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政府委員(菊池信男君)
先生御案内のとおり、この問題につきまして――この問題と申しますのは、外国の弁護士に
日本の国内で事務所を設けて法律活動を許すと、そういう問題でございます。それを外国弁護士問題と申しておりますが、それにつきまして
アメリカ政府は、従前から、これは五十七年当時からでございますが、非関税障壁の一部あるいはサービス業の自由化の一部という
観点から、
日本の国内でそういう活動が
アメリカの弁護士についてできるようにという要求をしてまいっております。
それにつきまして、当時から、私どもといたしましては、
一つは、この問題は確かに経済的な側
面がある問題であることはもちろんでございますけれども、しかし、
内容そのものは弁護士制度そのもののあり方にかかわってくることでございます。御存じのように、弁護士制度は、広い
意味で申しますと国の司法制度の一環というふうに申せますし、
国民の法律生活のあり方というものと非常に深いかかわりを持っておりますので、各国ともいろいろ歴史的な背景のもとにそれぞれの制度をつくっております。したがいまじて、この問題については、やはり経済的な面があるとしても、そういう
観点から物事を処理すべきではない。端的に申しますと、司法制度の
一つの問題、司法制度のあり方の問題であるということで、
アメリカ側にそういう
観点から物事に取り組むという取り組み方についてかねて理解を求めてまいっておりまして、
アメリカ側もそういう取り組み方については十分理解をしておると思っております。
ただ、非常に
国際化の度を加えつつあります現在の
状況下において、やはり法律サービスの面につきましても、国際交流というもの、相互交流というものが重要な問題であるということはもちろんでございますので、
国際化していく
社会におけるその中での弁護士制度のあり方という
観点から、
日本としても避けて通れない問題ではないかというふうに
考えております。
それからもう
一つ、この問題は、現在の法律制度のもとで、
先生御存じのように、弁護士がすべて日弁連というものに加入しておりますけれども、その日弁連が非常に高度の自治権を持っておりまして、
政府のいかなる
意味での監督も受けない完全な自治権を持っております。そういう弁護士制度そのもののあり方にかかわる問題であります
関係からいたしますと、日弁連の自主的な検討ということを待たずして物事の
解決はできないのではないか。かたがた、これを仮に認めるといたしました場合に、認めた後のことを
考えますと、日弁連の自主的な検討ということを先行させないで認めました場合には、その後の円滑な運用というのはできにくいだろう、そういうこともございます。
そういう日弁連の自治権の問題、それから司法制度の一環という見地、そういうものからいたしまして、これはかねて
政府としては、この問題については、日弁連がまず第一次的には自主的に検討してくれることが第一であるという
観点を持って、そういう取り組み方について
アメリカ側にも
説明し、
アメリカ側もそれは理解をしてまいったところでございます。
日弁連は、この問題につきまして、
アメリカの弁護士の団体でございます
アメリカン・パー・アソシエーション、ABAと申しておりますが、それとの交渉も行い、それから外国の制度も
調査し、それから国内で日弁連内部でのいろいろな議論もいたし、結局、本年の三月十五日に、日弁連として、
先生おっしゃいましたように自主的な相互主義の原則と、それから、入ってくる外国弁護士は日弁連の自治権のもとに入るという、その二つの原則を前提として外国弁護士を受け入れるという
基本的な結論を出しました。
ただ、これも
先生御存じのように、この問題につきましては、例えば外国でのどういう資格者にどういう要件で
日本での活動を認めるか、認める場合の活動の範囲をどうするか、監督方法をどうするかというようないろいろ具体的な付随的な問題あるいは個別的な問題がございまして、その問題につきましては日弁連として、これは
政府も含めて国内のいろいろな意見あるいは外国の意見も承ることを歓迎したいと、それを聞いて、さらに日弁連としていろいろ議論を詰めて、その個別的な問題についての結論を出したいと、そういう態度を表明しております。私どもとしては、従前からの経緯の中で、日弁連が相当長い
努力の中でこういう決定をされたというその
努力を非常に高く評価すべきものというふうに
考えております。
今後、日弁連が、今申し上げましたように、具体的な
内容につきまして、国内、国外の意見も歓迎しつつさらに具体的な構想を
考えるという態度をとっておりまして、従前も、日弁連との
関係ではいろいろ緊密な連絡をし、側面的な協力をするという態勢を続けてまいりましたけれども、今後とも、この問題についてはそういう態勢をなお一層続けていきたいと、こういうふうに
考えております。