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国務大臣(
中曽根康弘君) 竹田
議員に
お答えをいたします。
首脳会談における約束が今ここで手形を落とさなければならなくなったのではないかという御
質問でございますが、私は、十二月の時点におきまして、このような
事態が起こることを非常に実は憂えておったのであります。
昨年、
アメリカの大統領選挙の最中は、共和党側は、
日本とはうまくいっているということでこれは余り出さない。民主党側も、初めモンデールさんが出そうとしましたが、それではAFL・CIOのひもつきになる、そっちの労働組合の影響で言っているのだろうと言われる、それを恐れて民主党も出さなかった。したがって、選挙が終わればこれは一挙に出る、そういうふうに心配しておりましたら、果たせるかな十二月ごろからそういう心配が出ました。そこで、私は
レーガン大統領と直接会って、これをどういうふうに処理するか、先に先見性を持ってこれを処理する方法を相談する必要がある、そういう点もありまして、
アメリカ大統領と正月早々会ったわけです。
それで、向こうからは四つの大きな問題点を
指摘され、それらにつきましては、それでは事務次官等のハイレベルでこれを
交渉して消化しましょう、そういう方法の設定を行ったのであります。中身をどうするかということは
交渉によって決まることであって、そういう方法でやろうと。これは実は円・
ドル問題、資本、
金融の
自由化について竹下・リーガン会談あるいは大場・スプリンケル会談、こういうことを設定しまして、これがかなりの成功を見て、
アメリカ側も満足したのであります。その先例を追って、そういう方式でやろうということを言いまして、向こうも賛成をしてそういう場が設定されたのであります。
そういうような
考えから、三カ月にわたって事務レベルの
交渉が行われましたが、その後
議会がかなり感情的にあのような決議もいたしましたが、結局は事務レベルで消化して、これは一応の妥結を見たということで、言いかえれば、
アメリカの
国民のフラストレーションや
議会側の感情的なフラストレーションというものを、エネルギーを処理する場所をこういうふうに設定したと、そう
考えるのであります。
こういうことをもしやらなかったらどうなるかといえば、これは
議会と
議会がぶつかるというような形になります。ホワイトハウスも
議会との間で非常に苦労しておる、我々の方だって、やはり
議会の皆さんの御意向を尊重してやらなければなりません。そういう
意味において、あのようなハイレベルの場所をつくったということは必ずしも失敗ではない、そういうふうに自分では
考えております。今後はこれをいかにして
政策に実現していくかということでございまして、それについて
全力を注いでまいりたいと思っております。
こういう原因が起きたことについて、
アメリカ側の
責任はどうかという御
質問でございますが、私は、今度の
貿易摩擦については四つのポイントがあると前から申しておりました。
一つは、
景気の成長のギャップであります。
アメリカが先にばっと
景気が
拡大いたしまして、
日本がおくれてついていきました。したがって、
日本の商品が
アメリカへどっと入るということは
経済学上当然のことでございます。
景気のずれが
一つあります。
第二番目は、
日本製品の非常な高生産性、高品質性というものがあります。
アメリカ側におきましては、
高金利と高い
ドルという問題がございます。これが第二の原因ではないかと思います。
第三番目は、やはり残念ながら
日本における
市場の封鎖性というものもなさにしもあらずである。同時に、
アメリカ側においては売り込み
努力の不足というものも明らかにある。これはこの間
テレビで申し上げたとおりでございます。例えば医療器具等において、今までは
アメリカから高性能の器具等で高い器具が、一億とか二億というのが参りますが、二つか三つぐらい同じ品物を持ってこいと言う。さもなければ検査しないというようなことがあったとか、あるいはさらに、それは合格してもその場で売れない、一たん持って帰らなければならない。そういうような面があったとか、
考えてみれば極めて非常識と思われるような
日本の狭量、封鎖性というものもなきにしもあらずであったのであります。
また、一方においては、
アメリカにおいては売り込み
努力の不足で、これは前から申し上げましたように、
日本の商人は
アメリカへ行ってみんな英語をしゃべるけれども、
アメリカの企業で
日本語をしゃべって売りに来る人がいますかと、向こうにも私は言いました。ことほどさように、そういうものもあるわけであります。一方的に
日本の
努力や
日本の
責任だけに押しつけらるべきものではないと思うのです。
アメリカにおいては、ワシントン・ポストとかニューヨーク・タイムズというような新聞は、今回は極めて冷静で、
アメリカの
責任に帰すべき点が非常に多いと
指摘しておる。
議会筋は、いや
日本が悪いのだというふうに非常にフラストレーションが沸いておる。こういう現象がありました。我々がここで懸命な
努力をすれば、
アメリカ国民には冷静に我々の
努力を
考えてもらえるものと
考えております。
第四が、先ほど申し上げました
個人と
国家との
関係のいわゆる
考え方の
相違であります。国の
役割、そういう問題が先ほど申し上げたとおりある。
日本の場合は、公害がひどくなったり、放射能問題があったりしましたから、
政府が
保護する、
責任を持つという領域はかなり多い。これは昔からそういうものがあった上に、そういう要素があったわけでございます。
政府も、洪水が起これば堤防が崩れる、それはすぐ
訴訟をやられる、そういう面もありますから、やはりいろいろな規格、基準をつくっておった面もあるのです。しかし、こういう
状況になりますと、
公共性というものの確保は最小限にとどめて、許す範囲内においては、これはできるだけ
国民の選択と
責任に任す方向に移行すべきである。そういう国際的な基準に
日本は今や移行すべき
段階になった、そういう
考えに立って今回の
政策をしたのでございます。
特にまた、
ニューラウンドを推進しているのは
日本でありまして、
自由貿易のこの成果を、最も恩恵を受けたのは
日本でございます。今後もそういう
意味において
自由貿易を推進するのは
日本としての最大の
国益の
一つでありますから、現在
アメリカと提携して、新しいガットの貿易
交渉をやろうとやっておるところでございます。そういうやさきでもございますから、
日本は
国際水準並みにやるべきことは今やらなければならぬ、そういうふうに
考えておりました。もし万一課徴金のようなものがかけられれば、これは
日本の産業では相当打撃を受けてつぶれるものも出ますし、不況や失業が一挙に出てまいります。そういうことを
考えてみますと、多少苦しみがあっても、長い将来を見まして
自由貿易を継続していくという
国益から
考えてみましても、この若干の混乱や苦しみは耐えていかなければならない、そのように
考えたところでございます。
今後の推進体制につきましては、
内閣を
中心にしまして、これをフォローアップする作戦本部と申しますか、推進中枢機関をつくり、各
省庁には次官、
官房長を
中心にした
作業グループをつくりまして、党と一緒になって推進していくつもりでございます。
次に、ボン・サミットで
アメリカに対して言うべきことは言えということでございますが、もとより当然でございまして、言うべきことは言うつもりでございます。ただしかし、サミットというのは
各国がみんな今問題を抱えております。
アメリカは大きな
財政赤字あるいは高い
ドルや
高金利、ヨーロッパは産業調整が十分にいかないで非常に硬直性を持って労働ストライキ問題等もまだある。
日本の場合は輸出入の膨大な
アンバランス、みんな問題を抱えておるわけであります。したがって、一国を
批判するということだけではなくして、みんなで協調してインフレのない
拡大的
発展にどうして持っていくかという話を協調的に話し合うのがサミットの精神である、そのように思っております。
次に、福祉
政策の後退につながるのではないかという御
質問でございますが、来るべき高齢化社会の時代に備えまして、社会保障は
国民生活の基盤として長期に安定して、有効に機能していくことは
政策の
基本でございます。特に、長期的安定、それから世代間の公平を維持するというこの大命題を
政府は果たしていかなければなりません。そういう
考えに立ちまして着実な
政策を推進してまいります。
一人百
ドルの発言でございますが、これはわかりやすく象徴的に、視聴覚時代に合うように私は申し上げたのでございます。しかし、あの言葉によりまして、最近、自分も何か買いたいという機運がかなり
国民にございます。
日本国民というのは実にありがたいものだ、ともかくそういうふうに我々がお願いをいたしましたら、みんなやはり自分も何かしようというお気持ちをお持ちの方々が非常に多いということは、
政府といたしましても感激のきわみでありまして、今後とも
努力してまいるつもりであります。
賃金問題につきましては、これは労使が自主的に
決定するものでありまして、本年におきましても、労使が
国民経済的視野に立ちまして、諸般の
情勢を踏まえて自主的な話が行われておりますし、今後もそれが行われるように
期待しております。ただ、
政府といたしましては、
景気の持続的
拡大あるいは雇用の安定、物価の安定及び時間短縮等の問題につきましては、できる限り
協力もしてまいりたい、そう思っております。
次に、貿易
分野を
拡大せよというお話でございますが、西側主要国は東側との
経済関係については安全保障上の
観点も踏まえつつこれを進めていくべきであるとの
認識を有しており、我々はこのような
考えで推進してまいります。
最近、ソ連、中国からの引き合いがかなりふえてきております。我々はこれを大いに歓迎するものでございます。ソ連、東欧諸国との
経済関係につきましても、このような
考えに立ち、互恵平等の原則にのっとりまして具体的案件につきケース・バイ・ケースで対処してまいりたいと思います。特に、東西の融和
状況を勘案しつつ、弾力的に対処してまいりたいと思う次第でございます。
次に、ODAの問題でございますが、これはやはり
国際国家日本として重点
政策として取り上ぐべき問題でございます。六十一年度以降も新たな中期目標を設定して、引き続きODAの着実な拡充に
努力してまいるつもりでおります。
次に、
市場アクセス、基準・認証制と
国民生活の安全性の確保の問題でございます。
原則自由、
例外制限の
基本的
立場に立ちまして、例外の
内容も必要最小限のものに限定するというのが先般の
我が国の
決定の
態度でございます。消費者の選択と
責任にゆだねるという
方針のもとに、できるだけ
早期に
アクションプログラムを策定して遅滞なく実施いたしたいと思いますが、しかし基準・認証制につきましては、やはりあくまで必要な
公共性というものは
政府として確保しておかなければならない。がしかし、今までの例から見ますと、
個人の選択、
責任の範囲をさらに
拡大して自主性を持っていただく、そういう方向に積極的に進めていくべきである、そのように
考えております。
残余の答弁は
関係大臣からいたします。(
拍手)
〔
国務大臣河本敏夫君
登壇、
拍手〕