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政府委員(
北村恭二君) 御
指摘のとおり
アメリカの八五年の第一・
四半期の実質
成長率が
年率で〇・七%の
増加にとどまったわけでございまして、八四年の実質
成長率が六・八%であったことに比べればかなりの低い水準でございます。特にこの第一・
四半期の計数が速報の段階で二・一%であったのが、その後一・三%と
下方修正され、今回また〇・七%ということで
下方修正されたわけでございまして、こういう点ではその減速の度合いというものについていろいろな
見方がされていることは御承知のとおりでございます。
内容的には、やはり
ドル高による
輸入の急増というものが
個人消費等を
中心といたしました
国内の
最終需要の堅調な
伸びというものを相殺しているということで、こういった姿になっているのではないかと思っております。ただ、今後の先行きということにつきましては、やはりこのまま
アメリカの
経済が失速するという
見方は少ないわけでございまして、第二・
四半期以降は緩やかながらも安定した
成長が続くのではないかという
見方が多いわけでございます。
なぜこういう
見方が出てくるかということで申し上げますと、やはり基本的には
アメリカ経済の
物価が安定しているということが
一つ大きな
要因になっていると思います。それから、先ほど先生もお触れいただきましたけれども、
個人消費がかなり安定的に推移している。これは、サービス部門における雇用の堅調さというものの反映ではないかというふうにも見られているわけでございます。それから、
住宅投資がやはりモーゲージ
金利の
低下といったようなことに伴いまして
回復の兆しを見せているということもございます。それから、
公定歩合の
引き下げ等に見られますように、FRBの
金融緩和のスタンスといったようなものも挙げられると思います。またさらに、先ほど申し上げましたように、
外需のマイナス寄与度と申しますか、そういった相殺
要因というものが若干第一・
四半期については一時的な
要因もあるようでございますので、そういったものが若干縮小するのではないかといったようなことも言われているわけでございます。
したがいまして、
アメリカの今後の先行きにつきましては、いろいろ
見方はあると思いますけれども、今言ったような
成長を支える面ということもあるわけでございますので、従来から言われておりますように、いわゆる安定的な
成長路線への
ソフトランディングといったような
方向をたどるんじゃないかというふうに見られる
見方が多いわけでございます。
公定歩合の
引き下げにつきましては、十七日に
アメリカの連邦準備理事会が八%から七・五%に
引き下げるということを
発表して二十日から実施しているわけでございますけれども、これは、今申し上げましたような
アメリカ経済の全体の姿、特に
輸入の
増大、あるいは
ドル高といったことを主因といたします工業部門が非常に停滞しているということに着目された措置であると思います。
最近の
アメリカのここ数週間の
市場金利の動向というのを見てまいりますと、徐々に
低下をしているということでございまして、早晩こういった
アメリカの
公定歩合の
引き下げということが行われるのではないかというふうに見られたわけでございますが、さらに今後どういうふうに
金利が推移するかということにつきましては、今言ったような基本的な
金利低下の姿というものが続くのではないかというふうに当面は見られるわけでございますけれども、その先行き等については確たることはやはり申し上げられないと思います。いろいろな
アメリカ経済の姿の
見方ということと裏腹の形で、
金利についての
見方というのもいろいろ
アメリカの
国内でも分かれているわけでございます。
先生お尋ねのように、
アメリカの
景気動向がこういうふうに減速の姿をたどっているということで、いろいろと今後対日批判の高まりがあるのではないかというお尋ねでございますけれども、御存じのとおり、大幅な経常黒字の存在といったようなことから
アメリカで対日批判がかなりいろいろな形で行われたことは御承知のとおりでございますが、
我が国といたしましても、先ほど来いろいろ御説明させていただいておりますように、サミット等の場におきまして、
我が国の基本的な立場ということをかなり明確に各国に説明し、各国の理解を得るように努めたところでございます。したがいまして、こういった対日批判といったような問題も、いわば
日本のこういった政策に対する
日本の取り組み方というものに対して注目しているといったのが現状じゃないかと思います。
市場開放努力とか
輸入拡大のための努力等につきまして、
我が国がどのような
対応をするかということを見守っている
状態だと思いますので、私どもといたしましては、四月九日の
対外経済対策に盛り込まれましたような項目につきましてアクション
プログラムを策定するといったようなことを通じまして、
市場アクセスの一層の改善に努めるということが必要かと思っております。また、規制
緩和等を通じまして、
民間活力活用のための環境整備といったようなことも続けていくことが肝要かと思います。
こういったいろいろな努力の積み重ねということで、いわゆる
アメリカにおきます対日批判といったような物の
見方に対して、できるだけ誠意を持ってこたえていくということが必要なのじゃないかというふうに考えているところでございます。