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参考人(
名東孝二君) ただいま
小倉さんからも
お話がありましたように、
グリーンカード制廃止、そういった問題について非常に残念がっておられるようでありますが、これをやりましても大きな魚は皆逃げてしまって雑魚ばかりがつかまるわけです。逃げる場所は
幾らでもある。現に株やら海外に逃げているわけです。要するにメリットよりもデメリットの方が大きいというふうに考えてよろしいと思います。
次は、今後の
財政運営について。あれこれと
修正方式はあると思うんですが、大きく分けて三つの選択肢があると思うのであります。
時間の
関係上、肝心な
大型間接税の問題は時間切れになると思うんですが、まず第一番は、真の行革による
ぜい肉落としであります。
これは、この間瀬島さんがおっしゃっておられたように、
財政再建期間を六十五年度に限る
根拠はないんです。特に
アメリカ経済、したがって
日本経済の今後に予想される停滞、
スタグネーションを考えた場合、
スタグネーションと言うよりはスタグフレーションと言った方がいいかもしれませんが、そういうことを考えた場合には、私は到底六十五年度にいわゆる
財政再建などができるとは思えない。したがって、
ぜい肉落としをやることが必要なのであって、例えば
補助金等、全
民労協によると
一般会計十四兆四千億の中の三分の一ぐらいは整理できるんじゃないかと言っております。それから、今度民営化する会社、電電など、それから
国債の
減額積み立てをやめるとか、それから思い切って
地方交付税、昔のように二二%になさったらどうか。そのかわり地方自治体に思い切って権限を移譲して自由に腕を振るわせてみたらどうか、
経営的感覚を持たせたらどうか、こう思うんですね。
それから、
増税はやりませんが、各省間の人員の
配置転換によって
税務職員を強化する、いわゆる
徴税強化であります。現在のように
実調率が一〇%以内というようなことでは問題にならぬ。いわゆる私の調べております
地下経済における
隠し金とか
隠し所得は、ある程度まではつかまえることができるんじゃないか、こういうふうに思います。
それから、
最小限度のやはり
国債発行は、これはやむを得ないんじゃないかと考えます。
国債発行は、さきに申し上げた
補助金と
相関度が非常に高いんです。五十年度以来調べてみますと、非常に
相関度が高いんです。したがって、
補助金を相当大幅にダウンすれば
国債費も、もちろん
建設国債も含めまして、相当にダウンするということはこれは間違いないのであります。
それから、六十年度の
国債残高は百三十三兆円と言われておりますが、GNPに対して四二%、
東京工大の
香西教授の言うように、四五%まででとまるんじゃないかということを言っておられるんですよね。私は、
個人金融資産六十年度末五百五十兆円と見ておりますが、それの二四%にすぎない。現在の旺盛な
国民貯蓄に比べればまだまだ余裕があるので、今
小倉さんのおっしゃったのは少し早とちりじゃないか、ちょっと心配し過ぎじゃないかというふうに思うんです。二四%。御存じのように
日本では預貯金が中心なんですよ。ところが、
アメリカ、
欧米では
有価証券が非常に発達をしております。したがって
欧米流に見た場合に、二四%ぐらいの
国債はそう大して恐るるに足らないと私は考える。今後ますます
有価証券の占める
割合がふえていくだろうと思います、必然的にこれはもう。そういうわけで、無
利子、無税とか、それから無
期限ですね、
アメリカのように無
期限の
国債、
地方債、そういうように多様化するんです。いろんな多種多様な
国債、
地方債を出す。現在のように
日銀引き受けはありませんね。そういうときに
余り取り越し苦労をなさらない方がいいのじゃないかと考えます。
次は不公平な
税制を是正するということでありますが、問題はやはり不公平な税の
虫食いですね、タックスエロージョンという。この税の
虫食いそのものを直すことが私はやっぱり先決ではないか。
シャウプ勧告税制を見直すというようなことが盛んに言われておりますが、今までも随分税の
虫食いをやってきたんです。今さら
見直しもないと思うので、
シャウプ勧告でうたっているように、
法人税を三五%にするとか、それから
所得税を一〇%から五五%まで八
段階にするとか、もっとこういうことをやっておけば、今日のような問題にならなかったと思うんですよ。
所得税が行き詰まったなんというようなことにならなかったと思う。それが、税の
虫食いのおかげでこうなった。
そのかわり、キャピタルゲインを全額
課税する。それから
租税特別措置を廃止する。要するに、今問題になっている
アメリカの
フラット、
アメリカ流に
フラットでもう簡素化してしまって
所得税減税を私はやることを提案したい。
それで、
財源は
幾らでもあるわけでありまして、ここに持ってきました「公正な
税制確立のための
財源試算」という、こういうものが不公平な
税制をただす会から出されておるわけでございますが、この中の一部をとってみますと、
所得税と
法人税の
改正で五兆三千億円ほど浮いてくると言われております。それからまた、大
企業の所有する
土地の
含み資産に着目しまして、
法人財産税として毎年一%を取ると三兆八千億円。それに
マイナスの
はね返り減収を差し引いても一兆四千億円。合計すると六兆七千億円ぐらいのものが浮いてくるわけです。
それ以外に、例えば私の提案の一つは、
土地増価税であります。
根拠は、戦前の
昭和十一年九月を基準にしまして、
卸売物価は七百倍、
消費者物価は千五百倍、
サラリーマンの給与は二千倍。ところが、
住宅地の
値上がりが一万二千二百倍というとんでもない
値上がりなのであります。こういうところにさらに
土地税制が甘いということなのでありまして、それで、これは
長期信用銀行の
調査資料によると、
資産格差の方が
所得格差よりも大きいということをはっきり
調査資料がうたっております。したがって、現在の大
地主と、それに対しまして、
住宅ローンに泣いておるそういう
サラリーマン世帯とは非常な
格差だ。
日本は戦後平等になったなんておっしゃっていますけれども、それはこういう問題について、特にストックの
格差について目をつぶっているんじゃないでしょうか。フローの、
所得の
格差が縮まってきた。最近、またちょっとあいていますけれども。
そういうわけで、この
土地問題は、私は避けて通れないと考えております。
もちろん、
前提条件は、百坪以内の
居住用は免税にするとか、
中小企業向けのきめ細かい
配慮をするとか、農家ばかりを目のかたきにする
宅地並み課税はやめるとか、そういうことをやりまして、それで
計算をしてみますと、この二十五年間に地価が三十八倍になっておりますので、
公示価格で七百五十兆円の
値上がりになっている。それでしかも、一〇%の
大口が大体半分以上をお持ちですから、したがってその
大口に限定をする。三
大都市圏の大
地主が大体一万人から一万五千人しかいないんですよね。
したがってここに今、七百五十兆円のうちのごくわずか、百兆円、百兆円に一〇%を掛けます。
韓国では八〇%なんですね。だから一〇%くらいはそう大したものではないと思うんですが、現在の
固定資産税四兆円を引けば、六兆円ぐらいの純増になるんじゃないかと思うんです。これを不公平な
税制の是正に充てたらどうか。もちろん、
赤字国債の
減額にまず充てる。それからさらに、
アメリカ式の今申し上げた三
段階から八
段階の
フラット方式によって
所得減税をお勧めしたいと思っております。
これに対して、いや
法人税はもう
世界先進国の中では最高に高いということを
経団連資料がうたっておるではないかとおっしゃるかもしれませんけれど、これは明らかに間違い。
大蔵省は遠慮なすって間違いだということをおっしゃらなかったようでありますが、私ははっきりこの際申し上げておきます。この場合、
引当金が無視されておる。
引当金が無視されておるんですな。それを
欧米並みに
計算をいたしますと三九・二%になります。米国よりは高いけれど欧州よりは低いということになります。
それから、しかもこういう
資料がある。
日本銀行の
国際比較統計、これは五十九年六月号でありますが、この中に
OECDの
資料を引用しております。これによると、
法人所得に対する
法人直接税と
税外負担の
割合、一九八一年では
日本は四〇・九%、
アメリカは四二・三%、こういうわけでこれは
アメリカよりも低いんです。したがって、もし
経団連資料が正しいとおっしゃるのだったら、
OECD資料が間違っているということをはっきりと証明してもらいたい。
重税国家になってはいかぬということを
経団連がおっしゃるのならば、これは私も賛成なんでありまして、要するに
税金を重たくして栄えた国はないんですよ。そういう
趣旨のことではないかと私は善意に解釈しております。そういうわけで、今のが
二つ目の
財政再建、私流の
財政再建でございます。
第三番目は、要するに不公平を温存しながら、助長しながら、それで
EC型付加価値税のようなものを導入するということであります。これは一口に言えば、ちょうど我々が年配になるとだんだんと
ぜい肉がふえてくるわけで、
ぜい肉を落とすのが一番正しいと思うんですよ。その
ぜい肉落としをいいかげんにしておいて、
肥満体質に麻薬を打ち込むのと私は同じだと考えております。この
税金というものは
税痛がありませんしね。それで、どんどんエスカレートしていくということになると、これはお隣の
韓国、それからまた中南米の
独裁国、それから
EC諸国、大体
大型間接税をやっている国でどこが栄えた国がありますか。それからまた、
脱税をなくするなんというようなことをおっしゃっている
評論家がおるんだけれど、あの大
間接税の
国イタリアとかフランスを見てごらんなさいよ、
脱税王国じゃないですか。どこでそういうようなことが出てくるのか、私はそういう
評論家に聞いてみたいと思うんです。私、
幾ら聞いても答えてくれないんです。
そういうわけで、今不公平を正すということを盛んにおっしゃっておられるのを私聞いておるわけでありますが、しかしナイーブに考えましても、金持ちと庶民が
同額の
税金を払う、どこにそれが公平がありますか。明らかにこれは庶民泣かせだということは常識じゃありませんか。ところが、現在
サラリーマンは六〇%以上の
負担をしておる。それで
国民全体で
大型間接税を
負担すると
サラリーマンの分だけは下がってくるということをおっしゃっている
評論家がおるけれど、しかし、その
国民の八〇%は
サラリーマンですよ。しかも年収五百万円以上は一三%しかいない。わずか一三%しかいないんですよ。だから
サラリーマン階層も今階層分化しているんですよ。
それから、抱き合わせで
同額の
所得減税をおやりになるということも聞いておりますが、今までの
経験からすると、必ず上の方に厚く優遇されて、下の方に薄くなるということは、これは今までの
経験上そうなっておる。特に
課税最低限以下、今四人家族で二百三十五万円以下、この
方々には
減税効果はないですよ。
幾ら減税したくても
減税効果はない。それで、
財政再建をおっしゃっておられる。特に
大蔵省あたりは御心配のようであります。そうすると、
最初はプラス・
マイナス・ゼロかもわからぬけれど、
財政再建を叫べば叫ぶほど必ずや
増税になるに決まっている。
増税になって、この
大型間接税なり
EC型付加価値税という甘い汁が出てきたら、
圧力団体、
利益圧力団体というものは必ずやそれを目がけて余計に
補助金をもらおうとするのは当然じゃないですか。今まで一億
円もらった、今度は甘い汁ができたから倍の二兆円にしてくれ、こういうふうに出てくることはこれは火を見るよりも明らかですよ。
したがって、今まで実施した国々でもどんどんどんどんエスカレートしているんです。そういうわけでありまして、この
税金は非常に危険なものであるということであります。
時間が参りましたので後でまた補足させていただきたいと思います。