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佐藤昭夫君 私は、
日本共産党を代表して、
電電公社民営化等三
法案に
反対の
討論を行います。
まず初めに指摘したい問題は、本
法案が
国民生活と
日本の将来にとって極めて重大な
問題点を持つことから、第百一
国会では不成立となったにもかかわらず、
閉会直後の
自社公民四
党会談において百二
国会冒頭成立の
確認が行われ、以来、
閉会中には全く
異例の
地方公聴会を行い、今
国会においても
徹底審議を求める我が党の
意見も踏みにじって強引に
委員会採決に付されたことであります。これらの
経過は、
議会制民主主義に
もとるばかりでなく、
審議を尽くして
国民の利益を守るべき
国会の
責務をみずから放棄したものであり、強く抗議するものであります。
さて、本
法案に
反対する第一の
理由は、今次
法案によって
公共事業体、すなわち
国民共有の
財産である
電電公社を解体して
民間株式会社に移行させるとともに、
電気通信事業に
競争方式を導入することは、
国民生活と
社会経済活動に重大な悪
影響を及ぼすことになるからであります。
本
法案によって、
電気通信事業に対する
国会の統制が外れ、
利潤本位の
運営となる結果、何が一体もたらされるのか。例えば、
政府や
公社当局がいかに
電話料金は当分の間値上げしないと言おうとも、それが偽りであることは、既に工事
料金が大幅に値上げされ、さらに加えて番号案内等の有料化、各種
サービスの切り捨てが検討されていることからも明らかであります。
また、先月十六日に発生した世田谷電話局のケーブル火災事故は、
電気通信が
社会と
国民生活に果たしている
公共的
役割の大きさと安全対策の重要さを改めて明らかにいたしました。
公社体制の
もとでもこうした事故が発生したのに、
利潤本位の民営に移れば安全対策が一層手抜きになることは明らかではありませんか。
第二の
反対理由は、
社会の神経系統とも言われる
電気通信事業に、アメリカなど
外国企業の自由参入を許すことによって、
我が国の
通信主権が脅かされる危険があるということであります。
この
通信主権は、国際
電気通信条約で明確に
規定しているように、各国固有の主権として世界各国が
相互に尊重しなければならないものであります。そのため、現在
外国企業の参入を認めているのはカナダなどごく限られた国だけであり、しかもそのカナダも
日本とは逆に参入を規制する方向に進んでいるのであります。この世界の趨勢に背を向けることは断じて許されません。
第三の
反対理由は、
通信の秘密、プライバシーの権利が侵されるおそれや、
通信の軍事
利用の危険が増大するからであります。
今日の
情報化の進展の
もとで、各種の
情報が
政府や大
企業に
集中するとともに、
個人情報が売買されたり、
企業の営業活動に勝手に使用する計画が進められており、
国民の人権に重大な侵害を起こしつつあります。このような状況の
もとで、
プライバシー保護法の
制定など国の
責務を放棄したまま、
電気通信事業を大
企業の手にゆだねることは絶対に認められません。
また、我が党が指摘したように、平和
目的に限るとした法の精神を踏みにじって、自衛隊に
通信衛星を
利用させたり、核戦争を想定した米軍
通信網に
公社回線を大量に
提供したり、軍事技術協力に何の歯どめも示さないなど、日米軍事同盟体制の強化の
もとで、
電気通信と技術の軍事的
利用の危険がますます増大するのは明らかであります。
第四の
反対理由は、
電気通信事業体における合理化が強行され、労働者の首切り、労働強化、不当な配転、権利抑圧が行われることであります。
電電公社当局は、人減らし計画はないと欺瞞的答弁を繰り返してきましたが、我が党が具体的資料を示して指摘したごとく、大幅な人減らし計画を着々と進めているのであります。
また、我が党は、
法案の
質疑とあわせて、
電電公社における職員に対する組織的、系統的な思想調査と思想差別、労働組合役員選挙への介入の問題などを
公社資料を示して追及いたしました。
公社の
もとでこのような憲法を踏みにじる不当な行為がまかり通っているままに民営に移行すれば、一層重大な事態とならざるを得ないことは明らかであります。
また、ストライキ権の問題であります。本
法案では、
電電公社の
民営化を言いながら、労働者の
基本的権利であるストライキ権を事実上否定する
措置を
規定しております。我が党は、憲法の
立場から、ストライキ権は
経営形態のいかんにかかわらず無条件に回復すべきものであることを強く主張するものであります。
第五の
反対理由は、本
法案は大
企業による
中小企業の支配強化や系列化を促進し、大
企業による地域支配も強めるからであります。
大
企業や各
資本系列も
情報通信事業への進出を計画していますが、現在でも取引
関係情報が大
企業に
集中的に掌握され、再編、系列化、
中小企業の取引条件の悪化が進んでいることは、公正取引
委員会や
中小企業庁も指摘しているところであり、
民営化となればこの傾向が一層激しくなることは明らかであります。したがって、大
企業の専横の規制、
中小企業の権利の拡大と保障の
措置がないままに
民営化を強行することは、
国民生活と
中小企業の営業に重大な不利益をつくり出すものであり、断じて許せません。
最後に、
電電株の問題であります。
株式売却益をめぐって
利権発生のおそれや各省間の醜い争いを生む根源は、そもそも
民営化にあります。これをなくす根本的方策は、我が党が主張するように、本
法案の廃案以外にありません。言うところの大量赤字国債の縮減も
電気通信技術の研究開発も、
株式の
売却利益を当てにするのではなくて、軍事費削減、大
企業への特権的減免税の
廃止など税財政の抜本的転換によってなすべきであります。
以上、
反対の
理由を述べましたが、
電気通信の多彩な発展を展望するとき、その
国民本位の発展のためにも、
公社形態を維持しつつ
公社の民主的
運営を徹底することこそ求められていることを重ねて指摘し、三
法案に強く
反対して
討論を終わります。(
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