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1985-12-11 第103回国会 衆議院 公職選挙法改正に関する調査特別委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十年十二月十一日(水曜日)     午前十時二分開議 出席委員   委員長 三原 朝雄君    理事 伊藤 公介君 理事 奥野 誠亮君    理事 小泉純一郎君 理事 羽田  孜君    理事 佐藤 観樹君 理事 山花 貞夫君    理事 伏木 和雄君 理事 岡田 正勝君      上村千一郎君    小宮山重四郎君       佐藤 一郎君    坂本三十次君       塩崎  潤君    西山敬次郎君       額賀福志郎君    森   清君       角屋堅次郎君    上西 和郎君       川俣健二郎君    堀  昌雄君       木内 良明君    斉藤  節君       中村  巖君    二見 伸明君       小川  泰君    三浦  隆君       野間 友一君  出席国務大臣         自 治 大 臣 古屋  亨君         国 務 大 臣         (内閣官房長官藤波 孝生君  出席政府委員         内閣法制局長官 茂串  俊君         法務省訟務局長 菊池 信男君         自治省行政局選         挙部長     小笠原臣也君  委員外出席者         議     員 森   清君         議     員 山花 貞夫君         議     員 伏木 和雄君         議     員 岡田 正勝君         議     員 江田 五月君         議     員 菅  直人君         法務大臣官房司         法法制調査部司 中神 正義君         法法制課長         厚生省健康政策         局指導課長   入山 文郎君         自治省行政局選         挙選挙課長   吉田 弘正君         自治省行政局選         挙部管理課長  岩崎 忠夫君         自治省行政局選         挙部政治資金課         長       中地  洌君         特別委員会第二         調査室長    岩田  脩君     ————————————— 委員の異動 十二月十一日  辞任         補欠選任   斉藤  節君     二見 伸明君   中村  巖君     木内 良明君   小川  泰君     三浦  隆君 同日  辞任         補欠選任   木内 良明君     中村  巖君   二見 伸明君     斉藤  節君   三浦  隆君     小川  泰君     ————————————— 本日の会議に付した案件、  公職選挙法の一部を改正する法律案金丸信君  外六名提出、第百二回国会衆法第二九号)  公職選挙法の一部を改正する法律案田邊誠君  外六名提出、第百二回国会衆法第三七号)      ————◇—————
  2. 三原朝雄

    三原委員長 これより会議を開きます。  第百二回国会金丸信君外六名提出公職選挙法の一部を改正する法律案及び第百二回国会田邊誠君外六名提出公職選挙法の一部を改正する法律案の両案を一括して議題とし、審査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。坂本三十次君。
  3. 坂本三十次

    坂本委員 私は、適当な機会に本委員会に対し、議員固有の権利に基づいて、いわゆる六・六案に対し、全面修正案提出したいと考えておりましたが、いまだ党内手続が進みませんで、正式な修正案提出できないことをまことに遺憾に思っております。しかし、各党委員の御意見も一通り承りましたので、この際、私の修正意見を申し述べ、最後に、政府並びに各党代表の御意見を承りたいと思います。  まず、私が想定しておりました修正案文を朗読いたします。     公職選挙法の一部を改正する法律案に対する修正案   公職選挙法の一部を改正する法律案の全部を次のように修正する。     公職選挙法の一部を改正する法律   公職選挙法昭和二十五年法律第百号)の一部を次のように改正する。   附則に次の八項を加える。  20 昭和六十年に行われた国勢調査の結果による衆議院議員の各選挙区の人口当該選挙区において選挙すべき議員の数をもって除して得た数(以下「選挙区別議員一人当たり人口」という。)のうち最も大きいものを選挙区別議員一人当たり人口のうち最も小さいもので除して得た数値が三以下となるよう、衆議院議員の各選挙区において選挙すべき議員の数は変更しないで、是正対象選挙区及び当該是正対象選挙区の属する都道府県の他の全部又は一部の選挙区の区域変更するものとする。  21 前項規定する是正対象選挙区とは、選挙区別議員一人当たり人口の最も大きい選挙区及び選挙区別議員一人当たり人口の最も小さい選挙区からそれぞれ順次六十五番目の選挙区まで配列し、その順位が対応することとなる選挙ごとにそれぞれ選挙区別議員一人当たり人口の大きい選挙区の選挙区別議員一人当たり人口選挙区別議員一人当たり人口の小さい選挙区の選挙区別議員一人当たり人口で除し、当該除して得た数値が三を超える場合における当該数値に係る選挙区をいう。  22 選挙区別議員一人当たり人口を同じくする選挙区についての前項規定の適用については、政令で定める。  23 内閣総理大臣は、速やかに、附則第二十項の規定に基づく同項に規定する選挙区の区域変更具体案作成について臨時選挙審議会諮問しなければならない。この場合においては、その答申の期限を定めるものとする。  24 内閣総理大臣は、前項諮問に対する答申があったときは、直ちに、その答申に基づく衆議院議員選挙区の区域変更に関する法律案国会提出しなければならない。  25 附則第二十三項の規定による内閣総理大臣諮問に応じて選挙区の区域変更具体案作成について調査審議するため、総理府に、臨時選挙審議会(以下「審議会」という。)を置く。  26 審議会は、委員七人以内で組織し、委員は、学識経験のある者のうちから、内閣総理大臣が任命する。  27 前二項に定めるもののほか、審議会の組織及び運営に関し必要な事項は、政令で定める。     附 則   この法律は、公布の日から施行する。  以上でございます。  次に、その趣旨を御説明申し上げます。  第一に、最高裁判決趣旨に従って適切な投票価値平等化を図ることは申すまでもない至上命題であります。具体的には、一票の格差はおおむね一対三以内とすることであります。  我が国経済高度成長に伴い、いまだかつてなかった人口の急激な都市集中が行われました。その結果、過密と過疎、光と影の深刻な社会問題が起きております。戦前のように、大都市はまれでほとんどが農村地帯であり、その間に中小都市が散在する社会構造では、一対一が理想であったかもしれません。しかし、国土の均衡ある発展を望む国民的立場からは、最高裁判決の中で推測される一対三以内の格差は許さるべきであると考えております。人口の急激な移動に正比例して直ちに政治権力配分も変化させることは、国民生活の安定と均衡を維持したい立場からは問題が多過ぎると思います。  第二は、現行選挙区制の堅持であります。  現行選挙区制は、大正十四年以来約六十年の間国民に定着し、なじんできた制度であります。制定当時の若槻国務大臣国会での提案理由説明の中で、定数配分はまず府県に基礎を置き、次いでその間を三ないし五人の選挙区に分割する、二人区とか六人区は認めないとの趣旨の発言をしております。その後幾たびかの改正を経ても、奄美のような特例を除いては、ずっと三ないし五人区の制度が守られてまいりました。このたび六・六案では突如として、緊急避難だから二人区特設もやむを得ないと提案されてきました。  選挙制度の問題は、相撲で言えば、力士同士勝負の問題でなく、土俵づくりの問題であります。議会政治基礎づくりの問題であります。力任せの勝負の問題でなく、あくまで合意に基づくルールづくりの性格を持つ問題であります。横綱の千代の富士はもっと土俵を小さくせよと言い、若手の寺尾などが、今のままの広さでないと思う存分動けないから小さくするのは反対だと言い争ったときに、春日野理事長はどう裁くか。横綱横綱相撲をとりなさい、土俵の広さは今のままでいこう、こう言うに決まっておる。私も、衆議院選挙土俵の大きさを変えないという原則は、はっきり守った方がよいと考えております。  緊急避難という意味は、広辞林を開けば、「差し迫った危険状態からのがれるために、やむをえず他人に害を加えること。」と書いてあります。危害を加える方には便利な言い分かもしれませんが、危害を加えられた方は、とんでもないと言うに決まっております。まして、六・六案という一便法によって大切にしていた中選挙区制に風穴をあげられる方は、反対するのも当然と言えましょう。  緊急避難だから、二人区をつくるのは今度だけの例外だといっても、将来二人区をつくらない保証は何もありません。むしろ一度認めれば、次も前例に従って二人区をふやしていかざるを得なくなるのが常識でありましょう。六・六案なら四つ、十・十案なら七つと、今後ふえ続くことになります。また、一たび二人区を公認すれば、四人区は二人区と二人区に、五人区は二人区と三人区に分割すべしとの論が出てきても少しも不思議ではありません。だから、安易に二人区を新設することは問題が多過ぎます。結論として私は、三ないし五人の現行選挙区制を堅持すべきと考えております。  第三に、新たに臨時選挙審議会を設置することであります。  以上一、二の原則改正するためには、各選挙区の定数を変えないで、その区域変更する方法が最も適切であり、必然でもあろうかと思います。すなわち、各選挙区の定数現行のままの三ないし五人とし、いわゆる線引き変更によって一票の重さの格差是正する方法であります。これは現行選挙区制の本旨と沿革にかなった正攻法であると私は思っております。このため、内閣に新たに委員七人以内より成る臨時選挙審議会を置き、具体的な線引き作業を行わせることといたしました。直接利害関係の深い政党議員に細かい区割り作業を任せるよりは、中立的な、しかも小人数の第三者機関に作業してもらった方が、世論の納得のいく公平迅速な結論が得られるものと期待されます。この種の制度は、世界各国でも間間見られることであります。  第四は、昭和六十年十月一日国調の結果を基準とすることであります。それも、来年の確定値を待つまでもなく、今年十二月末発表の数値によるべきであると思います。  公選法には、直近に行われた国調の結果によって改正せよと明示してあります。そして、現在、何よりも国会に与えられた至上命題は、違憲判決された状態を完全に解消することであります。国調の結果が十二月下旬に発表されるのを待つまでもなく、同じ政府の行った今年の住民基本台帳人口有権者数の調べによれば、五十五年の人口基準の六・六案、野党案ともに、たとえ今国会成立しても、なお違憲状態が解消されないままに残存することは、火を見るよりも明らかであります。違憲から逃れるために、承知の上でなお違憲をつくることは、国会の権威の上からも認めるわけにはいきません。  特に十月一日以降は、両案とも、相撲で言えばまさに死に体であります。死に体死に体国会土俵の上で相撲をとる、まさにナンセンスの光景であります。このような重大な欠陥を持つ法案をなぜ今国会成立を急ぐのか、国民常識では納得のいくはずはありません。年末大バーゲンで欠陥商品を売り急ぐがごとしと言われてもいたし方ありません。衆議院議員の任期が目前に迫っているわけではありません。完全に違憲状態を解消し、選挙制度としても与野党に公平で整合性のとれた抜本案をつくるために、次の通常国会中に成立させるよう国会責任において取り組むべきであります。  以上、私の提案いたしました第一から第四の原則的ルールのもとに、複雑多岐な現実的諸問題を割り切って考えることが解決の早道であろうと信じます。複雑微妙な問題を大局的に単純に割り切る姿勢がこの際大切であると思います。この考え方は、とかく疑われやすい抜本改正までのいわゆる三段階論と異なります。今後国調ごと人口の変化により改正の必要が生じた際に、特に新たな法改正を必要とせず、そのままで改正の指針ともルールともなり得るものであります。その意味では、今後相当長期間にたえ得る抜本策と言えるものでありましょう。  最後に、時あたかも本院議長が収拾に乗り出されました。まことに時宜を得たものと評価し、議長調停の成功を期待しております。それには与野党とも大局的見地から議長に協力を惜しまないことが大前提であります。特に自民党が大政党らしい寛容さを示すことが大切であります。現在対立している与野党の両案を乗り越えて、次の国会抜本案成立させるために、今国会中にそのルールともなるべき原則的合意成立がぜひとも実現されまするよう、この際、賢明な与野党委員皆様に心からお願いを申し上げます。  以上、私の所見を申し上げましたけれども、これにつきまして政府並びに各党代表皆様から簡潔に御所見を承りたいと思っております。  まず、官房長官は来ておいでになりませんから、自治大臣お尋ねをいたします。  けさも、私の親しい同僚議員鯨岡兵輔君が嘆いて言っておりましたよ。おれは二十二年も国会に出ておるけれども、初めの二年はまともの議員としてだったけれども、あとの二十年間はどうもおれの選挙区は、法律の中を探したけれども、なかなか見当たらない。別表第一を見ても東京十区というのが書いてない。よくよく探してみたならば「当分の間、」とりあえずということになっておる。私は二十年間も「当分の間、」議員だ。何だ、これは残念なことだ、こう言っておりましたよ。それほど抜本改正というものが延び延びになって、そして当分の間、当分の間でここまでやってきたことは、その話からもうかがわれるわけであります。  今、国会におきましても、最高裁の厳しい指摘を受けて、そして抜本改正をつくろうという機運が盛り上がっておりまするが、これは自治省におきましても、今まで選挙制度審議会というのはなかなかうまく機能をしなかった、あるいはまた、あつものに懲りてなますを吹くというようなことで、委員の任命も全然していない。もうそういう怠慢は許されないのではないかと私は思います。これはこの際、選挙制度審議会を再開して、委員をまず任命して、そして国会においても今一生懸命やっておりますけれども、選挙制度審議会においても知恵を絞って、新しい選挙制度制度だけではありません、選挙運動あり方について、なお、とかく政治家が批判を受ける政治資金の規制の問題についても真剣に政府としても考えるべきであろう、こう私は思っておりますが、自治大臣の御見解はいかがでありますか。
  4. 古屋亨

    古屋国務大臣 坂本先生のいろいろの御意見を承りまして、現行衆議院議員定数配分規定につきましては、さきの最高裁判決によって違憲とされたものでありまして、その一日も早い是正が極めて必要であるということでございます。  坂本議員の御指摘考え方につきましても、定数是正あり方一つ方法ではあるとは私は思いますが、政府としては、定数是正緊急性にかんがみまして、現段階においてはまず現在提案されている定数是正案について鋭意御審議の上、ぜひとも本国会におきまして是正が実現いたしますよう強く念願するものであります。現時点におきまして早急に是正を実現した上で、昭和六十年の国勢調査の結果が出ました後の定数配分あり方につきましては、その結果を踏まえて各党間で十分御論議の上、合意を形成していただきたいと思います。  なお、御指摘選挙制度審議会の設置並びにこれに対して付議すべき事項につきましては、御意見は承っております。私も、今回の考え方違憲是正する緊急の措置であるということで、国会基本的ルールづくりでありますので、国会の間で論議を尽くしていただきたい。選挙制度審議会におきまして従来、定数の問題、あるいはお話しの政治資金の問題、あるいは選挙運動のやり方の問題、あるいはまた公明選挙あり方等につきましては、第七次までに相当御審議をいただいておるのでございますが、そういう問題につきましては、提案されております本法案を処理した後におきまして、ぜひそういう問題についての足場をつくることも一つ方法であると私も思いまして、自治省におきましても、長期的にはそういう点についても十分検討してまいる所存でございます。
  5. 坂本三十次

    坂本委員 官房長官が来られたからお尋ねをいたします。  どうでしょうか、中曽根総理は現段階でも六・六案に執着をしておられますか、どうですか。
  6. 藤波孝生

    藤波国務大臣 議員定数是正しなければならぬという最高裁判決もあり、また自由民主党の中でも、非常に時間をかけて具体的な案の取りまとめが進められてきたところでございます。  先生御存じのように、自由民主党はたくさん議員もおられますし、そういう中でどのように案をまとめていくかということについて、党の選挙制度調査会などを中心にいたしまして、随分御苦労が重ねられてきて、そして六増・六減案ということで具体案がまとめられて、通常国会提出するということで来たわけでございます。したがいまして、通常国会でぜひ解決をしたいというふうに自由民主党もお考えになったと思いますし、政府としても、党と一体になって解決を図りたい、こう思って努力をしてきたところでございますが、継続になってこの臨時国会に持ち越されてきておる、こういうことでございます。  連日のように、新聞論調などを見ましても社説などで、一日も早く議員定数是正を急げ、それが国民の声だ、こういうふうな背景もこれあり、国会の中でも、各党ともに非常に深刻にこの問題についてお取り組みをいただいて、当特別委員会におきましても御審議が進められてきておるところでございます。  党と一体になって政府といたしましても問題の解決に当たりたい、このように考えてまいりました内閣責任者といたしまして、御質問の言葉をそのまま使わせていただきますと、中曽根さんはこの案に非常に執着をしている、こういうふうにお答えを申し上げなければならぬかと思っております。
  7. 坂本三十次

    坂本委員 問題が微妙複雑になってにっちもさっちもいかぬというときになったら、その複雑に絡まってしまったその結果を解きほぐそうとしても難しいんですよ。もうかえって複雑であればあるほど、微妙であればあるほど、対立が不毛になったようになればなるほど原点に返って、単純に原則から割り切る方が早い、こう私は、先ほどあなたが来られる前に申し上げてきたわけであります。  それで、中曽根総理は非常に見識のある、独特のフィロソフィーを持った立派な総理大臣であります。しかし、その見識おなかに持っておりさえすれば、あとの現実的な対応はそのときにおいて機に従うて転ず、これは禅の言葉ですけれども、総理は座禅を組まれますわな。機に従うて転ず、臨機応変、これもまた一つの真理なのです、具体的方法は。ですから、執着心というものは、これは最後の大切なときになっては非常に害になることが多いのです。  ここまでずっと政府・党と一体になって、これが緊急避難的に一番いい、早い方法だと思っておいでになる、こうおっしゃったけれども、現実には、一番早いと思っておったことがとても遅くなってしまったのだ、とても今解決のめどはない。与党野党のこの両案が不毛の対立ごとくここに厳然として存在している、解決の糸口は今のところない。そういうことになりましたときには、これはやはり官房長官、とらわれぬ心の方がいいでしょう、あなたは俳人だし。これは日本人の心情と申しましょうか、仏教の影響もあるかもしれませんけれども、もうこれは一番大変な正念場だと思ったときには、無だとか、仏教では空だとか言いますが、その心境におなりになって、そして執着心を捨てた方が早いと私は思う。剣道でも止心というのを非常に嫌います。とどめる心と書く。これは無心の反対だ。いまだに六・六に執着をしておるというのは剣道の極意から見てもまことにまずい。これはやられる。  だから、ここは篤とお考えになっていただきたい。今の場合はそういう御答弁しかまだできないでしょうが、しかし、私の言わんとするところはよくよくお考えをいただきたいと思うのでございます。しっかりしたおなかさえ持っておれば、もうそんな方便は臨機応変にやればいいのですよ。あの神戸市のシンボルのように変転自在とやればいいのですよ。そういうことでございまして、特にひとつお考えをいただきたいと思います。  特に官房長官、今議長調停にお出ましになりました。先ほども申し上げましたように、ここは議長調停をぜひとも成功させてあげなければなりませんし、それは国会責任においてでもございまして、特に与党、その総裁である総理また政府、やはりここは大局的見地に立たなければならぬと思っております。今国会で、最後議長裁定で最終的な法律成立をするというのは時間が非常に足りないことと思いまするので、先ほどもあなたが来ぬうちに申しました、次の国会成立させるために、今の国会では何としても与野党原則的合意だけは、ルールづくりだけはぜひともしてください。そうしないと、国会は何もしなくてほおかむりしてしまったなんと言われてはまことに申しわけない。時間が足りなければ原則的合意だけでも与野党間でしてください、特に政府与党は寛容の気持ちでやってください、こう私は先ほどお願いをしたばかりであります。  金丸幹事長にも私はお願いをしておきました。与野党原則的合意はできないはずはない、ただ一点、野党の皆さんが口々に言っておる二人区はつくるな、これをがぶっとのみ込んでしまえばそれでできる、私はそう言っておった。幹事長はああいうおなかの大きい人ですから、非常ににこにこと笑っておりましたから、私が言うことをわかっていただけたものと思っております。  どうかそういうことで、これからは非常に大局的見地から柔軟に、ひとつとらわれない心で対処して、そして、この国会の危難を救ってもらわなければならぬ、こう思っておりますので、篤とそういうつもりで御活躍をお願いをいたします。  遅くなりまして申しわけありませんでした。肝心の各党代表皆様方から、時間もございませんので、ごく二、三分簡潔に御所見を承れれば幸いでございます。  まず、自民党の森さんからお願いします。
  8. 森清

    ○森(清)議員 坂本委員にお答え申し上げます。  ただいま、坂本委員がお考えの案の内容等御披瀝がありました。拝聴をいたしました。ただいま御指摘のようなことは、特に我が自由民主党においては、常に選挙制度調査会において十二分に審議を尽くしておるところでございます。特に五十八年最高裁判決でこの格差状態違憲状態である、このような判決を受けた後、五十九年一月から選挙制度調査会あるいはその小委員会プロジェクトチーム、ここでほとんど毎週一回ないし二回くらいの程度で審議を進めてまいりまして、ただいま御指摘のような問題点はすべて洗い尽くしておるわけでございます。  しかも、この六・六案をつくるに際しましては、野党の方の御意見も十分に聞かなければならないということで実務者会談を続けてまいりました。また、定数是正を行ったこの国会というか、三十九年の定数是正における当委員会論議、五十年の定数是正のときの当委員会論議、また参議院における論議、特にその中で野党の方々がどのようなお考えに基づいて定数是正に取り組んだかということも詳細に調べました。そういうことを総合勘案いたしまして、現在考え得る、また政治家として実現可能な案としてこの六・六案しかない、このような確信を持って自由民主党において党議を決定し、そうして提案を申し上げたのであります。  しかも、その後に、この定数配分規定そのものは憲法違反である、したがって、提訴されている二十数選挙区、八十何名の議員選挙は違法である、したがって、違法な選挙に基づくものであるから議員の職を失格するものである、しかしながら、それをしたのでは回復できないような混乱が起こるから、事情判決、これは行政訴訟法にある法理でありますが、これが直ちにこのような状態に適用されるとは私は思いませんが、最高裁は事情判決の法理を援用して、たまたま八十何名の者についてその職を失わしめない、このような措置をとったのが七月の判決であります。したがって、我々五百十一名の定数がありますが、既に判決で確定している八十何名の方は、事情判決でたまたま職を失わないで本院に席を置いている、こういう状態であります。  しかも、この違憲状態は早急に是正をしなければならない、このような与野党合意に基づいて本会期中にぜひとも実現をしたい。そうして、御指摘のような六十年国勢調査の結果が出たならば、さらに——さらにという言葉がついているわけです。さらにということは、一応ここで決着をつけてという意味であります。さらに引き続いて是正に向けて努力をする、最近の与野党合意はそうなっているわけであります。したがって、今や政治的常識においては、この国会において違憲でなくする法律をつくり上げるということは、与野党を通じ、また国民世論の動向を見ましても当然の責務ではないか、このような観点でやっております。  ただ、坂本委員が御指摘のような案も委員自身がお持ちのようでございますから、そういうことも含めて、当委員会においても既に二回、十二分に審議が行われたところであります。また、二名区の問題その他についても、あるいは緊急避難とかいろいろ言われました。例えば、土俵を変えるのはいかぬとかいいということでございますが、我々は、土俵を変えるのが選挙区の改変である。土俵の中で勝負をして、一番、二番、三番、四番とあって、今までは一番、二番、三番までが合格しておったのを一番、二番を合格にしようというのが二人区であって、選挙区を変えることそのものが土俵を変えることであります。そのような土俵を変えることが選挙が本当の安定的なものになるかどうか、こういう点についても、党内においても十二分に論議をされたことは坂本委員も御存じのはずであります。  そういうことを踏まえて、我が自由民主党責任を持って提案し、ぜひ実現を図りたい、また案の内容は多少異なっても、野党からも四党案が出ておりまして、この国会是正を図るということは政治家の務めであり、与野党を通じての責務であり、そのことについては御異論がないのではないか、私はこのように考え審議を進めておる次第でございます。坂本委員の御指摘の点も十二分に拝聴いたしまして、また今後抜本的な是正を検討するときには十二分に検討に値する案だと考えておりますが、この際はこの案で成立をさせることが我々の責任である、このように考えている次第でございます。
  9. 山花貞夫

    山花議員 野党統一案を提出しております我々の立場からいたしましても、先生の御提案については大変強い関心を持ってお伺いしておったところであります。膠着状態の現状を解決するための議論のテーマとして、今後の委員会で十分議論さるべき御提案であると受けとめておるところであります。  第一に、提案の趣旨として御指摘になりました自民党六・六案の分析につきましては、大変的確であり、私たちの主張とこそね一致しているのではなかろうか、このようにお伺いしたところであります。今、自由民主党責任を持ってと森先生は御発言になりましたけれども、その与党の中から、二人区問題について野党立場と同じ御批判を例えたということにつきましては、我々としては大変心強くお伺いしておった次第でございます。  なお、修正案につきましては、ポイントが四つあったというように伺っております。抜本策につきましての問題の位置づけということにつきましては若干の観点の相違はあるように伺いましたけれども、しかし格差は一対三以内にすること、中選挙区制を守るという大前提、そして線引きについては第三者機関である臨時選挙審議会において行う、六十年国調速報値においても是正は可である、こうした御指摘につきましては、三番の第三者機関問題につきましては、我々抜本策の際に提案しておった中身でもあるわけでありますけれども、しかし、その問題をも含めて、大変貴重な意見として今後十分この委員会でも議論を尽くすべき御提案ではなかろうか、このようにお伺いした次第でございます。  以上であります。
  10. 伏木和雄

    伏木議員 坂本先生にお答えを申し上げます。  先生御指摘のとおり、私どもも、ただいま趣旨として述べられた点につきましては大方の一致を見るところでございます。ただ、私どもは憲法十四条の平等の原則ということにつきましては、選挙権についてはあくまでも限りなく一対一に近づけなければならない、歴史的、地理的あるいは行政的立場から非人口的要素も加味しなければならない、しかし、この非人口的部分につきましては、あくまでも一対一の原則を二倍に崩すような一対一、すなわち一人で二票を使えるようなところまで拡大すべきではない、抜本策といたしましては二倍以内を堅持すべきである、こういう立場に立っております。  しかし、七月十七日最高裁判決現行法が違憲、こういう状態からやむなく緊急是正措置といたしまして、選挙法を改正する以上、極力与野党合意しなければならないという観点から自民党の提案した三倍という線で妥協して、緊急是正措置としてこれは認めなければならない、こういう立場に立っている次第でございます。したがいまして、公明党は、原則としては二倍以内であるけれども、緊急是正措置という立場から三倍という考え方をいたしているわけでございます。  あとは社会党さんから御説明がございましたので、同じようなことでございますので省略をさせていただきたいと思います。
  11. 岡田正勝

    岡田(正)議員 坂本先生にお答えをさせていただきます。  今先生のお説を聞いておりまして、私はむしろ爽快な気分になりました。先生は第四高校から東北大に、剣道は七段、教士という位を持ちまして、面の坂本といったら日本の剣道界で知らぬ者はおらぬ、知らぬやつは潜りだと言われるほどの実力者でございまして、ただいまの御質問は、むしろ今混迷しておる当委員会にまことに厳しいお面を一本入れたような感じがいたしまして、私も爽快に思っておるのであります。  さて、先生のお説に対するお答えでございますが、御承知のとおり、五十八年十一月の最高裁判決によって事情判決がおりました。そこで、私どもはこれに対して、とにかく緊急に是正をしなければならぬというので各党打ち合わせをいたしまして、それぞれ是正案を急ぎました。ほとんどの野党は五十九年の二月にはその是正案が出そろいました川だがしかし、自民党さんからは明確な是正案は当時出されませんでした。いろいろと協議を重ねてまいりましたけれども、その協議が詰まらぬうちに六・六案というのを突如自民党さんから出してこられたわけであります。そこで、私どもの方としましては野党各党で協議をいたしまして、それに対抗する案として統一是正案というものを提出したことは御承知のとおりであります。  だが、日にちがだんだんと送られてきまして、御承知のとおり十二月九日、一昨日現在で、六十年国調は四十二府県において地方集計が既に出されました。十七日には四十七都道府県全部出そろうはずでございます。二十四日にはこれが官報となって、総理大臣の名前で公表されるという状況に差し迫ってまいりました。こういう状況の中におきましては、今出ておる自民党案それから野党が出しております統一案、いずれにいたしましても、その精彩が著しく衰えてきたことは国民の各位が十分承知をしておるところでございます。  したがいまして、私どもは、野党各党合意ができるならば、とにかく六十年国調の速報値に基づいて、いわゆる暫定是正といいますか緊急避難的なものといいますか、そういうものを今お説のとおり格差三倍以内、そして総定数は変えない、区域変更をすることはあり得る、いわゆる合区、分区の手法を用いるというようなことで緊急に各党合意のもとに是正をしていくべきではないかと考えておるのであります。  もちろん、その原則としては、中選挙区制というものは堅持しなければならない。これは六十年の歴史があるということはもちろんのことでございます。さらに、抜本策でございますが、暫定是正案ができました後直ちに、これは私ども民社党だけの考えでございますけれども、各党違いますが、総定数は五百名以内、格差は二倍以内、そして中選挙区制を堅持する、合区、分区の手法を採用するというような抜本策を行っていくべきである。それを行うに当たりましては、もちろんこれは議会政治の基本に関する問題ですから、この基本事項各党合意によってルールを決めまして、それに基づいて第三者機関に、例えば、一つの例を挙げますならば開店休業状態選挙制度審議会諮問をいたしまして、その出た答申をそのままそっくり法制化していく、できれば、将来はもう自動的に是正が行われるような制度にした方がいいのではないかとすら私どもは思っておるのであります。先生のおっしゃいましたこと、私ども民社党といたしましては全く同感でございます。  以上でございます。
  12. 坂本三十次

    坂本委員 時間が参りました。各党の皆さんから御所見を賜りまして、まことにありがとうございました。  これで終わります。
  13. 三原朝雄

    三原委員長 伊藤公介君。
  14. 伊藤公介

    ○伊藤(公)委員 持ち時間の中で、それぞれのお立場から御意見を伺ってまいりたいと思います。  これまで既に各党の皆さんがこの委員会で質疑を随分深められてまいりました。きょう社民連の質問があって、私どもがいたしますと、政党的にも全政党が当委員会審議をすることになりますし、これまではどちらかといえば、定数が削減をされる選挙区という立場からの議論が多かったように思うわけでありますが、私の選挙区は長い間一票の価値が非常に軽かった、そういう立場からの発言としては初めてになるわけでございます。  選挙が行われるたびに十万票、時として、今までの選挙の中では十四万票をとっても落選をする。そういうことが結果的には、せっかくこの人にと託した一票が、有権者からすると報われないということになりまして、どうも一票が非常にむなしい、やがて投票率は国政選挙、地方選挙、だんだん少なくなって、政治に関心を寄せていただいている皆さんに対しては、我々院の立場からすると、もう少し一票が公平に平等に行使されるように一日も早く是正をしていかなければならないと思っているわけであります。  しかし、三十九年、五十年、沖縄の返還を含めますと三たびの改正は、いずれも定数を増員して改正してきました。しかも、それは極めて異例な形で、いつかは定数をまた削減する、是正をすることを前置きにして結果的には定数をふやしてきたわけであります。しかし、とのたびのこの両案はいずれも定数を削減する、トータルをすると五百十一人という現状維持でありますけれども、選挙区によっては定数を削減するということでありますから、これはどちらの立場に立ちましても、私ども一緒に議会活動をさせていただいている立場からすれば、あるいは自分が定数が減るという選挙区になった場合には大変深刻な問題だということは理解ができるわけであります。  しかし、地方議会は、例えば私どもの今住んでいる東京は、さきの東京都議会の選挙を前にしてまさに今の国会と同じような状況でありましたけれども、深夜の都議会を通じてとうとう定数是正を実現をいたしました。全国の地方自治体を見てまいりますと、それぞれの地方自治体では、定数はむしろ削減をやっております。数字を挙げて申し上げれば、全国の三千三百二十五の団体の中で、これまでに一万五千五百五十五人という議員を削減をしてまいりました。地方議会でもこうした努力をしているときに、日本を代表する国会が、今この状態を、次の国勢調査の結果が出るからとかということで一日も先延ばしすることはできないと思います。  最近の新聞論調は、六増・六減案、つまり二人区をつくることは必ずしもいいことではないけれども、しかし現状では二人区を認めてこの局面を乗り越えるという声がほとんどのように思います。新聞の声がすべてだと必ずしも私は言うつもりはありませんけれども、これもまた国民の極めて重要な意思の反映をしていただいているということを考えますと、つい最近新聞に載りました第一線の記者の皆さんの座談会、これに「六十年国勢調査結果を踏まえての抜本是正との声も出てるが、庶民からみれば、ずるいとしかいいようがない。」「感情的になっては、問題点が拡散してしまい、残るのは、違憲状態議員の鉄面皮とむなしさだけになってしまうよ。」「でも、考えてみれば、そういう人たちを国会へ送っているのは、我々なんだ。」こういう記事が載ってきている。我々は立場を越えてどうしてもこの局面を乗り越えていかなければならないと思うし、そういう立場委員長のもとでこの委員会も非常に審議はスムーズに、しかも、いろいろな努力が重ねられてきたと思います。  そこで、今いろいろな立場で、議長さんの裁定などという話も出てきているわけでありますけれども、官房長官にもきょうは御出席をいただいておりますが、後々の御予定もあるようでございますので、以後少し簡潔に質問をさせていただきたいと思います。  この定数是正の問題は、私ども新自由クラブと自由民主党との政策合意のいわゆる政治倫理の一つでもありました。私も自治省で働かしていただいてきた立場からいたしますと、心が痛む思いがいたすわけであります。しかし、この土俵づくりは、先ほど坂本先生からお話がありましたとおり、やはり合意をした土俵相撲をとるべきだという立場から与野党合意をということで、その後総裁の談話にもつながりました。こうした連立政権下ということも踏まえて、新自由クラブ、自由民主党の連立の政策合意であったということも含めて、まず官房長官から御見解を承りたいと思います。
  15. 藤波孝生

    藤波国務大臣 今日の議員定数を速やかに是正をしなければいかぬということが非常に大きな政治課題になってきておるところでございます。特に今、伊藤委員から御指摘がございましたように、国権の最高機関であります国会がこういう不正常な状態でいつまでもいていいはずがないわけでありまして、そのことについての是正を求める国民の皆さん方の声も日に日に高くなっている、こういう認識に立っているところでございます。  自由民主党と新自由クラブの連立の際の政策合意書の中にもその定数是正の問題が盛り込まれまして、以来、自由民主党と新自由クラブが非常に強い連携のもとに、この問題の解決に向かって努力が重ねられてきておるというふうに政府といたしましても認識をしておるところでございまして、御活躍に敬意を表したいと思う次第でございます。  今会期も非常に残り少なくなってきており、幸いに本特別委員会での御審議も随分進んでまいりまして、各党間それぞれお考えは違いますけれども論議は深められてきている、そういうふうに私ども考えてきておるところでございまして、ぜひこの国会解決が図られますように、どうか最後の御努力をぜひお願いを申し上げたい、こう考える次第でございます。
  16. 伊藤公介

    ○伊藤(公)委員 もちろん、私どもの新自由クラブの定数是正に対する理想的な是正案というものは、いち早く公表をしてまいりました。しかし、現状の中で、先ほど申し上げましたとおり、大きな政党である自民党の中で特に減員区になる関係者の議員の人たちが現実にいる、そういう中で六増・六減案というものをいろいろな努力の中でまとめられてきた。今私たちは現状の中で、やはり今の違憲状態を克服するのにはまずできるところからやるべきだということで、我々の理想的な案は持ちながらも、六増・六減案というものに賛成をする立場審議をさせていただいてまいりました。  去る六日、総理の書簡が極めて異例だと言われている中で出されたわけでありますが、私は一人の国会議員として考えれば、今の違憲状態の中で総理大臣が重大な決意でこの局面に臨む、あるいは各党の党首に自由民主党の総裁としてもあるいはまた総理としてもこうした決意で臨むというのは、私なりには理解ができるわけでございます。さきの八月八日の総理の談話、ある意味ではそれに続くものだというふうに思っているわけでありますが、しかも、その中で、政局を考えた書簡ではないかとか解散絡みだというような話も出てきておる。私は、この定数是正の問題はそうした政局に絡ましてはならない、そういうことを超えて、それぞれの立場の皆さんが努力をしてこの局面を乗り越えるべきだというふうに思います。しかし、一方では、政治家であれば政局を考えたり解散がどうなるか、あるいはこれからの展望をするというのも政治家として当然といえばそうかもしれませんけれども、私の考えは、そういうことにとらわれないでこの局面を何としても国会の権威にかけて乗り越えるべきだと思いますが、改めて官房長官の御見解を伺いたいと思います。
  17. 藤波孝生

    藤波国務大臣 議員定数是正をしようという努力が、当特別委員会で御審議を深めていただく中でお進めいただいてきている、そのことについては各方面ひとしく評価されてきておるところでございます。  ただ、従来の経緯から見まして、どうしても今臨時国会解決が図られなければいかぬ。まずこの臨時国会召集でお願いをいたしました冒頭の気持ちも、ぜひ継続審議になっておるこの議員定数是正法案解決、そして同じく継続であります共済年金関係の法案の処理、こういったことを中心にいたしまして臨時国会が召集されて今日に至っておるわけでございます。その臨時国会の会期ももう残り少なくなってきた。先週の末でございましたからあと一週間というところまで来たという中で、総理といたしまして、第一党の自由民主党の総裁であるみずからの大きな責任を痛感し、この責任各党の党首、そして特に立法府の代表であります議長さんにぜひひとつ共有していただいて、この問題の解決に向かって一層の御理解と御努力をお願いしたい、こういうやむにやまれぬ気持ちで書簡を発出する形になったものだというふうに私は理解いたしておるところでございます。  当然、政治の世界でいろいろな問題が起こりますと、それをめぐって政局の運営やあるいは各党のいろいろ政治絡みの思惑が渦巻くことは、もう政治の世界の普通のことでございます。しかし、気持ちといたしましては、とにかくこの問題の解決をぜひこの国会で、こういう気持ちで書簡が発出されたものだと理解をいたしておりまして、党首会談などもあり得るという呼びかけの意味も書簡の中に含まれておりますが、書簡をお受け取りになりました、例えば民社党の塚本委員長なども各級レベルのお話し合いということはあり得るだろう、共産党からは円卓会議というようなことはどうか、各党幸いにいろいろそういう反応もいただいておるところでございますが、この特別委員会審議が進められておるわけでございますので、特別委員会を中心にして与野党合意が得られるあらゆる努力が進められ、また議長さんの強い御指導もいただきながらこの問題の解決が図られるようにぜひひとつお願いをしたい、こういうふうに心から念願をいたしておるところでございます。
  18. 伊藤公介

    ○伊藤(公)委員 官房長官にもう一問だけ、もう時間があれのようでございますから伺いたいと思います。  きのう、いろいろ与野党の中で非常に差し迫った、二人区をどうするとか今お話しのような政局絡みの問題点というようなことがだんだん絞られてきているわけでありますが、総理幹事長の会談に官房長官も同席をされたと伺っておりますが、どういう合意をされたのかというのが一点。  それから、もう一つは、野党の皆さんがそろって述べられてきた、いわゆる十二月二十四日には速報値が出る、だから、その速報値について今後どういう対応をするかということが、この局面打開の非常に重要なかぎを握っていると思うのですね。私は、やはり速報値は速報値だと思っています。しかし、今までもこういう違憲状態が言われてきたけれども、なかなか改革ができなかった。今度の改正というのは本当に一時しのぎの改正ですから、やはり速報値が出たら直ちに次の改正に向けて取り組まなければならないと思いますが、いわゆる速報値からの改正についてはどういう姿勢で臨んでいかれるのかということを伺いたいと思います。
  19. 藤波孝生

    藤波国務大臣 この問題につきまして、それぞれのお立場で随分御苦労をいただいてきておるところでございます。金丸幹事長からは、総裁の書簡が発出されるという事態を受けてその後各党間でもいろいろな意見の交換などが行われてきておる、あるいはそれぞれの党で党内のいろいろな意見の交換が進められてきている、そういうふうな事情につきまして御説明がございました。また、同席されました三原特別委員長からは、本特別委員会での審議の御状況や各党のお考え方などにつきましていろいろ御説明がございました。それらを受けまして、ぜひこの国会での是正を図らなければならぬということを改めて確認をいたしまして、そして、長い時間をかけて自由民主党としてまとめてきた六増・六減案を中心にしてぜひひとつ各党の理解をいただいて成立を図るようにしよう、こういう強い決意がそれぞれ述べられまして、合意を見たところでございます。従来の相談して進められてきた路線をさらに前進をさせる、こういうことで合意が行われた、こういうふうに考えておるところでございます。一なお、今十二月末に新しい国勢調査の速報値が出るという事態が起こるわけでございますが、先ほど自治大臣から政府考え方として御答弁を申し上げましたように、まず緊急避難的に従来取りまとめられて審議が進められてきております六増・六減案成立を図って、そして本年の国勢調査の結果が出てまいりましたならば、さらにひとつ是正をするための努力が進められなければならぬ、こういう二段構えでやはりこの際は進むべきだというふうに、政府としてはそれしかないのではないかという意味で、思い詰めたような気持ちでこの国会での行方を見守らせていただいている、こういう状況でございます。  議員定数是正という、国民が非常に強い関心を持って審議が進められてきておるこの問題が、今国会においてまず解決が図られ、そして各党のいろいろな御協議を経まして、立法府の責任者であります議長さんにもぜひいろいろ御指導をいただいて、くどいようでございますけれども、それらの形の中で新しい国勢調査の結果に基づく是正がまたさらに進められる、こういうふうに持っていきますと国民の皆さん方も得心をしていただけるのではないか、このように考える次第でございます。     〔委員長退席、小泉委員長代理着席〕
  20. 伊藤公介

    ○伊藤(公)委員 定数是正の問題が政局にいろいろ影響を与えるということもあろうかと思いますが、私は、中曽根内閣がかつてない、電電公社を初めとした行政改革にもかなり取り組んで、教育の改革も進められている、そういう意味国民のかなり高い支持を得てきたというふうに思います。私は政治家としては大変未熟な立場でありますけれども、中曽根さんがなぜ国民のこういう比較的高い支持を得られたかというのは、中曽根さんという人は永田町の論理で物事を最終的に判断をしない。例えば防衛費の問題も、これは私ども連立政権の条件でありました。時として防衛費の問題はどうかという局面もありましたけれども、やはりいろいろな意見を聞いて、あるいは世の中の状況を見て判断をする。靖国の問題も、御自分の考えもあろうかと思いますけれども、やはり世間に目を開く。永田町の論理というよりも、やはり国民考え方とかあるいは選択というものを大事にする。そういうことが比較的高い支持率を得ていることではないかと私は思うのですね。  ある意味では、その中曽根政治の総決算、永田町の論理を今度本当にまた超えられるか、それがこの定数是正にかかっていると私は思うのです。与党の中にもいろいろな思惑があると思うし、もちろん野党野党立場がありますけれども、地方議会や東京都議会がやってきたことを国会がもしできなくて先送りをするようなことがあったり、安易な妥協をしていくということになれば、今度は中曽根内閣というものは、そう国民は支持をしないのではないかというふうに私は思うのです。私は一人の国会議員として、国会としてぜひ歴史に残る決断をしていただきたい。総理の側近として官房長官がぜひこの局面を乗り越える大きな役割を果たしていただくようにお願いを申し上げて、時間が来ているようでありますので官房長官はお引き取りをいただきたいと思います。もし、御意見があればどうぞ。
  21. 藤波孝生

    藤波国務大臣 内閣の支持率云々の話は別にいたしまして、それを頭に置いてやっているわけではなくて、やはり国民の皆さん方の納得する政治を進めるということは民主議会政治という形からいっても非常に大切なことだというふうに思うわけでございます。今、委員が御指摘になりましたように、それぞれ地方議会などでも定数是正やあるいは減員の決定などをして、みずから住民の要求にこたえておられるという姿を考えてみましても、やはり国会が今国会の会期内にこの問題の是正を図るための解決を図るということは非常に大きな課題になってきておる、こういうふうに考える次第でございます。総理も不退転の決意でこの問題の解決に当たらなければならぬという決意を持っておる次第でございますが、新自由クラブはもちろんのこと、各党の深い御理解をいただいてこの問題が解決されていくことが非常に緊急の課題である、こういうふうに考えておりますことを申し上げまして、ぜひ一層の御努力をお願いを申し上げたいと思う次第でございます。
  22. 伊藤公介

    ○伊藤(公)委員 それでは、与野党合意ができるか、この局面を乗り越えられるかという今最も焦点になっております二人区の問題について伺いたいと思います。  森先生はこの選挙制度については大変お詳しいわけでありますけれども、昭和三十九年と五十年に改正をされました。このときにもいろいろな議論があったと思いますが、このときの議論の中で二人区という問題についてはどういう議論があったのかをひとつ簡単にお話をいただきたいと思います。
  23. 森清

    ○森(清)議員 伊藤委員にお答え申し上げます。  三十九年それから五十年の改正のときは、減員をしないで増員のみでやったものですから、二人区の問題は直接的には出ておりませんが、そのときに三人から五人の中選挙制度を今までやってきているが、これをどう考えるかというふうなことについては各党非常に議論をいたしております。  その議論をかいつまんで要約いたしますと、まず、三人から五人の中選挙区制というのは単なる慣習にすぎない、そういうものにとらわれるのはおかしいではないか、また、三人−五人をつくった経緯を聞いても余り合理的な根拠があったとは思えない、したがって今後改正についてはその枠を取り外して考えるべきである、こういうのが野党の基本的な主張でございました。もちろん、そのときは六人区を分割するということが焦点になっておりましたからそこに重点を置いてお考えになったのですが、その根拠として、三人から五人には根拠がないというか慣習にすぎない、しかも、その中に、既に奄美に小選挙区の一人区が加わった、それが加わったのであるからなおさらそうである、こういう議論も野党から主張されております。  それからまた、奄美が復帰して既に数年たって、今回定数是正をするときにこれを吸収をしなかったという事実をとらえて言われているのだろうと思いますが、今回これで奄美の独立区は恒久化した、こういう御主張もございました。私は法律的には恒久化したかどうか知りませんが、三十九年の改正のときに奄美を合区しなかったことは、政治的には恒久化したとおとらえになった野党の方の御主張はそれなりに意味がある、このように考えておる次第でございます。  それからさらに、現在問われておる定数是正というのは、選挙制度審議会答申にもあるとおり、議員一人当たりの格差が問題なのであって、定数是正が問題なんだ、選挙区を変えることは当面問題ではないのではないか、変えるには選挙区を動かして変える方法もあれば定数の増減で変える方法もある、選挙区を変えることは根本問題である、したがって定数の増減で処置すべきであるという野党の御主張でございました。  野党全体であるかどうかは別といたしまして、そういう主張のもとに、六人区をそのままにしておけ、分区は反対である、こういう論拠のためにお使いになったのだろうと思いますが、そういうことでございますし、また先ほども申し上げましたように、選挙制度審議会における議論の内容その他を見ましても、三人から五人を絶対に墨守しろというふうな議論は、つい最近、この二、三カ月の間に野党の方々が御主張になったばかりでございまして、このような議論がこの国会においても、三十九年、五十年の正式の御質疑あるいは各党代表しての討論の中にあるわけでありますから、我々は、この二人区は暫定的なものとしてつくってもいいのだということは我々の党だけの考えではございません、三十九年、五十年の本院における審議状況、参議院における審議状況を十二分に調べて、そして野党の中にこういう考え方がある、なるほど我々がそれを使えば合意ができるのじゃないか、やはり国会の構成に関することでありますから、野党の方の御主張あるいは御意見というものも踏まえて、これならば緊急、暫定的な措置としては御理解いただけるのじゃないか、こういうことで御提案申し上げた次第でございます。
  24. 伊藤公介

    ○伊藤(公)委員 今度の改正、六増・六減案で二人区ができるというのが非常に論議を呼んでいるわけですけれども、私も必ずしも二人区がいいと思っているわけではありません。できることなら今定着をしている三人ないし五人という今の選挙制度を維持していくということが基本的な考え方でありますけれども、しかし、公聴会もやりました。あるいは現地の調査もしました。現地調査は私も行かせていただきましたし、きょうの野党の皆さんも全員それぞれの現地派遣にも行っていただいた先生方でございます。その現地調査は、いずれも定数の減員には反対だ、これはもう当然です。しかし、万一改正をするというならやはり選挙区を変えるということは困るのだ。これは歴史的にも経済的にも、あるいは選挙民、有権者とそこを代表している議員との関係とか、やはり自分たちの国政のパイプがつながっていかない。いずれの現地調査の報告もこの合区、線引きには現状では反対なんですね。ですから、我々はやはり現地調査をして現地の有権者の意見を聞くというのがその立場だったわけで、こういうことを考えて、なぜ野党の皆さんは有権者の皆さんの意思というものを大切にできないのか。  それから、二人区が小選挙区制につながるというのは、学説的にはどんなにひっくり返してみても小選挙区制にならない。これは前回の公聴会でも、朝日新聞の公述人から小選挙区制になるということではないという意見もありました。なぜ二人区というのは小選挙区制になるのか、あるいは現地の有権者の声を我々が調査した結果からしてどう判断をするのか、野党代表して御意見を伺いたいと思います。
  25. 山花貞夫

    山花議員 お答えいたします。  かなり時間もたっておりますので簡単にお答えしたいと思いますけれども、我々といたしましては、二人区創設には断固反対する、これが野党の変わらぬ統一的な見解であります。  今、森先生の方から二人区問題についての御見解もありましたけれども、自民党六・六案をいわば支持する立場での御説明、説得ということに尽きたわけでありまして、二人区問題については、先ほど自民党内の坂本先生指摘と分析の中にも問題点がはっきり出ておったのではなかろうかと思います。二人区は小選挙区制に通ずる、こうしたテーマにつきましては、これまでの私どもの答弁の中で十分明らかになっているのではないかと思うところであります。我々はそうした立場を今後とも貫いてまいる決意でございます。
  26. 伊藤公介

    ○伊藤(公)委員 もう御答弁をいただくつもりはありませんけれども、私は野党のそれぞれのお立場の皆さんに、お互いにそれぞれの置かれている立場は十分理解をしている上で申し上げるわけでありますが、二人区が小選挙区制になるという主張はどう考えても国民の皆さんに理解を求めることはできないと思いますし、また、せっかく当院を代表してそれぞれの減員区に現地調査をして、その減員区の現地調査は、いずれも野党案のいわゆる合区、分区には反対であります。現地有権者、そうした皆さんの声というものをやはり国会は反映していく必要があるということを私は申し上げておきたいと思います。  時間が参りましたので一点、最後に私は自治省に伺いたいと思うわけでありますが、先ほど坂本先生も御指摘をいたしましたけれども、この選挙制度は思い切ってきちっとした形で整理をする必要がある。この法律はいずれも附則附則できて、そして「五年ごとに、直近に行われた国勢調査の結果によって、更正するのを例とする。」ちゃんと明言してあるわけであります。これはもう詳細を申し上げる時間がありませんけれども、例えば西ドイツ、イギリス、アメリカ、いずれもきちっと、定数がアンバランスになったら自動的に改正していく、そういう法律の整備ができているわけでございます。  衆議院の定数是正の問題を申し上げてまいりましたが、これは同じように参議院も非常に大きな格差が広がっている。この状態が続けばますます参議院無用論という形にもなっていきかねない。この参議院の定数是正についてはどんなふうに考えているのか。私も一年間、自治省の政務次官室でちょっと働かしていただいた立場からすると、大変責任の一端を感じるわけでありますが、今後のことでございますので、自治省としてはどういうふうに取り組んでいくつもりなのか。今申し上げたとおり、附則附則というこうした異例の形の選挙制度というものはきちっと整理をしていく必要があると思うわけでありますが、参議院の定数是正を含めまして、できれば自治大臣のお考えを伺いたいと思います。
  27. 古屋亨

    古屋国務大臣 国会議員定数に関する問題は、選挙制度の根本にかかわります極めて重要な問題でございます。このような問題につきましては、第三者機関意見といえども最終的なものではなく、結局国会の意思によって決定されるものであると考えております。私は、審議会の問題も含めて、各党間で十分協議をいただきたい。  また、参議院の問題でございますが、参議院の定数是正も重要な課題であることはお話のとおりでございます。総定数を何人にするかということを初め、半数改選論や各選挙区の有する地域代表的な性格をどう考えるかなど、選挙制度の基本にかかわる重要な問題でありますので、各党間で十分論議を尽くしていただきたいと考えております。
  28. 伊藤公介

    ○伊藤(公)委員 終わります。
  29. 小泉純一郎

    ○小泉委員長代理 堀昌雄君。
  30. 堀昌雄

    ○堀委員 私は、昭和三十五年に当公職選挙特別委員会委員となりまして、中間で少しは抜けた時間もありますけれども、終始一貫公職選挙の問題をこの国会の場で論議をさせていただいてまいりました。既に五十一年、五十八年、さらに今度本年の七月十七日と、最高裁判所からの判決が出ているわけであります。この間、実は合理的な期間を超えて当委員会において定数是正が行われなかったということは、私を含めて当委員会に所属をしておる音あるいは自治大臣を含めてこの管理をしておる皆さん、いずれも非常に大きな責任があると考えておるわけでありまして、深く反省をいたしておるところであります。  ただしかし、現在のいろいろな取り扱いの状態を見ておりまして、ともかく非常に短時間のうちに迫ってきた。前に時間はあったのですけれども、残念ながら今日短時間の中に追い込められている中で、緊急的な処置などということを最高裁が求めているとは実は私は考えられないのであります。少なくとも、このようなことが何回も繰り返されないということが実は最高裁の裁判官の全員が考えておられることだろうと思うのでありまして、私どもも今後当委員会定数是正に関する問題の処理をいたします際には、二度とそのような判決を受けることのないような仕組みを含めて対応しなければならないと実は考えておるわけでありまして、質問の最初に、これは単に私の発言ということではなくて、当委員会の皆さんの御同意を得たいと思うのでありますが、委員長、いかがでございましょうか。
  31. 小泉純一郎

    ○小泉委員長代理 御意見として承っておきます。
  32. 堀昌雄

    ○堀委員 どうも、御意見として承っていただくのは結構でございますけれども……。  そこで、まず最初に官房長官、御用もあるようでありますから、官房長官に対してのお尋ねを先に行いたいと思います。  実は先般、十二月六日に自由民主党総裁中曽根康弘氏の名によって、日本社会党中央執行委員長石橋政嗣氏に対して書簡が送られてきておるのであります。この書簡は、最後のところに自由民主党総裁中曽根康弘という署名があるわけでございますけれども、これが純粋に自由民主党総裁中曽根康弘さんの文書であるならば私はここで本日取り上げるつもりはなかったのでありますが、文章を拝見いたしますと、自由民主党の総裁としての御意見も述べられているのでありますけれども、非常に問題がございますのは、「すなわち、我々は、この国会において、司法が指摘する違憲状況を是正する責任があります。主権行使者たる国民もそれを強く期待しています。もしその責任が放棄され、その期待が満たされないことになるとすれば、自らの改革能力を証明しえない立法府が強く糾弾されるものと言わざるをえません。もしそのようなときは、私は与党党首として、また内閣総理大臣として、かかる立法府のあり方に憂慮せざるをえません。」こういうふうに書かれているわけであります。「私は与党党首として、」「かかる立法府のあり方に憂慮せざるをえません。」ということでありますならば、お互い政党人の立場での考えてありますから、そのことは多少文面に意見がありますけれども、そう大きな問題ではないと思うのでありますが、ここに「また内閣総理大臣として、かかる立法府のあり方に憂慮せざるをえません。」実はこういうことになっているわけであります。  今の日本の憲法は、国会は国権の最高機関であると規定をしておるわけであります。ですから、少なくとも三権分立という建前からいいましても、最高機関でありますから国会が一番上位にあると考えているのであります。ところが、その意味では国会よりも低いかどうかはわかりませんが、やや国会の方が高い位置にある。高い方に向かって低い方から、それも行政府責任者としての「内閣総理大臣として、かかる立法府のあり方に憂慮せざるをえません。」ということは、現在の憲法の規定しておるところの三権分立のあり方からしても、これは許しがたき文書だ、こう私は思うのでありますが、官房長官はこれについてどうお考えでございましょうか。
  33. 藤波孝生

    藤波国務大臣 自由民主党総裁名で発出されました書簡についてでございますが、国会が国権の最高機関であるというふうにみんな認識をいたしておるところでございます。それで、今お話がございましたように、三権分立の最高裁立場から立法府に対して速やかな定数是正を求める、そういう判決が出ておる、違憲であるという判決が出ておる。それを受けて、是正をしなければならぬ。これは立法府を構成いたします各党いろいろ御苦労いただいて、それぞれ御論議を深めていただいて、是正への努力を進めていただいてきておるところでありますけれども、通常国会自由民主党案を提出し、継続審査になり、そして今臨時国会の召集をお願いして御審議を進めていただいてきておるが、会期ももう残すところ非常に少なくなってきた。そういう中で、国民の皆さん方のこの問題に対する非常に強い御要求のまなざしなどをいろいろ頭に置いて、どうしてもこれは是正をしなければいかぬ、そういうふうに考えて、しかも第一党の党首として非常に責任を痛感をし、そして、みずからも大いに責任を痛感しておるところであるけれども、各党の党首におかれても、あるいは立法府の代表者であります議長さんにおかれても、この問題に一層の御理解と御努力をお願いしたいという呼びかけをしたものである、こういうふうに私どもは理解いたしておるところでございます。  一方、この問題は立法府において、立法府の御見識において是正をいただくことでありますけれども、いつも社会党の方々から、それじゃ政府は何をしているんだというようなおしかりをいただいたり、御批判をいただいたりしております。これは決して政府が立法府の問題だというふうに考えておるのではなくて、立法府、国会政府一体になってこの問題の解決に当たらなければならぬということにおいては大いに責任を痛感して、政府としても努力をしてきておるところでございます。そういう意味で、書簡の中に与党の党首、第一党の代表者としてということと同時に、その責任を同じように痛感してきております内閣といたしましても、この問題の是正に向かってぜひ解決が図られるといいがということで努力もしてきており、そのことを強く願ってきておるところでございます。  したがいまして、書簡の中で与党の党首として、内閣総理大臣として、中曽根康弘という政治家が今肩書としてその両面を持っておるわけでございますから、両面の立場から非常に心配をしておる、こういうことを頭に置いて各党の党首に対し、従来の御努力に対して敬意を表しつつさらに一層の御努力をお願いしたい、そして場合によっては党首会談などというお話し合いの場があってもいいと思うというようなことを中に内包させた文書を発出させていただくことになった、こういうふうに理解をいたしておるところでございまして、ぜひこの書簡の意味合いをそのままお受けとめをいただきまして、各党においての御論議を深めていただいて、本臨時国会におきまして速やかに是正が図られますように二層の御努力を切にお願い申し上げたいと思う次第でございます。
  34. 堀昌雄

    ○堀委員 確かに中曽根さんは自由民主党の総裁であり、内閣総理大臣であります。しかし、この機能の行使については、おのずからはっきりした区分があるのではないでしょうか。  法制局長官に伺います。内閣総理大臣として行政の責任者としての発言なり行動と、自由民主党総裁あるいは衆議院議員、いろいろな立場があると思います。確かに一人の人間がそれを兼ね備えていますが、その発言なり文書なり行動、行為については、内閣総理大臣としての行為、発言、それと自由民主党総裁としての行為、発言は、同一人であってもおのずから区分されるのが相当だと私は思いますが、内閣法制局長官、どう思いますか。
  35. 茂串俊

    ○茂串政府委員 お答え申し上げます。  ただいまのいわゆる中曽根書簡の内容につきましては官房長官からるる御説明があったとおりでございますが、ただいまの御質問、すなわち同一人が内閣総理大臣であられ、また自由民主党の総裁であられるという立場において発言をされる場合には、内閣総理大臣としての立場における発言と自由民主党総裁としての発言はおのずから別個に区分して考えるべきであると建前上は言えると思います。     〔小泉委員長代理退席、委員長着席〕
  36. 堀昌雄

    ○堀委員 今、法制局長官が申しましたように、私はこれは一般的な常識だと思うのです。ですから、私が最初にお断りしておるように、ここに「内閣総理大臣として、」という言葉が入っていなければ、自由民主党総裁としてこの問題についてどのような憂慮の意をあらわされても当然のことであって、私どもは何らこういう公式の場で取り上げる気持ちにはならないのでありますが、見ておりますと、どうもこの文書は明らかに内閣総理大臣としての機能を含めて議会に対して意見が述べられておると理解せざるを得ないのであります。  けさの新聞を見ておりますと、自由民主党の議運の委員の中にもこれはおかしいという発言があったという報道もありますが、これはどういう立場であろうと、国会立場とすれば、内閣総理大臣国会に対して意見を述べられるのは内閣総理大臣としてそれなりに意見を述べていただきたいのであって、こういうあいまいな形で、そして実質的には自民党総裁よりも内閣総理大臣の方が大きな影響力を持っておるということから見ましても、極めて適切さを欠く文書だと私は理解をするのでありますけれども、藤波官房長官、今の法制局長官の答弁を踏まえて、どういうふうにお考えになっておるかを重ねてお答えいただきたいと思います。
  37. 藤波孝生

    藤波国務大臣 先ほど申し上げましたように、この問題の解決をぜひ図る必要がある、これは立法府に課せられた大きな責任である、そういう立法府に対する要請を、内閣責任を共有してぜひ解決を図りたいというふうに考えて従来取り組んできたところでございます。  自由民主党総裁として、各党の党首の方々に問題意識をさらに非常に深めていたたいて解決に乗り出していただきたい、切なる願いを込めてお呼びかけをする、そして、この問題はまさに立法府が問われている問題であり、各党の御努力の上に立って議長さんの強い指導力のもとにぜひ解決を図るようにお願いしたい、国会を構成いたしております第一党の党首として、議長さんにも敬意を表しつつ、そのようにお願いをする。そして、自由民主党総裁であると同時に内閣総理大臣でもありますので、責任を共有しております立法府と内閣、その内閣としての立場でもぜひお願いをしておるところでありますということの気持ちをあらわそうとした文面であると考えておりまして、ぜひこの文書をそのままお受け取りをいただいて、各党の御論議を深めていただいて、御審議を進めていただいて、そして速やかにこの問題の解決を図っていただくようにぜひお願いしたい、こう考える次第でございます。
  38. 堀昌雄

    ○堀委員 あなたの立場でそれ以上は答えられないのでありましょうからいいですが、この中に「もしその責任が放棄され、その期待が満たされないことになるとすれば、自らの改革能力を証明しえない立法府が強く糾弾されるものと言わざるをえません。」これは私は、立法府に対して穏当な発言だとはみなせないわけであります。私たちも今ここで論議を尽くしながら、政党でありますからお互いに意見の相違があるのは当然であります。その問題の基本を私はこれから後るるやりますけれども、大体、行政府の長の名前が入っておる文書で立法府が糾弾されるなどというのは極めて穏当を欠く発言だと思いますが、藤波官房長官、どう考えますか。
  39. 藤波孝生

    藤波国務大臣 自由民主党総裁名で出されております書簡でございますので、私がお答えするのはどうかなというふうに思いますけれども、しかし、文面の中に「内閣総理大臣として、」ということも入っておりますので、官房長官としてお答えいたしておるところでございます。  これは、先ほどもお答えいたしましたように、中曽根康弘という政治家自身も第一党の党首として、この問題の解決がいまだに図られていないということについて、最高裁判決に照らしても、あるいは国民是正を求める強い要望に対しても、なお責任を果たしていないということについて大いに自省いたしておるというところから出発しておると思うのです。そして、自分も最善の努力をしてきた、自由民主党としてもいろいろと一人一人の政治生命にかかわるような難しい問題の取りまとめに時間をかけて進めてきてこの国会での御審議を深めているが、会期内の日数も少なくなってきている、第一党の党首としてみずからもさらに努力していきたいと思うが、各党の党首の方々におかれてもその気持ちを同じゅうしていただいて解決のために一層の御指導をぜひお願いしたい、そして議長さんとしてもぜひ乗り出していただけぬか、こういうことのお願いを申し上げた、呼びかけをさせていただいたというのがその文面の意味するところではないかというふうに思うのでございまして、堀委員が御指摘になるように、立法府に対して内閣総理大臣としての立場から、何か言葉はよくありませんが、糾弾状とか挑戦状というものを発したということではなくて、あくまでも第一党の党首としてみずからも大いに責任を感じつつ一緒にこの問題の解決に当たらせていただけぬか、こういう心からの願いを込めた文書であるというふうにぜひ御理解をいただきたいと思うのでございます。
  40. 堀昌雄

    ○堀委員 恐らく今後も内閣総理大臣の名前の入った文書がこういう形で出されることはあり得ないと私は思うのであります。前にも、これまでこういうものはないのですが、これからもないと思うのです。  ですから、要するにここのところは訂正されたらどうですか。糾弾などという日本語は異常な言葉なんです。私ども、ふだん使っていない。だから、ここだけは訂正されたらどうですか。総理大臣、総裁にお話しになって、これは国会の場で適切でないという意見があって、ここは訂正しろという発言があったかどうかと言うことについてどうでありましょうか。
  41. 藤波孝生

    藤波国務大臣 自由民主党の方々と御相談になられて自由民主党総裁名で発出されました書簡について、今の私の立場で今の御質問にお答えすることはいかがかと思いますが、これは普通の場合ですと、そういう場合には強い批判を受けるでしょうというような表現なのだろうと思います。しかし、これは時間をかけて、しかも最高裁判決という、法治国家の中で最高裁が判断を余しておる問題でございますし、これを受けて立法府、内閣が力を合わせて是正解決を図らなければならぬという非常に大事な課題だろう、憲法に基づいた考え方を受けて一日も早く是正を図らなければならぬという問題だろうと思うのです。  そういう意味では、この国会で未解決に終わるならば、国民は恐らく立法府に対してそういう目で見るのではないかということを心配をいたしまして、同じく国会の中でそれぞれ政党を異にしますけれども、第一党の党首として非常にそのことを心配をしておりますということを、恐らく実現できなかったら糾弾されるものというふうに、みずからも含めて国会のその後の姿に対して国民の目を恐れる、そういう気持ちで書かれたものではないかというふうに思うのでございまして、どうか書簡に書かれておる言葉そのままをお受けとめいただいて、石橋委員長を先頭にいたしまして社会党におかれましてもぜひこの問題について一層の御努力をいただくように、こういう気持ちで出されたものであるというふうに御理解をいただきたいと思うのでございます。
  42. 堀昌雄

    ○堀委員 私はあなたをとっちめようとかなんとかということではないのですが、少なくとも院の権威に対して行政の長がこのような言葉を使うなどということは穏当を欠くと思っているのですよ。だから、要するにそこの点についてだけ少なくとも訂正したらどうですか、こう申し上げているので、あなたがお答えできる範囲ではありませんから、どうかひとつ総理にお伝えをいただき、金丸幹事長とも御相談いただいて、これは歴史に残るのですから、中曽根さんという人はこういうことを立法府に対してこんな言葉遣いでやったんだということは歴史に残るので、中曽根さんの名誉のためにも訂正をされたらいかがか、こういうことを提案しているわけであります。この問題はここで終わります、官房長官ちょっとお急ぎのようでございますから。  そこで、官房長官お急ぎですから、後で詳しくやるのですけれども、一つだけお伺いして官房長官に対する質問は終わりたいのであります。  法制局長官、この間から当委員会でいろいろな論議を聞いております中で、現状において、要するに違憲定数状態において解散というのは、統治行為の部分であるので解散は法律論としては行い得る、こういうあなたの答弁を私は聞いてきたと思うのですが、ちょっとこの点に関して法制局長官の見解を再度承っておきたいと思います。
  43. 茂串俊

    ○茂串政府委員 お答え申し上げます。  ただいまの御質問は本院のいろいろな場所でも御質問がございまして、その都度御答弁を申し上げておるところでございます。最高裁判決違憲とされた議員定数配分規定につきまして是正措置が講じられないうちに衆議院の解散権の行使ができるかという問題につきましては、純粋の法律論としては、そのような解散権の行使が否定されることにはならないというふうに考えておるわけでございます。  その理由といたしましては、まず衆議院の解散制度は、立法府と行政府意見対立するとか国政上の重大な局面が生じまして主権者たる国民の意思を確かめる必要があるというような場合に、国民に訴えてその判定を求めるということを主たるねらいといたしまして、憲法に明定されておる基本的に重要な制度でございまして、この解散権の制度は、同時にまた権力分立制のもとで立法府と行政府との権力の均衡を保つという機能を果たすものであるというふうに言われております。そして、このように基本的に重要な機能である解散権につきまして、憲法上これを制約する明文の規定はございません。また、衆議院で不信任決議案が可決されたような場合におきましても解散権の行使が許されないということになりますと、内閣としては総辞職の道しかないことになりまして、憲法六十九条の趣旨が全うされないということにもなるわけでございます。  さらにまた、解散がございますとそれに伴って総選挙が施行されることになりますけれども、解散は議員の身分を任期満了前に失わせる行為でございます。一方、総選挙は解散あるいは任期満了に伴って国民が新たに議員を選任する行為でございまして、それぞれ別々の規定に従って行われる別個のものであるということは明らかでございます。  こういったことを総合勘案いたしますと、純粋の法律論として言えば、定数配分規定改正前における衆議院解散権の行使が否定されることにはならないというふうに考えておる次第でございます。
  44. 堀昌雄

    ○堀委員 今、茂串さんが純粋に法律的な立場と、こういうふうに限定をしておられるわけであります。後でやりますけれども、最高裁の三回にわたる判決の中で、特に七月十七日の判決は、単に多数意見だけではなくて寺田長官以下の補足意見も出されておりますし、さらに裁判官がお二人これについて、谷口裁判官とそれから木戸口裁判官が補足意見を実は述べられているわけであります。  これらを考えてみますと、もし現在立法府と行政府意見が食い違ったと仮にいたしましょうか。この状態のままで解散が行われたといたしましたときには、藤波官房長官、政治的に——恐らく私はその後には最高裁がこれは単に今の違憲の問題だけではなくて、選挙の無効に関する部分についての判決も出る可能性が十分ある、こう実は現在の七月十七日の判決を詳しく読んでみますと、そういう一つの流れがこの中にあります。ですから、純法律的には今茂串さんが言ったとおり、私も解散はできると思いますが、解散を行った後における司法からの今の裁判の結果に基づいて起こってくる選挙無効の処理ということは、これは重大な国政上の混乱をもたらすおそれがあるわけでありますから、私は、政治的には今の純粋に法律的な問題とは別個の判断があってしかるべきではないか、こう考えているわけであります。  藤波長官、政治的な面からして、違憲状態のままでの解散ということについての事後に起こり得る司法関係からの判決を含めて国政の混乱が起こるという問題を考えれば、それなりの判断が必要になるのではないか、政治的な判断が必要ではないか、こういうふうに考えるわけでありますが、藤波官房長官はそれについてどう政治的に判断をされるのか、お答えをいただきたいと思います。
  45. 藤波孝生

    藤波国務大臣 内閣総理大臣に付与されております解散権につきましては、今法制局長官から御答弁がありましたように、これは制約されるものではないというふうに考えておるところでございます。  一方、この特別委員会でもいろいろ御論議もございました。今、堀委員から御質問のございますように、法律的には制約されないということはわかるとしても政治的にどうだというふうな御質疑もいただいてきたところでございます。こういう不正常な状況、違憲の状況ということを考えますと、一日も早くこの定数是正が行われなければならぬということを強く考えるところでございまして、したがいまして、そのための御努力を政府立場からも強く立法府に対してお願いをしておるところでございます。  御指摘のように、解散をやる、選挙をやる、その後最高裁がどう判断するかというようなことなどいろいろ考えてみますると、確かにいろいろな問題を含んでおるということは率直に認めなければならぬと思うのでございます。したがいまして、解散をするということになりますれば、いろいろと慎重な検討が必要でございましょうし、重大な決意をもって臨まなければならぬということになろうかと思いますが、しかし解散権が制約されるものではありませんので、慎重な検討と重大な決意をもって臨むならば解散することはあり得る、こういうふうに考えておるところでございます。
  46. 堀昌雄

    ○堀委員 私は、きょう具体的な六・六案とか私どもの統一案に余り触れる気はないのでありますけれども、基本問題を伺うつもりでおるのでありますが、仮に今皆さんの御希望のようなことが起きていても、今度の速報値が出れば当然また違憲状態になることは、これはもう国民すべてが理解をしておることでありますね。そうすると、ここに十二月二十四日に速報値が出る、その前といったら、ごくわずかな期間は、確かにそれが出るまではあるいは合憲であるのかもしれませんが、それ以後はまた実は違憲状態になるということが明らかであるときに、私は今のような重大な決意ができるのかどうかについては大きな疑問を実は率直に持っておるわけでございます。  ですから、私は、今最初から申し上げておるように、この最高裁判決は国政の混乱を避けるために実は大変な配慮が行われた判決文だ、こう理解をしておるのでありまして、しかし配慮にも限界がありますよ、わかりやすい表現。で言いますと、言うならば執行猶予つきだという一つの多数意見があるとしますと、少数意見として執行猶予に時間を限れという御意見一つあるわけですね。また、執行猶予はもう必要ないのじゃないかという御意見もこの中にあるというのが実は今の七月十七日の判決の中身でございますね。  ですから、最高裁でそういう十分な配慮をしておられることの上に乗っかって、確かに純法律的にはそれは解散権は拘束されるものではないかもしれませんが、ここで解散することは、私は最高裁の善意を内閣総理大臣が踏みにじることになるのではないのか、だから、そういうことをしたときに、私は逆に内閣総理大臣国民その他から糾弾されることになるのではないのか、こういう感じがいたしてならないのであります。  私は政党の利害で物を言っているわけではありませんで、少なくとも国会議員として国民代表しておる立場から、この問題が公正な処理をされ、裁判所が期待をしておることに私たちがこたえなければならぬという前提に立つならば、私は、そのように純法律的には解散権がありますけれども、軽々にそういう最高裁判所の判事の皆さんの善意と期待に反するようなことを行って国政の上に混乱を招くようなことはあってはならないのではないか、こう思うのでありますが、もう一回お答えをいただいて長官に対する質問を終わらせていただきます。
  47. 藤波孝生

    藤波国務大臣 堀委員の御指摘になっております御趣旨はよく理解をいたしておるところでございまして、おっしゃっておられます意味合いは、くどいようですが、よく理解をいたしております。しかし、それだけに、解散権を行使するということになりますれば、いろいろ慎重な検討と重大な決意が必要となろうということを申し上げたところでございます。  問題は、やはり一日も早く是正をされるということが中心でございまして、ぜひひとつこれは、解散云々の話でなく、最高裁から一日も早い是正が求められているというふうに立法府全体がお受けとめをいただいて、内閣一体になってこの問題の解決に当たるということでぜひ進ませていただきたいということが中心の話であるということもまたぜひ御理解をいただきたい、こういうふうに思うわけでございます。ただ、解散権は制約されるものではないということも念のために申し上げなければならぬというふうに思いますので、内閣としての立場はぜひ御理解をいただきたいと思う次第でございます。
  48. 堀昌雄

    ○堀委員 官房長官、結構です。御退席ください。  そこで、本論に入りますけれども、茂串長官にお伺いをいたします。  現在の憲法で、要するに国民主権ということに関しての規定が前文からたくさんございます。ひとつ国民主権ということを明示しておるところの現憲法の条項についてちょっとお答えをいただきたいと思います。
  49. 茂串俊

    ○茂串政府委員 御指摘の問題につきましては、現在の憲法の何カ所かのところで出てまいりますが、まず第一には前文にございます。前文に、「ここに主権が国民に存することを宣言し、」云々というような言葉がございます。それから、第一条のところでも、天皇の地位は「主権の存する日本国民の総意に基く。」という規定がございます。  そのほか諸所にございますが、ちょっと今すぐに一つ一つ申し上げるということもいかがかと思われますので、省略させていただきます。
  50. 堀昌雄

    ○堀委員 我が国の憲法が国民主権に基づいておるということはたくさんまだあるのですが、時間の関係もありますからこの程度でいいですが、ちょっとこの点について各党代表の方に、我が国の憲法は国民主権を明定しておるということについてひとつお答えをいただきたい。そうだとかそうではないとかという簡単なお答えで結構でございます。森先生から。
  51. 森清

    ○森(清)議員 堀委員にお答え申し上げます。  憲法にはそのように規定されております。
  52. 山花貞夫

    山花議員 平和主義と基本的人権尊重とともに憲法の三原理である、このように理解しております。
  53. 伏木和雄

    伏木議員 ただいまお説のとおり、明確に規定されております。
  54. 岡田正勝

    岡田(正)議員 これは重要な憲法の規定であると受けとめております。
  55. 堀昌雄

    ○堀委員 この点については与野党について意見の一致がございますので、まず確認をしてまいりたいと思います。  その次に、今度は憲法十四条及び十五条で、法のもとにおける平等の問題と公務員を選ぶ権利は国民の固有の権利である、こういうふうに明定されておるわけであります。その他たくさんありますけれども、この点について、要するに選挙の問題というのは常に主体が国民の側にある、主権が国民にありますから主体が国民にあり、そうして憲法十五条で公務員を選ぶのは国民の固有の権利である、こういうふうに明定されておりまして、それは十四条で平等でなければいかぬということが規定されておるということについても、私は各党の皆さん御異論はないと思いますが、あるかないかだけをちょっとお答えをいただきたいと思います。
  56. 森清

    ○森(清)議員 お答えいたします。  そのとおりであると思います。
  57. 山花貞夫

    山花議員 御指摘のとおりだと理解しております。
  58. 伏木和雄

    伏木議員 そのとおりであると考えております。
  59. 岡田正勝

    岡田(正)議員 お説のとおりであります。
  60. 堀昌雄

    ○堀委員 私が大変失礼なようなお尋ねをしましたのは、これから私どもが取り組まなければならない定数是正の問題というのは主体が国民の側にあって私ども国会議員の側にないということをまず前段で確認をいたしたいと思ったから、こういうお尋ねをしたわけであります。  そういたしますと、主体が国民にあるということは、例えば自由民主党が六・六案というのを作業をお始めになって、森さんのお話では二年ぐらいかかったとかというお話がございましたけれども、大変な時間がかかって、前国会のもう終わり直前にようやく提案されるということが起きたわけですね。これはなぜそういうことが起きるのかといいますと、私たちの仲間内で自分たちの仲間の議員としてのある意味での生存権について大きな制約を与えることを決めるということは、本来が大変難しいことなんです。  ところが、現実には、実はさっき御質問の方もおっしゃいましたけれども、アメリカも西ドイツもイギリスも、皆先進国はそういうことはきちんとした第三者委員会に任せて、そこで瑕疵なく処理が行われるシステムが確立しているわけなんですね。残念ながら我が国においてはそういうシステムが全然確立していなかった。そうすると、内部の処理をしようとすれはこれは大変で、特に今六・六案という問題を自由民主党が非常に固執しておられるのは、依然として今自由民主党の中にもこれに反対意見がありますね。きょう坂本さんのお話を聞いておりまして、自由民主党が全員賛成ということにはなっていないが、それにしてもいわゆる被害者を多くしないためにはこの方がいいのだという、これは何の論理でしょう。国民の論理でしょうか。そうじゃないのです。要するに、政党議員同士という仲間内の論理が優先して、六・六案を早く通して、もし十二月二十四日以後になったら十増・十減になるぞ、それなら被害が少ない方がいいではないか、まさに議員の論理、選ばれる側の論理で物が動いているというところが現在のこの問題の非常に大きな問題点ではないのかということを私は率直に感じておるわけであります。  ですから、そういう意味では、今のこの問題は実は重要な問題でありますけれども、ここまで意見対立があるものをこの残された会期の中に何がなんでも無理やりにやることが最高裁判所が求めておる定数是正ということに適応するものかどうかということについて、私は疑問を実は率直に言うと持っておるわけであります。ですから、この選挙法の問題、大正十四年に実は選挙法が今の制度につくられ、二十二年でしたかにまた改めてなったわけでありますが、一遍原点に返って物を考えてみるということもこの際大変重要ではないか、こういう感じがいたすわけでございます。  そこで、実はこの間公聴会が行われまして、その公聴会に兵庫県の副知事が出席をいたしまして、こういう発言をしたわけでございます。兵庫県というのは人口が現在五百十四万四千という大きな県でございまして、五十五年国勢調査によりますと、全国で実は七番目に大きな県なのであります。現在の衆議院議員定数二十名でございますが、たまたまこの選挙区の中に五区という過疎の地帯があるために、ここを二名区にして十九名にしろということに今六・六案ではなっておりますが、副知事は、新しい国勢調査の結果によれば現在の七番目が五番目になるかもしれない、そういうときにどうして兵庫県の全部の二十名を十九名に減らさなければいけないのでしょうか、実はこういう意見を公述人として述べられました。  これは非常に重要な問題でございまして、大正十四年にこの制度が最初にできましたときには、国勢調査に基づく各府県の人口を当時の議員一人当たりの大体基準数値である十二万で割りまして、各府県の定数配分をまず決めまして、この定数に基づいて三名、四名、五名区に分配したのが現在の中選挙区の歴史的な経過でございます。これは戦後に参議院の地方区をつくりましたときも、同じように大体選挙定数というのは府県が単位となってそこにまず定数を割り当てて、それを今の人口比に応じて三、四、五名区で今のような形にするというのが基本ルールでございます。  そこで、ちょっと私の方から申し上げますと、現在の全国平均の議員一人当たり人口は二十二万九千八十一人です。この二十二万九千八十一人で、ちょうど大正十四年に行ったときと同じように現在の都道府県の人口をこれで割りますと、本来最初に行われたと同じような格好で議員定数がどうなるのかということを申し上げますと、東京都は現在四十三名でありますが、これで割ると五十一名になります。大阪府は二十六名でありますが、三十七名になります。神奈川県、十九名でありますが、三十名になります。愛知県、二十二名が二十七名。北海道、二十二名が二十四名。埼玉県、十五名が二十四名。兵庫県、二十名が二十二名。多くは申し上げませんが、要するに今のような基本的、抜本的に原点に戻って公正な配分をやり直すとすれば、兵庫県は実は十九に減らすのではなくて二十二にふやさなければならない、こういうところに該当するわけなのであります。  ですから、そういう意味ではこれから新しい国勢調査が出るということを前提といたしますと、少なくともさっき私が前段で確認をいたしました主権が国民にあるという立場からしますと、国民にかわって、これらの定数配当、さらには区画のあり方定数配分、これらを国民立場に立った第三者機関が検討をして、これは十分な検討期間が必要でありますから、私はこの国会では恐らくこの両法案成立は困難だと私なりの判断をしておるわけでありますが、そうなったときには、通常国会が召集をされましたら直ちにひとつ当委員会としてこのような作業をしていただいたらどうかという私の個人的な私案をちょっと御紹介をしておきたいと思うのであります。  これは、衆議院議員定数配分委員会設置法案要旨ということで、私の堀私案でございますけれども、  一 衆議院議員定数配分委員会(以下「委員会」という、)を設けるものとすること。  二 委員会は、直近に行われた国勢調査の結果に基づき、その結果が判明した日から六月以内に、衆議院議員定数配分及び選挙区画について、改正の必要があるかどうかの意見及びその必要があると認める場合におけるその具体案内閣総理大臣提出しなければならないものとすること。また、委員会は、特に必要があると認めるときは、衆議院議員定数配分及び選挙区画について、改正具体案内閣総理大臣提出することができるものとすること。  三 内閣総理大臣は、前項により意見又は改正具体案提出があったときは、遅滞なくこれを国会に報告するとともに、改正具体案については、その提出を受けた月から三月以内に、これに基づく改正法律案国会提出しなければならないものとすること。  四 両議院は、第二項の意見及び改正具体案を尊重し、その実現に努めるものとすること。  五 委員会は、委員七人をもって組織するものとすること。  六 委員は、学識経験のある者のうちから、両議院の同意を得て、内閣総理大臣が任命するものとすること。  七 委員の任期、政党制限等について必要な規定を設けるものとすること。  これは私の個人的な私案でございますが、そういうものをつくりまして、そうして、   衆議院議員定数配分及び選挙区画の改正具体案の内容は、次の原則に従わなければならないものとすること。  (一) 各選挙区の議員定数は、三人から五人までとすること。  (二) 各選挙区の議員一人当たり人口の最大のものと最小のものとの比率は、原則として二・五倍を超えないようにすること。また、その比率が三倍を超えたときは、改正を行わなければならないこと。  (三) 区域変更により設定される各選挙区の人口及び将来人口議員定数との関係においてできる限り均衡のとれたものとなるようにすること。  あと、たくさんございますが、最も主要な点は、以上のような原則に立ってこの第三者の委員会が早急に設けられて、要するに抜本的な処理が行われるということになりますと同時に、これは自動的に国勢調査に基づいて処理が行われるということになりますので、二度と違憲判決というようなものは起きる可能性がないのでありまして、私はまず今一番大事なことは、急いで何かの緊急的措置、総理のあれにも書いてありますけれども、緊急的措置では困るのですよ。要するに、国民が求めておりますのは、安心して、これから定数違憲のような状態にならないように、第三者委員会、言ってみれば私どもとは別の角度で国民主権を代表する立場答申がされたものには、これは国民主権を尊重すると各政党代表おっしゃっていることでありますから、同時にそのことは憲法十四条、十五条を満たす要件があるわけでありますから、問題なくこれを尊重して法律改正が行われる、そういう組織的な対応が今日極めて重要だ、こう考えておるわけであります。  これについて、森さん以下ちょっと御意見を伺いたいと思います。
  61. 森清

    ○森(清)議員 堀委員にお答え申し上げます。  まず第一に、我が国の選挙制度の歴史において仰せのような方針で行われてきたことはそのとおりでございまして、単に大正十四年の普選法以来ではなくして、明治二十二年の選挙法、それから大きく改正された明治三十三年の改正、大正八年の小選挙区制、大正十四年の中選挙区制、昭和二十年の大選挙区制、昭和二十二年の中選挙区制、すべて同じような手法で行われました。ただ、そのときに区割りをどうするかという問題については、実は第三者機関を設けたことはいまだ日本ではありません。  諸外国でございますが、御存じのとおり、そういう区割り委員会を設けております代表的な例は英国であります。英国は下院議長委員長でございまして、そして、それぞれの経験者が何人か入っておる委員会でございます。西ドイツも設けておりますが、設けておらないのはフランスでございます。最近も大改正を行いましたが、これは設けておりません。それから、アメリカは各州が区画をいたしますので、各州全部を調べたわけではありませんが、余り設けてないように私は承知いたしております。  そこで、我が国が今後どういう方向でやるべきかということについては、今、堀委員指摘のとおり、安定した選挙制度ということが望ましい。しかも、一票の格差ができる限り平等であるべきである、これもそのとおりであろうと思います。そういうことを総合勘案いたしましてどのような改正をするかということは、まさしくこれは与野党合意をいたしております抜本的改革議論であろうかと思います。我々が今提案いたしておりますのは、それに至るまでの間、憲法違反という状態是正しなきゃならない、それは緊急を要することであるということで行っておりますが、さらに引き続いて各党合意のもとに抜本是正に取り組むということでございますので、そうやりたいと思います。  それから、もう一つつけ加えておきたいことは、第三者機関というものと国民主権論とを結びつけて御議論がありました。私はそれはそれなりに意味があろうかと思いますが、我が国の国民主権主義、この主権をどのような形で行使するかについては、直接民主制と代表民主制とがある。我が国は代表民主制をとっております。すなわち、国民の間から選出されて国会を構成する我々が、そういう意味では国民代表として主権を行使している。そういうことでありますから、この国会を離れたところに主権があるわけではない、国民にある、それはそのとおりであります。その主権はだれが具体的なこととして行使するかは、国会以外にないわけであります。したがって、国会がさらに第三者機関を設けてそれに従うということを決めて悪いことはないと思いますが、やはり最終的に決定しなければならないのはまさしく国権の最高機関である国会以外にはあり得ない、また、国権の最高機関がその責任と義務を放棄するならば国権の最高機関たるに値しないものではないか、このように考えますので、第三者機関をつくるかどうかについても、先進諸国においてもいろいろな考え方があり、我が国ではまた我が国の考え方がありますので、そういうことを含めて抜本的な改正としては十二分に検討していかなければならない、このように考えております。
  62. 堀昌雄

    ○堀委員 ちょっと待ってください。  私は、国民主権を代表するものは国会であることをいささかも疑っておりません。ただ、最初に申し上げたように、議員あるいは政党が仲間内の言うなれば生存権に関するような重大なことを仲間で決めるということは適切でない、こう思うのですね。これは皆さん、そういう点では御理解がいただけるのじゃないか。だから、私どもが同意を与えた委員委員会を構成されて、そうして、それを内閣が受けて内閣が今度は国会政府案として提案をしてくる、それを今度は国会で議決をして決めようということで、あくまで私は国民主権を離れてこの問題を処理しようというのではないのであります。  ただ、あなたのところは二年かかってなおかつきょうの坂本さんの御意見のようなものが出るということは、いかに仲間内でこういう問題を処理することが困難かということの具体的な実例だと思うのですよ。そうすれば、私たちが、各党で決めた公正な第三者委員会答申をしてくれば、お互い、いろいろ事情があってもこれは仕方がないということで問題の処理がスムーズに行われるようになるのではないかということを考えて私は言っておるので、それは国民主権はあくまでも私どもの立法府にありますが、その方法論として問題が瑕疵なく処理できるようなシステムというものを考えた方が合理的ではないか、こういう問題提起でございますので、ちょっと重ねてその点についてもう一回お答えをいただきたいと思います。
  63. 森清

    ○森(清)議員 お答えいたします。  そのような政治論も十二分に成り立つものだと思います。ただ、考えなければならぬことは、その第三者機関に任せて、それをそのまま必ず国会で議決するということになれば、国会の最高機関としての、あるいは主権行使者としての権限と責任の放棄である、私はこのように考えます。やはり諮問機関あるいはその他第三者機関はあくまでその範囲のものであります。したがって、非常にいい案であるということで、我々主権を行使しているこの国会議員が十二分に、少なくともその過半数が十二分に納得し、それがよしとするものでなければ国民に対する責任は果たせない、私はこのように考えますので、いろいろな機関をつくる、あるいはそれに諮問をするということはあり得ても、最終的に決断するのは、これはいずれの社会においても、最高責任者は自分が身を殺すことも最高責任者として自分で決めなければならぬことであります。人に決めてもらうものではございません。したがって、いかなる意味においても我々はこの権限と責任を放棄するわけにはいかない。したがって、この国会の中においてあるいは政党の中において十二分の論議を尽くして、そして過半数を得べく努力をし、全会一致なら最もいいわけでありますが、それに努力するのが、民主政治あるいは政党政治のあり方としてその方が正しい。しかし、それをつくる上について専門的な知識、意見あるいは第三者としてこれは公正な案であろうというふうなものを研究してもらい、答申してもらうことについては、私は何も疑いを挟むものではございません。
  64. 山花貞夫

    山花議員 我が党としては、護憲の党として最高裁違憲判決に基づく定数是正国民的課題としてとらえ、既に前国会、百二回国会におきまして基本的な是正方向について基本方針を発表しているところであります。現行の衆議院定数五百十一を超えない範囲で是正をしなければならない、現行選挙区制を堅持し、二名及び六名区は認めない、分区、合区は最小限度とする等、その他参議院の定数是正も含んでおりますけれども、先生御指摘の点につきましては、今回の是正国会で行うが、次回以降の是正基準となる法律事項を定め、第三者機関に委任することを考慮すると既に問題提起をしているところであります。  ただいま議論となりました国民主権とのかかわりにつきましては、憲法におきましても衆参両院の具体的な選挙の仕組みについての決定は国会の裁量にゆだねているわけでありますけれども、その部分につきましては、基本的な仕組みというものを法律事項として定めた上で第三者機関に任せる、諮問をするということになればよろしいのではなかろうか、私たちはこう考えているところでございます。  なお、前回、水嶋公述人の方からも日本弁護士連合会が昨年発表いたしました分合区についての委員会の提起等もあるわけでありまして、抜本策について議論を始めるに当たりましては極めて重要な、かつ、その方向をもってしては今後根本的な是正というものは困難ではなかろうかというように考えているところでありまして、今後とも当委員会において十分議論を尽くさなければならないテーマであると理解しているところであります。
  65. 伏木和雄

    伏木議員 堀先生にお答えいたします。  先生が今御提案になりました第三者機関を設けたらどうかということでございますが、私どもも公明党といたしまして基本的に賛成でございます。ただ、今回のこの与野党案が非常な意見対立を見ているという点は、この提案に当たりまして基本的事項というものを合意してないというところに非常な問題が出てきていると思います。私どもは、六十年間いわば有権者の中に定着している現行制度、これを維持すべきであるという立場に立ちまして、いわゆる六増・六減案を提案いたした次第でございます。しかし、与党案は、この有権者の中に定着している制度、戦後四十年間我が国の民主主義を築き上げてまいりましたこの制度を崩壊させるというような案を急速提出したところに問題があろうかと思います。  したがいまして、私どもも第三者機関に委任するということは当然のことと考えておりますが、やはり基本になるべき点はきちんと法制化いたしまして、その基本線にのっとって定数是正を行うということでなければならないと思います。ただ、その第三者機関におきましては、選挙制度審議会設置法の中の第二条に「国会議員選挙区及び各選挙区において選挙すべき議員の数を定める基準及び具体案作成に関する事項」、この設置法の中にもこういう問題もございます。したがいまして、こういった点とどう調整をとるかということは問題点としてあるといたしましても、第三者機関を設けることは賛成でございます。
  66. 岡田正勝

    岡田(正)議員 堀先生にお答えいたします。  基本的にはもう全く先生のおっしゃることと私ども民社党の提案しておることとは一緒でございます。原理原則ですね、いわゆる総定数をどのくらいにするのか、それから合区、分区、簡単に言うなら区割り変更を認めるのか認めないのか、格差をどのくらいにするのか、それから中選挙制度ですね、これを守るのか守らないのか、こういう大原則各党において合意をし、その合意した事項に基づいて公平な第三者機関にお任せをする。これは作業ですからね。その出てきた作業の結果の答申を尊重して法律化する。私どももその手順には全く賛成でございます。我が党の主張と同じでございます。
  67. 堀昌雄

    ○堀委員 ありがとうございました。  自治大臣一つお伺いをいたします。  今、御答弁の中に選挙制度審議会設置法についてのお話がございました。私は、当委員会において選挙制度審議会設置法の作成に参加をした議員の一人でございますし、第一次、第二次、第五次、第六次選挙制度審議会の特別委員として選挙制度審議会にかかわってきたものの一人でございます。ただ、この選挙制度審議会というのは大変委員数の大きな委員会でございます。ですから、これを再開するということになると、これは実は大変な作業になるわけでありますし、どうも私は過去の自分の経験からいたしまして、あのような大型のものほかえって審議のために必ずしもプラスでないというふうな経験を持っておりますので、少数の、それは七名でなければならぬことはありません。九名ぐらい、十名以内の、余りたくさんの人がいたのでは甲論乙駁で意見が出てまとまりにくいと思いますので、七名か九名程度の委員会がいいのではないだろうか。私はかねてから、選挙制度審議会の特別委員としての経験からそう考えておりましたが、日弁連の出された資料の中でもやはり七名か九名というふうにお書きになっておりまして、そこは全く意見が同一なのでございます。  私は何にしても、今皆さんがずっとお答えいただいたように、主体はあくまで当委員会でございますので、当委員会が主体を失うようなことがあったのでは、要するに主権在民というような問題から離れていくわけでございますから、そこは全くそのとおりであります。その基本的な条件ということは、今お答えをいただきましたように当委員会が決めることなのですが、どういう線引きをしてどうするかという技術的な問題については、そういう委員会内閣に設けられるということが相当ではないか、こう私は考えるわけであります。  そうなると、この定数是正の問題というのは当然政府の提案ということになってまいると思うのですね。要するに、内閣に置かれたそういう委員会答申をして、私ども国会がそれについて事前に意見の交換をした結果、これでいいということになれば政府提案で処理をされることの方が全体の各政党のコンセンサスに基づいて処理がされるという点でも重要なことでありますが、その方が望ましいのではないか、私はこう考えているわけであります。  そこで、ちょっと自治大臣のお立場から、仮にそういうような作業が動いてきたときには、それは内閣にそういうものが置かれれば、今の国勢調査が行われたら後自動的にそこが私どものルールに基づいてそういう作業をして、そして総理大臣答申をし、総理大臣から所管省の自治省政府提案として当委員会に提案するという格好が望ましいのではないかと思うのでありますが、自治大臣の御見解を承りたいと思います。
  68. 古屋亨

    古屋国務大臣 堀先生からこの方面の長い御経験者として高邁な御意見を承ることができまして、ありがとうございました。  国会議員定数の問題で、選挙制度の根本にかかわる重要問題でありますので、第三者機関審議をさせて、それもそうたくさんの数ではなくて、少数の人で政府答申をして、それをもとにして案をつくったらどうかという先生の御意見でございます。  私は率直に申し上げますと、先生のそういう御提案は長期的には大変そういうことをすべきではあるというふうに私は考えておりますが、先生の御意見に対しまして、実は議員定数配分規定につきましては、同じことを申して恐縮でございますが、最高裁判決によりまして違憲とされたものでありまして、一日も早い是正が必要である。したがいまして、政府といたしましては、現段階においては、まず提案されている定数是正案について御審議を願い、ぜひとも今臨時国会において是正が実現するよう強く念願しているのでございます。  早急に是正を実現されました後、その後の定数配分につきましては、第三者機関とか、あるいはそういう長期的な根本的な改革につきましては、御提案の点は私も非常に傾聴に値する御意見だと拝聴をしておるところでございます。ただ、そういう先生の傾聴すべき御意見も承りまして、その点も含んで各党間で十分御協議をいただければ幸いだと思います。
  69. 堀昌雄

    ○堀委員 先ほど議員の方から、国会でこれは決めることで、少なくとも過半数が賛成することが必要だ、こうおっしゃったのでありますけれども、私は、長いこの公選法の委員会の経験からしまして、やはりできたら全会一致でみんなが賛成できるような案をつくることがこの公選法では非常に重要だと思うのであります。いろいろな政策については、賛成、反対、これはおのおの政党立場がございますから、議会制民主主義の原則にのっとって多数で処理をしなければならぬ場合は十分あるわけでありますが、選挙法というのは、さっき坂本委員もここでお話しになりましたが、言うなれば土俵をつくる話でございますので、土俵はやはり各党がみんなが意見を出し合って、お互いに譲歩しながら皆が一致してできる土俵ということが、当委員会に他の委員会とは異なって強く求められておることではないか、こう思いますので、重ねて恐縮でございますが、森委員の御答弁をもう一回お願いしたいと思います。
  70. 森清

    ○森(清)議員 お答えいたします。  私の舌足らず、言葉足らずでございまして、過半数と申し上げたときは、主権者としての国会が意思決定をするときには、こういう意味で申し上げたのであります。そういう中にあって、御指摘のとおりまさしく選挙法はルールづくり土俵づくりの問題でございます。これは、多数党が自分たちの有利なものを考えてやるべきものでもない。少数党はまた少数党で、自分たちだけに有利なものを主張することもない。お互いに各党公平な、そして主権者としての国民の意思が適正に国会に反映され、しかも、それによって政治も円滑に行われる、二つの要素があろうかと思いますが、そういうことを考えて、やるについて私は全会一致といいますか、各党合意が最も望ましいし、また我々はそう努力をしなければならない、このように考えております。
  71. 堀昌雄

    ○堀委員 終わります。
  72. 三原朝雄

    三原委員長 この際、午後一時三十分より再開することとし、休憩いたします。     午後零時四十一分休憩      ————◇—————     午後一時三十二分開議
  73. 三原朝雄

    三原委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。上西和郎君。
  74. 上西和郎

    ○上西委員 私は、まず質問の冒頭に若干の自己紹介を申し上げ、順次質問さしていただきたいと思います。  私は、保守の金城湯池と言われた鹿児島県第三区で総選挙の立候補に擬せられたのが昭和四十六年十二月十日、以来戦うこと十二年、立候補すること五たび、去る五十八年十二月の総選挙でようやくの思いで当選をした新人代議士でございます。私の選挙区は、今や総理・総裁への最短距離にあると言われる方がおります。自称中曽根総理の兄貴分として相談役を誇っている方がおられます。かつて三木派、河本派の重鎮として通産省のエリート官僚コースから身を政界に転じられた方と、このお三人の方がしっかりと議席を守り抜いておられまして、そこへ激しく戦ってきてようやくの思いで当選した私にとって、当選と同時に定数是正の問題が天から降ってきたように、文字どおり青天のへきれきという思いをいたしました。以来今日まで二年間、選挙区を回るたびに、定数是正はどうなるのか、六増・六減はどうなるのか、こういう声がしきりでございます。私は、何も最高裁判決にどうこう言う気持ちは毛頭ございません。定数是正は天の声と受けとめております。  ただ、まず最初、森委員に二言お尋ねしたいのは、二年かかって案ができた、六増・六減こそとおっしゃいますが、明らかにこれは党利党略、派利派略、ずばり言えば個利個略が積み重なった結果生み出された苦肉の策ではないか。だから、与党の中でさえ満場一致の賛成を得られない現実が今横たわっている。しかも、速報値が目の前に迫っている。国民納得をするのかどうか。せめて六増・六減は絞り出してみたが、時間的にこうこうなった。目の前に速報値がもう迫ってきている。ここはやはりすべての国民がひとしく納得できるような、速報値を待って抜本改正の道がなぜできないのか。再三再四各党議員の質問に対し、終始一貫六増・六減を頑として御主張なさる森委員あと一言このことに関して見解を承りたいと思います。
  75. 森清

    ○森(清)議員 上西委員にお答え申し上げます。  最初に、真情を吐露された御経験、私も五回選挙して二回落選をいたしております。したがって、同じ立場の者として大変同情を申し上げます。  ただ、今回の六減・六増案が党利党略、派利派略、個利個略ということを言われましたが、三十九年の定数是正考え方、五十年の定数是正考え方、その結果、それから午前中にも申し上げましたが、そのときに行われた三人−五人は必ずしも守らぬでいいんじゃないか、こういう御主張、これは野党一般と申し上げましたが、実は野党全体ではございません。一部の野党であったことは事実であります。そういう点の御議論、それから政府に設けられました選挙制度審議会答申、こういうものを全体的に考えまして、党利党略、派利派略の入らない純粋な案としてつくりましたならばこの六減・六増案になったことはるる当委員会で御説明申し上げたとおりであります。したがって、我々は、六減・六増によって自由民主党は、そういう党利党略からいえば不利なんであります。上西議員選挙区である鹿児島三区もそうでありますが、そのほか、それら減る選挙区においては、我々がほとんど独占ないし独占に近い選挙区であります。したがって、ここで減員をするということは、明らかに自由民主党に不利な案であります。そうして、ふえるのは、いわゆる都会地の選挙区であります。そういうところでは、例えば東京、大阪の選挙区のごとく、三人区、四人区、五人区でも一名の当選しか出せないようなそういう選挙区が多いのでございます。そういうところで定数増をするわけでありますから、自由民主党がその議席を獲得する可能性も非常に少ないわけであります。したがって、党利党略、派利派略を考えるならばこのような案にはならなかったはずであります。まさしく今申し上げましたとおり、三十九年、五十年の改正考え方、それは増員による解決であった。今度は定数を一定に据え置くことによる結果やむを得ずできた改正案であり、しかも先ほどから申し上げておりますとおり、選挙基盤に大きな変動をもたらすことはできるだけ避けたい、こういう観点からつくったものであります。  さらにまた、六十年国勢調査が目の前ではないか、この御指摘、まさしくその事実はそのとおりであります。しかし、この是正法案、そうしてまたそれと同じ、そういう意味においては同じ内容の野党四党案が提案されたのは、前の通常国会であります。そうして、それが継続審議になるときの与野党合意事項、そうしてまた当委員会における委員長委員会代表しての発言というものは、この定数是正は緊急を要するものであるからこれを早急に解決する、さらに六十年国勢調査人口の結果が出れば、それに基づいてさらに是正をするということでありますから、今まで与野党合意してきたことの流れは、この国会において解決をするということではなかったか、こう思うわけであります。したがって、自由民主党だけがこの法案をこの国会成立させようとしているんじゃなくして、野党案が成立することもあり得るわけであります。したがって、それも与野党合意をしてこの国会で決着をつけようということについては、私は政治的にもそういう話し合いになっておると思っておる次第でございます。
  76. 上西和郎

    ○上西委員 ただいまの森委員のお答えについては改めてまた若干の反論を試みたいと思いますが、ここで、厚生省見えておると思います。  私、全国のお医者さんの分布状況、とりわけ眼科のお医者さんはどういう分布状況になっているか、ちょっと御説明いただきたいと思います。
  77. 入山文郎

    ○入山説明員 眼科を標榜いたしておる医師は全国で七千を超えております。
  78. 上西和郎

    ○上西委員 極めて簡単に答弁をなさったのですが、私があえて眼科と申し上げたのは、私は過疎地帯に住んでおります。憲法第二十五条によれば「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。 国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。」こう明記されております。健康保険法は日本における最古の社会保障制度であります。同じ職業、同じ給料であれば、東京のど真ん中であろうと鹿児島県の種子島、屋久島、奄美大島に住もうと、保険料は全く同一になっております。それは社会保険、組合健保あるいは各種共済、何も変わりません。しかし一面、病気やけがをしたときに医者にかかれる権利は、憲法でこう明記されておるにもかかわらず、極めて不十分なのであります。眼科のお医者さんのいない地域がどれだけあるか。鹿児島県の十四の市のうちの幾つかの市には、眼科医が一人もいないのであります。  私の選挙区、種子島の実情を申し上げましょう。小学校の児童生徒が、中学校でもそうでありますが、スポーツの時間に複雑骨折をしたら、直ちに飛行機で鹿児島に運ばなくちゃならない。救急車が鹿児島の空港に待機であります。かつて十年ほど前、私の二級下の男性、これは県庁の職員でありましたが、土曜日に公的な会合に出ていって疲れて帰ってきて、単身赴任でありますから映画館に行って、そこで脳卒中の発作を起こし、意識不明のまま救急車に乗せられた。西之表市にはお医者さんは十数軒ある。全部お留守だった。最後に見かねた眼科のお医者さんが、やむを得ぬ、僕のところに来なさい。意識不明のまま息を引き取ったのであります。以来何年間か、種子島に単身赴任の方々に家族から電話が殺到し、日本電信電話公社の収入が倍増した、こういうことになるのでありますが、事ほどさように医療を受ける権利は保障されておりません。これは明らかに憲法違反の一つではないかと私はあえて言いたいのであります。  法務省がお見えでしょう。お尋ねします。  弁護士の分布状況はどうですか。
  79. 中神正義

    ○中神説明員 お答えいたします。  現在弁護士の数は一万三千名近くになっておりますけれども、分布につきましては、大都市に集中しておるという傾向がございます。
  80. 上西和郎

    ○上西委員 ただいまお答えがありましたとおり、私が見るところでは、東京、愛知、大阪、大体このあたりに全国の弁護士さんの八〇%近い方々が集中してお仕事をなさっておる。職業の自由は憲法で保障されておりますから、私はとやかく申し上げません。ただ、憲法の第三十四条「何人も、理由を直ちに告げられ、且つ、直ちに弁護人に依頼する権利を与へられなければ、抑留又は拘禁されない。」あるいは第三十七条の後半に「刑事被告人は、いかなる場合にも、資格を有する弁護人を依頼することができる。被告人が自らこれを依頼することができないときは、国でこれを附する。」こう明記されているのであります。  私の選挙区には、現在登録されている弁護士の方はわずか三名であります。ごく最近までは二人でした。お一人の方の娘婿に当たる方が帰ってきて開業されて辛うじて三名になりました。種子島、屋久島には弁護士がゼロなのであります。弁護士の数は極めてたくさんいらっしゃるかもしれませんが、これだけ憲法で保障されながら、弁護士を直ちに頼むことがいかに困難であるか。むしろお医者さんよりも不足をしている現実があることも、私は率直に訴えたいのであります。  私がこの六・六増減案を議論するこの公選特の場であえて医師や弁護士のことを申し上げたのは、国民の生活が日本国憲法によって保障されながら、現実の面では野放しにされたままではないか、これも大きな違憲状態だと私は申し上げたいのであります。極端なことを言うと、代議士の数がいろいろ是正されても直接的に困ることはないでしょう。お医者さんがいなければ命にかかわるのであります。弁護士がそばにいなければ、何か紛争が起きたときに全く大損していく。豊田商事を見るまでもなく、幾多の悪徳商行為で塗炭の苦しみにあえいでいる方々がそうした地域にいかに多いかということも、皆さん方よく御承知の事実であります。私はこうした観点から、憲法を守り抜こうとするならば、やはり国会も行政府も、こうしたことも含めて国民の生活を保障していく、憲法を守り抜く、そういうことが大事だ、まずこのことをあえてこの場でお訴えをしたいのであります。  次に、自治省お尋ねをいたします。  全国の都道府県議会議員選挙区で、一名区は幾つありますか。
  81. 小笠原臣也

    ○小笠原政府委員 全国の都道府県の議会議員選挙区のうち、一人区の数は合計で五百三十六選挙区でございます。
  82. 上西和郎

    ○上西委員 そこで当選されている都道府県議会議員軍百三十六名の方々の所属党派別員数がわかっておりましたらお知らせください。
  83. 小笠原臣也

    ○小笠原政府委員 お答え申し上げます。  ただいま申し上げました都道府県議会議員の一人区五百三十六区のうち、党派別当選者の数を申し上げますと、自由民主党が三百六十五人、日本社会党が十六人、民社党が七人、新自由クラブが三人、諸派二十七人、無所属百十八人、このようになっております。
  84. 上西和郎

    ○上西委員 ただいまお答えがありましたとおり、五百三十六名中六八・一%に相当する三百六十五名の方が、与党である政権党と自負をされている自由民主党に所属をされております。残念ながら野党の雄であります公明党も共産党も、この中には名前が出てこないのであります。都道府県議会議員の一名区は、私をして言わしむるならば、衆議院議員選挙区の二名区に匹敵をする立場にあるとあえて断言をしてはばからない。であります。一名区、野党が圧倒的に少ない。無所属の方々も大方保守系の方と見ますと、何と驚くなかれ五百三十六名中九〇%の方々が与党ないしそれに準ずる無所属の方々だ、これが現実の都道府県議会議員選挙の結果であります、  私の鹿児島県では、一名区が十四あります。残念ながら全部自由民主党公認の方々で議席を占められているのであります。少数区がいかに政権党、与党を利するか、この数字を見ても明らかであります。辛うじて三名のうち一名を野党が闘い取っている現実、そうして、それが地域に密着をした中選挙区制の長きにわたる歴史、伝統の中から、国民多数の方々の意見を公平に国政に反映するその大きな機能を発揮している、このことを思うときに、この一名区の現状から見て、私は森委員に後で反論したいと申し上げたのは、三名区を二名区にすることは与党が犠牲を払う。しかし、逆に言えは、三名区なら野党が闘い取れる余地がある。二名区なら、正直申し上げて、まず我々はしっかり、がっちりとれるという安心感があっておつくりになったのではないですかとまで言いたくなるのでありますが、その辺について森さん、どうですか。
  85. 森清

    ○森(清)議員 お答えいたします。  ただいまの県会議員の一人区の問題は今聞いたばかりでございまして、数字も今メモしておったところでありますが、県会議員定数配分というのは、人口に応じて郡市の単位で配分することになっております。〇・五に満たなければ一とするわけでありますが、ということは、郡市の区域で非常に人口の少ないところ、すなわち俗な言葉で言えば山間僻地が多いわけであります。山間僻地においては、一人区になろうと二人区になろうと大体自由民主党が強くて、続いて社会党がお強い。都会的性格のあるところ、山間僻地においては、どのような選挙をされても同じである。したがって、衆議院選挙においては、そのようなところには自由民主党と社会党以外のところは候補者もお立てになっておらない、こういうことは事実であります。したがって、今の統計で一人区だから政権政党が圧倒的に多いということは、もう少し検証してみなければわかりませんが、直ちにそのようなことにはならない。今私が言ったような常識的な判断もあるわけでありますから、その辺はなお研究させていただきたいと思います。  ただ、御指摘のように小選挙区制をやりますと、そこで少なくとも過半数を得れば当選するわけであります。候補者が多いと、あるいはもっと下で通るかもしれません。そういう意味で、その地域における第一党が非常に有利である。それから、二人区になれば、圧倒的でなければ、比較的第一党と第二党が有利である、こういうことは一般論としては言えることでありますが、やはり選挙するのは、それぞれの選挙区において各政党がそれぞれ有権者に訴えてそこで戦うわけでありますから、その結果そういう傾向は多少あると私は思いますが、それによってこれがどうこうということではなくして、選挙制度というのは、それぞれつくって、その結果少数者も十分反映させるような方法を十二分にとる、これは比例代表制ではないと思いますが、そういう方法をとるのかあるいは小選挙区制をとるのか、あるいは今のような三−五くらいの中選挙区制みたいなものをとるのか、それはそれぞれの歴史、伝統それから政治情勢、そういうものが総合的に判断されてでき上がっていくものであって、そういう選挙制度選挙区画ができますならば、それに対応してその中で選挙に勝ち抜いて、少なくとも過半数を獲得して政権をとろう、これが政党であります。     〔委員長退席、小泉委員長代理着席〕 したがって、やはりそういうルール、地盤、土俵ができたならば、そこで多数を得べく努力していただきたい。その結果、勝敗はそのときのことであります。したがって、こういう選挙制度にしたらおれのところはだめになるということではなくして、選挙制度選挙制度として、国民的な合意の中でどういうものがいいかということは議論しなければなりませんが、単に今我が党が有利であるとか不利であるということだけじゃない判断が欲しいものだと思います。  そこで、我々が六・六案をつくったときは、先ほども御説明申し上げましたように、党利党略からいえば我が党に最も不利な案である、このように考えております。
  86. 上西和郎

    ○上西委員 森さんのお話を聞いていると、くるっと乗せられていくように非常にお上手にお話しになりますけれども、少なくとも今度仮に六増・六減でやって二名区というものをつくったら、この先四増・四減をつくるのかどうかわかりませんが、定数是正即二名区、こういうことが既定の路線で定着していくのではないか。そして、そのことは、今都道府県の一名区で挙げましたように、明らかに時の政権党、与党に有利な結果をその選挙区に関しては完全にやられていく、このことを私は非常に懸念するのであります。  それは党利党略じゃありません。死に票がふえる、このことが大事なんであります。死に票がふえる。確かに格差是正はあるでしょう。しかし、現実にそうした減員区では死に票が多分に出てくる。しかも、政権党に対する、与党に対する正しい批判、そうしたものが死んでいく、このことが国政を運営するに当たって非常に、大げさに言うならば議会制民主主義の根幹を揺すぶっていくのではないか。だから、私たち全野党を挙げて二名区は絶対反対だ、こう主張しているのであります。どうも森先生は自治省きっての秀才であったともよく聞いております。自治省から生まれてきて、特に選挙制度については再三お答えいただきますが、メモ一つなく通暁されている博覧強記ぶりに私は大変敬服をしているのでありますが、それはそれとして、二名区の問題については、今のお答えだけでは大変不安なんであります。  ずばりお答えください。二名区をつくったらこの次ずっと二名区ですよ、本音はそうなんでしょう。そのことを当面、極端に言うとごまかす、糊塗するようなやり方でこの場だけをしのいでいって、そして、これで六・六が通ったから、解散権があるから、中曽根さんはどっちを向いてもいいから勝手にやりなさいなんということをされては、困るのは国民ですから、そういう意味で、もう一遍明快なお答えをいただきたいと思います。
  87. 森清

    ○森(清)議員 上西委員の人格をそのままあらわしたような大変率直な見解であります。私も敬服をいたしております。  一般論からいえば、ただいま申し上げましたとおり、小選挙区が多数党に一番有利であります。それに続いて二人区が有利であり、三人区が有利であり、四人区が有利である、これは事実であります。それを私は否定するものではありません。しかし、現在この緊急的な措置としてやろうとし、あるいは月末に出る六十年国勢調査に基づいて引き続いてやる、これはまだやり方を決めているわけではございませんが、そういう緊急的なやり方でやるこの二人区の創設は、明らかに我が党に不利であります。  それは鹿児島三区においても、この十回の総選挙で延べ三十人の当選者がいるはずでありますが、私の記憶に間違いかなければ二十七名か二十六名までは自由民主党であります。石川二区のごときは、この十回の総選挙で延べ三十人当選いたしておりますが、三十人全員自由民主党であります。愛媛三区においても、三十人の当選者のうちたしか二十六名か七名が自由民主党であります。そういうところを二名にするわけでありますから、これは自由民主党がそういう意味でつくった選挙区でありますから、これは明らかに不利であります。したがって、今後五名区を二つに割って三と二にするとかそういうことをやるならば、今委員指摘のとおり自民党に有利になるでありましょう。しかし、今回できますのはいわゆる過疎地域の選挙区であり、三人区のところでありますから、それが二名区になるということは、党利党略的に言えば明らかに我が自由民主党に致命的な損失を与えている選挙考え方でございますので、先ほど申し上げましたとおり党利党略等は何も考えずに、最も公正妥当で、そうして当院においても国会議員全員の御賛同が得られるものである、このような考え方のもとに立案したものであります。
  88. 上西和郎

    ○上西委員 私、森議員にこれ以上お尋ねしません。しかし、今あなたがおっしゃるとおり全く公平なものであるならば、なぜ与党の中でさえ意見の一致が見られないのですかと私はあえて反論したいのであります。これだけの重要法案で、かつて与党が内部分裂のまま党議としたことがございますか。私はそこに、何かわからないままにこの際強行突破、このきな臭いにおいが感じられてしようがありません。あえてこれ以上お尋ねしませんが、そうした意味合いで、二名区をつくることは絶対に反対だ。これは議会制民主主義の根幹を揺すぶる大変な問題になり、かつ死に票をふやし、少数野党意見を圧殺していく結果になる、このことを大胆に指摘をしておきたいと思います。  さて、古屋大臣、私は先月二十日、年金四法の連合審査のときに、わずか三十五分の質問時間を与えられ、たった一回大臣にお尋ねをしました。ところが大臣、私をよく覚えておられました。廊下で声をかけてくださいました。私大変感激をしたのであります。改めて思いました。中曽根総理の先輩だけある。内務官僚の大先輩として隠然重きをなしている古屋自治大臣に私はあえてお尋ねをしたいのであります。  それは何か。盆と暮れに日本民族の大移動が国内で行われます。都会は空つぼになる。田舎は、過疎地帯は人口が一躍倍、三倍になっていく。  私はここで一つの具体的なものを出してお尋ねをしたいのでありますが、私ここに持っておりますのは、東京の朝日新聞の十月二十八日付夕刊であります。何を特集しているか。台風予報円の特集であります。これは不肖上西和郎、私が十月八日、閉会中でありましたが農林水産委員会で、台風十三号であれだけ痛ましい事故が出たその最大の原因は、わかりにくい台風予報円を採用し、気象庁が何もPRをしていなかったから、予報円と暴風域を間違えて出漁した有明海の漁民二十二名が無残にも死んだではないか、間接的な下手人は気象庁だ、こう十六分間質問しましたら、気象庁は十月十五日検討委員会をスタートさせたのであります。この担当の記者に私お電話してみました、どうしてこんな特集をされましたか。国会で天気予報を厳しくやったのはあなたが初めてだ、そうして気象庁が一週間で改善作業に着手したのも異例のスピード、そういうことで一面つぶした特集記事になったのであります。  問題は、この後にあるのです。この新聞が出た直後、私の会館の部屋と宿舎には大げさに言えば鳴りやまない電話がかかってまいりました。鹿児島県出身の関東近郊におられる方々が、よくぞいいことをやってくれた、今おれたちは身はこの都市部にあるが、心は鹿児島にあるのだ。墳墓の地を心配しているのだ。親戚もいる、両親もいる、家族もいる、こうしたところのことをよくぞ取り上げてくれたという感謝の言葉であり、引き続き言われたのが、本籍地で選挙ができればなということであります。  皆さん、形の上で、人口比で議席を配分するのもいいでしょう。しかし、根強く残っている郷土愛、それの累積が祖国愛じゃありませんか。中曽根さんが大好きな愛国心はそうして培われているのであります。そうするならば、ただ単に人口比で定数を云々するだけでなく、そうした本当に日本人の心に根差したところについてまでの御配慮はいかがであるか。私、古屋自治大臣に、こうしたことについて御見解がもしおありならば承りたい、こう考えお尋ねする次第であります。
  89. 古屋亨

    古屋国務大臣 先生おっしゃいますように、郷土愛につきましては先生の非常に御熱烈な郷土を思うお気持ちをお聞きしまして、非常に私も心から感激し、また同時にみずから反省をいたしておるものであります。率直に申しまして、私も郷土を愛するという点におきましては人後に落ちないものと自負しておりまして、先生のお気持ちは本当によくわかる感じがいたします。  さて、衆議院議員選挙定数配分基礎をなすものは、御承知のように、人口であると考えておるのでございますが、人口が唯一絶対の基準ではもちろんないわけでありまして、最高裁判決によりましても、社会の急激な変化や人口都市集中化などさまざまな事情が考慮されてしかるべきである、これは五十一年四月十四日の最高裁判決にも出ておるところであります。ただ、こういうような事情を勘案いたしまして定数配分を行うにつきましても、おのずからある程度限界があるわけでございまして、その結果合理性を有するものとは到底考えられないような大きな格差が出るということはまことに残念でございますが、憲法上は許されないものがあると考えるのでありまして、もちろん将来におきまして、人口だけじゃなくてそういうような要素ということも検討すべきことは、御意見のように大変必要だと私は考えております。  ただ、再三申し上げて恐縮でございますが、最高裁違憲判決は、違憲状態にあります現在の定数配分でございますから、一日も早くこれだけは直すべき必要があると私ども考えておるのでありまして、その後今のようなお話の点も、この前西山先生のお話も、過疎地域の問題について御意見ございました。そういう意味で、やはり人口基準とするのは重大なポイントでございますが、しかし今のような過疎地域というものが当然今の社会では出てまいりますので、こういうものに対する配慮というものを何らかの形で検討して考えるべきであるということは、私も率直にそういうように感じておるところでございます。
  90. 上西和郎

    ○上西委員 大変ありがたいお答えをいただきました。私は冒頭、お医者さんかどうか、弁護士さんがどうかというお尋ねをしました。いたずらに二名区をつくることは、政治の面で無医地区をつくることになると私はあえて申し上げたいのであります。したがいまして、定数是正は天の声だ、しかし今の与党の案、まあ議員提案になっておりますけれども、この中にある二名区をがっちり据えたままでよもや強行採決などをなさり、国民のひんしゅくを買うようなことはなさらないであろう、そのことをかたく信じながら質問を終わらせていただきます。
  91. 小泉純一郎

    ○小泉委員長代理 二見伸明君。
  92. 二見伸明

    二見委員 最初に、先ほど堀先生の方からも厳しい御指摘がございましたけれども、各党党首に出されましたいわゆる中曽根総理大臣、自民党総裁中曽根康弘君の書簡であります。確かに自民党総裁中曽根康弘という名前にはなっておりますけれども、内容を見るとやはり内閣総理大臣としての色合いが大変濃い。行政府の最高責任者が立法府に向かってごちゃごちゃ言ってくることが果たしていかがかなという感じも持っておりますし、大変不愉快な感じもいたしております。何のためにこんな書簡を出されたか。憂慮しているとか憂えるとか、こういう気持ちを純粋に私は受けとめることができません。  それで、お尋ねしたいわけでありますけれども、この書簡の中で後段の方に、「我々は、この国会において、司法が指摘する違憲状況を是正する責任があります。主権行使者たる国民もそれを強く期待しています。もしその責任が放棄され、その期待が満たされないことになるとすれば、自らの改革能力を証明しえない立法府が強く糾弾されるものと言わざるをえません。」と書かれている。私は現行定数配分がいいと思っておりませんし、次の総選挙は新しい定数配分のもとに行わなければならない。それは最高裁判決を読めば読むほど、まさにこれは立法府の責任であり、義務であると思っております。  しかし、ここで私は、法制局長官、中曽根さんのこの発言は恐らく政治的な発言だと思うので、あなたに純法律的な立場から政治論抜きでお答えをいただきたいのだけれども、中曽根総理は、「もしその責任が放棄され、その期待が満たされないことになるとすればこと、こう言っている現在我々は二つの案について慎重なる審議をしております。そして、自民党も我々野党も、意見の違いはあもかもしれないけれども、次の総選挙は新しい定数配分のもとにやらなければならないという基本的認識においては一致をいたしております。  そういう状況の中で、もし今国会で新しい定数配分現行定数是正が話し合いがつかず行われなかった、次の通常国会に継続されるということになったとする。そうすると、これは純法律的に見て国会責任を放棄したことになるのかどうか。政治的にはいろいろな言い方方はできると思う。純法律的にそういうことが言えるのかどうか、その点まずお答えをいただきたいと思います。
  93. 茂串俊

    ○茂串政府委員 ただいま御指摘がございましたいわゆる中曽根書簡の後の方に述べられている文言でございますが、この文言は、最高裁によって違憲とされた定数配分規定是正につきまして、立法府において緊急な対処、対応がなされなければならないということを踏まえまして、いわば政治的な心情をお述べになったものと考えられます。したがいまして、お尋ねのような問題につきまして、純粋の法律論の立場からお答えするということにはなじまないのではないかと私は考えますので、そういうことで御了承を願いたいと思います。
  94. 二見伸明

    二見委員 いいですか、あなたは今最高裁判決に準じられてお答えになられた。私が聞いたのは、今国会で実現しなかった場合に総理責任を放棄したことになると言っている。そう言って立法府を批判している。政治的発言としてはわかるけれども、純法律的に見てもそのとおりなのかどうかと聞いている。純法律的にはそんなことないでしょう。これは次の総選挙までに是正をしなければなりませんね。次の総選挙までに是正できないことになれば、それは批判されるかもしれない。そうでしょう。今国会中という限定がありますか。
  95. 茂串俊

    ○茂串政府委員 最高裁判決は、現在の定数、いわゆる議員定数配分規定違憲であるという断定を下しておりまして、既に昭和五十八年十一月七日の最高裁判決におきましても、できるだけ速やかに定数是正がなされるべきであるということを付言しておるわけでございます。これは大変に異例なことでございますが、それを多数意見の中で付言しておるわけでございます。そして、その後におきまして、去る七月十七日の最高裁判決が出ました折にも、これは補足意見でございますけれども、非常に強い口調で、実は五十八年の大法廷判決のときにも特に付言して定数是正を速やかに行うべきであるということを述べたのだが、その後それにもかかわらず実現がされていない。そういう意味で、この現在の事態というのは、昭和五十八年の大法廷判決の出た当時に比較しても捨ておけないような事態になっておるので、一日も早く是正がなされるべきことを期待するというような意見が述べられておるわけでございます。  そういう意味におきましても、定数是正の必要性あるいは緊要性というものは最高裁自身が強く述べておることでございますし、また当然違憲の判断が出た以上は、憲法の精神に即しましても、第一義的には立法府、また行政府も一緒になって一日も早く緊急な措置として改正をすべきであるということは言をまたないところであろうと思うのでございます。そのような点を踏まえまして、総理はいわゆる中曽根書簡にあるようなお言葉を述べられたのだと私は理解をいたしておるのでございます。
  96. 二見伸明

    二見委員 私は、法制局長官に総理の政治的な立場からの発言を聞いているわけじゃないのです。私も最高裁判決を読み、一日も早く是正しなければならないという判決を非常に重く受けとめている一人なんです。それを総理が、今国会中にできなければ責任放棄したことになる、これが純法律的な立場から見てそう言えるのかどうかと聞いているのです。  いいですか、もう一度別の角度から聞きますよ。どんなに遅くても、我々一日も早く是正しなければならぬ、きょうにでもあしたにでも是正しなければならない。是正はいつまでにやるか。エンドレスではない。ぎりぎり次の総選挙までにはやらなきゃならないというタイムリミットはあるわけです。次の総選挙まで一番長くて二年だ。最大のタイムリミットでも二年。我々は二年もかけてやろうなんという気はない。一日も早く是正をすべきだと思っている。にもかかわらず、それを今国会中にやらなければ責任放棄だと言う。こんな言い方が許されていいものかどうか。官房長官、これは総理の一種の恫喝じゃありませんか。立法府に対する恫喝じゃありませんか。
  97. 藤波孝生

    藤波国務大臣 最高裁判所の判決と現在置かれております状況の中で、一日も早く是正をしなければならぬということにつきましては今法制局長官からお答えがあったところでございます。新聞なども、毎日のように社説で是正を急げということを論調として掲げておられる。地方議会なども非常に大胆に定数是正や減員の決定をして、住民の要請にこたえておられるという姿がある。そういう中で、国民の皆さん方も定数是正を急げという感じは非常に強く出てきている。そういうことを踏まえまして、第一党の党首としてみずからも大きな責任を痛感をするし、ぜひ各党の党首におかれても、また立法府の議長におかれても、この責任を共有して一緒に解決に臨もうという呼びかけをさせていただいたのが自由民主党総裁中曽根康弘の書簡ではなかったろうか、こんなふうに考えておるところでございます。決して恫喝するというような意図で行われたものではなくて、非常に事態を憂慮して書簡を発出したものと考えておる次第でございます。  この国会解決しなければどうかということについても、今委員の言及されたところでございますが、最高裁判所の判断が示されており、通常国会でもいろいろ御議論がありましたけれども、未解決のまま継続審査になって、自民党案、野党統一案というものを抱えて臨時国会に臨んでいる。臨時国会が間もなく終わろうとしているという状況の中で、ぜひこの国会において是正をされるということでないと、何か厳密に法律的にそれで責任を放棄したことになるのかという御質問に対してはなかなかお答えしにくいところがありますけれども、そう思わなければならぬぐらい立法府は大きな責任を持ってこの会期末に臨んでいかなければなりますまい、政府としてもそのことを非常に心配をしているという状況に現在ありますことをそのまま書簡の中で述べたもの、こういうふうに御理解をいただきたいと思うのでございます。
  98. 二見伸明

    二見委員 官房長官、あなたはそうおっしゃいますけれども、その後に総理は、「もしそのようなときは、私は与党党首として、また内閣総理大臣として、かかる立法府のあり方に憂慮せざるをえません。」こう述べられているわけであります。その前には、「もしその責任が放棄され、その期待が満たされないことになるとすれば、自らの改革能力を証明しえない立法府が強く糾弾されるものと言わざるをえません。」と言い、そのような事態になれば、内閣総理大臣として立法府のあり方に憂慮せざるを得ない。こう突き詰めてくると、内閣総理大臣として憂慮する、ただ心の中で憂慮するというだけではなくて、何らかの行動に出たいと考えているのではないかと受け取らざるを得なくなってくる。どうなんですか。解散を散らつかせたという新聞の解説もある。そういうことでこの立法府を恫喝しようとするならば、それはまた別の議論だけれども、議会制民主主義にもとるような、根本にかかわるような議論に発展すると私は考えておりますけれども、憂慮せざるを得ない、これはどういうことなんですか。
  99. 藤波孝生

    藤波国務大臣 午前中堀委員の御質問にもお答えをしたところでありますが、第一党自由民主党の党首として非常に責任を痛感をして、各党の党首、さらに議長さんに対して一層の御努力をお願いをするという呼びかけをしたもの、しかも同時に、中曽根康弘自由民主党総裁は内閣総理大臣でもあるわけでございますから、自由民主党も真剣に考えてきた、立法府と同じように内閣もまたこの問題について非常に深刻に考えて従来努力をしてきた、こういう内閣立場もございますので、内閣総理大臣としての立場でのことにも言及をしたもの、こういうふうに考えておりますが、恫喝したなどということを心の中に描いたのではなくて、実に心配にたえません、憂慮せざるを得ない、まさに文章そのものの気持ちではないか、こういうふうに考える次第でございます。
  100. 二見伸明

    二見委員 真情を吐露しただけで具体的に行動に出るということではない。よりもっと具体的な言い方をすれば、これは今国会にできなければ衆議院の解散をするぞという意味合いを込めたものではないということでございますか。
  101. 藤波孝生

    藤波国務大臣 憂慮せざるを得ないという文章そのままの気持ちであろうと思うのでございます。  総理大臣には解散権が付与されておりまして、国政上の重要な局面において民意を問う際に解散に訴えるという権限を持っており、そのことは何者にも制約されないというふうに考えておりますが、余りお互いの質疑の中でも解散、解散というような話には触れない方がいいのではないか。これはひそかに総理大臣が懐の中に入れておいて、国政上の重要な局面でどうにもならぬときに重大な決意を持って行使するという権限は持っておるものでございますけれども、そのことによって恫喝したなどということよりも、この問題の是正というのは立法府や内閣に課せられた今日の非常に大きな責任であるということについて思いをいたし、もっと真正面から各党の党首にお呼びかけをしたものである、こういうふうに御理解をいただきたいと思うのでございます。
  102. 二見伸明

    二見委員 それでは、もうちょっとこの問題を別の角度からお尋ねいたしますけれども、官房長官も誤解されては困るのですが、我々も定数是正は一日も早くやらなきゃならぬというふうに思っております。ただ、自民党さんの出された六一六案と我々の野党統一案とが基本的な面において食い違いがあるものですから、このように議論が展開されているわけでありますけれども、我々も一日も早く是正しなければならぬ、次の総選挙は新しい定数配分で行わなければならない、それができないことになればまさに立法府が世論からおしかりを受けてもやむを得ない、こう思います。  しかし、そのために現在も審議しているし、これからも審議を重ねていこう、よりよいものをつくろう、六・六があり、野党統一案がある、あるいはこれよりもっとよいものがあるかもしれない、そういう意見もある。きょうは坂本先生からも修正案も出された。よりよいものをつくり出す努力をこれからも我々はしていかなければなりません。しかも、この努力はエンドレスではない。そういう努力をしながら、例えばその結果今国会では定数是正が実現できなかった、通常国会に持ち越されるということも全くないわけではない。急転直下、例えば自民党さんが、わかった、野党統一案に同調しようというなら、きょうでも採決してもいいわけだから、そういう形で。そういうこともあり得るわけだ。  確かに中曽根さんの立場からすれば、そういう事態になることは、そういう事態というのは、議論を進めながら今国会では実現できず、通常国会まで持ち越されるようなことがあり得るかもしれないということになった場合に、中曽根さんとしては大変心情的には我慢がならないかもしれない、おもしろくないかもしれない、いら立ちがあるかもしれない。それは私は心情的には中曽根さんの立場に立って理解できないわけではない。  ところで、自民党の幹部の中には、もし自民党さんが提出されている六・六案が今国会成立しなければ衆議院解散だということを意図的に流している方もいらっしゃる。これは事実だ。そういうことを考え合わせると、どうも中曽根さんの書簡というのは、できなかった場合には衆議院解散するぞということが言外に秘められているのではないかなというように受け取られても、私はやむを得ないのじゃないかと思います。  それはさておいて、法制局長官、純粋な立場からお尋ねをいたしますけれども、きょうも例えば解散権の問題についてお話がありました。法制局長官の答弁を要約すれば恐らくこういうことになるのだと思いますが、衆議院の解散制度は、立法府と行政府意見対立するとか国政上の重大な局面が生じて、主権者たる国民の意思を確かめる必要があるというような場合に、国民に訴えてその判定を求めることを主たるねらいとして憲法に明定されている基本的に重要な制度である。この解散権の制度は、同時に、権力分立制のもとで立法府と行政府との権力の権衡を保つという機能を果たすものであると言われており、基本的な重要な機能である解散権について、憲法上これを制約する明文の規定はない。大体一貫してこういう趣旨の御答弁をされているというふうに理解いたします。  確かに解散権について明文上これを制約する規定がないことは事実であります。しかし、長官自身、立法府と行政府意見対立するとか国政上の重大な局面が生じて、主権者たる国民の意思を確かめる必要がある場合ということを述べられているのは、確かに制約はないけれども、おのずからその行使に関しては、明文上ではないけれども、乱用してはいけないという暗黙の了解というか、合意があるというふうに法制局長官も認識されているのではないかなと私は思います。  解散権に関するいろいろな学説も私、読んでみましたけれども、例えば深瀬忠一さんは、衆議院の解散について、「そもそも憲法の明文上、内閣が解散権を行使しうる場合に就いて、制約が課せられていないことが憲法習律という法的規範上の制約がないことではない……。否、明文上無制約であればこそ、習律上の制約を明確化し厳正に実施せしめる必要が倍化しているといえる」、明文上は無制約ではあるけれども、それはやたらにやってもよいというものではないということになっているわけであります。それが大方のコンセンサスというか考え方だろうと私は思います。  それで、大変突出したもので、御意見を求めるのはあるいはお答えにくいかもしれないけれども、今国会定数是正が先送りになった、次の通常国会になったということだけで、しかも与党野党ももう定数はやらぬ、このままでいくんだなんというのではない、さらに努力をしよう、よりよいものをつくろうという姿勢を依然として持ち続けているという状況のもとで、不幸にして今国会合意ができず、次の国会に持ち越されたということもないわけじゃない。その場合、そのことを大義名分として、解散の理由として衆議院を解散するとするならば、私はそれはまさに解散権の乱用以外の何物でもないと思いますけれども、法制局長官はこの点についてはどういう御見解をお持ちでしょうか。     〔小泉委員長代理退席、委員長着席〕
  103. 茂串俊

    ○茂串政府委員 お答え申し上げます。  一般論として申し上げますと、いかなる場合に衆議院を解散するかは内閣がその政治的責任で決すべき事柄でありまして、憲法上はこれに関する制限はないと考えておりますが、憲法の運用の問題として、その乱用を慎むべきものであることは言うまでもないと考えられます。  いずれにしましても、衆議院の解散権の行使は内閣の高度の政治的判断に基づいて行われるものでありまして、そのときそのときの四囲の情勢その他を十分に総合勘案した上で判断をするということでございまして、法制局として一義的に今のような御質問に対して御答弁を申し上げるということは差し控えたい、かように考えております。
  104. 二見伸明

    二見委員 現行憲法が制定されて解散権の問題が初めて議論されたときに、GHQは憲法六十九条による解散しかできないのだという解釈をしたことがあります。それはどうしてかというと、七条解散というものを認めれば明治憲法下における——明治憲法下においては解散は天皇の人権であった。実質的にはそれを内閣が行使してきた。そういうことになれば内閣、行政府と立法府の間で、実質的に行政府が明治憲法下における内閣と同じようなものになるのではないかというおそれから、総司令部は憲法六十九条による解散しか認めないという解釈をしたことがあります。しかし、その解釈は、少数意見としてあるとしても、現在では七条解散が事実上定着しておりますし、そのほか七条解散の行使に当たっても乱用してはならない、内閣の一方的な懇意というか一方的な判断だけでやってはならない、これはもう憲法の運用上当然のことだと私は思いますし、行政府の長たる者はそのことを絶えず頭に置いておかなければならないと思います。  そうしたことを踏まえて、さらに官房長官お尋ねいたしますけれども、元衆議院議長の保利先生の昭和五十三年七月十一日付の書簡、翌年の三月に公表された「解散権について」という文書がございまして、官房長官はお読みになられただろうと思いますけれども、その中で「従って内閣に衆議院の解散権があるといっても、明治憲法下の如く、内閣の都合や判断で一方約に衆議院を解散できると考えるのは現行憲法の精神を理解していないもので適当でない」と書かれている。私は、これはまさに大きな見識だと思います。にもかかわらず、自民党の幹部の中からは意図的に、この自民党の六・六案が通らなければ衆議院は解散するなどという脅迫めいたことが何回となく流されている。甚だ遺憾であります。乱用すべきではないという法制局長官の御答弁もありました。けれども、藤波官房長官はこの言葉を受けてどういうお考えを持っておられますが。
  105. 藤波孝生

    藤波国務大臣 解散権が内閣に付与されておる非常に基本的な機能であるということと解散権の行使については乱用してはならないということとは、まさに裏表の関係になるだろうと考えている次第でございます。これは内閣がどこかと相談して決めるという筋の話ではないので、解散権は何物にも制約されずに内閣に付与されておるものではありますけれども、これを行使する態度は十分慎重でなければなりますまいという、一般論としては全くそのとおりだと思うわけでございます。  先ほど来、委員の御質疑の中で、この臨時国会定数是正が行われなければということを前提としていろいろ御心配をいただいておる御議論でございますけれども、まだ会期もあることでもございますし、これだけ与野党で熱心に御討議いただき、また議長さんも各党国会対策委員長さんをお呼びになって、いろいろ各党の御事情などもお聞き取りいただくといった努力も始まっておるところでございまして、通らなければという前提に立たないで、ぜひ通すということの上に立って、あと残された会期にぜひ御努力いただくように内閣としては心からお願い申し上げたい、こう考えております。
  106. 二見伸明

    二見委員 時間を予定より食っておりますが、申しわけありません、もう一問だけ官房長官お尋ねします。  いわゆる書簡の中で、総理は、立法府が強く糾弾されることを憂慮されて「速やかに憲政上の異例が正され、国会が、主権者たる国民の信託に応えうるよう、貴党の一層の理解と協力を切望してやみません。」と最後のところで申しておられますね。これは私たちの方からも総理に申し上げたいことなのです。どこかの新聞の社説にも書いてありましたけれども、こう言う以上は自分の方にも譲る用意があって言うべきことであって、我が方は何も譲るものはない、譲るのは野党だけだという立場でこういうことを言われたのでは、これは不毛のことなのであります。  ところが、総理野党と折衝する自民党の関係者に対して、我が党の案をいじってはならない、六・六案を一言一句だに修正してはならないというたがをかけて野党と接触させ、一方では「貴党の一層の理解と協力を切望してやみません。」では、何でもいいからおれの方の言うことを聞けということ以外の何物でもないと私は思う。建前からいけば、お互いに議員立法なのですから、総理大臣中曽根康弘さんが口を出す筋合いはない、内閣が出したのじゃないのだから。そうでしょう。ここで決めてしまえば、どういうふうに決めようとそれは総理大臣中曽根さんがくちばしを入れる筋合いではないものだと私は思うのです。  それはそれとして、自分の方にも十二分に譲る用意がある、今出されている自民党の六・六案について修正する用意があるということを示さなければ、総理のこの書簡の最後というのは実体を伴ってこないのではないか。官房長官、この点いかがですか。まして、総理が関係者に我が党の案をいじってはならないなどと指示するというのはいかがかと思うのですけれども、この二つの点についてお答えいただいて、御退席いただいて結構でございます。
  107. 藤波孝生

    藤波国務大臣 この問題をめぐって総理と関係者の間でいろいろと対話が交わされてきておりまして、その中で今お話がありましたような問題についても総理の口から出たということもございます。  自由民主党の総裁としての書簡が発出されておりまして、その中に書かれておる事柄に関することでございますし、きょうは議員立法提出者の森議員もおられることでございまして、私がお答えすることがどうかと思いますけれども、基本的に総理の気持ちの中にあるのは、いわゆる自由民主党が多数をとっております政党として、いろいろとこの案をまとめるために長い時間をかけて苦労をしてきた。それを関係の方々にも御理解いただくようにいろいろと苦労して積み上げてきて、やっと六・六案というものがまとまったという思いがあります。したがいまして、いろいろとこの中身について、ここをこういうふうになぶったらどうだ、こういうところをこう修正したらどうだというような話に入りかけますと全然まとまらなくなってしまうのじゃないかということを基本的に心配しておるだろうと思うのです。そういうような気持ちは中曽根総裁だけではなくて、自由民主党の方々の中には多分に、特に御苦労いただいて積み上げてきた関係の方々の中にはその思いが深いのではないだろうかと考えておりますこと、想像でございますけれども、私はそんなふうに思う次第でございます。  今回、会期も非常に少なくなってきて、第一党の総裁として非常に心配しておるということを各党、そして議長さんに、呼びかけさせていただいて、そして場合によったら党首会談といったような形もいかがでしょうかというようなこともほのめかしながら、みんなでこの問題について一緒に汗をかきましょう、みんなで最高裁判決を受けとめ、国民の要請にこたえて、立法府としての責任をぜひ果たすことにしましょう、内閣一体になって心配しなければいかぬ、こういうことを書簡の中で述べさせていただいたもの、こういうふうに考えておる次第でございまして、各党いろいろな御意見があると思いますけれども、そのお考えになっておられるところが前へ出てきて、そして、こんなふうに特別委員会でも大変御苦労いただいて御審議をお進めいただいておるわけでございますから、三原特別委員長あるいは各党理事さん、さらに大所高所から議長さんといったお知恵がいろいろ出てこの問題の解決が図られるということになれば非常にいいがと念願をいたしておる、総理もそんなふうに考えておられるのではないかと思う次第でございます。
  108. 二見伸明

    二見委員 済みません、それでは確認させていただきますけれども、堀先生にも総理は六・六案に執着されているという官房長官からの御答弁がありましたし、今もそういう御答弁だったと思います。しかし、いろいろ話し合いをしていく場合に、おれの方はこれ以外だめなのだ、六・六案以外は譲る気はないのだという形では、党首会談を呼びかけようと何をしようと、局面打開のための知恵の出しようもないのだ。総理の方も、確かに自民党総裁として六・六案を提出したけれども、自民党の六・六案に必ずしもこだわらないんだという姿勢が出てこなければ知恵の出しようもないのじゃないでしょうか。その点私は申し上げているわけで、いや、これに固執しているんだと言ったのではなかなか先に進みにくいのじゃないだろうかと思うわけです。重ねて、簡単で結構ですからお願いいたします。
  109. 藤波孝生

    藤波国務大臣 中曽根総理自由民主党総裁が、自由民主党で長い間時間をかけて苦労してまとめ上げた現在の六増・六減案というものを、現在の時点における解決策としてこれしかないのだ、こう思い詰めたような気持ちでいることは御理解いただけると思うのでございます。  お話の中に、それにこだわって、それに執着して、それを押しつけるだけということであるなら、せっかく呼びかけても党首間の話だってなかなかできないではないかというふうなお話でございますけれども、その姿勢を崩さなければ話はできないというのも、これもまたちょっとこだわった話ではないかというふうに思うわけで、この議会政治の非常に成熟化した日本の国における国会を構成する天下の大政党の党首の方々であるならば、余りそういうことにそれぞれこだわらないで、やはりこのテーブルに着いて一緒に御相談いただいてこの大問題を解決しようという場があってもいいのではないかというふうに思うわけでございまして、これは一挙に党首会談ということでなく、やはり長いしきたりで国対委員長会談であるとか幹事長・書記長会談であるとか、いろいろなお話し合いの場があるであろうということも全くそのとおりだと思いますが、精力的にやはり各党間のそういったお話し合いが、当特別委員会の御審議をずっと進めていく中で同時に進行していくというようなことになっていくと非常にいいがな、これは私どもの立場での念願でございますけれども、そういうふうに心から希望しておる次第でございます。
  110. 二見伸明

    二見委員 官房長官、どうもありがとうございました。お約束の時間より若干延びたことをおわびいたします。  それで、自治大臣お尋ねいたしますけれども、連日この両案の審議の状況をお聞きになっておられまして、自民党案については、自治大臣自治大臣であると同時に自民党所属の大臣でございますから当然評価されるのでありましょうけれども、野党統一案というものもこれは大きな見識のある、これが成立したって決して選挙の執行上問題のない、しかも現行選挙区制を維持するという観点に関しては、自民党の六・六案よりもはるかにすぐれたものだと自負をいたしておりますけれども、自治大臣はこの点をどういう評価をされておりますか。
  111. 古屋亨

    古屋国務大臣 二見先生の、野党四党案について私はどう評価しておるかという御質問でございます。  自民党案と野党四党案は、いずれも当面の緊急措置といたしまして、必要最小限度の是正を図ろうとするものでございます。そして、昭和五十五年の国勢調査人口基準としてその是正の程度、対象選挙区は全く同じでございます。議員の減員の結果、二人区となる選挙区の取り扱いが異なっておるというように私ども拝聴をしておるのでございまして、野党四党案では減員の結果二人となる四選挙区につきまして、隣接四選挙区と合区あるいは境界変更をするものとされておりますが、現行選挙区は大正十四年以来の歴史を持ち、地理的、社会的、経済的に見まして合理性を有することから、その変更は基本的ルールを確立した上で慎重に検討するべきものであると考えておるのでございまして、定数が減ぜられる四選挙区におきましては合区あるいは境界変更を行うということが、今回の緊急措置として最小限度の範囲内で行う定数是正として適当であるかどうかという問題があるだろうと考えておるところでございます。
  112. 二見伸明

    二見委員 六日の公聴会で各党推薦の公述人がいろいろ御意見をお述べになりました。三ないし五の中選挙区制を高く評価した御意見が多かったやに私も聞いていて思いました。特に自民党から推薦された広瀬公述人ですら、三ないし五の中選挙区制というのは政治の恣意が入らない非常にうまくできた制度だと述べていらっしゃるわけであります。  自民党案を提出された森先生にお尋ねしたいわけでありますが、森先生と私は議員会館の部屋が隣同士でございまして、相対して議論するというのはなじまないような感じもするわけでありますけれども、私は現物を見ておりませんので、あるいは不正確だったら申しわけないのだけれども、いわゆる森私案というのでは、合区などの手法によって二人区はつくらないという工夫がされていたというふうに聞き及んでいるわけです。ですから、もともとの発想からいくと、森先生も、三ないし五の選挙区を維持するという原理原則に立って森私案というのはおまとめになられたのではないかな。それが自民党内のいろいろな討議を経た結果、こうなっちゃったといえはそうなのだろうけれども、なぜ二人区を四つもつくらなければならないような六・六案をつくっちゃったのか。それは境界の変更をしないとか、そういうことになればこうならざるを得ないのだけれども。公述人の方々もみんな三ないし五がうまくできた制度だと言っている。しかも、森私案でも三ないし五だ。なぜ二を四つもつくるような案をおつくりになっちゃったのか、そこらはどうなんでしょう。
  113. 森清

    ○森(清)議員 二見委員にお答えいたします。  二人区ができざるを得なかった理由については、るるここで申し上げたところでありますが、世上、十日ほど前に森私案という新聞報道がなされましたが、あれはタイミングが全く違っておりまして、一年半か二年前にそういう案を含めまして、自由民主党選挙制度調査会の中で、プロジェクトチームその他で二十通りか三十通りの中の一つの案として検討したことはございますが、その案はこれこれかくかくの理由でだめだ、この案はかくかくでいけない、こういうことでございます。一語にして申し上げます。  皆さん方が主張されておるように、六十年間中選挙区制でやってきた、それはそのとおりであります。その中で三人から五人であったことも、これは事実であります。奄美は例外的につくりました。しかし、その過程で出た議論というのは、例えば社会党が片山内閣のとき、二人と三人の中選挙区制にするとか、その当時出た議論には四名から七名の中選挙区制にするとか、そういう議論もございました。  選挙制度審議会では、三人から五人の中選挙区制を原則とするが、緊急的にやらなければならない是正措置としては二人から八人区を例外的に認めろ、こういう答申をいたしました。いわゆる学識経験者の意見であります。そして、それに基づいて内閣は提案をし、三十九年、五十年にも内閣の提案はそういう内容でございました。  また、その中で当委員会あるいは参議院において論議された中身を見ますと、野党全体とは言いませんが、野党の中には三から五の中選挙区制というのは習慣的にやってきたので、そんな枠は取り外していいではないか、なぜそれにこだわるのだという御意見。あるいは奄美が既に恒久的な制度としてある以上、三から五の中選挙区制そのものは崩れてしまっているのだということ。また、衆議院の一人当たりの人口格差是正するのが眼目であって、それに分区をするとかなんとかいうことを締めるから難しくなるのだ、早急にやらなければならぬのは格差是正ではないか。したがって、選挙区の変動を伴うようなことは選挙制度の根幹にかかわるから、それはさておいて、定数の増減、そのときは増だけでありますが、増だけでやろうじゃないか、こういう御議論が当委員会で真剣に論議され、また野党の方々からそれが主張されたわけであります。そういう論議も私は十二分に踏まえておるわけであります。さらに、午前中に選挙法の神様と言われる堀委員からも、選ぶ者の論理であって選ばれる者の論理を使ってはいけない、これは全く至言であります。  そこで、選挙区を構成しているのは有権者、選挙民であります。それは選ぶ者であります。六十年間選ぶ者が一体としてそこで意思表示をしてきた、その選ぶ者の権利を、権利を侵害するかどうかは別としまして、その一体性を壊して他の選挙区にくっつける。例えば、兵庫五区、但馬地方であります。その但馬地方、人口は非常に少のうございます。そこから明治以来ずっと一名あるいは二名の当選者を出しております。これが兵庫五区全体三十三万人にベッドタウン的な三十六万人をくっつけて一選挙区をつくろう、これはまさしく選ぶ側の論理を無視したものではないか。選ばれる者の数が三人から二人に減るのは、選はれる者の論理は無視されるかもわからない。しかし、選ぶ者の論理は私の方の案がそこで貫徹しているはずであります。先ほど自治大臣野党案をどう評価するかということで、私が野党案についてここで批判を申すわけにいきません。しかし、野党案と自民党案を比べてみれば、私は、まさしく選ぶ者の論理を貫いておるのは自由民主党の案である。それを一つ選挙区という集団を切り刻んだり一緒にくっつけてみたりする、これこそ選ぶ者の権利を軽視している議論ではないだろうか。また、そういう議論は三十九年、五十年のときに野党の方々から主張された論理であります。そういうことも十二分にお考えの上、どちらの案がいいか、お考えいただきたい。」  特に、この二人区は我が党に不利なんであります。しかも、これをずっと続けようと言っておるわけじゃありません。また、五人区を三人に割ろうとしているのじゃないのです。これは緊急的な措置として、こういうやり方でやる限りやむを得ずできた二人区であります。したがって、抜本的大改正のときに与野党合意して三から五におさめるのがいいということになっても、いや自民党は二人区を主張するということじゃないわけでありますから、その点をよく御理解いただいて、我が党の案にひとつ御賛成をいただきたいと考える次第でございます。
  114. 二見伸明

    二見委員 選ぶ側からすれば、例えば定数二よりも定数三の方が有権者の意見はより正確に反映されるわけでありまして、二人区の方が選ぶ側に立って、野党統一案の方が選ぶ側に立ってないというのは、いささか見解を異にすると思います。二人区よりも三人区の方がよりバラエティーに富んだ有権者の意見が吸収され、反映される。むしろ有権者の意思が反映されるという観点から考えれば、三人区の方が二人区よりも格段によいはずであります。そして、森先生のあくまでも境界を変更しないのが有権者の立場に立った考え方だという論理を推し進めていくと、例えば速報値でもってさらに是正をしようとかあるいは確定値でもって抜本改正しようとかいうことになると、さらに二人区がふえていく。その次の抜本改正では、さらに今度は一人区もできてくるということになってしまう。ここはいろいろ大変だろうとも、定数是正するということは選ぶ側にも選ばれる側にも大なり小なり影響は出てくる。どんな方法をとっても出てくる。であるならば、今回自民党さんが出された二人区創設という、もうこれは現行選挙制度の変革にかかわる、森先生はそうじゃないんだとおっしゃるけれども、実質的には変革にかかわる手法だと私は思っております。さらに、境界を変更しないというこのやり方を進めていけば二人区ができ、一人区もできるということにもなりかねない。例えば、抜本改正にしてもこういう手法をおとりになるとするならば、我々としてはそれはかなり危険な方向に行かざるを得ないと判断するわけですが、その点は再度お答えいただきたいと思います。時間もありませんので、簡単にお願いいたします。
  115. 森清

    ○森(清)議員 それでは、簡単にお答え申し上げます。  るる申し上げましたとおり、意図的につくった二人区ではないということ。それから、三人から五人の中選挙区制というものはいろいろな見方があるわけでありまして、それは二人ができても、あるいは六人ができても七人ができてもいいじゃないかという議論は、何も自由民主党が主張したのではなくして野党の、全部の野党とは言いませんが、野党の方が三十九年、五十年に主張されたことであります。それから、選挙制度審議会においても学識経験者は、暫定的にやるにはそうあってしかるべきだ。皆さん方が第三者機関第三者機関と言われますが、その第三者機関に任せればそういう意見が出たというこの事実、これは全会一致であります。こういうこともよくお踏まえいただいて、三から五と固定的にお考えにならないで、野党の中には三から五というのは中間的なもので、そんなものは守らなくていいんだということを少なくとも三十九年、五十年の段階では主張された、このこともよくお考えいただいて、私は野党がそういう御意見であるということを踏まえてこういう案をつくったわけであります。何も自由民主党だけの論理でつくったわけじゃありません。私は、国会論議というのをそれなりに重みを持って勉強させていただいて、そして、これならば国会全体の御賛同を得られるのではないか。しかも、これは緊急的な措置である。抜本的な改正について二見委員が御指摘になりましたが、抜本的なときにはこれはもっともっと原則を立ててやるわけでありますから、こういう形のものではないのではないか、私はこのように考えております。
  116. 二見伸明

    二見委員 今抜本的な立場のお話がありましたのでちょっと承っておきたいのですが、先ほど抜本改正に対する堀先生からの質問がありまして、社会党め山花先生、我が党の伏木先生、それから民社党の岡田先生からいろいろな所見が述べられました。自民党としては、抜本改正総理もやろうと言っているわけですね。お互いにやろうと言っているわけです。抜本改正という言葉は同じだけれども、それぞれの立場が違ったのでは話もしようがないわけです。例えば、我が党はあくまでも二人区はつくらないという前提のもとに二倍以内という立場を持っております。もちろん、二倍がいいのか、二倍とか三倍とかいう格差の問題は各党間で話し合いをするわけですから、我が党は二倍だからといってこれ以外認めないというかたくなな態度では、これは当然できるものじゃありません。しかし、今回野党の統一案でも示されておりますように、譲れない原則が二人区をつくらないということ。二人区をつくらないということになれは、区割りの変更、境界の変更、合区、いろいろなことがあるわけです。そうしたことも自民党は、抜本改正については野党とそうした原則についても同じだと我々は理解していいのか。格差について、二倍とか二・五倍とか三倍とかいう自民党としての一応の考え方があるのか。結果は別ですよ、それについて御所見があれば承りたいと思います。
  117. 森清

    ○森(清)議員 抜本改正をするということは公党としてお互いに約束し合ったことでありますが、抜本改正の内容はどうかということについては、我々自由民主党の中でもまだ議論が、最近では具体的に始まっておらないわけであります。したがって、抜本改正とはこういうものを言うんじゃないかということについてここで申し上げることはできませんが、私はやはり選挙制度というものは、先ほどから議論されておりますように、選ぶ側の論理が働かなければならない、これは当然でありますし、そして選ばれた者が政治をうまくやっていける、この二つの観点がなければならない、このように考えるのであります。そうして、諸外国にもいろいろな選挙制度があってそれぞれ動いております。また、我が国も、明治以来、大選挙区制もあれば小選挙区制もあり、中選挙区制もあり、比例代表制もあり、いろいろな選挙制度をつくってきたわけであります。小選挙区制について非常にアレルギーというかそれがおありのようでございますが、昭和三十一年には小選挙区制法案が本院は通過しておるわけであります。それからまた、選挙制度審議会でそういう意味抜本改正について論議をして得た答申は、二十八名の委員のうち、小選挙区あるいは小選挙区制に比例代表制を加味すべきであるという意見が二十二名、それから比例代表制とい父ようなもの、そういうものを含めて五名、今の中選挙区制のまま多少の改善を加えたらいいという人は一名であります。それは四十二年でありますかももう既に二十年近く前の話でありますが、日本の政治情勢を考えて一般の有権者あるいは学識経験者が日本の選挙制度というものを考えるときに、今の三人から五人の中選挙制度は全くそれでいいんだというふうに評価しておらないということは、選挙制度審議会学識経験者のそのような意見の分かれ方も、ほとんど大多数は小選挙区制あるいは小選挙区制に比例代表制を加味したものがいいという意見であったという事実も十二分に踏まえて、抜本的改正のときにはそういう意味であらゆる意見を総合して検討すべきものだ。ただし、これは私見でございます。
  118. 二見伸明

    二見委員 先日の公述人は全員、三ないし五がうまくできた制度だと高い評価をしております。森先生は、私見とお断りになられましたけれども、むしろそれを否定というか消極的な評価しかしないような御意見に承っております。ということになりますと、抜本改正という言葉の上では与野党では合意している。しかし、それぞれのスタンスについては大きな隔たりがある。自民党の場合にはまだ固まってないというお断りがありましたけれども、今の御答弁の範囲内では、我々が考えている抜本改正案と森先生がお考えになっている抜本改正案とは相当スタンスが違うというふうに私は認識をせざるを得ません。いずれにいたしましても、時間が参りましたので、この問題についてはこれで御答弁もなしに私の感想だけ申し上げておきます。  最後に、自治大臣、私たちはここで衆議院の定数是正だけを論議してまいりましたけれども、参議院の方も地方区の方で北海道と神奈川が逆転現象ですね。これはこのまま放置しておいてもよろしいという御判断でしょうか。
  119. 古屋亨

    古屋国務大臣 参議院の議員の逆転現象はこのままでよろしいか、どうすべきかという御意見でございます。  参議院議員定数配分につきましては、お話しのように逆転現象が生じていることなど、その是正も重要な課題と認識しておりますが、総定数を何人とするか、あるいは半数改選制や各選挙区の有する地域代表的な性格をどう考えるか、こういう問題は選挙制度の基本にかかわる極めて重要な問題であると考えておりますので、まず各党間で十分論議を尽くしていただきたいと考えておるところでございます。
  120. 二見伸明

    二見委員 都合の悪いところは各党間になって、六・六案になると総理大臣が出てきてたがをはめていく。これは大変使い分けがうまいというのか、今の御答弁には私は大変不満足であります。  参議院の逆転現象を自治省としてどう考えているのか、是正すべきかどうか。是正すべきだ、しかし、どういうふうに是正するかは各党間にお任せしたいというのなら話はわかる。どうなんですか。
  121. 古屋亨

    古屋国務大臣 参議院の定数につきましては、逆転現象というような事実ももうあらわれております。私は早急にこういう問題は是正せんならぬと考えておりますが、そのやり方として各党間でぜひ御協議をしていただきたいという意味であります。
  122. 二見伸明

    二見委員 以上で終わります。
  123. 三原朝雄

    三原委員長 三浦隆君。
  124. 三浦隆

    三浦(隆)委員 本日の委員会審議は立法権、行政権、司法権の三権にまたがります現行憲法秩序及びその憲法保障制度の根幹にかかわることでございますので、本来十分な審議時間が必要でございます。私個人としても最低五時間は欲しいというふうにお願いしておったのですが、まことに残念なところ、わずか一時間しかないということがまず極めて遺憾でございます。  また、三権分立の一翼を担う司法権の基本にかかわることをお尋ねしたいということで最高裁長官またはその指定する者の出席を求めたところ、当委員会に司法関係者がどなたも出席しないということも極めて遺憾でございます。したがいまして、初めに、最高裁長官にお尋ねしたい事項に限っては質問を留保させていただきたいと委員長お願いいたしておきます。  六十年国勢調査による人口は、新聞の集計によりますと既に出ておりまして、衆議院の一票の格差は五十五年国勢調査の最大四・五四倍から五・一一倍に拡大し、最高裁が合憲判断する際の目安と見られる格差三倍を超える選挙区は二十三に達する見込みであるというふうに伝えております。予定されます六十年国勢調査の速報値の発表日、十二月二十四日になりますと、恐らくこの新聞社の人口集計とほとんど同じ結果が明白にあらわれることだと思います。したがいまして、今審議しております六・六案是正なるものは、現在時点で最高裁の判断を待たず既に違憲でございます。今この違憲の疑い濃く、十一月二十四日に違憲であることが事実上明らかにわかっているこの違憲の六・六案をもとにして二人区問題等を論議しても、私は本来無意味じゃないかと考えております。いわんや違憲の疑い濃い法案与党の多数の力をもって強行採決を図ろうなどということは、憲政の常道を無視した狂気のさたじゃないかと思います。最高裁の諭旨を生かして定数是正を行うとすれば、少なくとも十増・十減への修正こそ国会に課された使命であると言ってよいと思います。また、山形二区と新潟四区の人口変動による逆転調整も必要だろうというふうにも思います。しかし、ここでは質問時間の都合もございますので、今回の定数是正に絡みます中曽根書簡の不当性と、書簡に見られる首相の政治姿勢に論点を絞りまして、憲法上の観点からお尋ねをしたいと思います。  なお、民社党としては、最高裁判決を尊重し、十増・十減案など合憲是正を強く望むものでございます。したがって、六・六案のような、商品に例えれば今現在欠陥商品であることが明確な法案を通すことは、国会が国権の最高機関であること、国会が唯一の立法機関であることの誇りにかけて絶対に反対でございます。  以下、中曽根首相の政治姿勢についてお尋ねをしていきたい、このように考えます。本来首相自身にお尋ねしたいのですが、残念ながら出席を得られておりませんので、申しわけござい氏せんが官房長官の方からお答えをお願いしたいと思います。  中曽根書簡は、国対委員長会談、幹事長・書記長会談あるいは党首会談といった手順を踏まないでいきなり立法権への介入を図ったものだという点において、その手法、その内容ともに極めて不当であり、遺憾なことだと思います。  さて、首相はこれまで定数是正が行われなくても解散権は制約されないとか、解散権は憲法で認められた内閣の重要な機能で、統治行為だというふうにお述べになっております。そこで、書簡が出されたことをもって、六・六法案の強行採決あるいは衆議院抜き打ち解散のための布石ではないかと見る向きも強くございます。  そこで、この際、官房長官お尋ねしたいのですが、定数是正がなされない限り衆議院は解散はしないし、また首相にもさせないと我々に約束することができるでしょうか。
  125. 藤波孝生

    藤波国務大臣 最高裁から判決違憲の状況を指摘されております現在の議員定数の問題につきまして、これを一日も早く是正をしなきゃいかぬということは、立法府に課せられた大きな課題であるというふうに考えておるところでございます。しかも、この問題は、立法府と同じように内閣としても大きな責任を痛感をいたしておりまして、従来もその是正のためのいろいろなお話し合いの努力をそれぞれのお立場で積み上げていただいて今日に至っているところでございます。ところが、会期もいよいよ少なくなってきておりますのになお解決に至っていない、その状況を第一党の党首として非常に心配されて、そして、それぞれの各党の党首、そして立法府の議長さんに対して書簡が出されたもの、こう考える次第でございます。  国会の中でそれぞれ意思を伝達する方法はいろいろとあろうかと思います。国会の場で意見を述べるということもありましょうし、あるいは党首をお訪ねをして意見を述べるということもありましょう。しかし、そういう中で、いろいろ国対委員長会談、幹事長・書記長会談といったようなそれぞれ各級レベルのお話し合いがあって、党首会談といったようなこともたびたび見られているところでございますが、自分の考えておる、特に非常に差し迫って心配しておる事柄について、書簡という形式でほかの党の党首に対し、深い敬意を表しつつ、理解と御協力を求めるという方法もあっていいのではないかというふうに私どもは考える次第でございます。  なお、末尾に御質問のございました解散権に関することにつきましては、国政の重大な局面において民意を問う手段として内閣に付与した基本的に重要な機能として解散権があるというふうに考えておりまして、これは何物にも制約されるものではないという認識に立っておる次第でございますので、どういう状況であるならば解散すべきでない、どういう状況ならば解散が許されるという筋合いのものではないのではないだろうか。これは内閣が持っております機能であります。例えばそのことが乱用されていいかどうかといったようなことについては、先ほど来の御質疑に対しましても、慎重であるべきものというお答えはしてきたところでございますけれども、この法案が通るか通らぬかということによって解散が許されるか許されないかというふうな、そういう観点から議論をすべきものではないのではないだろうか、こういうふうに考える次第でございます。
  126. 三浦隆

    三浦(隆)委員 今御答弁ありましたけれども、解散権はあっても解散権の行使には慎重であるべきだというふうに言われたんですが、その慎重であるべきという、その何よりもの前提は、合憲の法令に基づく選挙でなければいけないだろうということだと思うのであります。仮に首相の統治行為の発動にしましても、前の苫米地判決のときとは意味が違うのでありまして、現在の選挙法が最高裁によってはっきりと違憲であると言われているわけですから、私が質問したのは、この違憲である六・六是正は絶対改正しなければ選挙をやるべきじゃないじゃないか、そのことをお尋ねしたわけで、もし単にそうした解散権を持つからするのだと言ったら、これは危なくてしょうがない。というのは、例えば自衛隊法を見ましても、自衛隊法の七十八条に命令による治安出動という規定がございますが、内閣総理大臣は、この規定だけから言えば、治安出動をいつでもできるわけです。しかし、これをしてはいけないときはやっぱりしてはいけないんでありまして、そういうふうな自制するという何かがなくてはいけない。特に、自衛隊法はまだ合憲でありますが、今度の選挙法は違憲であるとはっきり決まっているんだということであります。  だから、解散権があるから解散できるということと、しないということは全く次元を異にしております。戦前における日本がそうした行政権主導の政治が続いたために軍国主義へと突入して、日本は極めて不幸な運命をしょったし、諸外国にも迷惑をかけた。その反省の上に立ってこの憲法ができておるのでありまして、それには行政権優位はいかぬのだ、むしろ行政権に対して国会は国権の最高機関だ、あるいは司法権は独立だ、行政権の行き過ぎをむしろ抑えたいんだというところが今日の憲法の基本をなしておるのではないか、そういうふうに思います。だからこそ、憲法の前文にも、「政府の行為によって再び戦争の惨禍が起ることのないやうにすることを決意し、ここに主権が国民に存することを宣言」するとうたったのも、行政権だけに、今までの明治憲法下におけるような状況では危ないから、国民主権で歯どめをかけようじゃないかということがこの憲法の基本にあるんだ。それが昔の憲法も今の憲法も理解がなくてただ同じように言われたんでは進歩がないし、時代を再び昔へと逆行させるのではないかと極めて不安に感ずるところでございます。  次に、この中曽根書簡の内容でありますが、ここにもなかなか見逃すことのできない論点がございます。第一に、世論の操作を図って、国民世論も「速やかな是正を強く要望している」というふうに述べていること。第二に、世論形成に必要な事実に触れませんで、六・六案再是正の期限を、単に是正のため万全の努力を払うとしか述べていないこと。第三に、時間のかかる国会審議のマイナス要因をもって国会を非難し、みずからの改革能力を証明し得ない立法府は強く糾弾されていると無能力者扱いにしていること。第四に、議院内閣制下の内閣総理大臣であるにもかかわらず、「内閣総理大臣として、かかる立法府のあり方に憂慮せざるをえません。」と、多数の力をバックに行政優位の思想を表明している点などにこの書簡の特色があると思います。  このように、リーダーとしてみずからの力を誇示しながら、みずからの好む方向へと世論を誘導していくこと、法による拘束を排除するため議会の地位を低め、三権分立主義を形骸化していく手法は、かつてのファッショ台頭時の状況とよく似ている極めて危険な兆候と言わざるを得ません。我々は、中曽根内閣において今後さらに国際緊張等を理由として行政権の肥大化を図る、靖国等を利用しての国内イデオロギー統一のための思想統制を行う、スパイ防止法や拘禁法を悪用しての警察国家化などが進められないよう、現行憲法をしっかりと遵守していかなければならない、こんなように感じます。  官房長官として、首相書簡の国会への挑戦的発言や首相の解散権を盾とした衆議院への威嚇的、恫喝的発言についてどのように考えるか。また、現在の混乱状況をどのようにして乗り切るつもりでございますか。もう一度簡単にひとつお答えをいただきたいと思います。
  127. 藤波孝生

    藤波国務大臣 いわゆる中曽根書簡、自由民主党総裁中曽根康弘名で発せられました書簡につきまして、今委員からいろいろ御意見を伺ったところでございます。やはり今日の状況、この問題について考えてみますると、新聞論調などでも一日も早く是正を図るようにという強い論調が出ておりますし、また国民皆様方も各方面でいろいろな形でこの問題についての深い関心を示しておられまして、立法府に対し、この改善措置を強く要求をしている、そういう感じを私ども受けているところでございます。  総理大臣が世論を誘導して、操作してというお話でございましたが、決してそんな、世論を誘導したり操作するような気持ちではありませんで、今日民意がどこにあるか、国民の皆さん方が何を心配し、何を考えておられるかということについてやはり謙虚に耳を傾けて対処するのでなければならぬというふうに考えておる次第でございまして、むしろ、今日国民の皆さん方が一日も早く定数是正を図るようにという世論を強く持っておられるということを受けとめて政治の世界で解決に当たるようにしなければならぬ、こういうふうに存じておる次第でございます。  この状態の中からどのようにして解決をするかということにつきまして、幸いに当特別委員会におきます審議が着々と進められておりまして、各党の御意見もいろいろお出しをいただきつつこの場での審議が進んでおるわけでございますので、ぜひ三原特別委員長を中心にせられまして各党理事さん、委員の方々の御協議をいろいろいただいて、この問題の決着を図るための前向きの御協議があれはというふうに考えますし、同時に、自由民主党総裁名で書簡も出しておることでもあり、幸いに各党の党首の方々も、各級いろいろなお話し合いは、それはいろいろな前提はあろうかと思いますけれども、それに臨むにやぶさかではないというようなお気持ちも示していただいておるように仄聞をいたしておりますので、ぜひひとつ天下の公党の党首各位におかれましては、この問題の非常な重要性にかんがみて、各党間で協議しようというようなお立場に立っていただき、また立法府の責任者である議長さんにもいろいろ御指導をいただくというようなことで、今国会における決着が図られますように心からお願いをしたいと思う次第でございます。
  128. 三浦隆

    三浦(隆)委員 首相は、この六・六案は緊急処置的なもので、六十年国勢調査が判明し次第再是正を行うというふうに述べておりますが、実はこのことと関連して法務大臣をお願いしておったわけです。この下で委員会をやっておるものですから、ちょっと来ていただいてお答えをいただけぬかなと言ったのですが、なかなか忙しくてお見えにならぬということであります。  質問の趣旨はこういうことであります。指紋に絡みまして出入国管理法の問題を論議しておったときに、法改正を行ったらよいじゃないかというふうに言ったところが、改正したばかりだから直ちに改正はできない、まだ二、三年しかたっておらぬから改正できぬ、こういう答えでありました。もし、同じ答えがここで出るとするならば、六・六案は是正した、やはり当分の間は改正しないということであります。新聞で書簡を読んだ人は、一応緊急避難的に通して、来年じゅうにでもというか、またすぐにでも再是正がされるのだと錯覚を起こされてしまう。一般の国民はそう思っているわけです。にもかかわらず、実際にはやる気がない、あるいはできないとすれば、これはまことに詐欺的手法というか、まことにおかしな論法じゃないかというふうに思うのです。ですから、もし法務大臣が指紋のときと同じ答えをなされるとするならば、今内閣の助言と承認に基づくという手続に従って衆議院解散をしようとするときに、答弁の同一性からすれば、内閣反対しなければならぬだろうというふうに思います。言うならば法務委員会での答弁とここでの答弁との同一性をお尋ねしたかったわけですが、残念ながら見えないということでありますので、これも質問を留保させておくほかございません。  次に、立法権との関係でお尋ねしたいと思うのですが、先ほど官房長官の御答弁の中でも、首相の解散権行使というふうなものを抑えることがどうも難しいというふうになりますというと、実際問題として違憲選挙法令によって選挙が行われることになります。とするならば、憲法のこれまた前文のところにある言葉でございますが、「日本国民は、正当に選挙された国会における代表者を通じて行動しこというふうにありますが、正当な選挙でなくて国会代表者が選ばれてしまうというふうなことになります、あるいは、憲法三十一条に言うデュー・プロセス・オブ・ローというか、その法定手続の条項にも違反して、決して正しい選挙とは言えないのじゃないかというふうに思いますが、官房長官、どのようにお感じでしょうか。
  129. 藤波孝生

    藤波国務大臣 今日のこの違憲状態定数を一日も早く是正をしなければいかぬということが、やはり今日置かれております至上命令だというふうに思うのでございます。先ほど来から解散権のお話についてもいろいろございますけれども、解散権というのは、重要な国政上の民意を問うということに判断したときに付与されておる機能でございますから、これは何らかの要件で制約されるものではないということを先ほど来も申し上げておるところでございまして、これは非常に独立した機能でなければいかぬというふうに思うのでございます。  今の状況で選挙をやったら、その選挙そのものが違憲になるのではないかという御質問がと思います。当委員会でもいろいろと御審議の中で述べられてきた事柄でございますけれども、そういった点から、いろいろな角度から御心配があって御議論をいただいておるものというふうに思います。非常に異例な状態でございますから、そういう場合に解散権を行使して総選挙に臨むということにつきましては、午前中からお答えをしておりますように、慎重な検討と重大な決意が必要となるというふうに考えておるところでございます。  くどいようでございますけれども、そういう局面に至ったときに解散権を行使できるかどうかということにつきましては、これは何物にも制約されるものではない、内閣に与えられておる非常に重要な機能であるというふうに考えておる次第でございまして、そのことによって解散権が制約されるというふうには考えていないところでございます。
  130. 三浦隆

    三浦(隆)委員 基本的な発想に食い違いがあるようです。内閣があって、政府があって我々があるのではないのであって、我々が必要とするから政府があるんだということでありまして、内閣を憲法によって拘束しているという趣旨を、特に冒頭にこの言葉を持ってきたその趣旨をよく御理解いただきたいと思うのです。戦前と戦後、明らかに時代が大きく変わっているんだという御認識をぜひいただきたいと思います。  これに関連して、最高裁元長官の岡原さんが中曽根首相の談話を引用して次のように述べております。「解散権はあるんだ、いつでもやれるなどと言うべきではない。違憲選挙法のままで解散権を行使すれば、当然、違憲選挙となる。あと選挙差し止め、選挙無効、損害賠償などいろいろな訴訟がおこって、これを裁判所がやらなければならない。首相や内閣には、違憲状態を再現させた政治的責任が生じる。」と、強く首相への批判的な見解を述べているのですが、この元最高裁長官という地位にあった方の御見解についてどのようにお考えでしょうか。
  131. 藤波孝生

    藤波国務大臣 当特別委員会におきます従来の御審議の中でも、いろいろな形で今御指摘になりましたような趣旨の御発言があったところでございます。今の状況の中で総選挙ということになれば、総選挙そのものがいろいろと混乱をするのではないか、その選挙そのものが無効になるというおそれを持っているのではないかというような御心配があって、いろいろな御発言もいただいてきたところでございます。したがいまして、今御指摘がありましたような御意見につきましてはみんな十分頭に入っておるところでございます。  ただ問題は、だから解散ができないのか、総選挙に臨めないのかということになりますと、これはまた別な、独立した重要な機能は内閣に与えられておる、こういう見解を持っておる次第でございますので、それはまたおのずから別のことになるのではないか。ということで、ぜひ申し上げたいことは、最高裁判決違憲、こういうふうに指摘をいたしておるところでございますから、ぜひひとつ立法府としてこの是正を図らなければならぬということについて大きな責任を痛感をしていただいて、ぜひ各党の御論議の深まりの中で一日も早く是正が図られるようにお願いをしたい、こういうふうに考えておる次第でございます。
  132. 三浦隆

    三浦(隆)委員 官房長官、お時間のようですが、もうしばらくいいですか。——済みません。  大正二年の二月五日に尾崎行雄が桂内閣の糾弾演説を行っております。その言葉の中に、「常ニ玉座ノ蔭ニ隠レテ、政敵ヲ狙撃スルガ如キ挙動ヲ執ツチ居ルノデアル、彼等ハ玉座ヲ以テ胸壁トナシ  詔勅ヲ以テ弾丸ニ代ヘテ政敵ヲ倒サントスルモノデハナイカこというふうな言葉で鋭く超然内閣である桂内閣を追及しておりますが、中曽根首相が憲法七条三号による衆議院解散を行いますこの手法というのは、この場合、この桂内閣と極めて同じことになるのじゃないか。官房長官は、明治憲法第七条の天皇の衆議院解散権と現行憲法第七条三号の天皇の国事行為による衆議院解散権の違いをどう解釈、理解をされておりますか。
  133. 三原朝雄

    三原委員長 法制局が来るまでちょっと待ってください。すぐ来ますから、先を……。
  134. 三浦隆

    三浦(隆)委員 ひとつお考えをいただきたいと思います。というのは、昔の憲法における天皇と現行の憲法における天皇は憲法上の地位がはっきりと違っているということであります。そういうことを踏まえた違いですね、いわゆる国政に関する機能を有しないという意味での国事行為、その中の一環としての衆議院解散ですね、そういうことをひとつ、先ほど来から実は衆議院解散をめぐって内閣総理大臣はいつでもできるというふうな御答弁なものですから、その点をむしろお尋ねしたかったと思います。後に回します。  結局、似ているなというのは、昔の明治憲法下における大臣が、みずからの野望を達成せんとするのにあえて天皇の名前をもってそれを実現する。今日も解散論として六十九条、七条論、いろいろとありますが、直接きっての明文のものがない。たまたま七条三号というもので天皇の国事行為が利用されているということであります。ここでは昔と同じように、内閣が欲しているというか中曽根首相が欲している法案国会で通らないから極めて遺憾だから一生懸命通してほしい、どうしても通らなければ解散しますよと言うならば、政府の言うことを聞かない国会であれば解散するのは仕方がありませんよと言わんばかりのように聞こえるということであります。  とするならば、これは例えば、同じ解散のときに、明治二十四年十二月二十五日の松方首相の、衆議院のとれる行動は内閣の施政方針に反すると、我が国最初の衆議院解散を行ったことがあります。内閣の言うこと聞かぬような帝国議会である以上は解散しても当たり前だという感じであります。同じように、明治二十七年六月二日、伊藤内閣において、衆議院が政府の意を諒とせずと。同じように、衆議院が内閣意見を聞いてくれぬから衆議院は解散だ。あるいは明治四十一年、第二次桂内閣成立いたしました。このときも、いやしくも、みだりに勢力をかりて政府に圧力を加えることあれば、議会を幾回解散するもあえて辞せずと。言うならば、いつも内閣が上であって帝国議会を下のように見ている。何かそれでもめようとするとすぐに天皇の名前を口に出すということが繰り返し行われたわけであります。そういう繰り返しの中で、歴史的に何回も議会の停止あるいは議会の解散が繰り返されるに至って、そこに尾崎行雄発言が出てくる、あるいは憲政擁護の護憲運動が出てきたということであります。そういうふうな明治憲法的スタイルにならないように、ひとつ現内閣に強く要望しておきたいというふうに思います。  次に、いわゆる司法権との関係でお尋ねしていきたいと思うのですが、これは法案提案者の森先生からお願いいたしましょう。  格差がどの程度に達すれば違憲となるか、すなわち違憲判断の基準につきましては、最高裁は五十八年十一月の判決において、議員一人当たりの選挙人数の格差の最大値を一対二・九二とし、これをもって投票価値の不平等状態は一たん解消されたと認めております。  そこで、三倍程度ならよいというふうに言っているんですが、これはどういう根拠で出たのだと思いますか。
  135. 森清

    ○森(清)議員 三浦委員にお答え申し上げます。  最高裁判所が二・九二が違憲状態を脱したということの根拠はどこにあるかということを聞かれても、私にはわかりかねます。しかし、二・九二が違憲状態を脱したという判決理由がありますので、我々はそれから考えて、二・九二という基準があるはずない、三・幾らという基準もあるはずがない、やはりこれは三・〇というのがまあまあ妥当な常識的な線ではないだろうか。したがって、三・〇以内にしておけば今後最高裁判所で違憲判決は受けないであろう、こういうことで三倍を限度として我々は六・六法案をつくったのでございます。
  136. 三浦隆

    三浦(隆)委員 同じことで、なぜ三倍ならいいということがまだひとつはっきりしないと思うのですが、二倍とかその他いろいろと考え方があろうと思うのですが、あえて三倍と言った論拠は何ですか。
  137. 森清

    ○森(清)議員 憲法の要求するところは私は平等だと思います。しかし、それが政治の現実の場において、あるいは行政区画を限る、あるいは人口異動が甚だしい、いろいろな要素、また最高裁判所が判決理由で認めておりますように、人口基準としながら諸般の事情が考慮されるべきである、こういうことがございます。したがって、そういう諸般の事情を考慮していろいろな選挙区割りができるわけでありますが、その中で憲法違反になるのはどういう状態かということについては、先ほど御答弁申し上げたように、二・九二は一応合憲だというふうな判決理由がありますので三倍だと考えたわけでありまして、将来の方向としてもっともっと平等に近づける努力を我々はしなければならない。三倍以上になれば憲法違反だ、じゃ三倍ぎりぎりまでいいんじゃないかというのは、これは法律違反になるか憲法違反になるかどうかの基準であって、政治としてはやはり適正なものを求めていく努力をすべきである、私はこのように考えておりますので、今二倍がいいとか一・五倍がいいとか二・五倍がいいというようなことを私から申し上げる基準も何もございません。強いて言えば一対一がいい、私はこう思っております。
  138. 三浦隆

    三浦(隆)委員 旧憲法下のいわゆる帝国議会でありますが、この場合は、帝国議会はみずから立法権を担当する機関ではなくて、天皇の立法権を翼賛する機関にすぎなかったわけです。これに対して、現行憲法下の国会は、国民代表機関であり、国権の最高機関あるいは唯一の立法機関という地位を確立しているわけで、帝国議会と現行憲法下の国会とは全く立場が違っているわけであります。  しかも、この君主主権下における旧憲法下において、先ほど来の大選挙区、中選挙区、小選挙区制がありましたが、すべていずれも一対二以内におさまっていたわけであります。君主主権の憲法のときが一対二以内でおさまっていたのに、国民主権の憲法で一対三としなければならない理由はどこにあるか、それをお尋ねしたかったわけです。かえって国民主権下でおかしくなるというのは諭旨が合わないというふうに思います。
  139. 森清

    ○森(清)議員 お答えいたします。  一対二とか一対三ということは、旧憲法下とか新憲法下とか、あるいは君主主権であるとか国民主権であるとか、一切関係ございません。また、一・五以内であったというのも私はどういう根拠で言っておられるか知りませんが、明治二十二年、明治三十三年、大正八年、大正十四年、昭和二十年、昭和二十二年、これだけ大きな改正をいたしましたが、それはすべて一対一でございます。行政区画があるものだからしょうことなしに結果として一・三になったり一・五になったりしたことがありますが、すべて一対一であります。昭和二十二年は新憲法下であります。
  140. 三浦隆

    三浦(隆)委員 今の答弁と全く同じように実現をしていただきたいというふうに思うわけです。言うならば一対三より一対二が望ましいし、できるならば一対一の方が望ましいわけです。明治憲法下にはいろいろな選挙がありました。一対一に限りなく近いときもあれはそれを超えたときもあったけれども、トータルとして見れば一・二以内におさまっていたということです。ですから、人口以外の要素を勘案する何がしといってもそれは昔も同じことでありまして、それならば現在でもやってやれないことはないであろうということであります。  それで、実はまだはっきりと確認したわけではございませんが、昭和五十七年十一月に行われたアメリカ下院選挙では、投票価値格差は上下一・二%以内であったと言われております。また、これに関連して、西ドイツ連邦選挙法三条二項二号によりますと、「各選挙区の人口が全選挙区平均人口から二五%を超えて上下に偏差を生じないようにすべきこと及び偏差が三三カ三分の一%を超えたとき新たに区画を行わなければならない」と定めているということでございます。我が国でも、西ドイツ憲法のようにはっきりとした明文を持った方がいいのじゃないかと思いますが、どうお考えでしょうか。
  141. 森清

    ○森(清)議員 そういう基準ができれば今後こういう定数是正についてもっと効率的な、能率的な審議が行われるであろうし、また国民的関心からいってもそういうことを決めた方がよりいい方法だと思いますが、これをつくるにもまた各党合意によって、皆さんの協力によってつくっていかなければなりません。将来の方向としては一つの方向であろう、このように私は考えております。
  142. 三浦隆

    三浦(隆)委員 次に、是正までの合理的期間ということでお尋ねをしたいと思います。  これにつきまして、最高裁では、前回改正時から五年、施行後三年半経過した後の五十五年総選挙については、是正のための合理的期間内とし、改正時から八年、施行後六年を経過した四十七年総選挙と、改正時から八年半、施行後七年を経過した五十八年総選挙は、ともに、合理的期間は過ぎ去っていると締諭しております。したがって、最高裁判所の判断としては、これまでのところ、期間の許容基準としては改正後五年から八年、施行後三年半から六年の間だろう、こううかがうことができます。  森先生は、この許容基準がどうしてこういうふうになったのだろうとお考えでしょうか。
  143. 森清

    ○森(清)議員 お答えいたします。  これは最高裁判所の判断でございますので我々は推測する以外にございませんが、我々、政治の現実の中におるわけであります。右から左に直ちに変えることができないことは常識であります。したがって、そういう状態になったときに各党合意も必要でありましょうし、国会の議決、手続も要るわけであります。また、調査研究も必要であります。そういう期間が要るであろうから、仮に格差状態違憲状態であってもこの場合は憲法違反にしない、こう判決したのが五十八年判決でございます。したがって、そういうことも考えながら、我々としてはそういうことがあるからそのまま置いておいていいのであるということではなくして、やはり鋭意検討を進めでできるだけ早く違憲でないような状態にするのが我々の務めであろう、このように考えますが、合理的期間が三年あるか四年あるかということを議論すること自体が、その間待ってやろうというふうな御意図があるならば、私はそれは反対であります。直ちにかかって一生懸命やって、そうして、やった結果長引いて、それはもう合理的期間は過ぎたぞと言われるのはやむを得ないと思いますが、我々は、合理的期間が三年あるから、四年あるから、その間ゆっくりいこうというふうな態度は絶対にとるべき態度ではない、このように考えております。
  144. 三浦隆

    三浦(隆)委員 できるだけ短期間に例えば再是正したい、しかし一生懸命やっても何年もかかるものは仕方がないということのようにうかがえたわけですが、やはり違憲な法令である以上は最短期間内に是正するのがむしろ当然の要求であろう、こう考えるのです。  一応、当面の緊急の措置としてということで仮に六・六法案が通ったとして、五年から八年という許容基準があったとしますと、六十年国勢調査の結果が判明して改正する、直す、直すと言いながら、意見がまとまらない、まとまらないと言えば、これまた五年から八年までは延びる可能性を持ってくるということは、これは大きな問題じゃないのでしょうか。結局、国民には緊急措置という言葉だと本当に緊急的に響いて、すぐ再是正を行うと言えは来年早々にでも、あるいは来年いっぱいには、少なくとも我々の任期満了するまでには改正されるだろう、六・六法案は再是正されるだろうと思うけれども、この判断を認める限りにおいてはそういう保証が全くなくなってしまうおそれがあるということにおいて大きな問題を含んでいるのじゃないかというふうに思います。  そこで、フランス選挙法典の第百二十五条というのに、「(下院)議席の配分の改定は、国勢調査の結果の公表後の最初の議会の通常会期中に行う」という規定がございます。我が国の公選法においても、こういうふうな規定があった方が間違いないのじゃないかと思いますが、森先生、いかがでしょう。
  145. 森清

    ○森(清)議員 ことしの六月か七月に改正された、比例代表法にかえたフランス法にはそういうことがございますし、またイギリスも十年ないし十五年で改正する、アメリカはもっとはっきりしておりまして十年ごと国勢調査人口で自動的に各州配分がやられる、こういうことになっております。したがって、そういうことにすれば待ったなしの是正が行われるわけでありますから、これも一つ方法であろう、このように考えております。
  146. 三浦隆

    三浦(隆)委員 この規定はなかなかはっきりしているのですね。解釈に混乱の起きようがないぐらいに期間を明示しているわけであります。  一つの例として、もし国会でだめであればほかの第三者機関をつくってもということでして、既にほかの国では始めているわけであります。国会も踏まえ、内閣も踏まえ、裁判所も踏まえて国民への信頼を絶対失ってはいけないということであれば、違憲な法令であることが明確である以上、一日も早く是正しなければいかぬわけであります。それが、期間の定めがないためにずるずるといつまでたつかわからない。しかも、終わりの方はこの最高裁の判断によってもかなり長い期間が出てくる。そうすると、その長い期間の間に衆議院は何回解散があるかわからない。そのたびに、もし繰り返し解散というふうな事態になれば、いつも違憲選挙法令による選挙になってしまって極めて不合理だということですから、今回の六・六是正法案出ておりますけれども、この法案改正にはこういう規定も絶対設けるべきなんじゃないかというふうに私は思うのですけれども、法提案者の森さんとしてはどういうふうなお考えであるか、積極的に進めるお気持ちを持っているかどうか、もう一度お尋ねしたいと思います。
  147. 森清

    ○森(清)議員 三浦委員の御提案は非常にすぐれた御提案であると思いますので、真剣に検討したいと思います。  ただ、今まで我が国は、公職選挙法にそれに類するような規定はございましたが、はっきりした規定はございませんでした。例えば、県会議員定数配分については既に法律で書いてあります。それは国権の最高機関が県に命令をしていることでありますが、我々は定数是正をしなければならぬ、そのルールはどうであるということを決める法律をつくる権限と同時に、その内容をつくる権限、同じ立場で持っておるわけであります。  したがって、みずから律するに、毎朝何か守らなければいかぬというものを紙に書いて張っておいて、そして、それを見ながらおれはこうしなければならぬという行き方もありましょうし、そんなことは書かなくとも自分の具体的な行動の中で守っていくんだということもあります。国権の最高機関である国会は、みずからを縛る法律をつくってもつくらなくても、みずからやっていけるわけであります。したがって、今まではつくってないのであろうと思います。  こういう我が国の伝統もあるわけでありますから、そういうことも踏まえて、御提案は、今の国会で、あるいは国会法律ルールをつくれば、その後その法律改正せぬ限り大体それに従っていくわけでありますから、非常に円滑に事が進む一つのいい案であろう、こう思いますので、真剣に検討させていただきたいと思います。
  148. 三浦隆

    三浦(隆)委員 次は、最高裁に本当はお尋ねしたかった問題です。  といいますのは、憲法七十六条に言う裁判官の良心あるいは司法権の独立を規定しているところがございます。しかし、違憲選挙法令により衆議院選挙が行われた場合、違憲判決を下した最高裁判所裁判官の良心あるいは司法権の独立といったような言葉も極めて色あせた、よく言う燃えざる火、輝かざる光となってしまうのではないか。そうした場合の最高裁長官として、三権分立に占める司法の役割、そして、それが無視された場合、司法としてこれをどう受けとめるかということです。ここでは個々の法令のことをお尋ねしようとしているのではございません。三権の中に占める司法の役割そのものを司法の最高の当事者としてどう受けとめているのかということをお尋ねしたかった。  そしてまた、憲法八十一条の法令審査権がございますが、違憲立法審査制あるいは権力分立制といった主要な憲法秩序の保障制度は、いずれも一の国家機関の違憲行為を他の国家機関が抑制する趣旨のものです。この違憲立法審査制が無視されて、違憲選挙法による衆議院選挙内閣により強行された場合、最高裁として、司法の立場から憲法秩序の正常化ということをどう考え、どのように対処されようとするのか、そういうこともお尋ねしたかったところです。  あるいはまた、一般論として、事情判決というのを繰り返し繰り返しもし将来とも行うようになりますと、この司法への信頼、最高裁への信頼ということが薄らぐようになるのではないか。まことに、日本の憲法秩序を守ってもらおう、法の番人と言われる司法にとって極めて遺憾なことなのじゃないかということを踏まえてお尋ねしたかったのですが、最高裁長官見えませんので、改めてこの点は留保させていただくということを委員長に御確認していただきたいと思います。  あわせまして、先ほど法務大臣への御質問をと言ったけれどもいらっしゃらないので、この点もまた改めて留保させていただきたいということを委員長に御確認してもらいたいと思います。——それでは、御確認をいただいたということで進めさせていただきます。  次に、権利救済と司法権の限界にも関連することなんでございますが、これまでの最高裁判決の流れを見ますと、三つのパターンが浮かんでまいりました。すなわち、一つは事情判決であり、一つ選挙無効判決であり、一つは猶予期間づき選挙無効判決という手法でありまして、これが次第に実際に用いられ、あるいは現実性を帯びるようになってきたと思うのですが、森さんとしてはこの三者の違いをどのようにとらえておりますか。特に三番日、いかに理解されておりますか。
  149. 森清

    ○森(清)議員 これは三浦委員御存じのとおり、まさしく三権分立に関することでありまして、我我立法府におる春が、最高裁判所がどういう判断をするであろうというようなことをここで申し上げるわけにはいきませんが、ただ、今回出ました最高裁判所の判決の中に、少数意見ではありますが、そのようなことがあり得るという少数意見がつけられたということは、我々は重大なこととして受け取っております。
  150. 三浦隆

    三浦(隆)委員 特に三番目の判断というのが極めて、本当にこれから脚光を浴びる見解かなという気がいたします。といいますのは、初めの事情判決は、違憲と判断された配分規定に基づく選挙違憲イコール違法とはするけれども、通常それに伴う選挙無効の効力を発生させないというものです。言いかえれば、違憲・無効または違憲・適用不能の効力発生が議員の任期満了または衆議院の解散まで延期されている状態、いわば執行猶予つきの違憲判決と言ってよいものと思います。したがって、本来的には配分規定改正なしには新たな選挙に適用することはできないことになるわけであります。その結果、木戸口補足意見によれば「裁判所の立場から国会に対し早急に議員定数配分規定是正を実現することを促す趣旨」であり、寺田補足意見によれば「是正の急務であること」を表明する意味を持つ、こう述べております。  二番目の選挙無効判決は、再選挙の前提要件をなすものでありまして、判決と再選挙の間に定数是正が不可欠であるから、「無効判決は、国会に対して立法改正を間接的に強制する」、五十八年判決中村反対意見です。強制力を持つことになる。この場合には期間の延長が厳しい制約を受けるであろうし、また当該選挙区選出議員不在のもとで定数是正立法がなされることになる。これに対して、選挙無効判決の場合であっても、判決確定の日より四十日以内の再選挙の要請は定数訴訟の場合には妥当せず、合理的期間の延長は認められると解する見解もあります。この立場からは、二と三の判決方法は実質的に接近することになってくるわけであります。  しかし、もっとはっきりしまして三の判決ですと、選挙無効の効果発生に一定の猶予期間を置くもので、再選挙の前提となる定数是正に必要な一定の合理的期間を立法府に与える趣旨と思われます。事情判決ではこの期間が長過ぎて、立法府に与えるインパクトが極めて弱い。他方、二の無効判決では、公職選挙法に定める再選挙のための法律改正が事実上不可能なことから、両者を折衷した解決方法ということで、先ほど来言うように注目を恐らく集めてくるのじゃないかな、こう思うわけであります。  いずれにしましても、もしこの六・六法案そのものが採択されないで、違法、いわゆる違憲・無効と言ってもいいような法律選挙が行われたと仮定しますと、その次に地方自治との論点から二、三お尋ねをしたいというふうに思います。  時間が大変乏しくなってまことに残念でありますが、憲法九十二条は「地方公共団体の組織及び運営に関する事項は、地方自治の本旨に基いて、法律でこれを定める。」と規定しておりまして、地方自治法が成立しております。この地方自治法第二条では地方自治行政の基本原則規定し、その第十五項では「地方公共団体は、法令に違反してその事務を処理してはならない。」とあるわけです。  ここで「法令に違反してその事務を処理してはならない。」ということですね。  そこで、これは選挙担当の自治大臣、ひとつお尋ねをしたいと思います。地方公共団体あるいは都道府県選挙管理委員会は、最高裁判決により違憲であると言われた法令に従う義務はございますか、その点についてお尋ねいたします。
  151. 小笠原臣也

    ○小笠原政府委員 私ども選挙を管理、執行する立場にある者といたしましては、何よりもまず現在違憲と判断をされた現行定数配分規定改正をされまして、違憲状態がなくなった状態のもとで次の選挙が行われるということを心から念願をしておる次第でございます。
  152. 三浦隆

    三浦(隆)委員 全くそれでは答弁にならないのでありまして、最高裁公職選挙法違憲であると判断したわけです。とすれば、憲法九十八条によって、違憲法律というものはこれは無効で効力を持たないはずであります。少なくともそう理解してもいいんだろうと思うのですが、この場合に、ですから地方自治体あるいは地方公務員そのものが法令遵守義務を仮に負ったとするその法令というのは本来合憲的な法令であって、違憲な法令に従うことがいいのかどうか、大臣にお尋ねしたかったのはその一点であります。
  153. 小笠原臣也

    ○小笠原政府委員 最高裁によって違憲判決が下された場合には、その対象となった法令については国会で直ちに是正の措置、改正の措置が講じられるべきであろう、また、それが期待されるわけでございますけれども、これは先日の当委員会でもぎりぎりの場合のお尋ねがございましたので、若干それに触れて御答弁を申し上げたわけでございますけれども、純法律的に申し上げれば、さきの最高裁判決昭和五十八年十二月の総選挙に対する司法の判断でございまして、その違憲判決によって、公職選挙法で定める現行定数配分規定が直ちに無効となったものではないということでございます。それで、その現行法規が立法府によって改正されていない以上、私どもとしては、現行法の規定に従って事務を執行する以外にはない、このように考えておるわけでございます。
  154. 三浦隆

    三浦(隆)委員 その見解が極めておかしいんだろうというふうに思うのですね。そうすると、最高裁違憲だと言った法令がいつまでもいつまでも生き続けてしまうわけです。我々は、立法権、行政権、司法権と分けて、法治主義というものを基本的に採用しているということは、法律による行政であり、法律による司法を要求している。たまたまその法律違憲だと言った以上は、そこで混乱してはいけないから、わざわざ憲法は違憲な法令は無効だというふうに規定したわけであります。違憲な法令とそうでないのと混乱しては困るから。であります。  それを踏まえて今御質問させていただいたわけでして、仮に地方の選管が業務をサボタージュする、あるいは地方公務員がサボタージュした場合に、主務大臣として、自治大臣として、指揮監督をしたり、あるいはサボタージュした公務員を懲戒したりというふうなことができるものかできないものか。あるいは、自治大臣も間に挟まって迷っているときに、総理大臣自治大臣に対して叱咤激励して、違憲な法令を厳守せよ、しなければ大臣を罷免するぞ、あるいは公務員を懲戒するぞというふうなことができるのかできないのかと、憲法上の観点からの答弁をお願いしたので、いわゆる細かいことを聞いているわけではないのです。大臣そのものに、今衆議院解散ならば、大臣もまた内閣を構成するメンバーとして、賛成するかしないかが問われてくるんだということです。
  155. 古屋亨

    古屋国務大臣 今のお話のように、ちょっと答えにならぬかもしれぬが、そのような事態を生ずることのないように鋭意審議を進めていただきまして、臨時国会において定数是正が実現することを念願するものでありますが、今申しましたように、さきの最高裁判決におきまして違憲とされた衆議院議員定数配分改正されないまま次の総選挙を執行しなければならないような、そういう事態が生じました場合にどうするかという三浦先生の御質問でございます。  それにつきましては、憲法四十二条によりまして、国会は衆参両院で構成するものとされており、国権の最高機関である国会を構成する衆議院がないわけでございます。憲法全体の秩序を維持するためには選挙を執行することが必要でございます。衆議院が解散されましたときは、五十四条によって総選挙を行わなければならない、これは御承知のとおりであります。したがいまして、たとえ違憲とされた法律でありましても、それ以外によるべき法律がない場合には、行政庁としてはその法律による以外はないのでありまして、私は、今お話しのように、そういう場合に説得して、この選挙事務を執行するように措置を講じなければならないのでありまして、選挙ができないということではないと考えております。
  156. 三浦隆

    三浦(隆)委員 その答弁がおかしいのでありまして、違憲な法令に従うことがよいか悪いかでありまして、むしろ違憲な法令には従わないという方が当たり前の論旨なんじゃないでしょうか。だから、違憲判決と下った以上は直ちに是正しなければならないということが生まれるはずであります。その答弁だけでいけば、いつまでたったって改正しなきゃしないままにやっていくことが可能な諭旨になってしまって、極めて大臣の答弁としてはふさわしくないと思います。  あるいは同じように、今度、選挙違憲選挙法令によって行われた場合に、選管のいわゆる啓発活動というのは何をしようというのですか。選管で投票を一生懸命してくださいよと促すという点において、戦前の旧憲法下においても啓発活動はやった、現在もやったというけれども、天皇主権のもとにおける啓発活動と国民主権における啓発活動は似て非なるものがなくてはおかしいはずであります。すなわち、違憲選挙法令に基づくようなものを、何を論拠として啓発活動を推進するのかも極めておかしいし、答弁も不十分だし、私はまだまだ質問したいけれども、残念ながら時間でございますので、きょうはこの辺でとめます。  そこで、結論に入らしていただきますが、結論は我々がよく使う日ごろのことわざをもってやってみたいと思います。  いわゆる首相の書簡が、首相の意図にかかわりませず、さっぱりと効力を発揮しない。むしろ野党全体を踏まえて混乱させておりますが、こういうのが「イスカの嘴の食い違い」ということなんだろうと思います。そして、我々はよく「言わぬが花」とか「言わぬは言うにまさる」という言葉を聞くのですが、首相の行き過ぎた強権的な姿勢というものがかえって事態を混乱させるし、また、我我には「急がば回れ」、そういう言葉がある。この際、首相に謙虚な姿勢こそ望ましいのじゃないか。むしろ来年のえとのとら年にちなむならば、「虎視たんたん」として、できるならば解散、総選挙をしたいと、そうならないように、あるいは「騎虎の勢い」というふうにならぬように冷静さを心から要望して、質問を終わりたいと思います。
  157. 三原朝雄

    三原委員長 野間友一君。
  158. 野間友一

    ○野間委員 十二月七日のことですが、我が党の不破委員長中曽根自民党総裁の書簡に対する返書を出したことは御案内のとおりであります。その中でも、もし自民党案を成立させるなら、長らく違憲状態を放置した上に、違憲性の明白な是正案を国民に押しつけるという二重の違憲の罪を犯すことになり、立法府にとって到底許されない、このように厳しく批判をしております。  これまでの質疑でも明らかなように、この破綻明白な両案を殊さら今国会成立させなきゃならぬという道理は全くないと私たちは考えておるわけであります。加えて、二人区導入を盛り込んだ自民党案でございますけれども、これは小選挙区制導入、この危険性を大きくはらんでおり、議会制民主主義擁護、こういう観点から考えても絶対に容認できないということをまず強調して質問に入りたいと思います。  二人区制の問題について、自民党提案者、森さんにまずお伺いしたいと思います。  死票が非常にふえるということについては、これは御案内のとおりで、森さんも再三答弁の中でも言われております。森さんは選挙定数の小さい方が死票が多く発生すること、これを認めた上で、死票が多くなるか少なくなるか、つまり多くてもよいのか、あるいは少なくすべきかということは、選挙制度の検討をするに当たっての一つのメルクマールなんだということを答弁の中でも言われております。  そこで、最近五回の参議院選挙、この中で二人区の場合死票率がどのくらい出るのか、これを自治省の資料でずっと検討しておりますと、最低でも二七%、最高では実に四三%というのが死票として出てきております。もし、衆議院で二人区が導入されたとするならば、それは今西の多様化した国民の意思を封殺してしまうということになることは明らかであります。  そこで、森さんにお伺いしますけれども、死票の多く発生する二人区制ですね、これが今日の主権在民、多様化する国民の意思の議席との結びつき、議席に反映させることあるいはひいては議会制民主主義の原則、これに照らして適切であるかどうか、その点についての見解をまずお伺いしたいと思います。
  159. 森清

    ○森(清)議員 選挙制度が議会制民主主義に適している制度であるかどうか、あるいは国民のニーズをうまく反映しているかどうか、いろいろな観点から考えなければならぬと思いますが、二人区は小選挙区制につながる、小選挙区制は議会制民主主義に反する、こういう公式は私はないだろうと思う。アメリカ下院は小選挙区制であります。イギリスも小選挙区制であります。西ドイツは、比例代表制を包含いたしておりますが、これも小選挙区制であります。そこで、それらの国、先進民主主義国家でありますが、それらの国において主権在民が否定されたり議会制民主主義が否定されたりしていると私は思いません。私は選挙制度についてそう詳しくはございませんが、たしかソ連邦も小選挙区制であったように記憶いたしております。これは間違いであれば後で訂正いたしますが、ソ連邦も小選挙区制のはずでございます。
  160. 野間友一

    ○野間委員 いや、私は制度の問題を聞いておるのじゃないのです。今の日本の選挙制度の中で二人区制度をとることが、参議院選挙の例も引きましたけれども、死票が非常にふえる、そのことが多様化した国民の意思が議席に結びつかなくなるという点で、二人区制度そのものが議会制民主主義等の関係から適切であるかどうか、今の制度を前提とした上でどう考えるのか、こういう質問なんです。
  161. 森清

    ○森(清)議員 お答えいたします。  議会制民主主義と小選挙区制とか比例代表制とか大選挙区制というものとは直接関係がございません。どのような制度をとろうと議会制民主主義であります。  ただ、事実上の問題として今御指摘のような点があろうかと思いますが、死票といいますと、二人区について二人しか立候補しないでそれが当選すれば死票はゼロであります。それから、三人区であっても十人、十五人立候補して争ってやれば、たしか最小得票数が法定得票数でありますから、それがとって、あとは全部死票になります。したがって、それは小さいほど死票が多くなる傾向があると思いますが、死票が単に多い少ないということのみが選挙制度のいい悪いのメルクマールではないということを申し上げているのであります。
  162. 野間友一

    ○野間委員 まさに民主主義の問題なんですね。もう繰り返しはいたしませんけれども、今の本当に価値観が多様化した中でできるだけ議席に反映させるという点で二人区はとるべきでない、今の三人から五人区という制度を維持することが最も正しい道だということを私は森さんに聞いておるわけです。  森さんみずからも自分で書いた論文の中に、現在は価値観が多様化し、政党も多党化しておる、そういう現状からすれば定数が多い方がよいのではないか、六人区を設けることも妥当性があるというようなことを書かれております。私は、その点はまさに至言だと思うわけであります。わざわざ二人区を例外だと称してつくる、これよりも、今のあなたの観点からしても、合区とか境界の変更ということで三人から五人区を守っていくということの方が理にかなっておるのじゃないかと私は確信しておりますけれども、いかがですか。
  163. 森清

    ○森(清)議員 お答えいたします。  国民の価値観が多様化いたしておりますし、また非常に多党化いたしております。今ちょっと指折り数えておったのですが、衆議院でも六つ政党があるはずでありますから、そうすると六人区がそういうことならいいのじゃないかなと思ってみたり、あるいは、やはり選挙というのはそれを通じて国民の主権意思がこの国会代表されて、そして、ここで国民のために政治が行われなければならない、その政治というものがどういう形で行われていくかということも選挙制度の非常に大事な問題であります。したがって、我が国でも大選挙制度をとったこともあれば、小選挙制度をとったこともあれば、比例代表制をとったこともあるし、中選挙制度をとったこともあるわけであります。また、諸外国でもいろいろその制度があって、一長一短あるわけであります。  そういう中で、我々は現実の選択として、この六十年間は大体三人から五人の中選挙制度をとったが、先ほどもお答えいたしましたように、昭和四十二年の選挙制度審議会答申では、大多数は小選挙区制であったという答申をし、その第一小委員会定数是正の第一委員会では、二十八名の委員のうち二十二名は小選挙区制ないしは小選挙区制に比例代表制のようなものを加味したものを採用すべきであると言い、そうして五名は中選挙区制のままで比例代表制、今の単記非移譲式ではありません。現在の中選挙区といいますか、これは選挙上の用語から言えば大選挙区単記非移譲方式、こう言うのが正確であろうと思いますが、そういう方式に少しの改善を加えてやろうというのはたった一名であります。したがって、有識者に聞けば、今の三から五の中選挙区制がいいと言うのは、二十八大正式に選挙制度審議会委員がいてたった一人であります。あとの二十七名は改善を要する。これも国民、有権者、選ぶ側の論理であろうと私は思っております。  したがって、我々が選ばれる者側の論理で三人−五人がいいんだと言って頑張らないで、選ぶ側の諭理も十二分に反映して総合的に検討したらいいのじゃないか、このように考えております。
  164. 野間友一

    ○野間委員 今選挙制度審議会のことについてお触れになりましたので、この点について申し上げますけれども、確かに多数が小選挙区制を主張したということは事実のようですが、しかし、それが国民的な合意を得ているかどうかということは全く別な問題でありまして、これは政府の任命した審議会のそういう状況であります。しかも、その審議経過を報告するだけで答申すら出せない。報告に基づいて自民党が小選挙区制を強行しようとしましたけれども、国民の大反対でこれが実現しなかったという経過があることを私は言わざるを得ないのです。  私はそういう審議会の問題等でなくて、森さんみずからが出しておられます論文の中で「基本的な考え方」「私は、次の提案をする。」というところで、今申し上げたように、政党も多党化しておる、価値観も多様化しておる、だから、むしろ六人区を設けることも妥当性があると思うということをあなた自身が主張しておられますから、そういう点からしても合区あるいは境界変更はして、そういう多様化した国民の意思がきちっと議席に反映させられるということは理にかなっておる、逆に、二人区をとって死票をどんどんふやしていくということは議会制民主主義の観点からしてもとるという角度から私は森さんにお伺いしておるわけであります。  そこで、次に進みますけれども、選挙区の改変ということをよく言われるわけであります。主権者の意思は選挙区の区画を通じて発揮されるんだ、ですから選挙制度をとる以上、選挙区の改変は選挙の本質にかかわる問題なんだ、したがって、みだりに変更すべきではない、こういうふうに当委員会でも答弁をされておるわけであります。しかし、三十九年あるいは五十年の過去二回の改正を見ましても、六人区になった場合にはこれを分区して、三人から五人内に抑えてきたというのが今までの経過であります。しかも、分区について言いますと、例えば埼玉の五区ですけれども、飛び地までつくりまして分区を強行したわけですね。我々は反対しました。これも選挙区の改変なんですね。森さんは合区はいろいろな理屈をつけまして難色を示しておられますけれども、分区はこういうように飛び地までつくってでも強行しておるわけです。ですから、分区はなぜこういうようなことをしてもなおかつ合理性があるのか、ひとつ教えていただきたいと思います。
  165. 森清

    ○森(清)議員 お答えいたします。  まず、その前に、私が一昨年発表した選挙是正私案というものを引用でございました。六人区のところだけ引用されるのでありますが、それを全部読んでいただきたい。これは現在の中選挙区制を維持する、選挙区の改変は一切行わない、そういうことの結果やれば、二人区を多数つくっております、二人区をつくり、六人区をつくってやれば格差二倍以内で、選挙区の改変をしないでやり得る案はつくることができますということで私が発表した案でありますから、その前提を全部抜かれて、私のは境界変更を一切しない、二人区をつくる、しかし六人区もつくるんだ、こういう案でありますから、六人区だけつくれと言って主張したわけじゃないこと、だから著作、論文を引用するときはある特定の部分だけ引用しないで全体の中からひとつやっていただきたい、これが第一であります。  それから、三十九年、五十年に政府から提案されたものは二人区あるいは六人区、七人区、八人区がありました。しかし、それはそのときの各党大体の合意で、特に五十年のときは各党合意で三から五にしようということでありました。それから、三十九年のときはその合意もできておりませんので、三人から五人区にしようという政党意見、これはここではっきり申し上げますが、大体そのときの雰囲気からいえば、自民党と社会党がその意見でありました。その当時は公明党はまだ衆議院に出ておりませんので、参議院でそういう議論が行われましたが、民社党が六人区をつくれ、三人区−五人区については、こういうものは単なる慣習であって意義はないんだ、したがって、三−五というのはそんな根拠のない話である、したがって、六人区をつくれということを質疑を通じて、あるいは最終的な民社党の反対討論を通じて行ったわけであります。  そういう議論の経過を全部踏まえた上で、我々が案をつくるときに二人区をつくったのであり、また御指摘の六人区、七人区、八人区を分区するときには、この院において、小委員会において非常な御論議の末、民社党、公明党が反対されましたが、大体それが常識ではないか、二人区もつくらないかわりに、やはり三から五の中におさめようではないか、こういうまあまあ大体の合意ができて、それでできました。しかし、最終的には民社党、公明党はたしか反対されたと思いますが、そういうことで本院で決定したのでございます。  したがって、そのときそのときにいろいろなことを考えなければなりませんが、それでは必ず三に割るのが合理的なのかどうかということについては今後議論があるだろうと思います。  特に、埼玉県の場合は飛び地をつくらざるを得なかった、こういう非常な、それは市町村の単位としてしか選挙区はつくり得ませんのでそういうことになったわけでありまして、今後つくるときには、できる限り人口格差は平等にするように、市町村の単位を変更しないように、そういう選挙区を今後検討していかなければならない、このように考えております。
  166. 野間友一

    ○野間委員 確かに地理的、歴史的あるいは住民感情とかそういうものを考慮した上で、みだりにすることは私も反対で、自然にすることは当然だと思うのですね。  しかし、少なくとも手法として、多様化する国民の意思を議席に反映させるためには、合区、分区というのはまさに適切な手法、使い方によればきちっとできるわけですね。これは決してそれが原則じゃありませんけれども、そういう手法をすれはいいということです。  あなたは自分の書いたものを勝手に引用するな、正確に引用しろと言われますけれども、「基本的な考え方」の中であなたはおっしゃっておるわけですよ。むしろその後続けて、「二人区はあく迄例外的なものと考えればよい。」こう言われておるわけですね。この例外的な二人区がまさに今回四つもふえるというところを私は問題にしておるわけですね。  奄美の関係も、あなたはこの前の委員会のときにも言われたけれども、奄美でもう既に例外があるじゃないか、だから今度の二人区も結局それと同じような性格のものだということを言われたわけでありますね。ところが、奄美は、あなたは一番よく御存じだと思いますけれども、今度の二人区は四つもつくる、六つのうち四つの二人区をつくる。しかも、六・六の手法で言いますと、今度は十・十になれば四つのうち三つが二人区になることが推測されるわけですね。しかも、その例外的な規定が、実際今までやってきたということの例として、あなたは奄美を言われる。しかし、奄美は昭和二十八年に復帰をした。しかし、その当時は既に選挙は終わっていたわけですね。しかし、今度の選挙まで奄美の住民が政治に参加するということをないがしろにすることはできないということで、ほんの例外的な措置としてこれはなされた。これは当時の塚田国務大臣の国会答弁でも明らかでありますし、当時の特例法の趣旨説明の中でもこれは明確に出ておりますね。しかも、その塚田さんの答弁の中でも、昭和三十年のときにこれをきちっと是正して、鹿児島三区になると思いますけれども、そこに編入するんだということまで言われておる。  森さん、ですから、昭和二十八年に復帰をして、そして、やむを得ないほんの例外的な措置としてやったもの、これが三十二年、今まで続いてきた。むしろ奄美の例を引いて二人区制を合理化しようとするのは言語道断だと私は思うのです。むしろ奄美の場合には、二十八年に入れて、三十年にちゃんとやはりするべきであったものが、これは行政の怠慢等もありましてそのままになって今日に至るわけですね。ですから、怠慢を責めることはありさえすれ、それを一つのてこにして二人区を合理化することは到底許されない、こう私は思いますけれども、いかがですか。
  167. 森清

    ○森(清)議員 お答えをいたします。  奄美の例は、この前も御答弁申し上げましたとおり、明治二十二年の選挙法以来、小選挙区制のときはもとより、大選挙区制をとりましたときも、鹿児島全県一区にしないで、奄美を独立して一人の小選挙区制にしておったのであります。  そして、大正十四年に中選挙区制にしたときは鹿児島三区にしたことは事実であります。しかし、そのときの経済社会の実態、人口状況を考えますと、奄美群島の方が大隅半島の人口より多くなりました。そしてまた、社会的、経済的にも、奄美群島と鹿児島との間には恐らく週に一回の船も通っていなかったと思います。そういう状況でありますから、お互い独立した社会経済圏であったわけであります。  したがって、それほど人口が違いますから、六回選挙を行いましたが、そのうち三回は奄美から二名当選しているのです。大隅半島から一名。あとの三回は大隅半島から二名、奄美から一名当選している。  このような離島にあるところの選挙民、有権者の声をどのようにして国会に反映するかということも非常に大事なことなんであります。したがって、我々は奄美の復帰のときに、とりあえずの暫定措置として行いましたが、その当時議論されておりましたのは小選挙区制であります。そうしたならば、当然に奄美を小選挙区制、そのまま残ったのであります。したがって、その後是正を行わずに、そういう観点もあり、一名区のまま残しておいて、昭和三十九年の定数是正のときの御議論の中に、ある党の議員の方は、奄美のこの当分の間の措置は、この三十九年の改正によって恒久化されたという御発言がありました。これは法律的には同じでありますが、私は、政治的にはやはりそうお感じになっただろうと思います。次に直すチャンスがあれば直すんだという合意があって直さなかったということが、すなわちこれは奄美は一人の選挙区制として残す方がいいという立法意思が働いたと解釈してもいいのではないか。そのことは私が言っているのではありません。野党の方がそういう御指摘をなさっておられるわけであります。やはり私は政治的にはそのように受け取っていいのじゃないかと思っております。  しかも、私が先ほど二人区というのは例外的にできた二人区であるということを申し上げ、私の私案でも、あのときは十五の二人区ができるはずであります。  そういうことを考えますと、今回やる二人区は四つ、それから六十年国勢調査によって新しく二人区は恐らく三つぐらいふえるんじゃないか、このような予想が立てられておりますが、まあまあ暫定的な緊急的な措置はそれまでであって、あとは皆さんと御協議の上、抜本的な改善に取り組む、こう我々は公約いたしておりますし、また各党合意をいたしておるわけであります。したがって、その際にこの二人区問題はどうするか、原則の三人から五人におさめてしまうのがいいかどうか、おさめられるかどうかということを含めて抜本的な検討をするわけでありますから、この暫定緊急措置的にできる幾つかの二人区というものがあるから、これはずっと未来永劫にわたって二人区はどんどんふえていくんだ、こういう議論をしているわけじゃない。すなわち、これで打ちどめにしたいという皆さんの御意向、それは十二分にこの抜本的改正の中には反映するのではないか、このように考えております。
  168. 野間友一

    ○野間委員 選挙区を決めて、そして、そこの住民から選ばれて国会へ出る、そういう点で、そこの地域のいろいろな要求を国政の上に反映させる、これは当然のことであります。しかし、憲法の観点から見まして、全体の奉仕者、全国民代表、これは国会議員であり、国会の責務なんですね。そういう点で特定の地域から出ておるか出ておらぬかということは結果論なんですね。  まず第一には、やはり全国民代表者ですから、もし奄美なら奄美を例にとりまして、そこからどうしても出すべきであるということになりますと、これは小選挙区制に結びつかざるを得ないと思うのです。出ないところはたくさんあるわけですよ。私の前にいた兵庫五区なんて、兵庫五区の中の丹波篠山ですけれども、多紀郡というのは出たことないですよ。飛び地をつくった埼玉五区、あそこの新座等の飛び地、あそこは三十三万あるのですよ。奄美は十五万ですからね。三十三万、飛び地にありながら、そこは出したことないわけですよ。ですから、どの地域から出しているかどうか、これは結果として出てくることはあっても、そこの地域からどうしても出さざるを得ない、出さなければならぬということは願望であっても、私はそれは憲法の制度選挙制度の問題とは全く関係ないことだ、こう言わざるを得ないと思うのです。  私が申し上げたいのは、この奄美の例を、いかにも皆さんは何回もこの国会でも答弁された。今度の二人区をつくることは決して例外じゃないのだ、奄美の例があるじゃないか、こういうようにしょっちゅう言われた。しかし、沿革からしても、私が申し上げておるように、法の措置で昭和三十年の是正のときにこれが是正されるべきものがそのままになっておるというところに問題がある。発想が逆転しておる、こう私は言わざるを得ないと思うわけであります。  それから、この前の森さんの国会の答弁の中で、欧米諸国ではあたかもほとんどが小選挙区制であるような答弁をされたように私は聞いたわけであります。しかし、これは事実ではありませんで、例えばイタリアとかオーストリア、ベルギー、オランダ、デンマーク、スウェーデン、フィンランド、スイス、多くの国が比例代表を採用しておることは御案内のとおりなんですね。しかも、フランスでは小選挙区制から比例代表制に変えられた。これは森さんも御案内のとおりであります。イギリスについても、昨年九月に自民党が調査団を派遣して、それでまとめられた報告を見ましても、自由党が二五・五%の得票率があるにもかかわらず議席は三・五%しかとれていない、したがって、比例代表制にぜひしてほしい、こういう要求が強いということも調査報告書の中にも書かれておりますね。したがって、私は、小選挙区制をしく前提として欧州では小選挙区制だというようなことを強弁されたと思いますけれども、これは事実とは違うということを指摘せざるを得ないというふうに思うわけであります。  時間がもうあとわずかしかありませんが、次に、選挙制度の問題についてお伺いしたいと思います。  今のお話でも、まず六・六で二人区は例外的な措置だとおっしゃった。しかし、同時に、もし今度の六十年の国調で十・十になったとするならば、四・四がクリアできませんね、オーバーしますね、その四つのうちの三つが二人区になる。この手法はこれまでということを森さんも今言われた。四から三、七つに二人区を認めると言うが、そのこと自体が到底私たちは承服できるものではありません。  と同時に、抜本的な改正についてどういうふうな方針、見解を持っておられるのかということであります。  これは自民党の中でのいろいろな発言等も私は調べてみたわけであります。例えば後藤田さん、当時選挙制度調査会会長の代理でありますけれども、これは五十六年二月二日の国民政治研究会。格差について、二対二というのは絶対に不可能です。」「だからこれをおやりになるのであれば、選挙制度そのものに手を入れた際に、比例代表にするか、あるいは小選挙区にするか、あるいは小選挙区プラス比例代表制にするか、そういった根本的改正をする際でなければ出来ません」ということで、頭から、格差が一対二は今の制度の上では不可能だということも言われております。  また、評論家の伊藤さん、これは中央公論の中で五十八年四月から五十九年八月まで「政治道場」という対談を連載をされております。この中でも西村英一元自民党副総裁も、「最大の目標として小選挙制度考えるべきだ。」こう言われておりますし、さらに、この中で同じ後藤田現総務庁長官も、小選挙区制はあなたの政治信条かという伊藤さんの問いに対して、「信条だ。」ということをはっきり言われておるわけですね。  森さんも、私は前に引きましたけれども、自由新報の五月二十一日付ですが、「政治の安定のためには小選挙区制が最善である」、こういうふうにおっしゃっておる。  こういうような一つの経過とかあるいは中でのいろいろな考え方からいたしますと、当面六・六で二人区をつくり、その追加措置で二人区をつくる、しかも抜本的な改正ということになりましたら、ここでは小選挙区制という方向に進むんじゃないかと危惧するのは単に私だけではなしに、今までの党内の論議とかいろいろな書き物から見て、当然国民や我々が危惧するのは当たり前だと私は思うのですけれども、この点について、抜本的な是正の方向について森さんの見解を承っておきたいと思います。時間がありませんから簡単にしてください。
  169. 森清

    ○森(清)議員 お答えいたします。  西欧諸国が全部小選挙区制などと私は一度も答弁したことはございません。具体的な国の名前を挙げて、この国、この国、この国は小選挙区制、この国はどうであるということを申し上げたのであります。現在日本でやっているような中選挙区制は世界じゅう、普通調べる限りどこの国にもないということもあわせて申し上げておきます。  それから、抜本改正の方向ということについては、先ほどもお答えいたしましたが、画中民主党ではこれから検討にかかるわけでありますので、まだここで申し上げるようなものは一切ございません。
  170. 野間友一

    ○野間委員 それでは、最後に、野党の提案者の皆さんにお聞きしたいと思います。  当委員会におけるいろいろなそれぞれの皆さんの御質問を私聞いておりまして、いずれに、しても、自民党あるいは野党にしても、二十四日の国調の速報値が出れば今の六・六案は全く失効する、効果がないということは一致されておったやに私は答弁を承っておったわけです。しかも、森さんの方からも今答弁がありましたように、その追加是正の場合も二人区はつくるのだということを公言されておるわけですね。  こういう段取りで、しかも抜本的な方向というようなことを、これも全く五里霧中で進めようとされておりますけれども、そういう点を考えまして、私はこの際、きょうは十一日でありまして、十四日で国会は終わります。そして、二十四日から通常国会が開かれるわけですね。したがって、今の時点でやはりこういう欠陥のある両案を撤回して、そして原点に戻って、本当に国民納得のいくような適切なものをつくっていくということの協議をぜひするべきであるというのが私たちの主張ですけれども、その点について野党各党の皆さんに答弁をお伺いして、質問を終わりたいと思います。
  171. 山花貞夫

    山花議員 きょう先生の方で御指摘になりましたとおり、二人区の創設は小選挙区制に通ずるものである、これは野党共通の認識であります。問題点につきましても、ほぼ先生が御指摘のとおりの問題点を私たちは確認しているところであります。  我々は、現時点におきましては速報値を待つという段階でありますけれども、暫定的な改正については、速報値の結果速やかにこれを行うということを前提といたしまして、抜本策についても具体的な検討を開始すべきであるということについては同時に主張をしているところであります。  抜本策の中身につきましては、今自民党側からは、まだ具体的な検討に入っておらないのでというお話がありましたけれども、我々が承知している限りでは、これまたただいま先生御指摘のとおり、中選挙区制を前提としての抜本的な改正というものは難しいというのが六・六案提案者側の基本的な考え方であるというように理解しておりますので、その場合でも私たちは、小選挙区制あるいは二人区の創設ということについては断固反対という立場を貫いてという大前提で抜本策について検討しなければならないと考えているところであります。  ただし、抜本策につきましては、私も、先生が六月二十四日の本会議場におきまして、あるべき抜本策につきまして、都道府県比例代表を含めての問題点指摘されておりますけれども、各党ともに基本的方針については打ち出しておりますけれども、具体的な抜本策作成の手続あるいは仕組み、第三者機関設置等の問題についてはなお議論が十分ではなかろうと思っておりますので、今後、本日だけではなく議論が続くと思いますけれども、今後の議論を通じては、抜本策につき、できる限り早期に各党の案を提示して協議を進めるべきであるということについては同感であります。
  172. 伏木和雄

    伏木議員 二人区の制度につきましては、私どもも反対でございます。この中選挙区制が施行されました大正十四年におきまして、政府みずから、二人区は小選挙区制の弊害を残すということを明確にいたしております。また、昭和三十五年の第一回選挙制度審議会政府提出の参考資料にも、この二人区は小選挙区制の弊害が残されているということを明確にいたしております。したがいまして、二人区をつくることは今後ともに反対でございます。  抜本改正につきましては、先刻も申し上げましたように、公明党といたしましては現行定数五百十一を維持する、三から五の中選挙区制を堅持しつつ、格差は二倍以内にするという方向を出しております。  また、今国会提出しております六・六増減案につきましては、あくまでも、二十四日速報値が提出される、この速報値を見越した上でこの六・六の審議を進めなければならない。すなわち、二十四日の速報値では六・六案に欠陥が出てくることはもう明らかでございます。したがいまして、この速報値を受けてどういう対応をするか、その方途を明確にした上でこの六・六案を審議しなければならない、このように考えております。
  173. 岡田正勝

    岡田(正)議員 野間先生にお答えいたします。  私どもは、今日置かれておる段階考えてみますと、既に十二月九日現在で六十年の国調の地方集計は四十二府県が集まっております。十二月十七日、あと六日たてば四十七都道府県の地方集計が全部終わるわけであります。恐らく十八日には各新聞に一斉に掲載されるでありましょう。官報へ掲載されるのは二十四日と言われておりますけれども、もう既に十七日の地方集計が全部完了した時点で私どもは六十年の国勢調査の速報値が出たと受けとってもいいのではないか。こういうことを考えますと、あと六日間ということを考えると、そんなに急いでどこに行くという言葉がありますが、国民から見たら何かそんな感じがするのじゃないだろうか。一体国会は何をしておるのだろうかというような非難を受けかねないと思うのであります。  したがいまして、この段階に来ました以上、私どもといたしましては、これはもちろん各党と協議をしなければならぬことでございますが、協議をいたしまして、速報値を受けて、違憲是正をしない、合憲是正をやる。今のままだったら、この六日間の間にやろうとすれば当然違憲是正になります。五年前の国勢調査でありますからこれは違憲是正をするのでありまして、最高裁から違憲だと判決を受けたのにわざわざ違憲是正をする、こんなことをする必要はない。合憲是正を速報値を受けてすれはいいではないかということを強く訴えていきたいと思っておるのであります。  なお、二人区制の問題でありますが、三人から五人の中選挙制度というのは、先生御承知のとおり、大正十四年に若槻大臣が提案をされまして、それ以来六十年間定着をした非常にいい制度でございまして、去る六日公聴会をこの場で開きましたが、その際自民党から御推薦のありました公述人の先生方でさえも、現在の三人から五人という中選挙制度はまことにうまくできておると大変な評価をしていただいておるのでありまして、おっしゃるとおり二人区を本当にやりましたならば、これはもう小政党にとっては大変な問題でありますし、そのことよりも何よりも多様化した国民のニーズを国政に反映することができにくくなる、死に票が多くなる、こういう大きな欠点がありまして、国民の意思を国政に反映することが非常に乏しくなる、こういう意味においても私どもは二人区制は絶対に反対であります。  しかも、一言添えさせていただくならば、二人区制度でいいじゃないか、これを修正せずにのめ、のめというような態度をとられるということは、私は大政党のエゴではないかというぐらいに考えておるのでございます。  以上であります。
  174. 江田五月

    ○江田議員 私も提出者の一人ですので、野間委員にお答えいたします。  前のお三方の答弁と同じでございますが、野党案も今、委員指摘のような欠陥をだんだん持ってきておるのは明らかですので、これについていかにするかということは十分に提出者の中で議論を真剣にしなければいかぬことだと思っております。
  175. 野間友一

    ○野間委員 終わります。
  176. 三原朝雄

    三原委員長 この際、菅直人君より委員外発言を求められておりますので、これを許可するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  177. 三原朝雄

    三原委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  菅直人君。
  178. 菅直人

    ○菅議員 ただいま、この公職選挙法特別委員会の席におきまして、社民連に対しまして委員外発言の機会を与えていただきましたことを委員各位にお礼を申し上げたいと思います。どうもありがとうございました。  早速ですが、ことしの七月十七日に最高裁判決が出されまして、定数に関する国会の怠慢を厳しく指摘をされてきたわけであります。私もこの国会に籍を置く一人として大変じくじたるものがあるわけですけれども、野党の提案者の一人でもあります、また裁判官の経験を持っておられる江田五月議員にひとつお聞きをしたいのですが、この最高裁判決をどのように受けとめ、そして、どういう改革が必要だと考えておられるか、その点についての見解を伺いたいと思います。
  179. 江田五月

    ○江田議員 お答えいたします。  私は平裁判官であったのでございまして、最高裁は雲の上でございまして、とてもこの最高裁判決をコメントするような立場にはいなかったのですが、せっかくのお尋ねですし、また野党審議の本会議でも答弁に立ちませんでしたので、考えを申し述べます。  御承知のとおり、我が国は三権分立の制度をとっておりますが、この三権分立というのは、何の関係もない三権がお互いに立っているというのじゃなくて、相互に関係をし合っているわけですね。一切の法律、命令、規則または処分が憲法に適合するかどうかを裁判所が判断をするんだ、それも最終的には最高裁が判断を行う、最高裁の中でも大法廷で判断をするのが最高の権威だというわけですから、裁判所が国会に干渉するがごときは許されないという御意見もあるようですが、制度の理解に欠けた意見だと言わなければいけません。いろいろな意見があっても、最高裁が、特に大法廷で憲法違反だと言ったことですから、だれも皆これに従わなければ制度というのが成り立たないわけです。しかし、裁判所は決して違憲審査権限を安易には行使していないので、むしろ私などからすると、もうちょっと自己抑制を外してやってくれたらいいのにと思うことすらあるほどなんです。それにもかかわらず今回裁判所が違憲宣言を行った、これは私は、最高裁裁判官のやむにやまれぬ心情がその裏にあると思います。これにこたえることは国会の最も重要な義務です。  ところで、最高裁判決一体何を言っているかということですが、憲法十四条一項についてわかりやすい表現をしていますね。憲法十四条一項は、選挙権の内容の平等、換言すれば議員の選出における各選挙人の投票の有する影響力の平等、すなわち投票価値の平等を要求するものと解すべきである、こう言っているわけです。もっともこれが唯一絶対の基準ではないとは言っておりますが、同時に、選挙区割りと議員定数配分を決定するについては選挙人数と配分議員数との比率の平等が最も重要かつ基本的な基準であるというべきである、こう言っているわけで、この判決は、形式的には五十八年の選挙当時の定数配分規定が五十五年の国勢調査の結果に照らして合憲かどうかを判断したものにすぎませんけれども、その判断の大前提をなすものは以上の憲法原則ですから、今私たちがしなければならないのは、昭和五十五年国調の結果に照らして合憲の定数是正をすることで足れりとするのではいけません。昭和六十年国調の結果は既にもう将来の範疇から現在の範疇に入っているというべきであると私は思いますので、昭和六十年国調に照らして合憲の是正をしなければならぬと思います。しかも、最高裁判決は、国会のやることに可能な限り干渉しないために、実に広範な裁量権を国会に認めているわけで、国会最高裁判決に甘えるのではなく、その意を酌んで、単に違憲と言われなければいいというような態度ではなくて、投票価値の平等、つまり一票等価を最大限実現するように裁量権を行使しなければならぬ。その意味で、私は、野党案もまた今次第にその欠陥が明らかになっているというのが、実は提出者のみんなの心の内の本音だというふうに思っておりをする。
  180. 菅直人

    ○菅議員 それでは、自民党の六・大改正案について幾つかの質疑を行いたいと思います。  森議員は、この六・大改正案が最も適切なんだということをいろいろな場面で繰り返して述べられております。しかし、今のこの最高裁判決趣旨の解釈からいって、既に六十年度国勢調査が行われて目前に速報値の発表が迫っている、あるいは実質上その内容はわかっている今日において、果たして自民党六・大改正案なるもので、いわゆるこの判決が望んでいる憲法に違反した状態を免れることができると考えられるのかどうか、その点の見解を明らかにしていただきたいと思います。
  181. 森清

    ○森(清)議員 お答え申し上げます。  最高裁判所においてこの七月、現在の定数配分規定は憲法違反である、このような判決を受けました。したがって、我々は各党合意の上、一日も早くこれを是正しなければならない、このような各党合意に基づいて自民党案、野党案それぞれ現在審議中であります。したがって、我々の責任はこの国会においてこれを成立させることである。しかも、それは各党合意していることであります。しかも、我々は単に評論をしておるわけじゃないのです。現実にこの政治の社会の中にあってどのようなことが実現していくであろうか、また、しなければならないかというこの中にあって、現実の選択として私はこの国会において六・六案を成立させなければならない、そうしなければ違憲状態を脱することが非常に難しくなる、このように考えております。
  182. 菅直人

    ○菅議員 質問をしたことについてお答えをいただきたいのです。私が申し上げたのは、この自民党改正案なるものが万々一国会を通過したとして、それで違憲状態を脱したと言うことができるかどうか。つまり、今日の時点あるいはこの国会ぎりぎりまでだとすれば十四日の時点でそういうことが言えるのかどうか。まさに現実の二十四日に速報値が月の前に出る。あるいは実質的にはその内容がほぼわかっているというまさに現実的な今日の状態においてどう判断されるのかというその一点を聞いているわけです。
  183. 森清

    ○森(清)議員 公職選挙法の別表に備考として「直近に行われた国勢調査の結果によって、更正するのを例とする。」こう書いてあります。それはすなわち現在行うとすれば五十五年国勢調査の結果の例によって更正するのであります。それはやらなければならないことであります。しかも、続いて六十年国勢調査の結果が出れば、法律論はともかくとして、政治的にお互い各党合意の上、直ちに是正を行う。政治の場において各党合意しているわけであります。したがって、何ら問題がないではないか。  もう一つ、これは私から申し上げるのはあれではございますが、衡平法の原則に「ビー フー シークス エクイティー マスト ドゥー エクイティー」、すなわち衡平を求める者は衡平でなければならない。社民連もその提案者になっておるこの野党統一案と我が自由民主党が提案しているこの案とは、今、菅議員が御指摘の点については全く同一内容であります。したがって、あなたがそう思われるなら、あなたの方の案をエクイティーの法理からいってもまず撤回されてから御質問をしていただきたい。我々は撤回する必要はない。この法案に基づいてこの国会において成立をさせたい。我々は誠心誠意前国会において法案を提案し、継続審査をお願いし、そうして精力的に審議を進めております。我々は法案を提案した以上、それは憲法違反の法律であり、そして、それを是正しなければならないというこの一念のもとに皆さんと御審議を通じて成立を図っているのであります。それについて御協力を願いたい。本院の議員としては皆この法律をつくろうということをお考えいただきたい、こう申し上げているのであります。
  184. 菅直人

    ○菅議員 今の森議員の発言に対して、私は同じ言葉を皆さんに振り向けたいのです。きょう朝、自民党坂本三十次議員がどういう発言をされたか。自民党一つの党として提案をされているならば、それに対して異論があった場合に、それじゃ自民党案は撤回されたらどうですか。それならば野党案も、これは協議しなければなりませんけれども、少なくとも社民連は自民党自民党案を撤回されるならば即座に撤回する方向で動きたいと思います。どうですか。自民党案を撤回したらいいじゃないですか。同じ言葉じゃないですか。
  185. 森清

    ○森(清)議員 お答えいたします。  自由民主党は天下の公党として党議を決定し、それに従って提案をいたしました。しかし、我々はその名のごとく自由の政党であります。したがって、党の中に一人や二人そのような意見を持っておる者を包含しながら自由民主党としては最終決定しておるわけでございます。
  186. 菅直人

    ○菅議員 この議論を繰り返してみても余り実りあるものと思いませんが、少なくとも森さんが衡平の原則云々とか言われるならば、自民党としての提案というならば、その点をはっきりさせなければそれを言う資格はないわけでありまして、私も一人の国会議員として私の意見を申し上げているわけであって、それを党で拘束しろというならば、全く同じ言葉をお返しするということを重ねて申し上げておきます。  もう一、二点お尋ねしたいのですけれども、一つは、これも何度か繰り返されておりますが、六十年度国調の中で山形二区と新潟四区が逆転するということがほぼ明らかになっている。これを論理的にどのように筋道を立てることができるのか、その点が一点。  もう一点は、二人区問題でありますけれども、これはまさに森さん御自身言われているように、六十年間近く、一時の例外を除いて三人ないし五人区という状態が続いている。奄美については例外的に「当分の間、」という形で附則に付されている。そういう意味では、今回の選挙制度改正という問題はあくまで定数是正でありますから、結局選挙制度制度そのものを比例代表区とかあるいは小選挙区とか等々を変えるということではない。中選挙区の現状の形の中での定数是正ということでいえば、二人区創設は定数是正ではなくて選挙制度の改革になるのではないか。そういった点で、この二点についての森議員の見解を伺いたいと思います。
  187. 森清

    ○森(清)議員 まず、山形二区と新潟四区が六十年国勢調査人口によれば逆転をするであろうことは既に新聞報道されております。我々は五十五年国勢調査人口を用いて、そうして、それによって順番どおりやろうと言っているのじゃないのです。一定の資格のあるものは是正をしようというわけであります。一番から六番までやろうとしたのではない。どんな順番にあろうと、一番であろうと何番であろうと、一定の資格になったものが是正の対象になるというのであって、ちょうど資格試験であります。競争試験で一番から何番と決めておるのではないのです。したがって、我々は、五十五年の国勢調査結果によればそうなる、したがって、それによってやる、六十年国勢調査が出ればそれに従ってやる、こういうことであります。  それから、続いて二人区の話でありますが、まさしく我々は定数是正である、何も新しい二人区という選挙区をつくったのではないのです。三人のところを二人という定数是正をしたのです。三人というところを四人にしたり、四人のところを五人にしたり、四人のところを三人にしたり、三人のところを二人にしたり四人にしたり、これが定数是正じゃないでしょうか。選挙区を変えるということは、六十年間その地域で、選挙区で、選ぶ者の側の論理からいえば、一体になって選挙してきたのです。それを切り刻むようなことはやってはいけない。定数是正したのであります。
  188. 菅直人

    ○菅議員 今の答弁からも矛盾は明らかだと私は思うのです。資格試験、まさに資格試験と言われるならば、六十年度国調を目の前にして、資格試験をやればいいわけであって、それでなくて一から六までの順番だと言われてきたことがここで資格試験に変わった。それなら、まさにもう資格試験は目の前に次の基準があらわれているわけですから、当然そうされるべきだと思いますね。  それから、もう一点。二人区についても全く矛盾が明らかでありまして、これまでの何度かの改正の中でも基本的に三人区から五人区という形で、例えば私がおります東京七区でも、今から河期か前には一つであったのを分区をして四、四の選挙区に変わって今の状態になっているわけですね。そういう点ではそのときだって定数是正だったわけです。選挙制度改正じゃなかったわけですね。ですから、そういう点では今の森議員の議論というのは全く論理的に破綻をしていると言わざるを得ないと思います。  それを前提にしまして、この委員会の中でいわゆる抜本改正についての議論がまだ十分にスタートしておりませんけれども、この機会ですからこの暫定的な改正及び抜本的な改正について私たちの一つの見解を申し上げて、それに対して自治省あるいは森議員の見解を伺いたいと思います。  私たちとしては、まさに現実の政治の中に身を置いている者として六十年度国調の速報値を目の前にして考えますと、幾つかの野党も申されておりますけれども、六十年度国調に照らしても違憲にならない改正を行う、そして三ないし五人の中選挙制度を堅持する、これを緊急避難的措置とすべきだ。その結果において、私たちが計算したところ、あるいはマスコミの報道を通しても十増・十減、千葉四区が二つになりますから選挙区でいえば十と九ですが、十増・十減を行って、かつ合区と分区を行って三人から五人区にする、これを緊急避難的措置として次の速報値が出た直後に行うべきであろう。  そして、次に抜本改正についてですけれども、これはいろいろな議論があったのですが、今回の判決あるいは先ほど議員が答弁された中にも、その一点については私は同感なのですが、憲法が本来求めているものは三倍ではないのだ、本来は一倍なのだ、その一倍にできるだけ近づけるのが趣旨だと私も思います。もし、ぎりぎり解釈するとしても、一人が二票を持てないのと同様に、二倍の格差というところが憲法解釈上適切ではないかと私は考えております。そういった意味で、技術的な問題もありますから一・五倍以内での改革を行うべきだ。  そして、三点としてですが、私はこれが非常に重要だと思うのですが、自動的な改定の規定を現在の公職選挙法の中に設けるべきではないか。どうすればいいのだ。これはまさに国勢調査ごと現行定数五百十一名を人口基礎にして都道府県に配分する。この方式としてはドント方式が適切だと私は思いますけれども、五百十一名を都道府県の人口基礎にして配分する。そして、その都道府県の中の選挙区の線引きについては、選挙制度審議会の中に各都道府県単位のブランチのようなものを設けて、そして各都道府県ごとに区割りの審議会を設けて議論をする。これはアメリカの制度にかなり類似しているかと思いますけれども、そういうふうにしておけば、まず定数の基本的な配分についてはまさに五年ごと国勢調査ごとに自動的に行うことができますし、それから先はそういった地元の状況をよくわかっている人に審議会のブランチを構成してもらって線引きを変えていく、そういうことが十分あるのではないか。  そして、その場合に、そういった大きな改革を行うに当たって、現在休眠状態にあります選挙制度審議会を今までのような形でスタートさせるというよりは本当に実効ある形でスタートさせることが必要ではないか。その一つの案としては、これはまさに議会制民主主義のルールづくりですから、そのルールづくりにふさわしいメンバーといえば、一つには司法に携わってこられた人、例えばさきの最高裁判決の裁判官、裁判長を務められた寺田裁判長も今は退官されているようでありますけれども、一つの例ですけれども、そういうふうな方を委員に迎えて、そういった純司法的な観点からルールづくりを行うべきではないか、このように私たちは考えているわけです。  この点について、まず大臣に、今の選挙制度選挙法の中にこうした趣旨の自動改定規定というものを設けることは、その選挙法の趣旨からして可能かどうか、その見解を伺いたいと思います。
  189. 古屋亨

    古屋国務大臣 ただいまの御質問にお答えいたします。  定数問題は選挙制度の根本にかかわる重要な問題であり、各党の消長にも直接かかわってくる問題であります。したがいまして、このような問題については、審議会の問題も含め、事柄の性質上まず各党間で十分論議を尽くし、合意を形成していただくことが現実的であり、民主的な方法であると考えておりまして、そのためには政府としてもできる限り尽力してまいります。  次に、府県に数を配分し、そしてミニの審議会をつくってやったらどうかという御意見であります。アメリカの下院の定数配分方式を参考にされた一つのお考えと思っておりますが、アメリカの州と我が国の都道府県とを同列に論ずることが適当であるかどうかという問題もあり、今後各党間において根本的是正について御検討をいただく中で十分論議していただきたいと思います。  最後に、選挙制度審議会委員につきましては、従来から公正な立場にある学識経験者等が任命されているものと承知をしております。仮に選挙制度審議会を再発足させることになった場合、御指摘のような司法関係者が任命されるかどうかはともかくとして、当然公正な立場の方によって構成さるべきものと考えております。
  190. 菅直人

    ○菅議員 ちょっと一つだけ念を入れたいのですが、これは大臣でなくても結構ですが、公職選挙法の中に自動改定規定を設けることが可能かどうか、その点についての法律的な見解を伺いたいと思います。(発言する者あり)
  191. 三原朝雄

    三原委員長 お静かに願います。
  192. 古屋亨

    古屋国務大臣 御質問の点は私は立法措置の問題と考えておりまして、国会においてそういうふうに御決定になることも一つ方法だと考えております。
  193. 森清

    ○森(清)議員 菅議員にお答え申し上げます。  その前に一つ、十二月二十四日に速報値が出るからというお話でございますが、この国会は十四日に終わるわけであります。二十四日には通常国会が召集されるわけでありますから、この国会で処理しようというのでありますから、十二月二十四日の速報値は使用できません。物理的に使用できませんので、五十五年国勢調査人口を使いたいと思います。  それから、ただいま抜本改正についての菅議員の非常に御研究になった、高い識見に基づく御提案がございました。けさほど来、各党からそういう意味の御提案的なものがございましたので、私は拝聴いたしております。したがって、今後抜本改正をするときは、各党が案を持ち寄るわけでありますから、そのような深い研究と高い識見に基づく案を持ち寄って、本当に国会の構成としてふさわしい選挙制度をつくる努力をしなければならないということを、今御質問を聞きながら私も心を新たにした次第でございます。
  194. 菅直人

    ○菅議員 いろいろ新たにしていただいても結構なのですけれども、あえてもう一度森議員にお聞きしたいのですけれども、自民党は大きな政党だとか責任政党だということを言われる。また、しきりに現実的な政治の場に自分たちは身を置いているのだと言われる。それであればあるほど、先ほど、今の返答の冒頭に言われましたが、今月の二十四日というのは、決して今から三年先の話を言っているわけじゃないのですね。きょうは十一日で、あと二週間、先ほど他の委員の方が言われておりましたけれども、実質的にはあと六日もすれば速報値の結果は明らかになるわけです。そういうところにあって、冒頭に私が質問したときに明確に答えていただけなかったのですが、憲法違反の状態を免れるところまで改正をしようというのが、私が知る限りでは与野党の間の議論でもあったと認識をしているわけです。たしか森議員もそういう席に席を置かれたと思うのです。その与野党の間でも、少なくとも憲法に違反をしている状態を解消するということの中での改正をしようというのが趣旨であって、ですから、さきの通常国会提出されたときにはそれはそれでちゃんと成り立ったものだと思うのです。しかし、十月一日に国勢調査が行われてもうあと六日後にそれが発表されるという、まさに現実的な政治の場に我我が席を置くときに、現実の社会に席を置くときに、だから二十四日は次の国会だから、この国会でやるのが趣旨だからということだけでその二十四日の速報値を無視した形で議論をしてみても、これは意味がないのじゃないですか。  この点について改めて、一番最初冒頭に申し上げた、自民党改正案で果たして違憲状態を免れることができるかどうかということをもう一回あわせてその点をお聞きしたいと思います。
  195. 森清

    ○森(清)議員 六月に会期が終わる通常国会に、我々の案も提案し、野党四党案も提案されて継続審査になりました。我々は政治の現実の場であの短期間にあの法案が通るとは思っておりません。継続審査になるであろう。継続審査になって、十月一日に国勢調査があり、その速報値が十二月の末に出るということはその当時十二分に予測しておりました。しかも、私の試算という形で配っておりますのは、十・十になるであろうということもその当時からちゃんと公表しておるわけであります。  しかし、そういう状態の中で我々合意いたしておりますのは、早急に是正をしなければならないからこの国会解決しよう、そうして、さらに速報値が十二月の二十四日か何日に出ればそれに基づいてさらに追加是正をしよう、こういう各党合意をしておるわけであります。したがって、それに従って行動しておるわけであります。  また、法律論として憲法違反になるかどうか。私は、これで是正をすれば憲法違反でなくなります。したがって、続いて今度は十二月二十四日に発表になったものに従ってどうなるかということはまた後の判断でございまして、憲法違反になるかどうかの判定は我々ができるものじゃございません。これは最高裁判所によって、その規定によって、あるいはそれによって選挙が行われたときに選挙訴訟が起こされて最終的に最高裁判所で決まることであります。我々は、そうならないように追加是正をしよう、こう言っておるわけでありますから、政治の場所において御判断される限り、我々政治家としては、この国会においてこれは解決する、そして、その原理原則を用いて、国勢調査の速報値が出れば引き続いて是正をしよう、これは私は真っ当な政治家としての態度であろう、こう思うのであります。
  196. 菅直人

    ○菅議員 相変わらず次の追加措置の問題とあわせてしか森さんは答えられないわけですね。六・大改正案そのものを今審議しているわけですよ。次の改正案というものはこの国会にはまだ出てきてないわけですよ。ですから、私が聞いているのは、あくまで自民党が今提案されている六・大改正案というものが今回の最高裁判決に照らして、まさに今日の時点でそれを通過させたら、最高裁判決趣旨からして違憲状態を免れることができるかどうか。先ほど来何度も他の委員の方も言われておりましたけれども、私たちの見解からすれば、まさにそれは選挙をやったときの話ですから、幾ら何でも今月の十四日に改正が行われたとして、二十四日までの間に選挙が行われるなんということは、これは物理的にあり得ないわけですから、それを考えれば、まさに現実的な判断としてそういうことはあり得ないわけですから、そうなれば、一向に憲法違反状態を解消したということにはならないではないかというのが論理的に来る結論なわけですよ。そのことを聞いているわけです。しかし、それについては森さんは一度として六・六改正案がどうだということについては答えてない。もう一度最後にぜひそれをお答えをいただきたいと思います。
  197. 森清

    ○森(清)議員 お答えいたします。  現在用いることができるのは五十五年国勢調査人口しかないのであります。十二月二十四日というのはずっと先なんです。この会期は十二月十四日に終わる。十二月十四日に終わる会期において、すべての法案は会期中に処理するのが国会原則であります。十二月十四日に終わる会期の中に、どうして十二月二十四日の速報値が使われるのでしょうか。したがって、我々はこれを使って改正をやる、そうして二十四日に速報値が出ればまた各党合意の上、追加是正をしよう、こう言っておるわけであります。
  198. 菅直人

    ○菅議員 最後に、この定数問題というのは、まさに我々立法の府に課された非常に大きな課題だと思います。しかし、その課題をまさに党利党略的に使わないで基本的に改正していくには、一つルールづくりが必要なんであると思うのです。そういう点で、今回の審議が何か解散権を確保しようという趣旨の方から実行しようとか、あるいはそれを抑えようとする方からやめようとかという議論は、私は極めておかしなことだと思っているわけです。そういう点では、まさに先ほど森さんが最後に言われたように、十二月二十四日はもう目の前ですから、それを待って次の通常国会冒頭に憲法違反にならない趣旨改正を行うべきだ、そのことを重ねて申し上げて、私の質問を終わります。
  199. 三原朝雄

    三原委員長 この際、暫時休憩いたします。     午後五時十六分休憩      ————◇—————     〔休憩後は会議を開くに至らなかった〕