○
国務大臣(
竹下登君) まず
一つは、今
大変赤字財政である、一体このまま
政府に任せておいていいだろうか、
国民がそういう素朴な気持ちを持っておるではないか。
大前提として申し上げますのは、今
鈴木さんが御
指摘なさいましたように、今日ほど
財政あるいは
税制について少なくとも
国民の
関心が高いことはなかろうというふうに私は思っております。特にそれは、
財政というものが
赤字財政、
赤字財政という
言葉でもって呼ばれますからなおのことそうであろうと思っております。
よく言われますのは、
税金、物価は肌でわかる、ところが、
財政赤字は肌でなかなかわからない。確かに、
自分が借金しておりますならば、催促が参りますし
金利もかさみます。また
税金は、
自分がいただいておるところからペイヤーとなって支払うわけでございますからよくわかりますが、
財政赤字というものは、借り手は一応形の上では
国民とはいえ
政府そのものが借りておりますから、実感としてなかなかわからない。じわじわとしてわかってくるのは、それによって高
金利をもたらしたり、あるいは
民間金融を圧迫したり、こういう
状態が出ればそれはわかりましょう。しかしそ
れでも、短絡的にこれが
財政赤字だというのはわかりにくい点はあろうかと思います。しかしそれにもかかわらず、
財政というものに対して、また
税制というものに対して、今日ほど
国民が総参加で、少なくとも
議論とまでいかないでも
感想を述べるというような
状態になっておることは、私は
現状認識としては等しくしておるところであります。
したがって
赤字財政の問題につきましては、私は今度の
アメリカのことに対しても、いろんな
議論がございますが、言ってみれば、
アメリカも
財政赤字というものによって
金利が上がって一応の限界に達した。ちょうど
日本の
昭和五十四年の
成長というものが、五十二年、五十三年のいわゆる
公債増発による爛熟した
景況感が、いい方へ出てきたのが五十四年かな、こんな
感じがしておりますが、その五十四年、はたと気がつきましたら、それこそ大変な
公債残高になり、これは
孫子の代に
ツケを回す、また
金利負担の上昇ももたらすということから、五十五年から
財政再建という
言葉の中でこれに突入しようとしたというような
感じで、
アメリカ経済があるいは
日本の五十四年のような
感じであるのかなという見方もまんざらないではなかろうというふうに思います。
したがって、やはり後世代へのいわば
ツケ回しということ。私、昨日も
質問が
穐山さんからございまして答えましたが、確かに借換債、いわゆる
赤字公債の
残高が仮に
昭和六十五年、六十六兆ぐらいになるといたしましても、それを今の
建設公債と同じような形ですべてを
償還したとすれば、その
赤字公債だけの
残高がなくなるのが、私が百二十六歳のときで
穐山さんが百二十二歳のときこういう計算が出ますから、まさにこれはそういう
負担を
孫子に残すべきではないというのがまず
基本認識でございます。
そこで二番目の、
赤字国債からの脱却が
昭和六十五年にできるか。申されるまでもなく五十九年できないということでギブアップをいたしました。それで、そういう
財政改革の新たなる
スタート台からいえば二年目に当たるわけであります。したがって、平均して申しますならば、一兆八百億円
程度のものが減額されなければならなかったものが、結果として今御
指摘の七千二百五十億円。そうすると、後
年度にまた平均してみますと一兆一千五百億円
程度になるわけであります。しかし私どもは、これは大変難しい課題であるけれども、
財政改革に対する取り組む
基本姿勢というものが
財政改革の手順の第一期であるという
認識のもとに立っております限り、私はこれはおろすべき旗ではないというふうに考えております。
それから、
米国経済の不況、今日の問題でございます。いわゆる第一・四半期の
経済成長率、これは暦年でございますが、いわば
前期比率二・一%の増加、言ってみれば大変スローダウンしたではないかということであります。かつては
アメリカがくしゃみをすれば
日本が風邪を引くと言われたわけでございますが、
米国と
日本との
経済関係は今日でも私は重要な
相手国であるということはこれは今も変わらないことでございます。
したがいまして、これに対応する物の
考え方といたしましては、これはやっぱりいろんな問題が出てくるでありましょうが、私は総体的に申しますと、
アメリカの
景気が、いわばソフトランディングと申しましょうか、
安定成長に軟着陸していくという今の過程ではなかろうか。言ってみれば、
前期、
前々期等がいわば
上方修正が絶えずされましたように、高過ぎたという表現は適切でないかもしれませんが、予想を上回り過ぎておった、こんな
感じがいたしますので、我が国は当然
アメリカの
成長率がスローダウンすれば
輸出の伸びは若干の鈍化をいたしますが、しかしながら、今いわば世界的にも超物価安定、あるいは
企業収益の
堅調等から、他の
景気拡大を支えます好条件は続くものと見られますので、今後とも
設備投資等、
国内民需を中心とした
安定成長を持続していく施策に万怠りなく対応していかなければならないと思うわけであります。
それから四番目の、
大型間接税、確かに
中曽根さんは
シャウプ以来、こうおっしゃっております。
シャウプ税制そのものは私は今日も評価さるべきことは数ございますが、その後のいわゆるゆがみとか、ひずみとかいうものがいろいろございますので、ここのところで、言ってみれば、
不公平税制というものが存在しておるとはこれは
大蔵当局から申し上げるわけにはいきませんが、
不公平感があるということは我々も十分承知しておりますので、公平、公正、簡素、
選択、そして
活力という――
中曽根総理は
五つの
言葉がかなりお好きのようでございます。もう
一つは、
網羅、
包括、
普遍、
多段階、
投網、これも
五つでございますから、大体
五つの
言葉がお好きのようでございますが、そういう
角度からこれの
抜本見直しをしていこう、その
抜本見直しは
税制調査会に当然諮問をして
答申をいただくことにするわけでありますが、その基礎となるべきものが、
国民各層の
意見を聞いてというこの
税調自身の
答申にもございますので、まず
国会の
議論ありき、今
国会でさまざまな
角度から
議論された問題を正確に整理して、これを
税調に持ち込んで
議論をしていただくという
考え方でございます。
そうして、先月までの
新聞論調を見ますと、確かに
税制改正とは、初めに
大型間接税ありき、こんな
感じでもって
新聞論調も進んでおりましたが、近時はまた大変落ちついた
議論がなされておるような傾向にもあると思います。
大型間接税という定義は別にあるわけではございません。いわば
課税ベースの広い
間接税というのを一応定義づけておるわけでありますが、その間においても可能な限り
国民にわかりやすい
議論をしなければならないと思っております。
それから五番目が、
所得税制にいわゆる
不公平感が残っておる。これは事実であろうと私も思います。クロヨンとかトーゴーサンとかいろんな
言葉がございますが、その事実を肯定するという
立場ではなく、そういう印象があるという事実は私も承知いたしておりますので、これらも
税制調査会での御
審議の重大なるポイントになるんではなかろうかというふうに思います。
したがって、
政治の
信用というものを保っていくためには、それこそ広範な
国民の
議論が今まさに行われておるわけでありますから、その
国民との一問一答の中で、最終的には
負担する者も
国民、
受益者もまた
国民という原則の中で、
知識水準の世界で一等高い
国民の
コンセンサスがどこにあるかということを見定めていくべきだ。初めに
政府はかく思うということよりも、むしろ
国民の
皆さん方の
意見を聞くという
立場の中からその
コンセンサスを徐々に徐々に幅を狭めていかなければならないというのが、今の
財政の
国民に対する手法ではなかろうかというふうに思っております。
いささか話が長くなりました。