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政府委員(
西廣整輝君) 今の御質問は、中期
防衛力整備計画でどのような事態、様相を想定しておるかという点が主たるお尋ねであろうと思いますが、まず最初にお断り申しておきたいのは、
防衛力整備というのは、あるシナリオに基づいてそれに対してどう対処するかといういわゆるウォープランといいますか、作戦
計画とは私は違うものであろうというふうに考えております。というよりも、いかなる
防衛力を持ち、それと日米安保というものがあった場合には日本に対する侵略が抑止できるかといういわゆる抑止論といいますか、そういう物の考え方に立ってつくられておるものだというふうに私はまず考えております。したがいまして、かねがね申し上げておりますように
防衛力整備というのは限定的な小規模事態、つまり日米安保というものがあるけれ
ども、それに基づくアメリカの支援その他が十分に間に合わない、そういったいとまもないような事態に対しては少なくとも自分自身で対応できる力を持つ必要がある、そういうことができれば日米安保体制と相まってすき間のない体制ができるという考え方でありますから、そこで考えておる対応というのはあくまで限定的、小規模であって、そういう事態が起きる起きないという蓋然性とはまた別途の問題であろうと思います。
それはさておいて、今の御質問に対してお答えしたいと思いますが、我々が考えておりますのは、現在日本の周辺に幾つかの国があってそれぞれ軍備を持っておるわけであります。その軍備についてはいろいろな種類もあればいろいろな数もある。しかも、その配備
状況は現在一つの配備をとっておって必ずしもそれは全部日本向けの軍備ではないと思われるものがあるわけです。その国固有の防空なら防空のためのものもあるし、あるいは日本以外の国に備えたものであろうと思われるような配置をとっておるものがあるわけであります。したがって、そういった現在の兵力の質、量及び配置そのものから見て短時日に日本にかかってこれるというものについてはおのずから想像がつくといいますか、想定される重なり質というものがあるわけです。それに対してどの
程度の
防衛力を持つかということが、我々申し上げている限定的、小規模対処能力ということになるわけであります。
そこで、御質問の趣旨が必ずしも理解できたかどうかわかりませんが、日本にまず航空攻撃があり、引き続き着上陸侵攻があった場合の能力ということだろうと思うのですが、航空攻撃については今申し上げたように航空機という機動力のあるものでございますから、かなりのものが短時日に日本に侵攻することができるわけでありますけれ
ども、それにしても極東にあるある国の航空兵力であるからといって全部が全部来れるわけじゃありませんで、やはりそれぞれの航空機の機能なり配置に応じて日本に来れる数というものは、数量そのものは具体的に申し上げませんが、限定されたものがあろうと思うわけです。
それに対する我が方の能力ということになると、まず一つは日本の
場所によります。例えば、正直申し上げて北海道のように非常によその国と近いところ、あるいは東京なり九州といったように少し離れておるところ、そういうところで相手がかかってこれる数も違ってくれば、相手が日本土空に滞空できるといいますか、とどまって戦い得る時間というものも非常に違ってくるわけであり
ます。しかも、こちら側の集中できる兵力というものもおのずから差が出てくるわけであります。したがって、それぞれの
地域によって我が方の防衛能力というものにはおのずから差が出てまいりまして、一概に日本のどこに来ても同じ力を持ち得るということにはなりませんが、今回の
計画では、例えば日本にとって最も防空が困難であろうと考えられる北部日本、そういった
地域においても我が方の防空勢力の集中配備、事前にある
程度の兆候を察知してできるだけの兵力集中を行う、そういったことが可能ならば、ほぼ互角の相手方が来るであろうと思われる侵攻兵力に対して互角の防空作戦ができる。
互角というのはどういうことかと申しますと、相手の第一波が攻撃してくる、それに対してこちらが防空戦闘を行いまして、そこで相互にそれぞれ傷つくといいますか被害を受けるわけでありますが、被害を受けてお互いに弱った
状況で今度は第二波が来る。そうすると、第二波に対してまた防空作戦をやる。そこでまたお互いに被害を受けるという繰り返しになってくるわけですが、ほかのことに例をとって申しますと、例えばボクシングをやって、一回戦をやってお互いにダメージを受ける、第二ラウンドになってお互いにやってまた五分に戦えるという
状況が私は互角と考えております。それが第一撃でこちらの被害が大きくて相手の被害が少なければ、第二浪、第三波といくに従って急激に彼我の力というものの差が出てくるわけであります。それを私
どもはコンピューターでいろいろ計算をいたしまして、ほぼ互角の態勢を
維持し得る能力を今回の
防衛力整備計画が完全に
実施されれば可能になるのではないかというように考えておるわけでございます。