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鈴木和美君 私は、
日本社会党を代表して、ただいま
議題になっております五
法案のうち、
法人税法の一部を
改正する
法律案、
租税特別措置法及び
所得税法の一部を
改正する
法律案について、
反対の
意見を表明し、
討論を行うものであります。
政府は、
財政の
対応力の回復が緊要な政策課題であるとして、
財政改革の強力な推進を掲げ、
昭和六十年度予算においては国債費や地方交付税を除く一般歳出を三年連続して据え置くとともに、国債発行額の一兆円の減額を達成したと自画自賛しております。
しかし、その
内容は、相も変わらず防衛費を突出させ、収支のつじつまを合わせるために後年度に
負担を先送りし、さらには地方公共団体へ
負担を肩がわりさせるなど、
財政再建とはむしろ逆行する
財政運営が行われているのであります。ま
た、国債発行についても一兆円を減額したといいますが、
特例公債については、当初の目標よりも大幅に縮減を余儀なくされ、七千二百五十億円に終わっているではありませんか。六十一年度以降、毎年度一兆一千五百億円の減額を予定しておりますが、これとても果たして実現できるのか極めて疑問視せざるを得ません。
さらに、五十七年度からは毎年度国債費の定率繰り入れを停止、我が国固有の減債
制度を崩壊させ、国債発行に対する国民の信頼を失わせたのみならず、五十年度以来九年間にわたって国民に約束をし、法定されてきた
特例公債の借りかえ禁止の
規定を一方的にほごにして、見合い資産のない
特例公債の借りかえを強行し、六十年先まで後世代にその
負担を負わせるという暴挙に走ったのであります。
中曽根総理は、今国会の施政
方針演説において、一各分野にわたりさらに大胆な改革を進め、次の世代へよりよい日本を引き継ぐために一段と力を尽くす」ことを言明しておりますが、このような一連の政策運営で、一体よりよい日本を次の世代に引き継げるとでも言うのでしょうか、
政府並びに
財政当局の猛省を促すものであります。
さて、今次税制改革に当たって、
政府は税
負担の公平化、
適正化の推進の観点からその見直しを行ったとしておりますが、実態は、
公益法人等あるいは
協同組合等の
法人税率の引き上げ、利子
配当課税の
特例制度の存続、さらには実質増税に苦しむ国民の強い願望である
所得税減税の見送りなど、その方向はむしろ税
負担の不公平の助長拡大であり、安易な財源
対策でしかありません。
法人税率については、昨年度、三年間の
措置として普通
法人一・三%、
公益法人等及び
協同組合等一%の臨時税率の引き上げを行い、今年度はさらに普通
法人との税率格差是正を
理由に
公益法人等及び
協同組合等の税率を二%引き上げています。そこには、協同組合や
公益法人等が我が国経済社会に果たしている役割の重要性を認識しようとする姿勢は見られないのであります。加えて、二年間の臨時税率についても、
財政事情を
理由にさらに延長の方向を示唆しているのであります。その一方では、かねてよりその是正が求められていた退職給与引当金の繰入限度額については、財界の強い
反対に屈してその
改正を見送り、貸倒引当金についても、その法定繰入率の引き下げが政令段階で予定されてはいるものの、その貸し倒れ
実績率から見ればまだまだ不十分であります。
さらに、利子
配当課税については、三年間凍結してきた非
課税貯蓄の限度額管理と
課税貯蓄の総合
課税を目的とするグリーンカード制を廃止、その代替
措置として、実効性の乏しい本人確認による限度額管理でお茶を濁しているだけでなく、三大不公平税制の一つとしてその廃止が求められてきた源泉分離選択
課税制度を初めとした利子
配当課税特例制度を存続、恒久化することにより、公平な税制確保の必須条件である総合
課税化を葬り去っているのであります。今回提案されている非
課税限度額管理
強化案も、その名寄せの体制が十分整わないもとでは、どれほどの効果が期待できましょうか。
また、増収
措置として、昨年度の
法人税の欠損金の繰り戻し還付の二年間停止に続いて、本年度は五年間の
措置として
法人税における
所得税額控除の控除不足額の還付の
特例を設けておりますが、この
措置によって本来その年度に還付されるべき
法人税額がいわば次年度以降に先送りされることになりまして「その影響は
中小企業ほど大きいことになります。
さらに、本
措置によって六十年度は増収になるかもしれませんが、次年度以降の
法人税収に影響を与えることも否定できません。歳入構造の
強化に逆行する
措置と言わざるを得ません。このような
措置をとる一方で、企業関係の
特別措置は隠れた補助金でもあり、この際、その徹底的な見直しを早急に行うことを強く求めておきたいと思います。
今国会において、中曽根総理はシャウプ税制以来の抜本的な税制改革を掲げておりますが、今日までの議論を通じて明らかになった点は、総理の目指す税制改革が、財源確保をねらいとした大型開接税の導入意図と、それとの抱き合わせで行おうとする最低税率を引き上げ、最高税率を引き下げるという高
所得者に有利な
所得税減税の方向だけでありまして、どこにどういう不公平が存在し、どこをどのように簡素化しようとするのか、肝心な部分は何ら国民の前には提示されていないのであります。
さらに、我が国経済は今日着実な歩みを示してはおりますが、それは外需に依存しているのが実態であります。今後、アメリカ経済の成長テンポの鈍化が予想されるもとで、内需主導の経済運営が求められております。にもかかわらず、物価を上昇させ、デフレ効果をもたらす大型間接税を導入することが活性化につながるとでも言うのでありましょうか、全く矛盾していると言わざるを得ません。
我が国の税収構造は、アメリカを除く先進国の中で直接税のウエートが高いことから、そのひずみの是正を言いつつも、毎年のように国民が熱望してきた
所得税減税については、昨年度、五十二年度以来七年ぶりにわずか一度だけ行ったことであり、それとても酒税、物品税などの既存
制度の増税でその財源を賄っているのであります。六十年度においても、野党の強い
所得税減税要求にも断固として百を縦に振るうとはしませんでした。
このような実質増税を国民に強いた結果、国民
所得に対する国税と地方税を合計した租税
負担率は、六十年度には二五・二%にも達しまして、
昭和二十五年度にシャウプ税制がしかれて以来最高の水準に達しているのであります。全く遺憾と言わざるを得ません。
国民本位の税制改革を実現するには、まず大幅な
所得税減税、それも教育費支出や住宅ローン返済に苦しむ中堅
所得者層を中心とした減税を行うことが不可欠の前提となるのであります。
今日ほど公平な税制の確立が求められているときはありません。
政府が本心から公平、公正な税制改革を目指すなら、これらの格差是正のための方策を早急に確立すべきでありましょう。個人
事業者では二十五年に一回、
法人でも十年に一回という実調率を高めるためにも、国税
職員の大幅な増員はぜひとも必要であります。この点については、本年もまた大蔵
委員会において税法
改正案の
附帯決議の中に盛り込まれておりますが、
政府は最大限の努力をすべきことを再度この場で求めておきます。
まじめな納税者がばかを見ないような公平、公正な税制の確立を強く要望して、私の
反対討論を終わります。(
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