○坂口力君
国家公務員等共済組合法等の一部を
改正する
法律案の
採決に当たり、私は、
公明党・
国民会議を代表し、反対の
立場から
討論を行います。
我が党は、
昭和五十一年十月、
国民基本年金構想を提唱し、その中で、国家公務員等の
共済年金にも
基礎年金を導入して、
年金制度の一元化を速やかに進めるよう主張してまいりました。いわゆる二階建て
年金制のオリジナリティーは我が
公明党にあります。(
拍手)その意味において、今回の
改正案の基本的な方向性については、我々の主張を取り入れたものであり、評価をしているところであります。しかしながら、我々の主張した既得権を侵さず、一元化を目指し、
生活保障の
基礎年金を確立するという基本的
立場と比較をしました場合に、
政府が示します
年金制度は、形こそ我が党案に似ていますが、その
内容は全く異なるものになっていると言わざるを得ないのであります。
言うまでもなく、
基礎年金はすべての
年金加入者に共通する
制度であり、その性格づけから見て、
給付水準は最低
生活の保障をするに足るものでなければなりません。
国民、厚生両
年金の
審議に際しまして、
基礎年金に対する
国庫負担はせめて四〇%まで
引き上げること、
国民年金には所得比例保険料を導入し、低
所得者の保険料を引き下げるように主張いたしましたのは、その基本理念に基づいてのことでありました。私は、今改めて、
基礎年金についての重大な欠陥を繰り返し指摘せざるを得ないのであります。
第二の反対理由は、公務員
制度とのかかわりにおいてであります。
共済年金を
厚生年金に合わせることを急ぐ余り、公務員
制度の中に置かれた
年金の
立場を顧みることすら忘れたことであります。
言うまでもなく、公務員は、スト権を初めとする労働基本権に制限が加えられ、守秘義務や私企業からの隔離など、特殊な服務規律が定められています。その
制度の中に組み込まれた給与であり、
年金であります。したがって
共済年金は、
厚生年金との横並びで論じるだけではなく、公務員
制度の中の
年金として、議論を重ね、理論的裏づけが必要であったことは、国家公務員法の示すところであります。
共済年金にとっては、その誕生以来の最大の改革であるにもかかわらず、公務員
制度審議会は開かれず、人事院においても現状の調査研究も行われず、国家公務員法百八条に示された
国会、
内閣への
意見陳述もなかったのであります。まさしく手抜きの改革案と言わざるを得ません。
いわゆる三階建ての部分であります職域
年金は、
報酬比例年金の二〇%とされていますが、その
水準の根拠は余りにも不明確であり、批判にこたえられる理論的裏づけが欠如しているのであります。既裁定者のスライド停止につきましても、現役公務員とのバランス上、百歩譲ってやむを得ざることであったといたしましても、
年金生活を送るOBたちを納得させるだけのものがなく、約束した
年金を実行しないという
政治不信だけが後に残る結果になったのであります。これらは、いずれも公務員
制度の
あり方から離れて、
年金だけを論じたところに原因があると言わざるを得ません。
国鉄問題もしかりであります。国鉄を民営化し、新しい企業形態に移行させようとするとき、その混乱の中で生じる
年金財政の行き詰まりは、当然のことながら
政府が
責任を持って
処理すべきものであり、純
年金制度の
財政対策とは区別されるべきものであります。六十四年度までは
政府の
責任で対処することが確約されましたものの、一番問題になるのは六十五年度以降の
国鉄共済であり、国鉄改革の影響は長く尾を引くものであります。国鉄改革に基づく
年金財政の影響を明確に区別して、
政府の
責任をさらに明らかにする必要があると考えるものであります。
第三には、五十兆円を超えた厚生、
国民年金積立金の運用についてであります。
年金がさらに一元化されようとする現在、
厚生年金積立金が確実かつ有利に運用されているかいないかは、
共済年金の将来にとっても重大な関心事であります。積立金はすべて
財政投融資として利用されていますが、その運用は、確実であっても有利であったとは言えません。
厚生年金基金が五十九年度八・八%という高利で運用されているのと比較かしました場合、六・八%に固定された財投の枠組みだけで運用することは、将来に大きな格差を残し、
年金財政の悪化に拍車をかけるものと言わざるを得ません。
もとより、財投資金の果たしてきた役割は評価するものであり、すべてを否定するものではありません。しかし、
共済年金を初め各
年金に対する
国庫負担を削り、保険料を
引き上げる政策を
国民に示している現在、
厚生年金積立金をあくまで自主運用させないというかたくなな態度は、
国民の信頼に背向くものであります。
年金保険料は租税と異なり、あくまでも
年金のために拠出されたものであることを忘れ、第二の予算の名のもとに
年金加入者の意思を無視して運用することは、断じて許せません。
サラリーマン
年金の中心は、その加入者数から見ましても、
厚生年金が柱であります。今回
共済年金制度を厚生
年金制度に合わせたことは、将来
厚生年金に
財政援助を仰がなければならないための布石であることは、明々白々であります。それゆえ、
年金全体の将来のために、あえて私はこの問題をここに取り上げた次第であります。
その他の問題といたしましては、賃金スライドの導入や、既裁定者の遺族
年金についての
厚生年金以下である部分の改善など、我が党の
修正要求に今後応じることを約束されたことは了といたしますが、しかし、細部を見ますと、
共済年金を
厚生年金に合わせると言いながら、
厚生年金よりも低い階層もあり、NTTやたばこ産業株式会社の問題など、多くの整理を怠っていると言わざるを得ません。
以上、本
改正案に反対する主な理由を申し上げましたが、最後に、
政府に対し、
公的年金制度の一元化にさらに速やかに前進されるように要求をいたしまして、
討論を終わります。(
拍手)