんだけれども、あれも私どもが心配しているのは、輸入業者にもう少し輸入をふやして、そして貿易収支の大幅黒字を緩和するようにしてくれよというのならわかるけれども輸出業者を集めて、おまえらもっと輸入せいということは通産大臣どういうことですか、自動車のメーカーに牛肉を売れというのですかと言ったら、いや、そういうことじゃなくて、メーカーも部品やなにかいろいろ使うのだから、せめてそういうものは輸入して使ってやってくれとおれは言っているのだと言うから、そこもそれぞれのメーカーだってみんな中小企業、関連企業を持ってそこで部品をつくっているのだから、その中小企業、関連企業がやっている仕事を、それをみんな外国から買えといったら、では日本国内の中小企業はどうなるんですかと。  それで言うならば、七十三億ドルですか、約一兆五千億ぐらいになりますね。そういうことになったらそれがまた先ほど出ていた、経企庁に聞いたように、三兆一千億ぐらいの需要効果があるといっても、片方でそうやって、それで本来国内で生産しているものを輸入でもって賄うという形で、それがことしだけでも一兆五千億だということになれば、結果的には国内需要は少しも出てこないし、ますます中小企業が苦しくなるのだけれども、その辺についてのお考えはいかがですか。
  79. 石黒正大

    説明員(石黒正大君) 御指摘のように、輸入拡大をどんどんやっていけば、国内の中小企業とかそういうところに大きな影響が出てくるのではないかという御質問でございますが、私どもといたしましては、先ほど企画庁の方から御答弁申し上げましたように、現時点における貿易摩擦をいかに解消するか、これのためには諸外国から求められている輸入拡大というものを日本社会の中に定着をさせていく必要があるんではないかということで、いろいろなことをやっておりますけれども、その一つとして主要企業百三十四社に対してお願いをしているわけでございます。これがどの程度、七十三億ドルという集計になっておりますけれども、これも製品に限らず一次産品等々も含めた全体の数字でございまして、製品市況等が下落しているという現状のもとにおいてどこまで実現できるかというのはわかりません。しかし、私どもとしては今のこの緊急事態をどういうふうにして、自由貿易体制を守っていくために日本として何ができるかというふうに考えた際に、やっぱり輸入拡大というのを地道にやっていく必要があるだろうという観点で続けていくものでございます。
  80. 柳澤錬造

    柳澤錬造君 貿易収支を改善というか、日本から見ればもう少し黒を減らしていかなくちゃいかぬことはわかるんです。だから緊急事態をという点で言うならば、むしろ国民一人外国商品百ドル買えなんというのじゃなくて、例えば油なら油にしたって、これはタンカーもいっぱい今遊んでいるんですから、そういう点からいくならば三千万キロリットルぐらい緊急輸入をしてタンカーへそのまま積んで備蓄しておけば、どっちみちこれは使うものだし、あるいはまた鉄鉱石のようなものなんかも半年分なら半年分緊急輸入をして、そしてあんなものはどこか露天に積んでおけば備蓄できるんですから、そういうことでドル減らしというか貿易収支の不均衡是正ということをお考えになるのが私は政府としてとるべきことじゃないかというふうに思って、今までもそういうことを言ってきたんですが、そういう点はどうなんですか。
  81. 国広道彦

    政府委員国広道彦君) そういう方法もあり得るかと思いますが、一つの基本的問題として我々が外国との間で抱えておりますのは、単に我々の貿易収支が、恐らくことしなどはGNPの三%ぐらいいくんだと思います。先生御指摘のとおりに、これが諸外国との関係でそんな大きな貿易収支を抱えたままいける、将来うまくいくはずはない、これはもうみんなそういうことだと思いますけれども、要するにそのときに諸外国が同様に言うことは、日本は資源ばっかり買って製品を買わない、だから日本を相手にしていると、日本は国によっては売り込みだけで買うものは少しも買わない、貿易というのは両面交通ではないか、やっぱり両面交通は、一対一じゃなくても、なるべくお互い買い売りというような関係にあるのが貿易の一つの正常な姿ではないかと、そういう不満が非常に強いわけでございます。したがいまして、やはり大きい方向としては、製品の輸入もふやすという方向でいかなければ対外摩擦というものは解決しないというふうに思っております。
  82. 柳澤錬造

    柳澤錬造君 次は、これも通産の方に関係が、大蔵省もあると思うのですけれども、最初のドルショック、一ドル三百六十円が三百八円になって大変な為替差損が出て、当時は今と状況が違いますから大騒ぎをしたわけです。あのときにも為替差損のそういうリスクについての保険をつくるとかどうとかという話も出たんですが、なかなかそういう例がないという形でもって実際は行われないで今日まで来ているわけであります。ところが、あのドルショックの後ヨーロッパなんかは、西ドイツにしてもフランスにしてもみんな為替リスクの保険をつくっているわけなんです。それで、契約して最終支払いまでの期限が二年以上の取引を対象にして、それで二年経過したそのときに、言うならば為替差損が三%以内ならばそれはもう見ない、それは契約者が自分でなにせい、三%超えたならばそれは全額保証するという保険ができて行われてきたわけでしょう。  今日のこういう状態でもって、先ほども言ったようにわずかの短期間に二割も動くというようなことが、単に今貿易摩擦で日本が貿易収支の大幅黒字を抱えているからという、そういうところだけに目を向けてやっておったならば将来的にどうなるかということも見なくちゃいけないし、そういうことを考えたならば、そういうリスクの保険をつくるというお考えはありませんか、どうですか。
  83. 森清圀生

    説明員森清圀生君) 輸出保険課長でございます。  先生御指摘の為替変動に対処するための保険制度につきましては、私どもは既に輸出保険法の中に為替変動保険という制度を設けてございまして、基本的な仕組みは、先生ドイツの例でお話しありましたとおり、為替が三%変動した場合にその変動リスクを補てんする、こういう制度になってございます。
  84. 柳澤錬造

    柳澤錬造君 いや、もうちょっと説明してください。
  85. 森清圀生

    説明員森清圀生君) 基本的には輸出契約者が輸出契約時以降大きな為替の変動、つまり法律では三%以上の変動があった場合というふうになってございますが、三%以上の変動があった場合に輸出業者がこうむった為替のリスクを保険でてん補する。言いかえますと、三%以内の変動の場合には現在ございます本保険制度のてん補対象外ということになってございます。
  86. 柳澤錬造

    柳澤錬造君 そうすると、今度の場合は約二割弱ですね、この九月のあれから。そうすると、そういうのは全部救済されるということですか。
  87. 森清圀生

    説明員森清圀生君) これは当然のことでございますが、輸出契約の時点で輸出者が通産省のやっておりますこの為替変動保険に付保をしております場合には、これはあくまでも輸出業者が付保するか付保しないかはオプションでございますので、もし付保していればその為替リスク分が救済されるということになります。
  88. 柳澤錬造

    柳澤錬造君 それはどの程度入っていますか。
  89. 森清圀生

    説明員森清圀生君) 実績は余り多うございませんで、特にここ三年間は、私どもの方に保険の申し込みがあった件数は過去三年間はゼロでございます。
  90. 柳澤錬造

    柳澤錬造君 それはないと等しいことでしょう。  ですから、もう時間があれですけれども、通産省でおやりになって、そして極端に言えば、そういう差損のリスクに対しても保険でなにする、そのかわり今度は差益がある程度以上出たら、それはもう逆に言えば国庫へ納めると言って、それで、まあ言えばバランスをとって極端な影響がどちらにも及ばない、そういうふうなことをやはりおやりになる必要があると私は思う。  だから、そういう意味に考えても大蔵省、もう一度さっき言った為替レート、私は素人だからなんですけれども、前から思うのだけれども、今為替は自由化している。しかし、これが二十円で約一割ですか、二十円するのか三十円するのかはあれですけれども、ある程度の幅のその中においてはそれは自由化をして、それでそのときの経済情勢で動くという形をさせる。しかし、野方図な今のような状態ということを、言うならば、お金があっていろいろ投機をしようという者がこれほどぬれ手でアワの金もうけができる方法はないのです。ですからそういう点からいくならば、ある程度の幅の中でやる。それで、言えば円高の上限に張りついておってしまったら、またそれを何かの機会に修正することがあってもいいと思うのです。だからそういう幅を設けるという、そういうお考えはお持ちにならないですか。
  91. 橋本貞夫

    政府委員橋本貞夫君) 冒頭に御紹介しました十カ国蔵相代理会議検討の中にも、フランス提案で、ちょっと時間がないために詳しい御説明ができなかったんですけれどもターゲットゾーン構想というのがございまして、まさに御指摘のようなゾーンの中で管理していくというような考え方でございました。これについてかなり徹底した議論が行われましたけれども日本を含む大多数の国は、まだそういう考え方は現実的でないという方向で一応の結論が出ております。  その理由としましては、その幅をどうして決めるかという決め方が難しい。あるいはその幅に押し込めるための各国の責任分担体制といいますかそういうものが難しい。  それから、お言葉を返すようで恐縮でございますが、投機筋がいろいろございまして、幅があるとかえってまた投機の目標にもなるという形も出てくるというようなことでございまして、一応の結論はそういうことで、まだ現実的でないという意見が大多数の国であったという指摘でございましたけれども、今度のG5以降、ファンダメンタルズに非常に反映するように持っていくという方向が出ておりました。ファンダメンタルズが反映していればしているほど、為替レートとしては安定する方向に行くんだろうと私どもは思っておりますので、そういう方向が市場で自律的にいく、あるいはそういう方向に必要があれば強調介入していくという動きは、何らかの形ではそういう考え方に近いという点は言えると思います。しかし、目標を持ってどうするというところまでまだ世界の通貨当局相互検討として結論が出ていない。こういう議論を来年の四月の暫定委員会において、G10の報告書をもとに本格的に検討していこう。またG24といいますか、途上国意見もやはりございますので、それも含めて議論していこうという過程にございます。
  92. 上田耕一郎

    ○小委員外委員上田耕一郎君) まず、G5による協調介入について質問したいのですが、中心問題は、この協調介入ドル独歩高が本当に是正されるのかということにあると思うのです。  九月に来たシュミット西ドイツ前首相は、アメリカ経済政策を変えない以上、強調介入は失敗するとかなり厳しい見方を出しましたし、それから有名な下村治氏も、介入によるドル安・円高誘導だけで定着するはずがないということも指摘していますし、十一月九日の日経の社説も、「円高誘導だけでは流れは変わらない」、こう言っているんですね。大蔵省は定着すると見ていますか。
  93. 橋本貞夫

    政府委員橋本貞夫君) 一般に介入というのは、先ほど申しましたようなファンダメンタルズを反映するような合理的な水準から乖離するのを押し戻すという方向では有用だろうと思っておりますが、これは介入のみでこの水準あるいは円高基調が定着するかどうかというのは大変難しい問題でございまして、このG5のアナウンスメントにおきましても、これに伴って政策協調が必要であるというふうに指摘しております。やはり介入には、先ほど日本銀行の方からも御指摘がありましたが、それに伴う政策協調をもって、補完する形で持っていくことが望ましいという考え方でございます。
  94. 上田耕一郎

    ○小委員外委員上田耕一郎君) 今の異常なドル独歩高にはやっぱり構造的な原因があるわけですね。もう広く指摘されているんだけれども、その一つ財政赤字、それをもたらしたレーガン政権の大軍拡にあると思います。八六年度アメリカの予算教書の見通しでも、八六年には軍事予算は二千八百五十七億ドル、八七年には三千二百十七億ドルと三千億ドルを超えるということになっておる。それから、先日やめましたけれども、ストックマン予算局局長は、財政赤字が八六年、八七年、八八年、二千億ドルを超えるということをことしの一月に言っているわけです。  そうすると、この十一月十九日からジュネーブでレーガン・ゴルバチョフ首脳会談もいよいよ始まりますけれども、そういう世界が軍縮を求めている時期に、アメリカの構造的な財政赤字是正するために、レーガン政権の大軍拡をやっぱりやめさせなきゃならぬという問題がどうしても出てくる。シュミット氏なども前からこのことを強調しているわけですね。  二番目は、構造問題としてアメリカ産業の没落傾向があるんです。  私は、なかなか彼はおもしろいこと言うと思って注目しているのに、野村総研の林健二郎経済調査部長がいらっしゃいますけれども、林氏は、貿易摩擦は七〇年代から三波来た、第一波はアメリカが戦後初めて貿易赤字に転落した七一年、第二波はアメリカ経常収支が大赤字に転落した七七年、今の三波はアメリカが六十六年ぶりに債務国に転落した第三波なんだと言っているんです。  詳しく言いませんけれどもアメリカの産業が最近ハイテク産業まで空洞化して国際競争力が低下しているという状況があるわけなんですね。  この二つの財政構造の問題、産業構造の問題、これはレーガン政権の基本政策にかかわるんだけれども、ここをどう直させるか、これは大蔵省はどう見ていますか、アメリカ経済現状その他についても。
  95. 橋本貞夫

    政府委員橋本貞夫君) 今の経常収支日本における黒字の問題、あるいは日本からの資本流出の問題、これはいずれも米国財政赤字を主たる要因とする高金利にあるということは前から指摘しているとおりでございまして、このG5のポリシーインテンションという付表につきましても、アメリカ財政赤字の解消問題が取り上げられておるわけでございます。基本的にはそこに要因があるということは、私どももそういうふうに考えております。
  96. 上田耕一郎

    ○小委員外委員上田耕一郎君) ところがレーガン政権は、先ほどの数字を示したように、財政赤字の根源である軍事予算、これは手をつけないで、SDIというようなことまで言い出しているんですけれども、こういうふうに基本問題に手をつけないまま行政的な介入程度でやっていくことになるとどういうことになるかといいますと、例えば先ほど言った下村治氏は、ドル崩落の危険があるということを東京新聞の十一月九日付で述べておられる。  十一月十二日の日経の「経済教室」にアメリカのマサチューセッツ工科大学のレスター・サロー教授が、ドルは四〇%下落が必要だ、一ドル百四十三円以下にならないと、これは数量経済学からいってならぬという一ページ物を書かれているんですね。こういうことにもしなると、ドル暴落になってくるとこれは大変なことになって、サロー教授は、こうなると日本、ヨーロッパ及びカナダその他が対米貿易黒字で四百万の雇用を今得ているんだが、失業が三等分され、それぞれの国で百万人の失業が生まれるだろうということまで言われているんです。野村総研の去年発表された「日本経済の長期展望」でも、あと十年後、一九九三年には完全失業率が二倍になるだろうと言いましたし、経済企画庁の社会開発研究所への委託報告、これはかなり有名になっていますが、「二〇〇〇年に向けて激動する労働市場」、これは二〇〇〇年に向けて高齢化社会、ハイテク産業化等々の、あるいは第二ベビーブームの世代の労働市場参入で大変な厳しい労働市場になるということを予測しているんだけれども、今の日本政府政策でもそういう二〇〇〇年に向けて大変なことになるのに、ここにドル暴落が起きて百万人の失業なんということになると大変になると思うのです。そういう点で私は、アメリカ側のレーガン政権の経済政策の根本的な変更が迫られていると思うのだけれども、日銀はどうですか、このドル暴落の危険ということについては楽観的ですか、それとも警戒的ですか。
  97. 深井道雄

    参考人(深井道雄君) 米国ドル暴落についてかなり懸念を持っているということは事実でございます。恐らく今度の為替調整というのもそういった意識がアメリカの方に出てきたのかもしれない。というのは、先ほど先生御指摘のとおり、アメリカを除く各国は今のドル高の基本は高金利である、その背景は財政の赤字である、それを直せということを言ったのだけれどもアメリカは今までそれに余り耳をかそうとしなかった。それは経済の強さを示すものだというようなことだったのですが、今回の九月のG5でアメリカがその辺の考え方を変えだということは、問題意識が明らかに違ってきたと思います。ファンダメンタルズを反映しないような為替相場というのは、いずれ先生御指摘のように長続きしないということであるから、ここで為替調整をやってなるべくファンダメンタルズファクトを反映したような相場にしようということではないかと思います。したがいまして、その意味で言うと、先生の御心配になっているようなドル暴落の危険性というのは未然に防げたというような面があるのではないかというふうに考えております。  それともう一つ、根源となっておりますアメリカの財政の赤字でございますけれども、確かにこれはなかなか削減が簡単でないように聞いておりますけれども、我々がいろいろ聞いております情報だと、最近は少なくとも議会の中においてこの削減を何とかしなきゃいかぬというような動きがかなり強くなってきているというようなことでございます。そういったように手を打っていけば、もちろん現在は介入主力でもってドル高というのが進んでいるわけですけれども、だんだん為替調整というのが自然な形で定着していくのではないかというふうに考えております。
  98. 上田耕一郎

    ○小委員外委員上田耕一郎君) アメリカも上下両院とも軍事費削減なんて決めましたけれども、これからの問題で今後どうなるか、ドル暴落問題、やっぱり今後の事態を我々も注視していきたいと思うのです。  次に、MOSSとアクションプログラム問題ですけれども、先ほど外務省がかなり率直に、アメリカ議会保護主義動きに対して実は宣伝的価値があるんだということを言われましたけれども、実際MOSSとそれからアクションプログラムを実行した際どのくらい貿易赤字が減るんですか。先ほどの大蔵省の報告だと、五十九年度三百七十億ドル、六十年度上半期で二百六十六億ドルというわけでこれは五百億ドルを超えそうなんです。どのくらい見込んでいますか。
  99. 国広道彦

    政府委員国広道彦君) アクションプログラム関係は経企庁にお願いしたいと思うのですが、MOSSにつきまして、私どもはこの結果輸入がたくさん急にふえるだろうというふうにはどうも見がたいと思います。アメリカの方で一時、これが全部完全に市場開放されたら百五十億ドルふえるというようなことを苦し紛れに言った人がいるんですけれども、これについてどういう根拠かということを何度も聞きましたが、根拠はない、こういうことでございます。私は率直に言って、物すごくドラマチックにふえることはないと思うのです。  そうしますと、よく私が聞かれる質問は、それじゃどうせ大して輸入がふえないならそんなことを大騒ぎしてもしようがないじゃないかという質問を受けます。しかしながら、これは私は、決して百五十とかそういうことにならないだろうと言っているわけで、かなりの額はふえると思います。そのかなりの額がそんなに大きくなくとも、今、日本が世界のGNPの一〇%も生産する自由主義諸国で第二位の経済の大きな国になりながら、輸入の面で日本市場というのは他の先進工業国、特にアメリカ、ドイツ等に比べて開放されていないということはやはり国際的に通用しないだろうと思いますので、むしろ逆に言えば、急にふえないからこそ少なくとも言いがかりをつけられることはやめるべきだと思うのです。そして、制度としては恥ずかしくない、先進工業国として当然期待されるだけの制度は整備すべきだというふうに思うのでございます。
  100. 吉川淳

    説明員(吉川淳君) アクションプログラムの輸入へのインパクトでございますけれども、アクションプログラムの中心が関税引き下げのようなものもございますけれども、かなりの部分がいわゆる非関税障壁に当たるものについての改善でございます。それでいわゆる市場アクセスの改善という格好で言っておりますけれども、これを数量的にまず政策としてどうあらわすかということが非常に困難でございまして、私どもといたしましては、そのアクションプログラムをつくりましたときにもそういう要請なり何なりがあったわけですけれども、残念ながら有効な効果を分析する方法がないということで断念しておるところでございます。これは各国でも非関税障壁につきましては東京ラウンド等でもございましたし、いろいろございますけれども、余りそれについて、これ自体でほかの条件が一定としてどうだという格好で出ている例がないのじゃないか、したがいまして、政策効果の分析という点ではちょっと未知の分野かなと思っておるところでございます。
  101. 上田耕一郎

    ○小委員外委員上田耕一郎君) 新聞で見ると、内需拡大で二十億ドルなんて数字が出ているんですね。そうすると、全部合わせて多く見積もっても数十億ドルぐらいのような感じで、お二人とも数字は言いませんてしたけれども。そうすると効果は余り大したことない。ところが、外務省が言われたように台所まで入ってくるというようなやり方でやってくる。日本関税は発達した資本主義国で最低ですし、非関税障壁も欧米並みなんですね。しかし、そういうわずか数十億ドルぐらいの効果で、しかも被害はきょうの質問でも出たけれども、ひどいわけです。例えば林業や林産業なども合板の関税などが上がっていったら大変な打撃を受けるということにもなってきますし、それから電気通信、エレクトロニクスの分野なんかでも、IBMやATTの日本における優位の獲得になるし、農業などでもさらに支配の強化ということになるんで、私はこれはもう非常に不当なことだと思うのですね、やり方が。むしろあなた方が時間をつくり金を使っておやりになっていることは、アメリカが一番やらなきゃならぬことを回避する実は手助けをしているということにしかならぬのじゃないかとも思うわけです。  中曽根さんの、日本人は百ドル買えという話が出ました。これは日経も書いたんだけれども、本当に日本人とアメリカ人が相互に何を買っているかということを考える場合には、日本におけるアメリカの多国籍企業、日本アメリカにおける多国籍企業の生産物、これをお互いにどう買っているかも入れなきゃいかぬ。日経の五月十七日付では、日本人は米国人一人当たりの倍の相手の製品を買っている、日本人は平均収入の六%をアメリカ製品の購買に充て、アメリカ人はその収入のわずか二%しか充てていない、だから、百ドル多く買う努力が必要なのはアメリカ人の方ではないかという逆説も成り立つということまで言っているわけです。それなのに逆なことをやっている。  私、外務省一つ質問したいのは、朝日の六月三十日付で、アメリカから膨大なアクションプログラムに関するサゼスチョンズというのが来た、西暦二〇〇〇年目指して日本人のライフスタイルまで変えると言っていると。冗談だと言いながら、アメリカの「政府高官は「これはマッカーサー以来の日本改造案だ」と言った。」という報道なんです。これを見ますと、例えば郵便貯金、現行金利より五%近く低いレベルの住宅ローンをつくれ、今の金利の五%下ですよ、それをつくれとかね。それから農協の役割を見直せ、これは化学肥料の関係だそうです。それから、大型スーパーの自由な進出を阻んでいる大規模小売店舗法を改正しよう、そういうことまで言っている。それから、ボートなどのレジャー関連製品を買いやすくするために公園、キャンプ場を充実しろとか、もう恐るべきことが書いてあるという大きな報道があるんだが、これは事実ですか。
  102. 国広道彦

    政府委員国広道彦君) その事実は全くございません。
  103. 上田耕一郎

    ○小委員外委員上田耕一郎君) 全くない。
  104. 国広道彦

    政府委員国広道彦君) 全くございません。
  105. 上田耕一郎

    ○小委員外委員上田耕一郎君) 朝日の誤報ですか。
  106. 国広道彦

    政府委員国広道彦君) 誤報だと思います。私は日本政府アメリカとの経済関係の窓口をしておりますが、そういうものを受け取ったことはございません。  ただ、一言ちょっと申し上げさせていただきたいのですが、先ほど台所の話が出ましたけれども、私がそう受け取っているということではございませんで、そういう感じを持つ方もおられるかと思いますという意味で申し上げたつもりでございますが、要するに経済の問題というのは国内でやっていることが貿易面、対外関係面に響くことが非常に多いものですから、やはり受け取り方によっては内政干渉ではないかという疑問を招くようなこともお互いに発言をしないと、議論をしないと問題は片づかないということが往々にしてございます。例えば私ども財政赤字を減らせと言っているのも、ある意味では内政干渉みたいな発言にとられる、そういう向きもあるのかと思いますけれども、そういう議論が行われているのがごく最近の国際経済社会の現実だと思います。
  107. 上田耕一郎

    ○小委員外委員上田耕一郎君) 国広経済局長の手は通じなかったかもしれないけれども、この報道はワシントンの船橋特派員からなんです。アメリカ政府側からなんです。「米政府高官は「これはマッカーサー以来の日本改造案だ」と言った。」というので、アメリカの高官まで取材しているんです。恐らくあなたの手を通じないでもっと上のルートかもしれぬけれども、行ったんでしょう。この問題はこれ以上聞きません。  三番目に、内需拡大問題についてお伺いしたいと思います。  日米貿易摩擦はアメリカ側の原因は先ほど私が申し上げたとおり。日本側にも原因がある。日本側の原因には共産党もいつも主張しておりますけれども、一部の巨大企業が物すごい輸出競争力を持っているということが大きな原因で、なぜそういう異常に強い国際競争力を持っているかというと、その中の重要な問題として日本の低賃金、超過密労働、長時間労働、それから下請中小企業に対する乾いたタオルまで絞り上げるようなそういう収奪があるわけです。アクションプログラムも先ほど拝見しますと、時間短縮問題についてはいろいろ書かれています。これは時間短縮問題は労働省その他かなり西暦二〇〇〇年を目指して取り組まなきゃならぬということになっているけれども、この賃金問題についてはアクションプログラムにも書かれていない。日本の低賃金問題ですね。  これも「財界観測」という雑誌の八四年六月一日号に載った土橋健二、大村和夫氏の「新時代を迎える日米自動車産業」という論文に出ている数字なんです。これを見ると、驚くべきもので自動車一台当たりマンアワー、人間のマンアワーですが、アメリカは五十一・〇、日本は十六・〇、つまり日本アメリカより三・二倍、自動車一台当たりのマンアワーは効率がいいのです。それで賃金率は、時間当たりアメリカ十八・五ドル日本は九・九ドル、つまり二対一なんです。そうすると人件費は六対一になっている。アメリカは九百四十四ドル日本は百五十九ドルです。普通日本の労賃というのはアメリカの半分だとよく言うけれども、自動車一台当たりどうかということを計算すると、何とアメリカは人件費に六倍かけているのです。こういう問題があるのはもう明白なんで、経企庁としてはどうですか。この日米貿易摩擦を解決するためにも時短だけじゃなくて、この人件費問題は指導としても日本政府として打ち出さないと、これは自動車だけじゃありません、どこでもそうなんだ。また中小企業の収奪、こういう構造的問題について取り組むお気持ちはありませんか。
  108. 吉川淳

    説明員(吉川淳君) 今先生御指摘のアメリカ日本との自動車産業における人件費割合ということは、ある意味でとりもなおさず両国間の生産費構成、生産費の比較といったことになるかと思われます。  やや教科書的なことで恐縮でございますけれども各国の生産費構造というのはさまざまの理由で今のような状況になっておるものでございまして、これを構造的と言うのか、あるいはもっとほかの言葉があるんじゃないかとも思いますけれども、そういう形で決まっている生産費構造の違いのもとで貿易があるわけでございまして、私どもとしましては、議論の立て方といたしましてはむしろそういう生産費構造のもとで貿易が行われ、その貿易の調整といったものが例えば為替レートであり、そしてまた彼我の需要の違いであるといったように理解しておるわけでございます。
  109. 上田耕一郎

    ○小委員外委員上田耕一郎君) 輸出主導型の経済政策から内需主導型に変わらなきゃならないと、これはだれでも認めていることです。本来本物の内需主導というのは、国民の購買力を、GNPの六割を占めている個人消費をふやすことが最大の問題で、だから我々は内需主導を本物にするためにも大幅賃上げ、それから大幅減税、社会保障充実等々を主張しているんだが、このアクションプログラムにあるように、政府はどうやら民間活力導入、都市再開発等々、そういう大企業重視型のやり方をやっているわけです。  日銀の方にお伺いしたいのですが、毎日新聞九月二十八日付を見ますと、前川日銀前総裁は、円高定着のためには減税を考えるべきだと。「減税も大きな意味を持ってくる。民活も大事だけど、国内の規制緩和だとかえって時間がかかる。」ということで、減税が大事だということを前日銀総裁は言われているわけですが、日銀としてはどうですか、この減税問題は必須の課題だと思いませんか。
  110. 深井道雄

    参考人(深井道雄君) 直接前川前総裁からその話を聞いたわけではございませんけれども、私どもが今考えておりますのは、内需拡大というのは確かに必要である。内需拡大主導型の経済に持っていかなきゃならない。その面から、財政面から何ができるかということを考える場合に、一番基本的な税制というのは、今の財政再建路線というのを崩すことがあってはならぬ、その範囲で考えなきゃいけないというふうに考えております。前川前総裁のそのお考え、私は大変怠けて読んでおらないのですけれども、減税が必要だとおっしゃっているのは、内需拡大に必要なような減税を行って、一方、財政再建を崩さないような何かの手を打つということではないか。それが私はほかの増税を考えておられるのか歳出カットを考えておるのか知りませんけれども、そういった基本的な考えでございまして、財政面から手を打つといっても、現在の政府が進めておる財政再建路線というものを崩すことがあってはならない、あくまでその枠内で考えるべきであるというのが現在我々の考え方でございます。
  111. 上田耕一郎

    ○小委員外委員上田耕一郎君) もう時間がなくなったんですけれども、私は、一番大事な問題は、やっぱり日本政府ももっと自主的な態度をとって、ロン・ヤス路線に従って対米屈従的なはいはい言うのを直すことが根本前提だと思うのだけれども外務省、どうなんですか、こういう日米経済協力の今の政府のやり方、アメリカの言うことに従って例のMOSSの四分野だってアメリカが言い出したというのでしょう。それを外務省が言っているんだけれども、これは安保条約の第二条、こういうこととかかわりがあるんですか、国際法上こういうふうにやらなきゃならぬということは。
  112. 国広道彦

    政府委員国広道彦君) その法律論、私つまびらかにいたしません。直観的に申しますと、少なくともMOSSにかかわった担当者の考えとしては、そういう条約的義務として取り組んでおるつもりはございません。しかしながら、日本の国益ということを考えてみた場合に、今米国で膨大な貿易収支赤字を抱えて、それを背景米国輸入制限をすべきだとか、その他の保護主義措置をとるべきだということが議会を中心に非常に高まっているこの事実、もしそれがそのとおりに進展していきますと、それで受ける日本経済及び世界経済の打撃というものを考えてみた場合に、我々としてはやはりとるべき措置というものを考えなきゃいかぬと思います。そのとるべき措置として、一つの方法はMOSSというものが考えられてきたわけでして寸これはまた同時に日本経済自身の問題として、つまり、日本経済がより国際経済に調和した形で発展していくために一つの非常に役に立つプロセスだ、やり方だというふうに我々自身で判断してこういう共同作業を始めたわけでございまして、このMOSSという作業の性質上、これは双方が同意しなければ起こらないことでございます。これは三百一条の適用とは違うわけでして、自分でここに国益があるという判断をして共同作業に入ったというのが我々の考え方でございます。
  113. 上田耕一郎

    ○小委員外委員上田耕一郎君) 私は、この日米貿易摩擦問題を本当に解決するためには、今申しましたように、日本政府の対米屈辱的なやり方を根本的に改めること、二番目に、アメリカ側の原因であるレーガン政権の大軍拡、財政赤字というものの縮小を日本政府としてももっと厳しく要求しなきゃならぬということ、三番目に、日本側の原因としての長時間労働、低賃金、下請収奪、こういうものに思い切ってメスを入れることが必要で、そういうことがなかなかできないのはやっぱり安保条約第二条の「締約国は、その国際経済政策におけるくい違いを除くことに努め、また、両国の間の経済協力を促進する。」、軍事同盟のもとでこういうことを押しつけられているというところに実は国際法上の問題もあると思いますので、この問題を解決するためには日本の政府として安保条約をなくす、本当に中立、独立の国に向かって進む、そういう方向を国民的な努力でやっていかないとこの問題も解決がつかないというふうに思います。第三世界の累積債務も九千億ドルを超えるというようなことで、日本だけアメリカだけの問題じゃなくて、世界経済全体の深刻な問題なので、やはり日本政府に根本的な問題の見直しを強く要求して質問を終わります。
  114. 大木正吾

    ○小委員長大木正吾君) 一言ごあいさつを申し上げます。  日本銀行深井総務局長におかれましては、時節柄御多忙中、当小委員会に御出席いただきまして貴重な御意見をお聞かせいただきありがとうございました。厚く御礼申し上げます。  本日はこれにて散会いたします。    午後一時十三分散会