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1985-11-21 第103回国会 衆議院 物価問題等に関する特別委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十年十一月二十一日(木曜日)     午前十時二分開議 出席委員   委員長 竹内  猛君    理事 青木 正久君 理事 佐藤 信二君    理事 金子 みつ君 理事 浜西 鉄雄君    理事 田中 慶秋君       尾身 幸次君    工藤  巖君       二階 俊博君    中村 正男君       松浦 利尚君    元信  尭君       小谷 輝二君    駒谷  明君       藤田 スミ君  出席国務大臣         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      金子 一平君  出席政府委員         内閣審議官   海野 恒男君         公正取引委員会         事務局経済部長 厚谷 襄児君         公正取引委員会         事務局取引部長 利部 脩二君         公正取引委員会         事務局審査部長 樋口 嘉重君         経済企画庁国民         生活局長    横溝 雅夫君         経済企画庁物価         局長      斎藤 成雄君         経済企画庁総合         計画局長    及川 昭伍君         経済企画庁調査         局長      丸茂 明則君  委員外出席者         警察庁慶事局保         安部公害課長  上野 治男君         経済企画庁調整         局国際経済第一         課長      土志田征一君         環境庁大気保全         局企画課長   伊藤 卓雄君         国土庁土地局土         地政策課長   河原崎守彦君         法務省刑事局刑         事課長     原田 明夫君         大蔵省理財局国         有財産審査課長 藤村 英樹君         国税庁間税部酒         税課長     宗田 勝博君         厚生省生活衛生         局食品保険課長 大澤  進君         厚生省生活衛生         局食品科学課長 内山 寿紀君         厚生省薬務局企         画課長     森  仁美君         通商産業省産業         政策局商政課長 山下 弘文君         通商産業省生活         産業局日用品課         長       柴崎 和典君         資源エネルギー         庁石油部流通課         長       鳥居原正敏君         資源エネルギー         庁公益事業部業         務課長     川田 洋輝君         資源エネルギー         庁公益事業部ガ         ス事業課長   中尾 舜一君         中小企業庁長官         官房調査課長  上田 全宏君         中小企業庁計画         部計画課長   長田 英機君         特別委員会第二         調査室長    岩田  脩君     ————————————— 委員の異動 十一月二十一日  辞任         補欠選任   武部  文君     松浦 利尚君 同日  辞任         補欠選任   松浦 利尚君     武部  文君     ————————————— 本日の会議に付した案件  物価問題等に関する件      ————◇—————
  2. 竹内猛

    竹内委員長 これより会議を開きます。  物価問題等に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。元信堯君
  3. 元信堯

    元信委員 前回の当委員会、九月十日に開催をいたしたかと思いますが、毒液入りワインジエチレングリコールの混入問題、幾つ質問をさせていただきました。この委員会におきまして、幾つかの問題について調査中あるいは見解をまとめているところだ、作業中だという問題がございましたから、本日、まとまりましたものについては御説明をいただきたいと思います。  まず公正取引委員会に伺いたいと思いますが、ワイン表示については不当表示疑いが濃い、調査の上で措置考えるというお話でございましたが、現在時点でどのような措置をおとりになったのか、あるいは調査の結果等について御説明を願いたいと思います。
  4. 利部脩二

    利部政府委員 お答えいたします。  マンズワイン表示の問題につきまして、安全問題に一応決着がつきました時点から、不当表示観点から調査いたしまして、調査の結果に基づきまして、昨日、マンズワイン社に対しまして景品表示法違反のおそれがあったことにつきまして警告をいたしました。  警告内容は、同社がことしの六月に頒布会方式で販売していた一つ銘柄ワインにつきまして、あたかも氷果ブドウ、これは甘口の白ワイン材料としてはすぐれたものということになっておりますが、それを原料として醸造したワインであるかのように表示していながら、実際には氷果ブドウ原料とするものは輸入ワインに少量含まれていたにすぎなかったという点。  それからもう一つ、昨年の九月以降市販しておりました一つ銘柄につきまして、あたかも、作柄が良好であったとされるいわゆるビンテージでございますが、一九七八年の貴腐ブドウ原料として醸造したととられるような表示をしていながら、実際にはその大部分が、貴腐ブドウ原料とはしていますけれども輸入ワインであって、かつ一九七八年産のブドウ原料としたものは含まれていなかったという事実が判明いたしまして、景品表示法四条第一号に違反するおそれがあるというものでありましたので、今後このような表示を行わないように警告するとともに、今後ワイン表示適正化のための措置をとって、その措置について報告するよう求めたものでございます。
  5. 元信堯

    元信委員 マンズワインについては不当表示のおそれがあったというのは、なかなか微妙な表現でありますが、内容を承りますと、やはり不当表示があったということだろうと思います。この事実は報道機関等に公表されましたか。
  6. 利部脩二

    利部政府委員 公正取引委員会景品表示法違反事件処理の通常のやり方でございますと、一番明確な措置というのが景品表示法に基づく排除命令でございます。次に、公表いたしますのは、同法に基づきまして聴聞という手続が定まっておりますが、その聴聞という手続をとったもので排除命令に至らなかったものは公表することにしております。その他については特にこちらから個別の相手方事業者名を挙げて公表するというふうにはしない例にしております。その取り扱いに含まれるものでございましたので、特に公表はしておりません。
  7. 元信堯

    元信委員 今回のブドウ酒に対するジエチレングリコール混入事件は、いわば副産物として、国産ワインブドウ酒国産ならざるものが大量に含まれておるという事態をあぶり出した形になりました。これは必ずしもマンズワインに限ったことではなかったと思いますが、公正取引委員会はこの間、こういう事実が明らかになったことにかんがみてマンズワイン以外の会社についても同様の調査をされたかどうか。されたとすれば、その結果についてあわせてお聞かせをいただきたいと思います。
  8. 利部脩二

    利部政府委員 ほかの社につきましては、ただいまのマンズワイン社と同様な個別の違反疑いをもってする調査はしておりませんが、ワイン表示適正化観点から、重立ったところからは表示実態について事情聴取しております。
  9. 元信堯

    元信委員 その結果についてもあわせてお聞かせください。
  10. 利部脩二

    利部政府委員 既に新聞等指摘しておりましたと同様のことでございますが、輸入バルクワインを使いながら、国産ブドウ原料としたワイン一般消費者に誤解されるおそれのあるような表示があったということ、それからビンテージブドウのできがよかった時期を表示しながら、必ずしもその裏づけ、根拠となるような材料ワインを使っていなかったこと等々について、ワイン消費者内容を誤解するおそれのあるもの等、今後適正化を図らなければいけない表示幾つかの点に見られたということでございます。
  11. 元信堯

    元信委員 幾つかの点とおっしゃいますが、具体的にはどういう銘柄、どういう製品についてどういう実態であったかということを御報告いただけますか。
  12. 利部脩二

    利部政府委員 御案内のとおり国産ワインメーカー日本で市販されていますワイン、非常に銘柄が多うございます。どの銘柄についてどれという個別のつかまえ方はしておりません。余り一つにまとめてしまうと、その中には何ら表示上問題のないきちんとしたものもございますから、ぐあい悪い点もございますけれども、おおむね輸入ワイン原料とした国産ワインメーカーワインにつきましては、原材料としているワイン原産国原材料ワイン収穫年あるいは特定の地のブドウ園ブドウ原料としたかのように誤解されるような表示等につきまして、少なくとも適正でない表示、改めた方がいいような表示があったという点については大同小異であったというふうに見ております。
  13. 元信堯

    元信委員 今度のこの毒液入りワイン事件で、確かに今お話があったような外国産の素性もよくわからないワインを大量に混入しておったというメーカーももちろんあったわけですけれども、そうでなかったメーカーもたくさんあるわけなんですね。したがって、そういうメーカーまで同じように不審の目で見られて、経営上も甚だ大きな打撃を受けているやに聞いているわけです。そうだとしますと、一体どこがまじめにやっておって、どこがそういう不届きなことをしておったのかということは明らかにしないと、今度はまじめにやっておったものがひどい目に遭うという社会的な不公正を生じることになろうかというふうに思うのですね。したがって、今の御答弁内容について言うならば、個別に調査はしておらないけれどもおおむねというようなお話でありましたが、事の性格からいたしまして個別に調査をしなければ内容はわからぬと思うのです。全体を大ざっぱに調べるなどということはできないで、例えば、この銘柄については表示内容が甚だしく乖離をするというようなことになるかと思うのですね。ですから、お調べになった中で、これこれのものについてはやはり不当であったということは、これは裏返して言えば、その他のものについては不当でなかった、適正な表示であったということになるわけですから、公正取引委員会としては、そこのところは踏み込んだ調査結果を示されるべきだと思うのです、調査の結果が個別でないなんということはあり得ないのですから。もう一遍答弁してください。
  14. 利部脩二

    利部政府委員 確かに先生指摘のような点もございますけれども、私どもでまず重要だと考えましたのは、今後将来にわたってなるべく早い時期にワイン表示が全体として適正なものになり、ワイン愛好者消費者の適正な商品選択ができるようになることが先であろうというふうに考えまして、あえて既往の不適正な表示については余り追及しなかったというか、それよりは今後の改善指導の方に力を入れたいというふうに考えたわけでございます。  それから若干つけ足しますと、個別の表示を見るのもなかなか時間のかかる大変なことでありますと同時に、一つの社の、あるいはさらに一つ銘柄表示を見ましても、ある点ではきちんとしているけれども他の面から見ると首をひねるという点もいわば混在しているわけでございます。それをまたトータルで不適正度何点というふうな言い方もなかなかできにくい。日本ワイン消費者ワイン選択の基準、何を大事だと思って選択するかということがまだ余りはっきりしていない段階でございまして、景品表示法の問題からしますと、消費者商品選択を誤らせるおそれのあるものが不当だというふうに考えられますが、生産者ワインメーカーのしておる表示も、この点は特に強調したいということでいろいろ書いておる、いろいろ書いておるけれども、消費者の方は余りその辺を重視しないなんという空振りに終わっている問題等もあり、そういうことで個別の不当表示性というのは、適正な表示の慣行というのが決まっていない状態ですと甚だ扱いにくいという実態もございます。そういう点を総合的に考えまして、とにかく全体的に表示適正化を進める方が先決だろうというふうに考えたわけでございます。
  15. 元信堯

    元信委員 今までのことはまあそう言わずに先のことをやろう、こういうようなお考えかと承りましたが、そもそも公正競争規約を仮につくったとしても、今までの不当表示に対して、景表法の規定が守られてなかったということについての追及が何もなくて、新しい公正競争規約が守られるというような期待はできないと思うのです。業者にしてみても、今までだって抵触したのが別に問題にならなかったなら、新しい規約を守る必要があるというふうに考え可能性は少ないわけでありまして、今までの事案に対する姿勢が、これから公正競争規約を仮につくったとすれば、それの効力を担保することになるのではないか、そう申し上げておきたいと思います。  そこのところで押し問答しても時間のむだですから先へ参ります。ワインに関して公正競争規約をつくるように業界指導するというお話でございますが、現状はどのようになっておりましょうか。
  16. 利部脩二

    利部政府委員 ことしの九月十八日にワイン業界に対して、具体的に言いますとワイナリー協会責任者その他関係者に対して、ワイン表示適正化を図るため公正競争規約の設定を検討するよう要請いたしております。その後、国税庁指導公正取引委員会のこういった要請を受けまして、ワイン業界におきましては日本ワイナリー協会が中心となりまして、山梨ワイン団体、山形県の団体、北海道産ワイン団体、さらに長野県の一部の団体の五つの団体ワイン表示問題検討協議会というのを設けて検討を行っております。ただ、まだ成案を得たという報告は受けておりません。公正取引委員会といたしましては、今後も大蔵省と連絡をとりつつワイン業界に対して適宜助言、指導をして促進を図ってまいりたいと考えております。
  17. 元信堯

    元信委員 のど元過ぎれば熱さを忘れる、人のうわさも七十五日、いろいろな言い方があるわけですが、九月十八日に指示したところはなかなか素早かったと思うけれども、その後はいつのことやらもわからぬようなお話じゃございませんか。いつまでに公正競争規約がつくられて発効するというようなことについて業界指導なさいましたか。
  18. 利部脩二

    利部政府委員 特にいつまでという具体的な期限を切っておりませんが、できるだけ早く、理由なき遅延はいけないというふうには指導しております。
  19. 元信堯

    元信委員 公正取引委員会としてはいつごろまでとお考えでしょうか。
  20. 利部脩二

    利部政府委員 特に具体的な日にちについての目標は持っておりません。具体的な検討業界が始めますと、企業の規模、それぞれのワイン産地特徴等によって、一つ表示についても相当利害が対立するとか対応の仕方が違ってくるという問題がございます。そういう点、今まで表示が、いわばふわっとしておりましたので、そういう問題があからさまに出ておりませんでしたけれども、むしろ、まじめに表示適正化考え段階になりますと、そういう問題が深刻な問題になってまいります。やはり非常に小さい規模の、国産ブドウでいわば伝統的につくっておられるところの信頼も大事でありますし、大衆ワインをつくって広く愛用してもらうという方針をとっておるところも大事であります。そういうところのワインにも共通に適正なものであることが望ましいというふうに考えておりますので、決していたずらな遅延を許す気はございませんけれども、必ずしも拙速ではうまくいかないのではないかということでございます。
  21. 元信堯

    元信委員 私はいつまでにということを承ったわけでございますから、なければないと言っていただければ、いたずらな答弁遅延がなくて事が速く進もうかと思うわけでございます。  それでは、公正取引委員会の消極的な姿勢というものをよく承りました。この問題については今、公正競争規約もないし、現状のことについて考えますと何ら規制がない。景表法の問題についても、さっきお話があったマンスだけで、あとはどうもお構いなしである、調査をしたけれどもどこがどうだということも言えないというありさまでありますから、現状ブドウ酒を飲むということについては非常な勇気が要るということをまた改めて確認せざるを得ないわけでございました。ぜひ積極的に、いたずらに遅延されぬように御努力あらんことをお願いしておきたいと思います。  次に、厚生省に承ります。  マンズワインについて、この前私が指摘しておきましたのは、ジエチレングリコール原料タンクからは不検出、しかし製品からは七製品でしたか検出をされたということでして、その理由といいますか、なぜそういうことが起きたかということについては、その当時調査中で、わかり次第報告する、こういう御答弁をいただいたわけでございます。今日に至るまで何ら御報告をいただいておりませんが、どういうことであったのか、御報告を賜りたいと思います。
  22. 大澤進

    大澤説明員 確かに九月のときに調査中、後刻御報告申し上げますと御説明いたしたと思いますが、御承知のように製品からは数次にわたって県が調査したところ出なかったということで、九月の上旬以降もさらにこの疑問点を解明すべく山梨県は再三工場に立ち入りあるいは事情聴取をしたところではございましたが、その時点では原因がはっきりつかめなかった。それで十日にこの委員会がありまして、翌日の十一日に至りましてマンズワイン社山梨県に対しまして、ジエチレングリコールの混入していた原料ワイン工場内にある国産ワインのすりかえを七月二十六日に行いまして工場内に隠匿していた、こういう事実、それからもう一点は、さらに八月二十九日、この当日にマンズワイン社製品の一部からジエチレングリコール検出されたことがわかったわけでございますが、この二十九日に、ジエチレングリコールが混入している原料ワイン、隠匿していた原料ワインでございますが、これを工場内の排水処理施設に投棄した、この二つのことを九月十一日に山梨当局に申し出た、こういう状況でございました。  県は、この報告を受けまして直ちに工場内に立ち入り、すりかえあるいは投棄の状況等確認するとともに、このたる以外にも、あるいはどこかに隠匿したりすりかえたり、そういう状況があるかないか、工場内に保管しているすべての在庫原料ワイン等につきましてジエチレングリコール検査を実施して、相当時間はかかりました、何百たるという単位でございましたので時間を相当要しましたがこれらの調査検査を進めまして、それを全部検査したところ、結果的にはその工場内にジエチレングリコールを混入したタンクはなかった、こういうことが判明して、八月二十九日以後に、わかりました七銘柄製品これ以外につきましてはジエチレングリコール検出されなかった、こういうことがわかったわけでございます。  以上でございます。
  23. 元信堯

    元信委員 厚生省として、その後マンズワイン社に対して行政処分を行ったようでございますが、その処分内容について御報告ください。
  24. 大澤進

    大澤説明員 こういう状況を踏まえまして、もちろん直接食品衛生法を執行しておりますのは山梨県でございますが、山梨県におきまして、マンズワイン社食品衛生法違反行為に対しましては同法の二十二条に基づきまして知事名で九月十七日、原料用の生ブドウ処理を除いて営業禁止を命じたところでございます。さらに既に指示しておりましたが、山梨県は、マンズワイン社回収をしておりましたジエチレングリコール混入ワインを、十月二十六日の時点でございますが、三万二千五百六本、約七キロリットルでございますが、これにつきましても廃棄を命じたところでございます。さらに、県はマンズワイン社に対しまして、在庫原料等の安全の確認あるいは事件再発防止のための具体的業務改善等指導を行ったところでございます。  最近までの状況も御説明いたしたいと思いますが、このジエチレングリコール混入回収ワイン廃棄を指示し、廃棄されたわけでございます。さらに、工場内の在庫原料等の安全の確認が終了し、食品衛生に関する業務改善具体的計画も提出されたので、山梨県は衛生上の危害発生防止の条件が満たされたと判断し、十一月十二日に営業禁止処分を解除した、こういう状況に至っております。
  25. 元信堯

    元信委員 この前の質問で私は、マンズワインのもう一つ可能性として、自社ジエチレングリコールを混入したのじゃないか、この可能性も否定する材料はないと申し上げておいたのですが、この点につきましては調査されましたか。
  26. 大澤進

    大澤説明員 山梨県において工場の立ち入りあるいは事情聴取等先生が御指摘の点も含めて調査したわけでございますが、そういう事実はなかった。これは厚生省においても直接本社を呼びまして、今のような点につきましてもそういうことがあったかどうかという確認をしましたが、いずれにしましても、県は現地において直接調査事情聴取をしたところ、直接自社で入れたという事実はなかった、こういう報告を受けております。
  27. 元信堯

    元信委員 次いで警察庁に伺いたいと思いますが、警察庁前回委員会で、事実関係が明らかになり刑罰法令に触れるということであれば厳正に対処するという旨御答弁がございました。どんなふうに対処されましたでしょうか。
  28. 上野治男

    上野説明員 お答えいたします。  お尋ねの件につきましては、警察としても早く真相を解明し国民安心感を回復していただきたいということで、事件認知後、直ちに捜査に着手いたしました。そして会社関係者山梨職員等から繰り返し事情聴取を行うとともに、マンズワイン本社勝沼工場等の捜索、差し押さえを実施し、事案の解明に努めましたところ、マンズワイン社は、ジエチレングリコール入り輸入ワインを所持していることを知りながら、山梨職員が立入調査した際その事実を隠して虚偽の報告をし、また検査用としてジエチレングリコールの入っていない他社製造ワインを持ち帰らせたことが判明いたしましたので、十月三十一日、食品衛生法三十二条第一号、第二号違反容疑マンズワイン社同社の元専務等幹部三人を甲府検察庁に送致いたしました。  以上でございます。
  29. 元信堯

    元信委員 次いで法務省に伺いたいと思いますが、送検されたということでございますが、その後の処置はいかが相なっておりましょうか。
  30. 原田明夫

    原田説明員 お答え申し上げます。  ただいま警察当局から御説明ございましたように、マンズワイン株式会社同社業務に関して本件の事実関係を共謀実行したという疑いの持たれました役員三名、すなわち一法人それからその幹部役員三名につきまして、去る十月三十一日、甲府検察庁警察から送致がございまして、同検察庁はこれを受理いたしました。現在捜査中でございまして、所要の捜査を遂げた上、事案に即した適正な処理がなされるものと承知しております。
  31. 元信堯

    元信委員 前回委員会では、食品衛生法違反ということと、サンプルの差しかえ行為等については、事実関係いかんによりますが証拠隠滅というようなお話でございました。先ほど警察庁食品衛生法だけで送致されたようでございますが、法務省、その辺どういうふうにお考えでしょうか。
  32. 原田明夫

    原田説明員 事実関係について現在捜査中でございますので、全容を解明いたしませんと適条関係を必ずしも明確に申し上げられないと思いますが、一般的に申し上げますと、刑法上の証拠隠滅罪と申しますのは先生承知のとおり他人の刑事事件に関して証拠を隠滅するということでございますので、当の行為に当たった被疑者本人らがこれを行ったというものにつきましては証拠隠滅罪ということで問擬するというわけにはまいらないだろうというふうに考えております。
  33. 元信堯

    元信委員 次に、大蔵省に伺いたいと思います。  このマンズワイン、いろいろ複雑な操作をして、証拠の隠滅じゃないというのだが、すりかえ、差しかえ等をやったようでございますが、聞くところによると、酒類のこういう混合その他は台帳をちゃんと記載をして管理をする、いつでも閲覧に供するということでなくてはいかぬそうです。この点については大蔵省としてはどういうふうに事実関係を把握されて、何か処分等をなさったかどうか、承りたいと思います。
  34. 宗田勝博

    宗田説明員 マンズワイン社に対しまして、東京国税局が酒税法違反の嫌疑があるということで調査に入っておりまして、現在も引き続き調査を継続しております。
  35. 元信堯

    元信委員 酒税法違反というのは具体的にはどういう内容なんでしょうか。
  36. 宗田勝博

    宗田説明員 タンクのすりかえという事実が報じられておりましたけれども、そういうタンクの移動につきましては記帳する義務がございますので、そういう記帳が厳正に行われていたかどうか。それから、あとジエチレングリコール入りタンク廃棄したということが報じられておりましたが、酒類の廃棄につきましては事前に届け出が必要とされておりますので、そういう届け出が行われないままに廃棄が行われたんじゃないかというようなことでございます。
  37. 元信堯

    元信委員 お聞きになったとおり警察庁捜査を終わって、もはや送致をされておる。それから、一方において行政処分も解除されて営業も全面再開しておるという状況で、どうも国税庁調査は遅いように思いますが、いつごろまでに終わって処分を決める予定ですか。
  38. 宗田勝博

    宗田説明員 調査の過程におきまして山梨県警の捜査等が行われましたので、そちらの方の書類の押収その他で私ども国税の方の調査が中断するとかいろいろ事情がございまして、かなり実地調査に時間を要したといういきさつがございます。現在、実地調査は終わりまして内部的な検討段階でございます。
  39. 元信堯

    元信委員 なるべく早く処置を決めて、いずれまた御報告を願いたいと思います。  それから、新聞報道等で伝えられておるところでも、この事件マンズワインは随分売り上げが落ちておって経営の危機すらささやかれている、こんなふうに私ども承知をしておりますが、酒税の確保のために大蔵省としては何らかの措置が必要な段階じゃないかと思いますが、いかがですか。
  40. 宗田勝博

    宗田説明員 ワイン業界全般につきまして今回の事件の影響が極めて大きく、全般的に果実酒の売り上げが落ちておることは新聞等で報じられておりますけれども、まだ具体的に酒税の確保が困難であるということでのお話までは私ども聞いておりません。
  41. 元信堯

    元信委員 酒の税は庫出税ということで、出荷量に比例して徴収されるわけですね。今回、マンズワインに限らず各ワイン会社は随分回収をして廃棄に回したようでございますが、一遍売ったものを買い戻して廃棄した場合の税金の取り扱いはどうなりますか。
  42. 宗田勝博

    宗田説明員 一たん蔵出しされたものが回収されますと、回収された段階で製造場に戻った税額分だけが次の酒税額の申告の際控除されるということになっておりますので、その回収分は税金がかからない、こういうことになっております。
  43. 元信堯

    元信委員 この事件で迷惑をこうむった人の中に、こういうバルクワインを混入した大手業者でない、例えば山梨県あたりの中小のワインメーカーがあったと思うのです。この人たちが、この事件で売り上げが落ちたとか、そういうことはともかくといたしまして直接的な費用の問題として、今度新たにワインを売り出すときにジエチレングリコール検出というラベルを張りましたね。このラベルを張るためには、ジエチレングリコールがそれに含まれていないことを分析しなければならぬ。この分析の費用をそれぞれのメーカーが持たされた結果、非常に大きな負担になっている、こういうふうに聞いていますが、大蔵省、こういう経費はだれが負担するのが適当であるとお考えでしょうか。
  44. 宗田勝博

    宗田説明員 私ども、今回全く予想せぬ事態が生じまして、ワイン、特に瓶詰ワイン輸入いたします方々が、自分たちが予期せぬままに、輸入いたしましたワインの中に、ジエチレングリコール検出されたものがあった国、ドイツ、オーストリアでございますけれども、そのワインを扱っておったということで、ドイツ、オーストリア産の瓶詰ワインにつきましては、業界が、洋酒輸入協会というのと、それからワインの安全推進協議会、こういうのがございますけれども、その両団体で、厚生省の御指導を受けまして、このレッテルのこの銘柄ワインにはジエチレングリコール混入はない、こういうものにつきまして不検出というマークを張って売り出す、こういうことになったわけでございますけれども、そこに至りますまで、そういう時間的そのほか、まことに大変な御苦労が業界の方々にあったわけで、非常にお気の毒だったと思っておりますけれども、やはり当事者にその御負担はいかざるを得ないのではないかな、こういう気がいたしております。
  45. 元信堯

    元信委員 二つプロセスがあると思うのですね。一つは、ワインジエチレングリコールを混入したのがけしからぬ、これはそうですね。ですから、そういう意味では日本メーカーの皆さんは被害者ですね。  しかし、それから先、問題が大きくなったのは、国産ワインと称しているものにバルクワインという形で大量の外国産ワインが混入をされておったということが明らかになった。そのことによって本来ならば、輸入ブドウ酒について分析するだけなら大したことはないのですが、何の関係もない、全然混入していない、自分の庭でつくったブドウを搾ってブドウ酒をつくっておった人まで、それを分析しなければならぬということになったことについては、今のあなたの御答弁のように一律にはちょっと対処できないのではないかというふうに思うのですね、原因者があるわけですから。そのことについて業界指導しょうなんという考え方はないですか。
  46. 宗田勝博

    宗田説明員 お答えいたします。  厚生省の御指導によりましてジエチレングリコール検出等を義務づけられたのは、これは私の記憶が間違っておるかもしれません、間違っておったらまた厚生省の方から御答弁いただけたらと思うのですけれども、たしかドイツ産、オーストリア産の輸入ワインでございまして、純国産についてはそういうジエチレン検出のための検査等は義務づけられてはなかったのじゃないか、かように記憶しておりますが……。
  47. 元信堯

    元信委員 厚生省、いかがですか。
  48. 大澤進

    大澤説明員 分析してジエチレングリコールが不混入というワインにつきましては、消費者がわかる形で販売を再開していきたい、こういう業界の要望もあり、我々としてもその方法が一応適切であるということで、九月の上旬にそういう仕組みが動き出したわけでございます。それは、御承知かと思いますが七月の下旬に、西ドイツ産あるいはオーストリア産の輸入ワインにつきましては、当現地ヨーロッパにおいていろいろの銘柄からジエチレングリコール検出された、それから日本においても検出された、こういう状況があって販売の自粛を求めたわけでございますが、それについて、検査をして入ってないものについては売り出していい、そういうことで、販売自粛を求めたもの、すなわち輸入ワインにつきましてはそういう仕組みが適当だろうということを申し上げ、我々も指導したところでございますが、その他の国産についてもそれが望ましいとか、あるいはやるべきだ、そういうことは全く申し上げてないわけでございます。  以上でございます。
  49. 元信堯

    元信委員 しかし、実際問題として、あれだけ問題が広がると、国産だってそれを言わなければ売れないということになって、ほとんどの者がそういうふうにしたのは事実だと思うのですね。一部の大手の不心得者のために経営基盤が全く弱い中小の人が泣くというようなことは許されていいものじゃないと私思いますので、大蔵省厚生省関係各省協議をして何らかの対策を考えていただきたいと思います。  以上でワインの問題を終わりまして、もう時間もほとんどなくなりましたが、この際、ちょっとお酒の流通の問題についていろいろ伺ってみたいと思います。  とてもきょう一日では済みませんから、また改めてゆっくりお聞きしたいと思いますが、私率直に考えますに、日本酒にしてもウイスキーにしても、ほとんどのものが、同じ銘柄についていえば全国一律の値段で売られているということについて、かねて非常に不思議に思っているところでございます。大蔵省は、酒の小売免許制度を酒税法に基づいてしいておりまして、このことが自由競争を阻んだ結果、今日のような価格が形成されたのではないか、こういうふうに思いますが、まず概括的な御意見を伺いたいと思います。
  50. 宗田勝博

    宗田説明員 酒類の販売業免許制度につきましては、高率かつ多額の酒税を安定的に確保するため、酒類流通におきまして大変重要な役割を負っております販売業者も免許制として流通秩序の維持を図るということで設けておるものでございますが、免許を受けました酒販店の販売活動は、商取引等に関するその他の法律等に触れない限り自由な競争にゆだねられております。
  51. 元信堯

    元信委員 国税庁としては免許を受けた販売業者をふやさないという方針は持っているのかどうか、その点と、それから今、販売は勝手であるというお話でしたけれども、聞くところによると、免許を与えるときに、安売りをしないという念書をとるところがあるやに聞いておりますけれども、そういう事実があるのかないのか、この点について承りたいと思います。
  52. 宗田勝博

    宗田説明員 免許につきましては、長官の公開の通達をもちまして基準を設けて、その基準にかなうものにつきましては毎年付与する、こういう形で適正な運用を図っているところでございます。また免許付与に際して、そのような条件を付すということはいたしておりません。
  53. 元信堯

    元信委員 特に免許の交付を抑制していないというお話でございましたけれども、例えば、これは酒の販売業者団体が出しております「酒販ニュース」ことしの二月二十一日号でございます。この中で、四国の団体の会合に高松国税局間税部長の向さんという人が御出席になりまして、免許については、四国全体でだと思いますが、通達基準でいけば一万一千ぐらい出さなければならぬ、だけれどもうちの方が抑えて年間二十店ぐらいしか出していないだろう、業者からは免許が多過ぎると言って常にこういう会合では苦情が寄せられるようでございますけれどもと、こういうことを言っておいでになるのですね。本当に抑制してませんか。
  54. 宗田勝博

    宗田説明員 実際の免許の運用に当たりましては、距離基準とか小売基準とか、そういうものに合致いたしている場合でも、それをしゃくし定規に画一的に免許した場合はまた別途いろいろ弊害がございますので、特に既存の酒類販売業者の経営実態でありますとか酒類の取引状況等検討いたしまして、新たに免許を与えるときには、酒類の需給の均衡を破り、ひいては酒税の確保に支障を来すおそれがある場合には免許をしないということにしておりまして、これが必ずしも恣意的に運用されておるということではございません。
  55. 元信堯

    元信委員 時間もなくなりましたから、これはまた時を改めてみっちりとやりたい、こういうふうに思います。  最後に一つだけ承っておきますが、国税庁が免許を、申請があっても出さなくてずっと遅延をしておった。あげくの果てに拒否の回答をしたところ訴訟になって、拒否を取り消せという判決があったやに聞きますが、事実でしょうか。
  56. 宗田勝博

    宗田説明員 第一審判決でそのような判決のあった例があったことは承知しております。
  57. 元信堯

    元信委員 終わります。
  58. 竹内猛

    竹内委員長 次に、中村正男君。
  59. 中村正男

    ○中村(正男)委員 七月に政府の方からいわゆる市場開放の行動計画なるものが発表されました。これをきっかけにいたしまして、政府にかわって企業が安全をチェックする自己認証制度というものが、これからさらに広がっていくというふうに思うわけですけれども、今この委員会はもとより各委員会でそのことをめぐりまして、とりわけ国民の生活の安全、それが果たして保障されていくのか大変危惧を抱いておるところでございます。したがって私はきょうは、そういう意味合いで食品衛生の問題を質問していきたいと思います。  とりわけ今輸入食品が非常にふえておるわけですが、さらにこうした貿易摩擦解消のための行動計画あるいは規制緩和等々が行われていきますと、一段と食品の輸入がふえると同時に、規制緩和による安全検査等々にいろいろな問題が出てくると思います。そういう立場と観点幾つか尋ねていきたいと思うのですが、今日現在、輸入食品の安全検査これは万全の処置がとられているのか、まずそのことについて厚生省の見解をお尋ねしたいと思います。
  60. 大澤進

    大澤説明員 輸入食品の監視体制の問題でございますが、これにつきましては全国十九カ所の海と空の港にある検疫所におきまして、現在六十七名の食品衛生監視員を配置いたしまして、食品が輸入される際に輸入届書こういうものを出していただきまして書類審査を行っており、さらにその中で必要なものにつきましてはいろいろな分析、検査等も行い、そこで食品衛生法違反するというものにつきましては廃棄するなり、あるいは積み戻し、こういう処分を行って、外国から我が国に入ってくる食品の水際作戦というものをとっておるところでございますが、今後とも一層その監視体制の充実が必要と考えております。  厚生省といたしましては、引き続き検査機器の整備あるいは食品衛生監視員の技術研修等に努めるほか、国内の輸入業者等を対象としまして、食品輸入の円滑化に資する事前の相談事業といいますか、そういうものも実施し、輸入食品等の安全対策の一層の充実に努めてまいりたい、こういうぐあいに考えております。
  61. 中村正男

    ○中村(正男)委員 輸入件数は昭和四十九年には二十万二千七件、それが昨年度五十九年度では三十六万四千二百二十七件、実に二倍近くふえておるわけでして、さらにこれから速度が速まってくると思うのですが、反面、安全のための検査、これが逆に低下をしておるわけです。五十六年には一一・三%、これをピークにいたしまして五十九年度では九・七%、三十六万四千二百二十七件のうちわずか三万五千件しか検査対象としてやられてない。しかも、従来行政検査が中心であったものが、五十六年で見てみますと二万八百八十七件、これが行政検査で行われておりましたが、五十九年度には一万六千七百六十二件、大幅に行政検査が低下をしておるわけです。そして自主検査なるものが大変急増しております。確かに、検査結果のデータを判断をするのはいわゆる食品衛生監視員であることは違いないわけですけれども、今検査は、安全については万全だ、食品輸入の安全性は万全だという厚生省の答えなんですけれども、事実この検査がこれだけ低下をしておれば、国民消費者輸入食品の安全性に大変大きな危惧を持つわけです。現に先ほど同僚議員が質問しましたけれども有毒ワインの問題が起こっておりますし、なぜこういうふうに検査が減ってきたのか、これについて質問したいと思います。決して輸入食品の安全性は万全ではない、それを保障する検査は減ってきておる現実についてどういう認識をしておられるのか、この辺をお尋ねしたいと思います。
  62. 大澤進

    大澤説明員 輸入食品の検査率の問題でございますが、先生指摘のように、輸入件数というのは年々ふえている、こういう状況にあって検査率は若干ずつ割合が低下しつつある、そういう状況にあるわけでございます。先ほども御説明いたしましたが、書類審査でふるいにかけ、必要なものは検査をする、こういうことで現在監視体制をとっているわけでございまして、その検査をすべきかどうかという判断でございますが、例えば輸送中に雨に当たったとか、あるいは水をかぶったとか、そういうことも時々あるわけでございますが、そういうもの、あるいはあらかじめ生産地あるいは輸出国の衛生状況、こういうことを勘案したり、さらには特定の食品につきましては、その食品が生産される地域、特定の地域でございますが、そういう地域においてはそういう有害物質が付着するといいますか、例えばカビの問題がありますが、そういうものは特定の地域においては比較的発生しやすい、そういう状況を、我々もこれまでの検査実態を踏まえて、特に問題のあるものについては一〇〇%検査していく。それで、これまでの長年の検査状況実態を踏まえて、非常に食品衛生上も問題がなく来ている品目、これについては特別の分析、検査までしない、そういう品目によってあるいはその背景によって重点的にあるいは効果的に検査をしていく、こういう体制をとっているわけでございます。  さらに、今日いろいろな貿易が盛んとなりまして、輸入の件数もふえ、輸入業者の数もふえておるわけでございますが、検査するのみならず、やはり事前に、先ほどもちょっと申し上げましたが、輸入業者等の事前の相談なり指導なり、そういう事業あるいはそういう仕事も港の監視員によって行われている、そういうことで、検査の方も割合的には年々比較すると若干落ちておりますが、総体的にそういう形で食品の監視体制を組んで今日やっているわけでございますが、いずれにしてもさらに一層充実していかなければならない、そういう必要性は感じておりまして、機器の整備あるいは人員増もあわせて図っているところでございます。
  63. 中村正男

    ○中村(正男)委員 書類審査で要検査かどうかという判断をしているということなんですが、現に有毒ワインの問題では明らかに有害と見られる添加物ジエチレングリコールというものをきちっと書類に書かずに輸入をしておるわけです。今の検査体制では、いわゆる書類審査の中で不備があれば検査をする、ここに偏っておるわけですから、明らかにこれでは業者がいろいろな手を使って検査の目を、Gメンの目をくぐろうと思えば幾らでもできるわけです。したがって、この書類審査に偏るというのではなしに、もっと機動的な抜き取り検査厚生省自身が主体性を持ってやるべきだということを私は強く指摘をしておきたいというふうに思います。  それから答弁がなかったのですが、行政検査が減って自主検査がふえている、これは明らかに行政検査能力が輸入の増加に追いつかない。六十七名しかGメンもおられないわけですし、私はこの辺にも行政のいわば責任放棄といいますか、業者任せの検査体制がどんどん広がっていることに大変心配をするわけです。  そこで自主検査の方法、これについて果たして今日現在、万全の体制で自主検査が行われておるのかということをお聞きをしたいのですが、輸入業者と検査機関、これは聞くところによりますと特定の検査機関に偏っている嫌いがあるのじゃないか。そういう問題と、それからサンプルを提出をするわけですけれども、このサンプルの摘出前の品物の管理と、そしてこのサンプルが果たしてきちっと提出をされて、万が一にもそれがすりかえられるというふうなおそれが全くないのか、その辺を、自主検査実態について行政として、厚生省として、自主検査機関に対してどのようなチェック体制をとっておられるのか、その辺をお聞きしたいと思います。
  64. 大澤進

    大澤説明員 食品の検査につきましては行政検査と、行政からの指導による食品を取り扱う輸入業者による自主的な検査と、こういうことで検査の体制を仕組んでいるわけでございますが、食品を取り扱う業者は安全な食品を提供しなければならないという義務といいますか、本来的にそこがスタートになるわけでございまして、自主検査も自主的な衛生管理の一環としてやっているわけでございます。  その検査機関につきましては、いわゆる民間の機関というものではなくて、厚生大臣が一定の要件を満たした検査機関を指定しておりまして、その検査機関において検査をする、そういう指導をしているわけでございまして、このような自主検査というのは、検査に必要な項目等も、その自主検査を指示する際には項目なり内容というものをきちんと行えるよう業者を指導しているところでございますが、さらにその検査機関に対しましても、検査業務状況といいますか、そういうものも報告を行わせ、または問題がある場合には、随時立入検査も行う、こういう仕組みで検査体制を整えているわけでございまして、我々としては、この自主検査というものは先生指摘のようにきちんと適正、厳正に行わなければいかぬということは当然でございまして、不断にそういう指導もしております。  御指摘の、例えばサンプルのすりかえ等があるのかないのかという不安もあるわけでございますが、それらにつきましても、これまで港においてそういうすりかえをしたとか、あるいはあったというような状況報告というのはまだ受けてないわけでございますが、そういうことがあってはならないわけでございまして、我々としては厳に業者の指導なり、あるいは検査機関の厳正な検査を行うような指導にさらに努めてまいりたい、こういうふうに考えております。
  65. 中村正男

    ○中村(正男)委員 今の方法では、これはもう明らかにサンプルのすりかえというのは起こり得るわけです。当然、サンプルを摘出した後は封印をきちっとするとか、あるいは第三者機関にサンプルの摘出を委託をするとか、消費者が安心して、自主検査機関を信頼できるような改革といいますか、そういうことを早急にやっていただきたいということを強く要望しておきたいと思います。  さらに、特定の自主検査機関に偏っているということについても、厚生省としては調査をしてクロス検査をやる、一つのサンプルを複数の検査機関に検査をさせてみるとか、そういうこともぜひひとつ検討してもらいたい。  今お聞きしますと、場合によっては立入調査もやるということなんですが、今までそういう立入調査をやられた検査機関は何件ぐらいあるのですか。具体的にお聞きをしたいと思います。
  66. 大澤進

    大澤説明員 御説明いたします。  前段の件でございますが、いわゆる検査が特定の機関に偏る、あるいは特定の機関で行われて、それが信頼できるかどうか、こういう問題があるわけでございますが、これにつきましては指定検査機関の協議会というものをつくっておりまして、そこにおいて、いわゆる精度管理ということで、特定の検査物質を各機関に送付して検査させて、それが正確に検査されておるかどうかをチェックする、こういうことを自主的に、我々の指導で今日やらしているところでございます。  なお、立入検査を何件、どういうぐあいにやっているかということでございますが、今手元にその資料を持ち合わせてございませんので、後刻調べまして御報告いたしたいと思います。
  67. 中村正男

    ○中村(正男)委員 ぜひ資料を要求したいのですが、恐らく立入調査を今までやられていないんじゃないか。やった事実はあるのですか、それだけお答え願いたいと思います。
  68. 大澤進

    大澤説明員 具体的な施設等は今手元に資料がないのでお答えできませんが、過去にやっているということでございます。
  69. 中村正男

    ○中村(正男)委員 どうもあいまいな答弁なので、これはぜひひとつ、自主機関のきちっとした所在、それから何年何月に立入調査をしたというふうな資料を出していただきたいということを要望しておきます。  それから、食品衛生監視員、これは六十七名ということなんですが、五十七年以降わずか一名しか増員されてないわけですね。これからさらに輸入食品が急増していくわけでして、もっともっと検査体制を強化していかなければいかぬと思うのです。一方、これは農林省なんですけれども、輸入農産物の害虫を検査するいわゆる植物検疫官、これが六百二十名おられるわけですね。これと比較すると余りにも輸入食品の衛生監視員というのは少な過ぎるんじゃないか。まず、これで十分な体制なのかどうか、お聞きをしたいと思います。
  70. 大澤進

    大澤説明員 先ほども御説明いたしましたが、輸入食品の監視体制につきましては、港において水際作戦ということで各種の方法によって監視なりチェックなりしているわけでございますが、食品というのは国民の健康に直接関連するものでございますので、おっしゃるとおりにさらに一層充実に努めていかなければならぬ、こういうぐあいに考えております。
  71. 中村正男

    ○中村(正男)委員 これはお答えになってないのですが、明らかに厚生省としても、現状のこの体制では不備だ、人員不足を実感として持っておられると私は思うのですね。ただ、今すべて行革という中で大きな声を出して増員要求できないのですが、きょうは金子長官は後ほどお見えになるけれども、そんなことでは困るのですね。検査率が下がってきているというのは要は要員不足、体制不備、したがって必然的にもう検査数をふやせない。実際、もっと検査数をふやしてきちっとしたいというのが厚生省考え方だと私は思うのですね。だから、厚生省にこれ以上この問題を言っても仕方がないので、ぜひひとつ来年度予算では思い切って増員要求を厚生省としてはやってもらいたい。我々もこれは応援したい。単に行動計画、アクションプログラムでどんどん安全性が脅かされる中で、こういう人員要求まで削られるようでは絶対国民としては納得できないと私は思うのですね。厚生省の強い働きかけといいますか、要望をしておきたいと思います。  検疫所は十九カ所。これは多いと思われるのか少ないと思われるのか、これで十分なのか、その辺どうですか。
  72. 大澤進

    大澤説明員 輸入食品を取り扱っている検疫所は今、十九の海空港でございますが、これまで長い単位で見ますと箇所数はふやしてきているところでございます。これはどういうことで箇所数がふえていくかと申しますと、輸入食品の件数なり量が特定の地域においてふえてくると、その地において食品の輸入届が直接できるような仕組み、すなわち検疫所に食品監視体制をとってくれ、こういう要望も上がってくるわけでございまして、数が少ないものについては、そこに直ちに事務所を置くという状況には至らぬわけでございますが、相当数ふえてくると事務所の開設と、もちろん人の増員要求もいたしましてふやしてきている、こういう状況でございまして、現在のところ十九港で一応全国の食品の輸入についての届けは対応できていると思います。なお、来年度以降になると思いますが、成田の空港において輸入件数がふえている、そういうことで、その特定の空港においては体制の整備、増員の要求というものを今考えておるところでございます。
  73. 中村正男

    ○中村(正男)委員 これは新聞報道で見た限りですから、正確でなければ誤りを指摘していただきたいと思うのですが、輸入食品の保税地域、いわゆる検疫所の実態というのが大変不衛生で、しかも検疫所が少ないという関係もあって輸入食品の滞貨といいますか、輸入業者は倉庫代を始末するために検疫所にそのまま放置しているというふうな実態が報道されました。中には、プラスチック容器入りのらっきょうが、ふたがとれて散乱しておる、表面にはウジ虫がわいている、これは食品廃棄センターならわかるのですけれども、検疫所がこんな実態だということを私は新聞報道で知ったのですが、こんな事実はあるのですか。
  74. 大澤進

    大澤説明員 私どもも、食品の衛生状態の確保ということについては常に監視員あるいは検疫所において万全を期すように指導しているところでございますが、一部の食品につきまして保税倉庫内に野積みされている、こういう状況が最近報道されたわけでございます。私ども直接現地も見に行ってまいったわけでございますが、一部のものについて腐敗しているというものも、実はそれにつきましては廃棄するものを業者がまだ取りに来ていないという状況でそこに放置されておった、こういうものがありました。ただ、その他のものにつきましても、我々としては食品を長い期間、屋外で雨ざらしにしておくのは好ましくないというようなことで、そういうことのないように検疫所において関係業者の指導をきちんとするようにということを各検疫所に指導したところでございます。
  75. 中村正男

    ○中村(正男)委員 今委員長もお聞きになったように、厚生省自身が、検疫所における食品の管理体制は極めて憂慮すべき実態であるということでございます。この委員会で検疫所の実態調査、特別調査と、さらに自主検査機関の立入調査をぜひひとつ御検討をお願いしたいと思うのです。
  76. 竹内猛

    竹内委員長 ただいまの中村委員の御要望については、理事会にお諮りして処理していきたいと思います。
  77. 中村正男

    ○中村(正男)委員 ありがとうございました。  次に、輸入食品の表示の問題でございます。  笑い話じゃないのですけれども、先般スーパーマーケットで缶詰を買って帰ったら一よくよく見ればキャットフードを持って帰ってしまった、こういうこともあるのです。最近はデパートとかそういうところでは輸入食品コーナーという形でかなり整理されて、そんな間違いはそう起こってないと思うのですが、それにしても外見上、中身がどんなものが入っているのか、どういう食品なのかというのがわかりにくい。もちろん、それはちゃんと缶詰に英文の印刷はしてありますし、和文の品物についてのラベルも張ってあります。私ずっと見てきたのですが、一応大きなデパートとかそういったところではまずまず余り問題は感じないと思うのですが、市中のスーパーとか小売店、そういうところでは一般の食品と混在して陳列されている。中にはキャットフードが普通の缶詰類の棚の中に入っているというふうなことも指摘されています。特に消費者が知りたいのは、もっと詳細にわかりやすく、日本の食生活と向こうとは違うわけですから、同じ缶詰といったって、ボイルしたものから漬けたものから生のものから千差万別なんですね。しかし、そういうことについては極めて不親切で、効能書きばかりラベルに書いてあるわけです。原材料は何か、あるいは添加物はどういうものが使われておるのか、製造年月日、また品質保証期間、最低限これだけのものは私はちゃんと和文のラベルに記載をされておらなければならぬと思うのですが、厚生省、そういう実態をどういうふうに認識していますか。
  78. 大澤進

    大澤説明員 食品の表示につきましては、御承知かと思いますが食品衛生法あるいはその施行規則等で、食品衛生法上はどういう項目について表示しなければならないのかということを規定しております。今先生がおっしゃったような名称あるいは製造年月日とか製造場所、製造所の住所ですね、さらには添加物はどういうものが入っているか、そういうことを表示するよう規定しておりまして、本来食品にはそういう表示をしなければならないわけでございます。さらに、輸入食品につきましては邦文、日本語できちんと記載するように、こういう規定になっておりまして、我々はこの表示制度がきちんと守られるように今後とも十分指導してまいりたいと思いますが、我が国と異なる取引制度とか商習慣等にかんがみて、外国のものについては、混乱がないように輸入の届け出のときに、この表示については輸入業者に特にひな形を出させまして、それで適当かどうかを検疫所においてチェックしまして、適当であるというものについて届け出を受理する、こういう指導をしているところでございます。
  79. 中村正男

    ○中村(正男)委員 指導は十分なされておらぬのですよ。今おっしゃった答えそのままいきますと、使われている添加物、製造年月日がきちっと記載されてなければならぬ、どこで製造されたかという製造箇所も記載をされてなければだめだ。これは何の缶詰だと思いますか。「品名 タートルスープ」となっていて缶の表にはカメの図柄が書いてある。カメのえさかと思ったのですが、そうじゃなしにカメのスープなんですね。これなんかも年寄りが見るとカメのスープとは思わないのですね、逆にカメのえさだと。しかもこれには「使用原材料 ウミガメの肉、シェリー酒、ゼラチン、野菜たん白、塩、スパイス」、こうなって、使用されている添加物は全然書いてないのです。これは後で見てもらったらいいと思うのですが製造年月日は底に略語を記載してある。缶詰は製造年月日は底に書いていますね。缶詰でないものは製造年月日がないのです。もう一つ、これもどんな食品がわかりますか。これはハチの巣の食品なんです。これは極めて中身がわかりにくい。これも品名と原産国輸入者、それからこれはどんな味がしているかといういわば宣伝文句だけですよね。輸入年月日はありますよ、輸入年月日は。製造年月日はないのですよ。これは缶詰じゃないから、どこにも刻印を打ってない。もちろん使われている添加物は全然書いてない。これは第二のワイン事件になるおそれがあるのですよ。ワインもそうでしょう。オーストリア産のワインも添加物が書いてないために検査をしなかった。そうして毒性のそういったものが見つかった。みんな非常に危険なんですよ。どうなんですか、これは。
  80. 大澤進

    大澤説明員 先ほど若干説明不足のところがありまして申しわけないと思うのですが、輸入品につきましては、製造年月日がはっきりできない場合は輸入年月日というものを記載するようにさしているわけでございます。それから添加物につきましては、すべてではございませんで、特定のものについて表示するよう、こういうことになっております。  いずれにしましても、そういうことが徹底してないものが出回っておるとすれば、やはり我々としてもきちんと法律、規則に基づいて記載するよう指導の徹底はしてまいりたいと思います。  なお、ジエチレングリコールの場合でございますが、あれはもともと食品に使われる、使ってもいい添加物ではございませんで、いわば故意に入れたものでございまして、いわば犯罪的な事件といいますか、そういうものでございまして、一般には食品には使うべきものでもない、我々も予想もしなかったものでございまして、したがって、申し上げたような食品を取り扱う業者というのは、食品衛生法に基づいてきちんとそれを守るというのが、本来第一義的に食品を取り扱う業者に要求されるわけでございまして、それをきちんと守っているかどうかは、法律に基づいて今後とも監視なり指導を厳しくしてまいりたいと思います。
  81. 中村正男

    ○中村(正男)委員 まさにそのとおりなんですよね。あのワインは添加物を隠して、これはそんなもの書けば絶対輸入を認めてもらえないわけだから、隠して日本に輸出していたわけでしょう。日本輸入していたわけでしょう。これもそのとおりなんですよね。これは確かに毒性の添加物が入っているかどうかわかりません、検査をしなければわからぬわけですよ。輸入業者は、仮に日本では使用禁止されている添加物が使われているとしたら、それは当然そんなもの書いて輸入しないですよ。だから私は冒頭、検査数の問題、検査体制の問題と、そして今申し上げたラベル表示、本当に消費者にとっては極めて危険な、安心できない今の輸入食品の管理基準といいますか、あるいは管理状況じゃないのかということを強く指摘をしておきたいというふうに思うのです。  だから厚生省は、さっきの毒入りワインの問題も、それは何も添加物が書いてなかったから、あたかも責任ないような答弁を繰り返しているわけですよ。添加物の記載がないことが、逆に言えば、厚生省がきちっと検査をして、そのことを摘出して国民に安心させるのが厚生省じゃないですか。書いてないから、これは厚生省は責任ない、こんなことでは国民は安心できないのですね。どうですか。
  82. 内山寿紀

    ○内山説明員 先生今の御指摘の点につきましては、ジエチレングリコールでございますけれども、これは食品添加物としては世界でどこでも認めていないものでございます。だからあれは有害物質ということになっております。  それから添加物の表示でございますけれども、これにつきましては、現在はある種の着色料とか保存料とか、そういうような特定のものについての義務づけをしているわけでございますけれども、これにつきましては添加物の表示改善ということで今検討会を設けて検討しておりまして、もうしばらく時間をいただければ、ある程度の改善報告できるかと思います。
  83. 中村正男

    ○中村(正男)委員 私はそんなことは百も承知で申し上げているのですよ。要は、厚生省は書類審査を軸に置いた、書類審査に偏ったいわゆる輸入食品の検査、これで事足れりと思っている。したがって、全数検査なんかする必要はない。というのでしょうが、しかし、現実にこういう毒入りワインが入ってきているわけですから、すべての食品に疑惑を持って、その安全性につきまして厚生省は懸念を持って、そして書類審査だけではなしに、品物自身を全数検査するぐらいの体制をつくってもらわないことには安心できないのですよ。だから、今日までの検査体制について抜本的な改善を、厚生省の前向きな、主体性を持った検査をぜひひとつやるように、私は強く指摘をしておきたいと思います。  時間がございませんので、それに関連して食品添加物の問題について申し上げたいと思います。  今問題の毒性のある添加物、世界でも認めてない、そのとおりだと思うのですが、そういう人体に極めて大きな影響を及ぼす、しかもそれは今日現在の影響ではなしに、いわゆる子々孫々、私どもの子供、孫、そういうところにまで大変大きな影響を残していく、そういう危惧のある添加物というものが過去この委員会でもしばしば指摘がされております。  今日、厚生省は三百四十七品目指定をされておるわけですが、この歴史をたどってみますと、昭和三十年代、二百七十品目一挙にふえている。約八割ですね。当時はいわゆる高度成長時代、物のはんらんが急速に高まった時代であるわけです。大量消費、大量生産、それに向けてやはり添加物の許容範囲を広げた。これは後世に大変大きな問題を残した添加物の一挙の増大だったと思うのですが、その後、さすがにこのことに対する消費者の目というものが厳しくなりまして、五十八年に十一品目がこれも一気にふやされまして、そのときも大きく国民消費者の間からこのことに対する疑惑と懸念が沸き起こったわけでございます。食品添加物というものについてはそういう経過があるわけですね。これは厚生省、お認めになりますか。
  84. 内山寿紀

    ○内山説明員 食品添加物の指定の経過につきましては、先生の言われましたような数での推移でございます。
  85. 中村正男

    ○中村(正男)委員 さらにそういった社会的な指摘といいますか、そういうことについての見解はなかったわけですが、そういう経過の中で、今回この行動計画というものの中での食品輸入拡大のために、添加物が大幅にその許容範囲を広げていくという考え方が出されております。  一方、添加物に係る食品衛生法違反というものも大変急増しておるわけですね。五十九年度で見てみますと、食品衛生法違反全体が四百六十四件ある中で、七条違反というのが百七十件、三六・六%も出ておるわけですが、六条違反は六十六件、これは使ってはならない添加物が使われた違反件数でありますが、一四・二%、合わせますと、これはちょうど食品衛生法違反の半分になるわけですね。この事実はどうですか。
  86. 大澤進

    大澤説明員 先生指摘のとおりでございます。
  87. 中村正男

    ○中村(正男)委員 そっけない答弁なんで、そのとおりなんですということですが、これだけ現実に食品衛生法違反ということで、国民の健康を阻害する、そういう事件が起こっておるわけですね。  一方今度は、日本では認められないそういう添加物まで大幅に範囲を広げようとする、そのことで果たして国民の安全性が保たれるのですか。そういう検討というのですか、輸入を拡大するために一方的にそういうことを決めてくる。厚生省国民の命を守る、健康を守るという立場で、どういう見解なんですか。
  88. 内山寿紀

    ○内山説明員 今後の食品添加物の指定に当たりましては、FAO、WHOの合同食品添加物専門家委員会というのがございまして、JECFAと申しておりますけれども、そこでA(1)という形で評価されて、なおかつ世界的に広く使われているものを、私どもの方としては、各国の要請がございましたら、個々に科学的な検討をいたしまして、有用性、安全性が認められたものについて認めていくということで考えております。
  89. 中村正男

    ○中村(正男)委員 その検討の結果はまだ出ていないのですか。我が国として認められる添加物のいわゆる具体的な品名ですね、それはどうですか。
  90. 内山寿紀

    ○内山説明員 お答えいたします。  今、先生の言われました質問につきましては、食品添加物の指定要請がなされた場合には、先ほどのアクションプログラムの方針に従いまして、各国の衛生当局と十分協議を行いつつ、個別に有用性、安全性について科学的検討を行っていくということでございます。  現在の状況でございますけれども、この十一月に、日本とEC委員会との専門家会議、それから日米の食品化学パネルというものを開きまして意見の交換を行ったわけでございますけれども、具体的な品目についての指定要請というのは、現在のところはまだ出てきておりません。そういう状況でございます。
  91. 中村正男

    ○中村(正男)委員 そういった検討過程の中で、我が国の食品衛生法に基づいて今日まで決められてきた添加物の範囲、その安全性、そういう意味合いで日本の国としての検討はどうなんですか。
  92. 内山寿紀

    ○内山説明員 先生の御質問は、どのような方針で食品添加物を検討するかというように解してお答えさせていただきます。  私どもの検討しておりますものにつきましては、食品衛生調査会の添加物に対する考え方につきましては、昭和五十八年四月に食品衛生調査会添加物・毒性部会におきまして「食品添加物の指定における当面の対応について」という意見報告をいただいております。その概要について申し上げますと、食品添加物の今後の指定に当たりましては、先ほど申し上げましたように、原則としまして、FAO、WHOの合同食品添加物専門家委員会においてA(1)にランクされ、かつ世界各国において広く使用されているものを対象として、一つ一つにつきましてその安全性、有用性について慎重に検討を行うということになってございます。  以上でございます。
  93. 中村正男

    ○中村(正男)委員 それでは、検討の対象になっている添加物の一覧というものの資料は、これは出していただけますか。
  94. 内山寿紀

    ○内山説明員 先ほど申し上げましたように、まだ個別にアメリカとかEC委員会の方から指定要請が来ておりません。それから、国内からも指定要請というのは具体的なものがまだございませんものですから、そういう個別の品目についての検討というのはまだ始まっていないわけでございます。
  95. 中村正男

    ○中村(正男)委員 しかし国民にとっては大変心配なわけでして、決まってからではなしに、できるだけ早い時期に、検討の対象となるそういう添加物の一覧というものを、ぜひひとつ資料として出していただきたい。これは要求をしておきたいと思います。  そこで、そういった添加物を決める食品衛生調査会、このことについてお尋ねをしたいと思うのです。  まず、行動計画、アクションプログラムでは、各審議機関あるいは審議会に、審議の透明性、これは諸外国から見た場合でしょうが、透明性を確保するために、外国人の参加あるいは外国での各データの採用を広めていく、こういうことが出されておるのですが、食品衛生にかかわるところでは、このことについてはどういう状況になっているのですか。
  96. 大澤進

    大澤説明員 食品衛生関係につきましてもアクションプログラムで、審議会等で規格、基準の制定等の過程において外国関係者の意見を聞く機会を設けることとされておりますので、食品衛生調査会においても外国関係者の参加を認める、こういうことにしております。
  97. 中村正男

    ○中村(正男)委員 今日、国際化の時代ですから、そのことの基本的な是非はともかくといたしまして、それでは食品衛生調査会のメンバー、今これは四十名で二年任期というふうに聞いておるのですが、どういう形で選出されているのですか。
  98. 大澤進

    大澤説明員 食品衛生調査会につきましては食品衛生法二十五条に規定しておりまして、これに基づき、食中毒の防止、食品添加物公定書の作成等食品衛生に関する重要な事項について調査審議するために設置されておるわけでございます。  このメンバーの選出でございますが、調査会の委員は、学識経験のある者の中から厚生大臣が任命する、こういうことになっておりまして、生活の多様化に伴う食品に係る科学技術の著しい進歩により、食品衛生に関する高度の科学的、専門的知見が要求されている、こういう状況でございまして、調査会の高度の中立性確保という要請をも踏まえ、これらの要件に合致するかどうかを判断した上で厚生大臣が任命する、こういうこととしております。
  99. 中村正男

    ○中村(正男)委員 そうしますと、ここへ外国人の方が入ってくるということになるわけですか。それはどういう選考基準でもって決めていくのですか。
  100. 大澤進

    大澤説明員 このアクションプログラムに基づきまして外国人の参加を認めていくわけでございますが、この調査会のもとに特別セクションといいますか分科会というものがあるわけでございますが、その中に、外国関係の人につきまして、やはり学識経験を有するという人たちについて、希望する場合には参加していただく、こういうことで、この措置によりまして、諸外国との科学的、専門的な意見の情報の交換がさらに進むと我々は期待しておるわけでございます。
  101. 中村正男

    ○中村(正男)委員 この食品衛生調査会には、食品規格部会、食中毒部会、乳肉水産食品部会、毒性部会、添加物部会、残留農薬部会、器具・容器包装部会、こういった部会があるわけですね。そこへ何らかの形で外国人の参加が突然始まってくるわけですね。今まで歴史的に、いわば国内の有識者だけで、余りメンバーはかわっていないようですけれども、この調査会が構成されてきた。そこへ突然、生活風土も違う、もちろん食生活も全く違う、そういう外国の方が入ってくる、何か違和感を感じるわけですよ。しかも先ほどから一般国民の皆さんの代表、いわゆる消費生活に携わっている方々の代表が入っているなんという話は全くないわけです。それよりも先に外国人の参加、これで国民は納得できますかね。むしろ、外国の方に透明性を確認してもらうために外国人の参加がなされるのであれば、もっとそれ以前に、国民が今の食品衛生についてもっと開かれた形で論議に参加できる、あるいはその調査結果を知ることができる、このことが先決じゃないですか。しかも学識経験者とおっしゃいますけれども、最近は消費者団体でも十分そうしたスタッフを持って、食品衛生について考察を深めておられる方がたくさんいるわけです。にもかかわらず、従来そういうことが全くなされてない。このことについてどうですか。
  102. 大澤進

    大澤説明員 食品衛生調査会は、先ほどおっしゃいました部会のもとに分科会を設けることができるわけでございますが、そこに外国の学識経験を有する者が参加していく道を開く、こういうことでございます。食品の輸入、輸出、今日世界的に交流が非常に盛んになっているというようなこともこれあり、食品衛生調査会において、これらに関する規格、基準の検討とか重要事項を検討されるわけでございますが、その際に諸外国の状況というものも直接そういう場で情報を得ようということから参加を認めていく、こういう考えでございます。それによって、一層国際的にも規格、基準の整合性といいますか、そういうものをとらえていくことが期待できるわけでございます。  なお先生消費者につきましてもそういう場に参加すべきじゃないか、こういう御指摘でもございますが、これにつきましては御承知かと思いますが、従来から食品衛生調査会の中に学識経験を有する消費者の代表が既に任命され、参加され、活躍されているわけでございます。
  103. 中村正男

    ○中村(正男)委員 私はきょうはリストを持っておりませんが、我々の理解する消費者代表というのは入ってない、こういう認識に立っております。したがって、ぜひひとつそのメンバーの一覧表を提出いただきたい。  時間が参りました。長官が御出席いただきましたので、最後に、いわゆる市場開放のアクションプログラム、このことと安全性の問題について見解をお尋ねして、終わりたいと思います。  とりわけ今度のこの行動計画では、政府にかわって企業が安全をチェックする自己認証制度を広げていこう、こういう考え方が出ておるわけですが、官から民へということでございます。しかし、行政の保証のない品物がこれから出てくるわけですね。そういう中で、企業の自己認証ということに対して大変責任が重くなる。言いかえますと、企業が一体どんな基準値であるいはどんな安全基準で自己認証をしたのか、その情報を国民は知る権利があると私は思うのですね。そのことに対して、消費者保護の立場にある長官としてどういうお考えなのか、お聞きをしたい。  それから二つ目は、それに関連して、今、大変消費者被害というのがいろいろな形で出てきております。豊田商事のようなああいう詐欺的な被害、あるいはワインによる、食品による被害等々、消費者被害というのが大変複雑になってきているし、大きく発生をしておるわけですが、こういうときの罰則だとか企業の無過失責任といったものをより厳しくしていかなければならぬと思うのですね。当然被害者に対する救済制度も新たに確立をしなければならぬと思うのです。そういう意味合いで、新しい法律の制定だとか、かつて長官御発言なさっておられますが、改めて、その決意をお聞きして終わりたいと思います。
  104. 金子一平

    金子国務大臣 第一段の問題につきましては、先ほども厚生省側からいろいろと御説明がございましたけれども、国民の、消費者の生命、健康に影響を及ぼすようなものにつきましては自己認証制度は極力避けることにいたしまして、やはり国としての行政の関与が必要であると思います。しかし全部が全部国で責任を持ってチェックするわけにもまいりませんから、そういう意味におきまして自己認証の制度を取り入れたわけでございますけれども、その場合におきましても、各国の専門家同士の情報交換によりまして、今お話しございましたような食品添加物なら食品添加物についての指定をどうするのか、表示をどうするのか、そこら辺のことは今後も進めることによって消費者に安心して使ってもらえるようなことに、さらに一層努めなければならないと考えておる次第でございます。やはり国としては消費者の生命、健康につきましては全力を挙げて努力しなければいかぬ。  ただ、企業責任の問題でございますが、やはりこれから企業責任が相当重くなってくると思います。こういったものに対する物の考え方をどう持っていくのか。かつてカネミのような問題が出ておりましたけれども、やはりこれはもう一度私どもとしても考え直して、これだけ自己認証の制度を手広く採用するようなことになりますると企業の一段と重い責任というものを追及せざるを得ない。どういう対応策を探るかということはこれからの問題と考えております。  また豊田商事その他一連の問題、特に先般のオーストリアワインのような問題は全くの詐欺でございますから、正直言ってなかなか向こうもチェックできなかったのだろうと思いますし、こっちも厚生省も全力挙げて努力しても、なかなかこれらのチェックが難しいと思いのでございます。豊田商事まがいの問題につきましては、関係省庁と十分緊密な連絡をとって、これからも必要な手を講じてまいりたいと思っていますが、今そういった問題がさらに国際的に広く取り上げられなければいかぬ環境にあると思っておりますので、せっかく私どもも全力を尽くして消費者の安全を守りたい、かように考えておる次第でございます。
  105. 中村正男

    ○中村(正男)委員 終わります。
  106. 竹内猛

    竹内委員長 次に、松浦利尚君。
  107. 松浦利尚

    松浦委員 私は温暖な南九州に住んでおるわけですが、その人間が東北の緊急的な課題について質問をしなければなりませんので、一番最初にそのことに触れさせていただきたいと思います。実はもう新聞で報道されておりますから御案内のとおりだと思うのですが、エネ庁にお尋ねをしておきます。  今年度の灯油については需要を満たすだけのものが備蓄されておるのでしょう。
  108. 鳥居原正敏

    ○鳥居原説明員 灯油につきましては、我々も国民生活上非常に重要な物資と考えておりまして、今年度も御承知のように九月末で六百七十万キロリットルの在庫を保有するように業者の方へ指導いたしております。
  109. 松浦利尚

    松浦委員 私だけ質問時間が午前と午後に区切られておりますから、電気機器関係については午後の質問に譲らせていただきますので、どうぞ関係者の方はおられたらお帰りいただきたいと思います。午後からさせていただきます。ですからよく勉強しておいてください。  それで、岩手県の盛岡市からもう既に公正取引委員会、通産省等にも要請書等が出されておると思うのですが、実はメーカー名を申し上げますと、三菱石油、大協石油、昭和シェル石油、この元売石油各社と特約をいたしております三田商店、この三田商店は市民生協に供給しておるところですが、それから協和商事、これは大協の特約店ですが県民生協、それから中川石油、これは昭和シェルですが学校生協、それぞれと契約をしてきたわけですが、最近、末端の生協が一リットル当たり六十五円への引き上げに同意しなければ、それぞれの元売各社が石油特約店に灯油を流さない、そして六十五円に引き上げの話で同意ができなければ十一月十八日をもって特約店に石油を流すことは打ち切る、こういう通告を受けたのです。  そこでエネ庁にお尋ねしておきますが、事後調整の禁止あるいはSSマークがえの禁止などという行政通達をやっておられますね。中身についていろいろ意見がありますけれども、きょうはそのことが目的でありませんから触れませんが、これは灯油にも及ぶのですか。
  110. 鳥居原正敏

    ○鳥居原説明員 事後調整あるいはマークがえの件のことにつきましては、これはガソリンスタンドにおけるガソリン販売に関する件でございまして、先生指摘の灯油の問題につきましては直接関連する問題ではないかと思います。
  111. 松浦利尚

    松浦委員 公取にちょっとお尋ねをするのですが、今のお話をお聞きになりまして、元売が特約店に石油を流し、そして特約店が生協と契約を結んでおりますね。その場合に元売が特約店に対して、生協に対し販売する場合、六十五円への値上げに生協側が同意をしない場合には特約店に対して元売各社が石油を流さない。しかも三社が同時に十一月十八日付でやっておるわけですね。これは明らかに共同行為、あるいは価格も一緒で六十五円に引き上げを要求しておるわけですから再販問題に抵触をする。ですから、これからいろいろ調査なさるでしょうから、今ここで、このこと自体の案件としての限定的な質問はできないと思うのですが、一般論として通常、卸、小売、消費者、こうあった場合に、小売に対して元売が、これだけの価格で売らなければおまえのところには品物を流さないよというのは、しかも、それが数社にわたっておるときは共同行為であり、再販に抵触するというふうに理解していいと思うのですが、どうですか。
  112. 樋口嘉重

    ○樋口政府委員 お答えいたします。  先生もおっしゃいましたように、個々の行為につきまして、それが独占禁止法に違反するかどうかにつきましては、その実態等よく把握してからでなくてはちょっとお答えしにくいわけでございますが、今先生おっしゃるように一般論としてどうかということでございますので、一般論としてお答えさせていただきます。  個々のメーカーがその取引先の特約店に対して、その販売価格を幾ら幾らにしなければいけないというようなことになりますと、これは独占禁止法の不公正な取引方法で言う再販売価格の拘束に該当するおそれがあると言えると思います。また、数社が同じようなことを話し合いをしてやっているということになりますと、これは状況いかんによりますけれども、不当な取引制限、独占禁止法の三条に該当するおそれがある。これは一般論として言えると思いますが、個々具体的なケースにつきましては、また実態をよく把握しないと何とも申し上げられないところでございます。
  113. 松浦利尚

    松浦委員 一般論としてお尋ねいたしました。  それではエネ庁にお尋ねいたしますが、各生協は備蓄がきょうまでしかないのです。あしたからもう売るものがないのですよ。ですから、いろいろこれから調査が始まると思うのですが、いずれにいたしましても、またかという感じですよね。私はこんなことをされたのでは通産行政のひずみということになると思うのです。あしたから寒くなっていよいよたかなければ——今まで暖冬だったからいいですけれども、これが急激に気温が下がって東北のようなところでさあ灯油をたこうといったときには流してもらえない。これは人間の生命にかかわる問題だと思うのです。私は通産行政はこういうことを指導してはおらぬと思うから、やはり消費者の立場を考えて年間の備蓄をしたのだし、そういうふうに業者も指導しておるのですから、この際価格交渉が話がつかぬなら価格交渉を継続をさせる、これが値下げしてというのは難しいですけれども、現在千百二十五円で売られておるのです、それを十八リットル千三百五十円にしようと元売の方はこういって主張しておるわけです。ですから価格交渉はこれから継続させて、品物を流してやったらどうですか、灯油は。そういう指導をしてあげてくださいよ。それが通産省の温かい行政じゃないですか。どうぞひとつ答えてください。
  114. 鳥居原正敏

    ○鳥居原説明員 灯油の価格交渉あるいは販売につきましては、御承知のように需要家と供給者の間での取引、いわば市場メカニズムといいますか、それで行われるのが原則であるというふうに我々は認識しておりまして、今回のような事態はその取引の過程で出た事態だろうというふうに思っております。  我々もこういう事態の情報を現地からいろいろ聞いておりますが、いずれにしましても両者に誠意ある態度で交渉を続けてくれということは指導いたしておりますし、松浦議員のおっしゃるように量をとにかく保証するようにということにつきましては、この灯油というものが、先ほど申し上げましたように国民生活に非常に重要な物資であるという認識がございますので、重大なる影響が起こるというような事態になりましたら、さらに我々といたしましても、通産省としてどういうことを考えるべきかを検討いたしたいと思っております。
  115. 松浦利尚

    松浦委員 もう重大な事態になっておるわけです、二十一日しか在庫がないというのですから。  ですから今度は長官、お願いしたいのですが、岩手県が十一月十八日、宮城県が十一月十八日、山形県が十一月十九日、福島県が十一月二十日、青森県が十一月二十日、きょうですね。それぞれもう打ち切る、値上げに応じなければ石油特約店にはもう物を流さない、そういうことで生協側に通告しておるのです。ですからもう緊急事態ですよ。そういう意味で長官、これはやはり脅迫ですよね、これから寒くなるということを背景にして消費者に売らぬというわけですから、おれの言った値段で買わなければ売らぬというのですから。しかも、話はついておるわけでしょう。長官がお答えになった後もう一遍、そういう事態だという認識を持っておられるかどうかエネ庁の方でもお答えいただきたいと思いますが、長官、ぜひひとつ早急に善処していただきたいと思います。
  116. 金子一平

    金子国務大臣 東北の状況につきましては先ほど新聞で承知した次第でございますが、冬場を迎えて大変切迫した状況になっております。しかも、これは消費者としては非常な問題でございますので、通産省の立場から言えばこれは自由商品だから介入の余地はないのだ、こうおっしゃりたいのだろうと思うのですけれども、やはり私は、政府の立場として消費者保護を徹底するために、ぜひこういう際は必要な行政指導なり要請をやって、話をつけさせるように持っていくことが大事だと思っております。先般来、札幌でいろいろトラブルがありましたけれども、これは十一月二十日に円満に妥結したと聞いておりますが、ぜひそういう方向へ通産省とも連絡しながら持っていきたいというふうに考えておることを申し上げておきます。
  117. 鳥居原正敏

    ○鳥居原説明員 先ほど来申し上げましたように、両当事者間で誠意を持って早く交渉を妥結するように我々といたしましても指導いたしてまいりたいと思います。(松浦委員「長官の言われたことでいいのでしょう、通産も」と呼ぶ)そういうことでございます。
  118. 松浦利尚

    松浦委員 事態はもう切迫しておりますので、長官が言われたことで、ぜひあしたから途絶えることのないように善処していただきたいというふうに長官にもエネ庁にもお願いしておきます。エネ庁、いいですね。——うなずいたから結構です。そういうことで、この関係は終わらせていただきます。  あと午前中の時間がもうわずかしかないのでとんとんといきたいと思うのですが、長官、実はまたもう一つ緊急事態が発生しておるのです。御承知のように円高傾向が進みまして、実質的にはきょう二百二円台前半を行ったり来たりしておる状況でございますが、どのあたりで円が定着するかという定かな見通しはありませんけれども、長官は大体円はどのあたりに来れば大丈夫だ、こう思っておられるのですか。
  119. 金子一平

    金子国務大臣 大変難しい御質問でございまして、通貨当局もしばしばそういう質問を受けておりますけれども、幾らが我々の目標だということは、これは口を緘して申しません。ただ、余り急激な上がり下がりがあるような状況でございますと国民生活にも貿易にも大きな影響を与えますから、極力早く安定帯に入ることを希望しておる次第でございます。きょうは二百二円幾らというふうに聞いておりますけれども、アメリカのリーガン財務長官がかわりましてから後のベーカー財務長官が、ドル高が世界経済を攪乱しアメリカ経済を攪乱しておったということを認識してくれまして、大いにドルを下げる努力をしてくれておる、この点は私どもも高く評価しておるところでございます。
  120. 松浦利尚

    松浦委員 中小企業、特に輸出関連中小零細企業というのは二百二十円、二百十円台がもう目いっぱいだ、こう言うのですね。その点についてはどのように思われますか。
  121. 金子一平

    金子国務大臣 円高がどの程度で、二百五円程度か二円程度で定着するかどうか、そこら辺の見通しの問題が一つありますが、いずれにしても一番円高の悪影響を受けますのはやはり中小企業でございますので、この点につきましては通商産業省、特に中小企業庁が中心になって今いろいろな対策を講じようとしております。例えば必要な融資の制度を国として発動するとか、あるいはまた民間の金融機関に協力を求めて低利の融資の制度をつくるとか、いろいろなことを前回の例に倣って努力しようということで目下検討を進めておる最中と私どもは承っております。
  122. 松浦利尚

    松浦委員 こういう状況が続きますと、急がなければ間に合わないわけですよ、経済は生きておりますから口ですから、早急に手をつけていただきたいと思うのです。  実は昭和六十年度の世界経済レポート、六十年八月に経済企画庁調査局が出された資料ですが、これの八十六ページに主要国の購買力平価のグラフがあるのですよ。これを見ますと、円とドルとの関係、ちょうどこれは二百六十円のときですね。ですからドル高とドル安の関係では約四十円ドルが高い。それが二百二十円になりますと購買力平価というのはとんとんになる、大体バランスするという資料がここに出ておるわけですよ。  それともう一つ、今度出されました月例経済報告書についてもちょっと質問したかったのですが、もう時間がありませんからまた改めて機会をいただきたいと思うのです。  この経済レポートの九十ページに、これも長官既に見ておられると思うのですが、主要国とアメリカとのコストの比較があるのですよ。これを見ますと、一九八〇年はエネルギーコストがアメリカ一〇〇に対して我が国は二四三、それから資本コストがアメリカ一〇〇に対して日本は九〇、労働コストはアメリカ一〇〇に対して日本は七九。それをトータルしまして、製造コストはアメリカ一〇〇に対して日本は八八という資料が出ていますね。それと同じく今度は去年、八四年には、エネルギーコストがアメリカ一〇〇に対して一七八、資本コストはアメリカ一〇〇に対して九六、労働コストはアメリカ一〇〇に対して六〇、製造コストはアメリカ一〇〇に対して日本七一。この数字を見ますと、我が国のコストに占める労働コストというのは明らかにアメリカに比べて極端に低いですね。これはおたくの資料です、経済企画庁が出された資料なんです。  今、内需拡大ということを盛んに言われますね。内需拡大、内需拡大と言われておるけれども、実質的にはアメリカと日本との可処分所得、賃金を比較していきますと大幅に差があるのですね。私は、この前出されました当面のアクションプログラム、この問題については二十六日内閣委員会で出前質問することになっておりますから、長官とまたそのときこれをやらせていただきますけれども、それを改善しなければこういう問題は解決しないですね。しかもそのことは、この前の予算委員会でもお話をいたしましたが、この昭和五十九年経済の回顧と課題の中で経済企画庁は触れておられるわけですよ。この三十五ページに、当然上がるだろうと経済企画庁は予想したけれども、賃金の妥結した経過を見ると非常に下回っておったとあります。また三菱総研の資料を差し上げてあります。長官のところに行っておると思いますが、今度の月例経済報告書を見ると、何かこの時点を契機として緩やかな成長が鈍化する傾向に入ったというのではなくて、この資料を見ていただきますと五十九年度の上半期以降すっと景気の鈍化が来ておるわけですよ。ですから、この五十九年度のときに積極的な内需拡大策を打たなければならなかった、この経済指標でいけば。今、円高傾向を迎えて、この月例経済報告が何かカンフル注射をしなければならぬ、こう言っておるけれども、もう景気の転換点からタイムラグが来ておるところで景気回復の手だてを打ってみても、なかなか景気は回復せぬですね。ですから、これは労使関係で決めることですから、政府がこうだというふうに言うことを今私は主張しておるつもりはありませんが、問題は、日経連とかその他経営者が言うように賃金をできるだけ低いところで抑えるというそのブレーキが、今日の景気後退、内需が拡大をしない大きな原因をつくっておると思うんですよ。それは皆さん方が出された昭和五十九年経済の回顧と課題あるいは昭和六十年度世界経済レポートという資料を見ても明らかなんですね。この点について長官の御見解を承りたいと思います。
  123. 金子一平

    金子国務大臣 日本の労働コストが安いのは、賃金だけの問題ではなくて、一つは生産性が高いことも大きな要因でなかったかと考えておるのでございまして、いろいろ数字はきょうはもう時間がないようでございますから細かく触れませんけれども、五十九年度の製造業生産労働者の一時間当たりの賃金を各国について試算してみますと、必ずしも日本が特に安いという結果は出ておりません。しかし、これはいろいろ御意見もあろうかと思いますので、ひとつ十分検討させていただきますが、さらに、五十九年度の上半期で日本の景気が転換期に来ておったので、下期にもう少し手を打つべきではなかったかという話でございますけれども、下期以降も、外需が緩やかな増加を続ける一方で設備投資が着実に増加し、家計部門の需要も次第に改善をしてまいったことから、これもまたその時点において政策の転換期だと考える必要はなかったのではなかろうか。先般の月例報告でも報告しておりますように、最近アメリカの景気の見通しがある程度はっきりしてまいりましたし、もうここら辺で、今景気が非常に落ち込んでいるわけじゃございませんけれども、必要な手だては十分打っていこうというのが私どもの基本的な態度であることを申し上げておきたいと思うのでございます。
  124. 松浦利尚

    松浦委員 この報告書で見る限り労働コストの収益比率はアメリカに比べて非常に低いわけです。ですから、アメリカと日本との経済摩擦の焦点はまさにここにもあると思うのです、内需拡大をするのですから。そういう意味では、長官ぜひ積極的に取り組んでいただきたいし、経済演説をするときには、そういうことも中に入れてもらう、喚起してもらうということをお願いしたいと思うのです。  それからもう一つの問題は、こういう円高がだんだん定着をしていきますと、先ほど言いましたように、中小企業の対応も必要でしょう。ある意味ではJカーブ効果が働く間はいいのです。しかし、これも来年度になると、円高が定着すると相当円高デフレという傾向は必ず出てくると思うのです。そうなれば、ここで思い切った財政の出動ということもあってしかるべきではないか。しかも、この六十年度上期の報告書を見ますと、公的部門の前期比はマイナス三・四ですね。ですから、民間活力だ、民間活力だと言ってみましても、国有地を売却をする、そしてそこに民間活力で家を建てる、アパートなりビルを建てる。ところが、そのビルを建てる計画はもう既に計画に入っておるわけですよ、たまたま土地がそこにあるというだけのことで。そういうことを厳格に計算していきますと、民間活力もはっきり言って限界ですよ。ですから長官、きょう各新聞に大蔵省の来年度予算の枠組みが出ましたけれども、この際思い切って建設国債を発行して、公共事業部門の投資をふやすという対応は、ここに来たら財政出動すべきではないかと思うのですが、そのことをお答えいただいて、午前中の質問を終わります。
  125. 金子一平

    金子国務大臣 松浦さんの御指摘、まさにそのとおりでございまして、今後の成り行きを見きわめて財政政策の発動をしなければならぬ、そういうことを真剣に考えるべきだと思っております。  それで、今度の内需拡大策の一つとして、前々から言っておりました住宅政策につきまして住宅減税をしっかりやるとか、研究開発投資に対する減税も考えるとか、そういうことはもちろんでございますけれども、公共事業はここ数年ずっと減り続けております。ことしは三・三%やっとかさ上げしたのですけれども、こんな状況ではとてもだめですから、ある程度かさ上げをしたいということで、目下関係省と議論を詰めておる段階であることを申し上げておきたいと思います。
  126. 松浦利尚

    松浦委員 午前中は終わります。
  127. 竹内猛

    竹内委員長 この際、暫時休憩いたします。     午後零時二十七分休憩      ————◇—————     午後一時十八分開議
  128. 竹内猛

    竹内委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。松浦利尚君。
  129. 松浦利尚

    松浦委員 時間がもう三十分ですから、単刀直入にお尋ねいたします。  午前中灯油問題に触れましたが、これからいよいよ冬を迎えて各家庭の暖房器の使用頻度の高い時期になるのですが、通産にまずお尋ねしておきます。  一九八〇年の暮らしの手帖の六十九号、この段階で、すべてのメーカーに共通しておることですからメーカーの名前は一望言いませんが、ファンヒーターや開放型のストーブを使っていたら、寒くても我慢して換気することが必要だ。要するにファンヒーターというのはもう買わぬ方がいいよ、こういう暮らしの手帖が出たわけですね。これは一九八〇年ですから五年前です。それから、秋田県の生活センターで、FF方式と称するファンヒータ一が出回ってきた。従来ずっと室内の公害防止等に努力をし、クリーン暖房をずっと指導してきたにかかわらず、ファンヒーターというのはどうも様子がおかしいというのでテストをした。そしたらまとめて言えることは「カタログ等では、あたかもFF式と同じクリーンな暖房のイメージを与えているが、換気を怠った場合、酸素欠乏をおこす危険性が考えられる。また、排気ガスを室内に拡散するため、室内空気が汚れる。しかし、このことについての説明が不十分である。また、中には「浄化によるクリーンな暖房」と表示されているものがあり、消費者に誤解を与える」。それからエネルギー効率からいっても、石油ファンヒーターはしん式ポータブルストーブに比べて電気代が余分にかかり、省エネルギーではない、こういう生活センターの報告が、これは五十四年の十一月七日に出されておるわけですが、承知しておられますか。
  130. 柴崎和典

    ○柴崎説明員 ただいま先生指摘の諸点につきまして私ども承知をいたしております。
  131. 松浦利尚

    松浦委員 経済企画庁にお尋ねいたしますが、ファンヒーターを使用したことによる国民生活センターあるいは各地の消費生活センターに危害情報としてインプットされ、持ち込まれてきた件数は何件になっておりますか。
  132. 横溝雅夫

    ○横溝政府委員 ファンヒーターも含めた石油温風ヒーターというくくりで調べておりますけれども、地方消費生活センター等から寄せられたものも含めまして、国民生活センターで取りまとめております石油温風ヒーター関係の苦情の件数でございますが、一酸化炭素の中毒症状を起こした等、人身に危害が及んだものが五十五年度五件、五十六年度……(松浦委員「トータルでいいです」と呼ぶ)トータルでございますか、これは五十年度から六十年度まで相当長期間で集計してございますが、センターと地方を含めて百六十一件でございます。
  133. 松浦利尚

    松浦委員 しかも五十年度から十年間のデータですが、年度が近くなるほど件数は上がってきておるわけです。  残念ながら消防庁の方は石油ストーブによる酸欠死亡事故についての統計はとっておられないのですけれども、東京消防庁で調査をさしていただきましたところが、昨年の十二月に小金井市で石油ファンヒーターによる一酸化炭素中毒によって死亡したという事件以降ことしの三月までに六件、ファンヒーターによる事故件数が登録をされておるわけですね。  そこで、お尋ねをしたいのでありますが、このファンヒーターというのはそもそも、密閉された部屋では一定の使用規制といいますか、例えば窓を開閉するとか、そういったことが絶対に必要なヒーターでしょう。
  134. 柴崎和典

    ○柴崎説明員 御指摘のとおりファンヒーターは暖房器具の一種でございます。燃焼を伴いますので換気というのが極めて重要である、御指摘のとおりでございます。
  135. 松浦利尚

    松浦委員 ところが、カタログを調べてまいりますと、すべてが非常に小さい字で書いてあるのですね。換気が必要だという字がずっと小さいのです。買った消費者はFF型だと思い込んで、開閉ということが余り行われておらない。  ところが、これは日本ガス石油機器工業会が五十七年一月二十日に出した「暖房機器の適室基準値と暖房機器使用時の換気についての考察」工学博士の藤井先生が書かれた内容を見ますと、「例えば室内外の温度差十度Cの場合、三千キロカロリー時のストーブを用いているとして、一時間毎に三分間ずつ四十四センチメートルの幅に窓を開くか、二・二センチメートルだけ常時すきまを開けておく必要がある」ということを書いておられるのです。しかも、これは工業会が指定したのですね。  ところが、これが国会でも問題になる、報道でも問題になってきたら、最近のカタログにはこの表示がちゃんと出ておるんですね。これは五十七年の一月二十日に出されておるのですから、これが当時のカタログに仮に載っておったとすれば、消費者の注意を喚起しておったとすれば、こういう一酸化炭素中毒の事故というのは防げたはずです。そういう点について通産側はこの資料を知っておられたか、そのときにどういう指導をなさったのか、それをちょっと教えてくれませんか。簡単でいいです、時間がありませんから。
  136. 柴崎和典

    ○柴崎説明員 私どもも、その学者のそういう研究成果を承知しておりました。先ほども申し上げましたように、ファンヒーターについては先生指摘のように、ややもするとFFと混同しがちだという問題がございまして、したがいまして、換気の必要性というのは普通のストーブ以上に大きくPRしなければいけない、かような認識に立って工業会を指導してきたつもりでございます。
  137. 松浦利尚

    松浦委員 ところが、実質的にはその通産の行政が及ばなかったわけですね。先ほどの秋田県の消費生活センターあるいは私が手に入れたカタログ等には、過去のものには的確な表示がされておらなかった。  もう一つお尋ねをしますが、仮にファンヒーターを使ったとして、ここに書いておりますように、一時間ごとに窓を開閉しなければならぬ、そういう状況ですと、せっかく部屋が暖まっても、窓をあけますから寒風が入ってきますね。この先生指摘によると、一分、二分、三分、六十分というのまであるのですが、カロリーの大きい三千キロカロリーで計算をいたしましても、窓の開きというものが、百三十二センチとか六十六センチとかありますが、短い時間であれば、三十平米の部屋では、三千キロカロリーで一分間百三十二センチあけなければならない。せっかく暖めても冷たい風がばっと入ってくる。また窓を閉めて暖めて、またあけてはっと入ってくる。何のことはない、秋田のセンターが指摘しているように、エネルギーのむだ遣いなんですね。  こういうものについて、今後どういう技術指導をなさろうとするのか、その点についてお聞かせください。簡単で結構です。
  138. 柴崎和典

    ○柴崎説明員 ただいまのファンヒーターのエネルギー効率の問題でございますけれども、同一の室内で同一の熱量を発生するストーブであれば、ファンヒーターであろうともあるいは在来型のポータブルであろうとも、エネルギー消費量は同じである、こういうことになろうかと思います。ただ、御指摘のとおりファンヒーターはやや大型のものが多いということもございます。そういうことでエネルギー消費という御指摘があろうかと思いますが、基本的には、同一熱量に対して同一のエネルギー消費ということではなかろうかと考えております。
  139. 松浦利尚

    松浦委員 いや、そうじゃないでしょう。ファンヒーターでカロリーがふえるわけだから、吸い込む室内の酸素の量も単位時間当たりは多くなるわけだから、そういう計算をしていけば、従来のポータブル型よりも窓の開閉を広くするか頻度を多くするかということが必要になってくるんじゃないですか。そんなことは私だって素人だけれどもわかっていますよ。あなたが言うように、それが当たり前だと思っておるから問題が残るのですよ。ファンヒーターというのは部屋の中で燃焼させるのですから、開閉をさせなければならないんです、これは永遠に。ということになれば、このファンヒーターを使っている人は窓の開閉を絶対にしなければならぬという義務づけをしなければいかぬわけでしょう。自動車の免許をもらった初心者の人が、グリーンとイエローのハート型のを張っていますね。あれと一緒で、ファンヒーターならファンヒーターのみんなの見えやすいところに張って、そして開閉を指導する、そういう努力が行政にあっていいんじゃないでしょうかね。私の言っておることは間違っておらぬでしょう、簡単です。
  140. 柴崎和典

    ○柴崎説明員 御指摘のとおりでございまして、ファンヒーターは換気がどうしても必要であるということを、繰り返しますけれども、声を大にして消費者に訴えなければいかぬ、かように考えております。具体的に先ほど先生からもおしかりをいただきましたけれども、取り扱い説明書にその点を明記してある、あるいはこれは改善の必要があろうかと御指摘のとおり考えております。さらには、ファンヒーター機器の本体に、非常にわかりやすい、見やすい箇所に換気が必要というラベルを貼付をするというようなことを五十六年から指導しております。さらには、今後とも各種の広報手段を総動員いたしまして換気の必要性をPRしていく、かように工業会を指導する所存でございます。
  141. 松浦利尚

    松浦委員 ぜひひとつやっていただきたい。新しいものはいいのですが、御承知のように、今年度の予想見込みも入れて業者の皆さんは、これも業者の方が出されておるパンフを拝見すると、ファンヒーターが一千万台。中には更新もあるでしょうから、その分をダブって計上されておるでしょうが、一千万台というのですから、新しいものだけそういう宣伝をしても、古いものに対する宣伝を怠ったら、これは重大な問題です。だから、古いものがもう一千万台も出ておるのだということを頭に入れて皆さん方の行政を進めていただきたい。これが一酸化炭素の関係、COです。  次に、窒素酸化物の問題ですけれども、東京都の消費者センターがこの問題を五十九年十月から十二月にかけてテストをいたしまして、そして一月二十五日に公表をいたしました。ところがNOxが、何と驚くなかれ、東京都が昭和五十八年度に東京都の二十八地点を選んで調査をいたしましたNO2の濃度にほぼ匹敵するような数字が出た。ですから、ことしの一月ごろに「石油ファンヒーターNO2を高濃度排出」「道路の最高値並み」ということで各社が一斉に報道をなさった。この点については了解しておられますでしょうし、また調査内容によっていろいろ意見もあるでしょうが、東京都消費者センターのこのデータについては御理解いただけますね。
  142. 柴崎和典

    ○柴崎説明員 ただいま御指摘の東京都の調査については承知しておりますし、その調査結果につきましても厳粛に受けとめております。
  143. 松浦利尚

    松浦委員 さらに、それに追い打ちをかけるように、昭和六十年二月五日、これは業界の方にも反省をしてもらわなければいけないけれども、マスコミ各社が報道したことについて「室内の空気の規制基準は現在ありません」、ないからいいんだ、「今回の実験経過は基準ベースが異なる等から、同センターは環境基準と直接比較はできないと発表している」、逆に言うと、新聞報道は過大広告だというようなものを一斉にメーカー側にまくのですよ。きょうは業界の方も来ておられるそうですけれども、やはりこういうのは厳粛に受けとめてもらわなければいけない。それはNOxについてのいろいろな学術的な見解はありますよ。しかし、少なくともそういう事実であるということが報道されているのだから、もっと業界の人たちは姿勢を正して——こんなものをわざわざまいて、いや、大丈夫だから売りなさい、こういうつもりなんでしょう、気持ちはわかりますよ。しかし、利用する側はたまったものじゃないのですから。  この点について、簡単でいいですから、ちょっとあなたの感想を聞かせてください。
  144. 柴崎和典

    ○柴崎説明員 工業会としてそのような言い方をしましたのは、察しますに、石油ファンヒーターのNOxの水準が人体に直ちに危険がある危ない商品であるか、こういうことに対する業界サイドの反論というふうに理解をしております。ただ、いずれにしましても、このNOxの水準はできるだけ低レベルにするというのは当然のことでございますし、そういう方向で実は工業会参加各社も従来から研究開発を進めてきているところでございます。
  145. 松浦利尚

    松浦委員 これは長官、ぜひ知っておいていただきたいと思うのですが、実は産業構造審議会で五十二年の十二月に「今後の窒素酸化物汚染防止対策のあり方について」という答申を当時の河本通産大臣に出されておるのですね。ここに室内のことが書いてあります。「生活空間におけるNOx汚染の問題」この中には何と書いてあるかというと、いろいろデータが出ておりますが、「屋内生活空間の汚染と屋外環境大気汚染とは公害防止対策の観点からは区別されるべきであるが、喫煙や生活時間の大半を占める屋内生活空間におけるNO2汚染の問題は、屋外環境大気汚染の問題と同様に無視できない問題であるといえよう。」こういうふうに主張しておるのです。アメリカの学者の中には、基準を超えた場合これが人体に影響する、肺結核でありますが、そういう状況になりかねないという指摘をした文献もあるわけですね。  ですから、そういった意味からすると、産業構造審議会から既に五十二年にこの問題が出されておるのに、しかも、室内でストレートに灯油をたくわけでしょう。室内が汚染されることは初めからわかっているのです。それでなくてもたばこを吸ったり何したりして汚染されているところに、冬になるとこのファンヒーターによる汚染度が加わってくるわけですから、FF型が出ておったのを、安いからといってファンヒーターという新しい製品が出たときに、もっと通産が的確にこういったものに対する技術基準なり規制というものについて業者を厳しく指導しておれば、業者だって売ることができぬのですから、前もってそういう技術基準に適合したものを発売しようとするだろうと思うのですよ。  私の言っておることが間違っておれば反論してください。言っておることが正しければそのとおりと言ってください。どうですか。
  146. 柴崎和典

    ○柴崎説明員 このNOxの濃度を引き下げる努力というのは、私ども、あるいは工業会あるいは検査協会、協力いたしまして努力を続けてきたつもりでございますが、当初のファンヒーターが市場に出回った段階において、かなり高いレベルがずっと続いてきたというのは御指摘のとおりでございます。
  147. 松浦利尚

    松浦委員 だから私がいつもお話しするように、技術が先行して、そして新しいもの、新しいものが次々次々と消費者の目の前に出てきて、それに通産の技術基準が追いつかない、そして後追いの形になる。私はそのことを通産行政の中にひずみとして見るのですよ。やはりもっと業者に対する的確な指導をお願いしておきたいと思うのです。  それと、今言われたように、業者が六十年六月五日に制定いたしました「ファンヒーターの二酸化窒素排出量に関する技術上の基準及び試験方法」この資料が私の手元にあります。これを見ますと五十九年度を基準にしているのですよ。ですから、もう既に出回っておるものを、排出量を暫定的な基準値として進める、そして六十一年の一月一日から実施するというのですね。ですから、この技術基準は六十一年一月一日から適用するのであって、これは来年ということでしょう。この冬場にもう既に売られておるわけですから、今出回っておるものについてはこの技術基準は適用しない。結局この基準をつくったって、八百万台近く出ておるもので、この基準に外れておるものがあるかもしれない。そういうものについて業者に対してどのような御指導をなさるのか、これが一点。  それからもう一点は、これはせっかく自主努力をして業者がこういうことをされたのにけちをつけているようで申しわけないけれども、この内容を見ますと全部メーカーの代表なんですよ。学者の人たちはだれもいない。そうでしょう。ですから、こういうものについても確かに自主基準だということで、いろいろ規制の枠を外していくことはいいのですよ。しかし国民の生活に影響のあるものまで業者に任せっ放し。しかも見てみればこういう調子だ。これではやはり行政として、取り締まる側としては問題があるのじゃないか。何かそういう点についてのお話を承りたい。そして、六十一年度からこれがどのようになるのか、そのこともひとつ教えてください。
  148. 柴崎和典

    ○柴崎説明員 ただいまの第一点でございますけれども、御指摘のとおり来年一月一日から実施をする基準を既に決定をいたしておるわけでございます。ただ、正式な施行は一月一日でございますけれども、本年の冬出回る新商品あるいはもう既に出回っている新商品につきましては、その基準を既に達成しておるということを確認しております。  それから第二点の基準作成の構成メンバーについてでございますけれども、御指摘のとおり、現時点におきましては工業会の自主基準ということで策定をいたしたわけでございます。私どもとしましては、これが定着した暁には、さらに検査協会という公的な第三者機関が別途ございますが、そちらの方に消費者あるいは学識経験者をまじえた委員会を構成するということで現在検討中でございます。  さらに、先生指摘のレベルにつきましては、実は初年度の暫定的な数値ということでございまして、これを今後引き続きさらに引き下げるべく努力していく、かように工業会を指導しておるわけでございます。
  149. 松浦利尚

    松浦委員 そうすると数字はどうなりますか。
  150. 柴崎和典

    ○柴崎説明員 実は大変技術的になって恐縮でございますけれども、アメリカの公的な機関が勧告をした数値がございます。これは〇・〇〇二五ccキロジュールということでございますが、できるだけ早くこの数値に到達する、かような方向で工業会を指導してまいりたいと私どもは考えでございます。
  151. 松浦利尚

    松浦委員 今それぞれ議論をさせていただいたわけですが、実はディーゼルトラックについてのNOx規制について環境庁が中公審に諮問をいたしましたね。外気のNOxについての規制はあるのですが、室内におけるNOxについての調査というのは環境庁ではどのように判断しておられるのですか。
  152. 伊藤卓雄

    ○伊藤説明員 お答えいたします。  私どもといたしましては、先生御案内のように、従来から固定発生源あるいは移動発生源というグループにつきましてNOxの規制強化を図ってまいっておりまして、そういう形で特に二酸化窒素等の大気汚染物質の削減をやってきたということでございます。私どもといたしましては、室内を直接所管するという形ではございませんで、一般に環境、大気を対象といたしておるわけでございますけれども、それぞれ所掌の官庁におかれまして当該室内に置かれる機器類等の基準等を決められるということは、我々の健康を守るという点から非常に結構なことだと考えておりますが、いずれにしましても私どもといたしましては、二酸化窒素等の大気汚染物質がどういうように健康に影響を及ぼすかという点は、室内、室外を問わず一般論として把握する必要がございますので、現在調査をやっております。  特に二酸化窒素につきましては、発生源が多種多様にわたるということもございますし、個々人の生活様式、つまり居住環境であるとか住宅構造、行動形態、そういった形によりまして非常に暴露の状態が違うと考えられますので、その辺の暴露の状況を明らかにする必要があるという観点から、実は六十年度から三カ年計画によりまして生活行動様式別に個人の暴露量調査あるいは室内環境濃度の調査といったことをやろうと考えております。これによりまして大気汚染の寄与度を明らかにしていきたいと考えておるところでございます。
  153. 松浦利尚

    松浦委員 今言われた生活行動様式調査というのは全国的にやるのですか。
  154. 伊藤卓雄

    ○伊藤説明員 今申し上げましたように、実は二酸化窒素に初年度は着目をいたしまして調査をやろうと思っておりますけれども、二酸化窒素というのは物を燃焼することによって生ずるわけでございますので、そういった、いわば地域によって生活の形態等が違うということを念頭に置きながら、寒冷地、大都会、それから低濃度で比較的汚染の少ないところというようなことで、大きく分けますとNOxの高濃度地域と低濃度地域ということになるわけですが、全体的に四地域でそれぞれ高濃度地域と低濃度地域に分けて、全体では八地区を分布させまして、そこで調査をやるということを考えておるところでございます。
  155. 松浦利尚

    松浦委員 もう時間が来ましたので結論に参りますが、長官にお願いをしておさたいと思います。  現に産業構造審議会から五十二年にこういう立派な答申が出されまして、河本長官も、これを刊行するに当たってということで大臣としての見解を述べておられるのですね。しかも、FF型だったらいいのですけれども、ファンヒーターという形でどんどん売られてしまって、そして今も通産との間のお話を聞かれたように規制が後追いをするのですね。しかも、規制が後追いをしているから、現実に売られているものについては何の保障もないのですね。ですから、そういう点についてはやはり業界も襟を正してもらわなければいかぬ、売らなければならぬという立場はわかりますけれども。やはりそういう点については厳しく行政の側でチェックしてもらいたい。  なお、これから需要期に入りまして、こうしたファンヒーターの古い型の扱いですね。古いものについてどのようにして注意を喚起するのか、国民の生活を担当される大臣としてぜひ通産なりと話し合いをしていただきたい。長官の御見解をいただきたいと思います。
  156. 金子一平

    金子国務大臣 今御指摘の点、大変大事なことでございます。特に、これからそういった機器の需要期に入るわけでございますので、関係省、特に通産省とも十分な連絡をとりまして、安全の徹底にひとつ努力をいたしたいと考えておる次第でございます。
  157. 松浦利尚

    松浦委員 それで、これは一つの提起なんですが、私はここにカタログを持ってきております。メーカーの名前は申し上げませんけれども、このファンヒーターを買ったお客さんの名前をお店に出すようになっているのですね、どこのだれさんが買ったというのを。それは強制じゃないのですよ。そうすると、機械をかえたり、専門家が点検をして目詰まりがないかどうかというチェックも売ったところでできるわけですよ。それはあるメーカーがちゃんとそういうのをしておるのがあるのです。そういうこともメーカー一つの良識だと私は思うのですよ。ですからそういう点についてぜひ通産省側の的確な、大臣が言われたとおりの御指導を、行政をお願いしておきまして、駆け足の質問になりまして意を尽くせませんでしたけれども、私の質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。
  158. 竹内猛

    竹内委員長 次に、小谷輝二君。
  159. 小谷輝二

    ○小谷委員 貿易摩擦を初め、国内の景気の動向にかんがみまして、住宅建設並びに設備投資、建築物の建設の促進等、内需の拡大を図っていくものはかなり大きな目玉として取り上げられておるわけでございますし、またそのとおりであろうとも思いますが、ここで最近の地価の動向について二、三御質問をしたいと思います。  国土庁が四月一日に発表いたしております六十年度の地価の公示価格、これは全国平均上昇率が二・四%ということで、五年連続上昇率は鈍っているということでございますが、一方、都心部におきまして極端に上昇している、このように伝えられてもおります。国土庁、最近の地価の動向について、特に都心部が極端に上昇している、このような状況についてまず御報告をいただきたい。
  160. 河原崎守彦

    ○河原崎説明員 お答えを申し上げます。  先生指摘のように近年、この五年ばかりでございますが、全国的には対前年度の上昇率は鈍化するという傾向にございますけれども、一部大都市の都心の商業地域につきましては著しい値上がりが見られるというのが現実でございます。これは一月一日時点を四月に報告いたします地価公示もございますが、七月一日時点調査を十月で報告いたします都道府県の地価調査ということをやっておりますが、その結果から見ましても、そういうことが見られるわけでございます。
  161. 小谷輝二

    ○小谷委員 大蔵省が、政府の民間活力導入の方針を受けまして、民間に売却できる国有地をリストアップして国有地等有効活用推進本部に報告をして、六十年度中に処分予定のものとして七十六件、四十三・五ヘクタール、これが決まっておるようでございますが、民間への処分予定として六十五件のうち第一号が去る八月に一般競争入札として大蔵省処分されたわけでございますが、この価格はどうなっていますか。
  162. 藤村英樹

    ○藤村説明員 ただいまお尋ねの旧司法研修所跡地の件でございますが、先生御案内のとおり先般八月八日に一般競争入札にかけたところでございます。処分面積は約六千八百平米でございまして、この入札の結果、大京観光株式会社が総額五百七十五億円で落札いたしております。ちなみに御参考までに申し上げますと、一平米当たりの単価で約八百五十万円という数字になっております。
  163. 小谷輝二

    ○小谷委員 これは坪価格でおおむね二千八百万円。国土庁、これは紀尾井町ですけれども、この近隣に地価公示標準地があるはずであると思いますが、この地価公示価格と比較すればこれはどうなりますか。
  164. 河原崎守彦

    ○河原崎説明員 本件の土地は御承知のように都心部にございまして、また二千坪という広大な用地でございますので、そういうことに伴う希少性というものが高値を呼んだのかと思うわけでございますが、国土庁で行っております地価公示の価格そのものは近辺にないわけでございますが、近くにあります地価公示価格を基礎といたしまして、これに沿道の状況でありますとか、あるいは土地の広さでありますとか、そういう補正をしてみますと、落札価格というものはなお高額であるというふうに考えております。
  165. 小谷輝二

    ○小谷委員 国土庁は、この価格で近隣地域への地価の上昇を引き起こすおそれがあるのかないのか、どうお考えですか。
  166. 河原崎守彦

    ○河原崎説明員 先ほども申しましたように、大都市の都心部の商業地域につきましては近年著しい高騰が見られるわけでございますが、これは根強いビル需要というものに支えられているものとは思いますけれども、国公有地の売却がこれに拍車をかけるということを懸念しているわけでございまして、そういうことのないように関係当局には適切な配慮をお願いしておるということでございます。
  167. 小谷輝二

    ○小谷委員 国土庁は、不動産関係の六団体並びに大蔵省にあてて、こういう地価の問題について通達を出しておられますね。この内容はどうですか。
  168. 河原崎守彦

    ○河原崎説明員 こういう地価の上昇の見られるときでございまして、これが適正な地価の形成や合理的な土地利用の障害になるということを危惧しておるわけでございますので、著しく適正を欠く価格による取引、要するに投機的な取引というものは厳に慎まなければいけないということを申しまして、そのため国土庁といたしましても国土利用計画法の的確な運用等を図っておるわけでございますが、業界におかれましても、このような状況を十分理解されまして適正な価格の形成に協力されるようにということをお願いしておるわけでございます。
  169. 小谷輝二

    ○小谷委員 「地価の高騰する地域での著しく適正を欠く価格による土地取引や投機的な土地取引は厳に抑制されるべきもの」云々、こういうことでございますが、これは不動産関係団体並びに大蔵省にもあてて出しておられる、このように我々は承っておるわけでありますけれども、この旧司法研修所の跡地の処分価格は、国土庁としてはいかがですか、著しく適正を欠く価格による土地の取引ということに該当するのかしないのか、どのようにお考えですか。
  170. 河原崎守彦

    ○河原崎説明員 先ほども申しましたように地価公示価格から比準いたしました価格と比べますと落札価格は高額であるということは言えるわけでございます。御質問の趣旨はこういうことかと思いますが、国土利用計画法から見ますと、国土利用計画法は国、公共団体等の取引が対象になっておりませんので、そういう意味で直接的にどうであるということは申し上げられないわけでございます。これは、御承知のように国等の取引というものはそういうことを配慮して行われるであろうという前提かというふうに考えております。
  171. 小谷輝二

    ○小谷委員 大蔵省の銀行局が国土庁の通達を受けて、各金融機関に対して「土地関連融資の取扱について」という協力の趣旨の通達を出しておられるようでございますけれども、この内容、趣旨はどういうことですか。
  172. 藤村英樹

    ○藤村説明員 きょうは銀行局の方が来ておりませんので定かなことは申し上げられませんが、銀行局の方では七月二十六日の国土庁からの要望を受けまして、確か七月三十一日であったかと思いますが、関係方面へ通達を流したと聞いております。その趣旨につきましては、最近の都心部商業地等の地価動向にかんがみまして、金融機関が土地関連融資を行うに当たって投機的な土地取引を助長しないよう配慮する必要があるという観点から、金融機関に対しましてその旨、改めて注意を喚起した、こういう趣旨であったかと承っております。
  173. 小谷輝二

    ○小谷委員 今後国有地の処分は引き続き行われていくものと思われます。六十一年度以降処分予定のものでも百六十七件、百七ヘクタール、このように報告されておりますし、また国鉄の保有地の処分可能地等でも十三万二千平米とも言われておるわけでございますが、今のような形でいけば、これらの処分地の周辺の地価に影響が非常に大きいのではなかろうか、このように危惧するわけでございます。行政改革推進審議会の答申でも、国有地の活用のあり方というふうな中で、「民活可能土地の処分については、公正かつ適正であることはもとより、地価の動向への配慮、利用構想等に沿った活用等を基本として、次の方式による。」このようにいろいろ細かく提言しておりますけれども、このような国有地、これに類する処分地の地価の動向は、その地域周辺に与える影響も非常に大きいし、日本国内全体的に地価の高騰につながるおそれがある、このように非常に危惧するものでございますが、これについて大蔵省経済企画庁長官、いかがお考えですか。
  174. 藤村英樹

    ○藤村説明員 ただいま先生から国有地の処分につきましていろいろ御指摘いただいたわけでございますが、私ども国有地の処分を担当いたしておりますが、国有地はもう言うまでもなく国民共有の資産でございますので、その処分につきましては適正、公平を期するという見地を確保しなければなりません。したがいまして、会計法令の定めるところによりまして競争入札を原則として対処しているところでございます。もちろん地価対策の面も全く無視することはできませんので、今後ともできる限りの配慮はしてまいりたいと思います。  先ほど御指摘のありました司法研修所跡地の入札に際しましても、その際、投機的動きを防止するという観点から、例えば所有権の移転五年間禁止あるいは二年以内に工事着工しなさい、あるいは五年以内に工事を完成しなさい、あるいは新たに借地権等の権利設定をしてはならない、こういう厳しい条件をそれぞれつけて、できる限りの土地対策面への配慮をしたところでございます。今後ともこういう面につきましては、法令の定めの範囲内において必要に応じて努力させていただぎたいと思います。
  175. 金子一平

    金子国務大臣 今大蔵省から御説明がございましたが、私どもといたしましては、国有地の払い下げが地価高騰に拍車をかけることのないように十分考えてやってもらいたいと思いますが、ただ同時に、国有地だから安くたたけということになっては大変でございますので、やはり競争入札の原理に従って公平にやってもらう必要がございますし、そこら辺のいろいろな配慮については大蔵省もいろいろ考えながらやっておるようでございますので、今後もその点については十分手段を尽くすように指導してまいりたいと考えております。
  176. 小谷輝二

    ○小谷委員 貿易摩擦問題につきましては、国際社会の中で日本政府として真剣に取り組んでいかなきゃならぬことであって避けて通れないものである、このように私たちも認識をいたしております。そこで、消費者の立場に立って二、三質問をしたいと思います。  まず、政府は七月三十日、市場開放のための今後三年間の行動計画を決定して、その骨格は六本の柱として輸入品の需要の拡大を図る、こうしておりますが、ここで、外国製品輸入が今のところふえない。これは国内の需要が伸びないということであろうと思います。その理由一つに、輸入品の流通機構に問題がある、このようにも言われておるわけでございますが、消費者の立場に立ては、生活上最も必要なものであって、なおかつ品質がいいもので価格が安い、このような条件が整えば、外国製品の需要は伸び、輸入はさらに拡大されていく、消費者にとりましても望ましいことである、このように私たちは理解をしております。  そこで、今回各省庁は市場開放行動計画に関連をして、流通の実態調査、これを行われたわけでございます。その中で特にこれは問題である、このように言える点、特に重要な問題点を御説明いただきたい、このように思います。
  177. 金子一平

    金子国務大臣 先般関係各省と連絡いたしまして輸入品についての流通実態調査をやったのでございますが、流通マージンにつきましては、国内品と輸入品と比べてみますと、輸入業者マージンを除いた卸、小売マージンでは国産品と輸入品とはほとんど差がないということが結果的にわかってきております。ただ品目によって、例えばフランス製のコニャックとか高い値段のウイスキーというようなものにつきましては非常に輸入マージンが大きいのです。普通の場合、国内品だったら二、三割のものが六、七割になっておる。これは、ソールエージェントがおりまして、輸入業者であるソールエージェントがマージンを下げる努力をしてくれないと国内の流通マージンは減らないのです、輸入業者が押さえ込んでおりますから。そういう点を海外の各国にも注意を喚起いたしまして、日本では流通段階が複雑でマージンを取られるから売れないのだというような誤解をしないように、むしろそういう点はしっかりと皆さんの方で輸出業者を監督してくださいよということをよく言っております。
  178. 小谷輝二

    ○小谷委員 長官から今御説明ございましたけれども、過日の新聞にもかなりいろいろの論評を加えながら調査結果の報告について報道があったわけですが、特に今おっしゃった小売値一万円のウイスキーを例にとった場合、これは輸入価格すなわち日本に着いて港におろした価格が七百円から九百円。これが大体一万円ぐらいで小売店から消費者へ売られておるわけですけれども、この中の輸入総代理店のマージンというのが、原価といいますか、これの約五倍からとなっておる、三千五百円から四千五百円。さらに卸のマージン、小売のマージン、こうなるわけですけれども、このような形で、国内で輸入品が消化されることは非常に困難ではなかろうかとも思われます。また中曽根総理大臣も、この貿易摩擦問題を解消していくために国民に一人百ドルの輸入品を買ってほしい、こういうふうなPRもみずからしておられるわけでございますけれども、これに対応してどう価格を下げ、また国内の輸入品に対する需要を伸ばしていくのか。これはそれぞれの立場で、それぞれの品目ごとに各省庁が担当して検討されておられると思いますけれども、特に輸入品の今後の需要拡大について各省庁の御意見をこの際伺っておきたいと思います。
  179. 宗田勝博

    宗田説明員 私どもが今回調査いたしました輸入酒類の流通実態調査の結果を見ますと、輸入ウイスキーのうち取扱量の大きい小売価格四千円クラス、これをスタンダード物と言っておりますけれども、これにつきましては、輸入業者も含めた総流通マージンは建て値ベースで三三ないし四六%。それに対しまして輸入ウイスキーのうち高級なものでプレミアム物と言われております一万円程度のものにつきましては、流通マージンが七〇%前後ということでかなり高いものになっております。  これにつきましては、輸入業者においてマーケティングとか広告宣伝とか販売促進活動とか、そういうことを海外のメーカーにかわって行っておるとか、あるいは為替の変動のリスクをしょっておるとか、あるいはブランドイメージの維持向上の観点から高価格政策をみずからとっておる、そういう事情がありますし、それに加えて、いかんせん取引数量が小そうございますので、商品の回転率が低い、そういうことで販売コストが割高になるのだというような事情もあるようでございます。  いろいろ事情はあるようでございますが、いずれにいたしましても、こういった輸入酒類について内外の関心が非常に強うございますので、私どももかねてから輸入業者に対しては適正な価格を設定するようにということで指導しておるところでございますが、今回の調査結果につきまして今後物価安定政策会議に設置されております輸入品の流通等に関する専門委員会におきまして検討が行われ、意見または報告が出されることになっておりますので、そういうものを踏まえまして、必要に応じ適切な指導をしてまいりたい、かように考えております。
  180. 小谷輝二

    ○小谷委員 これから検討を加えていくということのようですけれども、現状のままであれば、期待されるような輸入品の需要はふえないと思われます。  そこで、公正取引委員会輸入関連商品の流通実態調査、これは今始まったものではなくして、五十七年当時から調査をやっておるわけですし、またその中で輸入総代理店等の実態調査等も行われておるわけです。今報告のありましたように、この報告書の中でも流通マージンがかなり大きい、こういうことは今までも随分指摘されておったわけです。ただ流通マージンだけではなくして、先ほどから論議されております表示の問題とか製品の質とか内容とかいうものが非常に明確を欠くとか、また日本人の好みに合った包装とか量とかいうふうなものとか、かなりいろいろな論議が消費者の間では出ておるわけです。要するに、ここらを受けて、国の施策としてどんなような対応を考えられておられるのか、お伺いしておきたいと思います。
  181. 厚谷襄児

    厚谷政府委員 おっしゃるとおり輸入総代理店の問題につきましては、かねてから公正取引委員会としても調査をしてきたところでありまして、私どもの観点から見ますと、輸入総代理店の取引において、国内の市場における公正かつ自由な競争が阻害されるという点が一番の問題だろうと考えております。そのような観点からいきますと、先生指摘のように表示の問題その他取引の方法の問題もございますし、さらには並行輸入というような問題もあろうかと思っております。そのような並行輸入の問題につきましても、総代理店が特約店による並行輸入品を取り扱うことを阻害することにより公正な競争を阻害するということになりますと、独占禁止法で禁止しております不公正な取引方法に該当することになりますので、こういうものにつきましては厳しく規制していくことにしております。さらに、これにつきましては国際契約の届け出の段階におきましても公正取引委員会では審査の基準を設けておりまして、総代理店が特約店などの並行輸入を不当に阻害するような場合には削除、修正をさせるというようなことで、かねてから行っておるところでございます。
  182. 小谷輝二

    ○小谷委員 今報告のありましたように、各省庁とも実態調査報告書の内容の中にも、価格の競争を促進するために並行輸入をふやすという政策を取り上げておる。これは今輸入総代理店から、一つには並行輸入は市場開拓努力にただ乗りするものであるとか、また価格体系が崩れるというふうな評価があるようでございまして、それもなかなか軌道に乗らないんではないか、このように思うわけでございます。  さらに、この並行輸入に対して、今まで総代理店の契約に並行輸入の条項がもしある云々ということになれば、経企庁としては独禁法の立場上これに対する指導監督はなさると思いますけれども、ここらの内容、要するに輸入総代理店に対して、並行輸入の条項等について今までの修正の指導とか、また今後これに対してどの程度まで可能なのかという点について、今の実績を含めて御報告いただきたい。
  183. 厚谷襄児

    厚谷政府委員 輸入総代理店が、並行輸入をします特約店とかその他の流通機構において阻害的な行為をしますときに、それが不公正な取引方法に当たるといたしまして、独占禁止法に違反するとして正式に処理しました事件というのは、昭和五十二年におきますウイスキーの総代理店が並行輸入を阻害した行為一件でございます。  しかしながら、先ほどお答え申し上げましたように、国際契約の届け出をしていただきますときに、私どもが並行輸入阻害の条項が盛り込まれておりますことに対し削除あるいは修正を求めておりますのは、年間で見てみますと一番多い年で八件、少ない年でも、最近ですと三件くらいでございます。件数は少のうございますが、これは並行輸入の条項を総代理店契約の中に盛り込んでおりますと公正取引委員会から削除を求められるということが、私どもが輸入総代理店契約等における不公正な取引方法に関する認定基準というのを公表しておりまして、その中にその旨が明示されておりますから、契約する側におきましてもその趣旨が相当程度徹底しておると思われますので、実際にそういう条項が盛り込まれることが少なくなっておりますし、盛り込まれできますと私どもの方で削除を求めておる、こういうことで実際に出勤する件数が少ないということでございます。
  184. 小谷輝二

    ○小谷委員 消費者行政の監督官庁である経済企画庁として、長官、この輸入品の流通マージンの問題、これは今国内でも非常に、あれだけ大々的に報道されたわけでございますので、ここらに何とか行政上の指導監督の手を打てないのか、こういう要望等が今出ているわけでございますが、長官の御意見を伺っておきたいと思います。
  185. 金子一平

    金子国務大臣 先般来関係各省庁と連絡いたしまして、流通マージン、流通経路等の調査を終わりまして、やっとそれがまとまったところでございますので、今後さらに輸出努力——これは先ほども先生からお話のございましたように、安くていい品物ならば当然入るべきなんですけれども、日本の業者と違って各国の業者はなかなか輸出努力をいたしておりません。そういうことも関連して、流通マージンの引き下げ等を、特に不当なものにつきましてはやるように、こちらからも積極的に働きかけるように関係省庁と打ち合わせしてまいりたいと考えております。
  186. 小谷輝二

    ○小谷委員 次に、認証制度につきましてちょっとお尋ねをしておきたいと思います。  十四件を政府の認証から自己認証制度、このように切りかえる方針であるように思いますが、私が一番心配なのは、自己認証制度に切りかえた場合に消費者の安全性確保、この問題が一番残るわけでございます。余り時間もございませんので単刀直入にお尋ねしますけれども、消費者の生命、健康を守るためには消費者の救済制度、事故があったとき、また認証制度を自己認証制度に切りかえたために起り得べき被害、こういうものに対する救済制度、これが必要ではないか、このように思うわけです。  アメリカでは、ほとんどの製品に認証制度が取り入れられておるわけでございまして、連邦法におきましても無過失賠償責任制度を設けておりますし、また、欠陥商品に対しましても、消費者が負傷したり、これに伴って死亡したりするような場合には、被害者やその家族が補償を受けやすくするような方法がとられておるようでございますし、また、集団訴訟制度とか少額裁判制度等、消費者救済制度がかなり確立されておるわけでございますが、我が国におきましても、このように切りかえる以上は、消費者の生命と健康を守るという立場からきちっとした消費者救済制度を確立する必要があるのではないか、このように思うわけですが、長官はいかがでしょうか。
  187. 金子一平

    金子国務大臣 先ほども同じような質問がございましたが、国民の生命、健康に関するような案件につきましては、国が一々チェックして、自己認証を認めない建前を貫いております。しかし何分にも全面的に国の責任で一々チェックすることができないわけでございますので、自己認証の範囲をふやしましたけれども、だからといって、万一健康あるいは生命に被害が出るというようなことになりましては大変なことでございますので、企業責任につきましては改めて私どもは考え直してもらって、あくまでも自己認証の場合の企業責任につきましては徹底した追及をすることを考えていかざるを得ない。しかし、同時に、我々といたしましては、関係の資料を関係各省庁と外国政府との間で十分交換をいたすことによりまして被害の未然防止には努力してまいりたい、こういうふうに考えている次第でございます。
  188. 小谷輝二

    ○小谷委員 ちなみにこれは七月の二十八日に公表された消費者問題に関する世論調査、この調査結果で見ますと、消費生活の上でどんな情報が必要だと思うか、こういう問いに対しては「商品の安全性や危険性についての情報」、このようにかなりの人が答えております。また、国や地方自治体に力を入れてほしい消費者保護対策は何か、こういう問いに対しましても「食品、医薬品、家庭用品などの安全確保」、このように答えておるのが大半でございます。またさらに、我々一般にはなかなかわかりにくいJISとかJASマーク等について、要するにこういうふうな規格表示といいますか、この適正化、これもかなりの人が求めておるわけでございます。  このような形で、消費者は商品の安全性について非常に最近敏感でありますし、またそれに対する行政庁の指導監督、安全確保等に対する期待も要望も大きいわけでございます。この点も踏まえて、もしそこらに手落ちがあり、手抜かりがあるならばこれは消費者の利益に反することになりますし、こういうような規制緩和で、もしそういうようなことがあり、被害が起こるようなことがあれば消費者行政の後退を招く結果になるわけでございますので、この点も踏まえて長官の最後の御答弁をいただいて、質問を終わりたいと思います。
  189. 横溝雅夫

    ○横溝政府委員 基本的には、先ほど金子大臣がお答え申し上げましたとおりでございますが、十一月一日に行われました第十八回の消費者保護会議、総理を議長といたします関係大臣で構成しております消費者保護会議におきまして、来年度にかけての消費者保護行政の重点を決めていただきましたけれども、ここにおきましても、消費生活における安全の徹底というのは消費者行政の基本であるという認識をしておりまして、そのために重要な施策の展開をすることを決めております。先生の御趣旨ごもっともでございまして、消費者の生命、身体の安全の確保というのは、アクションプログラムの推進に当たりましても原則自由、例外制限と言っておりますけれども、それは例外に当たる部分と我々は認識しておりまして、消費者の安全確保には遺漏のないように関係各省と連携をとりながら行政をやっていきたいと考えております。
  190. 小谷輝二

    ○小谷委員 終わります。
  191. 竹内猛

    竹内委員長 次に、駒谷明君。
  192. 駒谷明

    ○駒谷委員 私は最初に経済企画庁長官にお尋ねをいたしたいと思うわけであります。去る十月十五日、政府が金子経済企画庁長官を座長とする経済対策閣僚会議において正式に決定をされました内需拡大に関する対策及びそれに関連する諸問題について若干お尋ねをいたしたいと思うわけであります。  まず、長官、我が国の経済、景気の動向と先行きの見通しについてでありますけれども、経済企画庁が毎月出されております月例経済報告、最近の分では六十年十一月十九日でありますけれども、この経済報告の中のいわゆるGNEと言われている国民総支出の表でございますが、昭和五十九年度の国民総支出は前年度に対比をしますと五・七%の経済成長でございまして、増加寄与度が、国内需要が三・八、経常海外余剰が一九、それぞれ伸びが示されておるわけであります。また、民間住宅につきましては二・〇%、民間企業設備については一一%、政府最終の消費支出は二・二%、輸出関連につきましては一六・四%、輸入については一一・三%の各成長率と表ではなっておるわけであります。  さらに、この成長の問題ですが、五十九年度、六十年度の一月から六月までの半期ベースで成長率を見てみますと、五十九年度は六・一%、前半期でそれだけの成長率があるのですが、昭和六十年の一月から六月までについては前半期で四・八%の成長ということで、これはスローダウンをしているわけですね。同じ半期ベースで米国の成長率はどうかを見てみますと、五十九年度は一月から六片までは八・三%伸びている。本年度については急速にダウンをいたしまして一・七%の成長率になっているように思うわけであります。この両国の成長の変化及び両国の関連性、成長率の内容を踏まえてですが、長官はどのように見ておられますか。また、我が国の輸出輸入、個人消費、民間投資、住宅建設等の成長の変化及び六十年度の先行きの見通し等についての御所見をまずお伺いしたいと思います。
  193. 丸茂明則

    ○丸茂政府委員 お答え申し上げます。  今御指摘のような数字はもちろんそのとおりでございます。つまり、まずアメリカの経済について申しますと、昨年の上半期と申しますか夏ごろまで、八三年の初めから非常に活発な景気の上昇、拡大というものが続いておりました。それが昨年の秋ぐらいから急速に経済の拡大テンポが鈍化をしたわけでございます。この理由といたしましては、国内の最終需要は堅調な伸びを続けたわけでございますが、それがドル高によって輸入となって海外に漏れてしまったということと、あとやや細かくなりますが、在庫投資、在庫調整が進んだということもございまして、GNPは今先生おっしゃったように非常に鈍い拡大テンポになってきたわけでございます。  一方我が国につきましても、数字は今先生指摘のとおりでございます。昨年まで我が国の景気拡大は、まず最初に対米輸出を中心とする輸出の増加が非常に大きく寄与いたしました。しかし、昨年ぐらいからは国内需要、特に民間設備投資が今先生もおっしゃいましたように非常に強い伸びを示したわけでございます。ことしに入りまして、アメリカの景気の拡大テンポが鈍化したということを反映いたしまして、我が国の輸出の伸びも非常に緩やかになり、最近ではほぼ横ばいに近くなってきているという状況でございます。この対米輸出を中心とします輸出の伸びの鈍化というものが我が国の成長率に対してかなり大きな影響を持っているということは事実でございます。ただ、国内需要だけについて見ますと、設備投資はやや鈍ってはおりますが、なお比較的堅調な増加を少なくとも本年度いっぱいは続けるというふうに見ております。  また個人消費につきましては、この対米輸出の鈍化が直接大きく響いてきたということはないと思われまして、ことしに入りましてからは、春から夏ぐらいにかけましてはむしろ消費の伸びは昨年よりもやや高まったという状況でございます。  住宅建設につきましては、ここのところ二、三年不振でございましたが、五十九年から回復に向かいまして、ことしの初めぐらいには着工戸数で申しますと年率で百二十万戸を超えるというところまで拡大したわけでございますが、その後やや減少ぎみということでございます。これは直接的にはアメリカの景気鈍化による影響というふうには必ずしも考えておりません。  こういうような状況でございますので、私どもといたしましては我が国の景気は拡大はしておりますが、やや緩やかになっておる、しかしそういう状況が今後もしばらく続くのではないかというふうに見ているところでございます。
  194. 駒谷明

    ○駒谷委員 このままで推移しますと、先行きの見通しですが、本年度の成長率は五・七でございましたか、この成長率達成の見通し、長官いかがな状況でございましょう。
  195. 丸茂明則

    ○丸茂政府委員 今年度の政府経済見通しの実質成長率は四・六%でございます。  先ほど申し上げましたように、景気拡大テンポは昨年に比べまして、ことしに入ってから最近やや緩やかになっておりますが、現在国民所得統計が明らかになっておりますのは四−六月期まで、今御指摘のとおりでございます。四−六月期の実績をもとにいたしまして、この四・六%程度が達成できるかどうかという点につきましては、現在の状況であればほぼ達成できるであろうというふうに考えております。
  196. 駒谷明

    ○駒谷委員 長官も御存じのとおり、我が国は貿易国でございます。したがって日米の経済関係、特に輸出というウエート、これはアメリカにつきましては輸出の総額の約三五%余りを占めているわけでありますけれども、この対米輸出の関係、そういうことで米国の経済の動向というのは大変微妙に反映するのではないか、そんなふうに思うわけであります。この対外経済摩擦という問題が今起きておるわけでありますけれども、我が国にとってはそういう環境は大変厳しい経済情勢に立たされるということが言われるわけであります・  去る五月二十三日、私この特別委員会で質疑をいたしました。この七月中に策定されたアクションプログラム、行動計画の内容等について、これからまた近い将来に経済摩擦の激化が心配であるということで長官にも訴えたところでありますけれども、最近の日米経済摩擦の問題、米国内の動向、現在大変円高の状況でありますけれども、為替レートの適正化のために急激に円高傾向の中での米国内のいわゆる経済、どのような影響になっているのだろうか、大変気になるところでありますけれども、長官のお考えをお伺いしたいと思います。
  197. 金子一平

    金子国務大臣 先般のG5の協議の結果、ドルの引き下げの方向へ持っていこうということで関係各国協調介入することになりましてから、やや日本の円が日本の経済のファンダメンタルズに近い実績を示すようになったのではなかろうか、こういうふうに考えておりますが、それが一面またデフレ要因になってまいりますから、今のところはまだ心配もございませんけれども、中小企業の先行きにある程度不安を与えておりますし、黒字自体はすぐ減ることはない、これはJカーブの関係で、まだ半年や一年ずっと続くだろうと思うのでございまして、大幅な対米輸出減が続いておりますために、アメリカ、ちょっと中だるみのような格好になっておりますけれども、どうも聞いてみますと、やはり来年の議会選挙もございますし、業界の動きいかんによってはさらにまたいろいろな輸出規制の措置に出たらどうかというようなことを言っておる連中も多いようでございますので、決して私どもといたしましては気を許すわけにはいかない。ただ、一時に比べて今ちょっと日本に対する批判が緩んできたと言えると思うのです。それは、今までは日本の対米黒字というものがすべて日本の責任のように言われておったのが、だんだんとそうじゃなくて、やはりアメリカの高金利、財政赤字に原因があるのだということがはっきりしてきたということであろうと思うのであります。同時にまた、日本が市場開放についてあくまでアメリカならアメリカの市場並みの開放の努力をしてきたという点が理解されたものだと考えております。  数日前にEC、日本の閣僚会議があったのでございますが、その席でもまだ、開放の率がどの程度行っておるのかよくわからないものですから、いろいろなことを向こうは言っておりましたけれども、結果的には、日本そこまでやっておるのか、静かにひとつ黒字が減るのを待とうというような空気が強かったと私どもは印象を受けた次第でございます。
  198. 駒谷明

    ○駒谷委員 それでは、今回の政府決定をいたしております内需拡大策について、長官の御所見をお伺いしたいと思うわけであります。  この内需拡大につきましては、対外経済摩擦の緩和というのが大きなねらいであったと思うわけであります。当面早急に実施をする対策として、項目的には四つ、民間住宅の投資それから都市開発の促進、民間設備投資の促進、個人消費の喚起、それから公共事業の拡大、これが当面の問題。今後推進する対策として、公共的事業分野への民間活力の導入、規制緩和、週休二日制の拡大、公有地等の有効利用、この対策を打ち出されておるわけであります。総事業としましては三兆一千億余りになっておりますけれども、内需拡大の波及効果、これにつきましては報道等によりますと約二兆円、そして今後一年間の名目成長率として約一・三%成長するのじゃないか、こういうふうな予測があるわけでありますけれども、増加輸入額二十億ドル、こういうことになっておるわけであります。  しかし、政府の期待どおりこの対策で効果があらわれるのかどうか、私大変疑問に思っておるわけであります。諸外国から要求をしております問題というのは、この内需拡大という問題を通してこの即効性と実効性ということを常に訴えられているのではないか。私は、その内容が大変乏しいように思うわけであります。これで諸外国の我が国の環境への理解が十分に得られていくのかということについても大変疑問に思っておるわけであります。特に内需喚起につきましては、これは即効性のある所得税、住民税そして住宅、設備投資、この減税が大変自民党の内部でも問題になっておるわけでありますが、この減税が先送りになっておる。建設国債の問題についても、公共事業の拡大の中には今度は織り込まれていない。そういうふうな問題から、わずかに六十一年分の公共事業の前倒しによるところの財政措置というようなことだけで、大変期待薄と言わざるを得ないわけでありますけれども、長官、記者会見等を行われておりますけれども、この問題について、今後の対策等を含めてどのようにお考えか、お伺いしたいと思います。
  199. 金子一平

    金子国務大臣 これは先生承知のとおり財政が極めて不如意で、財政政策上思うような手がなかなか打てない。それで不本意ながら減税の問題やら、あるいは公共事業の問題を予算編成のときまで先送りいたしまして、それを外したもので、あらゆる手段をかき集めてあの案をまとめたわけでございまして、そういう意味においては私自身も大変不本意に思っておるような案なんでございますが、ただ中身自体はかつて福田さんのときに出ました振興策よりは大分規模は大きいと考えております。今二兆円程度とおっしゃいましたけれども、全体として事業規模は今後一年間でやるものだけでも三兆一千二百億円、GNPに及ぼす効果四兆幾らというような数字になっておりますから、それはそれなりの効果があると私は思います。  特に重点を置きましたのは住宅対策とそれから下水道、公園等の、地方で思い切って地方債を発行してやれるようなものについてはどんどん進めてくださいよというようなことで、地方債の活用も考慮に入れることにいたしましたものですから、そういう点では新機軸を出せたかと思うのであります。  税制の問題でございますけれども、住宅減税はぜひひとつ予算編成期に取り上げたい。規模等につきましてはまだ関係省庁での話し合い中でございますから結論めいたことは申し上げませんけれども、従来のものを上回るものを、ぜひ我々としては実現したいと思って努力いたしておりますし、それから、研究開発費等に対する投資減税も、これは従来から私はやかましく言ってやってきておるのですが、金額的にはごくわずかでございますが、これもぜひ実現したいと考えておる次第でございます。ただ、所得税の減税等につきましては、今全体の規模、構想をどうするかという政府の税制調査会での議論の最中なものですから、この答申の行方を見定めないとなかなか結論が出せないんじゃないかと思っております。  それから公共事業につきましては、私が大蔵大臣をやっておりましたときから比べますと数千億、実額で減っておるんですよ。これはおかしいのでございまして、物価が上がっておって、どんどん公共事業費の総額が減るなんということでなく、やはり経済的には公共事業に依存する地方が多いですから、ある程度埋め合わせていかなければいかぬと考えておるわけでございますか、ことしは工夫を凝らして、去年に比べて三・三%公共事業費を伸ばしたのですけれども、どういう格好にするかは別にいたしまして、とにかく公共事業費もある程度上乗せするような方向で持っていきたい、こういうことで、今せっかく努力をしておる最中だと御了承いただきます。
  200. 駒谷明

    ○駒谷委員 冒頭に経済の見通し等をお伺いをしたわけでありますけれども、日本の経済は、アメリカ等の影響もあるわけでありますが、本年の一月から六月は既に成長率がスローダウンをしているわけですね。そういう点から考えますと、やはり六十一年度の予算というものは相当力こぶを入れないと、本年は何とか成長率は達成するんではないかという御答弁がありましたけれども、この障りというのは来年に相当出てくるのではないか。  今長官から積極的な御答弁があったわけですが、十一月十九日の経済の月例報告のときに、長官は記者会見をされておりますけれども、経済の動向に心配であるというようなことで、景気刺激、内需拡大の予算編成を大蔵の方に要望していく、こういうことが報道で載っておるわけでありますけれども、円レートの急上昇を初めとして、六十一年度の予算の中で所得減税の問題は、消費喚起の上からもこれはやはり絶対必要であると私は日ごろから思っておるわけであります。したがって、経済関係閣僚会議の座長をしていらっしゃる企画庁長官でございますので、この所得税減税の問題については、本当に真剣にひとつお取り組みをいただきたい。ただ、この所得税減税と増税抱き合わせという問題は、これは大変厳しい今の経済情勢でありますから、増税という問題は大変厳しいだろう。赤字財政という厳しい状況でありますけれども、どうしても経済を刺激して成長、そして回復をしていなかければ、全体として伸びていかない、そういうふうな問題がありますので、特にその点、お願いをいたしたいと思うわけでありますけれども、もう一度長官、お考えをお伺いしたいと思います。
  201. 金子一平

    金子国務大臣 所得税の減税の重要なことにつきましては、私も先生と全く同じ気持ちを持っております。ただ、財政事情がなかなか思わしくなくて簡単に財源が探せない、むしろ、もう必要な財源を食いつぶして、しかも税収が思ったほど確保できないというような状況にあるものですから、ここで思い切ってある程度の政策転換をやるかどうかという瀬戸際に来ているといっていいと私は思うのです。そういう意味で、少し幅を持った財政政策を考えたらどうだということを主張しておるわけでございまして、これから精いっぱい努力してまいりたいと考えております。
  202. 駒谷明

    ○駒谷委員 それでは、これに関連した問題として、円高によります差損の問題、それから差益の問題等について考え方をお伺いしたいと思います。  本年九月下旬に行われました先進五カ国の蔵相会議、いわゆるG5以降わずか、一カ月半で円レートというのが二〇%近く円高になっているわけであります。まさに二百飛び円台ということでありまして、きのうは二百二円ですか、そのような状況でありますけれども、この急激に進んだ円高の影響を大変大きく受けておりますのは輸出型の産業界であります。特にこの関係の中小企業の皆さん方については、これは最たるものでございます。中小企業庁は円高差損等の影響につきまして輸出企業、産地などの調査を実施し、十一月十八日結果の公表がなされておるわけでありますけれども、まず、その調査内容及びどのような影響がそれぞれの地域で出ているのか、簡潔にお答えを願いたいと思います。
  203. 上田全宏

    ○上田説明員 お答え申し上げます。  まず、今回調査を行いました基本的な考え方でございますけれども、円高自体は対外不均衡の是正という観点から基本的には望ましいものとは考えられます。ただ、円高の急激な進展によりまして、一部の中小企業者の方々についてその経営環境が悪化いたしまして、さらに厳しくなるということが十分予想されますので、今般特に輸出依存度の高い産地につきまして調査を実施したわけでございます。  その内容でございますが、十月下旬から十一月上旬にかけて本調査は実施したわけでございますが、特に円高模様眺め等の要因によりまして輸出向け新規成約がほとんど全面的にストップしている産地も出ております。また、それに伴い受注残も適正水準を下回っているという産地も多数ございます。また、現在為替レートが二百円近くで推移している中で、採算レートは二百二十円から二百三十円ぐらいを大宗とする産地が多うございます。それから、資金繰りにつきまして既に困っている産地が若干出ておりますし、また、年末までに資金繰りが苦しくなる、こういう産地が半数以上ございます。  以上、概要から見まして、総じて申し上げますと、輸出型産地の中小企業について円高の影響はかなり出てきておるというふうに判断しておる次第でございます。
  204. 駒谷明

    ○駒谷委員 長官、この問題は通産省が主管庁でございますけれども、ドル高是正の問題、これは政治的ないろいろな内容があったと思いますが、これによる中小企業の被害というのは相当深刻なんですね。  兵庫県におきましても、二〇%以上ということになりますと、具体的に例を挙げますけれども、西脇の播州織物、これが七三%のシェアを持っておる。それから姫路中心で行われております鎖関係が二七%。それから神戸を中心に行われておりますクリスマス用品、これは当然でございますがもう七五%近く輸出。それから三木中心で行われておりますはさみ、あるいはこういう金物関係、これが大体二五%。内需の方にそれぞれの業界関係は力を入れて、ある程度是正しておりますけれども、それでも現在のシェアがそういうような状況になっているわけであります。  西脇を中心にいたしております播州織でございますけれども、これはことしに入りまして大変取引関係が悪くなってきておるわけであります。その上に円高によります影響をもろに受けておりまして、国際競争の低下というものが大変業界関係をしておるわけであります。輸出の成約数量の関係におきましては全くなくなったというところも中にはあるわけでありますけれども、実際の織布業者にいたしますと、その地域の円レートで考えるならばどうしても二百二十円から二百三十円でないと織布の皆さん方の利益はほとんど出てこない、そういうふうな状況でございます。したがって、この輸出の減少分を内需でどうしてカバーしていこうかということになるわけでありますけれども、発展途上国の輸入の増加で、台湾、韓国、中国から入ってくる、これはもうコストが安いわけですからなかなか太刀打ちができない。したがって、転業、廃業しなければならぬということで、もう既に休業しているのが十四事業出ておりますし、廃業が現在は三でございますけれども、何かに転換しなければならぬということでやめている人たちもあるわけであります。現実に直接輸出するのじゃないのですから、座元に品物を納めるわけですけれども、これに関する値引きの問題、契約のキャンセルの問題あるいは条件変更というふうな要求が出てきておりまして、大変気の毒でありますけれども、既に自殺者も出たというような状況になっておるわけであります。  これはもう年末、大変重要な問題だと思います。通産省を中心にいろいろと検討しておられると思いますけれども、来年度これに対応しようというお考えであるようでございますが、どうしても年末どうするか、この問題は緊急の問題でございまして、各府県におきましてもいろいろと苦慮しておるようでございますけれども、やはりこれは政府の方で、通産省の方でしっかりお考えいただきたいと思うわけであります。これの対策についてお伺いいたします。  私は地元でいろいろな人たちにお会いしてお伺いしますと、円高の影響というのは事業者としては簡単に解決ができない問題であるけれども、事業そのものの考え方を少しずつ建てかえていかなければならないということ等がございますので、つなぎの問題等含めて融資についてはできるだけ長期間の融資、期間の延長、例えば五年あるいは七年というふうな考え方、それから金利の問題については低利の金利をお願いしたい、そういう地元の深刻な声等があるわけであります。融資を受けたからこの問題解決ができるということではないわけですけれども、当面そういう問題等の要望も大変強い、そういう点からひとつこの点につきまして、通産省、答弁をお願いしたいと思います。
  205. 長田英機

    ○長田説明員 今、中小企業に対する影響と具体的な対策はどうかという御質問でございましたけれども、私ども中小企業庁としましてはそういう点非常に心配しておりまして、既に中小関係の三機関などに対しまして適切かつ機動的に対処するように一応通達を発しておるわけでございます。さらに六十一年度の対策といたしましては、先ほど先生からお話のございましたように、事業転換をやっていかなければならない人も大いに出てきているということで、そういう人たちを支援するための事業転換法の拡充強化をやろうと思っているわけでございます。さらに、最近の円高を含む国際情勢の非常な厳しさに対応して低利の融資をやろうかということで、六十一年度対策として要求しているわけでございます。  ところで、先生の御質問は年内にどういう対策をやるかということだと思うわけでございますが、最近いろいろ調査結果が出てまいりまして、かなりの影響も出てきているということでございますので、現在私どもとしては、六十一年度といわず年内に何か緊急に融資をするような措置ができないかということで検討しているわけでございます。条件について先生からお話がございましたけれども、中小公庫の例で申しますと、今通常の貸付金利は七%でございますし、期間は運転資金の場合ですと五年間ということでございます。年内に行うべき現在検討しておるものとしては、現在検討中でございますのでまだ具体案はできていないわけでございますけれども、こういう条件よりも有利な条件にしたい、特に金利面については何とか五%ぐらいで融資ができないだろうか、そういうふうなことを検討している段階でございます。
  206. 駒谷明

    ○駒谷委員 この点につきましては、調査等さらにいろいろ実情を把握していただいて、返済の期間についても十分に御検討いただきたいと思います。  次に、円高による差損という反面、円高差益を受けている業界、このトップはやはり石油業界初めエネルギー関係の産業でございます。この円高差益還元の問題については、消費者保護という立場から経済企画庁の方でいろいろと対策をお考えいただかなければならないのではないか、そのように思うわけでございますが、この問題につきましてひとつお考えをお伺いしたいと思います。
  207. 金子一平

    金子国務大臣 今御指摘のございました円高差益の還元につきましては、ある程度円高の状況が定着いたしまして円高による利益が蓄積されましたならば、機を逸せず消費者に還元してもらうことが私どもの役所としてとるべき方針でなければいかぬと考えて、今各方面にもお願いをしておる次第でございます。電力等につきましては通産省それぞれの立場からいろいろな御意見をお持ちのようでございますから、いずれエネ庁からでも御説明願いたいと思っておりますが、基本的に申しますと円高差益は消費者に還元すべきもの、こういうふうな方針で貫きたいと考えておる次第でございます。
  208. 駒谷明

    ○駒谷委員 それでは次の問題ですが、これは前も取り上げたのですけれども、下請取引の適正化の問題であります。  円高になりまして取引の関係で円高差損を受けたということで、下請の方にいろいろな形でしわ寄せがいくわけであります。この下請中小企業につきましては、従来から下請代金支払いについて、事業者の保護及び下請取引の適正化ということで公取の方で大変努力をされておるわけでございますけれども、親企業からの要請が最近厳しくなり、代金の支払い遅延あるいは値引き、返品等の違反行為が増加の傾向にあるように思うわけであります。特に今回の急激な円高に伴いまして、円高差損がいわゆる下請企業にしわ寄せられて、減額とかあるいは買いただきなど増加するおそれがある、そのように私も心配をいたしております。  この下請法の違反行為について公取委員会調査指導状況、最近の状況でございますけれども、どのようになっておりますか。さらに、今後こういう円高の問題等を踏まえてどのように対応されるお考えなのか、お伺いをいたします。
  209. 利部脩二

    利部政府委員 昨年度と最近との下請法の違反状況を比べてみますと、これは必ずしも円高の点だけではございませんが、違反事件がふえておりまして、特に不当値引き、親事業者が下請事業者に支払うべき下請代金の値引きをしたり、あるいは不当に買いたたくという場合もございますが、不当値引きの事案がふえておるというのが最近の特徴でございます。  円高との関係で申しますと、親事業者が円高差損、円高に対応する必要があるということを理由として、既に決めている下請代金を減額したり、あるいはそれを理由として一方的に下請代金を切り下げるような行為がありますと、これは下請法違反ということになります。これは従来のそういう不当値引きの案件と同様に厳しく対処していくつもりでございます。  なお、最近の急激な円高に伴いこのような行為が行われるおそれがございましたので、先日、十一月十九日に、通商産業大臣と当公正取引委員会委員長の連名で、そういうことがないように親事業者や親事業者団体に要請を行ったところでございます。具体的なそういう事案がありましたら、個別にも厳正に対処して是正させるつもりでございます。
  210. 駒谷明

    ○駒谷委員 具体的にはこの問題、前にも申し上げたように下請事業者というのは弱い立場でございますので、下請事業者の方はその調査問題等についてはよほどでないと本音を言わない、あるいは親会社関係にしましても、そういうふうな事情があるわけであります。実態が大変に把握しにくいという点がありますけれども、こういういろいろな経済の変動のあったときというのは、いろいろ下の方にしわ寄せが行われるということが通常でございますので、特にひとつ通産省も含めて、これについて真剣なお取り組みをお願いをいたしたいと思います。  最後に、重複をするようでありますけれども、きょうの質問のまとめとして長官にもう一度お願いをしたいわけでございます。このドル高是正あるいは内需拡大に手を入れられておるわけでありますけれども、経済専門家、いろいろな人たちのお話を聞きましても、やはりこれからの成長、大変厳しいだろう、よほど国内に底入れをしないと厳しいだろう、それは金融面あるいは財政面、両方から思い切った景気刺激といいますか、そういうものを打ち出していかなければならないのではないか、そういう御意見が強いわけであります。  そういう点考えていきますと、先ほどから長官御答弁がございましたけれども、相当経済運営はこれから厳しくなってくるだろう。きょうの新聞で、アメリカの成長が持ち直したというような報道がなされておりますけれども、それとても、日本にどういうふうに影響してくるか、これから来年に向かって大変予算編成の重要なときでございますので、長官、やはり経済閣僚の座長として、何とかこれは強力にひとつ経済を持ち直す、拡大を持続していく、その方向での対策をお考えいただきたいというように思うわけでございますけれども、これについての御決意をお伺いして終わりたいと思います。
  211. 金子一平

    金子国務大臣 お話しのとおり、大変厳しい状況に立ち向かおうということでございますので、それなりの対策を私どもとしても講じなければいかぬと思っております。  先般、企画庁の経済研究所でモデル計算と申しますか、今後数年間にわたるいろいろな状況の場合の、全く政策的色彩を加味しないモデル計算をやってもらったのでございますが、やはりこれからの世界経済に活力を与えるためには、アメリカが赤字財政を圧縮し、金利を下げることをまずやってもらう。それから日本とヨーロッパはやはり財政政策を活用し、金融緩和の措置を講ずるようなことによれば、相当のまた経済の活性化が図られるのではないかというような結論が出ております。そういう面も十分参考にいたしまして、これからの政策運営に誤りなきを期してまいりたいと考えておりますので、これからもよろしく御叱正をいただきますようにお願いいたします。     〔委員長退席、金子(み)委員長代理着席〕
  212. 駒谷明

    ○駒谷委員 以上で終わります。
  213. 金子みつ

    金子(み)委員長代理 次に、田中慶秋君。
  214. 田中慶秋

    ○田中(慶)委員 私は四項目にわたって質問をさせていただきたいと思います。  一つには、例の豊田商事の関連の中で、その後の問題、すなわち豊田商事問題は破産管財人にゆだねられているわけでありますけれども、その内容は司法当局で現在進められていると思います。その後の政府として知っている範囲と経過について、最初に説明をいただきたいと思います。
  215. 横溝雅夫

    ○横溝政府委員 豊田商事の破産宣告後の経過でございますが、御存じのとおり七月一日に大阪地裁から破産宣告を受けまして、破産手続が進んでおるわけでございます。  七月十五日から八月三十一日までが豊田商事についての破産債務者の債権届け出期間とされました。八月三十一日が債権届け出の期限でございました。その後本年九月二十四日にこの破産事件についての第一回の債権者集会が開催されましたが、そのときの管財人の報告によりますと、届け出債権者数が二万九千二百三十七人でありますけれども、そのうちファミリー証券契約分については二万六千七百八十一人でございます。債権総額は千百四億円でございますが、そのうちファミリー証券契約分は千六十七億円であるとされております。第二回の債権者集会は十二月二日が予定をされております。大体大ざっぱな経過はそういうことでございます。
  216. 田中慶秋

    ○田中(慶)委員 この物特においても、悪徳商法に対する被害者救済の道を含めて、六省庁連絡会議等々設けながら、それらに対する対策ということを含めて答弁をいただいているわけですけれども、その後六省庁会議はどのような形でこれらに対する対策を進められているか、お伺いしたいと思います。
  217. 横溝雅夫

    ○横溝政府委員 関係六省庁の会合でございますが、御存じのとおり、公正取引委員会警察庁法務省大蔵省、通商産業省及び当庁の六省庁でございますが、ここで六月十日から四回にわたりまして協議の場を設けまして、豊田商事問題の問題点とか被害防止の方策について検討してきたわけでございます。  第四回目は八月二十六日でございましたが、それまでの過程の中で、再発防止のために現行法の適用、法律的な問題について特に専門的に詰めて検討する必要があるという結論になりまして、六省庁会議課長レベルの会議でございますけれども、その下に専門家会合というのを設けることにいたしまして、その後課長補佐レベルの専門家会合におきまして法律的な問題点を検討しております。これは、各省の専門家のみならず、学者さん、こういう豊田商事問題に関連する法律についての専門的な知識をお持ちの大学の教授なども招きまして、関係六省庁の専門家会合で検討を続けておるところでございます。     〔金子(み)委員長代理退席、委員長着席〕
  218. 田中慶秋

    ○田中(慶)委員 いずれにしても、その後もいろいろな商法が今取りざたされているわけであります。再発防止というようなことを含めて、あの時点から、法規制に対する検討を具体的に進めますとこの席上で答弁をいただいているわけです。その答弁の日にちは六月二十日でありますけれども、もう既に今日まで七、八、九、十と約四カ月以上過ぎているわけであります。これらに対して今検討しているということであっては、現実に再発防止というのはなかなかできにくい問題ではないかと思うのです。あのときも早急に立法措置を含めて何らかの対策を検討したい、こんな答弁をいただいているわけでありますけれども、縦割り行政のひずみ的な問題を解決するために六省庁会議を設けたわけでありますから、やはりもっと突っ込んでやるべきではないかと思うのですが、その辺の見解をもう一度述べてください。
  219. 横溝雅夫

    ○横溝政府委員 この豊田商事問題につきましては、先生も御案内のとおりと存じますが、一方におきまして、現在警察当局あるいは検察当局において現行法令の適用につきまして捜査が続行中でございます。これの最終的な結論がまだ出ておりません。したがって、その現行法令の適用問題が捜査ということで進んでいるということが一方にございます。しかし、万が一現行法でうまく適用ができないというときのために、新しい法的整備、それは現行法の改正になりますか、新たな立法になりますか、いろいろあると思いますけれども、それを他方においては検討しておかなくてはいけないということは私ども認識しております。  したがって、この十一月一日に行われました消費者保護会議におきましても、この金等の現物まがい取引に関しましては、各省庁連携のもとに、現行法令の厳格な適用及び迅速な情報提供に努めるということとともに、「更に、消費者被害の防止のための方策について、法制度の整備も含め関係省庁連携の下に検討を進める。」ということを、新たに今回の保護会議決定に取り込んで御決定いただいたわけでございます。したがって、一方で現行法令の適用の検討が進んでいる、他方では、いざというときのために、法制度の整備も含めて今検討を開始しているという段階でございます。
  220. 田中慶秋

    ○田中(慶)委員 過去の審議経過でも明らかなように、現行の法令の盲点を突かれて、こういう問題ができたわけでしょう。それであのときの委員会でも、何らかの措置を含めて具体的な検討をしなければいけない、こういうことでお答えがあったわけです。それがいまだにそういうことを含めてやっているということであれば、少なくても被害者に対して申しわけないなという、こういう形になるのではないでしょうか。こういう問題は、再発防止を含めて、さらにまた今後の被害者の問題を含めてもっと精力的に行わなければいけない問題だろうと思うのです。そういう点で、十一月に改めて現行法の問題やら次の法的措置の問題を検討されたということであっては、この物特の権威の問題にもかかわってくるんじゃないか。ここで皆さんから答弁をいただいて、できるだけ早急にやっていただきたい、こういうことが各会派の委員のみんなの願いだったと思うし、それがまた国民に対する私たち物持としての誠意の問題だったと思うのです。それがいまだに検討されているという段階であっては、余りにも取り組み方が消極的ではないか、私は、こんなことを皆さんに強く申し上げる必要があろうと思います。  この問題は古いわけではないわけです、現実に今そういうまがい問題を含めて起きているわけですから。先般来のいろいろな問題を含めて、最近もまた問題になっているわけでしょう。ですから、私たちはこういう問題を含めて、この物持で何回となく取り上げてきたのだと思うのです。参考人のお話を聞かせていただいたり、そして先般は、破産管財人の方にお聞きしたいということでありますけれども、現実には今法的にゆだねられているからということで——この問題は少なくても多くの皆さん方の関心の中にあるわけですけれども、しかし、今の当局考え方では私は納得いきません。長官から答弁願いたいと思います。
  221. 金子一平

    金子国務大臣 ちょうど今事案処理が進んでおる最中でございますし、法的規制の手を打つ必要があることは皆異存がないわけでございますが、どこに問題点を絞るか、そういうことで関係各省が調整をしておる段階と御了承いただきたいと思うのでございます。いつまでもじんぜん日を重ねるつもりはございませんが、裁判所の扱い等も見ながらこの問題の結論を出したい、こういうふうに考えておる次第でございます。
  222. 田中慶秋

    ○田中(慶)委員 いずれにしても、次々と法の網をくぐって今のような商売がされているわけですから、そういう点は何しろもっと精力的に取り組んでいただきたい。  そこで、あのときも問題になったのは被害者救済の問題だと思います。先ほど来お話しのような円高によって起こる日本経済の今後の厳しい環境の中で、特に世の中の弱者と言われている人たち、さらにはまた、こういう形で被害を受けた人たちが改めて被害の救済を求められるのは当然だと思います。あのときも長官から、苦しい生活者に対する援護の問題やあるいは別途これらに対する対策の問題を考えて、現実には生活の問題について困らないように検討したいという大変前向きな御答弁をいただいていたわけでありますけれども、現在、生活保護の問題やら医療保護の問題、あるいはまた病気療養に対するそれぞれの援助の問題を含めて、大変お困りになっておる人たちが多い。生活保護の問題について各窓口に行ってみれば、こういう形の被害があったからといって生活保護を現実に受けられないという結果で、私どもの方にも話が来ているわけであります。こういうことを含めて、これらに対する考え方を明確にしていただきたいと思います。
  223. 横溝雅夫

    ○横溝政府委員 被害者救済と申しますか、豊田商事問題の契約者の債権の確保につきましては、先生も御案内のとおり破産手続で債権が確保されていく民事上の手続で進んでいることは御存じのとおりでございます。経済企画庁といたしましても、そういう格好で被害者の債権ができるだけ確保できるように豊田商事関連一一〇番というものを設けまして、債権の確保ができるように大いに努めておるところでございます。  それから今御質問の、それはそれとして、これによって生活に困っている人たちに対する被害者の救済というのがあるではないかということはおっしゃるとおりでございまして、それは生活扶助とか医療扶助とか現行制度のもとで適用が円滑に行われる必要があるわけでありまして、これは私ども厚生省等にお願いしておりますし、厚生省等もそのつもりで都道府県等にも御連絡しておりますので、現行制度のもとにおける生活困窮者への救助につきましてはできるだけの努力を払っておるつもりでございます。
  224. 田中慶秋

    ○田中(慶)委員 私もそのように理解をしておりました。しかし現実には、そういう形の被害ということで生活保護や医療保護を受けられない人も出ておるようです。そういう点は議事録も持ってきているのですが、この席で皆さん答弁され、長官からも答弁しているのです。ですからそれはちゃんと明確に、もう一度厚生省なり、それぞれ都道府県に今おっしゃられた考え方を徹底して、この年の瀬を迎えようとしているときに、より困っている人たちの救済のためにも、そういうことを心配のないような形をとるように、もう一度答弁願いたいと思います。
  225. 横溝雅夫

    ○横溝政府委員 もし先生のおっしゃっていますようなことでありますと問題でございますので、私どもといたしましては再度関係省庁あるいは地方公共団体と連絡をとりまして、遺漏なきように対処いたしたいと存じます。
  226. 田中慶秋

    ○田中(慶)委員 次に、貿易摩擦の一環、すなわちアクションプログラムの問題等について質問させていただきたいと思います。  まず、このアクションプログラム、すなわち市場開放行動計画でありますけれども、これらについて先ほど来論議をされておりますが、我が国の市場開放に対する不満というものはまだ多くの国から寄せられている。その結果、先般来のECの問題のようなことが起きているのではないかと思います。そういう点で、外国からどのように評価をされているかということを含めて、これらに対する考え方をお伺いしたいと思います。
  227. 海野恒男

    ○海野政府委員 アクションプログラムに関します諸外国の評価でございますが、国によりあるいは地域によってそれぞれ若干ニュアンスが異なりますけれども、概して言えば、我が国の市場開放に関する積極的な姿勢はある程度評価していただいていると思っております。ただ、彼らの一様な評価の一つとして、問題は成果である、あるいは結果である。つまり、貿易収支あるいは経常収支の大幅な黒字が、これによってどれだけ減っていくのか、あるいは我が国の輸入がどれだけふえていくのかということが問題であるという評価が一般的なように思われます。私どもとしましては、今回のアクションプログラムは市場アクセスの改善にかかわるアクションプログラムでございますが、この内容につきましては引き続き各国に文書等を通じまして、あるいは会議等を通じまして十分説明をし、納得していただいていこうと思っております。
  228. 田中慶秋

    ○田中(慶)委員 私も実は九月にアメリカに行って、うちの民社党の塚本委員長と同行しながら、この貿易摩擦の問題でアメリカの政府首脳と会談をしてきたわけであります。そこで問題になってくるのは、要するに日本の国情なり日本の国の表現とアメリカの表現が全然違う。すなわち、アクションプログラムというのは市場開放行動計画なんだから、すぐに行動を起こすような計画でなければいけない。日本のように三年がかりでやるとか、それを前倒しにするとか、こういうことの期待ではないわけでありまして、そういう点ではそのとらえ方が全然違う。ですから、幾ら説明をしようがその辺のニュアンスというのは全然すれ違いになってくる可能性が出てくるわけですから、そういう点でそれぞれの項目について、検討しますとかそういうことじゃなくて、これは行いますという明確な表現が一番望まれていたような気がします。そういう点ではニュアンスの違いというのは国柄の違いという形の中で非常に肌で感じてまいりました。各国にそれぞれ今から理解を求めるのであれば、そういうことも考慮に入れてやらなければ逆に弁解みたいな形でとられる心配も出てきておりますので、そういうことは明確にしておいた方がいいと思います。  そこでお伺いしたいのは、この行動計画の実施に伴う黒字減らし等はどのくらいに考えられているのか、あるいはまた、これらによって行われるであろう現実の経済的な効果をどのように試算をされているのかをお伺いしたいと思います。
  229. 土志田征一

    ○土志田説明員 お答えいたします。  今回のアクションプログラムでございますが、これは我が国の市場アクセスを改善するということで、それによって外国からの輸入が増加すると期待しております。ただし、その効果につきましては、実際の輸入は、諸外国がどの程度輸出努力をするか、あるいはそのときの為替相場がどうなるか、また外国と日本の景気がどうなっているかということによって影響されますし、今回のアクションプログラムは制度面の改善もございますので、直接的に輸入拡大がどの程度になるかというのはなかなか把握しにくいという面があると思っておりまして、今回のアクションプログラムによって効果が具体的に何億ドルということの試算はしておりません。
  230. 田中慶秋

    ○田中(慶)委員 十月三十一日もこの実行推進委員会を開いて行動計画の実施状況について点検されたと思います。私は、数値のとらえ方なりそういうことを含めて現実には試算というものができるように伺っておりますし、統計学上もできるのではないか、推定であろうと思いますけれども。それをしないで、こういうものをやります、やりますと、バナナのたたき売りじゃありませんけれども、ただ並べて、私たちは市場開放をこういう形で行っていますと言ったところで、それぞれ外国の理解や協力は得られないと思います。そういう点で、少なくとも日本とすればこれだけの行動計画を行います、それについては今問題になっておる、例えば日米の想定される貿易収支について、日本の黒字をどのくらいに減らしますとか、ECにおける問題についてはどういう形、そういうことを明確にしない限りは、結果として理解をされないのではないか、こういうことを心配しているのですけれども、それはどういうふうに考えていますか。
  231. 海野恒男

    ○海野政府委員 先ほど御説明いたしましたように各国の評価は、日本の政府の積極的な姿勢というものは評価するものの、いわば問題は成果である、どれだけ輸入がふえ、経常収支あるいは貿易収支の黒字が減るかというところにあるというふうな見方をしておりますけれども、今回のアクションプログラムと申しますのは市場アクセス改善のためのアクションプログラムということでございまして、いわば門戸を広げた、外国の商品が日本の市場に入りやすくしたということでありますので、それだけでは直ちに効果が出るということではなくて、内需の拡大あるいは外国の輸出業者の輸出努力あるいは為替レートといったようなものが当然影響いたしますので、市場アクセス改善のためのアクションプログラムだけでどれだけの改善効果があるかということはお答えできない、計算できない、こういう御説明をしたわけでございます。
  232. 田中慶秋

    ○田中(慶)委員 私は、物というのは一つの理論的な構成があろうと思います。そういう点では少なくともアクションプログラムの各項目について想定される数字というものが出てきてしかるべきだと思います。それは主体的な要因もあろうかと思いますけれども、あるいはまた他動的な要因もあろうと思います。しかし、そういう中で物を論じるときに、この計画を立てるときに、ただ門戸を開いたということだけでは当然理解ができないと思う、そうでしょう。例えば皆さんのところでは門戸を開いたと言ったところで、この基準・認証制度の問題だってそうでしょう、廃止ということで総理みずからがこの廃止に対する努力をしている。しかし、総理が指示したにもかかわらず、この廃止に対して消極的に、そしてまた報道機関やいろいろなところにおいては、例えば来年の三月までには当然無理であろうとか、あるいはまた廃止するかどうかについても非常に消極的であるとか、こういうことで現在皆さんのところで行われている。こういうことを一つとっても、現実にはそれぞれの効果というものはただ一つのスローガンとして挙げたにすぎなくなってしまう、こういう心配すら出てきていることは事実だと思う。そういう点で例えば基準・認証の廃止について、総理の指示にもかかわらず廃止できないのはなぜなのか、この辺を明確に答えていただきたいと思います。
  233. 海野恒男

    ○海野政府委員 基準・認証制度、輸入プロセスの改善に関しまして、今回私ども八十八項目の措置をとることを決定いたしたわけでございますけれども、この措置に関しましては、先ほど御指摘のように十月三十一日にアクション・プログラム実行推進委員会におきまして、七月三十日以降のいわば実施状況というものを報告いたしまして、六十五項目を一年以内にやる。それから既に七月から十月までの間に二十五項目を実施したということでありますし、それ以外の関税その他のアクションプログラムに関しましては、例えば関税でありますれば、現在この臨時国会に審議をお願いして、来年早々にも実施できるように今努力、検討しているというふうに聞いておりますけれども、そういうことで、決めたことにつきましては着実に実施をしておりますが、御指摘の、総理が決められて実施ができないものというものは八十八項目の中にはございませんでして、恐らく先生の御指摘の点は、基準・認証制度の中で、我々は法令に基づく基準・認証制度の改善措置を中心に行ったわけでございますけれども、法令に基づかない、根拠を持たない政府の各省内においてだけの権限で告示、通達をしております、それに係る基準・認証制度というのがございます。これは法令に基づく基準・認証制度を改善してできるだけ政府の介入を減らすという観点から措置をとろうとしているわけでございますので、法令に根拠を持たない、告示、通達だけに根拠を持つようなものについては原則として廃止の方向で検討しようではないかという一項目がこの八十八項目以外のところに決めてあるわけでございます。  これは八十八項目の措置以外でございますが、そういうことでこれについて私ども検討いたしましたところ、この告示、通達に根拠を持ちますいわば基準・認証制度、これが内容はどういうものであるかということを検討しましたところ、大半が過去五年間輸入実績がない、あるいは外国からのクレームが出ていないということでございましたので、法令に基づく基準・認証制度を検討した際にも、外国からクレームがなくて、かつ過去五年間に輸入実績のない基準・認証制度は検討の対象から外しておりました関係上、仮に法令に基づかない告示、通達だけに根拠を持つ基準・認証制度も同じように扱うべきではないかという議論も一方にありまして、そして他方、そういう意味では法令に基づくものが検討対象外としたわけでございますので、告示、通達に基づくだけのものであっても検討の対象外にすべきかもしれませんけれども、ただ、一方私どもは、法令といういわば国会の承認等を得ましたものでない独自の政府部内だけの考え方で通達を出しているものについては、基本的には廃止の方向で行くべきだという考え方で検討をお願いしておりましたけれども、他方対外経済上の問題はなくても国内的な行政目的が他にあるものですから、それとの兼ね合いで行政の介入をできるだけ減らすべきだという一方の考え方と、それから他の行政目的との兼ね合いということがございますので、しばらく検討期間を置きたいということで、この点だけが一つ残っているということでございまして、これは三月三十一日までに結論を出したいということを前回決めていただいたということでございます。
  234. 田中慶秋

    ○田中(慶)委員 いずれにしても法令以外に省令、政令、通達を含めて、これは当然基準・認証制度の問題としてとらえているわけですから、それは当然やるべきであって、それぞれ旗を振る人が幾ら振ったところで、皆さんのところでやらなければしようがないわけです。外国で指摘をしているのは、アメリカでもECでも日本の品物を買わないと言っているのじゃないのです。逆に日本が品物を買いやすいようにしてくれと言っているわけです。そうでしょう。アメリカの製品を買ってもらいたい、ECの製品を買ってもらいたい、こういうことを言っているわけです。ところが、そこに生まれてくるのが今のようなそれぞれ多くの制度の障害やいろいろなものがあって、現実にスムーズな日本で言えば輸入ができない。そういうところに見直しを含めてやろうとしておるわけですから、いろいろなことを含めて輸出、輸入という問題についてこういうものが具体的に提言をされているときは、やはりそれは積極的に省令であろうが政令であろうが通達であろうが、スクラップ・アンド・ビルドという精神でやらなければ、幾らたったって何も進まないと思う。ですから省庁の抵抗が、あるいは官僚の抵抗が、結束がかたいからこういうものが現実にできない、こういう指摘をされるようになってくるのじゃないですか。それは日本じゃないですよ、外国でそういうことを日本に対して指摘するのです。ですから、そういうことを含めてこういう問題をちゃんと具体的に取り除いていかなければ、幾ら立派な構想を打ち出したところでそれが弊害になることが出てきておると私は思うのです。これについて具体的に長官の決意のほどを聞かせていただきたいと思います。
  235. 金子一平

    金子国務大臣 先般決めました基準・認証の改正の問題、アクションプログラムの問題は、文字どおり誠実に、しかもなるべく早い期間に、三年を待たずして実行するつもりでおります。今、告示、通達で押さえておるものがあるという御指摘がございましたが、まだそんなものが残っておるとすればこれは不可思議千万なのでございまして、早急に片づけたいと考えております。  ただ、当初のホワイトハウスと私どもとの話では、アメリカ市場が日本品を迎えると同じような環境に日本の市場を置いてくれればそれで満足だ、後は自分たちの努力で日本市場を開拓するのだ、こう言っておったのですよ。ところが、なかなか黒字が減らないし、業界の突き上げが厳しいものですから、議会人が先頭に立ってやあやあ言ってくる、それにECあたりまでがつられた、こういう格好でございます。やはり現実問題として失業者が出、産業が日本に抑え込まれるような事態になれば、そういう気持ちを起こすのは無理はないと思いますので、私どもといたしましては、できるだけお互いに国際協力をやりながら世界経済の活性化を図っていかなければいかぬのですから、極力努力をしてまいりたい、こういうふうに考えておる次第でございます。
  236. 田中慶秋

    ○田中(慶)委員 やはり日本というのは全世界のGNPの一割を超えている、その責任というものも当然果たさなければいけないし、私が痛切に感じたことは、その中でお互いに信頼と理解が欠けているのではないか。私たちは日本の立場ですから、当然日本の立場で物を言ってまいりました。営業努力が足りないじゃないか、日本の車がアメリカにいくときはみんな左ハンドルになっている。アメリカの車が日本に入ってくるときはそのまま逆に左ハンドル。右ハンドルになってないじゃないか、こんな指摘までしましたけれども、そういう一つの経験を踏まえて私たちも、それはそれなりにここでやっていかなければいけない問題だろう、それがやはり国際的な責任ではないか、こんなふうに考えておりますので、認証やあるいはそれぞれの問題で弊害になっているものは取り除く必要があるだろう、こんなふうに思います。幾ら大臣が、あるいはまた総理がやろうとしたところで、そういう問題が現実に底辺にあったのではできないので、そういうことを踏まえてぜひやっていただきたい、こういうふうに思います。  そこで、実は貿易摩擦といいますかドル高とは逆な立場で、この二カ月ぐらいの間にドル高から一転して円高になったわけでありまして、この円高対策というものは、先ほど来いろいろな論議の過程でも明らかになっているわけでありますけれども、現時点において二百四十五円から、きのうあたりでは二百二円台ですか、この短期的な急騰は日本の経済に大変大きな問題を起こす要因があると思いますし、例えば当初の経済成長率の修正の問題まで出てきはせぬかな、こんなふうに思っております。御案内のように輸出が鈍化をするわけですし、輸出の鈍化によって国内の設備投資等々を含めて大変な影響が出てくるのではないか、こういう心配が出てきます。去年経済成長率の上方修正をしたのは、輸出が伸びて、そしてその原因となったのは設備投資がふえたからだという御答弁をいだだいているわけですね。そういう点では、輸出が鈍化すればすなわちこの設備投資も大きく後退をする。そういう設備投資が非常に後退をしている、こういうデータも出ているわけでございまして、これらに対して、先ほど来の審議でもそれぞれ御答弁をいただいておりますが、この二カ月余りの中での円の急騰というものは、そういう点ではあらゆるところにもっと弊害が出てくる、こういう心配が出てきておるのですが、この辺、どうでしょうか。
  237. 金子一平

    金子国務大臣 年内の日本経済の動きは、先ほど来政府委員から御答弁申し上げましたように、すぐ落ち込むという筋合いのものではないと考えております。中小企業関係の設備投資は多少落ちましても、全体としての設備投資は拡大傾向にございますし、消費も緩やかながら伸びておるということでございます。ただ、先行きに対する不安感を各企業が持つようになりますると、各企業は来年になったら一体どうするか、手控えるのじゃなかろうか、そこら辺の見通しをこれからしっかり立てることが必要だろうと思うのです。  それからまた、円高が定着いたしますと、各企業が抱え込んでいる在庫品の値段が下がって、これまた大きな重荷になってくるとか、いろいろな影響が出てきますから、私どもは全体としてこれからの円高の動き、それから企業の動きを十分に見きわめまして必要な対策を講じてまいりたい。それでは今すぐ経済成長率をどうこうするということの前に、もう少しそういった点をしっかりとつかんでこれからの対策を講じてまいりたい、もう訂正はしなくたっていいというような経済政策、対策をやはり打っていく必要があるのだろうと考えております。
  238. 田中慶秋

    ○田中(慶)委員 私はそういうことはぜひ期待をしたいわけでありますけれども、現時点でそれぞれの、中小企業を含めて当然障害が出ておりますし、例えば今車を一台とってもそうでしょう。百八十万台アメリカに輸出しておりましたよね、ことしの目標がそうですね。そこで円が二百四十五円台、今日ではもう二百二円台でしょう。ここで収益の問題が大幅に狂ってくる。それは当然企業体質の改善もするでしょうけれども、しかし限度があると思う。ところが、その系列傘下の人たちがもっと厳しいのではないか、こんなふうに思います。そういう点で、長官の経済成長率を安易に修正しなくてもいいような話は大変期待したいけれども、しかし私はそういうことではなく、今の状態を考えると大変厳しい環境にあるということを、私たちは国会だけではなく、それぞれ地域現場を歩いてみてはっきり肌で感じておるのです。もう仕事がなくなってきている、何とかしてくれぬか、こういう声が出ているわけですよ。ですから、そういう問題を含めて、数字のマジックじゃなく現実問題としてこういう問題と真剣に対応していかなければえらいことになっていくのじゃないか、こんなふうに私は思うのです。もう一度この辺を見通しとして明確にしておく必要があるのじゃないか、こんなふうに思いますけれども、いかがでしょうか。
  239. 金子一平

    金子国務大臣 先生の御指摘の点は大変大事なことでございますので、これからの経済政策の運営に誤りなきを期していきたい、そう考えております。
  240. 田中慶秋

    ○田中(慶)委員 そこで、実は円高で地場産地、特に中小企業が輸出の競争力が落ちて、輸出商談が停止をされている。現在輸出の見合わせ、そういうものの実態というもの、中小企業庁あるいは通産省の方で具体的なまとめやあるいは取り組みを行っていると思うのですけれども、特にこれらに対する実態把握とその対策はどのようになっているのか、お伺いをしたいと思います。
  241. 上田全宏

    ○上田説明員 お答え申し上げます。  通産省といたしましては、円高の進展によります中小企業への影響につきまして現在その動向を注視しておるところでございます。既に十月初旬の時点におきまして輸出関連中小企業、これは企業ベースでございますが調査を実施いたしました。それに加えまして十月下旬から十一月上旬にかけまして輸出依存度の高い産地四十産地ばかりを選びまして、これに対しても調査を実施いたしたところでございます。その結果、次のような実態が判明しております。  まず、輸出向け新規成約につきましては、円高模様眺めなどから成約がほとんど全面的にストップした産地も出ているということでございます。それから受注残が適正水準を下回っている産地も多数あるということでございます。三番目に現在大体二百円近くで推移しておるわけでございますが、採算レートは二百二十円から二百三十円ぐらいとする産地が大宗を占めているわけでございます。それから現時点で何が困っているかという点でございますが、円高による成約の減少等によりまして既に一部に資金繰りに影響が出ているという産地もございますし、また年末までに資金繰りが苦しくなるという産地も多数ございます。こういった点から見まして、総じて申しますと輸出型産地中小企業への円高の影響は相当程度出ているのではないかと判断しております。
  242. 田中慶秋

    ○田中(慶)委員 今の御答弁からも明らかなように、確かに円の価値というのは急激に上がったものですし、そしてことしの夏の際でもこの見通しが立たなかったわけです。そういう点では、どの辺が一番ベターかということで、それが二百二十円から二百三十円台で計画されたものですから、中小企業にとっては大きな打撃になることは事実だと思います。そういう点では、先ほど来いろいろなことをやられておりますけれども、例えば国民金融公庫、信用保証協会あるいはまた中小企業の、それぞれの公庫等を含めて、もっとこれらに対して、現実には貸し出しを含めて手続も簡素化して、そしてもっと真剣にこの辺が相談に乗っていただけるようにしなければいかぬと思うのです。私のところに毎日二、三の相談があるのですけれども、それで電話でいろんなことをやっても一〇〇%いきませんね。わかりましたということで、お金というかそういう形で融資をしていただけるのは大体半分ぐらい。ですから、皆さんが何とかそういう対策を立てますということを現実に言ったところで、出先の窓口は、在庫がこれだけあるんじゃないかとか過去の経理状態がおかしいとか、そういうことを含めて、幾ら前向きにやろうとしても現実にはその壁が厚くてなかなかできないというのが実態なんです。ですから、やはりこういう円高によって起きる障害というものは、当然自分の努力とは違って他動的なものですから、そういう点ではこの問題に積極的な政府としての考え方を政策として打ち出して、そしてそれが末端まで浸透するような形をとらなければいけないのではないかと思いますけれども、いかがでございましょうか。
  243. 金子一平

    金子国務大臣 これは中小企業庁がいろいろな案をまとめておる最中でございまするけれども、政府全体として、しかも早急に取り組まなければいかぬことでございますので、私どもも通商産業大臣といろいろ相談をしながらやっておりますが、政府金融機関を中心に、融資の増額あるいは貸出条件の緩和はもちろんでございますけれども、こういう円高による被害に対する特別の融資の制度をつくったらどうかとか、あるいは過去の貸付金の返済猶予についてどう考えるかとか、いろいろな問題をずっと今取り上げて整理をしておる最中であることを申し上げます。機を逸せずこれもやってまいりたいと考えております。
  244. 田中慶秋

    ○田中(慶)委員 先ほどの通産省の答弁のように、現時点でもう資金に困っている、あるいはまた年末で困る、こういうことが具体的に調査の結果で明らかなんですから、そういう点でもう少し回転を早く対応してやる必要があるだろう。これがショートしたら関連でずっと出てきますから、そういうことを含めて、円高によって、ショートでそれぞれ被害が出ないように一ぜひ積極的な取り組みを行っていただきたい、こういうことを私たちは強く要望しておきたいと思います。  そこで、また前後しますけれども、輸出の問題、貿易摩擦。現実に今までの行動計画あるいはまた内需等、そしてまた円高等を含めて輸出の減少が少なくとも明らかになってきていると思います。そういう点では経済効果をあらわす言葉のJカーブ効果、そのJカーブ効果で、円高によっても輸出はすぐには減らないということをよく言っているのですけれども、それはドルベース輸出がふえるということが起因をしているのではないかと思いますが、このJカーブ効果はどのくらいの経過を待てばその影響が出てくるのか、御答弁いただきたいと思います。
  245. 丸茂明則

    ○丸茂政府委員 Jカーブ効果がどのくらい続くのかという御質問でございますが、これはそのときどきの経済情勢によって必ずしも一定の期間でということはなかなかはっきり言えないわけでございます。前回、五十二、三年ごろにやはり円がかなり急速に高くなったことは御記憶のとおりでございますが、このときの円高によるJカーブ効果がどのくらい続いたのかということを私どもでその当時計算をしてみたことがございます。そのときの計算といいますか調査の結果では、大体出尽くすのが一年半ぐらいでございました。ただ、これはそのときの情勢でございますので、今回もそれだけかかるとかあるいは大体そうなるだろうということは申し上げにくいわけでございます。それから外国での研究といいますか、調査の結果等もございます。  日本では今一年半と申し上げましたが、これは誤解のないように申し上げますと、全部出尽くすということでございますから、その点は、日本の場合はほかの国、アメリカなどに比べるとやや早い。これはやはり企業その他の活力があるというのですか、反応が早いということを意味しているのだと思います。しかし、日本の過去の経験から申しますと大体そのくらいは出尽くすまでにはかかると思っております。
  246. 田中慶秋

    ○田中(慶)委員 Jカーブ効果についてはそういうことでありますけれども、そこでお伺いしたいのは、今回の貿易摩擦の問題やあらゆる関係の円高の問題、さらには政府が今行っておる規制緩和の問題等々を含めて、経済に波及的に及ぼす数字的なことが出ると私は思うのです。政府は何か数字を出すのを嫌がっているような気がするのですが、今Jカーブ効果の問題は出ましたけれども、そうではなくして、努力をされているあらゆる総合的な形の中での数字というものは出てしかるべきじゃないか。外国ではそれを必ず統計的に数字で出しております。日本の場合なぜ出ないのか、そんなことを含めて御答弁をいただきたいと思うのです。
  247. 丸茂明則

    ○丸茂政府委員 今の円高の効果がどのくらいあるか。例えば最近、この二カ月近くで約二〇%円高になったわけでございますが、その効果がどのくらいあるかという点でございます。これにつきましてはいろいろな計算のやり方がございまして、試算を全くできないということではございません。ただ、いろいろな条件が重なりますので、義的に、例えば十円の円高であるとこのくらいということを数字的に計算することは大変困難でございます。今先生、外国ではそういうのがあるとおっしゃいました。確かにございます。ただ、例えばフェルドシュタインと申します当時のアメリカの経済諮問委員会の議長が、去年、ドル安の影響について、議会だったと思いますが、委員会で話をしておられますけれども、やはりこの場合にもはっきりした数字はなかなか難しいというようなことを言っております。だからいいということではございません、私ども内部ではいろいろと検討しておりますけれども、いろいろな条件、と申しますのは日本だけの問題ではなくて、外国でどういう動きに出るかということもございますのへで、私ども企画庁といたしまして、責任を持ってこの程度であろうということを言うのはなかなか難しい状況でございます。
  248. 田中慶秋

    ○田中(慶)委員 少なくとも経企庁として、もう既に二百円台に来ているわけですから、そういう点では、適正な円の価値はどのぐらいかということは別問題としても、数字として出すのが当たり前だと私は思うのです。例えば、それでは二百円のときはどうだ、二百五円のときはどうだ、二百十円、せいぜいこの辺を今いろいろな形で皆さんが模索をしているのですから、その辺は明確にしてやることが今後の経済活動において一番重要なことではないかなと思うのですけれども、いかがなんでしょう。
  249. 丸茂明則

    ○丸茂政府委員 おっしゃるとおり、大体こういうことが確実に、比較的確度を持って予想できるということでございましたら、私どもとしましてもそういう計算をしてなるべく出すようにしたいと思っておりますが、今申し上げましたようなことでございまして、概略の数字でございましても、この程度というのがなかなかはっきりと計算しにくいわけでございます。
  250. 田中慶秋

    ○田中(慶)委員 外国でできて日本ができない、そんなばかなことはないと思うのです。それぞれのファクターを掛けていけばできるのですから、方程式があるのですから。そういうことが、今中小企業の人たちやいろいろな人たちが戸惑っている原因なんです。極端なことを言えば、アメリカのコロンビア大学の教授が、あるいはまた向こうの銀行のエコノミスト等の連中が、日本が本格的に貿易摩擦やあるいはまた不均衡を解消する、そのためには円の価値はどのくらいが妥当か、もう既に百四十円台とか百六十円台、こんなことまで言っているのでしょう。そういうときに、日本として二百円台の円の価値に対する取り扱い、その効果、こういうことさえ出ないというのはちょっとおかしいと思うのだな。やはり、そういうことを明確にして、それぞれの活動がちゃんとできるようにしなければいかぬと思う。あなたが答弁できなければ、長官、答弁してください。
  251. 金子一平

    金子国務大臣 むしろ私ども、そういった計算が簡単にできることを望んでおるのですが、やはりなかなか経済官庁としての経企庁が、材料不足で、すぐ計算できるかというと、それは簡単にいかないと思うのです。  特に、先ほど来御説明申し上げておりますように、アクションプログラムの中の関税障壁の撤廃は実行して来年の一月だ、あるいは非関税障壁の幾つかの規制緩和は来年の三月だ、六月だというようなことのずれもございます。ごく大づかみに、もうGNPはこれぐらい上がりますよとか、何円になればこれぐらい下がりますよとか、正直言って、私どもも一つの目安が欲しいくらいに思っているのですが、なかなかにアメリカなんかとは材料が違う。アメリカはいろいろな資料が過去の経験からそろっているようでございます。それが日本にはないものですから、正直言ってできないというのが現状でございますけれども、ひとつ私ども、中小企業の皆さんも一つの目安にできるような何らかの手がかりを早く見つけたいと考えておる次第でございます。
  252. 田中慶秋

    ○田中(慶)委員 私は、できないのではないと思うのです。日本にも四十八年のオイルショックがあるでしょう。五十三年の第二次オイルショックもあるのです。そういう貴重な経験もファクターとして使うことは十分できるわけですから、はっきり申し上げて、やれないのじゃなく、やる気があるかどうかの問題だけだと思う。まして今これだけ深刻になっている。そしてまた来年以降こういう問題があるわけです。今アメリカが言われている黒字減らしをそのとおり約二百億ドルするということになると、それだけでも大体四兆円ぐらい、日本の輸出産業に従事する人たちに影響が出てくるだろう、こんなことが言われているわけでしょう。ですから、そういうことを含めてこの辺は積極的にやっていただかないとだめだと思うのです。やれないのじゃなく、やる姿勢とそういう方針を出さないといかぬじゃないかと私は思うのです。  そんなことを含めて、時間も来ましたので、最後にその辺についての決意を述べていただいて、私の質問を終わらせていただきたいと思います。
  253. 金子一平

    金子国務大臣 大変難しい御注文をいただきまして、正直言って自信がございませんけれども、しかし、日本経済の先行きに不安を与えないような経済政策だけはしっかりこれからも裏づけしていきたいということを申し上げておきたいと思います。
  254. 田中慶秋

    ○田中(慶)委員 以上で終わります。
  255. 竹内猛

    竹内委員長 次に、藤田スミ君。
  256. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 私は、まず最初にジャパンライフの問題についてお伺いをしたいと思います。  ジャパンライフの問題を、ある人は東のジャパンライフ、西のベルギーダイヤモンド、こういうふうに言っています。あるいはまた豊田商事の次にジャパンライフ、こういうふうにも言われております。ジャパンライフは健康布団を中心にいたしまして、マルチまがい商法と催眠商法を一体化させて急速に成長してきましたけれども、ここに来てマルチ特有の限界性から販社を中心に倒産が続出してきております。経企庁及び通産省はそれらの実態をどのようにつかみ、どう対策を立て、どう指導しようとしておられるのか、まず最初にお伺いをしたいと思います。
  257. 横溝雅夫

    ○横溝政府委員 国民生活センターの相談窓口に寄せられましたジャパンライフに関する相談件数は五十九年度二十七件、六十年度は九月末現在で二十六件でございますが、生活センターに寄せられている苦情相談の中身といたしましては、今のところ苦情より問い合わせ的なものが多うございまして、苦情につきましても、センターのあっせん等で大体解決がついておるという状況でございます。  今後の対応ということでございますが、近年の消費者取引形態の多様化、消費者ニーズの多様化等の中で、消費者取引における消費者トラブルが多発しているわけでありまして、政府といたしましては、消費者被害の未然防止を図る観点から、去る十一月一日の消費者保護会議におきましても、悪質な商取引の防止等を重点項目の一つとして掲げておるわけでありまして、この消費者取引に的確に対応するため、実態の究明に努めるとともに、悪質な事犯の取り締まり体制をさらに強化することを決定したところでございます。  経済企画庁といたしましても、国民生活センター等を通じまして、今後とも積極的に啓発活動を推進する等、消費者被害の防止に努めてまいりたいと存じております。
  258. 山下弘文

    ○山下説明員 通産省の方に参っておりますジャパンライフ関係の相談、苦情の件数でございますけれども、五十九年度二十八件というふうに承知しております。そのうちの半分以上は単純な相談あるいは問い合わせという性格のものでございまして、ジャパンライフのシステムがマルチ商法ではないか、私どもの訪販法の連鎖取引に該当するのではないかというような問い合わせがほとんどでございます。一部、数件でございますけれども、商品を買ったけれどもこれを解約したいというような話が参っておりまして、それにつきましては私どもの相談窓口でジャパンライフの方につないで処理をしてきておるところでございます。
  259. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 きのうもジャパンライフは販売方法の是正を決めたという報道をしております。私は、あれはあくまでも世間の批判をかわすためであるというふうに思っております。同時に私は、国民生活センターも通産省もこの問題に対して実態をもっとよく把握していただきたいと思うわけです。  そこで、私はあらかじめ大臣に販売促進資料、いわゆる「販促資料」と書いた資料をお渡ししております。どうかこれをごらんいただきたいわけですが、訪問販売法の第三条には「販売業者は、訪問販売をしようとするときは、その相手方に対し、販売業者の氏名又は名称及び商品の種類を明らかにしなければならない。」こういうふうに書いておりますね。だから私が販売業者だとしたら、まず訪問をして、私はジャパンライフから参りました、そして健康布団を売りに参りましたというふうにあいさつをしなければいけないと書いているわけです。  ところが、この「販促資料」というのを見てみますと、これは言ってみれば訪問販売員の教科書のようなものをジャパンライフがつくっているわけですが、大臣、この「販促資料」の二枚目、「紹介の仕方」というところをごらんください。ここではこういうふうになるわけです。Aというのは訪問販売員です。Bは紹介者です。Cはお客さんです。そしてこう書いてあるのです。Aはお客さんを絶対に見ない、我関せずの顔をしていればよい、客に訪問の予告をする必要はない、大分略して言っていますが、それから訪問販売員は一緒にお茶でもと誘われない限り車にいるか庭を見ていればよい、仮にお茶をよばれても静かに座ってBとCの話に入らない方がよい、黙っている、そして紹介者と客と話をするのが一段落するのをじっと待て、名刺は出さないこと、こういうふうに書いています。これは明らかに訪問販売法の第三条に抵触するのではないでしょうか。
  260. 山下弘文

    ○山下説明員 先生指摘のとおり、寝具の販売にも訪問販売法適用がございますけれども、この三条には御指摘のような条項がございます。相手方に対して業者の氏名あるいは名称、商品の種類を明らかにしろ、罰則はございませんけれども、そういう規定で訪問販売の適正化を位置づけております。
  261. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 そうするとこれは第三条違反行為ということになりますね。
  262. 山下弘文

    ○山下説明員 私どもの相談窓口で承知しておる限りでは必ずしもそういう苦情を受けておりませんのであれでございますけれども、そういう事実が行われておれば御指摘のとおり三条違反ということだと思います。
  263. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 さらにこの「販促資料」によりましたら、これは二枚目の下の方に書いておりますが、親戚の人に紹介されて使ってみらよく眠れたわ、便秘は治るし、腰痛は治るし、結構調子がいいので友達に話したら、ぜひ紹介してくれと言われて今説明して届けてきたところなの、こういうふうに言えというふうに書いているわけです。  さらにこれの五枚目のところをめくっていただきましたらわかりますが、心臓の弱い人、血圧の高い人、冷え症の人、ぜんそくの人、気管の弱い人、エトセトラなどには最高ですね。口から出ほうだいに何でも治るというふうに宣伝してこい。これが「販促資料」の効能書きになっているわけです。これは明らかに羽毛布団、健康布団の薬効をうたっている。薬事法からして違反ではないかと思いますが、いかがでしょうか。
  264. 森仁美

    ○森説明員 ただいまお尋ねにありましたような効能、効果とおぼしきことにつきまして、これらにつきましてはいずれも薬事法に基づきます承認された効能、効果には入っておりませんので、そのような効能、効果を標榜するということがありますと、これは医療用具でございますヘルスパットを販売するその時点において薬事法に違反すると考えております。
  265. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 ということになりましたら、これは当然業者に対して指導するべきであります。このような「販促資料」をやって、そして訪問販売員を指導するというようなことはやめさせるようにするべきだと思いすが、その点はやっていただけますね。
  266. 山下弘文

    ○山下説明員 先生先ほど御指摘がございましたように、昨日ジャパンライフ社の方で従来の販売の方式を改めるというようなことを発表いたしております。そういうようなこととも絡みまして私どもも今御指摘のようなことが行われないように、ジャパンライフの方に申し入れをしておきたいというふうに思っております。
  267. 森仁美

    ○森説明員 私どもも既にその指示を東京都にいたしておりまして、東京都からの報告によりますと、その販売員用のテキストの回収、それから販売員がそのようなことを、仮にテキストがないにしましても申すことのないよう、担当者に対しまして厳重な注意をするという措置を既にとっておりまして、報告によりますと販売員用のテキストは既に回収が終わっておるというように聞いております。
  268. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 私どもは、このように法に反する行為を公然と行って、そして巧みに法の網をくぐり抜けながら今日数多くの被害者を出してきている、こういう業者に政治家が数多く関与しているというところに非常に大きなもう一つの問題点があると思うのです。  大臣、そこで私がお渡しをしておりました二つ目の資料「日本ヘルスカウンセラー協会互助会の皆様へ」ということでジャパンライフ株式会社代表取締役社長相川氏が出している文書をごらんください。ここの中にこういうふうに書いています。弊社の健康産業を新しい日本の基幹産業とすべく、政界において多大のご協力をいただき、また日頃より何かとご指導をいただいております自由民主党防衛政務次官、参議院議員・村上正邦先生を応援するため、弊社といたしましても党員・党友の拡大に協力いたしたいと考えております。  つきましては、日本ヘルスカウンセラー協会互助会の会員の中より、貴方様を自由国民会議の党友に推薦し、併せて入会していただきましたので、ご了解いただきますようお願い申し上げます。また、会員(党友)になられました貴方様には、様々な特典がございますので、是非ともご利用いただきますようご案内申し上げます。  いずれ近いうちに、自由国民会議より会員証等が貴方様宛に送付されますので、大切に保管下さい。  尚、年会費一万円につきましては、皆様にはご負担をおかけいたしませんので、併せてご承知いただきたいと存じます。もう一枚の方は山口淑子参議院議員を支援するためのものであります。  また、現職大臣で山口労働大臣がジャパンライフのヘリコプターを使って選挙区入りをしたということはまだ記憶に新しいところですけれども、ジャパンライフが強制的に政治献金を集め、そして政治団体としてつくった健康産業政治連盟というものがありますが、その政治連盟が献金した政治家、これも非常に数多く言われております。  私はここにその一つ、中曽根総理に対して行われた政治献金の一覧を、官報によってこういう資料を持っておりますが、近代経営問題調査会、近代政治研究会、昭和文化協会並びに創造文化研究会、朋友会、それぞれ二百万円ずつ、一千万円の政治献金を受けております。これは四十九年の三月三十一日報告ですから、ほんの氷山の一角かもしれません。そして、中曽根総理だけではなく、数多くの政治家の名前が、しかも、そうそうたるメンバーが並んでいらっしゃる。  そして、この政治家の皆さんは、それではジャパンライフに対してどういう役割を果たしておられるのかということは、これは「経営者月報」、ジャパンライフが毎月出しております。これはコピーですから白黒ですけれども、カラフルの大変きれいな雑誌になっています。このジャパンライフ発行の「経営者月報」の中には、大臣にも一枚渡しておりますが、これは山口淑子参議院議員です。見開きになっておりまして、これはちょっととじが悪いですからあれですけれども、見開きになっておりまして、大変丁寧に山口淑子議員は非常にいろいろと言っておられるわけですね。  もう一つの、武道館で何か大会をやられた「その記念大会に駆けつけてくれた来賓の方々」というのをごらんください。私は見ていて、日ごろ本当に親しくしておられる方もおられて、げっそりしましたよ。現在の増岡厚生大臣、前厚生大臣の名前もここに出ておりますね。山口淑子参議院議員、先ほど党友会を集めてもらっていた村上正邦参議院議員も出ております。塩川正十郎という元運輸大臣もあります。どういうわけか民社党の委員長もここにあいさつに行っておられます。そのほか、おなじみの方ばかりでしょう。一体こういうふうな政治家と業者との持ちつ持たれつの関係、こういうのは政治家の倫理としてどういうふうに思われますか。被害者の一人は、会社を信用させ、宣伝に一役買った政治家の責任は重大である、こういうふうに訴えておられますけれども、長官はこの問題をどういうふうに受けとめられますか。御見解をお聞かせください。
  269. 金子一平

    金子国務大臣 私も、きょう初めて先生の御指摘の今の写真なり記事を拝見いたしまして、こんなことがあったかなという驚きをもって拝見した次第でございます。  そこに名前の上がった方の大部分は、恐らく善意をもって、それこそだれかの紹介で、おい入ってやってくれよぐらいの頼まれ方をして軽く引き受けた人が多かったのじゃなかろうかと思うのでございまするけれども、少なくともこういう商法に名前を利用されるようなことは、政治家としてあってはならないことでございまして、お互い身を正さなければいかぬなという感じがしみじみといたした次第でございます。
  270. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 このジャパンライフ山口会長ですね、きのうやめられたということですが、ジャパンライフの会長は、五十一年ごろに国会でマルチ商法と非常に批判されたジェッカーチェーンの社長であったわけです。そして公取の行政指導を受けまして、そしてその後、会員の人から損害賠償の請求の訴訟も受けております。それから彼はジャパンライフを五十四年に設立しているわけですが、五十八年の三月に二億六千万円の脱税で、懲役二年、執行猶予四年の判決も受けていると言われているんです。その後この人は、さすがに社長を辞任しまして会長になりましたけれども、オーナーとして経営に当たっているわけです。だから、世に知られた、まあ言ってみたら世に知られた前科のある人、こういうふうに言っても言い過ぎでないような人なんです。  私はたから、軽く引き受けた、まあ軽くにもいろいろありますけれども、これは余り軽過ぎるじゃないかというふうに思うのです。この人自身こう言っているんですよ。これは私が言っているのじゃなしにこの人自身が言っている言葉ですが、この金は共産党を除く政党の政治家に配るのが目的だ、政治家にまいておくからこそ、いろんな取り締まりにひっかからず皆さんの販売活動がスムーズにいくんだ、それを考えれば当然の金であって、これぐらいのものは安いものだ。随分なめられた話じゃありませんか。  だからこそ私は、今この被害者の皆さんが借金地獄で行方不明になったり自殺者まで出ている、そういうこの被害者の皆さんの声をもっと通産省もよく聞いて、そうして少なくとも在庫清算には応ずるように厳しく徹底した指導をするとともに、法違反は直ちに正していくように断固とした指導をしていかなければならないと思いますが、最後にもう一度長官の決意とともに通産省、厚手省の御意見を聞いてこの問題は終わります。
  271. 山下弘文

    ○山下説明員 ただいまの販売方式の変更に伴います既存の販売会社が持っております商品の取り扱いにつきましては、私どももそれの円滑な処理ということが大変大事なことであるということでジャパンライフにも指摘をしてございます。委託販売ということで私ども理解しておりますので、問題なく処理されるべきであるという立場で引き続き指導をしてまいりたいと思っております。
  272. 森仁美

    ○森説明員 私ども、薬事法を通しまして国民の健康という点を守ってきておるわけでございます。その意味で今後も厳しい目をもって動きを見詰めたいと考えております。
  273. 金子一平

    金子国務大臣 今それぞれの関係省からの責任者答弁がございましたが、私どももこういう商法をまかり通すわけにはまいりません。十分緊密な連絡をとりながら営業姿勢を正させたいと考えております。
  274. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 それでは次の問題に移ります。  円高差益の還元問題についてお伺いをいたします。  まず経企庁長官にお伺いをいたしますが、円高差益というものは、日本の経済が通貨面で評価され、円の評価が上がり、それによって得る利益であって、円高差益を受ける企業にとってはまさに不労所得であります。そしてその利益の性格上、全国民的に還元されなければならないものであるというふうに考えますが、一企業がみずからの経営体質を強化するためにだけ円高差益をため込むというようなことはあってはならない、私はそういうふうに思います。  そこでお伺いをいたしますが、石油連盟の会長が十一月の十三日の記者会見で、年内は円安時に輸入した原油を原料とする灯油が出回っているので、円高差益が効果をあらわすのは来年度になるというふうに言いまして、当面の値下げを否定いたしました。ところが、石油連盟の会長の会社であります日本石油精製の常務取締役は、五十六年の十月のある雑誌で「一月一日に原油価格が値上がりした場合には、その時点製品価格も値上げすべきだと思います。」こういうふうに言っているわけです。つまり、原油価格が上がったら即刻値上げをすると言い、そして円高差益が出たら効果が出るまで待ちます、こういうふうに言う、これは企業のエゴだと言えないか。これではいつまでたっても円高差益は還元できないんじゃないかというふうに私は思いますが、長官の御見解をお伺いしておきたいと思います。
  275. 金子一平

    金子国務大臣 基本的には私ども消費者保護の立場を貫いておりますから、円高差益は消費者に還元していくのが筋だ、そういうことで、各方面にもいろいろ要請をいたしておる次第でございます。  やはり業界は、円が下がればもうすぐ値段に反映させようという動きも出ておるわけでございますから、そこら辺は機を逸せず必要な手を打つことが必要だと思っているのですけれども、業界によっては先生も御指摘のように、過去のいろいろなストックの関係等で、ある程度猶予をくれというような業界もあるだろうと思うのでございます。いずれにいたしましても、関係省庁と十分連絡をとりながら消費者の利益を保護してまいりたいと考えております。
  276. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 それでは電力、ガス問題へ話を移していきますが、通産省にお伺いいたします。  現在の円高で九電力会社全体の円高差益を見ますと、一円の円高が一年続いたときに年間百二十三億円の差益が出る。したがって、一ドル二百四十二円の前回値上がり時の査定レートを基準にすれば、現在二百五円、きょうは二百二円ですが、そういうふうになっているわけですから、現在の二百五円が仮に一年間続いたといたしますと、百二十三億掛ける三十七円で、単純計算ですが四千五百五十一億円の円高差益が出るというふうになると計算しておりますが、いかがでしょうか。
  277. 川田洋輝

    ○川田説明員 お答えさせていただきます。  在庫品などの問題がございますけれども、それを省きまして為替レートの問題だけを取り出しまして算定をいたしますと、燃料の消費量その他の関係で端数は出てこようかと思いますが、円高が一円、一年間継続するとおおむね百二十億円の影響があるということで試算しておりますので、ほぼ先生がおっしゃったような数字かと思います。それで、二百四十二円から計算すると、今急な数字でございますのではっきり申し上げられませんが、おおむね先生のおっしゃったような数字になるのではないかと思います。
  278. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 さっき言いましたように電力会社については、五十五年値上げ時の査定基準が現状と大きく離れています。当時の査定時は為替レートが一ドル二百四十二円、原油価格はバレル当たり三十二ドル強。重油換算の燃料消費単価がリットル当たり六万二千五百六十円。そして、原子力稼働率は五五・八%、こういう状態であります。現在は為替レートが一ドル二百五円、原油価格は二十七ドル三十七セント、C重油についても六十年の十月から十二月で石油会社側が五万百円を提案しています。そして、原子力発電の稼働率は七〇%に上っています。それだけではなしに電力会社の広域運営による効率化も進んでおりまして、為替差益は先ほど指摘をしましたように四千五百五十一億円。そして原発の稼働率は一%その稼働率が上昇すると、百万キロワットの出力原発で年間十億円のコストダウンが出てくる。現在総出力千八百九十三万キロワットですから、一四・二%の稼働率の向上によって二千六百八十八億円のメリットが出てきているわけです。したがって、経営状況はとみに好転しているというふうに考えますが、いかがでしょうか。
  279. 川田洋輝

    ○川田説明員 先生ただいま御指摘ございました五十五年度の認可時の織り込みの燃料費に比べますと、例えば五十九年度実績あたり、かなり落ち込んでおりますことは確かでございます。しかしながら一方、電力会社は電力の安定供給その他のためにかなりの設備投資をいたしてまいっておりまして、資本費につきましてはかなり大幅に上昇いたしておりますし、五十五年に比べますと人件費その他の経費も上昇いたしてきておるわけでございます。したがいまして、全体の総合的な収支をよく見ていく必要があるというふうに考えておるところでございます。
  280. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 いろいろなコストアップ要因がある、こういうふうに言われているわけですが、私がいろいろ分析をして見ていきますと、むしろこのコストアップは通産省が指導してつくられたコスト増と言える性質のものが多いんじゃないかというふうに私は思いました。なぜなら減価償却費、これは確かにふえています。しかし、これは通産省が、査定時に定額法であったものを定率法に変えていかれたわけです。したがってここでコストがふえました。それから使用済み核燃料の再処理引当金も査定時にはなかったわけです。ところが、これも認められました。また修繕費の方も非常に急増しておりますけれども、これは浪費ではないかなと思うぐらいの数字になっています。さらに業務委託費というのもふえています。そして、これらの経費増は五十六年の三月期と六十年の三月期で比較をすると、九電力で締めて一兆二千八億円もふえている、こういう数字になっているわけであります。  こんな浪費体質にメスを入れなければならないと思いますが、こんなに経費がふえておりながら企業体質はどうかというふうに調べていきますと、九電力の合計で内部留保は五十六年三月期の一兆三百八十九億円から六十年三月期には一兆九千三百五十六億円、ほとんど二倍に近い数字になっています。さらに六十年三月期の利益処分で千七百九十三億円の内部留保を積み増すことを決めておりますから、これで計算をいたしましたら、もう倍以上、こういうふうに内部留保はふえているわけです。いかに現在の料金水準がぼろもうけの体質を保障しているかということは、これで明らかだと思いますけれども、その上に現在は円高差益というものが加わっていくわけですから、笑いがとまらないと申しましょうか、この円高差益を値下げで還元していくことの余地は十分あるし、それはどうしてもやらなければならないものだと思います。経企庁長官、いかがでしょうか。
  281. 金子一平

    金子国務大臣 所管の通商産業大臣と十分緊密な連絡をとりながら、この問題の処理に当たってまいりたい。私どもとしては冒頭に申し上げましたように、できるだけ消費者のために円高利益は還元してもらいたい、こういう気持ちでおることは当然でございます。
  282. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 通産省、今大臣がそういうふうにおっしゃいました。ぜひそういう方向で、これは早急に消費者に還元するということで取り組んでいただきたいと私は思います。
  283. 川田洋輝

    ○川田説明員 現在の円高の問題につきましては、まだ円高になりまして日が浅うございますし、タイムラグの問題もございますので、私ども当分の間、事態の推移を慎重に見守らせていただきたいと考えておるところでございます。ただ、ある時点が到達いたしますれば、見きわめをつけまして、どういう形をとるのが一番望ましいかというようなことについては慎重に検討させていただきたいと考えております。
  284. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 それは長官が一生懸命消費者の立場で力説しておられることとえらい話が違いますよ。一体いつごろをめどにそういう結論を出されるおつもりなんですか。
  285. 川田洋輝

    ○川田説明員 私どもでは、現在の円高が続いていくという状況下であれば、六十年度の決算が固まりまして、それに基づいて六十一年度の収支見通しなどが立てられる時点一つの節目かと考えております。
  286. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 大分話がえらい遠くの方にびゅっと延びていきました。さっきから言っているように、確かに経費はふえたけれども内部留保の方はもう倍以上にふえている、明らかに相当の余裕を持った経営状態になっている上に、これがかぶさってくる、そういう点では話がずっと先に行くような御答弁、私は納得できません。けれども、もう一つガスの問題がございますので、この問題はそのときに御答弁ください。  ガス会社の問題の方はもっとひどいのです。ガス会社についてもLNGなど原料輸入をしているわけですが、当然円高差益があります。しかし、ガス会社はいつも電力会社の陰に隠れて、電力会社が料金の長期安定だからそれに右へ倣えで済ませてきました。だがガス会社の経営内容を詳しく分析していけば、電力会社に右へ倣えではなく即刻円高差益を還元するべき状態にある。その理由の第一は、ガス会社はLNG導入がほぼ完成して、細々とした保安設備の更新は確かにありますけれども、巨大な設備の導入というのはもうなくなってきているわけです。二つ目の問題は、料金水準が高いために驚くほどの内部留保をふやしています。大手三大ガス会社で見ますと、内部留保は五十六年三月期の千百四十六億円から六十年三月期には二倍以上の二千七百九十五億円になっているばかりか、六十年三月期にさらに三百九十三億円の利益処分による内部留保を積み増していきますと、これはざっと三倍に近い、そういうような状態になっているわけです。だから私は、ガス会社に円高差益を留保する合理的な理由はもうない、値下げしなければいかぬと考えます。この点と先ほどの答弁とあわせてお答えください。
  287. 中尾舜一

    ○中尾説明員 ガス事業の設備投資について御指摘がございましたが、ガス大手三社について申し上げますと、石油代替エネルギーの導入促進あるいはガスの安全性の向上という観点からしNG化を積極的に推進してきたわけでございますが、今後の設備投資につきましてはまだ当分の間LNG関連の設備投資が続くと考えておりますし、そのほか将来の需要増に対応した設備投資あるいは保安対策、これは電力に比べましてもガスの場合には特に保安対策の充実、保安水準の向上ということが非常に重要でございまして、その関連の設備投資等がかなり見込まれるということでございまして、これから設備投資がダウンしていくという状況にはないと考えている次第でございます。
  288. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 私は本当に驚くべきお考えだと思うのです。現在千カロリー当たりの料金というのは、灯油が九円四十九銭ですね。これに対してガスは十六円八銭、電気は三十円七十一銭、こうなっているわけです。言ったらガスは暖房用で灯油に負けているわけです。だから需要が低迷しつつある。ガス会社の方はガス料金を値下げしたくてしようがないけれども、そのことが電力料金の値下げにつながっていくと困るからということで通産省が抑えているのだというような話が聞かれますよ。そんなふうに言われても仕方のないような答弁だと思いますが、違いますか。
  289. 中尾舜一

    ○中尾説明員 ガス料金につきましては、確かに先生おっしゃるように例えば暖房で申しますといろいろ競争状況にございます。電気の暖房でございますとか、あるいは灯油との競争がございます。ただ、現在のガス価格の水準につきましては総括原価主義に基づいて算定したものでございまして、私どもとしては適正なものというように考えている次第でございます。
  290. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 適正なものの上に円高差益が乗っているわけでしょう。しかも内部留保がこんなふうに三倍もふえているというような状態で、なおかつその上に乗っている。当然国民に返すべき円高差益が乗ってくるわけですから、電気とガスといつでも二人連れでないとどうにもならぬというようなことじゃなしに、少なくとも早速に料金の改定を行うべきじゃないか、こういうふうに考えるわけです。  時間が来ましたので、経企庁長官に最後に、この問題についての御答弁をお願いいたしますとともに、もう一つ、円高差益に対して円高差損の問題が大変深刻になってきています。この中で中小企業の業者はどういうふうに言っているかというと、中小企業の倒産はここ数年来非常に多くなっている、円高がそれに追い打ちをかけ、拍車をかけてきている。しかし何といっても苦しくなったということの一つに、五十五年の電力料金の五割以上の大幅引き上げが響いているのだ。したがって電力料金を値下げし、消費者に利益を還元すべきだと考える。特に我々中小企業は今まで高い電力料金で苦しめられてきているのだから中途半端な減税策よりもその効果は大きいものである、こういうふうに声として言っています。私はせんだって地元堺の自転車業界と敷物業界を歩いてきました。既に値切りが始まっています。それから来年の一月までは注文はあって仕事をしているけれども、そこから先の見通しかなくなったと言っているのです。このまま円高がいつまで続くやらわからない状態の中では、もう一寸先がやみどころの話じゃないのだ、こういうふうに大変深刻な声を聞かされました。  私は、内需拡大ということをとりわけ力を込めて言っておられる経企庁長官として、こういう円高の打撃を受けている中小企業に対して緊急の対策をお願いしたいわけです。それは融資もあるでしょう。返済期間を延長するとか金利をうんと引き下げていくとか、そういうことも含めて融資の条件をうんと緩和して、中小の業者に少なくとも年内に救いの手を出しながら励ましていただきたい、あわせて、減税以上にガス、電力料金の引き下げは効果があるのだと訴える声に対して経企庁長官はどう答えられるか、最後にお伺いをしておきたいのであります。
  291. 金子一平

    金子国務大臣 電気、ガスにつきましては、先ほど来担当の通商産業省から御答弁のありましたようにいろいろな問題を抱えておりますので、これは十分ひとつ検討していただきまして、できるだけ早い機会に、円高が定着したところで利益を消費者に還元してもらうような措置を講じていきたい、そういう気持ちでございます。  それから、中小企業の受けておる今度の打撃につきましては、私どもも十分配慮しなければいかぬというふうに考えておるわけでございまして、特に年末を控えて先行きに心配をされる方もだんだんとあるわけでございますので、融資の問題はもちろんでございますが、転廃業、必要な措置でございますとか、国はもちろんでございますが地方団体も援助するとか、いろいろな手を今通産省で検討してもらっておりますし、その一部は既に通達が出ておると思うのでございますが、十分緊密な連絡をとって必要な手を差し伸べるように努力してまいります。
  292. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 中小企業庁の方から来ていただいているのですね。大変気の毒ですね、御答弁いただいて終わります。
  293. 長田英機

    ○長田説明員 せっかくでございますので……。  中小企業の問題につきましては、この円高による影響を非常に私ども心配しておりまして、適時適切に対策を講じていきたいと思っておるわけでございます。先般の調査でも、相当部分に影響も出てきているということでございますので、金融面の措置などいろいろと早く手を打っていくように検討している状況でございます。
  294. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 終わります。
  295. 竹内猛

    竹内委員長 次回は、来る十二月十二日木曜日午前九時五十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時二分散会