○伊藤郁男君 私は、
民社党・
国民連合を代表いたしまして、ただいま提案説明のありました
国民年金法等の一部を
改正する
法律案につきまして、
総理を初め
関係大臣に
質問を行うものであります。
現在
我が国は、国内外において解決すべき多くの課題を抱えておりますが、その中の重要課題の一つは、来るべき
高齢化社会において活力ある
福祉社会をいかにして構築していくかであります。
我が国の
高齢化が世界に類例を見ないスピードで進みつつあることは御承知のところでありますが、この急速かつ深刻な人口の
高齢化が、
我が国の
社会経済に及ぼす影響は極めて大きいものがあります。したがいまして、速やかに長期的かつ総合的な
高齢者対策を講じ、将来に禍根を残さぬようにしなければなりません。そのためには、現在の縦割り行政を改めることが必要にして不可欠であります。
この見地から、まず
総理の御所見を伺いたいのでありますが、
内閣総理大臣のもとに、政、労、使、学識経験者及び
国民各層の代表者で構成する
高齢者対策
国民会議を
設置し、雇用、
年金、医療、保健サービス、住宅、
福祉サービスなど調和のとれた総合的な
高齢者福祉計画を策定すべきだと考えますが、
総理の御
意見をお聞きしたいと存じます。
次に、雇用の問題について
総理にお伺いをいたします。
我が国は世界有数の長寿国になりましたが、ますます長くなる
老後生活を豊かに、生きがいに満ちた第二の人生とするためには、何よりも所得保障が万全でなければなりません。そして、所得保障は雇用と公的
年金がその柱となることは言うまでもありません。
そこで
政府の
方針をお伺いするのでありますが、第一は定年の問題であります。
六十歳定年が
勤労者の強い要求となっておりますことは御承知のところでありますが、五十九年度の労働省の調査によりますと、一律定年制の企業では定年年齢六十歳以上が辛うじて五〇%を超え、五二・一%になったにすぎません。これは行政指導による定年延長に限界のあることを明らかに示しているのであります。私は、
総理が勇断を持って今国会にいわゆる六十歳定年法を提出すべきだと考えますが、いかがでございましょうか。
次に、関連いたしまして労働大臣にお伺いしておきます。
六十歳を超えても働く意思と能力のある
高齢者は極めて多いのでありますが、そうした人々に雇用の場を保障することは、活力ある
福祉社会実現のためには避けて通ることのできない緊急課題であります。この見地から、我が党は、六十五歳までの雇用を保障するために
高齢者雇用保障臨時措
置法の制定を強く求めているのでありますが、
政府はこれを受け入れるお考えはないのか、六十五歳までの雇用保障の新たな施策を講ずる考えはないか、労働大臣の具体的な御答弁をいただきたいと存じます。
さて、所得保障のもう一つのかなめは
公的年金制度でありますが、この
制度にも多くの問題点が存在しております。すなわち、
制度が分立しているために
制度間に不公正があること、一人一
年金が実現していないため、サラリーマンの妻の無
年金問題が解決されておりませんし、成熟度が高まるに伴って個別
制度ごとに財政が危機的状況に陥るなどの
矛盾と問題点を抱えているのであります。
これらの問題点を解決するためには、
基礎年金と所得比例
年金の二階建ての
制度に改めることが何としても必要であり、我が党がかねてから主張してきたところであります。今回の
政府案はその方向に沿うものであり、かつ
衆議院で我が党
修正要求のうち三項目が
修正されたために、我が党は同
法案に
賛成したところであります。
しかしながら、なお、我が党として、本院
段階において次の三点につきまして
法案修正を強く求めたいのであります。
その第一は、船員や坑内員など第三種被
保険者の扱いについてであります。
これら労働者の就労環境はまことに厳しいものがありますし、今なお
一般労働者の何倍もの災害が残念ながら発生しているのであります。しかも、船員や坑内員の従事する海運、水産及び石炭産業は
国民生活に欠かすことのできない重要産業であり、この維持発展のためにも、これらに従事する労働者には特別の保護政策が必要であります。
ところが、今回の
改正案では、これら職種の特殊事情や従前からの経緯を考慮せず、
年金支給年齢を除き、すべて
一般にそろえられようとしておるのであります。このため、
加入期間が延びても従前の
給付額より下回ることとなり、関係労働者間では激しい憤激と職場混乱が生じているのであります。もちろん
制度の長期的安定と公平は必要でありますが、特殊労働者の立場にも配慮することが社会保障としての大義であり、
本案の検討に当たった関係審議会においても、きめ細かな配慮の必要性が特に指摘されているところであります。
そこで、船員、坑内員など第三種被
保険者の
期間計算については、
制度改正がなだらかに行われるよう激変緩和
措置を求めるものであります。厚生大臣の明快なる御答弁をいただきたいのであります。
第二は、
女子の
保険料率の問題であります。
女子の
保険料率は、現在
男子の
保険料率千分の百六を下回り、千分の九十三となっております。五十五年の
改正でこの
格差是正を進めることとなり、毎年千分の一ずつ
女子の
保険料率を
引き上げてまいりましたが、今回の
改正案では、その
引き上げ幅が毎年千分の三ずっと改められております。私は、男女平等の立場から、
保険料率も男女同一が望ましいと考えますけれども、急激な
負担増を避けるためにも、現行
どおり毎年千分の二ずつに改めるべきだと考えるのでありますが、この点について厚生大臣の御見解をお伺いするものであります。
また、
女子の
支給開始年齢は
昭和七十五年に六十歳に繰り延べられますが、そのためには雇用における男女平等が達成されることが前提でなければなりません。
女子の雇用環境の改善にどう取り組まれますか、この際、労働大臣の所見を求めたいのであります。
第三は、三級
障害厚生年金の
給付水準であります。
衆議院修正によりまして
月額三万七千五百円の最低保障
制度が設けられ、
政府原案より改善された点は認めますけれども、私としてはなお一層の改善が図られるべきだと考えるのであります。なぜならば、
標準報酬月額が十万円の者の三級
障害者
年金は現行
月額五万一千円であり、
衆議院修正によって最低保障額三万七千五百円が
適用されたとしても、現行
水準より
月額一万三千五百円
給付額が低下することになるからであります。私は、最低保障額を
基礎年金相当額の
月額五万円に
引き上げるべきと考えますが、厚生大臣はこれにいかに対処されますか、具体的な
方針を示していただきたいと思います。
次に、
年金税制と
年金積立金の自主
運営について大蔵大臣にお尋ねをいたします。
まず
年金税制でありますが、現行の老齢者
年金特別控除の
適用期限が
昭和六十年十二月三十一日で切れることになっております。当然これは延長されると考えますが、延長に当たり、
昭和五十年以降据え置かれてきた控除額七十八万円を、その後の物価上昇率を考慮して百万円に
引き上げるべきだと考えますが、大蔵大臣の御見解をお伺いしておきたいと存じます。
次に、
年金積立金の自主運用についてお聞きいたします。
公的
年金の積立金は現在約四十四兆余円に達しておりますが、この
金額が大蔵省の資金運用部に預託されております。こうした現状を打破し、
年金積立金の自主運用を図ることが
加入者の
負担軽減と
年金財政の長期安定のために必要不可欠であります。したがって、六十年度において少なくとも新規預託金のうち一割程度を自主財源として運用できる道を切り開くべきだと考えますが、大蔵大臣の具体的な対応策をお尋ねしたいのであります。
最後に、いわゆる官民
格差を是正するため、本
法案で設けられる
基礎年金を共済
年金にも創設するよう早急に共済
年金改正法案を国会に提出すべきことを強調しつつ、私の
質問を終わります。(
拍手)
〔
国務大臣中曽根康弘君
登壇、
拍手〕