○
稲村稔夫君 私は、日本社会党を代表いたしまして、
農業者年金基金法の一部を
改正する
法律案に対する修正案について、その
提案の趣旨を御説明いたします。
修正案の内容は、既に
委員各位のお手元にお配りしたとおりでございますので、案文の朗読を省略し、その概要を簡単に御説明したいと存じます。
修正の第一点は、政府案における特定譲り受け者以外の者に
経営を
移譲した場合の
年金額に四分の一の格差をつけるという規定を削除することであります。
改正案におけるこの措置は、
農業構造の改善を一層
促進するための
政策適合度を基準にして
年金額に差をつけたと説明されているのでありますが、この背景には財政支出を縮減する一方、
給付水準の切り下げによって本
制度の安定を確保しようという意図がありありとうかがえるのであります。これは、
農業者の老後生活の保障に支障を生ずるとともに、本人や
後継者の責任に帰せられない
理由によって同一の
保険料を支払った者の
年金額にいわれなき格差を設けることになるばかりか、
農村社会の実態を全く無視したものでありまして、我々は、この
改正を断じて容認するわけにはまいりません。
このため、我が党の修正案では、このような改悪規定を削除し、
経営移譲を行った者には、
経営移譲の相手方によって
年金額に差別を設けることなく、現行法どおり同額の
年金額を支給することとしたのであります。
第二点は、
農業者老齢年金の額を二倍に引き上げることであります。
日本社会党は、老齢
年金の引き上げについて、過去三回にわたって独自の修正案を提出してきた経過がございますが、これは一言で申し上げれば、本法制定の経過にかんがみ、実質的に
厚生年金並みの
給付水準を
国民年金の支給と相まって保障することにより、
農業者の老後生活の安定を確保しようとするものでありまして、
公的年金制度が担わなければならない当然の使命を果たそうとするものなのであります。
ところが、
改正案は
農業者の老後生活の実態を考慮することなく、
年金額を逆に引き下げることを内容とするものでありまして、
農業者を初め
関係者の期待を全面的に裏切るもので、到底我々の納得できる内容ではないのであります。
第三点は、
農業者寡婦
年金制度を創設することであります。
これは、衆・参
農林水産委員会が、附帯決議の中で政府に検討を迫ってきたにもかかわらずいまだに放置されている問題であります。
我が党は、現行
制度が
婦人の
年金加入を実質的に制限し、遺族に対する保障も他の
公的年金制度に比べて著しく立ちおくれているところから、修正案では、
経営移譲年金の
受給権者であった夫が死亡した場合において、六十五歳未満の妻があるときに、その妻が六十歳に達した時から夫の
経営移譲年金の未支給期間の月数に
相当する月分の
農業者寡婦
年金を支給する
制度を創設することとしたのでありまして、他の
公的年金制度が有している当然の
制度を
農業者年金制度にも導入しようとするものであります。
第四点は、
農業者年金の支給資格期間として通算する措置の対象範囲を
拡大することであります。
この点につきましては、政府案が
農業協同組合等の常勤の役員に選挙または選任された者についての受給資格期間について通算する措置を講じており、我々も
一定の評価をするわけでありますが、その範囲を
農協等の役職員に狭く限定したことは問題であり、我が党は、
農村地域工業導入
促進法に基づいて導入された工業に就業した後
一定期間内に当該工業が工場を
移転したり操業を廃止したことによって離職を余儀なくされた者について、その者の
被用者年金加入期間を
農業者年金の受給資格期間として通算する措置を講ずることとしたのであります。
第五点は、
昭和六十三年以降
昭和六十六年までの
保険料の額の段階的な引き上げ幅を四百円ずつに縮小することであります。
改正案における
保険料の引き上げ幅は八百円という大幅なもので、これは
農業所得が近年低迷している
状況の中で、農家の負担能力をはるかに超える厳しいものであるばかりか、
国民年金が三百円の幅に抑え家計への影響に配慮していることに比較すれば無謀とも言える引き上げ幅であります。
我が党はこのような諸点を考慮し、農家負担の軽減を図る観点から修正を行うこととしたのであります。
第六点は、
国庫補助額について、その引き上げを行うことであります。
すなわち、
公的年金制度の長期的な安定を確保することは政府の国民に対する責務でありますが、
国庫補助を削減し、自助努力を強制することによって本
制度を維持しようとすることは、
農業者年金制度を形骸化するものであり、
農業者の老後生活の安定を目途に全額
財政資金をもって離農
年金制度が運用されているフランス等外国の例とは余りにも対照的であります。
このような見地から我が党は、本修正に伴う必要財源を
国庫補助の引き上げ等によって措置することとし、現行法の
保険料に対する
国庫補助の規定を復活させるとともに、新たに、
農業者老齢年金の
給付に要する費用の額の三分の一に
相当する額を国庫負担する規定を設けることとしたのであります。
以上のほか、政令事項でありますが、
後継者の本
年金への
加入要件及び
後継者に対する
経営移譲要件となっている
後継者の
農業従事期間三年以上につきましては、これを一年以上に短縮することを強く要求するものであります。
以上が我が党の修正案の内容でありますが、何とぞ全員の御賛同を賜りますようお願い申し上げ、趣旨説明といたします。