○赤羽政府
委員 為替レートが上がりますと、
先生御
指摘のように
輸入物資が安く購入できる、
輸入できるというメリットがございます。つまり、例えば二百四十円から二百円になったといたしますと、一ドルの海外
商品は二百四十円出さなければいけなかったものが二百円で買えるということで、四十円だけ購買力が節約になる。これがいわゆる差益になります。ただし、
輸入の方を見ておりますとそうでありますけれ
ども、輸出の方を見ておりますと、従来一ドルの品物を輸出をして二百四十円稼いでいたものが、今度は二百円しか入らなくなるわけでありますから、したがいまして四十円損をする。現在
輸入は大体千三百億ドル強でございますし、それに対しまして輸出の方は千八百ドルに近い数字だと思います。そういうことで、輸出の方が金額がはるかに大きい。したがって貿易黒字がたまるということになるのですけれ
ども、そういたしますと、
輸入で確かに得はいたしますけれ
ども、輸出の損の方が大きいということになります。こういうことになりますと、経済全体として見ればむしろ差損が発生してしまう、こういうことになるわけです。
しかし、それぞれ
輸入で
企業経営をしている方々にとりましては、為替レートが高くなった分だけそれに比例をして収入が減ったんじゃやっていけない、こういうことで、例えばのことでありますけれ
ども、従来一ドルで
販売をしておりましたものを、先方といろいろ交渉して、かなり困難な交渉などをして一ドル十五セントで売る、こういう努力をいたします。そういたしますと、一ドル十五セントで売れるわけですから二百三十円。従来の二百四十円に比べまして十円だけ損といいますか、収入が不足になる。ただし、その反面におきまして、これまで一ドルで
販売していたものですから、これを一ドル十五セントに値上げるということになりますと当然輸出量が減ってくる、売れ行きが困難になる、こういうことがございます。したがいまして、差し引きいたしまして、
輸入でプラスの四十円、輸出でマイナスの十円、つまり経済全体として見ると三十円もうけかといいますと、今の輸出数量の減少というところがございますからそう簡単ではありませんけれ
ども、しかし経済全体としては確かにプラスになる、こういうことであります。
プラスになるメカニズムは、
輸入が安く買えることと、輸出につきましてドル建ての価格を引き上げる、この両方の要素が重なって差し引きプラスになる。このプラスになったものは、公共料金なんかの場合ちょっと問題は別でありますけれ
ども、それは従来のケースで分析をいたしますと、大体八カ月から九カ月ぐらい、いわば三・四半期ぐらいたちますと
消費者物価の段階までこのプラスの利益というのが均てんしてまいります。
消費者物価が下がってくる。例えば中間製品である部品の段階までプラスが及んでくるのが四、五カ月だと思います。それから
輸入品を直接原料として使っておりますいわゆる素材部門などは、一カ月とか二カ月といったような非常に短時日の間に価格が下がるという形でこのメリットの還元が行われる。こういうのが従来、と申しましても五十五年ぐらいのときに円安から一転して円高になりましたこの当時の状況を分析すると、そういうことじゃないかと思います。
したがいまして、差益はどこへ行ったのかということでありますけれ
ども、物価の安定を通じて需要家、また需要家の一人であります
消費者にその利益が及んできている、これが過去の姿でありますけれ
ども、今回の場合も当然過去の姿と例外ではないものと理解をしております。