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1985-04-09 第102回国会 参議院 商工委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十年四月九日(火曜日)    午前十時開会     ─────────────    委員異動  四月四日     辞任         補欠選任      丸谷 金保君     梶原 敬義君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         降矢 敬義君     理 事                 斎藤栄三郎君                 前田 勲男君                 梶原 敬義君                 市川 正一君     委 員                 石井 一二君                 岩本 政光君                 杉元 恒雄君                 鈴木 省吾君                 松尾 官平君                 松岡満寿男君                 山本 富雄君                 対馬 孝且君                 福間 知之君                 田代富士男君                 伏見 康治君                 井上  計君                 木本平八郎君    国務大臣        通商産業大臣   村田敬次郎君    政府委員        通商産業大臣官        房総務審議官   児玉 幸治君        通商産業省通商        政策局次長    鈴木 直道君        通商産業省機械        情報産業局長   木下 博生君        特許庁長官    志賀  学君        特許庁特許技監  齋田 信明君        特許庁総務部長  小川 邦夫君        特許庁審査第一        部長       廣重 博一君    事務局側        常任委員会専門        員        野村 静二君    説明員        特許庁審査第四        部長       梅田  勝君        特許庁審査第五        部長       小花 弘路君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○理事補欠選任の件 ○特許法等の一部を改正する法律案内閣提出) ○情報処理振興事業協会等に関する法律の一部を改正する法律案内閣提出衆議院送付)     ─────────────
  2. 降矢敬義

    委員長降矢敬義君) ただいまから商工委員会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  去る四月四日、丸谷金保君が委員を辞任され、その補欠として梶原敬義君が選任されました。     ─────────────
  3. 降矢敬義

    委員長降矢敬義君) 次に、理事補欠選任についてお諮りいたします。  梶原敬義君が一時委員異動されたことに伴い、理事が一名欠員となっておりますので、その補欠選任を行いたいと存じます。  理事選任につきましては、先例により委員長の指名に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 降矢敬義

    委員長降矢敬義君) 御異議ないと認めます。  それでは、理事梶原敬義君を指名いたします。     ─────────────
  5. 降矢敬義

    委員長降矢敬義君) 特許法等の一部を改正する法律案を議題といたします。  本案の趣旨説明は既に聴取しておりますので、これより質疑に入ります。  質疑のある方は、順次御発言を願います。
  6. 福間知之

    福間知之君 特許庁長官に、法案審査に入る前に一言伺いをします。  ことしは、明治十八年の四月十八日にいわゆる工業所有権制度特許制度というものが創設されて百年になる、こういうふうに承知をしております。この間、長い期間にわたって我が国産業経済あるいは技術に関する歴史的な発展の経過、非常に海外諸国に比べても目覚ましいものがあると思うわけであります。何か特許庁として、あるいは通産省として、昨年、一昨年来から百年史の編さんだとか、あるいはことしは盛りだくさんの記念の行事も企画されておるようでありますが、高橋是清初代特許局長以来、現志賀特許庁長官は何代目になるのか存じませんが、この時期に長官を務めておられるということで感慨もおありかと思うんですが、この特許にあるいは行政に関して、抱負なり感懐を一言お聞かせを願えればと思うんです。
  7. 志賀学

    政府委員志賀学君) ただいま福間先生から、こういう問題につきまして、私の発言機会を与えてくださいましたことを、大変深く私も感謝したいと思います。  ただいま先生からお話ございましたように、明治十八年、一八八五年に専売特許条例がつくられまして、この四月十八日でちょうど百周年に当たるということでございまして、これを機会に、私ども関係各界先生方を御案内いたしまして、また海外からも外国特許庁長官等々御招待いたしまして、国民的に工業所有権制度重要性について認識を深めていただく一つ機会として、式典を開きたいということで、いろいろ今準備を進めているところでございます。  翻ってみますと、明治十八年に専売特許条例が施行されましたときに、その最初のときにどのくらい出願があったかと申しますと、四百二十五件の出願があったということであります。たしかそのうち登録になりましたのは九十九件ぐらいだったと思いますけれども、その後約二十年たちまして、実用新案制度が発足いたしました。これは明治三十八年であります。そのときの最初出願が約二千件でございました。いずれにいたしましても、特許それから実用新案制度、ともに発足の年に相当数出願が出たわけでありまして、当時から日本産業におきますバイタリティーが大変あったんではないかというふうに私思っているわけであります。  その後、御案内のように、特許あるいは実用新案出願が急速にふえたわけでありまして、現在は出願件数で申しまして世界一の特許大国というふうな状況になっているわけであります。現在、先生方も御案内のように、日本技術レベルというのは大変高いというふうに言われているような状態になったわけでありまして、この間における工業所有権制度の果たした役割というのは大変大きなものがあったというふうに思っております。  ただいま福間先生から、私が何代目に当たるかは知らないがとおっしゃいましたけれども、実は私は五十八代目に当たるわけであります。ということで、たまたまこの百周年に私、特許庁長官に 就任しておりまして、本当に感激をいたしておるわけでありまして、先ほども申し上げましたように、ぜひこの機会に国民の皆様方に対して工業所有権制度の本当の重要性というものを認識していただきたいと思いますし、同時にまた、たまたま昨年、特許特別会計制度、これは先生方の御支援をいただきまして発足させていただいたわけであります。そういう特許特別会計という財政的な裏づけを背景にいたしまして、現在特許庁が抱えておりますいろいろな問題、すなわちこの大量の出願についてどのように対応していくか、審査処理期間というのがやや長期化の傾向が出ているわけであります。  それに対してどのように対応していくかという問題、あるいはいろいろな国際的な問題、例えば発展途上国に対する協力もございます。あるいは先進国間の協力もございます。そういったいろいろな国際的な問題に対して取り組んでいかなければならない。百年たちまして、単に時間的な節目というわけではなくて、やはり日本工業所有権制度として現在一つ節目に来ていると私ども思っておりまして、その抱えております課題を積極的に解決すべく、先生方の特段の御支援をいただきまして取り組んでまいりたいというふうに思っております。  なお、百周年を記念いたしまして、さまざまな行事を計画しております。この式典ももちろんその一つであります。そのほか、先ほど先生がおっしゃいました百年史の編さんをいたしました。これはなかなか大部な労作でございまして、お暇の折にお読みいただければ大変ありがたいというふうに思います。あるいは式典の際に、日本の過去におきます十大発明家の顕彰であるとか、あるいはこの工業所有権制度に特別の御功労のあった方々に対する表彰、感謝状の贈呈であるとか、さまざまなことを計画しておりますし、あるいは映画の作成あるいは工業所有権制度に関連いたしますパンフレットを配布して、高等学校、中学生、その辺の若い層に啓蒙を働きかけていくとか、さまざまな計画を、プロジェクトを現在進めつつございますし、一部は既に完成しているところでございます。  またいずれ、そういったいろいろな催し物につきまして、あるいは出版物につきまして、先生方に対し御紹介を申し上げていきたいというふうに思っております。  以上でございます。
  8. 福間知之

    福間知之君 ただいまのお話の中にもありましたように、一つ特許制度の大きな歴史的な節目だと、こういうふうにも話しておられますけれども、まさに先進国関係協力あり方、あるいは開発途上国との協力あり方等、いよいよ我が国としては単に国内的のみならず、国際的なそのような視点に立って、本制度の一層の充実あるいはまた発展を期していかなきゃならない、このように私も思うわけです。  ちなみに、中国はこの一日から特許制度を創設したと報道されておりまして、最初の日の出願が二千五百件余りあったということでございますが、これはちょうど、先ほどお話のように、明治三十八年の日本時点とよく似通っているわけであります。中国を初め、その他のアジア、NICS諸国との関係は、これからは我が国にとっても重要な協力体制をとらなきゃならぬ情勢になってきていると思います。けさの報道だと、特許制度そのものではありませんが、中国とインドネシアが貿易を再開するという、これまた一つのエポックと私は思うわけでありますけれども、そのように産業経済協力関係発展するにつれて、特許制度はそれと並行してやはり活用されていく。したがって、またそれに見合った適切な協力関係、運用のあり方が問われる、そういうふうに思うわけであります。  今回提案されておりますこの法案も、そのような意味合いで、当面必要な態勢をひとつ試みようということだと承知をしておりまして、幾つかの質問をこれからすることにしたいと思うんです。  まず初めに、国際出願について所見を伺いたいのですけれども、昨年二月に、国際出願制度利用促進観点から条約などが一部改正されました。それに伴いまして、この特許協力条約の目指すところの国際出願というものが、パリ条約による国際出願とどういうふうに違っているのかということが、なかなかこれ特許制度そのものが非常にわかりにくいだけに、また一般的にもちょっとなじみにくい課題であるだけに、少しくお伺いをしておきたいと思うわけであります。また、特にこの協力条約による出願が、出願する側にとってどういうメリットを持っておるのかということも敷衍してお聞きをしたいと思います。
  9. 志賀学

    政府委員志賀学君) ただいま先生からもお話がございましたように、特許協力条約仕組みというのは複雑でございまして、なかなかおわかりにくい向きがあろうかと思います。  いずれにいたしましても、今回のお願いをしております改正案特許法等の一部改正案でございますけれども、これは主たるねらいは、特許協力条約に基づきます国際出願をできるだけ使いやすくしていこうと、そのために条約も実は改正されたわけでございまして、それに合わせて改正していこう。同時にまた、さらに利用促進のために、ヨーロッパ特許庁EPO、これを日本のために国際調査、これは後ほどまた申し上げますけれども国際調査を行ってもらえる機関として活用していくための改正をしよう。それから三番目といたしまして、最近の研究開発の実態に合わせて特許がとりやすくするように、あわせてそれを通じまして、特許協力条約に基づきます国際出願利用しやすくなるように、そのようなことをねらいました改正でございます。  そこで、基本となりますのが、特許協力条約に基づきます国際出願ということになるわけでありますけれども、この特許協力条約と申しますのは、一九七八年に発効した条約でございまして、一言で申しますと、国際的に統一された方式によりまして、複数の国におきます特許をできるだけ取りやすくしていこうと、一口に言うとそういうことを目的とする条約であります。  具体的にその仕組みをやや申し上げますと、例えば日本企業の場合に、日本特許庁に対しまして日本語によって国際出願をいたします。そのときに、日本のほかに特許が取りたい国、例えばアメリカであるとか、あるいはヨーロッパ特許庁EPOであるとか、特許が欲しいそういった国を指定いたします。これを指定国と言っておりますけれども、その幾つかの国を指定して日本特許庁国際出願をするわけであります。そうしますと、日本特許庁日本語によって出願したその時点におきまして、各指定国に対しても特許出願をしたというふうに扱われるわけであります。  ただ、その後、その国際出願をした企業はそれぞれの指定国に対しまして、原則二十カ月以内にその翻訳文提出をしなければいけない。もし、この翻訳文提出を怠りますと、その国際出願それ自身が失効してしまう。したがって、二十カ月以内に翻訳文提出をしなければいけないということでありますけれども、同時に二十カ月というかなり長い翻訳のための準備期間というものが与えられるわけであります。  同時にまた、この特許協力条約国際出願の場合には、その出願が行われた後、例えば先ほどの例で申しますと、日本特許庁国際調査というものをいたします。国際調査と申しますのは、先行技術がどんなものがあるかということを調査する、そういうことでありますけれども、そういう国際調査をいたします。国際調査の結果を出願人に対しても連絡をいたします。あるいは関係国指定国あるいはその国際事務局にも連絡をいたします。したがって、出願人はその国際調査の結果を見ながら、次のステップを踏むかどうかということが判断できる、こういうことになります。したがいまして、さらに手続を進めていっても、国際調査の結果、そういう先行技術があればむだであろうというふうに判断すれば、そこで手続を打ち切ってしまうということにもなります。したがって、出願人にとりましても非常に便利であり ますし、あるいはその関係国にとりましても、日本特許庁がやりました国際調査の結果を利用できるということで負担が軽減されると、こういうことになるわけであります。  さらに、これは当然にやるわけじゃありません、出願人の要求、要請によってやるわけでありますけれども国際予備審査ということも要請があれば行います。国際予備審査と申しますのは、特許性があるかどうかということについてのごく大まかな審査であります。そういった国際予備審査が行われた場合には、さらにその結果を踏まえながら、国際出願人は次のステップを踏むかどうかを考えられる、こういうことになるわけであります。そういう面においても出願人にとって非常にメリットがあるということであります。  国際的な海外特許出願に関連いたしまして、同じような制度といたしまして、パリ条約に基づきます優先権制度というのがあります。パリ条約に基づきます優先権制度と申しますのは、特許協力条約の場合には、先ほど二十カ月以内に翻訳文提出しなければいけないということを申し上げたわけでありますけれども、この期間パリ条約の場合には一年であります。十二カ月ということで、したがってパリ条約の場合に比べて、特許協力条約というのは八カ月有利になるということになります。また同時に、パリ条約優先権制度の場合には、先ほど申し上げましたような国際調査あるいは予備審査、そういった制度がございません。したがいまして、その面でもこの国際調査あるいは国際予備審査というもの、そういう手続によりまして、その結果を踏まえながら次のステップを踏んでいけるという、そういう利益がパリ条約にはないと。そういう面でパリ条約よりも特許協力条約によります国際出願の方が有利であると、こういうふうに私どもは思っているわけであります。
  10. 福間知之

    福間知之君 ただいまの説明で、この特許協力条約メリットというものが大体理解されるわけですけれども、要するに、日本特許庁に対する一つ出願、単一の出願といいますか、によって複数の国が指定できるんだということ、しかもその言語は日本語でいいんだということですね。これはまあ一つメリットと言えるでしょう。それから、国際機関による事前審査とか調査とか、予備調査とか予備審査とかというようなものが行われて、それが次のステップにかかる目安になる、こういうことのようであります。  それから、翻訳文書提出期限が二十カ月ということで長い。パリ条約は一年だと、こういうことでございますから、それは確かに出願側にとってはメリットだろうと、こういうふうに思います。  そういうことを前提にして、次に、この国際出願ルートについて、ただいまもパリ条約の話が出ましたけれども日本から外国に対しましては、特許協力条約に基づく国際出願法、これによるわけですね。いわゆるPCTと言われるルートであります。それから、国内法関係なく、パリ条約によって直接外国機関に対して出願するいわゆるパリルート、こう言われるこの二種類があると承知をしております。さらにまた、外国から日本に対しましても、特許法の百八十四条の三、この規定によるPCTルートによるものと、パリルートによる二種類がある、こういうふうに承知をしてよろしゅうございますか。
  11. 志賀学

    政府委員志賀学君) おっしゃるとおりでございます。
  12. 福間知之

    福間知之君 時間を考慮しましてまとめてお伺いしますが、日本から外国PCTルートによるところの出願件数、これはどのようになっておるでしょうか。特に最近の件数はどういうことになっておるか。それからパリルート出願件数、これはどういうふうになっておるか。三つ目に、外国から日本に対するPCTルート出願件数、さらにまた同じ意味でパリルート出願件数、この四つのここ近年の推移をまとめてひとつ御報告ください。
  13. 齋田信明

    政府委員齋田信明君) まず、我が国から外国に出ていく場合から御説明いたしますと、PCTルート利用した出願件数は一九八一年、四十六年でございますが、四百十六件でございます。それから一九八二年が四百九十七件、それから八三年が四百六十二件でございますが、昨年、五十九年は六百二十一件とふえております。  それから、パリルート利用した出願件数でございますが、一九八一年が三万四千五百七件、八二年が三万六千八百六十六件、八三年が三万三千三百八十九件、大体三万五千件前後でございます。  それから、今度は逆に、外国から入ってくる方でございますが、PCTルート利用したものから申し上げますと、一九八一年が三千五百七十一件、八二年が三千五百五十六件、八三年が三千八百三十四件というふうに、これまた増加しております。  その次は、パリルート利用した出願件数でございますが、八一年が二万六千六百十六件、八二年も二万六千六百十六件でございます。八三年が二万四千九百七十七件と、大体二万五千件前後で推移しておるわけでございます。  以上でございます。
  14. 福間知之

    福間知之君 このPCTルートによる出願件数が少ないという理由なり背景なり、PCTルート先ほどのようにいろいろと便宜が図られておるわけでして、当然のこととしてこの利用増加が期待されてきたと思うのでありますが、実際の出願件数は、パリルートに比べて、日本から外国への場合に二けたほどこれが少なくなっている、今の数字を引き合いに出せば。また外国から日本に向かっての件数も一けた少ない。これはどういう理由によるものと当局は判断をされていますか。
  15. 志賀学

    政府委員志賀学君) お答え申し上げます。  確かにPCTルートによります国際出願は、出願件数で申しますと少ないわけでございます。  ただ、先ほども申し上げましたように、国際出願と申しますのは、一つ出願をいたしましたときに、指定国幾つか指定するわけであります。例えば、一九八三年におきまして、我が国から外国に対するPCTルート出願というのは、この日本特許庁に出された国際出願件数というのは、一九八三年の四百六十二件であるわけですが、そのときに、指定国の数と申しますのは二千三百九十五でございます。もちろんその中に、日本も実は入っておるわけでありますけれども、二千三百九十五というのが指定国として指定されているわけであります。この指定国に対しまして、それぞれ特許出願が行われたということになるわけでございまして、したがって、比べ方でございますけれども、四百六十二件という数字のほかに、この指定国の数も考慮して考えることが必要ではないかというふうに思います。  ただ、いずれにいたしましても、国際的に申しますと、PCTルート国際出願の世界全体の中で占めます日本の地位でありますけれども、一位がこれはアメリカでありますが、日本は二番目でございます。したがって、国際的に申しますと、必ずしも日本の場合に、PCTルートによる出願というのが非常に少ないというわけではございません。ただ、総じて申しますと、パリルートに比べまして、PCTルート出願というのは、まだ相対的に申しますと、利用のされ方が低いというふうに思われるわけであります。  この理由といたしましては、PCTという制度がかなり複雑である、なかなかわかりにくい。それから新しくできた制度である、こういったいろいろな要素があって、やや利用が低迷しておるという向きがあるのではないかというふうに思われます。  むしろそういうことを考慮いたしまして、背景にいたしまして、昨年の二月に行われましたPCT改正手続をもう少し簡素化して使いやすくしていこう、こういう改定が行われたというふうに理解をいたしております。
  16. 福間知之

    福間知之君 指定国数で見ればそんなに少ないわけでもない、こういうことでございますけれども、それにしてもやっぱり一けた私は少ないと思うのでありまして、これは否定され得ないと思うんですね。  そこで問題は、これからどのようにこのPCT制度というものの普及を図るか、そして制度充実を図っていくかということでございますけれども、特に数多い中小企業等に対する普及宣伝というものが重要ではないかと思うのであります。これはマスコミなども活用する方法を含めて重要じゃないか、そういうふうに思います。  特に日本経済関係で、アメリカとの結びつきが強いので、アメリカに対してはあえてこの制度を必要としないということもあるかもしれませんけれども、しかし、欧州等を今度は考えてみると、幾つかの国が欧州特許庁という一つの枠組みの中で対応できるという便利さもあるわけですから、そういうことも含めてPRを少ししていかなきゃならぬ、そういうことを考えましたときに、これからいよいよこの制度の活用、充実ということを国内、国際的に推し進めていかなきゃならぬわけですが、当局としては今後の対策についてどのようにお考えですか。
  17. 志賀学

    政府委員志賀学君) 先生おっしゃるとおりでございまして、私どもも、これからの技術が非常に重要な役割を占める時代に対応いたしまして、国際出願PCT制度普及というものに努めてまいらなければいけないというふうに思っているわけであります。  今回お願いしております改正によりまして、かなり利用促進は図られるというふうには思っておりますけれども、ただ同時に、先生から御指摘がございましたように、やはり制度の内容、使い方、これをよく普及していく、PRしていくということが大変重要ではないかというふうに思うわけであります。そういう観点から、私どもといたしまして、従来からこのPCTにつきましての説明会等々を開いておりますし、あるいはいろいろな手引書、解説書、そういったものも配布いたしまして、この理解を深めるために努力をいたしているわけであります。  その中で、特にまた先生からもお話ございましたように、中小企業の方々に対する指導ということも大変重要であるというふうに思っているわけでありまして、例えば五十九年度で申しますと、中小企業特許講座ということで千葉、神奈川、埼玉、愛知、京都、そういったところにおきまして、これ全体で四十八カ所になるわけでありますけれども、その指導事業をいたしましたり、あるいはPCT説明会を東京、大阪、仙台、福岡で行いまして、いろいろな努力をやっているところであります。こういったPCT制度普及につきましては、さらに今後とも努力をしてまいりたいというふうに思っております。  なおまた、このPCTを少しでも利用しやすくするために、ことしの一月からでありますけれども国際出願につきまして、遠隔地からのファクシミリによります出願を受け付けるというような手当てをしたところでございまして、このような啓蒙指導のための事業であるとか、あるいはこのような出願についての改善であるとか、あるいは今回お願いしております制度それ自身の改善であるとか、そういったことを通じまして、PCT利用促進を図ってまいりたいというふうに思っております。
  18. 福間知之

    福間知之君 講習会だとか説明会だとか、その他幾つか、やや積極的に取り組んでおられるという印象を受けましたが、今後ともこれは工夫を凝らして有効な活用に向かってひとつ努力をされたいと要望しておきたいと思います。  次に、去る二月の十一日に京都で開催されました三極通商会議ですか、これに村田通産大臣非常に積極的な関心と態度でもって臨まれたようでありまして、いわゆる知的所有権保護のための統一ルールづくりという提言をされたと聞いておりますけれども、その内容についてはどういうものなのか、今日いわゆるハイテク紛争として貿易摩擦の原因にもなっているんじゃないかと思われる節もあるんですけれども、具体的に説明を願いたいと思います。
  19. 村田敬次郎

    ○国務大臣(村田敬次郎君) 福間委員にお答え申し上げます。  今御指摘の四極貿易大臣会議、これ三極とも四極とも言うんでございますが、実際はアメリカとそれからカナダとECと日本でございます。既に第九回を迎えておりまして、今回は日本がその当番国でございましたので、京都で私がお世話役になって、二月九日、十日、十一日と三日間にわたっていろんな会合を繰り広げたところでございますが、この会合では新ラウンド問題、それから今御指摘になりました知的所有権問題、そういったいろいろな問題が提起をされまして、そして具体的な推進を見たわけでございます。  新ラウンド問題は御承知のように、その後五月のサミットでぜひこれを出す、また間もなく開かれます四月中旬のOECDの閣僚理事会におきましてもこの問題が推進をされるということになっておりまして、これは世界のためにぜひ新ラウンドを推進していかなければならないということで、四極会合ではこの新ラウンド推進についての具体的ないろいろな相談が行われて、一九八六年から実際の話し合いが開始されるように、一九八五年の最も早い機会に高級事務レベル会合を開こうということで合意を見たわけでございます。  それから御指摘の知的所有権と貿易の問題につきましては、私からその重要性を指摘するとともに、本問題の具体的な内容、性格等について四極で検討することの必要性を提起をいたしまして、その結果今後四極で専門家に検討させることで合意を見たわけでございます。  さらに詳しく申し上げますと、アメリカのブロック通商代表と私の一対一の会談の際に、この問題について触れ合いまして、ぜひひとつハイテク時代に備えて知的所有権分野についての検討を進めようということで合意を見ました。そして、四極貿易大臣会議でそのことが合意をされたわけでございますが、このことの内容は、近年ハイテクノロジー開発の急速な進展と、技術及びハイテク商品貿易の拡大に伴って技術開発や技術交流と深いかかわりを有する知的所有権をめぐって国際的に種々の議論がなされておるところである、四極貿易大臣会合において知的所有権と貿易の問題の重要性を指摘するとともに、この問題の具体的な内容、性格等について四極で検討しようということでその必要性を私から提起をいたしました。その結果、今後四極で専門家に検討させることで合意を見たわけでございます。  また、我が国工業所有権制度及び運用の理解不足や、各国制度及び運用の違いからくる外国からの不満に対しましては、これまで専門家レベルで外国企業との会合を設け、理解を深めさせたり、また、日米欧の専門家会合の場で、制度及び運用のハーモナイゼーションの検討を始めるなど対処してきておるところでございます。  この問題に関しまして、先ほど福間委員志賀特許庁長官との間の質疑応答でなされましたように、今後も一層積極的に対処をしていきたい、このように考えておるところでございます。
  20. 福間知之

    福間知之君 今のお話にもありましたように、この所有権制度のハーモナイゼーション、調和を目指してやっていかなければならぬということでございますけれども、その直後に、二月の二十五日ですか、特許庁で、この三極ないし四極特許専門家会議が開かれたようですけれども、その中身についてはいかがですか。
  21. 志賀学

    政府委員志賀学君) 日本と、アメリカ特許庁、USPTO、それからヨーロッパ特許庁EPO、この三つの特許庁の間で定期的に会合を開こうということになっておりまして、第一回が一昨年でございましたか、ワシントンです。二回目が昨年ミュンヘンで行いました。三回目をことしの秋に東京でやろう、こういうことになっております。先般行われましたのは、ことしの秋に東京で開く予定の三回目の定期会合につきまして、どのようにやったらいいか、どんなことをやったらいいかというようなことを専門家レベルで打ち合わせをした会議でございます。  それでは、三極の定期会合で何をやっているかということでございますけれども、これは一つの大きなテーマは、日本特許庁アメリカ特許 庁もヨーロッパの特許庁も、同じ悩みを持っているわけでございますけれども、要するに非常に出願が難しくなっているし、件数がふえているということで、全般的に工業所有権行政というものについてエレクトロニクス化を進めていかなければいけない。日本の場合に、ペーパーレス計画の推進ということでやっているわけでありますけれども、そういったエレクトロニクス化をそれぞれの特許庁でやらなければいけない、こういう状況になっているわけでございますが、その際に、できるだけお互いに協調して、連絡を取り合いながらやっていった方がいいではないか。かつ、お互いの特許情報というのを交換していって、お互いに利用できるような、そういうことも考えながらコンピューター化を進めていくべきではないか、こんなことがテーマの一つの大きな柱になっているわけです。  もう一つの柱が、これは実は昨年の秋、ミュンヘンで行われました第二回定期会合で決まったわけでございますけれども、できるところから、各国の特許制度について、この三つの特許庁の間の特許制度につきまして、制度ないしプラクティスについて、ハーモナイゼーションをできるところからやっていくべきである、こういう合意ができたわけでございます。  そこで、ことしの秋に東京で行われます第三回の定期会合におきましては、コンピューター化に関連いたします相互の協力をさらに深めるために何をするか、あるいはハーモナイゼーションについてどういうところからどうやっていくかといったようなことが、恐らく議題になってまいります。  こういうことでございまして、先ほども申し上げましたように、ことしの二月の専門家レベルの会合も、そういった点につきまして意見交換をしたということになっているわけでございます。
  22. 福間知之

    福間知之君 今のお話聞いてますと、今後に向かってハーモナイゼーションだとか、あるいはより緊密な連携による制度の統一化といいますか、融合化といいますか、しかも、それはコンピューターを含めた合理的な、迅速な処理を目指していくというふうな方向に立っている話でした。過去におけるいざこざとか、あるいは現在、貿易摩擦で、さながらとげとげしい空気があるわけですけれども、それとは違うんだと、そういうものでは必ずしもないんだと、また、特許制度の現状の違いから来る経済上、貿易上のあつれきにつながっているというふうな、そんな話し合いではないんだと、こう承知してよろしいんですか。
  23. 志賀学

    政府委員志賀学君) 確かに最近、国際的ないろいろな場におきまして、工業所有権制度というものが、貿易摩擦、通商摩擦関連というふうなことでいろいろ取り上げられる傾向というのがあるわけでございます。日本アメリカとの間におきましても、例えば日米エレクトロニクス会合の場におきまして、日本特許の処理というのが遅いではないか、こういったような話が出ておりますし、また逆に、アメリカの関税法の三百三十七条に関連いたしまして、日本企業特許侵害としてアメリカ企業が提訴するケースが最近非常にふえているわけでございますけれども、そういった問題について、日本からいろいろ意見を言っておるというようなこともございます。日本アメリカ、そういう面ではお互いに言ったり言われたりしておるわけでございますけれども、例えばそういうようなことがあるわけでございます。  それからまた、アメリカ出願人あるいはヨーロッパの出願人から、日本特許庁に対して、日本工業所有権制度の運用あるいは制度の内容についていろいろな意見、批判も寄せられる向きが、これはございます。  私どもはそういうことに対しまして、それぞれ、例えばアメリカ出願人あるいはヨーロッパの出願人に対しまして、直接私どもとしては対話をしておりまして、直接彼らから彼らの意見を聞く。同時に、ヨーロッパあるいはアメリカ出願人に対して、直接我々が、またこちらの考え方、内容を説明する、そういうことで理解を深めるということでやっているわけでございます。  確かにそういった関係は摩擦絡みということでありますけれども、どちらかと申しますと、先ほど申し上げました三特許庁間の定期会合と申しますのは、そういう対立関係というのではなくて、むしろ協調してやっていく、協力して、どうしたらいいかということで議論が進められているという性格の会合でございます。  特に、ハーモナイゼーションの問題でございますけれども先ほど申し上げましたように、海外から日本特許制度工業所有権制度に対していろいろ批判が寄せられている、意見が寄せられている。これについても、やはりそれを解決する基本は、できるだけ制度をハーモナイズしていくということが一つ大きな解決策として考えられるわけでございまして、そういう面から申しまして、この三特許庁間のこういった非常に協調的な場において、どのようなハーモナイズをしていくべきかというようなことを議論していくということは、日本にとりましても非常に有益なことではないかというふうに思っているわけでございます。
  24. 福間知之

    福間知之君 多少のトラブルめいたことが関係国との間であるということは承知もしておりますけれども、だがゆえに専門家会議等をもって常に相互理解を深める、こういう必要があるし、その中から我が国としてもやはり新しい時代に向かって、この所有権制度の法制を考え直すものは考え直す、こういうことが必要だと思うんです。  かねがね、我が国特許法というものがなかなか理解しにくい、特に外国人にとってはなおさらのことだというふうな指摘もされておりまして、手読が煩雑であるとか、非常に法文が難解だというふうなこととか、一種の貿易上の障害じゃないかなどと指摘もされているわけでありますが、この点、特許庁は、かねがね法体系を全面的に一遍見直してみるというふうな雰囲気があったわけなんですけれども、現在こういう検討をなされているのかどうか。なされているとすればどういう段階に今あるのか。  これは当委員会でも、過去においてやっぱり何度も指摘されたことであるし、今回の審議を通じても、何らかの意思をこの委員会として私は表明したいんですけれども、どうもこれ、大臣、この法文、読まれてわかりますか。率直なところですね。さらに弁理士法なんかになると、片仮名が使われているなどということで、私も聞いてびっくりしているんですけれども、確かに全面見直しとなると大きな作業です。けれども、今やはり貿易上の問題がここまでクローズアップしていることでもあり、その一環として見直すものは思い切って見直して、仮に同じ中身の事柄でも、文章はもうちょっと書き方があると思うんです。そういう点では、本当に腹構えもしてもらわないと、さっぱりなじみにくい問題であるところに持ってきて、もう一つ難しい文章になっていますから、取っつきにくいということは否めないと思うんですけれども
  25. 志賀学

    政府委員志賀学君) 確かに、工業所有権関係法律というのは、かなり難解であるというふうに思います。私も昨年六月に特許庁長官に着任しているわけでありますけれども、私自身、なかなか理解をするのに骨が折れるというような状況でございます。  ただ、若干申し上げますと、いずれにしても、特許法を含めまして工業所有権関係法律というのは、それぞれある独占権を、独占的な権利を特定の人に与える、認めるという権利の設定法でございます。非常に手続法的な色彩の強い、かつ権利を設定する性格上非常に厳密性を要求されるということかから、ある程度やはり工業所有権関係法律というものが難解にならざるを得ないという側面というのは、これはやむを得ないのではないかというふうな感じはいたしております。ただ、さはさりながら、やはりできるだけわかりやすくしていかなければいけないということは、これまた当然でございまして、私どもといたしましても、そういった点を踏まえまして、この工業所有権関係法についての検討をしてまいりたいというふうに思っているわけでございます。  なお、先ほど申し上げましたように、例えば特許法などにつきまして、国際的なハーモナイゼーションをすべきであるという動きも出てきてまいっておりますし、あるいは海外からもいろいろな意見が寄せられております。海外から寄せられている意見の中には、これは誤解もあります。そういう誤解は解いていかなければならないわけでありますけれども、傾聴すべき意見もあるわけでございます。そういったことを踏まえながら、私どもとしてこの特許法などの問題につきまして、現在検討を進めているところでございまして、そういった検討の結果、改正をするというような場合には、できるだけ平易なものに、わかりやすいものにするということも十分頭に置きながら作業を進めてまいりたいというふうに思っているわけでございます。
  26. 福間知之

    福間知之君 とにかく改正をする、しなきゃならぬ、そういう必要ありと、こういうふうに大臣、腹を固めて、大臣やっておられる間に何か一つ事を残しなさいよ。特に私は強くこれは要望しておきたいと思う。本当に、日本法律は全般にそうなんですけれども、特に今のお話のように事柄が難しいだけに、逆に法文はわかりやすく工夫する必要がある。そういうふうに私も思うわけです。  時間の関係で次に参ります。  次は、優先権の問題についてでございますけれども、今回のこの法改正の大きな柱の一 つに、第四十二条の二に定める優先権の主張があると思います。これを新たに設ける理由はそもそも何か。まずこの点からお聞きをしたいと思うんです。  この優先権の規定も実は読んでみましたけれども、さっぱり頭に入らないんですね。非常に難解だ。したがって、優先権の主張の意味とその効果というもの、あわせてこの四十三条で規定するパリ条約の優先権との違い、あわせて御説明を願います。
  27. 志賀学

    政府委員志賀学君) 私どもが、この優先権制度を設ける必要があるというふうに考えました理由は、最近技術開発が進められているわけでありますけれども、その内容というのは大変高度であり、かつ複雑なものになってまいっているわけでございます。その技術関発の現状、実態というものを見てみますと、基本的なあるいは原理的な発明というものが行われる、それを出発点として組織的にまた計画的にこれを具体的なものにしていく、その過程で改良発明が行われる、あるいは追加的な発明というものが出てくるというのが、最近の技術開発の実態であろうというふうに思われるわけであります。  ところで、そういったような技術開発の現状に照らしまして、それに伴う、その技術開発によって創造されます発明についての特許制度というものが、十分そのような実態に合います技術開発の発明に対して付与されるような、そういう仕掛けになっているであろうかという点について考えてみますと、やや疑問があるのではないか、問題があるのではないかというふうに考えられるわけでございます。  この技術開発をした、発明をした発明者の立場からいえば、できるだけその発明に伴っていろいろな発明を網羅的に特許権の対象として特許を取りたいと、こういうふうに考えるわけでありますけれども、その点についてかなり問題がある、必ずしも十分ではないのではないかということであるわけでありますけれども、具体的に申しますと、例えばある基本的な出願が行われます。その後、改良発明が行われます。それについて、例えば最初出願について補正をして、つけ加えていくということを仮に考えてみた場合に、その補正が要旨変更になりますと補正が認められないということになるわけでございます。  それでは、独立の出願をすればいいではないかということになるわけでありますけれども、その独立の出願をした場合に、前の出願が公開されるわけでありまして、それとの関係からいって、どうも進歩性というものがないということから、特許要件がないということから拒絶されるというケースがかなりあるということになるわけであります。したがって要旨変更でもできない、あるいは新出願としても難しい、そういう発明というのが出てくるわけであります。  それでは、その前の出願を取り下げればいいではないかというのが次の問題として考えられるわけでありますけれども、先の最初出願をうっかり取り下げますと、その間にいろいろなほかの人の出願が行われていたり、いろいろな状況があるわけでございまして、一番最初出願を取り下げるということもなかなか危険でできない、こういうような実態があるわけであります。  そこで、そういうことを解決して、網羅的に特許を認めていく、そういう仕掛けをつくることが必要ではないかということで考えたのが、この優先権制度でございます。なお、こういったような優先権制度というのは、主要な先進国におきましては既にこのような制度をつくり、運用しているわけでございます。その辺も踏まえまして、私どもとしてこのような制度を考えたわけでございます。  この優先権制度の性格、内容と申しますのは、先ほど先生からお話がございましたように、特許法の四十二条の二に規定されているわけでございますが、これをごらんいただきましてもなかなかわかりにくいわけでありますが、先ほど申し上げましたような実態を踏まえまして、要するに、先の最初出願、先に行われました出願を基礎といたしまして、後からその優先権を主張して出願ができるということになっているわけでありまして、例えば、先の一番最初出願に添付されました明細書あるいは図面、これと重複する後から行われます出願のうち、先の出願に添付されました明細書あるいは図面に添付された発明と重複する部分につきましては、後から出願されましても、先の出願のときに出願されたというふうに優先的に取り扱っていこうと、こういうのが、一言で言うとこの制度の内容でございます。  この四十二条の二の一項というのは、これはどういう場合にこの優先権を主張することができるかということが書いてあるわけであります。いろいろ書いてございますけれども、先の出願から一年以内に行われたものでなければいけないとか、あるいは先の出願特許庁に係属しているものでなければいけないとか、いろいろな幾つかの要件が書かれております。また、二項、三項、これは優先権の効果について定められているわけでありまして、先ほど申し上げましたように、この後から出願されましたものであっても、先の出願と重複する部分につきましては、ここに書いてありますようなその特許要件の判断に際して、先の出願のときに出願されたものとして判断を行ってやろう、こういう効果が二項、三項に書かれているわけでございます。  そこで、パリ条約に基づく優先権との違いでありますけれども、これは本質的には同じような性格のものであろうというふうに思っております。  ただ、パリ条約と申しますのは、言ってみますと、例えば日本アメリカであるとか、そういう横のほかの国との関係において優先権というものを定めているわけでありますけれども、それをいわば縦の関係に転換したというのが、今回お願いしております優先権制度の性格とお考えいただければよろしいのではないかというふうに存じます。
  28. 福間知之

    福間知之君 今の御説明、そこまで御説明をいただいて、もう一つわかったような気がしないわけでありまして、これは、注文なり説明書なり、これと首っ引きで検討しないとのみ込めないという代物だと思うんです。だから、やはりそれほど事柄が難しいと言えばそれまでですけれども、何としてもわかりやすく、法文上もあるいはまた説明書にしてもつくっていただかなきゃならぬと、そういうふうに思うんです。  ところで、今回の改正で、補正却下後の新出願の取り扱い、あるいはまた追加の特許の取り扱い、この点が少しく問題視されておると思うんであります。  この工業所有権審議会、昨年十一月二十九日の 答申を読んでみますと、その中に「国内優先権の導入に伴い、次の方向に従い関連制度の廃止等を行うのが適当である。」、こういう指摘の中に、補正却下後の新出願の廃止問題それから追加の特許制度、これについても廃止すると、それから手続の補正制度、これはちょっと私わからないが、「手続の補正制度については、国内優先権制度によって十二か月以内はカバーされるので」云々で、「これまでどおり存続運用する。」のが望ましいと、こういう三つの項目が挙がっているんですけれども、これらの関係を、この四十二条の二あるいは現在の五十三条の四項、三十一条の関連で御説明を願いたいと思うんです。
  29. 小花弘路

    説明員(小花弘路君) 今の御質問に対しまして、ちょっと法律的にやや詳しくなるかも存じませんが、御説明させていただきます。  今度、今の答申の中にございました三点のうち、追加の制度というのは、基本的な発明に対して、それを拡張したり改良したりする発明を保護するための一つ制度でございます。それから、もう一つ御指摘の、五十三条というところにございます補正却下後の新出願といいますのは、出願人が明細書を直したときに、これは先願主義のもとですから、明細書に最初に書いてあったことから違ってしまっては困るわけでございます。それがたまたま違ったときには、その補正書というのは却下されるんですけれども、却下されたときに、もとの補正書を出した日の出願にかえることができる、こういう手続だったわけでございます。これもやはりいろいろ技術的に新しい開発をしていく過程での保護のための制度でございます。  それから、三番目の御指摘の補正ということでございますが、これは、日本出願は先願主義でございますので、早く出願をしなければいけない。そうすると、明細書がどうしても、完全につくってから出すべきというのが建前ではございますけれども、なかなかそのようにならない。そのために、出願から一年三カ月の間は明細書を原則として直すことができる、こういう規定がございます。このところにおのおの言及した部分でございます。  それで、今長官から御説明申し上げましたように、国内優先権制度といいますのが、そういうふうに改良された発明、そういうものを取り込んで十分保護をしていける制度でございますので、それがちょうど出願から一年間十分機能する、そういう機能を考えますと、追加の制度それから補正却下の決定に基づく新出願制度というものに今まで乗っていたそういう手続が、全部国内優先権でカバーできるではないか、基本的にはカバーできるというのが考え方でございます。ところが、やはり明細書が完全にできてないところを補正するというのは、やはり出願人にとって必要であるということから、そういう補正の手続は残しておこうというのが答申をいただいたときの考え方でございます。  以上でございます。
  30. 福間知之

    福間知之君 従来の補正却下後の新出願と、今回の法改正によって挿入されています優先権との関係、ただいまの御説明で大体理解できるわけでございますけれども、五十三条の一項の規定によって、補正を却下された場合の救済手続というのはどういうふうになるんですか。
  31. 小花弘路

    説明員(小花弘路君) お答え申し上げます。  補正却下されましたときには、これは審査官が補正却下をするわけでございますけれども、その中身につきまして争う道が一つございます。それは、法の建前上の道でございます。  それからもう一つ、現在、今度廃止しようとしております制度に乗って、出願時期は補正書を出した時期に繰り下がりますけれども、新出願できるという道がございます。  それから、もとの出願が継続している過程において、明細書を直せる機会法律上定められておりますので、その範囲内においては、また明細書を直して、もとの出願がそのまま継続して特許になる場合と、三つのケースが考えられるわけでございます。
  32. 福間知之

    福間知之君 補正却下がされた場合に、その再補正の道を設定しておく必要があるんじゃないか。いたずらに優先権の主張を行わねばならないというふうなことになれば、出願件数がさらに増加をするという危険があるんじゃないか。あるいはまた、結果として出願人の負担がふえるし、事務処理量も大きくなってしまう。そのために、再補正の道を残す必要性があると考えるわけですけれども、例えば拒絶理由通知書を全部に出して、再補正の手続を可能にするなどの方途が行政上とられることが望ましいんじゃないかというふうにも思うんですけれども、これは法律の運用上の問題ですけれども、どのようにお考えですか。
  33. 小花弘路

    説明員(小花弘路君) 今先生御指摘のとおりでございまして、私ども運用で十分カバーをしてまいりたいと考えてございます。  現在におきまして、補正却下後の新出願制度がある中におきましても、やはりもとの出願を生かしたいという出願人の御希望もありますし、それは明細書全体が、要旨変更にならない部分と要旨変更になった部分が補正書にあったような場合などは、拒絶理由をもう一回発する場合もございまして、十分救済できるように運用上考えてまいれるというふうに考えております。
  34. 福間知之

    福間知之君 ただいまの点は、弁理士会等もこれを要望しているように伺っておるわけです。  同じくこの優先権主張の範囲に関しまして、四十二条の二の優先権の主張は、出願の際の願書、願い書だけなのか、それとも明細書の記載事項にまで及ぶのか、あるいは後ほど、後日出願の分割を行うときに優先権がどこまで及ぶのか等、若干の疑念が残っているわけですけれども、この点の考え方はいかがですか。
  35. 小花弘路

    説明員(小花弘路君) 優先権の主張は、主張をすることを願書に書いていただくというのが趣旨でございます。優先権の中身となりますと、どこまでがさかのぼるかということは願書に添付してあります明細書及び図面に書いてある中身でございます。  それから、一たん優先権が認められて出願が成立しますと、今度後ほどそれを分割するという場合がありましても、それはそのとおり優先権がついて回ることになります。ただ、そのときまた手続をとっていただくことは必要でございます。
  36. 福間知之

    福間知之君 今回この優先権制度の採用に伴いまして、先ほど触れました追加特許制度、あるいは補正却下後の再出願制度が廃止されるわけでございますが、そのいずれもが、今日までの利用実績がそんなに多くないということも理由一つであろうし、また国内優先権制度の中でカバーされる部分がかなりあるということだろうと思うのです。  確かに今特許制度利用している八〇%が、主要な三百ぐらいの企業によって占められていると聞いておりますけれども、そういう大企業、中堅企業中心の特許制度ということの嫌いがあるとすれば、これは今後は、行政の立場としては少しく問題意識を持って改めていかなきゃいけないと、そういうふうに思うんです。広く国民一般の発明をひとつ奨励していくという立場が行政の立場だろう、あるいはこの法の目指すところだろう、そういうふうに思いますので、そういう点に対するきめの細かい運用、配慮をひとつしていかなきゃならぬ、そういうふうに考えるわけでありまして、先ほど来のこの法改正に伴う現状の変更ということに伴って、国民のある層に不便がもたらされるというふうなことは極力ひとつなくしていくようにしていくべきだろう、そういうふうに思うわけです。  もちろん余り冗長な救済制度を持っているということもいかがなものかとは思うわけですけれども、そういう点で今回のこの点の改正は非常に判断が難しいんですが、あえてこれはもう後ろ向きに否定しさるべきものではなかろう、そういうふうには思っておりますけれども、特段の今後の運用における配慮をお願いをしておきたいと思います。  次に、出願件数特許なり実用新案の最近の出 願件数がどうなっているのか、その伸び率がどうなのかということをお伺いしたいのですけれども、大体手元の資料でも大きく違わないと、こういうふうに思いますので、質問を少しはしょりたいと存じます。  特許が毎年七%以上の伸びで、非常に顕著なんですけれども実用新案の方は、高度成長時代から見るとずっと少なくなっておりますが、この傾向というものは、私は当然といえば当然ですし、ある見方からすれば望ましいと思うのですが、当局はどのように見ていますか。
  37. 齋田信明

    政府委員齋田信明君) 過去をちょっと振り返って考えてみますと、過去において、例えば昭和四十年におきましては、特許出願が八万件、それから実用新案が十万件ぐらいのところでございました。これが五十五年でちょうどバランスいたしまして、十九万件、十九万件ぐらいになっております。  現在、先生御指摘のように、五十八年で申しますと、特許が二十五万五千件ぐらいでございますから、実用新案が二十万件というようなことになって、完全に逆転いたしました。これはもう御承知のように、特許実用新案の違いと申しますのは、どちらかといいますと、実用新案は小発明という、言葉は雑かもしれませんが、そういう言い方をしますと、やはり日本研究開発あるいは技術開発というものがだんだん高度化してまいりまして、これが特許の数にも出てきたというふうに私ども思っております。しかも、これはやはり、この傾向というのは、私ども特許協会のメンバーあるいは中小企業の方々等にもお伺いする機会がございますけれども、この傾向は今後とも続いていくであろうということを民間の方々も申されておりますし、私どももそうではないかというふうに思っております。
  38. 福間知之

    福間知之君 ところで、この毎年の特許出願件数が増加するのに対しまして、審査官の定員を取り上げてみますと、五十五年は九百六人、五十六年は八百九十七人、五十七年は八百八十六人、五十八年は八百七十四人、昨年、五十九年は八百七十一人、そしてことし、六十年は八百六十六人、ずっと一貫して減少を示しておるわけでございますが、その結果として、未処理件数が増加をし、審査期間が少しずつ長期化する傾向が出ている。現在その審査期間は、ほぼ二年五カ月余りと言われておりますが、十年後にはこれは七年ぐらい審査期間がかかってしまうんではないかと目されておるんですけれども、この点をどのようにお考えになって対処されようとしておるのか。ペーパーレス云々はもちろんありまするし、後ほどちょっと触れたいと思いますが、いかがですか。
  39. 志賀学

    政府委員志賀学君) ただいま先生からいろいろお話がございましたように、出願件数がふえ、かつ内容が大変複雑で難しくなってきているというようなこともございまして、またその審査官の定員が減少傾向にあるというようなことから、この審査処理期間が最近やや長期化の方向を示しているわけであります。五十八年度で申しますと、先ほど先生からお話がございましたように、二年五カ月というような処理期間ということになっているわけでございます。私どもこのような傾向に対しまして、やはり工業所有権制度の基本というのは、できるだけ早く権利化をしていくというところが大変大事なことであろうということから、このような傾向に対して、やはり早急に対策を講じていかなければいけないというふうに思っているわけでございます。  私どもがとっております対応策といたしまして、一つはペーパーレス計画の推進ということでございまして、ペーパーレス計画と申しますのは、先ほどもちょっとお話し申し上げましたように、この特許庁のいろいろな行政事務を一貫してエレクトロニクス化していこう、こういう計画でございますけれども、このペーパーレス計画を五十九年度から十年間で仕上げていこう、それによって審査の効率化というものを実現していこう、こういうことを一つ考えているわけでございます。  同時にもう一つは、出願人側に対しまして、やはり適正な特許管理をやってほしい、そういう指導を従来からもやってきているわけでありますけれども、それを強めていこう。それによって、ややむだではないかと思われるような出願あるいは審査請求、そういったものをできるだけ合理的なものにしてもらおう、そういうことを対策の一つとしてやっているわけでございます。  なお、もう一つの方法といたしまして、審査体制を効率化していくということも考えていくことが必要ではないかということでございまして、この点については現在いろいろ内部的に検討をしているところでございます。  もちろん人間もふやしたらどうかということがあるわけでございます。これは先ほど先生からお話がございましたように、審査官の定員が最近減少傾向をたどっているわけでございますが、私どもといたしまして、この審査官の人員の確保につきましては、関係方面にいろいろ特許庁の実態というものを話をいたしまして、特段の努力をやっているところでございまして、審査官としては減っているわけでありますけれども審査、審判官ということで見ますと最近は横ばいというようなことになっているわけでございまして、いずれにいたしましても、必要な人員の確保につきましては今後も私どもとして最大の努力を傾けてまいりたいというふうに思っているわけでございます。
  40. 福間知之

    福間知之君 アメリカでも、ペーパーレスといいますか、コンピューター処理に向かって研究を進めておるようです。そして、一部の資料によりますと、アメリカでは審査官の人員をふやしているということも聞いているんですけれども、これは後ほどペーパーレスの関係のときに、場合によっては少し話を蒸し返したいと思うんですけれども、さしあたってはそういうことで、出願件数がふえてきてなかなか各国とも大変だ、特に日本アメリカ等は大変だということを前提といたしまして、これからこの問題に当たっていかなきゃならぬということだけを指摘しておきたいと思うんです。  ところで、特許情報というのは行政にとっても非常に重要ですし、企業やあるいはまた技術者、研究者にとっても価値の高い代物でございます。これが年々累積しておりまして、現在二千八百万件、激増している。これが十年後には、特許庁の資料によっても、ほぼ五千万件を場合によっては突破するのではないか、こういうふうに言われておるわけでですが、したがってこれについて、当局としてはこれからの対処策について頭が痛いんじゃないか、そういうふうに思うんですけれども、どういうふうにしていかれようとしているのか。あるいはちなみに今特許庁の資料館というのがありますけれども、これは新総合庁舎の設立とあわせて拡充していく、こういうことだろうと思いまするし、その新総合庁舎が四百数十億という金を投入して建設されると聞いていますけれども、概要は大体固まっているんでしょうか。
  41. 小川邦夫

    政府委員(小川邦夫君) ただいま先生御指摘ございましたように、膨大な特許情報の蓄積、そして内容も高度化するので、利用、活用が非常に難しくなってくる趨勢にある、その対処策といたしましてペーパーレス計画を進めていくわけですが、またスペース問題もあわせ考慮しますと、ペーパーレス、スペース問題、ともに解決するための措置として庁舎建設計画を考えておりますことは、御指摘のとおりでございます。  先ほど引用されましたように、庁舎の建設計画、総資金は今の換算でまいりますと、四百二十億程度の建設費等の費用が必要でございまして、六十年度の予算におきましては、新庁舎の設計費を計上していただいております。  そして、私どものスケジュールといたしましては、六十一年度から現在ございます特許庁本庁舎を取り壊しまして、その地に新しい庁舎を建設いたしまして、六十三年度の秋には新庁舎完成をいたしますことによって、六十四年度早々から、ペーパーレス計画の一部でございます電子出願の受け付けができるような体制に持っていきたい、 そういうスケジュールを今考えております。
  42. 福間知之

    福間知之君 新総合庁舎は、財源のめどがつく限りにおいては結構だとは思うんです。余りにも古過ぎますので、技術の先端を扱う省庁のやかたとしてはいささかみすぼらしいと、私個人も感じているところですから、これは大変喜ばしいんですけれども、そのために、財源集めのために値上げをやはり考えていかなきゃならぬとか、いろんなまた不都合も多少介在してくるような気配でございますので、これは今後十分検討をされていかなきゃならぬと思いますが、まずはそういう方向で、四百二十億円ですか、膨大な金を投下して、六十四年からそこで仕事を始めると、こういうことですから、それは承っておきたいと思うんです。  ところで、今、地方の閲覧所が百カ所余りあると聞いていますが、その概況と、これからの拡充の計画、さらにはJAPATIC、財団法人日本特許情報センター、このオンラインサービスでございますが、ちょっとなじみのない法人でございまして、競輪や競艇のあれじゃございませんので、無理からぬところがありますが、この利用状況についてお伺いします。  さらに、発明協会もこの特許情報の提供を行っていると聞いておりますけれども、この業務の内容、あわせて、JAPATICと発明協会との統合が今問題になっておりますけれども、これはことしの早い時期に統合されるんじゃないかとも言われていますが、その理由、あるいはまた今後の計画、そういう点をまとめてひとつお答え願いたいと思います。
  43. 小川邦夫

    政府委員(小川邦夫君) まず、地方閲覧所の利用状況と拡充計画でございますけれども先生御指摘のとおり、全国に地方閲覧所は百八カ所ございます。各通産局であるとか、公立図書館とか、公立試験場、あるいは商工会議所、発明協会地方支部といったようなところに設置されておるわけでございます。この地方閲覧所の利用というのは年々増加傾向にございまして、五十八年度の利用者数、地方閲覧所合計をはじいてみますと、二十一万人の利用者があるということで、非常に活発に利用されておるということでございます。  それに対して、では施設が十分かということでございますが、だんだんこのような利用の活発化の中で、スペースが狭隘化するということ、さらには資料の充実の声も出てきておるという実情にございますので、スペースの拡充等の措置は、実は六十年度の予算におきまして、まず福岡、広島、名古屋といった、特に狭隘化しておるところについて拡充措置を行うよう予算を計上していただいたわけでございます。そのほかの通産局閲覧所の拡充も今後検討していきたいと考えております。  それから資料の充実、内容の豊富化という観点では、地方閲覧所におきますマイクロ化をなるべく促進しようとか、あるいは索引類、参考図書類を充実するということもこれまでもやってきておりますが、今後も引き続き進めていくことにしております。  以上が地方閲覧所の関係でございますが、次にJAPATIC、日本特許情報センターでございますが、この特許情報センターは、四十六年度に設立されたものでございまして、やはり特許情報の利用が激増し、かつコンピューターによって解析処理したりあるいはサービスするという時代になってきたものですから、そういった電算機処理による特許情報の処理、加工、提供といったものを行うためにこのセンターが設立されたわけでございまして、これのスタート段階ではなかなか利用が必ずしも活発でない時期もございまして、苦しい時期がございましたが、近年やはりコンピュータリゼーション、オンライン化の進展も反映し、特許情報のニーズも高まっていることもございまして、非常に利用が活発化しております。現在のこの特許情報センターの事業規模は四十億程度の規模になっております。  それから、他方発明協会でございますが、これは非常に古い法人でございまして、明治三十七年に設立されまして、常陸宮殿下を総裁に仰いでおります団体でございます。事業といたしましては、発明奨励事業、それから特許制度普及事業というものをやっておりまして、加えて特許情報サービスといたしましては、例えば公報類の販売といったようなこともあわせ行っております。  最後の御質問でございますこの特許情報センターと発明協会との一元化の問題でございますが、ただいま申し上げましたように、特許情報というものの情報量がふえ、かつコンピューターによって処理し、それをオンラインで提供するというふうに、非常に情報の内容もその利用のされ方も高度かつ複雑になる傾向にございます。そういった中で、よほどその状況に対応できるような特許情報の一元的な集中、加工処理、提供ができる組織が必要だということから、私どもは現在日本特許情報センターと発明協会の行っております事業のうちの特許情報サービス事業の部分を合わせて一つの新しい法人をつくることにいたしたいと考えております。  先ほど御指摘ありましたように、三月末日までに何とかまとめようということで、関係団体相談してまいったわけでございますが、やはりより利用のされやすい形に持っていくためには、さらにきめ細かい詰めを当事者で行う必要があるということから、若干おくれておるわけでございますが、この新団体の必要性にかんがみ、できるだけ速やかにその詰めを終えて発足させる方向で進みたいと考えております。
  44. 福間知之

    福間知之君 ところで、JAPATIC、発明協会の統合などは、私は適切に検討された上のことだろうと、こういうふうに思いますので、特に問題視しておりませんけれども、統合されればされるで、より効率的あるいはまた業務の面では充実した業務をするように対処を願わなきゃならぬと思います。  ところで、いわゆる今もお話が出ていましたペーパーレス化の問題に関連してお伺いをしたいと思うわけですけれども、まず現在未処理の件数というのは年間具体的にどういう状況なのか、あるいは逆に言えば処理件数は年間どうなっているのか、あるいはまた、ペーパーレスの関係で十年ほど先の見通しというのはどのように持っていられるか、まずお伺いしたいと思うんです。
  45. 志賀学

    政府委員志賀学君) 特許実用新案でお答えをさせていただきたいわけてありますけれども、最近の処理件数で申しますと、大体二十万件前後でここ数年動いてまいっております。片や出願審査請求件数は逐次伸びているということもございまして、未処理件数は逐次ふえてまいっております。五十八年度で申しまして約五十万件でございます。その結果といたしまして、先ほどもお答えいたしましたように、平均処理期間が二年半、二年五カ月というような状況になっているわけでございます。
  46. 福間知之

    福間知之君 そこで、この審査の迅速化のためにコンピューターの導入、ペーパーレス計画というものが不可欠だと、こういう結論に立っておられると思うんですけれども、ペーパーレスというだけで、コンピューター化というだけで、何となく漠然としたイメージはできるんですけれども、具体的にはかなり問題をはらんでいるんじゃないかと、そういうふうに私は思います。  今、当局は、この審査業務の何割がコンピューターによる処理が可能と考えておられるのか。審査官のかなりの人数が、一日じゅうキーワードとディスプレーに向かって座っていなきゃならないのか。言うならばイメージですよね。皆さん方の出されたこの資料を見ましても、図解でいろいろ書いておられるわけですけれども一言でわかりやすく言って、どういうイメージの仕事の処理方法になるのか、これをまずお伺いしたいと思います。
  47. 梅田勝

    説明員(梅田勝君) ただいま先生の御質問でございますが、審査業務というのは大体こういう段階になります。つまり、最初出願されてきたものを、まず発明を読みまして理解をするということが第一の段階でございます。これは、技術が非常に高度化、複雑化しておりますので、非常に大きなロードを占める部分でございます。それから その次に、その発明の内容を理解いたしますと、今度はその従来の技術との対比において同じような技術があったかなかったか、あるいは似たような技術があったかというような、そういう資料の検索という業務を行います。それから、第三ステージといたしまして、似たようなものが出てまいりますと、それと今自分が審査しているものとの対比判断という業務がございます。それからその次に、対比判断の後に、これはやはり拒絶すべきものと、あるいはこれは登録すべきものというふうに判断いたしました後で、出願人に対する指令といいましょうか、出願人に対する通知書を書くというような段階がございます。審査のフローを申し上げますと、今申し上げましたように、非常に大ざっぱに申し上げまして四段階あるわけでございます。  このうちで、それじゃコンピュータリゼーションがどこまでできるのかと、どういうところがコンピューター化できるのかという御質問だろうと思いますので、それに従ってお答え申し上げますと、先ほど申し上げました第二の段階の、従来の技術の中で今自分が審査しているものと非常に似通ったものがあるのかないのかという、探すという業務がございます。これは従来紙のファイルになっておりますので、それを手でいろいろ探しておったわけなんでございますけれども、それがコンピューターに入っておりますと、検索するためのキーというものを用いまして、比較的簡単に探し出すことができるというところ、ここの部分が、審査というサイドからいいますとコンピピューター化ができるんではないかと思います。それから、そのほかには、出願人に対する通知等々の起案におきまして、通知書をつくるという段階で一部コンピューターを利用することができると、こういうことでございます。  定性的に申し上げますと、今申し上げましたように、明細書の中を読んで発明の理解をするというところは、これはもう人間でないとできませんので、これはコンピューター化は無理でございます。  それから、第二のステージの資料を捜し出すというところは、コンピューター化が可能だということでございますし、それから第三段階の対比判断というものも、これは人間の頭脳でやる行為でございますので、ここもコンピューター化は無理ということでございます。起案のところ、出願人に対する通知というところは一部コンピューター化が可能かと、こういうふうに考えております。  その他今の状況で申し上げますと、審査官はそういう審査の本流以外の仕事もいろいろやはりやらざるを得ないという問題がございます。例えば、今審査部に対しまして資料が大体百五十万件ぐらい年間到着するわけでございますけれども、それをきれいに審査官がファイル分けをするとか等々の資料整備の時間がございます。そういうものはコンピューター化によって、いわゆる審査の本務以外の部分につきましてはできるだけコンピューター化によってロードを軽減したい、こういうふうに考えておるわけでございます。  大体審査におけるコンピュータリゼーションのイメージというのは以上申し上げたようなことでございます。
  48. 福間知之

    福間知之君 作業のステージはほぼそういうことだろうと思うんですけれども、そこで、一番素人でも感ずることは、先ほど処理件数は年間ほぼ二十万件と言われましたね。出願実用新案を入れて五十万件ほどと言われました。それをすべて最初からその中身を判断してとおっしゃるんだけれども、それは判断して処理できているのが二十万件だと、出願は五十万件だと。仮に二十万件でも、その判断をして、これは今度はインプットしなきゃいかぬですね、コンピューターに。入力の作業というのがあるわけですね。これはかなり膨大な作業量になると思うんです。しかも、聞くところによると、行く行くはこれ、第五世代のコンピューターを利用するということが考慮されてのことだと聞いているんですね。  今アメリカでもまだそこまでいっておりませんし、第二世代、第三世代いよいよ第四世代かというふうなところで、まだハードそのものが日本でもこれは目鼻がついておりません。これは通産省もバックアップして、いろいろと民間と開発を進めておるわけですけれども、そういうまだ未来のコンピューターというものを前提としてやっていくということだとすれば、仮にことし、来年から徐々に手がけていく場合に、一つ一つの一貫性というものがなければ新しい第五世代のコンピューターの機能、そのハードの機能とマッチするソフトを今から用意していかないと混乱が出てくるんじゃないかというふうな気がするわけです。  それで、何ですか、この検索をFタームと称しているこの技術分類のパターンなようでございますけれどもアメリカではそうではない、そういうシステムじゃなくて、まだ模索中ではあるらしいんですけれども、インバーテッド・ファイル方式というシステムてアメリカの場合はペーパーレス化に突き進んでいこう、こうしているやに聞いております。多分にこれは、私も余り技術的に詳しくないんですけれども、いわゆる英語による処理、特にコンピューターもかなり高度な性能を必要とする日本語の処理と違いもあるように思うんですけれども。だとすれば、今ペーパーレス、ペーパーレスというけれども、一体どういうシステムで将来の第五世代につないでいくのかという、そういう全体像というものが必ずしも沸いてこない。その間逆に日常作業で審査官その他が混乱をすると、むだな労力をかけると、それでいてまだペーパーレスができていないんだから、年間二十万件以上をさばかなければいかぬというふうな、そういう状況がまず頭に描かれるんですけれど、そういう点のそごはないんですかね、果たして。
  49. 梅田勝

    説明員(梅田勝君) ただいま先生御指摘の点でございますけれども、確かに通産省では第五世代のコンピューターというのを一生懸命開発していることは事実でございますけれども、今我々がペーパーレスシステムで取り組んでおりますシステムに関する限りにおきましては、第五世代コンピューターというものを前提としているわけではございません。つまり、現在の技術で十分こなせるシステム、現在の技術の市販されているコンピューターシステムで十分こなせるレベルのものを対象にしてシステム開発をやっておるわけでございます。  それじゃ先ほど先生御指摘のように、日本はFタームというのをやっておるようだけれどもというお話でございますけれども、Fタームというのはファイル・フオーミング・タームというふうに我々呼んでおるわけなんでございますけれども、これは非常に簡単に申し上げますと、細かい分類というふうに御理解いただければよろしいかと思います。つまり物事を分けます場合に分類に従ってA、B、Cというふうに分けるんですが、それを、粗くてはなかなかコンピューター化でうまく利用できませんので、少し細かくいたしまして、分類符号として利用しておるわけでございます。  それじゃ、アメリカのシステムとの関係はどうかということでございますが、アメリカの場合は、一つは彼らが言っておりますのは、フルテキストサーチということを言っておりまして、全部の言葉をコンピューターの中に入れまして、その言葉を探し出していくという方式をとっております。しかしながら、その場合も、全部の文献を言葉を単位として拾っていくというシステムではございませんで、つまり分類である程度分けた、その分けた中の部分についてそのフルテキストという方式で探し出すという方式をとっております。  したがいまして、アメリカでやっておりますフルテキストサーチ方式というものと、我々が今とりつつあります分類の細かい分類の方式でございますが、これは相矛盾したものではなくて、両方両立し得るというものだというふうに我々は考えておりますし、アメリカ先ほどの三極の話でも出てまいりましたが、三極の向こうの専門家ともいろいろディスカッションしておりまして、要するに分類の細かいものと、それからフルテキスト というものを融合させるというのが将来の課題だと、アメリカは入り口としてそのフルテキストの方にややウエートを置いておりますし、日本は分類の細かいものの方にややウェートを置いてスタートしていると、こういう違いを認めながらも、相矛盾したものではないというふうに議論しておる次第でございます。  それじゃなぜ日本でフルテキストの問題が取り上げられないかということでございますが、これは先生御指摘のように、やはり日本語の文章というものと英語の文章というものとを比べてみますと、英語の方がややフルテキストにはやりやすいという状況がございます。したがいまして、いずれにいたしましても先ほど来申し上げましたように、いわゆる分類方式というものとフルテキストというものは矛盾しないということでございますので、そういう点で入り口といたしまして、私どもといたしましては分類方式、つまりFターム方式というものをとってやろうとしているわけでございます。  先ほども申し上げましたように、今のコンピューターのレベルで十分間に合うシステムであると考えておりますし、仮に第五世代のコンピューターが出てまいりましても、それに十分乗り移れるデータベースを構築しようと、こういうふうにやっているのが現状でございます。
  50. 福間知之

    福間知之君 今お話がありましたように、このシステムはアメリカと比べても特に問題はないと、こういうことで、これは我々素人はちょっとわかりにくいわけですけれども、フルテキストサーチですか、システムというのと我が方のこのFタームのシステムというのが、特に優劣があるわけじゃないと思うんです。日本語に適した検索のシステムというものがどちらがベターなのかという比較の問題だと思いますので、これは専門的に少しやっていただければいいんですが。  私が気にしているのは、将来、第四、第五というふうな世代のハードを使う場合に、今手がけている一つの方向がそこで混乱が起こったりしてはいけないよと。その点が、民間の会社であれば、一つ大きなコンピューターを入れてオンラインのシステムを構築する場合には、いろんな事前評価をするわけですね、まあアセスメント。そういうことは必ずしも特許庁、この場合行われていないのじゃないかという懸念が耳に入ってくるわけでありまして、これは十年かかって二千億あるいはそれ以上の資金を投入してやる一大プロジェクトですよ、大きなこれは事業だと私は思うのでございましてね。さらには、国内だけではなくて、将来は国際的にも回線を通じて情報の流通を図ろうと、こういうことですからね、多少これは気にしておるわけでございまして、これは大臣ね、事前評価というものをある程度やってからかかった方がいいと僕は思うんですよ。少ない人数でやることですから、やっぱり周辺の専門家の知恵を入れましてやっていかれることが望ましいと、そういうふうに思うわけであります。  細かいことをこれについてはもう少しお聞きをしなきゃならぬのですけれども、きょうはそこまでやっても、時間の関係があってどうにもなりませんので、次にちょっと進みたいと思います。  この財団法人の特許協力センターですね、これにいわゆる今のFタームの入力について業務を委託するというふうにも聞き及んでおるんですけれども、累積特許情報二千八百万件、これは入力が可能なのかどうか、またこのセンターは、民間からも資金を注入しなきゃならぬと言われているんですけれども、十分その資金も集まっているとは言えない状況のようでございます。人材もまた民間の特許アナリストのOBが中心だと、こういうふうに報道されておりますけれども、果たしてそういうことで将来対処するには果たして十分なのかどうか、いささかお寒い状況のようにも感ずるんですけれども、いかがですか。
  51. 小川邦夫

    政府委員(小川邦夫君) ペーパーレス計画を達成するために、非常にロードのかかる難しい仕事が、先ほど来出ておりますFタームの分類づくりまたFタームのそのものの付与でございまして、今先生御指摘のように、膨大な専門性を持ったマンパワーを動員するこのFターム付与事業のために、私どもは現在それを一元的に管理するものとして新団体の設立を考えております。  ただ、今の段階では、具体的にその新団体の内容がどういうものであるかは現在検討中でございまして、また他方、Fタームそのもののテスト的な研究は並行して進めておりますので、その研究の進展を踏まえ、かつ関係者との協議を進めることによって、新団体をできるだけ早く設立いたしまして、このFターム付与事業を早く軌道に乗せたいと考えております。
  52. 福間知之

    福間知之君 これからの問題だと、こういうわけでございますけれども、いわゆる民間がやっぱりなかなか腰を上げないということは、先ほど来議論しているように、Fターム等の検索システムを用いてペーパーレス化を進めようとする当局の方針というものが十分のみ込めない、あるいは疑問を持っているというふうなことも考えられるわけでして、そういう点で多分に、今目指しているペーパーレス化、コンピューター化ということは、特許庁のひとりよがりで進められては困る。これは大方の関係の民間の協力も得なければならないというふうに思いますんで、重々ひとつ慎重な対応を願いたいと思うんです。  特に皆さん方と一緒に仕事をされている職員の方々、労働組合と言ってもいいんでしょうが、職員の方たちですね、直接の当事者ですから、審査官など、十分話し合いをされまして、そしてその知恵を出し合って進めていただきたい、そういうふうに思います。  それから、私十二時から議運の理事会がありますので、ちょっとはしょりますけれども、コンピューター化に伴っては、そのほか、この間の世田谷のようなシステムダウンの場合の緊急避難措置などもぜひそれは考えなきゃいけませんし、あるいはまた、今新しいメディアとしてINSなどのモデル実験も行われておりますけれども、将来こういうシステムとどういうふうに結合していくのかということもお伺いをしたいと思います。その他、幾つか申し述べましたペーパーレス化に向かっての問題点を少し指摘をしたいと思うわけですけれども、時間がありません。  特に私は、先ほど中段ごろに申し上げた人員の問題については、これは今はこの御時世でございますから、理屈抜きに一割アップせいとは言いませんけれどもアメリカその他の例を見ても、また今から進めようとしている特許庁の新しい業務処理体制、ペーパーレス化を含めたそういう方向に立っても、人員については十分配慮をしていただくことが必要であろうというふうに思います。あえて言いますと、最近何人か、忌まわしい事件が起きて亡くなられたりしているという事例もありますけれども、そうでなくても、今過密社会でお互いが精神的に余裕が持ちにくいという状況の中で、出願件数に比べてまだ半分以下しか民間処理はできないというふうな中で当事者が努力をされているということについては、やはり十分な配慮を当局としても考えていただきたい、そういうふうに思います。  ちょっと不本意ですけれども、時間が参りましたので質問を終わりたいと思います。
  53. 村田敬次郎

    ○国務大臣(村田敬次郎君) ちょっと一言お答え申し上げましょう。  福間委員先ほど来の御質問、非常に広範多岐にわたっておりまして、しかも大変大事な問題をことごとく突いていただいたように思います。特に、出願件数に比較して処理件数がなかなか対応できない、したがって、未処理件数が年とともに多くなる、そこでペーパーレス計画を導入をしたんだが、これでひとつ十分対応できるかというようないろいろ御親切な質問をいただいたように思います。  ペーパーレスシステムは最先端技術で、電子情報処理技術特許庁審査、審判等の行政事務処理に全面的に導入するものでございまして、かつそのシステムは、出願人特許情報のユーザーとも結びついた開かれたシステムであると思ってお ります。そして、その情報処理量も完成時には我が国最大規模のものとなるということで、極めて高度かつ大規模なトータルシステムでございます。  したがって、ペーパーレス計画の推進に当たって、通産省としても、今御指摘になった所要の人員の確保、あるいは執行体制の充実に努めてまいりますとともに、可能な限りの民間の協力を仰ぎながら、円滑な目標達成を図る所存でございますし、また、特許法等が非常に難解であるという御指摘に対しましても、非常によくわかりますので、できるだけいろいろな工夫をして、福間委員御指摘の点に対応してまいりたいと存じます。
  54. 梶原敬義

    梶原敬義君 一点だけ質問し、承ってまいりたいと思います。  今、福間委員から最後に質問があり、要請がありました審査、審判官の職員の問題でありますが、私は「職員年齢構成表」というのを、六十年の一月一日、特許庁の方からいただいておりますが、これで見ますと、総数が千二百七十九名、平均年齢が三十九・四歳であります。特にこの図から見ますと、三十四歳から四十五歳のところがもうだんごになっておるわけです。いろいろ審査官の資格とかあるいはそういう実務のことを聞きましたら、本物になるまでには四年間とにかく下働きといいますか、実務の経験をしなきゃ、まあ本物になってどんどんスピード上げてこの審査の仕事ができるのは七年ぐらい大体かかるんではないかと。こういうことをしますと、大体五十二、三歳からどんどんやめていっているような実態があるものですから、そうしますと、今の採用の実態からいきますと、また先ではだんごの状態で採用しなきゃならないような状況になるわけですね。これは国のこの経費や何かからいっても非常に効率が悪いわけであります。  ですから、今確かに行革が言われている時期でありますが、特許庁のこの実態からいきますと、今滞貨がどんどんたまって、二月の五日の日刊工業新聞あたりで見ますと、「滞貨の解消へ決断」という大きな見出しで、実施計画の立ったものから先に審査を始めようという、非常に公平さを欠くような内容の記事も出ておりますが、そういう点からしますと、今ペーパーレス計画で解消するすると言われても、非常に今の答弁の中でも一体どこまでどうやるのかというのはなかなか判断がつきにくい。要するにそういう状況でありますから、ただ行革だから人は入れられないとかいうような、こういう形ですべてを切り捨てていくようなやり方というのはどうも私は現実にマッチしてないと思うんですね。悪い癖じゃないかと思うんですが。  これは横に話飛びますが、第二次世界大戦に我が国が移るときに、初めはいろいろと反対をする者もあったけれども、最後はどんどんどんどん国民全体がもう同じような方向にずうっと向かっていって戦争に走ったように、今度の行革のあり方も、何かもう行革と言わなきゃ悪い、こういうような実態があるにもかかわらず、人の問題については、いやそれは今の行革の時期だからどうにもなりませんというような言い方というのは、非常に悪い日本の何というか、くせが出てきているような気がしてなりません。  そこで大臣、やっぱり一体実態はどうなのか、実態に合って物を判断し、解決していくような姿勢をとられるべきではないか、こう思うんです。ですから、行革の実態、今の状況というのはよくわかっておりますが、今のこの滞貨がどんどんふえておるような状況でありますから、そうして私も地域の実態といいますか、つけ加えて申し上げますと、私ども地方の選挙区、地元では、やっぱり去年の秋の十月には発明工夫展というのを県が大々的にやって、そして高等学校の生徒やなんかも出願をして、それはたくさんの人が見に来て、やっている。一方ではそういう発明工夫展をやってどんどんどんどん奨励をしているんです。特許庁はそれがどんどんどんどん出てくると、これまた処理に困るような状況です。国全体、国民全体から見ると、やはりたくさんいいのが出ることがまた好ましいことであります。特許庁としては余り出りゃ手を上げる、だから優先順位をつけて審査をするというような、こう何か相反したような形になっておるわけですね。  そういう状況ですから、申し上げたいのは、もう少しやっぱり事態に合ったような要員計画なりを思い切ってつくることが大事じゃないかと思うんですが、その点だけ、質問といいますか、私の意見を申し上げて終わりたいと思います。
  55. 村田敬次郎

    ○国務大臣(村田敬次郎君) 全般的な問題でございますから、私からお答えをさしていただきたいと思います。  梶原委員の御指摘になられた行革と、そしてまた必要な部門への人員の配置という問題、これはもうまことに適切な御指摘でありまして、私は全体としては、今内閣がずっととっております行政改革路線というのは、非常に高度成長から低成長に移る、そして国際的な対応、あらゆる面から考えて非常に正しい路線であるというふうに信じております。したがって、内閣の一員としてそれを推進をいたすわけでございますが、ただ、今御指摘になりましたこの特許事務についての御指摘につきましては、特許庁では出願件数の増大でございますとか、情報化や国際化への対応でございますとか、いわゆる工業所有権行政に対するニーズが時代とともに非常に増大をいたしております。これはもう委員御指摘のとおりでございまして、定員が減少をするという厳しい定員事情にあること、この何と申しますか、非常にジレンマに陥っておるということはよくわかっておるわけでございます。  したがって、先ほど来ペーパーレス計画というものを十カ年で推進をするということについてのいろいろ政府委員また私からお答えを申し上げたわけでございますが、今後ともペーパーレス計画の推進を初めとする工業所有権行政の総合的施策を推進していく中で、可能な限りの民間活力の導入を図るとしても、所要の定員を確保することが極めて重要だと考えております。  まさに特許権というのは、言うなればテクニカルタームで語られた国際的な言葉で、あるいは権利であるという感じがしておるんでございまして、この分野の重視ということは幾ら重視してもし過ぎることはないというふうに考えておりまして、機会をとらえて増員要求でございますとか、適切な措置をとってまいりたいと思いますので、よろしくお願い申し上げたいと存じます。
  56. 降矢敬義

    委員長降矢敬義君) 午前の質疑はこの程度にとどめ、午後一時まで休憩いたします。    午後零時八分休憩      ─────・─────    午後一時二分開会
  57. 降矢敬義

    委員長降矢敬義君) ただいまから商工委員会を再開いたします。  特許法の一部を改正する法律案を議題といたします。  休憩前に引き続き質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  58. 伏見康治

    ○伏見康治君 私は長らく理学部というところで暮らしておりまして、余り実用性のない学問をしておりましたので、特許については実は不案内なんですけれども特許というものはその精神の上から申しまして新しいものを創造するというところにあると思いますので、そういう意味では、私が長らくいわゆる基礎研究の分野でやってきたことと同じことをねらっている分野だと思いますので、そういう観点からいろいろお聞きいたしたいと思います。  まず、日本特許大国とか特許超大国とか言われているというお話なんですが、それをひとつ数字でちょっと説明していただけないでしょうか。
  59. 志賀学

    政府委員志賀学君) 私ども、ただいま伏見先生からお話がございましたように、工業所有権制度というものにつきまして、日本産業形態を支えます最も基盤的な基礎的な制度であるというふうに思っておりまして、この百年間工業所有権制度それなりに効果を上げてきたというふうに理解をしております。  そこで、日本特許実用新案出願件数でございますけれども、非常に増加をしてまいっているわけでございまして、先生から特許大国と言われておるけれども云々ということでございましたけれども、現在の世界の特許実用新案出願件数というのは、大体年間で百万件でございます。そのうちの四十数%を日本が占めている、そういう意味におきまして特許大国であるというような評価が言われているわけでございます。ただ、これにつきまして特許大国であるという評価、これは一面においてうれしい側面があることは確かでありますけれども、同時に他面においては、日本産業あるいは企業の工業所有権というものについての管理、これが必ずしも十分発達していないという面をあらわしているところもあるのではないか、そういう面においては反省すべき点があるというふうに思っています。
  60. 伏見康治

    ○伏見康治君 大変たくさんの出願件数があり、そのうち相当数が実は審査されないままにほうってあるとかいうお話をいろいろ伺っているわけですが、数字が大きいということが、今長官が言われたように必ずしも歓迎すべきことでないということは明らかだと思いますが、とにかくこういう制度がある以上は、処置できないまま未処理でたくさんの案件がたまっているというふうに伺っている点はどうもよろしくないと思うんですが、その点について実態と、それからそれをどう今後解消なさるおつもりであるかという点を伺いたいと思います。
  61. 志賀学

    政府委員志賀学君) 特許実用新案合わせまして出願件数の推移を見てみますと、五十六年度から四十万件台に乗りまして、五十八年度におきましては約四十七万件でございます。それに対して審査請求がございましたのが五十八年度で約二十三万件でございます。そのうち処理件数が約二十万件ということでございまして、過去からの未処理件数と合わせまして、五十八年度におきます未処理件数というのが五十万件弱ということに相なっているわけでございます。  そこで平均処理期間でございますけれども、五十八年度で申しますと二年五カ月ということになっているわけでございまして、この平均処理期間の動きを見てみますと、特許制度の要するに審査請求制度、それから公開制度、あの辺の改正を行いましたことによりまして、一時五年を超えておりました処理期間がずっと減ってまいってきたわけですけれども、最近再びやや長期化の方向に向かっておる、これが現状でございます。  そこで、それに対する対応でございますけれども先生からもお話がございましたように、特許庁として出願があったものについて、あるいは審査請求があったものについて、できるだけ早く的確に処理をしていくということが、これは当然私どもに課せられた最も基本的な責務であるというふうに理解をしているわけでございまして、そこでこれに対して対策を講じていかなければいけないというふうに思っているわけでございます。  そこで、私どもが現在とりつつある対策と申しますのは、一つは工業所有権行政全般にわたるエレクトロニクス化でございまして、これを私どもペーパーレス計画と言っておりますけれども、その工業所有権行政全般にわたりましてエレクトロニクス化を図ることによって事務の効率化を図っていこう、これが一つでございます。これは五十九年度から十年計画で実施をするということで計画を進めているところでございます。  もう一つは、出願人に対するお願いでございまして、協力要請でございまして、先ほど申し上げましたように、この審査請求あるいは出願の中にいろいろなものがまざっているわけでございます。私ども調査でございますと、例えば拒絶査定になるもののうちの半分ぐらいは、特許公報を見れば大体これは難しいということがすぐわかる、そのようなケースがございます。そういうものについては、当然出願する際に、あるいは審査請求をする際によく調べていただければ、そのような出願あるいは審査請求は行われなかったであろうと思われるわけです。あるいは実際に権利化されたものにつきましても、特許権として実施をされておりますのは、これはいろいろな調査がございますけれども、五割ぐらい、半分ぐらいであろうというふうに言われているわけでありまして、そういう面からいっても、必ずしも出願人側の特許管理というものが十分行われていないというふうに判断されるわけでございまして、そういう面から出願人業界、特に大企業の業界が中心になりますけれども特許管理の適正化というものについて強くお願いをしているところでございます。そういうことによって、出願あるいは審査請求の適正化を図っていこう、これが第二の対策でございます。  そういうことで現在対策を進めているわけでありますけれども、同時にもう一つ特許庁サイドにおきましても、審査のやり方というものについて、限られた審査能力でございますから、もう少し実際に適したそういう審査のやり方というものがないであろうかということで現在検討をしているところでございます。そういったようないろいろな対策によりまして、この処理期間長期化というものに対して取り組んでまいりたいというふうに思っております。  もちろん、もう一つ基本的な問題といたしまして、人員の確保の問題が実はあるわけでございまして、審査官の定員が、審査、審判官合わせますと大体最近では横ばいになっているわけでありますけれども、審判の方の遅延が特に著しいということで審判官の人数にウエートを置いている関係もございまして、審査官の定員というのがここ数年減少しているわけでございまして、この点についても十分な対応ということを私ども努めていかなければならないというふうに思っております。
  62. 伏見康治

    ○伏見康治君 今長官お話では、対抗手段としていろいろ述べられた中で、一番最後に人員のことを言われたわけなんですが、一番手早いのは人員の増加ということではないかと実は思うわけです。  このパンフレットの中を見ますというと、一遍頭打ちになって、それからはこの数年間は下がっているというわけですが、この数年間の間も特許件数の方はどんどんふえていると思うのでございますが、その趨勢に対して審査官の数が減っているということは、ちょっと疑問に打たれざるを得ないわけでございます。それはもちろん行政改革とか人員整理とかいう一般的な原則に沿っての傾向かとも思いますが、特許庁の御努力があるいは足りないのではないかという感じを受けるんですが、その点いかがですか。
  63. 志賀学

    政府委員志賀学君) 先生案内のように、大変現在難しい局面に政府全体としてあるわけでございます。ただ、そういった中で、やはり必要なところにはできるだけ人員を確保するということで私ども取り組まなければいけないというふうに思っているわけでございまして、これは特許庁の中でも、どこに重点を置いて人員をつけていくかということも考えておりますし、あるいは通産省全体の中でもいろいろ考えて、人間の確保、限られた人間をできるだけ必要なところにつけるということでやっているわけでございます。    〔委員長退席、理事斎藤栄三郎君着席〕  ただ、いずれにいたしましても、特許庁の実態から申しまして必要な定員の確保に最大限の努力を傾けていきたいというふうに思っているわけでございます。
  64. 伏見康治

    ○伏見康治君 人員の件につきましては後ほどまたお伺いいたしたいと思いますが、長官が言われました、日本がなぜ数字の上での特許大国になっているかという理由づけの中に、まだほかにも要素があると思うのでございますが、一つは、昭和三十四年でしょうか、特許法改正されて、本来の特許の対象になるべきものと、それから実用新案の対象になるべきものが一つ袋の中に入れられてしまったという点が私は物を言っているのではないかと思うわけです。つまり、非常に質の高い、創造性の高い出願と、それから非常に質の悪い常識に毛の生えたようなものとが混在していて、いわば玉石混交であって、その石を始末するために 時間をとられて、大事な玉の方を処理しかねているといったような面があるのではないかと思うんですが、その点いかがでしょうか。
  65. 齋田信明

    政府委員齋田信明君) 先生承知だと思いますけれども特許法の三十四年法の当時には、私ども大正十年法と呼んでおりますけれども、そのときの実用新案は、「物品ニ関シ形状、構造又ハ組合ハセニ係ル実用アル新規ノ型ノ工業的考案ヲ為シタル者ハ其ノ物品ノ型ニ付実用新案ノ登録ヲ受クルコトヲ得」というふうに書いてございました。これが三十四年当時に変わりまして、現行法に変わったわけでございますけれども、現在では考案というのは、自然法則を利用した技術的思想の創作でございまして、そのうちの物品の形状、構造または組み合わせに係るものということで規定してございます。  それで、旧法時代にはそれを実用新案の型説と呼んでおりましたけれども、これらの型説をとることの是非について当時いろいろ議論がされまして、それで実用新案特許とを同じラインに並べると申しましょうか、発明と小発明ということに並べたわけでございます。  当時、旧法時代の実用新案の公告率は、公告率と申しますのは拒絶されるものと許されるものとの比率でございますけれども、その当時もやはり四五%ぐらいだったと思いますが、現在でもやはりそれは変わりません。それから特許におきましてはその当時も五五%ぐらいだったと思いますが、現在も大体変わりません。    〔理事斎藤栄三郎君退席、委員長着席〕  そういうことで、先生御指摘の点は、必ずしもその制度が変わったために実用新案特許の中に流れ込んだというふうには私どもは考えておりません。むしろ特許出願の比率の高まりといいますのは、我が国産業界における技術開発の高度化、それからその成果である新技術の内容の高水準化と申しましょうか、そういうものを反映したものというふうに私どもとしては考えております。
  66. 伏見康治

    ○伏見康治君 確かに日本の過去二十年ばかりの間の経済成長というものは非常に高くて、日本経済界の技術水準というものは非常な高さに盛り上がっているわけでございますが、その点を数字で確かめたいのですが、いわゆる大手が占めている出願件数の割合といったようなものに関する何か数字はございますか。
  67. 齋田信明

    政府委員齋田信明君) 出願の上位から順々に並べてみますと、上位の方がかなりの件数でございますが、それを上位から何位までというふうに順々にとってまいりますと、上位十社の出願の割合といいましょうか、それが現在は二八%を占めております。四十六年当時はそれが確かに二一%ぐらいでございましたけれども、二八%ということでございます。百位までを見てみますと、百位までで大体五七%というぐらいになっております。
  68. 伏見康治

    ○伏見康治君 そういうふうに大きな会社がほとんどを占めているということになりますというと、その大きな会社を相手にして協力を求めるということは比較的容易なわけでございますね。個人個人の発明家が応募されるというのを何とか規制しようとするのは非常に難しくても、相手の数が少なければ、その協力を求めるということは比較的容易だと思うのですが、そういう意味ではどういう協力を具体的に求めているわけでしょうか。
  69. 志賀学

    政府委員志賀学君) 先ほどもちょっと申し上げたわけでございますけれども出願人サイドに対しまして、特許出願あるいは審査請求に際して十分に調査をして、企業として、出願人として本当にそれが必要かどうかということも十分判断して出願をし、あるいは審査請求をしてほしいということを要請しているわけでございまして、これは先生お話にございましたように、協力要請というのはやはり大企業業種が中心になってまいります。例えば先般も実は私お願いをしたわけでありますけれども、鉄鋼五社の重役とお目にかかりまして、こちらの特許庁サイドの実情を申し上げて、協力要請をしたところでございますけれども、電気関係であるとか、自動車であるとか、そういったいろいろな業種につきまして、協力要請をここ数年、五十一年から実施をしてまいっているところでございます。  それで申し落としましたけれども、その結果といたしまして、そういった大企業出願件数が非常に多いところの審査請求率というのは、平均よりもかなり最近低下してまいっているわけでございまして、そういったところから審査請求をかなり慎重にやっていただいているというふうに私どもは理解をしております。
  70. 伏見康治

    ○伏見康治君 そういう相当のプロポーションが規模の大きい会社の問題であるというふうにいたしますというと、そういう会社は非常に大きな調査能力を持っておるわけでありますから、事前に自分がこれから出そうとするパテントに似たものがあるかないかといったようなことは、初めからもう十分調査済みであるような感じがいたしますんですが、むしろ素人発明家といったようなものはそういう能力がないために、もう既に出されているものをまた出すという機会が多いと思うんてございますが、大きな会社が、なおかつ特許庁としては思わしくないような出願をするという傾向が元来あるというふうに私には考えられないわけですけれども、そこはどういうふうに見たらいいんでしょうか。
  71. 志賀学

    政府委員志賀学君) そこはいろいろな見方というのがあり得ると思いますけれども一つのファクターといたしましては、これは特許管理についての意識が十分でないという側面というのがあるということは否定できないと思います。これは業種別、あるいは企業別にかなりばらつきがございます。非常に特許管理をきちんとやっておられる企業もありますし、それから産業別に申しますと、ある成熟段階になりますと、例えば化学業界なんというのは、これはかなり特許管理を厳正にやっておられるような業界ではないかというふうに思います。そういった業界としての一種の成熟段階と申しましょうか、そういった面もあろうかと思います。同時に、また、同じことかもしれませんけれども、非常に日本の場合競争が激しい、そういう側面があるわけでございまして、その辺の産業内部の激しい競争の反映ということもあろうかと思います。
  72. 伏見康治

    ○伏見康治君 その点で、企業内部の非常に大きな、少しでも早くいわばつばをつけておこうといったような気持ちが非常に濃厚であろうあろうということは察しがつくわけでありますが、そういう意味合いから申しますと、今度の改正法案の中で優先権というんでしょうか、前に出したものに後で何かつけ加えて、そして前の日付をいわばとることができるというこの法の改正の方針というものは、そのつばをつけるという動きをむしろ刺激するのではないか。つまり、後で何とかなるんだから、今の段階では十分吟味しないままに、とにかく出しておけという気分を非常に醸成してしまうんではないかという感じを受けるんですが、その点いかがでしょうか。
  73. 小花弘路

    説明員(小花弘路君) 今の先生の御指摘の点に関しまして、実際に出願審査しておりますような立場から物を見させていただきますと、中身が何にもないままに請求範囲だけ広く書いてくるという例が絶無とは申しませんけれども、現在の日本の実例の中においては非常に少のうございます。  ただ、具体的な裏づけがやや少ないままに、今先生御指摘のように出願を急ぐ余り出願をするというケースがないわけではございません。そういう場合には、具体的に申しますと、明細書の中に開示された範囲だけが後々権利として有効に機能するというようなのが実際の審査のプラクティスになってございます。それで今度の優先権制度というものができますと、その欠けておった部分については後から補充することが確かにできるような形になります。それは、最初発明者の方が着想された広い範囲を、それぞれ具体的に裏づけされた時点でもって保護をきちっとしていくという形で、むしろ先生の御心配になられます思いつきだ けの出願というのは、かえって減るんではないかというふうに実務的には考えられておるところでございます。
  74. 伏見康治

    ○伏見康治君 私は必ずしもそういうふうに理解できないんですが、そこは意見の相違ということになるかとも思います。  いろんな意味で、私は特許制度というものが何か実態に即さない古い考え方がそのまま残っていて、そのためにいろいろとまずい点が起こっているのではないかという、先ほど実用新案とそれから特許との間の区別が不明確になったということを申し上げたつもりなんですが、そういうようなことがほかにもあるんではないか。  実は特許制度を十分に吟味したわけではないので、余り証拠を挙げることができませんのですが、たまたま特許弁理士の試験ですね、試験のその試験科目というのを拝見いたしましたら、少なくとも私の科学技術的な観点から申しますと、ここに掲げてある試験科目というのは、材料力学、構造力学、機構学、熱及熱機関云々といったようなもので、非常に古典的な学問ばかり並んでおりまして、恐らく現在のパテントの大部分を占めるであろう情報関係お話であるとか、エレクトロニクス関係お話であるとかいうようなものはこの試験科目の中に出ていないんですね。恐らくこれは明治時代あるいは大正年間あたりにつくった試験科目をそのまま保存しておられるんじゃないかと思うんですが、そういう意味での特許制度全体の近代化ということが何か怠られているんではないかという印象を受けるわけですが、何か御説明願えますでしょうか。
  75. 小川邦夫

    政府委員(小川邦夫君) 先生御指摘の弁理士試験におきましては、現在論文、筆記試験の選択科目というのは四十一ございまして、確かにこの科目構成につきましてやや古いんではないか、また新しい、先ほど先生の御指摘になられましたような分野、情報工学だとか遺伝子あるいは原子力とかコンピューター、そういった分野について、もっと明示的に取り込んだ仕組みにすべきではないか、こういう議論確かにございます。私どもそういう意味では、この試験科目の構成につきましてもこれは関係者のいろいろな議論がございます。弁理士の皆さん方の中にも議論がございますので、その関係者とのコンセンサスを十分得るということが必要でございますが、そのコンセンサスを得られた段階では、必要に応じて手当てすることが必要と考えております。  ただ、試験の科目ということだけではございませんで、弁理士制度全般につきましても、実はペーパーレスが進展しますとか、あるいは国際化が進展する中で、今の弁理士制度が非常にフィットしているかどうかという点は問題点であろうかと思われます。そういうことから特許庁といたしましては、弁理士会とそのような制度あり方の問題につきまして懇談会を開催いたしまして、意見交換を進めておるところでございます。そういうわけで、今後とも引き続きこういった検討を続けまして、関係方面のコンセンサスを得られれば、そういった制度の改善ということに着手してまいる所存でございます。
  76. 伏見康治

    ○伏見康治君 どうかその方向で、制度そのものの近代化をひとつ目指していただきたいと思うんでございます。  そういう際に、やはり特許の問題というものは、今度の法律改正がそうでありますように、国際的な視野というものが非常に必要だろうと思うんですが、よその国の特許制度というものと比較いたしまして、例えばアメリカ日本とを比較いたしまして、どういうところが大きな違いであるか。それでそういう違いは、本当は国際的には全部統一するのが私はいいと思うのですが、その違いがなおかつ保存されなければならない理由といったようなものをついでにお答え願いたいと思います。
  77. 小花弘路

    説明員(小花弘路君) 今先生御指摘のところでございますように、各国の特許制度というのはそれぞれの歴史を持っております。特許制度は文化の遺産だと言われますように、それぞれの国の文化の影響を強く受けておるところで、非常に違った形でスタートをしてございます。  今例にお挙げいただきましたアメリカ日本の場合を比較して一番大きな違いといいますのは、日本では先に出願した人に権利を与えるというようなシステムをとっておるという点があるのに対しまして、アメリカは先発明主義といいまして、先に発明した人に特許を与えると、こういうやり方をとってございます。この利害得失につきましてはいろいろ議論があるところでございますけれども、先願主義というのも、だれが早いかということを一律的に決め得るという点では非常に大きなメリットのあるやり方だと言われております。また逆に、先発明主義というのは、本当に先に発明した人に権利を与えるという意味では立派な制度なわけでございますが、だれが最初に発明したかということを決めるのになかなか難しいところがあって、制度的にいろいろな手当が必要であるというような点が、日本アメリカの一番基本的な違いがまず一つございます。  それから、それ以外にも、日本では請求範囲というのを書かせる。特許を取るときには自分が権利を取りたい部分を請求範囲というところへ書くわけでございますけれども、それへの書き方等につきましてもそれぞれの国のルールがございまして、完全に一致しているとは言えないのが実情でございます。ただ大筋におきましては共通している部分が相当多いというふうに考えられます。
  78. 伏見康治

    ○伏見康治君 国との違いがあるということはよくわかるわけで、その伝統によって物の考え方が違う。しかし今おっしゃった先発明的な要素も日本特許の中に完全にないわけではないわけですね。例えば公知の事実というのがあって、たとえ特許庁審査を通ってしまっても、後から見るというとその同じ内容がどこか別の学界誌に発表されていたといったような場合には、恐らく訴訟でそれを取り消させることができるんじゃないかと私は思いますが、そういう意味では昔にさかのぼって本当の発明のところまで行けるということはあり得ると思うのですが、その点はどうですか。
  79. 小花弘路

    説明員(小花弘路君) 今先生が御指摘になられました点は、特許される発明というものは新しくなければいけないという点を御指摘になったんだと考えます。したがいまして、仮に特許庁審査官が見落として、先行の技術文献があるにもかかわらず特許したというような場合には、当然御指摘のように特許庁の審判において取り消されると、こういうことになります。  アメリカとの違いで申し上げますと、全く別の二人の発明者の方がそれぞれ独自に御自分の頭で違う発明をしたときに、Aさんの方が例えば十日早く同じ発明をしたと。そのときに遅く発明をしたBさんの方が先に特許庁出願をしてしまうとBさんの方に特許が行ってしまうというのが先願主義でございます。それに対してアメリカの先発明主義というのは、Aさんが先に発明したということさえ立証すれば、アメリカ特許庁出願が遅くても、Aさんの方に特許が成るというところが基本的に違うところでございまして、今先生お話の、発明が新規であるかという点と発明の前後という点は、厳密な意味ではやや区別しなければいけない点ではないかと考えております。
  80. 伏見康治

    ○伏見康治君 また話を元へ戻しまして、むだな出願をしないようにできるだけ皆さんの協力を仰ぐということが必要だと思うんですが、一つは町の発明家といったような立場から申しますと、自分で十分な調査能力を持っていなくて、果たして自分の発明したものが既に出ているかどうかということを調べることができないという場合が多いわけだと思うんですが、そういう方が簡単に調べられるように、できるだけ調査資料みたいなものを公開するという方向の努力というものもなさっているんだと思いますが、その実態はどういうふうになっていますか。
  81. 志賀学

    政府委員志賀学君) 先生お話ございましたように、特許情報というものは大変重要な、特に最近その重要性に着目されております。いろいろな面で重要性があるわけでありますけれども、ただ いま先生からお話がございました、自分でなかなか調査するだけの余裕がない、そういう方々にてきるだけ特許情報を提供して自己審査というんでしょうか、そういうことができるようにすると、これも一つ重要なことでございます。現在特許情報につきまして一番整っておりますのは特許庁にございます万国工業所有権資料館でございます。そこに来られますと、フルテキストで資料が見られるということになっているわけでございますけれども、そのほか地方閲覧所、これは全国に百八カ所あるわけでございますけれども、そういったところにも、これは場所によりまして、特許庁の万国工業所有権資料館のように必ずしも十分に完備しているわけではございませんけれども、そういった方々がごらんになるに必要な資料は一応整備されているわけでございます。  私どもといたしまして、このまず特許庁の万国工業所有権資料館につきまして、実は前々からスペースがやや狭いということもございました。そこでこの百周年を記念するという意味も込めまして、この資料館の座席の数を従来の倍ぐらいに拡大するというようなことで、要するに資料をごらんになりやすくするように努めてまいっておりますし、あるいは地方の閲覧所につきまして施設の拡充に努力をしているところでございまして、そういった特許情報についていろいろなところで手近なところで見られるように施設を整備していく努力、これは今後も続けてまいりたいというふうに思っております。  なお、将来の問題といたしまして、例えばペーパーレス計画が完成してまいりますと、特許庁に非常に大きなデータベースができるわけでございますが、例えばその資料館に端末を入れるとか、あるいは地方の閲覧所に端末を入れるとか、いろいろなどのような形でどのようなチャネルでそういったところに情報を流していくかという問題は、なおこれからいろいろ検討しなければいけないわけでありますけれども、そのペーパーレス計画ができ上がり、完成し、大きなデータベースができた場合に、それをできるだけ早く、的確にユーザーの方たちに流していく、それで利用していただくということを私どもは推進してまいりたいというふうに思っているわけでございます。
  82. 伏見康治

    ○伏見康治君 今のお話で、特許情報がしかるべきところに行けば割合に簡単に接触することができるという点は大変結構で、その方面に大いに努力していただきたいと思いますが、同時に、そういうところに行って、やみくもに探しても自分の探しているものが見つかるとは限らないわけですね。例えばそういうところでは、何か分類して資料が置いてあると思うんですが、その分類というものは一種類なんでしょうかね。つまり人によって物の見方というものは非常に違うわけで、縦に分類する人もあれば横に分類する人もあるといったようなことで、いろいろな目録みたいなものがないとなかなか探そうと思うものが見当たらないと思うんですが、その辺は十分計画されているんでしょうか。
  83. 梅田勝

    説明員(梅田勝君) 先生の今の御質問でございますけれども、今日本特許の分類の場合は、国際特許分類というのを使っておりまして、大体五万七、八千の項目に分かれております。それで一応資料館のファイルもその分類に従って分類しているということでございます。したがいまして、地方に行きますと、必ずしもその分類どおりにといいましょうか、分類どおりにファイルが分かれておるというわけにはまいりませんけれども、少なくとも特許庁の資料館に関する限りにおきましては、その分類に従ってファイルが分かれております。したがいまして、その分類を探していただいて、それに従ってファイルを繰ってもらうということで目的とされる情報は得られるんではないかと思います。  それと同時に、いろいろなキーと申しましょうか、自分の探そうとしている技術の言葉から、その分類がどういう分類であるかというようなインデックスもつくっておりまして、それも閲覧に供しておりますので、そういう面ではサーチが可能ではないかと思います。
  84. 伏見康治

    ○伏見康治君 キーワードをどういうふうに選ぶかということが物を探す一番大事な点であろうと思うのでございますが、その辺の整理をひとつよくやっていただきたいと思うんです。  ついでに、またペーパーレスのお話をお聞きすることになると思うんですが、エレクトロニクスに頼ると何でもうまくいくという感じもしないわけでもないんですけれども、しかし、そういう分類法であるといったようなのが一つ観点でございますが、キーワードの選び方をどうするかとか、例えばキーワードが時代とともにどんどん変わるといったような点もあります。いろいろな点でペーパーレスにするという仕事自身は実は大変な仕事だと思うんですが、ペーパーレスに仕上げるのが十年先ですか、何かそういう長期計画でおやりになっている、それのいわば、どういう手順で何をしていくかというたようなプログラムというのはもう既にできているんでしょうか。
  85. 梅田勝

    説明員(梅田勝君) ペーパーレスの場合はいるんなサイドがございまして、事務の処理の問題だとか、あるいは公報の発行の問題とか等々ございますけれども、今先生の御質問は、特に審査との絡みだというふうに理解させていただきましてお答えいたしますと、確かに先生おっしゃいますように、十年計画で計画はしておるんですが、といいますのは、今我々が持っております資料というものは、先ほど来話が出ておりますように、内外国入れますとほぼ三千万件持っております。したがいまして、それをいかにきれいに整理するかという問題があるわけです。それに多少時間がかかるという問題があるんですが、先ほど来話が出ておりますように、いわゆるFタームと言われております、分類の細かいものだというふうに理解していただければ結構かと思うんですが、そのFタームの開発はできるだけ早い時期にやりたいというふうに考えております。  ただ、去年度、五十九年度におきましては非常に少ない分野、ほぼ一%ぐらいの分野でございますけれども、そこを試行的にやってみたということでございまして、その分野を徐々に広げて、少しテストを繰り返しながら、数年後にぐっと分野を広げて、そのFタームといいましょうか、そのインデクシングのやり方というもの、テーブルというものを完成させたい、こういうふうに考えている次第でございます。そういうテーブルをまず開発いたしました後に、そのテーブルに従って古い文献について、その文献はどのタームに当たるかという解析をやる必要がございますので、それで後段の方はそれに時間がかかると、こういうことでございます。
  86. 伏見康治

    ○伏見康治君 今Fタームという私に耳なれない言葉が出てきたんですが、もう一つ耳なれない言葉でICIREPATという何かやり方があるんだそうですが、そしてそれは、何か外国の経験では必ずしもうまくいっていなかったというようなお話があるんですが、それはどういうもので、どういう欠陥があったんでしょうか。
  87. 梅田勝

    説明員(梅田勝君) ちょっと専門的な話になってまことに恐縮なんでございますけれども、Fタームといいますのは、ファイル・フォーミング・タームと我々が名づけた名前でございまして、簡単に言いますと分類というふうにお考えいただければ結構かと思います。  先生御質問のICIREPATというのがあるんですが、これは特許局間の情報検索の国際協力に関するパリ同盟委員会と、えらい長い名前でございますけれども、要するに、国際的に協力をして機械検索をやろうではないかというので提案されたシステムでございます。  それで、これは随分前でございまして、そのとき、この設立はたしか昭和三十六年ぐらいだったと思いますが、そのころ、日本もその一部を担いましてそのシステム開発に携わったわけでございます。このころはまだコンピューターの技術も非常に今と比べますと格段に違いますし、それから、このシステムのねらいとしておりましたのは、コンピューターで非常に膨大な資料の中から目的と する資料を一挙に絞り込もうと、こういう発想でやったわけでございます。そういうことをやろうといたしますと、そういうリストをつくるためにはやはり相当なロードがかかります。何万件とある文献の中から自分のサーチをしようとするポイントをどうやって絞り込むかということを可能ならしめるためには、そういうリストの作成に相当なロードを要しますし、それから、文献を解析するために相当のロードを要します。  そういう問題がありましたのと、それからもう一つの問題点といたしましては、絞り込んで確かにドキュメントの番号はわかるんですが、すぐにそのドキュメントが出てこないというような問題がございました。これは今ですと、例えばレーザーディスクだとかマイクロフィルムだとか、そういうハードウエアの方が非常に発達しておりますので相当うまく出てまいるんですけれども、その当時はそういう道具もございませんでしたし等々の問題がございまして、必ずしも十分な効果をおさめ得なかった。もちろん、ある分野におきまして、日本特許庁におきましても、例えば合金の分野だとかあるいは触媒の分野だとか、狭い分野におきましては今でもそのシステムを使っておるんでございますけれども、全分野に広げるのはそういう面でいかがかなということで限られた分野だけにとどめたという経緯はございます。  Fタームの場合は、相当広い範囲で絞り込もうと、余り欲を出さないで、ある程度大きな範囲で答えを出そうと、後は人間が見てスクリーニングした方が速いという考え方をとっております。そこが一つの大きな違いではないかと思います。
  88. 伏見康治

    ○伏見康治君 いろいろ教えていただきましてありがとうございましたが、その特許をとるような新しい発明といったようなものは創造性の対象でございますからまさに新しいものが出てくるわけですね。分類の言葉というのはいわば古い言葉ですね。その古い言葉の組み合わせで新しいものを表現するということは、うまくてきる場合もあるでしょうが、やり損なうという場合もしばしばあって、本来、そういう分類の仕方というものは審査員の補助にはなるでしょうけれども審査員のかわりをすることはできないものだと私は思うんですね。そういう点を、今後ペーパーレス化を進める上において重要なファクターとしてぜひ心にとめておいていただきたいんです。  基礎研究に従事しておりますというと、新しいことを自分で発見したと思っても、それが本当に発見に値するのかどうかということを調べるのが実は極めて大変なことでございまして、しようがありませんので、常識的に調べた範囲内でほうり出してしまって、どこからかクレームのつくのを待つということになるわけなんですけれども特許を本当に正確にやろうとすると大変な仕事だと思うわけですね。それで改めて私は審査員の方々の御苦労を考えざるを得ないわけです。  先ほども申しかけておしまいにしてしまったんですが、その審査員の方の人員がだんだん減っていて、それがなかなか整備できないという上に、もし十年後のペーパーレス計画といったようなものを実現なさろうとすると、これは今までの審査員の非常に大きな経験の蓄積の上に立ってつくらなくちゃいけないことは明らかですね。したがって、そういう計画をつくる上においても、現在働いておられる審査員の方々の御努力を非常に期待しなければ仕事にならない。とすると、現在目の前に見えている審査案件を処置していくというお仕事のほかに、将来のために新たなる仕事がつけ加わるわけでして、その上からいっても現時点では審査員の定員数をぜひ増加するように、長官それから通産大臣が御努力くださるようにお願いしておきたいと思います。  これは午前中の御質問の中にも出てきたんですが、日刊工業新聞に出ていた記事で、未処理件数の中で実施計画が整っているようなものを優先して、それが立っていないようなものは取り下げるような方向に持っていくといったようなことが書いてあったんですが、これはどういうことなんでしょうか。
  89. 志賀学

    政府委員志賀学君) 先ほどもちょっと申し上げたわけでありますけれども出願人の方たちに協力要請を申し上げているわけでありますけれども、同時に私どもといたしまして、もちろんペーパーレス計画の推進であるとか、あるいは人員の確保であるとか、そういった面への努力というのをやってまいるわけでありますけれども、同時にそれに加えまして効率的な審査のやり方というのがないだろうかということを現在検討しているわけでございます。それで、先般来いろいろな関係業界あるいは関係者の意見なども聞きながら現在検討を進めているわけでございまして、この前新聞に出ておりましたように、決めたとかなんとかということではございません。ただ、そういう何か効率的な審査のやり方というのを我々としてもやはり検討し、やっていくべきではないかという、そういう気持ちを持っているわけでございます。  そういうことでございまして、先ほども申し上げましたように、未処理案件の中に実際問題としてはいろいろな案件が入っているわけです。企業として非常に早く権利化してほしいという案件もあるでございましょうし、反面そうでもないのもある。片や審査能力というのは限られている。審査請求順に通常の審査をしていくということになりますと、必要な、本当に早く権利化してほしいというのがおくれたり、あるいは逆にそれほどでもないのが早く処理されたり、いろいろな問題が出てくるわけでございまして、そういうことを考えますと、審査請求順に審査をするというのが通常であるというふうに思うわけでありますけれども、しかしもうちょっと考えてみますと、むしろ本当に必要なもの、出願人側のニーズに沿った形での審査のやり方というのがむしろ工業所有権制度の本旨に合うのではないかというような気持ちも我々は持っているわけでございまして、関係者の意見もよく聞きながら考えてまいりたい。  ただもちろん、さはさりながら早期審査をされないものがずっと残ってしまうというふうなこと、これはまた避けなければいけないわけでありまして、一定の限界というのは当然あるだろう。その辺をよく考えながら考えていきたいというふうに思っているわけでございます。
  90. 伏見康治

    ○伏見康治君 非常に御丁寧な長官の御説明でよくわかりましたんですが、いろんな要素を考えて、できるだけ全体としていいように向かうということを念願するのは当然の努力だと思うんですが、同時に午前中の福間さんの御質問の中にもあったと思うんですが、法文が非常にややこしく入り組んでしまうということは、法文の本当の意味を理解するのに、もう大変な時間がかかってしまって、つい投げやりなことになってしまうというおそれがないかということを非常に私は心配するわけです。  法三章という言葉がございまして、法律というものはできるだけ簡明であるべきだと私は思うんですね。それをいろいろな要素を入れて、こういうこともしてあげたい、こういうこともしてあげたいという親切心は大変結構だと思うんですけれども、余りに複雑化してしまうということもまたどうかと私は思うんです。法律全体として矛盾のない体系をつくるということ自身が随分大変なことだと思うんですが、それは要素の数をふやせばふやすほど複雑怪奇なことになってしまうと私思いますので、長官の、できるだけ立派な特許をできるだけたくさん取り入れたいというお気持ちはよくわかるんですが、同時に余りに複雑な体系をおつくりにならないように実はお願いしたいんです。  ついでにまた、国際間の問題に移りたいと思うのですが、よその国の制度我が国制度とが違うということがいろいろ国際間のトラブルの原因になるのではないかと私は想像するわけです。詳しく調べたわけではございませんけれども、例えば数年前にございました日立とIBMとの間のいざこざといったようなものも、特許に対する考え方の差というものが根底にはあるのじゃないかと思うのです。そういうことができるだけ起こらないようにするのには、国際間のトラブル、それを、 そしてまた近ごろの貿易摩擦云々のお話になりますというと、日本特許制度が複雑であるためにアメリカ人にはなかなか近寄れないといったようなことが言われる可能性もございますので、その辺のところはどういうふうにお考えになっているかを伺いたいと思うのです。
  91. 村田敬次郎

    ○国務大臣(村田敬次郎君) 専門家である特許庁長官がお答えする前に、私から一言申し上げますが、今伏見先生が御指摘になった、法は三章にて足るという、これは昔ながらの理想でありまして、まさに今のような社会情勢が複雑になってまいりますと、多元多次方程式と申しますか、与件が多ければ多いほど回答がたくさん出てくるわけでございまして、ましてコンピューターを使っていろいろやっていくという時代になれば、いろいろの問題についてのいろいろの回答がたくさん出てくる関係で、その情報処理に人間自身が今度は逆に使われてしまうという、そういう面も確かにあると思います。  国際的な問題につきましては、午前中の御質問にもございましたが、いわゆる知的所有権の国際的な処理の問題について、京都で行われた四極貿易大臣会議でもこの問題が非常にやかましく審議されたわけでございます。それでブロック代表とお話をしております間に、今伏見委員の御指摘になられました国際的な特許権についての感覚の差異があるのではないか、こういうふうに御指摘がありましたが、実は私そのものずばりで非常に感じまして、これはアメリカで考えておるいわゆる特許権の問題と日本で考えておる特許権の問題には随分法的処理についての差があるなということを感じました。しかし例えば、そのいろいろな処理についてはやはり国際感覚に従わなければなりませんので、それについての対応も、この国会でも通産省としてはいろいろ対応しておるところでございます。  したがって、そういった新しく進んでいく時代に対する国際社会への対応を考えながら、この特許権問題を処理をしておるというのが状況でありまして、これについてはよく特許庁長官とも相談をしながら、国際的に見て恥ずかしくない、しかし余りに複雑怪奇になってかえってユーザーの方々に大変迷惑をかけるような処理方式であってもならない、そういうことをいろいろと考えておるところでございます。  それから、条文の民主化につきましても、御承知のように特許権はもう百年の歴史を持っておるわけでございまして、いろいろその法律の今までの沿革を調べてみますと、当然片仮名の表示から始まって今まで来ておるわけでございまして、中には随分難しいなというところもいろいろございますが、これは法文の民主化ということでこれからいろいろ努力をしてまいりたいと思います。  今伏見先生からいろいろ御指摘のありました審査官の非常に大きな労働過重をひとつよく考えてやっていくようにとか、諸般の問題については、私も同感でございますので努力をいたしてまいりたいと思います。  専門的な問題は特許庁長官からお答えをさせます。
  92. 志賀学

    政府委員志賀学君) ただいま大臣からのお答えで尽きているわけでございますけれども、四極会合での特許、工業所有権関係の問題は、大臣の御指示を受けながら私どもとして取り組んでいきたいというふうに思っておりますけれども特許庁ベースでもってやっていくことについて若干コメントさせていただきますと、確かに工業所有権制度特許制度というのは国によって違います。先ほども梅田部長からお答え申し上げましたように、アメリカ日本との間では先願主義か先発明主義かという違いがあります。むしろその点につきましては、日本それからヨーロッパ、これは先願主義であります。アメリカだけが先発明主義ということで違う。それからヨーロッパは審査請求制度をとり、公開制度をとっております。アメリカはとっておりません。そういった違いがそれぞれあるわけでありますが、いずれにいたしましても、そういった制度の違い、あるいはそのプラクティスの違い、そういったものをできるだけ、できるところから埋めていこうという動きというのが出ているわけでございます。同時にまた、それが一番基本的な課題ではあろうと思いますけれども、ただ当面すぐにハーモナイズできるというわけではないわけであります。  いずれにいたしましても、何がしかの違いというのがそれぞれあると思います。それについて、それぞれの出願人がほかの国の工業所有権制度についていろいろな意見を持つというのが現状でありまして、確かに日本特許庁に対してアメリカ出願人あるいはヨーロッパの出願人からいろいろな意見がございます。それから同時に、日本出願人からはやはりアメリカあるいはヨーロッパの制度、あるいはプラクティスについていろいろな意見がまたあるわけでございます。その辺は、私どもは要するにアメリカ出願人と二回、それからヨーロッパの出願人と一回、それぞれ既に直接対話をやっているわけでありまして、そういった直接対話を通じてお互いの理解を深めていく。それで彼らの言う中で聞くべき意見があれば、我々としてどんどん直していこう、こういう姿勢でやっているわけであります。  また同時に、かなり誤解があります。我々がそれについてよく説明してやりますと、やはり向こうも専門家でありますのでわかってくれるというのがございます。恐らく今後、アメリカ特許庁、それからヨーロッパの特許庁日本特許庁に倣いまして、例えば日本出願人との直接対話をやるとか、ヨーロッパの出願人アメリカ特許庁が直接対話をやる、そういった恐らく対話の輪というのが広がっていくんじゃないかというふうに思っておりまして、そういったお互いのコミュニケーションを通じまして余計な誤解というものを未然に抑えて、通商摩擦というようなことにならないように努めていきたいというふうに思っております。
  93. 伏見康治

    ○伏見康治君 時間がなくなりましたので、希望だけ述べて終わりにいたしたいと思いますが、近ごろ、行政府全体あるいは政府全体のお気持ちだと思うんでございますが、日本は過去の経済成長で大いにやってまいりましたが、大部分がいわゆるイミテーション、よその国に教わったことを実践に移すということでやってきたと思うんでございますが、これからはどなたが考えてもわかりますように、創造性をみずから発揮していかなければならない時代に入っていると思うんでございますね。その創造性を保護するという意味では、政府の機関の中では特許というものが根幹になる一つ制度だと思いますので、この制度の本当の意味をひとつ損なわないように大いに整備していただくようにお願いいたしまして私の質問を終わります。
  94. 市川正一

    ○市川正一君 冒頭直接に法案関係ではないんでありますが、事柄がきょうのことでありますので、通産大臣に一言伺いしたいんです。  日米貿易摩擦をめぐってきょうの夕刻に経済対策閣僚会議が開かれて総理の声明も出されるやに聞いております。先日も本委員会で、私、四分野の市場開放問題に関して大臣にお伺いしました。この閣僚会議の重要メンバーである大臣に、この会議に臨まれる所見と決意をお伺いいたしたいのであります。    〔委員長退席、理事斎藤栄三郎君着席〕
  95. 村田敬次郎

    ○国務大臣(村田敬次郎君) 市川委員御指摘のように、きょうは夕方、対外経済問題諮問委員会、それから対外経済問題関係閣僚会議、それから経済対策閣僚会議と相次いで非常に重要な貿易上の問題が行われることになっておりまして、私ども実はきょうの日のためにいろんな準備や勉強をずっとしておるところでございます。  御承知のように、今月は間もなくOECDの理事会がございます。それから五月早々には中曽根総理が出席をされるボン・サミットがあるわけでございます。そうしたところへもってまいりまして、ことしの一月以降の特に日米貿易問題につきまして非常に大きな日米間に考え方の食い違いが出てきておる。そして、いわゆる四分野のMOS S会議というのが一月下旬からずっと行われておりまして、通産省としてはもちろんこのこと全般に対応いたしておりますし、それからまた自動車や鉄鋼の輸出問題についてもいろいろと、最近の私どもの所管をしておる仕事の中では最大の関心事と言っていいと思います。  これに対応する考え方でございますが、私どもは新しいラウンド、新ラウンドを一つ推進をする、これは私は、今課せられた非常に大きないわば使命であると思っております。それと同時に、自由貿易開放体制を推進をしていく、この二つのことが日本にとって最も大事なことだと思っております。そしてきょうのまず経済対策閣僚会議では、これまで数次にわたる対外経済対策を実施してきたところであるけれども、今般民間の有識者から成る対外経済問題諮問委員会からこれまでの対外経済対策の総合的評価及び今後における我が国の対外経済対策の中期的課題に関する報告を受けることになっております。  したがって政府としては、現在の我が国経済を取り巻く厳しい国際環境を踏まえて、我が国に課された責務を果たすために、きょう出されます報告を最大限尊重をしながら対外経済問題への中期的対応を図る一方、当面の対応として市場アクセスの改善、輸入の促進、金融・資本市場の自由化、経済協力の拡充、投資交流の促進等に関する施策を一層強力に推進することが重要である、こういうことで対応する決意でございます。
  96. 市川正一

    ○市川正一君 私、重ねてこの機会に繰り返し強調いたしたいのは、特に大臣が所信表明においても、中小企業の対策強化、振興を図るという点を力説なすってこられたんですが、今一般的な文言でございましたので、中身はよく伺い得ませんでしたが、今夕決定される措置が、私は、よもや大臣が所信で力説されたことに反するような、すなわち具体的に言えば、深刻な不況にあえぐ中小業者に打撃を与えるようなことには相ならぬであろうということを改めて念を押したいんですが、いかがですか。
  97. 村田敬次郎

    ○国務大臣(村田敬次郎君) 市川委員の御指摘は非常にごもっともでございます。中小企業に対する対応は通産省の一番大事な課題一つでありまして、したがって中小企業にマイナスになるような決定はもちろん全くございませんし、逆に、中小企業は貿易問題において最も大きな影響を受けるわけでございまして、中小企業のことを常に配意しながら、四分野の問題も、あるいはそれ以外の全般的な、これはこれからいろんな問題に及んでくると思いますが、中小企業を守る、中小企業発展をさせるという観点に沿って努力をしてまいる所存でございます。
  98. 市川正一

    ○市川正一君 全くないと、こうおっしゃったんで、私は刮目して本日の決定を拝見いたしますが、国民に耐えがたきを耐えというような犠牲を強要するようなものでないであろうということを私期待しながら、次の大臣と相まみえる機会に譲りたいと思います。  法案に入っていきますが、最初に補正却下の決定に基づく新出願というのを、これを出願から十二カ月後は認めないことにした点であります。これは先ほどもございましたけれども。  そこで、私伺いたいのは、従来は十八カ月後の公開以降は一定の制限があったんですが、それまでは認められていた補正の制度を、今回の改正によると出願後十二カ月から十八カ月間は特に厳しい扱いになります。この措置は出願人の権利の保護が薄くなるんではないかという懸念も成り立つんでありますが、関係方面とのコンセンサスは得られているんでしょうか。まずお伺いいたします。
  99. 小花弘路

    説明員(小花弘路君) まず、特許法先ほどから非常に難しいというお話がございますとおり、補正却下と補正の問題とが大変言葉が似ておりますので、ちょっとそこのところにつきまして事実を正しく御説明させていただきます。
  100. 市川正一

    ○市川正一君 できるだけ簡潔にお願いいたします。
  101. 小花弘路

    説明員(小花弘路君) まず、日本特許制度は先願主義なものですから、明細書を出した後、出願をした後でも直せるという制度になっております。その期間については、特に今回何も変更は加えられてございません。特に変わりましたのは、その補正をしたときに要旨変更という、要するに出願したときの内容から変わってしまった内容を補正したときに、それは先願主義の建前から好ましいことでないので、その補正を却下するという制度がございます。却下された出願人の方が、それを救済する規定として新たな出願をすれば、それがその補正書を出したときに出願したというふうにみなされて、また新たな出願に生き返るというような、補正却下の決定に基づく新出願制度という制度があったわけでございます。今回は、国内優先権制度の採用と相まちまして、これを廃止する方向を出してございます。  先生の御指摘の点は、この点について十分コンセンサスが得られておるかということかと思いますので、その点についてお答え申し上げますと、私ども、まず基本的には、国内優先権制度というものが、今申し上げましたように、最初の基本の発明から次々にいろいろな改良が出てきたものを十分取り込んで、一つの発明として保護していく制度であるものですから、その制度に乗れる間においては、今先生御心配のような補正却下を受けるような補正はせずに、むしろ新出願、この国内優先権の制度の方へ乗り移っていただくことによってカバーできるんではないかというのが第一点でございます。  それから第二点は、現在、日本は公開制度がとられているために、補正をして新出願をしても、本体の出願が公開になっているために特許にならないというケースが非常にふえてきております。したがいまして、この補正却下の新出願という制度自体は過去からあったわけでございますが、最近は非常に利用されなくなってきている、そういう二点がございまして、ほとんど優先権制度でカバーされるからという点と、それから、実際にほとんど利用されてないという二点から、確かに論理的には先生御指摘のとおりカバーされない部分があるわけではございますけれども制度としてはやめることにさしていただいたわけでございます。  この中身の議論につきましては、こういう制度は国際的には日本だけしかなかった制度でございます。そういう意味では、国際的なハーモナイゼーションという意味においては、むしろ世界的な中に入っていく形でございます。  それから国内的には、出願人の大きな団体でございます日本特許協会とか、それから弁理士会とかというような方とも一応お話し合いをして、基本的には問題がないんではないかというふうにお伺いしております。
  102. 市川正一

    ○市川正一君 今御答弁が約五分ありました。私は、コンセンサスは得られているんですかどうですかということをお聞きしているんで、その前段のところを余り長くやってもらうと、まあ御親切はありがたいんですけれども、そこらひとつ、あとよろしゅうお願いします。  法案に関連して特許制度の運用の問題なんですが、新聞などで報道されております優先審査制度の問題なんです。この制度は、現在でも公開制を導入した後、特許係争の未然防止のために特許法の四十八条の六で認められておりますし、また庁議決定で公害防止技術について早期審査を実施しております。しかし、実際の利用は余り多くないと言われておりますけれども、その理由と実績ですね、これをお伺いしたいんです。
  103. 齋田信明

    政府委員齋田信明君) 二つでございますが、公害につきましては、現在のところ特許実用新案を合わせますと五千件ぐらいでございます。おのおの大体半分ずつぐらいでございます。二千五百件、二千五百件ぐらいでございます。  それから、前者の優先審査の件でございますが、それが大体年間四十件ぐらいでございます。  以上でございます。
  104. 市川正一

    ○市川正一君 なぜそうなのかという理由はお答えなかったんですが、まあよろしいわ、前へ進めましょう。  そこで、伝えられているところの今回新たに優先審査制度を導入するねらいというものが、いわゆる滞貨の解消、これはずっと午前中からも議論がございましたが、確かに年間四十六万の出願、そして六十万を超えるいわゆる滞貨というものを何とかせぬといかぬことは事実だと思う。しかし、その際にやっぱり正しいやり方を貫く必要があると思うんですが、そこで、今検討されているこの優先審査制度仕組み、それから条件、あるいは基準というふうに言ってもいいと思うんですが、その概要と、考えていらっしゃる要点をお聞かせ願いたいんです。
  105. 志賀学

    政府委員志賀学君) 私どもの非常に大きな未処理案件に対する対策の一つとして、出願人側に対する協力要請と並びまして、特許庁サイドにおいて審査のやり方の効率化、あるいは限られた審査能力をできるだけニーズに合わした形で対応していく、投入していくということが必要ではないか、こういうことから、審査のやり方について早期審査というようなことができないだろうかというようなことで現在検討しているわけでございます。それについて先般、日刊工業新聞に報道されたわけでありますけれども、本件につきましては、現在まだ私どもとしてこのようなことを決めたということはございません。  ただ、いずれにしてもこの実施関連の案件であるとか、要するに出願人として早く権利化してほしいというような、そういうニーズがあるものにつきまして、その早期審査をやったらどうだろうかということで、関係方面の意見もいろいろ徴収しているところでございます。    〔理事斎藤栄三郎君退席、委員長着席〕  私どもといたしまして、そういうことで早期に審査をしようということで考えているわけでございますけれども、ただ、同時にそれは、この早期審査の対象にならなかったもの、これがどんどんおくれてしまうというようなこと、これはまた公平の観点からいって好ましくないわけでありまして、そういう点について一定の枠をはめながら、この早期審査によりまして出願人側のニーズに即応した審査をやりたいというふうに考えているわけでございます。
  106. 市川正一

    ○市川正一君 志賀さんと長いつき合いやけども、あなたそんな話を聞くつもりで貴重な時間費やしているわけじゃないんですよ。じゃ、私の方から言いましょう。その優先審査の対象になる出願は、伝えられるところによれば、一つは既に実施しているもの、二つは実施の準備をしているもの、三つはまたはこれに準ずるもの、こういうふうな実施関連のものというふうになっているように聞いておるんです。  そこでお聞きしたいのは、こういう実施状況の説明をさせるわけですから、その具体的な要件は何なんだ、どの程度まで説明をすればいいのか、そこらを、ちょっと考えているところを聞かしてください。
  107. 齋田信明

    政府委員齋田信明君) 今先生のおっしゃったことでございますが、今のところその具体的な内容についてどのようにすればいいかということを検討中ではございます。しかし、私どもといたしましては、今先生おっしゃったところは実施関連の出願というふうに申しておりまして、それは具体的に申しますと、例えば企業で実施しているパンフレットをつけるとか、そういうことによりまして単純な実施をしておるという証拠を出していただければ、それだけで私どもとしては実施しておるというふうに考えておるわけでございます。
  108. 市川正一

    ○市川正一君 今パンフというふうにおっしゃったんですが、例えば販売カタログ、銀行への融資申し込み書、資材調達伝票などが報じられております。  そこで、さらに伺いますが、じゃそういう実施状況の調査をだれがいつやるのか、書面審査なのか面接なのか、これ非常に皆関心を持っておるところです。一人一人の審査官がやられるのか、グループでやられるのか、あるいは出願人、代理人との意思疎通、あるいは実施関連出願等の把握のためのヒヤリングを実施する場合にも、技術グループによる対応が望まれるというふうに言われているようですが、そういうあたりどういう見当になっていますか。
  109. 齋田信明

    政府委員齋田信明君) 私どもといたしましては、書面で出していただこうというふうに考えております。したがいまして、特に面接をしたりなどということは今のところ考えておりません。
  110. 市川正一

    ○市川正一君 そうすると、面接がないとなるとヒヤリングもないわけですか。
  111. 齋田信明

    政府委員齋田信明君) その点につきましては、必要であればヒヤリングいたしますけれども、現在のところ必要なものがどの程度どういうふうに出てくるかということについて、今のところ確かなものを持っておりません。
  112. 市川正一

    ○市川正一君 一人でやらはるんですか、それともグループでやらはりますんですか、お考え方は。
  113. 齋田信明

    政府委員齋田信明君) グループで審査をするかどうかということにつきましては、全然この件とはちょっと別に考えておりまして、私どもといたしましては、今一つの分野の審査をいたしますときに、今まではおのおの審査官が個別にやっておりますが、それによりますと審査の質の問題、質がばらつく問題、あるいは審査のスピードが違う問題等々いろんなことがございます。そういうものをグループでやれば、非常に審査の質も上がり、あるいはスピードも一定になるということを、別のことから私どもとしては考えております。  その中に今申し上げました早期審査といいましょうか、優先審査というものを入れるときには、確かにグループで対応した方がいい場合がございます。しかし、一人で審査する場合もございますので、そのケースの場合には、優先審査は一人で判断するということもございます。
  114. 市川正一

    ○市川正一君 それらについては、後で少しまた触れさしていただきたいと思うんですが、そこで、今必要に応じてヒヤリングもなさる、こうお答えになったんですが、それが一人であれあるいはグループであっても、私は関連業界と、要するに出願人の場合、企業ということになるわけですが、直接そういうコンタクトをとるということは、いわゆる癒着問題など、そういう懸念を持たざるを得ぬわけです。  例えば今、優先審査の問題ですからぎょうさんあると、何とか絞りたいという善意な意図からではあっても、出願人が望んでいるこれとこれは優先審査するから、あとおろしてくれと。非常に卑俗な言い方をするんですよ、私は、わかりやすいために。そういうふうなことになりますと、やっぱりこれはぐあい悪いということから、私は審査官というのはその職務の性格上利害関係人とは一定の距離を置いて、あくまでも書面審査に徹するのが本来の姿ではないかと思うんですが、いかがでしょうか。
  115. 志賀学

    政府委員志賀学君) 現在のところまだ、先ほども申し上げましたように、私どもとして具体的な案を固めているわけではございません。ただ、いずれにいたしましても、どのような案件について早期に審査をするかということにつきましては、できるだけ客観的な基準によって処理していきたい、できるだけ私意が入らないようなそういう形で処理していきたいというふうに思っております。これが一点であります。  ただ、いずれにいたしましても、先ほど齋田技監からもお答え申し上げましたように、その出てきたものについてヒヤリングをしたりするということもあり得ると思います。ただ、いずれにいたしましても、私ども特許庁の立場から申しますと、もちろん書面で審査をするということも適当だというふうに思います。思いますけれども、ただ同時に審査官というものはあるいは審判官というものは、常に業界なり出願人の生きたいろいろな知識と感覚というものにも触れていかなければ、立派な審査あるいは審判ができないということも事実でございます。そういうことで、もちろん癒着はいけないわけでありますけれども、要するに自己研さんという面におきまして、出願人の方たちと審査官が触れ合うということは、これは私はそれほど避けるべきものではないのではない かというふうに思っております。
  116. 市川正一

    ○市川正一君 癒着は悪いという、それは当たり前で、癒着がいいというようなことを言うたらえらいことなんで、そこで私は、後になって皆さん方のこうしましたということを聞く前に、幾つかのやっぱり懸念を表明しているわけです。膨大ないわゆる滞貨を、これを正しく処理せぬといかぬという点では実態がいろんな問題を示しているので、この解決策は私は後で言いますから、何もほっておけということを言うているんじゃないんです。その際に、優先審査という名のもとにいろんな原理原則を、原点を踏み外すようなことがあってはならないということを私は申し上げているんですよ。  そこで、グループの問題をもう少しお聞きしたいんですけれども審査の質の向上ということを、先ほどもばらつきをなくすというようなことをおっしゃいました。しかし、現在でも審査官会議があるというふうに私聞いております。また、必要に応じて審査について相互に相談しながら進めるということも当然のこととしてやられているというふうに伺っております。ですから、審査基準の統一の問題は、その点では私は特許庁の方としては確信をお持ちだと思うんですよ。それを何かばらつきがあったり質が低いというふうなこと、あなた方はよもやそうはおっしゃらないと思うのでありますが。  そこで私は、審査の仕事というのは、制度上は一人で行ってきたし、また、それを安易なグループ化ということにすっと統べると、審査官の独立を侵すことにもなりかねぬ。審査官の仕事というのは、一つの事案を合議制で進める裁判とは違うんですね。裁判の場合には合議いたします。しかし、特許をめぐる係争案件については、裁判に似た審判として今でも合議制はあるわけですね。皆さん方はそれをやっていらっしゃる。しかし、それぞれの出願に対してはそれぞれの審査官が、別々のやっぱり独立した審査を行うというのが今の基本になっているわけでありまして、そうなりますと、これを安易にグループ化していくというのは、例えば五人とか六人という規模になるというふうに私伝え聞いておりますけれども、滞貨一掃というスローガンのもとに、とにかく数をこなしていく、そういうノルマを上げていくようなものに統べりかねないという懸念を私率直に表明さしていただきたいのであります。  ですから、結論的には私はこの問題はやはり慎重な研究、慎重な対処をもって臨んでいただきたいということを強く長官にこの際希望いたしたいのであります。いかがでしょう。
  117. 齋田信明

    政府委員齋田信明君) 長官がお答えする前に、ちょっと一言だけ御説明させていただきますが、私も昔審査官でございまして審査をしておりましたけれども、私ども昭和三十年代でございますと、二つも三つもの分野を一人で審査ができた時代がございます。そのときは出願が非常に少なかった時代でございます。ところが、昭和四十年、五十年代というのは非常に技術が発達してまいりまして、一つの分野での出願というのが急増いたしてまいりました。そういたしますと、私一人で審査をしている量というのは非常に限られておりまして、同じ分野で何人もの審査官が一度に審査をしなければならない。そうでないと、その分野の処理ができないという時代になってまいりました。そういう意味で私どもはその中でおのおのの審査官の独立性、判断への独立性というのはもちろん保たれておりますけれども、やはりそこではグループをつくって共同しながら審査をしていくということが必要でございます。  それからまた、今から先の技術分野というのはだんだんまた変わってまいります。そういう場合に、一人の審査官が一つのグループをつくっておりますと、それがまた次の技術の変化、出願の量の変化によりまして順次変わっていかなきゃなりません。そういう意味で、弾力性を持たせるためにはグループをつくっておくのがいいということで、グループをつくろうとしておるわけでございまして、審査官の独立性を侵すというようなことでやっておるわけではございません。
  118. 志賀学

    政府委員志賀学君) 先生の御意見もわかるわけでありますけれども、ただ私といたしまして、特許庁審査官あるいは審判官に対して、大きな信頼を当然のことながら置いているわけでありますけれども、ただ同時に反面、国内からもあるいは国際的にも審査のばらつきあるいは質の問題について時として批判が寄せられるというのも、これまた残念ながら事実であります。  そういうことについて、我々としてやはりもっとよい工業所有権制度の運用という観点から対応をしていかなければならないというふうに思っているわけでありまして、そういう観点から、先ほど齋田技監が申し上げたように、グループ化ということもそれに対する対策として考えているということでございます。
  119. 市川正一

    ○市川正一君 齋田技監がせっかくいろいろ現場の体験を踏まえておっしゃったことはそれとして、貴重な発言として私も受けとめておきます。  ただ何でふえているかという問題についてもやっぱりはっきりせんならぬと思います。それをグループ化ということで安易に統べってはならないという私の問題提起もそれとして受けとめていただいて、私は別にそちらに恨みを買うようなことはないと思うんですが、長官、その点どうですか。
  120. 志賀学

    政府委員志賀学君) そこは全く同意見でございまして、ただ出願の適正化の問題、これにつきましては……
  121. 市川正一

    ○市川正一君 それはまたこれからやるんやから、そこまで聞いておらぬ。
  122. 志賀学

    政府委員志賀学君) はい、既にやっております。
  123. 市川正一

    ○市川正一君 それじゃ私のグループ化について提起した問題については、理解はいただけましたか。
  124. 志賀学

    政府委員志賀学君) 私どもグループ化の必要性について先ほど申し上げました。私どもといたしまして、グループ化ということは、早期審査とは別の問題として必要であるというふうに考えているわけでありまして、ただその際に、先生の御指摘になった御意見というのを頭に入れながら考えていきたいというふうに思っております。
  125. 市川正一

    ○市川正一君 頭の中に入れるだけじゃなしに、それをこなしてもらわぬと困る。  前へ進みますが、優先審査を受けるには十分な先行技術調査及び先行技術との対比説明がなされているということが条件になるやに伺っております。出願人調査をそのまま信頼して審査することなのか、あるいは十分調査がやれているかどうかを審査官が審査するということなのか、またそれはどうして確認するのか。  私が言いたいのは、審査官がやり直すのだったら二度手間になりまっしゃろ。それからやらないというのやったら審査官の職責を果たしているとは言いがたいことになるという自己矛盾になると思うのですが、この点はどういうふうにお考えでしょうか。
  126. 齋田信明

    政府委員齋田信明君) そもそも論を申し上げて申しわけありませんが、もともと出願をする前に、世界各国どこでもそうでございますけれども、自分の発明が以前にあったかどうかということについて調査をするのは、世界各国で当然のことになっております。  それから私ども先生おっしゃいますように、出願をする前に調査をして、その対比判断もしてくださいということを今から申し上げようかというふうに思っておるわけでございますけれども、それでは、そのときに審査官がそれについて審査をしないかというと、そういうことではございませんで、当然審査官が再度それを見て審査するわけでございます。ただその際に、事前に調査がしてございますと、どの範囲、どの程度までが調査が行き届いているかということは、専門家でございますので見た瞬間にわかります。そういたしますと、それ以外の点についてサーチをすればよいわけでございまして、その点で審査効率が大変上がるというふうに私どもとしては思っておりま す。そういう意味で、審査官が当然独立してその点について審査をすることについては間違いございません。
  127. 市川正一

    ○市川正一君 いみじくもだんだん核心に入ってきておるのですが、齋田さんは自分で調査するのは世界の常識やと、こう言わはったんですが、出願が何でこんなに多くなるのか。私はその主要な原因の一つとして、膨大な出願をするのは大企業です。圧倒的にやはり七割ぐらいは大企業関係です。その出願に当たっては、先行技術調査をやるためには、自分でやるためには多額の調査費用が必要となるんですね。それよりも、相対的に安い出願料やあるいは審査請求料を払うて、特許庁に調べさした方がうんと安上がりになるんですよ。そういうところから私は現状のようないわば出願ラッシュを生んでいる要素が、そればっかしとは言いませんよ、一つのやはり要因になっておる。  出願人が十分の先行調査をするというのは、現状においては今齋田さん言うたように、日本では必ずしもそうなっておらぬのですよ。大企業までそれはもう全部特許庁に、やらせとは言わぬけれども、やってもらおうという結果に相なっておる。そうして調査して特許にならない判断がつけば、その調査費用は丸々自己負担で損になるわけですから、そういうところからまともな先行調査をしておらぬのじゃないかという説を私は持っているのでありますが、特許庁の方としては、そこらはどう認識されていますか。
  128. 志賀学

    政府委員志賀学君) 当然その出願人側として十分なる調査をやり、その上で出願をし審査請求をすべきだというふうに思います。  従来から特許庁といたしまして、そういうことで慎重な出願あるいは審査請求をやってほしいということで指導をしております。かなりその面についての効果というのも出てきているわけでありますけれども、ただ、先般来申し上げておりますように、この出願件数が非常に多い、あるいは審査件数が非常に多い、その背景一つとして、先生御指摘のような、特許管理についての意識が十分でないという側面というのはある程度私はあるというふうに思っておるわけでありまして、その点についての是正ということについて現在指導をやっているところでございます。
  129. 市川正一

    ○市川正一君 今の年間四十数万件の中の私の方の調査、皆さん方のレクによると、七割ぐらいのものが、いわゆる大企業関係だというふうに承知しておるんですが、そういうふうに見てよろしゅうございますか。
  130. 齋田信明

    政府委員齋田信明君) 出願の多いところから教えますと、大体上位百社までぐらいで五七%でございます。
  131. 市川正一

    ○市川正一君 百社で五七%。そうすると、大体私の認識も当たらずとも遠からずということで、以下お話をまた進めさせていただきますが、今回のそういう優先審査制度という、今研究していらっしゃる問題点を、出願審査請求の数が非常に多いという問題とともに、結果として実施率が大体一割にも満たない、五、六%ぐらいでしょう、出願数に対して。そういうことに対して目を奪われて、出願時点で効果を出そうというような発想があるんではないかということを懸念するわけであります。  我が国における出願が年間、繰り返しますが、四十六万件、これは全世界の出願の四〇%を超えております。この原因には、先ほども私指摘しました、また長官も一定の肯定的立場でお答えいただきました、出願する大企業先行技術調査を十分行っていないというふうな問題、あるいは技術者の士気高揚のために特許出願利用する、あるいは防衛出願というふうなこと、これはもう時間がないので申しませんが、皆さん方の出していらっしゃる特許庁公報ですね、この公報の十二ページに明記されております。私、もう引用はいたしませんけれども、十二ページに、そういう問題はあなた方自身も指摘していらっしゃるんです。言うならば、大企業のこういう雑な出願の後始末を特許庁がやらされていると言っても私は過言でないと思うのであります。  こういう原因をつくっているいわば大企業中心の今の産業界自身に、出願あるいは審査請求について自主的に検討させる必要があると思います。やめるというふうには言えないにしても。そういうふうに彼らが、皆さん方の表現を一言かりますと、「そのあおりを受けた出願競争によるものや他社を牽制するための防衛目的のもの、あるいは、技術者の士気高揚のために特許出願利用するなど、我が国特有の社会的・風土的事情」というふうなことに対するいわば自主的な立場からの検討を提起する必要があるんじゃないか。同時に、そういう大企業出願に対しては一定のやはり自主規制の問題を今考えてもいいんじゃないかというふうに思うんですが、この点は何かお考えになっているようなことがあったら、長官いかがでしょか。
  132. 志賀学

    政府委員志賀学君) 確かに出願の内容から申しますと、大企業のウエートが高いわけでありますけれども、これはその背景といたしまして、やはり第一には現在の日本技術開発の中心が大企業において行われている、大企業のウエートが非常に高いということの反映であるというふうに私は思います。ただ、いずれにいたしましても、大企業であろうと中小企業であろうと、適正な特許管理というのは必要であるわけでありまして、そういう面でのお願いということは私どもとしてやってまいっているわけであります。  いずれにいたしましても、そういった特許管理の適正化のお願いというのは、これは実際上大企業が中心になるわけでありますけれども、そういった私ども協力要請の反映といたしまして、最近の審査請求率について若干見てみますと、この審査請求率は、例えば昭和四十七年ごろにおきますと全体で約七〇%でございました。それが五十四年では約六四%ということで、かなりの低下を見ているわけであります。これを平均的に、そういうことでかなり審査請求率が落ちてまいっているわけでございますけれども、特にその出願件数の多い企業のそういったクラスの審査請求率の低下というのが非常に著しいわけでございます。  これはやはり審査請求に際して、慎重な自己審査の上で審査請求をやってくるということになってきたということの反映だろうというふうに私は思っておりまして、こういった面での協力要請、指導ということは今後も強力に続けてまいりたいというふうに思っております。
  133. 市川正一

    ○市川正一君 もう一つの問題は、この審査請求数の増加に対して審査官の増員の問題があるんですね。これは午前中からも問題になった点でありますが、長官は、ずっと減少の一途をたどっているというふうにおっしゃいました。私は、本来出願審査する必要があるということを貫徹するとするならば、どうしてもやっぱり今増員を実現する必要があると思うんですが、この点重ねてその決意を伺いたい。
  134. 志賀学

    政府委員志賀学君) お答え申し上げます。  大変政府全体の厳しい中で、審査官の定員が減ってまいっているということにつきまして、私も大変残念であるというふうに思っております。そういうことで、特許庁の実態を踏まえまして、私といたしましては、必要な定員の確保のために最大の努力をこれからも続けてまいりたいというふうに思っております。
  135. 降矢敬義

    委員長降矢敬義君) 時間が参っております。
  136. 市川正一

    ○市川正一君 そこで、最後に伺いたいのは、JAPATICが解散して発明協会に吸収されるわけでありますが、この際伺っておきたいのは、もともと情報サービスのセンターとしてのこのJAPATICが発明協会から出ていったものですね。その発明協会にどうしてそれを母体に戻さないのか。発明協会というのは、私は、その名称やその機能からいって、それでなければならないとは申しませんけれども、しかし、発明協会が今やっている仕事の中で、いわゆる情報サービスというのがそこの重要な財源になっているわけですね。この際、私は、情報サービスあるいは発明の奨励、普及というふうな仕事をばらばらにするんじゃな しに、むしろこれは発明協会が適切であるかどうかは別として、民間のこういうスペシャリストのセンターである機構、ここに単一化して運用していくのがベストであるというふうに思うんでありますが、その点が一点。  それからもう一点は、日米経済摩擦とも関連するんでありますが、こういう特許の申請や審判を扱う弁理士活動ですね、この弁理士活動で、アメリカの弁護士が日本で活動する場合に、もし相互主義に立った際は、アメリカ人の弁護士は日本で弁理士の仕事はできないはずでありますが、この点については、通産省は日本の弁理士の仕事を守る立場からどういう見解に立っていらっしゃるのか。  以上二点について最後に御質問をして私の質問を終わりたいと思います。
  137. 小川邦夫

    政府委員(小川邦夫君) 先生御質問の第一点、JAPATICの関連についてお答えいたします。  特許情報事業は、御指摘のとおり発明協会もやっておりますし、JAPATICもやっておりまして、現在考えておりますことは、こういった特許情報というものが今後ペーパーレスの進展とともに、非常に高度かつ複雑な業務になっていくことから、戦力を結集して一元的な情報処理、提供機関を設けようということで現在検討を進めておるわけでございます。  その場合に、発明協会に統合したらどうかという御指摘でございますけれども、私どもその点慎重検討してまいったわけでございますけれども、発明協会は皇室を推戴いたしまして、極めて公益性の強い事業、発明奨励事業が代表的でございますが、こういったものをやっておる。例えば恩賜発明奨励だとか、少年少女発明コンクールというような非常に公益性の強いものをやっておる。他方、この情報処理提供業というものは、今後、ただいま申し上げましたように非常に複雑かつ膨大な事業量になることにさらに加えますに、非常に市場規模が拡大して企業的色彩の強まる事業内容になってくることが予想されます。  そういう意味で、そういった公益事業性の強い事業と企業性の高まる極めて複雑な専門的な情報処理事業とは、異質であるがゆえに無理に統合することも難しゅうございますし、かつ円滑に膨大な事務量を一団体で処理することにも困難があろうと、そういう観点から、特許情報処理事業の部分だけをまとめて一元化をしようということで現在検討を進めておりまして、両団体の緊密な話し合いを進めておる状況でございます。
  138. 村田敬次郎

    ○国務大臣(村田敬次郎君) 第二問の問題と、それからなお一つ補足をさしていただきます。  第二の問題の外国人弁護士の進出問題についてでありますが、これはまず、日本の弁理士会と日弁連との間で緊密な意見のすり合わせが必要と考えます。通産省としても適切な解決が図られるよう法務省、日弁連等での検討状況に留意しながら配慮をしてまいる所存でございます。  なお、この際、最初に市川委員からお尋ねいただきました日米貿易問題に関連して一言補足をしておかなければなりません。  きょう恐らく、中曽根総理からもいろいろな決意が御発表になると考えられるわけでございますが、貿易問題は日米両国民にとって大変大きな問題であって、特に輸入の促進ということでは、日本の国民生活全般に大きな影響を必ず及ぼす問題であろうかと思います。私どもは、委員の御指摘になられた趣旨で中小企業を極力守る、中小企業のあすを本当に考える政治の立場で対応していくという気持ちを申し上げたわけでございますから、その点はお含みおきいただきたいと思います。
  139. 市川正一

    ○市川正一君 時間切れですから。
  140. 木本平八郎

    木本平八郎君 私も一応こういうふうに質問の用意はしてたんですけれども、けさほど来、先発委員の方からほとんどの質問が出てしまったものですから、ちょっとこれ置きまして、二、三雑談的にお伺いしたいわけです。  まず一番初めに、ちょっといろいろいただきまして、見て、非常にびっくりしたのは、やはり日本が世界の四二%でパテント王国だと、これだけのパテント王国でありながら基礎技術が全然おくれていると。先ほど伏見先生からも言われましたけれども、創造性がないというふうなことですね。この辺長官どういうふうにごらんになっているか、まず御所見をお伺いしたいんですがね。
  141. 志賀学

    政府委員志賀学君) これは、日本技術についてよく言われることでございますけれども特許の切り口からどこまでそういう分析ができるかということにつきましては、やや疑問があるわけでありますが、ただ、やはり日本の場合に、商品の開発技術であるとか、あるいは生産技術であるとか、そういう面でのやはり優秀さということに比べまして、基盤的な、基本的な技術研究についてのおくれということは、これはやはり私どもいろいろ出願人の方たちとお話しをしておりましても、そういうことがうかがわれます。  そういう点につきましては、これだけの技術大国と言われ、あるいはこれから技術立国を目指さなければいけない日本から申しまして、やはりぜひ基盤的な面でも世界に貢献できるような、そういう国になっていかなければいけないというふうに思っております。
  142. 木本平八郎

    木本平八郎君 私の感じでは、やはりどうも特許のレベルが世界に比べて低いんじゃないかと。何でもかんでも新しければ出しゃいいということで、特許を取っておけばいいというふうなことがあるんじゃないかと、それが先ほどのように、膨大な未処理案件にもなってくるし、特許庁自身がもうパンクしそうになっているというふうなことでもあるんじゃないかという気がするんですね。むしろレベルを上げて申請を少なくするというふうなことが必要なんじゃないかと、こういう転換点になりますと。その辺齋田さん、どういうふうにごらんになっているか、御意見を承りたいんですがね。
  143. 齋田信明

    政府委員齋田信明君) 先生のおっしゃるとおりであると私どもも思っております。  審査を実際にやっておりますと、審査には問題点があると言われるときに、二つの問題がありまして、一つはその同じ分野の審査のばらつきというのがございます。一つの権利は甘く許され、一つの権利は厳しく許されるというような、同じ分野でございますと非常にばらつきがあるということで、これが問題でございます。  それからもう一つは、審査全体が甘いと、どれでもこれでも許されるというようなことになりますと、ああいうものが許されているならば、それではおれも出そうじゃないかということになって、次から次に出願が出てくるということになります。  私ども今二つの問題について、一つ先生御指摘のとおり審査の質を、レベルを上げていくことが必要ではないかというふうに思っております。これにつきましては、私ども企業の方々と昔からお話しをしておりました。昔は、企業の方々に審査の質を上げるぞと、こういうふうに申し上げますと、その企業の人はよその企業のやつはひとつ厳しくやってくれと、うちのやつは甘くしてくれというようなお話も昔はございましたけれども、今はむしろ異口同音に、審査の基準をひとつ厳しくしてくれということは今言われておるところでございまして、私どももそういう意味では審査のレベルを上げる方向で努力をしております。  それからもう一つ、ばらつきについては先ほどもお答えいたしましたが、一つの分野での出願が集中して多くなってまいりまして、一人の審査官では審査がし切れなくなっております。したがって、数人の審査官あるいは十人、二十人の審査官で同じ分野の出願を処理しなければならないということになっておりまして、そういう意味では、相互に審査の質について話し合いをしながら、今後審査を進めていくことが必要ではないかというふうに考えております。
  144. 木本平八郎

    木本平八郎君 それで、先ほど市川理事の話にもありましたように、実施率が低い、五、六%。私もその数字がいいのかどうかわからないのですけれども。  追加して一つだけ、ヨーロッパとかアメリカに比べて日本の基準はやっぱり甘いのかどうか。あるいは実施率の点は日本はどうなのかということを、わかっている範囲で結構なんですが、教えていただきたいと思います。
  145. 齋田信明

    政府委員齋田信明君) ちょっとその前に、例えば出願が百ございますと、その中の六十五ぐらいが審査請求をされます。つまり審査をして権利を欲しいということでございます。その中の大体半分ぐらいが許されるわけでございます。したがって三二、三%は許されます。そのうちの大体三分の一ぐらいが日本では実施されているということが言われております。調査をいたしますと、そういう数字もございますが、もう少し大きい数字もございます。  それから、諸外国につきましては実施率がどのくらいかということにつきましては、なかなか調査しにくうございますけれども、一企業で見ますと、例えばデュポンなんかの実施化率はどのくらいかといいますと、権利になりましたものの半分であるとか、あるいは四分の一であるとかいうことが言われておりまして、確かにその数字と比べますと、日本よりは大きいかと思いますけれども、この日本数字も、過去から比べますとどんどん実施化率は上がっております。そういう現状でございます。
  146. 木本平八郎

    木本平八郎君 それじゃ次に質問を移しまして、実は今度の法改正がきっかけではないんですけれども、今現在、特許庁としてはコンピューター化を非常に大々的にやられようと、ある意味では革命みたいな取り組み方をなさっているわけですね。これは非常に結構なんですけれども、どうも私の印象では、何を今ごろコンピューター化かと、もっと十年も前にやっていなきゃいかぬじゃないかと思うんですけれども、何か特別にちょっと特許の方はコンピューター化が非常に難しいというふうな事情があれば、説明していただきたいと思うんですがね。
  147. 梅田勝

    説明員(梅田勝君) 先生御指摘のように、コンピューター化の問題というのは、少なくともいわゆる帳簿のかわりに使う、つまり事務処理の方ですが、それは実は三十九年から導入しておりまして、徐々にビルドアップをしてきているわけなんです。  特に特許の問題で一番難しいのは、先ほど来議論になっておりますように、過去何千万件という文献の中からどういう文献を拾い出すか、つまり申請されてきた技術と非常に近いものをどうやって捜すか、ここが一番難しい問題でございます。いろいろなコンピューターの技術も発達してまいりましたし、いろいろなサポートする機械も相当そろってまいりましたので、今回できるということに相なったわけでございます。  それと同時に、前々から言われておりましたのですが、出願の書類自体もいわゆるデータベース化すれば、あとその持ち運びも要りませんし、それがそのまま公報印刷にも回るということも可能でございまして、それもコンピューターの容量が非常に安く、かつパワーがアップしたというところでございまして、非常に小規模には従来からやっております。  それからもう一つは、大きな媒体といたしまして、今我々光ディスクを使っておるんですが、こういうものも図面みたいなものを蓄積するという技術が特に日本はお得意でございまして、非常に発達してまいりました。そういう環境が非常に整ってきたというところでございます。
  148. 木本平八郎

    木本平八郎君 その問題、後でもう少し突っ込んで聞きたいと思うんですけれども、その前にひとつ私、日本語というのは非常に特殊な言語なものですから、例えば外国との間でやりとりの、向こうからの出願、こちらからの出願、そういったことで日本語が非常に障害になるだろう。それで日本語がいわば通産関係で言えば非関税障壁的な印象で向こうにとられていることがあるんではないかと思うんですね。これはいちゃもんみたいな感じもあるでしょうけれども、その辺はどうなんでしょうね。
  149. 村田敬次郎

    ○国務大臣(村田敬次郎君) 非関税障壁、ノンタリフバリアーですか、これは、日本語は非関税障壁の一種であるという、冗談のようなことがよく言われるんです。確かに貿易問題担当しておりますと、日本語で対外的に全部通用するということは、アジアの特定の国を別としてほとんどないんで、よく冗談のように言われております。しかし、私などはいろいろ外国の大臣あるいは大使などとしょっちゅう会うんでございますが、必ず日本語で言って通訳に正確に訳してもらうことにしておりまして、特別に支障は感じないような感じがいたします。
  150. 木本平八郎

    木本平八郎君 今度特許関係をコンピューター化される、これはもちろん国際的な視野を踏まえておやりになるわけですけれども、私、ぜひやっていただきたいのが自動翻訳機の機能ですね。これはもうできれば日本語から英語、ドイツ語とか、と同時に例えば外国語同士、フランス語と英語とか、そういうことで自動翻訳の方に相当金をかけていただいてやっていただきたいと思うんですが、これちょっと後で何しますけれども、その点だけまず御所見お伺いしたいんですがね。
  151. 梅田勝

    説明員(梅田勝君) 実は、自動翻訳の問題につきましては、先生御指摘のように、特に先ほど来議論が出ておりますように、特許情報というのはワールドワイドに非常に利用されてくるということでございまして、日本アメリカとヨーロッパと協力して三極でやっておるわけなんでございますけれども、彼らといたしましても日本語では読めない、ぜひ英文の資料を提供してほしいという非常に強い要望がございまして、実は昭和五十二年から特許公開公報の英文の抄録をつくっておるわけなんでございます。これは人間の頭脳で翻訳をしておるわけなんでございますけれども先生御指摘のように、自動翻訳というふうに切りかえていけば、抄録だけではなくて本文も将来的には英文化できるということで、今年度から少しその調査に着手するということに相なっておりまして、予算も計上させていただいておるわけでございます。  特に、英語から日本語というのは比較的楽なんでございますけれども日本語から英語という方がやはり難しいようでございまして、いろいろなメーカーにもヒアリングをしておるんですけれども、英語から日本語というのは比較的射程距離でございますが、日本語から英語というのはもう少し先かなという感じもいたしておるんです。いろいろ勉強さしていただいております。
  152. 木本平八郎

    木本平八郎君 特許の場合は、普通のカンバセーションというか、普通の語学と違って、非常に特殊な専門用語、テクニカルタームとか、そういうものが非常に多いわけですね。そうすると、仮にフランス語とドイツ語の間であっても、やはり彼らにとってこういうテクニカルタームをやるというようになると、非常に限られちゃうわけですね。その辺むしろ日本の方が、外国のそのテクニカルタームについても一般的に進んでいるんじゃないかという気がするんですね。したがってトータル的に見れば、日本がそういうことを担当した方が世界的に見れば非常に効率がいいんじゃないかという気がするわけですね。その点で、ぜひひとつお願いしたいということですね。  特にこの問題は、私、LDCあるいはNICS、中進国ですね。そういったものに対して日本が今後出ていくのに、我々も必要ですし、彼らにもやっぱり必要だと思うんですね。ところが、彼らが自分の国独自でこれをやるとなれば、もう膨大な金がかかるわけですね。ちょっと経済的には追いつかないんじゃないか。といって、彼らが整備してくれないとこっちも困るわけですね。したがって、私はODAの経済協力の一環としてこういうパテントの仕事は日本が引き受けてやる。それで、極端なことを言えば建物もつくってやる、コンピューターも入れてやる、ソフトもやってやる、指導者も派遣してやるということで、世界の、ヨーロッパとかアメリカとかの先進国間の協力はもちろん必要ですけれども、中進国、発展途上国に対してこういう面でもってサービスするという ことが非常に有効じゃないかと思うんですが、大臣どういうふうにお考えになりますか。
  153. 村田敬次郎

    ○国務大臣(村田敬次郎君) 日本語でですか。
  154. 木本平八郎

    木本平八郎君 いや、日本語じゃなくて、やはりこれはまあ向こうの現地の言葉でやってやらなきゃいかぬ面があると思うんですね。まあとりあえずは英語でいいかもしれませんけれどもね。
  155. 村田敬次郎

    ○国務大臣(村田敬次郎君) 今、木本委員が御指摘になられましたように、日本語は非常に何といいますか新しい言葉でございますから、テクニカルタームの翻訳などということになると、かえって正確にそれをあらわしていることが多いかと思うんです。  私ども、経験を申し上げるんでございますが、毎日のように大臣や外国の方々にお会いをする、そのレクチャーを受ける際に、横文字の言葉が実にたくさん飛び出すんですね。多少のことは私どもでも知っているんですが、わざとそれを一つ一つ聞くんです。これはどういう意味だ、日本語に直してみろ。日本語で言えることをわざわざ横文字を使うなということをよく私は言うんでございますけれども。確かに、これからは日本が国際国家になったのでございますから、今木本委員の御指摘になったようなものはよく尊重しながらやっていく、またそういう国民としての誇りも必要なんだろう、そういうことは感じるところでございます。
  156. 木本平八郎

    木本平八郎君 私は、将来少なくともASEANなんかでは、日本からパテントセンターみたいなものを寄附して、そして例えばインドネシアならインドネシアの中のことはインドネシアでセンターでやる。ところが、隣のシンガポールとかタイでどういうパテントがあるかというのは彼らの場合なかなかできないと思うんですね。そういうものもひとつそこのパテントセンターにできるだけ集中してやれるようにしていく、これはまあ二十一世紀までかかるでしょうけれども。その辺のことを日本がやってやる、という言い方はいいかどうかわかりませんけれども、やはり非常に意義のあることじゃないかという気がするわけですね。ぜひそういう点でお考えいただきたいと思うわけです。  ただ、この問題は、相当シリアスな問題になりかねない。ということは、世界の報情支配を日本がたくらんでいるんじゃないかというふうなことを言われる可能性もありますので、その辺非常に扱い方が難しい面もあると思うんですが、それは外国の問題ですけれども。  日本の場合に返りまして、これで今、千三百億ぐらいで、一つの庁舎とそれからいわゆるコンピューターの新しい殿堂をおつくりになろうとしておるようですね。ぜひ私、それに考えていただきたいのは、先ほど市川理事から少しシビアな大企業批判がありましたけれども、実際にパテントに関しては特許庁も大変でしょうけれども、各企業も大変な人数を抱えて、特許部というのはてんやわんややっているわけですね。これについて私は、できれば今度特許庁のその建物のコンピューターに、これはまあ秘密というか、制限はありますけれども、その端末を全部企業特許室につないで、有料で、そこで呼び出して検索ができるというふうなシステムを考えていただくということはどうかと思うんですが、いかがですか。
  157. 志賀学

    政府委員志賀学君) 私ども、ペーパーレス計画を推進しているということを申し上げたわけでございますけれども、そのペーパーレス計画の意味というのは、一つ特許庁審査審査事務の合理化、能率化ということがございます。同時に、そこで膨大なデータベースができるわけでありますけれども、それを迅速に出願人サイドに提供していく、それによりまして出願人サイドにおいて、一つ特許出願特許管理の適正化ということがやりやすくなってくるという意味。同時にもう一つは、それぞれの企業が経営戦略あるいは技術開発戦略を立てる上において役立てていく、そういったいろいろな意味があるというふうに思っておりまして、そういう意味で、ペーパーレス計画はぜひとも実現しなければいけないし、特許情報というのはいろいろな意味で非常に重要なものであるというふうに思っているわけでございます。  そこで、特許庁に蓄えられるデータベースをどういう形で流していくかという問題がございます。私どもいずれにいたしましても、できるだけ出願人の方々に使いやすい形で流していきたいというふうに思っているわけであります。チャネルとしては、これはこれからの問題でございますけれども、例えば、現在で言えばJAPATICというのがございます。現在オンラインでやっているわけでありますけれども、そういうところを通じてやはり流していくというようなことも考えられるわけでありますし、あるいは特許庁のデータベースから、特許庁にございます万国工業所有権資料館、ここに端末を置いて、そこに来られる方が使いやすい形にしていくということもあり得ると思います。  いずれにいたしましても、先生御指摘のございましたように、特許庁に蓄えられます特許情報、これを有効に活用できるようにしていきたいというふうに思っております。
  158. 木本平八郎

    木本平八郎君 そのデータはいわゆる公告されたもの以外に、拒絶されたもの、却下されたようなものも蓄えられておって、例えば出願者の方でこういうものを出そうと思うとところが公告の中には入ってないと、しかし登録の中には入っていないと、じゃ、かつて却下された方に入っているかどうかと調べてみたらやっぱり入っていたから、これはあかんと、やめたというふうなことを調べられるようなシステムになっているのかどうか、その辺お伺いいたします。
  159. 梅田勝

    説明員(梅田勝君) 日本の場合は、出願されまして一年半たちますと全部公開されます。それから後に審査がなされますので、したがいまして、先生御指摘のように、特許になったデータベースももちろん公開いたしますし、結果的に拒絶になったものも既にその前に公開しておりますので、秘密情報ではございませんので、したがってそれも一般の方たちが利用できる、そのデータベースも利用できると、こういうことを考えております。
  160. 木本平八郎

    木本平八郎君 それで、それからこの問題はあさって中小企業関係のときにまたいろいろ質問するんですけれども特許に関しまして、これからやはり中小企業というのは自分の自主技術を持っていかなきゃいかぬ時代になってくると思うんですね。今までのようなただ大企業の下請ということから脱して、やはり今現実にもう日本の中小企業というのはどんどん部品なんかをいいものを開発してやってますね。アメリカなんかにどんどん出ていっている中小企業の製品というのはたくさんあるわけですね。これからやはり中小企業技術開発というのは非常に大事だと思うわけです。  それに対しまして、先ほども大企業出願が非常に多いというのは、大企業にいろいろ事情もあるでしょうけれども、中小企業になかなかそれだけの余裕がなかったということで、まあある意味では、今までは一人の天才に頼っていた面が非常にあるわけですね。ところが、やはり特許情報を調べて、過去のなにを分析して、こういう方向性とか、そういうデータを整えることが必要だと。ところが今まではなかなか整えられなかったけれども、今度特許庁のこういうコンピューターのライブラリーができれば、中小企業が相当利用できるんじゃないかと思うんですね。その辺ぜひ御考慮いただきたいと思うわけですね。その辺伺って、まだ時間がありますけれども、私の質問を一応終わります。
  161. 志賀学

    政府委員志賀学君) 私どもも、先生御指摘のように、大企業を問わず中小企業含めまして、できるだけ特許情報を利用しやすい形にしていきたいというというふうに思っているわけでございまして、したがって、そういう意味から、私どもがペーパーレス計画の計画づくりをやっていく場合に、できるだけ標準化するように、そういう形で考えていくとか、あるいは先ほど申し上げましたように、資料館に端末を置くとか、さらにあるいは地方の閲覧所に端末を置くとかいろいろな方法 を講じまして、地方の中小企業の方々にもできるだけ特許情報を活用していただくという方向で努力していきたいというふうに思っているわけでございます。
  162. 降矢敬義

    委員長降矢敬義君) 他に御発言もなければ、質疑は終局したものと認めて御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  163. 降矢敬義

    委員長降矢敬義君) 御異議ないと認めます。  それでは、これより討論に入ります。  御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。――別に御発言もないようですから、これより直ちに採決に入ります。  特許法等の一部を改正する法律案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  164. 降矢敬義

    委員長降矢敬義君) 全会一致と認めます。よって、本案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  この際、梶原君から発言を求められておりますので、これを許します。梶原君。
  165. 梶原敬義

    梶原敬義君 私は、ただいま可決されました特許法等の一部を改正する法律案に対し、自由民主党・自由国民会議、日本社会党、公明党・国民会議、民社党・国民連合、参議院の会の各派共同提案による附帯決議案を提案いたします。  案文を朗読いたします。     特許法等の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)   政府は、本法施行にあたり、最近の内外における諸情勢の進展にかんがみ、次の諸点について適切な措置を講ずべきである。  一、工業所有権制度に対する国民の理解を深め、あわせて工業所有権制度の国際化の進展に対処するため、わが国の工業所有権制度全般にわたって更に検討を加えること。  二、優先権制度の導入に伴う補正の却下後の新出願制度の廃止に際して、出願人に適切な補正の機会が与えられるよう、運用上配慮すること。  三、出願件数の増大等に対処し、迅速的確な事務処理を図るため、ペーパーレス計画を着実に推進するとともに、審査官、審判官等の人員の確保、待遇の改善等に努力すること。  四、科学技術発展、ペーパーレス化の実施等に弁理士が適切に対応し使命を達成できるよう、弁理士法の改正等弁理士制度の強化を図ること。  五、(財)日本特許情報センターの新規性調査機関としての機能を充実強化すること。   右決議する。  以上です。
  166. 降矢敬義

    委員長降矢敬義君) ただいま梶原君から提出されました附帯決議案を議題とし、採決を行います。  本附帯決議案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  167. 降矢敬義

    委員長降矢敬義君) 全会一致と認めます。よって、梶原提出の附帯決議案は全会一致をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。  ただいまの決議に対し、村田通商産業大臣から発言を求められておりますので、これを許します。村田通商産業大臣
  168. 村田敬次郎

    ○国務大臣(村田敬次郎君) ただいま御決定になりました御決議につきましては、その御趣旨を尊重いたしまして、今後行政を進めてまいりたいと存じます。  ありがとうございました。
  169. 降矢敬義

    委員長降矢敬義君) なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  170. 降矢敬義

    委員長降矢敬義君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  171. 降矢敬義

    委員長降矢敬義君) 次に、情報処理振興事業協会等に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。  まず、政府から趣旨説明を聴取いたします。村田通商産業大臣
  172. 村田敬次郎

    ○国務大臣(村田敬次郎君) 情報処理振興事業協会等に関する法律の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由及び要旨を御説明申し上げます。  本法が制定された昭和四十五年来、我が国の情報化は広範かつ急速な進展を見せ、今や電子計算機の実働台数は十五万台を超えるとともに、なおその増勢には著しいものがあります。しかしながら、このような情報化の進展に伴い、今日の我が国経済社会は従来とは異なった新たな課題に直面しております。  その第一は、急速な情報化に伴うソフトウエアの需給ギャップの一層の深刻化であります。プログラムの開発体制はなお労働集約的な作業に依存しており、かかる開発工程を自動化、機械化し、その生産性を向上させることが焦眉の急となっております。  第二に、最近の産業分野における情報化は、企業内システムから企業間システムへと本格的な進展を見せつつありますが、端末の複数設置、ソフトウエアの重複開発等の非効率な事態を回避しつつ、事業者間の連携によって、より効率的で開かれた情報化を促進していくことが喫緊の課題となっております。  このような最近における情報化社会の要請にこたえるため、電子計算機の連携利用に関する指針の設定、情報処理振興事業協会の業務の拡充等に関する所要の規定を整備することを主たる内容といたしまして、この法律案提出した次第であります。  次に、この法律案の要旨を御説明申し上げます。  第一に、法改正の趣旨を踏まえ、題名を「情報処理の促進に関する法律」に改めるとともに、法律の目的におきまして「電子計算機の利用の促進」とあるのを「電子計算機の高度利用の促進」に改めることとしております。  第二に、電子計算機の連携利用に関する指針の設定についての規定を新たに設けることとしております。主務大臣は、事業者が広く連携してその事業の分野における電子計算機の効率的な利用を図ることが必要かつ適切であると認めるときは、高度化計画を勘案して、その事業の分野において事業者が連携して行う電子計算機の利用の態様、その実施の方法等に関する指針を定め、これを公表するものとしております。  第三に、情報処理振興事業協会の業務の追加等についてであります。すなわち、協会の業務につきましては、①プログラムの作成の効率化を図るためのプログラムの開発、提供等に関する業務及び②企業等がその事業活動の効率化を図るため電子計算機を共同で利用する際に必要となるプログラムの開発のための資金の貸し付けに係る業務を新たに追加いたしますとともに、③情報処理サービス業者以外の一般企業プログラム開発に係る資金の借り入れに対する債務保証の業務を拡充することといたしております。また、プログラム作成効率化業務に関して特別勘定を設け他の業務に係る勘定と区別して経理を行うこととするなど新たな業務の追加に伴う所要の規定を整備することとしております。  第四に、協会が長期借入金をすることができることとし、また、借り入れについて、政府が債務保証を行うことにつき定めることとしております。  以上が、この法律の提案理由及びその要旨であります。  何とぞ慎重御審議の上、御賛同下さいますようお願い申し上げます。
  173. 降矢敬義

    委員長降矢敬義君) 以上で趣旨説明聴取は終わりました。  本案に対する質疑は後日行うこととし、本日はこれにて散会いたします。    午後三時二十八分散会