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穐山篤君
情報公開法案について、その提案の理由及び要旨を御説明申し上げます。
なお、
法律案要綱並びに
法律案は配付のとおりであります。
ロッキード汚職が争点とされた一九七六年の総選挙に際して、社会党は政治腐敗防止対策の重要な一環として、
国民の知る権利を
最大限に尊重するために情報公開
制度を確立すべきことをいち早く主張したのであります。その後七九年に要綱を発表して以来
検討を進め、八一年には成案を得て国会に上程いたしましたが、今回、事情の
変化にかんがみ、所要の修正を加えた上で、新たに提案するものであります。
一連の航空機汚職は、司法の場を通じて徐々にその真相が明らかになってきておりますが、
国民がみずからの手で直接その核心に迫ることができないため、議会政治に対する
国民の信頼は失われ、民主主義の危機を招いております。また公害・薬害等により
国民の生命、健康は脅かされ、傷つけられてきましたが、これらは
政府・官僚機構による情報の不当な操作や秘匿が根本的な原因となっていることは論をまたないのであります。
憲法の
国民主権の理念が正しく生かされるためには、
国民が公的な情報を常に正確に把握していなければなりません。ところが現実には、
政府や
地方自治体などの情報は
公務員の守秘義務によって非公開とされ、また
国民に情報を知らせないことによりその特権的地位を確保しようとする我が国官僚の体質も大きな原因となって
国民の知る権利は不当に侵害されております。
公的情報はもともと
国民の共有財産であるとの立場から、これを公開することこそ
国民に奉仕する
政府の当然の責務であります。情報が公開されることにより
行政は
国民のためのものとなり得るのであり、情報の公開なくして我が国に真の民主主義の実現はあり得ないのであります。
右の理由により本
法律案を提出したのであります。
次に本
法律案の要旨を申し上げます。
第一は目的であります。
日本国憲法の理念に基づき、国、
地方公共団体等の
行政に関する情報についての知る権利を保障するため、国、
地方公共団体等の公文書の公開の責務並びに公文書の閲覧及び謄写をする権利を明らかにし、
行政の公正な
運営に寄与することを目的といたします。
第二は公文書の定義であります。
国、
地方公共団体等が所持しまたは保管している文書、図画、写真及びマイクロフィルム、録音テープ、コンピューターによる自動データ処理のための採録物その他の採録物で当該機関が持つすべての情報を含むことといたします。
第三は公文書を公開する責務及び情報の提供についてであります。
国、
地方公共団体等は、
国民、住民等の要求に応じて公文書を公開することのみでなく、進んで情報を積極的に提供するように努めるべきことといたします。
さらに、このことを具体的にするために、国等の機関の長は、当該機関の公文書の目録簿を備えること、公文書の閲覧または謄写に関する事務を処理するための機構を整備すること、公文書の公開状況につき毎年公表すること、当該機関の事務または業務に関する記録を文書等により作成すること、公文書を一定の基準で保管すること、事務または業務の執行状況について一般に公表すること等を規定いたします。
また、請求された情報を国等が持っていない場合であっても、本来国等が
行政上当然持つべき情報であるときは、国等は
調査の上文書等を作成して提供するべきものと
考えて立案しております。
第四は公文書公開の権利であります。何人も、国等の公文書を閲覧し、かつ謄写する権利を有することといたします。
第五は非公開とすることができる公文書についてであります。
本
法律案は国等の機関が持つ公文書について原則的に公開とする趣旨でありますが、例外的にやむを得ない事項につきましては非公開を容認しております。
その一は、我が国の安全または外交に関する事項について「閲覧又は謄写させることにより国家の重大な利益に悪影響を及ぼすおそれがあると明白に認められるもの」であります。ただし、これに該当する公文書であっても十五年を経過したものはすべて公開することといたします。
その二は、個人のプライバシーに関する事項であります。しかし、
公務員または
公務員であった者に係る事項は、公益上必要ある場合は公開することといたします。
また、個人のプライバシーに関する事項であっても、当該事項に係る個人が公開を請求した場合または公開を承諾した場合には、当該事項を公開することといたします。
その三は、企業または団体に関する事項で、「当該企業又は団体の利益を著しく害すると認めるに足りる相当な理由があるもの」であります。しかしこの条項により
制度の実効が失われることを防ぐため、「
国民の生命及び身体の安全又は健康に悪影響を及ぼすおそれがある事項」及び「公益的
性格を有する企業の事業の計画等に関する事項で
国民生活に重大な影響を及ぼすもの」については企業または団体の情報であっても公開することといたします。
その他若干の事項につき非公開を認めますが、公益上の必要その他の事由がある場合はその文書を公開することといたします。
第六は公文書の公開請求についてであります。
国の機関の長は、公文書公開の請求を受けた日から二週間以内に当該請求に係る公文書の公開をさせるかどうかについて決定しなければならないものとし、相当な理由があるときは、二週間以内の範囲内において、当該期間を延長することができるものとすることといたします。
第七は公文書の訂正についてであります。
閲覧し、または謄写した公文書の自己に関する事項に誤りを発見した者はその訂正を請求できること、また国等の機関の長は請求に応じて訂正することといたします。
第八は公文書の目録簿についてであります。
国の機関の長は、当該国の機関に係る公文書の目録簿を備えなければならないものとすることといたします。
また、国の機関の長は、非公開とすることができる公文書を除き、目録簿に公文書の種類、件名、内容の要旨、作成者の氏名または名称、作成または入手の年月日並びに保管の期間及び場所を、当該公文書を作成し、または入手した日から二月以内に登載しなければならないものとすることといたします。
第九は個人のプライバシーに関する事項に係る公文書の作成目的等の公表についてであります。
国の機関の長は、個人のプライバシーに関する事項に係る公文書については、当該公文書ごとに、その作成または入手の目的及び方法を公表しなければならないものとすることといたします。
第十は文書等の作成及び整理並びに公文書の保管についてであります。
因の機関の長は、政令で定めるところにより、当該国の機関に係る事務または業務の執行に関する記録を文書、写真、録音テープ等によって作成し、これを整理しなければならないものとし、当該国の機関に係る公文書を政令で定める保管基準に従って保管しなければならないものとすることといたします。
第十一は
地方公共団体の公文書の公開についてであります。
何人も、
地方公共団体の公文書の閲覧をし、かり、謄写をする権利を有するものとすることといたします。
非公開とすることができる
地方公共団体の公文書の範囲、
地方公共団体の公文書の閲覧または謄写の請求の手続その他
地方公共団体の公文書の公開に関し必要な事項は、条例で定めるものとすることといたします。
第十二は
政府関係法人及び
地方公共団体
関係法人の公文書の公開についてであります。
何人も、
政府関係法人及び
地方公共団体
関係法人の公文書の閲覧をし、かつ、謄写をする権利を有するものとすることといたします。
第十三は不服申し立てについてであります。
国は「情報公開審査
委員会」を、また
地方には「
地方情報公開審査
委員会」を
設置し、
行政不服審査法による不服申し立ては各
委員会に対してのみすることができることといたします。それらの組織及び
運営並びに不服申し立て手続に関しては別に法律または条例で定めることといたします。なお各情報公開審査
委員会の
委員には、学識経験者及び
国民、住民の代表を加えるべきものと
考えております。
公文書公開の請求者は、公開拒否の処分に対して各情報公開審査
委員会に対して不服申し立てをせずに、直接
行政訴訟に持ち込むこともできることといたします。これは公開請求する公文書の種類や客観条件いかんによっては、裁判所により迅速かつ公正な判断を期待し得る場合があることを考慮したためであります。
第十四は情報公開
制度審議会についてであります。
情報の収集、処理、保管、利用及び公開に関する事項を
調査審議させるため、
総理府に情報公開
制度審議会を設けることといたします。
その他の事項といたしまして、まず機関委任事務についてでありますが、
地方公共団体は国の機関委任事務に関する公文書の公開をも拒否した場合の不服申し立ては、当該公文書を国の公文書とみなして中央の情報公開審査
委員会に対してすることといたします。
罰則については定めがありませんが、国等の機関が、公開請求に対してする処分から生ずる問題について刑事上の責任を問うことは困難であるからであります。
以上が本
法律案の提案理由及びその要旨であります。何とぞ、慎重に御
審議の上、御賛同あらんことをお願いいたします。