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1985-10-17 第103回国会 衆議院 本会議 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十年十月十七日(木曜日)     ―――――――――――――  議事日程 第三号   昭和六十年十月十七日     午後二時開議  一 国務大臣演説に対する質疑 (前会の続  )     ――――――――――――― ○本日の会議に付した案件  国務大臣演説に対する質疑   (前会の続  )  議員請暇の件  小沢貞孝君の故議員塩島大君に対する追悼演説     午後二時三分開議
  2. 坂田道太

    議長坂田道太君) これより会議を開きます。      ――――◇―――――  国務大臣演説に対する質疑  (前会の続)
  3. 坂田道太

    議長坂田道太君) これより国務大臣演説に対する質疑継続いたします。浅井美幸君。     〔浅井美幸登壇
  4. 浅井美幸

    浅井美幸君 私は、公明党国民会議を代表して、総理所信表明及び関係大臣に対し、重要事項に絞って質問を行うものであります。  最初に、去る八月十二日の日航ジャンボ機墜落事故により亡くなられた皆様及び御遺族皆様に、公明党を代表して、心より哀悼の意を表するとともに、負傷された方々に謹んでお見舞いを申し上げ、一日も早い御回復をお祈りするものであります。  私は、補償問題の速やかな解決と、このような大惨事を繰り返さないよう安全対策に万全を期すよう、重ねて政府に強く要求するものであります。  さて総理中曽根内閣発足から三年を経過しようとしております。この三年間の政治過程を一言で言えば、「戦後政治の総決算」の名のもとに、現行憲法基盤とした政治枠組みに修正を加え、我が国を危険な方向へと導こうとしている印象を私は強くするものであります。特に、戦前の苦い歴史の教訓の上に築き上げられてきた平和主義原則、これは重大な危機に今や瀕していると言わなければなりません。  総理は、防衛費の対GNP一%枠の撤廃をみずからの政治目標とされ、これを危惧する国民世論の高まりの前に、GNP基準年度変更を利用して鎮静化に努められたようでありますが、枠を外したいという総理の本音は、いささかも変わっていないと私は推測いたします。加えて、強引に強行した靖国神社の公式参拝、さらには、スパイ防止法の制定を画策する姿勢などとあわせ見るならば、そこには、あしき戦前回帰への傾斜が浮き彫りにされていると言っても決して言い過ぎではありません。したがって、私ども公明党は、臨時国会において、これらの問題に重点を置いて中曽根内閣施策をたださずにはおられません。  そこでまず、国民の多くが不安を抱く防衛問題、靖国神社参拝問題について、見解を求めるものであります。  総理、あなたは就任当初に、日米運命共同体日本列島不沈空母、海峡封鎖などと過激な発言をされ、また、NATOのパーシングⅡ配備に賛意を示し、さらには、レーガン大統領との会談では、米国戦略防衛構想、いわゆるSDI理解を示すなど、その発言行動は、平和国家日本が歩むべき道と大きな隔たりがあり、軍国主義的な色彩を深めていると言わざるを得ません。  私は、この一連の総理発言政策として具体的に反映され始めたことに、大きな危惧を感じております。防衛費GNP比一%枠の撤廃を先送りしながらも、一千海里シーレーン防衛とその洋上防空強化をねらいとした、一%枠突破規模を持つ五九中業を政府計画へと格上げしたことは、大きな矛盾であるとともに、一%枠撤廃への宣言であり、近い将来に一%枠を撤廃する布石であると受けとめざるを得ません。  総理、私ども公明党がなぜ歯どめとしての一%枠にこだわり続けるのか。  それは第一に、歯どめとは防衛費が一%を超えようとする状況にブレーキをかけることにあり、突破のために歯どめを撤廃するという論法は言語道断であります。しかも一%枠は、軍拡への傾斜を阻止する国民的合意として、広く深く定着しているものであります。  第二に、GNPを分母とする上限枠防衛費の歯どめとすることは、時々の政府防衛費拡大意図しても、政府判断のみではふやせないように、政府みずからを厳しく律したもので、崩してはならない日本の重要な平和政策なのであります。(拍手)それに対して、総額明示方式には、まず、総額自体の決め方に何もルールがなく、政府の身勝手な判断決定され、かつ、先端技術の進歩に伴う性能の変化兵器価格の変動、さらには新防衛計画で採用された三年ごとの見直し、すなわちローリング方式により、総額が自由に膨らむ可能性が強く、到底歯どめとなり得ません。  総理防衛費行政改革の対象であります。そして、専守防衛内容という見地からして、一%枠堅持は重大な問題であります。にもかかわらず、「防衛計画大綱水準達成が優先するとして一%枠を撤廃されるのであれば、それは、中曽根内閣政治姿勢の何たるかを端的に物語るものであり、国民世論への重大な挑戦であると申し上げなければなりません。(拍手)以上の諸点について、総理所見を伺うものであります。  一%枠撤廃問題と同時に、見過ごしにできないのは、新防衛計画内容であります。  新防衛計画の中核は、一千海里シーレーン防衛と、その洋上防空であります。この構想は、日本列島を中心にして周辺一千海里の海空域防衛を目指すものであり、それは明らかに、限定的小規模侵略への対処を目的とした「防衛計画大綱」を踏み出し、自衛隊の質的転換を図るものであります。このような防衛範囲の際限ない拡大に対し、国民はもとより、東南アジア諸国危惧の念を強めております。総理は、これらの疑問や危惧に対し、どのように説明されるのか、明快なる御答弁を求めるものであります。  かつて総理は、力、すなわち防衛力強化が、相手を政治交渉の場に引き出す手段であるという趣旨発言をされたことがあります。この論理こそ、まさしく軍拡論理と表裏一体であると言わざるを得ませんが、お考えを示していただきたいのであります。  米国戦略防衛構想、いわゆるSDIに対し、我が国参加したり協力することは、我が国の平和諸原則に反し、米国核戦略体制に巻き込まれるものであり、極めて危険であります。総理は、緊急サミットへの出席に当たり、我が国政府としてSDIには参加協力はしないことを、この国会で明らかにすべきであります。総理の明確な見解をお示しいただきたい。(拍手)  次に、靖国公式参拝にかかわる問題であります。  中曽根内閣は、官房長官の、しかも私的諮問機関答申を隠れみのにして、これまで歴代内閣が、違憲ではないかとの疑いをなお否定できないとしてきた国会答弁統一見解を、いとも簡単に変えてしまいました。私から申せば、これほど国会が軽視された例はかつてございません。総理、こんなやり方が許されるのでありましょうか。まず手続論の問題として、この点について伺っておきたいのであります。  総理及び閣僚の公式参拝は、憲法違反であり、私どもは到底容認できません。多くの国民は、こんなことまでして公式参拝を強行した中曽根内閣には、何か別の意図があるのではないかと思っております。もし公式参拝を強行した背景に、戦争を肯定化し、我が国軍事大国化へ進ませる意図が含まれているとするならば、極めて重大な問題であると私は指摘せざるを得ません。戦争で亡くなられた多くの方々の慰霊を行うことは当然であり、御遺族の心情も私は十二分に理解するものであります。総理、なぜ公式参拝であらねばならないのか、なぜ違憲疑いを押しのけて強行されたのか、その真意と、公式参拝に対する内外の批判をどう受けとめておられるのか、総理外務大臣答弁を求めるものであります。(拍手)  次に、多くの難問を抱え、試練に直面している経済財政問題についてお伺いします。  当面の最大課題である経済摩擦問題は、鳴り物入りで決定した市場開放のための行動計画にもかかわらず、米国を初め諸外国からの対日批判は一向に衰えておりません。総理は、今回の訪米で、レーガン大統領日本市場開放努力を説明すると言われているが、これによって、米国議会の対日批判保護貿易主義の台頭を抑えることができると見ておられるのかどうか。また、我が国対外経済政策を進めていく上で、円高を定着させていかなければなりませんが、それは、米国財政赤字と高金利の是正が不可欠の条件であります。総理方針をまず承りたいのであります。  私は、経済摩擦を克服するためには、内需拡大策の積極的な実施とあわせ、できる限りの市場開放緊急輸入拡大政府開発援助の増額、労働時間の短縮等々の総合的な対策を実行する必要があると考えます。同時に、市場開放円高を定着させていくためには、それによってとかく影響を受ける中小企業下請企業などへの十分な配慮が必要でありますが、それぞれ総理のお考えをお示しいただきたいのであります。  総理中曽根内閣発足以来の課題であり、経済摩擦を解消する上で欠くことのできない内需拡大がいまだに実現しない原因は、個人消費民間住宅が伸び悩み、公共事業の大幅な落ち込みにあることは明白であります。その意味では、我々が主張した所得税減税など緊急対策実施を怠ってきた責任は、重大であります。このたび政府は、内需拡大策決定しましたが、その内容は、民間の活力と地方を頼る中途半端なもので、期待された財政、金融の本格的な出動は見送られてしまったのであります。直ちに行われるべき内需拡大策は、個人消費を喚起するための所得税減税であり、また、住宅都市基盤整備を優先する公共事業費の追加であります。総理は、実効ある緊急対策を講じる意思があるのかどうか、しかとお答えを願いたいのであります。  特に私は、六十一年度予算編成に当たっては、現在進めている一律マイナスシーリング基準に置く縮小均衡型の予算編成を取りやめ、内需拡大を目指し、大幅所得税減税公共事業の拡充を柱とした積極型予算編成すべきであると考えますが、六十一年度予算編成に関する総理並びに大蔵大臣基本方針を伺いたいのであります。  なお、与野党の幹事長書記長会談で確認された寝たきり老人教育単身赴任政策減税実施についても、改めて総理の決意を伺うものであります。  続いて、税制改革についてただします。  総理政府税制調査会抜本改正諮問をされた折のあいさつには、「増税なき財政再建」の文言が全く見当たりません。総理のかたい公約であった「増税なき財政再建」は今や放棄されたのかどうか、この点を明確にしていただきたいのであります。  次に、諮問を受けた政府税制調査会は、来年の春に減税答申参議院選挙が終わった秋に増税答申がなされる、巷間このようにうわさをされております。総理、あめとむちを用いるような無責任なことはやめていただきたいのであります。大型間接税導入前提とした所得税減税は、国民税負担の軽減とはおよそかけ離れたものであり、強く反対するものであります。大型間接税導入は行わないとお約束できるかどうか、しかと承りたいのであります。また、大きな焦点となりつつあるマル優預金など非課税貯蓄に対する低率分離課税導入は、預金を老後の支えとしている高齢者などに不安を与えているのであります。総理大蔵大臣のお考えをこの点についてお聞かせいただきたいのであります。  次に、医療共済年金問題についてであります。  厚生省は、六十一年度予算概算要求で、老人医療費の一部負担額を約三倍近く引き上げようとしております。しかし、現行の一部負担導入老人保健法の所期の目的は既に達せられており、これ以上負担増を図る施策は、明らかに福祉を後退させる意図にあると言わざるを得ません。費用負担を先行させることは、老人保健法趣旨にもとり、本末を転倒するもので、反対であります。所信を明らかにしていただきたいのであります。  次に、退職医療制度についてであります。  大幅な国庫補助を削減し、加えて、政府退職者数の重大な見込み違いから、国民健康保険財政に二千億円余の膨大な赤字を招いたことは、極めて遺憾であります。政府責任としてどのような方針で対処されるのか。  また、今国会焦点の一つである国家公務員等共済年金改正案について、一点だけお尋ねします。  共済年金についても基礎年金導入することについては、既に我が党が主張してきたところでありますが、今国民の前に明確にしなければならないのは、今回の改正によって共済年金の一元化がどのように進められるのか、あるいは、公的年金制度全体の再編成がどのようなプロセスで行われるかという点であります。国鉄年金の救済を含め、これらの問題について、総理の御所見を承りたいのであります。  次に、地方行財政の問題であります。  六十年度年度限りの措置とされた高率補助金の一律削減措置は、六十一年度継続が図られようとしております。一律削減措置は、本年度限りで打ち切るべきであると私は強く主張しますが、政府方針を明らかにしていただきたいのであります。  地方行革をいかに推進するかは、大きな課題であります。国、地方を通ずる事務事業の廃止、縮減、国の地方関与是正及び国、地方間の事務財源の再配分を図ることについて、総理の具体的な考えを伺っておきたいのであります。また、機関委任事務について、地方がその事務を執行しなかった場合、国は裁判抜きで代執行ができるよう、地方自治制度の根幹にかかわる制度変更をしようとしております。なぜこのような制度変更をしなければならないのか、その理由を明確にしていただきたいのであります。  ここで、指紋押捺問題について伺っておきます。  指紋押捺を拒否する人が相次ぐなど、強い反対運動が続いていますが、国際人権規約精神にも反する同制度は、本人を確認できる他の措置を講じ、廃止すべきであると考えます。今後の改正の見通しについてこの際、見解を伺っておきたいのであります。  次に、重要な政治課題である国鉄改革教育改革について伺うものであります。  さき国鉄再建監理委員会答申した国鉄改革方向に対して、公明党は、民営化賛成分割原則的に賛成であります。しかし、分割方法によっては、国民に迷惑と負担をかけることになり、慎重な配慮が必要であると考えます。監理委員会答申は、時間的制約のためにか、幾つかの課題があいまいなままに対応策を先送りした感じがいたします。その一部を指摘すると、答申は、民営化への改革を重視する余り、企業性採算性に比重がかかり過ぎ、我が国交通体系の将来と鉄道事業の役割に関するビジョンが、不鮮明である点であります。  私は、鉄道輸送の持つ特性は、時代の推移や社会変化とともに、必ずや見直されることがあると考えます。また、赤字要因たる貨物部門を分離することで収支の均衡を図るとしたり、さらに、事業分割に伴う輸送効率上の諸問題や安全、防災投資あり方等については、必ずしも納得できる回答が示されているとは思えません。国鉄は、国民生活に不可欠な交通手段であるだけに、国鉄改革国民理解協力の得られるものでなければならず、国鉄改革に伴う諸問題は、その対策国民の前に明らかにし、拙速な改革は厳に慎むべきであると考えます。  また、改革実施に当たっては、次のような事項が十分に配慮されなければならないのであります。  それは第一には、事業分割に当たっては、輸送効率上の諸問題やダイヤ編成路線管理等課題解決を図るべきであり、慎重に進めること。第二は、長期債務の処理のために利用者国民に過大な負担を強いるべきではなく、償還財源にいわゆる新税などの導入を図るようなことは行わないこと。第三には、余剰人員対策を重視し、職員の生活の安定と雇用の場の確保に万全を期すこと。第四には、特定地方交通線転換基準を見直し、地域の道路事情気象状況等を加味すること。第五には、国鉄改革に当たっては、労使の協調と信頼関係を確立することなどであります。国民理解を得る国鉄改革を進めるためには、これらの点は必要な前提条件であると思うのでありますが、各課題について、総理所見を伺いたいのであります。(拍手)  現在、臨時教育審議会において教育改革の諸問題を審議しておりますが、最近の中曽根内閣姿勢を見るにつけ、戦前教育の復活を懸念する向きがあります。この際、総理考え教育改革基本理念教育目標を明確にしていただきたい。  公明党は従来から、教育改革実施するに当たっては、国民合意の形成が何よりも重要であると主張してまいりました。我が党では、昨年より既に全国各地で、父母、教育関係者、教師と、そして青年たちとの対話集会を開催し、また、教育の荒廃の現状をつぶさに視察し、貴重な意見、要望などを集約しております。何が問題で、何が解決されなければならないのか、切実な意見が多数寄せられました。私どもは、こうした結果を、教育改革案策定に関する基本的考え方個性主義初等中等教育学歴社会・生涯教育臨教審審議あり方など二十二項目にまとめ、本年五月、臨教審に対し申し入れを行いました。総理は今後、国民合意をどのように形成されるのか、伺っておきたいのであります。  今、教育現場では、いじめ、落ちこぼれ、校内暴力等の深刻な問題が緊急に解決を迫られており、教育者責任とあわせ、当面する緊急課題については、政府も適時適切な指導、対策を講ずるべきであります。それぞれ総理の御所見を伺うものであります。(拍手)  次に、外交問題についてお伺いします。  来る十一月、六年ぶりに開かれる米ソ首脳会談世界の目は集まっており、私もまた、国際緊張緩和、核軍縮の進展に大きな前進が見られるよう、この米ソ首脳会談の成功を心から期待する一人であります。レーガン大統領は、ソ連との首脳会談を前に、緊急サミットの開催を提案いたしました。しかし、フランスミッテラン大統領は、今の時点でそれが絶対に必要とは思わないとして欠席を明らかにしたのに対し、総理がいち早く出席を決めた理由は一体何なのか、今回の緊急サミット必要性、検討されるべき議題は何であるのか、また、フランス欠席理由をどのように受けとめているのか、それぞれ総理見解を伺いたいのであります。  ソ連外相の訪日による日ソ外相会談の再開は、まことに喜ばしいものであり、北方領土問題の解決平和条約の締結という国民的な要求が実現するよう、私も強く望むものであります。ソ連との関係改善は大切であり、日本の安全保障問題、アジアの緊張緩和にも極めて重要であると思うのであります。真の相互理解のために、継続的な対話を可能とする枠組みを確立していくべきであります。日ソ関係改善のためにどのような具体策を持っておられるのか、総理外務大臣のお考えを明らかにしていただきたいのであります。(拍手)  最後に、今国会最大焦点ともいうべき衆議院の定数是正問題について伺います。  現在の定数配分は、さき最高裁判決憲法違反とされ、その是正は、一日たりとも先送りが許されない状況にあります。しかも、六十年国勢調査は、既に集計作業へと進み、本年十二月末にはその要計表が公表されます。この国勢調査の結果が判明すれば、六増・六減の是正では再び違憲状態が生ずる事態が案じられるのであり、この際、抜本改正がなされるべきであると強く主張いたすものであります。(拍手)もし直ちに抜本改正を行うことがあくまでも不可能であり、そしてこの国会意見が一致しなければ、緊急避難的措置として六増・六減案で、これからこれを一致させようというのであれば、その場合には、二人区は絶対につくらないこと、そして、六十年国勢調査の結果が判明した段階で、改めて抜本的改正による定数配分を行うことを、国会決議の形で確認すること、この二点が不可欠の要件であると主張するものであります。  これらの問題について総理の御所見を承り、私の質問を終わります。(拍手)     〔内閣総理大臣中曽根康弘登壇
  5. 中曽根康弘

    内閣総理大臣中曽根康弘君) 浅井議員の御質問お答えをいたします。  まず日航機事故に対しましては、心からお見舞いを申し上げ、哀悼の意を表し、事後対策に対して万全の措置を行う考え方でおります。  さらに、防衛問題でございますが、やはり防衛基本をよく考える必要があると思います。それは、国民生命財産を守るという大きな仕事を、政府はしょっておるということであります。今日の日本の繁栄あるいは日本の安定というものは、平和によるものであります。この世界の平和、日本を取り巻く平和をあくまで確保して、国民皆様に心配をかけない体制をつくり上げていくということが、防衛基本なのであります。  そういう基本に立ちますと、政府といたしましても、しかるべき計画をつくって、国民皆様方に御安心を願う体制をつくらなければならないのです。それにはまず、みずから自分の国を守るという気概を国民が持つ必要があるのであります。また、国民の皆さんに御協力をいただく必要があるのでございます。やはり防衛基本にあるものは、国民の支持です。それから、客観情勢に即応する認識であります。それから、国を守るに必要な実力であります。あるいはさらに、ほかの政策との調和であります。こういうような諸般の問題に関する調整をとりつつ、国民皆様方生命財産を守るために、政府は真剣に対処して防衛というものをやっておるということを、御理解願いたいと思うのであります。(拍手)  そして今回は、特に今までの防衛庁の内部資料にすぎなかった防衛中期計画を公式のものにいたしまして、国防会議にかけ、閣議にかけ、国会に報告するという、さらに民主的方法に前進したのでありまして、これは褒めていただきたいと思うところであります。しかも、GNP一%の閣議決定のこの精神は、今後とも守ってまいります、そういうように申し上げておりまして、今までの政策との継続性も心がけておるということを申し上げたいのであります。  総額明示方式が歯どめにならないではないかというお話でございますが、この総額明示方式は、実はことしの春の国会で、民社党の大内議員がこれを示唆されまして、我々は非常に適切なお考えであると思って、この大内議員のお考えを非常に参考にさせていただいたものなのであります。やはり五年間における大体これぐらいお金がかかりますという全体を明示するということは、政府責任を持った数字をある程度明示するということは、民主的統制の上からも、国民皆様方防衛計画を御了知願う上からも、その展望を示す上からも、非常に大事な政府仕事ではないかと私は思います。そのこと自体は、やはりある意味における歯どめになると私は考えておるのであります。  次に、この総額明示に対するいろいろな御意見は、結局は、ジャーナリズムであるとか、あるいは国民皆様の御議論であるとか、各党代表のいろいろきょうあるような御意見であるとか、そういうものによっていろいろチェックも受け、批判も受けて、そして国民が最終的に判断をする、これが民主主義の一番いいやり方ではないか、そう思っておるわけでございます。(拍手)  次に、GNP一%の問題でございますが、しかし我々といたしましても、三木内閣決定というものは、非常に意味のあった決定でございまして、今後といえども政府は、常にこれを心に置きまして、そうして、この精神を尊重していくという心構えに立つということも、申し上げておく次第なのでございます。  さらに、SDIに対する考え方の御質問でございますが、これはアメリカが、今までのようなICBMのような攻撃的な核兵器、大規模核兵器による攻撃的兵器体系による均衡抑止という考えから、防御的兵器体系による均衡抑止に変えていこうという、大きな始まりであると私は考えておる。しかもこれは、核兵器をなくそう、そうして非核兵器だけに持っていこうという、しかも防御的兵器による均衡抑止に転換しようというのでありますから、私はこの趣旨については、大いに理解を示したという態度をとっておるものであります。研究参加につきましては今、慎重に検討中でございます。  靖国神社の問題につきましては、先般来申し上げておりますが、政府統一見解変更、あるいは、内閣総理大臣その他の国務大臣国務大臣としての資格で靖国神社に参拝する問題は、これは法制局でもよく検討もさせましたし、また国民世論もよく踏まえまして、大多数の国民がこれを支持してくだすっているということを踏まえて、政府責任においてこれは行ったものなのであります。(拍手)これに対する御批判がいろいろあることは、私たちもよく耳を傾けております。しかし、靖国神社は我が国の戦没者追悼の中心的施設である、そして国民が強く望んでいる、憲法との関係も十分考慮して宗教色を排除した形である、そしてその趣旨は戦没者の追悼である、あわせて、我が国世界の平和への決意を新たにするという願いを込めて行ったものである、このように御理解を願いたいと思うのであります。  次に、日米貿易問題でございますが、アメリカ側におきましても、財政赤字の縮小、高金利の是正、あるいは輸出努力の積極的な増幅等が大切であって、我々は常にこれを要請しているところであり、かつ我が国といたしましても、市場の開放、公正化について全力を振るっているところでございます。  最近、アメリカの傾向としまして、いわゆる保護主義法案に対する情勢は厳しいのでありますが、表現が変わってきておるのです。保護主義というものがアメリカの国民の中でも、余り評判がよくないらしいという傾向がありまして、保護主義法案という名前から公正確保法案という方向に名前を変えつつある、表現を変えつつある、そういうふうに変わってきております。我々は、この面から見ましても、貿易の公正の確保という面から、現在のアクションプログラム、基準・認証制、透明性の確保、輸入の増大、こういう面について大いに努力しなければならぬと思っております。  次に、円高の問題でございますが、円高の定着を図りつつ、内需拡大に向かってさらに努力していくことは必要であります。特に、為替変動要因が国内産業に及ぼす影響につきましては、中小企業関係について特に注意をするということは、前から私は発言しているところでありまして、今回の内需に関する対策もその一環なのでございます。今後もよく注意してまいりたいと思っております。  減税の問題に対する御質問公共事業の追加に対する御質問でございますが、減税につきましては、税調に今、諮問しているところでございます。この趣旨は、税収を増大させるという意味ではなくして、長い間のひずみ、重税感、不公平感、これをなくそう、そして正常な、国民が喜ぶ税体系に変えていこう、そういう趣旨のもとに行わんとしておるものであります。そして、いわゆる間接税の問題、あるいは優遇利子の諸般の問題、利子優遇税制、こういう問題につきましては、すべてこれは税調におきまして幅広い検討の対象の一つとして検討されるであろうと考えております。それらの答申を待ちまして我々は、さらに慎重に検討した上、党とも相談をして、考えをまとめていくつもりでおります。  予算編成基本方針に対する御質問でございますが、この「増税なき財政再建」の理念は、あくまで今後も堅持してまいります。六十一年度予算編成に当たりましても、これらの財政改革を推進してまいります。公共事業あるいは所得税の減税等につきましては、先ほど内需の振興や税調に関することで御答弁申し上げたとおりでございます。  政策減税につきましては、十月十四日の幹事長書記長会談の結果については、党からもよく話を伺っており、誠意を持って対応してまいりたいと考えております。  次に、老人福祉の問題でございます。  老人保健制度については、高齢化社会の到来に備えまして、この老人福祉制度の世代間の公平や長期持続的安定、こういうものを考えまして、ある程度の改革を必要とするという段階になっております。若干の負担の引き上げがございますが、この程度の引き上げは、この制度を持続して安定的に維持するためにやむを得ざるものである、そのように考えて御理解をいただきたいと思うのでございます。  退職者医療制度による国保財政の問題につきましては、厚生省の実態調査の結果を踏まえまして、市町村国保の財政状況等を十分見きわめつつ、運営の安定が図られるように適切に対処してまいります。  公的年金制度編成のプロセスでございますが、さき政府は、国民年金、厚生年金保険について、基礎年金導入等の改正を行いました。共済年金につきましても、来年の四月の同時実施を大前提として今改正をお願いしておるのでありまして、どうぞ今国会におきまして改正ができますように、お願いをいたす次第でございます。昭和六十一年度以降においては、以上の措置を踏まえまして、給付と負担の両面において制度間の調整を進める、こういうことになると思います。そして、昭和七十年を目途に公的年金制度全体の一元化を完了させる目的でございます。なお、国鉄共済年金につきましては、年金財政が極めて厳しい状況である情勢にかんがみまして、将来にわたって国鉄の皆さんに年金支給が維持し得るように、所要の措置につき速やかに検討を行う必要があると思っております。  次に、補助率の問題でございます。  六十一年度以降の補助率のあり方についても、幅広い御意見を承りながら検討の上、地方公共団体の皆さんともよく御相談をして対処してまいります。なお、この問題につきましては、補助金問題関係閣僚会議及び学識経験者等から成る補助金問題検討会を随時開催しているところでございます。  行革、特に地方行革の問題でございますが、機関委任事務に係る職務執行命令訴訟制度の見直しにつきましては、国の機関委任事務の適正な執行の確保と地方公共団体の長の自主的な立場との調整という、国と地方との関係の基本にかかわる問題であります。今後、地方制度調査会を初め関係方面の意見も十分聴取しながら、臨調答申趣旨に沿いまして調整を進め、次期通常国会に所要の法律を提出すべく準備いたしたいと思います。  指紋押捺問題につきましては、昨年以来、いろいろな問題があることはよく知っております。外国人登録法の改正の際にも審議を尽くしました問題でございますが、結局、現行制度を存続させることになったものであり、その後、改善の余地なきやと思いまして、この改善も行った次第でございます。七月から実施しております。指紋制度は、登録する外国人の人物を特定し、確認するため必要な制度であります。日本制度は国際水準以下ではないのであります。外国並みの制度でもあるわけであります。今後とも、長期的かつ自主的立場から、内外の情勢を踏まえて検討してまいりたいと思っております。  国鉄改革につきましては、これは民営的経営手法を取り入れること、それから労働問題の改善を行う、これが非常に大きな眼目であったわけであります。その意味にこたえて改革が今行われんとしておるのでございますが、改革実施に当たりましては、新しい経営形態移行に当たり、列車運行方式、運賃制度等について十分な配慮を行い、利用者の利便の確保を図りつつ、円滑な分割を図ってまいる所存であります。なお、長期債務の問題も重要な問題でありまして、政府全体として長期的観点に立って、かつ総合的、全国民的な処理方策を検討いたしております。国鉄の余剰人員問題については、前から内閣全体を挙げて対処すると申し上げておるとおりであります。  なお、特定地方交通線対策は、国鉄経営再建促進特別措置法の考え方に基づきまして、鉄道としての機能を十分発揮し得なくなった路線については、バス等への転換を図るものであります。代替交通機関は確保いたしまして、今後ともこの施策は推進しなければならないと思います。  教育改革の問題でございますが、やはり二十一世紀に向けて我が国が創造的で活力ある社会を築いていくために、教育の現状における諸課題を踏まえつつ、教育の新しい改革を実現していこうと思っておるのであります。その理念、目標とするところは、個人の尊厳を重んじ、かつ伝統文化を継承し、世界的な日本人をつくっていこう、そういう考えでございます。やはり教育につきましては、不易と流行とか、あるいは和魂洋才とか、昔からいい言葉がございます。このように、日本の固有の伝統やあるいは精神文化というものを無視して長続きする教育もないわけであります。しかし、停滞はまた許されないということであります。そういう意味におきまして、教育基本法の趣旨をよくわきまえまして、国際社会に貢献し得る国民の育成を図らんとしておるものなのであります。  教育改革については、もちろん国民合意が必要でございます。臨時教育審議会におきましても、公聴会の開催とか、あるいは専門家の意見聴取とか、あるいは海外調査、アンケート調査等も行いまして、幅広く研究を進めているところであります。  いじめの問題については、いろいろ原因がございます。しかし、これは学校の問題でありますから、学校の校長先生、教頭先生、主任やあるいは先生方がまず真剣に取り組んでいただかなければなりません。先般、文部省を通じまして、各教育委員会ごとに学校や教師も交えて具体的な対策を相談するよう指示したところでございますが、今後、政府といたしましても、各種機関あるいは国民の皆さんの御意見を聞き、御協力をいただきまして、いじめの絶滅に向かって全力を尽くす考え方でおります。  レーガン大統領からの招請に基づく会談でございますが、私は、最近、ゴルバチョフ氏がフランスへ参りまして軍縮案を発表いたしましたが、非常に興味を持っておるのであります。今までソ連が言ってきたことから一歩も引いてないようにも思いますが、しかし若干違ったところもあります。それは、数字を出しているということです。核弾頭について六千であるとか、あるいは六割であるとか、三千五百であるとか、数字が初めて出てきております。こういう点は今までにないところでもありまして、アメリカ側も非公式に数字を出したこともございます。  そういう意味から、新しい政権になりまして、レーガン・ゴルバチョフ会談によって、すぐこれが前進するとは思いませんけれども、何らかの端緒を得るチャンスになれば、これは世界が安心するし、緊張も緩和される、そういう端緒にぜひしたい。そういう意味において、レーガン大統領にも会い、あるいは首脳部の会談におきましても努力していきたい、そう考えておる次第なのであります。  フランス欠席につきましては、ゴルバチョフ氏がちょうどフランスを訪問するというときでありましたこと、あるいは、たしか南米方面にミッテラン大統領が訪問するという日程があったという問題もあったのでございましょう。しかし、事情については、外国のことでありますから、詳しくは承知しておりません。  次に、日ソ間の問題については、北方領土問題を解決して平和条約を締結するということが基本であります。よって私は、先般、ゴルバチョフ氏に対する返書を出しましたが、その中におきましても、一九七八年以降中断している平和条約締結交渉を早期に再開したい、そういう旨のことをゴルバチョフ氏にも申し入れしておる次第でございます。近く開かれる日ソ外相定期協議を初めとして、あらゆる機会を通じて対話を広げ、また深めまして、これらの問題の解決に前進してまいりたいと思います。  定数問題は、これは最高裁判所の判決をいただきまして、立法府としての連帯した共同の責任でございます。野党も案を提出されており、与党も案を提出されておられますが、ぜひとも今国会におきまして、お互いに話し合いをいたしまして、この問題を解決いたしたいと念願しております。現内閣におきましては、小選挙区をやる考えはございません。どこぞ御安心なすって六・六案に御協力をいただきたいと思います。  残余の答弁関係大臣からいたします。(拍手)     〔国務大臣竹下登君登壇
  6. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) 私に対する御質問は二つでございます。  一つは、いわゆる予算編成方針であります。  我が国財政事情は、六十年度末で公債残高が百三十兆を超えるなど、極めて厳しい状況にございます。財政改革の推進は、我が国経済、社会の発展と安定にとって避けて通ることのできない国民課題であります。したがって、百三十兆と申しましても、これを六十年間ということでいろいろ計算しますれば、まさに四百数十兆円というものを後世代の納税者の負担に任すということになります。そのことを考えてみますと、やはりこの六十一年度予算編成に当たりましても、引き続き財政改革を推進する、こういう考え方で、あらゆる経費にわたってその節減合理化に積極的に取り組んでまいります。  他方、我が国経済は、全体としての景気は、ばらつきはございますものの、拡大傾向にあります。このような財政事情のもとで、財政が積極的役割を果たすような状況にはなく、あくまでも民間活力の発揮を促すような方策を、その環境づくりのための方策を検討していくべきものである、このように考えております。したがって、対外経済摩擦の解消を図るためにもつくられました十月十五日の内需拡大が必要との認識のもとで、これらの諸施策を積極的に実施していくことが必要であろうと思っております。  それから、税制の問題につきましては、総理からのお答えにもございましたが、確かに所得税減税というような問題が、短期的な経済効果の点から論じられておることもよく承知しております。しかし、短期的な経済効果のみにとらわれて、それが中長期的に財政赤字の一層の拡大をもたらして、将来に悪影響を及ぼすおそれがあるということもまた、十分考えなければならないところであります。いずれにせよ、この問題につきましては、先ほど来のお答えのごとく、税制調査会で抜本的見直しという見地に立って、御検討をいただくことになっておりますので、目下のところは、あらゆる予見を挟むことなく、その審議の経過を静かに見守っておるというのが、現状の実態であります。(拍手)     〔国務大臣安倍晋太郎君登壇
  7. 安倍晋太郎

    国務大臣(安倍晋太郎君) 浅井議員の御質問お答えをいたします。  まず、靖国神社公式参拝に対する諸外国からの批判についてでございますが、アジアでは中国側より、靖国神社を公式に参拝することは、中国人民のみならず、アジア諸国人民の感情を害するのではないかとの趣旨の懸念が表明をされました。なお、韓国、香港等におきましては、主として事実関係の報道が行われているにとどまっておりますが、一部の新聞においては、批判的なトーンの報道も見られておるわけでございます。  これに対しまして、我が国としましては、諸外国の理解を得べく、さきに日中外相会談も行われましたが、そうした会談、あるいはその他の外交ルート等を通じまして、今回の参拝の趣旨を十分説明をいたしますとともに、我が国が過去の反省の上に立って、平和国家としての道を歩んでいくとの姿勢にはいささかの変化もないことを、説明をしておるところでございます。  次に、日ソ関係についての御質問でございますが、戦後未解決の北方領土問題を解決して日ソ間に平和条約を締結することにより、重要な隣国たるソ連との間に真の相互理解に基づく安定的な関係を確立することは、従来より一貫した我が国の対ソ外交の基本方針であります。こうした形での日ソ関係の安定と発展は、極東アジアあるいは世界の平和のために貢献するものと認識しております。昨年以来、政府が進めてまいりましたソ連との対話強化の努力の結果、近くシェバルナゼ外相の訪日を得て、日ソ外相間定期協議が開かれる運びとなったわけでございますが、政府としましては、この外相間定期協議を初めとして、今後ともあらゆる対話の機会を通じて、日ソ間の諸懸案の解決を粘り強く働きかけていきたいと考えております。(拍手
  8. 坂田道太

    議長坂田道太君) 永末英一君。     〔永末英一君登壇
  9. 永末英一

    ○永末英一君 私は、民社党・国民連合を代表いたしまして、中曽根総理所信表明に対し、我々の見解を明らかにしつつ質問をいたします。  質問に先立ち、去る八月の日航機事故に対し、亡くなられた方々、御遺族に対し心からなる哀悼の意を表するとともに、負傷された方々にお見舞いを申し、速やかな御全快をお祈りする次第であります。政府は、このような事故が再び起こらないよう、格段の努力をいたすことを強く強く要求する次第であります。  中曽根総理は、節目とか転換点とかいう言葉がお好きのようであります。けれども、暦の上の節目がそのまま歴史の転換点になるわけではありません。歴史の転換点は、歴史をつくる人間社会に醸し出された問題が大きく膨れ上がり、社会全体を動かずに至ったとき、人々に知覚されるものであります。政治家の任務は、人々に先んじてこの歴史の流れの行方を見通し、混乱なく人々とともに進むところにあります。中曽根政治の実体は、スローガンは高く掲げられますが、自民党政治の泥沼の中であがき、もがき、すべてが中途半端で低迷しているありさまのようであります。これでは、我が国政治に前進はありません。我々は、率直に問題点を指摘し、総理の明確な答弁を求めるものであります。  議員定数問題について、最高裁判所は、本年七月十七日の判決で、現行の議員定数配分規定は、昭和五十八年十二月総選挙当時違憲であると断じました。しかも、五名の裁判官が、現行議員定数配分規定のままで選挙が施行されたときは、その選挙は一定期間後無効などの補足意見をつけました。なお、一人の裁判官は、議員一人当たりの選挙人数の格差が一対三を超える状態になった場合には、その選挙区の選挙を無効とすべきであると述べました。司法からこのような判断を受けた立法府の責任は、まことに重大であると言わなければなりません。  しかし同時に、大正十四年以来六十年間行われてきた一選挙区の定数三名ないし五名の中選挙区制は、今や我が国の主権者である国民政治意識を醸成する最も重要な契機となっております。三名区は絶対に守られなくてはなりません。自民党が二名区創設を断念し、我々四党統一案との調整を望むならば、我々は話し合うのにやぶさかではございません。しかし、自民党が自分たちでつくったいわゆる六・六案の強行成立を図るならば、それは議会政治の根底を破壊するものであります。総理は、単独強行採決は決して行わないことを、厳粛に国民にお約束願いたい。  定数改正に当たって忘れてならぬことがあります。それは、本年十月一日、国勢調査が施行され、その速報値がこの十二月二十日ごろ公報に掲載されるということであります。七月の最高裁判決は、昭和五十五年国勢調査の数値に基づく判断であります。したがって、本年十月国勢調査の結果が明らかになれば、立法府としては、この結果を組み入れた新しい定数表をつくるのが当然であります。また、今後国勢調査が行われれば、自動的に議員定数の改定が行われるよう、今回の法改正で実現すべきであると考えます。このため民社党は、各党と十分話し合いたいと考えておりますが、総理は、この私の考え賛成かどうか、お答え願いたい。(拍手)  政府は最近、防衛に関して二つの決定をいたしました。一つは、昭和五十一年三木内閣閣議決定である、防衛費GNP一%枠を守る旨の再確認であり、他の一つは、昭和六十一年から六十五年に至る総額十八兆四千億円、対GNP比一・〇一六%に上る中期防衛力整備計画であります。前者は、各年度GNPがどのように変化しても、防衛費の上限はGNP一%であるというのであり、後者は、五年間にわたる防衛費総額の限度は決めたが、各年度防衛費GNP一%を上回ることがあり得るという考え方であります。  我々は、防衛費決定に当たっては、まず、我が国に対する脅威の実体を見積もり、これに対する我が方の戦略を決定し、次いで、この戦略を遂行し得る防衛力を算定して、防衛費決定すべきであると考えます。この場合、我が国憲法の理念、専守防御、さらに非核三原則などをベースにして考えるべきは、言うまでもありません。  もともと、防衛費GNPとの比率は、結果的に与えられる数値であって、目標として与えられるべきものではありません。防衛費の歯どめは必要であります。しかし、GNPの一定率を基準として防衛費を決めるというやり方は、合理的であるとは考えておりません。しかし昭和五十一年以来、いわゆるGNP一%枠が防衛費に対する歯どめ的役割を果たしてきたことは事実です。この閣議決定が生きている以上、政府GNP一%枠を守ることは当然であります。政府の今回の二つの異質の決定に対し、いずれをとるか、中曽根総理はその態度を国民に明らかにせられたい。  我々は、今度の中期防衛力整備計画閣議決定という形式を整えた点は評価をいたします。しかし、その内容は厳しく検討されなければなりません。総理は、この計画による防衛力の規模で、予想せられる脅威に対して十分対処し得ると考えておられるかどうか。また、日米両国間で防衛協力について話し合われ、合意が見られておりますが、総理は、米軍の援護能力をどのように見積もっておられるか。さらに、ソ連の核脅迫があった場合、自衛隊とアメリカ核戦力とがどのようなリンケージに立つのか、明らかにせられたい。  防衛に対するシビリアンコントロールを徹底させるためには、国防会議を改組して、単独立法に基づく安全保障会議を設置し、さらに、国会の安全保障特別委員会を常任委員会に格上げするとともに、むだのない自衛隊の編成整備に全力を尽くすべきであります。これらの諸点について、総理・総裁としての明確な見解を伺いたい。(拍手)  ソ連の急激な核戦力の増大によって、アメリカの相互確証破壊戦略、MADは崩壊の危機に瀕し、レーガン政権は、戦略防衛構想SDIを打ち出すに至りました。ソ連もまた、既にSDIの研究を開始しているようでありますが、SDIについては、それが核廃絶に至るものであるかどうかなど、いろいろな点がなお不分明であります。我々は、検討を要する段階にあると考えております。  総理は、本年一月、レーガン大統領との会談で、アメリカのSDI研究を理解すると言われましたが、最近政府は、アメリカに調査団を送りました。この調査団の目的は何であるのか、伺いたい。来週の緊急サミットレーガン大統領との会談で、総理SDIについてどのような態度をとられるか、明らかにせられたい。SDIは、今後の同本の安全保障並びに科学技術の進歩に重大な影響を持つものでありますから、我々は、政府に各省庁を超えた統合的調査研究機関をつくり、その調査結果を国会に報告すべきだと考えますが、総理のお考えを承りたい。  本年九月二十日の核不拡散条約第三回再検討会議の最終文書では、包括的な多国間の核実験禁止条約がまだ締結せられていないことを、深く遺憾といたしておりますが、総理は、レーガン大統領に対し、米ソ首脳会談においてこのような包括的多国間核実験禁止条約を提案し、我が国はその場合、その検証役を引き受ける旨を明らかにすべきだと思いますが、総理考えを承りたい。  なお総理は、今回、国連で演説されることになっておりますが、我が北方領土における理不尽なソ連の軍事力配備、強化を明らかにし、北方領土返還につき国際世論を喚起すべきだと思いますが、総理の意思を明らかにせられたい。(拍手)  九月二十二日、五カ国蔵相会議の結果、円高・ドル安となり、貿易摩擦論議はやや小康を得たようであります。しかし、これはカンフル注射であって、体質が変わったのではありません。円高・ドル安をどのようにして続けていくか、それが問題であります。我が国の市場に対するアメリカのアンフェアの攻撃、ヨーロッパ諸国の通貨価値、発展途上国の累積赤字など、問題はグローバルな解決を求めております。政府は、去る六月末、関税分野について行動計画、アクションプログラムをつくり、この十五日、内需拡大策決定いたしました。しかし、この問題解決のためには、為替はもとより、関税、貿易など世界経済に関する新しい秩序をつくる多国間交渉が必要であります。総理は、来週の緊急サミットや、さらにレーガン大統領との会談でどのような提案をされるのか、具体策を明らかにしていただきたいのであります。  我が国は、八〇年代に入って以来、外需依存の構造的輸出黒字経済を続けてまいりました。これを転換させなければ、経済摩擦問題は根本的には解消いたしません。しかし、この経済政策転換を行うには、我が国財政は、その破局的体質のために無力となっております。我が国財政の公債依存度は、アメリカを抜いて今や主要先進国中第一位の高水準にあり、公債残高は急激に累増し、国民一人当たり比較でも対GNP比でも先進国中第一位であり、租税収入は毎年、その三分の一程度を埋めるにすぎません。そして、利払い費の歳出総額に占める割合もダントツであります。利払い費は今や、国民生活を向上せしめるための政策的経費を抜いて第一位の巨額を占め、財政は身動きのとれない状態であります。  しかも昨年より、赤字特例公債を含め、償還を要する公債の九割に近い額を借りかえる道を開いたため、今後六十年にわたって、特例公債を含む巨額の国債で、財政は半身不随はおろか、全身麻薄の状態となっております。こんな状態にありながら政府は、昭和六十五年度までの間に、特例公債依存体質からの脱却と公債依存度の引き下げに努めるなどと、ただ言葉を繰り返すだけでは、財政危機をどう打開しようとしておられるのか、国民にはさっぱりわかりません。総理方針をはっきりとお伺いいたしたい。  新たに誕生した日本電信電話株式会社や日本たばこ産業株式会社などの株式のうち、いつ、幾らを公債償還財源に充てるのか、また、国有地売却の規模及びそのテンポをどうするのか、はっきり説明を願いたい。(拍手)  財政再建のためには、行政改革が必須の前提であります。行政改革がスタートして四年半、この間、政府の行政サービスの水準は大きく切り下げられました。医療保険で本人負担がふえ、老人、児童向けの諸政策も後退しつつあります。ところが国民にとって、行政が変わったという実感が少しも感ぜられないのはなぜでありましょうか。行政改革目的は、政府国民生活向上のためにいかに役立つかというところにあります。そのためのしなやかな政府をつくることが目標となります。各省庁の縄張り根性、硬直化し切った割拠主義は、真っ先に改められなければなりません。  食糧、農林統計の部門では、相当数の職員の余裕が出ております。これを省庁間の壁を越えて配置転換を図れば、大幅な定員削減になるのでありますが、これがほとんど進んでおりません。そうした怠慢の結果、昭和四十二年以来現在に至る定数縮減率は、わずかに二・五%にすぎません。また、効果の薄い補助金の整理と声高く言われておりましても、さっぱりこれも進みません。一律カットなどとやっておりますが、五十九年度でわずか二・九%、本年度で〇・九%の削減にすぎません。  特殊法人の整理も許認可の整理も、足取りまことに春日遅々であります。本省庁関係も、総務庁が生まれただけで、あとはどうなるのかさっぱりわかりません。しなやかさなど、どこにも見出すことはできないではないですか。行政組織の外郭にある電電やたばこは民営に移されましたが、国鉄はこれからであります。総理は、一体どこまであなたの手で行革をやるおつもりなのか、この際、国民に明らかにしていただきたい。(拍手)  国鉄再建については、第一に、新幹線リース方式と本州旅客三分割案が答申されておりますが、これで自立経営ができるか、見解を明らかにしていただきたい。第二に、四万一千人の余剰人員を三年を区切って旧国鉄に残すことは、事実上の指名解雇であります。政府は、極力余剰人員縮減に努め、再就職保証の立法措置をすべきであると考えますが、総理見解を伺いたい。第三に、旧国鉄に残存する長期債務十六兆七千億円は、政府責任において処理せられるべきであります。総理のお考えをお聞きしたい。  外需依存から内需拡大経済へ転換するために、この十五日、政府は八項目にわたる内需拡大策決定いたしましたが、まずなされなければならないのは大幅減税であります。総理は、九月二十日の税制調査会におけるあいさつで、まず減税答申をと訴えられましたが、それはいつまでに答申を得て、いつから実施するつもりなのか、明らかにせられたい。税制にもいろいろな問題点がありますが、特に中堅所得層に重苦しくのしかかっている重税感を取り除く必要があります。所得税は、二兆円規模の大幅減税を行い、十五段階もの累進税率の刻みを見直す必要があると考えます。さらに、本年は国際婦人年の最終年であることにもかんがみまして、家庭婦人の働きを高く評価し、サラリーマン家庭に二分二乗方式の導入を検討すべきであると思います。  ウサギ小屋と酷評された住宅につきましては、公営住宅基本面積を広くして、新しい需要を喚起し、住宅に対する規制を撤廃し、地価を安定させ、固定資産税減税やローン減税、さらに融資を実施して、ゆとりのある住宅を建てさせるべきであります。これらについて総理見解をお伺いいたしたい。  あなたは総理に就任以来、三回の年度予算を組みました。それによって十一項目、一兆三千億円余に上る増税国民に課しておるのであります。しかも今回、森林の保全、水源確保のため、流水占用料の拡大や水源税の創設が政府部内で論議をされておりますが、総理はどうお考えになっておられますか。  自民党村山調査会はこのほど、大型間接税の創設で増収を図ろうとする旨の中間報告を出しましたが、我々はこれに断固反対であります。まず、不公平課税の是正に手をつけるべきだと考えております。総理は一体どうお考えか。  必要な内需振興のためには、建設国債の発行を渋ってはなりません。経済大国とはいえ、社会資本の貧弱な我が国におきましては、これを充実することが他国の信頼をつなぐ重要な方法であります。普及率の極めて低い下水道の整備や、全国に三千カ所あると言われるがけ崩れの心配のある箇所の修復を急ぐべきであります。お答えを願いたい。  我が国民は、世界一貯蓄率の高い国民であります。この十年来、老後の備えのためを貯蓄の理由に挙げる人々は増加を続けてまいりました。その大きさは、病気、災害の備えや子供の教育、結婚資金に次ぐ大きさであり、四十五歳を過ぎますと、ばっちり老後優先であります。老齢化社会到来へ人々がいかに心配しているか、明瞭であります。  総理は、人生八十年時代を迎えたとか、長寿国日本の実現は大いに祝福さるべきことだとか、この長い人生を生きがいを持って過ごすことのできる社会全体のシステムをつくり上げるとか言っております。ところが、あなたの政府は、この言葉とは裏腹に、老人医療の自己負担の大幅増額を企てているではありませんか。あなたは、先ほど若干の負担と申しましたが、老人は収入はなく、わずかの年金で暮らす人々が大部分なんです。そのために、早期治療を損なわれ、病を重くし、命を縮めたら、それは一体だれの責任でありましょうか。総理、老人に医療負担の増加はいたしませんとお約束をしていただきたい。(拍手)  アメリカの財政赤字が高金利、ドル高を生み、日米間の貿易不均衡をもたらしました。アメリカの財政赤字は膨大な軍備に原因するのだから、防衛費の少ない日本はその一部分を肩がわりすべきであるという議論が、アメリカの一部にあります。しかし私は、総理と私の共通の師であるキッシンジャー博士の次の言葉を総理に贈りたい。「米国内で特定された負担日本が分担するために……日本が大幅に再軍備するなどと信じこむには、歴史に対する特別の鈍感さを必要とする。」まさにそのとおりだと思います。しかし、キッシンジャー博士は、巨額の財政赤字を抱えるアメリカが、発展途上国への援助を実施する財源を十分持っていないことを訴え、日本協力を求めております。この点に関し、私は総理の注意を喚起したいのであります。  総理はこの一月、南太平洋のオーストラリア、ニュージーランド、フィジー、パプアニューギニアを訪れました。途次、ソロモンの上空を飛んで、南太平洋の島嶼国家の実像に触れました。南太平洋には、新興島嶼国家が九つあります。これらは、国連、国際労働機構その他国連各機関のメンバーの一国として重要な役割を果たしております。  最近、これらの国々において、労働組合を中心として反米、親ソの運動が深まってまいりました。その結果、キリバス、バヌアツはソ連に漁業権を付与し、ソロモンの労働組合は世界労連に加盟し、パプアニューギニアも本年、五十名もの労働組合代表をモスクワへ送りました。これらの国々には、アメリカ軍艦の寄港禁止を決定したり、もしくは考慮中のものがあります。ニュージーランドの問題は皆よく知るところでありますが、パラオも二百海里原子力艦船航行禁止を決定しているのであります。  昨年十一月、東京で、我が党の外郭団体である南北問題日本委員会主催の南太平洋セミナーを開催いたしましたとき、参加したトンガの大臣が、私はソ連からいろいろな申し出を受けた、私は断ったが、現実の政治家としてそれがいかに魅力あるものであるか、皆様にはおわかりであろうと述べましたが、その言葉は今も忘れられずに刻みつけられております。  これらの地域では、東側の労働外交や労組レベルの国際会議などの交流活動が活発化しています。西側陣営の我が国としては、いわゆるシーレーンの外側に当たる太平洋のこの方面が、文字どおり太平であるためには、これらの動きに対し、我が方の活動を充実する要があると我々は考えております。南太平洋島嶼国家への政府のODA、政府開発援助は、年間わずか四十億円足らずにすぎません。南太平洋島嶼国家に対する我が国協力あり方について、総理の御見解を承りたいのであります。(拍手)  総理は、本年八月十五日、敗戦記念日に、戦後初めて内閣総理大臣としての資格で靖国神社に公式参拝を行い、在京の閣僚たちもこれに倣いました。この参拝の方式は、本殿において一礼するやり方でありました。このような方式で参拝すれば、参拝は宗教的意義を有しないものであり、憲法が禁止する宗教的活動に該当しないと内閣官房長官は言っております。宗教法人である靖国神社の本殿で、神社が定めている参拝方式によらず、別の方式で参拝をしたというのは、一体どういう意味であるか、総理のお考えを承りたい。  総理は、神道の祭祀を行う宗教の場としての靖国神社に参拝したのではなくて、国事に殉ぜられた人々を奉斎している場としての靖国神社に参拝されたのでありましょうか。すなわち、靖国神社は宗教法人法に基づく宗教法人であり、法的には他の多くの神社と異なるところはありませんが、他の神社と異なる点は、国事に殉ぜられた人々を合祀している点であります。内閣総理大臣が国事のために殉じた人々を祭る場所に参拝しても、それは憲法の禁ずるところではないと総理はお考えになったのか、その点をお伺いいたしたい。  国民の信ずる宗教はいろいろあります。しかし、どんな宗教を信ずる者でありましても、国民ひとしく参拝できる国事に殉じた人々を祭る場所が必要だとは総理はお考えになりませんか、お伺いいたしたい。(拍手)  総理の今回参拝の目的は、戦没者の追悼を行うことにあるとされております。しかし現在、靖国神社に合祀されているのは、戦闘によって死没した者だけではないのです。いろいろな人々がおられます。その中には、平和条約第十一条に基づいて死亡した人も含まれておるのであります。この点について、総理はどういうお気持ちで参拝されたか、お伺いいたしたい。  また、合祀された人々の中には、二万七千六百五十六柱の台湾出身者が祭られています。政府は六十年度予算で、台湾人元日本兵戦没者に対する補償問題解決のため、検討費を計上しております。総理は、参拝に当たって、補償を実施する意思を告げられたかどうか、伺いたい。(拍手)  九月の税制調査会で、包括的答申を来年秋ごろまでに得たいと要望されたとき、総理は、強力なリーダーシップを持って大胆に、かつ、かたい決意を持って改革を進めていく所存だと強調されました。あなたの任期は、自民党党則によれば来年秋までであります。その来年秋に税調の答申を得られるあなたは、どんなリーダーシップを振るおうと言われるのでありましょうか。それは、任期を延長してそのことに当たろうという決意のあらわれなのでありましょうか。  四年の総理の任期は短いものではありません。あと一年の任期、あなたの好きな節目をそこに置いて、中曽根政治を展開していかれるのでありましょうか。それとも、問題点を手広く陳列して終わるだけでありましょうか。行財政改革も、経済摩擦も、平和と安全も、まだ解決の糸口についたとさえ言い得ない状態であります。これらの困難な問題の解決に、一年は短過ぎるかもしれません。しかし、この一年こそ、日本の進路にとっては重大な一年であると考えます。総理がどのようなタイムスタンスで進まれるのか、お伺いいたしたいのであります。  私と総理の恩師、矢部貞治先生はこう言われました。「政治は、理想だけでも現実だけでもなく、理想と現実を結びつけることなのである。どんなに崇高な理想や美しい理念を説いてみても、それが現実から遊離した実現の可能性のないものなら、それは空想または夢想であって、政治の問題になり得ない。」矢部先生のこの言葉をあなたに呈し、中曽根総理所信を伺って、私の質問を終わります。(拍手)     〔内閣総理大臣中曽根康弘登壇
  10. 中曽根康弘

    内閣総理大臣中曽根康弘君) 永末議員にお答えをいたします。  まず選挙区制の問題でございますが、この問題は、もう随分論ぜられましたように、国会全体として最高裁判所の判決に相対しなければならぬ事態に至っております。したがいまして、六・六案というものは、いわば当面する緊急避難的措置である、こう私は考えております。ここでも申し上げましたように、現内閣は小選挙区制をやろうとは考えておりません。そして、選挙区制の問題は、これは国会のグラウンドルールの問題でございますから、各党の御協力、話し合いで解決することが望ましい、ぜひそのように円満に早期に解決していただきたいとお願いしたいと思っております。  次に、六十年国勢調査の結果に関する永末委員の御提言には、私も賛成でございます。正式の人数の確定後、各党間におきましてこれらの問題について十分論議して、合意を形成するようにしていただければありがたいと思う次第であります。  中期防衛力整備計画GNPの関係でございますが、永末さんがもう既に御存じのように、三木内閣の一%の閣議決定をやった事情と、それから一週間前に「防衛計画大綱」を決めた閣議決定と、どうしてそういう二段階に分かれて、「防衛計画大綱」が先へいったのかということは、あなたが一番よく御存じのとおりであります。しかし政府は、最近の諸般の情勢からかんがみまして、いわゆる防衛庁の内部資料というようなこそくなやり方ではなく、正式の閣議決定あるいは国防会議の議を経た、民主的統制を十分に受けたものにこれを改革しよう、そういうことで、これは大内議員の御質問趣旨を非常に尊重いたしまして、我々はそういう考えをとったわけなのでございます。  それで、しかしGNP自体は非常に変動性がありますし、予算編成も毎年度年度違うものであります。しかも、予算編成に当たりましては、これは三木内閣決定でも、毎年度年度予算編成に当たって一%以内になるように心せよ、そういう趣旨決定でございまして、計画全体というものとは別の次元に立っておるわけであります。我々はそういう考えに立ちまして、毎年度年度予算編成に際しましては、三木内閣決定を、この趣旨を尊重してまいりたい、かねがね申しておるとおりなのでございます。  私は、永末さんがかねてからおっしゃって、今もおっしゃいましたように、やはり防衛については、どう守るか、あるいは守れるのか、むだはないか、周囲の国際情勢はどう動いているか、同盟国の動向はどうなっているか、そういう内容の問題がまず第一に大事である。しかし、また一面において、諸経費とのバランスや経費の節減という点も、国政上考慮すべき問題である。だがしかし、防衛基本というものは、最初に申し上げたようなところがやはり基本でなければならぬ、そう考えておるものなのであります。  次に、「防衛計画大綱」に定める防衛力の水準達成を図ることが、今申し上げた考えの中心でございますが、しかし今度の計画では、相当限定された小規模侵略に対しては、対抗できる力が養えるものと思っております。ただしかし、私は点検をしてみまして、残念ながら継戦能力の点あるいは訓練練度の向上の点、この点について、NATOやアメリカあるいはその他の諸国から見ればまだ落ちている点がかなりある。そういう点は甚だ残念でありますけれども、やむを得ない。しかしできるだけ、これらの点についても経費の配分において努力していきたい、そう考えておるのであります。  米軍の援護能力でございますが、これは、日本が侵略された場合の米軍の支援については、「日米防衛協力のための指針」に明示されておるところです。これに従いまして、具体的な共同作戦計画を研究しておるところであります。しかし、その内容については事の性質上、答弁は差し控えさしていただきたいと思います。  ソ連の核脅迫があった場合の日米の対応という御質問がありましたが、我々は、仮想敵国を設けてはおらないのでありまして、特定国の名前を挙げたそのような事態に対する対応の発言は、これも差し控えさしていただきたい。我が国は、他国よりの武力攻撃や軍事力を背景とする威嚇を未然に防止するためにも、日米安保体制を堅持する、そして、抑止力を十分に発揮できるようにしていくということをもって努力してまいりたいと思っておるのであります。  次に、SDIの問題でございますが、SDIにつきましては、米国側から情報の提供を受けつつ、我が方自体としても、積極的に調査団を派遣する等によりまして、懸命なる調査を今しておるところであります。しかし、SDIに対する我々の態度は、研究を理解するという立場でありまして、今後の参加問題については、これらの研究等もよく考えまして、慎重に対処したいと思っておるところでございます。さらに、このSDIの調査研究の結果につきましても、国会におきまする質問等に応じて、必要に応じてこれを明らかにしてまいりたいと思っております。  核実験禁止の問題でございますが、我々も、核実験全面禁止の早期実現を核保有国に強く訴えてきておるところであります。しかし、そのためには、早期にこれを実現するためには、核保有国が安心して実験をやめられるような体制を両方がつくることが必要であります。そのためには、やはり十分な検証が必要であり、相互信頼醸成措置が必要なのであります。この検証能力の向上あるいは相互信頼醸成措置等につきましても、我々は今後とも引き続いて努力してまいるつもりであります。  北方領土の問題につきましては、政府は、国連の場におきましても強くこれを主張し、また、ソ連との会談の場におきましても強くこれを主張してきておるところでありまして、この態度は今後も一貫しておると申し上げる次第でございます。  次に、ドル高の問題につきましては、最近のドル高是正の情勢は、各国の基礎的経済条件が為替相場に比較的反映されてきたものと評価し、これをさらに強化、維持、安定させるというのが我が方の政策でございます。  貿易摩擦に関する問題につきましては、保護主義を防圧し、自由貿易体制を維持強化するためには、ガットの新ラウンドの早期開始が必要でございます。なお、それらを推進していくためにも、五カ国の蔵相会議による円ドル関係、国際通貨関係の安定を、さらに強力に持続していくことも大事であります。こういうような諸般の点につきましても、レーガン大統領とじっくり話し合ってくるつもりでおります。なおまた、ニューヨークで行われます主要国首脳会合では、これは主として十一月開催の米ソ首脳会談のための話し合いであると理解しております。これらにつきましても、十分準備してまいりたいと思うのであります。  財政危機に関しまして、昭和六十五年度までに特例公債依存体質からの脱却、そして公債依存度の引き下げに努めるという方針は、あくまで堅持してまいります。このためには、歳出面における、あるいは歳入面における特別の措置強化してまいるつもりでおります。一面において、経済の弾力的運営、あるいは税外収入の確保、あるいは民間に対する移譲、さまざまな方策を組み合わせまして、努力してまいるつもりであります。  日本電信電話株式会社の株式の三分の二、日本たばこ産業株式会社の株式の二分の一につきましては、国債償還財源の充実に資するため、国債整理基金特別会計に帰属させております。これらの処理につきましては、民営化趣旨から漸次売却することにしておりますが、株式売却の具体的なスケジュールについては、会社の運営、経済の動向、株式市場との関連等、総合的に勘案していく必要がありまして、今から申し上げることは困難でございます。日本たばこ産業株式会社の株式の売却につきましても、会社の運営、たばこ産業の実態等を見ながら、慎重に検討してまいります。  国有地の売却につきましては、公用、公共用優先の原則を維持しつつ売却を進め、税外収入の確保に努めてまいります。昭和六十年度においては、五十九年度に比べまして、ほぼ五割増しの千二百六億円を見込んでおります。今後とも、民間活力の活用等の点を踏まえて売却を促進してまいりますが、大体五十九年度までに処分したものが三十九件、十・六ヘクタール、六十年度中、本年度の予定が七十六件、四十三・五ヘクタール、六十一年度以降が百六十七件、百七ヘクタール、大体これを予定しておる状態でございます。  行革の実績と今後の取り組みにつきましては、臨調答申を受けまして行革大綱決定して、逐次これを推進しているところであります。これまでに十省庁内部部局の再編成地方出先機関の整理合理化、国家公務員の縮減、電電公社、専売公社の民営化医療保険、厚生年金等の制度改革、補助金等の整理合理化、国の関与、必置規制の廃止等による地方の自主性、自律性の強化など、一歩一歩改革の実を上げております。しかし、さき国会より御審議をお願いしておりまする共済年金制度改正や、危機的状況にある国鉄の再建や地方行革の一層の推進、あるいは特殊法人の改革、こういう問題は、これからさらに力を入れて行わなければならない問題であると考えております。  国鉄の再建の問題でございますが、政府は先般、国鉄再建監理委員会意見最大限に尊重して閣議決定をして、その方策を決めたところです。この線に沿いまして、次期国会に法案を提出する予定で準備しております。この中で大事なことは、国鉄余剰人員対策の問題でありまして、これにつきましては、政府を挙げて努力するように、対策本部を設置しておるところであります。また、長期債務処理の問題も重要でございまして、長期債務の三十七兆三千億円のうち、約十七兆円というものを、やはりこれを処理しなければならない、国におきまして処理しなければならないと今のところ予測しております。これらにつきましては、財務当局とよく相談しまして、的確な対策を立てていきたいと思っております。  減税につきましては、税調に諮問しておりますが、来年秋ごろまでに答申をいただきたいと思っており、所得税、法人税あるいは相続税等についても考えなければならぬと思いますし、御指摘の住宅減税、あるいは先般来、幹事長書記長会談で決めました政策減税等につきましても、誠実に我々は検討してまいりたいと思っておるところでございます。「増税なき財政再建」、これは実行してまいります。書記長・幹事長会談の結果につきましては、これを実行してまいるつもりであります。  不公平税制の是正の問題も、これもまた、村山調査会等におきまして指摘されているところでありますが、これらの分析もよく参考にいたしまして、検討してまいりたいと思うところであります。このように、村山調査会の報告とかいろんな議論が出てくることは非常に結構なことでありまして、いろんな政策やあるいは税に関する御議論が国民の目に触れまして、国民皆様方の認識を深める機会となれば、我々も大いに賛成であると考えておるところでございます。  建設国債の発行につきましては、できるだけ事業量の確保に我々は努力しまして、財政的手法によらざる方法によって事業量を確保していく、そういう方針考えてまいりたいと思うのであります。大体、一般政府総資本形成を各国別に見ますと、日本政府関係の資本形成はかなり高い率でありまして、八三年、八二年の例で見ますと、フランスが二・九%、西ドイツが二・九%、アメリカとイギリスが一・六%に対して、日本は五・五%でございます。もちろん、ストックがおくれているという面もございますが、かなり努力しているということは、これでも御了解いただけると思います。  老人医療の問題については、この医療制度の長期安定、世代間の公平、こういうような関係から、必要やむを得ざる措置は行わざるを得ないのであり、無理のない範囲内において努力してまいりたいと思うととろでございます。  南太平洋地域に対する御指摘は、非常に重大な関心を持って拝聴したところでございます。我が国も、八四年には千八百八十万ドル余りの政府開発援助をやっており、私も南太平洋諸国の一部を歴訪したところでございます。今後とも、南太平洋諸国の動向には強い関心を持ちまして、それらの地域の福祉、社会の安定等については協力いたしたいと思っております。  靖国神社の公式参拝に関する問題でございますが、先ほど浅井さんの御質問について答弁漏れがありましたので、ここで一言申し上げますが、この靖国神社の公式参拝に対する見解というものは、政府がその責任において判断すべきものであると考えております。閣僚の靖国神社参拝問題に関する懇談会の御報告も、これを参考にして行ったところです。この問題について、従来国会において種々の論議がなされた経緯にかんがみまして、今後も必要に応じ、国会の場において政府考え方をよく御説明申し上げ、理解をいただきたいと思っております。  なお、八月十五日公式参拝の方式の問題の御質問がございました。これは、神道儀式によらずに、本殿において一礼する方式をとりましたのは、宗教的意義を有する目的ではなく、専ら戦没者を追悼する目的をもって拝礼する、そういう意味で行ったものでございます。なお、公式参拝につきましては、宗教色を排除した方式によるなどいたしまして、憲法との関係については、最大限注意をしてきたところなのでございます。  新しい施設をつくるかどうかという問題は、靖国懇の報告では具体的には触れてはおられません。この問題は、検討するとしても将来の課題として考うべき問題であり、国民の合意や国会の御意見がどういうふうに進むか、我々は注目してまいりたいと思っております。なお、追悼の対象の問題でございますが、私は個々の戦没者に対して個別的に追悼を行ったということではなく、国のために殉じた戦没者全体に対して追悼を行ったとお考え願いたいのであります。いわゆる台湾人元兵隊の問題については、関係省庁間で、この問題についてどう考えるか、鋭意検討しているところでありますが、かなり難しい問題がありますので、簡単に結論をつけることは難しいと思っております。  税調答申との関係について、私の進退の問題が言われましたが、きのう申し上げましたように、党則を守るのは当然である、そう思っております。なお、矢部先生のお言葉の言及がございましたが、私も永末さんと同じように、政治家というものは現実を理想に引きつける、現実を理想まで持ち上げていく、その橋かけの職人が政治家である、したがって国民に密着し、理想を踏まえて前進する、限りなき前進を行うのが政治家である、そのように考えております。(拍手)     ―――――――――――――
  11. 坂田道太

    議長坂田道太君) 林百郎君。     〔議長退席、副議長着席〕     〔林吾郎君登壇
  12. 林百郎

    ○林百郎君 私は、質問に先立ち、過日の日航機事故によって犠牲となられた方々に対し、心からの哀悼の意を表するとともに、負傷された方々に対し、心からお見舞い申し上げます。  さて、ことしは言うまでもなく、戦後四十年、また、広島、長崎の被爆、さらには国連憲章調印四十年という、記念すべき年であります。あの悲惨な戦争と戦後の体験から、何を教訓とし、どう現在に生かすのか、そのことが改めて問われております。にもかかわらず今日、中曽根総理、あなたの手によって「戦後政治の総決算」という名による侵略戦争の美化と暗黒政治の復活がたくらまれております。  そこで私は、日本共産党・革新共同を代表し、平和への決意を込めて総理質問するものであります。(拍手)  一九四五年八月十五日までの日本はどうであったか。天皇制を批判し、戦争反対することは一切許されませんでした。一九三三年、当時信州の松本の一高校生にすぎなかった私でさえ、赤旗を読み、友人に平和の信念を訴えただけで、危険思想の持ち主として、治安維持法によって逮捕、投獄されました。小林多喜二ら幾多の共産党員の生命が拷問で、あるいは監獄で奪われたのであります。共産主義者だけではありません。節を屈しなかった社会主義者、自由主義者、学者、宗教者も次々と弾圧されました。真理を求める思想そのものを処罰の対象とし、人々の良心を軍靴で踏みにじった上に、日本帝国主義は、当時の満州、中国全土、さらに全アジア、全世界を相手とした無謀きわまる侵略戦争の道を突き進んでいったのであります。  一九四五年、日本軍国主義が敗北したその年に私は、勇躍日本共産党の隊列に加わり、四七年四月二十五日、新憲法制定後の初めての総選挙で本院に議席を得ました。天皇ではなく国民こそが国の主人公になったのだ、その代表として私を国会に送ってほしいと選挙民に訴えました。その同じ総選挙で総理も初当選されたはずであります。しかし、日本の進路をめぐって当時から深かった我々とあなた方の間の溝は、今や決定的なものとなりました。なぜか。それはあなた方が、歴史の教訓を学ぼうとせず、その歯車を逆転させることにのみきゅうきゅうとしてきたからにほかなりません。  総理は、去る九月二十五日のテレビで、我々は戦争へ行って鍛えられている、今の若い人たちはそういう経験がないのほかわいそうだと述べております。また、七月の自民党軽井沢セミナーでは、靖国神社公式参拝に関連して、どの国に行っても、国のために倒れた人に対し国民が感謝をささげる場所がある、さもなくしてだれが国に命をささげるかと言っています。しかし、周知のごとく靖国神社には、処刑された東条英機らA級戦犯も英霊、すなわち神として祭られておるのであります。これは戦没者ではありません。あなたは、公式参拝で戦犯に対していかなる感謝をささげたというのでしょうか。  今アジア諸国から一斉に出されている、二千万人に上るアジア人民を殺害した戦争責任を免罪するものなどの怒りの声にどうこたえるのか。あなたの歴史観、戦争観が試される重大な問題として、この点をはっきりと伺いたいと思います。(拍手)  かつて日本国民は、天皇の名によって、死は鴻毛よりも軽しと覚悟せよとたたき込まれ、戦場へ駆り立てられました。今あなたは、何のため、だれのために国に命をささげよと言うのですか。日本列島不沈空母化、一千海里シーレーン防衛を声高に叫ばれるそのあなたの内なる本心は何か、ぜひ明らかにされたい。  残虐きわまる侵略戦争と人権抑圧に対する痛切な反省があったからこそ、日本国憲法は、恒久の平和を念願し、国権の発動たる戦争を永久に放棄したのであります。さらに、主権が国民に存することを宣言し、思想、良心の自由、生存権などの基本的人権を、侵すことのできない永久の権利として保障しました。今こそ戦後政治のこの原点に立ち戻るべきときであります。しかるに、みずから憲法改正論者だと表明されている総理は、これら憲法原則のどこを総決算の対象として変えようというのか。昨日の答弁では、国際国家などの観点から憲法を見直すと言われたが、憲法には、「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。」と、こう明確に書いてあります。これが一体気に入らないというのでしょうか、この際、改めて伺っておきたいと思います。(拍手)  さて、広く世界政治を見れば、その第一義的課題は言うまでもなく、人類の生存であり、再び核戦争の惨禍を繰り返させない確固たる保障をつくり上げること、すなわち核兵器の廃絶、全面禁止を速やかに実現することであります。昨年十二月の我が党とソ連共産党の共同声明が言うように、今やこの問題は、人類にとって死活的に重要な緊急の課題であり、核兵器廃絶は世界国民要求であり、これにかわる対策はないのであります。  ことし一月の米ソ外相会談では、米ソ・ジュネーブ交渉の目標を、あらゆる領域での核兵器の完全廃絶に置くことが合意されました。にもかかわらず、レーガン大統領が、この合意や選挙中の廃絶公約に違約するなど、さまざまな口実による棚上げの動きが始まっております。これを食いとめ、外相合意を貫徹させるかどうか、まさに人類の未来がかかっていると言っても過言ではありません。  総理、今月下旬には、その第一号決議で核廃絶をうたった国連の創立四十周年記念総会が開催され、また、十一月には、米ソ首脳会談が予定されております。今こそ全世界に向かって、とりわけアメリカとソ連に対し、核兵器全面禁止協定の速やかな締結を呼びかけるべきではありませんか。ところがあなたは、例えばことしの広島平和祈念式において、核兵器の究極的廃絶とわざわざ究極的を強調し、この課題を事実上、無限のかなたに追いやってきました。しかも、今国会所信表明では、この廃絶の一言もなく、かえって均衡抑止あるいは査察能力の名による核軍拡肯定論を展開しているのであります。これが唯一の被爆国日本の首相のとるべき態度ですか、はっきりとお答えください。(拍手)  総理、ニューヨーク・サミットなるものでアメリカの核廃絶棚上げ策にもしあなたが肩入れするならば、あなたは取り返しのつかない重大な責めを人類に背負うことになります。まして、宇宙に軍拡を持ち込むスターウォーズ、SDI計画理解を示し、協力を誓うなどは論外であります。現に、アメリカ議会の技術評価局の報告でさえ、SDI軍拡競争を加速させるだけだと述べているではありませんか。宇宙の軍事利用は、国会決議、また国連決議によっても明確に禁じられております。それでもなおあなたは、この研究開発に協力する考えなのか、あわせて答弁を求めます。  国民の平和への願いとは裏腹に中曽根内閣は、中期防衛力整備計画閣議決定し、戦後かつてない大軍備増強を強行しようとしております。物価上昇と後年度負担を考慮すれば、今後五年間に実に二十三兆、国民一人当たり二十万円もの負担を強制する大軍拡計画は、一体何のためでしょうか。  自衛隊の作戦行動区域を太平洋のはるか沖、グアムやフィリピン近海に及ぶ広大な海域に広げ、米軍との共同作戦で、制海権はもとより、新たに洋上防空、制空権確保まで任務とする。そのために、戦闘爆撃機の足を伸ばす空中給油機や、全艦コンピューターとミサイルで固めた最新鋭の巡洋艦を導入し、P3Cを百機にもふやし、ソ連の内陸深く達する探知能力四千キロのOTHレーダーを新設する。このような、政府がみずから目標と称していた「防衛計画大綱」では、想定さえもしていなかった大軍拡と日米共同作戦計画、二千海里シーレーン防衛なるものは、総理が言うような日本商船の護衛などでは決してなく、アメリカの対ソ核戦略に我が国自衛隊をますます深く組み込むものであることは、明らかではありませんか。  だから、ことし六月、マンスフィールド駐日大使は、日本米国の最前線であると言明したのであります。このような大軍拡が、一切の軍備の保持を禁じた憲法上、断じて許されないことは言うまでもありません。のみならず、従来政府が言ってきた領域防衛、専守防衛、個別的自衛権の枠組みさえも明白に超えるものではありませんか。総理の明確な答弁を求めます。(拍手)  レーガン政権は国防報告で、我々は日本に対し、必要な戦力水準を一九八〇年代に達成するよう促し続けると公言しております。さらに米議会は、我が国に対し、シーレーン防衛の達成、「防衛計画大綱」の見直し、軍事費の大幅増額を要求する決議を採択しましたが、そればかりではなく、それらの実行監視を大統領に義務づける法案まで成立させております。これほど露骨な内政干渉が一体あるでしょうか。総理、もしあなたがこの米議会決議を、それはアメリカの期待の表明などと受け流すようでは、日本総理として、主権や安全を語る資格は全くないと断言せざるを得ません。(拍手日本国の総理としてのあなたの責任ある答弁を求めます。  総理、表向き先送りの形にしたとはいえ、あなたは、政府が従来、軍事費の唯一の歯どめと称してきたGNP一%枠の撤廃に、問題は内容だということで異常な執念を燃やしました。現に新計画は、一%枠突破を当然の前提としており、日本はまさに歯どめない大軍拡の道に突入しようとしております。一%枠を突破することは断じて許されません。しかも、憲法違反の軍備は、一%以内でも決して許されるものではありません。日本世界の平和、国民の暮らしを守るために、また財政破局を救うために、私は改めて、新軍拡計画を直ちに撤回し、軍事費を大幅に削減することを要求するものであります。(拍手)  また、スパイ天国を理由に、既に取り締まるためには法律が幾多あるにもかかわらず、自民党の国家機密法案は、このような大軍拡を進めるため、それに反対する主権者である国民の目や耳や口を奪おうとするものであります。希代の悪法であります。  スパイ防止に名をかりて、軍事や外交にかかわる機密の範囲を政府が一方的に設定し、それを外国人が知り得る状態に置いた者、すなわち調査、公表、報道した者は、死刑、無期などの極刑にまで処するというこの法案と、戦前、天気予報さえも軍事機密として、大本営発表によって国民を欺き、亡国のふちへと導いた軍機保護法、国防保安法との間に、一体どんな違いがあるというのでありましょうか。このような法案を提出すること自体憲法違反であります。総理が昨日の答弁で、慎重にとは言いつつも、これを成立させることを明言したことは、極めて重大であります。前代未聞のファッショ法案の即時撤回を要求し、総理答弁を求めます。(拍手)  内政干渉を排し、我が国政治の自主性、主権を貫くことの重要性は、経済の分野においても全く同様であります。軍拡要求と結びつけて、経済的難題を次々と持ち出してくるのがアメリカであります。通信衛星を売り込むために日本の周波数制度を根本から変えよ、加工食品や化粧品の添加物規制を骨抜きにしろと言ってきております。また、農畜産物の自由化と輸入拡大要求はとどまるところを知らない。米国の巨大小売資本が自由に進出できるように大規模小売店舗法を撤廃しろ、さらには、日本人のライフスタイルまで変えよと言ってきています。これが属国扱いでなくて何でありましょうか。(拍手)  中曽根内閣は、かくのごときアメリカの理不尽なごり押しに抗議一つするのではなく、国民に対し一人百ドルの米国商品を買えと、セールスマン役まで買って出たではありませんか。あなたは、アメリカの言うことならば、我が国中小企業が市場を失い、農業の運命も国民の安全もどうなろうと構わない、そう考えているのでしょうか。日米経済摩擦の原因が、一方でのアメリカの膨大な軍事費による財政赤字、異常高金利に伴うドル高にあり、他方、日本の大企業の低賃金、長時間労働を武器にした強い競争力にあることは、今や常識であります。ドル売りの協調介入によって目先の円高誘導がなされたとしても、この根本原因を放置したままでは、早晩挫折することは目に見えております。したがって総理、あなたは今こそ、まずレーガン政権に対し、大軍拡をやめ軍縮を断行し、二千億ドルに上る財政赤字をなくすべきだとはっきり言うべきであります。(拍手)  同時に、国民生活の立場に立つ、真の意味での国内市場拡大策をとるべきであります。民間活力の名によって東京湾横断道路、明石海峡大橋など、あの悪名高い田中角榮内閣の日本列島改造計画を上回る超大型プロジェクトを次々と解禁する、国有地を安く切り売りし、税金までまけてやる、このような大企業、財界奉仕の拡大ではなく、今こそ国民生活に活力をつける政策に転ずべきであります。  そのためには、第一に、先進国に例を見ない低賃金、長時間労働、下請企業に対する犠牲の押しつけをなくすため抜本的なメスを入れること。また、公務員労働者の給与改善を完全に実施すること。第二に、一兆円を超える増税なしの所得減税を断行し、可処分所得をふやすこと。第三に、海外に流れている年間十五兆円もの大企業資金を、低利の国債、課税などによって適正に回収し、立ちおくれた住宅生活道路、公園、下水道、マンモス校の解消、老人福祉施設の建設など、生活密着型の投資に回すことであります。第四に、お年寄りを病院からますます締め出す老人医療の再改悪、生活保護その他の一律カットの延長と拡大、六十五歳以上の失業対策事業就労打ち切り、共済年金制度の改悪など、福祉の切り捨て計画を撤回すること。以上四点の、切実な国民要求の上に立った自主的な国内需要の拡大策こそとるべきであります。総理、どう考えますか、具体的な答弁を求めます。  とりわけここで、減税の問題について総理の心底を伺っておきたい。  あなたは税制調査会に対し、まず来年春に減税案を出し、秋には財源のつじつまの合う……(「ソ連に失業対策事業があるか」と呼ぶ者あり)ソ連には失業者はおりません。総合案を出してほしいと諮問しました。言うまでもなく、春と秋の間には重大な国政選挙が予定されております。秋の総合案なるものが、大型間接税導入を柱とする大増税計画にほかならないことは、自民党村山調査会の中間報告を見ても明らかであります。それにもかかわらず、総理増税を隠し、選挙を有利に導こうというのですか。総理は、そのような陰険こそくな手段は断じてとらないとここで明言できますか、はっきりとお答えください。(拍手)  さて、日航機の大惨事は、我が国政治において、生命の尊厳、人命の尊重という基本問題がいかに軽視されているかを改めて明るみに出しました。七年前の大阪空港でのしりもち事故にまともな修理さえしなかった米ボーイング社、営利優先で点検整備を怠ってきた日本航空、それを見逃し、運輸大臣が不可抗力であったと平気で言うような航空行政、これらのどこに人命尊重の姿勢がありますか。  さらに重大なことは、中曽根内閣は昨年、わざわざ二回にわたる閣議決定を行い、日本航空に対し、人件費の抑制措置を強力に推進し、また、増収に努め、効率的な経営の確立を要求して、安全軽視の経営体質に拍車をかけてきたことであります。その政治責任総理自身はどのようにとられるのか。二つの閣議決定を直ちに撤回すべきでありますが、この場で明らかにしていただきたいのであります。  政府が正式に決定した国鉄分割民営化も、膨大な国鉄用地の分け取りなどで大企業をもうけさせる一方、営利最優先の経営で安全対策の手抜きをもたらすことは必至であります。政府責任によって生じた赤字を全部国鉄に押しつけた上、九万三千名もの労働者を解雇し、ローカル線の廃止はもとより、百有余年にわたって築かれてきた国民の共有財産をばらばらに分断し、もうかる部分は大企業に払い下げた上、その利益を保証するために、今後四半世紀にもわたって毎年、一兆四千億にも上る新たな負担国民に押しつけることまで強行しようというのですか、明確な答弁をされたい。  次に、議会制民主主義の根幹である選挙制度について質問いたします。  いやしくも主権在民の根本原則に立つのであれば、ある選挙区の有権者が他の選挙区の二票分、三票分を持つなどということは、絶対に許されていいはずがありません。自民党の六・六増減案なるものは、一対二どころか、一対三の格差を当然視し、しかも、今回の国勢調査の結果が出る十二月には、それさえ破綻することは明白であるという、およそ定数是正の名に値するものではありません。しかも、二人区を導入して、小選挙区制への道を開くことまでねらっておるのではありませんか。  我々が主張する一人二票の事態をつくらない一対二未満案と、あなた方の一対三以上案のどちらが民主主義に合致するのか、答えは明らかであります。にもかかわらず、なぜ六・六案に固執し続けるのか。あなたは、国民の声が正しく政治に反映され、中曽根流総決算政治の障害となることが恐ろしいというのですか。そうでないというならば、一対二未満の抜本改革に直ちに取り組むべきであります。総理答弁を求めます。(拍手)  最後に、教育について質問いたします。  一九四七年に制定された教育基本法は、「われらは、個人の尊厳を重んじ、真理と平和を希求する人間の育成を期する」とうたいました。戦後の荒廃の中で、この教育理念がいかに新鮮に教育現場に受けとめられ、祖国再建への熱い息吹を生み出したか、私は今でもありありと思い浮かべることができます。今、教育改革を叫ばれる総理、あなたが賛美してやまない臨時教育審議会答申は、教育基本法の精神を尊重すると抽象的に言うだけで、真理の一言も、また平和の一言も記しておりません。なぜでしょうか。真理や平和は、教育にはもはや必要ないというのですか。  あなたはまた、次のように言い切っております。人間の心や人間のあり方というものをどういうふうにしていくかという、組織的、計画的、体系的な作業にまで入ってきたのが臨教審であると。さらに、規律の問題、それが教育改革だ、そういう立場に立って日本のアイデンティティー、すなわち同一性を確立する必要があると言っています。国家が国民の心を組織的、計画的、体系的に同一化していく、これは文字どおり、政府や企業の言うままになる国民に変えていくという国家主義教育の復活であり、まさに財界本位の人づくりではありませんか。  私は、戦前の国家主義教育が、戦争へと国民を総動員していく最大手段とされたことを想起しつつ、あなたの恐るべき教育改革論を厳しく糾弾するものであります。総理のこの点についての答弁を求めます。(拍手)  以上指摘してきた、際限なき軍拡民主主義国民生活の根本破壊を進める中曽根自民党政治、その根底をなすものは、明らかに日米運命共同体路線であり、日米軍事同盟、安保条約にほかなりません。私はここで、日米軍事同盟ときっぱり手を切り、真の独立、非核、非同盟、中立の実現、民主主義国民生活の擁護に全力を尽くす日本共産党・革新共同の決意を改めて表明し、私の質問を終わります。(拍手)     〔内閣総理大臣中曽根康弘登壇
  13. 中曽根康弘

    内閣総理大臣中曽根康弘君) 林議員にお答えをいたします。  国の命令で戦場に赴いて、国の犠牲となって倒れた人に哀悼の意を表するのは、自然の人間の心であって、これをあざ笑ったり冷たい言葉をかけるという人は、正常な人間の心を持っているとは甚だ疑問に思う次第であります。(拍手)  次に、憲法に関する問題でありますけれども、戦後の日本政治やあるいは憲法に関する評価というものについては、私はかなり高いものを持っておる次第でございます。林さんもおっしゃいましたけれども、実は、昭和二十二年に私も林さんと一緒にこの議席へ来たのでありますが、その前の年に、この今の憲法ができるときにこれに反対したのは、林さんが尊敬している徳田球一君であり、志賀義雄君であったことを御記憶願いたいと思うのであります。(拍手)しかも、そのころの徳田球一君の演説はどういう演説であったかというと、これは占領憲法であり、外国に強制された憲法であり、軍備のない憲法でどうして国を守れるかと演説したのであります。(拍手)  次に、核兵器の全面禁止協定の問題でございますが、やはり核兵器を地上から廃絶したいというのは、我々の願いであります。それには、相互に安心のできる保障がなければできません。そういう意味において、検証を確実にしていくとか、あるいは信頼醸成措置を一歩一歩築いていくとか、そういう地道な、着実な道を通ってこのような実効ある措置がとれると思いまして、その道に努力している次第なのであります。我々はそういう意味において現実的な核廃絶論者であり、共産党は空想的核廃絶論者であると前から申し上げているとおりであります。(拍手)  次に、アメリカの戦略への組み込まれではないかという御質問でございますが、日本防衛は、日本列島防衛目的に、個別的自衛権の範囲内において厳然として行っているということを申し上げる次第であります。アメリカからいろいろ要求があるではないかという御質問でございますが、これは、同盟国でございますから、安保条約を有効に運営していくためには、お互いが協議をするということも条項に書いてあるわけであります。お互いに注意し合い、あるいは協議をし合っている、これが初めて同盟国なのでありまして、我々の日本防衛については、最後はあくまで我々の自主的判断によって行っていると申し上げるのであります。  次に、GNP一%の問題でございますが、これは前から申し上げているとおり、GNP一%、あるいは予算編成というものは毎年度年度非常に不確定である、しかし我々は、この期間中においても、GNP一%に関する閣議決定趣旨は、予算編成に際しては尊重すると申し上げておる次第なのであります。  次に、国家機密保護法の問題でございますが、日本はスパイ天国と言われているとおりであります。英国においても先般、ソ連のスパイが二十六各国外退去を命ぜられて、事件が起きたことは御存じです。ドイツにおきましても、大統領府の大統領の側近にまでスパイがいたと新聞に報ぜられたとおりであります。日本においてどういうことが行われているか、私よく知りませんが、今までいろいろ出た事件を見ると、やはり心配にたえないところがあると思うのであります。(拍手)したがって、日本の国益を守るために、必要最小限の措置は私は必要であると思うけれども、しかし、立法に当たりましては、各党の意見もよく踏まえ、国民の世論もよく踏まえて慎重にこれを行おう、そういうことを申し上げておるのでございます。  次に、市場開放等の問題でございますが、これは申し上げたとおり、アメリカに対して高金利や高いドルについて言うべきことは言い、アクションプログラムやそのほか、日本がやるべきことはこれを行っていく、そういう関係で我々としては、自主的判断で国益を擁護しつつ、国際的調和を図っている、こういうことでございます。  内需拡大の問題につきましても、先般来決定した内需拡大に対する対策等を特別に推進して、今後も努力しておるところでございます。  我が国の労働者の労働条件につきましては、国際的に見ますと、失業率は非常に低いのです。日本は二・五%ですが、アメリカは七%であり、イギリスに至っては一〇%の失業率であります。そういう意味において、失業率の点においては日本は断然いいと思っておるのであります。そのほか、賃金あるいはその他の福祉制度においても遜色はありませんし、社会保障制度においても、これは全く遜色はありません。  労働時間につきましては、これは休日は日本が非常に多いようでありますが、労働時間については、日本が年間二千百時間、西ドイツは千六百時間、あるいはイギリス、アメリカが千八百時間、日本が二千百時間、そういう意味において、労働時間については日本が長いけれども、これは日本が非常に忙しくて、そして超過勤務やそのほかの仕事も多い、こういう点もあるのであります。しかし、労働者の労働時間短縮の問題は、今後我々も大いに努力してまいりたい、そう思っておるわけでございます。この点については、山口労働大臣も非常に熱心でありまして、我々も協力しようと思っておるわけであります。  減税関係につきましては、公明正大な税制改革をやろうということを申し上げます。  日本航空の事故の問題は、甚だ遺憾な事故でございました。今後、こういう事故を起こさないように、全力を振るって努力いたします。航空事故調査委員会の調査については、全面的に協力させたいと思っておる次第でございます。しかし、日本航空も特殊法人でございますから、閣議決定に従いまして、特殊法人のあり方として、日本航空についても効率的な経営の確立を図るように求めたものであります。日本航空としては、安全の確保に万全を期しつつ、経営の効率化を図るべきであり、政府としては今後も、このような観点に立って指導監督を行うつもりでございます。  国鉄改革につきましては、民間的、効率的経営と労働問題の前進、そういう意味からこの改革が行われておりまして、国民皆様あるいは国鉄の職員の皆様方の御理解、御協力を得るように全力を尽くしてまいるつもりであり、特に長期債務の問題等、それから余剰人員の問題については、誠意を持って努力するつもりであります。  定数の是正の問題につきましては、最高裁判所の判決を踏まえまして、国会全体の連帯において、立法府としてこれは責任を果たさなければならないところであり、野党の皆さんの御提案、我が党の提案等も踏まえまして、できるだけ早期に、本議会において解決を見るように努力したいと思います。  教育改革につきましては、教育基本法の精神にのっとってこれを行おうとするものであり、二十一世紀を踏まえた世界日本人をつくろうと思って、真剣に取り組んでいるところであります。  以上で答弁を終わりにいたします。(拍手
  14. 勝間田清一

    ○副議長(勝間田清一君) これにて国務大臣演説に対する質疑は終了いたしました。     〔副議長退席、議長着席]      ――――◇―――――  議員請暇の件
  15. 坂田道太

    議長坂田道太君) 議員請暇の件につきお諮りいたします。  石原健太郎君、北川石松君、林大幹君及び武藤嘉文君から、十月十九日より二十六日まで八日間、右いずれも海外旅行のため、請暇の申し出があります。これを許可するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  16. 坂田道太

    議長坂田道太君) 御異議なしと認めます。よって、いずれも許可するに決しました。      ――――◇―――――
  17. 坂田道太

    議長坂田道太君) 御報告いたすことがあります。  議員塩島大君は、去る九月二十日逝去せられました。まことに哀悼痛惜の至りにたえません。  同君に対する弔詞は、議長において去る六日贈呈いたしました。これを朗読いたします。     〔総員起立〕  衆議院は 議員正五位勲四等塩島大君の長逝を哀悼し つつしんで弔詞をささげます     ―――――――――――――  故議員塩島大君に対する追悼演説
  18. 坂田道太

    議長坂田道太君) この際、弔意を表するため、小沢貞孝君から発言を求められております。これを許します。小沢貞孝君。     〔小沢貞孝登壇
  19. 小沢貞孝

    小沢貞孝君 ただいま議長から御報告のありましたとおり、本院議員塩島大君は、去る九月二十日急逝されました。まことに痛惜の念にたえません。  君は、去る八月、病を得て入院されたと聞き及びましたが、君には五十一歳という何にもまさる若さがあり、御回復されるのは当然のことと思っておりました。しかるに、非情にも病状が急変し、御遺族の手厚い看護もむなしく、風のごとく足早に去って逝かれました。  私と塩島君とは、高等学校における先輩、後輩の関係にありましたが、この壇上において後輩の君に議員一同を代表して哀悼の言葉を申し述べなければならないとは、生者必滅のことわりとは申せ、痛恨のきわみであります。(拍手)まして、政治家として前途有為であられた君とまた御遺族の御胸中を察するとき、やみがたい哀惜の念を覚えるのであります。  塩島君は、昭和九年四月、北アルプスの山脈をはるかに仰ぐ風光明媚で豊かな自然に恵まれた長野県池田町に生をうけられ、長じて県立松本深志高等学校を経て、東京大学農学部に学ばれました。大学時代の君は、最も現代的でしかも根本的な課題である都市環境と緑の問題に取り組まれ、特に卒業論文の「新都市における環境構成の一環としての緑化問題」は、その後の君の一生の指標となるものでありました。  昭和三十四年、大学卒業とともに建設省に入られた君は、やがて、都市緑地対策室長、公園緑地課長を歴任されました。その間、三次にわたる都市公園等整備五カ年計画の策定、国営公園制度の創設等に取り組まれましたが、卓越した企画力と人並み以上の行動力を持って事に当たられ、新進気鋭の若き行政官として大いに敏腕を振るわれたのであります。コンクリートアイランドと言われる市街地において、緑地公園の人心に及ぼす効果に着目された君は、これを科学的に解明し、都市における緑の重要性を説いたいわばパイオニアの役割を果たされたのでありまして、その業績は高く評価されなければなりません。(拍手)  また塩島君は、公務に精励される傍ら、都市問題に一層の研さんを積まれ、農学博士の学位を受けられ、その道の権威となり、また、建設省退官後は東京大学、明治大学の講師として後進の指導、育成に当たられたのであります。  昭和五十七年、君は二十年余にわたる官界を退き、多年の経験と識見を生かし、高邁な理想をより一層国政に具現させるべく決意を固められ、昭和五十八年十二月、第三十七回衆議院議員総選挙が行われるや、自由民主党公認候補として、長野県第四区から勇躍立候補し、見事最高点をもって初当選の栄誉を獲得されたのであります。  本院に議席を得られた君は、大蔵、災害対策特別委員会等の委員となり、自己の信念に基づき、全精力を傾けて議員の職責を果たされました。とりわけ君は、行財政改革の総合的推進こそが、今日の政治家の果たすべき使命であると痛感され、第百一回国会昭和五十九年五月、この壇上において、与党を代表して、昭和五十九年度財政運営特別措置法案に対する賛成討論を行い、その中で、政府国民のコンセンサスを得て、今後一層財政改革を推進されることを強く求められました。  また君は、大蔵委員会において、明治三十七年以来八十年に及ぶ日本専売制度の歴史に一大転換をもたらす専売改革関連法案について、我が国たばこ産業の安定した発展を念願する立場から質疑を行っておりますが、輸入自由化によるたばこ事業関係者への影響を危惧し、葉たばこ耕作者に対する助成措置等葉たばこ耕作上の基本的な制度の維持を主張されたのであります。国民生活に深いかかわり合いを持つ、これら当面する諸問題に関する君のうんちくを傾けた発言は、まことに党派を超えて高い評価を得たのであります。(拍手)  君は、郷土をこよなく愛し、人間味豊かな地方都市の振興と山村の人々の生活向上を希求し、商業、工業、農業及び観光が調和した都市、農村づくりを目指されておりました。  昨年九月、長野県西部地震が発生し、王滝村は壊滅的被害を受けましたが、このとき、君は現地にいち早く直行して、被災地の惨状を目の当たりにし、同僚議員とともに政府の救援を要請されたのであります。さらに君は、災害対策特別委員会の委員として現地をつぶさに視察した後、委員会において激甚災害の指定、道路その他の施設の復旧、地震予知体制の推進等きめ細かな国の施策政府に要請するなど、日夜肝胆を砕いて被災地の再建と被災住民の支援のため活躍され、公人としてその職責をよく果たされました。(拍手)  また、党にあっては、全国組織委員会地方組織局次長、商工局次長、広報委員会出版局次長、国民運動本部推進部長及び国会対策委員会委員として、党務の処理、政策立案の推進に力を尽くされ、大いに将来を嘱望されていたのであります。  君は、政界の多端な激務に当たられる一方、長年培われてきた都市と緑に関する学殖を生かし、日本造園学会常務理事、日本都市計画学会評議員等となり、粉骨砕身、人間との調和を目指した都市計画づくり、公園整備の促進に、その才幹を遺憾なく発揮されました。  本院在職期間は一年十カ月という短いものでありましたが、精励をもって議員の職責を全うされた君の功績は、まことに大なるものがあります。  塩島君は、「政治に愛と真心」を信条として、緑豊かなふるさと、人々の心に潤いを与える社会の建設を目指した、情熱あふれる政治家でありました。君の一番好きな花はヤマユリであったと聞き及んでおります。信州の厳しい風土に耐えて、清らかに純白な気品を備えて、凛と咲いているさまは、まさに塩島君の心の優しさとしんの強い人柄をほうふつとさせるものがあります。  また君は、物事の枝葉末節にとらわれず、その本質を見きわめ、「不言実行」をモットーにしておりました。君は、まじめできちょうめんな性格であり、どちらかと申すと学者肌の人でありましたが、反面、仕事ばかを嫌い、人との触れ合いを大事にされ、酒の席では気軽にだれとでも酒を酌み交わし、興至ればよく郷土の安曇節をはにかみながら歌われたと聞いております。私は、その姿に君の人間味あふれる心根をうかがい知ることができるのでありまして、同僚からよく信頼され、また慕われたのもけだし当然のことでありましょう。  このように理性と感性を混然一体として備えられた君が、いよいよ政治家としてその本領を発揮されんとしたやさき、まことに天は無情にもわずか五十一歳の若き君を奪い去り、もはやこの議場にその姿なく、君の議席にはただただ氏名標がむなしく横たわっているのみであります。寂蓼の感、新たなるものを覚えるものであります。  今日、内外の情勢を思うとき、君のごとき前途有為の政治家を失いましたことは、返す返すも残念であり、ひとり自由民主党のみならず、国家国民のため、まことに大きな損失であると申さなければなりません。(拍手)  ここに謹んで塩島君の生前の御功績をたたえ、その人となりをしのび、心から御冥福をお祈りいたしまして、追悼の言葉といたします。(拍手
  20. 坂田道太

    議長坂田道太君) 御報告いたすことがあります。  永年在職議員として表彰された元議員毛利松平君は、去る五月二十四日逝去せられました。まことに哀悼痛惜の至りにたえません。  同君に対する弔詞は、議長において去る六月二十六日贈呈いたしました。これを朗読いたします。     〔総員起立〕  衆議院は 多年憲政のために尽力し 特に院議をもってその功労を表彰され さきに大蔵委員長の要職につき また国務大臣の重任にあたられた従三位勲一等毛利松平君の長逝を哀悼しつつしんで弔詞をささげます      ――――◇―――――
  21. 坂田道太

    議長坂田道太君) 本日は、これにて散会いたします。     午後四時四十六分散会      ――――◇―――――