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国務大臣(
竹下登君)
フェルドシュタインさんが
アメリカのCEAの
委員長をしておられましたときの
証言なんかは、私は率直なところ非常に評価しておりました。
日本に対して
貿易黒字、
経常収支黒字等の
責任をいろいろ言うが、その
責任は大
部分アメリカにあるんだ、こういうようなことが大体
諮問委員会の
証言等でなされた今までの骨子でございまして、率直に言って、大変いいことを言ってもらうな、こういう
感じを持っておりました。
おやめになって大学の
先生になられて今度の
講演、こういうことになるわけでございますが、基本的に私は、おっしゃっていることが、
論理性の中でそう間違いを言っていらっしゃるなどとは思っておりません。ただ、
経常収支の
大幅黒字が
貯蓄超過、言うなれば
投資不足に
原因があるとするそういう
考え方につきましては、私
どもは、これから申し述べますような、言ってみれば、いかがかというような物の
考え方を持っております。
それは、
一つには、
我が国の
貿易経常収支の大幅な
黒字というのは、やっぱり
フェルドシュタインさんがかつて向こうでおっしゃっておりましたような、
米国経済の急速な
拡大と
ドルの
独歩高、それから一次
産品価格が低迷しておる、そういう
海外要因によるところがまず非常に大きい。
二番目には、最近の
輸出動向に見ますと、
ハイテク製品等これは強い需要のある
製品が伸びておるわけでございますから、
海外の方から、言ってみれば吸引されるという形で増加しておって、
内需が陰っておるから
外国へ押し出しているというんじゃなく、
内需も結構ありますがなお
海外から強烈な要請があるから出ておる、こういうことが言えるのではないかと思っております。
今度は
国内経済で見ますと、三番目には、現在
内需中心の自律的な
回復局面にありますので、特に
設備投資は広範な業種で
ハイテク関連投資を
中心に大きく伸びておりまして、GNPに占めますウエートはまさに
高度成長期と同じような状態でございますので、
投資不足という批判はその
意味においては当たらないのではなかろうかと思っております。
したがって、
我が国の大幅な
経常収支の
黒字を削減するためには、
フェルドシュタインさんが
講演においておっしゃっておりますように、まず
アメリカ自身が
財政赤字削減によるところの高
金利の
是正、それがすなわち
ドル高の
是正につながる。
それから、さはさりながら、
我が国としては、
国際社会の中で、現状を傍観するということは適当でございませんので、先日決定いたしました
市場開放措置等の
対外経済対策を誠実、着実に実施する。そして、いつも言うようなことでございますけれ
ども、今
河本大臣のところで本格的に取り組まれております
各種規制緩和、それによりますところの
民間活力の活用のための
環境整備、そういうことに力を入れて、依然として、物価安定という中で
持続的成長を図るという
考え方は、やっぱり基本的な
考え方としてこれからも持ち続けなきゃならぬと思っております。
そこで、順番で申しますと、
アメリカの要人で
日本に著名な方といえば、
ボルカー発言、その次が
シュルツ発言、それからベーカー、
フェルドシュタインと、ここのところ四人のような気が私はしておりますが、流れを見てみますと、確かに
日本の
貯蓄が高いということはまた、私
どもに内話の形でといいますか、
個人的な
感じで話ししますときには、
アメリカがもう少し
日本人と同じように
貯蓄が高くなってくれればいいな、こういうことも時におっしゃるわけであります。したがって、
日本の
貯蓄率の高さというのは
アメリカの三倍、
個人貯蓄ですと三倍以上になりますから、これは私は
国民性の問題がやっぱり主体である、それはあるいは老後の安定が十分でないから
貯蓄意欲を刺激するのだという
論理ももちろん私は否定するものじゃございませんが、基本的には
国民性の問題じゃないかという
感じがいたしております。
したがって、今
竹田さんがおっしゃっていただきましたように、マル優問題、この間通していただいたばかりですが、トタにいわゆる
貯蓄優遇税制というのにすぐ手をつけるという
環境には必ずしもないと思いますが、ただ税調でも
指摘されておりますので、あの問題は、こういう問題の
指摘もあったときでございますだけに、引き続き公正、公平、簡素、そういう精神で検討は続けなきゃならぬ課題だというふうに思っております。
それから、いみじくも私が言っておりますことと同じように、いわゆる
投資促進のための
減税をやりますと、その
投資段階におきましては確かに
内需でございますが、結果としてそれは、中期的に見ますと、また
輸出がどんどん出ていきますので、私は今
投資減税というようなのを全体的に行う
環境にはないじゃないかという
考えを持っております。
さらに、まさに
内需そのもの、むしろ
輸入にいささかでも貢献するということになりますと、今おっしゃいます
住宅にしましても、それから再
開発というのもある
意味における
公共投資でございますから、いつも申しますように、
公共投資の三兆円で十三億
ドル輸入がふえる、
減税の五兆円で七億
ドルふえる、こんなことを申すわけでございますが、そういう
環境の
整備は
規制の
緩和とともにやっていかなきゃならぬ点である。これは先ほど申しました
河本さんを
中心に、そのところをいわゆる
都市の再
開発等々を含めながら、それから
住宅にしても
規制の
緩和を必要とするところがございますので、今日そういうものをやっていこうという方向であるというふうに思っております。
だから、私がたびたび申し上げておりますのは、
財政が出動することによる
内需というものは、むしろ私はまた後
世代への
ツケ回しを、結局一兆円にすれば三兆七千億円、すなわち最低三・七倍の後
世代へ負担を回すということになりますので、今その
環境にはないのじゃないかというふうに
考えるわけでございます。