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1984-12-11 第102回国会 参議院 農林水産委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十九年十二月十一日(火曜日)    午前十時一分開会     ─────────────    委員異動  十二月四日     辞任         補欠選任      上野 雄文君     山田  譲君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         北  修二君     理 事                 高木 正明君                 谷川 寛三君                 最上  進君                 村沢  牧君                 藤原 房雄君     委 員                 岩崎 純三君                 浦田  勝君                 大城 眞順君                 岡部 三郎君                 熊谷太三郎君                 小林 国司君                 坂元 親男君                 竹山  裕君                 初村滝一郎君                 星  長治君                 水谷  力君                 稲村 稔夫君                 菅野 久光君                 山田  譲君                 刈田 貞子君                 下田 京子君                 田渕 哲也君                 喜屋武眞榮君    国務大臣        農林水産大臣   佐藤 守良君    政府委員        農林水産大臣官        房長       田中 宏尚君        農林水産省経済        局長       後藤 康夫君        農林水産省構造        改善局長     井上 喜一君        農林水産省農蚕        園芸局長     関谷 俊作君        農林水産省畜産        局長       野明 宏至君        農林水産省食品        流通局長     塚田  実君        農林水産技術会        議事務局長    櫛渕 欽也君        食糧庁長官    石川  弘君        林野庁長官    田中 恒寿君        水産庁長官    佐野 宏哉君    事務局側        常任委員会専門        員        安達  正君    説明員        外務省経済協力        局無償資金協力        課長       竹内 行夫君    参考人        日本道路公団理        事        北村 照喜君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○参考人出席要求に関する件 ○農林水産政策に関する調査  (当面の農林水産政策に関する件)     ─────────────
  2. 北修二

    委員長北修二君) ただいまから農林水産委員会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  去る四日、上野雄文君が委員を辞任され、その補欠として山田譲君が選任されました。     ─────────────
  3. 北修二

    委員長北修二君) 次に、参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  農林水産政策に関する調査のため、本日、日本道路公団理事北村照喜君を参考人として出席を求めることに御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 北修二

    委員長北修二君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  5. 北修二

    委員長北修二君) 農林水産政策に関する調査を議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  6. 山田譲

    山田譲君 私は、きょうは余り時間もありませんので、ごく簡略に、特に現在の日本農政といいますか、農業問題についての基本的な問題について新大臣にいろいろお伺いしたいと思うわけであります。  私は久しぶりに農水に戻ってきたものですから、復習の意味もありまして、同じようなことのまた繰り返しになるかもしれませんけれども、ぜひお許しをいただいて、明確にお答えをいただきたいというふうに思います。  初めに伺いたいのは、現在の農業問題、私もできるだけ農村地帯を歩こうとして歩き回っておりますけれども、どこへ行きましても、それは篤農家として一生懸命やっておる人ももちろんおりますけれども、全般の農民たちの雰囲気としてどうも日本農業に希望が持てない、おれたちはどうすりゃいいのだというふうな意気消沈をした姿が非常に多く見られるわけであります。そういう人たちに対して、日本農業の前途はあるのだ、そんなに悲観すべきじゃないというふうな勇気づけ、元気づけをしてやって、そしてある一定方向を示してやる、そうすることによって農民人たちも、それならひとつ頑張ろうかというふうなことで、一生懸命働いたり、あるいはまたいろいろ考えるというふうになっていくのじゃないかと思うのです。  そういう人たちに対して大臣一つの所信といいますか、考え方、つまりそういう農民たちに元気を与え、そして本当に将来の農業発展のために頑張ろうという、気持ちを起こさせるような、大臣のぜひとも御努力をお願いしたいと思うのでありますが、それについて大臣農政に臨む基本的な考え方を多少具体的にお話し願いたい、かように思います。
  7. 佐藤守良

    国務大臣佐藤守良君) 山田先生の御質問にお答えさしていただきます。  先ほど先生がおっしゃったようなことでございまして、現在農林水産業をめぐる諸情勢は大変厳しいものと思っております。内におきましては米など一部農村部で需給不均衡、規模拡大の停滞あるいは行財政改革推進などございます。また外におきましては、諸外国からの相次ぐ市場開放等がございまして、極めて厳しいものとなっておるのは先生承知のとおりでございます。  そういう状況の中で、実は今後の農林水産行政を進めるに当たっては基本的な、総合的な食糧自給力維持強化というものを基本として、生産性向上をどうして図るかということ、そういった中に農業生産の再編成を進めるなど各般の施策を進めたいと考えておりますが、そういう形の中に、私は実は農政を進めるのに三つ基本的考え方があると思っております。  その一つは、農は国の基本であるということ。それに、やはり食糧安全保障という意味が入っていると思います。その次が経済性、その次は市場開放性、この三つをどのようにバランスをとってやっていくかということが一番大きな農政の要素だと思っておりますが、現段階におきましてはやはり農は国の基本である。将来、農業をやる人にとりまして本当に農業というのはいいものだというような環境づくりをどうしてやるかということが一番大切ではないか、こんな観点から私は三つの点に重点を置いて進めたいと思っております。  その一つは、生産性の高い、土台のしっかりした農林水産業づくりをしたいということでございます。第二番目には、二十一世紀に向けてバイオテクノロジー、ニューメディアなどの先端技術の開発による魅力のある農林水産業を築くということでございます。第三点におきましては、やはり農林水産業に携わる人々意欲生きがいを持てるような活気のある豊かな村づくりをする、こんなことを中心にこれから進めたいと考えております。
  8. 山田譲

    山田譲君 大体基本的なお考えは伺いましたけれども、私が聞きたいのは、そういう基本的な考え方に基づいてどういう具体的な方策をこれから考えていこうとするか、そういうことをこの際特にお伺いしたいというふうに思うのです。よろしくお願いいたします。
  9. 佐藤守良

    国務大臣佐藤守良君) 今の点につきましては、実は最初私が申し上げました点の、豊かな土台のしっかりした農林水産業でございます。実は、現在農業をやっている人にとりまして非常に不安があると思います。そんなことで、農業に携わる人が本当に楽しい農業ができるような豊かな環境づくりをどうしてやるかというようなことで、例えば経営規模拡大等も含めまして積極的に進めたいと考えております。  それから第二番目におきましては、実はこれから農業につきまして例えば気象INSとかというような、例えばある一定気象条件が整いましたならば害虫が発生する、そういう場合には、その害虫をどうして防ぐかという処置がとれるというようなことでINS等利用、あるいはCATV、有線テレビ活用とか、水産業におきましては衛星の活用とか、こんなことを含めながらひとつやってみたいと思っております。  それからまた三番目の、いわゆる農林水産業に携わる人々意欲生きがいの持てるような活気のある豊かな村づくりというような、これは率直に言いますと、今都市農村交流はございません。といって、都市の人の約八割ぐらいは農村出身の方、そんなことで、もっと都市農村交流を深める。例えば学校の生徒などが、都市の人が農村へ行って生活をするとか、そして都市農村交流を深めながら豊かな村づくりをいたしたい、こんなことを中心考えてみたい、このように思っておるわけでございます。
  10. 山田譲

    山田譲君 これは大臣でなくても結構でございますからちょっとお答えいただきたいと思うのですが、最近、叶芳和という学者、これはもう御存じだと思いますけれども、この方の書かれた「日本農業国家たれ」という本があって、あれを読んでみますと、非常におもしろいことがいろいろ書いてあるわけです。その中で私が特に注意を引いたのは、日本農業四つ革命革命というのはちょっと大げさだと私は思いますけれども、叶さんはそう言っているのです。四つ革命をどうしてもしなきゃいかぬ、また、革命を行うことによって日本農業展望が開けるし、それをしなければ日本農業はだめになっていってしまう、こういうふうなことを言っておられる。四つ革命というのは、一つ流通革命である、一つ人間革命であり、一つ技術革命であり、一つ土地革命、この四つ革命をぜひともやらなきゃいかぬ、こういうことを言っているわけです。  一つ一つについて細かく言っている時間がありませんが、こういう四つ革命をして、ぜひとも日本農業国家として、叶さんによれば、世界文化国家は皆農業国家である、こういう言い方をしているのですが、日本もそれになる十分の下地はあるのだ、特に優秀な農民、こういう者も日本にはいるわけですから、その人たちがその四つ革命を行うことによって日本農業の将来を切り開いて農業国家になることは十分できるのだという非常に革新的な意見を吐いておられるわけです。こういう考え方に対して、恐らく農水省の皆さんもお読みになったと思うのだけれども、どういうふうに考えておられるか、ちょっとお聞かせをいただきたいと思います。
  11. 田中宏尚

    政府委員田中宏尚君) ただいまありました叶氏の提言につきましては、中には傾聴すべき点もあるわけでございますけれども、基本的には工業部門近代化のプロセスなり論理というものを直接的に農業についても適用いたしておりまして、そういう枠組みの中で日本農業技術革新なり、あるいは人的資本蓄積が重要な先進型農業になり得るという展望は開いているわけでございます。しかしながら個々の中身を見てまいりますと、土地問題でございますとか、あるいは農家の就業問題でございますとか、それからさらには農産物価格というようないろいろな問題につきましての認識については我々とかなり異なった点がございまして、ああいう工業化論理で一直線に農業というものを近代化していくということについては、残念ながら大きな障害なり限界というものがあるのじゃないかというふうに感じているわけでございます。
  12. 山田譲

    山田譲君 どういう点で障害があるか、それを特にお伺いしたいわけですが、四つ革命というものを一つ一つ見ましても、これはやはりそれなりに我々が考えてもなるほどと思うことが多いわけです。それは流通革命にしても、当然これから流通経路というものをもっともっと合理化していかなきゃいけないということも当然だし、人間革命という点、つまり農業をやるのには農民がもっともっと勉強して、いろいろな経済的な知識技術的な知識、あるいは科学的な知識というものを総合的に勉強するような人間にならないと、これからの農業発展し得ないということも私は確かだと思うのです。あるいはまた土地革命にしても、これは農水省もその方向でやっておられると思うのですけれども、やはりもっともっと大きくしていく。あの人の言っていることによると、「小さい地主・大きな小作」ということを言っておられるわけですけれども、それも私はある程度真実じゃないかと思うのです。あるいはまた技術革命、これは当然のことで、相当の技術をこれからは革命的なことをやっていかないというと農業世界農業に立ちおくれていくという意見。これは四つともかなりもっともじゃないかと思うのですけれども、それに対してどこに障害があるというふうに考えておられるか、そこのところはどうですか。
  13. 田中宏尚

    政府委員田中宏尚君) 四つ革命があるわけでございますけれども、その中での市場革命につきましては、例えば価格支持制度をやめて市場原理農産物価格形成をゆだねるということが大きな柱になっているわけでございますが、現在の日本農業状況からいいまして、例えば米につきましては食管というああいう大きな組織で価格形成なり流通というものを規制しておくことが国民のためにもなるわけでございまして、全く市場原理に任せるということにつきましては現状においては無理かと思っております。  それからもう一つ、そういう価格支持というものをやめまして市場原理にゆだねて価格が安くなると、自然と農地を手放して大規模農家農地が集中するのじゃないかという前提一つあるわけでございますけれども、残念ながらこれだけの高地価の中、しかも兼業化が進んでおりまして、農地についてはどうしても資産的土地保有といいますか、放したがらないという現状があるわけでございまして、叶さんが言っているような、価格支持制度をやめれば価格が低下し、したがって土地を持っていても経営が成り立たなくなって大きな経営に集中していくというような前提政策考えるということについては無理があるのじゃないかというふうに考えております。しかし、規模拡大ということは当省といたしましても大きな政策の柱でございまして、着実な努力はしていくわけ でございますけれども、ああいう一気に理想型までいくことについては限界があるのじゃないかという感じを持っているわけでございます。
  14. 山田譲

    山田譲君 それは一つ提言でございますから、一気に革命ができるというふうには思いませんけれども、かなり思い切った意見としてぜひともこれからも参考にしていっていただけたらいいというふうに思います。もちろん叶さんがおっしゃるように、そう簡単に書いてあることがそのまますぐに革命ができるというふうに思っておりませんけれども、一つ考え方として私は非常にためになる意見じゃないかというふうに思います。  それから、私はいつも思うのですけれども、産業政策の中における農業政策位置づけといいますか、そういうものがはっきりしていないのは問題じゃないかと思うのです。つまり高度経済成長は確かに工業中心といいますか、そういうことで非常に経済発展した。しかし、その陰にやはり農業というものがかなり犠牲になったというか、余り顧みられなかったということは事実だと思うのです。そのために今日このように非常に農民意気消沈をしてくるという結果になったわけで、私はやはりこれからは国の全体の産業政策の中で工業政策はこう、農業政策はこうという位置づけをきちんとする必要があるのじゃないかと思うのです。それがないとどうも農業というものは絶えず忘れ去られるというか、産業政策の中から顧みられなくなっていく。これはまずいのであって、そこのところをぜひともこれからはっきりさせる必要がある。そういうことの中から農民が、要するに、おれたちもひとつやろうというふうな元気が出てくるのじゃないかと思うのですけれども、その点どうですか。
  15. 田中宏尚

    政府委員田中宏尚君) 当然農業産業の一環でございまして、やはり産業としての将来の明るさがあるということでなければ農家というものも定着し得ないというのがございますので、基本的にはそういう方向で我々も考えているわけでございますけれども、ただ残念ながら農業の場合には単に経済的合理性だけで割り切れないものがございますので、そういうものにも配慮しながら産業としての合理性というものを追求してまいりたいというふうに考えております。
  16. 山田譲

    山田譲君 ぜひそれをやっていただきたいと私は思うのです。国全体の産業政策の中にそういう農業位置づけというものがどうも明確でないのじゃないか。確かにおっしゃるとおり、農業というものはただの産業とは違った部分がありますけれども、それはそれとして別な面から考えていく。やはりあくまでも農業というものは産業一つであるということでもって国全体の産業政策の中ではっきりと位置づけをしていく。この必要はこれからも出てくると思うのですけれども、農水省はぜひそこのところをこれからも頑張ってやっていただきたいと思います。  その次に、これは大臣にお願いしたい点なのですが、臨調答申なんかを読んでみますと、必ずしも明確に農業というものの性格を言っておりませんけれども、具体的に言っていることから逆に考えていきますと、どうも臨調考え方というのは農業について農業保護論といいますか、農業保護が厚過ぎるというふうな考え方、あるいはまた国際分業論といいますか、安い物は外国から買ってくりゃいいじゃないかという国際分業論的な考え方が私は底流として臨調答申の中にずっとあるのじゃないかと思います。そうでなければああいう結論が出てこないと、結論から逆に考えてそれは考えられるわけです。私は臨調はそういう考え方だと思うのだけれども、こういう考え方について農水省は一体どういうお考えでいらっしゃるか、それをまず大臣からお伺いしたいと思います。
  17. 佐藤守良

    国務大臣佐藤守良君) 山田先生にお答えします。  先ほども申し上げましたけれども、我が国農林水産業を取り巻く環境は大変厳しい状況にありますが、私たち臨調答申を尊重して農林水産業の健全な発展基本として効率的な行政推進努力してまいりたいと思っています。  農林水産業はもう御存じのとおりでございますが、食糧などの安定供給とかあるいは健全な地域社会維持国土の保全などの重要な役割を果たしております。また我が国の限られた国土資源や固有の自然条件の制約を考慮に入れる必要がありますので、単に今先生がおっしゃったような経済合理性だけでは律し切れないという点のあることも考えております。今後とも実はこれらの点を留意しながら、生産性向上を通じて農林水産業体質強化に努めてまいりたいと考えております。
  18. 山田譲

    山田譲君 臨調答申を尊重するということ、それは我々はもちろん問題にします。しかし、政府の立場としてそういうことは当然だろうと思いますけれども、あえて臨調と言わないまでも、一部財界あたりの中には、そういう農業保護語的な考え方を強く持っている人がいるのじゃないかと思うのです。そういうものに対して農水省は一体どういう姿勢でいかれるかどうか、そこをお伺いしたいと思います。
  19. 田中宏尚

    政府委員田中宏尚君) 基本的には、ただいま大臣から御答弁申し上げましたように、単に経済合理性だけで割り切れない産業という特殊性がございます。しかし、その中でやはり効率化すべき点は効率化しなければならないわけでございまして、そういう点においては臨調方向に沿って我々も行政を進めるわけでございますけれども、今先生が御指摘のように、財界等からいろいろな批判があるわけでございます。しかし、その中には我々のPR不足といいますか、そういう農業内部だけじゃなくて外部の人との会話不足という点もないわけじゃございませんので、ここのところを継続的に財界団体でございますとかあるいは消費者団体というところとの会話を深めて、農業特殊性なり重要性というものを今まで以上に認識していただくような努力をこれからも積み重ねていきたいというふうに考えているわけでございます。
  20. 山田譲

    山田譲君 三年くらい前にも私はこの問題でお尋ねしたことがあったけれども、やはり同じような答えなのです。当然そういうことで財界に対してもいろいろな農業重要性というものを説いていらっしゃると思うのですけれども、今までそういうことをやってこられて、それがかなり財界人たちに理解していただいたというふうに考えてよろしいですか。
  21. 田中宏尚

    政府委員田中宏尚君) まだいろいろと隔たりがあるわけでございますけれども、徐々に、特に食糧安定供給ということについての農政必要性なりにつきましては、従来と若干違ったニュアンスの理解というものが徐々に得られてきているのじゃないかというふうに考えております。
  22. 山田譲

    山田譲君 これもさっきの産業政策の中における農業位置づけといいますか、そういうものとも関係してくると思うのですけれども、財界人たちもいわゆる工業だとかそんなものだけを中心考えずに、やはり産業政策の中における農業というものの位置づけをよくよく知っていただきたいと思うわけです。ですから、農業保護論とか国際分業論というようなことを言う前に、とにかくそういったものをよく考えていただければ、そう簡単に農業保護だとか国際分業論でいけばいいのだということにはならないと思うのですけれども、そこら辺は農水省もこれからもっと頑張ってよく説得をしていただきたい、かように思います。  その次に、先ほどもちょっと大臣が触れられましたけれども、いわゆる食糧自給率向上自給力といいますか、私はそんなに違いはないと思うのだけれども、力といい率といい、これの向上についての国会決議があったことは御存じのとおりであります。ところが、自給率がそれじゃ日本が上がったかというとさっぱり自給率向上していない。穀物自給率について言えば三三%というふうなところであって、それがちっとも最近向上したというふうには思われないわけです。だから国会決議なるものが一体どのくらい農水省としてそれを尊重して、そして向上のために努力してこられたかどうか、どのくらいその効果が上がって いるかどうか、しかも数字がもっともそうなっていないのはどういうわけか、そこら辺をひとつ説明していただきたいと思うのです。
  23. 田中宏尚

    政府委員田中宏尚君) 国会の御決議をいただき、我々といたしましても総合的な食糧自給率維持向上ということが農政基本であるということで、過去からもいろいろな施策をやってきているわけでございます。例えば過剰なものから不足しているものへの生産を再編成するということで、農業生産の再編成ということを大きな仕事としてやってきておりますし、それから自給力を守るためには何といいましても優良農地を確保していくということで、五百五十万ヘクタールという農地面積を掲げまして農地の確保に努め、それと並行いたしまして土地改良長期計画というようなもので土地基盤整備等々を行ってきているわけでございます。  しかし、残念ながら、今先生から御指摘もありましたように、具体的な自給率という数字の面では、全体で七三%、穀物で言いますと三三%という形になっているわけでございますけれども、この背景には畜産物の需要が伸びてまいりまして、畜産物のえさになります濃厚飼料関係につきましては、トウモロコシであるとかマイロでありますとか大豆でありますとか、こういうものは御承知のとおり土地利用型農業の最たるものでございまして、日本のような狭い国土ではなかなか価格関係なり競争関係が立ち行かないということで、どうしても畜産物の需要がふえてまいりますと、外国からの濃厚飼料系統の輸入がふえるという中で三三%という自給率を従来と同じように守っているということは、ある意味ではそれなりの努力はしているわけでございます。畜産物の需要がふえるということは、こういう穀物自給率についてはいろいろと問題があるわけでございますけれども、やむを得ない点じゃないかというふうにも考えているわけでございます。
  24. 山田譲

    山田譲君 やむを得ないということになりますと、そうするとこの三三%というものはそう簡単に率は上がらない、またトウモロコシであるとか大豆であるとか、そういったものはやっぱり今より減ることはないのだというお考えですか。
  25. 田中宏尚

    政府委員田中宏尚君) 先ほどお話ししました農業の再編成ということで、米の生産調整でも大きな転作の先の作物といたしまして大豆なりそれから小麦なりというものをやっているわけでございますけれども、やはりこれだけの土地面積でございますので、価格関係においてどうしても立ち行かないことは残念ながら認めざるを得ない点でございますので、こういうものについての輸入が今後もある程度ふえるということは覚悟せざるを得ないと思っております。
  26. 山田譲

    山田譲君 そうすると、同じことを重ねて聞いて恐縮ですけれども、三三%の自給率は当分変わらない、あるいはまたそれを何%にするというような目標も農水省としてはお持ちでないということになりますか。
  27. 田中宏尚

    政府委員田中宏尚君) さきに策定しております六十五年の見通しでは、三三%の自給率というものがむしろ残念ながら若干下がるという試算になっているわけでございます。
  28. 山田譲

    山田譲君 そうすると、非常に変な話ですけれども、国会決議自給力向上というのはどういうふうに農水省考えていらっしゃるかどうか。
  29. 田中宏尚

    政府委員田中宏尚君) あくまでも総合的な自給力を守るという見地に基本的に立っているわけでございますけれども、その際には、国内で自給可能なものはできるだけ国内で自給する。例えば米につきましては一〇〇%国内自給を達成させる。それから牛乳でございますとか果樹でありますとか野菜、こういうものにつきましてもかなり高い自給率というものをねらっているわけでございますけれども、先ほど来話に出ております飼料穀物につきましては、こういう土地利用型という制約からいいまして、具体的な率の向上ということは残念ながら将来の見通しとしてもそう明るくないということは言わざるを得ないのじゃないかと思っております。
  30. 山田譲

    山田譲君 やっぱりこの穀物自給率の三三%というのは余りにも諸外国に比較して低過ぎる。これは非常に大きな問題で、これをまず上げなきゃいけないというのは国会決議の内容じゃなかったかと思うのです。それは野菜がいいなんていうことは、あるいは卵が一〇〇%近くあるなんということは、この前の国会決議のころと事情はそう変わってはいないのであって、問題はあくまでも穀物自給率だと思うのです。それを上げろというのが国会決議の趣旨じゃなかったかと私は思うのです。ところが、それに対していろいろなことを言っておられますけれども、結果の数字としてはちっとも上がってない。今おっしゃったことを聞いていますと、将来むしろ下がるのじゃないかということになりますと、これはどうしても国会決議農水省としては尊重しておられないというふうに言わざるを得ないのですけれども、その点どうですか。
  31. 田中宏尚

    政府委員田中宏尚君) 自給率自給力がどう違うかという議論は過去もあったわけでございます。我々の認識といたしましては、自給力という国会決議につきましてはその明確な定義というものは必ずしもございませんけれども、国民の食生活にとりまして必要な基本食糧をまず国内で生産する、そういう力というものを守っていく、そのためには土地なり水等の資源、あるいは土地利用、それから農業の担い手というものを総合的にとらまえました国内農業の潜在的な生産力、こういうものの基底部分をきちんと守っていくというふうに心得ているわけでございます。
  32. 山田譲

    山田譲君 ただ自給力を守っていくということじゃなくて、向上ということはそれをさらにふやしていくという意味です。だから、ただこの前の国会決議のときの自給率三三%、あるいは官房長自給率じゃない、力だとおっしゃるけれども、それにしてもあのときの当時の自給力が余りにも低い、だからこれを上げていこうということであって、あれをただ守ろうというだけだったらば何もあんな決議は要らないじゃないか、私はそう思うのだけれども、どうですか。
  33. 田中宏尚

    政府委員田中宏尚君) 自給力を守るという点では、ただいまお話ししましたように潜在的な自給力ということでございまして、そのためには例えば土地というものの生産力を向上させる、あるいは水の利用向上させるということもこれは総合的な力の向上というふうにつながるわけでございまして、そういう点で何とか自給力維持なり向上というものを常日ごろ図ってまいりたいというふうに考えているわけでございます。
  34. 山田譲

    山田譲君 そうしますと、官房長が言われるのは、国会決議当時に比べたならば自給力はずっと上がっているというふうに現状認識なさるわけですか。
  35. 田中宏尚

    政府委員田中宏尚君) 自給率という点では動いておりませんけれども、その背景にある生産力という点では土地改良長期計画等に基づいて基盤整備というものも年々進展してきておりまして、そういう意味における潜在的な力というものは徐々にではございますけれども上がってきているというふうに考えているわけでございます。
  36. 山田譲

    山田譲君 余りこの問題で議論していくとほかの時間がなくなりますけれども、私はやはり自給率が三三%というのはどう考えても低い、外国に比べても。一部オランダなんかかなり低いようですけれども、その他の先進諸国は皆五〇%、六〇%以上になっているわけです。そういうものと比較して三三%、余りにも低いということでこれを上げていかなきゃならないというのが普通の国民の考え方だろうと思うのです。あなたが言うように、ただ潜在能力を向上させればそれでいいのだというのじゃなくて、穀物自給率が三三%というのは余りにも低過ぎる、これを上げるための努力をこういう格好でやっていきますということも言わなきゃ国民は納得できないと思います。我々も普通話をするときには三三%は低過ぎる、これを何とかして上げなきゃ先進国並みにならないし、あるいはまた食糧安保という点から考えてもどうしても問題があるということになるのであって、 自給率は、三三%は多少将来低くなってもしようがない、自給力の方は上がっているのだ、こういうことを言っても数字になって示されなければいけないのじゃないかという感じがしますけれども、その点どうですか。
  37. 田中宏尚

    政府委員田中宏尚君) 同じ繰り返しになりますけれども、自給率という形で具体的な率を上げていくということについては、土地という制約のある日本農業の中、それからしかも畜産物の需要がふえてくるという需給構造の中でなかなか難しいわけでございますので、あくまでも総合的な力というものをどうやって蓄え、ふやしていくかということで農政基本というものを組んでまいりたいと考えております。
  38. 山田譲

    山田譲君 この問題はいっぱいまだ言いたいことあるのですけれども、とにかく結論的に私がお願いしたいのは、やはり自給率は下がるんだ、下がってもしようがないというふうにあきらめないで、自給率もひとつ上げるようにしてもらいたいと思うのです。どう考えたってほかの国に比べたらこれは致命的に低いわけでありますから、これも何とかして上げていく。もちろん自給力向上させなきゃならないでしょうけれども、それと同時に、具体的な三三%の数字をもっともっと上げていくという努力をぜひともやっていただきたいと思うのですが、大臣、最後にどうですか。
  39. 佐藤守良

    国務大臣佐藤守良君) 今の山田先生のおっしゃるのはよくわかるのですが、私は聞いていまして、官房長の言ったことと別な角度で言いますと、実は自給力を図る上に大切なことは、例えば食生活の変化等で非常に今の若い人は肉類をよく食べている、それは穀物がふえるということですが、今農水省考えておりますのは、主食とその他の食べ物と完全に分けて考えて、そして先ほどちょっと言いましたように、日本農業というのは規模拡大がなかなかうまくいかない、そんなことももちまして採算の合いにくいところもあるわけです。  したがって、実は今、官房長がちょっと言いにくくて言わなかったと思うのですが、自給力を高めるのにはお金が必要なのです。例えば主食以外、主食もそうですが、その他のものも大変日本農業の宿命的な経営規模等もございましてコストが高い。自給力を高めるためには当然財政負担が要ります。現段階におきましてはその財政負担も難しい。そんなことを含みましてなかなか私は、おっしゃるのもよくわかるのですが、自給力を高めるのは難しい。高める方法は、実は財政負担があればかなり高まると思いますが、その辺が非常にこういう厳しい財政でございますので難しいというようなことで、官房長が苦しい答弁をしているという点は、御理解願いたいと思うわけでございます。よろしくお願いします。
  40. 山田譲

    山田譲君 わかりました。苦しい答弁だということで、よくわかりました。苦しくないような顔をしてやっていたものだから、これは大変だと思ったけれども、大臣から苦しいと言われてやっと納得しました。苦しいということはやっぱり苦しいけれども頑張ろうということだと思うので、そこのところをひとつ忘れないでもらいたいと思うのです。  その次に、自給率の問題に関係するのですが、食糧の輸入の問題です。これはアメリカあるいは豪州というようなところにつきましては、ある程度決着を見ているというふうに考えられます。これについてはまだまだ問題がありますが、それはそれとして、最近いろいろ問題になっておりますASEANからの市場開放の声が非常に強い。これは勘ぐりかどうか知りませんけれども、一部の人に言わせれば、ASEAN諸国には日本の商社がみんな行って買い占めている、それを日本にまた輸入するために商社がやっているのだというふうなことを言う人もあるくらいです。それはそれとして、ASEAN諸国からの市場開放という問題は今どのようになっているか、まずそれをお伺いしたいと思うのです。
  41. 後藤康夫

    政府委員(後藤康夫君) ことしの夏以来、タイを初めといたしますASEAN諸国から農林水産物等の関税の引き下げ、あるいはまた輸入の拡大といったような要求が強く出されておるわけでございます。  農林水産省といたしましては、我が国の置かれております国際的な立場というようなことを踏まえて国内の農林水産業との調整を図りながら、今までの我が国全体としての市場開放努力の中でできるだけの対応はいたしてまいったわけでございますけれども、現在開発途上国から要請されているということで世上言われておりますような品目につきましては、国内の農林水産業現状からいたしますといずれも対応の難しいものでございます。しかも、ことしの四月に対外経済対策を決めたばかりということもございまして、非常に軽々に一年のうちに何度もこういった市場開放措置を繰り返すということになりますと農林漁業者の農林水産政策に対する信頼を揺るがせるというようなことにもなりかねないという心配もあるわけでございます。大臣からも、国内の農林水産業を犠牲にしないようにこれは慎重に対応する必要があるという御指示もいただいておりますので、私どもその方針に沿って慎重に対応しておる状況でございまして、現在まだ検討中という状況が継続をいたしておるわけでございます。
  42. 山田譲

    山田譲君 そのASEANからの市場開放を言われている品目は大体どんなものがあるのですか。
  43. 後藤康夫

    政府委員(後藤康夫君) これは国によりまして非常に産品が異なりますので国によりましていろいろございますけれども、先生も新聞紙上等でごらんになっておられますように、骨なしの鳥肉の関税を引き下げてほしいというような話でございますとか、あるいはまた広葉樹の合板についての関税の問題とかいうようなものがいろいろ出ているわけでございます。
  44. 山田譲

    山田譲君 これはこれからの問題としてまだまだこういう開放しろという意見が強く出てくると思いますけれども、ぜひ日本農業を守るという立場で、さっきから言っておられるように慎重にそこのところは対処していっていただきたい、かように考えます。  その次に、土地の流動化の問題でありますけれども、土地の流動化についてはどの程度進んでいるかという問題であります。私もあちこち歩きまして気がついた点なのですが、特に山間僻地のようなところに多いのですけれども、畑地があって、先祖が開拓して畑地をつくった、ところがそういうところは非常に効率が悪い、また貸したくっても借り手もないし売りたくっても買い手かないという状況で、これ以上耕すのも能率が悪いというようなことで荒れ果てている畑が非情に多く見受けられるわけです。私も想像以上に多いように思うのですが、その辺について一体どういうふうに農水省としては考えられるか。土地の流動化がどうなっているかということと、今のような問題をどう考えられるか、その点をお伺いしたいと思います。
  45. 井上喜一

    政府委員(井上喜一君) まず、農地の流勧化の進捗状況から申し上げますと、所有権を移転するという形の流動化でございますけれども、昭和五十五年が四万ヘクタールありましたのが五十八年では三万八千ヘクタールということで若干減りつつございます。それから二つ目の、農地法によります賃借権の設定という形での流動化でございますが、これは昭和五十五年が一万ヘクタールが五十八年には六千ヘクタールと、これも減少しているわけでございます。これらに反しまして、農用地利用増進法によります利用権の設定は、昭和五十五年が二万七千ヘクタール、これが五十八年には四万へクタールと増加をしてきているわけでございまして、今申し上げました所有権の移転、それから農地法による賃借権の設定、農用地利用増進法によります利用権の設定の三つを合計いたしますと、昭和五十五年が七万八千ヘクタール、これが五十八年に八万四千ヘクタールとなっておりまして、全体としては着実な増加をしてきていると申し上げていいかと思います。  それから、流動化の前提といいますか前段唯でよく見られます農作業の受委託でございますが、これは水稲について見ましてもかなりふえてきているのじゃないかと思います。水稲の全作業を委託している面積が五十七年で六万八千ヘクタールということになっておりますので、これも含めて考えますと相当の流動化が進んできていると思います。これも大まかに見ますと、借り手の方がやはり規模の大きい農家、それから出し手の方、貸す方は規模の小さい農家ということが見られるわけでございます。これは水稲の受委託につきましても同様な傾向が見られております。  それから、流動化の進み方でございますけれども、これは全国一律に同じような方式で進んでいるというよりも地域の実態に即しまして、ただいま申し上げました農作業から土地を貸すというような形に進みます場合とか、あるいは小面積ずつだんだん大きくしていくといったような形の流動化が見られるわけでございます。  それから、第二の御質問の遊休農地の問題でございますけれども、確かに一つの頭の痛い問題でございますが、私どもといたしましては、基本的には集落等小地域を基礎にいたしましたそういう中で十分話し合いをいたしまして、農業を継続する意欲、能力のあります農家に貸していくということが必要かと思います。そういう話し合いが基本だろうと思うわけでございます。  ただ全国の状況を見ておりますと、その場合必要でありますのは、基盤整備がある程度進んだところにつきましてはそういう荒廃地の利用ということが出てきているわけでございますけれども、やはりそういった小土地改良を含めました土地改良というものもあわせて実施をしていく必要があろうかと思います。
  46. 山田譲

    山田譲君 もっとこの問題でいろいろ質問したいのですが、ほかにちょっとまだ質問することがあるものですから、土地の問題はそのくらいにしておきます。  次に、やや具体的な話になりますけれども、林業の問題でこの対策が非常に重要な問題だと思うのですけれども、特に緑を大事にするということで最近特にそういった国民の気持ちも強まっているわけです。そういう中で営林局を減らそうというふうな案がどうもあるようであります。法律にも附則でそれを言っているからと。あれは必ずしも減らせとは言っていません。けれども、大体減らせと読めるような表現になっている。その方針に従ってということでしょうか、営林局を減らす問題が出ているようです。聞くところによると前橋の営林局もその対象になっているというようなことを言っておられますけれども、これは非常に大きな問題であろう。この間の土曜日、住民が千人以上集まりまして、絶対に営林局をやめてもらっちゃ困るという集まりをやったわけです。そのときには自民党も何も皆さん全部出ていただきまして、中曽根総理の秘書まで出てくれたわけです。秘書が出たということは御本人が出たと同じことですから、だから中曽根総理さえ営林局は前橋はやめちゃいけない、こう言っているものをあえてやめようということを考えておられるかどうか、そこら辺どの程度進んでいるのですか。中曽根総理の言うことですからどうぞ聞いてもらいたいと思うのです。
  47. 田中恒寿

    政府委員田中恒寿君) 営林局一局の統廃合につきましては、先生からお話のありましたようにすでに五十五年来のいろいろな経緯がございまして、五十五年には農林省設置法の中で規定をされておりますし、さらに本年一月にも行政改革の当面の実施方針の中にこれも決められておるところでございます。またさらに、本年六月に農林水産省として策定をいたしました国有林野事業の改善に関する計画の中にもみずからの計画として定めたというふうな経緯がございまして、私どもはこのことにつきましては大変厳しい道筋ではございますけれども、国有林野の経営の健全性を確立するいわゆる組織機構の簡素化、合理化のためにはこれは避けて通れない道だと考えて現在作業をしておるところでございます。  先生から具体的なお話も実はございましたが、全国に十あります営林局につきましていろいろな指標から作業を現在進めておるところでございます。現在までのところの内容を申し上げますと、前橋営林局と東京営林局とを統合する一つ考え方、いわばこれは関東地方中心になりますので関東営林局とでも申しましょうか、そういう案が一つと、それからもう一つは名古屋営林局と長野営林局を統合いたしまして、これは中部地方になりますので例えば中部営林局とでも申しましょうか、その二つの案の段階にまで事務的な作業を詰めておりまして、今後これは予算編成過程の中で関係各省庁と十分打ち合わせ連絡いたしまして、予算編成の過程の中で固めてまいりたいというふうに考えておるところでございます。  現在の作業の状況でございます。
  48. 山田譲

    山田譲君 余りこれは詳しくやりませんけれども、もう中曽根総理大臣でさえ、とにかく残してくれ、残せということを言っているのですから、ぜひ総理大臣の言うことは聞いていただきたい、こういうふうに思うのです。  それからもう一つ、何か東京と前橋を一緒にして東京に置くとかいう話ですが、見渡すところ山も林も何もないようなところに営林局を置いたってこれは意味がない。だから、もしそういうことをやるのだったならば、それは前橋、ちゃんとすぐそばに山があるようなところに営林局を持っていってもらいたい、こういうふうに思います。  これについては何か関連質問があるようでありますから。
  49. 村沢牧

    ○村沢牧君 ちょっと関連しまして。  私は去る十一月八日の当委員会で営林局廃止の基準を申し上げまして、こうすべきではないか、それに対して角道前林野庁長官は、御指摘のとおりのことは「重要な要素であると考えております。」という答弁があった。その後、営林局統廃合について、私は林野庁の何人かの幹部に過ちのない判断をするように要請をし、意見も聞いた。そうした中で、ある部長は、一局を廃止しなければならないけれども、一局廃止に当たっては転勤赴任する職員の子供の教育のことも考えなくてはならない、また木材の流通販売シェアも重視しなければならない、こういうふうに言っているわけです。  そこで、長官にお伺いいたしますが、職員の子供の教育のためにも教育施設の多くある大都市に営林局を置いた方がいいという考え方は、営林局の果たすべき役割を忘れ、自分たちの都合だけ考えた、まさに幹部職員の御都合主義のなせるわざであると私は指摘をしますが、長官はどういうふうにお考えですか。  次に、また大都市に営林局を置けば木材の販売シェアがどのように向上するというのですか。現在でも例えば木曽のヒノキは長野県だけで消費しているのではない。約半分は他県、大都市流通しているのです。大都市に営林局を置いて国有林材を集中させ、販売シェアを拡大しようとすることになれば、国有林に頼って地場産業発展させ、そして地域の発展のために今までやっている地域の企業は一体成り立たなくなってしまうのじゃないか。営林局の果たすべき役割というのは、大都市に国有林材を集めることではなくて、地域社会と密接なつながりを保ちながら木材の生産機能、保育機能を初め、地元にサービスを提供することが重大な使命であると思いますが、長官の見解を求めたい。
  50. 田中恒寿

    政府委員田中恒寿君) 国有林は御案内のとおり現業組織でございますので、そこで行われます造林、生産、販売等は、大方は営林署を通じて行われておりまして、その営林署を管理監督するという立場から営林局がまた置かれる。また営林局はその性格上地方公共団体との連絡あるいは各種団体等との連絡等も主要な業務として、それぞれ今日十置かれました営林局がいろいろ役割を果たしてきてまいったわけでございますが、やはりその中の一つの任務と申しますか役割といたしまして、非常に転勤の多い私どもの職場でございますので、営林局所在地等に子弟寮を置きましてそういう通学の便宜等を図っていることもござい ます。  また販売につきましても、現在大変な不況にございます林産、林業界のために、いろいろ加工度を高めること、それからそういう需要を積極的に開発することが重要な任務でございまして、特にそういう任務が重要な営林局、他の営林局に比してそういう重大な任務を持っておるという営林局もございます。しかし、どの業務が一番重い軽いということでなく、やはりいろいろ事業実行を管理監督する立場、関係団体との連絡の任務、子弟寮等の管理、販売努力その他これは総合的に判断、勘案をしなければならないと考えておりまして、すべてそういうふうな慎重な総合的な判断の中で考えていくべきものと考えております。
  51. 村沢牧

    ○村沢牧君 今長官は職員の子供のことも考えなければいけない、それは幹部職員として考えるのは当然でしょう。しかし、あなたたちの決定の方法が大都市に決まったとするならば、これは職員の子供の教育のために決めたと言われても仕方ないのです。幹部職員は全国を移動しているじゃないですか。まず考えることは、国有林をどういうふうに管理するか、そのことが主眼であって、職員の子供の教育のために考える必要はない。必要ないということは言い過ぎかもしれぬけれども、まず主眼は何か、そういうことから関連をして、営林局は必ずしも大都市に置かなければならないということはないと思います。これはどうなのですか。
  52. 田中恒寿

    政府委員田中恒寿君) それぞれの営林局は大変長い沿革がございます。既にそこに存在をしていろいろな役割を果たしておるということでございますので、そういう歴史的と申しますか沿革的な事情を十分判断をし、今後の統廃合を考えるに当たりましては、現在果たしておるそういう役割が地元の方々に対しまして損なわれることがないようなこと、みずからだけの合理性の追求ではなくて、そういう地元が従来受けております便益とかサービスというものも十分考えなければならないし、今先生からお話ありましたようなことなども十分勘案の中に入れまして最終的な判断をしなければならないものというふうに考えております。
  53. 村沢牧

    ○村沢牧君 必ずしも大都市に営林局を置かなければならないという理由はない、そのことについてはどうなのですか。
  54. 田中恒寿

    政府委員田中恒寿君) そういう因子を特に大きく考えるということはないと思っております。
  55. 村沢牧

    ○村沢牧君 林野庁は、先ほど長官の答弁のように、一局削減の対象を十営林局のうち関東、中部にある四つの局に絞った。私は去る委員会でいろいろな因子を挙げましたけれども、しかしその中で林野庁が与党自民党の林政調査会に出した要素としては、営林署数、職員数、管理面積、伐採面積、業務収入などを重視し、それに地域的条件を勘案して引き算していくとこうなる、こういうことなのです。そうだとするならば、そのような要素、手段を適用すれば、四局のうちどの局を削減するかということはおのずから答えが出てくるじゃないか。長官や大臣がそんなに頭を悩ます問題じゃない。どうなのですか。
  56. 田中恒寿

    政府委員田中恒寿君) 数量化できるいろいろな因子もございますし、なかなかまた数量化しがたい、しかも大変重要な因子もあると思いまして、まず明確な指標化できるものから選んだ場合にはこのような順序づけができる。しかし、機械的にそういう順序づけによって一局を選び出すというのではなくて、それも念頭に置きながら、いろいろと今お話のありました諸般の因子を総合的に勘案しなければならない。まずは全くのそういう順序づけもなされないままに総合的というふうにはまいりませんので、数量化し得るものについて数項目をお示しをしたということでございます。
  57. 村沢牧

    ○村沢牧君 与党にどういう資料を提出するかは政府と与党の関係であり、私は言いませんけれども、少なくとも与党に出したこの調査会の資料には、五つの因子をもって四局に絞ります、あるいはまた、関東営林局、中部営林局(仮称)を設けたいと思いますとあります。あとまただんだん次から次へと因子が与党に出てくるのですか。そんなことをやっているのですか。言うならば、この因子でもって十営林局のうち四局に絞った、そうなれば四営林局のうちこの因子でもって絞れば答えが出てくるのじゃないですか。どうなのですか。
  58. 田中恒寿

    政府委員田中恒寿君) これから先の作業になりますと、単に四つまでに絞る過程で用いました因子をそのまま使うということにはならないのではないか。これから先はまさに総合的な判断、歴史的な背景、任務、沿革その他すべてをそういう数量化できない因子も全部入れましてこれからの作業にかかる。ここまで選びました段階におきましては特にどの局が抜きん出ているというようなことなく、四つそろったという段階で考えております。
  59. 村沢牧

    ○村沢牧君 そんな答弁では、今お話がありましたように、当該関係地区からは我が営林局を残してくださいというものすごい運動、陳情があるでしょう。山田議員からは前橋営林局と具体的に名前を指摘して要請があった。しかし、それにこたえていくためには長官は営林局の性格と使命を純粋に判断して大義名分の立った結論を出さなければいけない。総合的に判断して、その総合的なものは何だ、だれに言われてもこういう形で国有林の使命に照らしてやります、その自信を持たなきゃならぬ。そこで、大義名分の立った判断というのは何か。一つには営林局の使命は国有林の生産機能、公益機能、地元サービスの提供を発揮することである。これが重要であって、製品の販売が主たる役割じゃない。あなたたちが与党に出した資料を見たって国有林の使命がここにうたってあるじゃないか。  次は、林野庁は五項目の主要な指標を示したが、大きな局を小さい局に吸収統合させることは絶対に行ってはならない。対象になった四局のうち二つの局がこの指標での一、二を争っている、他の二つの局ははるかに低い、この現実を正しく判断してくれ。長官、水が川上に流れるような判断をしてはならない。この判断を誤ることがあるならば私も重大な決意がありますから、そのことを申し上げて長官の決意を伺いたい。
  60. 田中恒寿

    政府委員田中恒寿君) これまで諸先生方を含めまして大変広範な各層の方々からこの問題につきましては非常に真剣な御意見を連日のようにお聞きをいたしております。ただいま先生からのお話がございまして、私ども本当に全力を尽くしましてこれまで寄せられましたそういう御意見を踏まえまして国有林経営の将来のため、あるいは地元の方々のこれまでの寄せられましたそういう御期待にもこたえ得るような案を脂汗を出して真剣、慎重につくり上げてまいりたいと思っております。
  61. 村沢牧

    ○村沢牧君 長官、私が今まで指摘したような指標、申し上げたことが間違っているというふうに思いますか、理解していただけますか。
  62. 田中恒寿

    政府委員田中恒寿君) 現業といたしましての大事な因子と考えております。
  63. 村沢牧

    ○村沢牧君 そこで、この問題について大臣に最後にお伺いしたいのですが、私が今まで申し上げたように営林局は国有林経営の現業官庁だ、一般の行政官庁とは異なるのです。したがって、現業組織はその性格を生かしてそれにふさわしい配置をすべきなのだ。組織機構の簡素化やあるいは合理化といっても大都市にだけ機関を集中させることが簡素化、合理化の目的ではないと思うのです。大臣は営林局の果たすべき使命を率直に受けとめて将来に悔いのないような自信のある結論を出してもらいたい。私が今まで指摘したことも含めて大臣の見解と決意を伺いたい。
  64. 佐藤守良

    国務大臣佐藤守良君) 村沢先生にお答えしますその前に、山田先生の質問に中曽根総理の話が出てまいりましたけれども、私は中曽根内閣の農林水産大臣でございますが、総理から一言もその指示を受けたことはございません。私の責任において公平にできるだけやりたいと思っています。よろしくお願いいたします。  それから村沢先生今おっしゃるとおり、私も実は大臣になりまして三十数日目でございますが、営林局問題が一番大きな問題で、皆さんから陳情を受けてまいりました。私はこの十局はよくできておる、各営林局ともその使命と特徴がある、こんな感じがしておりまして、一局削減につきまして若干疑念を持っておったわけですが、結論から言えば、やむを得ないということで今林野庁長官がお答えしましたが、やや日本語の不十分なところがあるかと思いますが、まじめに事務的にこれに取り組んでおる、営林局の使命を十分に理解して取り組んでおる、このように御理解願いたいと思うわけでございます。
  65. 山田譲

    山田譲君 次に、ちょっと角度を変えまして精糖の問題、砂糖について簡単でいいですからお答えいただきたいと思うのです。  精糖につきましては、御承知のとおり、産構法上の構造改善基本計画というものをつくることになっているわけですけれども、この計画の進捗状況はどうなっているか、お伺いしたいと思うのです。
  66. 塚田実

    政府委員(塚田実君) お答えいたします。  御案内のように、特定産業構造改善臨時措置法に基づきまして業種指定を受けました砂糖の精製業でございますけれども、昨年の十月一日に構造改善基本計画が告示されまして、昭和六十一年九月三十日までに年間設備能力の二六%に相当いたします百万トンの設備処理を行うこととしております。そこで、この構造改善の基本計画が告示されてから一年余りもう既に経過しておるわけでございますけれども、現在廃棄された設備は年間の能力にいたしまして約六十万トンでございます。ですから、六割方進捗しているというふうに御理解いただきたいと思います。
  67. 山田譲

    山田譲君 その六割ですけれども、これは地域別に大分差があるのじゃないかと思うのですが、関東、関西、九州と分けてそれぞれ教えていただけませんか。
  68. 塚田実

    政府委員(塚田実君) 確かに地域別にかなりな差がございまして、現在までの設備処理のほとんどは、ごく一部は九州ございますけれども、ほとんどが関東地域でございます。
  69. 山田譲

    山田譲君 関西は何%ぐらいになっていますか。
  70. 塚田実

    政府委員(塚田実君) 関西はむしろこれからの課題であるというふうに御理解いただきたいと思いますが、関東地域が早く進められている要因といたしましては、関東地域は他の地域に比べまして設備過剰の度合いが大きかったというようなこと、これまでの設備処理された工場は老朽工場が多くてかつ生産が低かったことなどによるものでございまして、私どもはこれから関西の地域について、この構造改善基本計画でお示ししている方針に従いまして業界を指導していくという立場でございます。
  71. 山田譲

    山田譲君 それから交錯輸送ですね、九州から関西へ行ったり、関西からまた九州へ行く、あるいは関東と、交錯輸送。これを直すということも一つのねらいだと思うのですけれども、これはどの程度是正されていますか。
  72. 塚田実

    政府委員(塚田実君) 御指摘のように、従来から交錯輸送というのが砂糖業界で行われておることはもう私もよく承知しております。そこで産構法の基本計画におきましては、交錯輸送というものを極力少なくするようにということで、生産の受委託なり販売の共同化を積極的に行うように盛り込んでいるわけでございます。その後、この基本計画が告示されましてから設備の処理が進む中で、先ほど申し上げました交錯輸送を減らすべく受委託が活発に行われてきております。まだ私どもは十分だと思っておりませんけれども、かなり進んできているというふうに御理解いただければと思っております。
  73. 山田譲

    山田譲君 さっき関西が非常におくれているというその理由もちょっとお話がありました。それで、そういう認識のもとにこれから関西の精糖業界に対してどういう指導を具体的にやっていかれるか、それをお伺いして私の質問を終わりたいと思います。
  74. 塚田実

    政府委員(塚田実君) 御案内のように、構造改善の基本計画におきましては、過剰設備の処理は業界が自主的に行われるものでございますけれども、行政の立場にいる私どもとしましても、その過剰設備の処理または休止でございますが、そういうことについて指導してまいりたいと思います。それからまた、御指摘もありました交錯輸送を減らすべく受委託の生産、あるいは共同で販売するとか、そういうようなことも含めまして業界を指導してまいりたいと考えております。
  75. 山田譲

    山田譲君 業者の中にはどうも余り怠慢でちゃんとやっていないというようなところもあるのじゃないかと思うのですけれども、特に関西地区に対して、非常におくれているようでありますから、単なる指導といっても具体的にちゃんとそれぞれの企業を呼んではっきり進めていくような努力をぜひともやっていただきたい、こういうふうにお願いをしまして、私の質問を終わります。
  76. 村沢牧

    ○村沢牧君 私は地域問題について参考人を呼んでありますので、主としてこれから参考人に質問したいと思いますが、その前に大臣に一点だけ伺っておきます。  過般の委員会で消費者米価について私は質問いたしましたが、その際大臣は、食管法を堅持して慎重に考えたい、「消費者米価の値上げについては現段階では考えておりません」、こういう御答弁だったわけであります。しかし、その後マスコミの報道を見ますると、予算編成に関連をして消費者米価引き上げが伝えられておりますが、大臣考え方は変わったのですか、時期が過ぎたから。
  77. 佐藤守良

    国務大臣佐藤守良君) 今先生の御質問で、私も新聞記事を実は拝見いたしましたが、そのとき答弁したと同じで、現在何も聞いておりませんし、その答えと同じ状況でございます。
  78. 村沢牧

    ○村沢牧君 そうすると、大蔵省は五%上げなさいと言う、農林水産省は、いや三%だ三・五%だというようなことで話が進んでいっているようですが、大臣はそういうことありませんね。
  79. 佐藤守良

    国務大臣佐藤守良君) ございません。私も驚いておるわけです。
  80. 村沢牧

    ○村沢牧君 そうですか。
  81. 佐藤守良

    国務大臣佐藤守良君) はい。
  82. 村沢牧

    ○村沢牧君 官房長もないですな。
  83. 田中宏尚

    政府委員田中宏尚君) いろいろと予算編成が近づいてまいりまして、歳入でありますとか、そういうものを中心にして議論があることは確かでございますが、現段階ではまだ何も決めておりませんし、大臣とまだ御相談はいたしておりません。
  84. 村沢牧

    ○村沢牧君 それでは参考人に主としてお伺いいたしますが、私がお伺いをすることは、高速道路で使用している路面凍結防止剤の農作物に対する被害とその防止対策についてであります。  昭和五十一年ごろから中央道西宮線沿いの果樹園のリンゴに成育障害があらわれ始め、被害者の要請によって長野県が詳細な調査を進めてきましたが、中央道に近い場所ほど頂芽が枯死して着果量が少なく、また着果したものでも落果や枝ずれ果が多く、したがって減収、品質低下を来しておることが判明いたしました。日本社会党も調査団を編成し、私も加わって今まで数回現地調査を行っておりますけれども、障害の原因は土壌、病虫害によるものではなく、しかも中央道に近い場所ほど被害が大きいことを見れば、中央道に散布した凍結防止剤の塩化カルシウムに起因するものであることが明らかでありますが、道路公団はどのように判断しますか。
  85. 北村照喜

    参考人北村照喜君) 北村でございます。  お答えいたします。  高速道路の冬季の積雪及び凍結につきまして、高速道路を安全に通行していただくために機械による除雪並びに凍結防止をいたすために塩化ナトリウム等の塩化物を我々は散布いたしまして、交通の安全確保に努めているわけでございます。  ただいま先生の御質問に対しまして簡単にお答え申し上げますと、長野県の松川地区におきまして高速道路沿道の果樹の枝の先枯れ現象が発生いたしまして、凍結防止剤が原因ではないかという申し出が地元の皆様方からあったわけでございます。我々はこの御要望につきまして、今年度から三カ年計画をいたしまして長野県へ現在調査依頼中でございまして、もう実施中ではございますけれども、果樹の先枯れ現象に凍結防止剤が起因しているかどうかまだ明確でございませんので、公団といたしましてはこの調査結果を待ちまして判断をさしていただきたいというふうに考えております。調査結果は、三年計画でございますので六十一年度には出る予定でございます。  以上でございます。
  86. 村沢牧

    ○村沢牧君 何が原因であるかは今までの調査では断言できないというような発言だったわけでありますが、東北自動車道の福島県の例もあるじゃないですか。頂芽の枯死率は福島県よりも長野県の方が大きい。よって、中央道沿線の農作物被害は塩カルが原因である。このことを否定ができますか。
  87. 北村照喜

    参考人北村照喜君) お答えいたします。  一般的に我々普通の状態で凍結防止剤を散布いたします。といいますのは、建設省その他で決めておられます防止剤の散布量といいますか、そういうものが決定されておるわけでございますけれども、そういう普通の状態での散布結果では余り影響はないのではないかというのが現状のあれでございます。ただ、降雪量が多かったり非常に寒さが長く続いたりいたしますときには、塩化物等をまく量、回数というものが多うございますので、そういうときにはどういう影響があるかということがまだ判明いたしておりませんので、現在調査をいたしておるというのが現状でございます。
  88. 村沢牧

    ○村沢牧君 調査結果は三年もたたなきゃわからない。その間にまたどんどんまいていくでしょう。しかし、塩カルの被害であるということは否定をしますか、今までの経験に照らして。今まで福島県の経験があるのです。
  89. 北村照喜

    参考人北村照喜君) 完全に否定することはこれはできないわけでございます。したがいまして、過去の福島の例その他も勘案しながら調査をいたしているというのが現状でございます。
  90. 村沢牧

    ○村沢牧君 今お話がありましたように、凍結防止剤を散布するには、散布基準が日本道路協会等で示されておる基準に照らして、また例年に比較して塩カルの散布回数、散布量はどうであったのか、そのことを明らかにしてください。私も時間がありませんから簡潔で結構です。
  91. 北村照喜

    参考人北村照喜君) 五十八年度特に豪雪という事態が参りまして、五十八年度中に、十二月以降でございますけれども、散布いたしました量は例年の一・五倍ほどでございまして、特にこの伊那谷の地区におきましてもやはり例年より約五割増しの散布量でございます。
  92. 村沢牧

    ○村沢牧君 その散布日時、量、詳細については後ほど文書で委員長のところへ提出していただけますか。
  93. 北修二

    委員長北修二君) いかがですか。
  94. 北村照喜

    参考人北村照喜君) はい、お出しいたします。
  95. 村沢牧

    ○村沢牧君 今説明があったように、ことしの冬の塩カル散布回数、散布量は前年に比べて非常に多かった。五割増しだった。したがって、農作物に対する被害が顕著にあらわれたのです。また、中央道分離帯の生け垣のうち塩分に弱い樹種はほとんど枯れて、公団は植えかえたり、これをガードレールに取りかえている。こうした事実に照らしても塩カルの被害であることは私は肯定できると思う。しなければならないと思うのです。また、塩化物の植物に与える影響というのは公団はどのように受けとめているのですか。事実が物語っているのです。それですから私は塩カルだというふうに主張するのですが、どうなのですか。
  96. 北村照喜

    参考人北村照喜君) 先ほど申し上げたとおりでございまして、一応我々といたしましては調査結果を待ってということで御説明申し上げたいと思います。
  97. 村沢牧

    ○村沢牧君 この塩化物の植物に与える影響については御答弁なかったわけでありますが、後ほどあわせて答弁してもらいたいと思いますが、塩カルが最も有効な凍結防止剤である。しかも、今後とも使用していく。そうだとするならば、公団は積極的な塩害防止対策を講じなければならぬ、その責任があるというふうに思います。毎年このような公害を発生さしてはならない。公団は被害者の要求を受けて、あるいは県の要請によって被害畑沿線に樹木を植えた。これで被害が防止できるというふうに思われますか。また、被害を受けた人たちは樹木よりもネットを設置してもらいたいという要望があったけれども、公団はこれを受け入れておらない、これについてはどう考えるか。さらに、今後はどういう対策を講じていこうとするのですか。
  98. 北村照喜

    参考人北村照喜君) お答えいたします。  凍結防止剤につきましては、いろいろ薬品があるわけでございますけれども、我々が今使用いたしております塩化ナトリウム、カルシウム等あるわけでございまして、これが凍結防止に効果が非常に高い、かつ供給安定し、降雨や融雪水による希釈性が高くて、土壌の残留も非常に少のうございます。また経費の面でも非常に安いということで我々は採用をさしていただいているわけでございますが、それ以外に方法はないかという御質問でございます。ほかにも凍結防止剤といたしましては尿素、エチレングリコール等がございますけれども、やはり凍結防止効果等に問題があるわけでございまして、また量の確保に非常に困難性がございまして高速道路では使用いたしておりません。  その次の御質問でございますけれども、凍結防止剤をどうしてもまかなければ高速道路の交通安全が確保できないという事態に我々は立ち至っているわけでございます。したがいまして、この凍結防止剤が飛散をいたしまして周辺のリンゴ畑等になるべくかからないようにということで、植樹並びに防止ネットを設置するということをいろいろ考えているわけでございますが、この松川地区の問題点におきましても、県の御調査をいただくために、特にこの問題の箇所、延長約五百メーターに高さ三メーターの植樹、約六百本、正確に言いまして五百七十本植樹いたしまして、かつまた防止ネット延長百メーター、高さ三メーターのものを設置いたしまして、その効果がどうであるかということを現在調査中でございます。  以上でございます。
  99. 村沢牧

    ○村沢牧君  今後はどういう対策を講じますか。
  100. 北村照喜

    参考人北村照喜君) 効果的であるということになりましたら、こういうものを考えていきたいと考えております。
  101. 村沢牧

    ○村沢牧君 私の質問で答弁が一点落ちておりますけれども、ネットを設置してもらいたいという要望があるのですけれども、公団はこれを受け入れておらない。これについてはどういうふうにお考えになりますか。  それから次です。中央道においてこのような被害がなくなるまで公団としてはあらゆる対策を講ずべきであると思います。そのことを確約してもらいたいと思いますけれども、どうですか。
  102. 北村照喜

    参考人北村照喜君) お答えいたします。  調査結果を待ちまして、先ほどのいろいろの施策といいますかそういうものをやりまして、極めて効果的であるということになりましたら我々としてはいたしたいという考え方でおります。また、調査結果によりまして被害状況その他が判明いたしましたら、その時点で我々は考えさしていただきたいと考えております。
  103. 村沢牧

    ○村沢牧君 ネットに対しての答弁がないです。
  104. 北村照喜

    参考人北村照喜君) ネットにつきましても、効果的であるかどうかは判明いたしませんけれども、ただ過去の事例、例えば東北道あたりでは、ネットをすることによって風、暴風の阻止といいますか、そういうものも可能だという結果が出ておりますので、そういうものも踏まえていろいろ今後考えていきたいと考えております。
  105. 村沢牧

    ○村沢牧君 今お話があったように、ことし植樹をした、それだけで終わったのじゃなくて、こうした被害が生じないように今後ともあらゆる対策を講じていく、そのことをお約束できますね。
  106. 北村照喜

    参考人北村照喜君) 我々ができる範囲におきまして有効なものがありましたら今後考えていきたいと思います。
  107. 村沢牧

    ○村沢牧君 できる範囲は人によって見方が違いますから、被害がなくなるまでということなのです。よろしいですね。  それから、高速交通時代を迎えてこれからも高速道を建設するところはたくさんあるわけですけれども、今回のような経験に照らしてこのような被害が発生しないような配慮を道路建設段階からすべきであるというふうに思いますが、どうですか。
  108. 北村照喜

    参考人北村照喜君) お答えいたします。  全くごもっともなことでございますので、実は建設段階におきましては、今まで高速道路は三千四百数十キロ開通いたしましたけれども、その影響する因果関係その他が余り明確でございませんでしたので、いろいろの対策は若干おくれているところもあるかと思います。今後、建設につきましては、先ほど申し上げました調査結果等を踏まえまして、建設段階におきましても対策ができるものは考えていきたいというふうに考えております。
  109. 村沢牧

    ○村沢牧君 公団から調査の委託を受けた県はやがて調査結果を公表するでしょう。今北村参考人は三年ぐらいかかるという話があったのですが、いずれにしても、中間報告等がされるわけなのです。その場合、公団は中央道と農産物被害の因果関係を、私はあるということを指摘をいたしますが、率直に認めて、被害者に対して補償をすべきである、またその補償は、この結果がこれから後日になろうといたしましても過去にさかのぼってすべきであるというふうに思いますが、どうなのですか。
  110. 北村照喜

    参考人北村照喜君) 結果が出てまいりませんとまだ明確に申し上げることはできませんけれども、出ました結果によりまして被害状況その他数量的に明確になりましたらその対策は十分考えようと思います。  また、さかのぼってという議論でございますけれども、数量的にいつの時点からどうだということはやはり調査結果を待たなければわからないことでございますので、その付近がはっきりいたしましたらしかるべく対応をしていきたいと考えております。
  111. 村沢牧

    ○村沢牧君 しかるべく対応ということは、因果関係がはっきりして塩カルによる被害である、中央道によって発生したものである、そのことがはっきりすれば補償をする、しかしはっきりした時点だけの補償ではなくて過去にさかのぼってもする、そのことを明確に答えてください。
  112. 北村照喜

    参考人北村照喜君) お答えいたします。  過去にさかのぼるということにちょっと、いつまで、いつからかということになるかと思いますけれども、我々といたしましては五十八年度からの分のいろいろのデータが地元からも大体出ているようでございますし、我々も調査結果を待つわけでございますので、その付近のさかのぼりの期限をどこにするかというのは今後検討をさしていただきたいと思います。
  113. 村沢牧

    ○村沢牧君 さかのぼる時点をどこにするかは検討するにしても、既に去年の暮れから調査に入っているのですからその時点から明らかになるのですから、三年後に結論が出たとしても補償すべきものはしていく、いいですね。
  114. 北村照喜

    参考人北村照喜君) そういたしたいと思います。
  115. 村沢牧

    ○村沢牧君 そこで、大臣に最後に私は要請しておきたいと思いますけれども、高速道路について、農産物が私が指摘をしたような被害を受けている。したがって、大臣は建設省及び道路公団に対してこのような被害が発生しないような対策、また発生したものについてはその防止対策、適切な補償措置を講ずるよう適当な措置をとってもらいたいと思いますが、農水大臣として誠意ある御見解を承りたい。
  116. 佐藤守良

    国務大臣佐藤守良君) 先生にお答えします。  今いろいろ聞いておりましてリンゴ被害と凍結防止剤の因果関係でございますが、一番大切なことは早く調査が完了することだと思います。そんなことで調査が、今聞いておりますと公団が三年というのが県の方で早くできるということで、それからもう一つは、やはり凍結防止剤に塩化ナトリウム、カルシウムが一番有効であるということから判断しまして、これは非常に大切な問題だと考えております。そんなことで、調査結果が判明しましたら先生の趣旨を生かしながら県関係機関と協議して十分対処してまいりたい、このように考えております。
  117. 北修二

    委員長北修二君) 北村参考人に申し上げます。  大変御苦労さまでございました。ありがとうございました。
  118. 稲村稔夫

    ○稲村稔夫君 ただいまは山田委員あるいは村沢委員と、先輩委員からいろいろと質問があったわけでありますけれども、私は、今ちょうど予算のいわば大詰めを迎えている時期でもございますので、農林水産予算について農水省の今考えておられる姿勢についていろいろとお伺いをしたいと存じます。時間も十分ございませんから、それこそ基本的な考え方ということで結構でありますけれども、以下お伺いをいたします点、簡潔に要領よくお聞かせをいただけたらありがたいと思います。  最後に、農林水産予算がここのところずっと予算の総枠の中に占める割合というのが減ってきているわけであります。それだけに農林水産関係の費用のあり方について農水省はどのようにお考えになるのかというのが、大変私も大きな関心を持っているわけであります。政府全体の予算の運営の中では、例えば補助金等の一律カットというようなこともいろいろと言われたりしているわけでありますけれども、この農林水産関係の補助金については、これは非常に厳しいからということで全体的に一律カットという形で大体やられようとしているのでありましょうか。それとも重点配分等を考えておられるのでありましょうか。それぞれその方針をとっておられる理由、考え方というものをまずお聞かせをいただきたいと思います。
  119. 田中宏尚

    政府委員田中宏尚君) 農林水産省全体で補助金と称されておりますものは、五十九年で一兆九千億強あるわけでございますけれども、これにつきましては従来から臨調等でもいろいろ指摘がございまして、我々としては効果の薄くなったものでございますとか、あるいは類似の補助金というものについての統合でございますとか、そういう改善の努力はしてきているわけでございます。ただ、農林水産業の場合にはこういう自然条件に左右されやすいとか、あるいは規模が零細であるとかいろいろなことがございまして、政策誘導の大切な手段である補助金でございますので、基本的には何とか必要な補助金につきましては重点化を図りながら守っていきたいというふうに考えておるわけでございます。  それから、ただいま御指摘ありました一律カットにつきましては、ことしの夏の段階の概算要求の閣議等におきましても、地方公共団体向けの補助金のうち補助率が二分の一を超すいわゆる高率補助金、こういうものにつきましては一律にカットするというような方針が出されておりまして、そういう方針に従って予算編成が進んでいるわけでございますけれども、そういうカットの結果、効果が著しく減殺されるとか、あるいは農家に御迷惑をかけるということができるだけないように地方負担全体の中でどういうふうに持っていくかという問題があるわけでございますので、そういう点につきまして現在地方財政当局なりあるいは大蔵省、そういうところに対しまして、末端への悪影響排除のための要請を行っている次第でございます。
  120. 稲村稔夫

    ○稲村稔夫君 できるだけ機能的に重点配分をするという物の考え方もおありになるようでありますが、その辺はいろいろのやりくりというものの中で当然考えていただかなければならない問題ということになろうかとも思います。ただ、その重点の置き方についてはいろいろとまた議論があるのだと思います。そこはそれこそ日本農業そのものの後ろ向きになるようなことのないように最大の御努力をいただきたい、こんなふうに思うわけであります。  同時に、地方補助金についての一律カットということで、私は自治体関係の影響というのは非常に深刻であり、そのことが農林水産関係の事業にはね返ってくる、そういう影響というのも一番大きいのではないだろうか、そんなふうにも思うわけなのです。といいますのは、大都市農政というものが、全体の中では大きなウエートを占めない自治体は別でありますけれども、農業関係というのが非常に大きな割合を占めている自治体が多いわけでありますから、そういう中で、いろいろな形で自治体独自で補助をしていたり、あるいはその自治体独自の事業、農林水産と極めて密接な事業というようなものをやっておられる場合が今まで多かったと思うのです。それらのものがもろに影響を受けるということになったら、これは極めて重大である。そこの農林水産関係という範囲の経費はむしろふえていかなければその分をカバーできない、こういうことになるのではなかろうか。その辺はどういうふうに御認識になっているか伺いたいと思います。
  121. 田中宏尚

    政府委員田中宏尚君) 先生指摘のとおり、一律カット後の地方財政の負担増分を既存の事業にしわ寄せするということがありましては元も子もないわけでございまして、そういうことは何とか避けたいということが基本的立場でございます。したがいまして、今議論に上がっております高率補助金の補助率の一律カットの結果、地方公共団体の負担がふえる分につきましては、地方財政全体の過不足な図る土俵になっております地方財政計画というものの上で総合的に検討の上、事業の円滑な実施なり、あるいは地方財政の運営に支障が生じない、そういう枠組みの中でしかできないという立場で財政当局と交渉しているわけでございます。
  122. 稲村稔夫

    ○稲村稔夫君 地方財政にはね返っていくということは、私は自治体そのもののやりくりは、それはそれなりにいろいろな形でやられるであろう、だが、そのときに今まであった自治体の補助金をカットされたり、あるいは事業としてやっていたものを中止をしたりという形で、はね返りというのが農政の部分で一番多く出てくるのじゃないだろうか。それを大変心配するわけなのです。だから、単純に地財計画というものがあって、そこの地財計画の中で自治体全体の予算のやりくり、財政のやりくりについての相談は確かにやられるけれども、その枠の中で物を考えるということでは、少なくとも農政の場合はぐあいが悪いのじゃないだろうか、そんなふうに考えるのです。それだけに農水予算というのが今減ってきていることに私は大変危惧の念を持つわけです。片一方で今度減らされていくものがあって、言ってみればそれに一引く一がゼロになるのではなくて、一引く一がマイナス幾つになるような、そういう状況が生まれてこないようにするための農政面における地方振興対策というようなものが財政面でもいろいろ今後考えられなければならない課題ではなかろうか、そんなふうに思うのですけれども、その辺はいかがでしょうか。
  123. 田中宏尚

    政府委員田中宏尚君) 基本的には、まず国から出すべき補助金やなんかをできるだけ守るという姿勢が一つと、それから高率補助金等でカットするものにつきましては、今先生から御指摘ありましたように、そのカットの結果苦しくなった分を既存事業にしわ寄せするということがありましては農政の後退でございますので、現在各県でいろいろな農業振興施策で県単事業等もやっていただいておりますので、そういうものが今後とも続くように、我々といたしましても重大な関心を持って見守っていきたいというふうに考えております。
  124. 稲村稔夫

    ○稲村稔夫君 ぜひそういう既存の事業に重大影響が出ないように、あるいは出た場合にその影響が少なくて済むように最大の御努力をいただぎたいというふうに思います。  次に、農業共済について、これは国庫負担を減らす方向で制度的にもいろいろと見直しをやられるというふうに聞いておりますけれども、これはどのようにお考えになっておりますか。
  125. 後藤康夫

    政府委員(後藤康夫君) 農作物共済の共済掛金国庫負担につきましては、例えば水稲について申しますと、五〇%から七〇%という超過累進制をとっておりまして、掛金率、すなわちこれは過去二十年間の被害率から決まっているものでございますが、これの高いところほど国庫負担率が高いということになっておりまして、全国平均で約六割ぐらいの国庫負担になっておるわけでございます。  御案内のとおり、臨調以来五割を超える補助金というのは高率補助ということで個別に検討、見直しを求められているという要請がございます。また、かつて超過累進制ができました昭和三十八年ごろの米の需給事情というようなものに比べますと、今日では五十数万ヘクタールに及びます生産調整も実施しているということで、この生産調整の際に適地適作ということも言っているわけでございますが、被害率の高いところほど国庫負担率が高いという制度というのは、今のそういった需給事情なり政策方向から見てマッチしているかどうか、少なくとも国庫負担としてはもっと中立的であるべきでないかというような議論もございます。  それからまた漁業災害でありますとか、漁船の損害補償でございますとか、健保あるいは雇用保険、こういったいろいろな横並びの制度を見ましても、五割を超えている国庫負担というのはほかに例がないというふうなことで、共済掛金の国庫負担のあり方について見直し、検討を行っておるところでございます。他方、何と申しましてもこの農業災害補償制度、農業災害対策のいわば基幹になっている制度でございます。ことしは豊作に恵まれましたけれども、過去四年の不作の際に非常に大きな効果を発揮した制度でございます。そういったことを総合勘案しながらいろいろ検討を行っているところでございますが、まだ現在のところ成案を得るに至っていないという状況でございます。
  126. 稲村稔夫

    ○稲村稔夫君 まだ制度的には検討中ということでございますから、その成案ができてまたいろいろと議論をさせていただきたいというふうに思います。  ただ、私の希望といたしましては、少なくとも現在の制度の中でいろいろと改善をすることは大いにしていただきたいと思いますけれども、後退があってはならないというふうに思いますので、もし後退をされるような制度ですと私どもは認めるわけにはいかぬということにも相なります。そうすると、やはり予算との関連で今御質問申し上げておりますが、それで少なくとも国庫負担を大幅に減らしていくようなというか、ある程度減らしていくようなそういう予算であってはいけないのではないかと私は思っておりますので、この点はぜひとも後退をさせないという立場で御奮闘いただきたいというふうに思います。  時間がもうありません。聞きたいこともあと数点ございますので、次へ進ませていただきます。  そこで今度は、融資制度の改革ということも今伝えられているわけでありますけれども、この融資制度の改革ということで、私どもこれはどうも気になるわけであります。例えばこれは随分前のものでありますが、報道関係、新聞等に、「農林予算概算要求前年度より2%減額」というような見出しの中で、「補助から融資に転換」というような記事などが載っております。どうも農林予算は厳しい財政的な事情から、だんだんと補助から融資へと政府の方の負担の軽減を図っていこうという方向が出されてきているのだろうか。それであればまたいろいろと問題があるというふうにも思うわけですが、まず補助と融資についてどういうふうにお考えになっているのか、その兼ね合いについてお伺いをしたいと思います。
  127. 田中宏尚

    政府委員田中宏尚君) 先ほどお話ししましたように、我が国農業特殊性から申しまして補助金というものが強力な政策誘導手段である、そういう立場にもちろん立っているわけでございますけれども、一方、残念ながら補助金につきましては、できまして長い年月たちますと、硬直化なりあるいは既得権化しやすい、あるいは農家の自主性を損ねやすいというような指摘も一般からあるわけでございますし、こういう厳しい財政のもとでは、農家の自主性なり、それから創意工夫というものを生かしながら財政資金というものを効率的に運用していくということも一方で必要なわけでございます。そういうことからいいますと、補助金の重点化を図りながら農家の創意工夫を生かす、そういうことで一方で融資へ切りかえていくということも局面的には必要じゃないかというふうに考えているわけでございます。
  128. 稲村稔夫

    ○稲村稔夫君 ちょっと重要な問題を出されて、これからまたさらにそれこそ議論をこれは相当しなければならない問題なのじゃないかというふうにも思うのでありますが、補助金の中には、確かにおっしゃったように、だんだんともう意味がなくなってきているとでもいいましょうか、必ずしも目的が現在も大いに生かされているとは限らないというものもあるだろうと思います。ですから、そういう補助金についての適切な見直しなどがいろいろと行われるということは、これは私も当然だというふうにも思うのです。しかし、これを融資に切りかえていかれるということについてはやはり問題があるのではないだろうか。というのは、現在の農家状況というものは、私はかなり大きな借金を抱えている農家が多くなってきていると思うのです。中核農家の育成というふうに言っておられるわけですから、中核農家としての担い手になる人たちの借金分というのは、これは私はかなりふえてきているというふうに思っています。特に畜産農家の借金の増、酪農家の借金増については、既にこの委員会でも何回も何回も指摘をされて議論をされてきたところであります。そういうことからいきますと、この上にさらに融資ということは、やはり借金を増大させてしまうということになってしまうのじゃないでしょうか。  それからもう一点は、基盤整備等、やはりこれを進めていかれる中で、その償還金、これは個々の農家の個々の形の借金という形ではありませんけれども、賦課金という形で、あるいは償還が個々の農家一定額かかってくるという形になるわけでありまして、これも個々の農家の借金と同じということに見て差し支えないのじゃないかと思うのです。これも前の土地改良法の審議の際に私も具体的な計算等をしながら触れた問題でもありますけれども、特に工事費等が上がってきている最近の状況の中でいけば、その負担もばかになりません。こういうふうにして農家は個々の農家の負債、負担というものがおくれていっている中で、融資への切りかえというのはいかがなものであろうか。それはそれなりの借金対策を一方できちっと立てた上で、これはこういうふうに整理をしていく方向があるからそこで融資へ切りかえていくというのであれば、それはまた議論の余地が出てくると思うのです。その辺のところが私は一つ気になるわけであります。さらに、融資の問題も、政府の方針によりまして何かだんだん財投資金の利息に合わせて、制度融資の方もそれより低いものはというようなことが出てきております。今の融資関係も利息が今後高くなっていく、そういうことがあってもこれまた困るというふうにも思うわけでありまして、その辺のところはどういうふうにお考えになっておるかということをお伺いいたします。
  129. 後藤康夫

    政府委員(後藤康夫君) 制度金融の問題につきましては、幾つかの要因から今いろいろ検討をいたしております。一つは、臨時行政調査会の答申の中で農林公庫資金につきまして融資の重点化、それから貸付条件の見直しというようなことが答申の中で盛り込まれておりまして、これへの対応をどうするかという問題が一つございます。他方、先ほど房長からもお答えがございましたように、農業者の自主性なり創意工夫を生かす助成手段というような意味合いから、補助から融資へという大きな流れがあるわけでございますが、それでは実際の制度融資の貸し出しの実態というのが近年どうかというふうに申しますと、農林水産関係をめぐる情勢が非常に厳しいということも反映をして答申は慎重になっているということもございますけれども、貸し出しが公庫資金につきましても近代化資金につきましても、むしろ停滞をしている。その中にはやはり近年のいろいろな農林水産業の情勢の変化に今の制度がうまく合っていない面、あるいはまた貸付限度などが長年据え置かれてきているために、それがネックになって十分な借り入れができないというような問題もケースによって起きているわけでございまして、そういった最近の資金需要にどうこたえていくかという面と臨時行政調査会の答申と、この二つを踏まえまして、制度金融につきまして今見直し検討を行っておるところでございます。
  130. 稲村稔夫

    ○稲村稔夫君 もう時間がなくて本当に私も困っていますけれども、後藤局長のお話を伺って、今そちらからもちょっと出ていたみたいに、何か全体に後ろ向きみたいな感じがしてならないのです。本当にこれはお願いでありますが、後ろ向きにならないように、農林水産省なのですから農林水産業が立派に発展をしていけるように、そういう前向きの姿勢で常に取り組んでいただきたいと思うわけです。  そこで、先ほど房長から山田委員の御質問にお答えになった中で、国会決議との関連で自給力の御答弁がありました。大臣が苦しい答弁というふうに言われましたが、これは今度は官房長に伺うのじゃなくて、農蚕園芸局長に伺いたいのです。  とにかく自給率自給力、いろいろそこには言葉の言い回しであるかもしれないけれども、いずれにしましてもその自給力を高めていくというためには今の減反政策等の考え方というのは矛盾があるのじゃないだろうか。それからまた、減反を進めていっているために耕作放棄などというものがかなり各地で起こってきているという事実、これは否定できないと思うのであります。そうするとその自給力を高めるというためにも、そういう耕作放棄などが起こらないためのいろいろな対応政策がなければならぬのじゃないだろうか。そのための予算措置などというものは考えておられるのでしょうか、この点をお伺いしたいと思います。
  131. 関谷俊作

    政府委員(関谷俊作君) 自給力向上の問題といわゆる減反政策、具体的には米の生産調整対策との関係でございますが、米の生産調整対策は、これはもう御承知のように、米の需要動向から見ますとその需要の動向に応じて米の生産をむしろ調整しなければならぬ。そのかわりに、需要の伸びますようなものあるいは国内で生産可能なものに生産の転換を図っていくという意味で、一口に申しますと需要の動向に即した農業生産の再編成、こういうことで行っているわけでございまして、これは日本農業自給力という面から見ますと、日本の国内の農作物の需要に合わせてむしろ国内で物をつくっていくような方向生産を誘導していくという趣旨で実施をしているわけでございまして、米そのものについては減反ということになるわけでございますが、現在の需要動向あるいは将来にわたりまして見通しますと、こういう形で生産をいわば転換していくということがどうしても必要だ、こういうわけでございます。  ただその過程におきまして、先生の御指摘のございましたようないわゆる耕作放棄というような事態は生じないようということで、これは当初は俗にいう休耕に対する奨励というか給付金等を出したこともございますが、現在はそういう面では休耕に対する奨励策ということはとりませんで、現在ございます中では若干水田保全管理というような余り望ましくない形もございますので、これにつきましては極力圧縮する方向で、具体的には五十九年度も前年の半分ぐらいの二万七千ヘクタールに減少いたしておりますが、さらにこれを他用途米生産等に転換する等も進めまして、水田を中心としました土地の有効かつ完全な利用、その場合には需要の動向に即して誘導していく、こういうことで対策を講じてまいりたいと考えております。
  132. 稲村稔夫

    ○稲村稔夫君 言葉では最後の方ではきれいに言っておられるけれども、現実に耕作放棄というのが特に水田地帯や山間地なんかでは随分起こっているわけですから、そうすると、それこそ自給力を高めていく、他作物でも何でもやっていくというそういう体制が何もないのですから、耕作放棄そのものが起こっているということ、このことはやはり軽視をしてはならぬと思うのです。そういう点では、私はしっかりした政策が立てられ、そして予算措置も講じられなければならぬというふうに思うわけです。  そこで、最後に大臣に伺いたいわけでありますけれども、こういう今伺ったような状況の中でありますが、いろいろと言われるけれども、とにかく農林水産予算が予算の総合の中で占める比率がかなり下がってきている。よそのものよりも下がってきているというのはこれは事実なわけです。一番のピークであった昭和四十五年、六年ころの総予算に占める一一・五%に対して五十九年度は六・八%、当初予算ベースにして、というような形なのでありますから、こういうふうにして農林水産予算がだんだんと予算の中で占める割合が落ちているということは私はゆゆしき問題だというふうに思うのです。それは先ほどから安全保障の面などというふうに言われている面がありますけれども、私は防衛予算なんというよりももっとそれこそ大事な問題だというふうにも思うわけであります。それだけに大臣の最後の大詰めで頑張りをぜひとも期待したいわけでありまして、その辺の御決意を伺いたいと思います。
  133. 佐藤守良

    国務大臣佐藤守良君) 先ほどから話を聞いておりまして、基本的には実は農政等につきまして発想の転換を図る必要があるのじゃないかという気がするわけです。これは山田先生の御指摘の点もその一つだと思うのです。だから、私は叶さんの話というのは発想の転換ということを言っていると。例えば土地をどう見るか、工場と見るかどうか。あるいは補助から融資の場合も、実は農業というのは特異性が非常にある。そんなことで、これは長期にかかる。その場合に、今までと違って農家の皆さん方に経営者の意識を持ってもらう。そんなことを踏まえて実は補助から融資へというような転換を図られる、こう思うわけでございます。  農林水産予算につきましてはおっしゃるとおりなのです。実は私も大臣になりましてまことに残念でたまりません。今、先生のような決意で頑張りたいと思っています。よろしく御声援をお願いします。
  134. 稲村稔夫

    ○稲村稔夫君 せっかく大臣の御決意を伺って、また逆らって申しわけないのですけれども、私はこういうふうにして本当に予算が減っているということについてはじりじりしているというわけでありまして、それだけに特段の頑張りをお願いしたいというふうに思います。  それからさらに、私は、せっかく食糧庁長官に出ていただいていろいろと伺いたいと思っていたことがあったのに時間がなくなりました。だけれども一つだけ、さっき村沢委員大臣がお答えになりましたが、消費者米価についてまだ何も決まっていませんというふうに言われました。ところが一方では何かこの十九、二十日ころに米価審議会が開かれるのではないかとかなんとかいう話なども伝わっているような形であります。そういうことになれば、大体政府の御方針は決まっていなきゃならぬ、こういうことになるのでありますが、消費者米価についてのあれをもう一度念押しで申しわけありませんが、はっきりしたことをお聞きしたいと思います。
  135. 石川弘

    政府委員(石川弘君) 予算の時期になりますと歳入予算ということも重要な予算項目でございますから、いろいろ部内の作業等が行われる時期ではございますが、率直に申しましてことしの予算編成に関しましては予算総枠その他いろいろと困難な事情がございまして、部内検討の域を出ておりません。私も大臣に御報告するまでに至っておりませんので、そういう検討状況だということだけ申し上げさせていただきます。
  136. 北修二

    委員長北修二君) 本件に対する質疑は午前はこの程度とし、午後一時まで休憩いたします。    午後零時二分休憩      ─────・─────    午後一時二分開会
  137. 北修二

    委員長北修二君) ただいまから農林水産委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、農林水産政策に関する調査を議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  138. 藤原房雄

    ○藤原房雄君 今年一年間を顧みまして、農林水産関係につきましても非常に波乱に富んだ一年だったと思うのであります。また新しい国会が始まりまして、これらの問題につきましての対応等につきましては、まだ国会も始まったばかりでありますから、今後の問題につきましてはいろいろ議論の場もあり、今後もそれらの問題については論議をしていくことだろうと思うのであります。  昨年の暮れからことしにかけましては、三期対策のスタートに当たりましての他用途利用米の問題や、また米不足、加工用米とはいいながら不足を来したということや、それから日米農産物交渉の中で、日本の畜産の基盤がまだ確立されていない現在の中で、諸問題がありながら輸入枠を拡大しなきゃならないという、こういう問題も当委員会といたしましては大変議論になったわけであります。そのほか漁業の問題につきましても、日ソ、ソ日の多年の懸案でございました一年ごとではなくて期間を少しでも長くということで三年ということには一応なったようでありますが、漁獲量につきましてはまだ今後の交渉にまたれると。林業につきましても御同様いろいろ昨今、緑の重要性というものが問われておりまして、大いに宣伝されておりますけれども、この林野行政につきましてもいろいろな問題があることは御存じのとおりでございます。  今この時点で私どもがいろいろな問題指摘をしなきゃならないと思うのですが、一番問題なのは、先ほども同僚委員からお話ございましたが予算編成の重要なときにかかっておるということで、この予算関連について私も二、三取り上げざるを得ないと思うのです。大臣や官房長から先ほども同僚委員の質問に対して御答弁があったのでございますが、こういう行政改革を推進しなければならないという時点にありますから、各省庁それぞれいろいろな工夫をし、そしてまた対応を迫られていることは私どもも十分にわかるのでありますが、ほかの省庁と違いまして農林水産行政というのは他産業と違う特質が何点かございます。そういう中でどうしても守っていかなければならない、ほかの産業と一律に補助金をカットするとか、金融面につきましても圧縮をするとか、こういうことになりますとこれはいろいろな問題が出てくる。私はそれらのことについて何点かまずお伺いをしておきたいと思うのであります。  過日もいろいろ御指摘を申し上げましたが、農林省関係予算というのは一般会計予算の中で占める割合、これは四十年代までは、五十年度まではおよそ一割、一〇%、一一%というところを推移をしておりましたが、ここのところへまいりまして年々これが低下をいたしておりまして、五十九年当初予算で六・八%ということです。国民総生産の中で占める農林関係の生産額というのはおよそ四、五%と言われておるわけでありますけれども、こういうただ比率だけで私は申し上げているのじゃ決してございません。各省庁それぞれ努力をしなきゃならない中でのいろいろな御努力はあろうかと思うのですが、加工業とか他産業のように急激に政策転換ができるというものとは違いまして、長い一つの計画を立てて、その計画の中で一つ一つ着実に進めていかなければならない農業につきまして余りにも比率の低下ということが急激に進んでおる。こういう数字の上から見ましても、現実農村を回ってみましても、現在の農林関係に関する予算の執行ということについていろいろ検討しなきゃならない、そしてまた大臣にも頑張ってもらわなきゃならない面が非常に多いのではないかと私は思うのです。予算編成を前にいた しまして、農林省当局またはその一番の中心になって今折衝に当たる大臣、その辺あたりのことについてはどのようにお考えになっていらっしゃるのか、まずお伺いをしておきたいと思うのであります。
  139. 佐藤守良

    国務大臣佐藤守良君) 藤原先生にお答えいたします。  今先生がおっしゃったようなことは、農林水産関係予算というのは国民生活に大変重要なウェートを占めているわけで非常に大切である、このような理解をし、そういう考えで予算の問題に努めているわけですが、実は私が大臣に就任しまして一番驚いたのは、農林水産関係の予算が急激に減ってきておるということでございます。しかも農林水産関係というのは先生先ほどおっしゃったようなことで、特に自然条件に左右されること、また長期的な問題であるというようなことで、ほかに比べて随分財政的な負担が多くなるのが本当なのが逆に減ってきておる、そんなことをもちまして、先ほどもある先生から質問がございましたようなことで、防衛予算と同じように別枠にすべきじゃないかと、こんな考えを持っておるわけですが、先生方の御指導や皆さんの応援を得まして、そんな気持ちで予算獲得に頑張りたい、このように思っているわけでございます。
  140. 藤原房雄

    ○藤原房雄君 この中身についていろいろお尋ねをしたいのでありますが、時間もありませんから一つ一つお尋ねすることもできませんが、総体的にいいますと、農林予算の中で食糧管理費が非常に悪玉のように言われ、そのために農林省もこの問題については御努力をいただいておるのですが、非常に窮屈な、窮屈といいますか、つじつまを合わせるのは大変なようで、前年対比で四・九ポイントですか、差があるような感じでいろいろ考えているようです。それから公共事業、基盤整備やなんかのこれは非常に多いわけですけれども、これもやはり二・四ポイントぐらい減額。  私は、一番大きいのは災害復旧費だろうと数字をずっと見て思うのですけれども、午前中の質疑にもございましたように、農林水産業というのは経済合理主義だけでこれは進めるわけにはいかない一面があるのではないか。そういう中で最小限度努力をしていただくということは当然のことといたしましても、やはりこれは譲れないものは当然そこにあり、民族生存の基幹産業である農林水産業を守る上においてはどうしても守らなきゃならない歯どめというのはあるのだろうと思うのですが、ここら辺のことについては農林当局ではどのようにお考えになっていらっしゃいますか。
  141. 田中宏尚

    政府委員田中宏尚君) 農林予算につきましては、先ほど来話がありますように若干ずつシェアが減ってきているわけでございますけれども、その中で重点的な予算編成ということに毎年心がけておりまして、必要なものについては確保するという態度で臨んできておるわけでございます。今年度につきましても、大臣の指示を受けましてこれ以上大きくシェアが減じないようにということで日夜財政当局と折衝しているわけでございますけれども、具体的な歯どめの率なり額という点になりますと、国全体の財政の動きなりその中でのいろいろな必要性ということがございまして一義的にはなかなか何%がどう、何億円がどうということは残念ながら決めかねるのじゃないかと思っております。
  142. 藤原房雄

    ○藤原房雄君 私も何%とか何億という数字でそういうことがあらわせれば、今、防衛予算で言われておりますようにGNPの一%ということでその可否が論議されておりますけれども、これは数字であらわせるのか、それとも最大限こういうことだけはという文書という形になるのか、いずれにしましてもここ五十一年以降ずっと見ますと、もう歯どめなく農林予算の比率が下がっておる。これは時代の流れの中で総枠国家予算全体の中でのことですから数字だけで私は論じることはないと思うのですけれども、このままでいきますと歯どめなく比率がだんだん低下してくる。一方では本年の韓国米を加工用米とは言いながら輸入しなきゃならないことに至ったのも、食管会計を圧縮をする、経済合理性の中で余りにもこれが合理化に傾いたといいますか、余分なものは持たないという方向一つのあらわれがこういう現象になってあらわれたと言っても過言ではないと思うのです。  公共事業につきましても、基盤整備の重要性生産性向上ということで言われて、昨年度からですか、基盤整備の事業が始まっておるわけですけれども、過日会計検査院の指摘にもございましたように、長きにわたります事業計画が一向に進まないということで非常に効率的でないという指摘もございました。今財界等から言われております農業に対する批判の一つの大きな眼目は、やはり生産性向上というものが一向に進んでいないということにあるだろうと思うのですが、これを進めるためには基盤整備というものがどうしても必要であることはもう論をまちません。より効率的な、より効果的な土地改良等基盤整備の推進ということも農林省に課せられた最重要課題であろうかと思うのですが、こういう問題を何点か考えてみますと、やはり農林水産省としましては当然そこに一つの一線を画すべき歯どめというものがあってしかるべきだろう。  難しい財政事情は私ども十分にわかることといたしましても、農林水産省としてやはりここまではという、そういうものがなくしてずるずるこのままでまいりますと国民総生産の四%か五%、そこまで落ち込んでいってしまうのかどうなのかという、こういうことについて私どもは今後の施策遂行ということの中で生産性向上が、非常に土地基盤整備等が要望される一面では、その裏づけとなるものがだんだん減額され推進しない相矛盾したこういう姿がこの予算の中に浮き彫りになっているのではないかというふうに感ずるのですけれども、その辺についてはどうでしょう。
  143. 田中宏尚

    政府委員田中宏尚君) ただいま御指摘ありました基盤整備につきましては、農業生産性向上していく上でかけがえのない事業だと心得ております。公共事業につきましてはここのところ全体的にほぼ前年同に抑えられたり圧縮しているわけでございますけれども、その中でシェアにつきましては農林水産省公共全体で二一%強というシェアをずっと守ってこられているわけでございますし、今後ともこういう公共事業の中での農林水産公共のシェアの確保ということにつきましては全力を挙げて守っていきたいというふうに考えておるわけでございます。
  144. 藤原房雄

    ○藤原房雄君 公共事業についても、決して前年対比で伸びるどころか減少しておるのが現状です。それから漁業にしましても農業にしましてもそれぞれの分野で、特に漁業につきましては沿岸漁場整備開発事業ですか、こういうことに関連します地元の要請というのは非常に大きくなっております。漁礁を設置するとか増養殖の造成事業とか沿岸漁場の保全を確保するとか、こういうことに対しての地元の要請というものは非常に強いわけで、それぞれその地域地域の特性に合わせていかに漁業を振興するか、沿岸漁業、養殖事業それぞれの部門で今工夫考慮され、県単でやるものもありますが、国の補助というものも非常に大きな役割を果たしておる。  各県の様子を、私はこの前宮城県の要請を受けていろいろ見ましたけれども、やはり事業そのものは前年に対して伸びております。やらなければならないことが、地元の要請が非常に多い。そういう中で農林水産予算の主要なものを占めるのは先ほど申しました食管とか公共事業とか、そういうものが大きなウエートを占めるのはよくわかりますけれども、予算総額の中で現在の時点で地元から、例えば漁業についてのこういう事業をしたいというものが非常にふえておるということが現状です。そういうことからいいまして農林漁業の振興という言葉は立派なのですけれども、また育てる漁業という言葉も今盛んに言われておりますけれども、このように農林水産予算全体が圧縮される中でそういう農林水産業推進ということが国の施策として、お金だけがすべてではないでしょうけれども、裏づけになる予算というものが先 細りだということでは、地元の事業を推進する方々としましては、ことしは予算がついても来年はどうなるのだろうか、こういうことでは明るい農漁村推進ということにはならないのではないか。  予算の重点配分、いろいろなやり方もあるのかもしれませんけれども、いずれにしましても農林水産予算全体としまして歯どめなく一般会計予算の中で占める割合が減少しつつあるという中で、きめ細かな現地の事業推進ということに支障のない形でぜひ的確な食糧増産のための合理的な予算編成に対しまして主張するところは強く主張し、事業の推進が図られるように私は声を大にして叫びたいと思うのです。これは大臣、過日もいろいろ決意のほども言っておりましたけれども、この間のことについて事務当局とまた大臣からお伺いしておきたいと思うのです。
  145. 田中宏尚

    政府委員田中宏尚君) 夏の概算要求段階でいろいろ概算要求基準というような設定がございまして、その中で精いっぱい重点的な配分ということで長期的な農林水産業の振興が図られるような概算要求をしたつもりでございます。これの満額確保に向かいまして、これから残り少ない日にちでございますけれども、事務当局といたしましても精いっぱい頑張りたいと思っているわけでございます。
  146. 藤原房雄

    ○藤原房雄君 それから各農協、漁協の幹部の方々といろいろお話をしますと、金融の自由化に伴います我々の立場というのは一体どうなるのかという大変な不安を持っているお話が出てくるわけであります。今日までは補助金でやっておりましたものがだんだん融資の方に振り向けられる、融資そのものも金融の自由化という中で、民間金融の競争の激化に伴いまして政府金融というのは一体どうあるべきかということが議論になっていることは私どももよく承知いたしておりますけれども、特に農林予算の中でいろいろな削減をしなきゃならないということが議論になっている。我々は新聞で見る範囲内のことしかわかりませんが、農林金融公庫の融資や近代化資金というものの利子補給に対して非常に削減という方向に進みつつある。これも午前中ちょっとお話がございましたが、農林金融制度の見直しといいますか、削減という方向に進みますと、当委員会が始まるたびにいろいろ申し上げておりますように、大規模化することが農業の安定につながるのだという方向で今日まで大規模推進、大型化というものが進められてまいりました。その底にあるものは、やはり金融政策といいますか、国の長期低利の融資ということで今日まで進められてきたはずです。  農業は、何度も申し上げますように、加工業と違って短期にできるわけじゃございませんから、長期の営農の中でこれが返済されておるわけでありますけれども、長期低利の金利というものがここへきてにわかにもし改変されるようなことになりますと、もう営農そのものの基本というもの、計画そのものが非常に危ない状況になることはもう火を見るよりも明らかなことだと思います。今日いろいろ言われております農業金融制度の問題、最近民間金融の激化の中で農業金融も何らかの対応が迫られていることは我々もわからないわけじゃありませんが、ほかの事業と違って、農業金融につきましては本当に慎重を期さないと今日までの施策が基盤から揺らぐことになるのじゃないか、こういう大変な危惧を持っておるのですが、この間のことについてはいかがでしょう。
  147. 後藤康夫

    政府委員(後藤康夫君) 農林漁業制度金融につきましては現在いろいろ見直しをやっておりますが、先ほど来お話が出ておりますような補助金から融資へというような流れの中で必ずしも制度金融、公庫資金につきましても近代化資金につきましても資金需要が伸びていない、むしろ停滞しているというようなことがございまして、最近の農林漁家の資金需要の実態というものに今の制度を照らし合わせてみていろいろ改善方策も考えていく必要があるのじゃないかということが一方にありますほかに、融資の重点化なり貸付条件の見直しといったような臨調答申に対する対応、この臨調答申の中にも農林公庫補給金の抑制というようなことが書いてございますが、同時に農林漁業の近代化と体質改善に留意をするということが言われているわけでございまして、そういった観点に私ども立ちまして、制度金融の内容につきまして今種々見直しをいたしております。  お尋ねのありました点でございますけれども、厳しい条件の中でございますけれども、農林漁業振興に真剣に取り組んでいる方々の意欲をそぐことがないように十分私どもその点は気をつけてまいりたいというふうに思っております。
  148. 藤原房雄

    ○藤原房雄君 資金需要が最近はちょっと低迷状態にあるということですが、これはいろいろな要因があることはよく御存じのことだと思いますし、今後また新しい事業をするというような方々につきましては、それなりの力といいますか見通しが立ちませんと、今日までも失敗続きの政策の中でなかなか重い腰を上げるということは大変なことです。今後のあり方も当然のことですが、現在苦境の中にある方々の諸施策として私はこれは十分に考えなきゃならないことだろうと思うのです。  今、規模拡大ということが言われますが、土地取得資金のようなことにつきましても、各地を回りますとそれぞれまだ、買って規模を拡大して果たして農業が健全に経営できるかどうかということに対する危惧もあります。買うにも買うだけの資金がなかったり、またその資金を借りたとしましても、今後どういうふうに農業が動くのかということに対して、やはり飛びついて資金を借りて補給しようという環境にないというようなこと等もございます。  今、土地の流動化、土地取得資金、こういうものがそれぞれの地域で非常に重要な位置を占めるだろう、またその問題については、それぞれこれから数年を出ずして土地の流動化が大きく動く時代が来るだろうと言われております。今後の課題といたしましても、基本農政以来大規模化こそ農業の安定経営という方向性で来たところのものが、農地を取得するということすらも非常に難しいということになりますと、取得資金によって規模を拡大しても健全な経営ができるかという危惧と、それからまた、この取得資金というものが非常に長期で低利なればこそそれは長年の間に、一代ならず二世代、長い間にある程度見通しが立つのかもしれませんが、今のような考え方からいきますと、そういうことすらも不可能なような状況をもし招来するようなことになりますと、農地規模拡大生産性向上、基盤整備の拡充強化ということは言葉としてはありましても、現実それは進み得ない問題になってくるのじゃないか。  こういう安定低成長の中で、資金需要というのは、それぞれ苦労の中で農民も失敗を繰り返し、そしてまたいろいろな体験を積んでまいりますから、一つの制度ができたからといって飛びつくなんという時代ではないのだろう、それだけに危惧をしながら、また自分の立場を考えながらということで非常に難しい一つの時代に来ておる。土地取得は何も売買でなくても賃貸借とかいろいろな形でこれは進められるのだろうと思いますけれども、農業の金融ということを考えてみましても、他産業と違って、大きな付加価値を得られるような産業と違って、地道に天候をにらみながら取り組む農業につきましては当然そういう問題については十分に考え合わせなきゃならない。  今、経済局長のお話でも、そういう点も十分に考えるということですが、考えた末こうなりましたというのではだめなので、制度金融につきましてはとにかくその拡充とそして長期低利ということについての十分な配慮はどんな時代になろうとも、またほかの関係予算がどうあろうとも、農業については守らなきゃならぬ一つのターゲットというのはあるだろうと私は思うのです。全体がこうだからということじゃなくて、農業特殊性の中で主張することは主張し、改革することは改革するということでこの金融問題については厳然と対処していただきたいと私は思うのですけれども、どうですか。
  149. 後藤康夫

    政府委員(後藤康夫君) 行財政改革の非常に厳しい状況の中で農政も効率的な推進というものを求められているわけでございますが、ただいま先生からお話のございましたように、農林漁業の特質に基づいて守らなければいけないものは守っていくという姿勢でやってまいりたいというふうに思っております。
  150. 藤原房雄

    ○藤原房雄君 大臣も御就任になられてお勉強なさって、また各種のことをいろいろごらんになって、やはり金融政策というのは農業に非常に大きなウエートを占め、これからの健全な営農といいますか、農家が健全経営するためにはこの金融制度というのは大事なのだということは十分に御理解いただいていると思いますけれども、今度の予算編成等につきましてこの金利が上がるとか、また今までありましたものが、長期低利で何とか今までの議論の中で制度発足した、それが改悪されるようなことが一つでもあってはならぬと私は強く思うのですけれども、大臣からこういう今後の予算編成に当たりまして、それらの問題に対してのお考えをお聞きしておきたいと思うのです。
  151. 佐藤守良

    国務大臣佐藤守良君) お答えします。  実は私は、金利が自由化した場合に、これは自然の大勢でございますが、恐らく金融機関の統廃合がされると思います。そういうもので一番大切なことは預金者保護の問題でございます。預金者保護さえされれば逆に金融機関の統廃合は国民に対して役に立つ。というのは、逆に金利が低下する、こんなことを考えておるわけです。  そんなことで、実は私は、内輪ではむしろ農業特殊性から金利はもっと安くて長期でなくちゃいかぬのじゃないだろうかという話をしておるわけです。したがって、藤原先生のおっしゃるようなことで、土地の流動化でも、例えば土地の取得資金をどうするかという場合、かなりやはり長期低利でなくちゃいかぬ。その場合に実は農業考え方方向性をどうするかということ、そこに補助から融資へという問題もあると思います。したがって私は、今農家の皆さん方が単なる一農業者じゃなくて経営者になる、発想の転換を図るということの中に、むしろ低利融資の中で採算の合うような農業をつくるという考え方が必要じゃないかというふうなことで基本方針を進めたいと思っておるわけです。そんなことで、先ほど経済局長の言ったようなことで農林漁業者に有利になるような方法でやりたい、こんなような考えで進めておるわけでございます。
  152. 藤原房雄

    ○藤原房雄君 国会決議でも、自給力向上ということが何度か委員会でも決議をされたり、日本食糧生産ということにつきましては何度も議論されておる中でのことでありますから、農業だけ特別ということは非常に難しい環境にあることは私どもも十分わかりますけれども、それはそれなりの努力をするということと、やはり新しくできる制度そのものが本当に農業の振興のためになるのかどうかという基本線というのはあくまでも外しちゃならぬだろう。やむを得ない、やむを得ないということでずるずる自給率が下がっていくようなことでは何のための国会決議であったのか、こう言わなきゃならないだろうと思うのです。  そういうことで、大事な予算編成にかかる今日でありますから、大臣からお話がございましたが、難しい局面にあり、大変多難な中にあることは百も承知でありますけれども、そういう中で大臣に御就任になられたわけでありますのでせっかくこれは御努力をいただきたいし、この国会決議等を守るためにも、最低なければならない施策というものについて、断固としてそれを守り通していく強い決意でお進めをいただきたいと思うのです。  きのうの新聞にも出ておりましたが、会計検査院からの厳しい指摘、何かというと農林省が悪玉みたいにいろいろ言われておりまして、むだ遣いが多いと。過日は集団育成のための補助金というものについてもそれぞれメスが入れられたようであります。農林省は何せ現場で直接農林漁業の組織体に接触する大事な事業を持っておりますからいろいろな問題があろうかと思うのですが、この種の問題については私も調べさしていただいております。これはまた年が明けてから議論するとしまして、再三にわたります会計検査院とか総務庁ですか、こういう指摘に対しましては農林省としてはどのように受けとめていらっしゃるのか。これは会計検査院にいたしましても十分に事実をとらまえて指摘をされたことだろうと思いますし、それはそれで謙虚に受けなきゃならないところは謙虚に受けなきゃならないだろうと思うのですが、他産業と違ってやはり主張するところは主張しなきゃならぬだろうと思います。いずれにしましても、ここのところ農林省の問題が非常に大きく新聞等で取り上げられて、私も新聞からしか現実には伺っておりませんが、これをどのように農林省としましては受けとめて、また御検討していらっしゃるのか、このことをちょっとお聞きをいたしておきます。
  153. 田中宏尚

    政府委員田中宏尚君) 農林水産省といたしましては、かねてから補助金の執行の適正方についていろいろ努力してきたところでございますけれども、五十八年度の会計検査におきまして、補助事業関係で五件、それから国有財産の管理が不適当ということで一件の指摘を受けているわけでございます。前年は十八件だったわけでございますけれども、十八件が五件に減ったということだけで喜んでいるわけでは決してございませんで、何とかこれが皆無になることを願って指導しているわけでございます。  それから、先ほども御指摘ありました集団育成事業につきましても、いろいろと会計検査なりあるいは行管等からも御指摘を受けているわけでございますけれども、農業なり農村の特性から言いまして、やはり集落段階での地道な積み上げの話し合いというものが、事業によっては必要なものがございますので、必要なものは守りながら、御指摘を受けましたものにつきましてはこの際見直しをして、整理すべきものは整理するということで、今回の予算編成に向けて内部でいろいろと検討を進めておるところでございます。
  154. 藤原房雄

    ○藤原房雄君 内部で検討して、検討の結果、一つ方向性の出たものもあるのですか。
  155. 田中宏尚

    政府委員田中宏尚君) 集団育成関係で、特に作物ごとにそれぞれ集落での話し合いをさしておるという経費につきましては、会計検査で御指摘のようなむだな点も若干ございますので、こういうものにつきましては、新規採択については来年から差しとめるという方向で予算編成に当たろうかと思っております。(「ちょっと突かれりゃすぐ制度の問題にするけれども、扱いが悪いのだ」と呼ぶ者あり)
  156. 藤原房雄

    ○藤原房雄君 今、隣からもお話ございましたように、私も、先ほど指摘されたからしり込みするというのじゃなくて、必要なものは必要なものとして御指示をしなきゃならぬだろうと思うのです。だから他省庁と違って、現場といいますか、お話し合いの場、いろいろなことを現場でしなきゃならない、そういうお仕事であるだけに、十分な趣旨徹底ということで、趣旨徹底が十分でなかった、趣旨が末端にまで徹底してないというのだったらこれはしなきゃならぬだろうと思うのですけれども、指摘があってすぐ方向転換するということだと、やっぱりやったことが悪かったのか。  いずれにしましても、ことしの米不足ということで大変に国民の関心も高まって、食糧ということについて消費者団体につきましても、自給率がこんなに下がっていることでいいのかという危惧を持つ、意見を持つ方々が非常に多い。そういう中にありまして、予算の獲得とともに、予算を執行するに当たりましては、十分に、誤解のないような効果的な進め方というものをぜひ今後進めていただきたい。何をやりましても、農林省がむだ遣いが多いのが一番、それからまた、いろいろ問題が起きるのも農林省ということでは、国民のために食糧安定供給をつかさどる農林水産省としましては、十分にその機能を発揮しているとは言えないのじゃないかと言わざるを得ません。非常に難しい時点にあることは十分わかりますけれども、一つ施策一つの事業というものを計画いたしましたら、誤解を生まないような趣旨の徹底と、その施策の完全な、効果ある成果が出るよ うに、今後の予算編成に当たりましてそういう点も十分に考慮して進めていただきたいと思うのです。個々の問題はいろいろございますが、一つ一つ申し上げる時間ありませんけれども、予算の今後の編成に当たっての積極的な取り組みと今後の予算に伴う事業推進について今後強い決意でそれらの一つ一つを効果あるものにしていっていただきたい、このことを強く要望しておきます。  それでは、水産庁長官に来ていただいていますので、漁業問題でちょっとお話をお聞きしたいと思います。  先ほどもお話をいろいろ申し上げたのですが、予算総額の中で今度は水産庁予算というのは、私も詳しく知っておりませんけれども、とる漁業から育てる漁業という言葉に象徴されるように、地元では工夫、考慮をしていろいろな事業を計画しているのであります。そういう中で、世界の海をまたにかけて、とりほうだい魚をとっているという時代、これは今大きく変わりつつあると言わなきゃなりません。そういう中で、魚礁の設置とかそれから増養殖場の増設とか沿岸漁場保全事業とか、こういうものに対する地元での要望というのは非常に強い。五十七年から第二次沿岸漁場整備開発計画が進んでいるわけですが、これの進捗状況、また今年度の予算等については現在どのように進められていらっしゃいますか、概略で結構ですけれども。
  157. 佐野宏哉

    政府委員(佐野宏哉君) お答えいたします。  水産関係の公共事業につきましても、農林水産省所管の他の公共事業と同じように、その進度につきましてはなお改善を要する点があるのは御指摘のとおりでございますが、その点につきましては、省内あるいは関係方面でも御理解をいただきまして、農林水産関係の公共事業の中で、言うなれば気は心という程度ではございますけれども、水産関係の公共事業の実態については御理解をいただいておるところでございまして、そういうことの積み重ねを通じて事態の改善を図っていきたいというふうに存じておる次第でございます。
  158. 藤原房雄

    ○藤原房雄君 長官がいらっしゃっておりますので、一つだけ、日ソ、ソ日の漁業協定についてお伺いしておきますが、今度の交渉が妥結して、今まで一年ごとでありましたのが今度は長期化することになったわけです。そしてまた漁獲割り当て等については、漁業委員会、実務レベルでいろいろ話し合うというととですが、大変な御努力によりまして何点か今までよりも前進した。それなりの評価をしなきゃならないだろうと思うのでありますが、ただ、ここで、漁獲割り当てがまだ決まっていないということで、やはりこれはいろいろな準備期間や何かもございますから相当な日数を要する。早期にやっていただきませんと、今後の対応というものに非常に業者としましては支障を来すのじゃないかというような危惧も言われておりますけれども、漁獲割り当て等についての今後の交渉の見通しというのは一体どんなふうになりますか、お伺いしておきます。
  159. 佐野宏哉

    政府委員(佐野宏哉君) お答えいたします。  御指摘のとおり、先般、日ソ地先沖合漁業協定の調印が無事済みまして、これから国会の御審議を賜る段取りでございますが、国会の御承認をいただきますれば、新協定に基づきまして日ソ漁業委員会を設置し、その中で漁獲割り当てとか操業水域に関する実態面の交渉を始めることになります。  それで、協定そのものは今申し上げましたように無事に調印の運びとなりましたが、実態面における交渉は、いろいろ難しい問題がございまして、先生指摘のような漁業者の皆さん方の一日も速やかな決着を待ち望んでおられるお気持ちは十分承知しておりますが、交渉の前途につきましては大変難しい問題が多いという感じを抱いております。ただ従来に比べますと、協定そのものはあらかじめ国会の御承認をいただいてから実態面の協議に入るわけでございますので、実態面の協議が調いますればすぐ出漁態勢に取りかかれるという意味では、従来のように協議が終わりました後で国会の御承認をいただくというのに比べますれば、漁業者のお立場から見れば早く準備に取りかかれるということにはなると考えます。
  160. 藤原房雄

    ○藤原房雄君 漁獲枠の交渉につきましては、これは国会の承認を得て今度はすぐ取り組めるのだということですが、巷間、漁獲割り当て枠につきましてもそのための隘路といいますか、それを決めるに当たりましての今日までの経過の中で、決定するに至るまでにその前に横たわる問題がいろいろあるのだということが言われております。国会で承認が得られればテーブルに着いて漁獲割り当ての枠がすんなり決まるというのでなくて、また昨年いろいろ提起になりました諸問題、何点か問題点がまた議論になるのだろうと思いますけれども、今後の交渉をするに当たりまして一番危惧する問題になるであろうということについても何点か指摘されております。水産庁としてはこれらのことについてはどのようにお考えになっていらっしゃるのか、お伺いしておきたいと思います。
  161. 佐野宏哉

    政府委員(佐野宏哉君) 詳細に立ち入ることは事柄が事柄でございますので差し控えさせていただきますが、一般論として申しますれば、近年ずっとそのような傾向がございましたが、特に本年我が国の二百海里水域におけるソ連漁船の漁獲状況が海況異変の影響等もございましてかつてないほど低調でございます。そういう事情でございますので、日ソ漁業委員会で実態面の協議に入りますれば当然ソ連側としてはソ連漁船の操業条件の大幅な緩和、あるいはそれが満足にいかない場合には裏返しとして日本漁船の操業規制を強化する、そういう形でできるだけバランスをとろうということを迫ってくるものと考えられますので、その点が何と申しましても実態面での協議での最大の難しさであるというふうに認識をいたしております。
  162. 藤原房雄

    ○藤原房雄君 今後の交渉にまたれるわけでありますから余り深入りして先走った憶測めいた話もどうかと思いますが、いずれにしましてもさっき長官も言われたように関係業者の方々は一日も早い妥結を望まれておりますし、ぜひ交渉については効果ある、また、業界の主張等を十分踏まえて臨んでいただきたいと思います。  次に、この前各県のいろいろな要望等を聞いておりましたのですが、さっきも申し上げましたが、沿岸漁場整備開発事業等、各県それぞれ推進をいたしておるようであります。私は当委員会でも申し上げたことがあるのは、去年の五月ですか、宮城県のあの松島湾のノリ養殖について、湾内のノリ養殖がある水域については湾内がだんだん養殖のできないような環境になって、ノリ養殖という仕事をやめなきゃならない方々がもう何十、何百世帯とありまして、こんなにたくさんの方々が転職しなきゃならないということになりますと、これは社会問題として大きな問題だろうということで提起を申し上げました。一部は湾外に養殖施設を設けてやっている。しかし、それも限られた方々でありまして、皆が皆できるわけじゃありません。それで、湾外というと、またそれに伴います船で行き来をしなきゃならないための燃費がかさむとか施設にお金がかかるとか、だれもができることじゃないわけであります。  ここ六、七年、松島湾の秋ノリの芽が脱落するという現象、これは地元の県や漁業組合でいろいろ今日まで取り組んできておるのですけれども、いずれにしましても原因究明というものが明確でないということで今日まで推移をしてきたのです。しかし、あんなにいいノリがとれていた湾内がどうしてこうなったのかということで、何か学者先生方にお願いしてもなかなか学問的に云々ということで解明ができない。こういう中で塩釜市の漁業協同組合の青年研究会という何人かの方々が中心になりまして湾の中で閉鎖海域での養殖テストをやりました。本年はオイルフェンスを張りまして、そしてずっと海流が急流のところでも余り交差しないようにフェンスをずっと長くしましてやりましたところ、そういう芽が落ちるということがなく、かつてここはすばらしいいいノリがとれたのだそうですけれども、ことしはやっぱりいいノリがとれたというのです。皆さん方に言わせると、それは学問的にどういうことなのかもう少し究明しなきゃならないということになるのかもしれませんけれども、事実は事実としてこの閉鎖いたしました中からもとのような立派なノリがとれたということです。  塩釜には東北区水産研究所があるのですけれども、ノリというのは非常に難しい一面もあって、専門家というのは何人もいないそうです。しかし、やはり地元で漁業にいそしむ方々は、かつてとれたものがとれなくなるということは生活上大変な問題であるとともに、なぜなのだろうかということでだれもがこの原因究明ということに当たらなきゃならない。新しくできた広域下水道の影響ではないかとか、いろいろな漁師は漁師なりの知恵を働かしてそういう問題については取り組みをするわけでありますが、ここへきてこういう若い人たちの研究グループが閉鎖的な水域をつくったところが、そこに昔のあの光沢のある黒いノリがよみがえったということなのです。これは県の方でも当然ある程度の補助金を出してやっておりますからあれなのですけれども、現在ノリ全体としては豊作年ですと生産が過剰になるということがあったりいたしまして非常に難しい一面もあるのです。それは価格面は価格面といたしまして、生産量の過剰は過剰としまして、そこに父祖伝来とれていたものがとれなくなるということはそこの住民にとりましては大変な問題でありまして、その原因究明と、過去とれたものが同じようにとれるような環境条件になるということは、漁民にとっては非常に重要な大事なことだろうと思います。  かつて、松浦水産庁長官のときも、当地の問題については十分に国としましても関心を持ち、このことについて協力を惜しみませんというお話もあったのですけれども、こういう事実がある。学問的なこれに対する研究のメスを入れるということも当然のことだろうと思いますが、今後ひとつ、沿岸漁場整備開発事業、いろいろな事業が進められておりますけれども、七年も八年もとれなかったものが、こういう形で研究が地元の方々によって進められておるということに対して、ぜひ国も大きな関心を持ち、これらの問題についてできるだけの協力を惜しまない、こういう姿勢が私は大事じゃないかと思うのです。そういうお取り組みをいただきたいと思いますが、どうでしょう、長官。
  163. 佐野宏哉

    政府委員(佐野宏哉君) お答えいたします。  先生指摘のとおり、本年の十月から十一月にかけまして松島湾の現地でノリひびの周囲をオイルフェンスで囲んだ場合、あるいは目の細かい網でノリひびを包み込んだ場合、いろいろな実験をいたしました。その結果、オイルフェンスで囲んだ場合、あるいは網でノリひびを包み込んだ場合には芽落ちがなかったという実験結果が出ております。それで、どうしてそういう効果が生じたのであるかという点につきましては、十二月に再度水質等の補足調査を行う予定をしておりまして、その結果も踏まえまして検討をすることにいたしております。  ノリの養殖につきましては、一般に水温とか潮流あるいはpH、そういった環境条件にも相当影響を受けやすいというふうに言われておりまして、今のような試験養殖の結果がどういう因果関係であるかということにつきましては、今後とも水産庁の東北区水産研究所も参加いたしまして、関係者と協力をして原因の究明に努めて、原因が判明次第適切な対策を講じてまいりたいというふうに考えております。
  164. 藤原房雄

    ○藤原房雄君 四十五年ですか、公害問題に対して数々の法律が検討された時点に、私は、予算委員会だと思いますが、日本周辺の漁場というものがどれだけ汚染が進んでいるのか、こういうことについての実態調査をすべきじゃないかということを提言したことがあったのですが、現在も赤潮等で非常に苦しめられて漁獲量が減っておるところがあり、大きな被害をもたらしておるところもある。この松島湾につきましてもこれは何らかの影響だと思います。四十五年から公害についてのいろいろな法律ができまして規制が厳しくなる。こういうことで、ある地域ではそういうもとのようなきれいな水が戻りつつあるというところも全国にはあるようですが、公害に対する意識がそれだけ四十五年当時から比べますと変わりつつあることは事実です。また、それに対する法的な裏づけというものもなされておるわけであります。  ところで、日本海全体の水質、海流の状態というのは当時から見ますと大きな変わりようがあるのだろうと思います。私は、過日、利尻とか礼文とか稚内の方へ参りましたときに、日本海沿岸の方々が言っておりましたが、最近は、漁師の立場として、敏感に日本海の海水というのは非常にきれいになったということを言っておりました。きれいになったことはいいことなのですが、一面から言うと、きれいな水に魚住まずといいますか、余りにもきれいすぎる。稚内等のコンブ養殖とかウニとかこういったところについては、昔は水産加工場の汚水がある程度流れ、そういう影響もあってコンブが立派に繁茂もしたものだ。しかし、最近はいろいろな規制もある。当然これは規制もなきゃならないわけであります。有機物質とか有害なものは流れてはなりませんし、また過度に汚染されることは規制をしなきゃならないのは当然のことだと思いますけれども、本来海があるべき姿というのは、当然これは五十億年の地球の生成の過程からいろいろな歴史があるのだろうと思います。とにかく生態系というものがまた云々されておりますけれども、海水の現状についても、最近はここ十年、二十年の公害だと叫ばれた時代から見ますと非常に変わりつつあるのではないかという感じがするのです。漁民の方は自分の生活の場、生産の場ですから特に強くそういう点は感じられているのかもしれませんが、私は公害というそういう一面からではなくして、沿岸漁業の振興ということの上から、やはり海流とか水質とかいろいろな問題についてこれを一度調査をする。局部的には、なぜ赤潮が出るのかとかいろいろな問題についてはなされておりますけれども、七つの海を駆けめぐって世界じゅうの魚をとっていたそういう時代から、一兆円以上水産物を買わなきゃならないような今日の日本。もっときめ細かに沿岸漁業というものを振興しようという今日でありますから、これは一度総体的な調査というものも私は必要じゃないかということを痛感いたしております。これは現実に漁業に携わる方々の声、それは本当に多年の経験の中からの言葉でもありますから、そういうこと等についても、何か言うとまた金がかかるということになるのかもしれませんけれども、そういう総体的な調査ということもあわせて、ぜがひでも一度これは全体観というものをつかんで、ただ漁礁をつくる、港をつくるという局部的なことじゃなくて、総体的な日本列島の海域についての調査というものをなされる必要があるのではないかと私は痛感をしているのですが、どうでしょう。
  165. 佐野宏哉

    政府委員(佐野宏哉君) ただいまの先生の御指摘もまことにごもっともでございまして、例えば先生から今お話もございました松島湾の海域について見ましても、松島湾の海域は水質汚濁に関する環境基準について言いますとこれはA類型が適用されておりまして、現在でも水質の監視の結果A類型の要件を満たしておるわけでございます。そういう意味では水質汚濁という観点から見れば、松島湾の海域について特段に不都合なことが起こっているわけではないのですが、先ほど来御議論のございますような芽落ちというような事態が起こっている。そういうことは、結局漁場の条件というのは水質汚濁というような尺度からだけでは一面的には捕捉しがたい。潮流の速さでございますとか、あるいは塩分濃度でございますとか、水温がどうだとか、pHがどうだとか、そういう問題がいろいろ複合的に一つ環境条件を含めて漁場条件を構成しているわけでありまして、そういう広い視野から漁場条件をもう一度見直してみるという必要につきましては、まことに先生の御指摘のとおりであろうというふうに私も思っております。
  166. 藤原房雄

    ○藤原房雄君 今お話ありましたけれども、ぜひこれは一遍にはなかなかできないことだろうと思うのですけれど、住民に騒がれて慌ててというのじゃなくて、また、そういう現象があらわれてということじゃなくて、一回ここで総点検しておく必要があるのじゃないかと私は思います。私は北海道の小樽だから、昔は本当にニシンがとれてどうしようもない、一体あのニシンはどこへ行ったのかという疑問。いろいろなことを言われていることはわかりますけれども、何も過去に執着するわけじゃありませんが、四十五年前後から見ますと、今日は非常に大きな変化を遂げている。その場その場の現象だけとらえて後追いしているというのじゃなくて、農林水産省も積極的な対応策というものを御検討いただきたいものだと私は思います。  水産関係については以上でございます。どうもありがとうございました。  先ほども同僚委員からASEANの市場開放問題についてお話がございましたが、今月の二十日に開催が予定されている関税率審議会にかけるために今週中にも対外経済問題等閣僚会議でいろいろ御検討、決定を見るみたいな報道なんか見ておるのです。農産物問題については先ほどお話がありましたから私はくどいことを長々申し上げませんが、総理が行ってお約束をしたり、また外務大臣が行ったり、こういうことで、農林水産省の頭越しに何かあったのじゃないか、こんなふうに憶測をせざるを得ない。今日まで自給力の強化ということについても巷間ようやく言われて、農林水産省もその対策を何とかしようということでいろいろやり始めたところでありますし、また牛肉の輸入枠拡大等につきましては当委員会でも十分な議論がございまして、総理大臣もまたこの委員会に出席なさって、日本農業を守りますと。私はこれは対外貿易をなくして何でも日本の国を閉鎖的にということを言っているんじゃ決してないのですけれども、まだ基盤も固まらないところへいろいろな影響を受けるということになりますと、今までの農林水産省の努力は一体何だったのかということになりますので、これは節度ある対応というものが必要だろうと思います。こういうことで、ASEAN問題についていろいろ言われておりますが、政府の見解をまずお伺いしておきます。
  167. 後藤康夫

    政府委員(後藤康夫君) 先ほども出た問題でございますが、私どもは我が国の置かれております立場から、国内の農林水産業との調整を図りながら、可能な範囲内で今までも市場開放に対する対応については努力をしてまいったわけでございますが、今御指摘がございましたように国内の状況が非常に厳しい中でございます。また、四月に対外経済対策を取りまとめたばかりということもございます。私どもは国内の農林水産業が犠牲にならないように十分慎重に対応をしてまいりたいということで、今種々検討を行っているところでございます。
  168. 藤原房雄

    ○藤原房雄君 次は、脱脂粉乳の緊急輸入についてお伺いしておきます。もう時間ありませんから一、二問だけ。  いろいろな経過については私が長々申し上げるまでもないだろうと思うのですが、十月に事業団の脱脂粉乳手持ち在庫の全量、脱粉四千八百五十トンを放出して事業団在庫がゼロになるというかつてないこういう状況になった。事業団の役割というのは、事業団で手持ち在庫があって、需給調整という役割も一つの役割だろうと思うのですが、ゼロになるということは一体どういうことなのか。こういう役割は果たし得ない。これはことしは暑かったために需要が非常に伸びたということがあったのかもしれません。  そういう中で、十一月輸入のときに八千トン緊急輸入するということですから、今までの酪農経営者の方々の心情からいたしますと、これは生産量の抑制という政策がずっと続いて、ここへ来てこういうことになるということは非常に納得いかぬ。在庫レベル等についての審議については、三月の限度数量の審議の時点でいろいろ議論があってしかるべきだったのだろうと思うのです。どんなにことし暑くて需要が大きく伸びたといいましても、そう三倍も四倍もふえたわけでは決してないだろうと思います。とにかく異常な暑さであったことは間違いありませんし、需要が伸びたことも、そしてまた暑さのために乳量が減ったということも、それは農家のところへ参りまして私どもいろいろお話は聞いておりますけれども、いずれにしましても長期の見通しというものについて余りにも経済合理性、当初に申し上げたそこへいくのですけれども、お米にしましてもこの事業団の在庫にしましても、極力そういうものを持たないような傾向、経費節減がこういう問題を生んだもとの根っこのところにあるのじゃないかという気がしてならない、うがった見方かもしれませんけれども。そこらあたりの事情について御説明いただきたいと思いますが、どうでしょうか。
  169. 野明宏至

    政府委員(野明宏至君) 今般の脱脂粉乳の輸入に当たりましては、国内生産の動向を見きわめながら、またただいまお話のありました畜産振興事業団の需給操作によります需給安定という点にもかんがみまして必要最小限のものとして行ったわけでございます。  その前提となりますことしの需給でございますが、御案内のようにことしの春限度数量を決めておるわけでございます。これは生乳の生産事情なりあるいは飲用乳なり乳製品の需給事情等を考慮して決めてまいっておるわけでございますが、いずれにいたしましても過剰による飲用乳市場の混乱とか過剰による乳製品の大幅な在庫というのはいろいろな問題を引き起こすわけです。したがいまして、計画的な生産というようなことによりまして安定的な生乳生産の拡大というものを図っていくことが酪農にとって必要ではないかということでことしの生産が進められておったわけです。  そういう中で、ことしの夏、五十三年以来と言われます大変な猛暑によりまして、脱脂粉乳の需給につきましては生産は減る、消費は非常にふえるというふうなことでタイトになってまいった。そういう中で、事業団在庫の放出を行って対処するとともに、ただいま申し上げましたような必要最小限の手当てを行う必要があるというふうに考えられて今般の措置をとったわけでございます。
  170. 藤原房雄

    ○藤原房雄君 大臣、お米についてもことしはかつてない不足を来し、加工米とかなんとかいろいろ言われますけれども、そういうことから備蓄ということがにわかに議論になってきまして、当委員会にも総理大臣出席をいただいてこの問題についていろいろ議論ありました。今後のまた課題だろうと思います。  酪農につきましても、これは畑作とは違って非常に大規模経営で、負債を抱えて経営の安定がいまだしもならずという非常に重要な部門です。生産性は逐次上がりつつあり、EC並みと言われていますが、それは既存の方々はそういう状況の方々もいらっしゃいますが、やはり経営してまだ年数のたたないところの方々は大規模化したために負債を抱えて大変な苦境にある。それが生産を抑制しなきゃならないということで四苦八苦しておる中にあって、長期債務のいろいろな施策もしていただきましたが、それは一部の方々であって、酪農の大きくした方々は、そしてまだ年数のたたない方は今大変な窮状の中にある。こういうことから、先ほど申し上げましたように、事業団の在庫がゼロになって輸入しなきゃならぬ。不足すれば輸入すればいいのだという安易なことじゃなくて、やはり当初の適正在庫というものも、お米の備蓄じゃございませんが、非常に難しいですけれど、これはきちっと確保する。  とにかく、在庫すればそれだけの倉敷料やまた余分に金がかかるのだというようなことで、経済合理主義一辺倒でそういうものをなるべく削り取ってそれで不足すれば輸入すればいいということでは、肝心の国内生産、国内農業というものを死滅させるもとになるのじゃないでしょうか。運営上はそれは安易でいいかもしれませんが、農林水産を振興しようという農林省としてはそんな安易な道はとってはならぬと思うのです。今度年明け早々、また明年度のいろいろな問題を審議するわけですけれども、この点については十分にお考えいただきたい。  それから、先ほど水産関係に申し上げたのですが、海の実態についてもよく調査をしてもらいたい。悪くなってから慌てふためいて調べるというのじゃなくて、こういう財政事情の中ですから、お金のかかることはなかなか大変なことでしょうけれども、後追い後追いでやっているのじゃなくて、ひとつ佐藤大臣、積極的なお取り組みをいただきたいと思いますが、総括して御答弁いただきたいと思います。
  171. 佐藤守良

    国務大臣佐藤守良君) 脱脂粉乳の輸入につきましては今畜産局長がお答えしたとおりでございまして、酪農経営家の実態も踏まえ、そして需給、価格の動向、在庫の水準等をにらんでやむを得ずした、このように考えております。  今藤原先生のおっしゃった点につきましては、厳しい予算でございますが、そのような形で対応いたしたい、このように考えておりますので、よろしくお願いいたします。
  172. 藤原房雄

    ○藤原房雄君 食糧庁長官、もう時間もございませんので本当に申しわけございません。細かくいろいろお話ししたいと思ったのですけれども、手持ちぶたさにさしてしまって……。  長々と経過をお話しする時間もありませんから端的にお聞きしますが、他用途利用米についてはことしいろいろ問題提起になりました。六十年度もこれは進めるわけでしょうし、明年度の他用途米の推進についての基本的な農林省の考え方は大体固まっていらっしゃるのだと思いますけれども、その点についてことしのいろいろな問題点を踏まえて明年はこういうことで万全を期していく、こういうふうに考えている、その点ひとつお伺いしておきたいと思います。
  173. 石川弘

    政府委員(石川弘君) 本年度の他用途米につきましては、いろいろ現地対応につきまして問題がございましたので、私どもさきの中央協議会の場で転作等の考え方を御説明しました際にも、六十年度におきましては他用途米生産が定着するようにということでいろいろと御相談をしたわけでございます。総量につきましては約二十七万トンが必要だと思っておりますが、これにつきまして各都道府県に極力一律ということを避けまして、地域におけるまず基礎になりますものはことしの契約いただいた数量、その地域が米生産にどのような比重を持っているかというようなこと、それから転作につきまして、米以外のものがむしろ定着するということであればそういう事情等を考慮いたしまして、十一月の下旬でございますが、仮のものを一つ農政局、県を通じまして行政サイドから、もう一つ農業団体を通じまして各県の農業団体に示しまして、どういう形で受け入れられるかということを調整中でございます。現在若干の調整漏れがございますので、これを進めるよう農業団体なり行政サイドでお願いをしておりますが、多分近々両サイドからのお答えがあると思いますので、そういう目標を各県にお願いするということを決めたいと思っております。  それから、内容的に申しますといろいろございまして、例えば価格の水準の問題、これは五十九年度自身がまだ価格の水準が協議中でございますので、こういう価格の水準の問題も一つございます。  それから大変難しいことでございますが、かねがね規格問題につきましても御議論がございます。他用途米を今の三等よりも下のくず米の水準でやるというようなことでございますと、これは何ら量もふえませんし、従来助成もなく動いたものを他用途米にするということですから、こういうことは困難なわけでございます。したがいまして、規格問題というのはかなり主食の世界との間の話となりまして、大変ある意味では難しい。要するに、今主食として通用するものをそれ以外のものにするという案がございますから、大変難しい問題でございますが、やはり論議はすべきものと考えておりますのでそういう問題、それから当然これの流通につきまして不正規の流通があってはならぬということでございますので、その問題をさらに詰める。大体そういう点がペンディングになっておりますが、これも関係団体あるいは都道府県等にもよく御相談をしまして、六十年産米の実施までに結論を得たいと思っております。
  174. 下田京子

    ○下田京子君 私はまず最初に、アフリカの飢餓救済と食糧の緊急援助問題でお尋ねしたいと思います。  アフリカの食糧不足国というのは二十七カ国にも拡大されておりまして、その飢餓人口というのはアフリカ全人口の約三分の一、一億五千万人とも言われておりまして、二千万人の人々が死線をさまよっている。昨夜も「アフリカ飢餓地帯」というNHKの報道もございました。そして食糧輸送用のトラックをと言いながら次々と子供たちが亡くなっていくというような実態を見ておりまして、本当にこれはもう人道的に何とかしなければならないと思いました。一刻の猶予もできない課題であるというふうに重ねて感じました。  我が党はアフリカの飢餓について見解を発表しておりますし、同時にその救済の運動を支持し、発展させるために去る七日に外務大臣にもお会いいたしまして、とりあえず無償援助を大幅にふやせということを申し入れました。そのとき外務大臣がお答えになったことは、アフリカ援助の趣旨には賛同するし同感だ、政府も全力を挙げたいということで三点、来年度の緊急援助を強めたいというのが一つ、二つ目には、中長期的に農機具あるいは技術者などアフリカ農業発展のための基盤整備の強化に力を入れたい、三つ目に、対外債務の金利棚上げは引き続いてやりたい、こういう話がございました。  私は初めに外務省にお尋ねしたいのですが、実際に今外務省が考えている緊急食糧援助の中身というのはどんなものなのだろうかということなのです。対アフリカ食糧関係援助では、五十九年一月から八月までに既に一億一千五百万ドル、日本円にして二百六十三億四千万円出していますし、さらに十一月十四日から二十三日まで外務大臣が現地を訪れた際に、十九日、アジスアベバで追加援助なるものも発表しております。その中身を見ますと、緊急食糧援助四十億円などざっと締めて百十七億円、ドルに換算して五千万ドル、こういうことなのですけれでも、これは今年度中の問題でありまして、来年度具体的にしかも緊急食糧援助という格好でどのようなことを考えられているのか。
  175. 竹内行夫

    説明員(竹内行夫君) 我が国食糧援助は無償資金協力のもとでやっておりますけれども、その中で大部分を占めておりますのは、これは予算は大蔵省の方に計上さしていただいておりますけれども、いわゆるKR食糧援助というものでございます。下田先生御案内のとおり、従来から大体約五割をアフリカに向けているわけでございます。今年度につきましては五割以上をアフリカに向けるべく現在鋭意作業をしているところでございます。来年度の点につきましては、これまた今後の国会で御審議いたします来年度予算の問題ということで、何とも今の段階では申し上げられませんですが、現在大蔵省の方で来年度のKR食糧援助として概算要求をしておりますのは合計二百十六億円、これは今年度と比較いたしますと一六・七%の増でございます。これが認められますと、日本食糧援助も今年度よりもさらに全体がふえるということでございます。
  176. 下田京子

    ○下田京子君 農水大臣にお尋ねいたします。  今の食糧援助なるものは、所管は外務省なのですが、予算は大蔵省計上。今の御答弁のようにKR援助が中心で、五十九年百八十五億円で、来年度の概算要求段階では二百十六億円なのですね。これは小麦換算で三十万トンの最低拠出義務援助というものがございますが、それをわずかに二、三万程度上乗せしたにすぎないのです。これでは来年度の緊急食糧援助を強めるという外務大臣数字にも私は乗っていないように思うのです。それは外務省は外務省で検討いただくことにしますけれども、そういう状況の中で、直接的に今飢えで苦しむ人たちに緊急な援助をどうしていくのかというのは、やはり食糧担当大臣としても予算が大蔵だからということでほうっておけない問題だと思うのです。  農水省が来年度予算で既にどんなものを出しているかというのはもう伺っております。私の方から言いますが、構造改善局の方が、既に海外農業開発事業に係る調査、データの収集、調整等ということでもって五千万円、砂漠化防止の調査費を組んでおります。そのほか経済局が二点ほど、国連環境計画拠出金ということで新規に六千万円、もう一つはアフリカ地域食糧農業事情研究実態調査ということで五千五百万円、これもどんな技術が援助可能なのかという調査なのですね。今から調査して云々と、これは非常におくれているような感じもするのですが、それでも最低つけないよりはつけた方がましです、必要ですから。私が言いたいのは、とにかくどういう格好で緊急な食糧援助を考えていくかということなのです。飢えをしのぐのには食糧が必要なのです。そういう立場から大臣の御認識と御決意を聞かしていただきたい。
  177. 佐藤守良

    国務大臣佐藤守良君) 先生にお答えします。  私もテレビ、新聞あるいは外務大臣の報告等を聞きまして大変なことだと認識し、これを何とかいたしたいという考えは持っておるわけですが、当面の措置と長期的な措置と両方二つあると思います。当面の措置とすれば食糧援助を強化するということでございますが、実はこれは率直に言いますと外務省、大蔵省の予算でございまして、基本的には農林水産省は余りタッチできないという立場にある。したがって、私どもとすれば、やはりアフリカ諸国自身が自助努力により農業振興を行うことが重要だ、そんなことをもちまして実は一番大切な技術協力等の問題に大いに協力いたしたい、こういう考えをもって進めておるわけでございます。
  178. 下田京子

    ○下田京子君 大臣、私は質問のときに、中長期的なことは必要です、それから根本的な援助のあり方も考え直さなきゃならないですよということと同時に、今緊急に食糧援助する、それは外務省だ、大蔵だと言っておれない、どうなのですかといって聞いたのです。なぜならば、今必要とする穀物援助量というのは約四百万トンとも言われておるのです。実際に約束されているのは九十万トン、こういう状況の中で国連のデクエヤル事務総長も、緊急に食糧援助会議を開催したいというようなお話もされております。そういう点から大臣考え方を再度……。
  179. 佐藤守良

    国務大臣佐藤守良君) 先生のおっしゃることはよくわかります。私としても、そういう意味におきましては外務、大蔵両方によくお願いし、一トンでも多くの食糧を送れるように努力いたしたいと考えております。
  180. 下田京子

    ○下田京子君 それが大事だと思うのです。食糧生産に責任を持っている大臣の姿勢だと思うのです。  特に援助のあり方なのですが、人道的見地に立った援助政策というものがこれから必要だ。八三年の実績を見てみますと、政府無償援助では、アフリカの食糧不足国二十七カ国中、援助相手国は二十カ国なのです。援助総額は合計で八千六百万ドルです。ところが一方、アメリカの世界戦略に沿った形でのその拠点と言われる、例えばフィリピン、タイ、インドネシアの三国だけでも無償援助額というのは約一億一千万ドルを突破しているのです。これを改めただけでもアフリカへの直接的食糧援助というのは可能になると思うのです。そういう点では山村前農相も、去る九月でしたか、ローマの国連食糧農業機関本部でサウマ事務局長と会談した折に、これまでアジア地域に偏っていた農業分野のそういう開発援助もアフリカ向けにもっと広げていきたい、そしてアフリカ諸国の農業振興のために自助努力ができるように支援していきたい、こういうふうなお話をされていたと聞いております。そういう立場からのやはり対応が必要だろう。改めてそういう点から飢えるアフリカの子供たち、もうこの一年間でも十人のうち七人が亡くなっている、痛ましいじゃないですか、よろしく積極的に働きかけてください。
  181. 佐藤守良

    国務大臣佐藤守良君) 山村前大臣と同様に、大いに頑張っていきたいと思っております。
  182. 下田京子

    ○下田京子君 そこで、頑張っていくという点で、さっきも実は農水省が全く関係ないようなお話をされておりましたけれども、一九八三年の場合ですと、食糧援助をする際に中央アフリカに日本米を四億七千九百万円、それからまた、モザンビークには日本米をやはり四億六千四百万円という格好で援助しているのですね。だから予算は大蔵、所管は外務ということだけれども、援助物質は食糧庁が預かっているのです。ところが、その援助物質なる日本米がないという実態になっているのです。となりますと、第三国から買いつけて、そして援助ということになりますと手続上も大変で、緊急援助になじまない。しかも、買いつけようという第三国で絶対的に食糧が足りなかったらそれすらもできないということになると思うのです。そういう点で大臣、先進国である日本が果たすべき役割というのは何か。自給率向上というのは、日本の国民の食糧を安定的に供給するということのみならず国際的な責務であるという自覚が必要だと思うのです。この点いかがですか。
  183. 後藤康夫

    政府委員(後藤康夫君) 日本米を食糧援助に使用したことはございますが、これは御案内のとおり、過剰米の使途の一つの姿として行ったものでございまして、実は食糧援助につきましては、KR食糧援助のときにもそうでございますが、できるだけ開発途上国の食糧を使って食糧不足地域に持っていくという原則がございまして、援助を目的にして特定の生産をするということは国際的にはなかなかやりにくい状況になっているわけでございます。
  184. 下田京子

    ○下田京子君 局長はそれでも実際に責任を持った立場に立って物を言われているのでしょうか。今飢える子供がいるときに水を上げること、食糧を上げること以外に何をやるのですか。そういう点で、やりたくともお米がないというのが現実でしょうと聞いている。余ったものをやれなどということを言っているのではないのです。つまり、お米のゆとりある需給計画そして備蓄のあり方ということも考えなければならない、そういう意味自給率向上というのは国際的責務なのだという自覚が必要でしょう、こう申し上げました。  次に、同じように根本的なものは、これはユニセフ、国連児童基金などでも指摘しておりますけれども、最も非人道的な戦争準備のための軍事費を増大させているけれど、世界の一年間の軍事支出のわずか百分の一の資金があったら人類家族の最も貧しい人々の健康と栄養、そして生産能力を向上させるのに大いに役立つのだというふうに指摘されております。根本的にはそういう飢餓克服のための大胆な軍縮ということも必要だし、中長期的に見たそういう自国で農業生産食糧生産が賄えるような援助ということも必要だというのは当然なのです。大臣どうです。
  185. 佐藤守良

    国務大臣佐藤守良君) 実は先生へのお答えに議論の一つとしまして、ただ日本の財政事情もございます、向こうもよくわかりますと。そして日本のお米の場合はコストが外国の約三倍ぐらいという点もございます。そういう点を踏まえて、どうして効率的に実は援助するかという問題もあるわけでございます。そんなことでそういうものを踏まえて、特に農林水産省は農林水産省の立場を考えながらどうするか。その意味において緊急的な問題で外務省、大蔵省によくお願いするとともに、やはり一番問題なのは自助努力だと思っております。  それからもう一つは、これは私は二十七カ国について見ておりますと、むしろその国の政治家がもっと考えるべきこともあるような気がするのです。そのことを踏まえて私はこの問題に取り組みたいと考えております。
  186. 下田京子

    ○下田京子君 それは他国の政治的ないろいろな事情があるでしょうが、私はあくまでも人道的な立場から今緊急な問題の食糧援助のあり方で聞いています。それは否定されていない。しかしその点で、否定されていないけれども、具体的に援助の手が伸びてない、これも事実なのです。それが本当に先進国日本の姿だ、これが豊かな国の日本だと言えるのだろうか。みずからが反省すべきことを私は投げかけられているということを申し上げておきます。  それで、自給率向上の問題なのですけれども、実際に日本はどうかというと、むしろどんどんもう輸入国になっているという実態でしょう。先般も大臣は、発展途上国の市場開放問題についてはこれ以上の市場開放はできないというふうなことできっぱり拒否された。これは私は大変立派だと思うのです。その点で局長の方に聞きたいのですけれども、本日付の農業新聞に大きく報道されておりますタイの骨なし鳥肉関税の引き下げ問題なのです。進出商社が火つけ役だ、制度逆手に開放を迫っていると。何ということはない、日本の商社が現地で開放を迫っているというわけなのです。この事実は御存じだと思うのですが。
  187. 野明宏至

    政府委員(野明宏至君) タイに対しましては、我が国の国内で鳥肉生産に関与しております商社がタイでも合弁企業を設立いたしまして、鳥肉の生産処理を行っているという企業があるということは事実でございます。
  188. 下田京子

    ○下田京子君 こういう実態は承知していると。だから当然さきのような大臣の姿勢はわかるわけなのです。また、発展途上国の要請についてということで農水省が反論された文書をまとめられていて、今の鳥肉のところでは、特に骨なし鳥肉は国内生産は今の骨なしでやられている、しかも大型が中心だ、だからもうましてやそういうことに応じられない、こういうふうに今言われているのです。そういう立場を貫かれるというふうに私は御信頼を申し上げたいのですが、大臣の決意をお聞きしたい。
  189. 佐藤守良

    国務大臣佐藤守良君) この間も申し上げましたが、実はこの間ASEAN諸国の方がお見えになりましてその問題がございまして、輸入がタイから四〇%ふえておりまして、それからアメリカが二〇%減っておるという事実を申し上げまして、私は断固その考えを貫きたい、こう思っております。
  190. 下田京子

    ○下田京子君 次に、ASEANからは農産物の輸入額が三十七億ドルで、米国の九十億ドルに次いで第二位だ。ASEANには断固拒否するということで、ではアメリカ政府に対してもそういうきっぱりとした態度で臨めるかどうか。特に新年早々中曽根総理が訪米され、レーガン大統領と会うわけですが、そういう点できちっとした態度を総理に申し伝えるべきだと思うのですが。
  191. 後藤康夫

    政府委員(後藤康夫君) 日米間の重大な懸案でございました牛肉、かんきつ等の日米間の貿易問題につきまして、本年四月に決着をいたしておりまして、農産物貿易の分野では日米関係は一応平穏な状態に現在なっております。農産物の市場開放問題につきましては、もう大臣もかねて述べておられますように、我が国農業を守る、農業者が犠牲にならないようにということを念頭に置いて対処していくということでございまして、私どももその大臣の御方針に従って対処していくつもりでございます。
  192. 下田京子

    ○下田京子君 大臣はきちっとした態度で臨むということで、事務方もその立場で臨む、これは大いにやっていただきたいのです。ただ、今までも経過を見ていますと、いつもそうは言っていた。結果としてしかしやはり、同じ内閣の一員としてやむなく涙を流す。国内農民がまた犠牲になる、また国民が犠牲になる、そういう繰り返しが今までの歴史だったと思います。  これは大臣からお答えください。ことしの九月に日米諮問委員会がまとめられましたものがございます。この諮問委員会がまとめられた中身ですが、この委員会が設けられたいきさつというのは、一昨年、中曽根総理が訪米してレーガン大統領と話し合って設置されたものです。その中には何と書いてあるかというと、「農産物貿易の自由化に向けての顕著かつ着実な前進が必要」なのだというふうにうたっております。それにきちっと反論できるのかどうか。ましてや、これも外務省からいただいておりますけれども、アメリカ議会でも大変な攻撃がかけられておりまして、米国は全農産物に対する残存輸入制限の撤廃を今後とも日本政府に求めていくこととしているというふうに言われている。それでもちゃんとした対応をされますね。
  193. 佐藤守良

    国務大臣佐藤守良君) 実はその諮問委員会の報告書を私もざっと読みましたけれど、いろいろ問題点が多いと思っております。そんなことで、そういう状況がございますが、中曽根総理も日本農林水産業について非常に心配して、農林水産業を守るという立場を考えておるというようなことがございますし、私は担当大臣として責任ある態度でこの問題に対処いたしたいと考えております。
  194. 下田京子

    ○下田京子君 これ以上の市場開放はきっぱりと返上しますということですね。
  195. 佐藤守良

    国務大臣佐藤守良君) 再三申しておりますように、日本農業を守り農業を犠牲にしないような形で進めたいと思っております。
  196. 下田京子

    ○下田京子君 明確じゃないでしょう。これ以上の市場開放は譲れない、そういう立場で臨みますね。
  197. 佐藤守良

    国務大臣佐藤守良君) 実は先生に申し上げているとおりでございまして、一番大切なことは日本農業を守り、農業に被害を及ぼさないようにすることが大切でございますから、その考えで進みたいと申しておるわけでございます。
  198. 下田京子

    ○下田京子君 そういう立場をとれば、これ以上の市場開放はないというふうに理解させていただきます。  今いよいよ来年度の予算についての作業が大詰めになってまいりました。私はこの予算問題で一点基本的な認識をお伺いしたいのです。  大臣、私は先般北海道に行ってまいりましたが、上川、空知、これは米作地帯なのです。ことしは一一四という史上最高の豊作だということで、気持ちの上では皆さんほっとされているというふうに言われていたのです。ところが、現地に行ったらそれどころじゃないのです。どうしてかといいますと、転作奨励金はカットされた、しかも安い他用途米をたくさん出さなきゃならない、ですから実際に農家の収入はふえていない。そして、むしろ驚いたことに、今までは酪農地帯、畜産地帯だけでしたが、何と米作地帯に借金、負債額がどんどんふえてきている。長年苦労されてきました年輩の農家の方が、上川でここ二、三年とても生きていくのが大変になったというお話をされました。それから、これは空知なのですけれども、三十代半ばの方、立派な後継青年ですが、二千九百万円の負債を抱えて離農せざるを得ないと面と向かって言われた。本当にショックでございました。  こういう中で今、予算編成の作業が進められているのですけれども、さっき農業者に有利な金利というのは何かと言ったら、それはもう低利でそして長期なものなのだというお話がございました。とすれば、農林漁業金融公庫の金利引き上げなどということは私はないと思うのです。また、農業共済などの掛金国庫負担の引き下げなどということもないと思うのです。あるいは農業者年金の給付額の引き下げなどということもないと思う。そういう制度改悪というようなものを盛り込んだ六十年度予算というのはこれは大変なものだなと、その辺をしっかり踏まえて農業者に大打撃が及ばないようなそういう姿勢が私は必要だと思うのです。
  199. 佐藤守良

    国務大臣佐藤守良君) お答えします。  実は先生御存じのことでございますが、毎年農林予算が低下していることについて非常に遺憾に、残念に思って、大変農林水産業がやりにくいということは事実でございます。そんなことでございまして、今私が考えておりますのは、八月の概算要求をどうして守るかということを考えているということで、全力を挙げまして今やっておるわけでございます。そういうことで生産者の向上を図りつつ、需要の動向に応じた農業生産編成等を進め、総合的な食糧自給力維持強化等は図 るために必要な予算の確保に全力を尽くしたい、こう考えております。
  200. 下田京子

    ○下田京子君 年々予算が下がっているのは残念だと担当大臣はいみじくも述べられましたけれども、この三年間で連続マイナスのために何ともう六・三%、金額にして三千億円カットされているのです。  具体的に共済制度の問題でお尋ねしたいのですが、時間もございませんから実態をちょっとお話ししたいのですけれども、大蔵省が農業災害補償制度の問題点ということで、第一に農作物共済の掛金国庫負担について個人に対して五〇%以上の補助は問題だ、それで臨調答申、行革審答申もそう言っている、この高率補助の見直しをせよということで、一律五〇%にすべきだというふうな大変な攻撃がかけられてきているというふうに伺っております。  仮に一律五〇%ということにした場合に、一体農家負担はどうなるのだろうか。五十八年度で試算をしてみました。試算してくれと言ったら、数字を出してくれなかったから試算しました。そしてわかったのですけれども、水稲ではアップ率二二・四%、陸稲では六六・九%、そして麦では五六・四%。金額にするとどのくらいかといいますと、そのために水稲全体で七十億八千八百万円、陸稲が一億六千万円、麦で二十九億九千四百万円、ざっとこれだけでも百二億四千二百万円、こういう農家負担が明確になっております。そして特に掛金率の高い、つまり高被害地、高知県なんかの場合ですと、農家負担が四七・四%もアップ、北海道は三七・一%アップ。一戸当たり平均三万六千円の負担増、これは大変なものなのです。こういう大打撃を与えないという点で臨んでください。
  201. 後藤康夫

    政府委員(後藤康夫君) 農業共済の掛金の国庫負担につきましては、今下田先生からもお話がございましたけれども、一般的に五割を超える補助率というふうな問題のほかに、被害率の高いところというのは掛金率が高いわけでございますが、そういう掛金率の高いところほど国庫負担率が高くなるという仕組みがいいのかどうかというふうな、現下の水田利用再編を進め、一種の共済をやっているということとの関連等々がございまして今検討が進められているわけでございますが、現在までのところまだ結論を得るには至っておりません。ただ、先ほどもちょっと申し上げましたけれども、農業災害補償制度は農業関係の災害対策の一番基幹になるものでございますので、この制度の運営に支障が出るというようなことのないように配慮してやってまいりたいというふうに考えております。
  202. 下田京子

    ○下田京子君 北海道の五十九年の水稲共済で一体どういうことになるのかという負担増、共済組合ごとに試算して資料をいただいてまいりました。詳しく述べる機会はございませんけれども、国庫負担割合が五〇%になった場合に、全道平均で一戸当たりの負担増は四万二千円、特に被害率の高い組合で網走支庁の生田原では農家負担が五八%アップ、女満別では一戸当たり負担が十三万五千円増、何と三十八万九千円という掛金、これじゃ共済として農家負担の限界を超えてしまうことは明確であります。ですから大蔵が言われているような対応にこたえては成り立たないということを申し上げておきます。  もう時間になりますから、資料要求をお願いしたいのですが、最後に大臣のお答えをいただいて資料要求しますが、水稲共済の当然加入の基準を二十アール以上、あるいは二十五アール以上、三十アール以上とした場合の農家の戸数と引受面積の実態がどうなるのか、この資料を一つください。  それから二つ目の資料は、水稲、陸稲、麦共済の掛金国庫負担を五〇%とした場合の都道府県別の農家負担増がどうなるかという資料をください。  この二点の資料要求をし、かつて危険の高い地域においては相互共済のみでは掛金率も高くなって、もう農家が大変だというようなところから出発したこの共済制度を崩さないという決意をお聞かせください。  質問を終わります。
  203. 北修二

    委員長北修二君) 簡単にやってください、時間が大分過ぎましたから。
  204. 後藤康夫

    政府委員(後藤康夫君) ただいまの資料の御要求でございますが、当然加入基準を引き上げた場合、あるいは国庫負担率を引き下げた場合というような一つ前提条件を置いての試算ということでございますので、検討さしていただきたいと思いますが、委員会で正式に御要求があったことでございますので、その検討の結果を委員長に御報告申し上げたいというふうに思います。
  205. 北修二

    委員長北修二君) わかりました。
  206. 佐藤守良

    国務大臣佐藤守良君) 農業災害補償制度というのは農業災害対策の基本でして、農業経営の安定に大きな役割を果たしたということは御存じのとおりでございます。そんなことで、農家の保険需要に即した制度の拡充、改善あわせて掛金国庫負担のあり方等、制度運営の効率化について検討してまいりたいと思っております。
  207. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 私は、まず大臣にお尋ねいたしたいと思います。  中曽根内閣も戦後政治の総決算という旗印で熱を上げておられます。したがいまして、その基本姿勢に沿うてそれぞれの分野もまた見直すことは当然であります。そういった見解に立って農林水産政策基本方針を、新しい大臣はどのように考えておられるかということをお聞きしたいわけですが、その裏づけに、例えば日本経済成長率の低下、あるいは食糧、木材需要の停滞という点から、生産価格の低迷による経営の悪化、こういった情勢のもとで行財政改革推進、それから諸外国の市場開放要求の激化という情勢があるわけですが、これを踏まえて新しい大臣は、農林水産大臣としてどのような姿勢で、どのように日本農業政策を見直していこうという姿勢を持っておられるか、それをまず最初に伺いたいと思います。
  208. 佐藤守良

    国務大臣佐藤守良君) お答えいたします。  先生御存じのように、日本農林水産業の内外ともに厳しい状況御存じのとおりでございます。内においては、米と一部農産物の需給不均衡、あるいは規模拡大の停滞、それからまた行財政改革推進、また外におきましては、先ほどからいろいろ質問がございましたようなことでございますが、相次ぐ市場開放の要求等で大変厳しい状況になっておりますが、私といたしましては、やはり一番農林水産行政推進に当たって大切な、総合的な食糧自給力維持強化基本として生産性向上を図りつつ、農業生産の再編戒を進めるなど、各種の施策を展開してまいりたいと思っております。  実は、私は前にも申し上げましたけれども、農林水産大臣になりまして一番考えるべきことというものを三つ考えた。その一つは、農業は国の基本だということです。それに日本の地理的条件等を踏まえまして、食糧安全保障ということが強く入ったと思います。そういうことの中に、とにかく経済性をどうするかということ、殊に市場開放をどうするか、この三つの点を実は考えながらこれから農林水産業を進めたいと考えたわけです。そういう形の中に、やはり日本農林水産業、今は自給力一つとりましても、わずかに主食の米だけが自給率一〇〇%、しかもこれもある場合には天候によって左右される、それが日本現状、そんなことでございますゆえ、とにかく足腰の強い農業をつくる、そんなことで農業経営者が本当に楽しめる農業環境づくりをしたいということを実は考え農業は国の基本ということ、一〇〇%というような立場で進めたいということが私の基本政策でございます。
  209. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 ただいまの大臣基本姿勢を踏まえて次のことをお尋ねしたいわけなのですが、今おっしゃったような姿勢でもって日本農政あるいは政策を実現していくためには、予算の裏づけということが伴わなければ、これは単なるアドバルーンにしかすぎないということになるわけであります。その予算面から少し分析してみたいと思うのですが、まず一つ方向づけは、対前年比という視点から眺めますと、五十八年度の対前年比は二・五%のダウンということになっております、マイナス二・五%。五十九年度予算は対前年度比という見地からするとマイナス四・一、いわゆる四・一%ダウンということになっております。六十年度は、概算要求ですが前年度当初予算を踏まえて比べましてもマイナス二%。年々ダウンをしておるわけなのです。  それからさらに、今度は農林水産予算が全予算に占めるウエートというものがどうなっておるかというこの点から眺めますと、大きくはしょって一つは四十年代の農林水産予算は、一つの十年でくくって、一般会計予算の占めるウエートが約一〇%程度なのです。それが五十年代になりますというと約九%にダウンしておる。それが五十六年度以降はさらに約六%台にダウンいたしております。相当農水予算の面からも年々ダウンしてくる。今度は、日本の全予算に占める農林水産予算の比較からもこのようにダウンしてきておるわけなのです、毎年減額しておる状態。おっしゃることと予算の裏づけと裏腹になってあらわれておるように理解いたします。  そこでお尋ねしたいことは、農林水産に関するもろもろの施策がこのような状態の中で十分に実施できると、こう胸を張っておっしゃれるかどうか、大臣の真意をお聞きしたいのです。
  210. 佐藤守良

    国務大臣佐藤守良君) お答えします。  先生もよく御存じの上で御質問いただいたと思うわけでございますが、私はこの予算はまことに遺憾だと思っております。実は私、大臣になる前はもっと農林水産予算は多いと思っておりましたけれども、なってみますと実は少ないので、しかも毎年低下率が大きいので、これはいかんなということで思っておるわけですが、そういう形の中に、実は次官以下役所の人がよく頑張っておりまして、いかにして総合自給力を上げるかとか、あるいは農林水産省の使命を十分理解して、そういう苦しい中に効率的、重点的に予算をつけて国民の期待にこたえるというようなことで敬服いたしておるわけでございます。そんなことで、ことしの予算は何とか概算要求を確保いたしたいというようなことで今お願いしておるという現状でございます。
  211. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 何とかとおっしゃる気持ちもわからぬわけではないが、特に農林水産大臣の使命というのは、国民の命、暮らしを預かっておられる、しかも日本発展と繁栄の根拠をつくるところのそのエネルギー源の農水省であるわけでありますから、厳しい厳しいということで押しつぶされたのじゃ、これは一つの逃避にしかならないのじゃないか、そこを乗り越えていくところに私は農水大臣の本当の真骨頂があり、存在の意義があると思うがゆえに、あえて厳しいこともわからぬわけではないがむちうちたいという、そういう気持ちで申し上げておるわけであります。  そこで次に、今の日本農林水産政策を沖縄の開発にどのように結びつけてもらうべきか、こういう観点から申し上げたいと思うのでありますが、まず一つの私の哲学を申し上げますと、政治は愛情なり。思いやりの政治、真心の政治ということがよく言われておるのでありますが、その愛情の政治を実現していくためには、私はまた次のことを申し上げたい。知ることは愛することである。愛することは理解することである。理解することは協力することである。このように私は信じております。  どの大臣もどの総理も、判こを押したように沖縄の特殊事情はよく理解しておるということを、多分農水大臣もそうおっしゃったし、またこれからもおっしゃると思うのですが、沖縄の特殊事情をよく理解しておると、こうおっしゃるのです。  そこでお聞きしたいことは、沖縄をどのように認識しておられるか、沖縄の特殊事情をどのように認識しておられるかということをまずお聞きしたいのです。
  212. 佐藤守良

    国務大臣佐藤守良君) お答えいたします。  実は私も沖縄にはもう十数回行っております。そして沖縄県の航空関係の予算はかなりお手伝いをしているという自信を持っています。というようなことで、そういう認識のもとにお答えしたいと思います。  私は、沖縄は唯一の亜熱帯性気候地帯に位置しており、その特性を十分に生かした農林水産業発展を期待したいと思っております。そういうことで第二次沖縄振興開発計画に基づいてひとつやりたい、こういう理解をしております。
  213. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 第二次振興開発計画が生まれるべくして生まれたわけでありますが、沖縄の特殊事情から二次振計が生まれたわけなのですね。それじゃその第二次振計が沖縄開発の柱になるわけですが、その柱に基づいて沖縄農業開発をどのように進めていこうとお考えなのか、それをお聞きしたいと思います。
  214. 佐藤守良

    国務大臣佐藤守良君) これは既に御存じと思いますが、全部で約六項目の考え中心に進めたいと思っております。  その一番は、農用地及び農業用水の確保。土地基盤の一層の整備に努めるとともに農業構造の改善を図りつつ、基幹作目であるサトウキビ、パイナップルの生産性向上。豊かな太陽エネルギーを有効に利用した野菜、花卉等の生産の拡大と本土への輸送の合理化。四番が、肉用牛等の供給基地の形成による畜産の振興。五番が森林資源の整備充実。六番が栽培漁業センターの整備等による増養殖の推進等の農林水産振興に努め、生産性の高い亜熱帯の農林水産業の確立を図ることを基本考えにしております。
  215. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 それなりに大臣は沖縄を理解し、認識しておられると思うのです。ところが農林水産大臣というそのお立場からの責務はさらに重大である。その特殊事情下にある沖縄、そして第二次振計が生まれるべくして生まれた。それを実らせる一切の責務は日本政府にあると明記されておりますね。第二次振計を成功させる責務は政府にあると。ということは、沖縄の農業開発の一切の責任は農水大臣にあるということであります。そのことをひとつ念を押して申し上げたいのであります。  次に、米の問題について申し上げたいと思います。  先ほども米のことに一言触れられましたが、日本農業の自給向上の面から完全に裏づけておるのが米であるわけなのです。米の完全自給の基本を堅持する、これはもう変わりない基本方針で当然のことです。ところがこのことについても、需給のバランスとか計画については従来必ずしも順調ではなかった。いろいろと問題があったわけなのです。  きょうはこのことには触れませんが、具体的な問題としてお尋ねしたい一つは、主食については今後一切輸入はしないということが確認されて、いわゆる完全自給を今後も保証するということなのですが、ただし、加工原材料米については、何かニュアンスとしては、今までのやりとりから輸入もあり得るというニュアンスを感ずるわけです。その中身として私は気になることがありますので、それを確かめておきたいと思うのでありますが、加工原材料用米ですか、これについては輸入もあり得る、あるいはそれも絶対輸入をしないという二つの見解に立って、特に沖縄の立場から気になることがあるわけなのです。  沖縄の地場産業一つに、しかも伝統的な地場産業一つに、工業製品として大事にしているあわもりがございます。そのあわもりは原料は米であります。ところで私の見解は、こういった経過がございます。我が国の超古米を非常にもてあまして困っておる時期がありました。それを利用して何とか沖縄のあわもりの原料にすることはできないだろうかと私は取り組んだ時期がございます。それで沖縄の工業連合会、酒造組合の皆さんにも連絡してそれを研究してもらったことがあります、できるならばもてあましている我が国の超古米を利用して沖縄の伝統産業であるあわもりをつくった方がいいのではないかと思って。  ところが、研究に研究をした結果、どうしても我が国のお米では、あわもりの酵母菌、こうじの問題、それから風味の問題で適しない。二百年の伝統を持つところの外米、砕米を利用しなければいけないという結論になったわけであります。我々が考える主食というのは食糧米としての米、このあわもりの原料はいわゆるあわもりの原料としての原材料です。こういうふうにあれとこれとは別である、こういう見解に立って解釈しておるわけでありますが、私の立場からは、そういった今申し上げました加工原材料用米については絶対禁止するあるいはしないというものの正体をはっきりさしておきたいと思うのです。
  216. 石川弘

    政府委員(石川弘君) 今先生から御指摘がございましたような事情がございまして、過去、過剰米が発生しておりました時点におきましても、沖縄のあわもり用の原料につきましては輸入をいたしておったわけでございます。それから現在も年によって若干振れますが、八千トン前後のものを輸入しております。  衆参両院で御決議がありました際にも、そういう特別の事情のあるものがあるということはお話しをした上でああいう御決議をいただいているわけでございますので、私ども他の原材料用につきましては国内産の他用途米で供給をすることを考えておりますが、沖縄用のあわもりとかあるいは特別の場合のモチ米等につきましては、過去においても物価安定その他の趣旨でやってきたという実情については御理解いただいているものと考えております。
  217. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 今の点よくわかりました。  次に、これもまたちょっと気になることでありますが、他用途利用米について政府は希望者について主食転用を認め、それに伴って不足する加工原料用米については農協がその自助努力によって農家保存米を集荷してそれに充てる、こういうことでありました。  そこで、それが実際どの程度主食に転用されたか、またその穴埋めはどれぐらい集荷されたのであるか、その経過をあらましお聞きしたいということと、それと関連しまして主食に転用した場合の買い上げ価格は一万八千六百六十八円ですか、であったはずであります。ところが、その穴埋めで買い上げたものは、そうではなしに五千八百八十円ということになりますと、一体これはどういう処置なのか、どういうわけなのか、そのことをお聞きしたいのです。
  218. 石川弘

    政府委員(石川弘君) 御指摘のように今回、今回と申しますか、五十九年産米の他用途米の取り扱いにつきまして、米価決定の際に生産者団体とお話し合いをした結果できました案は、他用途米で出していただくかあるいは主食で買い上げることによって供給ができないものは、今先生おっしゃいましたように自助努力でということで出していただくかのどちらかを選択していただくことにしたわけでございます。  その結果、生産者団体ではいろいろな御意見がございましたが、一番多いタイプは総量で二十五万トンばかりの契約がございましたが、他用途米と申しますか、他用途米あるいは自助努力で出していただくのは二十万トンというお約束をいたしましたので、二十万トン、各県あるいは各農家個人で考えましても大体その八割につきましては他用途で拠出をする。八割を拠出しまして、それにつきましては御承知のようにトン七万円の助成もつく。あとの五万トン前後のものにつきましては主食で買い上げてもらう。ただし、拠出量が二十万トンで済むわけでございますから、主食で、いわば主食並み価格、これは政府買い入れの場合もございますし、自主流通でもいいことにしておりますから、自主流通の場合は手取りはもう少し政府買い入れよりも上がると思いますが、こういうもので出すことによりまして、買ってもらうかわりに自助努力で出すというのはほとんど量的には微々たるものだと思っております。  結局、二十五万トンのうち二十万トンを他用途利用、したがいましてトン七万円の助成のあるもので出して、あとの残りの五万トンを政府買い入れ価格ないしは自主流通価格でするというのが大半でございます。聞くところによりますと、一部それ以外の方法で集まっている、そういう計画を出していらっしゃるということを承知いたしておりますけれども、これは微々たる量であろうかと思います。  それから、先生先ほど、なぜ買ってもらったかわりに出すものについては助成がないかというお話でございますが、助成を出すということでございますれば他用途で出していただければ制度としてちゃんと助成ができるわけでございます。それにもかかわらず主食で買い上げるという方法をとって、なおかつ出すということは農業者団体自身のお申し出がありましたので、そういう道も開いたわけでございますが、そういう道を開きました結果、農家自身の御判断として、やはりそれよりもトン七万円もらえる他用途利用米で大半八割を出して、あとの二割だけを主食買い入れをしてもらえば、この二割の分についてはかわりに出すという、いわば助成なしで出すという分かついておるものでございますから、そういう方法が一番農家にとって有利だという判断でやったわけでございまして、私どもはそういうような形が最も農家の方にも受け入れやすいし、それから負担も少ない方法だと考えております。
  219. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 今の処理で納得がいっておるということなのですか、あるいはやっぱりどうも割り切れない面があるという不満があると受けとめておられるのか、どうですか。
  220. 石川弘

    政府委員(石川弘君) 最初何か主食に買い上げるということだけを生産者サイドで聞いていらっしゃった中では、買ってもらうという話だけがあって、助成なしで出すという話が徹底しておりませんでしたものですから、そういう御指摘のような御不満の声も大変多かったわけでございますが、いろいろあの間の事情を御説明し、むしろ助成なくして出してもいいから主食で買い上げろという御主張は生産者団体御自身の御主張だったわけでございますから、そういうことをお話をしながら県段階でどういう方法を選ぶかということを私ども県とも御相談の上でやったわけでございます。  率直に言いまして、やはり御不満を述べていらっしゃる方はあるとは思いますが、これはそういうことで計画も承認をされておりますので、いろいろ御不満もあろうかとは思いますが、米価決定時における一つの約束事でございますので、こういうことで協力していただくようにということでやっておりますし、現に非常に多くの県ではすでにその目標に近い数量が集荷をされておるわけでございます。西の方で少しおくれている県もございますが、逐次この計画、二十万トンというものは達成できると思っております。
  221. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 まだありますけれども、時間ですから次に譲ります。
  222. 北修二

    委員長北修二君) 本件に対する質疑は本日はこの程度といたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後三時二十九分散会