○正森
委員 門田審議官に念のために聞いておきたいのですが、あなた、真利率という言葉を使われましたね。それで、念のために
年金数理部会の五十九年四月二十二日の報告書を見ましたけれ
ども、ここでは真利率というのを多義的に使っているようです。
例えば十五ページに用語の
説明がございます。その「真利率」のところを見ますと、「保険料を算定する場合、将来にわたる
給付費とか
掛金収入を一時点の値に換算するため使用する利率を予定利率と言い、長期的な運用利回りの
水準等を考慮して定められねばならない。ベース・アップや
年金スライドが
制度に織り込まれている
公的年金の
財政を
考える場合は、物価あるいは賃金の上昇率を割り引いた実質利回りを意味し、この実質利回りを真利率と言う。」こうなっています。
そして百十五ページに、「真利率の推移」という表が載っておりますが、それを見ましても、「運用利回り等の賃金上昇率に対する真利率」あるいは「運用利回り等の消費者物価上昇率に対する真利率」というように併用して使われていて、何か真利率と言えば常に賃金上昇率に対する実質的な
割合を真利率と言うというようには一元的には言っていないんです。だから真利率と言葉をお変えになったら、それで真利率とは必ず運用利回りと賃金上昇率との実質的な比較をいうものであるとは、一元的にこの報告書では言っていないように思うんですね。ですから、我々は真利率という言葉を使っておりますという一言で、真利率という言葉を使っても実質金利という言葉を使ってもいいのですけれ
ども、
年金積立金がどういうように実質的に価値がふえるかということを
考える場合には、やはり真利率とか実質金利とかいう言葉に惑わされるのじゃなしに、運用利回りが消費者物価上昇なら消費者物価上昇に比べてどれだけ実質価値を維持するか、あるいはふえるかという
内容で議論しなければならないのじゃないかというように思います。その点を念のために申し上げておいて、先回の留保した問題については一応終わらせていただきたいと思います。
それでは時間の関係で、次の問題に移らせていただきます。お手元に資料を、この前お配りしたのですが、お持ちでないといけませんので、念のためにもう一回お配りしておきます。
まず、
厚生省に伺いたいと思います。えらい失礼ですが、私は、予算
委員会で
質問をいたしましたので、時間の関係もございますので、それを
前提にして議論を進めますので、御了承を願いたいと思います。
予算
委員会で私が
質問をいたしましたときに提出いたしました資料は、来年からの六千八百円の
基礎年金の保険料が一万三千円にまで上昇する場合、それから、もう
制度が成熟いたしまして一万三千円で推移する場合、両方提出をいたしましたが、今回は簡便にするために、一応六千八百円から出発する場合のみについて御提出しております。そのときに、きょうは来ておられないかもしれませんが、吉原
年金局長がお答えになりまして、御提出の資料は物価上昇ゼロ、実質金利三%という、五十年、六十年の先を見ればあり得ない
前提に基づいての御議論でございますという趣旨の答弁をされたと思うのです。しかし、仮に
基礎年金というものを
考える場合に、別の答弁で私の議論に
異議を唱えられる場合なら格別、そういうように何年間かにわたって物価上昇をゼロ、実質金利を三%というあり得ない
前提に基づいての資料でございますというような答弁は、これは甚だ数学的ではないのではないかというのが、ここに提出をいたしました一枚目の資料でございます。
この一枚目の資料を見ていただきますとわかりますように、念のために物価上昇ゼロの場合だけでなしに、物価上昇が年五%、まあ経済社会の
見通しては三%ですけれ
ども、仮に五%といたします。そして、私が予算
委員会でも申しましたが、実際上問題になるのは実質金利であるということで、実質金利を三%というようにいたしました。
そうしますとどうなるかといいますと、物価上昇をいたしますから保険料というのはそれに応じて上がっていくわけですね。当然
年金もそれに応じて上がっていく。御
説明申し上げますと、例えば五%上がりますと、一九八六年、
昭和六十一年には六千八百円の保険料は七千百四十円にしなければならない。そのかわり、同様に修正
基礎年金で六十万円のものを六十二万円もらうという計算になります。
そういうように、以下順次物価上昇でずっと上げていきますと、これは五%でもえらい天文学的な
数字になるので、この方が五十九歳になられたときには保険料を幾ら払わなければならないかというと、一万三千円ではなしに九万一千五百二十円払わなければならない、こういうことになるんですね。そのかわり、もらう方の
年金もふえまして、年六十万じゃなしに四百二十二万四千円もらうことになるという計算になるわけであります。
それで、結局納めたものが、実質金利三%で計算して果たして元を取れるであろうかというふうに計算いたしますと、物価上昇ゼロの場合の七十五歳を見ていただきますと七百七十七万円まだ国の方に残っておるという計算になります。それが物価上昇五%の場合はどうなるかというと、
年金もべらぼうに上がりまして、六十万円もらうものが、名目では九百二十二万円ももらうことになる。そのかわり、運用されました自分の納めた保険料の方もぐんとはね上がりまして一億一千九百五十五万円まだ残っておるということになります。同様に、八十歳になりますと、もらう
年金の方は千百七十六万円にもはね上がりますが、残っている自分の納めた保険料は一億一千四百四十万円ということになります。結局、この人がいつまで生きれば元が取れるのかというと、九十二歳のところを見ていただきますと、九十二歳のときにやっとマイナスになるんですね。これは物価上昇をゼロとした場合も、物価上昇を五%とした場合も、結局保険料がふえればもらう方もふえるという計算になるわけですから、同じ答えが出てくるわけなんですね。
だからそういう意味からいいますと、別の論拠を理由にされるならともかく、吉原
年金局長が言われたように、物価上昇ゼロ、実質金利三%というあり得ない
前提で物を言っておられるというような反論の仕方というのは、数学的に合致しないのじゃないですか。問題は、結局実質金利が幾らかということが問題になるのです。もしあなた方が、吉原
年金局長はあえてお答えになりませんでしたが、実は三十年も五十年も
考えれば、実質金利が三%どころか、一%になりゼロになり、あるいは狂乱物価のようにマイナスになる場合もあるんだ、だからそんなことは十分な試算じゃないんだと言いたいなら、それは政府がみずからの「一九八〇年代経済社会の展望と指針」というものを将来にわたって経済上維持する自信がない、将来大インフレ政策を行って国民に大損害を与える、その場合には正森議員の計算のような結果は出てきませんよということを言うのに等しいのですね。そう言うのですか、一課長が。それならそれで答えてください。そうすればまた
質問の仕方が変わってくる。