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国務大臣(
中曽根康弘君) アメリカを中心にする対日貿易摩擦あるいは東南アジア、ヨーロッパ方面からのいろいろな苦情、示唆をよく我々は検討して対策を講じておるところであります。
アメリカの場合を考えると、やっぱり強いアメリカ、ストロングアメリカ・ストロングダラーズと、そういう関係でアメリカのドルが非常に強くなってきておる。強いアメリカという
意味の中には経済的な強さと、それからいざという場合に、万一の場合に金が安全な場所へ逃げていく場所、つまりセーフヘーブンという、そういう面もあるのだろうと思います。そして、ドルが強いがゆえに結局は輸入力がふえて輸出力が減殺する。そういうことで日本からも相当な輸出が行き、かつ資本がアメリカに吸着される、こういう現象も起きておるんです。ですから、
基本的にはそういう問題が解消されていかないと、長期的には難しい面もあります。これからは、しかしお互いの努力でソフトランディングという形でやるようにしよう、そう私はレーガンさんにも言ってきたところであります。
当面の対策としては、いろいろ理由はありますけれ
ども、ともかく四百億ドルに近い日本の輸出超過というものが出てきておりますから、これを何とかしないというと、アメリカ側の非常に大きなインパクトをつくっておる。現在、アメリカの内部の情勢を見ますと、ある人は私にアメリカから帰って言ってきましたけれ
ども、非常に対日経済関係というものはよくない、感情もよくない、今までの過去の例で見ると、イランが人質をやったときに、日本がイランから石油を買いましたね、それで非常に対日感情が悪化したと。あれに匹敵するぐらい議会方面は悪くなっておる、したがってしっかりした対策も早くやらぬといけません、しかもそれを劇的効果をもってやる必要があると、そういうことを私に言ってきた人もありまして、海外電報等を読んでみますと、まさにそういう憂うべき事態でございます。
割合日本人の方は、おれの方には責任はないよ、これこれの原因があるのではないかと言っておりますが、確かにそういう面もありますけれ
ども、現実問題として、かつてOPECの国々が石油を輸出して世界じゅうのドルを自分のところへため込んでしまった、それに負けないぐらいのものが今日本一国で起きているじゃないかという
意味で、このインバランスは世界経済の正常な運行を妨げておる原因になっておるという
指摘もあるわけです。こういう点は原因のいかんにかかわらずやっぱり直していく必要がある。
そういうことで我々も努力して、一番要求されておる市場の開放問題について、彼らに口実を与えないようにする。口実を与えていると、貿易法を発動していろいろな保護
政策が実現される危険性がことしはもう出てきております。アメリカ大統領に授権されておりますから、議会筋から大統領なぜやらぬか、対日輸入品に課徴金をかけようとか、さまざまなものが出てくる危険性が現に今あります。そういう
意味でも口実を与えないような措置をやる必要がある。
そういう
意味で、今、当面の問題としては、四部門におけるアメリカとの摩擦解消、日本の市場開放に今全力を注いで、私自体も何回か閣僚の皆さんにお願いし、また担当の事務次官に来てもらいまして進捗状況を調べ、また自分でも直接これはどうか、これはここまでやれぬか、そういうことをお願いして今努力しておる真っ最中でございます。そういう
意味で、市場開放の誠意を示しまして、当面この危機を乗り切るということで全力を注いでおる。
国民の皆様方にもいろいろな御迷惑やら、あるいは正常な感情から見るとサービスし過ぎるじゃないかというようなお感じも出るかもしれませんが、ともかくそういう関係で今両国関係というものは憂いに耐えない事情も出てきておりますから、かなり政治としては決心をしてこれを乗り切らなければならぬ場でもあると思いますので、関係各省と一体になって今努力しておりますので、その点はよく
国民の皆様方にも実情を御了知願いたいし、御協力を願いたい、そう思っておる次第でございます。