○永末英一君 私は、民社党・
国民連合を代表いたしまして、中曽根
総理の
所信表明に対し、我々の
見解を明らかにしつつ
質問をいたします。
質問に先立ち、去る八月の
日航機の
事故に対し、亡くなられた
方々、御
遺族に対し心からなる
哀悼の意を表するとともに、負傷された
方々にお
見舞いを申し、速やかな御全快をお祈りする次第であります。
政府は、このような
事故が再び起こらないよう、格段の努力をいたすことを強く強く
要求する次第であります。
中曽根
総理は、節目とか転換点とかいう言葉がお好きのようであります。けれ
ども、暦の上の節目がそのまま歴史の転換点になるわけではありません。歴史の転換点は、歴史をつくる人間
社会に醸し出された問題が大きく膨れ上がり、
社会全体を動かずに至ったとき、人々に知覚されるものであります。
政治家の任務は、人々に先んじてこの歴史の流れの行方を見通し、混乱なく人々とともに進むところにあります。中曽根
政治の実体は、スローガンは高く掲げられますが、自民党
政治の泥沼の中であがき、もがき、すべてが中途半端で低迷しているありさまのようであります。これでは、
我が国の
政治に前進はありません。我々は、率直に問題点を指摘し、
総理の明確な
答弁を求めるものであります。
議員定数問題について、最高裁判所は、本年七月十七日の判決で、
現行の議員
定数配分規定は、
昭和五十八年十二月総選挙当時
違憲であると断じました。しかも、五名の裁判官が、
現行議員
定数配分規定のままで選挙が施行されたときは、その選挙は一定期間後無効などの補足
意見をつけました。なお、一人の裁判官は、議員一人当たりの選挙人数の格差が一対三を超える状態になった場合には、その選挙区の選挙を無効とすべきであると述べました。司法からこのような
判断を受けた立法府の
責任は、まことに重大であると言わなければなりません。
しかし同時に、大正十四年以来六十年間行われてきた一選挙区の定数三名ないし五名の中選挙区制は、今や
我が国の主権者である
国民の
政治意識を醸成する最も重要な契機となっております。三名区は絶対に守られなくてはなりません。自民党が二名区創設を断念し、我々四党統一案との調整を望むならば、我々は話し合うのにやぶさかではございません。しかし、自民党が自分たちでつくったいわゆる六・六案の強行成立を図るならば、それは議会
政治の根底を破壊するものであります。
総理は、単独強行採決は決して行わないことを、厳粛に
国民にお約束願いたい。
定数
改正に当たって忘れてならぬことがあります。それは、本年十月一日、
国勢調査が施行され、その速報値がこの十二月二十日ごろ公報に掲載されるということであります。七月の
最高裁判決は、
昭和五十五年
国勢調査の数値に基づく
判断であります。したがって、本年十月
国勢調査の結果が明らかになれば、立法府としては、この結果を組み入れた新しい定数表をつくるのが当然であります。また、今後
国勢調査が行われれば、自動的に議員定数の改定が行われるよう、今回の法
改正で実現すべきであると
考えます。このため民社党は、各党と十分話し合いたいと
考えておりますが、
総理は、この私の
考えに
賛成かどうか、
お答え願いたい。(
拍手)
政府は最近、
防衛に関して二つの
決定をいたしました。一つは、
昭和五十一年
三木内閣の
閣議決定である、
防衛費は
GNP一%枠を守る旨の再確認であり、他の一つは、
昭和六十一年から六十五年に至る
総額十八兆四千億円、対
GNP比一・〇一六%に上る中期
防衛力整備
計画であります。前者は、各
年度の
GNPがどのように
変化しても、
防衛費の上限は
GNP一%であるというのであり、後者は、五年間にわたる
防衛費総額の限度は決めたが、各
年度の
防衛費は
GNP一%を上回ることがあり得るという
考え方であります。
我々は、
防衛費の
決定に当たっては、まず、
我が国に対する脅威の実体を見積もり、これに対する我が方の戦略を
決定し、次いで、この戦略を遂行し得る
防衛力を算定して、
防衛費を
決定すべきであると
考えます。この場合、
我が国憲法の理念、専守防御、さらに非核三
原則などをベースにして
考えるべきは、言うまでもありません。
もともと、
防衛費と
GNPとの比率は、結果的に与えられる数値であって、目標として与えられるべきものではありません。
防衛費の歯どめは必要であります。しかし、
GNPの一定率を
基準として
防衛費を決めるという
やり方は、合理的であるとは
考えておりません。しかし
昭和五十一年以来、いわゆる
GNP一%枠が
防衛費に対する歯どめ的役割を果たしてきたことは事実です。この
閣議決定が生きている以上、
政府が
GNP一%枠を守ることは当然であります。
政府の今回の二つの異質の
決定に対し、いずれをとるか、中曽根
総理はその態度を
国民に明らかにせられたい。
我々は、今度の中期
防衛力整備
計画が
閣議決定という形式を整えた点は評価をいたします。しかし、その
内容は厳しく検討されなければなりません。
総理は、この
計画による
防衛力の
規模で、予想せられる脅威に対して十分対処し得ると
考えておられるかどうか。また、日米両国間で
防衛協力について話し合われ、合意が見られておりますが、
総理は、米軍の援護能力をどのように見積もっておられるか。さらに、
ソ連の核脅迫があった場合、自衛隊とアメリカ核戦力とがどのようなリンケージに立つのか、明らかにせられたい。
防衛に対するシビリアンコントロールを徹底させるためには、
国防会議を改組して、単独立法に基づく安全保障
会議を設置し、さらに、
国会の安全保障特別委員会を常任委員会に格上げするとともに、むだのない自衛隊の
編成整備に全力を尽くすべきであります。これらの諸点について、
総理・総裁としての明確な
見解を伺いたい。(
拍手)
ソ連の急激な核戦力の増大によって、アメリカの相互確証破壊戦略、MADは崩壊の危機に瀕し、レーガン政権は、
戦略防衛構想、
SDIを打ち出すに至りました。
ソ連もまた、既に
SDIの研究を開始しているようでありますが、
SDIについては、それが核廃絶に至るものであるかどうかなど、いろいろな点がなお不分明であります。我々は、検討を要する段階にあると
考えております。
総理は、本年一月、
レーガン大統領との
会談で、アメリカの
SDI研究を
理解すると言われましたが、最近
政府は、アメリカに調査団を送りました。この調査団の
目的は何であるのか、伺いたい。来週の
緊急サミットや
レーガン大統領との
会談で、
総理は
SDIについてどのような態度をとられるか、明らかにせられたい。
SDIは、今後の同本の安全保障並びに科学技術の進歩に重大な影響を持つものでありますから、我々は、
政府に各省庁を超えた統合的調査研究機関をつくり、その調査結果を
国会に報告すべきだと
考えますが、
総理のお
考えを承りたい。
本年九月二十日の核不拡散条約第三回再検討
会議の最終文書では、包括的な多国間の核実験禁止条約がまだ締結せられていないことを、深く遺憾といたしておりますが、
総理は、
レーガン大統領に対し、
米ソ首脳会談においてこのような包括的多国間核実験禁止条約を提案し、
我が国はその場合、その検証役を引き受ける旨を明らかにすべきだと思いますが、
総理の
考えを承りたい。
なお
総理は、今回、国連で
演説されることになっておりますが、我が北方領土における理不尽な
ソ連の軍事力配備、
強化を明らかにし、北方領土返還につき国際世論を喚起すべきだと思いますが、
総理の意思を明らかにせられたい。(
拍手)
九月二十二日、五カ国蔵相
会議の結果、
円高・ドル安となり、貿易摩擦論議はやや小康を得たようであります。しかし、これはカンフル注射であって、体質が変わったのではありません。
円高・ドル安をどのようにして続けていくか、それが問題であります。
我が国の市場に対するアメリカのアンフェアの攻撃、ヨーロッパ諸国の通貨価値、発展途上国の累積
赤字など、問題はグローバルな
解決を求めております。
政府は、去る六月末、関税分野について
行動計画、アクションプログラムをつくり、この十五日、
内需拡大策を
決定いたしました。しかし、この問題
解決のためには、為替はもとより、関税、貿易など
世界経済に関する新しい秩序をつくる多国間交渉が必要であります。
総理は、来週の
緊急サミットや、さらに
レーガン大統領との
会談でどのような提案をされるのか、
具体策を明らかにしていただきたいのであります。
我が国は、八〇年代に入って以来、外需依存の構造的輸出黒字経済を続けてまいりました。これを転換させなければ、
経済摩擦問題は根本的には解消いたしません。しかし、この経済
政策転換を行うには、
我が国の
財政は、その破局的体質のために無力となっております。
我が国財政の公債依存度は、アメリカを抜いて今や主要先進国中第一位の高水準にあり、公債残高は急激に累増し、
国民一人当たり比較でも対
GNP比でも先進国中第一位であり、租税収入は毎年、その三分の一程度を埋めるにすぎません。そして、利払い費の歳出
総額に占める割合もダントツであります。利払い費は今や、
国民生活を向上せしめるための
政策的経費を抜いて第一位の巨額を占め、
財政は身動きのとれない状態であります。
しかも昨年より、
赤字特例公債を含め、償還を要する公債の九割に近い額を借りかえる道を開いたため、今後六十年にわたって、特例公債を含む巨額の国債で、
財政は半身不随はおろか、全身麻薄の状態となっております。こんな状態にありながら
政府は、
昭和六十五
年度までの間に、特例公債依存体質からの脱却と公債依存度の引き下げに努めるなどと、ただ言葉を繰り返すだけでは、
財政危機をどう打開しようとしておられるのか、
国民にはさっぱりわかりません。
総理の
方針をはっきりとお伺いいたしたい。
新たに誕生した
日本電信電話株式会社や
日本たばこ産業株式会社などの株式のうち、いつ、幾らを公債
償還財源に充てるのか、また、国有地売却の
規模及びそのテンポをどうするのか、はっきり説明を願いたい。(
拍手)
財政再建のためには、
行政改革が必須の
前提であります。
行政改革がスタートして四年半、この間、
政府の行政サービスの水準は大きく切り下げられました。
医療保険で本人
負担がふえ、老人、児童向けの諸
政策も後退しつつあります。ところが
国民にとって、行政が変わったという実感が少しも感ぜられないのはなぜでありましょうか。
行政改革の
目的は、
政府が
国民生活向上のためにいかに役立つかというところにあります。そのためのしなやかな
政府をつくることが目標となります。各省庁の縄張り根性、硬直化し切った割拠主義は、真っ先に改められなければなりません。
食糧、農林統計の部門では、相当数の職員の余裕が出ております。これを省庁間の壁を越えて配置転換を図れば、大幅な定員削減になるのでありますが、これがほとんど進んでおりません。そうした怠慢の結果、
昭和四十二年以来現在に至る定数縮減率は、わずかに二・五%にすぎません。また、効果の薄い補助金の整理と声高く言われておりましても、さっぱりこれも進みません。一律カットなどとやっておりますが、五十九
年度でわずか二・九%、本
年度で〇・九%の削減にすぎません。
特殊法人の整理も許認可の整理も、足取りまことに春日遅々であります。本省庁関係も、総務庁が生まれただけで、あとはどうなるのかさっぱりわかりません。しなやかさなど、どこにも見出すことはできないではないですか。行政組織の外郭にある電電やたばこは民営に移されましたが、
国鉄はこれからであります。
総理は、一体どこまであなたの手で行革をやるおつもりなのか、この際、
国民に明らかにしていただきたい。(
拍手)
国鉄再建については、第一に、新幹線リース方式と本州旅客三
分割案が
答申されておりますが、これで自立経営ができるか、
見解を明らかにしていただきたい。第二に、四万一千人の余剰人員を三年を区切って旧
国鉄に残すことは、事実上の指名解雇であります。
政府は、極力余剰人員縮減に努め、再就職保証の立法
措置をすべきであると
考えますが、
総理の
見解を伺いたい。第三に、旧
国鉄に残存する
長期債務十六兆七千億円は、
政府の
責任において処理せられるべきであります。
総理のお
考えをお聞きしたい。
外需依存から
内需拡大経済へ転換するために、この十五日、
政府は八項目にわたる
内需拡大策を
決定いたしましたが、まずなされなければならないのは大幅
減税であります。
総理は、九月二十日の税制調査会におけるあいさつで、まず
減税の
答申をと訴えられましたが、それはいつまでに
答申を得て、いつから
実施するつもりなのか、明らかにせられたい。税制にもいろいろな問題点がありますが、特に中堅所得層に重苦しくのしかかっている重税感を取り除く必要があります。所得税は、二兆円
規模の大幅
減税を行い、十五段階もの累進税率の刻みを見直す必要があると
考えます。さらに、本年は国際婦人年の最終年であることにもかんがみまして、家庭婦人の働きを高く評価し、サラリーマン家庭に二分二乗方式の
導入を検討すべきであると思います。
ウサギ小屋と酷評された
住宅につきましては、公営
住宅の
基本面積を広くして、新しい需要を喚起し、
住宅に対する規制を
撤廃し、地価を安定させ、固定資産税
減税やローン
減税、さらに融資を
実施して、ゆとりのある
住宅を建てさせるべきであります。これらについて
総理の
見解をお伺いいたしたい。
あなたは
総理に就任以来、三回の
年度予算を組みました。それによって十一項目、一兆三千億円余に上る
増税を
国民に課しておるのであります。しかも今回、森林の保全、水源確保のため、流水占用料の
拡大や水源税の創設が
政府部内で論議をされておりますが、
総理はどうお
考えになっておられますか。
自民党村山調査会はこのほど、
大型間接税の創設で増収を図ろうとする旨の中間報告を出しましたが、我々はこれに断固
反対であります。まず、不公平課税の
是正に手をつけるべきだと
考えております。
総理は一体どうお
考えか。
必要な内需振興のためには、建設国債の発行を渋ってはなりません。経済大国とはいえ、
社会資本の貧弱な
我が国におきましては、これを充実することが他国の信頼をつなぐ重要な
方法であります。普及率の極めて低い下水道の整備や、全国に三千カ所あると言われるがけ崩れの心配のある箇所の修復を急ぐべきであります。
お答えを願いたい。
我が国民は、
世界一貯蓄率の高い
国民であります。この十年来、老後の備えのためを貯蓄の
理由に挙げる人々は増加を続けてまいりました。その大きさは、病気、災害の備えや子供の
教育、結婚資金に次ぐ大きさであり、四十五歳を過ぎますと、ばっちり老後優先であります。老齢化
社会到来へ人々がいかに心配しているか、明瞭であります。
総理は、人生八十年時代を迎えたとか、長寿国
日本の実現は大いに祝福さるべきことだとか、この長い人生を生きがいを持って過ごすことのできる
社会全体のシステムをつくり上げるとか言っております。ところが、あなたの
政府は、この言葉とは裏腹に、老人
医療の自己
負担の大幅増額を企てているではありませんか。あなたは、先ほど若干の
負担と申しましたが、老人は収入はなく、わずかの年金で暮らす人々が大部分なんです。そのために、早期治療を損なわれ、病を重くし、命を縮めたら、それは一体だれの
責任でありましょうか。
総理、老人に
医療負担の増加はいたしませんとお約束をしていただきたい。(
拍手)
アメリカの
財政赤字が高金利、ドル高を生み、日米間の貿易不
均衡をもたらしました。アメリカの
財政赤字は膨大な軍備に原因するのだから、
防衛費の少ない
日本はその一部分を肩がわりすべきであるという議論が、アメリカの一部にあります。しかし私は、
総理と私の共通の師であるキッシンジャー博士の次の言葉を
総理に贈りたい。「
米国内で特定された
負担を
日本が分担するために……
日本が大幅に再軍備するなどと信じこむには、歴史に対する特別の鈍感さを必要とする。」まさにそのとおりだと思います。しかし、キッシンジャー博士は、巨額の
財政赤字を抱えるアメリカが、発展途上国への援助を
実施する
財源を十分持っていないことを訴え、
日本に
協力を求めております。この点に関し、私は
総理の注意を喚起したいのであります。
総理はこの一月、南太平洋のオーストラリア、ニュージーランド、フィジー、パプアニューギニアを訪れました。途次、ソロモンの上空を飛んで、南太平洋の島嶼国家の実像に触れました。南太平洋には、新興島嶼国家が九つあります。これらは、国連、国際労働機構その他国連各機関のメンバーの一国として重要な役割を果たしております。
最近、これらの国々において、労働組合を中心として反米、親ソの運動が深まってまいりました。その結果、キリバス、バヌアツは
ソ連に漁業権を付与し、ソロモンの労働組合は
世界労連に加盟し、パプアニューギニアも本年、五十名もの労働組合代表をモスクワへ送りました。これらの国々には、アメリカ軍艦の寄港禁止を
決定したり、もしくは考慮中のものがあります。ニュージーランドの問題は皆よく知るところでありますが、パラオも二百海里原子力艦船航行禁止を
決定しているのであります。
昨年十一月、東京で、我が党の外郭団体である南北問題
日本委員会主催の南太平洋セミナーを開催いたしましたとき、
参加したトンガの大臣が、私は
ソ連からいろいろな申し出を受けた、私は断ったが、現実の
政治家としてそれがいかに魅力あるものであるか、
皆様にはおわかりであろうと述べましたが、その言葉は今も忘れられずに刻みつけられております。
これらの地域では、東側の労働外交や労組レベルの国際
会議などの交流活動が活発化しています。西側陣営の
我が国としては、いわゆるシーレーンの外側に当たる太平洋のこの方面が、文字どおり太平であるためには、これらの動きに対し、我が方の活動を充実する要があると我々は
考えております。南太平洋島嶼国家への
政府のODA、
政府開発援助は、年間わずか四十億円足らずにすぎません。南太平洋島嶼国家に対する
我が国の
協力の
あり方について、
総理の御
見解を承りたいのであります。(
拍手)
総理は、本年八月十五日、敗戦記念日に、戦後初めて
内閣総理大臣としての資格で靖国神社に
公式参拝を行い、在京の閣僚たちもこれに倣いました。この参拝の方式は、本殿において一礼する
やり方でありました。このような方式で参拝すれば、参拝は宗教的意義を有しないものであり、憲法が禁止する宗教的活動に該当しないと内閣
官房長官は言っております。宗教法人である靖国神社の本殿で、神社が定めている参拝方式によらず、別の方式で参拝をしたというのは、一体どういう
意味であるか、
総理のお
考えを承りたい。
総理は、神道の祭祀を行う宗教の場としての靖国神社に参拝したのではなくて、国事に殉ぜられた人々を奉斎している場としての靖国神社に参拝されたのでありましょうか。すなわち、靖国神社は宗教法人法に基づく宗教法人であり、法的には他の多くの神社と異なるところはありませんが、他の神社と異なる点は、国事に殉ぜられた人々を合祀している点であります。
内閣総理大臣が国事のために殉じた人々を祭る場所に参拝しても、それは憲法の禁ずるところではないと
総理はお
考えになったのか、その点をお伺いいたしたい。
国民の信ずる宗教はいろいろあります。しかし、どんな宗教を信ずる者でありましても、
国民ひとしく参拝できる国事に殉じた人々を祭る場所が必要だとは
総理はお
考えになりませんか、お伺いいたしたい。(
拍手)
総理の今回参拝の
目的は、戦没者の追悼を行うことにあるとされております。しかし現在、靖国神社に合祀されているのは、戦闘によって死没した者だけではないのです。いろいろな人々がおられます。その中には、
平和条約第十一条に基づいて死亡した人も含まれておるのであります。この点について、
総理はどういうお気持ちで参拝されたか、お伺いいたしたい。
また、合祀された人々の中には、二万七千六百五十六柱の台湾出身者が祭られています。
政府は六十
年度予算で、台湾人元
日本兵戦没者に対する補償問題
解決のため、検討費を計上しております。
総理は、参拝に当たって、補償を
実施する意思を告げられたかどうか、伺いたい。(
拍手)
九月の税制調査会で、包括的
答申を来年秋ごろまでに得たいと要望されたとき、
総理は、強力なリーダーシップを持って大胆に、かつ、かたい決意を持って
改革を進めていく所存だと強調されました。あなたの任期は、自民党党則によれば来年秋までであります。その来年秋に税調の
答申を得られるあなたは、どんなリーダーシップを振るおうと言われるのでありましょうか。それは、任期を延長してそのことに当たろうという決意のあらわれなのでありましょうか。
四年の
総理の任期は短いものではありません。あと一年の任期、あなたの好きな節目をそこに置いて、中曽根
政治を展開していかれるのでありましょうか。それとも、問題点を手広く陳列して終わるだけでありましょうか。行
財政改革も、
経済摩擦も、平和と安全も、まだ
解決の糸口についたとさえ言い得ない状態であります。これらの困難な問題の
解決に、一年は短過ぎるかもしれません。しかし、この一年こそ、
日本の進路にとっては重大な一年であると
考えます。
総理がどのようなタイムスタンスで進まれるのか、お伺いいたしたいのであります。
私と
総理の恩師、矢部貞治先生はこう言われました。「
政治は、理想だけでも現実だけでもなく、理想と現実を結びつけることなのである。どんなに崇高な理想や美しい理念を説いてみても、それが現実から遊離した実現の
可能性のないものなら、それは空想または夢想であって、
政治の問題になり得ない。」矢部先生のこの言葉をあなたに呈し、中曽根
総理の
所信を伺って、私の
質問を終わります。(
拍手)
〔
内閣総理大臣中曽根康弘君
登壇〕