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神谷信之助君 この京都の三木さんの場合、
支部の
審査会では職業病には当たらない、一般
疾病では
業務との
因果関係をはっきりさせる必要があると言っているんです。一日当たりの筆記字数は大したことはなかった、ガリ切りやカーボンの筆圧も大したものではない、作業環境も特に発病の要因となるほどのものではない、本人は元来多病性である、
公務に起因するとすれば、
公務を軽減すれば三カ月程度で治るはずだ、治療に長くかかり過ぎており、
公務上とは認められないということで却下になった。棄却されているわけですけれ
ども、しかし去年の七月十九日の神戸地裁の
判決、これ見ますと、その三十四ページでは、長期間かかる例が多いという
指摘をしています。だから、三カ月ぐらいで治るのが治らぬのだから、それは
公務上に起因するところの
疾病ではないという判断もおかしいというように思います。
さらに神戸地裁の判例でいきますと、体質的な弱さの問題も
指摘をしています。「
業務を離れた生活において通常の労働者の一般的生活におけるよりも特に上肢その他身体に過度の負担のかかる生活を送っていたことを窺わせる資料はない。」、「むしろ
業務に従事しなければ発症しなかった可能性の方が強く」、「ほぼ五年間にわたる
業務従業中に徐々に発症の基礎となるものが蓄積形成されていったもの」、そういう見方をとっています。この点はちょうど三木さんの例に合致するのではないかというように思うのですけれ
ども、神戸地裁の新しいそういった
判決から見ましても、一般事務職の
頸肩腕症候群の職業病の問題、
公務に起因する
疾病というこの問題については、ぼつぼつとこうやって判例が出だしてきています。
さらに私は、何とかみんなでこの人の問題を
考えようということで、京都府職労で筆圧を測定する器械を独自に開発してつくり上げて、これに本人が書いた文書をかければ上肢への負担の荷重の度合いも科学的に解明されるという、そういう器械をつくったわけですけれ
ども、結局
審査会からは文書は出されないままできているんです。これだけ長期になりますと、その当時の労働の状態や、それから比較すべき同僚の状態というのももう掌握し切れなくなっているし、永久保存の文書もほとん
どもう廃棄されております。だから、実際に科学的にそのことを追求することも困難だという
状況になってきていると思うのですけれ
ども、
基金の方では、大体こういう問題の
審査を行う場合、この
法律の
趣旨、目的が労働者の保護と
救済という点にあるとするならば、そのことをもっと
考えて、そして有利な証拠といいますか、それはどんどんと使うし、不利な証拠についてはそれの立証を理事者側に求めるということをやらなきゃならぬのじゃないかと思うのだけれ
ども、どうも何とかかんとか理屈をつけて、
救済ができないようにできないようにと、それで長期にかかるという
状況になっているように思うのだけれ
ども、この辺、
基金の方から見解を聞いておきたいと思うんです。