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丸谷金保君
大臣、私は池田町長
時代に、約二十年間寒地ブドウの品種改良を町職員とともに努力し、私自身はもちろんのこと、職員も何人かヨーロッパ各地に留学させまして品種改良の勉強をしてまいりました。
大臣、よく聞いていてください、特に
大臣にまずお聞き願いたいので。
町の研究所でつくり上げた花粉交配等による新しい改良品種の試み、それは約十万本を超えております。このように苦労をしましても、実際に実用化できたのはワイン原料としてF1が幾つかあるという程度で、特許や種苗法によるところの品種登録等に申請できるような成果は上げることができませんでした。私が町長を去って八年、最近ようやく品種登録可能な育成ができまして、ことし、あるいは来年の秋には申請手続を行うことができるようになりましたが、そこまでに至るのに数えて約二十数年かかっております。このように植物の新品種の作出というのは極めて難しいものなのです。そうした苦しい体験を踏まえまして、きょうは農民の真の利益を守るために種苗法と特許法をいかに調整させていくかということについて
質問を申し上げたいと存じております。
五十三年の種苗法改正のとき、私はバイオテクノロジーの進歩や特許法と種苗法における調整ができていないこと等を理由に、もう少し時間をかけて法案審議を行うべきだと主張したのですけれど、当時、農林省は、UPOV条約にできるだけ速やかに加入するためにぜひとも今国会で議了してほしいと強く要請しました。にもかかわらず、この条約加盟は五十七年までずれ込んでしまった。私の言ったとおりなんです。また「同一の種類の植物の保護は、一の方式により行われなければならない。」という条文解釈についても、その後いろいろなとり方がございますので、法制
局長官に特にこの点をお尋ねしたいと思います。
さらに、これらの原因が重なってヨモギ論争あるいは倉方黄桃、ブドウのオリンピアの問題等、種苗法の品種保護が実際に農民を守るための効果を上げていないではないかというような疑点もあります。トウモロコシに見られるようなF1種子に独占されてしまったような種子問題等も、この機会に明らかにしていきたいと思っております。それによって、
農水省と通産省が役所の垣根を乗り越えて真に日本
農業の将来を憂うる立場で有性繁殖、無性繁殖あるいはバイオの問題に対応して協力しているかどうか、こういうことも
質問いたしたいと思います。
具体的な事実を踏まえないで、
農水省の言い分に反対するものは何でも農民の敵だというような短絡的な発想では、この植物品種改良登録特許法の問題は解決いたしません。もともと日本人は、江戸
時代にアサガオや菊ですばらしい品種改良の実績を持つ民族であります。しかし、残念ながら、こうした英知と
技術水準が実際に現在生かされておりません。
アメリカに押されっぱなしの種子問題についても、何が農民の利益かを建前だけでなく具体的な事実認識に立って本音できょうは御
答弁をいただき、日本人の
活力がむしろ世界に向けてどんどん新しい品種の輸出国になり得るよう期待を込めて、日本
農業の将来を憂うる者の一人として真摯な御
答弁をお願いいたしたいと思います。
そこで、実は法制
局長官が急いでいるというので、
質問を変えて二問目から入らせていただきます。
本当はUPOVの問題を先にやりたいんですが、本来これに
関連するんです。
法制
局長官にお願いいたします。
種苗法と特許法との
関係について、国会でいろんな
質問、御
答弁がございました。特にその中で長官は、これは五十九年三月二日の衆議院
予算委員会で、「条約に日本が加盟いたしますときにいろいろと
関係者の間で協議が行われまして、その結果、この条約に定める育成者の権利を担保するものは種苗法のみである、特許法は別の目的でいわゆる工業所有権という面での保護を与えるものであって、これは別個のものである、」、こういう御
答弁をいたしております。そして、この間において条約の「いわゆる二つの方式がある場合には
一つの方式に限る」ということについてはいろいろ問題が生じたようですが「処理がされていると聞いております。」、また、その後段で「
関係の通産と農林の御当局におかれまして協議がなお進められておるというふうに伺っております。」、こういうふうに言っておられるんです。
この問題については、長官の
答弁ですからこれが最終的な絶対のものなんですが、ただこのことをひとつ
御存じかどうか。というのは、五十三年の法律改正の当時、衆議院で川俣議員の
質問主意書に対して
総理大臣の
答弁書で「農林省では、植物の育種の
振興を図るため植物の新品種を育成した者を保護する制度を
整備することとしているところであるが、現在のところ植物新品種の育成者の地位については、知的所有権に属しないようなものとして構成する方向で検討中である。」、こういう
答弁書が出ている。知的所有権に属さない形で検討中、こういう
答弁書が出ましたので、これを受けて農産種苗法の改正案の中には、いわゆる権利法としてでなく
行政取締法規としてこの法律が組まれ、新品種登録の反射的利益、これは私にも当時の小島審議官が何遍も反射的利益という言葉で
答弁しておりますが、反射的利益として一定の特権的利益が付与されているものであって、法文中にはしたがって一切権利という言葉は用いられていないんです。おのことを踏まえて、この
答弁書の内容を踏まえて五十九年度御
答弁しているというのであれば、執拗に、ほかの方でも法制局は、この条約に定める育成者の権利を担保するのは種苗法のみだ、この条約、いわゆる国際法です、この条約に定める権利は、育成者の権利は種苗法だ、こう言っているんです。だから、いわゆる国際法上の条約によって生じた権利と国内法の権利とは、それが競合するような場合には、協議をしているということでお逃げになるんですか。それはこうだという明快な御
答弁がいただけますか。