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1985-12-11 第103回国会 衆議院 沖縄及び北方問題に関する特別委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十年十二月十一日(水曜日)     午後一時三十分開議 出席委員   委員長 青山  丘君    理事 國場 幸昌君 理事 仲村 正治君    理事 深谷 隆司君 理事 川崎 寛治君    理事 島田 琢郎君 理事 玉城 栄一君    理事 和田 一仁君       鈴木 宗男君    東家 嘉幸君       野中 広務君    佐藤 徳雄君       安井 吉典君    有島 重武君       吉井 光照君    瀬長亀次郎君  出席国務大臣         外 務 大 臣 安倍晋太郎君  出席政府委員         外務省北米局長 藤井 宏昭君         外務省欧亜局長 西山 健彦君         外務省経済協力         局長      藤田 公郎君         外務省条約局長 小和田 恒君         外務省国際連合         局長      中平  立君  委員外出席者         大蔵省主計局主         計官      浅見 敏彦君         中小企業庁計画         部金融課長   土居 征夫君         運輸省航空局管         制保安部管制課         長       松田 政雄君         特別委員会第一         調査室長    木村 俊之君     ――――――――――――― 十二月六日  沖縄県における米軍演習による小銃被弾事故に  関する陳情書  (第一二八号)  那覇空港における自衛隊機接触事故に関する陳  情書外六件  (第一二九号)  沖縄県の軍用地に関する陳情書  (第一三〇号)  北方領土返還に関する陳情書外一件  (第一三一号)  北方領土問題等解決促進に関する陳情書外一  件(第一三  二号)  北方領土返還を国際司法裁判所に提訴するため  の決議に関する陳情書  (第一三三号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  沖縄及び北方問題に関する件      ――――◇―――――
  2. 青山丘

    青山委員長 これより会議を開きます。  沖縄及び北方問題に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。鈴木宗男君。
  3. 鈴木宗男

    鈴木(宗)委員 安倍外務大臣にお尋ねしたいのですけれども、この七日で外務大臣連続在任記録をつくったという新聞記事を見て、私は一年生議員として、三年十日も続いておるということでもう羨望といいますか、すごいな、大したものだという感じを率直に今持っているわけであります。  外務大臣として世界を回られ、そして国際社会の中で我が国役割等々、いろいろな感じをお持ちかと思うのでありますけれども、二十年前、三十年前と比較して今どんな気持ちを持っておられるか、さらには今後どうやって日本外交なり国際社会役割を果たしていくか、お聞きしたいと思います。
  4. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 お話しのように、私も外務大臣になりまして三年をちょっと超えたところであります。その間に、外国にも三十四回出張いたしまして、多くの国際会議等にも列席いたしたわけでございますが、そうした経験を通じまして非常に感ずるのは、世界の中で日本の存在というのがますます重くなってきた、それは一面におきましては、日本発言力というものが大変強くなった、どこでも日本発言というものが大きいウエートを占めるようになってまいりました。同時にまた、日本に対する国際的な責任というものが反面大変強くなってきている、これが非常に強く求められておるということを痛感いたします。したがって、これからの日本はまさに世界の中の日本として、日本だけのことを考える、同時にまた世界のために日本がいかにその役割を果たしていくか、そうした国際的な責任を果たすことができるか、さらに世界の広い信頼を確保していくことがこれから日本外交を進めるにおいて非常に重要なことであると痛感いたします。  日本外交基本は、世界の平和と安定のために努力していくということでありますが、そうした面からも積極的な役割、これは経済面役割だけではなくて政治面における役割も同時に果たしていかなければならないと考えております。
  5. 鈴木宗男

    鈴木(宗)委員 大変前向きな話を聞いて、今感激をしておるのでありますけれども、私は、外務大臣だとか大蔵大臣文部大臣防衛庁長官というのは少なくとも三年から四年、長期にやって、そして外交でも、教育でも、防衛でもあるいは財政でも一貫性を持ってその責任を果たすべきだと考えております。年末には内閣改造が行われるのではないかという空気でありますけれども、大臣任命権者から留任のお話があったときはお受けになられますか、大臣のお気持ちを聞きたいと思います。
  6. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 まだ何も話もありませんし、それから内閣改造もいつあるのか、これは総理大臣の胸先三寸であろうと思っております。私も図らずも三年やってまいりまして、全力を挙げてまいりました。そういう中で、いろいろと外交も継続しておりますし、実りも出ておるわけです。例えば日ソ外相会談が十年ぶりに来年の一月に開かれる、これも世界情勢変化もありますが、これまで私自身も努力した一つ成果があらわれたんだろうと思います。この日ソ外相会談というのは日本の将来にとって極めて大事な会談になると思います。あるいはまたサミットも、ずっと引き続いて私も参加してきております。来年の五月のサミット、これまた日本にとりましては非常に重要な意味を持った会議になると思います。  そういう会議に当たりまして、外務大臣としての立場から言いますと、こうした手がけてきた問題を何とか一つ成果実りあるものにしていきたいという気持ちはありますけれども、しかし、私でなくても人材は幾らでもありますから、だれが外務大臣になられても、今お話しのように、こうした継続線上の立場でちゃんとやっていただけば日本外務大臣としての責任は果たされるのじゃないか、こういうふうに思っております。とにかくそうした下地をつくるということで、今全力を傾けているところです。
  7. 鈴木宗男

    鈴木(宗)委員 何か控え目な話でちょっと戸惑っておるのですけれども、大臣任命権者からお話があったときは今よりも突っ込んだ考え方で臨むということで受けとめてよろしいですか。
  8. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 まだあるかないかわからぬのに、早目から受けるとか受けないとか言うのはちょっと失礼な話でございますし、そのときにはやはり自分の責任というものを考えて対応したいと思います。
  9. 鈴木宗男

    鈴木(宗)委員 しつこく言ったのは、名外務大臣として今や世界安倍外務大臣でないかと我々は見ておるものですから、ある程度の希望といいますか願望を込めて今このような話をさせてもらったわけであります。  さて、先月、歴史的な米ソ首脳会談が行われました。私は、日ソ関係米ソ関係を軸にして、東西関係の大きな枠組みの中で動いていると考えておるのですが、先般の米ソ首脳会談米ソ間の対話がこれからまた本格的に展開されていくあるいは再開されていくと私なりに考えておるのですけれども、今後の米ソ関係の動向を大臣はどのようにお考えでしょうか。
  10. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 先般行われた米ソ首脳会談は、我々が会談の前に予想しておったときよりは非常に実りのあったものだと思います。特に、レーガン大統領ゴルバチョフ書記長は二人だけでさしで五時間も六時間も話し合ったということ、その中では広範な、二国間、国際情勢等について率直に話し合った、そして共同文書まで出たということは非常に意義が多かったと思うわけでございます。特に共同声明の中で、核戦争は勝者も敗者もない、やはりお互い核戦争はやめなければならぬ、核兵器を半分以下に抑えていこうじゃないか、こういう合意がなされたことは画期的なことじゃないかというふうに思っておるわけであります。同時にまた、二人の間の個人的な信頼関係といいますか、そうしたものが長い間の会談の中で生まれてきたのじゃないか。これは、今後両首脳相互訪問するということが約束されましたから、今後に続いていく非常に大きな意味を持つ、こういうふうに思うわけです。共同文書合意が、これから両首脳相互訪問あるいはまたジュネーブの一月から始まる軍備管理核軍縮交渉において何らか一つの前進がそういう中で生まれていく、そういう合意が確実に少しずつ前進していくということが米ソ両国だけでなく世界のために大変必要なことであろう、こういうふうに思います。  ただ問題は、SDIを初めとして地域問題等についてもあったと思いますが、両首脳基本的な意見の対立というものもその中にあったわけでありますし、こうした基本的な対立をこれからいかに狭めていくか、この対立を拡大しないようにいかに調和していくかということがこれからの大きな課題であろうと私は思うわけであります。全体的には両首脳会談というのはいい成果であるし、いい雰囲気の中で行われたのじゃないか。この結果として、世界状況が今までの緊張から緩和の方向へ少しずつ動いていく、そういう雰囲気を醸し出した意味は大きい、こういうふうに思います。
  11. 鈴木宗男

    鈴木(宗)委員 私は、外交は素人なものですから、ストレートな受けとめ方なんですけれども、ゴルバチョフ書記長になりまして、以前のソ連外交とは違うな、例えばチェルネンコさんだとかブレジネフさんですと、何となくかたいというか硬直したような感じを持っておったのですけれども、今度のゴルバチョフさんは何かオープンだ、開かれたソ連という空気マスコミ等も使って、あるいは奥さんを表に出すとか、こう打ち出してくるのですね。  そうすると、日本の国民の側からしますと、ソ連は非常に積極的だぞ、日本政府も大丈夫かな、もっともっと前向きで取り組めばいいのじゃないかという安易な期待感だとか、また希望なんというのも、あるいは世論なんかも起きてくるんじゃないかというふうに、私は逆の意味でもちょっと懸念をしておるのですけれども、新指導者ができまして、日本ソ連との外交で何か変わったことはありますでしょうか。
  12. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 おっしゃるように、今までのソ連指導者と違って、ゴルバチョフ書記長は外から見ておりましても非常に開放的で、非常に現代的といいますか、そして人を引きつけるそうした魅力を持っているように思いますし、それはゴルバチョフ書記長と接した人たちとか、マスコミ等もそういうことを報道しております。  確かに私はそうした面はあると思いますし、またゴルバチョフ書記長自体も、やはり今の状況の中でこれからソ連を背負って立つリーダーとして長い時間を持っているわけですから、何か今までのソ連リーダーとは変わった形でこれから世界にアピールしていきたい、こういう意欲も十分あるように思うのですが、しかしそうはいっても、ソ連自体が変わっているわけじゃありませんし、やはりゴルバチョフ書記長も、チェルネンコあるいはまたアンドロポフ、そういう体制の中で引き継がれたいわばソ連体制の申し子だ、こういうことも言えるわけでございます。したがって、何かソ連のそれでは基本的な世界戦略とか、基本的なソ連考え方というものが大きく変化をしたというふうにとることはちょっと早計じゃないだろうか。確かに私は、外交面では相当これから華々しいいろいろの動きが出てくると思いますけれども、そう本質的なものが変わったとも思えないので、その辺のことはやはり十分我々としても見ていかなきゃならぬ。  日ソ関係につきましても、確かに米ソ首脳会談を実現したというこの一つ雰囲気の中で、日ソ関係もやはりもっと前向きにとらえていく、日ソ改善を行おうというソ連期待というものは確かにいろいろの面で出ております。外務省のいろいろ接触した中でも、ソ連側のそうした積極的な意欲というものが出ております。それにこたえてといいますか、日本もまた日ソ関係改善したいという気持ちを持っておりますし、それにこたえて、今回両外相会談ということになったんだろう、私はこういうふうに思っておりまして、しかし、これは確かに米ソ首脳会談一つのいい雰囲気が出ておりますから、これが反映するような形で日ソ外相会談が行われることを期待するわけでございますが、しかし日ソ日ソ米ソ米ソでありまして、どの辺までこれが進んでいくか、期待としては相当の期待が出ていることは事実ですけれども、それでは日ソ関係が根本的に改善される、そういう道が俄然開かれるかということになりますと、この点についてはやはり外相会談を開いてみないとわからない、そういう期待は持っておるけれども、しかしいたずらに楽観してかかるわけにはいかない、こういうふうに思います。
  13. 鈴木宗男

    鈴木(宗)委員 今大臣ロン改善といいますか、ソ連期待しているのではないか、私は、来年一月十五日から十九日までシェワルナゼソ連外相が来日されるということなんかもその一つの方策じゃないかと思うのでありますけれども、これは八年ぶりですか、開かれるのが。これはもう画期的なことではないかと私は今から期待をしているわけですけれども、特に大臣にこの際お願いをしたいのは、シェワルナゼソ連外相との定期協議で、いわゆる懸案北方領土、この問題は思い切って提起をしてもらって、そして今まで八年間ブランクになっていたいろいろな問題を安倍大臣の力で提起をして、正面から取り組んでほしい、こう期待をしているのですけれども、このことについての大臣のお考えはどうですか。
  14. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 我が国対ソ外交基本は、何といっても領土問題を解決して平和条約締結する、これが我が国対ソ外交基本であります。動かすことのできない基本方針である、こういうふうに思います。歴代内閣もそういう基本方針を貫くために努力をしてまいりました。  一九七三年の田中・ブレジネフ会談では、あの共同宣言で未解決の問題、懸案を含めて平和条約締結交渉を始めよう、こういうことがうたわれたわけでございますが、しかし、残念ながら、その後の変化を見ますと、ソ連は、領土問題はないんだ、存在しないんだという態度に変わってきて今日に至ってきておるわけで、極めて残念なことでございまして、やはり日本としてはこの問題を避けて日ソ交渉ロン会談というものを行うわけにいかない。したがって、シェワルナゼ外相がお見えになるときは国際問題、二国間の問題、広範にわたって論議、協議をいたしますが、領土問題を含めた平和条約交渉問題等については、今お話しのように、正面から提起をしてまいりたい、こういうふうに思っております。
  15. 鈴木宗男

    鈴木(宗)委員 恐らくソ連指導者もあるいはシェワルナゼ外務大臣も、安倍外務大臣は次期の総理大臣に一番近い人だという認識で当たってくるのではないか。そうすると、やはり大臣発言力といいますか、インパクトも当然強いし、重いものになると思いますから、この問題については思い切ってやっていただきたいと思います。  定期外相協議が開催される、向こうから来てくれるということになりますと、今度は安倍大臣がまたモスクワに早急に行くべきではないか、それは一日も早くレールを敷くべきではないかというふうに考えて、さらにはその定期協議定着化を心から希望するものでありますけれども、外務大臣としてはいつごろモスクワを訪れる予定であるか、ちょっと聞かせていただきたいと思います。
  16. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 確かに定期協議としては八年目、それからソ連外相日本を訪問するのは十年目ですね。ですから、今度の定期協議というものは、まさに定期協議再開へ向かっての第一歩だ、新しいスタートだと私は思っておりますし、せっかく新しいスタートが切られるということになれば、これを定着させるということが極めて大事だろう、こういうふうに思います。すべての問題が解決しなくても、やはりこの定期協議定着していくことによって問題解決へ道もつながっていくわけですから、これは非常に大事だ。ですから私は、この外相会談の結果、私がといいますか、外務大臣が早急にソ連に行ける、そういうふうな状況が生まれることを期待しておりますし、そのために努力はしなければならぬ、こういうふうに考えております。
  17. 鈴木宗男

    鈴木(宗)委員 大臣としては見通しがつき次第、すぐにでも行きたいというふうに解釈をしてよろしいですか。
  18. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これはやはり定期協議ですから、そう、見えたからすぐ右から山へということでもないでしょうが、やはりこれは定着をさせなければならぬ、今おっしゃるとおりだと思いますね。そういう見地から、会談成果等を見ながら、この定期協議の道だけはきちっとやはりつけていく、それにはこちらから訪問するということが大事な道筋じゃないだろうか。いつ行くとか行かないとかは、今の段階ではちょっと予測することはできません。しかし、そういう道筋ははっきりつけておきたい、こういうふうに思います。
  19. 鈴木宗男

    鈴木(宗)委員 そこで、定期外相協議の際、私は地元の問題として特にお願いがあるのですけれども、それは北方地域の墓参の再開をぜひとも外務大臣から直接シェワルナゼ外務大臣お願いをしてほしいと思います。  私はたびたび根室に行きますと、もう相当旧島民の人は年寄りになっておりまして、先がないということで悲観をしております。それで、いつも言われることは、何とか先祖の墓を死ぬ前に一回お参りしたい、あるいは親兄弟の墓をどうしても一回見ておきたい、そうでないと死に切れない、こんな切々たる話を聞くのです。そんな話を聞くたびに私は胸の締めつけられる思いをするわけでありますけれども、この問題については特に大臣からシェワルナゼ外務大臣に強く希望していただきたいと思うのですが、いかがでしょうか。
  20. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 旧島民人たちが万斛の思いを込めて先祖の墓に参りたいという気持ちは、私もひしひしとわかります。私も、島民の皆さんに会って本当に胸が締めつけられるような思いがいたしておるわけでございます。残念ながら、一時この道が開かれておったのですが、日ソ関係も悪くなって、これが中絶してしまって今日に至っておるということでございます。しかし、久しぶり外相定期会談が開かれるわけですし、ソ連外相が見えるわけですから、やはりこの問題は外相との間で率直な話をして、これはむしろそうした四島問題、北方領土の問題ということだけでなくて、人道的な問題もやはりあると私は思いますね。ですから、そういうことも踏まえて何とか道をつけていかなければならない、墓参できるようなそういう道をつけていかなければならぬ、そういうふうに思っておりますし、誠意を持って、全力を挙げてソ連外相との間で話し合いをして、そして解決する方向全力を傾けてまいりたい、こういうふうに思います。
  21. 鈴木宗男

    鈴木(宗)委員 特にこの問題は、人道的見地からもくれぐれもよろしくお願いをしたいと思います。  それともう一つ、私の選挙区事情といいますか、北海道全体の問題ですけれども、日ソ漁業交渉の問題が出てくるのです。特にことしの場合一カ月もおくれまして、地域経済というのは今大変な打撃を受けて、そして自殺した人もいるという状況の中で、たびたび私は地元へ帰りますと、とにかく来年の日ソ漁業交渉だけは早期に妥結してくれ、相手のあることだからわかるけれども、とにかく早く決着をしてほしいということを今から言われておるわけなんです。安倍大臣農林大臣経験されておりますから、この問題ももう既に先刻御承知のことでありますけれども、外務省としても精いっぱい水産庁あるいは農林省を押し立てて早期妥結を来年はやってもらいたい。そのことをシェワルナゼ外務大臣にも強くまた大臣から言っていただきたいと思いますけれども、いかがでしょうか。
  22. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 日ソ漁業交渉が最近になってよく難航して、そしてそれが北海道の漁民の皆様にも非常に大きな打撃も与えておる。私も、農林大臣をやって日ソ漁業交渉をやった経験からしましても、これは極めて残念だと思っております。  大体日ソ漁業交渉というのは、日ソ間でいろいろの問題がありながらも、これは実務的に行っていくということでこれまでずっと解決してきておるわけです。したがって、漁業交渉というのは、長い歴史を持って、そしてそうした政治的な雰囲気というものを離れてこれまで決着を見てきたわけですから、そういう中でこの漁業問題も今後とも解決を図っていくべきではないかと思うわけであります。残念ながら、今時に新海洋法の時代を迎えて、ソ連態度というものも非常に強くなってきているという面もあります。しかし、日本日本なりに、長い間の歴史の上に立った既得権益といいますか、そういう長い実績というものがあるわけでして、そういうものと調和した形で本当は長期にわたる協定というのが必要だろうと思うわけです。先般もカメンツェフ漁業大臣も来て佐藤農水大臣とも話し合いをしたようですが、佐藤農水大臣の話を聞いてみましても、その交渉はなかなか厳しいものがあったということで、佐藤農水大臣からも私に、今度の日ソ外相会談では、ぜひこの漁業交渉を円満に進められるようなそういう一つ方向を打ち出してほしい、こういう要請もありました。今鈴木さんの話もありますし、私も、こうした日ソ漁業問題についても二国間の問題の中でシェワルナゼ外相とも率直にひとつ話をしてみたい、こういうように思います。
  23. 鈴木宗男

    鈴木(宗)委員 これは、本当に北洋漁業が今まさにのるか反るかの時期ですから、この点は特にお願いしたいと思います。  大臣、あともう一点。きょうの新聞を見ますと、文化協定大筋合意されたというような記事を私は読んだのですけれども、それは事実なんでしょうか。  といいますのは、体制が違うものですから、変な話、ソ連から日本に来ると自由に宣伝もしたり歩ける、ところが、いざ日本人が向こうに行くといろいろな規制や制約がある。これは、僕らはもう何回かソ連に行って痛切に感じていることなんですね。ですから、この点しっかりした枠組みなり歯どめをかけてもらわぬと、損するのは日本ではないかという気がするものですから、公にできる範囲でお答えをいただきたいと思います。
  24. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 大筋枠組みができたといいますか、相当交渉が進んだことは事実ですけれども、一番難しい点だけが実は残っておるということですね。だから、一番難しい点がわずかですが残っておる、ここで話し合いが今のところ難航しているわけですね。ですから、これで間違いなしに今度の日ソ外相会談の際に調印できる、こういう見通しを今言える立場にはないので、私はそういうことを期待しておりますけれども、一番難しい問題が残っていますから……。  そしてやはり難しい問題は、今おっしゃるように、相互主義といいますか、体制は違いますけれども、外交お互い相互主義でなければならぬ、その相互主義をどういう形で貫いていくかという点に一つの大きな問題点があるわけでございます。幸いにいたしまして米ソ文化協定締結をされたということもございますし、やはりそうした点等も参照しまして、そして、両国で譲歩できる範囲お互いに譲歩をして何とか妥協点を見出したい。一番難しい問題点だけが残っておるということですから、これは今後一月の間に果たして完全に決着ができるかどうかということは、今ここではなかなかはっきり申せない状況です。
  25. 鈴木宗男

    鈴木(宗)委員 最後に、ちょっと大蔵省にお尋ねをしたいと思います。  いわゆる北方領土隣接地域振興基金というのが昭和五十八年からスタートしております。このときは五カ年で百億円を積むということで一応約束されておるのですけれども、現在まで三年たっても三十億、ことしの予算要求も十億だ、到底これは希望には遣いつかないわけですね。地元の人は頭から、五年間で百億円もらえるんだ、その金利は使えるんだということになっているのですね、解釈として。そうして政治家は何をやっているんだということで、我々が地元の代表としてはもろに受けるわけですよ。なぜ、北方領土の日まで決めておいて、国家的悲願だ、国民の悲願だと言っておきながらこんなことぐらいできないのか、大蔵省主計官、せっかくお見えですからちょっと答弁してください。
  26. 浅見敏彦

    ○浅見説明員 いわゆる北方基金に対する補助金につきましては、これまでにも本委員会におきまして鈴木宗男先生初め諸先生から御質疑がありまして、後藤田総務庁長官あるいは政府委員の方から御答弁がございました。この熱心な御質疑につきましては、私ども財政当局も十分に承知をしているわけでございます。  現在、六十一年度予算の編成作業中でございますが、厳しい概算要求基準のもとではありますけれども、総務庁におかれましては八億円という前年同額の要求をなさっているわけであります。先生御高承のように、私ども、一般歳出を前年度同額以下にするということで、一兆円を超える削減という非常に厳しい編成を今余儀なくされているわけでありますが、この八億円の御要求につきましては、先生の御指摘も十分念頭に置きまして、今後の予算編成過程を通じて十分御相談、検討させていただきたい、かように考えております。
  27. 鈴木宗男

    鈴木(宗)委員 何か主計官の答弁は政治家の答弁以上に名答弁で参ってしまうのですけれども、これは主計官、とにかく、例えば一律カット、わかりますよ、ただ、問題に応じてはつけてやっても、逆に国民が納得する、理解をする、喜ぶ、そういう予算もあるのですよ。しからばこの北方基金なんというのは、十億かあるいは二十億つけることによって大変喜んで、そうして領土返還運動もやろう、そういう意気込みにも燃えるし、また世論の高揚にもなるし、大変な喚起になるのですね。だからそういったものぐらい、僕は、一律で見るのではなく、この基金だけは別問題だという姿勢で、思想の問題として大蔵省には今後取り組んでもらいたいと思うのですけれども、いかがでしょう。
  28. 浅見敏彦

    ○浅見説明員 総理府担当の主計官といたしまして概算要求基準全体の問題についてお答えするのは適当ではないと思うわけではございますけれども、一義的には、厳しい基準の中で主務官庁におかれまして優先順位をつけ、そういった先生御指摘のようなめり張りをつけることは大変大切なことで、私どももそういった観点から編成作業に当たっておるわけであります。あと、どういったことを例外事項にするかというのは極めて大きな政治的な判断でございますので、私の立場から申し上げることは勘弁願いたいと存じます。
  29. 鈴木宗男

    鈴木(宗)委員 この問題につきましては、できたら大臣も閣議で大蔵大臣等に、これはもう別問題だと、ことしはどうにもならぬと思いますけれども、来年まだ一年残っておりますし、その後のことについてはこれからいろいろ検討していかなければならぬと思いますので、側面的に御支援いただきたいと思いますが、いかがでしょう。
  30. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これは私が政調会長のときに手がけたといいますか、そのときからスタートいたしました。私もそういう意味では非常に関心も持っておりますし、外務大臣としましてやはり北方領土返還、そのための島民人たち気持ちを安定させていくための努力として、こうした予算というものは厳しい財政の中ではあっても確保していかなければならぬ、こういうふうに思って、今お話しのように側面的にも協力をさせていただきたいと思います。
  31. 鈴木宗男

    鈴木(宗)委員 終わります。
  32. 青山丘

    青山委員長 川崎寛治君。
  33. 川崎寛治

    ○川崎委員 まず最初に、沖縄の問題をお尋ねしたいと思います。  これは質問通告してありますから当然お読みになっておると思いますが、沖縄県民の意識調査を総理府がやっております。この総理府の調査を見ますと、基地に対しては大変厳しい見方をしておるわけです。それで、外務大臣、このことをどうお感じになりますか。
  34. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 沖縄の基地に対する住民の皆さんの反応については我々も平素から承知をしておりますし、そして厳しい面も出ておることを理解もできるわけであります。我々は、基地の問題については日米安保条約という建前から沖縄の皆さんに御協力もしていただいておることに対して感謝をいたしておるわけでございますが、同時にまた、やはり住民の生活の安定とか、あるいはまた不安の解消等については政府としてできるだけの努力をしていかなければならない。そうした厳しい御批判に対しても、今後ともそうした気持ちを踏まえながら、この気持ちを解消するために政府としてできるだけ対応していかなければならぬ、こういうふうに思います。
  35. 川崎寛治

    ○川崎委員 それでは、女性と男性とどっちがこの基地に対して反対が強いですか。
  36. 藤井宏昭

    ○藤井(宏)政府委員 総理府の調査に基づきますと、かえって女性の方が、基地に対して危険であるという考え方が強いようにお見受けいたします。
  37. 川崎寛治

    ○川崎委員 私は通告してあるのですからね。そうすると、あなたは、安保条約は定着している、こう言っているわけですよ。これは前に仲村さんや國場さんが当委員会で質問しましたときも、日米安保条約は定着していると。だから私はこの県民の意識調査を通告して、そして安保条約担当の外務大臣としてのあなたの気持ちを率直に聞きたかったのです。しかし、それをそういうふうに簡単に考えてもらうのは困ると思います。これから日本のトップを目指す方としては、その点はぜひ痛みがわかるということでお願いをしたい、こういうふうに思います。  そうしますと、日米安保が定着をしておると言われますけれども、今も北米局長の方から、女性は特に反対が強い、五三・九%という基地反対の強い意向があるわけです。といたしますならば、最も肝心の沖縄に、つまり日米の安保条約に基づく基地という面からいうならば沖縄基地が最大なんですね。その最大の沖縄においては定着をしていないと言わざるを得ない。いかがですか。
  38. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 確かに基地に対する不安等は、いろいろの事件等も起こりましたし、そうした面から沖縄人たちの中にあることは事実だろうと思います。特に基地が非常に広大であるだけにそういう面が強いことは、ほかの地域とはまた違うと思います。しかし私は、日米安保ということになりますと、全体的に見てこれは定着をしているのではないか、日本全体の国民の意識の中で日本の平和と安全を守っていく日米安保に対する信頼性というものは、これは世論調査等においてもそうですが、はっきりと支持という面が強くなってきている、定着してきている、こういうふうに思います。
  39. 川崎寛治

    ○川崎委員 それはそうじゃないのですよ。確かに本土側は、そういうふうなあなたの言い方を通したいという気持ちがあることはわかりますよ。しかし、太平洋のキーストーンと言われておるところが、フィリピンの基地やらANZUSやらそういうものが揺らいできているわけです。そうしますと、そういう中で沖縄の基地はより機能的には強化されている。そういう中であなたが日米安保条約は定着しているという考え方沖縄を見るということについては、私はこれは大変問題があると思うのです。これは一つ一つやりますと、きょうは限られた時間ですからできませんけれども。  次に、いわゆる思いやり予算。これは一つ一つ聞いておりますと時間がないから、私の方から申し上げたいと思います。  思いやり予算は、基地提供施設の整備という面からいいますと、五十四年が二十億八千七百万、五十五年に二十六億九千九百万、五十六年が七十四億七千三百万、そして五十七年には、本土百六十四億九千八百万に対して沖縄百八十六億八千三百万、そして五十八年には、本土二百三十九億五千万に対して沖縄は百九十九億、五十九年が二百五十八億と二百五十五億、そして六十年が三百三十四億と二百七十九億、つまり沖縄に関して言えば物すごい伸びをしているわけです。そしてさらに駐留軍特措法、六十二年五月十五日で切れますが、契約拒否の地主に対する強制収用をこれまでの五年を二十年にしたいということを沖縄の県の土地収用委員会に要請をしている。ということになりますと、佐藤総理が復帰のときに一生懸命やられた、私も佐藤総理とは随分やってまいりましたが、その復帰のときには基地の縮小という方向を出してきたわけですが、小さな一つ一つの、どれだけが返還されたということは、私はこの際問いません。じゃなくて、こうした今の思いやり予算なり駐留軍の特措法の再改正というふうな方向で基地の強化それから恒久化ということが進められつつあると思いますが、その点について外務大臣はいかがお考えですか。
  40. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 日米間は御承知のように、今日本の平和と安全を守るための日米安保条約というのが存在をしておるわけでございます。我々は、この日米安保条約を効果的に運用していくことが日本の平和のためには欠くことができない。そして日本としましては、日本が有事の際にはアメリカの支援を仰ぐということに対しまして日本は基地を提供するという建前になっておるわけです。ですから、そうした中でのお互いの権利義務というものが出ておるわけでございますし、これはやはり日本としましても誠実に守っていかなければならぬ。特に思いやり予算の際を思い浮かべますと、当時の甘高等の状況等もありまして、米軍の基地関係の予算等が非常に不足をしていた。そういう点に対してやはり安保条約の効果的運用という立場からそうした予算ということにつながっていったのだろう、こういうふうに思っておりますし、そうした予算そのものが日本の基地をさらに拡大をしていく、強化していくというものにストレートに結びついておるわけじゃなくて、日米安保条約を守っていく、そういう中で米軍駐留の責任といいますか、義務をやはり十分果たしていただく、こういうために行ったものである、私はこういうふうに理解をいたしております。
  41. 川崎寛治

    ○川崎委員 沖縄について最後に、フィリピンが政治不安定ということについてはもう異存はないと思いますね。ニュージーランド非核法、こういうことになりますと、つまりアメリカの太平洋戦略というのは、カムラン湾の問題あるいはオホーツク海の方のソ連の原潜の問題等それぞれ考えますと、やはり沖縄の基地機能強化ということを私は大変心配するわけです。今あなたは条約の義務だ、こういうことで言われておるわけでありますけれども、そのフィリピンなりANZUSなりのほころびといいますか、そういうものなりを通して沖縄の基地機能強化という方向に行かしてはならない、私はこう思います。いかがですか。
  42. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これはやはり国際情勢の変化というのも、安保条約を確実に運営していく上からは重要な要素になろうと私は思います。そういう中で米軍のプレゼンスというものをある意味においては高めていく、そういうこともあり得ると思うわけでございまして、しかしそれが、今おっしゃるように、ただ単に基地をいたずらに強化するということではありませんで、あくまでも安保条約の運用という中での基地の機能というものの充実であろう、こういうふうに考えるわけであります。
  43. 川崎寛治

    ○川崎委員 安保条約の建前からすればアメリカのプレゼンスというのは強めざるを得ないこともあるんだということは、今私が沖縄の基地の機能強化ということをお尋ねしたわけですから、そのことについてあなたはそういうふうに言われたというふうに私は理解いたしますが、いいですね刀  次は、SAARC、南アジア地域協力連合というのが発足いたしました。私は大変結構なことだと思います。非常に人口が多いわけですし、しかも一方、その地域というのは非常に貧困に悩んでおるわけでありますし、大変厳しい状況にあろうかと思います。ASEANと日本というのは割にいろいろ関係が進んできておりますけれども、このSAARCについてはアジアの新時代だと思うのです。特に先般衆議院の本会議場で演説をされたラジブ・ガンジー首相の非同盟主義、参議院の議長さんはそれを大変高く評価をしたごあいさつもしてわられましたけれども、そのラジブ・ガンジー首相の姿勢というのが、人口大国でありますだけに、この発足については大きな役割を果たされたんじゃないかと思うのです。ただ地域連合という場合に、地域連合と日本、こういう場合には、つまり二国間、二国間、ともするとこういきますね。しかし、地域連合ということになりますと、その地域連合と日本というものがどういう関係を持っていくか。私は積極的に経済協力に応ずべきだという考え方を持っておるわけですから、そのお考えを伺いたいと思います。
  44. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 今回南アジアの首脳が集まって会談をされたということは極めて高い評価をすべきじゃないかと思っております。南アジアの中でも、例えばパキスタンとインド等のこれまでの対立等を考えますと、ああした国々の首脳が集まったということはそれなりに大きな意義がある。そしてこのSAARCというものがこれからさらに発展していろいろな新しい連合の形が生まれてくることを期待しております。ASEANというふうなところまでいくには相当まだ道のりはあると私は思いますけれども、日本はASEANとの間でも御承知のように十分な関係といいますか安定した関係を今維持してきておりますし、ASEANという存在が、またその地域の発展あるいはまた平和に非常に大きな貢献をしておることも事実であります。そういう意味でSAARCというものがさらにASEAN的な色彩を強めていくということならば、それはそれなりに日本としてもそれに十分対応する、ASEANに対応していくように対応していく、そうして協力を進めていくということは、私はこれからの課題になってくるだろうと思うし、そういう面は我々としても積極的に取り組んでいかなければならない点であろう、こういうふうに思います。
  45. 川崎寛治

    ○川崎委員 それでは次に、日ソ問題についてお尋ねをしたいと思います。  あなたはきのう記者クラブで日ソ問題をお話しになっておられるし、それから中曽根首相も先般記者クラブでお話しになっておられるわけですね。そこで、これは総理に聞かなければいかぬことでありますけれども、日ソ関係の包括的な改善ということはどういうことなんでしょう。
  46. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 私はまだ総理に聞いておりませんけれども、しかし、総理も含めて日ソ問題に対処する政府の対応といいますかそういう道は別に二途に分かれておるわけではない。これは一本道であろうと思うわけであります。そしてその基本はあくまでも領土問題を解決して平和条約締結する、そういうことによって真の日ソ改善が生まれてくるというのが日本基本的な認識で、これは総理大臣も私も変わってない、こういうふうに思っております。  ただ、総理大臣の場合はまさに首脳同士ということになるわけですから、包括的に話をしていくことは米ソ首脳会談においても行われておるわけですから、そういう意味では包括的な話し合いということはあり得ると思うわけでございます。しかし、包括的というのは並列的といいますかそういう問題じゃない、こういうふうに思います。重点はやはり重点としてその中にあるわけですし、そういう中で日ソ関係改善していこう、こういうことであろうと思っております。ですから何かよくいろいろな人が意見を言ってくるわけですが、今川崎さんのおっしゃいましたように、総理大臣が包括的と言うと、何か出口論じゃないか、それで我々が言っているのは入り口論じゃないか、入り口論と出口論の差があるのじゃないか、こういうことを言われますが、そういう差はないというふうに私は考えます。
  47. 川崎寛治

    ○川崎委員 今、首脳同士が、こう言われましたね、だから包括と。私は入り口とか出口の議論はしません。そうしますと、今首脳同士と言われた。来年その首脳同士というのがあり得るといってとですか。
  48. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 私は、まず日ソ外相会談がどういうふうに展開されていくかというのが根幹だと思います。それがスタートだと思います。その外相会談成果によっては、次の段階としては日本外務大臣ソ連を訪問するということになってくるわけでございますが、しかし事態の推移によってはゴルバチョフ書記長日本訪問というものもあり得るし、また中曽根総理のソ連訪問というのもあり得る、こういうふうに私は思っております。ゴルバチョフ書記長の場合もフランスを訪問し、あるいはイタリアを訪問するという非常に幅広い多彩な外交を展開しておりますし、今までのソ連とまた違った行き方をしておる面もあるわけですから、非常に重大な関心を持っておる日本にも来られる可能性は十分あるのじゃないかと私は思うわけでございます。そういう意味で、両首脳がある意味においては相互訪問するという道が開かれることが日ソの関係改善のためには非常に大きな意味を持つことになっていくのじゃないか、そういう方向というものを何とか外相会談で培っていきたいというふうに私は思っておるわけです。
  49. 川崎寛治

    ○川崎委員 私は長期のあれでいえばそのとおりだと思うのです。ただしかし、中曽根総理についていえば来年の十月という期限があるわけですよね。そうしますと、その中で総理が訪ソする、そしてゴルバチョフさんがやってくる、そういうことが来年の十月までの間にあり得るということですか。
  50. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これは展開次第では全然否定はできないと私は思いますね。やはり日ソ外相会談というのがそういう意味では一つのキーじゃないだろうか、こういうふうに考えています。
  51. 川崎寛治

    ○川崎委員 それでは、展開次第ということになりますと、あなたがきのう、領土問題を解決して日ソ平和条約を結ぶことが日ソ関係の真の友好関係を樹立することになると、私もそのとおりだと思います。これはいろいろな順序やら何やら進め方もあると思いますが、それをそういうふうに理解をいたしますと、先ほど鈴木君の質問にもいろいろお答えになってもおったわけでありますけれども、日ソ平和条約ということを考えますときに、ではひとつお尋ねしておきますが、一九七七年園田外相の訪ソの際に日本側かる平和条約の素案を示しましたね。向こうから協力友好条約の素案を出した。これは今どういうことになっているのですか。金庫にしまったままで、あるいはもう消えてなくなったのか、どういうことになっているのですか。
  52. 西山健彦

    ○西山政府委員 一九七八年でございますけれども、先生がただいま御指摘のとおりの経緯がございまして、おっしゃるとおり金庫の中にしまってあるという状態のまま今日に至っているわけでございます。
  53. 川崎寛治

    ○川崎委員 そうしますと、それは全然テーブルに乗ってないというふうに、つまりテーブルに広げるものではないというふうに理解してよろしいのですか。
  54. 西山健彦

    ○西山政府委員 先ほども大臣から御答弁がございましたように、ともかくこの際新しい、いわゆるフレッシュスタートという米ソの関係のその枠内で私どももソ連との間の関係を考えていきたいと思っておりますので、今後の展開によってそういう問題も含めて考えてまいりたいというふうに思っております。
  55. 川崎寛治

    ○川崎委員 その場合に領土問題を解決してと、こうなりますね。これは解決してというのがなかなか難しい。これは解釈も難しいわけですし、やり方も難しいわけですよね。そういたしますと、先ほど外務大臣のお答えは、田中・ブレジネフ会談における「未解決の諸問題」ということを言われておるわけですね。やはりもう一つさかのぼるべきじゃないか。さかのぼるべきだということは、日ソ共同宣言、そして松本・グロムイコ書簡、やはりそこをもう一遍見詰め直さなければいけないのじゃないか、こう思うのです。つまり、あの共同声明における戦後の「未解決の諸問題」ということは、私も直前にソ連邦箱戒五十周年に呼ばれていって、そのときに同じ文句を当時のブレジネフの演説で問いているわけです。だから、それはもうそのまま田中・ブルジネフ会談に出てきているわけなのですけれども、ここにこだわって解釈をやるということは、要するに言い合いになると私は思うのですね。そうしますと、その証拠としてあるものは何かといえば、日ソ共同宣言と松本・グロムイコ書簡だ、こう思います。ともに有効だと思いますね。そうしますと、それをどう評価されるかを伺いたいと思います。
  56. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 まさに松本・グロムイコ書簡にしても日ソ共同宣言にいたしましても、これは日ソ間で合意した公式な外交文書でありますし、あるいはまた、田中・ブレジネフ会談共同声明もまさにそうであろうと思います。我々はやはりそうした日ソ間のこれまでの戦後の歴史の中で両国が確実に約束し合ったものを基本にして話を進めていくべきではないだろうか、こういうふうに思います。おっしゃるとおりだと思います。
  57. 川崎寛治

    ○川崎委員 ただ、田中・ブレジネフ共同声明は両方で解釈をいろいろやっておるわけですよ。しかも、領土は入っていないのですよ。ただ「未解決の諸問題」、こうなっておるわけです。  私は久しぶりに松本俊一さんの「モスクワにかける虹」を、昔いただいて読んだことがあって、思い出して開いてみたのですよ。鳩山、河野、松本という人たちは本当に命がけでやったな、しかも与党内の少数支持勢力の中でやったのですからなかなか大変だった、こう思います。  ここでは、松本さんからグロムイコにあてた書簡、グロムイコ第一外務次官から松本さんにあてた書簡という中で、つまり「これに関連して日本国政府は、領土問題を含む平和条約締結に関する交渉は、両国間の正常な外交関係の再開後も継続せられるものと了解するものであります。」という松本書簡に対して、グロムイコが、云々と前文を全部入れているわけです。そして「ソ連邦政府は、上記の日本国政府の見解を了承し、両国間の正常な外交関係が再開せられた後、領土問題をも含む平和条約締結に関する交渉を継続することに同意することを言明します。 本次官は、以上を申し進めるに際し、閣下に向って敬意を表します。」こういうふうになっているわけですね。そうしますと、田中・ブレジネフ共同声明共同声明、こういうことを言っているけれども、これは私は、外交関係、つまり証拠書類というものをお互いに出し合ってやるという面からいくと非常に弱いと当時から思っておったのです、あそこはもう必死になって解釈したわけですからね。そうしますと、今も日本とソビエトの間には平和条約がない。これは聞いておったら時間がありませんから聞きませんが、これは交戦国では恐らくソ連しかないのじゃないかと思うのです。そうしますと、今の関係というのは共同宣言が規定をしているわけです。そして、これに松木・グロムイコ書簡という公式の文書があるわけですね。つまり、ここを土台にして言っているわけです。そこをやらなければ進まぬ、私はこう思うのです。そういう意味で、あいまいなことではなしにもう少し踏み込んだ外務大臣の――これは時間がありませんし、もう少し質問する項目もありますので、私はいずれまた機会を得てやりますが、そこに出発点を置き直すべきじゃないか、こう思うのですが、いかがですか。
  58. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 日本政府の見解もまさにそこにある。これもやはり今おっしゃったことが原点であろうと思います。そして、共同宣言に移っていくわけです。最近の、七三年の田中・ブレジネフ会談については、確かに共同声明ではありませんけれども、私の聞いている範囲では、口頭了解として、田中さんが領土問題を含んでいるのですね、ブレジネフさんがそうですと答えたというその日頭了解的なものは存在しております。確かに文書としてはっきり出ておりませんが、それは最高の首脳お互いの確認事項だと我々は承知しております。しかし、おっしゃるように、文書としてはやはり共同宣言が出された当時の日ソ間の合意というものが原点であることは間違いない、私もそういうふうに理解いたします。
  59. 川崎寛治

    ○川崎委員 あといろいろな解釈の仕方、領土問題の解釈の仕方、いるい片ありますけれども、これはきょうは問いません。  そこを一つの起点にしながら、米ソ首脳会談一つ動き出した、国民の皆さんの評価の中にはなかなか厳しい評価もある。新聞の世論調査を見ますと厳しい評価もあるようですが、私は一歩を動き出したというふうに見たいと思うのです。それから中ソ、これはもう外相定期協議に入りつつあるわけですね。そうすると、中、米というふうになりますと、世界全体のそういう緊張緩和、軍縮という時代に時代全体を持っていくためには日ソの関係というのは大変大きいと私は思います。  そうしますと、その中で一つ厄介な問題になりますのはSDIだと思いますね。特に中曽根外交というのは日米同盟、西側の一員、こういうことで来ておりますから、このSDIというのは来年五月の東京サミットの前にいろいろな決着を迫られることになるのかどうかわかりませんが、しかし私は、SDIの問題に踏み込んじゃいけない、これはもうイギリスとは違う、こう思います。日本の置かれている立場、アジア全体からしますと。そして朝鮮半島との関係あるいはASKANなりそういうものからしますと、今のSAARCなりそういういろいろなものからいたしますと、やはり日本の行動は非常に大きいと思うのです。そうしますと、SDIについてはあくまでも慎重な対処をすべきである、こう私は題いますが、そういうものを踏まえながら、つまりSDIそのものをどうこうという評価の上ではなくて、今の全体的な動きの中でSDIに対しては慎重にやれということを私は申し上げたいのですが、いかがですか。
  60. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 日ソ外相会談は、今お話しのように非常に世界が動いている中で、単なる二国間の改善ということだけではなくて、やはり極東情勢をにらみ、世界情勢をにらんでこれを進めていかなければならぬ、またそういう中での一つの位置づけというものがある、こういうふうに私も認識をいたして取り組んでまいりたいと思います。  SDIにつきましては、今ちょうどまだ日本自体としていろいろと調査団も出し、調査団も受け入れて研究をしておりまして、まだ結論を出すその機は熟してない、十分そういう状況にはない、こういうふうに思っております。これは慎重に検討して日本の独自の立場で自主的に方向を出さなければならぬ、こういうふうに考えます。
  61. 川崎寛治

    ○川崎委員 きのうの参議院外務委員会で、海外災害への自衛隊派遣のことを国会も政府も検討してほしい、こういうことを言われましたが、自衛隊派遣という問題になりますと、これは災害に限ってということにならぬわけですね。そしてさらには、民間航空機で行けば高くつくから自衛隊機を飛ばせとか、あるいは護衛艦で行けとか、部隊をとか、そんなことにまでなりますと、これはやはり大変な問題なんですよ。だからこの点は、まあきょうの新聞はいろいろな書き方がございますけれども、自衛隊派遣ということは、五十五年に外務省が安保政策の中で国連の平和維持活動のために自衛官派遣という方針を、報告書をまとめて発表したことがあるんですね。つまり当時は緊張激化の時代ですよ。自衛力を強化せにゃいかぬ。そして自衛官の派遣、こういうものが出てきておったわけですが、そういうものとやはりダブってくるんですね。だから私は、この自衛隊の派遣という問題は避けるべきだ。そうじゃなくて、今度のメキシコやコロンビア、そういうものを見ますときには、やはり日本は早急に対処するという必要があろうかと思います。ですから、自衛隊派遣ということについて外務大臣は“なお来年度の予算の中で検討を進めるおつもりなのか、そういうことを防衛庁なりと話し合っているのかどうか。それとも、災害に対する自衛隊派遣ということについて、医師や技術者ああいは消防庁のレスキュー部隊などというものなのか。その辺を少し整理をしておきたい、こういうふうに思います。いかがですか。
  62. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これはただ研究課題として、政府としても研究はしなければならぬし、国会においても研究していただきたい問題だということで答弁をしたわけでございまして、それでは、今自衛隊派遣について政府の中で協議をして、これを来年度予算で組み込むとかそういう状況にはありません。防衛庁とも相談しているわけではございませんし、今そういう事態でもない。これは自衛隊法の改正等も伴う問題だと思うわけですから、そう簡単に結論が出せるわけではありませんが、私が研究をしてもらいたいと言ったのは、お話のあったようなメキシコの災害あるいはコロンビアの災害、いつああした災害が世界各地で起こるかもわからない。そして日本はメキシコに対しても世界各国に比して非常に強力な援助をしております。コロンビアに対してもそうです。私もその中の責任者の一人として行いながら私自身感じておることは、やはり援助というものは一つのタイミングがありまして、災害が起こってすぐ駆けつけて、医療あるいはまた災害復旧に対していろいろと華々しくやっている国が随分あります。そういうとこみを見ると、日本は量あるいは質としては膨大なものを出していをわけですけれども、アピールというものが少ないわけですね。そういうことを考えると、日本はこれだけのことをやりながら、何かもっと機敏にやっていけば相手の風民にももっと評価されるし、日本の国際的な役割も高く評価されるのだろう、そう思うこともあるわけです。  そういう面で、諸外国のそうした災害の援助に対しては、日本としても国際救助システムといいますか、国際救助隊的なものを用意しておって、何かそうした大災害が起こったときはそれをストレートに飛ばす、現地に派遣するということができればありがたいな、これはもう日本の国際的責任一つじゃないか、かねがねそういうふうにも思っておりまして、野党の皆さんから質問が出ましたので、これはひとつ真剣にやりましょうということで、実は今JICAを中心にしてやっておるわけでありまして、各省庁にまたがっているものですから、各省庁の意見を聞き征がらやっております。医療の方はある程度できておりますが、その他の面でまだまだ何も整っておりませんから、その辺を今研究をしているところです。そういう中で実は自衛隊も純粋に、全く平和的な、災害の派遣ということになるわけです。国内でも自衛隊の災害における役割は非常に大きいわけでございますし、全く非軍事的、純平和的なそうした自衛隊の役割というものを世界的にも日本としても研究して、結論は、日本の法制、日本の方針、いろいろあるでしょうからそういう中で出していかなければならぬと思いますが、そろそろ研究していいんじゃないか、こういうふうに思ったものですから、私の考えを述べたわけであります。
  63. 川崎寛治

    ○川崎委員 私は、今のは自衛隊を抜いたら結構です、賛成です。だから、消防庁なりなんなりというものがあるようですから、レスキュー部隊を大いにやればいいと思います。これはまた後ほど議論しましょう。  ただ、終わるに当たりまして、松本さんの「モスクワにかける虹」、外務大臣も当然お読みになっていると思いますが、これは外務省の偉い方を前にして大変恐縮ですが、松本さんが最後の「むすび」のところでこう言っているのです。河野さんのことを大変高く評価しているわけです。河野さんは、外交こそ素人であったけれども、内政で鍛えた腕前は、相手がブルガーニンであろうと、フルシチョフであろうと、またイシコフであろうと、憾するところなく日本の主張を述べて、なんとか、これを先方にのませるだけの手腕を示したことは、全く感嘆のほかないのである。この点は、これからが大事なんです。この点は、従来の霞ケ関の伝統を踏む外交官が、ともすれば相手に呑まれて譲歩するか、あるいはむやみに強いことばかりいって交渉を破局に導くか、つまり人間同士の交渉について修練や胆力の足りないうらみがあったのに比べると、天性の外交家ともいうべき概があった。こういうふうに言っておられますから、これからの日ソ外交はまさにこれだと思うのです。これは非常に難しい、相手が大変な超大国であるだけに、ひとつこのことをよく踏まえてやっていただきますことをお願いして終わります。どうもありがとうございました。
  64. 青山丘

    青山委員長 玉城栄一君。
  65. 玉城栄一

    ○玉城委員 来月、日ソ外相会談が行われるわけでありますが、双方で話し合われる主要なテーマについては、当然大臣自身もいろいろと腹づもりもしておられると思うわけであります。  その一つに、従来ソ連は、我が国周辺、そして沖縄に米軍の核兵器が存在しているという認識、そういう主張をしておるわけですね。それが、いわゆるソ連の中距離弾道弾SS20の極東配備の理由の一つなんだ、そういうことを言っているわけでありますけれども、これは我が国にとっても非常に脅威な話でありますので、やはり日ソ外相会談においてそういう点についてもお話し合いされるのかどうか、いかがでしょう。
  66. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 いずれにしても、国際問題、二国間の問題について広範な話し合いをしてまいりたいと思います。そういう中で、日本日本立場、これは安全保障の問題等も含めた日本立場も述べなければならぬと思いますし、ソ連ソ連立場もはっきりされると思います。そういう中で、もし今言ったような問題等が出てくれば、これらについてもやはり日本の姿勢というものを明快にしておく必要がある、こういうふうに思っております。  私も、実はグロムイコ外相と会ったときに、沖縄に核があるのではないかという指摘を受けまして、びっくりいたしまして、とんでもない話だということではっきり否定をすると同時に、ソ連の極東における軍事力の増強等にも触れたわけでございます。そういう認識では困ると実は思っておりますが、しかし、ソ連側がどういうふうに考えておられるのか、これはそういうお話も聞き、日本日本立場を明快にしていく、そういう話し合いをいろいろと率直にするということが大事であろう、こういうふうに思います。
  67. 玉城栄一

    ○玉城委員 結局沖縄に核があるかないか、向こうはあるんだという前提でSS20を配備している。それが誤解であるならば、それは誤解なんだということを、せっかくの日ソ外相会談ですから、そのために脅威を受けていることも事実ですから、やはり我が国の方からこれはきちっとはっきりさせた方がいいのではないかと思いますが、いかがでしょうか。
  68. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 今申し上げましたように、日本の政策については、はっきり説明をする機会もあろうと思います。また、ソ連からもそれについての説明といいますか、発言もあろうと思います。そういう中で、もしソ連側から今おっしゃるような指摘があれば、これは日本としてもはっきり、そういうことはあり得ないことであるということを十分説明をしなければならない、こういうふうに思います。
  69. 玉城栄一

    ○玉城委員 向こうからのそういう話がなければ別に話は持ち出さない、出たら話をする、こういうふうに理解しておけばいいわけですね。
  70. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 沖縄に今核があるとかないとかという問題、ソ連に対して、核はありませんよとかそういうことを何も日本から先に言う必要はない。ないことはわかり切っているわけですから、そういうものをこちらから指摘する必要はない。ただ、非核三原則とか、そうした日本の防衛の基本というものについては、私は、説明する時間があれば十分説明をしたい、こういうふうに思います。
  71. 玉城栄一

    ○玉城委員 向こうはそういう誤解に基づいてSS20を配備しているんだということであれば、これはきちっとしておかないと、こちら側が言わないということは、ある意味ではそういう存在を暗に認めていることにもなりかねないわけですね。ですから、それがSS20を配備しているという理由の一つなんだということになりますと、そんなことは絶対にない、我が国には核なんて配備されていないということは積極的におっしゃっていただかないと、特に沖縄なんということを指定して向こうは再三言っているわけですから、ぜひこちらの方から積極的におっしゃっていただきたいと思いますが……。
  72. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これは、例えば日本の非核三原則あるいはまた専守防衛、そうした日本の防衛の基本、安全保障の基本政策を説明すればそれで十分にして事足りる、こういうふうに思います。そういう際に、あなたは非核三原則と言っているけれども沖縄に核があるんじゃないかと言われれば、これは話は別ですけれども、非核三原則という日本基本政策を説明すればそれでもう十分であろう、こういうふうに思います。
  73. 玉城栄一

    ○玉城委員 そこで、北方領土の問題ですけれども、ソ連側はどんどん既成事実を積み上げているという感じがするわけです。  例えば、現在ソ連によって新型の漁業コンビナートが次々と建設され、そこで働く労働者一万二千人、家族や地域社会のサービス関係者などを含めると二万ないし三万人もの人が暮らしていると言われているわけであります。さらに、これらの者のためのアパートが建ち並び、ソ連本土からのカラーテレビも受信できるようになって、ソ連領土として経済建設が着々と進められていると伝えられているわけであります。  外務省としては、こういう北方領土における実態についてはどの程度掌握していらっしゃるのか、伺いたいと思います。
  74. 西山健彦

    ○西山政府委員 北方領土におきますソ連の、民間の人を含めてどういうふうな人がいて、どういう活動をしているか、これは公式な発表はございませんし、我々も知るすべがないわけでございますけれども、ただいま先生が御指摘になりましたような事実は、ソ連新聞報道等を通じまして我々も存じております。  ただいまの御指摘のように、例えばことしの二月八日付のソビエツカヤ・ロシアのルポ記事などがございまして、そこでは、例えば色丹にはソ連でも有数の規模を誇る魚の加工コンビナート、オストロブノイがある、ここでは年に一億もの缶詰を生産しているというような記事がございますし、そのほか、国後、択捉、いずれにも缶詰工場のようなものができている、そういうような事実は承知しております。     〔委員長退席、仲村委員長代理着席〕
  75. 玉城栄一

    ○玉城委員 ですから、大臣、今我が国の固有の領土である北方領土にこういう恒久的な、大規模な施設が建設されているということについて、今度の会談においてもやはりそういう点を我が方として指摘をして、こういうことは困るというふうな意思表示は当然されると思うのですが、いかがでしょうか。
  76. 西山健彦

    ○西山政府委員 先生も御承知のとおり、我が国といたしましては、北方領土そのものにつきまして、従来から機会あるごとにソ連に申し入れを行っているわけでございます。したがいまして、そもそも北方領土それ自身がソ連による不法占拠でございますので、それに対して行われている抗議は当然こういう事象に対する抗議も含んでいるものというふうに私どもは考えております。
  77. 玉城栄一

    ○玉城委員 ですから、そういう抗議の意思はよくわかりますが、私は、今度の外相会談でそういう点についても当然指摘すべきではないか、こういうことを申し上げているのです。
  78. 西山健彦

    ○西山政府委員 外相会談の進展の状況によりまして、そういうことも当然出てくるかと思います。その際には、先ほど申し上げましたような方針に従いまして、そういうことについても言及されることがあろうかと存じます。
  79. 玉城栄一

    ○玉城委員 これは、返還されたときにはそういう施設は我が方が買い取らなくちゃならないとか補償しなくちゃならないとか、いろいろ問題が出てくるわけですから、その点は、やはりこういう久方ぶり日ソ外相会談できちっと語は詰めておく必要があると思いますね。  それでは、大臣、この日ソ外相会談において朝鮮半島の情勢についても話し合われるということをおっしゃっておられるわけですが、朝鮮半島の平和と安全ということは我が国にとっても重大な関心のある問題ですから、どういうことをシェワルナゼ外相とお話し合いされるのか、その点を伺いたいと思います。
  80. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 朝鮮半島の情勢については意見の交換もしてみたい、こういうふうに思っております。  朝鮮半島の緊張緩和を進めるための南北対話、そして民族統一、そういう努力が続けられておるということを我々としては評価しております。そういう環境づくりのために日本としても協力を惜しまないという姿勢でありますし、そうした日本の姿勢、考え方というものは率直に述べたい。同時に、これは日本だけでできるものではありませんし、ソ連、アメリカあるいは中国、そういう国々がともに朝鮮半島の南北対話の推進あるいは民族統一に向かっての環境の醸成といったものをお互いに協力し合ってやっていくということ等についても意見の交換をしてみたい、こういうふうに思います。
  81. 玉城栄一

    ○玉城委員 南北統一環境づくりに努力をしようという話し合い、その一つとして、当然緊張緩和の一つの手がかりとして八八年ソウル・オリンピックに南北両朝鮮統一チームというものをつくってみたらどうかというような話し合いをされてみたらいかがでしょうか。
  82. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 そういういろいろな問題を時間が許せば話し合っていかなければならぬと思いますし、今お話しのような点も含めて、外相会談についての日本の対応をこれから十分練っていきたいと思います。もちろんソウルでこれから行われようとするオリンピックについての協力要請は、私は既に九月のシェワルナゼさんとの会談でも述べておるわけでございますし、そういう点でいろいろと話もしておりますから、そういう点を総合的に踏まえて、今おっしゃるような点等についても話し合う機会があればこれはする必要がある、こういうふうに思います。
  83. 玉城栄一

    ○玉城委員 いわゆる南北を統一したチームをつくって八八年のオリンピックに臨むということについても話し合いをしてみたい、こういうことですね。
  84. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これは国際オリンピック委員会等で既にいろいろと論議されておる、南北でも話し合いがされておるということでございますし、今ここで日本ソ連が立ち入ってどこまで話ができるかという問題はあると思います。しかし、とにかくオリンピックが国際的な成功裏に行われるように、平和の象徴としてのオリンピックが行われるようにお互いに協力していこうということについてはいろいろと意見の交換ができるのじゃないか、こういうふうに思います。
  85. 玉城栄一

    ○玉城委員 この問題で、シェワルナゼ外相が訪日するその前後に北朝鮮訪問、来るときですか、帰るときですか、それはどういうふうに受け取っていらっしゃるわけですか。
  86. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 まだソ連も発表しておりませんし、情報としてそういう可能性があるのじゃないかということを知っておるわけでございますが、それ以上のことは確たることを我々が知っておるわけではありません。
  87. 玉城栄一

    ○玉城委員 私も沖縄の問題について、先ほど川崎先生もちょっとおっしゃっておられたのですが、実は私たちもこの間、戦後四十年ということで「戦後世代の反戦意識調査」というのを二十から三十五歳約千名の人を対象にしてやったわけです。そのことについてちょっと大臣の御感想を伺っておきたい。  その調査結果の一つ日は、さっき申し上げた二十から三十五歳ですから、戦争体験を聞き知っているのは九五・七%、これは沖縄についてですから、ほとんど家族から聞いて戦争体験については受け継がれている。もう一つは、将来核戦争が起こる危険性は六割があると、調査結果から出ておるわけです。三番目には、防衛費はGNP一%を六割の若者が守るべきである。その理由として、軍事大国にならないため、平和憲法を守るため等々の理由です。四番員に、米国が進めているSDI、スターウオーズ計画に関しては、若者の五割近くが知っており、その中で日本がSDI研究に参加するのはよくないと答えでいるわけです。もう一つ、政府の反核・平和に向けての政策に対しては不十分である、手厳しく約六〇%が指摘しているわけです。  今申し上げましたことについて、大臣どういう御感想をお持ちでしょうか。     〔仲村委員長代理退席、委員長着席〕
  88. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 それぞれの調査の結果は、我々としても十分参考にして対応していかなければならぬ、こういうふうに思います。
  89. 玉城栄一

    ○玉城委員 特に最後に申し上げました政府の平和政策に対しては非常に不満を訴えているわけでありますので、どうかそういう若い方々から支持を受けられるように、そういう政策をぜひ強力に進めていただきたい、このことを要望いたします。  そこでもう一つ、先ほどもお話がありました日米安保条約により相当部分が沖縄に米軍基地があるわけですが、大臣、急激な円高・ドル安によりまして米軍人軍属、家族を含めて約五万くらいですが、購買力ががたっと落ちているわけです。そうすると、基地周辺のそういう関係業者は大変な打撃を受けているわけです。これはいい悪いは別としても、沖縄の場合は基地経済というものは県の一つの柱になっていることも否定できないわけです。ところがこういうように急激な円高・ドル安ということになりますと、そういう関係者は相当な打撃を受けているわけです。中小企業関係につきましては、後ほど中小企業庁の方から対策等を承るわけですが、これは外務省と関係ないのだということでは済まされない問題だと思うわけです。やはり安保条約の効果的あるいは円滑な運用ということ、地域住民の理解と協力ということを常々おっしゃっていることからしますと、こういう経済的な打撃を受けることによって協力も理解もなんということではないわけでありますので、大臣としてもこの点については何らかの対策を考える必要がある、こう思うわけでありますので、大臣の御所見をお伺いいたします。
  90. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 先ほどからいろいろとお話がありました。  まず、日米安保条約に基づく沖縄における米軍の存在は、我が国の平和と安全、ひいては極東の平和と安全に寄与しておりまして、政府としては沖縄県を含む我が国における米軍施設、区域の円滑かつ安定的な使用を確保することが日米安保条約の印内達成のために緊要であると考えております。したがって政府としては、沖縄県における米軍施設、区域の維持についての沖縄県民の御協力に感謝してきているところでございます。  沖縄経済の振興につきましては、沖縄開発庁が中心となってこれを進めてきております。今回の円高の影響につきましての実情把握等は関係省庁が進めていると承知をいたしておりますが、外務省としてもこれらの動きを注意深く見守っていかなければならぬ。いずれにしましても、外務省としては民生の安定、開発計画、現地の要望等と調和のとれた米軍施設、区域の存在を国指しておりまして、引き続き沖縄県民の理解と協力をお願い申し上げたい、こういうふうに思います。
  91. 玉城栄一

    ○玉城委員 それは大臣、基地をよく理解して、そのお話はよくわかるわけです。私が申し上げているのは、急激な円高・ドル安によって打撃を受けている、それについてここらは直接外務省とは関係ないと今おっしゃる趣旨からしまして、その点についてどうするのですか、どういうお考えをお持ちですかということを聞いているわけです。
  92. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これは今申し上げましたような趣旨から、外務省としても非常に重大な関心も持っております。そして政府全体としては、特に沖縄に対しては沖縄開発庁を中心といたしまして、これらの円高に伴う打撃もいろいろとあるだろうと思います。それに対する対策等もいろいろと今研究をされておると思いますし、外務省もそういう中で地域の安定のためにそれなりの努力をしていかなければならぬ、こういうふうに思っております。
  93. 玉城栄一

    ○玉城委員 中小企業庁の方いらっしゃっていると思うのですが、今の問題について実はこの間の沖特で皆さんの方にお伺いいたしたわけですが、政府としても全体的には中小企業国際経済調整対策特別融資制度というものを発足をしていらっしゃることをよく承知をいたしておりますが、この融資対象者に、特定の業種に属するという部分にそういう沖縄の今申し上げた関係業者がどのような形で含まれるのか、これが一点ですね。  もう一点、この敵賢制度というのは一年据え置き返済期間五年ですね。利子が六・八、これは市中銀行の利子とそんなに変わらないかも対策にもならないという声も非常に強いわけですね。したがって、今回のこの制度というのは第一段階なのか、次のまた対策がこれから出てくることなのか、今申し上げた利子の点はどうなるのか、それをあわせて二点お伺いいたします。
  94. 土居征夫

    ○土居説明員 ただいまの第一点の米軍基地内で直接米軍と外貨建ての吸引をしているいわゆる特免業者についての問題につきましては、沖縄開発庁等関係各省等とも協議をいたしまして十二月二日付で実施いたしました中小企業国際経済調整対策特別貸付制度の対象に加えることに決定いたしております。  それから、金利の問題につきましては、御指摘のとおり、関係閣僚との協議によりまして、今回十二月二日の対策はとりあえず当面の対応措置というふうに位置づけられておりまして、通産省、中小企業庁といたしましては、金利の一層の引き下げ、その遡及適用の問題等も含めまして今度の予算編成の時期に向けて財政措置あるいは必要があれば法律措置の問題も含めて検討を続けているところでございます。
  95. 玉城栄一

    ○玉城委員 この融資制度の、その特定の業種、いわゆる融資対象者の中には、今おっしゃったように、沖縄の場合も、これは「その事業の目的物たる物品又はその事業の目的たる役務であって、専ら日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条の規定によりアメリカ合衆国軍隊が使用する施設又は区域において供給されるものについて、その販売価格又は提供価格が外国通貨表示で定められるものであるため、その需要が減少し、又は減少する見通しがある中小企業者」、だから含まれるんだ、こういうことですね。これが一点。  それから、繰り返しますが、利子の点についても次は検討するということですが、例えば五%とか五・五%とかやはり本当に対策になるような形での融資制度、利子も含めてやらないと対策にならぬわけですね。お答えください。
  96. 土居征夫

    ○土居説明員 今先生がお読み上げになりました要綱、要件につきましては前回の円高法の政令の要件でもございますし、今回も前回に則しまして。今お話がありましたいわゆる特色事業を対象にするということにした次第でございます。  金利の問題につきましては、十二月二日段階ではまだ予算編成時期ではございませんので、来年度の予算との関係もありまして、いずれにしても、今度の予算編成のときに決定を下すということになっております。
  97. 玉城栄一

    ○玉城委員 特に、今度の円高問題というのは政府の強力な政策によってこういう結果が出ているわけですが、当然これは国の責任が非常に重要だ、ただ、それだけでいいとは――やはり関係する地方自治体も相協力してこういう対策、救済制度というものは当然すべきだと私は思うのですね。中小企業庁としては、そういうことについて関係する地方自治体との話し合いも当然されてもいいと思うのですね。そういう意味で、既に独自で地方自治体であってそういう救済制度をやっているところもあれば、ない、例えば今の沖縄なんかではまだされていないということからすれば、やはり地域の実態把握とともに対策について中小企業庁として、それは皆さん勝手にやりなさいということでなくて、当然話し合いされるべきだと思いますが、もう一点、その点をお伺いいたします。
  98. 土居征夫

    ○土居説明員 前回の円高対策のときも今回もそうでございますけれども、国の対策として全国一円の対策を実施するとともに、各自治体におきましてもその自治体の実情に応じた補完的な措置を講じていただいているところでございまして、今お話がございましたように、沖縄開発庁あるいは沖縄総合事務局等を通じまして地方自治体とむ補完的な措置については十分相談をしてまいりたいと思います。
  99. 玉城栄一

    ○玉城委員 いっぱいありますが、最後に、これもこの間この委員会でもお向いしたのですが、沖縄の基地の中にアメリカの大きな大学が五つぐらいあるのですね。それを地元の県の方もぜひ開放してもらえないか、勉強させてもらえないか。向こうさんもスペースのある限り歓迎したい、外務省でも検討したいということでそのままになっているのですが、どういう検討をしていらっしゃるのですか。
  100. 藤井宏昭

    ○藤井(宏)政府委員 ただいま先生御指摘の米軍施設、区域内におきましての米大学への沖縄県民の入学問題でございますが、本年夏に西銘知事が訪米されました際に、外務省といたしましては正式に沖縄県から説明を受けまして、さらに西銘知事が米側にも申し入れたというふうに了承しております。  この件につきまして、これがもし実現すれば沖縄県民と米軍との間の友好、理解の増進にもなりますし、ひいては米軍施設、区域の安定的かつ円滑な運用に資するということでございまして、外務省としても前向きに検討しておるところでございます。他方、米軍の施設、区域は安保条約、地位協定に基づきまして特定の制約があるわけでございますし、あるいは特定の権利を持っておるわけでございます。これらの大学は、米軍基地内におきます米軍及び米軍人及び軍属並びに家族のためにあるわけでございまして、これを県民に認めました際に、基地に入る際の許可とかあるいは免税その他の基地が事有しております特別の待遇というものをどの程度県民に認めることになるのかというところはかなり難しい問題でございまして、この辺につきまして地位協定上どういうことが可能であるかということについて検討しているところでございます。  いずれにしましても、先生の御指摘もございますし、西銘知事の米側に対する申し入れもございますので、関係の各省庁とも御相談いたしまして、さらに沖縄県当局等と十分御相談いたしまして、具体的に検討を進めてまいりたい、かように存じております。
  101. 玉城栄一

    ○玉城委員 時間が参りましたので、以上で終わります。
  102. 青山丘

    青山委員長 和田一仁語。
  103. 和田一仁

    ○和田(一)委員 安倍外務大臣、久しぶりの質問なので、伺いたいことが山のようにあるのですけれども、私に与えられた時間は大変短いので、もう単刀直入にお伺いいたします。よろしくお願いしたいと思います。  まず、シェワルナゼ外相の来日が決定いたしました。来月おいでになるわけでございますけれども、八年ぶり、冷え切っていた日ソ関係改善のチャンスだと私どもも見ております。そういう中で、先ほども大臣外相定期協議に向かってこれを定着させることが大事だ、こうおっしゃったわけでございますけれども、この定着のためのルールづくり、どういうことをお考えになったらこれは定着していくだろうか、大臣のお考えをまず伺いたいと思うのです。
  104. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 定期協議というのはこれまでも存在しておったわけですが、事実上行われなかったということですが、ここで再開ということになったわけですから、これ模原則をお互いに確認し合って、今度はこちらから向こうへ行く、そしてその次は向こうからこちらへ来る、そうしたいろいろな国際情勢の変化等、日ソ関係にもいろいろな変北等があっても外相間のルートはきちっとしていきたいということをやはりこの機会にはっきりさせたい、こういうふうに思います。同時に、この日ソ外相会談をやってよかったなという一つ実りといいますか成果が出ることが大事ではないだろうか、こういうふうに思います。ソ連も非常に日本に対する期待が大きいわけでありますし、我々も日ソ改善を心から願っておるわけでございますし、そうした率値な話し合いの中で、米ソ首脳会談もあれだけ成功しておるわけで、日ソ外相会談も、時には意見の食い違いがあるかもしれませんが、全体的にはやはり何もが前向きの方向が出てくるもの、こういうふうに期待し、そのために努力をしていきたい、私はこういうふうに思います。
  105. 和田一仁

    ○和田(一)委員 改善方向大臣としては相当自信をお持ちで臨まれる、こんなふうに今雰囲気として受けとめたわけですけれども、このテーマですね、大臣新聞によりますと、きのうの発言でも、テーマについては、北方問題、全アジア安保の問題あるいはSDI、朝鮮半島、アジア借勢、こういうことを討議の対象にという御発言がありましたが、そのとおりですか。
  106. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 両国で今基本的に合意しておりますのは、国際情勢と二国間問題、これは外相会談の慣例でもあるわけですが、そういう中で今お話がありましたような点は当然入っていく、こういうふうに思っております。
  107. 和田一仁

    ○和田(一)委員 そういうことも大事ですけれども、私はこれを糸口にして何とか日ソ関係の新しい展開にしていただきたい。  そこで、先般の発言でもありましたが、総理大臣がこの日ソ交渉の包括方式ということを言われておるわけです。これは、領土問題は避けて通れないがと前提に置きながらも、文化、経済、科学技術の問題があって、硬直した教条主義にとらわれずに包括的に考えたい、こういう新しい提言をされているわけなんですね。先ほども大臣は、外交責任者である外相と一番トップの総理大臣あるいは書記長、こういったとこるの会談とはやはりおのずから違うというようなお話がありました。しかし、であればこそ、今度の外端定期協議の中でこの新しい方式というような格好が取り入れられていこうとしているのか、それとも、従来のようにまず領土問題を憾案の事項として解決していくというところに力点を置かれるのか、その辺はどういうお取り組みになりますか。
  108. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 力点の置きどころは日ソそれぞれ違うと低います。しかし、日本の場合は、あくまでも日ソの二国間における基本的な課題というの値、やはり領土問題を解放して平和条約締結する、これでありまして、そして本当に日ソの真の友好関係というものが進んでいくには、やはりこの問題がクリアされなければそういう関係といものはあり得ないのじゃないか、私はこういうふうに思っております。総理大臣と私との間で別に基本的な差はない。総理の場合もやはり領土問題を解決して平和条約を結ぶ、これがやはり基本的な日本の姿勢である、こういうふうに考えておられることは当然であろうと思います。
  109. 和田一仁

    ○和田(一)委員 先ほども大臣は入り口、出口論の差はない、こういうふうにお話がありましたが、その辺がこれから積み上げていく中で変わったという印象にとられる心配がありはしないか、私はこの点が一つ心配でございます。  それから、実りあるものにしていただくわけですが、その外相会談の結果として共同声明あるいは共同コミュニケ、こういうものでその結果をきちっとしておかれる御意思はございますか。
  110. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これはまだソ連側と打ち合わせしておりませんかる、私の方から一方的に言える立場ではございませんが、これまでの外相会談等の経緯を見ますと、全く何も出なかったときもありますけれども、共同コミュニケ等出した場合が多いのじゃないか、こういうふうに思います。
  111. 和田一仁

    ○和田(一)委員 ぜひ成果を上げて、今度のその外相会談を糸口として、定期協議定着さしていただきたいし、さらにそういったことを踏まえて、両国首脳の対談も行えるような段取りにしていただきたい、こう思うわけでございます。  そこで、シュルツ国務長官から来月早々に安倍外務大臣に訪米の要請があるという報道がありますが、それは事実でしょうか。おありになった場合には行かれる意思があるかどうか、あわせてお伺いします。
  112. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 シュルツ長官の方からまた正式には何も来ておりません。これは日米関係も経済問題、例えばMOSSの委員会等もことしじゅうに終わろうじゃないかという話し合いもしておるわけですから、日米間ではいろいろと話し合いをしなければなるぬ問題はありますけれども、今スケジュールとして具体的に来年一月ということをストレートに考えておるわけではございません。
  113. 和田一仁

    ○和田(一)委員 今からでもそういった要請があれば、おいでになりますか。その辺をひとつ。
  114. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 要請があるないは別にいたしまして、やはり日本のために大事なことであるということになれば、これは行かなければならぬと思いますが、予算編成、内閣改造、いろいろとまだ見通しがつかない問題が大分残っておりますから、そういう状況等も十分考慮に入れてこれから考えていかなければならぬと思います。
  115. 和田一仁

    ○和田(一)委員 今度ソ連からシェワルナゼさんが見えたときに、先ほど申し上げましたように、定期協議定着させ、やがて両首脳会談ということにだんだん持っていくために、ゴルバチョフ書記長の来日ですね、来日の要請をするやに聞いておるのですが、それはされる予定でしょうか。どうでしょうか。
  116. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 最終的にそこまで決まっているわけではありませんが、これはブレジネフ書記長時代に、田中・ブレジネフ会談の際に、ブレジネフ書記長の訪日を要請しておりますし、そうした日本の要請というのは、その後ずっと続いてきておるというふうに私は承知をいたしております。  そういう中で、ゴルバチョフ書記長の動き等を見ておりますと、フランスに行く、あるいはまたイタリーに行く、同時にまた、日本に対しても非常な関心があるということですから、やはりゴルバチョフさんに来ていただくということは、日ソ関係の将来について考える場合にも非常に意味が大きいのじゃないか、私はこういうふうに思っておりますし、そういうことができれば改めて要請といいますかこれまでの要請を確認をしたい、こういうふうに思っております。
  117. 和田一仁

    ○和田(一)委員 それから、これは先ほど同僚議員からの御質問を聞いていて感じたのですけれども、北方問題は大事なわけです。その北方の四島の現状が今どうなっているか、外務省の把握はどうなんだというお話がありました。御答弁を聞いておりまして、私は大変残念だと思うのです。やはりもっともっと実態を把握していただきたい。そして、その実態を踏まえながら現状をどうやっていくか、例えば缶詰工場があれば、それは領土なんだから抗議の対象になるというだけではなくて、そこに住んでいる人たちが将来ともそこで経済活動ができるのかどうか、ただ、全面返還しろと言う場合に、そういうことは全部あちらさんの責任だと言って突っぱねてしまうのかどうか、これも非常に大事な問題だと思います。現実に返還が議論の対象になるようになれば早速こういうことは問題になるわけなので、そういった場合に、大臣はそういった現地の実情に対してどんな柔軟な姿勢で臨まれるのか。例えば、住んでいる人は引き続きそこで何か経済活動、住むことが可能なのかどうか。そんな軍事基地みたいなものはもちろんなくしてもらいたいけれども、そういったものと同じように全部真っさらにしなければいけないというお考えなのかどうか。私は、現実の交渉の中でそういうことが出てきたときにはやはり対応するものを持っていないといけない、ただ抗議の対象というだけでは十分でないと思うのですが、大臣いかがでしょう。
  118. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 私はグロムイコ外相等に会ったときは、北方四島にソ連の軍事基地がある、極めて遺憾であるということも申した経緯があるわけでございます。外務省の調べたところでもいろいろと民間の施設等もあるわけでございますが、いずれにしても向こうさんがそういう気になれば幾らでも解決の道は両国で相談して生まれてくる、その気にさせるかどうかというのが極めて大事なことであって、その後についてはもう幾らでも解決の道は出てくるんじゃないか、十分現実的に対応できる、そういうふうに思います。
  119. 和田一仁

    ○和田(一)委員 もっと突っ込んでいろいろお聞きしたいのですが、もう時間がありませんので、どうしても聞いておきたいことが一つございます。  それは、きのうの参議院の外務委員会での大臣の御発言ですが、要するに純粋な海外における災害救助、復興、こういったものに対して平和活動の一環として自衛隊を派遣することは一つの課題だと思う、国会で論議の対象にしてほしい、こういう御発言がございました。これは、従来言われているところのいわゆるPKO、国際平和維持活動の一環としてお考えになっているのか、それとも、先ほど御質問もありましたようにそれとは別に、世界の中で国際社会の一員として責任を果たしていく、例えばメキシコやコロンビアのああいう災害の救助にどうも日本は積極的でないという批判の中から、民間のいわゆるボランティアあるいはレスキュー、こういう人たちとあわせて自衛隊の隊員も一緒に派遣したらどうかというお考えなのか、あるいはPKOとして、従来言われている国連活動を強化しようという意味発言されたのか、その辺はいかがでしょう。
  120. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 私に具体的な構想があるわけではございませんで、参議院で私が発言をいたしましたのは、専らメキシコ、コロンビアの大災害を契機として、日本の援助活動というのはもっと機敏に迅速に行われなければならない、効果的に行われなければならぬ、そういう意味でいろいろと国際救助隊というようなものを初めから組織しておく必要がある、そういう中に、やはり自衛隊も国内において災害救助活動をやっておりますし、その成果というものは国民もよく承知をいたしております。こういう力が何かそうした国際的な面でも活用できれば、これは国際的に非常に評価されるのじゃないだろうか。しかし、自衛隊法の改正とかいろいろと日本には日本で難しい問題があるわけですが、そういう場合でも本当に純平和的な、そして災害対策、災害援助というものに限って、別に自衛隊が武装して行くわけじゃありませんし、武器を持って行くわけではないです。ただ、その一つの技術というものが活用されればこれは大変世界的な評価というものがあって、日本の国際責任を果たす意味においても非常に意味が深いことじゃないだろうか。そういう点でやはり研究をしてみる必要があるのじゃないかということを申し上げたわけでございまして、研究した結果どうなるかこうなるかというのは、これからの議論に任せる以外にはないわけであります。
  121. 和田一仁

    ○和田(一)委員 もう時間がなくなりましたので、これ以上は質問ができないのですが、今大臣の御答弁を聞いている限りにおいて、やはり日本の国際的な立場からいっても、ぜひひとつそういった体制づくりに新たな取り組みをしていただきたい。それがやがてはPKOのような国際社会の中での新しい協力につながるかどうか、これはまたそのときの議論でいいと思うのですが、当面、こういった災害に対して何の対応もない、国際災害の救援の体制がとれるような方向で我々も検討したいと思います。それは大臣、言い出しっぺですから、ひとつ研究を進めていただきたいと御要望申し上げながら、終わります。ありがとうございました。
  122. 青山丘

  123. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 私最初に、米兵の犯罪と安保条約についての大臣の御意見を伺いたいと思うのです。  これは十月二十九日、沖縄の金武町でまた米海兵隊員の婦女暴行が起こって、県議会では全会一致で決議して、外務省にも陳情が来たと思いますが、それに関連して、十一月八日、外務委員会で、米軍は綱紀粛正、事件再発防止のため具体的措置を検討することを約束した、その一環としてキャンプ・ハンセンにおいて二十四時間の外出禁止令が出されたが、これでこの種の事件の再発防止として十分であると米側も考えていないということを答弁しておられますね。発生後もう既に一カ月以上になる。どういう具体的な検討をされたのか、大臣、ひとつお答え願いたいと思うのです。
  124. 藤井宏昭

    ○藤井(宏)政府委員 沖縄におきましては、委員御指摘のとおり、本年、米兵によるいろいろな不祥事があるわけでございます。この過程におきまして政府といたしましても、累次米軍に対しまして遺憾の意を表明し、その都度しかるべき措置を講じるべく申し入れてきているわけでございますし、米軍もさまざまな措置を講じておるわけでございます。パトロールの強化、綱紀の粛正等々あるわけでございますが、その一環といたしまして、先ほど委員御指摘の十一月四日から五日にかけてはキャンプ・ハンセン所属の全海兵隊員に外出禁止令を出し、同隊員に対し綱紀の粛正の維持の重要性を強調したわけでございます。  さらに、現在米軍から、再発防止のための具体的措置について現在検討中であるという通報を受けております。この点については、具体的な措置について当方としてまだ正式な通報を受けておりませんけれども、米側が検討しております具体的再発防止の内容につきましては、例えば米側は、本国出発前に海兵隊員の適正をより厳格に審査するということ、それから日本到着後に再審査を行うということ、それから海兵隊員の日本到着後三口以内に、隊員の品行について徹底教育を行うというようなことについて現在検討中であるというふうに了解しております。
  125. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 これは後でまとめて申し上げるのですが、一カ月以上になるのにかかわらず、具体的な措置というものはまだ出ておらぬという御返事なんですね。  それでもう一つお答え願いたいのは、今回の事件が起きる一カ月半前、九月七日に、岩国基地所属の米兵によって日本人の殺害事件があったばかりである。これは御承知だと思うのですね。沖縄の金武町だけで、ことし一月に前泊さんが米海兵隊員に殺害され、七月には何と早朝ラジオ体操をしていた児童を米兵が追っかけ回すという事件も起こった。ことしだけで三回も起こっておる。三月の予算委員会で前泊さん殺害事件についても質問しましたが、「こうした米軍の行為というものは厳重に処断されなければならない」、これは大臣の答弁なんです。  これを考えたときに、事件が起こる、米軍に処罰、改善を申し入れ、米軍は陳謝をする、再発防止、綱紀粛正というような約束、この繰り返しではちょっと無責任過ぎるのじゃないかと私は思うのです。繰り返し綱紀粛正でしょう。何とかやります、あるいは今の問題は二十四時間外出禁止する問題を含めて今具体的に検討中である。人間一人が殺されておるわけですから、こういった事件は真剣に考えないと、これは日本国民の恥です。  大臣、実際にこういった問題がどんどん起こりますね、起こったらまた常にあなた方、抗議されるのか申し入れるかは別として、申し入れたら今の局長さんの答弁のような返事が返ってくる、この繰り返しなんです。正面言って一体どうなんですか。  もう一つ、NATO諸国、例えば西ドイツ、イギリスあたりにこういった米兵の犯罪がありますか。それを両方答えてください。
  126. 藤井宏昭

    ○藤井(宏)政府委員 先ほど御説明申し上げましたように、確かに本年不祥事が続いておるわけでございますが、その都度、米軍といたしまして綱紀の粛正の強化について具体的な措置をとってきておるわけでございます。この点については先ほど申し上げたようなことでございまして、海兵隊の二十四時間外出禁止というようなことはその一つの大きな措置でございます。さらにそれに追いかけて措置をとるかというのが先ほど現在検討中と申し上げた措置でございまして、こういうことによってこれを防止するという米軍の強い意思を物語っていると考えます。  また、それではその罪を犯した人はどうなっているかということにつきましては、いろいろな処断が行われておりまして、例えば本年七月二十八日に金武町におきまして酒に酔った海兵隊員が夏休み中の子供を追いかけ回したという件につきましては、本年八月二十三日起訴が行われ、九月二十四日懲役八カ月の判決が出ております。十月八日に刑が確定しているということでございまして、それぞれの犯罪を犯しました当人につきましても迅速なる処断が行われているということでございます。  NATOにおきまして、私、現在詳しい資料を持ち合わせておりませんが、いずれにしても軍隊が駐留していることに伴いますいろいろないざこざと申しますか犯罪は存在すると了解しております。
  127. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 これは米兵の犯罪についての最後ですが、ぜひ安倍外務大臣が答えてください。  沖縄返還から昨年の十二月までで実は十二年になります。その間に、全日本でいろいろな犯罪がありますが、この件数は二万件、その三分の二以上が沖縄なんです。それで三十二名の日本人の命が奪われている。これは具体的な事実なんです。国民の生命財産を守る、安全を守る、そのためにアメリカがいる、区域、施設を提供している、こういったようなことで、これは沖縄だけじゃないのです、全日本で十二年間に実に二万件を突破しているわけです。この前全部調べたのです。これで安保条約に対する疑問が出てくるのです、一体何だろうという。事件が起こったら、またまた県議会でも与野党を問わず意見書を採択する。  正直言って大臣、安保条約は国民の生命とか財産を守るものじゃないということが事実によって明らかになっているのじゃないのか。こういったものが二万件ですよ。三十二名が殺されている。この措置をどうとったかという問題はまた別なんです。そういった面で安保条約に対する疑問、疑惑が出ている。この点は局長じゃなくて大臣が答えてください。
  128. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 件数については私も十分承知しておりませんが、安保条約が締結されまして日本に米軍が駐留して以来、不祥事件等が起こっていることも確かに事実であろうと思いますし、沖縄で起こっていることも承知をいたしております。我々は、これは非常に残念だと思っておりますし、その都度日米安保委員会等で米軍の責任に帰するものは強く抗議もしておりますし、米軍自身もこれらの犯人に対しては厳しい処分をしておる、また米軍も日本の要請にこたえて犯罪防止のためのいろいろの努力をいたしておることも事実でありますが、しかし、いろいろと問題が起こってきている。こういう点で、安保条約そのものに対して一部に批判があることも事実であろうと私は思います。しかし、これは大変残念なことであると思います。安保条約が全体的には国民の多くの支持を得ていることは間違いないし、同時にまた、日米安保条約というものが日本の平和と安全のために欠くことのできない条約であると私はかたく信じております。  したがって、この安保条約をこれからも安定して、そして効果的に運用していくためには、こうした事件がこれから起こらないように、これは米軍にも努力していただかなければならぬし、日本もそれなりの努力を続けていかなければならぬ、そして犯人等についてはさらに厳しく処断を求めていかなければならぬ、こういうふうに考えております。日米安保条約を守っていくために、こうした事件を繰り返さないように努力していくのが日本責任一つであろうと思います。
  129. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 私は、事実に基づいて申し上げているのです。もちろん、共産党は安保条約廃棄です。だが、その意見の違いは乗り越えて、具体的に十二年間で二万件も出ておる、三十二名殺されている、これは西ドイツあたりにないです。調べたのです。ナポリにNATOの海軍司令部があります。ナポリあたりに兵隊を入れないのです。上陸させないのです。そういったような西側一員論を説きますね。ところが、安保条約に基づいて日本におる米兵はこういった犯罪を犯している。こういった場合、一部にはと言うのですが、事実は一部じゃないのです。不安なんですよ。だから、不安をどう解消するか。  いつも事件が起これば外務大臣ではなくてだれか係か担当がアメリカに言う、そういった繰り返しなんです。だから、これは繰り返しさせないで、日本の国民の生命財産を守るため、こういった安保条約はどうも要らぬなということがだんだん大きく広がってくる。だから、沖縄県だったら県議会で与野党を問わず全会一致で決議するのです。この問題は一部じゃないのです。したがって、これは幾ら論じてもその繰り返しを大臣は言うのだと思いますが、大臣の時間が十五分しかないというから前に進みますけれども、私はこれは強く指摘する。安保条約がある限り、米兵の犯罪と安保条約は不可分に結びついている、この点を指摘して、我々は安保条約をなくして初めて日本国民の生命、安全を守れるということを事実が証明しているということを指摘するにとどめておきます。  大臣が帰らぬうちにもう一点。次は、那覇軍港の返還についてです。  これは大臣御承知だと思いますが、今那覇軍港にはいわゆる事前集積艦が相当あって、この事前集積艦は、インド洋だけではなくて西太平洋、それから大西洋、合わせて十三隻展開する。去る十一月十七日には、西太平洋方面に展開すると言われる排水量何と四万六千トンの最新型のいわゆる事前集積艦、ドウェーインというのですね、これが那覇港に入港しています。外務省は既にその全体をつかんでおると思いますが、具体的に言って、この西太平洋、インド洋に展開する部隊、これはいわゆる集積艦数、幾らぐらいの船が、あなた方はいわゆるMPSと呼んでいるのでしょう。さらに作戦の区域、それから作戦指揮に当たる部隊名、第七艦隊なのか何なのか、この部隊名、補給基地、特に那覇軍港は今の両部隊の補給基地、さらに母港化するのではないかというふうな不安に今襲われていますが、これについて大臣お答えできますか。
  130. 藤井宏昭

    ○藤井(宏)政府委員 事前集積船が那覇軍港にも寄港いたしておりますことはよく存じております。この事前葉積船の個々の艦隊の行動、編成等につきましては、委員御存じのとおり、米軍の具体的な編成、配置等についてはこれを明確にしないというのが基本でございます。したがいまして、これについて我々といたしまして詳細を承知する立場にないわけでございますが、この事前集積船につきましては、米国は高度の機動機械化作戦を実施し得るよう、三個海兵両用戦旅団のために装備等を積載する十二隻の船を、事前集積船でございますが、チャーターする。そして、第一の集積部隊は一九八五年初めに大西洋に展開し、第二及び第三の部隊は一九八五会計年度末から一九八六会計年度にそれぞれ中近東及び太平洋に展開するというふうに存じております。  それで、那覇軍港におきましてこの事前集積船が母港化するのではないかという疑いがあるやに聞いておりますし、今委員御指摘でございますけれども、母港化というものの定義がかなり漠然としたものではございますが、およそ軍艦の根拠地、あるいは特に家族等が居住するというような意味におきまして、事前集積船が那覇軍港を母港化するというような話は、我々は承知しておりません。
  131. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 これは私単に想像で言っているのじゃなしに、集積艦の那覇軍港に入港する隻数がどんどんふえているんですよ。実は五十六年以降五年間で、集積艦だけで五十七隻入港しているんだな。御承知のように、この那覇軍港は返還を約束された軍港でしょう。実はきのうの内閣委員会でも質問をしましたが、二十年間またまた貸借期間が延びる、それに那覇軍港が入っているんだな。局長さん、それ知っていますか。これだけ答えてください、知っているなら知っている、知らなきゃ知らないと。はっきり言えば、八七年から二十年間です。
  132. 藤井宏昭

    ○藤井(宏)政府委員 その延長の方に入っておるということは存じておりますけれども、我々の了解といたしましては、那覇港湾施設は、昭和四十九年の第十五回の安保協議委員会において、移設を条件として返還することが了承されているということでございまして、目下移設先の選定について、これは非常に困難をきわめているようでございますけれども、さらに検討しているというふうに了解しております。
  133. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 今私が申し上げました八七年以降二十年間ということになると大変でしょう。二〇〇七年までなんですよ。これは、おっしゃるとおり那覇軍港は移設するということで協議が成っておりますから、もし二十年間、これが入っていれば外さぬといかぬですよ。あなた方、どこかいいところないかな、例えば浦添かどこかなんということになるのかもしれませんが、これは外さないと、今局長がおっしゃったこととは矛盾するのですよ。だから母港化の問題という疑惑が生まれてくる。  これはいかがですか、防衛庁あたりとよく相談なさって、本当に入っているだろうか確かめて、入っておれば、これはこういった軍港なんだということを言うかどうかですね。それを言ってもらわぬと、今の御答弁矛盾しますよ。
  134. 藤井宏昭

    ○藤井(宏)政府委員 那覇軍港につきましては、既に先ほど申し述べましたように移設を条件として返還されるということが了承されておりまして、これ自体は全く変更はないというふうに承知しておりますし、その方針に基づきまして今後とも移設先の、これは見通しは今は非常に困難でございますけれども、さらにこれを進めていくというふうに我々は了解しております。
  135. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 お伺いしますと、那覇軍港の問題は沖縄返還のときにも目玉商品の一つなんですよ。だから、これはまたまた二十年間契約の網にひっかかってしまうと、もうこれが不可能になってくるという場合もあり得る。この点を十分、局長さんも防衛庁に行ってもらって、どういうお考えになっているかお聞きになってくださるよう、私はここで要請したいと思うが、どうですか。
  136. 藤井宏昭

    ○藤井(宏)政府委員 那覇軍港につきましても、随時外務省は防衛施設庁等と話をしております。先ほどから述べておりますように、那覇軍港についての基本的な方針は変わっておりませんので、その線で今後とも関係省庁と連絡をとり、移転先選定等について検討してまいりたいと思います。
  137. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 那覇市でも、沖縄県民も含めて、いつ返還されるか待っているわけなんで、私は速やかな返還を要求して、次に進みます。  米空軍の空中訓練、民間航空等の安全について簡潔に質問いたします。  米太平洋空軍、これは十一月十九日午前九時から那覇空港の民間機の離発着を規制、沖縄西方の米訓練空域で大規模な航空機戦闘訓練、これはコープマックス、こう言っているのですね、これを実施した。地元沖縄新聞の報道によりますと、これは米戦略空軍、いわゆるSACですね、戦略空軍を初め嘉手納、三沢、フィリピン、グアム、韓国などの米空軍部隊が沖縄空域に結集し、即応能力を試す訓練で、約二百五十機参加したということであります。米軍のこの演習、さらにこの内容などについて運輸省あるいは外務省御承知だと思いますが、これを説明してほしいと思います。
  138. 藤井宏昭

    ○藤井(宏)政府委員 本年十一月十九日に那覇飛行場区内の沖縄近接空域におきまして御指摘の米軍の演習が行われたわけでございます。なお、このような演習は米軍がこれまでもアジア・太平洋地域において相当数実施してきておるわけでございます。  この演習の概要でございますが、我が国の嘉手納、三沢基地から発進した飛行機のほかに、韓国、フィリピン、グアムの米軍基地に配属されている米軍機が参加しております。そして演習の目的は、各種の航空機が各基地より発進した後に一堂に会し、秩序を持って行動するということがこの演習の目的だったというふうに了解しております。この機数は給油機を含めて約二百五十機というふうに了解しております。
  139. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 それで、民間航空との関係をちょっと申し上げますと、地元沖縄新聞報道によりますと、これは私も向こうへ行って知ったことでありますが、このために南西航空、これの二便が待ったがかかっているのですよ。十七分から二十一分おくれて出発している。それから日本航空、全日空各便とも到着、出発が十分から三十分遅延している。本土航空路の民間機が通常のコースを変更して、いわゆる高度制限などの規制を受けているのですね。この事実を知っておりますか。
  140. 松田政雄

    ○松田説明員 お答えいたします。  今回の米軍の大演習につきましては、実は事前に十分米軍側と調整いたしまして、民間航空の交通に影響のないように調整いたしました。したがいまして、影響のあった分といたしましては、南西航空の便が二機、おのおの十七分程度おくれた、その他については特に影響があったという報告は今回は受けておりません。
  141. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 日本航空、金星――私そのときいたのですよ。これ、運輸省知らないのですか。
  142. 松田政雄

    ○松田説明員 航空機の運航につきましては、それぞれそのときどきの都合がありまして、五分、十分のスケジュールからの変更は常にあり得ることですが、今回非常に民間機への影響について気にしておりまして、現地機関でも十分ウォッチしておったところでございますが、純粋に米軍の大演習関係による影響としては先ほど申し上げました南西航空の二便だけというふうに報告を受けております。
  143. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 時間がありませんので、これだけお聞きしたいと思うのですが、実はこれは地元沖縄タイムスの記事なんですが、「運輸省関係筋が十九日明らかにしたもので、同演習はTFEEの「コープ・ジェイド’84Ⅱ」。」実は昨年十月末予定されていたわけなんですが、「規模は、韓国、フィリピン、グアム、嘉手納に駐留する米太平洋空軍部隊に加え、日本海で作戦展開していた第七艦隊の空母・ミッドウェーの機動部隊を投入。グアムのB52戦略爆撃機、嘉手納のE3A空中警戒管制機(AWACS)などのほか、ミッドウェーの艦載機(約七十機)が参加する計画だった。 訓練空域は、米軍が設定した十六のウォーニング・エリア(訓練空域)全部と”幻の空域”アルトラブ(臨設空域)。このため、沖縄の民間航空路が著しく制限され、管制官の負担が増大することから全運輸省労働組合が猛反発。運輸省、外務省も事態を重視し米軍側に異例の拒否をし、演習は回避された。」ということがあるのですが、これは事実関係はどうなっていますか。
  144. 藤井宏昭

    ○藤井(宏)政府委員 演習といえどもおよそ軍隊の行動の一つでございまして、具体的な態様等について詳細に明らかにすることは軍隊としてはしてないわけでございますが、昨年十一月ごろ米軍が今回の演習と類似の演習を行いたいという話がございまして、これは今回のものよりもやや規模が大きいということでございますが、運輸省、外務省で民間航空との兼ね合いにつきまして種々検討いたしまして、アメリカ側と話し合いの上、アメリカ側は昨年の演習は中止したという事実はございます。  いずれにしましても、我が国は、国の安全は日米安保条約によって確保しているわけでございまして、米軍の演習を含めまして円滑なかつ効果的な米軍の存在というものが大切でございます。したがいまして、米軍の演習に対して、これに協力するということは大切なことであると我々は存じております。  他方、累次政府が国会等で明らかにしておりますとおり、米軍演習に際してはまずもって民間航空交通の安全を確保するという必要があるわけでございまして、このような見地から万全の調整を事前に行うわけでございます。特に本件につきましてはかなり規模が大きいということもございまして、本年八月ごろからいろいろ調整を行ってきた次第でございます。
  145. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 最後に一つお伺いしたいのは、航空管制に対する協定、この合意があると指摘されて、政府は優先ではなく、便宜を与えるのだ、日本側に裁量権があるというふうなことを答弁なさっておるのですが、この拒否された事実と、裁量権が本当に日本にあるのですか。これ、やってはいかぬとかと言う勇気ある行為だな、これはもういかぬと……。
  146. 藤井宏昭

    ○藤井(宏)政府委員 管制業務上、便宜を図るということになっておるわけでございますけれども、この便宜を図るという意味は、種々の状況を勘案いたしまして、その状況に即して米軍機に対して我が国の裁量の範囲内で優先的な取り扱いを認めるよう対処するというふうに考えております。
  147. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 時間がありませんのでこれで終わりますが、航空安全のために日本は安保、安保と言わないで、あなた方、独立国と言っているんだから、日本自身の裁量権をうんと発揮してもらって、本当に空の安全、民間空域の安全を図るためにぜひ努力してもらいたいということを要請して、質問を終わります。
  148. 青山丘

    青山委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後四時一分散会