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参考人(
白杉儀一郎君) 私は、日本絹人織織物
工業組合連合会の副
理事長といたしまして、
国内絹織物関係並びに
生糸関係を担当いたしますと同時に、
生糸消費の約三五%を消費いたしますところの丹後織物工業組合の
理事長をいたしております。
まず、諸
先生方にお礼を申し上げたいと思っておりますが、
平素、
蚕糸絹業のために大変な御
高配をいただいておりますことを、厚くお礼を申し上げる次第でございます。
私
たち織物
業者は、何といたしましても原料がなければやっていけないわけでございまして、
養蚕、
製糸の
方々とは本当にもう三位一体であるという形で、いろいろの面で協力し合ってまいっておるわけでございます。特に私
たちの組織の
絹織物業界は、呉服をつくっておるわけではなくして、呉服になる素材をつくっているわけでございまして、全く
生糸を売っておるに等しいような非常に
付加価値の少ない仕事をやっておるわけでございまして、そういう面からも
養蚕、
製糸の
方々とはもう本当に協力し合わねばならないというふうに考えております。ただ、残念ながら、いろいろの面で利害が衝突するわけでございまして、特に最近、私
たちの団体の
全国絹織物業界は、織機の台数にいたしますと約五〇%に落ち込んでまいろうとしております、今年度廃棄をやりますと。また、織物
生産数量もここ十年ほどの間に約四〇%に落ち込んできつつあるというような
状況でございまして、全く各
産地ともこのままでは各団体組織さえ
維持ができ得ないというような
状況で、転廃業が続くと同時に、一方では化学繊維なり綿繊維なり、そうしたものに転出をいたすというような実情の中にあります。
したがって、本当に利害は一つであるべきでありますのにもかかわりませず、ややもいたしますと、私
たちの団体はいろいろの面で
養蚕、
製糸の
方々と反対のことを申し上げねばならないというような心苦しい
状況でこざいます。本日も率直に我々の団体のことを申し上げ、しかし、あくまでこうした苦しいときにこそ
蚕糸絹業が一体になってこの危機を乗り切らなければならないんだという気持ちは持っておるわけでございまして、そうしたものについてはお互いに辛抱し合い譲り合って、そしてやっていくんだという精神はかたく持っておることを、まず申し上げておきたいと思っております。
まず、具体的に申し上げてまいりたいと思っておるわけでございますけれ
ども、一つは、今回の
法律改正の骨子は、
生糸の
価格安定
措置の改善を図ることと、また一方では、
事業団にあります大量の糸を円滑に処分を図っていくという
法律改正案であるというふうに私
たちは感じておりました。まず、大きな前進であるということで賛成いたしておりまして、一日も早く法
改正がなされることを
お願い申し上げたいと思っております。ただし、
改正後につきましては、法律の
運用というものが非常に大切だというふうに考えておりまして、さきに農水省並びに通産省で研究の結果がいろいろと発表されておりますけれ
ども、そういう指摘事項を着実にいろいろの面で実行に移していただくというような方向で、特にこうした点を
お願いを申し上げたいというふうに考えております。
また、現在、私
ども絹織物業者が抱えている問題はいろいろございますけれ
ども、特に
お願いしたいことを要約いたしますと、次の二点でございます。
一点は、
生糸価格水準の
内外の格差の圧縮が、でき得るなら極力早く、少しずつでも達成していただくように、
お願いをいたしたいというふうに考えております。これの
理由といたしましては、なぜ
国内の
絹織物業者がこれほどまでに落ち込んでおるかということは、和装
需要の末端売れ行きとかいろんなことが言われておりますけれ
ども、最大の原因は、やはり
輸入絹織物のために大きな打撃を受けております。
いま一点は、
国内の化合繊、綿でありますとか、そうした分野から
絹織物分野に入ってこられたシェアの大きな問題に関係しておるというふうに御
理解いただきたいと思っております。昔から、
生糸と綿と化合繊との
価格というものは自然に
需要と供給の中で出ておりまして、大体毛糸に対しましては
生糸は三倍ぐらいのものが妥当であるということで、長い間そうした
状況が続いておりましたけれ
ども、現在はそれの約倍ぐらいに
生糸はなっておるという
状況でございます。また、綿糸につきましては大体七倍ぐらいのものであるという
状況でございましたけれ
ども、現在は十六倍のものに
生糸はなっておるという
状況でございます。特に化繊関係のそうしたものが大きい開きをしておりまして、従来ポリエステル等におきましては二・三倍の差であるという
状況でございましたものが、現在では二十三倍にまで
生糸はなっておるという
状況でございまして、この合繊関係の浸透が、いろんな
状況の中で、具体的に申しますと、裏物でありますとか兵児帯でありますとか襟でありますとか、もう大変な分野に化合繊の関係が入ってきておるということを申し上げておきたいと思っております。
私
たちが昨年末におきまして、
基準糸価を一万円に下げていただきたいということを勇気を持って要望いたして
お願いをしたわけでございます。一万円に下げられたらどれだけ我々の織物
業界はつぶれるんだということを予測いたしますと、なかなか重大な決心ではございましたけれ
ども、このまま推移するなれば、こうした先ほど申しましたような
状況で、
輸入織物とその他の繊維によって
絹織物業界は崩壊されるんだ。そうなれば、ここで一度何とかひとつ
絹織物業界が立っていけるようなところまで
お願いがしたいというようなことで
お願いをいたしたわけでございます。これは、すなわち
輸入織物と対抗し洋装分野へ入り、またいろいろシェアを奪われたものに
絹織物が取ってかわって取り返していきたいというような考え方で申し上げたことを、この機会に申し上げておきたいと思っております。
次に
お願いしたいことは、実
割り生糸を極力増枠されたいということを
お願いしたいわけでございます。ややもいたしますと、実
割り生糸を機屋に与えると、その分だけ
国産糸の消費を
減少させ、
生糸の市場
価格を引き下げるものだとのいろいろ先ほどからの御
意見もあるわけでございますけれ
ども、これは本当に
絹織物業界、すなわち
養蚕の
方々、
製糸の
方々がつくったものはだれがそいつを消費するんだということを御
理解いただくなれば、織物
業界もやはり生き残れなかったら幾ら
養蚕をやっていただいても
生糸をつくっていただいても、これは消費するものがないんじゃないかというようなことを考えておるわけでございまして、この実
割り生糸は高い
国産糸を使わせることの一つの消化剤としてわずかなものをいただいておるという
状況でございまして、この実
割り糸が出ないというような
状況になってまいりますと、
国内の
絹織物業界は急激な崩壊をいたすだろうというようなことを考えておるわけでございます。
私
たち絹織物業者といたしましては、
生糸の一元
輸入が続く限りは、何とか
絹織物業界も一元
輸入をしていただくべきは当然じゃないかというようなことを考えまして、そして二度にわたりまして、五十二年、五十五年に猛運動をいたしまして、少なくとも一元
輸入の続く限り
絹織物もそうしたことをやっていただきたいということで運動をいたしたわけでございますけれ
ども、工業
製品であるからこれはだめであるというようなことから、それの代償として、三省——農水、通産、大蔵の了解、閣議の了解事項として、実
割り制度というものが設置されたわけでございまして、当時は三万俵ということでございましたけれ
ども、逐次そうしたものが減らされてきておるというような
状況でございます。
先ほど来より、
基準糸価を割ったら実
割りをとめろとか減らせとかいう話がいろいろ出るわけでございますけれ
ども、
基準糸価を割るのは何で割るんだ、すなわち織物
業者が一番の苦しいときに立ち向かっておるんではないか、それで
基準糸価が守れないんだというようなことを考えていただくなれば、本当に実
割り生糸というものが大きな役割を果たしておるんだということを、ひとつ
先生方にぜひ御
承知をいただきたいというふうに考えております。
なお、織物にはいろいろのデニールの
生糸が要るわけでございますけれ
ども、
国内では全然
生産されておらないデニールも今ではあるということでございまして、特に十四中のごときは皆無でございます。それから二十中、二十一中は、日本の
生産は七%程度であるというような
状況でございまして、従来からのいろいろの織物をやっていくがためには、どうしてもそうした今の実
割り生糸を配分していただかなければならないというようなことも、ひとつ御了承いただきたいと思っております。
大体、実
割り生糸は、本来は二
国間協定で瞬間タッチ方式でいただいておりましたけれ
ども、現在
事業団にあります五年、六年以上、この間までは七年の
生糸が出ておったわけでございまして、そうしたものを
国内消費の
生糸にスライドいたして毎月約二千俵の糸をいただいておるわけでございますけれ
ども、それを私
たちで
割り出しいたしますと、
国産生糸の一一%に当たるものをお出しをいただいておるというような
状況でございまして、全く微々たるものの対策であるということから考えていただきたいと思っておるわけでございます。どうかひとつ、こういう面でいかに実
割り生糸が重要なものであるかということを、特に
お願いを申したいと思っております。
簡単に今、織物関係の実情を申し上げますと、京都室町で、
輸入織物と私
たちの製造します
国内の織物とが、一反三千円ぐらいの
価格差で取引をされておるわけでございまして、随分私
たちも
輸入織物よりも負けないものということで、新商品の開発を次々やっていくわけでございますけれ
ども、約一カ月半か二カ月
たちますと、もうそれが韓国ででき台湾ででき、現在ではシンガポールであるとか本当にビルマの方でまでそうしたものができてくるということでございまして、どんどんどんどん低賃金のところへ織物が流れていくということでございます。織物の紋のようなものでも、もうきょうでは、すぐそうしたものが持っていかれるというような、コンピューターの関係で出ていくという
状況でございます。こうした安い織物に絶えず牽制されまして、非常に
絹織物産地が日に日に落ち込んでいっておるという
状況でございます。
ちょうど私
たちの統計で、
事業団の発表なりそうしたものからやってまいりますと、
輸入織物は五十九年一月から十二月で大体
生糸に
換算いたしますと五万一千百俵、約二十八%、我々の
国内消費のものの中から出てきております。また二次
製品で一五%、二万六千二百俵ほど
輸入されておるわけでございます。これも、だんだんだんだん二
国間協定が
数量を狭めてまいりますと、今度は二次
製品なり三次
製品に化けてまいりまして、最近では着物に仕
立てたものまで、黒の紋付の羽織でありますとか喪服でありますとか、そういう仕
立てたものまで
国内に
輸入されてくるという
状況でございまして、これは完全に二
国間協定の
数量の中から外れておるという
状況でございまして、こうしたものをいろいろの量で測ってまいりますならば、まだまだ相当なものが
輸入されておるというふうに考えておるわけでございます。
何とか今、
絹織物業界の私
たちは、少なくとも実削り
生糸を四千俵ぐらいに、倍ぐらいにひとつふやしていただきたい。このふやしていただいたのは、決して
輸入してきた
生糸をいただきたいと言うておるわけではないわけなんでありまして、
事業団にある糸を出していただいて、そしてこれによって織物
業界が何とか消費のため、本当に少しでも海外の
産地と対抗ができるような
措置をとっていただくことが、ひいては
蚕糸絹業なり、そうした皆さんにも影響を及ぼしてくるんだろうというふうに考えておるわけでございます。
今、丹後も三月末で前年
対比を出してまいりますと、八%の昨年
対比落ち込みでございます。これから四月、五月、六月、七月とずっと不
需要期を控えてまいりますと、かなりの消費落ち込みが出てくるだろうと思っております。三月までは二
国間協定のクォータが切れておりまして、若干
輸入織物が入るのがとろくなっておったわけでございますけれ
ども、この年度がわりになりましてから急激に今度は織物がまた入ってくるだろうというふうに考えておるわけでございます。これをいたしていただくのには、何とかしてひとつ闘えるように実
割り生糸をふやしていただくということを重ねて
お願いをいたしまして、私の話を終わりたいと思います。