○古賀雷四郎君 私は、自由民主党・自由
国民会議を代表して、当面する内外の
重要課題について、
総理初め関係閣僚に対し若干の
質問をいたします。
質問に入る前に、長野市信更町の国道十九号線において、バス転落により、日本
福祉大学の学生及び
学校関係者の二十五人の死亡という痛ましい事故が発生いたしました。謹んでここに亡くなられた方々の御
冥福を祈るとともに、御遺族のお見舞いを申し上げたいと存じます。
政府並びに地方自治体等は、事故発生原因の
徹底的究明を行うとともに、再発防止に万遺漏なきを期せられるように強く要請をいたします。
さて、中曽根
総理、あなたは十数年ぶりに自由民主党総裁に再任されました。そして、この難しい時期の
政権を引き続き担当することになりました。
総理は、就任以来、文字どおり東奔西走、
世界の首脳
外交を積極的に展開し、今や
我が国の国際
政治の面における
責任と
役割は確実に高まっております。また、内政面においても、従来の行
財政改革を強力に推進し、続いて
教育改革に取り組む
姿勢を示すなど、戦後
政治の総
決算に着手していることは御承知のとおりでございます。こうした二年間にわたる
総理の業績は、世評、仕事師内閣と言われ、高い評価を受け、
中曽根内閣及び自由民主党に対する最近のマスコミの世論調査では、内閣発足以来、最高の支持となっていることは御承知のとおりでございます。
本年は、大戦後四十年、我が党結党三十年、内閣
制度百年の大きな節目を迎えております。そして、三十一世紀は指呼の間に迫ろうとしていることは御
理解のとおりでございます。今日の重大時局を乗り切るには、従来の概念にとらわれず、創造的な発想とそれに伴う実行が
政治に求められていると存じます。
総理は、これまでの経験を踏まえ、この難局をどう認識し、分析し、
政権を担当していく
決意であるか。また、今日、
我が国が
経済大国として、国際
国家としてあるのは、自由と民主主義を掲げ、戦後約四十年
政権を担当してきた我が自由民主党
政治により
実現したものであります。今後も国の命運を担うのは我が党以外にはありません。今こそ二十一世紀を目指した新しい国づくりの道、
国家目標を
国民の前に示す必要があると考えます。
総理の
所見を伺いたいのであります。
次に、
外交問題について伺います。
まず、
軍縮問題についてであります。
総理が、本年は「平和と
軍縮の年」であるといみじくも言われているとおり、現在、
世界の平和と安定にとって最も緊要な課題は軍備管理、
軍縮の促進を
中心とする安定した東西関係であります。この観点から、今月初め、ジュネーブにおける
米ソ外相
会談で今後の
米ソ交渉の
枠組みにつき基本的に合意を見たことは大いに歓迎すべきことだと思います。しかしながら、
世界の平和と安定の基礎となるべきこの交渉の見通しにつきましては、
米ソの
立場が大きく隔たっているところもあり、楽観を許さないものと予想されます。このような
状況において、
米ソ間の真摯な
対話を期待しつつ、
我が国としては、
米ソ間軍備管理、
軍縮交渉の進展のためにいかなる努力を払っていく所存であるか。まして
我が国は、国連
軍縮会議等の場でも具体的な
軍縮措置の
実現に向けて積極的に貢献していかなければならないと思いますが、
総理の
決意をお伺いいたします。
次は、訪米の成果と今後の
日米関係についてであります。
さきにも述べましたように、本年は、
米ソ間の軍備管理交渉等を通じ東西関係の進展が期待される年であり、また
世界経済のインフレなき持続的
成長の確保という観点からも重要な年であります。このように、
世界の平和と繁栄にとって節目ともなり得る本年の年頭に当たって、
総理が訪米され、
レーガン大統領と首脳
会談を行われたことは、
総理が
世界の平和と繁栄のために
日米両国が果たすべき
役割と
責任を十分認識されてのことと思います。今回の訪米の成果と今後の
日米関係のあり方について
総理の
見解を伺います。
日米間には現実に大きな
貿易不
均衡が存在し、今後ますます日本に対する市場開放への圧力が高まってくると予想されます。現に、首脳
会談においては、
レーガン大統領みずから個別分野について市場開放を要請したと聞いております。具体的にはどのような話し合いが行われたのか。また、
我が国としては、今後こうした
米国の要求に対しどのように
対応していく考えでありましょうか。
今回の首脳
会談において、
総理は、
米国の戦略
防衛構想、
SDIに
理解を示したとのことでありますが、それはいかなる考えに立ってのことか。また、戦略
防衛構想とはいかなるものと認識されているのか、お伺いしたいと思います。
続いて、
日ソ関係について伺います。
本年は、
我が国固有の領土である北方領土にソ連軍が上陸しまして四十年目を迎えます。一日も早く四島の一括返還を
実現することが
国民の悲願であり、総意であります。昨年から日ソ間の種々の
対話が進む中で、ともすれば領土抜きの友好といった安易な道に引きずり込まれるのではないかとの懸念も聞かれております。今後、日ソ
対話を進めるに当たり、
政府の方針と、北方領土問題の解決に向けての
総理の
決意、及び難航している漁業問題についてどのような
対応を考えているのか、
総理、外務大臣にお伺いします。
次に、
開発途上国に対する
経済協力について伺います。
開発途上国に対する
援助を今後一層拡充していくことは、
我が国が
世界の平和と安定に貢献するためにも、また対外
経済依存度の高い
我が国が国際協調のもとに生きていくためにも極めて重要なことと思います。
我が国としては、国際公約たる現行の中期目標の達成に最大の努力を払うとともに、今後とも引き続き
政府開発援助の量的、質的拡充に努める必要があると考えます。
他方、同時に、
援助を相手国の
経済社会開発、民生の安定、
福祉の
向上に真に役立つものにしていく努力、そうして
我が国国民の善意と友好のしるしとして心から感謝されるものとしていく努力が重要だと思います。このような目的を確保する一環として、
我が国が協力している
援助案件がどのように進められているか、みずから評価を行い、その結果をさらに
援助の実施に反映させていくことが極めて重要であり、今後とも評価体制の一層の強化充実を図るべきものと考えます。外務大臣の考えを伺います。
また、評価が厳正かつ公正に行われるべきことはもちろん、
政府はこれを確保するためどのような方法を講じているか、お聞きしたいものであります。
さらに、
外交体制の強化の問題であります。
我が国の外務省の陣容を見ると、定員、
予算とも先進国で最低であります。これでは国運を左右する
外交の大任を果たすには心もとない限りだと存じます。かかる現状にかんがみ、
外交体制を強化すべきだと思いますが、外務大臣の
所見を伺います。
次に、安全保障についてお伺いします。
国際紛争は武力によらず話し合いによって解決し、実効性ある
軍縮、とりわけ核
軍縮を目指すことは人類が希求する共通の願いであります。しかしながら、今日、
世界の平和は軍事力の
均衡に基づく抑止力によって保たれていることは冷厳な事実であります。六十年の
防衛費は三兆一千三百七十一億円、前
年度に比べ六・九%の増であります。これは、厳しい
財政事情にあって、
政府として
防衛の重要性を認識した結果であり、評価するものであります。これに対し
防衛予算の
突出と
批判する向きがありますが、これは
我が国が置かれている
軍事情勢の実態を
理解せず、また国の独立と安全があって初めて
国民の幸せがあるという
国家存立の基本を忘れた誤った
意見だと思います。いかがお考えでしょうか。
六十
年度の
防衛予算をめぐる大きな問題に
GNP一%枠の問題があります。
防衛費の
GNP比は〇・九九七%、
政府公約の一%との差は
予算額にして九十億でございます。今後、
国家公務員の給与
改善があれば一%枠の突破は必至の
状況にあります。元来、この一%枠を五十一
年度に決定した
背景には、当時の
GNPの
成長率が一〇%以上というところから、一%以下の経費でも
防衛計画の
大綱の達成は可能であるとの判断があり、決められたものと存じます。一%論厳守でいくと、
GNPが変動すればそれだけ
防衛費は増します。
GNPが伸びなければ
防衛費は減ります。その一%そのものに合理性がありません。以上のことから、国の
防衛は固定概念ではなく、そのときどきの
国際情勢を十分勘案して決定すべきものであり、この一%枠は
国民にわかりやすい方法で何らかの歯どめを設定して見直すべきだと存じます。
あわせて、五十一年当時のデタント
時代の限定的な小規模戦を想定して策定された
防衛計画の
大綱は、今日の
科学技術の進歩等を考えれば再検討すべきと存じますが、これらについて
総理より
所見を承りたいと存じます。
今日、
世界いずこの国を見ても、自国の
防衛に最も重要な秘密事項を外国に漏えいするスパイ行為に対しては法規で厳しく処断しております。
我が国としても、独立
国家である以上、
防衛機密は国の安全のためにこれを保護する法的整備が必要と考えます。
政府としてどう取り組むのか、
総理の
決意をお伺いしたいと存じます。
次に、
経済問題について伺います。
まず、
昭和六十
年度政府経済見通しの実質
経済成長率四・六%をどのようにして達成し、
内需主導の
経済を
実現していくかであります。一昨年の二月を底に日本
経済は上昇基調にあり、
昭和五十九
年度の実質
成長率は五・三%と、五年ぶりに五%台を達成しようとしております。これは
人々の予想を超えた
アメリカ経済の
拡大による輸出の急増と、それに誘発された
企業の設備投資の増加によるものと存じます。しかし、その
アメリカ経済も昨年の夏以来
成長速度が衰え、ことしは昨年の半分以下の三%台に
成長率が落ち込むと見られております。したがって、日本からの輸出も減少することから、民需全般にデフレ的影響がもたらされることは避けられません。
外需依存から
内需中心の四・六%の実質
成長を達成するためには、
財政面からの支えが必要だと思います。六十
年度予算では、財源難を
理由に、道路
予算を
中心に若干の工夫がなされたほかは、公共投資はほぼ昨年並みにとどまりました。率直に申して、
アメリカの
景気後退の影響を相殺し、
内需主導に
転換を図るにはやや力不足と思われます。今後、
経済の動向に配意し、民間活力の導入を初め
内需拡大を行い得る
政策手段を整えておくべきだと存じます。
総理及び
経済企画庁長官の
見解を伺います。
次に、対外
貿易摩擦の解消についてであります。
近年、日本の経常収支は巨額な黒字を続け、五十九
年度は三百四十億ドル、六十
年度も、
政府見通しどおり
内需主導
経済が
実現したとしても、今
年度と同額の黒字が見込まれております。
貿易立国の
我が国は、諸外国との円滑な
経済関係を維持することが重要であり、そのためにも保護
貿易主義の台頭を許して
世界の自由
貿易を破壊する巨額な国際収支の黒字の累積は何としても避けなければなりません。特に、
貿易の三割近くを占める
アメリカとの
経済摩擦は激化さしてはならないと存じます。幸い本年正月早々の中曽根・レーガン
会談で
貿易摩擦解消に向けて話し合いが行われたことは、まことに時宜を得たと存じます。そこで表明された
通信機器、木材の市場開放はその影響するところが大きいわけであります。今後どのような方針と段取りで取りまとめていくつもりでありますか。
特にこの際指摘したいのは、木材製品の問題であります。
近年、
我が国の林産業は住宅建設の低迷を反映し厳しい不況下にあります。このことが国土の三分の二を占める森林、林業に深刻な影響を及ぼし、ひいては国土の保全や水源の涵養等、森林の有する公益的機能の発揮にも悪影響を生じております。こうした
我が国の森林、林業に及ぼす影響を考慮した場合、木材製品の関税引き下げは慎重に
対応することが必要と考えますが、これに対する
総理の
見解を承りたいと存じます。
対米出超の問題は、日本の
内需転換のおくれもありますが、同時に
アメリカの巨額な
財政赤字に起因した金融
政策による異常な
ドル高によるものであり、
政府は市場開放の検討とあわせ強く
ドル高の
是正を
アメリカに要求すべきだと思います。
総理の
見解を伺います。
次に、行政
改革について伺います。
申すまでもなく、行政
改革の推進は
国民の声であります。我が党並びに
政府は一体となり、これまで一貫して行政
改革の推進に取り組んできたところであり、既に電電、専売の
改革、医療保険
制度の
改革を初め、諸般の
改革は着実に軌道に乗りつつあるものと思います。しかしながら、行政
改革の推進はこれからが正念場であります。そこでまず、
総理の行政
改革に取り組む
決意をこの際お尋ねいたします。
これまでの
政府における行政
改革は、省庁組織の再編合理化、公社、特殊法人の
改革あるいは社会保障等
重要政策分野の
改革を初め、どちらかといえば国の側の
改革に重点が置かれていたのであります。しかし、
我が国行政は国と地方がいわば車の両輪であり、
我が国行政に占める地方公共団体の
役割は極めて大であります。そこで、今後、行政
改革が全体として真に実りあるものとするためには、地方公共団体においても高額給与の
是正を初め徹底した減量化、効率化を行う必要があると考えます。
さきに地方行革
大綱が発表されましたが、今後地方行革をどのように推進していくお考えか、
総理に伺います。
次に、国鉄の事業
再建についてであります。
その緊要性にかんがみ、既に国鉄
再建監理
委員会において活発な
審議が進められています。また、経営合理化のための各般の緊急対策も実施に移されているところであります。しかしながら、国鉄の経営は今日なお深刻の度を深め、長期債務残高は
昭和六十
年度末には二十三兆円を超える見込みであります。
再建の前途はなお厳しいものと考えざるを得ないのであります。
政府は、
昭和六十二年七月末までに経営形態の抜本的
改革の
実現を図る旨明らかにしていますが、国鉄の
再建については広く
国民の
理解を得てまいらなければなりません。
政府は、
再建に至る具体的な手順及び今後の見通しについてどのように考えておられるか、
総理の
見解をお伺いします。
次に、
財政改革についてお伺いします。
我が国の
財政は、六十
年度末には百三十三兆円という巨額の公債残高に達する見込みであり、今後も多額の公債発行を続けざるを得ない
状況にあります。この結果、国債の利払いが大半を占める国債費は十兆二千二百四十一億円となり、ついに社会保障費、地方交付税交付金を追い越して最大の歳出項目になっております。今後の
高齢化社会の到来や国際社会における
責任の増大等を考えれば、利払い費の急増は
政策的な経費に充てる財源を圧迫し、
財政の
硬直化をもたらしていることは御承知のとおりでございます。六十
年度からは、赤字国債の借りかえ、期間一年未満の短期国債発行という新たな問題を抱え、六十五
年度赤字公債依存体質からの脱却目標が果たして達成できるのか
危惧しているところであります。
財政体質を
改善し、
財政の
対応力を
回復することは緊急の課題であります。また、現世代の後世代に対する責務でもあります。
財政改革に臨む
決意を
総理にお伺いします。
さて、
政府は、
昭和六十
年度予算の
一般歳出を前
年度以下に抑え、五十八
年度以来三年
連続の超緊縮
予算を編成されました。戦後の
財政にこのような例はありません。
増税なき
財政再建のもと、
政府が
歳出削減に徹底したメスを振るわれた結果であります。しかし、
財政再建の目安となる赤字国債約一兆円の
減額は、五十九
年度に続いて六十
年度も達成できるかどうか。
歳出削減だけでは
財政再建が困難なことを示していると思います。
臨調の
増税なき
財政再建策は、水膨れした高度
成長型から安定
成長型に
財政構造を
転換させるのに大きな
役割を果たし、
国民の支持を得たと思います。しかしながら、今後とも
歳出削減だけに頼った
財政再建を推し進めようとすれば、
経済の
拡大が抑えられ、税の自然増収は多くを期待できず、しかもそれは国債の利払いと地方交付税に消えてしまい、
政策経費の
一般歳出は
財政再建の六十五
年度までふやすことができないということが考えられます。
今や、
財政の実態とかけ離れ、言葉だけがひとり歩きしている
増税なき
財政再建について再検討し、
財政経済の実態に合った具体的で
実現可能な
財政再建策を立てるべきだと思います。すなわち、
臨調答申による歳出の見直しに努める一方、従来タブー視されていた歳入面の
改革を図り、国債の縮減と歳出の
拡大に振り向け、もって
経済の
成長を促す
財政均衡方式を目指すべきだと確信します。
総理及び大蔵大臣の
見解をお伺いします。
第二は、具体的な歳入構造の
改革についてであります。
総理も
施政方針演説で税制
改革の必要について言及されました。既に申し上げましたように、
財政再建のために歳入面の
改革は必要でありますが、さらに来るべき
高齢化社会の年金を初めとする各種
福祉施策に対する財源の確保の点を考えても、税構造の
改革は緊急の課題であると言わなければなりません。私は、
総理が戦後
政治の総
決算の
一つとして、行革、
教育に続いて税制の
改革を提案されたことを受け、この際単なる直間比率の
是正にとどまることなく、抜本的な
改革を要請いたしたいのであります。
すなわち、シャウプ勧告以来三十六年を経て、社会
経済の
変化に応じて修正、複雑化された現行税体系はいろいろな矛盾や問題点を含んでおります。すなわち、所得税における高累進税率構造の問題、法人税における高い負担と税率格差の問題、複雑で合理性の少ない個別物品税のあり方、ともすれば
不公平税制の
批判のある租税特別措置法等における
政策税制の問題等々は、この際、より合理的かつ実情に合った、
国民にわかりやすい簡素な税体系に抜本的に改めるべきであると存じます。その際、心すべきことは、税制の大幅改正が租税と社会保障の
国民負担率の引き上げとなり、欧米諸国に見られるような、やる気のない、勤労意欲を喪失したいわゆる先進国病に陥らぬように、
国民が負担し得る適正な負担水準はぜひ厳守していただきたいと存じます。
以上挙げました問題をどう受けとめ、今後の税制改正に臨むのか、その
基本方針を伺いますとともに、適正な
国民負担率の水準をどう認識しておられるか、
総理及び大蔵大臣の
所見を求めたいのであります。
次に、
教育改革について伺います。
教育は
国家百年の大計と言われるように、国を担うものは人であります。
我が国は、明治以来、
国民の
教育に対する熱情と努力により、
我が国教育の充実は
世界でも最高の水準になって、
教育が今日の
我が国の目覚ましい発展と繁栄の基盤を築いたのであります。しかしながら、戦後の
教育改革から四十年を経た今日、過熱化した受験
戦争から
偏差値教育がまかり通り、
学校教育をゆがめているほか、
学校内における暴力、青少年の非行が横行し、大きな社会の問題になっております。今こそ我々は、二十一世紀の日本を担う青少年が豊かな人間性を持ち、心たくましく、社会的な連帯感と公共に奉仕する精神を持った、国際性豊かな人間に育てることが急務となっております。
我が党・
政府は、かかる
教育における実態を直視し、昨年九月、
臨時教育審議会を設置し、目下具体的
改革案づくりが精力的に行われていますが、どうか、
教育者のあり方、入試
中心の
偏差値教育の
是正を初めとして、
学校制度、
教育内容、非行化対策、生涯
教育等々
教育全般にわたり、新しい
時代の要請にこたえた、はつらつとした
改革案の提示を期待いたしており、これにあわせて報告されたものは速やかに逐次実施に移していただきたいと存ずるわけでございます。
総理の
教育改革に取り組む
決意を伺いたいのであります。
これまでの
教育は、ともすれば知的
教育に偏して、人間形成の面がおろそかではなかったでしょうか。物質万能で、出世主義、功利主義に走り、国を愛すること、親を敬うこと、思いやり、助け合い等の意識が薄く、果たしてこのようなことでよいのか。かつての修身の復活ではありませんが、現行の
教育基本法に問題はないのかどうか、いかがでありましょうか。
このような観点から重視していただきたいのは道徳
教育であります。現在、道徳
教育については検定の教科書がありません。学習指導要領をもとに副読本、教材等を使用して実施されております。この際、道徳
教育の一層の充実を図る必要があると思いますが、文部大臣の
所見を承りたいと存じます。
次に、社会保障について伺います。
我が国の社会保障は、現在、
経済の安定
成長下、しかも特例公債からの脱却という
財政再建を迫られる最中で
高齢化社会に
対応していかなければならないという大変厳しい事態に直面しております。
我が国においては、今日、出生児のうち八十歳を迎えることができます者は男性では四一%、女性では六一%に達しており、まさに人生八十年
時代が到来していると言われております。このような
時代の到来に伴い、個々人の生活設計とともにライフサイクルの
変化等を踏まえた
制度、システムの樹立が必要になってまいっております。
特に人生八十年
時代においては、社会の活力を維持し、高齢者の生活を充実するため、高齢者の能力、経験をできるだけ生かす工夫がなされなければなりません。このような意味において、高年齢労働者の能力の開発
向上等高齢者の雇用の確保は喫急の課題と考えます。また同時に、個々人が長い人生を健康で生きがいを持って過ごせるような健康づくり対策、生きがい対策を推進する必要があります。これらにつきまして
総理の方針をお伺いいたします。
次に、農業及び
中小企業の振興について伺います。
我が国の
農林水産業を取り巻く諸情勢にはまことに厳しいものがあります。すなわち、国内では農産物等の
消費の伸び悩み、価格の低迷などの問題に直面しているほか、行
財政改革の観点から効率的な行政への
対応が迫られています。また、対外的には
米国を初め諸外国からの市場開放要求が相次いでおります。しかしながら、
国民のため食糧自給率の
向上を図り、食糧の安全を保障することは国として当然のことであります。このような視点から見ますと、内外の
経済社会情勢がいかに厳しくとも、農家の方々が安心して将来に夢と希望を持ちながら農業にいそしめるような施策を積極的に進めていく必要があります。
私は、困難なこととは存じますが、農業の生産性の
向上を図り、
我が国の農業を自立性ある足腰の強い農業にぜひ育成していただきたいと思うのであります。この際、今日の農政全般にわたり抜本的な検討を行い、先ほど申し上げました足腰の強い農業のための施策を実行していただきたいと思います。中曽根
総理の御
意見を承りたいと存じます。
また、
中小企業は
経済の活力の源泉であります。
国民のニーズの多様化、技術革新の進展等の環境
変化のもと、
我が国経済の今後の発展に向けての牽引力の基盤として、
中小企業の機動性、創造性に対する期待は極めて大きいのであります。
中小企業の技術化、情報化の中で
中小企業に活力を与え、その振興を図ることが肝要と考えます。
中小企業の振興のための対策をどう講ぜられるのか。以上、
総理の
所見を伺いたいのであります。
次に、
我が国の
科学技術政策についてお尋ねいたします。
資源小国である
我が国が、
科学技術立国として今後とも安定的な発展を維持していくためにも、また国際社会に対して一層の貢献をしていくためにも、独創的な
科学技術の振興を図ることが必要であり、このためには特に国として基礎的
研究を強力に推進することが重要であると考えます。また、
我が国全体としての
科学技術の推進に当たりましては、最近の学際的
研究の必要性あるいは
研究開発の生産性
向上の見地から、基礎的
研究と応用開発
研究相互の交流、学際的、総合的アプローチが必要となっております。このため、産業界、大学、国立
研究機関、いわゆる産学官の間の連携を一層強化することが必要であると考えます。さらに、国の
科学技術に関する長期的、総合的な
政策を策定するための
科学技術会議の
役割は重要であり、同会議の積極的な活用を図る必要があります。これらの点について
総理のお考えを伺います。
次に、先端技術分野の技術開発に対する
政府の取り組みについて伺います。
昭和六十年代は
日米ハイテク
戦争の
時代と言われております。最近の
アメリカ経済は、先端技術を
中心とする技術革新の波と規制緩和、投資減税等の
政策効果が相まって目覚ましい復調を示しております。
我が国経済が国際化の
時代を迎え、今後も持続的
成長を遂げていくためには、先端技術分野における技術開発の進展いかんがそのかぎを握っていると申しても過言ではありません。
現在、先端技術の多くは在来の産業区分を超えたところに花咲いております。例えば、光ファイバーには電線、繊維、ガラス、樹脂等の各産業、バイオテクノロジーには医薬、食料品、化学、エネルギー産業など、これまでの産業分類では異業種と考えられていた業界が横断的に入り乱れて参入し、あるいは分類不明とも言うべき産業が急
成長しております。したがって、伝統的な産業構造に
対応する各省庁の縦割り行政では、その所管事項を超えたところ、またはその接点に当たる部分にさまざまな問題が発生し、例えばVAN規制やソフトウエア保護論争などでは省際摩擦の言葉が生まれたように、各省間の調整のおくれから行政面での
対応が後手後手に回っているのが実情であります。行政の立ちおくれが技術革新における民間活力の障害や足かせになってはなりません。
私は、高度情報化社会への歴史的
転換期に当たり、先端技術分野の技術開発
政策を
総理の
責任のもとに内閣レベルで総合調整し、行政組織の弾力化、活性化を図ることが必要ではないかと存じます。
総理の
決意のほどをお伺いいたします。
次に、建国記念日の式典に関して伺います。
建国記念の日の奉祝式典は、四十一年十二月に建国記念の日が制定されて以来、民間の奉祝運営
委員会が主催、五十三年から
総理府が、五十六年からは文部省が、五十八年からは自治省が後援する形をとってきたところであります。これまでの式典の運営が宗教色、
政治色の有無に関し
論議があり、首相の出席は
実現に至りませんでした。これに対し、昨年春、中曽根
総理は、従来から、建国記念の日は
国民の祝日なのだから
国民のあらゆる階層の
人々が参加して祝えるものとすべきだという考えをお持ちであり、この結果、来月十一日の式典は従来の主催組織と性格を大幅に変更し、現職首相として初めて出席するやに伺っており、私としてもこれを期待し、歓迎をいたすものであります。将来は
国民参加のもとに
政府主催の式典を目指すべきであると存じますが、式典についての御認識と将来のあり方を
総理としてどう考えておられるのか伺います。
次は、いわゆる忌まわしいグリコ・森永
事件であります。
昨年三月
事件発生以来、犯人はますます脅迫の対象を広げ、
国民に不安と恐怖を与えるばかりでなく、脅かされた関連
企業は死活的な損害をこうむるなど今や大きな社会問題となって、速やかな解決が望まれるところであります。この間、警察当局においては、犯人検挙に向かってそれなりの努力を払っていることを多とするものであります。今回の捜査を振り返って、情報化社会における情報・
通信システム、広域捜査等に対する
対応、あり方については反省なきにしもありません。
治安のよさは
世界でも誇り得る
我が国ではありますが、この際、科学化、情報化
時代における警察機能の発揮のために、これまでの警察の機構、組織、人事等を洗い直すとともに、ディジタル化、コンピューター化を進め、新しい型の犯罪にも速やかに
対応し、検挙できる態勢を確立していただきたいのであります。これにあわせ、このような悪質知能的な残忍きわまる犯罪に対しては厳罰に処すべきであり、新規の立法が必要であると考えます。
総理の
決意のほどをお伺いいたしたいと存じます。
最後は、
参議院改革の問題であります。
政治は、新しい
経済社会や
国民のニーズ、価値観の変遷に
対応して、その中で生ずる問題点を事前に
国民に指摘することが重要であります。そのことが新しい体制へ移行するための
国民的合意の形成に役立つものと考えます。その意味から、国政の一翼を担う本院の使命は極めて大であります。勅選による貴族院から公選による
参議院へ生まれ変わってから、はや三十八年になります。この間、本院は国権の最高
機関として、六年という長い任期の保障のもと、
国民より選ばれた多くの優秀なオピニオンリーダーが、
国家、
国民の規範としての法律
制度の検討を通じて、議会
政治、民主
政治の発展と
国民生活の
向上に尽くしてまいったところであります。多くの
国民より本院に寄せる関心と期待は強いものがありますが、一部より
衆議院のカーボンコピー、無用論の声があることも否定できません。
本院としては、これまでも
制度、運用面にわたり
改革を行って、現に
重要政策を中長期的に展望し、その指針を示すための調査特別
委員会の新設を初めとして数々の
改革を行ってきたところであります。今後とも二院制の本旨に照らし、先見性、独自性を発揮し、活力ある新しい
参議院を目指して、我が党は各会派と協力し、率先して
改革に取り組み、もって二院制の真価を発揮し、権威の高揚を図る
決意であります。
参議院改革は立法府みずからの課題でありますが、
参議院の使命、あり方を自由民主党総裁としてどう認識しているか伺いたいのであります。
今年は、我が党立党三十年の記念すべき年であります。
世界に比類なき
政権政党として、我々は「三十にして立つ」の初心に返り、厳しい
政治倫理に徹して、
国民とともにこの難局を乗り切り、輝かしい次の
時代を目指して前進することを
国民各位に誓い、代表
質問を終わらしていただきます。(拍手)
〔
国務大臣中曽根康弘君
登壇、拍手〕