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1985-03-29 第102回国会 参議院 予算委員会 第16号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十年三月二十九日(金曜日)    午後一時六分開会     ─────────────    委員の異動  三月二十八日     辞任         補欠選任      馬場  富君     黒柳  明君      野末 陳平君     宇都宮徳馬君  三月二十九日     辞任         補欠選任      黒柳  明君     中西 珠子君      吉川 春子君     上田耕一郎君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         長田 裕二君     理 事                 井上  裕君                 岩本 政光君                大河原太一郎君                 梶木 又三君                 亀井 久興君                 志苫  裕君                 太田 淳夫君                 内藤  功君                 伊藤 郁男君     委 員                 安孫子藤吉君                 岩動 道行君                 板垣  正君                 海江田鶴造君                 梶原  清君                 古賀雷四郎君                 沢田 一精君                 志村 哲良君                 杉山 令肇君                 関口 恵造君                 田中 正巳君                 土屋 義彦君                 成相 善十君                 林 健太郎君                 増岡 康治君                 宮澤  弘君                 宮島  滉君                 森田 重郎君                 穐山  篤君                 久保  亘君                 久保田真苗君                 村沢  牧君                 矢田部 理君                 安恒 良一君                 和田 静夫君                 黒柳  明君                 中野 鉄造君                 上田耕一郎君                 関  嘉彦君                 木本平八郎君                 宇都宮徳馬君    国務大臣        内閣総理大臣   中曽根康弘君        外 務 大 臣  安倍晋太郎君        大 蔵 大 臣  竹下  登君        農林水産大臣   佐藤 守良君        通商産業大臣   村田敬次郎君        郵 政 大 臣  左藤  恵君        国 務 大 臣        (防衛庁長官)  加藤 紘一君        国 務 大 臣        (経済企画庁長        官)       金子 一平君        国 務 大 臣        (沖縄開発庁長        官)       河本 敏夫君    政府委員        内閣法制局長官  茂串  俊君        内閣法制局第一        部長       前田 正道君        国防会議事務局        長        塩田  章君        防衛庁参事官   古川  清君        防衛庁参事官   古川 武温君        防衛庁参事官   池田 久克君        防衛庁参事官   筒井 良三君        防衛庁長官官房        長        西廣 整輝君        防衛庁防衛局長  矢崎 新二君        防衛庁教育訓練        局長       大高 時男君        防衛庁人事局長  友藤 一隆君        防衛庁経理局長  宍倉 宗夫君        防衛庁装備局長  山田 勝久君        防衛施設庁長官  佐々 淳行君        防衛施設庁総務        部長       梅岡  弘君        防衛施設庁施設        部長       宇都 信義君        防衛施設庁建設        部長       大原 舜世君        経済企画庁調整        局長       赤羽 隆夫君        経済企画庁総合        計画局長     大竹 宏繁君        外務省アジア局        長        後藤 利雄君        外務省北米局長  栗山 尚一君        外務省欧亜局長  西山 健彦君        外務省中近東ア        フリカ局長    三宅 和助君        外務省経済局長  国広 道彦君        外務省経済局次        長        恩田  宗君        外務省経済協力        局長       藤田 公郎君        外務省条約局長  小和田 恒君        外務省国際連合        局長       山田 中正君        外務省情報調査        局長       渡辺 幸治君        大蔵省主計局長  吉野 良彦君        文部省学術国際        局長       大崎  仁君        文化庁次長    加戸 守行君        農林水産大臣官        房長       田中 宏尚君        農林水産大臣官        房予算課長    鶴岡 俊彦君        農林水産省経済        局長       後藤 康夫君        林野庁長官    田中 恒寿君        通商産業大臣官        房審議官     矢橋 有彦君        通商産業省通商        政策局長     黒田  真君        通商産業省貿易        局長       村岡 茂生君        通商産業省機械        情報産業局長   木下 博生君        郵政省放送行政        局長       徳田 修造君    事務局側        常任委員会専門        員        桐澤  猛君    説明員        外務大臣官房文        化交流部長    荒木 忠男君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○委嘱審査に関する件 ○昭和六十年度一般会計予算内閣提出衆議院送付) ○昭和六十年度特別会計予算内閣提出衆議院送付) ○昭和六十年度政府関係機関予算内閣提出衆議院送付)     ─────────────
  2. 長田裕二

    委員長長田裕二君) 予算委員会を開会いたします。  昭和六十年度一般会計予算昭和六十年度特別会計予算昭和六十年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題といたします。     ─────────────
  3. 長田裕二

    委員長長田裕二君) この際、昭和六十年度一般会計予算外二案の審査委嘱についてお諮りいたします。  本件につきましては、先刻の理事会におきまして協議の結果、次のとおり決定いたしました。  審査委嘱する委員会及び各委員会の所管は、お手元に配付のとおりでございます。審査委嘱する期間は、第一種常任委員会については四月二日の午後一時から四月三日の午後三時までの間、特別委員会については四月三日の午後三時から四月四日の正午までの間とする。  以上でございます。  ただいま御報告いたしましたとおりとすることに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 長田裕二

    委員長長田裕二君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  5. 長田裕二

    委員長長田裕二君) それでは、本日はお手元質疑通告表のとおり、外交防衛に関する集中審議を行います。  これより宮澤弘君の質疑を行います。宮澤君。
  6. 宮澤弘

    宮澤弘君 最初に、戦略防衛構想SDIについて伺います。  これにつきましては、昨日、ワインバーガー国防長官書簡安倍大臣のところに届きまして、安倍大臣は、昨日の衆議院内閣委員会でございますか、見解を表明されております。  そこで総理大臣に伺いたいのでございますが、この書簡に対して今後どういうふうに対処していかれるか伺いたいと思います。
  7. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 書簡をいただきましたので、今政府部内において慎重に検討しておるところでございます。外務大臣と私で話したところでは、専門家を先方は派遣する、そういうことでありますから、一応専門家の来日を願って、計画やら将来の展望やら、あるいは技術的な側面、あるいはそのほか万般にわたって説明を受ける、そういうことはいいのではないか。今のところそんな気持ちでおりますが、今後政府部内において各省庁を含めまして慎重に検討してまいりたいと、そう思っております。
  8. 宮澤弘

    宮澤弘君 ただいま慎重に検討ということをおっしゃいましたが、総理も前におっしゃっておいでになりましたけれども、我が国平和憲法を持っておりますし、また非核原則国是としております。またSDIにつきましては、アメリカ国内でも防御兵器としての完全性について議論もあるようでございます。また金と時間がかかるという批判もあるようでございます。どうかひとつこの問題につきましては、ただいまおっしゃいましたように慎重に検討、対処をしていただきたいと思います。  ところで、総理大臣はよく国際国家日本ということをおっしゃいます。現に今回の国会の施政方針演説でも、「対外的には世界の平和と繁栄に積極的に貢献する「国際国家日本」の実現を」と、こういうふうに言っておいでになりますが、総理が考えておられます国際国家日本というのは具体的にどういう内容でございましょうか。
  9. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 積極的に世界に向かって窓を開いて、情報やあるいは物資やあるいは学問やあるいは人間交流を自由活発に行って、そして国際的連携のもとに世界及び各国繁栄及び平和を増進さしていく。特に日本はこれだけ大きな経済的な国になりましたから、世界的な役割について憲法の許す範囲内におきまして積極的に果たしていく、そういう国柄になっていきたい。憲法の中にも「国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思ふ。」と、そういう念願が表明されておりますが、そういうことを実現することを心がける国であると考えております。
  10. 宮澤弘

    宮澤弘君 私は私なりに国際国家日本というのは二つ側面があると思います。一つ経済大国としての日本経済力を通じて世界繁栄貢献していくという側面、もう一つは、経済大国に対して平和大国という言葉があるかどうか存じませんけれども、平和憲法を持ち、非核原則国是としている日本として世界平和に積極的に貢献していく。つまり平和の推進者としての日本、それから経済協力者としての日本、この二つ日本世界政治に果たす積極的な役割ではないか、こう思いまして、こういう二つ側面からきょうは若干の質問を行いたいと思っております。  まず、世界平和についての積極的貢献の面でございますが、イランイラク戦争安倍大臣両国間の調停と申しますか、仲介、これまで大変積極的に努力をしておいでになる。大臣の言われる創造的外交の一環でございましょうか、私も評価をいたしたいのでありますが、最近は両国間で都市攻撃等大変激化をいたしておりますが、大臣とされて今後両国間の紛争戦争仲介についてどういう努力をなさろうと思っておいででございますか。
  11. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 残念ながらイランイラク紛争は依然として続いておるといいますか、むしろ激しさを加えておるというふうな状況で、私たちも憂慮いたしておるわけであります。長い間続いておりますこの紛争が一日も早く終息することを念願いたしまして、我が国としてもイランイラク両国との間にはそれぞれ友好関係があるわけですから、こうした利点を生かしてこれまで平和環境の醸成のために努力をし、あるいは場合によっては戦争不拡大、さらに平和解決に向かって日本役割を果たしたいということで努力を重ねてまいったわけでございますが、状況は極めて難しい事態になっております。しかし、日本としましても情熱を捨てないで、これからもひとつ、ただ日本だけでなかなか両国間の戦争をとめるとか、あるいはまたやめさせるとかいうことはできないわけですが、しかし国連だとかあるいは志を同じくする国々とともに相、手を握っていけば可能性はなきにしもあらずだろうと、こういうふうに思っております。  幸いにしてイランイラク日本に対して非常な期待を持っておることは事実であろうと思います。その証拠には、先般もイランの特使が日本にやってまいりました。また来週早々にはイラクアジズ外相が、たった一日でございますが、日本を訪問するという日程が決まっております。これらの訪問は、日本に対しましてイランイラクそれぞれの戦争に対する考え方を説明するとともに、何か日本に対して動いてもらいたいという一つ気持ちのあらわれでもあろうと、私はそういうふうに見ております。そういう機会を活用いたしまして日本立場を十分説明して、これまでもしばしば日本方針戦争拡大防止に対する日本の基本的な提案両国に対していたしておりますから、ぜひともひとつこの提案を受諾するといいますか、検討してもらって、そうしてそういう方向戦争拡大が防がれる、あるいは最終的には戦争防止戦争の終息というところに向かって進んでいくように念願をしております。せっかくの機会でありますから全力を尽くしたいと思います。  さらにまた、国連日本のこうした動きに大変大きな評価をいたしておりますし、我々もやはり国連という舞台でこういう問題が解決されることが一番望ましいと思っております。むしろそういう意味では日本黒子役に徹してもいいとすら思っておるわけでありまして、そういう意味国連とも常に協力関係を保っていきたい、あるいは関係の諸国との間の連携もこれから保っていきたい。相当長く続いておりますから、両国とも相当もういわば戦争疲れが出ておると思いますし、そろそろそういう動きが実を結ぶという時期が迫っておるのじゃないかと、こういうふうに思っておりますし、それにはやっぱりそれなりの努力をしなければならぬと、そういうふうに思っております。
  12. 宮澤弘

    宮澤弘君 今後も大いに御活躍をお願いいたしたいと思います。  ところで、グローバルに見ますと、目下の平和をめぐる最大問題は軍縮、特に核軍縮の問題ではなかろうかと思います。ことしは御承知のように広島長崎被爆四十周年に当たるわけでありますが、そこでこの節目に当たって総理はどういう感慨をお持ちか、さらにこの核兵器廃絶についてどういう決意をお持ちか承りたいと思います。
  13. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 衆参両院におきまして、かねてから何回も申し上げるように、日本唯一被爆国でありまして、核戦争惨害を最もよく知悉している国民であります。政府はこの国民の意を体しまして地球上から核兵器を一日も速やかに追放しようと、そういう考えに立ちまして努力しておるところでございます。今後もその決意を秘めまして地球上から核兵器の絶滅を期してあらゆる方面において積極的に努力してまいりたいと思っております。広島長崎惨害から四十年目に当たりますが、この節目の年に当たりまして、さらに思いを新たにして努力しなければならないと思っております。
  14. 宮澤弘

    宮澤弘君 防衛庁長官お見えですので、同じ質問、簡潔に所信をお答えいただきたい。
  15. 加藤紘一

    国務大臣加藤紘一君) 防衛政策を担当する人間といたしましても、できるだけ早く、一日も早く核の廃絶の時期が来ることを願わざるを得ない、そういう気持ちでございます。
  16. 宮澤弘

    宮澤弘君 総理にお願いというか、ことしまた八月に広島長崎平和式典がございます。ぜひひとつ御出席をいただきたいし、できますれば、節目でございますので、予定を繰り合わせて両市に出席をいただきたいと思いますが、いかがでございましょうか。
  17. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) よく検討いたします。
  18. 宮澤弘

    宮澤弘君 ひとつぜひ御配慮をお願いいたしたいと思います。  ところで、核軍縮につきましては、力の均衡に基づく抑止論という立場に立って西側が結束しながら軍縮促進することが大切である、これが最も現実的であるということを総理はたびたび言っておいでになります。そして米ソ間の軍縮交渉を成功させる環境づくりをすることが必要だと強調しておいでになる。私も全くそのとおりだと思います。しかし、この二国間の交渉促進すると同時に、私は日本として世界世論に直接呼びかけるということも重要ではなかろうか、この方面努力政府としてもなおしていただく必要があるのではなかろうかと思います。総理先ほどもおっしゃいましたように、我が国唯一被爆国でございまして、我々の被爆体験を背景にして世界に平和を呼びかけるということは、私は日本人の権利であり、義務であると思います。特に私は被爆広島県の出身議員でございますのでその感慨を深くいたします。  そこで、総理に伺いたいのでございますが、国連軍縮特別総会、これは多分一昨年の軍縮総会で、遅くとも八八年までには開くと、こういうことになっているはずでございます。軍縮特別総会雄弁大会じゃないかというような人もございますけれども、これは国際世論を結集するには大変いい場所ではなかろうかと思います。そこで第三回の国連軍縮特別総会を八八年を待たずに、一日も早く開くように政府国連各国に積極的に働きかけるべきではないかと思いますが、総理いかがでございましょうか。
  19. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 政府としましては、世界国々が一堂に会して現下の国際社会の緊要な課題である軍縮促進に向けて真剣な討議を行うことは意義深いことであると考えております。こうした観点から我が国は一九七八年の第一回軍縮特総及び一九八二年の第二回軍縮特別総会に積極的に参加した次第であります。  我が国は、従来より軍縮促進を強く訴えてきたところでありまして、第三回軍縮特別総会において軍縮の進展のため具体的かつ建設的な審議が行われることを強く期待しております。また、第三回の軍縮特別総会が実り多い成果を上げるよう、適当な開催のタイミングにつきまして本年の国連総会において合意が得られることも期待をいたしておるわけであります。
  20. 宮澤弘

    宮澤弘君 ぜひ積極的に促進をしていただきたいと思います。  ところで、軍縮の問題につきましては、総理もたびたび、これは単なる演説や観念論では片づかない、現実的、具体的でなければいけないと言っておられる。私も同感でございます。先ほども申しましたように、核兵器の悲惨さを体験いたしましたのは我々日本人だけでございます。被爆の写真でございますとか被爆資料、こういうものはまことに世界の人に直接訴える力が大変大きいと私は思っております。いわば、これは一つ現物教育ではなかろうかと思います。百の演説よりも一つ実態を示す資料が人の心をとらえるのではなかろうか。そういうことから申しますと、今抑止ということもいろいろ言われておりますけれども、被爆実態世界人々に知ってもらうこと、このことが最大の抑止ではないかとさえ私は考えております。  昨年でございましたか、北欧で、広島長崎両市協力をいたしまして、国連主催で原爆の資料展が開かれまして多くの人々に深い感銘を与えた次第でございます。また、広島長崎両市はことしの八月に世界市長さんに集まってもらいまして平和連帯市長会議を開くというような計画もいたしておりますが、地方自治体がやることについてはおのずから限度がございます。  そこで、総理にお伺いをいたしたいのでありますけれども、私は、日本政府がみずから展示会を開催する等、この種の被爆資料国際展示について積極的に働きかけるべきではないか、積極的に動くべきではないか、こう思いますけれども、いかがでございましょうか。
  21. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 政府としましては、被爆の実情に関する客観的な認識が適切な形で世界各国に普及することは極めて有意義であると考えております。  被爆資料展示につきましては、普遍的な国際機関であるところの国連関係方面協力を得てこの種の展示を行うことが適当と考えておりまして、そういう観点から、我が国提案に基づきまして、八三年に、私も出席をいたしましたが、被爆資料国連本部への備えつけ実現させましたほか、これまで国連主催被爆展示側面から種々協力を行っておるところでございます。今お話がございました政府主催展示を行うべきであるという御示唆につきましては、今後その可能性につき、ひとつ十分検討してまいりたいと考えております。
  22. 宮澤弘

    宮澤弘君 どうぞひとつ、政府自身がそういうことに積極的に向かっていくという方向について、おっしゃいましたように積極的な御検討をお願いいたしたいと思います。  次に、経済協力の問題について若干伺います。  経済協力と申しますと、その中心は何と申しましてもODAであろうと思います。現在の中期目標は六十年をもって終了いたすわけでありますが、少なくとも予算ベースにおける限りは、政府の御努力によってほぼ目標を達成をするところまでいっております。しかしなお、国連が定めております各国GNPの〇・七%でございますか、その目標に対しては我が国は〇・三三%と半分弱というところでございます。それからなお、ODAについては途上国の要望も非常に強うございますし、また貿易摩擦の解消というような見地もございましょう。そういうことで、ODA充実強化ということは今後ますます必要になってくると思うのであります。  外務大臣に伺いますが、この際新たな中期目標を設定して、それを実施をしていくことが必要だと思います。いかがでございましょうか。
  23. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) ODAはこれから日本が国際的に貢献をするためにも最も重要な柱の一つである、こういうふうに考えております。今回、今審議していただいておる六十年度予算におきましても、非常に厳しい財政事情の中で一〇%も伸ばしていただいたことを我々心から喜んでおりますし、日本役割をこれによって果たすことができるというふうに思っておるわけであります。今回の予算措置によりまして、五年倍増という点については一応予算の上では九八%実現をしたわけでございます。  これからどうするかという問題でございますが、我々としましては、何としても、このODA世界におけるこれから日本役割というものを考えた上でも、これはやはりどうしても増額をして、そして世界期待にこたえていく、特に開発途上国期待にこたえていかなければならぬ、こういうふうに考えております。これをどういうふうな形でこれから進めていくかという点につきましては、今関係省庁関係大臣とも相談をいたしておりまして、今度OECDの閣僚理事会もございまして、日本立場を明らかにしなければなりません。世界も注目しておりますから、それまでに何とかひとつ積極的にこのODAを推進するという基本的な路線を打ち出せるように今努力をいたしておるわけであります。
  24. 宮澤弘

    宮澤弘君 そういたしますと、新しい中期目標を立てるというふうに今のお答えを受け取ってよろしゅうございますか。
  25. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) これはまだ基本的な話を詰めておりませんから、いずれにしても、これからのODA一つの大きな目標といいますか、ODAについての日本の基本的な姿勢といいますか、そういうものをはっきりすることが大事じゃないか。具体的にそれじゃどうするかということについては、目下関係省庁で今詰めておると、こういうことであります。
  26. 宮澤弘

    宮澤弘君 お隣に大蔵大臣おいでになりますので、恐らくなかなかおっしゃるのが難しいと思いますし、また、もし大蔵大臣質問をいたしますと、これはなかなか難しいという御答弁ではなかろうかと思いますが、総理大臣おいでになります。別にお答えは要りませんけれども、これはやはり日本の国際的責務だと思いますので、どうかひとつ大所高所から新しい目標を立てて実施をするということについて御検討をお願いいたしたいと思います。
  27. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 日本の国際的役割にかんがみまして、やはり一定の目標を立てまして計画的にこれを推進するように努力したいと思います。
  28. 宮澤弘

    宮澤弘君 いずれにいたしましても、ODA、今後この政策を推進してまいります場合には幾つかの問題があろうと思います。その一つは、量的な充実も必要でございますが、質的な改善と申しますか、御承知のように日本ODAは借款の比率が高くて、無償供与なり技術協力の比率が低いわけでございます。そういう意味で、質的な充実を図る必要があると思いますが、外務大臣いかがでございましょうか。
  29. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 確かに量的だけじゃなくて質的な面でも充実していかなければならない。戦後四十年たった今日、こうしたODAのあり方、その内容等についてもいろいろと再検討してみる必要もあるのじゃないか。例えばアフリカなんかに対する援助が、どうしてもやっぱりアフリカの実態というものを考えると、無償援助というものを中心にしないと、あそこがやはり借款ということになりますと、もう元本さえも返せないというふうな状況ですから、ヨーロッパ諸国はほとんど無償でやっております。そういう実情等を見ますと、実情に応じた、その国に喜んでいただけるような体制でなければならぬと思います。しかし、日本の場合は開発途上国全体に対して広く行き渡った援助をいたしておりますから、そういう割り振りというものもなかなかそういう状況も踏まえてやっていかなければならぬわけでありまして、そうした地域の実態、それからこれまでのODAの実績の再検討、そういうもの等もいろいろと振り返ってひとつ検討してみたいと、こういうふうに思っております。
  30. 宮澤弘

    宮澤弘君 ODAにつきましてはなお幾つか問題があろうと思います。例えばODAを効果的に行うためには事後の評価制度を確立する必要がある、これは外務省は随分努力をしてこられております。同時に私は、事後評価も重要でございますが、事前の調査ということを徹底をする必要がある。外務省の関係者も、ODAが失敗をした多くの例は事前調査が不足なことがあったのだということを言っておられますし、またマスコミでいろいろODAについての報道がございますが、それを見ましても、例えば企業の利益と結合したものでございますとか、政治的な、おみやげ的な色彩を持ったものというものが事前調査が不足で失敗をした例、いろいろ紹介をされておりますので、これはお答えは要りませんが、ぜひひとつ今後この事前調査ということをさらに徹底をしていただきたいと思います。  ODAについてもう一つの問題は、ODA政府間でいわば住民の頭越しに行われているというような批判がございます。その相手国の草の根の住民の要望に沿っていないという批判がございます。そういうことからほかの国ではNGO、民間の非政府組織、ボランタリーの組織でありますが、NGOと手を結んでODAを実施をしていくということが随分行われているようでありまして、私もまた新たな援助方式としてこのNGOを活用することが必要ではないか。それがまた総理が言われております民間活力の発揮にもつながっていくわけでありますが、この点につきまして、新しい援助方式としてのNGOとの提携ということについてどうお考えでしょうか。
  31. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) まずODAにつきましては、日本の場合は各国に比しまして、むしろ非常にきちょうめんに事前、事後、ODAを実施しておると私は思っております。各プロジェクトごとに非常な精査をいたしまして、そして両国政府で合意をいたしておるわけでございます。同時にまた、実施後のフォローアップにつきましても、外務省自身が詳細にこの点は点検をいたしまして報告書にもまとめ上げておるわけでございます。  ただしかし、これは大事な血税でございますから、このODAというものが本当に相手の国民に喜ばれる形で進められなければならぬということで、このODAのあり方は、もっと改善すべき点があるなら改善しよう、しなければならぬということで、今懇談会をつくりまして、学識経験者等も集めまして、フォローアップの問題とか、あるいは事前の調査の問題等もひとつ検討はしていただきたいと思いますが、全体的に見ますと、私は日本ODAは非常にきちっとやっているのじゃないかと思いますし、同時にまた、このODAは実際にその国の民生の安定それから福祉の向上、そういうものに非常に多く成果を上げておる。ですから、ASEANでも昔はいろいろと批判がありましたけれども、最近は日本ODAに対しましてはASEAN諸国は全体的に政府国民とも非常に評価をしていただいておると言っても過言ではないと私は思っておるわけでございます。  なお、今のNGOの問題につきましては、これは確かに大事だと思います。私も、今回アフリカ救済問題と取り組みまして、こうしたボランティア組織というものがいかにアフリカのこうした危機、飢餓の救済組織に非常に大きな役割を果たしているかということは身をもって痛感いたしたわけであります。例えば我々が民間の皆さんにお願いをして集めていただいた毛布のアフリカへの移送等におきましても、みんなこのボランティアの皆さんについて行っていただいておりまして、そして毛布の行き着く先までずっとボランティアの皆さんについて行っていただいておる。これなんかもやはりボランティアでなければできない仕事でありまして、我々、そういう意味ではこれは政府がもっといろいろな面で協力をしなければならぬ。随分多くのボランティア組織がありますが、これからも協力をすると同時に、またお互いに連絡をとり合って、この組織が本当にODAとともに開発途上国の発展に生かされるように政府としても力を尽くしてまいりたいと、こういうふうに思っております。
  32. 宮澤弘

    宮澤弘君 ODAの問題と関連をいたしまして、最後に青年海外協力隊の問題について伺います。  この青年海外協力隊につきましては政府も随分努力をされまして、今年間八百人でございますか、送り出せるような体制になっておりますが、例えばアメリカでございますと、あれは三千人か四千人、大分これはけたが違います。そして、外務省の事務当局に伺いますと、まだ途上国の要請というのは非常に多い、それから国内の若い人の応募者も何倍かでかなり多い、こういうことでございます。青年海外協力隊というのは途上国の発展に貢献をし、また途上国との親善を深める意味がありますと同時に、私はこういう青年のエネルギーというものが日本の将来に非常に大きな役に立つということで、この制度を高く評価をいたしております。  そこで、ODA全般の問題もございますが、特に協力隊につきましては、例えば大きなダムをつくるとか発電所をつくるとかは大変大きな金がかかりますけれども、協力隊につきましてはそんなに大きな金がかかるわけではございません。そこで、ODA全体もそうでございますが、この青年海外協力隊につきましては、ぜひ今後新たに拡充の方針というか、計画を立てて実施をしていただきたい、こう思いますが、いかがでございましょうか。
  33. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 年々増加をいたしております開発途上国からの隊員派遣要請、これは非常に海外からそういう要請が強いわけで、恐らくこの隊員全体の三倍以上の要請があります。昭和五十八年より三年間で年間新規派遣隊員数を八百名に倍増するということとしまして、昭和六十年度予算によりまして一応達成したわけでございますが、政府としましては、本件事業が内外で極めて高い評価を受けておること、草の根レベルの協力あるいはボランティアの精神といった本件事業の特性を踏まえまして、さらには優秀な人材確保、隊員の後方支援体制の充実等の質的な向上にも留意しながら、今後とも本件事業の拡充に努めてまいる所存でございまして、今の宮澤委員のおっしゃるとおり、これはODAとともにまさに日本の大きな開発途上国に対する貢献につながっていく、本当に草の根レベルの交流というのがいかに大事であるかということをまさに象徴するものであろうというふうに私は思って、これには大いに力を入れていきたいと考えております。
  34. 宮澤弘

    宮澤弘君 総理協力隊については大変御理解をお持ちだと思いますが、いかがでございましょうか。一言でよろしゅうございます。
  35. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 協力隊の皆さんがこの公共目的に従事されまして懸命に各地において努力をされ、成果を上げられておることに非常に敬意を表します。従来、年間三百人から四百人ぐらいでございましたが、六十年度予算においてはたしか八百人までふやしておるはずであります。このような勢いで今後も努力してまいりたい。また、協力隊の皆さんの帰ってきた後のアフターケア、職業の問題とかその他の問題、あるいは医療の問題、そういうような問題についてもきめ細かくこれから注意していきたいと思います。
  36. 宮澤弘

    宮澤弘君 もう余り時間もございませんが、国際国家日本ということに関して具体的な問題を少し承りたいと思います。  まず第一は、海外における日本語教育の問題でございまして、政府は、二十一世紀初頭までに十万人でございますか、留学生を入れるという計画を持っておいでになります。そのためにも日本語の教師が非常に必要になりますし、それよりも何よりも現在海外で非常に日本語教師の需要が高くなっております。  そこで、海外における日本語教育について幾らか伺いたいと思いますが、まず事務当局に伺いますが、現在海外におきます日本語の学習者の数と日本語の教師の数はどのぐらいでございますか。簡単にお答えいただきたい。
  37. 荒木忠男

    説明員(荒木忠男君) 海外におきます日本語の学習者は、日本とこれらの諸外国との関係の緊密化や諸外国における対日関心の高まりとともにここ数年来非常にアジアを中心にふえておりまして、一例を申しますと、昭和五十七年までの十五年間に約十一倍に増加しまして、今は世界七十三カ国で約四十万人の人が勉強しております。それから、日本語の先生でございますが、外国で約六千人の方が日本語の先生として働いておりまして、このうち日本から派遣することができた人は二百二十八名でございます。それから、日本にも日本語の先生がおりまして、この数は最近の調べでは約二千八百人となっております。
  38. 宮澤弘

    宮澤弘君 今、海外の日本語の教師は六千人ということを言われました。先日も林委員がこの問題にたしかお触れになりましたけれども、イギリスのブリティッシュカウンシルでありますとか、あるいはフランス、アメリカ、ドイツというような国々では大変多く自国語の教師を外国に派遣をいたしておる。聞きますと、フランスでは何か三万人ぐらいフランス語の教師を政府が海外に派遣をしている、私こういうことを聞いたことがございますが、これに対しまして我が国日本語の教師の養成は大変心細い。国際交流基金で多少やっておいでになりますけれども、これはごくわずかであります。  文部省に伺いますが、国内の学校でございますとか、各種の大学や日本語学校、どのくらい今日本語の教師を養成いたしておりますか。簡単にひとつお答えをいただきたい。
  39. 大崎仁

    政府委員(大崎仁君) 現在我が国日本語教員の養成にかかわる教育を行っている機関といたしましては、五十八年現在の数字でございますが、大学で十九校、それから各種学校等の諸機関で二十一校でございます。大体そこで年間学習をしております者が約二千人程度でございますが、内容、水準、養成期間と非常にまちまちでございますので、日本語教員の養成の重要性にかんがみまして、現在その体制の整備に着手をしておるという状況でございます。
  40. 宮澤弘

    宮澤弘君 日本人日本語教師の問題は、今出ました数だけの問題じゃございませんで、教師の社会的地位というのが大変不安定なんです。例えば大学に籍のある人が外国に招かれてまいりましても、一年か二年はそれでいけますけれども、それ以上になりますとどうしてもやめていかなければいけない。そういたしますと帰ってからの就職の問題が出てまいります。先ほど総理が言われました青年海外協力隊と同じ問題が出ております。したがいまして、日本語教師の問題は養成の数を多くすることと同時に、派遣をし、また帰ってきた場合の職場の問題、いわば社会的なシステムというものを確立をしていかなければならないのでありますが、残念ながら現在のところは文部省、外務省あるいは国際交流基金というようにばらばらで施策が行われているような感じがいたしてなりません。したがいまして、今後の国際国家日本ということを考えますと、日本語の教育というものは日本と外国との文化交流のかけ橋でありますので、ぜひひとつ長期的視野に立って総合的な日本語教師の養成、それから、それが社会的システムになるような検討計画をつくっていただきたいと思います。総理大臣にお答えをいただければぜひお答えをいただきたいと思います。
  41. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 日本学の研究やあるいは日本語の普及のためには日本語の教師が不可欠でございます。政府は、二十一世紀までに十万人の留学生を日本に呼ぼうという計画、今第一年始めておりますが、そこではたと行き詰まっておるのは日本語の教師のことでありまして、単に量が多いというだけではだめなんであります。そういう意味におきまして、日本語の先生をできるだけ養成をして適当な先生を適当な地域に派遣する、そういうことに今後とも努力してまいりたいと思っております。
  42. 宮澤弘

    宮澤弘君 もう一つ国際国家日本ということに関連する具体的な問題として海外放送の問題を取り上げたいと思います。  日本の海外放送は、公正、迅速、確実、正確ということでかなり高い評価を受けておりますけれども、問題点がなお幾つかございます。一つは、放送時間や使用国語、これはアメリカのVOAでありますとか、イギリスのBBCに比べて三分の一とか四分の一とか大変少ない。それの拡大が望まれております上に、送信体制が大変弱くて受信状況が不安定であります。私ども外国へ参りましても、例えば北米の東部でありますとか中南米ではほとんど聞こえないというような、しばしばそういう話を聞きます。その原因は、一つは送信機が古くて出力が弱いということ、これは今取りかえにかかっております。もう一つは、送信機をかえましても海外の中継基地をたくさん置かなければなりません。日本はようやく二カ所であります。VOAは十カ所、BBCは七カ所。そこで、やはり今後この海外放送の経費をNHKの一般の受信料で賄うことには、これは私は限度があると思います。  郵政大臣に伺いますが、特にこの中継基地を増強するということが絶対に必要だと思うのであります。そういうことを含めまして政府がNHKにさらに助成をすべきではなかろうか、こう思いますが、いかがでございましょうか。
  43. 左藤恵

    国務大臣左藤恵君) 今お話しのとおり、国際放送、非常に今日ほど重要なことはないと思いますが、確かに受信状況日本の場合は相当改善を要するような状況でございます。そして、御指摘のように五十九年度から四年計画で百キロの送信機を八俣の送信所に置きまして三百キロの送信にするということに取りかえを現在進めておるところでございますが、海外中継局におきましては、これは従来のポルトガルにありますシネス放送中継所に加えまして、五十九年度からガボンのモヤビ中継所を加えました。これによって欧州方面は、中継の受信改善によりまして非常な効果があらわれているというふうに伺っておりますけれども、なおアメリカ大陸、それからアジア、こういったところにつきまして中継局を設置する必要があるということで、ただいまいろいろこの点につきまして準備を進めておるところでございます。しかし、全体といたしまして、今御指摘のようにNHKに対します政府の交付金というものが予算関係で限度があるわけでございまして、この点につきまして今後国際放送としての発想を転換するということで、できれば何かそういったことについてもっと積極的にやることができないかということにつきまして検討しなければならないところに来たのじゃないか。とりあえずのところは今申しましたようなことで国内送信所の整備と中継局の整備という形で進めさしていただきたい、このように思っておるところでございます。
  44. 長田裕二

    委員長長田裕二君) 宮澤君、時間が来ております。
  45. 宮澤弘

    宮澤弘君 今の海外放送の問題は、これは国際間の相互理解、文化交流という点から重要でございますし、また在外邦人の心のよりどころでもございます。したがいまして、場合によりましてはシーリングの外で考えるとか、あるいは政府広報予算全体の中でとらえるということも必要ではなかろうかと思いますので、その点総理の適切な御判断をお願いしたいと私は思っております。  終わります。(拍手)
  46. 長田裕二

    委員長長田裕二君) 以上で宮澤君の質疑は終了いたしました。     ─────────────
  47. 長田裕二

    委員長長田裕二君) 次に、矢田部理君の質疑を行います。矢田部君。
  48. 矢田部理

    ○矢田部理君 総理は、ことしは平和と軍縮の年だというふうに言われておりますが、平和と軍縮のためにみずからはどのようなことをなさるおつもりなのか。一つには米ソ軍縮交渉について国際的な環境づくりをおやりになるというようなことを言われておるわけでありますが、同時にアジアの平和と軍縮にとっても極めて重要な年ではないかというふうに私は思うわけでありますが、この近辺の軍縮と平和についてはどんなふうにお考えでしょうか。
  49. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 日本をめぐる周辺の地域についてもできるだけ対話を強化し、意思の疎通に努め、あるいは状況によっては学者や物資の交流等も行いまして、お互いの良好な状態を建設するように努力してまいりたいと思います。もちろん国によっておのおのニュアンスの差はございますが、一般的にはそういうことで言えると思います。
  50. 矢田部理

    ○矢田部理君 私どもにとって極めて重要な、しかもこの近辺で、解決の糸口をつくるのには適切な課題として朝鮮外交の問題があろうかと思います。南の韓国とは大変蜜月でありますが、依然として共和国に対しては制裁措置は取り下げたものの敵視政策を基調にしているのではないかと思われるわけでありますが、例の水害に対する救援などを糸口にして南北の対話が、少しくジグザグはしておりますが、開始をされました。また、アメリカを含む三者会談の提唱もありました。ここでやっぱり朝鮮における緊張緩和のための努力日本としても積極的にしてしかるべきではないかと考えるわけでありますが、この朝鮮外交の展開について、総理及び外務大臣はどんなふうにお考えになっているか、まずお聞きしたいと思います。
  51. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 何といっても我が国の隣国でありますし、この朝鮮半島の緊張が緩和され、朝鮮民族の最終的な統一が行われることを心から念願をいたしております。  そういう意味におきまして、今不幸にして南北に分かれております。日本としましては、韓国との間に外交関係を持っておりますが、北朝鮮との間には持っておりません。しかし、敵視政策というものをとっておるわけではございませんで、政府間の交流はありませんけれども、民間ベースの交流は戦後ずっと続いてきておりますし、今日もこれを維持しておるというのが今日の状況であります。そういう中でいろいろと南北間一進一退ありましたけれども、最近南北対話が続いておるということは大変緊張緩和、将来に向かって我々としても希望がつなげると思っております。何とかこの南北対話が進んでまいりまして、最終的には南北の最高首脳部が言っておりますような南北の最高首脳の会談というようなところまでいけば大変いいのではないかという期待をかけているわけでございます。  そういう意味で、南北対話の推進を我々も期待をし、そういう中で日本もこのような対話が推進され、あるいはまた緊張が緩和されるように、日本としてのできるだけの外交的な配慮、あるいは外交的な努力をしておりますし、また今後ともこれは続けてまいりたい。特に中国という存在が南北の対話の上に非常に大きな意義を持っていると思います。中国と日本は大変そういう中では今安定した関係にありますから、こうした日中関係等も大いにこれは南北の緊張緩和のためにこれを活用といいますか、進めていかなければならないと、こういうふうに考えておるわけであります。
  52. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 外務大臣と同じでありますが、何といっても北と南が融和して、意思を疎通して、そして交流が盛んになって、そして終局的な統一に向かって話し合いが進む、これが一番基本であるだろうと思います。そういうことを促進するように我々も環境醸成その他努力してまいりたいと思います。
  53. 矢田部理

    ○矢田部理君 二つばかり問題があろうと思うのでありますが、一つは私も南北の対話促進ということを大事だと思っておりますが、今朝鮮の状態はかつての朝鮮戦争がアメリカと共和国との間では一時休戦といいますか、休戦協定を結んで休んているだけなんですね。これを平和協定にしようというのが共和国の提案でありました。そのためには当事者であるアメリカと交渉しなければならない。休戦協定を平和協定にしなければならないということで三者会談の提案になるわけでありますが、今外務大臣は中国との関係を言われましたが、日本としてはアメリカに対してもこの三者会談実現のために、とりわけ休戦協定を平和協定にしよう、恒久的な平和をつくろう。そのことが緊張緩和にとっても大変重要なわけでありますから、外務大臣としてもあるいは総理としても、アメリカに対してもそういう努力を求めるべきではないかというふうに思うのですが、いかがでしょうか。
  54. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 今総理が申し上げましたように一番大事なことは南北の直接的な対話であろうと思います。幸いにして、この対話が進んでおるということは大変好ましい状況にあると思いますが、そういう中で、さらにこの三者会談であるとか、あるいはまた四者会談であるとか、あるいは六者会談であるとか、いろいろのこれからのこの南北の対話、さらに朝鮮半島の統一へ向かってのいろいろのフォーラムの動きがあるわけでございます。私はそれはそれなりにこれからの南北の状況が進む中において意味を持った構想であろうと思いますが、しかし基本は何といいましても南北の対話じゃないだろうかと、そういうふうに思っております。そういう中で日本も対話を進めるために努力をしていく。また、中国にもそれを求めると。あるいはまたアメリカもこの南北問題、朝鮮半島の情勢には非常に強い関心を持っておるわけでございますので、アメリカはアメリカなりの南北の対話、あるいはまた緊張緩和に向かっての努力期待をされるわけでありまして、そういう点については日本も累次アメリカと意見の交換をいたしておるわけであります。
  55. 矢田部理

    ○矢田部理君 やはりアメリカに言うべきことを言い、アメリカを含めた会談の実現、数さえ多くすればいいというものではありません。少なくともアメリカは戦争の当事者だったわけでありますから、この点で外務大臣なり総理にも御努力をいただきたいと思います。と同時に、もう一つは共和国との交流をもう少し多面的に、しかも活発にしていくべきではないかというふうに考えるわけであります。人的な交流はもとよりでありますが、経済的にも文化的にもいろいろな意味でのやっぱり交流をさらに前進させる方向外務大臣としては積極的に打ち出すべきではないかと思いますが、いかがでしょうか。
  56. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) これは、かつて制裁措置をとった時代と違いまして、ことしの一月一日からは相当やはり日本と北朝鮮との間の交流ですね、これは議会の交流であるとか、あるいは民間の交流であるとか、そういうものが進んでおるわけでございまして、こういう空気がよくなれば、そういう民間の交流、各方面交流というものも進んでいくであろうと私は思っておるわけでございますし、今の状況としては私は決して日本と北朝鮮の関係政府間の関係こそないですが、全体的に見れば決して悪い状況には進んでいないと、こういうふうに思っておりますし、この空気がまたさらにいろいろと醸成されることをも期待をいたしております。
  57. 矢田部理

    ○矢田部理君 先ほどもお話がありましたが、SDIへの参加の問題を少しく伺っておきたいと思います。  NATOの国防相会議ワインバーガー国防長官日本に対してもSDIの研究開発に参加をしてほしいという要請を発し、既に書簡が届いたとされているわけでありますが、NATO諸国を初め各国に出したところ、各国の反応は非常に消極的な感じがしてならないわけであります。幾つかの事例を指摘をいたしますならば、フランスは大変危険な試みであるといって反発をしております。イギリスもサッチャー首相は賛成、理解を示したかのようでありますが、ハウ外相は極めて批判的で、保守党内部もやっぱり分裂をしていたようでありますし、デンマークやギリシャもNATOに加盟しておりながら、デンマークは国会で反対決議を行っている。ギリシャは留保という態度をとる、オーストラリアは拒否を表明するというようなことで、単に慎重であるというだけではなくて極めて批判的な対応が目立っておるわけでありますが、日本の対応としていかがすべきか。先ほどお話がありましたが、既に理解をしたという態度を示していることから、参加という方向に引きずられる危険を感じてならないのでありますが、その点いかがでしょうか、総理にお尋ねしたいと思います。
  58. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 政府は米国がこのSDIの研究を行うことに理解を示すと述べてきたわけでありますが、具体的な研究への参加ということになりますると、従来の立場とは相当に違ったことになるのじゃないかという御質問であるように思いますが、アメリカから、SDI非核防御的手段によって弾道ミサイルを無力化し、核兵器廃絶を目指すものという説明を、総理みずからがレーガン大統領から受けて、その結果こうしたアメリカ側の考え方に共感を覚えまして、こうした考え方に基づき研究を行うことは評価し得るという意味で理解をいたしたわけでございます。  他方、またこのSDIは極めて長期的な構想でありまして、現在は研究段階であります。したがって、政府としまして、SDIの最終的な評価を現時点であらかじめ想定しているかのごとき印象を与えかねないような支持という言葉は用いておらないわけでありまして、こうした我が国立場は、このSDIの研究への参加、協力可能性について予断をしているものではございませんで、今般の米国の呼びかけに対する対応は、今後米国から提供される情報等を踏まえ、我が国の基本的な立場に立って自主的に決定する所存でございまして、先ほどから総理も述べられましたように慎重に対処してまいりたい、研究してまいりたい、こういうふうに思っております。
  59. 矢田部理

    ○矢田部理君 書簡によれば、得意とする分野について示唆をしてほしい、六十日以内に回答してほしいという期限つきの要請になっておるわけでありますが、期限内に何らかの回答をする御予定でしょうか。
  60. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) この期限つきというのは、私もよくわかりませんけれども、まあ一応書簡では六十日以内に回答をいただければと、こういうことになっておりますので、日本としましても慎重に検討して、相手側からオファーが来たわけですから、これに対して回答はしなければならぬわけでございますが、どういう回答をするかについては、これは先ほどから申し上げましたように慎重に政府部内で検討して、そしてその結果を回答したい、こういうふうに思っております。
  61. 矢田部理

    ○矢田部理君 得意とする分野ということから一、二連想されるものとして、既に今年度の国防報告にも二つばかり指摘がなされているようであります。ミリ波通信と光電子工学などが挙げられておるわけでありますが、そういう分野について何か示唆的な話でも既にあったのでしょうか。この点はどんなふうになっていましょうか。
  62. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) この書簡が、全く突然といいますか、いただいたわけでありますし、これに対してこれから考えていくわけでありますが、その以前に、このSDIに関してアメリカ側から何らの情報も得ておりません。これはロサンゼルス会談以来今日に至るまで政府としてしばしば申し上げておるとおりであります。
  63. 矢田部理

    ○矢田部理君 このSDI計画は、もうここでもしばしば指摘をされてもおりますように、宇宙を核戦場にする危険、宇宙に軍拡を広げるおそれなどを含めていろいろな問題点が提起をされているわけであります。先ほどもお話がありましたが、平和憲法あるいは非核原則、それからこの宇宙兵器も含めたジュネーブにおける軍縮というようなことから見れば、我が国として断じて参加をすべきでない、我が党の考え方は基本的にそう思っておりますので、政府としても、理解を示したことから引きずられて各国に先駆けて参加をする、例えば今度のサミットの土産にしようなどという気持ちにならないように強く要望しておきたいと思いますが、総理から最後に一言この点について伺っておきたいと思います。
  64. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 国益を踏まえて慎重に検討していきたいと思います。
  65. 矢田部理

    ○矢田部理君 平和と軍縮の年をより実りあらしめるためにいかがするかということは、いろいろな角度から議論が可能なのでありますが、十月に国連総会が開かれます。ことしは四十周年ということで各国の首脳も集まるということでありますが、総理として出席をし、とりわけ各国に訴え、あるいはみずからもかくするというような何か御予定はございますでしょうか。
  66. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) どういうふうな国連総会になるであろうか注目もし、いろいろ検討も加えていきたいと思っております。
  67. 矢田部理

    ○矢田部理君 まだ出席の予定とか方向とかということは考えておられませんか。
  68. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 全く白紙でおります。
  69. 矢田部理

    ○矢田部理君 防衛問題に移りたいと思いますが、中曽根内閣の防衛政策の特徴といったようなものについて、私の防衛政策はこれだというような何か考え方はございますでしょうか。
  70. 加藤紘一

    国務大臣加藤紘一君) 一国の防衛政策は、例えば私たちのところは、新憲法に基づいて専守防衛、そして非核原則を守るという幾つかの防衛基本政策があると思います。それから国防の基本方針という防衛政策についてのある種の大変重要な基本方針もあるわけで、中曽根政策における防衛政策も、その従来の基本原則にのっとった連続性のある政策であると思っております。
  71. 矢田部理

    ○矢田部理君 加藤さんの話を聞いても内閣の総体の話が出るのかどうか知りませんが、あなたの話とちょっと違うんですよね、あなたはまだ最近のあれだから。中曽根さんの防衛政策の特徴というのはどうも歴代自民党政府と少し違うのではないか。私どもは自衛隊に反対でありますし、違憲の存在だと認めておりますが、自衛隊を認め、かつ軍備増強を行ってきましても、歴代政府平和憲法だとか、国会の論議であるとか、さらに国民世論などを考慮して防衛政策を少しく抑制的にとらえてきた。今、防衛庁長官が言われた幾つかの原則も立ててこられた。少しずつ空洞化してきている面もあるわけでありますが。非核原則、武器輸出禁止の原則、GNP一%、専守防衛、集団自衛権の否定など幾つかの政策が挙げられるわけでありますが、どうもこれまで歴代保守党政権がつくってきた政策を一つ一つ壊すことを中曽根内閣は任務としているのではないか。戦後政治の総決算はまさにそこにあるのではないかという気がしてならないわけであります。その点で歯どめなき軍拡への道などという指摘もあるわけでありますが、総理、そういう批判、意見に対してはどうお考えでしょうか。
  72. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 別に変わっていることはないと思っております。野党の皆さんがほかの総理大臣には御質問にならなかったことを私には御質問になりますから、憲法の解釈を申し上げているのであります。
  73. 矢田部理

    ○矢田部理君 その話は一つ一つこれからやっていくことにいたしまして、五九中業について伺っておきたいと思います。  中曽根内閣は、五九中業をもって大綱の水準達成を期すという立場で既に作業をしておられるようでありますが、この作業状況、五九中業の策定方針等々についてお尋ねをしたいと思います。とりわけ、去る二十七日には防衛庁長官総理に対してその向きの報告をなされたというようなこともございますので、まず御説明をいただきたいと思います。
  74. 加藤紘一

    国務大臣加藤紘一君) 五九中業は今作業中でございます。各幕と内局との間においてどういう構想にするか今まさに作業をし、その構想について調整を行っている段階でございまして、夏までにはこの作業を完了したい、こう考えております。
  75. 矢田部理

    ○矢田部理君 それはもう聞かなくてもわかっておるのですが、策定方針の基本は何ですか。
  76. 加藤紘一

    国務大臣加藤紘一君) 五十一年につくられました防衛計画の大綱がまだ水準を達成してないわけですから、その完成を期するということでございますけれども、それが第一の基本方針でございます。
  77. 矢田部理

    ○矢田部理君 それは聞かなくてもわかっておるのですが、その策定をするに当たっては、どこを重視するとか、何を重点にするとか、こういうことを優先順位にしてやるとか、いろいろな考え方があるわけでしょう。それは説明できませんか。
  78. 加藤紘一

    国務大臣加藤紘一君) そこでさっき大綱との差を申し上げたわけですけれども、その中では特に、例えば作戦用戦闘機、航空機を初めとして、海空の部分において大綱との隔離というものがありますので、その辺にはかなり重点が置かれる、これは大綱達成というところから出てまいります必然的な重点でございます。
  79. 矢田部理

    ○矢田部理君 総理として、何か中業策定に当たって考え方を示されたようなことはございますでしょうか。
  80. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 防衛庁長官と同じでございます。
  81. 矢田部理

    ○矢田部理君 総理は、二月四日の衆議院予算委員会で、洋上撃破を中心とした思想で練るようにという指示を与えたというふうに言われておりますが、そうじゃございませんか。
  82. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 長官も、海空重視と防衛計画の大綱との乖離を、そこはかなり強い乖離があるからそれを重点に入れる、そう申し上げているとおりであります。
  83. 矢田部理

    ○矢田部理君 長官は何か水際防衛というようなことを言われておりますが。
  84. 加藤紘一

    国務大臣加藤紘一君) この点につきましては、総理が本会議やそれから衆議院予算委員会の段階でも申しましたけれども、私たちの国に対する脅威というものは、私たちは島国、四面環海の国でございますので、必ず海ないし空を経由してくる。したがって、その第一に、この着上陸に至らないような状況ということをまず達成しなければならないのではないか。そういう意味では、いわゆる水際における防御というのは重大になるということは御承知のとおりでございまして、それは陸海空三幕とも、その点については今後とも重点を置いてまいりたい、そんな発想で今いろいろ内部で討議をしているところでございます。
  85. 矢田部理

    ○矢田部理君 海空重視で、洋上とか、これは水際というんですか、の防衛でやっていくということを重点に考えていくということでありますが、もう一つ側面は、この大綱の水準、別表に量的には記載をされているわけでありますが、マイナス六十年度、予算が通った場合の、到達分ということが五九中業の内容になるのでしょうか。
  86. 加藤紘一

    国務大臣加藤紘一君) マイナス六十という意味、ちょっとわからなかったのですが、もう一度お願いできますでしょうか。
  87. 矢田部理

    ○矢田部理君 別表がありますね。それから六十年度で、これは予算をどうするかという問題がありますが、仮に通った場合に、六十年度予算で到達した水準がありますね。それと別表の水準との差が五九中業の中身になるのかと、こう聞いているのです。
  88. 矢崎新二

    政府委員(矢崎新二君) ただいま御指摘の点は、防衛計画の大綱の別表に防衛力の目標とすべき量的な規模が書いてございまして、その中で、例えば海上自衛隊の作戦用航空機が約二百二十機ということになっておりますが、それに対して六十年度の完成時が約百四十機でございまして八十機ほど不足がある。それから、航空自衛隊の作戦用航空機も、大綱の別表に掲げておりますのは約四百三十機という規模を目標にしておりますが、六十年度の完成時が約三百六十機でございますから、約七十機ほどの不足がある。したがって、この規模を埋めていくということが基本的に必要であることはもちろんでございますが、それだけではございませんで、やはり期間中の減耗の要素もございますし、そういう点もあわせ考えながらこの量的な面は検討をしていかなければいけないということでございます。
  89. 矢田部理

    ○矢田部理君 そうしますと、例えばこのF15とかP3C等では、減耗分も含んでどのぐらいの調達を機数的には予定をすることになるのでしょうか、主要な航空機について伺っておきたいわけでありますけれども。
  90. 矢崎新二

    政府委員(矢崎新二君) まさにその辺は、目下五九中業の作業の過程で、どういうふうに持っていくかという点を、そういった今後の減耗状況の見通しも検討しながら詰めている過程でございますので、現段階でまだ個別にこの機種はこれだけというふうに明確には申し上げられない状況でございます。
  91. 矢田部理

    ○矢田部理君 私は、従来のこの一覧表を見ておりますと、別表で作戦用航空機が四百三十機ということになっておるんですが、これは年度がたつごとにその機数が減っていっているわけですね。これは減耗があるからだろうと思いますが、五十二年は四百六十機あったのが五十四年に四百機、五十六年三百五十機、そして五十八年には三百四十三機と、大綱の水準別表からはどんどん離れている。それで大綱の水準達成だということになったら、大変な数、大変な量の飛行機をやっぱり調達しなければならぬということになりはしませんか。この辺は一体どうなっているのでしょうか。
  92. 矢崎新二

    政府委員(矢崎新二君) ただいま御指摘の点は、ちょうど時期的に、この大綱を策定いたしましてから以後のこの時期に、海上自衛隊の例えば対潜哨戒機でいいますと、在来の機種でありますP2Jとかいうものの減耗が急速に進行するような時期になってきていたわけでございます。航空自衛隊につきましても、作戦用航空機の古いF104といったようなもの等の減耗が進んでいくというような時期になっておりまして、それを埋めながら従来五三中業なり五六中業でいろいろな事業を実施してきたわけでございますけれども、その整備量が減耗のスピードを埋めるまでには至らないということから、こういった勢力が少しずつ減少をしているというのが現状でございます。  ただ、こういった中にありましても、中身的に申しますと、海上自衛隊でいえばP3Cとか、航空自衛隊でいいますとF15とかいうふうな、性能の高い航空機が一方では整備されてきておるわけでございまして、全体としてその量と質と両面を見ながら今後大綱水準の達成のために検討を詰めてまいりたいというふうに考えております。
  93. 矢田部理

    ○矢田部理君 大綱そのものは量について規制をしたが質について規制をしなかった。したがって、質の高い航空機などをどんどん導入することになった。その結果、従来の航空機から見れば非常に大きな能力、数十倍もの能力を持つような武器もあるいは装備も持つようになってきたわけてありますけれども、単に量的達成、量が足りないからというだけではなくて、その質の面もあわせて考えることをいたすならば、何も量にこだわる必要はないのではないかというのが第一点でありますが、その点長官いかがですか。
  94. 加藤紘一

    国務大臣加藤紘一君) 防衛計画の大綱をつくられたときに、坂田長官の時代の昭和五十一年だったと思いますが、そのときに、別表におきます数、それと質の問題というのは大変な論議があったと聞いております。その際に、質につきましては、やはりそれぞれの時期におきます諸外国の科学技術の動向に対応した、少なくともその動向を見きわめたものでないと、それは意味のない防衛力になってしまうのではないかということで、その質につきましては、そのときどきの情勢に、変化に応じたものということが大綱の基本的な精神であったと思います。したがって、昭和五十一年から現在までの間に、当時ではなかったような新しい装備やそれぞれの正面装備を導入いたしたわけでございますけれども、それは私たちぜひやっておかなければならなかったことではないか、そんなふうに考えております。
  95. 矢田部理

    ○矢田部理君 四次防が終わったころ量的には概成をされたと。事実飛行機の機数なんかも別表は四百三十機の予定、四百六十機あったときもある。その後量的にも減っておる、質的にもということになると、量も質もということになるとこれはいつまでたっても大綱は水準達成ができない。さらに高い質のものを求めることになるということで非常に問題があるということをひとつ指摘をしておきたいと思いますが、同時に幾つかの五九中業で主要装備の調達計画についてただしておきたいと思います。  一つは次期支援戦闘機を五九中業には盛り込むのかどうか。F1の後継機選定作業がその後F1の寿命が延びたということで振り出しに戻ったとも聞かれるわけでありますが、アメリカ製のものあるいはヨーロッパの何といいますか、トーネードとかいう共同開発の戦闘機、さらには国産というようなことでいろいろな議論が交錯しているようでありますが、その辺はどうなっているのか伺っておきたいと思います。
  96. 矢崎新二

    政府委員(矢崎新二君) 御指摘の問題は、現在持っております支援戦闘機F1型機の後継の問題だと思います。この現在持っておりますF1型機につきましてはかねて疲労状況等の調査で耐用命数の確定をしようという作業をしてきたわけでございます。五十七年から五十九年にかけてそういった調査をいたしました結果、この耐用命数は当初仮に置いておりました三千五百時間から四千五十時間に延長されるという結論に至りました。そこでその結果といたしましてF1型機の後継機の取得時期までには約十年ぐらいのリードタイムが生ずるということになったわけでございます。F1型機の減耗開始時期が六十年代の後半から七十年代の前半に延びるということの結果そういうふうになったわけでございます。  そこでその程度の時間的余裕がありますと、仮に国産で開発しようという場合にその可能性もあり得るではないかというふうな状況になってきたわけでございます。そこで後継機種の選定に当たりましては、外国機の導入のみならず国産の可能性も含めて幅広く検討をすることが適当ではないかという観点に立ちまして、まず機種選定に入る前段階の作業といたしまして、果たして国産機の開発というものが技術的に可能であるかどうかということをまず検討してみようということになりまして、現在その国産技術で開発が可能かどうかの検討を進めているところでございます。したがいまして、その結論を得た上で最終的には幅広く外国機、国産機等々の選択肢を公正かつ適正に機種選定作業として実施をしていきたいというのが現状でございます。したがいまして、五九中業の中でこの辺をどういうふうに表現をするかということにつきましては現在なお検討中でございまして、まだ明確な結論を得ている段階ではございません。
  97. 矢田部理

    ○矢田部理君 五九中業に盛り込まないということではないのですか。
  98. 矢崎新二

    政府委員(矢崎新二君) F1型機の後継機の問題、それからまた、そもそも現在の保有しております支援戦闘機規模がもともと私どもが持ちたい量と比べてまだ不足があるという状況があったわけでございますので、そこら辺の状況も総合勘案しまして最終的にどういうふうに表現するか今検討しておりますけれども、何らかの表現でこの五九中業の中でこの辺の問題を触れるということは当然あり得ることだと思っております。
  99. 矢田部理

    ○矢田部理君 余り無理をしてもらわなくても結構なんです。  もう一つは、国産衛星を本格的に利用するということで考えておられるようでありますが、既に「さくら」二号の利用あるいはアメリカの通信衛星であるフリートサットの利用など、宇宙の平和利用に関する国会決議に沿わない方向での衛星の利用が方向として大きくなろうとしているわけでありますが、これは私反対なんですね。防衛庁自身はC3Iとかということで、その強化の一環ということでこの辺大変本腰を入れておられるが、とりわけこの軍事利用と、衛星の軍事利用ということは大変問題であるということで五九中業にも入れるべきでない、検討の対象にすべきでないと思いますが、いかがでしょうか。
  100. 加藤紘一

    国務大臣加藤紘一君) 自衛隊による衛星の利用につきましては、かねてから国会の決議の解釈の問題があるわけでございますけれども、私たちとしては殺傷力、破壊力として用いることはこれは許されないであろうと。しかし、一般に汎用化されている衛星の利用、例えば通信衛星なんかはもうほぼ一般の茶の間にもその機能を利用された電波が届いているわけですから、それにつきましては自衛隊が利用することも許されるのではないか、まだ汎用化、一般化されていないものにはその使用に制限があるのではないかというような考えで、行政府としては対処させていただきたいと、こう申し上げているところでございます。もちろんこれは有権解釈は最終的には国会、立法府の場にあるわけでございますし、私たちも個々のケースについて慎重に対処してまいりたいと思いますけれども、私たちとしては今のような原則で考えさせていただければと、こう思っております。  それで、具体的に五九中業の中でこの衛星利用の問題をどう扱うかにつきましては、現在まだ本当に検討の段階でございますので、ここでまだ確たることを申し上げられる段階ではございません。
  101. 矢田部理

    ○矢田部理君 先ほどの話に戻るのですが、どうも中曽根内閣というのは国会決議を次々に無視することを本分にしているかのようなところがありまして、この点でも厳しく警告をしておきたいと思うんであります。  もう一つ、やっぱり国会でも大変論議になりました空中給油機を五九中業で検討しようではないかというような動きもあるわけでありますが、とりわけ制服がその導入を強く求めている。これはもともと専守防衛の範囲を越えるということで国会でも外させた経過もあるし、さらには大綱自身がそんなことは予定していないということもあるわけでありますから、即刻中止をすべきだと思いますが、いかがでしょうか。
  102. 加藤紘一

    国務大臣加藤紘一君) この種の問題も含めましていかなる装備をするか、いかなる五九中業の内容にするかにつきましては、私たちも責任を持ちながら内局と制服の間で本当に真剣に議論をして詰めております。そういう意味でシビリアンコントロールにもとるようなことは重々ないように私たちも全力の注意を払っているところでございますので、その点は御理解いただきたいと思います。  具体的に空中給油機の問題については政府委員よりお答えいたします。
  103. 矢崎新二

    政府委員(矢崎新二君) まず、五九中業でどういうふうに具体的に取り上げているのかというふうな御質問でございますが、この点は五九中業そのものはしばしば申し上げておりますように、まだ庁内の検討段階でございますから、具体的に計上される事業については申し上げ得る段階にはないわけでございます。  ただ、一般的な問題として空中給油機能の問題を私どもはどう考えているかという点については、これは前にも申し上げたこともありますけれども、一つには近時の航空技術の進歩が大変顕著なものがございまして、従来に比べまして低高度侵入あるいは高高度の高速侵入というような能力が著しく向上をいたしております。したがって、空中給油機能を活用いたしますれば空中で警戒待機をする時間が延びていくというふうな利点がございますので、こういった低高度侵入とか高速侵入に対してより迅速に対応し得ることになります。それからまた、洋上防空の面でも航空自衛隊の戦闘機が我が国周辺の空域で可能な範囲で行います防空作戦が一段と効果的に行い得るという認識は持っております。そういった点も踏まえまして、空中給油機能の問題についての研究をしていることは事実でございますけれども、その導入の問題につきましては、運用構想ですとか、あるいは後方支援態勢などに検討を要する問題が多々ありますので、まだ結論は得ていないわけでございます。  それから、大綱との関係、御指摘でございましたが、私どもそういう状況ですので具体的に詰めて検討をしているわけではございません。ただ、航空自衛隊の場合は作戦用航空機、約四百三十機というふうに書いてございますが、その持ち方というのは大綱の本文にありますように、諸外国の軍事技術の進歩にも対応し得るように常に配慮をするということが一方でございます。そういったようなことを踏まえて考えますれば、その四百三十機の中で持ち方を工夫をすること自体は可能ではないかなというふうに感じてはおりますが、これも具体的に明確に詰めて結論が出ているという状況ではございません。
  104. 矢田部理

    ○矢田部理君 一つ一つやると切りがないのでありますが、どうも五九中業で大綱の水準達成を期すということから、期すだけではなくて、他のものまで大量に持ち込んで、一気に軍拡といいますか、装備を固めようというような気配が濃厚に感じられてなりませんので、そういうことは断じてやめるべきだということを申し上げておきたいと思います。  この件の最後になりますが、あと費用の問題は別途論議をいたすことにいたしまして、防衛庁長官、日米防衛首脳会議を何か六月ごろに予定をされておるということでありますが、どうでしょうか。
  105. 加藤紘一

    国務大臣加藤紘一君) アメリカのワインバーガー国防長官の方から私あてに招待状がかねてから来ておりますので、一度アメリカに行ってまいりたいと思っておりますけれども、その時期につきましては国内のいろいろな条件がございます。その一番重要なのが国会の審議でございますけれども、その点を踏まえながらどういたしますか、日程的なことにつきましてはまだ白紙でございます。
  106. 矢田部理

    ○矢田部理君 六月論が飛び交っているわけでありますが、どうも防衛庁は国会が開かれているうちに五九中業を決めるとうるさい、だから七月ごろにつくる、しかしアメリカには六月ごろ出向いていって五九中業の御説明を申し上げるというような段取り、計画になっているのではないかと思われるのですが、いかがですか。
  107. 加藤紘一

    国務大臣加藤紘一君) アメリカは日米安全保障条約によって私たちと非常に密接な関係のある国ではございますけれども、我々の国の防衛政策は我々国民に一番最初に申し上げるべきであり、また国会で御審議願うというのが筋であろうと思いますし、私たちはそういたしております。国民に発表する前にアメリカに何らかのことを説明しに行くという意図はございませんし、今後ともそんなことをやるつもりはございません。  五九中業が夏になりましたのは、矢田部委員御承知のとおり、これが概算要求の基礎になるものでございますから、その概算要求が、防衛原案というのが八月の下旬までにつくられなければならないというようなことから考えると、夏までに中業の作業をやるというのが、五三中業でも五六中業でもそういうスケジュールでやってきたものでございますので、御理解いただきたいと思います。
  108. 矢田部理

    ○矢田部理君 理解というわけにはまいりませんが、次のテーマに移りたいと思います。  GNP一%問題でありますが、総理衆議院で一%枠は守りたいという発言を最終的になさいました。これは総理の発言は重いというふうに思うわけでありますが、その守りたいという決意を現実のものにするためにどのような努力をなさるおつもりであるか、具体的にお示しをいただきたいと思います。
  109. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 守りたいということを申し上げてまいりましたが、これからいろいろな策定等は行われるでしょう。そういう際に、その念願実現するようにいろいろチェックしてみるし努力もしてみたいと思うわけであります。
  110. 矢田部理

    ○矢田部理君 総理は言うならば最高の権力者でありますから、御自身の決断で守ることができるわけでありますから、単なる願望表明というふうには受け取っていない、むしろこの意味は重いというふうに私は受けとめておるわけでありますが、そこで幾つかの問題点を指摘しておきたいと思います。  一つは、総理の私的諮問機関、必ずしも評判がよくないのでありますが、この私的諮問機関である平和問題研究会で一%枠見直しの報告をまとめました。総理がお好みのメンバーを集めた諮問委員会であったようでありますが、ここの中でも実は一%枠突破については甲論乙駁あってまとまらなかった、総理の強い意向を受けて一%枠突破を図ったというような報道がなされているのですが、いかがでしょうか。のみならず、突破した後は新歯どめについて定量的なものではなくて定性的なものにしなさい、これまた総理の意向を受けてそう書くことになった。さらには、この報告書の原案を総理自身が筆を入れられたというようなことで、言うならば平和問題研究会、私的諮問機関ではあっても、何か総理御自身の自作自演みたいな報告書になってしまったということで、もっぱらなうわさなのでありますが、いかがでしょうか。
  111. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) そういううわさは全く事実無根でありまして、あれは他作他演であります。
  112. 矢田部理

    ○矢田部理君 すべての報道が他作他演などとは書いてないのでありまして、どうも総理の政治手法は、何か私的な好みのメンバーを集めてそこで何かをやらせて、本来いろいろな意見が出ていいはずなのに一つ方向でまとめて、それを世論づくりの先兵にする、その上にみずからの政治をのせる、こういう政治手法は決して好ましいものではありません。とりわけ私的諮問機関などというのは多発すべきでないというのがかねてから言われてきているわけてありますから、そういう点でもどうもやっぱり一%論については幾つかの危惧を抱くわけであります。  もう一点伺っておきたいと思いますのは、一%突破の重要な契機となると思われるのは先ほどの大綱なのであります。大綱と一%の問題について総理は、大綱の決定が第一義である、水準達成が中心目標である、一%はその注意にすぎない、大変この一%問題を軽く扱っておられるわけでありますが、私は決してそうは思いません。もともと四次防と大綱との違いというのは、四次防は五カ年計画でありました。予算も明示してあった、試算があった、内容も具体的であったわけでありますが、それに対して大綱は期限の定めなき計画であります。もちろん財政計画もありません。量的な歯どめはしましたが、質的には抑えがない。そこで、かねてから懸念をされておった軍拡に対してどういう歯どめをつくるかということで、もう既に、言うならばかなり前の段階から一%論が政府の見解になっておったわけであります。  幾つかの事例を示すと時間がかかってしまいますが、例えば四十八年二月一日に防衛庁長官は「平和時の防衛力」ということで一%論を提起しております。その後、坂田さんの時代でありますが、防衛を考える会という私的な諮問機関をつくって、そこの答申を見ますと、防衛費として国民の支持が得られる限度はGNPの一%以内が適当と、こういうことのいろいろな積み上げ、積み重ねの上に、田中総理も中国に行って、日本は一%以内という抑えがあるのだから軍事大国になりませんと、日中国交回復のときに盛んに中国であの種のことを演説されておる。こういう積み上げの上に閣議決定になったのでありますから、歴史的に見てもこの一%論は重いと見なければならぬわけでありまして、とりわけ歴代自民党政権がつくった閣議決定を余り軽く扱うのはいかがかと思うのでありますが、もう一度総理のお考えを述べていただきたいと思います。
  113. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) この席で前にも御答弁申し上げましたように、三木内閣のときに、五十一年の十月前後でありましたか十一月でございましたか、ともかく大綱を策定しまして、そしてその後一週間たって、大綱についてめどをつける必要がある、そういうので別のおくれた閣議で一%のめどという閣議決定が行われました。やはり大綱というものが主軸であって、それに対するチェック機能として当時一%というめどをつくった、そう考えております。
  114. 矢田部理

    ○矢田部理君 まさに軍拡に対する歯どめ、財政的なコントロール、チェック機能ということの意味を私は申し上げているわけであります。  そこで、その後の歴代防衛庁長官のこの問題に対する言動といいますか、国会答弁などをずっと調べてみますと、例えば三原長官のごときはもう十年後でも一%で賄い得るということを示したんだ、財政的には一%枠でやれというきつい取り決めなんだというふうに言っておられるわけでありまして、その点はやっぱり総理も認識を新たにしていただきたいと思うんです。前回もここの席で、何か言われておりますけれども、無制限な体制で整備を大綱はやるわけではない、一%というかんぬきがかかっておる、こういうふうに考えるべきなのであり、また歴代長官もそう答弁しているのでありまして、その点は少し勉強し直していただきたいと思うんでありますが、いかがですか。
  115. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 私も相当勉強してきたものですから、し直しても同じじゃないかと思います。
  116. 加藤紘一

    国務大臣加藤紘一君) 委員ただいまの一%のめどの問題につきまして、歴代の長官が十年でもこれが続くものだというような、例えば三原長官の御発言ということで御指摘がございましたけれども、私たちが調べた感じでは、いろいろな発言がございますけれども、大体一%の当面のめどの当面と言った場合、恐らくあの当時の長官の御発言としては、四、五年が当面かな、そういうような従来の国会答弁が多かったのではないだろうかなと、こう思っております。  それから、大綱の達成につきましては、確たる発言は国会議事録上はないのですけれども、当時の政策立案者の発言等いろいろなものを見ますと、十年ぐらいを頭に描いていたような、そんな感じでございます。
  117. 矢田部理

    ○矢田部理君 期間の話は、どちらについても余り公式な話はないんです。ただ、例えば久保卓也さんなどが、一%論というものの当面の間というのは三、四年という了解があるといわれていると、制服組がいろいろなことで一%に抵抗するものだから、そんな人の話のような説明をしたことはあった模様でありますが、正式に当分の間とは三、四年であるなどという議事録はない。それから、まして、大綱の水準達成は三、四年だというふうに総理は言われておりますが、これは間違いでしょう。衆議院でも改められたようですが、参議院でまたまたここで答弁されておるんですが、総理いかがですか。
  118. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 各大臣防衛庁長官の発言を私もずっとトレースしてみましたが、おおむね四、五年と今防衛庁長官がお答えになりましたが、そのような感覚でいたように思います。ある場合には六、七年とか、いろいろな数字の差はありますが、おおむね大体四、五年というのが頭にあったのではないかと思います。と申しますのは、大綱をつくる基礎になりまする当時の経済計画、五カ年計画の前提ではたしか成長率が年一三・三%程度であったと思います。一三・三%程度というものが頭にあればまあ四、五年ぐらいで達成できるだろう、そういうのではないかと思います。しかし、その後石油危機によりまして経済成長が、ある場合には〇%にもなり、あるいは二%、あるいはようやく上がって五%、そういう形になりまして、それで波乱が出てきたのではないかと思います。
  119. 矢田部理

    ○矢田部理君 総理、一%論の議論の中では四、五年論は多少ニュアンスとして私もわからないわけじゃなかった。話としてあった模様でありますが、大綱の水準達成を三、四年とか四、五年という話は全くありません。それまで三次防、四次防と五年ごとに区切ってきたわけですね。今度はやっぱりそういう期間を切らずにやる、期限の定めがないところがポイントなんでありまして、それが四、五年ということならば、もとのもくあみに期限的にはなるわけでありまして、それは全く総理の勉強不足、記憶違いというものでありますが、もしあったらお示しいただきたい。
  120. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 当時並びにその後の防衛庁長官の答弁をずっとトレースしてみますと、そういうようなことを頭に置いて言われたと私は推察しておる。金丸長官それから三原長官等の発言等を拾ってみますと、ばらつきはありますけれども、そういうようなものがあると私は考えておるのであります。
  121. 長田裕二

    委員長長田裕二君) 速記をとめて。    〔速記中止〕
  122. 長田裕二

    委員長長田裕二君) 速記を起こして。
  123. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 私の発言でちょっと補足申し上げたいと思うのでありますが、御質問の中で私が質問をちょっと取り違えたところがありまして、大綱の達成という問題じゃなくて、一%を続ける期間という意味であります、ただいま申し上げたのは。
  124. 矢田部理

    ○矢田部理君 私もそのことを申し上げてきたわけでありまして、一%については確かにそういう向きの話があったやに見られる部分もありますが、大綱についてはそういう期間の話はないということが正確なのでありまして、そう訂正されたのは結構だと思います。  そこで、大綱と一%論議に移っていきたいと思うのでありますが、五九中業で大綱の水準を達成する、達成を期すと。達成を期すという言葉の意味が少しニュアンスがあるという説もあるわけでありますが、そういうことになりますと、ここで五九中業期間中の防衛費を幾らぐらいに見積もるのかということが当然問題になるわけでありますが、かつて五六中業では正面装備費四兆四千億から六千億、それから防衛費総体を十五兆六千億から十六兆四千億という推計を出したんですが、五九中業でもこのような財政試算といいますか、見積もりを出すことになろうと思いますが、いかがでしょう。
  125. 加藤紘一

    国務大臣加藤紘一君) 当然そういうような見積もりを出すことになるだろうと思います。
  126. 矢田部理

    ○矢田部理君 経企庁に伺いますが、五九中業の期間というのは六十一年から六十五年度までの間ですが、これは大蔵省にも伺っておきたいと思いますが、この間のGNPの総体はどんな見通しになりましょうか。
  127. 金子一平

    国務大臣(金子一平君) 展望と指針に基づきまして、名目成長率に基づきます全くの推計になりますので、技術的な問題でございますので、政府委員から答弁をさせたいと思います。
  128. 大竹宏繁

    政府委員(大竹宏繁君) 一定の前提を置きました機械的な計算でございますので、その前提についてちょっと申し上げます。  「一九八〇年代経済社会の展望と指針」は、経済動向に流動的な要素が多いということから定性的な性格を重視しておるわけでございまして、六十五年度における経済規模の予測という形は示しておりません。しかし、経済成長率につきましては、世界経済の回復、技術開発の進展、民間活力の発揮等を前提といたしまして、対象期間中に年平均名目六%程度から七%程度と見込んでおるわけでございます。あくまでも見込みでございます。こうした前提に立ちまして、仮に六十年度の名目のGNPを政府経済見通し三百十四兆六千億円程度というものをベースといたしまして、六%及び七%で全く機械的に延長いたしまして計算をいたしますと、六十五年度の名目GNPは六%という成長率をとった場合には四百二十一兆円程度、七%の場合では四百四十一兆円程度と計算されます。
  129. 矢田部理

    ○矢田部理君 五年間の分は。
  130. 大竹宏繁

    政府委員(大竹宏繁君) 合計の金額でございますか、ちょっと計算をいたします。
  131. 矢田部理

    ○矢田部理君 大蔵省、何かありますか。
  132. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) まさに今、大竹局長からお答えしたとおりでございます。
  133. 矢田部理

    ○矢田部理君 もう計算するのは時間がないから私からやりますが、「八〇年代経済社会の展望と指針」は今お話があったように六%から七%の名目成長率を見込んでおる。それから大蔵省の財政試算は六・五%の数値をとっているわけでありますが、そういうことで五九中業期間中のGNP一%を試算しますと、十八兆八千億から十九兆三千億ぐらいの数字になるわけであります。当然のことながら、五九中業期における防衛費の試算を防衛庁が出すに当たっては、この枠内でおさめるということを明らかにすべきだ、首相や防衛庁長官もそう指示すべきだというふうに思いますが、いかがでしょうか。今までは五六中業は必ずしも大綱水準の達成を期すとは言っていなかったから必ずしもリンクしなかったわけでありますが、今度はこの際大綱水準の達成を期すと言っているわけでありますから、その大綱水準の達成を期すためには、同じような重みを持つ一%以内でやるということもまた大事なことでありまして、その点ではGNPの成長率総体を十分に念頭に置き、その一%論を踏まえてこの五九中業の作業、あるいはこの期間における防衛費の試算を行うべきだと思いますが、いかがでしょうか。
  134. 加藤紘一

    国務大臣加藤紘一君) 中期業務見積もりと申しますのは防衛庁の内部資料でございまして、また対象も五年、そしてそれも予算の概算要求の基礎となるものということで作業をいたすわけでございますが、私たちとしては、この作業をする際に、大綱の水準の達成を期するようにということを栗原前長官が指示として出したわけでございますので、その方針に従って作業を続けさせていただきたいと、こう思っております。
  135. 矢田部理

    ○矢田部理君 五九中業は防衛庁の内部資料ではありますが、アメリカから問題に供されてから以降、もう少し高い次元でオーソライズされてきているわけですね。もちろん、それは財政論は全く別だという言い方も一時期してきた時期もあるわけでありますが、少なくともやっぱり国是という、まあ国是というか、国の重要な基本方針として一%論が今日まで機能してきたわけでありますから、特に国会論議のやっぱり焦点になっておる一%論議について全く無視した形で買い物計画を立てる、五九中業をはじく、あるいはそれを含む防衛予算を試算するというのは、やっぱり政治のありよう、あり方としてよろしくないというふうに思いますが、いかがですか。
  136. 加藤紘一

    国務大臣加藤紘一君) 中業といいますのは、確かに国防会議の議を経ることに今なっておりますけれども、報告することになっておりますけれども、防衛庁内部限りの資料でありますということと、それから年度年度の、政府予算の方は年度年度でございますけれども、私たちは五年の期間を入れているものでございまして、本質的にこれは別個のものであろうと、こんなふうに考えております。いろいろ予算等の関係政府経済見通し等にも不確定な要素がございますので、私たちの作業といたしましては防衛計画の大綱の水準の達成を期するという方針で進めていきたい、こう考えております。
  137. 矢田部理

    ○矢田部理君 今までだって経済の見通しはいつだって不確定ですよ。不確定だけれどもやっぱり見通しを立てて、一%という定量的な数字で仕切ってきた。いいですか。一%を守りたいと言っている。問題が出ればそのときどきでチェックしたいとさっき総理はおっしゃられた。まさにその時期に一%突破が確実な、例えば二十兆を超えるような防衛予算の試算が出たら、それは政府の政策としてあるいは見通しとして整合性がなくなるわけでありますから、少なくともそれは念頭に置いて作業を進めるべきだ、試算をしなければおかしいというのは、これは理の当然ではありませんか。
  138. 加藤紘一

    国務大臣加藤紘一君) 五十一年の三木内閣におきます防衛費の閣議決定一%論というのは、各年度においてGNP一%を超えないようにということでございますが、それぞれの各年度のGNPというのはそれぞれの年度で変わってまいります。現在のところ政府見通しもございますけれども、それも確たるものといいますか、現在の段階においてはしっかりとした見通しだろうと思いますけれども、経企庁の局長も申しましたように、幾つかの前提を置いた試算であろうと思います。現に昨年度のGNPも、当初の段階ではGNP一%の中に防衛費がおさまらないだろうと言われておりましたけれども、五十九年度の最後の補正の段階におきましてはおさまるようなGNPの変化もしたわけでございまして、GNPを分母とし、それぞれを分子としますこの関係につきましては、その単年度単年度なかなか流動的な不確定な要素が多いものだと考えております。
  139. 矢田部理

    ○矢田部理君 不確定な要素をもとに大蔵省だって財政のいろいろな試算なんかをしているんでしょう。だから、不確定だから出せないなんというばかなことはないんですよ。中長期の予測を不確定な中でもみんなやっているのだから、そんなのは理屈になりませんよ、全く。
  140. 加藤紘一

    国務大臣加藤紘一君) 繰り返しますけれども、GNP予測もそれなりの不確定な要素があるものでございますので、私たちとしては、この五九中業の作業というものは防衛計画の大綱の水準の達成を期するという方針で作業をしてみたいと思います。それがどういった数字になるのか私たちもまだ皆目わからない段階でございますし、それが最後の段階でどういった数値、そしてどういうふうに取りまとめるのか、ここでも申し上げられる段階ではございませんけれども、とりあえず作業をしてみたい、こう考えております。
  141. 矢田部理

    ○矢田部理君 理屈をあれこれ持って回っちゃいけませんよ。五九中業で達成するというのでしょう。その達成をするに当たっては、どうも今までの我々の試算から見れば一%突破の可能性が強い。そういう数字が出る可能性が濃厚だ。しかし、一方では一%を守りたいとおっしゃり、守るために問題が出ればときどきでチェックすると。この七月にも五九中業の財政見積もりが出るとすれば、それを一%以内で切りなさい、抑えるような調達計画にしなさいと言うのは当たり前の話であります。将来の話だからできませんなんというのは、大蔵省のそれじゃ財政計画なんというのはみんなできないことになってしまう。全部将来のものを数値を使ってここの予算資料にも出しているんじゃありませんか。全然だめですよ、そんな答弁。
  142. 加藤紘一

    国務大臣加藤紘一君) 防衛計画の大綱の水準をできるだけ早期に達成したいというのは、歴代の内閣の防衛庁長官、そしてほとんどの場合、総理大臣がこの国会の場で明言された政府の確たる方針でございます。したがって、私たちとしては、この防衛計画の大綱の水準を達成することが現在の厳しい国際情勢の中でぜひとも早くやらなければならないことではないだろうか、こんな気持ちでおります。それで、五九中業がそれを達成するめどとしてどういった数字になるのかは、これから作業をしてみなければわかりません。委員がそれを超えることは確実ではないかとおっしゃいましたけれども、作業をやってみてその段階でどう取りまとめるのか考えてみたいと思っております。
  143. 矢田部理

    ○矢田部理君 これはいずれ総括締めくくりでもう少し議論しなければなりませんが、ちょっと今のあなたの説明、私には納得できない。認められないわけでありますが、同時に、もっと卑近な例を持ってくれば、人事院勧告がこの夏には出されますね。今までも積み残し分がある。天井とのすきまは八十九億円。一%給与費を組んでおりますから、それをプラスしても二百二十二億円で、自衛隊の給与は一・六七%の値上げ分しか一%のすき間はない。積み残し分が既に二・九七%もあるわけでありますから、それに人事院勧告が出るということになれば、もうこの秋には、あるいは夏の人事院勧告の際には、当然そこが衝突をする。これをどうさばきますか。
  144. 加藤紘一

    国務大臣加藤紘一君) 委員御指摘のとおり、仮に今年度のベースアップが昨年のベースアップの金額と同じ率だけ伸びたとしてという前提で幾つかの前提を置きまして計算すると、おっしゃいましたように、GNP一%を、現在の政府見通しがそのままであればそうなることも事実計算上は出てまいると思います。しかし、今後六十年度のGNPがどうなるかもまだ不確定な要素でございますし、それから人勧が、八月だろうと思いますが、いかなるものが出るのか、それを政府がどのように扱うのか、閣議決定がどうなるのか、分母分子とも不確定な要素がありますので、現在この段階で確たることは申し上げられる状況にはないと思っております。
  145. 矢田部理

    ○矢田部理君 あなた若いのだから余り不確定で先の話ばかりするんじゃないよ。人事院勧告、きのうも後藤田さんと論議しましたけれども、こういうことですよ。おくれ分を少なくとも総務庁も三年内に取り戻すと言っているわけです。前の積み残し分もあった。それを、僕らはそんな議論には賛成はしませんけれども、完全実施すべきだという議論ではありますが、そうすれば当然突破する。突破したときには見通しが云々じゃなくて、それじゃ防衛予算を他の部分を切り込んでおさめるという約束できますか。
  146. 加藤紘一

    国務大臣加藤紘一君) 将来仮に一%を超えるような場合にはどうなるかということは、仮定の場合でもそれについては私たち考えておりませんので、確たることは申し上げられない、そして仮にそうなったときにつきましては、国会における従来の答弁、それから国会における諸先生方の御意見も踏まえて慎重に考えてまいりたいというのが総理大臣のこの委員会における従来の答弁でございますし、私たちもそう思っております。
  147. 矢田部理

    ○矢田部理君 守りたいし、総理もさっきおっしゃられた。それから、具体的問題があればチェックしますと、こう言っているんだから、経済見通しがどうなるか、いろいろな不確定要素はそれはあるでしょう。あるけれども、かりそめにも、とてもその枠内にはおさまらぬというときには、他の防衛予算を削っても、あるいは不用額を何とかたたき出してもこれ以内におさめますという約束できませんか。そのぐらいの約束をしなければ一%論議は実際上意味がないでしょう。
  148. 加藤紘一

    国務大臣加藤紘一君) 今、国家の財政が非常に厳しいときに、それぞれ財政再建とか行政改革のためすべての人が努力しているわけでございます。したがって、そういう意味から私たちの防衛費の分野も決して聖域ではないと思っておりますから、それなりの努力はしなければならないと、こう思っております。現に昨年、不用額とか節約などでかなりの金額が出ました。昨年度はそれなりに幾つかの外的な条件もありまして、外国から購入する予定の物の単価が下がったというようなことで、かなりの金額が節約になったというラッキーな部分もございましたけれども、いずれにいたしましても、その努力という意味においては、昨年と同じだけの、金額ではなくて私たちは汗を流すということは、昨年並みの汗は流さなければならないのではないだろうか、それは当然のことのように思います。  ただ、その中で現在私たちが政府原案として出しておりますものについて、当然のことながら削ることを前提に国会審議のために予算書を出すという不見識なことはやってはいけないわけで、私たちが今現在御審議願っておる防衛予算というのは、一つ一つ最小限これだけは必要だというものを出していることであることは御理解いただきたいと思います。
  149. 矢田部理

    ○矢田部理君 この問題も一%論と非常に重要なかかわりをことしじゅうにも持ってくる問題ですから、十分にやっぱり心してかかってもらいたいし、今の説明程度で納得できる筋のものではありません。そういうことで一つ一つ検証をすれば直ちにぼろが出るような話ではやっぱりだめなんでありまして、もう少し襟を正して対処をしてもらいたいと思うわけでありますが、これは大蔵大臣に、財政的見地から見てこの一%論というのはどういうふうにとらえておられますか。また、大蔵大臣はニューリーダーとも言われているわけでありますから、いずれ政権を担当すればこの問題に必ずぶつかるわけであります。これは河本国務大臣にも見解をお聞きしたいと思うんですが、やっぱり日本防衛政策一つの、我々は一%ならいいという立場はとりませんが、しかし相当の長期間にわたって非常に国民の支持も受け、世論もその枠内ならということでの支持が高いわけですね、いろいろな各種の世論調査を見ましても。したがって、これはやっぱり守っていくのだ、これをひとつ財政的な歯どめにしていきたいのだということであってしかるべきだと思いますが、所見をいただければありがたいと思います。
  150. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) 昭和五十一年のいわゆる三木内閣の決定というもの、私どもは今日まで防衛予算編成に対しまして、やっぱり本来はまず初めに防衛ありきで、一%というのは、あるいは議論の中においては、まず防衛ありきの中で一%というのを絶えず念頭に置いて対応すべきだと、こういう議論もいたしておりますものの、現実、三木内閣の方針は今日なお継続しておるわけでありますから、その中においてぎりぎりの調和を図っていくという努力はこれからもしていかなければならない課題だというふうな理解をいたしております。
  151. 河本敏夫

    国務大臣(河本敏夫君) 私は昭和五十一年の閣議決定は守るべきであると、このように考えております。ただ、当時の閣議決定からほぼ十年経過をいたしておりますから、やはり守るべきであるというその考え方と同時に、もう一回やはりあらゆる角度から検討する、こういうことも必要であろうと、このように思います。
  152. 矢田部理

    ○矢田部理君 安倍外務大臣、いかがでしょうか。
  153. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 一%の問題につきましては、政府として、中曽根内閣としての見解が出ておるわけでありますが、私も、これまでの三木内閣以来、我が政府がこれを守ってまいりまして、これは国際的に見ましても日本が軍事大国にならない、あるいは最小限ぎりぎりの防衛力を維持していくということを貫いたということとして評価といいますか、あるいはASEAN諸国等は日本に対していわば一面においては評価もしておる。ASEAN等はやはり日本が軍事大国になるのじゃないかというふうな不安感もあるわけですから、そういう意味におきましては、日本の平和外交を進め、日本の国際的信用というものを確保する上においては、それなりの大きな意義を持ってきたのじゃないか、私はこのような、やっぱりこれから日本が平和外交を進める上において、もちろん安全保障というものは大事ですけれども、一つのやはりぎりぎりの限度というものを守っていくということは、これからの信頼を高める上においても大事ではないか。そういう点において政府努力をしておるということであります。
  154. 矢田部理

    ○矢田部理君 金丸幹事長も、職を賭しても最善を尽くす、これを守るためにと言っているわけですから、そういう状況をやっぱり踏まえてぜひこれは守ってほしい。あるいは守らなければならぬ重要な基準として考えていただきたいというふうに思うわけであります。  最後に、防衛費というのが非常に近年増額をされてきている。先般の参考人も言っておられるわけでありますが、GNP比だけで見るべきではなくて、絶対額で見るべきだ。あるいは伸び率で考えるべきだ。とりわけNATO方式という計算式があるわけでありますが、これは軍人恩給を入れるわけですね。それから海上保安庁の予算などもその一つになるわけでありますが、やっぱり五兆円近い軍事予算日本はなっているわけです、そういう方式で計算をすれば。これは相当なやっぱり軍事支出なんでありまして、平和憲法を持つ我が国として、それからこれは核武装してないわけですからね。核武装に相当程度フランスとかイギリスは予算を使っているわけです。全予算の四分の一から五分の一ぐらい使っているということなどを考えてみますと、やっぱり日本の軍事予算の絶対額は相当なものだ、これ以上伸ばすことはやっぱり認めるべきではないということを防衛庁長官、それから総理にも特にお願いをしておきたいと思います。  なかなか防衛予算を切り詰めるのに頭を痛めるのなら、私どもは今度修正案を出すことにしました。一%問題で予算をそれ以下に大きく切り込んだ修正案をいずれ提起する予定でありますから、十分に御検討をいただきたいと思いますが、最後にこの問題について総理からお答えをいただいてこの質問を終わりたいと思います。
  155. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 矢田部さんのお考えは前から拝聴しておるところでございます。謹んで今回も拝聴することにいたしたいと思います。
  156. 矢田部理

    ○矢田部理君 経済問題を少しくやろうと思ったし、また、対外経済協力についてはいろいろな議論をしなければならぬと思っているわけでありますが、時間がありませんので、次の機会、来月一日にあるようでありますから、その際行うことといたしまして、最後に在日韓国人の政治犯の問題について政府の見解を伺っておきたいと思います。  一つは、昨年の十二月に国連で拷問禁止条約というものが採択をされました。我が国もこれに参加をし、賛成をしたわけでありますが、批准はいつごろの御予定ですか。
  157. 山田中正

    政府委員(山田中正君) 先生御指摘のように、昨年の国連総会で拷問禁止に関する条約が採択されたばかりでございます。我が国といたしましては、これからこの条約についてどのような態度で臨むかを検討するところでございまして、まだ具体的な批准の日程等は決定いたしておりません。
  158. 矢田部理

    ○矢田部理君 世界的にまだ拷問が相当程度残っているということが前提になっているかと思うのでありますが、その実態は外務省どんなふうにつかんでおられますか。
  159. 山田中正

    政府委員(山田中正君) 世界的にどのような形で拷問が行われておるかというのをなかなか総体的につかみにくいのでございますが、世界の人権問題を調べております民間団体で相当の権威を持っておりますアムネスティー・インターナショナルというのがございますが、そこで調査した報告では、約九十八カ国において拷問の事実があるというふうに報告されております。
  160. 矢田部理

    ○矢田部理君 まさにそういう事態を踏まえてこの拷問禁止条約が採択をされたわけでありますが、ここで大変問題となる在日韓国人の政治犯の扱いについて幾つかの事例を指摘しながら、外務大臣なり政府の見解を求めていきたいと思います。  最初に、金炳柱さんが一月の二十二日に死刑判決を受けました。これは衆議院でも取り上げられまして、外務大臣は死刑執行がなされないように政府としても配慮するというふうに答弁をされておるようでありますが、どんな措置をとられたか、その後どんなふうになったかをお答えいただきたいと思います。
  161. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) まず全体的に申し上げますが、私どもは、この在日韓国人の韓国における判決あるいはその取り扱い等につきましては、やはりこれはあくまでも人道的な問題だと、こういうふうに考えまして、もちろん韓国自体の法律、制度というものはあるわけですから、内政干渉に至ることはできませんが、しかし同時に、これは人道的な問題であるというふうに考えまして、日韓で外相会議とかあるいはまたその他のレベルの交渉、会談等を行うたびに韓国側に対しまして、これらの犯罪者として扱っておる人たちに対して人道的配慮を加えるように要請を続けてまいっております。  金被告につきましても、死刑執行ということを延期していただくように、人道的立場から私からも韓国の外相に対しまして要請をいたしました。その他の刑事犯につきましても、面会の問題であるとか、あるいはまた獄内における取り扱いの問題であるとか、そういう点につきましても十分ひとつ人道的配慮を加えていただきたいということを要請をして今日に至っておるわけてあります。  具体的なそれぞれの人たちの問題につきましては事務当局から答弁をいたさせます。
  162. 矢田部理

    ○矢田部理君 金さんの問題でありますが、韓国外務大臣に要請をしたと、その結果はどうなったでしょうか。それから、金さん自身がKNSP、韓国の国家安全企画部で取り調べを受けたわけでありますが、二十人ぐらいの人に、かわるがわる来て殴るけるの暴行を受けた、まさに拷問による目白をさせられたわけだが、自分は無実であると盛んに今主張をしておられるようでありますが、そういう状況をつかんでおられるでしょうか。死刑執行の状況は、外務大臣の人道的な配慮を求めた結果どうなったでしょうか。そこだけちょっとお伺いします。
  163. 後藤利雄

    政府委員後藤利雄君) お答えいたします。  一月二十二日に死刑判決を受けられました今先生の御指摘の金炳柱氏でございますけれども、外務大臣からもそのように申し入れをさしていただきましたし、私ども、一月に課長、それから二月十八日には私が、在京の公使を特に招致いたしまして、本件について好意的な配慮をするようにということを申しております。先生御案内のように、韓国では死刑判決が確定いたしましてから六カ月以内に特別な措置がとられないと死刑が執行されるということになっておりますので、私どもとしては残された期間も短うございますので、今後と も鋭意本件についての好意的な申し入れを行いたいと思っております。  拷問の事実等につきましては、そういううわさは聞いておりますけれども、何せ先方の韓国というところでございます、第三国でございますので、これにつきまして特に私のところからその事実について有無を云々することは差し控えさしていただきたいと思います。
  164. 矢田部理

    ○矢田部理君 昨年の一〇・一三、十月十三日のスパイ団事件というのがありまして、在日韓国人の人たちが韓国に、学生が多いわけでありますが、留学した。四人が逮捕され、いよいよこの四月二日ないし三日には判決が出るという運びになるようでありますが、この人たちに対してすさまじいばかりの拷問の実態が明るみに出ておるんですが、外務省としてはその内容をつかんでおられるでしょうか。
  165. 後藤利雄

    政府委員後藤利雄君) お答えいたします。  四人の方の今の判決が近く出るということは承知しております。ただし、今の内容、先生の御指摘の部分につきましては、先ほどお答えさせていただいたとおりに、私どもとしてはこれについて云々することを差し控えさせていただきたい、こう御理解いただきたいと思います。
  166. 矢田部理

    ○矢田部理君 これは京都大学を出て韓国に留学をしている尹正憲君という東大阪市出身の方がおりますが、捜査機関でロープに縛られ逆さづりにされて棒でめった打ちにされました。金属のいすに縛りつけられ、そのいすが自動的に地下までおりていく。地下には水がためてあり、その水の中にいすごと頭までつけられ、引き上げられると今度は口と鼻をタオルで押さえられ、息ができないようにされました。その結果最終的に自白陳述書を書かされたというふうに、この尹君は訴えております。これは公判廷における訴えであります。  それから趙一之君、広島出身の二十八歳の留学生でありますが、水に入れられて息ができなくなり、顔を上げるとまたぬれタオルでかぶせられた。だんだん気が遠くなっていくんです。このとおり言わないと死ぬぞと言われました。韓国でのデモのビラを日本に持って帰ったろうと言われて、持って帰っていないと言ったらすごい拷問を受けました。電気いすのようなものに座らせられ、おまえはこのスイッチを入れたら死ぬんだぞと言われて、ついに持って帰ったと話してしまいました。  趙伸治君。二日間眠らされず、鉄棒で殴られ、タオルで窒息させられ、水拷問などを受け、死ぬ前に言い残すことはないかと脅迫されたため、やむを得ず自白陳述書をつくり上げました。  いずれもうわさや伝聞ではなくて、みずからの体験を韓国の公判廷で陳述をしている。この事実について外務省はつかんでおられませんか。
  167. 後藤利雄

    政府委員後藤利雄君) お答えいたします。  韓国の憲法第十一条の第二項に、すべて国民は拷問を受けず云々という規定がございます。それから韓国の刑法第百二十五条にも同じようなことがございまして、その職務を行うに当たり刑事被疑者またはその他の者に対し暴行または過酷な行為を加えたときには五年以下の懲役及び十年以下の資格停止に処すという規定がございます。今の事実につきましては、先ほどと同じように、私としてこれを確認するという立場にはないということを御理解いただきたいと思います。
  168. 矢田部理

    ○矢田部理君 もう一人、御婦人でありますが高順子さん。この人は対応が日本国内でも早かったために釈放されて戻ってくるわけでありますが、そのときの拷問の実情について非常に詳細に語っております。アパートでひどく足を殴られた後で、一睡もさせられず六日間ぶっ続けで調べられた、六日間一睡もさせられず大変な暴行を受けた、こう言っておるわけであります。そして帰り際に、しゃべったら国家機密と軍事機密の漏えい罪と国家保安法の利敵行為罪で重罪になるとおどかされて、しゃべるなと言われて釈放をされたと。しかし、本人の言い分によれば、侵害状況を実際に弾圧された本人がその事実を明らかにしない限り弾圧はなくならないと思うと、悲痛な叫びの中でその拷問の実態を今国内で訴えているわけであります。  外務省、外務大臣にお尋ねをしたいのでありますが、非常に重要な人権問題で裁判にかけられる、とりわけ政治犯というのはそういう傾向が強いわけでありますが、それが他国の公廷であって、自分の国、我が国関係があるような場合にはできるだけ在外公館はその状況を把握してしかるべきではないでしょうか。裁判の傍聴などもできるわけでありますから、公判に立ち会わせるなどもその一つの方法でありましょう。特に在日韓国人は日本とのつながりが歴史的にも非常に強いわけでありますし、事件そのものが日本における言動が問題に供される場合が多いわけでありますから、その点、外務大臣いかがでしょうか。
  169. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 我が国としましても、韓国で起こっておる日本に在留している韓国人の問題についてのいろいろな問題については、実態、実情についてはそれなりに調べておると思うわけでありますが、何分においてもこれは韓国における問題であります。いずれにいたしましても我が国としましては、私も家族の皆さんにも何回かお目にかかりましたが、やはりあくまでも人道的な立場で、韓国に対しましてこうした人々の人道的立場からの配慮というものを要請し続けておりまして、この日本の私どもの気持ちというものは韓国側も理解をしておる、こういうふうに思っておるわけでございますが、しかし法律によるところの裁判あるいはまたその執行等につきまして、日本からこれに対してとやかく介入はできないということは御承知のとおりであります。
  170. 矢田部理

    ○矢田部理君 これだけ深刻なあるいは悲痛な訴えがあるわけでありますから、事実関係を少し調査して、人道的な配慮で結構でありますが、しかるべき対応をするということはお約束できますか。
  171. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 日本に生活しておられる在留韓国人ですから、やはり政府としましてもそうした韓国での公の場、例えば公判廷なんかの恐らくそうした供述等は公的なものにも明らかにされておるのじゃないかと思うわけでありますし、また入手できる立場にあるとも思いますので、そういう実態の把握はこれはやはりしなければならぬと。そうした上に立って日韓の立場からのやはり外交的な交渉といいますか、立場での要請等についてはそれなりのやはり外交的配慮を加えていかなければなりませんが、実情はやっぱり知るということは大事なことであろうと思いますから、今おっしゃいましたような点については外務省としても十分ひとつ調べてみたい、こういうふうに思います。
  172. 矢田部理

    ○矢田部理君 韓国の法制は確かに憲法十一条で拷問による取り調べを禁じておるわけです。すべての国民は拷問を受けず、刑事上自己に不利な陳述を強要されない。しかし、これだけ口をそろえて、しかも公判廷で皆さんがこの種の問題をやっぱり述べていることは、もう否定できない重みを持った事実だというふうに私は受け取らざるを得ないわけでありまして、特に韓国の法制を私は必ずしも勉強していないわけでありますが、例えば日本の刑事訴訟法ですと自白だけをもって有罪にすることはできない、自白のほかに証拠、客観的な証拠、少なくとも補強証拠が必要だという刑事法制になっているんですが、韓国はどうでしょうか。
  173. 後藤利雄

    政府委員後藤利雄君) お答えいたします。  ただいまの御指摘の点につきましては、詳細私ただいま資料を持っておりませんので、十分この機会に事実を確認いたしますと同時に、この点もっと勉強をさせていただきたいと思っております。
  174. 矢田部理

    ○矢田部理君 国家保安法違反とかいろいろな罪で、実際上は逮捕されたり取り調べを受けたり、裁判にかけられたりするわけですが、大法院の、大法院というのは最高裁に相当するものだと思うんですが、判例などを調べてみますと、こんなことまで言っているんですね。国家保安法で言う国家機密の中には、たとえその内容が事実であっても、我が大韓民国においては常識に属するものであっても、これが反国家団体のために有利な資料になる場合には秘密になるという、常識すら相手に有利になれば秘密になるという、そういう判例になっている。もう一つ言いますと、北韓かいらい集団は、指令を行うにおいて密封状態、秘密のもとで行っているから、南北統一が成就できないでいる今日、それ以上の傍証を要求するのは不可能だ、自白だけで十分だという判例も実はあるわけでありまして、その自白が拷問でやられるということになりまして、無実の人たちがどんどん処刑台に消える。大きな、非常に重い刑罰に処せられている。大変な事態になるのであります。人道上の問題、人権上の問題について、外務省は積極的な関心を示すべきだし、その事実関係の調査をするだけではなしに、対応もやっぱり具体的にしていただきたい、特に判決が近い三方でありますから。その辺、外務大臣に特別の配慮をお願いしたいと思いますが、いかがでしょうか。
  175. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 人道的な立場から、今後とも韓国との話し合いの中にあって、この問題につきましては特に私も留意して対応してまいりたいと思います。
  176. 長田裕二

    委員長長田裕二君) 矢田部君、時間が参りました。
  177. 矢田部理

    ○矢田部理君 終わります。(拍手)
  178. 長田裕二

    委員長長田裕二君) 以上で矢田部君の質疑は終了いたしました。     ─────────────
  179. 長田裕二

    委員長長田裕二君) 次に、黒柳明君質疑を行います。黒柳君。
  180. 黒柳明

    黒柳明君 冒頭、外務大臣にちょっと日ソのことで一言お伺いしたいんですが、グロムイコ外務大臣の訪日がうわさされておりますが、グロムイコ訪日に向けまして、外交ルートで日ソ間の折衝をすべきだと大臣が事務当局に指示を与えられておる、こう承っておりますが、具体的にどんな問題で事務当局が話し合っていくのか、お教えいただけますか。
  181. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) グロムイコ外相の訪日は日ソ外相定期協議を行うためのものでありまして、同協議においては、日ソ間の最大の懸案である北方領土問題について話し合うこととなるのは当然でありますが、この問題以外にも日ソ間の種々の懸案を取り上げることとなるので、日ソ外相協議をより実りあるものにするために、同協議に向けまして次のような外交プログラムを念頭に置きながら、日ソ事務当局が折衝していくことを考えております。  第一には、次官級の日ソ事務レベル協議を五月下旬に東京で開催をいたします。  次に第二番目として、日ソ間に横たわっておる懸案の日ソ文化協定の締結問題でございます。これは先般の中曽根・ゴルバチョフ首脳会談においても提起された問題でございますが、この日ソ文化協定の交渉を再開し、我が方よりできるだけ早い時期に協定案文を提出する、こういうことにいたしております。  それから三番目に、租税条約交渉を東京で行う。時期につきましては、現在ソ連と協議中でございます。  第四番目といたしまして、外務省の局長レベルでの国連に関する協議及び中東に関する協議を行う予定であります。国連協議はモスクワ、中東協議は東京で行う予定でありますが、時期につきましては現在ソ連側と協議中でございます。  第五番目といたしまして、日ソ貿易支払い協定の改定交渉を行うことを考えております。同交渉は、夏ごろに外務省の欧亜局長を派遣いたしまして、モスクワで行う予定でございますが、具体的時期につきましては、今後ソ連側と協議することとなると思います。  以上でございます。
  182. 黒柳明

    黒柳明君 具体的にいずれも重要案件だと思います。中でもソ連の方から提示もあったような文化協定みたいなものをつくったらどうかと、こういうものもありましたし、今の外務大臣の御発言ですと、日本側からできるだけ早い時点で案文をつくりたい、こんな発言もありました。でき得ればゴルバチョフ新政権誕生とともに、日ソ間のより接近を図っていただければと、こう思います。  それから総理大臣、経済外交、日米経済摩擦について、私は自分の体験もしたということも踏まえまして御質問したいと、こう思います。  今もちょっと横目で夕刊見ましたら、対日報復手段と、こんなでっかい活字が出ておりましたが、私、今月に入りまして二回、ワシントン、ニューヨークに行きました。一回は外務大臣総理大臣、いろいろ陰に陽にお骨折りをいただいた日米議員連盟の一員としまして訪米しました。そして帰ってきて中旬、また非常に私たちちっぽけな野党でございますけれども、この経済問題を黙視するわけにいかないということで、党としまして単独でまた再びワシントン、ニューヨークに行ってまいりました。ブッシュ副大統領あるいはブロック通商代表、あるいは上下院の議員ないしは民主、共和のいわゆるブレーンと称する各組織、いろいろ各方面の意見を聞いてまいりました。  これは総理には釈迦に説法でございますが、これはもう官民問わず、あるいは行政、議会筋問わず、すべてがいわゆる開戦前夜、あるマスコミではこういう言葉を使っておりましたが、リメンバー・パールハーバーは今こそ実行に移すべきだと、こういう物騒なことを言う。これもしかもまことに冗談を全然抜きにして言うような議員すらいるわけであります。報復手段と言われたって、日本じゃ何も悪いことはしてないんだ、そちらの高金利はどうなんだと、いろいろな言い分があるには違いありませんが、この経済摩擦というものは、日米関係をよくするも悪くするも我が方からの解決策一つにかかっている、こう私は厳しく受けとめざるを得ない。しかし、日本に帰ってきますと、そのアメリカにおける厳しい対日経済姿勢というものが何かトーンダウンせざるを得ないような雰囲気であると、私はこう感ぜざるを得ない。  こういう観点から見ますと、総理大臣が年頭に行きまして、レーガン大統領と話し合ってきたその四項目にわたる貿易摩擦総理が実際に指揮をとって解決する。こういうことは非常に私は先見性があったかなと、私も失礼ですけれども、中曽根内閣三年間、中曽根内閣は軍拡路線である、あるいは福祉後退政治である、あるいは増税路線である、こう悪口を言わさしていただきましたが、この経済摩擦につきましては、これは中曽根総理大臣大した先見性があったなと、こう今感服せざるを得ないぐらい、年頭におけるあの四項目に対しての、総理みずからいわゆる経済摩擦に対しての陣頭指揮とられた、こういうことについて私実感として感じているわけでありますが、かといいまして、これは生易しいものでもない。しかも、総理みずからが自分が解決するんだと、こう発言した手前、非常に総理が苦境に立っているという言葉はどうかわかりませんが、頭を悩ましている問題ではなかろうか。各省等の縄張り争い、あるいは民間業界との問題、あるいは自民党内の不協和発言等も聞かれております。  そういう中にありまして、基本的にきのう、おとといのアメリカの議会筋あたりの強硬姿勢、これなんかもあります。今時点におきまして基本的に総理大臣はこの日米貿易摩擦にどう対処していくのか、まず基本姿勢からお聞かせいただきたい、こう思います。
  183. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 日米間の経済摩擦問題というものは今深刻な事態にあると思います。黒柳さんが二度もおいでいただきましてワシントンの状況を調査され、その空気を今議場を通じまして国民にお示しいただいたことは非常に感謝にたえないところであり、私たちも深刻に受けとめて何とか打開しなければならぬと思っておるところでございます。  私は、お話にありましたように、重点がどこにあるかということを考えまして、アメリカ方面とも相談をして四項目というものに重点を絞って当面その解決に全力を注ごう、そういう考えを持ちまして、今までの交渉ではらちがあかないと先方に見られる、そういう懸念を持ちましたから、各省の事務的な最高レベルである事務次官が責任を持ってこの問題に対応するように、私自体もアメリカに対して、進展をチェックする、そういうことを言ってきておりますから、事務次官に何回か官邸に来てもらいまして状況説明を受け、また必要な指示もいたしまして、もちろん大臣了解のもとにそういうことをやってきたつもりでございます。  しかし、事態は、彼我のいろいろな文化ギャップあるいはコンセプションギャップと言われるものもありますし、また両国の国情の相違もございまして、なかなか理解されにくい点もあるのでございます。きょうの報道によりますと、アメリカ上院におきまして満場一致で経済問題に対する対日政策の決議が行われましたが、これは実際容易ならぬ状態であると思うのであります。しかし、当面この四つの問題につきまして全力を傾倒いたしまして、何としても話し合いでこれを打開してお互いが納得のいく解決案を得る、そういうことで全力を尽くしてまいりたいと思う次第でございます。
  184. 黒柳明

    黒柳明君 一昨昨日ですか、上院の財務委員会でいわゆる日本に対する市場開放の決議案、これは米議会でも拘束力はないとはいうものの全会一致で決議案が採決された。それから、今総理がおっしゃったようなこともあります。それから、きょうあすには二〇%の課徴金を日本からの全輸入品にかけるという案も議会に提出される、こういうことも聞いております。非常に厳しいというだけではなくして、アメリカの議会筋が本気になっている。  かてて加えて、私、一九八〇年三月、レーガン政権誕生直後にUSTRのブロック代表といろいろ会いまして、当時は自動車摩擦でがたがたしていたときであります。そのときにおきまして、ブロック通商代表が日本の窓口にいる限りには、議会筋が、あるいは行政が、アメリカサイドからある程度の圧力があっても、保護主義の台頭があっても、    〔委員長退席、理事梶木又三君着席〕 あの通商代表が良識的に処理するのではなかろうか、こういう感触を強くしたんですが、八〇年の自動車問題でも日本からの自主規制ということでこれを解決したわけであります。残念ながら、そのブロック通商代表がついせんだって通商代表の任をやめたわけであります。  だれが通商代表になって全体的の総括的な窓口になるかわかりませんが、議会筋からのこの対日圧力と申しますか、これは圧力と言えない。コンセプションギャップというのはありますけれども、私はいろいろ総合しますと、やっぱり日本経済に対してのアメリカ経済の敗北感、これがアメリカ人、アメリカ国民として根強くジェラシーといいますか、そういうものになって根底的にある。ですから、個々の問題についてどうだこうだというものではない、こういうようなことも感じたわけでありますが、具体的に議会筋からこういう提案が次々になされてきているきのう、おととい、きょうであるわけであります。  そういうときに、確かに総理がおっしゃる全力を挙げてと、これしか総理から聞かれるお言葉はあるいはないかもしれません。ということは、アメリカでも、あなたたち何を期待しているのかと言ったら、ただ神に祈るだけですなんという抽象的な発言をする議会筋の人もあったくらいであります。しかしながら、これはそんなに悠長なことを言っちゃいられない。しあさっては電電の民営化でありまして、ある意味では、四項目の一つの電子機器についてはアメリカサイドは完全に四月一日に一つ目標を置いていたわけであります。それから国内的には御存じのように言うまでもなく四月九日に、これは河本大臣の所管でありますけれども……
  185. 梶木又三

    ○理事(梶木又三君) 速記をとめて。    〔速記中止〕
  186. 梶木又三

    ○理事(梶木又三君) 速記を起こして。
  187. 黒柳明

    黒柳明君 これは総理がいらっしゃれば、すべて総理マターでありますから結構だと思います。  そういうことでありまして、九日には各省庁からまとめなければならない。これもアメリカサイドはもうタイムリミットぐらいに考えて言っているんですね。私たち別に、四月一日電電の民営化移行はあるけれども、それが何も日米貿易摩擦一つのタイムであるなんという感覚はありません。まして、四月九日は国内における一つの、集めて調整する、言うならこれからスタートか、わかりませんよ。そんなのんびりしたあれじゃないかと思うんです。ということは理解しておりますが、アメリカへ行ったらそんなことじゃないわけですよ。四月一日までどうかするんだ、九日には案が出てくるんだ、こういう雰囲気ですね。  私たちは、そんなことは誤解じゃないですか、私たちは野党で政府、行政じゃありませんから、そういう交渉権はありませんけれどもと言うとそんなことはない、一日なんだ、九日なんだ、こういうことでありまして、これは私たち直接の交渉相手じゃありません。しかし、そういうものについて誤解にせよ何にせよ、アメリカサイドではそういうものについて一つのタイムが、何かしら出てくるだろう、日本側から出すべきだという希望も含めてのそういう観測というものはあったと思います。今言ったような議会筋の連日の圧力であります。  これについて、総理、全力投球をする、これで果たして済むのかどうか、あるいは九日までに何らかの案が出るのか。あるいはまた、後で触れますが、けさは大きくVANについてアメリカ政府筋ということで、またちょっと私も確認しなければならないんですが、まとまったやのあれですけれども、政府のあれじゃないと思うんですが、そういうものはまとまるんでしょうか。全力投球ということはこれは当然総理がおっしゃったことですけれども、今言ったような雰囲気に本当に全力投球ということだけで、まとめなければならない、結論を出さなければならない。言うまでもありません、それは出るんでしょうか。出るという確信を持っての全力投球ということなら私何も、総理大臣の心境や行動というものを私は知る由もありません。  ですけれども、もしそうじゃありませんと、せっかく総理がロン・ヤスの関係で日米関係というものを防衛面でよくしたのを経済面で悪くしたら、これは全くロン・ヤスの関係が崩れちゃう、いい意味も悪い意味も。日米間の経済ががたがたになっちゃう。ということで、恐縮でございます、済みません、長々と。一生懸命全力でやるだけじゃ私は済まされない。もうちょっと具体的な行動、発言、あるいは具体的なプランなりお持ちでいるのじゃなかろうかなということも含めて、いかがでしょうか。
  188. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) とりあえずは四つの問題がございますが、その中で一番向こうが重要視しているのは通信機材の問題であります。そこで、小山郵政事務次官を二度にわたって派遣いたしました。今回も政令施行、法律施行を前にいたしまして、最後の詰めの意味もありまして、大臣に話しまして小山君を特に派遣してもらったわけであります。それで、先方といろいろ折衝しておりまして、今ぎりぎりの詰めを行っておるところでございます。向こうの方からも電話がよくかかってまいりまして状況を報告してきておりますが、こちらもいろいろ必要な指示は与えております。そういうことで目下ぎりぎりの折衝をしておる。鳴くまで待とうというのじゃなくて鳴かしてみせようという気持ちで、ともかく一生懸命努力してまいりたいと思っております。  そのほかの三つの部門については、これもその当該省の事務次官を呼びまして、そして一つ一つ私の感想も述べ、先方の意見も聞き、調節を加えまして、両方がまあまあ納得するような案をつくるべく努力しております。これもまだ決定したところまでは参りませんが、最後のところまで努力してまいりたいと思っておるところであります。
  189. 黒柳明

    黒柳明君 今、総理おっしゃったのは、けさの朝日新聞に出ていたことだと思います。これは米政府筋という前提でございますから向こうから出たのではなかろうか、これは一紙だけでありますので。  ①民間に開放される付加価値通信網(VAN)の登録手続きの簡素化、特別二種事業の区分基準の規制撤廃は「将来の問題」として再協議する②端末機器の基準をネットワークに損傷を与えるかどうかだけに限定すべきだとの点については、省令施行後も二カ月間実施を延期し、その間、この問題を再交渉する③その他、政策決定の透明、公正や外国メーカーへの差別を禁ずるなどの原則については米側の要求項目を省令の形で明示する  三点が基本的に日米間で合意された、アメリカ側の筋から。こういうことでありますが、総理、逐次電話でこの交渉をお聞きになっている、こういうことで、まだこれは最終結論が出たというわけではない、今の総理の御答弁で私はそういうふうにあれしていますが、まだ最終決定が出たわけじゃないけれども、ここに書いてあることに近い結論が出る可能性はあるという、こういうふうに受け取ってよろしゅうございますか。
  190. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 彼我ぎりぎりの折衝をしておりまして、あとわずかな点が残っておる、そういう状態でありまして、小山君からどういう電話がかかってくるか見ておる、そういう状態でございます。
  191. 黒柳明

    黒柳明君 済みません、くどいようで。私も一生懸命行って一生懸命聞いたので、ちょっとくどくさせていただいて恐縮ですけれども、小山君の電話、これは私、盗聴もできませんし、総理のところにかかってくるわけでありますから、これは総理が最高決定を下すわけでありますけれども、非常に具体的なんです。ですから、ここらあたりに何かこう、彼我の交渉の中で、外交交渉ですからこれは事前に漏れるなんということ、これはうまくないわけであります、これは相手側に失礼でありますから。にせよ、やっぱりこういう問題が今まで話し合われてきたということは私たちも広聞しております。通産、郵政で縄張り争いがあったなんというようなことは向こうでも私いろいろの筋から聞いております。こういうような三項目が妥結される可能性、その中で若干の最後の詰めが行われているという認識でよろしゅうございますか、大枠の認識は。
  192. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) ともかく最後のぎりぎりの線で両方の折衝が行われている、こういう状況でございます。
  193. 黒柳明

    黒柳明君 済みません、非常に細かいことを総理にお答えいただくようになりますけれども。そうすると、これは、郵政大臣をきょう呼んでいなかったもので恐縮でございますが、やっぱり四月一日ということを目標にということで理解してきたんですが、それでよろしゅうございますか。
  194. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 郵政関係の仕事にいたしましては当面そうであります。
  195. 黒柳明

    黒柳明君 四月一日までにこのVANの何らかの妥協が図られる、こういうふうなことで理解したいと思います。  まず、これで四つのうちの一つ一つのうちのすべてではないと思いますが、解決する方向に行っている、こういうことでさらに全力投球だ、こういうふうなことですけれども、それでその後、河本大臣と、こう書いてありますが、これはカットしなければなりませんですな。  それから時期的に先ほど言った四月九日、取りまとめの作業、これは河本大臣が所管で、総理にお聞きしていいんでしょうか。郵政関係のVANは一日目標に解決しそうである、あと三分野、これは九日までに、折衝していることはわかります、ですけれども、どういうものが出てくるのか、あるいは出てこなければならないのか、あるいは九日においてはこんなものを総理としては希望しているのだとか、こういう点についていかがでしょうか。
  196. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 九日のものは二つの部門からできていると思います。  一つは、九閣僚の対外経済問題閣僚協議会の諮問委員会が意見を出します。これはやや中期的な展望を出しなさい、中期的な努力方向を示しなさいと、そういう意味で諮問委員会が意見を出します。これで我々がそれをどういうふうに評価するか、検討を加えて実行するかという課題が次に出てくるわけでございます。今まで我々が見て考えてやらなければならぬと思っていたのは、やっぱり中期的展望を与えることである、こうなってこう変わっていくという見通しを与えるということが非常に大事である、今回それを出してもらうことにしたわけであります。  もう一つは、当面の問題の処理の部面で、これは対米関係の問題もありますし、あるいはEC、あるいは発展途上国、ASEANその他に目を配ったことも必要ですし、あるいは金融やそのほかの問題も必要ですし、あるいは市場開放、今自動車の問題もございましたけれども、日本の輸出が余りにも増大して、そして世界経済におけるバランスを失するような危険性、あるいは批判を受ける危険性というものをいかに阻止するかというような一般的な政策等々も当然考えられるだろうと思います。
  197. 黒柳明

    黒柳明君 そうすると、当面の、総理が年頭にアメリカと約束しました四問題の解決と、さらにASEANの問題あるいは中期的のものも含めて総括的なものを九日に、必ずしも今の日米貿易摩擦の四項目だけに絞った問題ではない、こういうことですね。
  198. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) そうです。しかも、それは二つの別のものが出てくる。一つは中期的展望で、これは諮問委員会の我々に対する諮問に答えるという意味のものが出てくる。もう一つは、政府内部のこれから行わんとする行政措置に関する我々の考え方が出てくる。そういうことであります。
  199. 黒柳明

    黒柳明君 そこで、もう一つ問題になってくるのは、あるいは総理もお考えだと思いますし、アメリカに行って言われるのは、四月一日、四月九日、そして五月のボン・サミットである、こういう一つの、これは何もアメリカサイドじゃなくて、我々国内にしたって常識的には一つのタイムとして想定されるわけですが、ボン・サミットまでには相当な四項目に対しての日本側の最終結論は出てくるのじゃないでしょうか、出ますねと。私は取るに足らない野党第二党の国際局長ですから、質問は私にしたってだめですと、政府関係にしてくださいというようなことでそらしながら、ただ私も日本を代表する政治家としまして、日米議員連盟の一員としまして、それに対して感触なり対話なりもしてきましたが、ボン・サミットということがやっぱり総理、非常に、総理自身が七カ国、EC含めて八八の中に入って、    〔理事梶木又三君退席、理事亀井久興君着席〕 まあこれはヨーロッパの失業率とかあるいはアメリカの先ほどの高金利とか、いろいろな問題が他国にあるにせよ、これは世界から、東南アジアを含めての日本の経済成長に対してのねたみを含めての圧力、反発があるわけですから、ボン・サミットまでにこれは相当の市場開放に対しての解決策をアメリカに提示しないとならないのではなかろうか、こうアメリカ側の意見から私は推測するんですけれども、そのボン・サミットをリミットとしての逆算しての総理の考え方はいかがでしょうか。
  200. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 別にボン・サミットというものを頭に置かなくたって、日本がやらなければならぬことはなるたけ早くやる、そういう考えで進んでいきたいと思っています。
  201. 黒柳明

    黒柳明君 ボン・サミットを頭にやっぱり置く必要があるんじゃないんですか。世界の代表が集まるわけですから、そこでやっぱりじかに話し合いになりますから、いろいろなテーマが。ですから、当然その前に解決すればいいということは、これは前提であります。ですから、そこらあたりでは、もし従来どおりというか、アメリカの今の圧力に対して、東南アジアの不満に対して具体的な解決策を見出せないままにサミットに臨むと、私は老婆心ながら総理が非常に何らかの形でお困りになるんじゃないかという私のこのつれない同情、心情も含めて今言ったつもりですよ。  総理、何かボン・サミットなんか考えなくたっていいなんて、私気が弱いので、ちょっとたじたじとしたんですけれども、そうじゃなくて、総理大臣としてやっぱりこういう問題を本当に、アメリカだけの単に圧力じゃありません、いろいろな各国からの、世界各国からの圧力をしょいながら、しかもヨーロッパが来る。今、ヨーロッパは直接じゃありません。間接的にはいろいろな問題ある。直接のレーガン大統領、間接的なヨーロッパの人が集まって、そして中曽根総理が、経済問題で袋だたきに遭う総理は私は見たくないわけですよ、同じ国会議員として、尊敬している野党の一議員として。そういう立場から、一つはやっぱりボン・サミットというものを、アメリカ側ですよ、私はそのボン・サミットがどうかを、日米経済摩擦なんというのはこれからも続く可能性あるんですから、政府マターであり、総理大臣が言い出しっぺですから、そんなこと私は関係ないとは言うものの、アメリカ側の意見はやっぱり早期解決。  その早期解決といったって、やっぱり四月一日は電電が民営化するから電気機器は何とか結論出すのじゃないか、出してもらいたい、四月九日にはまとまるらしい。あるいはサミットまでには、総理が来るまでには何とか案を出してくれるんでしょうね、出すべきでしょうね、こういう意見を踏まえてと先ほど言いました。ですから、特別にボン・サミットを頭に置く必要ないと私言われると、何だかがくんとショックを感じるんですけれども、ボン・サミットもやっぱり首脳が集まるということでは一つの時期じゃないでしょうか。それに何らかの対応をそれまでに出すということは、やっぱりやるということは一つの常識ではなかろうかと私は思うんですが、このボン・サミット全く関係なくて、それじゃその後も続けてやるという意味ですか。そうじゃなくて、ボン・サミット以前にやらなければならないという意味で今おっしゃったんですか。
  202. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 黒柳さんがその広範な情報網を通じて、世界日本に対する厳しい目をおっしゃっていただいてまことにありがたく思います。そういうような声がややもすれば上げにくい時代でありまして、国民の皆様方に対してある程度我慢していただくような話はしにくいものであります。しかし、それをあえて野党の方でありながら世界の声を伝えていただいたということは感謝にたえないところであります。もちろん、この四月の電電発足を前に解決すべきもの、それから十一、十二日ごろから行われるOECDの閣僚協、この前に一応の方策を示そうということ、そういう意味があって九日という一つのタイミングを選んできておるわけであります。  それから、ボン・サミットというものが国際会議の重要な会議として登場しております。それぞれについてはそれぞれの考え方で対応を考えていかなければならぬと思いますが、日本側の立場といたしましても、何も外国が言っていることが全部正しい声ではないし、日本には日本の国益というものがありますし、日本の議会の声というものもありまして、政府はその全般を考えながら国益を踏まえて行動しなければなりません。しかも、一朝一夕には解決できない問題がまた多々あるわけであります。関税委員会日本では大体十二月に一回今まで開いておるだけであって、そのときに関税問題は討議され、実践されるということでもあるんです。毎年はそういう例で今までずっとやってきておるわけであります。  そういうようなことも踏まえまして、日本としてのペースは日本としてのペースを守っていく、日本政府には日本政府の独自の権威があり、日本国民にはまた日本国民が守ろうとしている国益がありますから、それもやっぱり我々は守っていかなければならない、そういう立場を基本に持ちながら世界と調和をとっていく、そういう考えで進んでいきたいと思っておるのであります。
  203. 黒柳明

    黒柳明君 今総理おっしゃった半分は、本当は野党の私が言わなければならない言葉なんで、何か発言が反対みたいになっちゃって何か私もあれですけれども。  それで、具体的に木材のことと衛星のことでお聞きしたいんですが、一昨昨日ですか、政府・与党の連絡会議で、これは大体各紙とも同じような言葉を使っておりますので、木材製品の取り扱いについては三年ぐらいをめどにいろいろ業界に手当てをして前進させていく必要があると、まあ大体同じような発言として、総理の発言として出ておりますが、これはどういうことなんでしょうか。いわゆる緊急に今何か国内業界にも処置をする、あるいはアメリカの方にも関税引き下げをやる、そして三年間でそれをなし崩しにするというのか、あるいは三年後にそれをやるというのか、ちょっとこの総理のお考えがこのわずか一、二行の活字だけではわからないものですから、この木材の関税引き下げ、あるいは国内の業界の手当て等云々について総理のお考えをお聞かせいただけますか。
  204. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 木材問題一つ考えてみましても、アメリカから日本が輸入しておる木材というのは大体十一億ドルから十五億ドルぐらいに及んでおるんです。日本がアメリカに輸出している分というのは三千万ドルから五千万ドル以下ですね。そういうわけで大量の木材を我々は輸入しておる。しかも丸太そのほか大部分は無税なんです。    〔理事亀井久興君退席、委員長着席〕 ただ、関税がついているというのはモミとか、たしかツガとか、そういうものだけであったと私は思います。それが一〇%ぐらいの関税でありましたか。それでできていることは合板の問題があるわけです。合板及びパーティクルボードというのがございます、合成木材と言いますか。そういうような問題がございまして、アメリカはそれらについて非常に大きな関心を持っておる。  しかし忘れているのは、大部分丸太はもう無税である、しかも多いときは十五億ドル、少なくても十一億ドルは木材が日本に入っているというのを、ややもすれば日本人も知らない人も多いので、やっぱり大量の消費国になっておるのであります。しかし、今、合板とかあるいはパーティクルボードが非常な対象になってきていることも事実であります。しかし、これは今、日本は木材不況で一番苦しんでおる業界であります。その間をどういうふうに調整をとっていくかということが課題であります。  一方においてはまた、日本の林政の上で実に憂うべき事態が起こりつつある。それは間伐ができない、そういう現象であります。これはもう木材の値が安くなってしまって、間伐をしてもその材木が売れないで結局費用ばかりかかって何にもならぬという状態になっている。しかも、戦後、昭和二十七、八年ごろから植えた苗木がちようど三十年ぐらいになっていよいよ伐採期に入ってきておる。これこのまま間伐をしないでおいたら過熟林になってしまって、細い丸太がにょきによき出てくるだけになってしまって、いわゆる美林というようなものは姿を消してしまう。そういう時期になってきておるわけです。そういう意味からも、林相がよくなって、そうして林政が整いませんと、どうしてもこれは災害が起きたり、あるいは水資源の涵養が不便になったり、緑の涵養が怠られる、そういう形にいろいろなってきておるわけです。  そういう意味からも、総合的に林政や木材政策というものについてもう一回見直して、活を入れて、そして好ましき方向にここで改善の第一歩を踏み出させる、そういうときに来ておると思っておるんです。これは合板業界も含めまして政府としては本格的に取り組んで、そして援助すべきものは援助する、また自主、自立的に立ち直ってもらうものは自主、自立的に立ち直ってもらう、あるいは協同組合やその他でいろいろ協力し合ってもらうものは協力し合ってもらう。おのおの政策を立てまして、それに応じて必要な金融なりあるいは助成政策等も考えつつこれに対処していきたい、そういうふうに考えて、おおむね三年をめどにそういう政策をひとつ考え、また実行に入ったらどうであろうかと、そういうことを私、先般、党の首脳部会議で申しまして、そういう線で研究、検討を開始していると、そういうことであります。
  205. 黒柳明

    黒柳明君 そうすると、三年をめどという総理のお考えは、まだ具体的に、一年ごとどうすべきだとか、あるいは関税引き下げと同時に業者に救済策をとるべきだとか、そういう具体策をお持ち合わせじゃなくて、いわゆる三年めどでこれ解決の方向でひとつ検討してみてくれという指示を与えたというふうに理解していいわけですか。
  206. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) そうです。政策をつくって、そして実行に入ろうではないかと、そういうことであります。
  207. 黒柳明

    黒柳明君 これも報道のあれで、農水大臣、その後直ちに何か農水大臣が国内の業者の救済策を先にやらなければだめだなんとかいうような、これまた報道ですから、ちょっと私の正確なあれはありませんが、発言が出てきた。あるいはテレビでは、総理発言に反発をしたなんてコメントがついておりましたが、ひとつ農水大臣、この点どうでしょうか。
  208. 佐藤守良

    国務大臣(佐藤守良君) 黒柳先生にお答えします。  総理大臣は大変森林行政に対して御理解賜って、いつも感謝しております。日米貿易に関して農林水産物について申し上げますならば、大体三カ年平均で九十三億ドル輸入しておりまして、輸出は四億ドル、したがって毎年九十億ドルぐらい買っている、これを御理解願いたいと思います。  そんなことで、今総理おっしゃいましたけれども、林産業界は大変長期の不況にございます。これは簡単に言いますと、昭和五十五年がピークでございますが、木材需要は一五%減っております。製品価格は三〇%安くなっております。そういう形で、それから人件費は三割から五割上がっております。そして倒産が毎年一千件以上でございまして、負債総額二千から二千五百億の間、合板の工場は百四十社ありますが、全部赤字です。これが今の現状。そんなことでございまして、そういうことが大変森林の持つ国土の保全とか水資源の涵養とか、こういった機能に大変な影響を与えています。  そんなことでございまして、木材製品の対外問題につきましては、今総理がおっしゃいました日本の置かれておる立場を認識し、友好国との関係に留意する、我が国林業をどうして生かすかというような観点に立ち、その健全な発展を図るということの調和をどう図って対応するかが基本的に大切だと、そんなことで対処しているわけでございます。そういうことでございまして、関税問題の対応に先立ちまして私が言っておりますのは、単に合板業界の体質改善のみならず、中長期の視点に立って木材産業及び林業を通じた対策を進める必要があると考えておるわけでございまして、したがって、関税問題は林業、木材産業が活力を取り戻した後に対処すべき問題である、こう考えております。
  209. 黒柳明

    黒柳明君 木材業界が活力を回復した後に取り扱う問題であると、これは大臣の責任範囲ですから、これはそういう見解になる。そこに解決策の難しさがあるわけです。  それで大蔵大臣総理大臣が意見をお述べになって、それで指示されて、それから政策も含めて検討される。しかし実際これはいろいろな考え方もあるかと思いますけれども、救済策には相当な援助資金がかかる。一説には二千億も三千億もと、こういうものがすぐ後追いして出てくる。だから摩擦に対して今までも意識はあるけれども解決策はないということで、だけれども今回は何としてでも解決しなければならない、難しさがある。どうですか、大蔵大臣。当然これはもう最大関心事。ということは衛星の問題とVANの問題と木材の問題と、広範多岐の中で絞られる問題というのは、解決問題というのは非常にやっぱり限られるわけですよ。その中の最たるものとして一つ二つの中にも挙げられてきているわけですね。ですから、もう当然財政当局もまたすぐ問題に関連してくるわけであります。大蔵大臣、国内の業者の救済策、それなくしてはやっぱりうまくないと言う農水大臣総理大臣、当然これはいろいろな政策も含めて三年めどで業者の手当ても含めてやるべきだ。それに対してすぐ出てくるのはやっぱり業者の救済、くしくも両方とも。それにはやっぱり財源が必要になる、こういうことになるわけですけれども、どうですか、大蔵大臣
  210. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) いわゆる林業、そうしてまたこのたびの問題に関して総合的に考えるならば、一つは川下対策と川上対策と、こういう言葉をよく使っております。川上対策というのは今後の林業そのもののあり方の問題、それから川下対策というのは今先生御指摘なさいましたまさに業界そのものの問題、こういうようなことであろうと思っております。  ちょうど五十四年の、私は大蔵大臣になります前でございましたが、そういう問題を党の方で主管してやらせていただいたことがございます。が基本的には、この具体策ということになりますと、今の立場からいたしますならば、農林水産省でお考えになったものに対して私どもも総理のこの意図を体して、予算上あるいは金融上いろいろな問題の調整に当たらなければならぬというふうに考えております。
  211. 黒柳明

    黒柳明君 時間ありませんから、次に通信衛星の問題。今の問題、大きな問題が残っておるわけでありますが。  これも二十五日の政府・与党連絡会議のときに総理から通信衛星は経団連に任したらどうかというような発言があったとかいう報道があるんですがこれはいかがでしょうか。購入につきまして。
  212. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 衛星の問題はたしか昨年の春の政策決定で民間が外国の衛星を購入する方途を開きました。そこで、電電の開放と同時に民間でも経団連やあるいは企業の皆さん方がいろいろな構想をお持ちになって、外国と提携しながら通信衛星を購入するというアイデアを持って、それが今着々と進んでおります。たしか三グループがアメリカのおのおのと、例えばGEとかそのほかと提携して企画をやっております。それらはちゃんと政府としても認めておることで、既に輸銀に対しては相当な購入資金の手当てまで政府としては講じておるところなのであります。それらの民間側の話し合いがどういうふうにこれで進んでいくか、これを見ておる、そういう状態でございます。
  213. 黒柳明

    黒柳明君 私もこの三社、RCAとかヒューズエアクラフトとか、いろいろ関係者と会って話しましたけれども、何か二十五日の日も報道で、私はわかりません、藤尾政調会長から、こんなもの郵政に任したら第二のロッキードになるなんていう発言があったとか、それで総理はそれを受けて郵政じゃなくて経団連とか、こんな話があったとか、これは報道であります。私、事実関係わかりませんけれども。やっぱり向こうは商社を含めて激烈な、当然商売ですから争いをやらなかったらおかしいですけれども。やっぱりここらあたりの政調会長あたりの発言あるいはあったのかどうかわかりませんけれども、そこらあたりも二十五日にあって、それで経団連一任という線が改めて二十五日出たという報道、これは事実じゃないわけですか。今までの民間が衛星を購入しているという延長線で、やっぱり今回もということですか。改めて二十五日に総理がそういう見解を出したという報道は、これは事実じゃないわけですか。
  214. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 私がそんな見解を出したことなんかありません。これは民間がやることは民間が自由に競争しておのおのの責任と企画においてやることであると、そう思っております。
  215. 黒柳明

    黒柳明君 それで、まだいろいろあるんですが、割愛しますが、やっぱり言うまでもありません。国内でもしばしば論議されますけれども、アメリカサイドが言うのは、やっぱり行政省令や手続、規則、これが非常に複雑でどうしようもないと。ですから、単純にこういう衛星を購入する、五百億から一千億、こういうことよりも、これは総理に言う必要ないんですけれども、向こうで一番笑い話的に言われたのはコンテナの問題。コンテナの長さが三・八メートル、向こうから来るのはそれをオーバーしている。ところが向こうからコンテナが来たのは全部日本の三・八メートルのコンテナに入れて送らなければ日本の国内運送法上違反である。ところが日本からアメリカに対してコンテナが輸出されている。これはアメリカ向けのコンテナですから大型のが全部日本では道路を通過して行っている。こんなばかな国内法はあり得ることはないじゃないかと。こう言われてみるとあるいは三・八メートルの規格でかつては鉄道線路なんかありましたからね。今東京都内でも三・八メートルでつかえるなんというのは数少ないです。ですから、当然向こうが言う国内法の整備をやれと、やらなかったらだめだということは、これは一理ある。うなずけるわけです。私たち寡聞にしてあるいは勉強不足でそういう個々についてはわからない、行政当局の交渉相手ではありませんから。  ですから一番彼らが言っているのは、やっぱり国内法の整備、省令等の改正、これなくしては煩雑な手続あるいは矛盾が多くて、この貿易摩擦というものはどうしようもないんだよ、一つ二つ買ったってと。これはオレンジやビーフだって同じです。あれだけ強硬に来たといったってこれが三百億の貿易摩擦の解消には全くならない、ささいな金額でありますから。ですから基本的にはこれの見直しをしなければ中長期的の先ほど言った政策も含めてという中には、総理はこの考えをお持ちにならないとやっぱり日米貿易摩擦あるいはほかとの貿易摩擦というものは解消できない、こう認識しているんですが、先ほどの中長期的な政策も含めてというのはこういうものも含んででしょうか、国内法の改正あるいは省令の見直し。
  216. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) やっぱり内外を通じて不合理なものは是正しなければならぬし、日本は国際国家を志向している以上は原則として国際基準を受け入れる、それが国際国家の建前である、そう思います。ですから、対外関係のそういういろいろな省令やら何かいろいろ難しい問題もあるかもしれませんが、日本独特の事情のあるものはこれはやむを得ませんが、原則イエス、しかし日本独得の特別の事情のあるものはこれは別に条件あるいは留保をする、そういうような考えが正しいと思って、そういう方向に持っていきたいと思っています。
  217. 黒柳明

    黒柳明君 次に、防衛庁長官防衛問題です。  先般、日米の、渡部統幕議長とアメリカの在日司令官と調印しましたいわゆる日米共同作戦計画ですか。この内容ですけれども、私の知る限りは、一つはさまざまな有事に対処する策が盛られている、二つ目は核攻撃は想定していない、三つ目は専守防衛非核原則の大枠の中で考えていく、四つ目は限定小規模侵略に限っていない、それから五つ目は、今後修正の余地もあるが、一つの基礎となる日米共同作戦、そしてこれは画期的なものである、こういうことであれしているんですが、大体これよろしゅうございますか。
  218. 矢崎新二

    政府委員(矢崎新二君) ただいまおっしゃいました中で、限定小規模侵略に限っていないというふうにおっしゃいましたけれども、私どもの防衛構想と申しますのは、防衛計画の大綱にございますように、基本的な原則は限定小規模の侵略には独力で対処するということでございます。しかしながら、それで対処できない場合には米軍との共同対処で実施をするということでございますから、そういう意味におきましては、日本防衛に必要な共同作戦を有事において米軍と共同対処するための作戦計画について研究をしているものであるということは言えると思います。  ただ、これは現在どういうことでやっておりますかといいますと、まずその一つのある設想を置いて研究をしたものが、ただいま御指摘のように、昨年の暮れに日米の研究当事者間でサインをされたわけでございますけれども、これにただいま先生がおっしゃったような今回の研究でいろいろな設想ということでやっているものではございません。それから、非核原則の点は、それは当然の研究の前提になっております。それから、共同研究の中では、核の使用の問題につきましては、これは我が国としては核の抑止力というものはアメリカに期待をするということが基本的な前提になっておりまして、また、その核の管理の問題は、アメリカの非常に高度の政治マターでもあるということもございます。私どもとしては共同作戦計画の中において核の使用の問題を想定はしていないということでございます。
  219. 黒柳明

    黒柳明君 防衛庁長官、これは当時の最高責任者ですから、今言ったこれが盛られていると局長の答弁でいいんですが、一応また事務当局じゃなくて長官として、こういうことが内容に盛られているということは間違いありませんね。
  220. 加藤紘一

    国務大臣加藤紘一君) 共同作戦計画の内容については、細部については御勘弁いただきたい部分があるのですが、今のそれぞれの項目についての見解は、ただいま防衛局長が申し上げたとおりであります。項目についてのそれぞれのことについては局長が今申し上げたとおりであります。
  221. 黒柳明

    黒柳明君 盛られていますね。
  222. 加藤紘一

    国務大臣加藤紘一君) 例えば非核原則、核については前提としないとか、いわゆるガイドラインを前提としておりますので、その枠の中で盛られるものは盛られる、盛られないものは盛られないということになっております。
  223. 黒柳明

    黒柳明君 そうではなくて、もう一回言います。一つ、さまざまな有事に対処する策が盛られている、二つ、核攻撃は想定していない、三つ、専守防衛非核原則等の大枠の中で考えていく、四つ、限定小規模侵略に限っていない、それから五つ目、今後修正の余地もあるが一つの共同作戦の基礎となっている。そしてすべて画期的な内容である、これが盛られていますねということ。
  224. 加藤紘一

    国務大臣加藤紘一君) さまざまな有事という問題につきましては、若干盛られているということは言えないと思います。一つの設想、幾つかの有事、幾つかの設想があり得るわけですけれども、それについての一つの設想に限っておるというわけでございまして、さまざまという面については若干――さまざまじゃなくて一つということでございます。  核有事を想定してないということはそのとおりでございます。  それから専守防衛非核原則に基づいているということはそのとおりでございます。  それから限定小規模に限っていないというところはちょっと違うところでございまして、私たちの防衛政策は限定小規模に対処するということでございますので、ガイドラインに基づくこの研究も、我が国の有事、我が国の対処としては限定小規模に限られているものでございます。  それから、今後修正があるかということは、これは常に検討し直しながらやっていくということでございます。
  225. 矢崎新二

    政府委員(矢崎新二君) 若干補足さしていただきますが、限定小規模の問題につきましては、先ほど申し上げましたように限定小規模には原則として独力対処でございますから、共同対処のケースとしてはそれを越える場合もあり得るということであります。
  226. 黒柳明

    黒柳明君 長官、そういうことよ。こんな大切なことが盛られているのに、局長が言ったばかりじゃないですか。その後を受けて、私はもう人情家ですから防衛庁長官すぐやれとは言いませんよ。局長おやりなさい。そしてその後を受けてやりなさい。それを局長が言ったことを盛られてない、それは違っている、あるのです。  済みません、外務大臣。これは後で追認されて外務大臣として、あるいは事務当局としてはある程度不満が今もって残っているのかどうか、こういうことがあること記憶ありますか、外務大臣。済みませんね、突然の質問で。こういうものは入っているということ見たんでしょうから、後で。御存じでしょうか、こういうものが盛られていた、共同作戦の中に。
  227. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) そういう文書は見ておりません。
  228. 黒柳明

    黒柳明君 後でごらんになったんじゃないですか、共同作戦のサインされたもの、後で。
  229. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 内容について局長から聞きました。
  230. 黒柳明

    黒柳明君 局長から口頭ですか、口頭で説明ですか。この内容の文書見てないのですか。その中には限定小規模侵略に限ってないということが出ていると言わなかったですか、外務大臣。済みません、恐縮です。これはもう防衛庁マターですけれども、外務省はもう被害者なんだから。
  231. 栗山尚一

    政府委員(栗山尚一君) 共同作戦研究の内容につきましては、概要を防衛庁の事務当局より私ども御説明を伺いまして、事務当局から外務大臣に御報告申し上げたということでございます。具体的にその中身についてどういうことが書いてあったかということにつきましては、これは政府として公表しないということになっておりますので申し上げるわけにまいりません。
  232. 黒柳明

    黒柳明君 内容じゃないの。内容なんか知りたくないの。どういう項目が盛られているかという、それだけの内容なんです。逐条なんか必要ないですよ。  それで、先ほど局長がおっしゃったけれども、限定小規模、防衛大綱では自衛隊の任務が明示されておりますよ。あくまでも法整備の中で自衛隊は動くわけですよ。それが限定小規模侵略に限ってないものを共同作戦で練ったということは、そうすると日米安保条約は核に対する抑止力じゃないですか。そうでしょう。アメリカは大規模侵略に対しての、やっぱり日本の自衛隊はどうしようもないからアメリカに頼っているのじゃないですか、今までの発言、それから防衛大綱の中で。ところが今度の日米共同作戦では限定小規模、専守防衛という自衛隊の任務は米軍と共同作戦をとった場合にはその限りにあらずということをここに盛り込んだ。そうすると今までの自衛隊の任務、これは全然枠が外れたということになりませんか、防衛庁長官。それは今局長が言ったように米軍と共同のときに限ってはいいという、こんな前提今までありましたか、防衛政策の中で。
  233. 矢崎新二

    政府委員(矢崎新二君) これはガイドラインに基づいて御理解をいただければいいのではないかと思いますが、このガイドラインの中に、日本に対する武力攻撃がなされた場合の対応について書いてございます。  まず第一に、「日本は、原則として、限定的かつ小規模な侵略を独力で排除する。侵略の規模、態様等により独力で排除することが困難な場合には、米国の協力をまって、これを排除する。」ということになっておるわけでございます。そうして、「自衛隊及び米軍が日本防衛のための作戦を共同して実施する場合には、双方は、相互に緊密な調整を図り、それぞれの防衛力を適時かつ効果的に運用する。」という考え方をとっておるわけであります。そういたしまして、別な場所でございますが、「自衛隊及び米軍は、日本防衛のための整合のとれた作戦を円滑かつ効果的に共同して実施するため、共同作戦計画についての研究を行う。」と、こういう仕組みでガイドラインができておるわけでございまして、そういった研究を現在実施をしているということで御理解をいただきたいと思います。これはつまり、日本防衛のための作戦の遂行、オペレーションの問題はそういう仕組みで動くわけでございます。  他方、委員御指摘の大綱の問題は、私どもの持ちます自衛隊の防衛力、これの整備の目標としての考え方として、まず限定かつ小規模の侵略に対しては独力で原則として対処できる程度のものを自衛隊の力としては持ちたいということを決めているものでございまして、両者それぞれ矛盾のない仕組みになっておるわけであります。
  234. 黒柳明

    黒柳明君 これ問題ですよ。時間がないのでその次の問題点だけ指摘しましょう。  これは研究とか案とかこう言われておりますね。防衛庁長官これはもしこの研究がとれると、計画になるわけ。そのときには、これは今みたいな制服がサインしたという、研究だからというエクスキューズの余地はありませんな。そうすると、何らかの法手続がとられる、当然そうならなきゃなりませんね。これはどういうことなんでしょうか。いつかそういう案とか研究がとれましてね、今研究なんてしよう。だから、こう制服がサインしたと、これが研究積み重ねて計画と、案でも研究でもなくなる、こういう時点はいつ来るのでしょうか。あるいはそのときにそれは制服同士がただ単にサインしたということではなくて、当然外交上の法手続が必要だと思うのですが、それはどういう手続がなされると、こう今から考えているんでしょうか。
  235. 加藤紘一

    国務大臣加藤紘一君) もし、そういう必要が生じたような事態が予想される場合には、この共同作戦計画を確定するのは当然のことながら、日米両国政府であろうと思いますが、具体的に共同作戦計画の具体的内容がどのようになるか、現段階では判断しがたいところがありますので、今後の共同作戦計画についての研究の進捗状況等を見つつ、どのような段取りでやるか、総合的に検討していきたいと、こう思っております。
  236. 黒柳明

    黒柳明君 ただこの中で、あくまでも案であるけれども、画期的なものであって、これが基礎になる、こういうふうにこれつくったときに言っていますですな。ですから、もし有事のときね、いつ来るかわからない、有事というのは。そのために研究重ねているんですから。案がすぐ計画になってこれを実施するという可能性はゼロですか。これはあくまでも計画、案であって、研究であって、いざ有事が起こった場合にはこれは全く廃棄処分にされるものですか。そうじゃないでしょう。有事が起こったときは、この案は案にあらずして計画になって実施されるんでしょう、日米共同作戦として。この点いかがでしょうか。
  237. 矢崎新二

    政府委員(矢崎新二君) 先ほども申し上げましたように、この共同作戦計画の研究というものは、日本の有事の場合に有効な共同作戦を、共同対処行動を実施することが可能になるための研究をやっておるわけでございますから、この研究の内容というものが有事におきます実際の共同対処行動をやる場合の参考になるということはもちろんあり得ることでございます。したがいまして、そういう事態になりました場合にどういうことを考えるかということは別途の問題でございますが、その際に今の共同作戦計画の研究を参考としつつ考えていくということになろうかと思います。
  238. 黒柳明

    黒柳明君 問題はそこなんです、長官。案で、計画であるけれども、いざ有事があした訪れた場合にはこれは参考にする。参考じゃない。このままそっくり計画に移せられる可能性だってあるわけでしょう。参考という範囲がわかりません。有事がいつ来るか局長だって、長官だってわからないもの。どういう想定で有事が来るか。だから、今の案は、計画はそっくりその時点においてはそのまま共同計画として実施される可能性はある。にもかかわらず、長官おっしゃったように、計画がつくられるときは両政府間でしかるべくやるんだと。そうでしょう、法手続上。それが現在は制服の二人だけでサインしたものが今ここに来ているんです。これがいざとなったら、案じゃなくて、計画になる可能性はあるんですよ。日米両国を縛っているものなんですよ。当然これは共同対処、安保の第五条に基づいての話し合いでしょう。ですから、ここに危険性がある。どうですか、わかりますか、私が言っていること。いざとなったとき、案は案じゃなくて、計画になりますよ。その可能性あるものが制服同士で調印しちゃって、外交ルートをそこのけにして、外務大臣も知らない。そんなことでいいんですか。  安保条約の第五条、これに対して、防衛警備に関する項目について今協議しているわけでしょう。ほかの六条でも、七条でも、全部法整備はしてありますよ。第五条だけがない。だから、これね、日米政府間で制服が話し合いをやっているわけでしょう、この話し合いというものは有事のときは話し合い、研究、案じゃなくて、そのまま共同作戦として参考にせよ、実施されるわけでしょう。それが今現在、外交ルートも何も通さないで、制服間の合意で済まされちゃって、外務大臣だって事後処理。事後処理もペーパーじゃなくて、口頭、こういうものが実際に行われていることに対しては、これは大変なことじゃないでしょうか。どうですか。
  239. 加藤紘一

    国務大臣加藤紘一君) この研究をしているプロセス、過程の中で、十分なるシビリアンコントロールが機能しているかという御質問であろうと考えますが、その意味は……
  240. 黒柳明

    黒柳明君 そんなことを言っているんじゃないよ。そんなこと質問してない。
  241. 加藤紘一

    国務大臣加藤紘一君) これは御承知のように、五十三年ガイドラインが決定されましたときに、それを報告し、承認された国防会議及び閣議の場におきまして、当時の防衛庁長官が、このガイドラインに基づくこういう研究は防衛庁長官の責任においてやりたいと思いますということを言い、それが国防会議、閣議で認められて進められてきているものだと思っております。その意味で、作業の段階では、内局も十分にその検討の過程をチェックいたしておりますし、また防衛庁長官にもそれぞれ報告があり、そして歴代の防衛庁長官は、それぞれの段階で、概成された段階で総理大臣、最高指揮官たる総理大臣にその内容を報告いたしているわけでございます。したがって、その意味では、しっかりとしたプロセスをとっていると私たちは思っております。
  242. 黒柳明

    黒柳明君 私の質問はそんなことを言っているんじゃないんです。安保第五条、共同対処に基づいて、防衛庁設置法に基づいて制服が研究している、勉強している。これは私は悪いとは言いません。私たちも日本の政治家です、国民です。いついかなるときに対して自衛隊が何にもしないで、勉強もしなかったら困る。結構。勉強してください。ただし、それは、安保条約は外交ルートで、国際的な条約ですから、だから六条だって七条だって全部法整備がされています。五条だけ法整備がない。それが、設置法において、防衛警備に対して話し合いはできるとなっているんです。していいんです。ただし、話し合いじゃなくて、案じゃなくて、研究じゃなくて、それが計画になるときには、当然外交ルートを通じて国際間の条約としてこれは締結されなければならない。ところが、今の案は、研究は、すぐ有事が来れば計画、案じゃない、研究じゃなくなる、計画そのものになる可能性があるわけでしょう。それを外交ルートを通じないで、安保を無視して、制服だけが調印しちゃっていることはうまくないじゃないですかと、こういう意見です。  委員長、一分過ぎました。申しわけありません。これ見解を、後日でいいですからペーパーにして下さい。これを私要望して質問を終わらしていただきます。
  243. 矢崎新二

    政府委員(矢崎新二君) ただいまの点は、若干補足して説明を申し上げたいと思いますが、安保条約五条に基づきまして、日本有事の際に日米両国が共同対処行動をとるということが基本的にうたわれておるわけでございますが、その場合に、日米両国はそれぞれの指揮系統に従ってこの作戦を実施していくというのが基本でございます。したがって、それを日本防衛のためにどういう共同対処行動をとるのが有効かということを軍事的な観点からそれを研究しているのが今の共同研究であります。実際に有事になった場合におきましても、そういう共同対処行動はそれぞれの指揮権に基づいてやるわけでございますから、そこにおいて日本の自主的な立場は何ら損なわれていることはございません。また、軍事的な面につきましては、やはり防衛当局が総理の指揮下でコントロールをすべき問題だと思いますし……
  244. 長田裕二

    委員長長田裕二君) 防衛局長、詳細な答弁は要求されていません。
  245. 矢崎新二

    政府委員(矢崎新二君) また、安保条約の運用上必要な面については外務省とも連絡をとってやっていくということは当然のことでございまして、その点におきまして現在法制的に不備があるとは思っておりません。
  246. 長田裕二

    委員長長田裕二君) 以上で黒柳君の質疑は終了いたしました。(拍手)     ─────────────
  247. 長田裕二

    委員長長田裕二君) 次に、上田耕一郎君の一般質疑を行います。上田君。
  248. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 太平洋協力の問題とSDIの問題についてお伺いしたいと思います。  毎日新聞の一月九日付の報道によりますと、ロサンゼルスの日米首脳会談で太平洋協力についての合意が行われた。シュルツ、レーガンと中曽根首相との会談で合意が行われた。ただし、太平洋協力の枠組みを日米間で事前に決めた印象を避けるために、双方の新聞発表からも意図的に外されたと、こう書いてあるんですが、どういう内容の合意が行われたのか、またこの報道は事実か、首相にまずお伺いします。
  249. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 新聞発表から外したことはないので、たしかあの共同声明の末尾に載っていると思います。詳細は政府委員から答弁させます。
  250. 栗山尚一

    政府委員(栗山尚一君) 首脳会談が終わりました後に総理より発表していただきましたいわゆるプレスリマークスの末段におきまして、太平洋協力の問題について、「カリフォルニアは太平洋をはさんでの日米交流の歴史において常に中心的な役割を果たしてまいりました。」ちょっと飛ばしまして、「アジア・太平洋地域にみられるダイナミックな発展を一層促進することの重要性につき話し合う場所として、このカリフォルニアほど適した場所はありません。今後とも引き続き貴大統領との緊密なパートナーシップの下に、共通の目的に向かって邁進できることは、誠に心強い限りであります。」こういう文脈の中でアジア・太平洋地域における協力の問題について話し合われたということがプレスリマークスの中に述べられております。
  251. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 新聞報道では四原則一つは、大洋州、ASEANのイニシアチブ尊重、二、非軍事分野に限る、三、排他主義の否定、四、既存の民間協議機構の活用の四項目、こうなっているんですが、首相、大体こういう合意ですか。
  252. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 別に合意というようなかた苦しい話をした覚えはないのです。ただ、太平洋問題というものが次に隆起する大事な問題である、そういう問題については、ASEANの立場を尊重して、むしろASEAN拡大外相会議というような場所を尊重した立場でやるのがいいし、民間協力、そして非軍事的な面、それからほかの協力を排他的なものにしないでオープンにする、そういうような原則を私から述べまして、大体レーガンさんも賛成の様子だと私は受け取りましたが、それは正式の合意とかなんとかというものではありません。
  253. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 新聞にも、首相はやはり非軍事が必要だと、そう強調したというのがありますが、外務省にお伺いしますけれども、去年の十月十九日、シュルツ国務長官が議会での証言で太平洋共同体問題、これは安全保障の観点がその根底にあることを明らかにしたという報道があるんですけれども、どういう内容の証言だったでしょう。
  254. 渡辺幸治

    政府委員(渡辺幸治君) お答え申し上げます。  昨年十月十九日、御指摘のとおりシュルツ国務長官の講演がございました。議会ではございませんで、ロサンゼルスの世界問題評議会で外交政策の展望と題する講演を行っております。レーガン第一期政権における四年間の外交を踏まえて、第二期政権のレーガン外交を展望し、東西関係、地域紛争の平和的解決、世界経済の秩序確立等について話をされております。  その中で、東アジア、東南アジアの自由経済体制は他の開発途上国が学ぶべき経済発展の手本である等々、アメリカ外交における東アジア太平洋地域の重要性について強調されております。
  255. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 しかし、アメリカ国務省には、例えばリチャード・バード国務次官補なども、太平洋地域が順調になっているのは米中関係、日米安保、韓国の米軍駐留、こういうことがあるからだということを述べておりますし、アレン氏などもこの安保関係が根底にあるということをいろいろ言っているんです。その点で首相にお伺いしたいのは、開かれた、また非軍事だと言われるんだけれども、太平洋協力の中に首相は韓国の参加については、韓国行って賛成だという表明をされたようですが、では朝鮮民主主義人民共和国、中国、ソ連あるいはベトナム、これらの社会主義国の参加については首相はやっぱり開かれており、賛成だという態度ですか。
  256. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 具体的にどういう国が入るとか、いつから始めるとか、どういう協力内容をするとか別に人と話した問題ではないし、まだそこまでは固まっていない。ただ、一般的にこういうような問題のイニシアチブは拡大ASEAN外相会議等で話し合ってもらって、ASEANが中心になってやるのが望ましい、そういう方法論に対する感想を申し述べたので、今具体的な御質問についてはまだお答えする段階ではありません。
  257. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 アメリカのフェアバンクス担当大使は、中国、韓国の参加は排除しない、ソ連についてはかなり批判的な見解も既に発表しておりますし、この問題、きょうの議論は首相余りお答えにならないので、今後やっぱりアジア情勢にとって非常に大事な問題で、今後の動向を非常に注意を我々もしますし、政府も本当に非軍事という考えを述べられたのなら、やっぱりそういう方針でやるべきだということを強調して、次にSDI問題に移りたいと思います。  きょうのこの委員会でも午後問題になっておりますけれども、アメリカ側から六十日の期限で日本の技術協力の要請が参ったわけですね。唯一被爆国としてこの問題で日本がどういう態度をとるかというのは非常に重要な国際的な意味があるものだと思うんです。首相はこの予算委員会で何回も、レーガン大統領との会談で、まず第一に防衛だと、第二に非核だと、非核兵器だと、第三に核廃絶につながるという三つの説明を受けたと、だから理解を表明したし、非常におもしろいアイデアだなどとこの国会でも答弁されているわけです。それで首相も、日本として独自の研究をやる、そういう意向を表明されておりますし、防衛庁もSDIの研究に着手して、防衛局調査第二課、陸幕の調査部調査第二課が始めたという報道もあります。私は、この三つのレーガン大統領の説明というのは、それぞれ事実と全く違う欺瞞ではないかと思うんですね。  まず第一に、防衛兵器だということですけれども、アメリカのニューヨーク・タイムズによると、これは地上攻撃も可能な兵器だと、正確に地上の目標を攻撃し瞬時のうちに焼き尽くすことが可能だと、メーデーのパレード中にソ連の指導者のだれかを選んで宇宙から暗殺することさえ不可能じゃない、先進工業国を十八世紀並みの段階にまで破壊することさえできるということで、非常な攻撃能力を持つという指摘がアメリカの国内でもあるわけです。私は研究しているという防衛庁にお伺いしたいんですが、フレッチャー報告というのがありますね。これは国防総省がアメリカの議会に昨年提出した報告ですが、あれを見ますと、四つの段階になっている。そのうちのミッドコースというのは、大気圏外を飛行する際にレーザー兵器で打ち落とすというわけなんですけれども、このアメリカのウィズナーというマサチューセッツ工科大学の名誉総長がいます。これは、ケネディ大統領以下三代の大統領の科学顧問で、アポロ計画のリーダーだった方ですけれども、先日日本に来て、テレビ朝日で対談をされました、この宇宙兵器問題で。このウィズナー博士のテレビ朝日での対談の中身が朝日ジャーナルの三月八日号に載っておりますけれども、ミッドコースで飛んでいる核弾頭を、もしビーム兵器で打ち落とすと、大気圏外で核爆発が起きる可能性があるというんですね。そうすると、大気圏内で核爆発が起きると、これは御存じのように核の冬が起きますけれども、大気圏外で核爆発が起きるとこれは核の冬どころじゃなくてもっと大変なことになる。ウィズナー博士は、紫外線がもっと入ってくると、凍死じゃなくて焼け焦げると、そういうことを言っている。大気圏外でオゾン層、それから電離層、イオン層などが破壊されますと、紫外線から地球を守るオゾン層がなくなるので紫外線がそのまま地球に降り注ぐことになるのであります。このウィズナー博士と対談をしたのが東海大学の情報技術センターの坂田俊文所長です。私、坂田さんともお話ししましたけれども、坂田さんはこれは核の冬どころか地球のバーベキューができる、核の冬は地球が凍結するんだが、これは地球が焼け焦げるんだと、すべての生物の死滅の危険さえ生まれ得るということを述べておられる。ウィズナー博士はこの問題の非常な専門家ですけれども、こういう危険からこのSDI計画に反対して、こういうものをやるべきでないという主張を述べておられるということですけれども、防衛庁はそういう事実についても御存じですか。
  258. 古川清

    政府委員古川清君) お答え申し上げます。  一部の新聞に、防衛庁がSDIの調査、研究に乗り出したという報道があったことは事実でございますけれども、これは実は誤報でございまして、SDIというものがこれだけ世界の関心と注目を集めておる極めて重要な戦略上の問題であるということは防衛庁も十分認識をしておりまして、その観点からそれなりの情報収集をしておるということは事実でございます。しかしながら、研究に乗り出したということは全くございませんので、ここで改めて申し上げておきたいと存じます。
  259. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 外務省はどうですか。ウィズナー博士のこういう警告などがアメリカで行われている、既に日本に来て、日本のテレビにも出て話されておるのですが御存じですか。
  260. 栗山尚一

    政府委員(栗山尚一君) 文献その他によりましていろいろな議論が行われておるということは私ども承知しておりますが、どのような影響があるかとか、そういうような具体的な問題につきましてはこれからいろいろ外務省といたしましても勉強をしていきたいというふうに考えております。
  261. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 どうも何も御存じないようですけれども、人類の運命にかかわる大問題なので、外務省も防衛庁ももっと責任を持った態度で進めてほしいと思います。  二番目に非核兵器という点ですけれども、これはこれまでも衆参両院予算委員会で問題になってきて、エックス線レーザー、これが小型水爆を使うものだということが問題にされ、指摘されました。ところが栗山北米局長は、これは核兵器じゃないから非核原則には触れないという見解をどうも表明されたようでありますが、外務省はこれだけ問題になってきたのでアメリカ側にいろいろ資料その他を照会したい、そういう態度を表明しておりますけれども、アメリカのSDIシステムの中にエックス線レーザーという核兵器を使用した衛星の使用計画というものがあるかないか、これ確認しましたか。
  262. 栗山尚一

    政府委員(栗山尚一君) 衆議院予算委員会で今、委員御指摘のような御質問がありまして、私から御答弁申し上げたことはございますが、私はそういうエックス線レーザー兵器、核爆発を利用したエックス線レーザー兵器というものがSDIのシステムの一部として研究をされておるということが文献その他に出ておるということは承知しておるということを申し上げたのが第一点でございます。  それからこれが核兵器であるかどうかということにつきましては、私が御答弁申し上げましたことは、これは今の段階でこれが核兵器であるとかないとかということを断定的に申し上げるということはできないであろう、今後やっぱり研究の進展を見て判断すべきものではないかということを申し上げた次第でございます。  外務省あるいは政府全体といたしましては、今後必要に応じましてアメリカからいろいろ具体的に、アメリカ政府が考えておることの内容につきまして説明を受けていくべきであろうということを考えております。総理は、ロサンゼルス会談でレーガン大統領にもそういう趣旨のことを申されまして、レーガン大統領も随時日本政府情報提供を行うということを言っておられる次第でございますので、そういう文脈の中で今後アメリカからもう少し詳しく話を聞いていきたいというふうに考えておりますが、現段階におきまして、具体的に今のエックス線レーザー兵器云々につきましてアメリカ政府に照会をしたということはございません。
  263. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 どうものんびりし過ぎていると思うのです。エックス線レーザー兵器というのはSDIシステムの中で決して小さな部分ではない。  ここに私が持ってまいりましたのは、フュージョン・エネルギー財団、これはSDI関係の科学者、ジャーナリストが入っているんですけれども、ロッキード、またロッキードが出てくるんですよ、これは。こういうSDI兵器のメーカーたちと非常に関係のある財団が発表した本ですが、これにはエドワード・テラー博士、例の水爆の父ですね、並びにレーガン大統領をしてビーム防衛が完璧に可能だと確信せしめたのは、ほかならぬエックス線レーザー技術だということまで指摘されていて、これが大体SDIシステムの本命なんですね。  私、フレッチャー報告、これ国防総省の報告ですが、これを党として全訳いたしました。この中に、幾つかの有望な可能性が明らかにされた。先端技術に支えられて、単一巨大パルスを発生し、目標物に衝撃波を与えるレーザーの設計が可能である。その衝撃は構造物を押しつぶすと書いてありますが、これがエックス線レーザー、小型核兵器を積んでそれでこのビームディフェンスによりますと、スペースシャトルを使って地球を回る静止衛星軌道に五十個から三百個乗せると言うんですよ。それで水爆が爆発すると、ロッドが百本ぐらい出ていて、その先から一遍に物すごい強力なエックス線レーザーが出てミサイルを破壊する。水爆爆発ですから一遍で終わりという恐るべき兵器なんですね。私どもアメリカの議会証言いろいろ調べました。非常に力を入れてアメリカ当局はこのエックス線レーザー開発をしております。  ここに持ってきましたのはSDIの本部長、最高責任者エイブラサムソンが昨年の五月九日、下院歳出委員会に提出した集中審議資料です。この中には、エネルギー省はニュークリア ドリブン エックスレイ レーザーズ、これにもう予算をつけているということがエイブラハムソンの議会提出資料にも書かれている。栗山北米局長はこのエックス線レーザーが核兵器であるかどうかまだわからぬと言われておる。これも不勉強きわまりない。このスターウォーズ構想を初めて述べたのはレーガン大統領の八三年三月二十三日の有名な演説です。その同じ日に上院の軍事委員会で文書質問に基づいてエックス線レーザー問題が既に議論になっているわけです。この翻訳を読みますと、ウォーナーという上院議員がこの核兵器問題について質問をしたところ、ランバーソンというアメリカ空軍のエネルギー兵器担当補佐官、これは中将です、こう答えている。エックス線レーザーとしばしば呼ばれているシステムは事実核兵器であって、第三世代の核兵器である、それだけでエックス線レーザーは核兵器関係するすべての制限に該当することになるだろうと、こう明確に議会で答えているんですね。だから、栗山北米局長は小型水爆が爆発するけれども、それで人間を殺傷しないから非核原則に当てはまらぬかのように言ったけれども、それのエネルギーがロッドで転換されて物すごい殺傷力、大破壊力を持つわけですよ。アメリカの担当者が国会で核兵器についてのあらゆる制限に該当すると、そう言っているわけです。  そうしますと宇宙条約第四条それから国連決議、これらに完全に違反する。静止衛星に積むんですからね、静止軌道に、何十個、何百個も。そういうエックス線レーザーがレーガン政権が考えているSDIの本命だということになりますと、これはほんの一部のもので非核兵器だというふうなのんびりしたことをこの国会で言っていることでは済まないと思うんです。  北米局長、どうですか。もしそういうものだとすれば宇宙条約第四条に明白に違反するということになると思いますけれども。
  264. 栗山尚一

    政府委員(栗山尚一君) 私も私なりにいろいろ文献を読ませて、勉強をさせていただいております。そういう前提で衆議院予算委員会で私が御答弁申し上げたわけでございまして、今の段階でエックス線レーザー兵器というものが核兵器であるかどうかと、核兵器という定義に該当するかどうかということは今の段階では断定的に日本政府としては判断できないであろうということを申し上げた次第でございます。  それから、私が勉強させていただきました文献、それからアメリカ政府のいろいろ発表しております公式の資料等から判断いたします限り、そのエックス線レーザー兵器というものが現段階におきましてアメリカが考えておりますSDIの中で具体的にどういう中核的な役割を果たすのか、あるいは全然そういう現実的な兵器としては結局利用されないものになるのか、そこら辺のことは現在公表されている資料から見ます限りまだ全くの研究段階でございまして、必ずしも委員御指摘のような中核的な役割を果たすことになるというふうに決まったものではないというふうに私は理解をいたしております。  それから、非核原則云々の御指摘がありましたが、私はそういう趣旨で先ほど御答弁申し上げたわけではございませんので、念のためその点補足させていただきます。
  265. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 宇宙条約第四条を。
  266. 栗山尚一

    政府委員(栗山尚一君) したがいまして、現段階で宇宙条約の第四条に定められております大量破壊核兵器ないしは核大量破壊兵器を宇宙空間に配備することを禁止しておる宇宙条約の第四条に反するかどうかということを今の段階で申し上げるわけにはいかない、判断するわけにはいかないと思います。  ただ、もう一点だけ申し上げますと、アメリカは今の段階では累次、レーガン大統領から、総理も御発言がありましたが、基本的にはSDIというのは非核防衛手段であるということ、これはアメリカは、レーガン大統領のみならず累次の機会にそういうことを申しておりますし、それから当然アメリカは宇宙条約の当事国でありますから、宇宙条約の規定、先ほど委員御指摘の宇宙条約第四条の規定というものは当然アメリカとしては念頭にあるわけでございまして、将来仮にSDIの兵器システムというものを展開する、具体的に配備するというような段階に仮になりました場合にも、宇宙条約との関係というものはアメリカとしては十分念頭に置いて考えるだろう、これは常識的にそういうふうに考えられるわけでございます。
  267. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 栗山さん、エックス線レーザーというのはまだ本命になるかどうかわからぬとのんきなことを言われておりますが、そうじゃないんです。  ここに私は「国防」という雑誌に江村さんという軍事評論家が書かれた「SDI計画の技術的考察」という論文を持ってきている。ここには非常に有名な雑誌、アビエーションウイーク・アンド・スペーステクノロジー、これはイランのパーレビ前国王なんというのはしょっちゅう愛読していたという軍事問題の一番の専門誌ですけれども、このアビエーションウイークに載ったレーガン政権が考えている五カ年間のSDI関係予算の表が載っているんです。五カ年間に二百六十億ドルと。これはもう御存じでしょう。これを見ますと、五カ年間の指向エネルギー兵器予算、この中で化学レーザー、エキシマレーザー、自由電子レーザー、核励起エックス線レーザー、すべて五カ年間どういう予算か書いてある。江村さんも、その中でもとくにエックス線レーザーの研究予算が極めて大きいことが目につくと書いてある。これ見ますと五カ年間で八億ドルですよ。いわゆる化学レーザーが四億ドルで、四億ドルの二倍、最もエックス線レーザーに予算つけているんですから、大体そういうものなんですね。最もここに重点を置いておりますし、このビームディフェンスによればSDIの中心的形態だと。どんな本にも第一段階のブースト段階で、このときに一番落とさなければならない。このときに一番落とせるものはエックス線レーザーだと。たった一個で約百五十個の核弾頭を一遍につぶすことができる。それまでの算術を、化学レーザーでは算術程度だったこれを全部ひっくり返すことのできる革命的兵器だということをすべての本に書いてあります。そういうこともろくに調べないで、あたかも核兵器でないかのようなことを言って、レーガンが言ったことだけを信じて、我々国会あるいは国民に間違った観念を与えるのは私は許せないと思う。中曽根さん、ひとつお伺いします。  宇宙条約第四条、それから国連決議のことを言いましたけれども、日本の国会としては昭和四十四年につくられました国会決議ですね、宇宙開発事業団のときの国会決議、これが非常な大きな問題になってくるわけです。このときの決議は「わが国における宇宙の開発及び利用にかかわる諸活動は、平和の目的に限り、」というのが入っているわけです、附帯決議にね。宇宙開発事業団法にも「平和の目的に限り、」というのをわざわざ議院修正で入れたんです。決議も衆参両院で行われました。このときに、この決議の提案者の石川さんはこの「平和の目的に限り、」という意味は非軍事と非核だということを衆議院でも、参議院でも明確に述べている。非軍事、非核だということですね。  それで、首相にお答えいただきたいのは、もしSDIが、こういうアメリカの担当者も核兵器だと明白に言うようなエックス線レーザー、こういうものを使うものになろうとする場合、この国会決議の精神から言って、日本がそういう危険な核兵器を含む、非核じゃないんですから、そういうものに技術協力するのはやっぱり差し控えるべきだと思いますけれども、首相としての答弁を求めるものです。
  268. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 私がレーガン大統領から直接承ったのは非核兵器だという話であります。しかし、SDIがどういうふうな兵器体系を持ってくるのか、まだよくわかったところではありません。これから展開してくるところもあるんだろうと思います。ですから、研究に参加方の手紙が来たわけで、これから研究が始まるという姿勢なんじゃないでしょうか。ですから、どういうような兵器体系になるかわからぬというような現段階において、国会決議、国会が有権的解釈を持っておる国会決議について私が言及することは適当でないから、差し控えたいと思います。
  269. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 それは逃げ口上でね。SDIがどういうものになるかわからんて、そんなことじゃないんですよ。もう八三年三月にレーガンが演説してからホフマン委員会、このフレッチャー委員会なんかできて、三月から十月まで研究して報告が出て、大統領に勧告まで出て、もうかなりシステムがはっきりして予算まで出ているんですから。その中でこのエックス線レーザー問題が問題になっている。首相、どうも答えを逃げるようですが、首相はこれまでこの技術協力については日米間の武器の技術協力、この枠内でということを答えられた。しかしそれだけじゃなくて、日本憲法非核原則、国会決議、こういうものも当然基準としてこの技術協力については態度を慎重に決めると、当然そういう態度だと思いますけれども、いかがですか。
  270. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) もちろん日本憲法あるいは非核原則あるいは国会決議等のもとにおいてやらなければいけないことであろうと思います。
  271. 長田裕二

    委員長長田裕二君) 時間が参りました。
  272. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 首相が日米間の武器技術の協力の枠だけでなくて憲法非核原則、国会決議、国会決議は非軍事と非核ですから、この点を答えられたこと、これ厳しく守っていただきたいと思います。  三番目に核廃絶問題もあるんですが、これももう時間がありませんから簡単にしますけれども、ホフマン報告というのはこのSDIの政治的な評価なんですね。これを見ますと核廃絶とつながるなんて全く書いてない。そうではなくて、むしろ防御力と同時に攻撃力も強化しなければならぬというようなことがうんと書いてありますし、ポール・ニッツアメリカ大統領の軍縮問題の特別顧問は、SDI計画を述べて核廃絶はできないかもしれぬと、究極的にできるとしても二十一世紀だと。彼は第一期十年、第二期数十年などということを言っているわけで、これも核廃絶とつながるというのも欺瞞であるということを最後に指摘したいと思います。  以上、私は中曽根さんがレーガン大統領から聞かされた三つの防御兵器、非核兵器、それから核廃絶とつながるというのはすべて全くの欺瞞的な論拠だと思うんですね。その意味で、この宇宙に核軍拡を拡大するSDIに対して我々は日本政府が絶対に技術協力をすべきでないということを強く主張して、質問を終わります。(拍手)
  273. 長田裕二

    委員長長田裕二君) 以上で上田君の質疑は終了いたしました。     ─────────────
  274. 長田裕二

    委員長長田裕二君) 次に、関嘉彦君の質疑を行います。関君。
  275. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 まず質問に入る前に、我が民社党の防衛及び外交に関する基本的な立場を述べて、その上に立って質問したいと思うんですけれども、国際間の紛争はあくまで交渉によって、話し合いによって解決すべきであると思いますけれども、その話し合いが成功するためには、つまり相手方の圧力に屈して相手方の言うとおりにならない、本当に実りある話し合いになるためには、相手方の武力による圧力に屈しないだけの自衛力を、防衛力を持つ必要がある、そうでないと本当の話し合いというのは行われない、これが我が民社党の基本的な立場であります。  その立場から、まず国際情勢の認識の問題について、最初に外務大臣にお伺いいたします。  一昨年十一月、米ソ間のINF交渉がソ連のボイコットによって一方的に中絶されたわけでございますが、それがことし一月長い冬眠からソ連が起き上がってまいりまして再び交渉のテーブルに戻ってきた。その戻ってきた理由はどこにあるというふうに判断されておられますか。
  276. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 米ソの核軍縮交渉が中断をされて絶望的かと思われましたのが、再び再開されるというふうな事態になったわけでございます。これはやはり国際情勢の変化ということもあると思います。そういう中で自由国家、自由諸国のいわゆる団結といいますか、結束というものがソ連をテーブルに着ける大きな要素の一つになったのではないか。もう一つは、やはりこのSDIの研究というものもいわばソ連をテーブルに引き戻す一つのばねになったのではないかと、こういうふうに思っております。
  277. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 私もそのように考えております。  ソ連というのはやはり力を持っている人あるいは国、そして決断力を持っている国に対して尊敬の念を払うと思います。その意味で、現在ジュネーブで軍縮交渉が行われておりますが、私これが成功することを非常に祈っておりますけれども、これを成功させるためにはやはり自由国家群の間で、自由世界の中で団結していくことが必要である。それが軍縮交渉を成功させる何よりの方法であるというふうに考えますけれども、総理大臣いかがでございましょうか。
  278. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 先生がおっしゃるように、やはり自由世界が結束して、そして乱れないということが一つは大事であるだろうと思います。
  279. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 次に、戦略防衛構想の問題に移りますが、既に先ほど来いろいろ質疑応答がございましたので重複する点は避けて、別な面から取り上げてみたいと思っております。この構想につきましては、日本はもちろん西ヨーロッパにおきましても、アメリカ自体におきましても賛否両論があります。私もこの計画がレーガン大統領の意図どおりに核兵器を無力化する、核弾道兵器を無力化することに成功するのであるならばこれは大いに歓迎すべき研究、構想であると思いますが、逆に事志と違って、これはかえって軍拡競争をあおる ようなことになるんであるならば賛成しがたい、そういうふうに考えております。どちらになるかということは今後の研究の発展と国際情勢の展開にかかっていると私は思っておりますけれども、アメリカ自体がこれを研究することに対して反対はできないのではないかというふうに考えております。と申しますのは、ソ連も同じような種類の研究をやっているのではないか。例えばソ連自身も、伝えられるところによりますと、衛星キラーASATの実験でありますとか、あるいは核弾道ミサイルそのものを撃ち落とすABMすなわち弾道ミサイル要撃システム、それをABM条約に違反して配備しているというふうな報道も聞かれるわけであります。外務省としていろいろなそういった情報をお集めになっているだろうと思いますけれども、ソ連においてこのような計画が行われているのかどうか。アメリカの方はオープンソサエティーですから何か研究やるとすぐわかるわけですけれども、ソ連の方はクローズドソサエティーですから研究しているかどうかわからないわけであります。しかし、できるだけこれはやはり注意深く調べておく必要があると思うんですけれども、外務省の方で何かそういう情報をお持ちであったらばお知らせ願いたいと思います。
  280. 栗山尚一

    政府委員(栗山尚一君) 我が国といたしまして、ソ連がいかなる研究を行っておるかということにつきまして、日本独自の調査、情報収集によりまして、なかなか把握できない面がございます。したがいまして、私これから申し上げますことは、専らアメリカが発表しておりますことその他もろもろの公開情報等に基づきまして、私どもが得ております知識というものをごく簡単に申し上げたいと思いますが、一つはこれはSDIそのものとは直接関係ございませんが、ソ連が一般的に衛星攻撃兵器、すなわち委員御指摘のようなASAT、これにつきましてはもう既に過去十年ぐらいにわたりまして開発を行い、またある程度限定的に実戦運用可能なシステムを既にもう保有をしておる、そういう段階に達しておるということをこれは一般的に言われております。それから、対弾道ミサイル迎撃システムにつきましては、一つはこれはABM条約のもとで許容されておりますことでございますが、モスクワの周辺に迎撃ミサイルを配備しておる。ミリタリーバランスに出ておりますところによりますと、ABM条約では百基まで迎撃ミサイルの配備が認められておるわけでございますが、その百基の枠の中で三十二基ほどモスクワ周辺に配備をしておるということが言われております。これとは別途にABM条約のもとでは認められないような弾道ミサイル迎撃用ではないかと言われるレーダー施設をシベリアのクラスノヤルスク付近に建設をしておるということでございまして、これに対してはアメリカが従来からソ連に対してこれはABM条約違反ではないかということで問題提起を行っており、ソ連はこれは衛星の追跡用のレーダーであるということで反論をして、意見が対立したままになっておるというふうに承知をいたしております。  それから、一般的な研究につきましては、これは具体的なデータ等はわかりませんが、アメリカの資料によりますと、ソ連自身が指向性エネルギー兵器を含めまして、過去十年相当なお金を投入をして研究を行っておるということを申しております。
  281. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 アメリカの方は比較的わかりやすいんですけれども、ソ連の方のことがなかなかよくわからないんで、日本の新聞なんかでもアメリカのことだけに関心が向いているようでありますけれども、ソ連のことについても非常に情報を集めにくい国であることは同情しますけれども、できるだけそういう情報を集めていただきたいと思っております。  それから次に、総理大臣は一月の会談において、アメリカのこのSDIの研究に対していろいろな留保条件をつけて理解するというふうにお答えになったと思いますけれども、理解という言葉は非常にあいまいな言葉であって、その相手の言うことの意味を把握したという意味にも使われますし、相手の言うことに対して共感的な態度をとったという意味も含まれているように思います。英語のアンダースタンディングも私は同じだと思いますけれども、両方の意味が含まれていると思いますけれども、総理大臣はどういう意味で理解するという言葉を使われましたか。
  282. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 非核兵器で、そして防御兵器で、そして核廃絶を目的とするという、そういう説明がありましたから、そういう考え方というものはよく理解すると、そういう意味であります。
  283. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 その理解という意味は、おまえの言うことはわかったという意味の理解ですか。それに対して共感的な態度をとるという意味の理解ですか。そのことが一つ。  それからこういう外交の話というのは、こちらがこういうつもりで言ったという主観的な意図だけではだめでありまして、相手がそれをどういうふうに受け取ったかということが私は非常に大事だと思います。レーガン大統領は総理の理解したという言葉をどういうふうに理解したと日本政府は理解しておられますか。
  284. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 意図と善意は了解したという意味が入ると思うんです。しかし、先方から協力してくれとかなんとかというプロポーズはないのですから、それに対してプロポーズに対するイエスとかノーと言う必要はないわけです。したがって理解したと、そういうことです。
  285. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 アメリカのレーガン大統領はどういうふうにあなたの発言を理解したとあなたは理解されておりますか。
  286. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 私が理解したと理解したと思います。
  287. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 これは決して言葉の揚げ足取りじゃないんでありまして、よく日本の政治家と外国の政治家と交渉する場合に、日本独特の言い回しがあって、外国では通用しないようないろいろな言い回しがあるわけであります、前向きに検討するとかなんとか。ところが、向こうはこちらの言ったことと全然別の意味で理解しているわけであります。これが思わぬ国際的な紛争なんかを呼び起こすことがあるわけでありますから、まあこれ以上はその理解の意味を追及しませんけれども、今後ボンサミットなんかにも行かれると思いますけれども、そういう場合に、この言葉が相手にどういうふうに理解されるか、そのことを十分お考えになって、単にこちらの主観的な意図だけじゃなしに、国民向けの言葉だけじゃなしに、国際的にそれがどういうふうに受け取られるか、そのことを考えて会議に臨まれたいということを希望しておきます。  なお、これに対する日本政府の態度は先ほど来慎重に対処する、今のところまだ十分の計画もわからないので、まだここで軽々しく発言される時期でもないと思いますから、これ以上は注意しませんけれども、やはり日本の自主性をあくまでも失わないということと、同時に、自由陣営の団結を崩さない、この二つの点を留意して、慎重に対処していただきたいと思います。  次に、安全保障のための機構の整備の問題についてお伺いいたします。  まず、防衛庁長官にお伺いいたしますけれども、総理の諮問機関であります平和問題研究会の報告書は、その報告書の中で、「効率的な防衛力整備を妨げてきたもうひとつの要因は、統合的機能の不備であり、」「三自衛隊の統合運用の体制を作る必要があり、そのため調整役にしかすぎない統幕議長のあり方を変えなくてはならない」、そういう提言をしているのでありますけれども、防衛庁長官としてどういうふうにこれを受け取られておりますか。
  288. 加藤紘一

    国務大臣加藤紘一君) 自衛隊が有事においてその能力を効果的に発揮するためには、陸海空三幕がそれぞれその特性を生かしながら有機的に、効果的に協力しながら対処していくということが非常に重要なことだと思います。その意味におきまして、統幕機能の強化ということは、運用面においても、それぞれのほかの面におきましても、非常に重要なことだと思っておりまして、私たちもその方向努力いたしております。具体的に例えば年防なんかの作成におきましても、その統合機能を重視するような側面を考えながらつくっておりますし、それから中央指揮所の指揮システム等を確立したりいたしておりますけれども、そういった意味の統合機能の強化、運用の強化については今後とも努力していかなければならないことだと思っております。
  289. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 有事の場合に、統合部隊がつくられれば統幕議長が指揮するわけですけれども、そうでない場合は防衛庁長官の指揮命令は統幕議長じゃなしに、陸海空の三幕僚長を通じて行われるとなっていますですね。  しかし、それで果たして統合的な運用ができるでしょうか。あるいは平時におきましても、訓練計画でありますとか、広報計画なんかのいろいろな計画を立てる場合に、やはり陸海空ばらばらにやっていたのでは、あるいは重複するようなこともあるし、経費のむだ遣いということもあるのじゃないかと思いますけれども、やはりそういうのをひとつ統合してやっていく必要があるのじゃないかと思いますが、防衛庁法を改正してその問題に取り組むお考えはありますか。
  290. 矢崎新二

    政府委員(矢崎新二君) 統幕議長のステータスの問題でございますけれども、まず一つは、統合的な見地からの最高の専門的助言者という位置づけになっておるわけでございます。  それから、ただいまの御指摘の中にございました統合部隊をつくらない場合の問題でございますけれども、これも有事におきます実際の長官の指揮命令の発出に当たりましては、統合の面が考慮されておりまして、この長官の指揮命令に関しては統幕会議でその内容について検討、調整をするという仕組みになっておりますから、その議長としての地位があるわけでございます。そういうことは、統幕議長を通じて指揮を行わない通常の場合でもやはり同様に機能をしているわけでございます。  それからまた、平時におきます訓練の問題につきましても、統合訓練計画方針の策定等が統幕会議の所掌事務の中に入っております。そういうようなこともございまして、全体として基本的な法制としては統合運用の面について整備をされているというふうに考えております。  ただ、ただいま大臣から申し上げましたように、いろいろな面で統合運用の強化を図る工夫をさらに加えていくということが今後の問題であろうというふうに考えております。
  291. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 総理大臣にお伺いいたします。  あなたの諮問機関である平和問題研究会は、統合の機能が非常に不備であるということを提案して、その改正をいろいろ提言しているんですけれども、その研究会の提言というのは全く的外れのものであるというふうにお考えでございますか。
  292. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 必ずしも的外れとは思いません。防衛庁機構の改革の問題には、情報の統合化の問題とそれから統幕機能の強化、統合の問題等がいつも浮上してきておるので、一つの課題であるとは思っております。  しかし、私らは昭和二十九年に自衛隊法をつくったときにいろいろ検討いたしまして、あのとき問題になったのは、軍政と軍令を分けて、二元的にしておいた方がいいのではないか。軍令と一緒になっておるという状況でいいのかどうか。つまり、現地の司令官、オペレーションの責任者が行政の責任者と一緒であっていいか、そういうような問題も実はあったんです。しかし、太平洋戦争のいろいろな戦訓等も考えて、まずこれでいこうという考えになった。  もう一つは、よく専門ばかという言葉があるのです。太平洋戦争なんか見ますと、専門家というものがその渦中に入ってしまうというと、非常に硬直的な判断しかできないという結果が、これはノモンハン事件、ミッドウエー、レイテ、沖縄あるいはインパール、こういう太平洋戦争の敗戦の戦歴というものを調べてみると、多分にそういう硬直性というものが専門家の中にあるわけです。  そうすると、かえって背広を着ておって、専門的でない人間が自由、闊達な判断をなし得る場合が多い。それがある意味においてはシビリアンシュープレマシーとか、文民統制というものの大事なポイントでもあるわけです。しかし、そういういろいろな面を考えてみて、専門家の意見も聞かなくちゃいかぬが、最終的に判断する人間は背広でなければならぬ、そういう意味で今の機構ができ、内閣総理大臣を最高指揮権者にしておるという体系にしてあるわけなので、そういう意味で、制服の機能を重視する余り、余りそればかりに力が集中し過ぎると、また太平洋戦争みたいな専門ばかの危険性が出てくるのであります。その辺は私は、どちらかといえば制服の機能よりも背広の機能の方が大事だと、そう思っておる人間で、今の自衛隊法をつくったときにこういう形にする方を強調した人間ですから、だから必ずしも関先生が考えているように制服の機能を重視しようという一辺倒の考えではない、二元的にしておいて決定は背広がやるべきである、そういう考えを持っております。
  293. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 私もその考え方に賛成です。やはり背広が制服をコントロールしていかなくてはいけない、その背広というのはやはり防衛庁長官であり総理大臣であり、また議会であると私は思いますけれども、やはりコントロールしていくためには専門的な知識を、助言を得なくちゃいけないと思うのですけれども、そこでお尋ねしますが、総理大臣、民間の方と、財界あるいは学者のグループといろいろ懇談されておる、私はそれは非常にいいことだと思っております。永田町以外の世界の常識がありますから、それによく耳を傾けるということは私は政治家として非常に大事なことだと思いますけれども、同時に統幕議長なり幕僚長なりと私的に懇談されたことございますですか。どうも私、翌日の新聞に官邸の報告が載っておりますけれども、この一年間見ましたけれども、あれを見た限りでは、卒業式とかなんとかの公式の席ではお会いになったかもしれないけれども、いろいろ懇談された機会はないように思うのですけれども、どうですか。
  294. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 私が着任してからそういう懇談の機会はないように思います。あいさつに来たり報告に来たときにいろいろ懇談するということはございました。しかし、先生に言われてみると、そういうかたい場所でなくて、もう少しゆっくりした気分で話し合うのもいいことだなと今感じたところであります。
  295. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 ぜひそれを考慮していただきたいと思います。次に、同じく総理にお尋ねいたします。  昨年の参院予算委員会の席上で、歴代の防衛庁長官の任期が八カ月でしたか、九カ月でしたか、非常に短い、そんなことでは外国との折衝なんかでも軽べつされるのじゃないかという質問をいたしましたら、総理大臣は、その通りであるので対外関係の閣僚はできるだけ留任させるようにしたい、しかし谷川防衛庁長官は落選したのでそういうわけにまいらなくなりましたと答えられました。しかし、その後を継いだ栗原長官は別に落選したわけでもないのですけれども、やっぱり十カ月で交代しているわけであります。依然として対外関係の閣僚を重視しておられないのじゃないか、ということは別に加藤防衛庁長官を軽視しているという意味では決してございませんけれども、個々人の問題でなしにその地位を軽視しておられるのじゃないかと思うのですけれども、いかがですか。
  296. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 一般論としては先生のおっしゃるとおりで、そういう考えを私は持っておりますが、しかし優秀な政治家を若いときから責任者にして防衛問題というものをよく認識さして大政治家に育てていくというのもまた政治家の仕事であると、そう考えております。
  297. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 その問題についてはいろいろあります。経済摩擦の問題なんかにつきましても、経済関係の閣僚が頻繁にかわるものですから十分に閣僚が官僚を押さえ切っていない。もう時間が足りないのでこういうことに時間つぶすの惜しいのですけれども、電気通信の機器の交渉に行った日本の官僚が、アメリカのトレードの代表者に対して、向こうの代表者が、これは総理大臣が約束したことなんだということを言いましたら、そのお役人が、私は総理大臣が何を約束したかは知らない、しかし、総理大臣というのはいずれはかわるものだ、プライムミニスター・カム・アンド・ゴー、したがってプライムミニスターが何を欲しようとも、それはしかるべき省庁を通じてでなければ働くことはできないんだ、これが日本の百年以上の歴史なんだということを話したことがアメリカの有力紙、私が知っているだけでも、ワシントン・ポスト、ビジネス・ウィーク、ロサンゼルスに引用してあります。これは大変恥ずかしいことじゃないかと思うのですけれども、こういうことが起こってくるのも、これは確かに有能な人にいろいろなことを勉強させるのは必要ですけれども、わずか八カ月か十カ月ぐらいで本当に官僚をコントロールしてやっていくことができますか。これは防衛庁だけじゃなしにほかの経済関係の官庁におきましてもそうであります。いかがですか。
  298. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 一般論としては、先生のおっしゃるとおりです。
  299. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 一般論としてそれに賛成されるのでしたならば、今後閣僚の任命なんかについてもその点を十分考慮してやっていただきたいと思います。  それからまた、同じく去年のこの参議院の予算委員会、ここで国防会議をもっと重視しなくちゃいけないんじゃないか、国防会議の事務局長はお茶くみぐらいに考えているんじゃないかということを私が質問しましたら、総理大臣は、「国防会議はもう少し広範な分野にわたって、また深度を深めて活用すべきであると考えます。」と答えられましたけれども、その後一向国防会議を深度を深めて活用されているような形跡は見えないんですけれども、実際に国防会議を重視してやっていくつもりでおられますか。
  300. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) やっていくつもりであります。いろいろ国防会議を活用する方策について今検討を命じております。
  301. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 検討を命じておられるのでしたならば、大いに検討していただきたいと思います。  私は、有事に備えておくことが戦争を防ぐ最善の方法であるというふうに考えております。今の国防会議の機構のままで本当に日本の安全を確保することができるのかどうか。民社党は、国家安全保障会議を提唱しておりますけれども、そこまで一遍に行くということはあるいは難しいかもしれないと思うのですけれども、平和戦力と防衛戦力とを同時に考えていく、それには今のように、例えば軍縮の問題は外務省の国連局でやる、安全保障の調査は情報調査局でやる、あるいは日米安保の問題は北米局でやる、あるいは自衛隊は自衛隊として自衛隊のことだけをやる。ばらばらになっていると思うのです。先ほど黒柳議員からも日米安保防衛協力の問題について質問がありましたけれども、私はやはり……
  302. 長田裕二

    委員長長田裕二君) 時間が参りました。
  303. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 総合的な調査をやり政策の立案をするような、そういった機構をつくってそれに対処しておく、それを今からやっていく必要があるのじゃないかと思うんですけれども、いかがでしょうか。
  304. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) その点は同感で、平時から十分な調査能力、企画能力を持っていることが必要であると思います。
  305. 長田裕二

    委員長長田裕二君) 関君、時間が参っております。
  306. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 まだ質問がありますけれども、時間が参りましたから、これまた後の機会に、いずれ機会があるだろうと思いますので、そのときに譲りたいと思います。(拍手)
  307. 長田裕二

    委員長長田裕二君) 以上で関君の質疑は終了いたしました。     ─────────────
  308. 長田裕二

    委員長長田裕二君) 次に、木本平八郎君の質疑を行います。木本君。
  309. 木本平八郎

    木本平八郎君 私は、GNP一%枠というものについての解釈といいますか性格、どういう性格なのかということ、あるいはそれの意義についてお伺いしたいわけです。  まず一番初めに、今現在の日本国民の八〇%が現在の日本政府防衛政策を支持しているというふうな統計もあるわけですね。ところが、私はこれの根拠は二つあると思うんです。  一つは、まず、人間も生物である以上、必ずやはり自衛努力が必要である、一瞬たりとも自衛努力を怠ると天敵にやられてしまう。したがって、最低限の自衛力を持っていなければいかぬということが一点だと思うんですね。  二番目は、八〇%が支持しているという理由は、やはり一%枠があると、一%程度なら最低の自衛力として必要なんじゃないかというふうに考えておると思うのですが、その辺いかがでしょう。
  310. 加藤紘一

    国務大臣加藤紘一君) 委員御指摘のとおり、最近、私たちの防衛政策、それから自衛隊の存在につきまして理解してくださる国民の比率が高まってきたことは事実だと思います。その点につきましてはいろいろな解釈があろうかと思います。  それは国際情勢の変化、我が国をめぐる極東の国際情勢の変化もあるでしょうし、もっとグローバルな観点もあるかと思います。それから、非常に大切なことは、私たちが憲法の精神にのっとり専守防衛非核原則、それから文民統制をしっかりやるというような幾つかの防衛の基本政策があるわけですけれども、それをしっかりと私たちが守ってきたということを理解してもらい、それが定着してきていることも私は大きな原因の一つでなかろうかなと、こう思っております。
  311. 木本平八郎

    木本平八郎君 ほかにいろいろ理由はあると思うのです。ただ、今GNP一%の問題を話題にしているものですから、これに焦点を合わせて御答弁いただきたいのですが、このGNPの一%枠というのは極めて非科学的である、余り大した根拠がないんだという議論があるわけですね。ところが、これはそういう議論もあってもいいと思いますけれども、もう十年近く定着していて、一つ国民のコンセンサスを得ているという私は受けとめ方をしているわけですね。例えば、建国記念日というのは余り科学的な根拠がない。しかしながら、あの日をみんなで建国記念日にしてお祝いしようじゃないかというのは、国民全体の一つのコンセンサスだと思うのですね。もう少し例を言いますと、私は木本平八郎ですけれども、平八郎という名前は余り根拠がないわけです。これは大介に変えてもいいんじゃないか。ところが、これもずっと社会的に認められていると、そう勝手に私の都合で明くる日変えるとみんな迷惑するので、だから、家庭裁判所へ届けなさいとか、いろいろなルールがあると思うんです。  そこで、ちょっと結論じみて言うんですけれども、この一%枠というのは、ここまで国民にコンセンサスができてしまうと、もうそう簡単には変えられないんじゃないかという気がするのですが、その辺はどうですか。
  312. 加藤紘一

    国務大臣加藤紘一君) 累次、総理大臣ないしは私たちがお答えいたしておりますように、五十一年度のこの閣議決定一%枠は、当初は当面のめどであって、そしてある種の財政上のめどとして定められたということは、あの当時の経緯から御理解いただけていると思うのですが、その後これが防衛に対する国民の理解を増進させる働きをしたということも、私たちはそれなりの事実だろうと、こう思っております。したがって、それは、また一方さっき私が申しましたように、ほかの専守防衛だとか、非核だとか、そういう問題につきましてもみんな安心感を持ってきたということも事実なんで、どれがどれということは言えないと思いますが、それなりの効果を持ってきたことは事実だと思います。したがって、節度のある防衛力のあり方につき、私たちは国民の皆さんとこの国会を通じてしっかりと今後も話し合っていかなければならないと、こう思っております。
  313. 木本平八郎

    木本平八郎君 その問題は、これは一番大変なテーマなんで、一番最後にちょっと議論したいんですけれども、その前に、私は結論的に言いまして一%枠は守らなければいかぬと思っているわけです。ところが、もしも本当に一%を超えなければいかぬという事態があるのなら、それは国民としてもこれはしょうがないと思うんですね。ただ問題は、なぜ一%を超えなければいかぬかという理由の説明が非常に不十分だ。国民としてははっきりわからない。私も国会に来ていますけれども、私自身がわからないわけです。例えば、ソ連の軍事脅威ということが言われますけれども、私の見る範囲では、ソ連は今向こうから戦いをしかけてくる余力がないのじゃないかと思うんですよ。食糧は不作だし、それから経済成長はもう頭打ちだし、生産性は上がらないし、とてもじゃないが国内を抑えるのがもう精いっぱいだと思うんですよね。そういう状況である。  例えば、今、現在、世界の情勢だと、核がないと軍事力というのはおのずから限界があると思うんです。巡査のこん棒みたいなもので、あの程度しかないと思うんですよ。本当にこれは戦いになったら核を持っていなければどうしようもない。したがって、私は今の自衛力というのは、防衛力というのは先ほど言ったように生物としての最低限度だというふうに解釈しているわけです。それで、どういう軍事的な脅威があるんだということをお尋ねしても、多分はっきりしたお答えは出てこないと思うのです。これは秘密だとか、いろいろあると思うんですよ。しかし、あると思うのだけれども、我々としてはやはりその辺が御説明をいただかないと、GNPの一%外してもいいということは、国民立場としては言えないと思うのですが、その辺はどういうふうに解釈されていますか。
  314. 加藤紘一

    国務大臣加藤紘一君) 我が国をめぐる極東の軍事情勢がそんなに大した厳しさの増大ではないじゃないかという御指摘でございますけれども、私たちはそうは見ておりません。そして、卑近な例をとりましても、ごく最近までのソ連の軍事力の増強、極東におけるいろいろな配備の状況は、私たちはやはり潜在的脅威の増大ということを言わざるを得ない、こう思っております。  それから、例えばソ連の場合には経済力が、また農業が不況の場合、状況が悪い場合におきましても軍事力の増強を行ってきたということは事実だと思います。それやこれや考えますと、私たちはやはりそれなりの潜在的脅威を感じざるを得ないということが言えると思います。  それからもう一つ、核の時代に通常の、それもなおかつ我が国がなし得る程度のものを、防衛力整備しても何の意味があるのかという御指摘でございますけれども、核があることによってお互いが核抑止が働いて核の戦いは今抑止されている。したがって、戦後数多い紛争がありますけれども、それがほとんど全部通常兵器による紛争になっている。それに対する対処、抑止力はちゃんと持っておかなければならないということは事実ではないかな、こんなふうに思います。
  315. 木本平八郎

    木本平八郎君 その辺が、例えば今アメリカとソ連が戦いを開いて、これは核戦争になる可能性は非常に強いですね。そこへ我々が巻き込まれてしまうという危険性は非常にあるわけですね。国民が一番恐れているのはそういうことなんですね。ところが、今ここで問題になっているのは、今、長官の説明がありましたように、日本が攻撃されたときにどういうふうに自衛をするか、専守防衛するかという問題でしょう。  そこで、これはうわさ話みたいなものだからどこまで信憑性があるかわからないですけれども、私の友達、これ南米の軍人ですけれども、彼が言っているのに、日本の自衛隊が今世界最強の軍隊だと言っているわけですよ。自衛隊は二十七万ですよ、それで、飛行機が五百ぐらいですか、そして戦車が千ぐらいしかない。これはどういうことかといいますと、要するに今はエレクトロニクスの固まりなんですよ。これの操作というのは頭脳なんですね。日本は学歴が非常に高いわけです。例えば自衛隊でも、高校出た兵隊と言うたら何ですけれども、そういう兵が相当おるわけですね。兵というのは昔は小学校出でしょう。中学出たらもう将校だったわけです。今は高校出。それで、将校というのは全部防衛大学出ているわけですよ。アメリカのように寄せ集めの軍隊とは全然違うんですよ。エレクトロニクスの操作、それからあと補給力の問題がありますね。そういったことからいって日本の軍隊は世界最強だ。少しオーバーかもしれませんが、そういうふうに言っているわけです。そうすると、通常兵器としてはもうこれで十分じゃないかという感じがするのですが、どうなんでしょう。
  316. 加藤紘一

    国務大臣加藤紘一君) 我が国国民の間には我が自衛隊の防衛力というのは大したものではないじゃないかという御意見もあるわけですけれども、今、委員のように評価していただくことは防衛庁としてはうれしいことだと思います。現に我が国の、数は少ないですけれども、例えば航空自衛隊のスクランブルで言いますと、ほかの国は大抵十分ぐらいかからないと離陸しないのが、私たちの方は五分待機といいまして、そのオペレーションの優秀さというのは日本民族特有のものがこの部分にもあらわれていると思います。そういう意味で、その御説はかなり私たちもいただきたいところでございますけれども、しかし、やはり通常兵力の数という意味では余りにも差があるというような状況でございまして、私たちのまだ能力はやはり限定小規模のものにやっと独力で対処でき得るもの。それから、抗堪性、継戦能力という意味におきましては、かなりのまだ頑張っていかなければならない部分があることはおわかりいただきたいと思います。
  317. 木本平八郎

    木本平八郎君 したがって、これはまあ軍備でも何でも多々ますます弁ずで、多ければ多い方がいいかもしれません。しかし、これはやっぱり財力との兼ね合いがあるわけですね。国民の懐ぐあいとの関係があるわけです。今赤字国債があれだけあり、財政再建しなければいかぬ。福祉も老齢化社会で年金もどんどんふやさなければいかぬ、そこの兼ね合いなんですね。そういう状況において、やはりこれは一%枠というのは、先ほど言いましたように非常にもう国民のコンセンサスで固まっている。それをオーバーするとなれば、やっぱりしかるべき理由の説明をしないと、皆協力というか理解を得られないのじゃないかという気がするわけです。そういう点でこの部分については私は非常に重大な問題だと思う。したがって、一%枠を変えるというのは憲法改正と同じぐらい重大じゃないかという気がするわけなんですが、そのくらい重大にお考えになっているのかどうかという点をお聞きしたいのですが。
  318. 加藤紘一

    国務大臣加藤紘一君) 防衛政策につきましては、いろいろな方からいろいろな御議論を私たちいただきます。そしてある意味じゃ強い御議論もいただきます。それは、例えば今の防衛力が過大ではないかという側面からの御議論もいただきますし、現在の防衛力じゃどうにもならないから何とかしなさいという逆の方向からの意見もいただきます。防衛庁長官をやりましてその双方から来る意見の強さというものに驚いているような次第でございますけれども、そういった中で私たちはできる限りのコンセンサスづくりをやっていかなければならない。  それで、私たちが一方的に考えたものがどんなに私たちが正しいと思っても、それは防衛の基礎にはならないと思います。そういうコンセンサスづくりに役割を果たしてきたのが実は私たちは防衛計画の大綱ではないか、三次防、四次防と続いてきてどこまでいくかわからない。したがって、この程度のものを一つ目標として整備したいということで出し、筋度のある防衛力の姿というものを別表をつけてお出ししたものが防衛計画の大綱であろうと思うのです。したがって、私たちはそのコンセンサスをつくる意味でもこれをできる限り早く達成していきたいと、こう考えております。
  319. 木本平八郎

    木本平八郎君 それじゃ、最後に総理にお伺いしたいのですが、私はこの一%枠を外すという点は、先ほど言いましたように憲法改正と同じぐらいだ重大だと。したがって、国民投票をやるぐらいの重大性があると思うわけですね。ところが、それじゃなぜこういうことを改正しなければいかぬかということを国民説明される必要があると思うのですよ。ところが、こういう防衛の問題ですからなかなかそこまで説明できない、だから任してくれということがあると思うんですね。しかし、任してくれといっても、これは国民が通常の選挙で今の中曽根内閣に信託している以上のものだと思うわけです。したがって、もしもGNPの一%を超えるというふうなことがあれば、改めてこの問題だけをテーマにしてやはり国民の信を問われると、総選挙をやられるということが必要じゃないかと思うのですが、その辺はいかがでしょう。
  320. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) こちらは守りたいと思っておるのですから、それ以上のことは考えないことにしております。
  321. 長田裕二

    委員長長田裕二君) 以上で木本君の質疑は終了いたしました。     ─────────────
  322. 長田裕二

    委員長長田裕二君) 次に、宇都宮徳馬君の質疑を行います。宇都宮君。
  323. 宇都宮徳馬

    宇都宮徳馬君 十五分しかありませんから、主として中曽根首相にお尋ねしたいと思います。  我々の民族は、前世紀の終わりから約百年間、世界史の真ん中でいろいろやってきたわけです。それで、その中でもいろいろ経験したわけですけれども、しかし平和憲法を現在持っています。それからただいま言われている平和に関するいろいろな原則、一%問題もそうだけれども、そういう原則を持つに至るいろいろな歴史があるわけですね。苦い経験もあるわけです。それは人類の経験とも言ってもいいんです。  この間日本人が体験したことは、人類の百年間の体験と言ってもいいくらいですが、とにかく第一次大戦というのを経験しました。それから第二次世界大戦というのも経験しました。これから第三次世界大戦があるかどうか非常に不安なところですけれども、しかし第一次大戦及び第二次大戦を通じて得た人類の理性的な結論というものは、もはや武力では問題解決はできない、結局しまいには人類全体の破壊になるかもしらぬ、こういう認識ですね。そのために何をつくったかというと、第一次大戦後に国際連盟をつくり、第二次大戦後に国際連合をつくったわけです。しかしながら、第一次大戦後の国際連盟は、日本が最初に脱退したりなんかしてほとんど無意味なものになって第二次大戦になった。第二次大戦後、国連が相当な役割を演ずると思っていたところが、全くその役割を演じていない。これが今日論じられているような、要するに軍事を中心にする安全保障、軍事を中心にする平和の問題、そういう問題が論じられているわけですけれども、しかし、このままではやはり非常に心配である。私は既によわい八十に近いですから、二十一世紀に生きる可能性は非常に少ないわけだけれども、しかし、とにかく人類の年寄りの一人としても、一体二十一世紀が本当にあるのかどうかということが非常に心配になるくらいですね。現在本当に平和のために役割を演じなければならないものは何よりも国際連合であると思います。国際連合が本当に役割を演じて、国際連合の安全保障理事会がもっと活発に動いていれば、あっちの脅威、こっちの脅威なんて騒ぐ必要はない、脅威は国際連合が静め解決してくれるんですから。そういうふうに考えていますが、現実は甚だそれと異なっている。日本はやっぱり平和憲法を持ち、それから非核原則を持つ、これは民族の非常に深刻な体験からきている憲法であり原則ですからね。だから、国際連合をつくったようなああいう精神をやっぱり高めていかなければいけません。私は日本の政治はそういうことをやるのに非常に怠け者であったと思います。  中曽根内閣ができて、私はあなたとは随分古い友人だわね、今どう思っているかしらぬけれども。それで一緒にストックホルム平和集会などに出て、それからソ連に入ったこともあるわね。それからあなたがバンドンの会議に出て、そして一番悠々と見えたリーダーは金日成だなんて言っていたこともある、これは人間の印象だからどうでもいいんだけれども。そういうことを言ったこともあるが、とにかくやはりあなた基本的には憲法改正論なんか言ったけれども、あなたの憲法改正論というのは私はしょっちゅう弁解してきたけれども、九条を改正するなんていう改正論じゃない、この人のはとにかく首相公選論をやれという改正論なんですね。それで今首相になっているんだから、公選論もくそもないわけだけれども、ともかく一体国際連合に対する日本の活動が十分であったか不十分であったか、今後どうすべきかということをあなた、ひとつまず答えていただきたいと思います。
  324. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 宇都宮さんの長い間の御経験と御勉強の結果の今のお話については非常にしみ入るようなものがあるように思います。特に人類が二度の大戦を経て、かつては国際連盟をつくり、それをつぶし、またここに国際連合をつくって、国際連合の機能は必ずしも十全でない、こういうことは憂うべき事態であって、国連をつくったときの理想に戻って、大国も中国も小国もみんなが人類の一員としての気分に目覚めて協力していくべきである、国連を大事にしていくべきである、そう思っています。
  325. 宇都宮徳馬

    宇都宮徳馬君 細かい話になるかもしれませんが、とにかく今国連に対する日本貢献というもの、ここに大蔵大臣もおられるけれども、非常に財政的に小さいですね。大体国連予算が小さいですよ。トライデント一隻分くらいな予算ですね、国連予算は複雑でよくわからぬけれども、一年分か二年分かで大体トライデント一隻くらいな予算です。世界の平和を維持しようという機構にトライデント一隻分、それから日本の負担は大体一億ドルから二億ドルくらいで、これもF15幾つかの予算ですね。これは非常に国際的負担というのはアメリカ、ソ連を含めた負担が非常に少ないし、日本の負担も少ない。もっと国連に対するお金を出すというような積極的な姿勢を政府はとれぬものですかね、お尋ね申し上げます。
  326. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 国連中心主義というのは我が国外交方針ですから、財政の許す限りできるだけ国連に対して寄与するという精神が正しいと思います。
  327. 宇都宮徳馬

    宇都宮徳馬君 財政の許す限りとおっしゃったけれども、こういうことこそ財政よりも政治が主導すべきことですね。それで今のとにかく一億ドル幾らというものは県会議員が陳情しても出るようなお金じゃないですか、二百億円そこそこですから。ですからこういうことにはもっと政治が主導性を発揮し、それからレーガンさんなんかと話すときも、一体国連をどうやって強化すべきかというようなことがやはりしっかり話されていいと思いますね。ソ連の脅威も多いけれども、そういうことをしっかり話すべきだと思います。  大体私は第二次大戦後のトルーマンのやり方というのはあんまり感心しない、今の非常な危機をつくり出していますからね。しかし、いずれにしてももう少し日本政府国連強化について世界の舞台で積極的に発言する必要が私はあると思います。総理大臣、どう思われますか。
  328. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 確かに国連を大事にしてみんなで育て上げていくということは大事であると思いますが、しかし、国連自体にも欠陥は私はあると思うんです。それは我々敗戦国でここへ入っているわけですけれども、例えば安全保障理事会の構成というようなものはいつまでもこのままでいいのか、そういう議論もあるだろうと思います。五大国の拒否権という問題がございましたですね。日本はどうこうという立場じゃありませんけれども、国連自体も世の中の進歩に応じて適応性を持っていくという柔軟性もなければならぬではないか、そういうふうに思います。また、一方において我々は国連というものを大事にして育てていく、貢献もしていく、国連の強化に努めていく、そういうことも大事ではないかと思うのです。
  329. 宇都宮徳馬

    宇都宮徳馬君 現在、国連の機能が十分に機能しない、これはいろいろ原因がありましょうけれども、基本的にはみんなが大事にしない。金欠病になっちゃっているわけですね。私はそういう場合にソ連ももちろんあるけれども、やっぱりアメリカの責任も随分あると思います。やはりこういうことはレーガンさんなんかと十分に話すべき問題です。国民はそういうことを期待していると思う。戦争よりも話し合いによって平和が維持される。あるいは戦争準備にお金を使うよりも、国際機関、国際平和機関の強化のためにお金を使うということを国民期待していることだけはこれは間違いないですね。私どもは、日本国民のそういう平和主義というものに対して世界の諸国民が相当期待しているということも知らなければいけません。  私はアメリカなんかへしばしば行ったり、あっちこっちへ行くけれども、最近は中国なんかも日本の平和主義というものに期待し始めていますね。どうも軍備競争というものはだんだんやっていくと行き詰まっちゃうことは間違いありません。そうでしょう。今度のレーガンさんの予算教書にしたって三千二百二十億ドルというような軍事費だからね。これは大体アメリカの全予算の三分の一くらいです。ソ連のことは正確にわからぬけれども、ソ連も大体似たように言われている。これでは経済参ります。ですからドルなんかが最近がたがたしている。しかし、ドルが安くなるとアメリカの、世界の軍事体制崩れますからね。だから、アメリカは一生懸命でドルを維持するいろんな方策をとっているけれども、とり切れないときが来ますよ。ですから、日本なんかの平和主義というものをもっと国際社会で強く主張して、軍事費というものは減らす方向へ持っていかなければ、これはアメリカだって困っちゃう。ソ連はもちろん困る。ですから、そういう方向日本の政治は動かなければいかぬと思う。  私は、今度もし戦争が起こった場合に、これは大変な戦争ですね。セーガンが地球に冬が来るなんて言っています。セーガンの言うことはでたらめなんて言う人もありますけれども、しかしパールというアメリカの国防次官補がセーガンの説を支持していますよね、政府筋も。ですからセーガンが言っていることはでたらめでない。そうなると、やはりどうしても戦争を防ぐという方向にいかなければなりませんね。戦争を防ぐために、核兵器の均衡とか力の均衡とか、そういうことをいろいろ言っていますけれども、しかし力の均衡というもので平和が保たれるならばSDI兵器なんかつくる必要ない。ソ連とアメリカとの核の均衡で平和が保たれる、そういう主張がたくさんありましたね。今までもあった。今もあるでしょう。今も現にそうかもしらぬ。そうかもしらぬけれども、それが事実ならばなぜSDI兵器をつくるのですか。SDI兵器というものは、核兵器を、攻撃兵器を、核弾頭をやりに例えれば、SDIというのはわかりやすく言えばよろいみたいなものです。それで、もし片方の人間だけよろいを着てやりを持っていれば、片方は不安になるから反対するのはこれは当り前です。これはソ連がいいとかアメリカがいいとかの問題じゃない。ですから、SDI兵器というものなんかもそういう観点から相当冷静に考えないと、細かい問題はどうでもいいんですよ、どうでもいいのだが、広く言えば、SDI兵器というのは核兵器に対するよろいだ、身を守るよろい。十分に守られるのかどうかは別問題ですけれども、核兵器はやりだ。やりを持った戦士を両方連れてきたりして、そして片っ方だけよろいを着る。よろい着るから助けてくれという話なんだけれども……
  330. 長田裕二

    委員長長田裕二君) 時間が参りました。
  331. 宇都宮徳馬

    宇都宮徳馬君 こういう話は私はやっぱりもっと大きな国際平和の立場からよほど慎重に参加しなければいかぬ、こう思いますね。ソ連という国も、私も余り、ソ連のあの体制というもの、官僚主義と結びついたああいう厳しい経済というのは好きじゃないけれども、しかし、やはり一つの国家である、いろんな欠点を持っている。これ殺すわけにはいきません。殺そうとすればやっぱり反逆するに決まっている。反逆すればこれは世界戦争ですからね。だから、今度あなたも行かれてゴルバチョフに会ったそうだけれども、米ソ会談というものはとにかく成功の方に一歩でも二歩でも前進させていくというふうにしなければいかぬわね。そういう場合に今の……
  332. 長田裕二

    委員長長田裕二君) 時間が来ております。
  333. 宇都宮徳馬

    宇都宮徳馬君 SDIの問題なんかやっぱり非常に障害になるおそれがありますから、日本政府がこれに対して余り深く初めからタッチしない方がいい。さっきからの話もそうですけれども、そう思いますが、ひとつ総理の御返答をお願いします。
  334. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) やりをやめようという話だろうと思うんです、SDIは、よろいにして。よろいとやりと両方持っておるというんじゃなくて、やりだけ両方持っているのを、やりやめるためによろいだけにしようじゃないか、そういう話だろうと思うのです。しかし、核兵器というこういう大それた兵器が出てくると、これをやめさせるというのには一筋縄じゃいかないので、それをなくしていくためにはいろいろジグザグの形をとって、そしてくたびれた果てにそれがやまっていく、それが人間の情けない姿かもしれませんが、そういう姿じゃないかと思うのです。そういう過程をやはりよく考えつつ一歩一歩着実に平和を維持し平和を拡大していく、そういう努力をしていくべきではないかと思っております。
  335. 宇都宮徳馬

    宇都宮徳馬君 ちょっと、もう一点。
  336. 長田裕二

    委員長長田裕二君) 宇都宮君、二分超過しました。
  337. 宇都宮徳馬

    宇都宮徳馬君 一言だけ言いますがね、現在の日本をつくった我々の大先輩の一人に勝海舟という人がいる。この人はこう言っている。
  338. 長田裕二

    委員長長田裕二君) 二分超過しております。
  339. 宇都宮徳馬

    宇都宮徳馬君 「政治家に必要なものはただ正心誠意、この四字のほかにない。これでやれば、どんな国民でも服するし、どんな無法な国でも理由なしに乱暴することはない。」。彼はプチャーチンやペルリが軍艦率いてきたときの、日本の実際上の外務次官みたいなことをしていた人間だが、彼がこう言っている。「政治家に必要なものはただ正心誠意、この四字のほかにない。これでやれば、どんな国民でも服するし、どんな無法な国でも理由なしに乱暴することはない。」これはやっぱり一つの真理ですよ。つまり、平和を維持するものは、力だけじゃなしに、人間の特性とか理性とか、そういうものが大きく働くということをこれは言っているんですね。
  340. 長田裕二

    委員長長田裕二君) 三分超過しております。
  341. 宇都宮徳馬

    宇都宮徳馬君 余計なことかもしれないけれども、ひとつ年寄りのお説法として聞いてください。  きょうはどうも長いこと御苦労さんでした。
  342. 長田裕二

    委員長長田裕二君) 以上で宇都宮君の質疑は終了いたしました。  以上をもちまして、外交防衛に関する集中審議質疑は終了いたしました。  明日は午前十時に委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いまします。    午後六時十九分散会