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1985-03-28 第102回国会 参議院 商工委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十年三月二十八日(木曜日)    午前十時三分開会     ─────────────    委員異動  三月二十二日     辞任         補欠選任      梶原 敬義君     佐藤 三吾君  三月二十六日     辞任         補欠選任      杉元 恒雄君     園田 清充君      佐藤 三吾君     梶原 敬義君  三月二十七日     辞任         補欠選任      園田 清充君     杉元 恒雄君  三月二十八日     辞任         補欠選任      対馬 孝且君     和田 静夫君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         降矢 敬義君     理 事                 斎藤栄三郎君                 前田 勲男君                 梶原 敬義君                 市川 正一君     委 員                 石井 一二君                 岩本 政光君                 佐藤栄佐久君                 杉元 恒雄君                 鈴木 省吾君                 松岡満寿男君                 山本 富雄君                 福間 知之君                 田代富士男君                 井上  計君                 木本平八郎君    国務大臣        通商産業大臣   村田敬次郎君        国 務 大 臣        (経済企画庁長        官)       金子 一平君    政府委員        経済企画庁調整        局長       赤羽 隆夫君        経済企画庁調査        局長       横溝 雅夫君        通商産業大臣官        房長       杉山  弘君        通商産業大臣官        房総務審議官   児玉 幸治君        通商産業大臣官        房審議官     矢橋 有彦君        通商産業省通商        政策局長     黒田  真君        通商産業省通商        政策局次長    鈴木 直道君        通商産業省産業        政策局長     福川 伸次君        通商産業省基礎        産業局長     野々内 隆君        通商産業省機械        情報産業局長   木下 博生君        通商産業省生活        産業局長     篠島 義明君        資源エネルギー        庁長官      柴田 益男君        資源エネルギー        庁石油部長    畠山  襄君        特許庁長官    志賀  学君        特許庁総務部長  小川 邦夫君        中小企業庁長官  石井 賢吾君        中小企業庁計画        部長       末木凰太郎君        中小企業庁小規        模企業部長    井上  正君    事務局側        常任委員会専門        員        野村 静二君    説明員        大蔵省関税局輸        入課長      剣持 宣揚君        厚生省生活衛生        局水道環境部環        境整備課長    加藤 三郎君        建設省住宅局住        宅政策課長    内藤  勲君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○理事補欠選任の件 ○産業貿易及び経済計画等に関する調査  (通商産業行政基本施策に関する件)  (経済計画等基本施策に関する件) ○特許法等の一部を改正する法律案内閣提出) ○中小企業倒産防止共済法の一部を改正する法律案内閣提出衆議院送付)     ─────────────
  2. 降矢敬義

    委員長降矢敬義君) ただいまから商工委員会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  本日、対馬孝且君委員辞任され、その補欠として和田静夫君が選任されました。     ─────────────
  3. 降矢敬義

    委員長降矢敬義君) 次に、理事補欠選任についてお諮りいたします。  梶原敬義君が一時委員異動されましたことに伴い理事が一名欠員となっておりますので、その補欠選任を行いたいと存じます。  理事選任につきましては、先例により、委員長の指名に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 降矢敬義

    委員長降矢敬義君) 御異議ないと認めます。  それでは、理事梶原敬義君を指名いたします。     ─────────────
  5. 降矢敬義

    委員長降矢敬義君) 次に、産業貿易及び経済計画等に関する調査を議題といたします。  前回の委員会において聴取いたしました所信に対し、これより質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  6. 梶原敬義

    梶原敬義君 先般、通産大臣並びに経済企画庁長官から所信をお聞きいたしまして、さらにこの所信につきまして何度か反復して読みましたんですが、内容は非常に結構でありますが、私は非常に根本的は幾つかやはりどうにもならない、そういう点が落ちているような気がいたしておりますから、以下質問をいたします。  最初に、経済企画庁長官にお尋ねいたしますが、五十九年度の経済見通しにつきまして、当初四・一%が途中から五・三%になり、また、もうあと三月わずかでありますが、締めましてこれまた変わるんではないかという気がしておりますが、一体どうしてこの見通しがこんなに大幅に狂うのか、この点についてどうしても納得ができません。  経済企画庁とは一体何なのか、経済見通しとは何なのか。見通しでありますから、これはやっぱりある程度確度が高くなければいけないと思うわけですが、内需外需、そういう振り分けについても随分狂っておりますから、ひとつその点についてぜひお答えをしていただきたい。なお、五十八年度も当初見込みとそれから実績がまた大幅に狂いました。一体これで信頼ができるのかどうなのか、くどいようですが、どうも納得ができないんですが、御答弁をお願いいたします。
  7. 金子一平

    国務大臣金子一平君) 梶原さんにお答え申し上げますが、五十九年度の当初見通しにおきましては、GNP実質成長率を四・一%程度と見ておりましたが、現在の実績見込みでは五・三%程度ということにしまして一・二%程度当初見通しを上回る結果となっておりますが、これは内需寄与度を、初め三・六%程度と見ておりましたのが四%程度になりましたことと同時に、外需寄与度を当初〇・五%程度と見ておりました。これが一・三%になったからでございまして、外需寄与度が当初の見通しを大きく上回りました原因は、アメリカ景気予想外拡大に伴いまして我が国の輸出が非常に大きく伸びて、経常収支最初見通しの二百三十億ドル程度を大きく上回る三百四十億程度と見込まれるに至った、これが基本的な原因だと考えていいと思うんでございます。内需寄与度が当初見通しを上回ることになりましたのは、個人消費等寄与度が低下する一方で、設備投資が順調に増加して寄与度を高めたのでございます。  国民所得統計の十月から十二月期のQEを見ますと、GNP季節調整済み前期比名目二・六%、実質二・三%と、比較的堅調な伸びを示しておりまして、これまでの実績を合わせると名目六・五%程度実質五・三%程度という五十九年度のGNP成長率実績見込みは、達成が可能であると考えております。  先生御指摘の、一体経済見通しとは何かというのは、やっぱり私どもとしては努力目標と申しますか、大体狂わないところの堅実な見通しがこの程度であって、これはぜひ実現しようという努力目標と考えておるのでございまして、何と申しましても、世界経済全体がアメリカ高金利で大きく引き回された昨年の経済状況でございますから、ある程度の当初見通し誤差ができるのはやむを得ない結果であったかと考えておる次第でございます。
  8. 梶原敬義

    梶原敬義君 先ほどちょっと聞きにくかったんですが、五十九年度の最終実績はどのくらいに落ちつきそうだということですか。
  9. 金子一平

    国務大臣金子一平君) 五十九年度の最終見通しは、現在は名目六・五%程度実質五・三%程度というふうに私どもは考えております。
  10. 梶原敬義

    梶原敬義君 これは三月十六日の日経新聞でありますが、経済企画庁が十五日発表しました昨年十―十二月期の国民所得統計速報云々というところでずっと読んでみますと、五十九年度の実質成長率は五・六%に達する見通しと、こういう記事が載っておりますが、これは間違いですか。
  11. 赤羽隆夫

    政府委員赤羽隆夫君) お答え申し上げます。  十―十二月期の国民所得統計速報が発表になりまして、その十―十二月期の実質成長が二・三%、これを一年間続くということで年率に計算をいたしますと九・六%も伸びた、こういうことを踏まえまして、五・三%以上になる可能性があるということをその記者が考えましてそのように書いたものと思っております。私どもといたしましては、五・三%という実績見込み達成が確実になったと、こういうふうに考えておる次第でございます。
  12. 梶原敬義

    梶原敬義君 もうきょう三月二十八日ですからあと三日ですね、三日ですから、五・三%ということを長官言い切りましたが、これは五・三が五・五とか五・六になることはないわけですね。
  13. 赤羽隆夫

    政府委員赤羽隆夫君) 民間の有力な調査機関あるいは有名なエコノミストの中には、六%近くまでいくとか、五・六あるいは五・七というふうに五十九年度の成長率を見る方がおるわけでございまして、そういう意味から言いますと、その可能性が皆無であるということを申せないと思います。
  14. 梶原敬義

    梶原敬義君 どうも僕は昔から経済企画庁といったらいろいろ尊敬しておったんですが、あと三日後のことが非常に高くなるかもわからぬと、あるいは五・三と、こう言い切っておるが、一体どういうことなんですかね、そこはわからぬということですか。
  15. 赤羽隆夫

    政府委員赤羽隆夫君) 三日後と仰せられますけれども経済情報把握というのにはやはり若干の時間がかかると、こういうことでございまして、この個人消費、例えばGNPのうちの六割近くを占めております個人消費に関します基礎情報であります家計調査ども、やっと先日十二月分が判明したと、こういうことでございます。私ども現にその瞬間瞬間に起こっていることをとらえるという、それだけのことというのはなかなかできないわけでございます。個人的な問題としては、このようは動いているのではないか、いやそうではない、このようは動いているはずだと、こういうことは議論できるわけでございますけれども役所立場で公的な推計ということでやるといたしますと、基礎統計というものがそろっていない限りできない。そういう点でいきますと、統計ラグと申しますか、認知のラグというのがやはり二カ月余りあるということでございまして、統計的には現在なお十二月末あるいは一月ぐらいの時点の把握しかできていないと、こういうことだと思います。  そういたしますと、その後はいわゆる感触でありますとか、いわば推測でやらなければいけない、こういうことになりますと、一人の個人的な専門家という立場でどういうふうになっているのか、そういう推測はできますが、経済企画庁という公式の見解ということになりますと、先ほど申し上げましたように、五十九年度の実績見込み達成というのは確実になった、この程度のことしか申し上げられないと、こういうことだと思います。
  16. 梶原敬義

    梶原敬義君 どうも、随分遠い先のことを見通せといったらなかなか狂うかもわからぬですが、もうここまで来てそれが見通しができないというのは、これはあなたたちが発表しております経済見通しという言葉自体がこれはもうちょっとおかしいんじゃないでしょうかね。長官が先ほど言われました、アメリカの対米貿易輸出が二百三十億ドルが三百四十億ドルに、予想以上に上がったということですが、去年の商工委員会でもたしかこれはちょっと甘いんじゃないかと、もっとふえるんじゃないかということで、随分同僚議員なんかからいろいろ議論があちこち出たと思うんですが、そういうことはわかっておらなかったわけですか。
  17. 赤羽隆夫

    政府委員赤羽隆夫君) 経常収支見通し、こういうものが当初見通しに比べまして実績がそれを大幅に上回るような事態になりましたのは、私ども予測能力、こういう点においてなお研さんの余地がある、こういうことだと思います。その当時におきましても、もう少し黒字が大きくなるという見通しがあったことも事実でございまして、それに比べまして私どもがその見通しが低過ぎたという点は、事実によってそういうことで実績がそうなってしまった、そういうことで、私どもとしてはさらに予測能力を高めるための研さんを積んでいかなければいけない、こういうふうに思っている次第でございます。
  18. 梶原敬義

    梶原敬義君 くどいようですが、やっぱり長官はしゃあしゃあと見通しが狂ったのは、これはアメリカ関係でこうなったんだということでずっと言われましたけれども、私はやっぱりそういう言い逃れというか、言いわけというのは許されることではないと思うんですね。結果がまず大きく違っておりましたと、間違っておりましたと、あついようなことを言いますが。間違った理由はこうこうこれでありますよと、こういう姿勢であれば我々としては納得ができる。しかし、いやこうこうこうなったと、それはこうこうこういう理由でこうなったという理由を先につけて結果を言うようなやり方というのは、どうも国会答弁を聞いておりましても、絶えず責任の所在を逃がれ、次へ次へとやっていくようなやり方で、どうもこの点はやっぱり基本的な姿勢として納得ができません。長官、いかがでしょうか。
  19. 金子一平

    国務大臣金子一平君) 去年は特にアメリカ高金利世界経済全体が引き回された次第でございますので、やはり予想以上の、今赤羽局長が申しましたような輸出伸びが出たことは事実であらうと思うのであります。  それからもう一つは、例えば大変予測が苦しいと、難しいと先ほど来申しております一つの例を申し上げれば、例えば昨年は久し振りに、一兆円足らずでございますが、所得税減税をやりました。その減税効果がある程度消費喚起に役立つはずだと当初見込んでおったわけですが、その効果がずっとタイムラグと申しますか、内需喚起は及ぼす影響ずれてきておる。ようやく年末からことしの年始にかけていろいろな消費の面にはっきり出てきておるというふうな状況でございまして、半年あるいはそれ以上のずれが出ておるというような現実がございますので、私は経済見通しというものはなかなかやっぱり難しいもんだなという感じがいたします。  今いろいろ御指摘ございますので、今後もそういう点は十分注意しながらやりますけれども役所側としては公の見通しを立てるという意味においてある程度堅実さを見込むやり方をとるのは、これはやむを得ない点とひとつ御理解を賜りたいと考える次第でございます。
  20. 梶原敬義

    梶原敬義君 もうこれでこの点については質問打ち切ろうかと思ったんですが、どうもそこまで言われますとね、じゃ五十八年も大幅にまた狂ってるんでしょう、五十九年もでしょう。それから減税効果の問題を言われましたけれども内需の面で減税を、当初内需見込みよりも、今先ほどおっしゃられましたが、〇・四%も伸びているじゃないですか。減税関係がおくれたから結局結果的には見通しが狂ったということにもなりませんですね。一貫性がないと思うんです、今御答弁されていることはですね。竹に木を接いだようなお話で、長官ともあろう人がそんな答弁を次々にされますが、五十八年も狂い、五十九年も大幅に狂い、こういうことですからね、率直にこれは認めて、そして原因は何なのか、そこをやっぱり素直は反省をしていただいて取り組んでいただきたいと思うんですが、いかがですか。
  21. 赤羽隆夫

    政府委員赤羽隆夫君) 五十八年度も狂った、五十九年度も狂った、毎年誤差が大きいのではないか、こういう御注意は確かにそのとおりでございまして、私どもとしてさらに努力を続けていきたい、こういうふうに考えております。  五十八年度でございますけれども、五十八年度、確かに項目別に見ますと、かなり見通し実績ずれということがございますけれども、全体として見ると、比較的よくと申しますか、かなり誤差の幅が小さかった年ではないか、こういうふうに思っております。もちろん経済見通し全体で当たればいいというものではございません。その前提条件とそれからその見通しの構成、こういったものと実績とが違っておるにもかかわらず、全体として数字がそれほど差がなかったということになりますと、それはたまたまそういう数字になった、偶然性ということになりますので、そういったようなものであっては経済見通しはいけない。経済見通しというのは、まさしく予算編成前提になりますところの見通しでございますから、そういう意味で、さらに努力を続けて精度を高めるように努力をしていきたい、こういうふうに思います。それにつきましては、国会の方におかれましても、私ども御指導御鞭撻のほどをお願いしたい、こういうふうに考えます。
  22. 梶原敬義

    梶原敬義君 それでは、ちょっと次に移りますが、六十年度の経済見通しは、長官所信にありますのは、「政府の諸施策民間経済活力とが相まって、実質で四・六%程度成長云々と、こうなっておりますが、これは大体もう長官狂わないですね。
  23. 金子一平

    国務大臣金子一平君) アメリカ経済成長率が最近スローダウンしてまいりまして、輸出伸びがこれまでに比べますと非常に緩やかになってまいっておりまするので、成長率は対する外需寄与度というものが低下せざるを得ない。単にアメリカに対する輸出だけではございませんで、ECや中東の産油国に対する輸出も緩やかな伸びになっておるような状況でございます。  設備投資輸出伸びの鈍化に伴いましてある程度影響を受けておりまするけれども内需中心ハイテク関連投資が引き続いて活発に行われておりまするし、それから卸、小売などのサービス関連業種にも動意が見られておりまするようなことで、まあ堅調に推移すると考えておる次第でございます。個人消費も物価が安定しておるもとで所得が順調に増加いたしますのと、消費マインドに明るさが見えてまいりましたので、今年度よりその伸びが高まるものと私どもは期待しておる次第でございます。  この結果、内需は全体として順調は増加するんじゃなかろうかと考えておるような次第でございまして、現在の実績を踏まえて、六十年度の実質成長率は四・六%程度、このうち内需寄与度が四・一%程度外需寄与度は〇・五%程度になるものと、私どもはただいま見込んでおる次第でございます。
  24. 梶原敬義

    梶原敬義君 次は、今内需お話が出ましたが、長官所信で述べられております「国内民間需要中心とした景気持続的拡大を図るとともに、雇用の安定を確保することであります。」ということで、「持続的拡大を図る」と。図るということを強調をされておりますが、どうもその中身は、具体的にそれが内需喚起は結びつくような政策になっているのか、どうも中身はぴんとこないんでありますが、一体何を具体的に考えておるのか、やろうとしておるのか、少しそこら辺をお願いをいたします。
  25. 金子一平

    国務大臣金子一平君) 梶原さんの御指摘の点、これは一番大事な問題だろうと思うんでございます、政策的確。私ども財政的な余裕がございましたならば、思い切って財政政策をしっかり活用すると、また金融政策も機に応じて敏速な発動をするというようなことで、財政金融政策を思い切って発動することはよって景気の刺激をやり、あるいは伸び過ぎた景気を抑えるというような手を使えるかと思うんでございますが、御承知のような財政状況でございますものですから、例えば公共事業費をうんと増額するというような簡単なわけにまいりませんし、また思い切った所得税減税その他の減税をやれるような状況にもことしまいっておりません。  ただ、幸いと一般公共事業事業量はここ数年減少ぎみでございましたけれども、ことしはいろんな工夫をこらしていただきまして、三・七%程度五十九年度に比べて伸ばすことに成功できたし、それから一般的な減税は行いませんでしたけれどもハイテク中心技術関係投資減税あるいは中小企業中心とした投資減税を、昨年実行しております投資減税にあわせて実行するようなことにいたしましたので、これは今御審議をいただいているわけでございますが、ある程度やっぱり景気回復の呼び水的な役割を果たしてくれることを期待しておる次第でございます。金額はそう大きな金額ではございませんけれども中小企業等はとりましてはある程度のプラスになろうかと考えておる次第でございます。  金融面では、今すぐはとにかく、ある程度金融緩和状況でございますので、すぐ打つ手はございませんけれども、必要に応じて私どもは今後もとういった面を考えることが政治としては大事なことではなかろうかと思っております。  ただ、やはり経済中心になるのは民間活力でございますから、やはり基本的には民間活力をうんと伸ばすことを考えていかなきゃなりません。それには、御承知のとおり、認許可事務が大変たくさんございまして、民間活動を縛っております。あるいはまた、法律的な行政的な規制がもろもろの仕事にかぶさっておるような状況でございますので、これは大変手間のかかる仕事でございまして、一遍に、一斉にどうこうというわけにはまいりませんけれども、着実にこれを一つずつほぐして、もう少し民間経済活動伸び伸びとできるような環境づくりをしっかりやることが基本的には大事なことではなかろうかと考えておるのでございまして、今政府を挙げてそういう方面仕事をやっておる、手をつけておる最中でございます。  同時にまた、行政改革財政再建を今やっておりますけれども高度成長時代につきましたぜい肉落としを中央、地方を通じてやって、ある程度民間でできる部分は民間に移譲するようなことによって民間活力をひとつうんと伸ばしていったらどうだと。例えば財政につきましても、今取り上げられておりますのは所得税法人税等減税の問題ですが、そういうことによって、これはことしできませんけれども、できれば来年という気持ちは私ども持っておるわけでございますが、そういう方面の手を講ずることによって持続的な経済活性化を図っていくということが基本的に大事で、急がば回れになりまするけれども、今はそういうようなことをいろいろ各省を挙げてやっておるということを申し上げておきたいと思うのでございます。
  26. 梶原敬義

    梶原敬義君 今、少し全般的にアメリカ景気に引っ張られて日本の景気がよくなった、特に輸出関連中心にしていいということを言われておりますが、私も地元に帰りまして、いろいろ中小企業経営者の皆さんや、そこで働いている人や、あるいはいろんな業界の人と話をするんですが、これは地域的な要因も相当あると思うんですが、大変厳しいということを訴えられるわけです。  倒産件数あたりを見ますと、東京商工リサーチの数字によりますと、暦年でいきますと昭和五十九年は二万八百四十一件で、負債総額は約三兆六千四百四十億、これは最悪の数字になっておるわけです。また、雇用情勢も非常に厳しいし、特に中高年齢者の再就職なんかなかなかない。まあ、あったとしても、もう賃金が半分ぐらい田舎ではやっぱり下げられる、こういうような状況にあるわけでして、この点につきまして、通産大臣あるいは経済企画庁長官の認識が一致するのか、異なるのか、ひとつお考えをお伺いをしたいと思います。
  27. 金子一平

    国務大臣金子一平君) 梶原さん御指摘のとおり、昨年の倒産件数なり負債金額は相当従来に比べると大きくなっておりますが、やっと昨年の暮れからことしに入りまして、この一、二月の状況を見ますと大幅に下がりかかってきておりますのは私ども大変心強く思っておる次第でございますが、御指摘のとおり、地域によりましてあるいは業種の偏りによって相当まだ全国的に見ますと景気のばらつきがございますので、このまだら模様を景気全体の回復の過程において何とか一日も早く吸収したいなあというのが私どもの率直な気持ちでございます。お話のとおりの倒産件数なり負債総額、これは景気調整の過程においてこういう状況になったことを大変残念に思っておる次第でございます。
  28. 村田敬次郎

    国務大臣村田敬次郎君) 梶原委員にお答え申し上げたいと存じます。  中小企業の倒産の問題で、昨年の件数、額等について御指摘がございました。まさにそのとおりでございまして、景気が一方では上昇しつつあるのに中小企業の倒産は多い、これは非常に憂慮すべきことである、こういうふうに思っておったわけでございますが、一月、二月の倒産については少なくなっておる。六十年二月の倒産件数が千四百十九件でございまして、これは先月、一月に比べまして四・二%減じております。それから、昨年の二月に比べますと、一三・四%減じておるわけでございます。  それから、負債総額は二千二十五億円で、昨年の一月に比べれば五%減、二月に比べれば四六%減という非常に大幅に負債総額、倒産件数も減っておるということで、明るさが出てきたのではないか、これが今後引き続いて好調に推移をしていくことを心から願っておるわけでございます。  いずれにいたしましても中小企業の倒産の問題は大変深刻でございまして、その内容を調べてみますと、またいろいろと御質問があろうかと思いますが、いろいろな要因がある。したがって、今後は新しい時代に対応し得なくなった中小企業の倒産が多いのではないかというデータがいろいろ出ておりますので、ひとつ中小企業の技術力を向上いたしましたり、情報化への対応をいたしましたり、人材養成の強化をいたしましたり、また金融、倒産防止対策等々諸般の施策を講じて対応してまいりたい、このような認識に立って努力をいたしております。
  29. 梶原敬義

    梶原敬義君 通産大臣が一月、二月の例を出されましたが、三月はちょっと厳しいんではないでしょうかね。ですから、季節的なこともあるんではないかと思っておりますが。  いずれにいたしましても、私も帰って、ある小さな信用金庫の理事長さんと話をしておりましたら、どうにもならないと、取引先が利益も出さぬし、金を使って設備やれったって、これやったってうまくいかないし、どうにもならないと。しかし、政府はようなった、ようなったということをよう言うがなという話をしましたら、一体中曽根総理大臣やなんか外国へどんどん飛んで行ったり派手なことをよくやりますが、ああいうところもいいけれども、実際にこういう本当に厳しい実態というのを見てほしいと、それは相当な人がそう言っているんですよね。ですから、中曽根総理大臣になりまして、行革はいいけれども、本当に厳しい瀬戸際に立たされた人がたくさんいるということをやっぱり私は忘れてもらったら困ると思うんです。  それから通産大臣にお尋ねしますけれども、情報化社会や新しい時代についていけない中小企業が倒産をするんではないか、だから人材の育成なりいろいろやると、こういうことのようですが、東京商工リサーチが出している資料を見ますと、倒産原因が一体どうなっているのかということを見ますと、不況型倒産、これがずっと最近ふえておりまして、五十九年に入りますと六三%、高いところで六三・四%から六一%ぐらいのところに上がっておるんですよね。それに連鎖倒産が一〇%から一二%ぐらいありますからね。  実際に言われておりますような、だれでもそういう言い方をよくするんですが、どうも何か情報化社会についていけぬところがつぶれるような言い方をしておりますが、約六百万ぐらいの中小零細企業で、そこの大半はそう情報化社会に関係するような仕事ではないんですよ。だから、ごく一部をつかんで全体を推しはかって言われるような、そういうところから政策をやっていくとすればやっぱりどこか手落ちが出てくる。どうしてもかゆいところに手が届かない。ここのところをぜひ私は訴えたいと思いますし、大臣、もしその点についてお考えがあればお聞きをしたいと思います。
  30. 村田敬次郎

    国務大臣村田敬次郎君) 梶原委員の御指摘は非常に適切な点をお突きになっておられると私も思います。詳細につきましては中小企業庁長官からお答えをいたしますが、業種別の倒産件数を見てみますと、建設業が六千三百五十五件で三〇・五%、これ五十九年度です、製造業が三千九百九十二件で一九・二%、商業が七千二百八十五件で三五%、サービス業等が三千二百九件で一五・四%、これを全部合わせますと、梶原委員が先ほど御指摘になりました二万八百四十一件という数字になるんでございますが、その企業倒産をいろいろ調べてみますると、私が先ほど申し上げましたのは、一年、二年の非常に経験の浅い中小企業が倒れるという件数も多くございますが、十年ぐらいの経験を経た企業が倒産をしている件数が意外に多い。これは先ほど申し上げましたいわゆる技術革新であるとか、情報化社会であるとか、そういう時代の非常に激しい勢いで進んでいく方向になかなか適応できなかった中小企業も多かったのではないか、そういう意味で御指摘を申し上げさしていただいたわけでございますが、なお詳細につきましては中小企業庁長官の方から申し上げさせていただきます。
  31. 石井賢吾

    政府委員石井賢吾君) 補足いたしますが、御指摘の六〇%程度が不況型原因といいますか、そういう分類に基づく原因に基づきまして倒産しているんではないかという御指摘数字的にはそのとおりかと思います。私ども、それぞれ民間信用調査機関につきましてその倒産原因の詳細を各月ごとにチェックをいたしております。  ただ、ここにございますように、不況型倒産の中の一番大きな要因は、景気変動による販売不振ということになるわけでございますが、この中には相当程度市場構造の変化といいましょうか、市場の成熟化に伴いまして市場構造が変わってきた、そういうものも相当程度含まれているという認識が両調査機関で述べられておるわけでございます。これは御承知のように消費ニーズといいますか、これが非常に多様化いたしまして、かつてのような量販大量消費という時代から大きく多様化しておるわけでございまして、そういった市場への変化へ的確に対応できなかったという意味合いが相当程度入ってきているんではないか、そういう意味におきまして、単純な景気循環的要因というだけでなしに、構造的な要因をあわせてこの中に読み取らなくちゃいかぬのではないか。  したがいまして対応策といたしましては、当面、先ほど大臣から申し上げました倒産対策、これは今回お願い申し上げております連鎖倒産防止のための倒産防止共済法の改正等、こういった一連の措置の強化はもちろんでございますけれども、やはり構造的な対策というのがどうしてもあわせ伴わないと本当の意味の対応策にならないんではないかということでございます。
  32. 梶原敬義

    梶原敬義君 おっしゃられることはわかるんですが、建設業の関係、確かに非常に厳しいんです。厳しいけれども、やはりそのどこが厳しいかといいますと、大手より小さい中小の建設業が厳しいんです。それで、下請、孫請、その下ぐらいが、もう状況が厳しいものですから、ぐいぐい絞られてきておるんです。ここのところがやはり一つ大きな問題がある。  それから、市場構造の変化についていけないんじゃないかということ。これもやはり国民の消費力なんかも決まっているものですから、やはりデパートなんかも、正月も普通は三日まで休んでおったのを、それがもう二日から営業を始めるとか。要するにやはり力の強いところが売り上げを落とさない、あるいは利益計画を達成するために非常に強引にやるから、結局中小分野にどんどんどんどんこういうときには食い込んでくるわけです。だから、そういう点からしますと、もう中小の経営者なんというのはだんだんだんだんそうなるから、今従業員が三人おったら二人にする、二人を一人にする、それでじっと入っていくような形、小売業なんかは。そういう傾向に出ている。これが大勢じゃないでしょうか。しかしその中にも目先のきいたのがおって、うまくいっているのもおりますけれども、これは数からいきますと少ないんですね。だからやっぱり多いところをよく見て、それから対応するようなことが必要ではないかと思うんです。  先ほど経済企画庁長官は、内需喚起に当たりまして、高成長時代に膨らんだぜい肉を切り落として民間活力云々というような表現をされましたけれども、どういうことを言われるかよくわかりませんが、例えば、地方自治体あたりで、一生懸命学校給食とかあるいは清掃で、自治体の職員で頑張ってやってきた。これを称してぜい肉と言うのかどうなのか。どうも表現が不穏当ですが、ちょっと先にそれを聞かしてください。
  33. 金子一平

    国務大臣金子一平君) 今御指摘のような問題もございましょうし、それから例えば国公有地を民間に払い下げるような問題もございましょうし、今、例えば都市開発について規制を緩めて、もっと民間に関与してもらって大々的に都市再開発をやれるようにしようとか、あるいは今一番大事なことは、やはり関連企業が多うございますから、住宅促進をうんと進めることが大事であろうと思うのでございます。  そういう面で建設省を中心にいろいろ御努力なすっておられるのでありまするけれども、例えば一番問題になっているのは土地でございますが、土地の規制が非常に厄介なことになっております。調整地域だとか、市街化区域だとかあるいはまた農振地域だとか、建設省、農水省、自治省でそれぞれ規制の網をかぶせておりまするけれども、今建設省が中心になって土地規制の緩和等も大いにやって、うんと住宅が簡単に建てられるような方途を講じておることは御存じのとおりでございますが、そういった、一つだけでこれはという決め手は正直言ってございませんので、あらゆる面を通じてしっかりと民間経済伸びるように持っていきたいというふうに私どもは考えておる次第でございます。
  34. 梶原敬義

    梶原敬義君 ちょっと私気になるんですが、少し中身に入る前に、やっぱりぜい肉という表現は、一生懸命仕事をしてきた人を民間にこうやる。そうすることがぜい肉をとる。ぜい肉というのは、豚の肉を、余分についたのをぜい肉と言うんで、人間の一生懸命やってきた――大臣も、そこで働いている人も、みんな一緒なんですよ、まじめに、言われたことを一生懸命使命を持ってやっているんですから。それもそうでしょうという御答弁で頭の中にやっぱりそういうことをお考えでしょうが、これは、ぜい肉なんというのは、国会でぜい肉扱いにされたら、一生懸命やっている者はたまりませんよ。それは多い多いと言っている、これはぜい肉だと、こう言う。だから、その部分だけはやっぱりちょっと考え方変えてくれませんか。
  35. 金子一平

    国務大臣金子一平君) 適切な表現でなかったかもしれませんので、要するに膨らみ過ぎた仕事を合理的な程度にして、民間にそれを譲り渡すというようなことを真剣は考えなきゃいかぬ時期に今きているんじゃなかろうか、こういう意味と御理解いただきたいと思います。
  36. 梶原敬義

    梶原敬義君 それでは、先ほど経済企画庁長官から内需拡大を具体的に図るということで、幾つかのことをずっと出されたんですが、どうも公共事業の点とハイテク関係所得税減税、それから中小企業対策に若干の施策と、こういうことでやろうと、こういうことであります。今問題になっているのは日米貿易摩擦でありますし、これはやっぱり解決する手段としては、抜本的には日本のもっと内需拡大して、全般に消費伸びて輸入もふえる、こういうことだろうと思うんですけれども、これは一つ大きな課題であります。  もう一つは、先ほどからずっと言っておりますように、中小企業に働いているそこの従業員というのはなかなか所得伸びないし、非常に輸出関連影響をこうむっているというのは、わずか全体で一四、五%、こう言われておりますが、それ以外の大多数の中小零細というのは非常に厳しいわけであります。また、産業によっては全く厳しい産業もありますが、そこの経営者も非常に厳しい、必死になって今、本当に労働時間なんかないですよ、田舎に行きまして中小企業なんかは。頑張っておるんですが、これは両大臣も選挙区へ帰ればよく聞くでしょう。大臣になると偉くなっておりますから、余りそういうことは聞かぬのかもしれませんが、本当にそういう気なら僕はわかると思うんですが、そういう状況なんです。私は帰って、それを目で見て、しかも話をすればどうかならぬかと、これは余り長いものですから、訴えられております。  昨年の商工委員会で河本経済企画庁長官は、この辺に対する答弁で非常に前向きな発言をされております。中小企業対策というのは、そういう面は、「中小企業庁長官が来ておられますから、具体的な対策については長官からお述べになると思いますが、私はかねがね中小企業政策の根本とは何ぞやということを考えてみるんですけれども、やはりこれは景気を思い切ってよくして、中小企業仕事がうんとふえる。そして仕事を、もう赤字でも何でもしようがなし佐やるということではなくして、選別して実施をするような仕事の量が中小企業にも確保できるということが私はもう九五%まで中小企業対策ではなかろうかと。」、こう答えておられるんですね。これは、私の質問に対して答えていただいたんですが、私は賛成なんですがね、これは長官、異論がおありでしょうか。
  37. 金子一平

    国務大臣金子一平君) 今、梶原さんからお話のございました河本前大臣のその御指摘、まさに基本的にはそのとおりだと思うんでございまして、全体の景気をうんと回復することによって中小企業活性化を取り戻す、またなかなか恩典に浴せないような面については、きょう、先ほど来通産大臣からいろいろとございましたような施策を施していくことが大切なことであろうかと考えておる次第でございまして、私も、中小企業関係につきましては、やはり身につまされた思いを自分のところへ帰るといつもしておるわけでございまして、やはり第一次産業だけの地域ですとなかなか地域の活性化が取り戻せませんので、いろいろ気を使っておるわけでございますが、幸いと輸出貿易に関連のないハイテク産業等が各地にどんどん進出してくれまして、部分的ではございますが、設備投資をやり雇用をふやしていく、あるいは工業団地を用意している地域にどんどん工場が進出してくれるような傾向が今新しく見えてきております。  そういうところを拠点にして、漸次景気の回復のてこにしていきたいなという気持ちで、私の方から通産大臣中小企業庁長官にもお願いしながら一緒にやっておるというのが現実の姿でございまして、やはり日本の経済を支えている大きな柱は中小企業でございますから、これは梶原さんのおっしゃるとおり、ここでうんと元気を出してもらえるような方策をこれからもしっかり続けていきたいと考えておる次第でございます。
  38. 梶原敬義

    梶原敬義君 僕は、これはぜひ閣僚会議で、中曽根総理大臣にもっと積極的に両大日が物を言っていただきたいと思います。  中曽根総理大臣が財政を改革するために行政改革をやるということで、彼が行管庁長官になったのが五十五年七月で、五十七年の十一月に総理大臣になっておるんですが、五十五年の七月といいますと、国債の残高が七十兆五千億なんです。今、百三十三兆なんです。中曽根さんがそう言って、確かに努力はされておりますが、最近、努力のされ方も、補助金を一律カットで地方に押しつけてみたり、結局、目先を変えているようなやり方を幾つかやっておりますが、実際にどうにもならないような形で百三十三兆円に膨大に膨らんでいる。彼のやっているやり方というのは、国民には何かやっているような気はいたしますけれども、百三十三兆円、倍ぐらいに膨れ上がっているんですね。だから、これはだれがやってもそうかもわかりませんが、彼がやったからよくなったというより、むしろ悪くなっているんじゃないでしょうか。  だから、そういう意味では、もっと手を打つところは打つ、金を入れるところは入れる、国民の一番困っているところを、そこをどうするか、こういう施策というものを、私はやっぱり思い切って両大臣が閣僚会議やなんかで強く言って、流れを変えていただきたいと思うんですが、ちょっとそこら辺を両大臣から。
  39. 村田敬次郎

    国務大臣村田敬次郎君) 先ほど来、金子経済企画庁長官からいろいろ詳細なお話をしてくださったわけでございます。今、梶原委員の御指摘、私は中曽根総理からどういう指示をいただいておるかということを具体的に申し上げたいと思います。  十一月一日に私は通産大臣に就任をいたしたのでありますが、その日に中曽根総理に官邸に呼ばれまして指示された項目が三つありました。  その第一は、今非常に話題になっています新しいラウンドをひとつぜひ推進をしてほしい。もう一つは、太平洋協力を推進をしてほしい。そして第三点、これがまさに梶原委員の御指摘の問題でございますが、貿易摩擦が非常に激しいので、このためには内需をひとつ拡大をして、いろいろな問題について日本国内で起きてくるそういう活力によって対応をしていくべきだと思う、ひとつぜひ内需拡大についての施策を講ぜよということでありました。  そしてそれについては、私は先ほど来梶原委員の御発言を承っておりまして、大変いい例だと思いましたので申し上げますが、例えば建設業であります。私は公共事業に関連をする仕事をずっとやっておりました関係がございまして、建設業、特に中小企業と大企業の関連については非常に関心を持っておるのでございます。御指摘のように、例えば官公需発注などを見てみますると大企業向けの発注が多い、中小企業向けの発注が少ない、だから梶原委員が御指摘になるように、もっと中小企業に対する発注を拡大をしたら全体がよくなるんではないか、本当に苦しんでおる中小企業が救えるんではないかという点が挙げられるわけでございますが、例えば政府では、官公需について中小企業者に対する受注機会をできるだけ増大するようにという指示を総理からいただいておるわけでございます。  昭和五十九年度の国等の契約の方針においても、中小企業向けの契約目標を三兆七千億円、それから比率で三七・四%ということを決めまして、そしてそれをずんずんと推進をしておる。これも恐らく梶原委員のお気づきの点では三七%というのは少な過ぎるじゃないか、それをもっと四・〇、五〇と拡大できないのかという御指摘が必ずあると思うんでございますが、これは私は現実に、かつて県において水道部長であるとか建築部長であるとか、発注の仕事を担当しておりますからよくわかるのでございますが、大規模な工事だとか、高性能技術などを要する物品などがございまして、どうしても中小企業に発注しにくいものがございます。そういったものも含まれておるために発注比率が連年努力するにもかかわらず三七・四%ということになっておりますが、これは長いタームで見ると昭和四十一年が二五・九%でありまして、一一・五%も拡大をしております。  中曽根内閣はこの点も非常に努力をいたしておりますし、また中小企業の倒産問題などにつきましても、それはひとつ四本柱を立ててやっていくべきである。金融、信用保証、共済貸し付け、相談・指導といったような四本柱を中小企業庁長官中心になって推進をしておりまして、梶原先生の先ほど来言われております点はでき得る限りの努力をしているわけでございます。中小企業発注にいたしましても、現実にはランクの問題でいろいろ考えるとか、あるいは大企業が中小企業に対して下請代金を早く払うとか、契約を適正化するとか、それからまたジョイントベンチャーで地方企業を参画させるとか、いろいろな工夫を凝らしておるのでございまして、これは中曽根総理の内需拡大という私に対する御指示に従っていろいろと関係閣僚相寄って相談をしている点でございまして、一生懸命中曽根内閣は努力をしておるという点を御理解いただきたいと思います。
  40. 金子一平

    国務大臣金子一平君) 今、公債の残額と申しますか、発行額が五十五年以来急速にふえておるぞという御指摘ございました。これはまさにおっしゃるとおりでございまして、昭和五十五年に比べますと六十年が倍近くなっておるような状況でございますが、これ御承知のとおり、第二次石油ショックの後の世界的な不況の波を受けて、日本経済が非常な苦労をしたその結果で国債が今日このような状況になりまして、国債を十兆発行しても、九兆は元利払いに充てなきゃいかぬというようなところに追い込まれておるわけですが、私どもといたしましては、一日も早く景気の回復を急ぎまして、何とか自然増収でもどんどんふやすということによって民間活力を回復させるように持っていきたいと考えておるような次第でございまして、ちょうど第一次の石油ショックの福田内閣の後、大変やっぱり日本経済は悪くて、その当時初めて赤字国債の発行をやったわけでございます。  前に私が大蔵大臣をやりましたときは五十四年でございますか、五十四年の歳入を、五月分まで五十三年で食ってしまって、財源が全然なかったものですから、そのとき思い切った手段として公共事業費を二割もふやしたことがあるんです、前年に対して。そのせいもあって五十四、五は比較的景気もよくなったのでございますが、そのまま急速に世界景気の波の中に落ち込んだという状況でございまして、経済はやっぱり生き物ですから、ときどき刺激ができれば何とか刺激をすることが必要だと思うんでございまして、そういう気持ちを持ってこれからも経済全体に当たり、特に中小企業の皆さんにも御安心いただけるような方向に一日も早く持っていきたい、これからも努力したいと考えておることを申し上げておきます。
  41. 梶原敬義

    梶原敬義君 一生懸命福祉や何かを抑えて、ずっと予算を抑えていったけれど、どうしてこんなにふえるかというのは、やっぱり思ったより税収が伸び悩んでおる、そういう面もあるんではないでしょうか。    〔委員長退席、理事前田勲男君着席〕  特に、私は去年の商工委員会でもちょっと数字を出して質問したんですが、大企業と中小企業を分けまして法人税の上がる割合を調べてみたんですが、昭和四十八年に大企業と中小企業の割合は、中小企業が四八・数%でありました、法人税の比率が、大企業と中小企業分けまして。それが五十六年度にいきますと三七・九、これは国税庁から出していただいたんですけれども、もっと最近は落ちているんではないかという気がしております。  中小企業で働いているのはもう国の大多数だと、こう皆さん言われますが、従業員も圧倒的にそこが多いわけですから、ここは源泉所得もそういう形で伸び悩んでおりますし、同時は中小企業で働いている人や家族の皆さんが負担しております間接税もやっぱり落ち込んでいますから、ここのところはよくするような手当てを考えないと、いつまでたっても日本の財政はよくならないんじゃないでしょうか、締めるだけ締めてみても。要望を申し上げておきます。  それから個人消費を高める方法としては、内需拡大するためには個人消費が高まるのが一番いいと思いますが、そのためには大幅な所得のアップ、賃上げとかあるいは大幅な減税減税については今暗いお話がありました。またベースアップについても、一部脚光を浴びている企業につきましてはある程度明るい見通しがあると思うんですが、多くは今こういう状況ですからなかなか暗い状況、そうすると両方ともやっぱり暗い。消費マインドが明るいとかなんとかさっきこう言われておりましたが、簡単にはいかないんじゃないでしょうか。  そこで、私はそういう状況の中で、先ほど大臣が言われました、経済は生き物で、刺激ができれば何か刺激をしてやるといいということですので、私はやっぱり住宅政策を少し議論をしてみたいと思います。  最近の新聞にもよく住宅問題のことでローンの問題が載っております。三月二十日の日経では、「住宅ローン返済ズシリ 可処分所得の一四・三%」、これは総務庁の統計局の出した内容です。同じ日に朝日新聞も「”家”の重みズシリ」、こういうそれぞれタイトルをつけているんですが、「ローン返済家庭、三割超す」と、こういう状況、内容は省略しますが、載りましたですね。これは両方とも三月二十日ですが、その後に諸売の夕刊に載りました「よみうり寸評」によりますと、「東京神田小川町の公団賃貸住宅は戸数も多くなかったが三百倍の競争率だった」、こういうのが載っているんですね。びっくりしましてね。これは宝くじを引くより厳しいような数字になっております。    〔理事前田勲男君退席、委員長着席〕  こういう状況でありまして、いろいろ読んでみますと、国民の非常に多くの人は賃貸住宅におったり、あるいはその中におっても、あるいは持ち家の中に住んでおっても、さらにその住宅に対する、狭いとかあるいは間仕切りが悪いとか、いろいろな不満が出ているようなのを何かで読みましたが、非常に国民のニーズは、やはり同じ短い人生ですから、できれば無理をしないでいい住宅に住めるということが希望でしょう。諸外国に比べましても日本はGNP世界第二番と、こう言っておりますけれども、やっぱり住宅問題というのは非常に厳しい状況になっておると思います。  建設省お見えですかね。こういう状況で、私はちょっと調べておりましたら、住宅金融公庫の六十年度事業計画を見ますと、計画戸数が昭和五十七年五百四十、五十八年五百十、五十九年五百、六十年四百九十、実績はそれぞれありますが、省略いたします。こうなっております、減っております。  それから、住宅金融公庫に対する補給金の推移なんですが、これも昭和五十五年までは住宅金融公庫が資金運用部から借りた金利と、それから貸し出した金利との差だと思うんですが、五十五年は大体とんとんに来ておりますが、五十六年からはずっと赤字になっておるわけです。その赤字を今度はまた借りてきてやっておるようです。そして、昭和六十年度の予算では、補給金の政府の措置額が三千四百十三億、そして繰り延べ額が一千三十四億、こうなっております。  これは建設省、間違いないでしょうね、この数字は。こういう形で、何か住宅問題についてはどんどんどんどん、それは先ほども何か住宅云々と、こういうことを言われましたけれども、それに反して厳しいような状況になっております。やっぱり住宅金融公庫がその気はなって火をつけないとこれはなかなかそう簡単にいかないと思うんですが、いかがでしょうか。さっき言いました数字について建設省から、間違いないか、お伺いします。
  42. 内藤勲

    説明員(内藤勲君) 先生の申されました数字は、ほとんど間違いないんですが、金融公庫の戸数が、五百万、四百九十万と言われましたけれども、五十万、四十九万という違いはございますが、あと数字は正確でございます。
  43. 村田敬次郎

    国務大臣村田敬次郎君) 通産省でも実は建設資材その他をいたしております。また私は、従来党の住宅建設の委員長代行をやっておりました関係で、全般のことをいささか承知をしておると思いますので、お答えをさせていただきたいと思います。  先ほど来委員の御指摘にございました内需拡大、まさにこれは根本論でありますが、その中で、公共事業の事業費の増大、それから民間設備投資拡大、そして住宅建設というのは非常に大きな内需拡大の要因であるということが従来指摘をされておるわけでございます。なぜなら、住宅産業は非常にすそ野が広いし、広がりが大きいわけでございますが、その意味で、委員が御心配になっておられます、最近住宅がスローダウンしているんじゃないかという御指摘でありますが、確かに五十五年、五十六年、五十七年、五十八年というのはスローダウンでありまして、百十万戸内外ということであったわけでございますが、どうも、五十八年の後半から五十九年にかけて非常に見通しが明るくなってきた、住宅戸数がだんだんふえてきたということが指摘をされておりまして、計数的にもこれを納得させる数字が出ておるわけでございます。  したがって、建設省でも、住宅局長以下のスタッフが懸命にこの住宅戸数の拡大、そしてまた量より質であるということで、住宅建設についていろいろと努力をしておるわけでございまして、内需の方向の問題について非常に政府関係各省が努力をしておる、そしてその実績が五十九年あたりから上がりつつあると。それは、アメリカの住宅建設はすごい勢いでふえてまいりましたから、それに比べれば日本の方が立ちおくれておりますが、日本の人口に比べれば、この百十数万戸ないし百二十万戸という新規建築戸数、改築戸数は決して少なくないんでございまして、委員指摘内需拡大についても相当な役割を果たしつつある、これからもっと果たしてもらわなきゃならぬ、こういうことであらうかと認識をしております。
  44. 梶原敬義

    梶原敬義君 通産大臣は、建設大臣になってやったらいいんじゃないかと思うんですが。  それはそれといたしまして、そうは言われますけれども、新日鉄が予測をいたしました「住宅需要を推計」云々というのが、これはことしの三月十四日の日経に出ておりまして、建てかえ需要がこれからあると、こういうことで、もっとあるんだと、百三十万あるいは百六十万ぐらいずっと続くんではないかと、こういうことを指摘をしております。  それから、私も田舎の古い町を歩いてみますと、やはり建てかえの時期に来ている家がたくさんあるわけですね。あるいは高度成長の前後に建てて、ちょっともう狭くなったので建て増したいという希望も随分あるんですが、どうも最近の傾向は、最近というか、高度成長以降ですが、建てたけれども、なかなかローンが払えない、それで売るとか、あるいは財政が厳しいので、家はつくったが、夫婦げんかの対象になるとか、あるいはそれが原因で自殺者が出るとか、そんな話を幾つかずっと聞いておりまして、もう少しこの支払いを延期をするとか、場合によりますと、失業中には何かその間は一時見合わせてやるとか、あるいは取得して何年間は当面金利だけ負担をすればいいとか、何かそういう幾つかの手を打てないものかと。通産大臣、建設大臣のような気持ちでぜひ考えていただきたい。そこら辺がやっぱり一つは問題がある。  しかし、それより前に、今おっしゃられましたね、通産大臣もいやよくなったよくなったと、こう言われておりますが、住宅金融公庫のある人をこういう関係で呼んで私は事情を聞いたんですが、とにかくこういう状況ですから、政府が金を全部措置をしてくれぬから、足らぬ分は借りかえていっておりますから、もうどうにもならぬから、余り新しい事業はしたくないと、非常に閉じ込もって、もう何にもしないと、こういう状況を率直に、これはだれと言うと悪いですから……、語ってくれましたよ。そういう状況というのは建設省の方も大体認識は一致していますか、住宅金融公庫の状況について。
  45. 内藤勲

    説明員(内藤勲君) 住宅金融公庫につきましては、我が国の住宅政策の基本的な柱だと考えておりまして、現在、六十年度予算では四十九万戸ということでございますが、無抽選体制というものを維持して、国民が借りやすい状況にしているわけでございます。  ただ、御指摘のように、財政的な繰り延べ措置を講ぜざるを得ない、今そういう状況がございまして、必要な補給金が財政的には確保できないという状況で繰り延べという措置を講じているわけですが、ただ資金的には無抽選体制を維持できるような公庫の資金力は確保する、そういうことにしておりまして、国民の需要にはこたえていきたいと、そういうことでございます。
  46. 梶原敬義

    梶原敬義君 経済企画庁というのはどういう仕事をするのか、私もさっきから話を聞いていてちょっとわからなくなったんですが、経済企画庁長官、ですから国の全体の経済の調整を図り、計画を達成するということであれば、やっぱりこういう住宅金融公庫で繰り延べを一千億もやらにゃならぬような状況に追い込んでいるというのは、これはちょっとおかしいと思うんですが、それはおかしいじゃないか、こんなものはやりなさいと。家は確かに国も財政が厳しいときに負担になるかもしれませんが、住宅というのはやっぱり資産になります。個人の資産になるか、あるいは公共住宅が国の資産にもなっておりますから、先でやるよりは今やれば安いんですから、これは物の考え方はやっぱり違うと思うんですよ。だから、そういう繰り延べ額がもう一千億にもなっておって、住宅金融公庫はもう何もしたくないような状況になっておるんですが、金子経済企画庁長官、いやこういう状況についてはひとつおれは頑張ると、こういう御決意をお聞かせください。
  47. 金子一平

    国務大臣金子一平君) 梶原さんのおっしゃることももっともでございまして、総合調整官庁といたしまして、特に経済の発展、活性化のために住宅政策につきましてもいろいろ発言をしておる次第でございますが、個々の小さな家自体はもう既にある程度充足しておるのかもしれませんけれども、量よりも今質の時代になっておりますから、これは先生御指摘のとおりでございます。  例えば公団の住宅にいたしましても、二間をぶっ通して一軒で使えるようにするとか、建てかえをどんどん進めるとかいうようなことによって、すそ野の広い建築業界の活性化を図っていけば日本経済の大きな力はなるわけでございますので、そういう意味において今までも努力してきたんですが、ことしは本当に、御承知のとおり大変厳しい財政事情でございまして、やむを得ず建設省も公団住宅につきましてこの程度に落ちつかれたわけでございますが、今後とも私どもは、住宅は大事な産業の柱として大いに推進してまいりたいと考えておることを申し上げたいと思います。
  48. 梶原敬義

    梶原敬義君 後段の御答弁につきましては理解できますが、前段の個々についてはもう心配ないんじゃないか、充足しているんじゃないかと言いますが、住宅統計調査の資料によりますと、東京都で言いますと、持ち家が百七十六万二千で、借家が二百二十三万八千三百、こういう数字が出ているんですよ。だから、ニーズといたしましては、この中で全部とは言いませんが、相当まだ余裕が出れば、何かいいうまい方法があれば、やっぱり土地問題なんかもありますが、あると思います。  私は大分県ですがね、大分県で言いましても、持ち家が二十四万三千、それから借家が十一万九千七百ですからね。私はまだまだ建てたい人なんかもよく知っていますよ。これは所得とあるいは何かのそういう手が、施策があればやるんではないか、こう思っておりますから、ぜひひとつ認識を変えていただきたいと思います。  それで、住宅に関する生産の誘発効果といいますか、これは非常は高いと思います、ある意味では。住宅関連に従事している人は約八百万人とこう言われておりますし、その住宅関連産業というのは、特に中小企業が大きいわけでありまして、したがって中小企業の振興とか地域振興にも非常に意味があるわけで、もちろん住宅を使う人はさらに助かるわけですから、ひとつ力を入れていただきたい。  それから、乗数効果を試算した数字をちょっと持っておりますが、やはり公共投資に次いで非常に大きい、二年目には一・八ぐらいになると。また税収もそういう関係からしますと、一兆円投資したらその半分近くは少しタイムラグを置いて返ってくると。またそれがぐるぐる回るわけですから、非常に大きな意味を持っております。私は産業だけという立場ではなくて、人間の一生でありますから、できるだけやはり、外国からも批判されておりますが、住みいい環境に住んで快適な生活をする。そういうためにも、住宅金融公庫の利子補給が全部できぬような形で、そこを削って、どうしてそういうことに発想が行き着くのか、私はやっぱり今の中曽根政治のやっていることはよくわからないんですが、これは今度予算の委嘱審査のときにも建設省の方に言って、いろいろ議論をし、お願いをしようと思うんです。  この点について、ひとつそういう観点から見ても、やはり通産大臣もあるいは経済企画庁長官も当面する内需拡大、しかもその一つのポイントというのは中小企業、ここを一体どうするか、そこで持続的な経済拡大を図ると、そういう観点からやるというのですから、やはりやるときに、なかなかあっちこっちやったってやれぬですから、もうちょっと絞って、こういう面についてはかちっとこうする、それで国民のためにこれはこうやったらこうなる、ためになると、こういうような施策を、もっとしんの入ったやつをやってもらいたいと思うんです。お二人から決意をお聞きしまして終わりたいと思います。
  49. 金子一平

    国務大臣金子一平君) 今梶原さんから御指摘の点、十分心して明年度の予算編成にも取り組みたいと思います。また、政策の遂行に当たりましても、住宅政策に重点を置いてしっかりやってまいりたいと考えておる次第でございます。
  50. 村田敬次郎

    国務大臣村田敬次郎君) 委員指摘のように、内需拡大、それからまた住宅建設について部品その他で深くかかわっておりますから、通産大臣としてもあるいは国務大臣としてもぜひこれはおこたえしたいと思います。  先ほど住宅金融公庫についての繰り出し金が千六百億も不足をしておるという御指摘でございますが……
  51. 梶原敬義

    梶原敬義君 一千億です。
  52. 村田敬次郎

    国務大臣村田敬次郎君) これは御承知のとおりでございます。実はこれはいろいろ法律的な経緯がございまして、大蔵省としては金のないときに、ひとつこれは繰り延べにさしてくれという話を建設省当局と会ってしたわけでございますが、昨年暮れの話し合いで建設大臣が努力をなさいまして、その一部については今回一般会計で繰り出しさせる、一般会計に大蔵省から出させる、その後の問題についても責任を持って大蔵大臣が相談に乗るということで妥結をしたわけでございます。  これは非常に聞くも涙の大変な妥結だったわけでございますが、この点を委員は御指摘になられたと思いますが、これは建設省が引き続いて努力をいたしまして、具体的な住宅建設にマイナスにならないように、無抽選主義ということで、申し込みのあった住宅についてはこれを建てさせるという方針は今後も堅持をするわけでございますので、予算の執行その他について、そのために住宅が建たなくなるという状況はないかと存じております。ぜひそうしなければならないと思っております。  それから、持ち家住宅と貸し家住宅の問題でございますが、実は住宅の建てかえということを含めまして、百十数万戸あるいは百三十万戸を目標に頑張っておるわけでございますけれども、日本国民の全般的な志向からすれば依然として持ち家志向が非常に高いわけで、恐らく大分県などの場合は、委員指摘のように現実にも持ち家が多うございますし、恐らく住宅の希望調査をすれば、貸し家住宅より、どうしても狭いながらも楽しい我が家という、自分の小さな土地を持って建てたいという希望が非常に多いかと思います。そういう志向は、建設省当局でいろいろと住宅五カ年計画の中で緻密な計画を立てておることであろうと思います。  内需拡大全般の問題について先ほども私がお答え申し上げましたように、住宅建設は公共事業や民間設備投資と並んで非常に大きなファクターであるということは委員指摘のとおりでありますから、ひとつ今後も、いろいろな分野で関連をいたしまして、住宅建設が国民のニーズに沿ったような、経済企画庁長官が御指摘になられましたように、量より質の時代である、住みよい住宅に住まわせるような配慮をしなければならないということで努力をしてまいるということであろうかと思います。
  53. 松岡滿壽男

    松岡満寿男君 両大臣の所信表明を拝聴いたしましたが、経済の現状並びに過去におきます国会の論議を十二分に踏まえられて、それぞれの分野につきまして的確なる政策の実施をするということでございますので、大いに賛意を表する次第であります。私自身は地方自治を体験してまいったわけでありますけれども、やはり経済の安定的な成長という基盤がない限り、国民生活の文化、教育、福祉あるいは環境整備、各般にわたりまして総合的な国民福祉の向上はないわけでありますから、どうかひとつ、それぞれの産業政策あるいは経済の運営につきまして、中曽根内閣のいわゆる仕事師内閣としての実績を上げていただきたいと思う次第であります。  申し上げるまでもなく、我が国はほとんど資源のない貿易立国であるわけであります。輸出弾力性が諸外国に比較しまして飛び抜けて高い、また輸入弾力性は断然低いという黒字累積型の体質があるわけでありまして、特に日米貿易ではこの点が最も顕著にあらわれておると思います。昭和五十八年の貿易収支は、輸入が三十兆円、それから輸出が三十五兆円、五兆円の輸出超過になっておるわけでありますけれども、問題は、この輸入の三十兆円の内訳のうち、資源エネルギーで二十二兆円買っておるわけです。そして、それを買った国に対しては相殺するべきものは五兆円ぐらいしかない。そうすると、その残りの十七兆円というのをよそに持っていってさばいていかなければいけないという厳しい状況になっておるわけでありまして、そうなりますと、それぞれの国におきましては対日貿易が入超になっていく。そうするとやはり産業、企業の疲弊につながるし、あるいは失業という問題が出てくる。非常にそれぞれの国の内政に深刻な影響を与えるわけでありまして、これが貿易摩擦ということだというふうに思うわけであります。  この問題につきまして、いわゆる日米間を初めとしますいわゆる貿易摩擦、これをしかし解決していかないと、我が国は貿易立国でありますから、これはまた国内でも深刻な問題が出てくるというわけでありまして、この我が国の対外政策上最重要の私はこれは課題だというふうに思うんです。この貿易摩擦の問題につきまして通産大臣はどのようにお取り組みになるか、その辺の所見をまずお伺いいたしたいと思います。
  54. 村田敬次郎

    国務大臣村田敬次郎君) 非常に重要な御指摘であろうかと思います。今松岡委員が御指摘になられましたように、日本の貿易の実績を見てみますと、まさに端的に言えば、資源エネルギーを中東その他の国々から買って、その金を賄うために自動車産業であるとかハイテク産業であるとか、そういったもので一生懸命貿易でドル、円を稼いでおるという状況でございます。だから、貿易問題がいかに重要であるかということは、もう本当に委員指摘のとおりでございまして、ただ全体からいえば、先ほど来の御質問にもありましたように、貿易だけに依存をしておると大変な貿易摩擦を起こすというので、したがって内需拡大していこう、それを主体にしていこう、こういう経済政策があるわけでございます。  したがいまして、全体の展望はまさに松岡委員の御指摘のとおりでありますが、対米貿易に例を申し上げてみますと、ことしの一月二日に中曽根・レーガン会談がロサンゼルスで開かれた、そのときに、貿易問題は非常に重要であるということから、四分野の問題について特にこれは早急に対応をしてくれという要望があったわけであります。四分野というのは、言うまでもなく、エレクトロニクス、電気通信機器、それから薬品及び医療機器、さらに木製品、この四品目でありますが、この四関心品目についてアメリカが非常に急いでおるということで、高級事務次官レベルの会合をもう一月の下旬からたび重なって東京でやり、またアメリカにも赴いているというのは御承知のとおりであります。  それ以外にも、私の方で専ら対応をいたしております、例えば鉄鋼の輸出自主規制でありますとか、今一番話題になっております自動車の輸出自主規制の問題でありますとか、こういった問題を、本当にゆるがせにできない問題であるということから、国内の体制としては、中曽根総理が陣頭指揮をなさいまして、M9というのがございます。これは経済企画庁長官や私ども皆参画をしておりますが、九人の閣僚が河本国務大臣中心に貿易問題に対応をしていく。それからまた、対米貿易問題については、安倍・シュルツ会談に基づいて、安倍外務大臣がこれを総括をするというシステムで進んでおりまして、これらの経済摩擦への対応は、日本の通商政策上の最重要課題の一つであるということを考えておるわけでございます。  今や日本は世界の一割国家でございますから、一割国家とアメリカの生産とを合わせれば全世界の約三分の一の生産を担っておる。また、日米貿易は全世界の貿易の二割以上の貿易量を持っておるというようなことで、まさに言うなれば中心的な位置に立つ日米関係であり、日米貿易関係であろう。こういう認識のもとに、中曽根総理は、この四分野については、いかなる犠牲を払っても、五月のサミットまでに妥結をさせるべきである、そして、サミットの場合に、レーガン大統領と直前に会っていろいろな打ち合わせをされるということを私どもは承っておりますが、そのときに、レーガン大統領が、中曽根さん、よくやってくれたと言うような実績をしっかり上げて、日米親善の大きな前進をさしていくべきである、こういう認識であります。
  55. 松岡滿壽男

    松岡満寿男君 ただいま村田大臣から基本的な問題につきましてお答えいただいたわけでありますけれども、二、三日前ですか、新聞に、ハインツ上院議員が輸入課徴金法案を、本日ですか、提出するというような動きが出ておりました。  非常に立法府、行政府とそれぞれ関係があるわけですけれども、立法府の中での過激な動きが出てきておる。二〇%一律に課徴するということになると、これはもう大変な事態になるわけでありますけれども、しかし、立法府の動きと行政府の動きという、これがまた微妙にいろいろ絡みながら動いておるようでありますから、必ずしも課徴金をかけるということが米国にとって利益になるかどうかということについてはまた議論もあるようでありますけれども、このような動きにつきまして、当局の方はどのように判断をしておられるのか、その辺の見解を伺いたいと思います。
  56. 村田敬次郎

    国務大臣村田敬次郎君) 御指摘のハインツ上院議員によって提出された輸入課徴金法案の問題でございますが、松岡委員指摘のように、きょう議会に提出される見込みである、こういうふうに聞いております。引き続き、まず上院において審議をされる予定である。これはもう大変重大なニュースで、そのニュースが出ましてから、私のところへもうメモがいっぱい来ております。現時点では同法案の内容は明らかでございませんが、伝えられるところによると、日本のみを対象とするもののようである、これは大変である、自由・無差別原則に反してガット上も問題がある、こういうふうに判断をしております。また、米国においても、政府を初めとして反対論も強いと承知しております。我が国としても引き続き同法案を初め輸入課徴金をめぐる米国内の動向を十分注視をしながら、種々の機会にこのような動きに対して懸念を表明していく所存でございます。  こういったことはいわゆる保護貿易主義につながるわけでございまして、新ラウンドの精神なんかと真っ向から対立をすることでございますので、私どもは理論的にも思想的にもこういうものを納得することができませんし、絶対にこういった法案は通らないようにということを心から願っております。
  57. 松岡滿壽男

    松岡満寿男君 ぜひこの問題は、我が国の国益に立たれて頑張っていただきたいと思うんです。  対米鉄鋼輸出の問題ですけれども、昨年の大統領決定に基づきまして、日米間の協議の結果今回合意に達したようであります、五・八%。新たにまたファブリケーティッド・ストラクチャーをこれは含むという合意内容のようであります。かなり鉄鋼業界にとりましても厳しい状況だというふうに思うんです。特に鉄鋼の場合は、御承知のように粗鋼ベース換算で一億トンのうち五千万トン、半分ぐらいを輸出に頼っているという構造になっておるわけでありますから、この辺が非常に心配なわけでありますけれども、これの合意に達した経緯と、それから合意内容について伺いたいと思います。  同時に、今回の問題は、昨年も本委員会で御質問申し上げておるんですけれども、いわゆる第三国からの急激な鉄鋼輸入というものが一つの起爆になっておるわけでありまして、どうも道連れにされてしまったという感じがしないでもないわけですけれども、日本に対する措置はああいう形になったわけですけれども、いわゆる中南米とか第三国、さらにECに対してはどのような対応をアメリカがしているのか、あわせてちょっとお伺いいたしたいと思います。
  58. 村田敬次郎

    国務大臣村田敬次郎君) この問題は、現実に衝に当たりました野々内局長が来ておりますから、詳細については野々内局長から申し上げますが、米国政府は、米国国内の鉄鋼輸入の急増ということを背景にいたしまして、昨年の九月に輸入対策等の鉄鋼業再建を目的とするレーガン大統領の決定を発表いたしました。この中で、米国国内での鉄鋼輸入比率を約一八・五%に抑えるということを目標として、輸出国と交渉を進めていくことを明らかにしたわけでございます。これを受けまして、日米両国の政府関係者が日米鉄鋼協議の場で半年にわたって話し合いました。そして、昨年の十二月に、我が国としても米国鉄鋼業の再建に協力するために、対米鉄鋼輸出の自主規制を行うということで基本的に合意をいたしました。私はこのとき、日本国内でどうしてもアメリカに出発をできない事情がございまして、若杉審議官と野々内局長を派遣をいたしまして、専ら鉄鋼問題を話し合ってもらったわけでございます。その際、ブロックUSTR通商代表に私からの親書を持っていってもらいまして、日本政府としてはこの問題について真剣に話し合う用意があるということを持っていってもらいましたところ、非常によく交渉を粘り強く日本代表がやってくれまして、そして第一次の合意をしたわけでございます。  これは御承知のように、アメリカ国内で消費する鉄鋼の見掛総量の五・八%を日本から輸出をする、従来より大分下げるわけでございますが、それから六分野はわたってこれを行うということで、細目はことしに入ってからやろうということで、そのときは留保をしたわけであります。したがって、レーガン大統領の三カ月の期限の中に見事に対応することができた。中曽根総理は非常にこれは日米の関係でいいことであったということで、いろいろな指示もいただき、また評価もしていただいたわけでございますが、その後の交渉はワシントンで実質的に行われたわけでございます。この問題は非常に細部にわたっておりますから、野々内局長から御報告を申し上げます。
  59. 野々内隆

    政府委員(野々内隆君) 若干補足さしていただきますと、まず、トータルの我が国からの輸出量といたしましては、アメリカの見掛消費の五・八%ということになっておりますが、絶対量で見ますと大体五百三十万ショートトン程度かと考えております。これは八四年、昨年の日本の輸出量が六百六十万ショートトンでございましたので、百三十万ショートトンというかなりの減少になる、これが非常に残念に思っております。ただ、八三年の日本の輸出が少なかったので、これに比べますとかなりの増加でございまして、大体八二年の日本の対米輸出量、これに近い数字かというふうに考えております。  それから、できるだけ自由な取引ができるようにということで交渉いたしましたが、アメリカ政府は日本の伝統的なトレードパターンというものを変えないでほしいというのが基本的な原則でございまして、私どもも余り大きな変更はしないということで話し合いをいたしまして、六つのカテゴリー、七つのサブカテゴリー、そのほか若干の監視的なカテゴリーを置きまして、過去五年間の日本の伝統的なパターン、これを基準にして今後取引を行うという形でセットされております。その辺昨年に比べますといろいろ変更もございまして、取引がしにくくなる点もあるかと思いますが、長期的な観点から業界に協力をお願いをいたしております。  国内体制につきましては、現在検討中でございますが、なるべく早く、できるだけ民間の自主的な形で、ただアメリカの独禁法上の観点もございますので、政府関与も行いまして、体制をつくり上げたいと思っておりますが、できれば五月中にもそういう体制を発足をさせたいというふうに考えております。  それからアメリカの他の国との間の交渉状況でございますが、ECとの間では既にでき上がった協定がございまして、これはことしの末に改定をして、我が国と同じようにトータル五年間にすると先方が言っておりますので、年末の改定交渉を見守りたいというふうに思っております。  それから、それ以外につきましては、ほぼまとまったというふうに聞いておりますが、ただ、アメリカは内容をまだ公表いたしておりません。  実は先週、日本と韓国との交渉につきまして、アメリカの下院の委員会政府側から報告が行われておりますが、これも秘密会になっておりまして、したがって詳細はわかっておりませんが、私ども聞いております範囲では、韓国との間では実質的に合意に達して、現在条文整理が行われているというふうに聞いております。そのほかの数カ国ともほぼまとまったと聞いておりまして、スペイン、オーストラリア、ブラジル等の間で、自主規制を行うことについて実質的に合意ができたというふうに聞いております。近く全体についてアメリカ側で発表されると思っておりますが、それまで、いろんな情報は受けておりますが、詳細についてはまだ聞いておりません。
  60. 松岡滿壽男

    松岡満寿男君 昨年もブーメラン現象の問題につきまして質疑をさせていただいたんですけれども、その後の発展途上国から我が国に対する鉄鋼の輸入の現状、相当価格の安い物も入ってきておるというふうに聞いておりますけれども、これはどうなっておるでしょう。
  61. 野々内隆

    政府委員(野々内隆君) 今回のアメリカの大統領決定の中で、日本が輸入を抑えている、これがアメリカに回ってきてけしからぬというような議論ございまして、たしか昨年先生の御質問がありました直後、私アメリカに参りまして、アメリカが言っていることは間違っていると、実は私はここに来る寸前に、国会委員会で日本が輸入が急増して対策を考える必要があるという国会で要求があったという説明をいたしまして、先生の御質問を私は逆に応用させていただいたわけでございますが、御承知のように、普通鋼鋼材輸入五十五年度七十八万トンから急激にふえてまいりまして、五十八年度では三百二十四万トンというふうになっておりまして、相当な勢いで増加をいたしております。中身は韓国、台湾、ブラジルというような、いわゆる中進製鉄国と言っておりますものが大部分でございまして、品目別に見ますと値段の安い物、厚中板、ホットコイル、これがほとんどでございまして、最近は冷延鋼板について若干の増加がございます。  五十九年度に入りまして若干様子が変わってまいりまして、五月ごろまでは大体月間三十万トンぐらいのベースで相当大幅に増加をいたしてまいりましたが、六月ごろから月間二十万トンぐらいに大体落ちついてきております。この原因を完全には把握いたしておりませんが、輸入の急激な増加から国内の市況が非常に冷えてまいりまして、輸入品の売れ行きが落ちた。それで在庫がたまりまして、岸壁在庫と言っておりますが、そのために輸入がもうからなくなったというようなことが主たる原因ではないかと思います。かたがた円安というということもございまして、採算が悪化したということかと思います。その結果、五十九年度の普通鋼鋼材の輸入につきましては、五十九年四月からことしの二月を年率に換算いたしますと三百十五万トンぐらいで、年度を通しますと余り大きな増加はないというような結果かというふうに考えております。
  62. 松岡滿壽男

    松岡満寿男君 我が国の鉄鋼業は、米国からそういう形で自主規制される、第三国も米国との関係でそれをやる。そうすると、ますます我が国にいわゆる発展途上国からの鉄鋼の輸入というものが出てくるんじゃないか、それを非常に危惧もするわけです。  御承知のように、鉄鋼業は現在六割操業でも利益を出していくというような体質改善を随分しておるわけです。それぞれ合理化努力を厳しくしておるわけでして、それはそれぞれの地方に立地をしておるわけですから、こういう鉄鋼業の問題につきまして、それぞれの地域の雇用とか、あるいは税収とか、そういう面に与える影響は非常に大きいものがあるわけでありますので、どうか今後この鉄鋼業の問題につきまして十二分な対応をしていただきたい。特にこういう基礎素材型産業につきましての再活性化につきまして御指導をお願いいたしたいというふうに思います。  また、先ほど大臣お触れになりましたけれども、日米首脳会談に基づき進められております、いわゆる四分野の問題でございます。特に電気通信につきましては、四月一日からの新電電への移行という問題も踏まえておるわけでありますが、こういう問題につきまして、次官レベルでの協議を進められておるというふうに伺っておるんですけれども、その進捗状況等につきまして、簡単にひとつ御報告いただけないでしょうか。
  63. 黒田真

    政府委員(黒田真君) いわゆる四分野の第一はテレコミュニケーション、電気通信の分野でございますが、これはただいま先生御指摘のように、四月一日に新しい電気通信事業法の施行を控えておりますので、もうあと何日もないわけでございます。現在、郵政省の小山次官が、米国におきまして直接先方の関係の役人と話し合いをしておられるという現状でございまして、私どもといたしましても、何とかここでいい形で決着がついて進むことを心から希望をしているところでございます。  それから、その他の分野といたしましては、エレクトロニクスという分野がございます。これは、ただいまの通信機器等もある意味では含むわけでございますが、電子計算機とか、あるいはその他半導体等々を含む分野でございます。この分野につきましては、非常に市場自身が拡大しておる分野でございますので、相当積極的な貿易拡大の話し合いができるのではないかというふうに考えております。特別のバリアーがあるわけではありませんので、関税等につきましては、既に半導体につきまして、ことしの三月から日米相互の話し合いで、お互いの関税を世界に対して撤廃するというような思い切った措置もとられておりますので、そういうような考え方がエレクトロニクスの分野でどこまで広げられるかというようなことを議論しているということがございます。  また、ソフトウエア関係の保護の問題というのがイシューになっておりますが、これも御承知のように、半導体のマスク法につきましては御審議をお願いするということにしておりますが、ソフトウェアについても著作権法においてできるだけ早く処置をするということを決めておりまして、これはアメリカ側といたしましても非常に積極的な評価をしているというふうに考えております。  いわゆるフォーレストプロダクツといいます、林産物なり紙パルプ等につきましては、若干入口のところで議論をしておりますが、先方としては何とか日本への市場の浸透をふやしたいということで、これから議論が進められる分野だと思います。  医療品につきましては、医薬あるいは医療機器という分野でございますが、これらにつきましては、国民の健康、安全という見地から各種の規制が行われているわけでございまして、これらの規制に当たって、外国で行われた検査のデータをどの範囲で採択していくかというようなことを含む幾つかの項目について、現在アメリカと議論が始まったところでございますが、これについても厚生省とされましては大変積極的に対応しておられますので、相当な進展を期待できるのではないかというようなことが現状の四分野についての御報告でございます。
  64. 松岡滿壽男

    松岡満寿男君 日米間の貿易摩擦の背景には、それはアメリカの巨大な貿易収支の赤字という問題があるわけですけれども、それぞれ両国間の内政の問題も私はあるだろうと思うんです。アメリカ財政赤字の問題あるいはドル高、高金利あるいは貯蓄率の低さとかね。逆に我が国の方は、非常に内需の振興をもっと図っていかなければいけないという問題とか、あるいは市場開放の問題とか、それぞれあると思うんです。ブロック通商代表の上下院での証言を聞きますると、そういう状態というものを十分認識した上でいろいろ対応しているという感じがするわけです。私は、米国自身も、やはり我が国に対して、もっとこういう問題について市場開放を一方的に求めるだけでなく、国内政策としてもみずから対応すべき問題がありはしないかと思うんですけれども、その点につきましてはどのようにお考えでしょうか。
  65. 村田敬次郎

    国務大臣村田敬次郎君) 松岡委員指摘のとおりであります。  これはレーガン大統領自身が、教書の中でもアメリカ側の原因について高金利やドル高ということも挙げておられるとおりでございまして、財政赤字を含めて米国国内のいろいろな事情があると思います。しかし、日本側にも、今御指摘になりましたような内需拡大をもっとしなければならぬとか、いろいろ努力すべきものがあり、これは両者でひとつよく努力をして、歩み寄っていかなければならぬ。そして総理自身の対応は、何としてもこの四分野の話し合いを円満裏に進めて、そして五月のサミットに出られたときにレーガン大統領といろいろとさらに突っ込んだ世界経済の問題が話し合えるような環境をつくりたいという非常にかたい決意をしておられると私どもは見ております。  また、新ラウンドについても、ひとつ大いに努力をするようにという指示が、総理自身から私にも、恐らく金子長官にも河本大臣にも、安倍大臣にもあったところだと思っております。この問題はひとつしっかりと進めて、世界の自由貿易の拡大、そして日本の場合は内需拡大ということで努力をし、日米親善関係を進めていきたい、こういうふうに使命感を持っております。
  66. 松岡滿壽男

    松岡満寿男君 貿易摩擦の解決には、やはり文化交流でありますとか、そういうさまざまな分野においての相互の交流というのが必要だと思います。同時に、我が国におきましては、先ほどM9というそういう一つの組織をつくっておられるということでありますが、各省庁間の連絡調整、これはやはり十二分にしていかれるということが大切だというふうに思うわけであります。  せんだってNHKの「忍の一字」というドラマを見まして、白河藩のやり一筋の武士が、藩の財政再建とか、あるいは養蚕とか、あるいは農業基盤の整備をしなければいかぬ。三千両をとにかく、藩公の指示で京都の留守居役で行きまして、商人から金を借りてこなければいかぬということで、やりを今度はお茶とかお花とか、お茶屋通いまでして一生懸命努力をしている。そういう一つの執念とか努力、誠実さあるいは気配り、あらゆる手だてを尽くして、我が国の貿易立国としての立場をやはり守っていくという努力を、今までもやっていただいておるわけですけれども、これからさらに重ねていただきたいということを強くひとつ要望を申し上げたいというふうに思います。  それで、内需を我が国として拡大していくということが、この摩擦解消にも大きな必要な案件だというふうに考えるのですけれども、五十九年十月―十二月期の国民所得統計速報によりますと、GNP成長率二・三%の寄与度外需一・九、内需〇・四となっているわけです。六十年度においてこの内需主導型の、ここで述べておられるような経済成長というのが本当に可能なのかどうなのか。消費の方は相変わらずちょっと元気がないようでありますけれども、その辺の見通しをちょっと伺いたいと思うんですが。
  67. 金子一平

    国務大臣金子一平君) 今御指摘の五十九年の十月―十二月期の国民所得統計の速報で、GNP成長率二・三%のうち外需寄与度がかなり高くなっております。一・九%になっておりますのは、一つは十―十二月期には輸出伸びが低かった反面におきまして、輸入が大幅に減少しておるのでございまして、それは原油の輸入が原因でございまして、七―九月期の駆け込み輸入の反動があったり、一月の石油税の引き上げ前の輸入の手控えというようなことで、輸入が減ったためにこういう数字が出たんだろうと思うわけでありまして、上期、下期にならして五十九年の状況を見ますと、大体順調にいっております。  それで、六十年度についての御心配でございますけれどもアメリカ経済成長率がだんだん落ちてきておりますので、輸出が今までと比べますると緩やかなものになっております点から見ましても、成長率に対する外需寄与度というものはだんだん下がってくると私どもは見ておるわけでございますし、他方設備投資は技術革新関連の豊富な投資機会をとらえて、いろんな面からの設備投資が、今どんどん輸出に関連しない投資が進んでおります。それは大企業だけじゃなくて、中小企業にもサービス業にも幅広く伸びつつあるような状況でございますので、大変私ども力強く考えておる次第でございますが、また個人消費につきましてはタイムラグがございまして、去年は予想以上に伸びなかったのでございまするけれども、最近の数字を見ておりますると、だんだんと明るさが芽生えておりますので、こういった指標をいろいろ見ておりますると、内需中心景気が持続的に拡大されまして、GNP実質成長率は四・六%程度、これはもう確実に伸びるんじゃなかろうかと我々は確信しておる次第でございます。
  68. 松岡滿壽男

    松岡満寿男君 先ほどのぜい肉論議じゃないですけれども、私の持ち時間がまことにスリムなものでございますから、ちょっと先を急がざるを得ないのですけれども内需振興のためにも、昨年も申し上げたんですが、私は特に通産省にお願いいたしておきたいんですけれども、やはり政策税制の拡充、また法定耐用年数の短縮でございますね、こういうものをもっと積極的に取り組んでいただきたいということをお願いをいたしておきたいと思います。  それから、中小企業の問題です。先ほど来、梶原委員の御意見もあったんですけれども、確かに中小企業対策は我が国の場合、もう少し力を入れていただかなきゃいけないなという感じがいたすわけであります。二千数百億という予算で、これで働く者の八一%を占める中小企業対策というのが十分に作動できるのかと危惧を持っておるわけでありますけれども、特に物的な問題、あるいは人的な制約というのがあるわけでありますが、技術革新、情報化の進展等の中におきまして、中小企業をめぐる環境変化、そういう中で、旺盛な企業家精神を持った活力ある中小企業を育成するために、技術力の向上とそれから情報化への対応のための施策を十分に私は推進していく必要があるというふうに考えておるわけですけれども、これはやはり自助努力だけではどうにも達成できないわけであります。この点につきましての通産大臣の御見解をお伺いいたしたいと思います。
  69. 村田敬次郎

    国務大臣村田敬次郎君) 中小企業の問題非常に重要でございます。  実は私は就任いたしたときも、通産大臣は即中小企業大臣であるという気持ちで頑張るということを宣言をいたしまして、事実一生懸命頑張っておりますが、先ほど来の御質疑にもあり、ただいま松岡委員も御指摘になられましたように、中小企業の倒産は五十八年、五十九年非常に史上最大を記録したというようなことを非常に深刻に受けとめておりまして、特に技術革新、情報化の進展、国民ニーズの多様化などの環境変化というものは、非常に中小企業に厳しい対応を迫っておるということが認識をされるわけでございますが、他方、中小企業に活躍の場を、しっかりこの時代に対応するという意味で、今申し上げた技術革新、情報化、そういったいろいろな要因をプラスに持っていかなきゃならぬ。この機会を積極的にとらえて、我が国の今後の発展の牽引力となるべき活力ある中小企業を育成することが肝要であるというふうに考えております。  こうした環境変化に中小企業が積極的に対応していくためには、まず第一に技術力の向上を図ることが必要である。このため、通産省としては、この国会に提出をいたしました中小企業技術開発促進臨時措置法案による施策を含めて、中小企業の技術開発の促進を図るための施策を総合的に推進をしていきたい、こう思っております。また情報化の進展の中で、大企業と中小企業との間佐新たな格差の生ずることのないように、中小企業情報化対策の拡充ということを図っていきたいと、こう思っております。  さらに中小企業における人材養成を図ることが重要でございまして、このため中小企業大学校の整備、拡充等、人材養成のための施策を強力に進めていく所存でございます。こうした施策を総合的に考え、推進をいたしまして、今後とも厳しい環境変化に積極的に対応し得るような創意と活力のある中小企業、そういう中小企業の育成を図っていきたい。これが国民生活全般を向上させるゆえんである、そういった認識のもとに進めていくつもりでございます。
  70. 降矢敬義

    委員長降矢敬義君) 松岡君時間が参りましたので、あと一問だけにしてください。
  71. 松岡滿壽男

    松岡満寿男君 はい。  せんだって企画庁の月例報告伺いまして、今回の景気回復の特徴はやはり地域的な跛行性もある。北海道と私の方の中国地区が非常にいろんな基礎素材型産業に片寄っているとか、いろいろ問題あるわけですけれども、落ち込んでおるということでございます。しかし、それぞれの地域を支えているのはやはり中小企業であるわけでございます。そういう停滞しておる経済や地域の中小企業に対する対応、そういうのはやはりそれぞれの地域の実情に応じて的確にひとつお願いをいたしたい。地域を支えておるのはあくまでも中小企業だ、それを大切にしていく、先ほど大臣の御意見もあったわけでありますが、そういう角度でひとつぜひこれからの施策を進めていただきたいということをお願いを申し上げまして、質問を終わります。  ありがとうございました。
  72. 金子一平

    国務大臣金子一平君) 今松岡さんから御指摘の点でございますが、企画庁におきましても、地域経済の動向につきまして、二カ月ごとに景気をまとめて発表しておるような状況でございまして、通産省とも十分連絡をとりながら必要な手を打ってまいるように努力をしてまいりたいと考えております。
  73. 降矢敬義

    委員長降矢敬義君) 午前の質疑はこの程度にとどめます。  午後一時四十五分まで休憩いたします。    午後零時九分休憩      ─────・─────    午後一時四十六分開会
  74. 降矢敬義

    委員長降矢敬義君) ただいまから商工委員会を再開いたします。  産業貿易及び経済計画等に関する調査を議題といたします。  休憩前に引き続き質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  75. 田代富士男

    田代富士男君 通産大臣所信に対しまして質疑を行っていきたいと思いますが、我が国の産業が目指すべき方向の教科書的存在として、御承知のとおりに通産政策ビジョンがあるわけでございますが、現在の八〇年代政策ビジョンは、五十四年の八月の大臣諮問に基づきまして五十五年三月産構審より答申されたものであります、これはよく御存じのとおりでございますが。それでちょうどビジョンの折り返し点を過ぎるところでありますし、そういう立場から、その示す方向と現実の流れを比較してどのように評価していらっしゃるのか、まず最初にお答えいただきたいと思います。
  76. 村田敬次郎

    国務大臣村田敬次郎君) 田代委員にお答え申し上げます。  通産省といたしましては、ただいま御指摘のとおり、五年前の一九八〇年代の幕あけに当たりまして、八〇年代の通産政策ビジョンを策定をしたわけでございます。このビジョンにおきましては、転換が進む内外の経済社会情勢を踏まえ、日本が世界の一割国家として自由貿易体制を維持するなど世界経済の安定的発展のために積極的に貢献をすること、技術立国の道を目指すとともに産業構造の創造的な知識集約化を図っていくことなど通産政策の基本的方向についての考え方をとりまとめたものでございます。ビジョンが対象といたします八〇年代の中間点にある今日において、なお「八〇年代ビジョン」で示された考え方の基本的方向はおおむね妥当ではないかと、このように思料をしておるところでございます。
  77. 田代富士男

    田代富士男君 この数年間、産業経済を初めあらゆる面で、御承知のとおりに国内あるいは国外情勢が大きな変化を見せ始めておるわけでございまして、例えば国内ではニューメディアを中心とする高度情報化の進展、国際面においてはNICSの台頭といった新たな潮流が顕著になりつつあるわけでございまして、これらの対応を含めまして我が国がどのような道を歩んでいくのか、その方向性を考えるときではないかと思いますけれども、どうでございましょうか。
  78. 村田敬次郎

    国務大臣村田敬次郎君) 委員指摘のとおり、我が国の経済社会は近年技術革新の胎動、情報化の飛躍的な進展など、広範かつ多様な変革に直面をしております。通産省といたしましては、これらの変化を先取りし、さまざまな政策分野において迅速な対応を図ることによって、二十一世紀に向けての長期的な我が国経済社会の発展基盤の確立と国際社会への積極的な貢献を図るべく全力を挙げて取り組んでいく所存でございます。  今申し上げましたような観点から、通産省では六十年度において中長期的観点を踏まえながら技術開発の積極的推進を最重点項目として取り上げていく。技術開発を私どもは一丁目一番地と呼んでおるのでございますが、同時に、高度情報化社会の実現に向けて総合的な政策を展開すること、また自由貿易体制の維持強化や総合的経済協力の推進などによって国際国家日本として国際社会に積極的な貢献を図ることなど、技術開発あるいは情報化への対応、また自由貿易体制の維持強化、総合的経済協力の推進など、諸般の施策を強力に推進をしていきたいと、このように考えております。
  79. 田代富士男

    田代富士男君 今も申し上げましたように、このような大きな流れがあるわけでございますが、その中で、「八〇年代ビジョン」はおおむね妥当な線をいっているという大臣の今さっき御答弁がございましたけれども、これを見直して、そしてここで新たな昭和六十年代を展望したビジョンを策定しようというような動きがあるやに聞いておるわけでございます。そうしますと、この「八〇年代ビジョン」というものは陳腐化したのかという考えがありますけれども、この点についてはいかがでございますか。
  80. 村田敬次郎

    国務大臣村田敬次郎君) 今の時代というものは、世界的に非常に大きな潮流をもって進んでおるわけでございまして、特にそのことがどういうことに集約をされるかといえば、ただいま申し上げました技術開発あるいは情報化の進展ということでございます。今はやりとしてよく言われる言葉に、情報化時代である、インフォメーションエージである、あるいは電子工学時代である、エレクトロニクスイヤーである、またアメリカの社会学者のダニエル・ベルは脱工業化社会だというようなことを言っておるのでございまして、まさに十八世紀以来進めてきた産業革命による大きな世界の変革がここへきて新たな胎動を二十一世紀に向けてしようとしておる。こういったこともよく考えていかなければならないわけでございます。  先ほど申し上げましたように、基本的には八〇年代ビジョンで示された考え方の方向については、今日でもおおむね妥当ではないかと考えておりますが、今、田代委員指摘のような新しい観点というのは非常によく理解することができるのでございまして、通産省としては、今後とも常に内外情勢の変化に十分な関心と注意を払いながら、中長期的な経済社会の展望を踏まえて各般の具体的な施策を講じていきたいと思っております。
  81. 田代富士男

    田代富士男君 村田大臣は、今、情報化時代である、あるいは電子工業の時代であるという、いろいろな立場を含めてそういうことを申されまして、先日村田大臣の所信表明を伺ったところでございますけれども、それには、今御発言なさったとおりに、情報化やあるいは技術革新が一段と進歩すると見込まれておる現在の我が国の産業に対する評価、社会経済の発展や効率化を促進するという、そういうようなプラス面ばかりが強調されているような感じがして仕方がないわけでございまして、そういうような強調されるその反面、例えば構造不況業種への対策やあるいは技術革新の波に乗りおくれた零細弱小企業への対応というこの取り組みがその中において弱いように考えられるわけでございますけれども、この点についてはどのように考えていらっしゃいましょうか。
  82. 村田敬次郎

    国務大臣村田敬次郎君) 御承知のように、産業の中には盛衰というものがございます。事実、これは国際的に見てみましても、かつて世界を風靡した繊維産業が英国から例えば日本のような当時としては新興国家に移り、そしてまた現在はいわゆるNICSと呼ばれる国々にそういった繁栄が移っていくというような実態もございます。  具体的に業種を考えてみますると、石油化学だとか合繊だとか電炉だとかアルミ製錬などの基礎素材産業、これは田代委員も御指摘になられましたこういった産業については、二度の石油危機によって構造的な困難に陥っております。優秀な素材の安定供給を通じて、我が国産業構造の高度化を支える重要な産業群として位置づけられるわけでございます。  現在これらの基礎素材産業については、五十八年度より、特定産業構造改善臨時措置法に基づき、過剰設備の処理でございますとか、省燃料・省エネルギー型生産プロセスの導入でございますとか、個別企業の枠を超えた事業提携による生産、流通、販売の合理化など一連の構造改善を推進をしておるところでございます。これは御承知のように、石油化学であるとか電灯など合計二十六業種を指定して対策を講じております。これらの基礎素材産業の構造改善のためには、例えば石油化学工業におけるファインケミカルへの転進、バイオテクノロジーの開発、あるいはアルミ製錬業及び合金鉄製造業における割高な電気を使わない新製錬技術の開発といったような技術開発は再活性化への有力な手段となっております。また、生産、販売、在庫などの情報処理システムの構築、さらに企業間の情報処理システムのオンライン化など、情報化もこれら産業の活性化の手段として着実な進展を見せておるところでございます。  以上申し上げましたように、構造的不況に陥っております基礎素材産業につきまして、それぞれの業界の困難に応じた構造改善を推進するに当たりまして、技術開発及び情報化の進展という我が国産業全体が直面している新たな潮流をそれぞれの基礎素材産業の再活性化の中に積極的に位置づけましてその促進を図ってまいりたい。こういったことで全産業に対する対応を、その産業の現在の態様に即した政策を推進してまいりたいと、このように考えておるところであります。
  83. 田代富士男

    田代富士男君 今も大臣が申されたとおりに、時代は新たな潮流の時期を迎えていると言っても間違いないのではないかと思います。  そういう立場から、先ごろ、もう既に御承知と思いますが、経済同友会がまとめた意見書によりますと、ME化による余剰人員とそれから新しい時代の潮流に沿った特定分野での集中的な人材不足といいますか、これが将来深刻な社会問題になるのではないかという、こういうようなものが出されているわけなんです。  また、このME化による需要構造の変化とそれに伴う新しい事業機会あるいは雇用機会の出現、及び既存産業の業態の変化というものに対しても注目をしているというような考え方が表明されているわけでございまして、そういう立場から我が国の産業政策を担当する通産省といたしましても、こうした状況をどのように受けとめて考えているのか。今も一貫して新しい時代の潮流に対する対策を述べられましたけれども経済同友会のこういう意見が出されている。あわせてもう一度お答えいただきたい。
  84. 福川伸次

    政府委員(福川伸次君) 御指摘のように、経済同友会で、このME化のインパクトが同時発生すると、あるいはそのデメリットの集中的な発生がある、したがって今から十分その対応を考えておくべきであるという御報告が出ていることは、私どもも十分承知をいたしておるところであります。  確かにマイクロエレクトロニクス化という技術革新の進展が大変目覚ましく、これは日本の産業構造そのものを非常に知識集約化していく、あるいは高付加価値化していくという意味で、経済成長の原動力になっているという面があらうと思います。それによりまして、各産業においては一つには生産性の向上が進む、あるいはまた新しい設備投資が起こる、あるいはまたニュービジネスといわれるような新しい産業群が出てくるということで、産業活動活性化ということにこういったME化は大きく貢献はしているという面があろうと思います。  また一方、雇用関係に対する影響にいたしましても、この技術革新の進展が一つには労働時間の短縮につながる一つの契機になり得る、また労働災害の防止といった労働者の福祉の向上にもつながる、あるいは単純作業を機械に置きかえる、こういう意味があると思うわけであります。しかし反面、私どもも例えばロボット化あるいはオフィスオートメーション化あるいはファクトリーオートメーション化といったようなことを通じまして、雇用にどのような影響があるのかという点は、これから大変注目していかなければならない面であろうと思うわけであります。事実、現在までのところこのME化ということは職場内の配置転換といったような格好で失業の発生ということにはならずに、雇用を吸収をしてきているという面がございまして、そういう意味では今まででも各企業も従業員の能力開発に努める、あるいは円滑な配置転換を進めるといったようなことで、解雇の発生という問題は生じない対応をしてまいっているわけであります。  しかし、今後の進展を考えてみますると、さらに今後も、いわゆる今まででもあらわれておりますように、直接の生産部門よりも企画部門あるいは販売部門への従業員のウエートがふえていくという面がございますので、今後ともいわゆる職業教育あるいは従業員教育といったような問題が非常に重要になってまいりまして、そういう意味では労働力の流動化という点が重要な施策になってまいると思っておるところであります。私どもとしても、技術革新の進展あるいはハイテク化、オートメ化、情報化、こういったような問題がどのような産業活動影響を及ぼしていくかという点については十分関心を持って見守り、労働省とも十分連絡をとりながら、今後の雇用対策という点については産業の側面からも十分意を用いてまいりたい、かように考えております。
  85. 田代富士男

    田代富士男君 今局長の御答弁でも、この技術開発の進展に伴って産業にどのような影響を及ぼすかについては労働省とも連絡をとり、注目していきたいという御発言がございましたけれども、村田大臣の所信では、課題の第一に技術開発の推進を挙げていらっしゃったわけでございまして、大臣の決意のほどの並み並みならぬものを感じたわけでございますが、このように技術開発が強力に推進されてきますと、今もお話がありましたとおりに、産業構造また国民生活に与える影響も大ではないかと思うわけでございまして、通産省といたしましても、こうした状況の中で技術開発が産業構造にどのような影響を与えていくかということは注目するという局長お話ありましたけれども、それはもちろん必要でありますけれども、まず実態を把握していかなくてはならないじゃないかと思いますけれども、この点大臣どうでございましょうか。
  86. 福川伸次

    政府委員(福川伸次君) 御指摘いただきましたとおりに、この技術開発の進展、これは私どもとしても政策の最重点課題として取り上げておるわけでありますが、それが産業構造あるいは産業組織の面にどのような影響を与えるかという点は、この新しい事態に即応いたしまして十分実態を把握し、今後の方向を展望してまいらねばならないと思っておるわけでございます。新しい製品も出てまいりましょうし、また新しい生産プロセスも出現してまいります。設備投資のパターンも変わってまいりましょうし、また需要も新しい需要が出てくるという意味で、投資も需要も構造を変えながら拡大していく可能性があるわけでございます。これは産業構造にもまさに御指摘のとおりに大変大きな影響を与えるものでございます。  そういった今御指摘のように、産業構造などにどのような影響があるか、こういったことで私どもとしても少し子細に調査検討する必要があるということで、昭和六十年度からひとつそういった面の調査に着手しようということを考えて予算上の措置を講じたところでございます。若干時間はかけてでもひとつ詳細に将来の方向を調査をしてまいりたい、実態を把握してまいりたい、かように考えているわけでございまして、そういった調査の成果を今後の産業政策の展開に十分活用してまいりたいと考えております。
  87. 田代富士男

    田代富士男君 今局長は、この問題は大事な問題であるから、子細に調査を進めていくためにそれなりの予算の措置をとったという御発言でございますが、私ちょっと調べてみました予算上の措置は、総合的な調査費だけで一千二百万円ぐらいだったと思うんですけれども、三年単位で調査というふうなことでございますけれども、私は今聞けば聞くほど、これは新しい時代の潮流に沿った今からの仕事でありますけれども、このくらいの予算でこれ達成できるだろうかと心配なんですけれども、大臣いかがでございますか。
  88. 福川伸次

    政府委員(福川伸次君) 六十年度に一般会計の委託調査費で千七百万計上をいたしました。これはもちろんいろいろ子細に検討いたしましたり、専門的な知識を活用していただくという意味で委託調査ということでやっておりますけれども、これはまたもちろん調査の進展の過程におきまして、私ども通商産業省の機能もこれに合わせてその実態分析等に活用をしてまいりたいと思います。そういう意味では委託調査で専門的な知識も調査をしていただくと同時に、私ども通商産業省の機能を十分発掘活用いたしまして、総合的にこの調査効果が上がりますように努力してまいる所存でございます。
  89. 田代富士男

    田代富士男君 現在御承知のとおりに、ファクトリーオートメーションの推進などによりまして、このまま進んでいけば労働集約型の産業でもコスト的に十分競争力といいますか、それがつく見通しが一部にあるわけでございますが、例えて申し上げますと、合繊あるいはそういうような長繊維織物ですか、そういうものではウオータージェット織機の導入によりまして、特に福井方面なんかの産地におきましては、途上国との国際競争にも勝てるという自信を深めているところもあるように聞いているわけでございますが、このような事態が急激に進んでいきますと、近隣の途上国の経済基盤までも脅かすようなことになるんじゃないかと心配されるわけであるわけですけれども、そういうことが長い目で見た場合に、日本の国益にとってプラスと言えないとの意見も一方にあるわけでございますし、そういう立場から、通産省の産業調整の立場からいかにこれをお考えになっているのか、またどうしようとされるのかお聞かせいただきたいと思います。
  90. 福川伸次

    政府委員(福川伸次君) 今御指摘のように、確かに繊維産業におきましてもいわゆるファッション化ということをねらいまして、多品種少量生産への対応を、例えばコンピューター等を使いながらやっていくということで、大変努力をいたしておるわけでございますが、繊維産業は、先生も御承知のとおりに、日本の賃金が高いというようなことから、発展途上国の追い上げにむしろ苦しんでおるわけでありまして、そのために何とかして生き残るということで、新しい技術を導入をしながら、小回りのきく中小企業のメリットを発揮して、こういった多品種少量生産に対応しながら生きていこう、こういう大変努力をしておられる企業があるわけでございます。  しかしまた、そうかと言って、それではファッション性の低い部門というのが果たして競争力があるかということになりますと、これは発展途上国の追い上げはまた急でございます。  そういう意味で言えば、これからの産業調整の考え方ということを考えてみますと、経済合理性を失ったような部門というのは、ある程度これは規模を縮小していかなければならない。しかし、付加価値の高い技術集約的な部門というものをこれから伸ばしていって、日本の経済全体の成長力を保持をしていく、培養をしていく、こういうことが産業政策として非常に重要になってまいりますし、その意味では日本も技術部門に集約した形での産業構造を守っていきますと同時に、また発展途上国との水平分業を進めていくということで、この産業調整政策を進めていく必要があると思います。  もちろんその場合には、日本の産業社会に国内の摩擦現象が起こってはならないわけで、先ほど大臣からも御答弁申し上げましたように、産業構造改善臨時措置法といったようなものあるいは中小企業関係の諸施策を活用しながら、そこを円滑に産業調整を進めていく、こういうことが必要になってくるわけであります。先ほども産業構造改善臨時措置法に触れられましたわけでありますが、そういった過剰設備の処理、あるいはそれを生き延びるための新しい技術部門の開発、あるいは今後の成長部門への進展といったような格好で企業は大いに伸びていこうと、こういうわけでありますが、そういったいわゆるこの産業調整政策という点は内外の諸条件を十分見ながら安定的に進めていかなければならないと、かように考えているわけであります。  他方、先端的な部門につきましては、大臣の所信表明にもございますように、今後の二十一世紀を目指す日本経済成長の源泉でもございますので、そういったいわゆる技術開発政策、特に基礎研究、日本が特におくれておると言われております基礎研究、応用研究にも力を入れ、また民間活力を発揮していく環境条件の整備をしていこう、こういうことでございまして、競争力が衰えてきた部分につきましては産業調整策を実施して、いわゆる水平分業を進めていくと同時に、今後の新しい成長の源泉というものをまた培養していく、こういう格好で今後の産業政策を展開してまいりたいと思っております。
  91. 田代富士男

    田代富士男君 ただいま産業調整の考え方について御答弁をいただいたわけでございまして、この考え方については、付加価値の高いものについてこれを培養し、伸ばしていきたい、こういうお話でありまして、それと、発展途上国に対しても話し合いを進めて、円滑なるこういう分業というか、そういうものについても考えていかなくてはならないという今のお答えでございました。  そういう立場から、現在韓国また台湾、そういうところから日本の優秀な産業技術の供与を求めているように聞いておりますけれども、またこれら以外のアジアの諸国においても日本の技術に強い関心を持っていることは御承知のとおりだと思います。これらの要請に対しまして我が国の技術供与の現状はどうなっているのか、まずこのことをお聞かせいただきたいことと、あわせて、韓国またシンガポールなどアジア近隣の技術が向上して、ひいては日本との間で今もちょっとお話が出ておりました国際分業が進展していくことについては、通産省といたしましては基本的にどんな考えをお持ちであるか、あわせてお答えいただきたいと思います。
  92. 鈴木直道

    政府委員鈴木直道君) 現在韓国、台湾など、御指摘のございましたようなアジア地域にございます中進工業国は、いずれも産業開発に大変熱意がありますし、技術力の強化にも熱心でございます。これらの国々は、やはりすぐれました工業技術を有します我が国からの積極的な技術導入につきまして従来から実績を持ち始めております。これら近隣諸国に対しましては、電気、機械関係等比政的高度な技術を含みます相当な数及び金額の技術移転が民間ベースで行われていると聞いております。  本年の一月に総務庁統計局が発表いたしました科学技術研究調査報告というのがございますが、それによりますと、八三年の数字でございますけれども、韓国に対します技術輸出は九百三件、百七十億円に上っているようでございます。韓国側統計を見ましても、日本からの技術導入は百九十九件で、全体の五五・三%を占めておるということで、日本に対します導入実績は非常に多いということでございます。  このような現状を踏まえました我が国の考え方ということでございますが、韓国、シンガポール等々発展途上国が技術力を向上するということ自身世界経済の当然活性化につながりますし、世界経済の発展それ自身日本の世界経済との相互依存関係を深めるという意味で基本的に望ましいという考え方を持っておるわけでございます。  このような考え方をベースにいたしまして、私ども通産省といたしましても、発展途上国に対しまして技術力向上を支援するという意味で、かねてから専門家を派遣するとか研修生の受け入れを行う等々技術協力を実施しているところでございまして、このような技術協力自身今後とも重視してまいりたいと考えている次第でございます。
  93. 田代富士男

    田代富士男君 また、日本の経済にとってこれは離すことができないのがアメリカ経済との関係ではないかと思うわけでございます。  一昨年来米国経済は強い拡大を示しまして再活性化しつつあると言われております。その影響をこうむる我が国といたしましても、米国の経済産業動向に注目をしていかねばならないと思うわけでございますが、我が国においても経済活力を維持増進していくためにも中長期的な観点からどのような政策を推進していくのか、これをまずお聞きしたい。  それと、昨日テレビでも取り上げられておりましたが、日米の貿易摩擦に関連いたしまして、ハインツ上院議員が議会に、日本製品に対し三年間にわたり二〇%の輸入課徴金を課すとの内容の課徴金法案を提出するというふうに言われていたわけでございますが、このアメリカの議会で強まっている輸入課徴金問題について、どのように通産省として受けとめておるのか、もちろんこれに対する考え方をお持ちかと思いますが、あわせてお聞かせいただきたいと思います。
  94. 村田敬次郎

    国務大臣村田敬次郎君) 米国経済は、所得税減税あるいは投資減税などによる個人消費、住宅投資設備投資の増大等によりまして、委員指摘のように、一九八二年末以降力強い拡大を実現をいたしております。  一方日本の経済は、米国を初めとする海外経済の回復を背景に、一九八三年以降外需に牽引された形で景気回復部面に入っておりまして、その後個人消費など家計部門の需要の伸びは依然として緩やかでございますが、技術革新の進展等を背景として設備投資が順調に増加をしております。一九八四年は実質成長率五・八%と五年ぶりに五%台の成長達成をいたしました。  そこで、通産省といたしましては、今後とも日本の経済社会の活力を増進し、中長期的な発展基盤を整備していくために、基盤技術研究円滑化法の制定でございますとか基盤技術研究開発促進税制、中小企業技術基盤強化税制の創設などによる技術開発基盤の構築を初めとした各般の施策を推進してまいりたい、こうして中長期的に今後の日本経済に対応してまいりたいと、こういう考え方であります。  なお、後段のハインツ上院議員が我が国からの商品に対する輸入課徴金法案を提出をしたというニュースについてでございますが、非常に重要なニュースでございまして、実はもうその日に私委員会に出ておりましたらメモが回ってきまして、これはかねてから言われておったことがいよいよ法律案の形で出てきた、これは重大であると受けとめておりまして、きょう米国の議会に提出される見込みであると承知をしております。引き続いてまず恐らく米国上院において審議をされる予定でございましょう。  現時点では同法案の内容はまだ必ずしも全部つまびらかにはなっておりません。伝えられるところによりますと、日本のみ、日本だけを対象とした法律案のようでございまして、自由無差別原則に反し、ガット上も非常に大きな問題があるというふうに判断をしております。また、米国内においても米国政府を初めとして反対論も強いと承知をしておるわけでございます。また、そうした報道につきましても、この法案が成立する可能性は非常に少ないのではないかという予測等も行われておりましたが、我が国としては、引き続き同法案を初め輸入課徴金をめぐる米国内の動向を十分注意しながら、種々の機会にこのような動きに対し懸念を表明をしていく所存であります。  原則的に申しますと、こういう保護貿易主義的な動き、また特に日本商品に対してのみ輸入課徴金をかけるというような動きは、これは世界の動向として非常に好ましくない動向である。我々は、中曽根総理が言われますように、新ラウンドを推進する、そしてまた各国が自由、開放の貿易体制を広げていく、展開していくという基本的な認識のもとに努力をしてまいりたいと、こういうことでございますので、よろしくお願い申し上げます。
  95. 田代富士男

    田代富士男君 村田大臣が、こういう動きに対して、この法律は恐らく成立しないんじゃないかという見方を持っていらっしゃるわけなんですが、保護貿易的な動き、この輸入課徴金の問題等は世界の動きとして好ましいことではないとおっしゃるけれども、こういう動きがあること自身、成立されることを望むものではありませんけれども、そういう成立は不可能だろうというような考えであったならば大変でありますし、やはり最大の対策を講じてもらいたい、これは、こちらからの要望として申し上げておきますけれども、次の質問に移ります。  コンピューターソフトウエアの権利保護について伺ってまいりたいと思います。  去る三月の十七日に、ソフトの権利保護について一年余意見の対立を続けておりました通産省と文部省が、御承知のとおりに合意に達したと伝えられておりますけれども、このような急激な展開に我々も実は驚いておるわけでございます。  一九八二年のIBM産業スパイ事件以降急速に問題化してまいりましたソフトの権利保護に対しまして、その後の東京地裁やあるいは横浜地裁のプログラム判例による、ソフトは著作物であるとの判断がなされて、著作権法がソフト保護の法律として位置づけられようとの動きの中で、御承知のとおりに、通産省だけはソフトの権利保護に特別立法をもって臨むとの決意のもと、プログラム権法上程を図りまして、文化庁との間で激しく渡り合ったのは昨年のことでありまして、記憶に新しいところであるわけでございますが、こういうような各省との省際争いや世界の大勢に逆らってまでも通産省が特別立法を主張してきたのは何であるのか、まずこれを明確にしていただきたいわけでございます。  それとまた、なぜ今回ドラマチックにといいますか、急遽このような形で決着をしたのかという、そこらあたりの経過、それから合意の内容はどのようなものなのか、あわせて御説明をいただきたいと思います。
  96. 村田敬次郎

    国務大臣村田敬次郎君) 御指摘のコンピュータープログラムに係る権利保護の問題につきましては、今委員指摘になったようないろいろな非常に重要な経過がございます。  昨年の四月二十七日の経済対策閣僚会議において「より良い権利保護の在り方につき、国際的調和にも留意しつつ更に調整を進めるものとする。」と、「国際的調和にも留意しつつ更に調整を進めるものとする。」という決定を受けまして、通産省としては、本問題に係る国際的秩序形成に我が国が積極的に貢献するという立場で内外関係者との調整を精力的に行ってきたところでございます。このほど、本年二月に行われましたWIPO、世界知的所有権機関専門家会合におきまして検討されておる状況等に留意しながら、本問題の処理の緊急性にかんがみ、当面の対応としては著作権法の改正によってコンピュータープログラムの保護も図るということにし、よりよい権利保護のあり方については中長期的視点からさらに検討を続けることとしたものでございます。  なお、今回の決定は、昨年来日米通商問題上の最大の懸案の一つとなっていたコンピュータープログラムの権利保護問題を解決するものでありまして、日米経済関係改善に寄与するものとして高い評価が与えられるものと考えております。  実は、率直に申し上げますと、二月の九日、十日、十一日、日本の京都で行われました四極貿易大臣会合、これは私がホスト役で議長役をしたのでございますが、アメリカのブロック通商代表と個別にお会いをいたしましたときに、この問題についてはぜひ著作権法で対応をしてほしいと、著作権法は期限六十年になっておりますから、そういった手厚い保護でやってもらうのを心から希望するという問題がございまして、私どもはこういったブロック通商代表の提案や、先ほど申しましたいろいろな経緯にかんがみながら、通産省として文化庁その他と折衝をいたしました結果、通産省のいろいろな考え方については、ひとつぜひ著作権法の改正の中に盛り込んでもらう、そして今申し上げましたように、今後の問題もいろいろ中長期的視点からさらに検討を続けていくということがよいであろうという判断で、文化庁に協力をするという形で著作権法の改正に踏み切ったわけでございますが、このことは非常に米国でも高く評価をされておるという反響が来ておるところでございます。
  97. 田代富士男

    田代富士男君 今、村田大臣から、この問題についてはよりよい権利保護のあり方について検討をしていく立場から、通産省としても積極的にこれは貢献していこうと、こういう姿勢で臨まれ、特に二月に京都の国際会議場での四極貿易大臣の会合のときに、個別にブロック通商代表とお会いになって話をされたという経過です。  あれは、ノーネクタイでおやりになった会合じゃないかと思うわけでございますが、ノーネクタイでおやりになったそれだけの効果が出たかどうかまだわかりませんけれども、その際に、著作権法の改正に盛り込んでいこうと、こういうことで進んだと。文化庁に協力する形になったということでございますが、これは私は蒸し返すようなことになるかわかりませんが、通産省の立場というものは、御承知のとおりに、プログラム権法提出の理由としておっしゃったことは、著作権法による保護では不十分な理由を挙げられていた、これは現実でございます。それが、今おっしゃったような説明では、ちょっと私、これは整理する必要があるんじゃないかと思いますし、その点私、整理してもらいたい。それと、今回の合意で、いろいろな各点についてのそれぞれの解釈がなされたかと思いますが、もうちょっと具体的に御説明をいただけたらありがたいと思います。
  98. 木下博生

    政府委員(木下博生君) 通産省といたしましては、コンピュータープログラムのよりよい保護を図るために、産業構造審議会にソフトウェア基盤整備小委員会を設けまして、関係者に非常に広く御議論いただいたわけでございます。その結果、一昨年の十二月の中旬御答申をいただいて、それによって、特別の立法でコンピュータープログラムの保護をやった方がいいんではないかというような御答申をいただいたわけでございます。  その答申におきましては、ソフトウエアのよりよい保護を図るためには、従来の著作権法とは異なる点を持つ新法の必要性があるだろうという御意見だったわけでございますが、その当時、国際的にも、世界知的所有権機関、WIPOといいますが、そこの事務局の意見あるいはオーストラリア、カナダ、フランス等におきましても、必ずしも著作権法にとらわれない別の法体系による保護について検討がなされておったと承知しております。そういうような当時の情勢を踏まえつつ、御指摘のように独自の特別立法のプログラム権法の提案をすることを検討したものでございまして、プログラムのよりよい保護を図ることにその目的があったということでございます。  その後、ただいま大臣の方から御説明がありましたように、ことしの二月の終わりにWIPOの会議がありまして、そこで各国の専門家が集まって議論をいたしましたときに、そのとき以降、例えばオーストラリアは、短期的にはやはり著作権法で保護した方がいいんじゃないか、しかし長期的にはやはり特別の方策を国際的に検討していくべきだというような立場で、著作権法に一つ踏み込んだ国がございますし、それ以外の国でも当面のプログラムの保護としては著作権法の方がいいんではないかという意見の国もふえてきていると、そういうような状況もございまして、それから先ほど大臣の方から御説明ありましたように、アメリカとの関係等も考え、当面の対策として署作権法によってコンピュータープログラムを保護していった方が適当ではないかという立場に立ったわけでございます。  したがいまして、文化庁との間で御相談いたしましたのは、コンピューターのプログラムのよりよい権利保護のあり方につきましては、今後とも中長期的観点から両省で協力して国の内外の場におきまして検討を続ける。特に例えばプログラムの使用についての権利保護の問題とか、保護期間等の問題、こういう点は国際的に検討を続けていこうと。それから二番目に、当面の対応としては、著作権法によりコンピュータープログラムの保護を図ることとし、著作権関連条約の範囲内で通産省の言っておりました主張を極力盛り込むということになって、一応合意ができたわけでございます。
  99. 田代富士男

    田代富士男君 今回のあれは当面の対策としてやっていくということで、今後よりよい権利保護のあり方を両省で研究し、検討をして、国際的にも検討をやっていくということでございますが、果たしてこれいつごろ話し合いがつくかということは今のところ疑問でございます。私これだけちょっと申し上げておきたいと思います。  それで、ブロック代表と会われたときには、六十年という今村田大臣からのお答えがございましたけれども、通産省といたしましては保護期間を、五十年を短くすることに最も力を入れ主張しておいでになったのではないかと思いますけれども、これがまた未解決のようでありますし、これによって通産省も言ってきたように、新しいソフトの開発というものが妨げられる心配はないのかと。この点については通産省としてどのようにお考えになっていらっしゃるのか、また対応はどうであるのか。今もちろん今後両省において研究、検討していくということでございますし、これ文部省からの考え方も聞かずに、一方的な御発言もちょっとしにくい面もあることは承知の上で質問しておるわけでございますけれども、この点どうでございましょうか。
  100. 木下博生

    政府委員(木下博生君) 国際的な動きが、コンピュータープログラムの保護は著作権条約の体系の中で当面は処理した方がいいだろうということになっておるわけでございまして、今回の合意で、文部省との間で著作権法の条約のもとで、著作権法の改正という形でコンピュータープログラムの権利の保護をやるということになりましたことでございますので、保護期間の問題につきましては、その条約の関係もあり、直ちにそれを短縮を図ることは困難であると思っております。  ただ、御承知のようにコンピュータープログラムにも、コンピューター本体を動かすための基本的なプログラムが一方ではあると同時に、それからいわゆる子供が遊ぶゲームソフトというようなもので、そのときそのときにどんどん使って使い捨てられていくようなプログラムもいろいろあるわけでございまして、こういう種類の違い等も今後考えながら検討していくべきだと思いますが、そういう基本的なプログラムについては長い期間保護した方がいいじゃないかという意見もあるわけでございまして、もう少しコンピュータープログラムの実態に即したものを、国際的な場で、中長期的な観点から今後検討していくべきものだと思います。その間におきまして、私は長い期間で保護されておるためにコンピュータープログラムの開発が著しく阻害されるというようなことはないんではないかというふうに考えております。
  101. 田代富士男

    田代富士男君 もう一つお尋ねをいたしますけれども、裁定制度についても合意が漏れいるわけでございます、これは御承知のとおりだと思いますが。そうしますと、仮に開発権者の許可がなくては特定のソフト使用ができないようだと、これによって公正な競争が妨げられるおそれはないのかというのが心配なのでございますけれども、この点についてはどのようにお考えになっていらっしゃるのか。  それともう一つ、あわせてもう一点の検討事項であります使用の権利保護についてはどのように考えていらっしゃるのか、ここらあたりが明確にされておりませんから、あわせてお答えいただきたい。
  102. 木下博生

    政府委員(木下博生君) 通産省が検討しておりましたプログラム権法の中に入っておりました裁定制度につきましては、米国においてその内容につき誤解があった面がございまして、産業構造審議会の中間答申の趣旨が必ずしも明確に伝わっていなかったのではないかということで、私どもは非常に残念に思っておるわけでございます。いずれにいたしましても、著作権条約との関係におきましても、中間報告にあるような裁定制度を著作権法体系の中で設けるということは困難でありますので、今後ともそういう必要性を含めて中長期的に議論してまいりたいというふうに考えております。  ただ御承知のように、日本の特許法にも裁定制度はございますけれども、実際上その規定を運用した実例はないというようなことで、そういう点についてのアメリカ側の十分な理解がなかったということがあっただろうと思います。ただその場合、アメリカにおいて本件のこの点が非常に大きな問題になったのは確かでございまして、それは単に著作権法体系のもとで行わないことになると、そのような規定がほかの国でも入れられるというようなことで、国際的にいろいろ今後問題が大きくなるんではないかという懸念をアメリカ側が持ったというようなこともあるんではないかと思います。そういう点は今後私どもとしても十分配慮していくべきだと思いますが、当面著作権法で守られるということになりますと裁定の規定は入らなくなるということになるわけでございます。  それから使用権の問題につきましては、期間の問題と並ぶ重要な問題でございまして、現在の著作権法の考え方で使用権を設けるというのは非常に難しいわけでございます。ところが、コンピューターのプログラムの場合には、まねされたプログラムを勝手に使われることによってそれをつくった人たちの権利が害されるという問題がありますので、この点は何らかの形で著作権法の中に入れてもらえることができないかどうか、文部省の間と今御相談しているところでございます。
  103. 田代富士男

    田代富士男君 一番最初にも私が御質問いたしましたけれども、今回の合意に対しまして、業界の反応というのはどうであるかということをお尋ねしたいわけでございます。  特になぜ尋ねるかと言えば、特別立法を通産省が主張されることによりましてこの業界を先導してきた立場であるわけでございますが、そういう立場から賛同していた関係者が突如としてこういうことになったことに対して混乱はないのかどうか、そこらあたりはいかがでございましょう。
  104. 木下博生

    政府委員(木下博生君) 通産省といたしましては業界を先導していたわけではございませんで、コンピュータープログラムというのが普通の著作物で考えているような文化財というよりむしろ経済財であると、それでコンピューターを動かす動かし方というような意味を持ったものであるというようなこともあって、むしろその著作物とは異なった特殊なものであるという理解が業界の中にもあったというようなこともあって、私どものコンピュータープログラム権法の考え方に賛同をしていただいたわけであります。  ただ、業界におきましても現行著作権法による保護を全くすべきではないというような強い意見であるわけではございませんで、現に地方裁判所で幾つかの裁判も行われているわけでございますし、それからコンピュータープログラムの権利の保護のあり方自身が不安定なままでいるということは、かえって産業界におけるコンピュータープログラムの開発を阻害するというような心配も持っておったわけでございますので、私どもが当面の対策として著作権法でいこうというふうに見解を変えたことに対して特に当惑しているとは考えておりません。
  105. 田代富士男

    田代富士男君 今私が、先導していらっしゃったんじゃないかということでしたが、先導はしていないと言われたけれども、先導という言葉がまずかったならば、そういう立場で指導していらっしゃったことは事実でございます。  だから、言葉の違いはありましても今言われたとおりに、こういうような著作物ではないという立場で賛同をいただいてきたと。しかし不安定な状態であったから何とかしなくちゃならないと、努力されたことも事実であるわけなんです。それで、関係業界にとってコンピューターのソフトの権利をどのような法律で保護するかということよりも、今の不安定な状態をどうするかというようなことも勘案し、むしろ早く法的な整備をすることが先決であるというのが本音ではなかったかと私も思うわけでございます。  問題は、通産省が業界をこれまた巻き込んだと言えば、そうではありませんと言われるかわかりませんが、一番わかりやすい言葉で言うと、こういうことで表現できるんじゃないかと思いますが、巻き込んだ形で文化庁と一年有半にわたって省際争いをし、一応いろいろな立場でごたごたがあったのは事実でございますけれども、こういうことは、業界の監督官庁としての通産省は、こういうことは余り好ましいことではないと思うんですが、これは大臣にお尋ねしますけれども、どうでしょうか。大臣答えてくださいよ、それは。
  106. 木下博生

    政府委員(木下博生君) 私ども関係業界を指導してそういう立場にさせたということではございませんで、十分お話し合いをしてきておりましたので、昨年じゅうにおいても経済界がアメリカ経済界といろいろ議論をするときに、アメリカの財界の方から本問題を取り上げたときには、経済界を代表して日本側の業界の方が日本側の立場をずっと説明されたということは何回もあったわけでございます。決して私どもが無理に指導してそういう立場をとらせたということじゃなくて、コンピュータープログラムの特殊性に応じた保護のあり方が必要ではないかというふうにお考えになって、そういう同じような考え方をお持ちになっていたと思います。  ただ、結果的にアメリカの財界とのいろいろな話し合いをされている過程においてアメリカの著作権保護法による保護の考え方の強さということを十分御認識になっておられたものですから、私どもの方針を先日決めましたときに業界の方々にお話ししたら、十分その間の背景は御納得いただけたというふうに考えております。
  107. 村田敬次郎

    国務大臣村田敬次郎君) 先生、先ほど来木下局長からいろいろ詳細に御説明申し上げたとおりでございまして、またこの問題は先生非常にお詳しいわけでございますから、大臣からということでございますから一言申し上げますが、先ほどブロックさんとのお話を申し上げました、これは一例として。ヨーロッパのいろいろな動向やアメリカの動向その他いろいろと勘案をいたしまして、今回の国会に臨む考え方としてひとつ先ほど来申し上げておるような著作権法に乗るという形で現在は事をおさめようと、そして今後中長期的にはまたいろいろと検討をしようではないかといった考え方で、これは新聞その他にもいろいろ報道されておりますので特に申し上げておきますが、対外協力という意味も大きく含めて妥結をしたというふうに考えていただいていいと思います。
  108. 田代富士男

    田代富士男君 今の局長の言葉をお返しするわけじゃありませんが、先導から指導、指導にかわったら指導ではありませんと、話し合いと、こういうことになりましたが、話し合いということは、業者の代表と官の代表が話し合うということは指導ということなんです。だから、これはもう改めてここまでは追求はいたしませんけれども、業者の皆さん方混乱はないと一応認められたということでございますが、これは官の立場からいえば認められたと言いますけれども、業者の皆さん方は官に逆らっては損だという、そういう気持ちがあることも知っておいていただきたい。だから何の声もないから従ってくれたのだと言うが、事実はいろいろな動きがあるということをあえて私はここで申し上げておきたいと思います、それが実態でございますから。その点ひとつよろしくお願いいたします。  それで、いずれにしても話し合いといたしましょうよ、話し合いをされている段階においても特別立法の必要性を強力に主張してきた、これは事実でございます。そして今るる御答弁いただきましたように、さまざまな思惑があったとはいえ、国会提出ということを断念せざるを得なくなったと、これも事実でございます。これは通産省の政策決定の中に、こういうことを言っては過酷であるかわかりませんけれども見通しの甘さがあったのではないかと指摘されても仕方がないことではないかと思いますけれども、世界のMITIとしてどうお考えになるのかお答えいただきたいと思います。
  109. 木下博生

    政府委員(木下博生君) さきに御説明申し上げましたように、プログラム権法の構想をまとめた段階の、世界におけるコンピュータープログラムの保護のあり方についての考え方というのは、必ずしもまだまとまっていなかったという感じで私どもは考えておるわけでございます。それで、そういう状況下におきましてコンピュータープログラムにつきまして開発、利用、両面にわたって国際的に進んだものを持っております我が国といたしましては、そのよりよい保護について検討し、提案を行うことは極めて重要なことだと考えておったわけでございます。  そのようなことでございますので、今後WIPOの場におきましても、中長期的にはコンピュータープログラムの保護を、著作権法でうまく保護できない部分はどうしたらいいかということを各国共同して研究しようじゃないかということを言っておりますので、そういう研究の場におきまして私どもの考え方も十分出して、各国の中で話し合いをしていきたいというふうに考えておるわけでございます。
  110. 田代富士男

    田代富士男君 今も局長お話しされたとおりに、この著作権法の範囲内で対処できないものはどうするか、今後研究していくという、これに対して通産省としてもその政策を出していくのだということでございますから、今回の合意によりましてソフトの権利保護はもうこれは著作権法の見直しという形で進められているのが現実でございます。そういうわけで、通産省として今後そういうものの対策を出していくということでございますが、中身について現時点において御答弁いただける範囲内で言っていただけませんでしょうか。
  111. 木下博生

    政府委員(木下博生君) プログラム権法において保護すべきと考えた点が幾つかあったわけでございまして、先ほど先生御指摘はなりましたような使用権の問題等もありましたし、それから人格権の問題というような問題もあったわけでございます。  例えば人格権につきましては、著作権法の場合には著作物を創作した人の人格を尊重するということで、勝手に改変することを禁じておるわけでございます。ところがコンピュータープログラムの場合は、御承知のようにユーザー側では、毎日使いながらそれをどんどんどんどんいいように改善していくというような形のことをやっておるわけでございまして、そういう意味で、コンピュータープログラムの実態に合った権利保護の仕方を十分考えていただきたいということで文部省の方にお話ししておりまして、文部省の方も、コンピュータープログラムの特殊性は十分わかるからということで、通産省と文部省との間で十分その点協議していこうというお立場でおられます。したがって、現在文部省の方で検討をされておりますので、具体的にどの条項がどういうふうに変わるかということは、まだちょっと早い時点でございますので、御答弁は差し控えさせていただきたいと思います。
  112. 田代富士男

    田代富士男君 今後の高度情報化社会におきます我が国の情報産業の育成は重要であります。これは今さっきから大臣を初め局長が申されたとおりでありますが、そのためにもこのソフト保護の問題を抜きにしては考えられないと思うわけなんです。そういう立場からこの一年余の論争の中で、通産省が論拠としたソフトウェアは著作権法上の他の著作物と違った点がある、こういうこともまた事実ではないかと私は思いますし、また、今回の合意によりまして、ソフトの権利保護の今後にはさまざまの難問が山積していると思います、今局長お話のとおりでございますが。  殊に、この技術革新が急速に進展する状況の中で、今後の内外の諸情勢をにらみながら、今までのような省際争いのような愚は避けて、さらに適切な方策を、今回特別立法として出すことができなかった、こういう失敗にもめげず、継続して検討していく必要があるんじゃないかと思うわけなんですけれども、これは大臣いかがでございましょうか。
  113. 木下博生

    政府委員(木下博生君) 先ほど申し上げましたように、文部省文化庁との間で合意をいたしたわけでございますので、当面は著作権法の改正により対処するということで、むしろ文部省が今国会に提出しようということで作業を進めておられる著作権法の改正作業に十分御協力すると同時に、その法律の早期成立には協力したいというふうに考えております。  ただ、今、先生御指摘ございましたように、コンピュータープログラムは極めて今後の情報化社会にとって重要なものでございますし、また、技術革新が早い分野のものでございますので、そのよりよい権利保護のあり方につきましては、今後とも文部省と通産省との間で十分協力しながら中長期的な視点から検討を続けていきたいというふうに考えております。
  114. 田代富士男

    田代富士男君 最後の質問にいたしますけれども、この情報関係行政の所管争いは、今回のソフトの権利保護に限らず、コンピューターシステムの安全対策、ニューメディアコミュニティー構想とテレトピア構想、また電気通信事業法に基づく大規模VANの区分け問題等々、この事例を挙げますと限りないくらいあるわけでございますけれども、これを解決するために新たに所管する省庁を設けるということは、御承知のとおりに現在の行革の立場から、これは反するのではないかと思うわけでございます。  そこで、昨年の十月の二十六日に総理に提出されました高度情報社会に関する懇談会報告の中に、この内閣機能の強化についてという提言があるわけでございますけれども、この提言等もありますものですから、内閣の一員である通産大臣として、村田大臣はどのようなお考えであるのか。  一連の問題を私は申し上げてまいりましたけれども、さっきも質問をいたしましたとおりに、今回の失敗にめげず継続して検討をやってもらいたいという、この決意も大臣からお聞きしたいと思っておりましたが、局長の御答弁でありましたから、この二つをあわせて、この質問で最後にいたしますから、よろしくお願いします。
  115. 村田敬次郎

    国務大臣村田敬次郎君) 経済社会の情報化というのは、これはもう先ほど来先生が指摘しておられるように時代の趨勢であります。これは世の中を変えるほどの勢いで進んでおるわけでございまして、こういった情報化に対応する問題は一省庁のみでは対処し得ないという問題がいろいろ出ております。安全化対策もそうでありますし、あるいは著作権、コンピューター問題もそうでございましょう。こうした問題に対処をしていくためには、関係省庁が、それぞれ設置法に基づく職務を全うするということはもちろんでございます。  通産省で言えば、産業政策中心とした立脚点ということになろうかと思いますが、こういった設置法に基づく職務を全うすることはもちろんでございますが、必要に応じて機動的、弾力的に、関係省庁の連絡会議の開催でありますとか、あるいは内閣官房の調整機能を活用するというような方法によりまして、適時適切な対処を図っていって、時代の要請、国民の負託にこたえてまいらなければならないと思っております。  いわゆる縦割行政の長い長い歴史というのが明治以来あるわけでございますが、現在は、縦糸に関するそういった官庁、例えば通産省だとか農林水産省だとか、そういう縦糸になります官庁と横糸になる官庁、例えば内閣官房あるいは経済企画庁、あるいは場合によっては、地方行政については自治省であるとか、財政に関しては大蔵省とか、いろいろ横糸と縦糸があざなわれたような形で国民のニーズにこたえていくということが必要であると思います。  それと同時に、従来ならば縦糸であった官庁が横に幅を広げてよく話し合うということが非常に必要な時代が来ておると思うのでございまして、例えば一例を挙げれば、今お挙げになりました文部省文化庁との対応もそうでありますし、あるいは通信問題に関係をしてまいりますれば、通産、郵政の関係もそうであると思います。そういった新しい時代の要請にこたえた新しい行政の展開というものがやはり一番必要な時代であるということを私どもは認識しておりまして、田代委員の先ほど来の御高説はよく承りましたので、できるだけそうした御質問の意図を体して進んでいきたいと思います。
  116. 市川正一

    ○市川正一君 通産大臣はその所信表明において、日米間のいわゆる貿易摩擦の解決についても触れておられます。そこで、この問題の基本的あり方について、まずお伺いしたいと思います。  最近、中曽根総理がレーガン大統領の発言にこたえて、矢継ぎ早の市場開放指示をなすっておられるようであります。二十五日には政府・与党首脳会談があって、その中で合板を含む木材関係の自由化を打ち出したと報ぜられております。私は、もしこれが実現するならば、長期の不況のもとでの相次ぐ建設業者の倒産、午前中もお話がございました。また、合板関係の永大産業や秋田木材等々の倒産など、木材業界が今直面している深刻な事態にさらに追い打ちをかけるものだと思います。したがって、二十五日の会談でも、この問題をめぐっていろいろの意見が出たと伝えられておりますし、翌二十六日には佐藤農水大臣が、国内対策こそ先決という見解を表明していらっしゃいます。  大臣は、二十五日のこの会議に出席なすっておられるわけでありますが、この問題をめぐって、国内の特に木材関係業界あるいは業者に対してどういう態度を大臣はとろうとなさっているのか、まずそれからお伺いしたいと思います。
  117. 村田敬次郎

    国務大臣村田敬次郎君) 市川委員指摘の月曜日に行われた政府・与党連絡首脳会議には出席をいたしております。したがいまして、市川委員指摘の、いろいろなその場合に出ましたディスカッションもその場におって聞いておったわけでございますが、中曽根総理の御指示は、日米貿易摩擦、特に四分野の問題が非常に緊急な形で押し寄せておる、これは私も自分の肌で、ブロック代表とお会いしたとき、あるいはその他アメリカからの情報がいろいろな形で伝わってまいりますのを受けて、非常にじかに感じておるところでございます。  特に、四分野の今御指摘になった木材関係は、御案内のように、これは農林関係でございますので、農林関係施策というのは国の伝統産業でもあり、そして第一次産業を守らなければならないという農林業従事者の考え方は極めて強いものでありますし、それは同時に国民感情にもなっております。我々も農林業が最も重要な産業の一つであるということについては全く同じ認識に立っておるわけでありますが、中曽根総理の御指示は、そういった四分野はついての問題が一番現在日米間の焦眉の急になっておるので、日本の木材関係の業界の保護あるいは第一次産業の保護ということも前提としながら、そうした日米間の通商摩擦を和らげていくようにという大所高所に立った議論であると承知をしておりまして、これに対応して恐らく佐藤農林水産大臣も具体的な対応を考えておるものと考えております。
  118. 市川正一

    ○市川正一君 農林関係のサイドからお聞きをしているんじゃなしに、例えば住宅産業など、私は通産行政にかかわる木材業界というものがやはりあると思うんです。しかも、それは総じて、中小企業が圧倒的に多い分野でもあります。  大臣の所信表明は、これも午前中いろいろのやりとりがありましたが、「中小企業は、我が国経済活力の源泉であり、また、社会の安定の基盤でもあります。」と、こう述べているわけであります。ところが今おっしゃったお話ですね、これはこういう所信で述べられておられる中小企業を重視する、そこに手厚い対策を講ずるということと反することに相なりはせぬか。もともと私はこの日米間の貿易不均衡なるものの原因は、先ほど与党の松岡委員すら、とあえてこう申したいんでありますが、指摘なさいましたが、アメリカ側のこの財政赤字、ドル高、高金利、そしてまた輸入超過などがあるんですね。私はまともに物を直視するならば、党派を超えてこれはそのとおりだと思うのです。  それからもう一つは、我が国の労働者やあるいは下請業者の犠牲で国際競争力を強めた日本の自動車や電気などの大企業が、国内市場ではなしに、アメリカ中心にした海外市場への集中豪雨的な進出というこの両面があると思うんですね。そういうことを不問に付して、これもまた午前中からお話のあった輸入課徴金などをてこにしたアメリカの圧力に言いなりはなって、矢継ぎ早のいわゆる市場開放を促進することは、私はきょうは木材関係のことを取り上げましたけれども、いずれにせよ、日本の国内産業、それは圧倒的に農業であり、林業であり、そして何よりも中小企業だと思うのでありますが、それらに致命的な打撃を与えかねない、こう思うのでありますが、私は通産大臣の認識を重ねて伺いたいんであります。
  119. 村田敬次郎

    国務大臣村田敬次郎君) 今、委員指摘のいわゆる木製品の分野、つまり第一次産業にわたるものと第二次産業にわたるものと、両方あると思うんですね。もとの言葉はフォレストプロダクトと言うんですが、その分析をしてみたらウッドプロダクトも入っておったとかいうようなことで、農林水産省が主たる窓口になりますが、例えば紙パルプというようなことになりますと、通産省の所管ということになるわけでございます。  その場合に、いわゆる第一次産業の分野は、日本のみならず欧米諸国においても、これは今委員が御指摘になったような国民生活あるいは国民的な世論と真正面から衝突をする可能性のある非常に難しい分野であります。したがって、新ラウンドの推進の問題にいたしましても、例えばECの中にも両論ありまして、新ラウンドはぜひ推進すべきである、極力推進すべきであるという議論と、その中で第一次産業のような分野については必ずしも直ちに手を挙げるわけにいかないというような動向も一方にある、こういうことは委員もよく御承知のとおりでございます。  こういった問題については、日本でもあるいはフランスでも、西ドイツでも、必ず国内でいろいろな問題があり、ディスカッションがあるわけでございますが、二者択一という形でそれじゃどうだというふうに質問を提起されますと、なるほど非常に難しい困難な問題で、なかなか容易に回答もできない国民的な課題であると思いますが、現在の日米貿易摩擦という問題に焦点を絞っていけば、私は四分野の問題というのは、これは一刻も避けて通ることのできない急務であるという認識を肌で感じておりまして、したがって国内産業も保護しつつ、それと同時に、日米間の円満な通商ということにも前向きに対処をするという方策をどういった形で進めるべきであるかということが、今MOSS会議であらわれておるいろいろな現象であり、また中曽根総理が信念を持って国内産業の保護と、そしてまた日米通商関係の円満な終結を考えようと言っておられる使命感であろうと、このように認識をしておるわけでございます。
  120. 市川正一

    ○市川正一君 そんなに難しいことを聞いているんじゃないんです。結局どういう立場に立たれるのかということなんですけれども、大臣は午前中の同僚議員の質問に答えて、内需拡大を非常に強調されました。しかしそのことと、今ずっとおっしゃったこの自由化をめぐっての態度、そして実際に中曽根政府がやっておられる矢継ぎ早の市場開放の施策というのは、私は根本的にやっぱり相反していると。本当に日本の国民の利益を守るという立場に立っておられるかどうかということに深い疑念を持つわけでありますけれども、私はこの問題は引き続いて機会のあるごとに究明をいたしたいというふうに考えております。  ときに、大臣はゴルフをしやはりますですか。
  121. 村田敬次郎

    国務大臣村田敬次郎君) 私は、国会便覧には二十七というハンディで出ておるのでございますが、運動神経が非常に鈍いのでございまして、よく誘われますが、ほとんど行きません。まあできないと言った方が正しいかもしれませんが、ゴルフ道具は持っておりますから、全くできないというわけでもないわけであります。
  122. 市川正一

    ○市川正一君 そのゴルフ道具のことを後でお聞きしたいんですが、実は順延されておりました甲子園の選抜高校野球大会がきょうから始まりました。私も野球ファンの一人として、また今もプレーをしている者として、今回の大会で話題を呼んだいわゆる飛ぶ金属バットの問題があるんですね。この問題は、金属バットの安全性ということと、高校野球の本来のあり方という二つの問題が問われていると思うんです。もとよりこの後者の問題は、そこにより根源的な意味が含まれており、その点に高野連――高校野球連盟かようやく目を向けたことを私は重視いたしております。また私は、文部大臣も甲子園の始球式のトレーニングばかりに熱を入れずに、もう少しこういうことにも関心を寄せていただきたいのでありますが、しかし、これは本委員会が直接論ずべきことではありませんので、私は本委員会の所管にかかわる安全性の問題についてお聞きしたいのであります。  もともと金属バットというのは、消費生活用製品安全法で特定製品として指定されておりました。これが二年前の昭和五十八年の一月に指定から外されたんです。実はそのときに、この指定を外すことによる安全性との関連及び日米経済摩擦との関述、それのまさにシンボルとしてこれが扱われたわけでありますから、その二点において私は懸念を表明をいたしたことな記憶しております。もちろんきょうはそのことが今回の安全性問題を引き起こした原因だというふうなことを短絡的に申すつもりはありませんし、またこの間の経緯を先日通産省の担当官の方から報告を聞かしていただいて承知いたしております。  ただ、一方では製品安全協会が作成し、通産大臣が、村田大臣が承認した金属バットの安全基準というのが現に確立されておるのです。そしてそれに基づくSGマークというのが張られておるのです。そうしてこういう制度があるにもかかわらず、それに合致しないものが横行し、幸いにも人身事故はなかったものの、安全性の問題が表面化してきたというこの現実の事態に即して、今後行政指導上どのような対応をなさろうとしているのか、その点に限って伺いたいと思うのであります。
  123. 矢橋有彦

    政府委員(矢橋有彦君) 本件は、ただいま先生も御指摘になりましたように、いわゆる安全性にかかわる事柄でありますだけに、私どもといたしましても重大に受けとめております。  具体的対応策といたしましては、まず三月五日の日、つまりSGマークを張った硬式用の野球用金属バットの中に安全基準を満たさないものがあることが判明したその時点でございますが、その日に、私どもは製品安全協会に対しまして、基準不適合品の回収及び基準不適合品に対するSGマークの貼付禁止の徹底を図るよう指示をいたしました。また、甲子園の選抜大会が目前に迫っておりましたので、硬式野球用金属バットにつきまして緊急テストを実施するように指示をしたわけでございます。その緊急テストは三月十九日までに終わっておるわけでございますが、具体的には通商産業検査所で検査をいたしまして、このテスト結果を三月十六日に高野連の方に通知をいたしたわけでございます。これを受けまして十九日に、高野連では具体的に本大会において使用可能なりストを決めるということによりまして円滑に大会が始まったわけでございます。  このように、いわゆる今回の選抜大会のためのとりあえずの措置としては一段落をしたわけでございますけれども、今後ともこの金属バットの安全対策に万全を期するという必要があるわけでございますので、次の措置をとるよう製品安全協会に指示をしたところでございます。二つございまして、一つは既に三月五日に指示をいたしておりましたところの基準不適合品の回収等の措置をさらに徹底するということでございますが、いま一つ新しい指示といたしまして、硬式野球用の金属バットのすべてのメーカーに対し立入調査を行い、すべての銘柄について安全基準適合性を審査し直し、もし必要あればメーカーに対する改善指導等を厳重に行うということを指示しておりまして、逐次これが実行に移されつつある状況でございます。  いずれにいたしましても、ただいま先生御指摘のとおり、協会の型式確認後のいわゆる事後調査、安全確認のためのフォローアップにおいて足りざるところがあったということについては深く反省をしておりまして、今後そのようなことのないように引き締めてまいりたい、かように考えております。
  124. 市川正一

    ○市川正一君 今の立入調査などを含む新しい措置が厳格にやられることを期待いたします。  もう一つは、今安全性の問題を申しましたが、今度は経済性といいますか、耐久性の問題なんですね。高校野球で金属バットが使用されるようになった背景には、木製バットが折れやすい、それで非常に台所事情が苦しい高校の野球部で、非常に大きな負担になっておりましたので、最初の出費は若干高くても相対的に長持ちする金属バットが導入されたという経過があります。そこで私は、今取り上げました安全性の問題とともに、経済性についても一定の基準のようなものを、これを考える必要があるんじゃないか。現に、例えば調べてみますと、スポーツ用品の中でも、テニスとかバドミントンのラケット、さらにはスキーなどにはJIS規格があるわけですね。そして、同様のことをやっぱり野球用の金属バットにも設けてはどうだとか、JIS規格というのはもとより任意規格でありますから強制力があるわけではないのでありますが、しかし、よりよいものを消費者に供給するという立場から、関係者の意見もよく聞いて、こういう経済性、つまり例えば何千回以上の打撃に耐えるような耐用基準を設けるということを検討なさってはどうかと思うのでありますが、いかがでしょうか。
  125. 矢橋有彦

    政府委員(矢橋有彦君) ただいま先生から、スポーツ用品の経済性の御指摘がございましたけれども、確かに今度安全性において問題がありましたいわゆる飛ぶバットと言われておりますのは、一本一万五千円ぐらいの値段をいたします。それで普通の在来の金属バットは一万円ぐらいということで、五割高ということになっているわけでございます。しかも耐久性について申しますと、普通のバットが一万回の打撃に耐え得るのに、この試合専用とかいった飛ぶバットは、五百回から二千回どまりということでございまして、非常に高価なものについておるわけでございます。たまたまこのバットの問題は、安全性を追求してまいりますと、おのずからそのような高くて耐久力に劣るバットが締め出される結果になることが、結果論として推定されるという状況にございます。したがいまして、バットに関する限りは、問題は恐らくはおのずから経済性の問題も同時に解消するんではないかと考えているわけでございます。ただ、先生のただいまの御指摘は、スポーツ用品一般について経済性を考えた何か基準づくりができないかという御示唆でございますけれども、この問題につきましては、担当原局等とも相談いたしまして、今後の検討課題にさしていただきたい、かように考えております。
  126. 市川正一

    ○市川正一君 ちょっと誤解がおありのようなんです。私は、スポーツ用品一般にというのじゃなしに、現にスポーツ用品の中でも、スキーだとか、あるいはバドミントン、テニスのラケットにはJIS規格があると言うんですよ。現にあるんですよ。だから、このバットについても、そういう経済性という側面からのいわば規格を考えられてはどうかということを申し上げたんで、そういう意味で検討していただくことを大いに要望し、また今後も御相談したいと思うんです。  さて、大臣はゴルフのクラブを持っていらっしゃるようでありますが、そのゴルフのクラブのアイアンのヘッドがプレー中に飛ぶというトラブルが起こっているんですね。事は野球のバットだけではなくなってきておるのでありますが、今の一連のやりとりをお聞きになって、大臣としての所感を承れば幸いであります。
  127. 村田敬次郎

    国務大臣村田敬次郎君) 委員指摘の問題は、要はその安全性、スポーツの安全性ということであろうかと思います。私はゴルフのアイアンのクラブのヘッドが飛んだという経験はまだ持っておりませんけれども、安全の問題ということになりますと、通産省といたしましては、従来から必要に応じて運動用具について消費生活用製品安全法に基づく施策等を講じてきたところでございます。今、金属バットのことについていろいろ例を挙げてお話をいただきましたが、今後とも運動用具が原因になって事故を生ずることのないよう、必要かつ十分な対応を、事安全に関する問題でありますから図っていきたいと思います。
  128. 市川正一

    ○市川正一君 そうすると、安全性と不可分の耐用性といいますか、経済性ですね、これについても、さっき自然淘汰されるから構わぬとも聞こえるようなお話だったんですけれども、そうじゃなしにそのサイドからもいろいろ研究を賜りたいということをお願いしておきます。よろしゅうございますか。
  129. 村田敬次郎

    国務大臣村田敬次郎君) 了解いたしました。
  130. 市川正一

    ○市川正一君 実は、本日の委員会は、前国会以来、参議院商工委員会としては久々の機会でございます。これからもなかなか大臣とこうしてお会いする機会がないかとも思いますので、この機会に私、前国会で取り上げた問題の幾つかについてのフォローといいますか、その後の進展状態を、制約された時間内で幾つか伺うことにいたしたいのであります。  まず、使用済み乾電池の処理問題であります。これは本委員会で、去年の七月の二十四日に私が通産省の見解をただしました。その際も指摘したのでありますが、業界の五項目の対策のうち、実際に水銀の環境放出を防ぐ対策は第二項の使用済み水銀電池の回収強化だけでありました。政府はこの業界の対策を実効あるものと、こうみなされて、そしてそれ以降一年以上たっておりますが、この五項目の対策の到達点を今日どう評価なさっていらっしゃるのか、まず伺いたいと思います。
  131. 木下博生

    政府委員(木下博生君) 昨年一月、通産省と厚生省の要請に基づいて業界が今御指摘の五項目についての対策を講ずることを決定したわけでございます。業界においてその対策をやっている状況を御説明いたしますと、まず第一項目の水銀電池の新しい用途への使用の抑制につきましては、新しい用途への販売開拓を行わないように決めて、水銀電池のユーザー業界にも協力を呼びかけしております。    〔委員長退席、理事前田勲男君着席〕  それから二番目の使用済み水銀電池の回収強化でございますが、それにつきましては、約十一万店の一般電気店、補聴器取扱店等に回収箱を設置することにより実施しているところでございます。業界団体の集計によりますと、五十九年上半期に出荷した水銀電池の回収率は約一五%でございます。  三番目のアルカリ電池の水銀減量の研究でございますが、これにつきましては、昨年九月、アルカリ乾電池技術研究組合を結成いたしまして、技術開発に取り組んでおるわけでございますが、その場合の目標は、当初三年間で水銀含有量を三分の一に減量化するということで、鋭意技術開発を進めてきたところでございますけれども、結果としては非常にこれがうまく進捗いたしまして、期限を二年繰り上げ、本年九月ないしはそれ以前にこの目標を達成できるという見通しが得られております。そういうことでございますので、同研究組合では一層の減量化を図るため、六十二年九月までに水銀含有量を当初の六分の一にすることを新たな目標に置き、技術開発を進めることにいたしております。  また、水銀を使用しない乾電池等代替製品の研究につきましては、業界は水銀総使用量の削減のため、水銀を使用しない乾電池など代替製品の研究を進めております。現在水銀電池に代替する電池として有望と考えられる空気亜鉛電池の開発を鋭意推進中でございまして、代替可能な分野から供給体制を整備していくこととしております。  五番目の、使用済みアルカリ電池の埋め立てによる土壌への影響調査でございますが、現在、五十九年度は実験、分析方法について予備調査中でございますが、六十年度より研究機関に実験等を本格的に委託し、研究を開始することといたしております。
  132. 市川正一

    ○市川正一君 今いろいろと報告があったんですが、例えば使用済みの水銀電池の回収率が一五%というんでしょう。ところが、私も前の質問のときに指摘したんですが、この五項目の対策実施以前でもその回収率は二〇%程度、悪い場合でも一〇%程度は回収しておったんでしょう。だから、別にこの五項目が出たから抜本的に改善されたとか、そういう事態ではないんですね。    〔理事前田勲男君退席、委員長着席〕  そこで、私聞きたいんですが、各自治体にとっては非常に切実で深刻な問題なんです。ことし一月から二月にかけて、民間の研究機関である地域交流センターが全国各地にアンケート調査をいたしました。その結果によると、回答のあった四百七市のうち八二%が回収をしており、これからも回収予定にあるというところを含めると、実に八八・二%が回収対策をとっておるんです。そういうところの実情を調べてみると、回収した乾電池をどない処理しておるかということになると、回答した自治体の約七割は、国などの方針が決まるまで保管することにしている、そして半数以上は、保管場所に困っている、こう答えております。現にこの東京都下の町田市では、二月末現在で回収量が九十五トン、ドラム缶で三百五十本を超えておる、こういう状況が寄せられております。  私は、こういう地方自治体の苦境を政府が手をこまねいて見ているんじゃなしに、具体的な回収処理対策を国のイニシアチブを発揮して早急に実施なさるべきじゃないのか、こう思うんであります。例えば水銀の回収技術について申しますと、朝日新聞が昨年の暮れ報道しておりましたが、ごみ排ガス中の水銀を九割回収する技術を開発して乾電池公害に対処しようとしているというふうに報ぜられております。自治体がこういうような努力を重ねておるときに、私は、今、国の指導のもとに回収処理センター、これは仮称でありますけれども、こういうものを全国的に適切に配置して関連する地方自治体と共同処理に当たる、その際に費用は、国と地方自治体とともに、廃棄物処理の趣旨からもして、乾電池業界やあるいは乾電池を使用する機械器具を製造している業界にも応分の負担をしてもらうというような、こういう方式をもし提起されるならば非常に歓迎されると私は思うんですが、こういう点について、通産省、またもし、厚生省お見えになってますか。――来ておられましたら、両サイドから御意見を伺いたいと思います。
  133. 加藤三郎

    説明員(加藤三郎君) 厚生省といたしましては、今先生御指摘のこの使用済み乾電池対策という問題は、やはり市町村におきます清掃事業を円滑に推進する、あるいはまた環境汚染の未然防止をする、そういった観点から非常に重要な課題というふうに認識し、私どもいろいろな対策をとってきているわけでございます。  具体的に申し上げますと、昨年の六月から、厚生省にあります生活環境審議会の中の適正処理専門委員会というところにおきまして、この乾電池に関係いたしますいろんな関係者、メーカーもありますし、消費者もありますし、自治体もありますし、流通業界もあります、いろんな、国ももちろんございます。そういった関係者の役割をどう分担させたらいいのかといったこと、あるいは使用済み乾電池処理の基本的なあり方はいかにあるべきかといったことを実は検討をいたしております。昨年の六月からこれまで八回ほど検討し、現在も鋭意検討をいたしているところでございます。その検討とはまた別に、昭和五十九年度から三カ年計画で、使用済みの乾電池を、先生御指摘のような広域的な処理あるいは回収する体制を確立してはどうかという観点から、調査を実施をいたしておるわけでございます。  そのような生活環境審議会の専門委員会におきます検討、あるいは別途の広域回収処理センターの検討、そういったものを今実施いたしておるわけでございますが、私どもといたしましては、ことしの夏ごろをめどに中間的な取りまとめを行い、厚生省としての方針を打ち出していきたい、こんなふうに考えているところでございます。
  134. 木下博生

    政府委員(木下博生君) 今厚生省の方からお話がございましたように、厚生省でいろいろ研究をなさっておるわけでございまして、その中に業界の代表も入っております。したがって、そのような共同処理センターというようなものをつくるようなことになった場合の負担の方法等については、十分厚生省の方と御相談してやっていきたいと思っております。
  135. 市川正一

    ○市川正一君 先ほど私が、仮称でありますが、回収処理センターという構想を申し述べましたら、大臣が非常に深くうなずいていらっしゃいましたので、私この後、時間があれば実は割賦販売法の問題をやるつもりだったんですが、もはや時間が中途半端に相なりますので、通産省の担当のお方には御迷惑をおかけいたしますが、これはもう割愛いたします。  そこで、最後に大臣に、私は、深くうなずいておられた回収処理センター(仮称)の構想について、ひとつ意のあるところを御所見を承って質問を終わりたいと思います。
  136. 村田敬次郎

    国務大臣村田敬次郎君) 今、市川委員の御指摘になりました処理センターの問題は、実は厚生省の今検討段階でございまして、この段階でまだ確たるお返事はいたしかねる次第でございます。
  137. 市川正一

    ○市川正一君 夏ごろをめどに今生活環境審議会ですか、そこでいろいろやっておられる。それはそれとして進んでいると思うんですけれども、しかし一方では、地方自治体ではもう待ったなしのところまで来ているわけですね。そういうことにこたえて、これは自治体からも要望が出ている構想なんですが、そういうふうな方式を通産省の方でも研究していただくというようなことを申し述べたんですが、私の言う意味がわかっていただけましたかしら。
  138. 村田敬次郎

    国務大臣村田敬次郎君) この問題は厚生省が主管をいたしておりますから、厚生省との対応において今後検討してまいりたいと思います。
  139. 市川正一

    ○市川正一君 いい構想だとお思いですか。
  140. 村田敬次郎

    国務大臣村田敬次郎君) 私自身は専門家でございませんし、今承ったところでございますので、今後の検討課題ということにしていただきたいと思います。
  141. 市川正一

    ○市川正一君 研究していただくということですね。――はい、わかりました。
  142. 井上計

    井上計君 日米間における今最大の課題としては、申すまでもなく貿易収支のインバランスによる貿易摩擦の解消ということであります。そこで私は、きょうは具体的な問題をお伺いしたいと思っておりますが、先ほど市川委員からも御質問の中で、木材あるいは合板等の関税引き下げの問題が出ました。関連する点もあるわけでありますけれども、まずひとつ具体的にお伺いいたします。  大臣は今中座されておりますので、局長からひとつ具体的な問題等についてまず御答弁をいただきたい、こう思います。  紙の生産量の消長というのは文化発展のバロメーター、このように実は言われてまいりました。特に情報化社会と言われる今日、紙の生産、消費というものがますます国民生活の中では重要性を帯びてきておるのは、これは言うまでもないわけであります。また、各産業の発展に紙というものはもう欠かすことができないような重要なものとなっております。ある意味では、鉄は産業の米、こう言われておりますが、私は、同時にやはり紙も産業の米、このように言っても過言ではなかろうというふうな考え方を持っております。  ところが、我が国の洋紙製造業界というのは、敗戦によって外地にありましたところの資源から工場全部を喪失をいたしました。しかし、戦後、関係者の大変な努力によって我が国の産業界の発展に大きく寄与するような復活をしたことも、これはまた評価をしておられるわけでありますが、ところが、その後またオイルショックによって非常に洋紙製造業界打撃を受けまして、また同時に業界の過当競争等々によって、一時は一体どうなるであろうかというふうに、関係者が大変憂慮するような状態に落ち込んできておったこともあります。しかし、通産省の適切な指導と関係者の努力、協力、そうしておととし改正された産講法の指定業種となって構造改善を実施をしてきましたから、やや現在小康を保っておる、このように聞いております。しかし、何といっても依然として洋紙製造業界の一番の弱点は、国際競争力が欠如しておる、このような状態にある、こう考えます。  そこで、局長にお伺いいたしますが、洋紙製造業が産講法に指定されて以来行っておる構造改善の進捗状況は、現在どういう状況でありますか。それからまずお伺いをいたします。
  143. 篠島義明

    政府委員(篠島義明君) 構造改善の進捗状況でございますが、一昨年十二月の指示カルテル結成以来、年産能力約三十六万トンの設価を処理しております。これは目標処理量九十五万トンの約三八%に当たっております。
  144. 井上計

    井上計君 続いてもっと具体的に。ダンボール原紙の業界は、特に最近また業界の景況が悪いようでありますけれども、実態はどうであるのか、またその悪い理由は何であるのか、これらの点をひとつお伺いいたします。
  145. 篠島義明

    政府委員(篠島義明君) ダンボール原紙製造業につきましては、第二次石油危機の影響によるところもかなり大きいわけでございますが、包装節約の進展等の需要構造の変化がかなり急速に進んでおります。これに伴いまして内需が五十五年度におきまして、対前年度比一四・二%減、大幅な減退を示しました。以後も長期にわたって低迷しております。  この結果、同業界におきましては大幅な過剰設備を抱えることとなり、製品市況もここのところずっと低迷を続けておりまして、経営は極めて悪い状況にございます。
  146. 井上計

    井上計君 それでは、ダンボール原紙業界については、さらにもっと思い切った構造改善計画が実施をされなくてはいけない、こう考えますけれども、それについての今後の通産省の指導といいますか、どう現状ではお考えなのか。
  147. 篠島義明

    政府委員(篠島義明君) ダンボール原紙の構造改善の進捗状況につきましては、昨年八月の指示カルテル結成以来、年産能力で約八十六万トンの設備を処理しております。これは目標処理量百五十四万トンの約五六%に当たっております。この目標処理能力につきまして、果たしてこれで十分かどうかというような声も一部にはございますが、当面はとりあえず掲げましたこの目標処理量をできるだけ早く達成するようにする。昨年成立いたしましたグループを中心といたしまして、事業提携も活用しながら確実にこの設備処理を実施させるということについて、通産省としても一層の指導、支援を行っていくことにしております。
  148. 井上計

    井上計君 じゃ、現在ではまだ具体的に、目標の五六%というふうな計画というものを特は変更するとか、さらにもっと切り下げるとかというふうなところまではまだお考えじゃないですか。
  149. 篠島義明

    政府委員(篠島義明君) 現在のところは具体的にそのようなことを考えておる状況ではございません。
  150. 井上計

    井上計君 先ほどお答えの中で、対前年度比一四・二%というダンボール原紙の需要減というお話がありました。それから、依然として供給力が過剰であるということでありますから、やはり今後のことを考えるときに、特にダンボール業界についてはもっと改めて構造改善計画を見直すというふうなことが必要ではなかろうかと思いますが、それについてはどうお考えなんですか。
  151. 篠島義明

    政府委員(篠島義明君) いろいろ過去の実態に即しまして慎重に検討してまとめましたビジョンでございますので、とりあえずはこのビジョンをまず実現するということが肝要であると思います。  ただ、先生御指摘のように、果たしてそのビジョンを達成さえすればそれですべて片がつくかという点につきましては、率直に申し上げて問題なきにしもあらずと。したがってこういった点については、まず目標を達成しながら、しかしその後のことも含めて中長期的に今後十分業界の実態をフォローしながら慎重に検討していきたい、こういうふうに思っております。
  152. 井上計

    井上計君 ところで局長ね、クラフトライナーのK′、これは一年前と比べると大体一〇%程度値下がりをしているわけですけれども、これらの理由は、供給過剰、あるいは需要減、いろいろあらうと思いますけれども、一番大きな理由というのは何ですか。
  153. 篠島義明

    政府委員(篠島義明君) やはり供給過剰が基本的に問題ではないかというふうに考えております。
  154. 井上計

    井上計君 そこで、これは大臣が今中座をしておられますから、大臣が本当はお帰りになって御一緒にお聞きいただければいいと思うんですけれども、去る正月の二日に中曽根総理が訪米をされて、レーガン大統領との合意がなされている。MOSS次官協議が開催をされている。そこで、先ほど同僚市川委員からも、大臣への質問の中にありましたけれども、四品目が対象品目として決定をしたと。その中に入っていた林産物の中に、この紙パルプが含まれて議論の対象になっているわけでありますけれども、現在紙パルプに絞ってこの議論はどういう状態で進んでおるのか、これをまずお伺いいたします。
  155. 篠島義明

    政府委員(篠島義明君) 二月の二十五日に、紙製品を含む林産物の第一回の次官協議を開催いたしました。基本的な今後の取り進め方等について話をした次第でございますが、その際相互に質問書が提示されたわけでございまして、現在のところ、それぞれの双方に対する質問書、これは非常に具体的、詳細ないろいろな項目が含まれておりますが、これについての回答を双方において準備中でございまして、おおむねまとまる状況に来ておりますが、まとまり次第、来月前半早い機会に実務著レベルでの会議が行われるということになろうかと思います。
  156. 井上計

    井上計君 そのまとまる可能性ができつつあると、こういうことですけれども、まとまるというのは、どういうふうにまとまるかということは大変大きな問題だと、こう考えるわけであります。紙パルプについては、既に昨年の二月にアメリカ側との間でかなり詰めた話し合いがなされて、そうして八五年度、すなわち新年度からこれを逐次下げていって、最終七%という関税率に下げるということについては、これは昨年の二月に決定しているわけですね。それがまだ現在実施に至っていない段階で、さらにこれを下げるというふうな、そういうことに話が進み、また議論されているとすると、これは大変重大な問題だと、こう考えるわけでありますけれども、それはだから今局長おっしゃった、今後の協議の中でまとまる可能性があるとすると、それはどういう形、どういう方向でまとまる可能性がある、こういうふうなことなんですか、ひとつお伺いをしたいと思います。
  157. 篠島義明

    政府委員(篠島義明君) 先ほど申し上げました、質問書に対する回答がまとまり次第という質問書の内容として、関税を引き下げるべきであるという具体的な質問に対して、関税をどうする、こういう回答ではございませんで、むしろ、双方の業界の実情、あるいは日米間の貿易の現状、あるいはそれをめぐるいろいろな障壁ととられるようなもの、こういったものについての質問というのが中心でございまして、そういう意味で来月早早に開かれる予定の実務者会議も、関税率の引き下げを具体的にどうするかという話し合いではなくて、そういった質問書に対する回答についてのお互いの意見交換と、こういうことになろうかと思います。  それで、関税引き下げ問題につきましては、これはさらにそうした実務者段階での意見交換等を終わった後、また日程等協議が行われるかと思いますが、基本的には、我々といたしましては、今先生おっしゃいましたように、昨年の決定でかなり思い切ったアメリカ側に対する譲歩をしておるわけでございまして、しかもその実施時期はこの四月からということでございます。  それからまた先ほどもお話がございましたように、段ボール原紙等については極めて厳しい状況でございまして、アメリカの関心品目もそういったところにかなり積極的な関心を示していると、こういうこともございまして、我々としてはこの問題については慎重に業界の実情を踏まえて対処していかなければならないというふうに考えております。
  158. 井上計

    井上計君 今お答えを伺いまして、安心というとおかしいですけれども、まとまるというのが、実務者会議におきまして従来の経過、それから我が国の実情等々十二分にお述べいただいて、アメリカ側にいわば了承、納得をしてもらうと、こういう形でまとまるというようなことでありますから、それならなお大変結構だというふうに思いますが、いずれにしても、先ほど来局長答弁ありますように、段ボール原紙業界というのは依然として大変な不況である。このままでまいりますと、我が国の段ボール原紙、クラフト等については国際競争力全く今ないと、こう言っても過言でなかろうと、こう思いますから、我が国のそれらの製品が壊滅というと大げさかしりませんが、そういうふうなおそれが実は出てくるわけであります。そうなった場合にどうなるかということを考えますと、ぜひこの際、昨年二月はあれほど譲歩しておられるわけでありますし、また特に昨年二月の段階では木材や合板等は業界が拒否して、そのためにこれは引き下げがなされていない。ただ紙パルプだけが、業界の人たちがどういうふうな理由であったかしりませんけれども、引き下げられたということについて、私は今でも理解がちょっとできないということがありますけれども、そういうふうな経過等から考えても、まず六十年度から引き下げられる、そうしてこの三年後、経過の中でまた考えることはこれは当然であろうと思いますけれども、今そういうふうなまだ全く未知の中で引き下げが云々ということ自体が私はやっぱりおかしい、こういうふうに思っておりますので、特にひとつこの点については今後強い姿勢で臨んでいただきたいと、こう思います。  よく世間には、格安な輸入品が入ってくればユーザーはそれによっていいんだというふうなことを言う人もありますけれども、先ほど申し上げましたように、一時的にはあるいは輸入がふえることによっていいということがあるかもしれません。しかし、さらに輸入がふえたことによって国内の生産がだめになる、国内の生産能力が非常に落ち込んでいく。そこで供給不足になった場合には、今度は輸入品が高くなって、結局最終的にはユーザーがあるいは国民生活が大変影響を受けるというふうな実例が他にももう既にあるわけでありますから、そのような轍を踏まないように、紙パルプの関税引き下げ等についてはぜひともひとつこれは強い姿勢で、これは局長に申し上げるまでもなかろうと思いますけれども、臨んでいただく。特に実務者会議におきましては、アメリカ側の十分理解が求められるようにぜひお願いをいたしたいと、こう思います。  私がいただいておる資料から見ましても、EC等と比べて、我が国のクラフトライナーあるいは両更クラフト等の関税が、逆はECよりかまだ安いぐらい、安いようなものもあるわけでありますし、またそれから輸出入のインバランスとよく言われますけれども、紙そのものから考えると、はるかに我が国は現在でも輸入の方がこれは多いわけでありますから、総体的な面での貿易収支のインバランスと言われても、これはそれなりにわかりますけれども、紙そのもので考えると、これは決して、逆に言うと大幅な輸入超過であると、こういう実態、これらをひとつ考えていただきたいというふうに思います。  大臣お戻りになりましたが、大臣、紙・パルプの関税問題について経過、現状等を今局長からお伺いし、要望としては新年度から下げるということは、もう既に昨年の段階で大幅譲歩して決まっているわけですから、それをまだ実際実施に至らない以前にまた下げるなんという論議自体がおかしい。総理はサミットに出席をされるためにいろんなことについての御苦労はわかりますけれども、先ほど市川委員からもお話がありましたが、木材、合板の引き下げの問題とはまた別の問題があるわけですから、私は大臣に特に御努力をいただかなくちゃいけないと、こう思いますが、これについてひとつ大臣の御見解を承りたいと思います。
  159. 村田敬次郎

    国務大臣村田敬次郎君) 紙製品の関税引き下げでございますが、政府としては昨年、日米間の競争力格差、輸入の状況、構造改善への影響ども十分勘案をいたしまして、総理の決断を仰いで、今、井上委員指摘をいただきましたように、六十年度からの紙製品の関税の引き下げを決定したわけでございます。一月二日の中曽根・レーガン会談の決定に基づいて、現在紙製品につきましても日米次官協議の場において、林産物の一分野としてMOSSアプローチに基づく幅広い検討を行っておるところでございますけれども、クラフトライナーなど米国の関心品目は、日本の紙・パルプ産業の状況の極めて悪い分野でございまして、またかつ本年四月から八七年四月にかけての関税引き下げを決断したところでもございます。これは委員指摘のとおりでございまして、さらなる紙製品の関税引き下げについては慎重かつ適切に対処をしていくという考え方であります。  ちなみにクラフトライナーを御指摘になりましたが、クラフトライナーは三百グラム超については日本の関税が五・〇%、ECが七・〇%、カナダが一〇・七%でありまして、日本の関税の方が低いんでございます。それから三百グラム以下の問題については、これは若干日本が高くて、日本が八・五、ECが七・〇、そしてカナダが一〇・七、東京ラウンドに基づく最終状況税率になりますと、三百グラム以下でも七・〇ということになりまして、ECの六・〇よりも若干高くなっておるという計算でございますが、こういった状況でございますので、委員の御質問になられました趣旨もよく考えまして慎重かつ適切に対処をしていきたいと、このように真剣に考えております。
  160. 井上計

    井上計君 大臣から強い決意また方針を伺って大いにひとつ期待をしておりますし、またぜひそれで貫いていただかないと、特にせっかく構造改善実施によって小康を保ち、また将来への安定の路線を歩みかけた洋紙製造業界が壊滅的な打撃を受けるというふうなおそれが多分にあるわけでありますから、ぜひともひとつ今後ともこの面について一段のまた御努力をお願いをしたい、これは要望しておきます。  若干時間がありますので、これは質問というよりも要望でありますけれどもハイテク時代あるいはニューメディア時代と現在言われておるわけであります。  そこで先ほど来、同僚委員からのいろいろと御質問にも大臣あるいは政府委員お答えでありますけれども、私は通産省の担う役割あるいは使命というものはますます重要な時代に入ってきておると思うんですね。よく役所が強い行政指導をすると官僚統制であるとか、あるいは官僚主導の賛助会云々けしからぬとかいうふうな批判もありますけれども、私は戦後、いえば非常な混乱期あるいは高度成長時代等々をずっと振り返ってみますと、お世辞を言うわけではありませんけれども、かなりやはり通産省の指導が適切であった、それが我が国の産業復興・発願に大きく寄与しておるという評価をしておる一人なんです。海外からは我が国の貿易摩擦等々の問題から取り上げて日本株式会社という非難もあるようでありますが、私はやはり国の産業の安定・発展を考えるとき、また将来を考えるときには、日本産業株式会社であっていいと、その中心は通産省の適切な指導というふうなものが当然必要であるし、またなければならぬと、こういうふうな持論も持っておるわけであります。  したがって、さらにこれから二十一世紀を展望するときに、まだまだ我が国の民間産業界が乗り越えていかなくちゃいけない障害、大きな山がもっとたくさんあるし、これから新たにまた発生することは当然だというふうに考えますから、したがってそのためには通産省が適切な行政指導、まあ監督とは言いません、監督になるとまた困る面もありますけれども、適切な行政指導をぜひ行って、そこでもっと積極的に行政指導を行っていただきたいのは、何といっても先取りだと思うんですね。やはり民間の産業が先取りといっても、いえば限られた枠内でなかなか現在のように変化の激しい時代の先取りはそう容易ではありません。そこで、やはり通産省が産業界の先取りをひとつ積極的は行って、そうして適切な指導を民間に移していただく、それによってまた民間活力をもっともっとやっぱり助成するような、そういうふうな施策をぜひひとつ通産大臣今後とも一段と御努力をいただきたいというふうに思います。  現在はどのような変化が激しいのか、いろいろ言われておりますし、私自身も特に中小企業の各業界等々と接触が多いわけでありますけれども、一体どう変わるのかという質問をよく受けます。全くわからぬ、こういう返事以外にないわけでありますが、ただいろんなことを調べておりまして、やはり驚くことは、最近我々が日常用語として使っておるような経済用語がたくさんあります。これが日本経済新聞が発行しておりますけれども、最新「経済新語辞典」というふうなものからずっと拾ってみて、改めてびっくりするんですが、ニューメディアだとか、あるいはINSだとか、VANだとか、LSIなんというふうなのは、もうこれは日常用語になりました。ところが、五年前の「経済新語辞典」には一切載っていないんですね、こういうふうなものは。それからワープロなんというのは、これも載っていないんですね、五年前。だからそれほど我々の周辺が大きく変わっておるということであるわけであります。セラミックスというのは五年前はありますけれども、十年前の辞典には載っていない、こんな状態。さらに驚くことは、今年度版の「経済新語辞典」に載っていないような経済用語が、最近もう新聞に出始めているんですね。今年度版といっても去年の九月の発行でありますから無理からぬことだと思いまずけれども、その中に全くないようなものが最近新聞でそういうふうな新語としてやっぱり登場してきている。これぐらい変化が激しい時代でありますから、民間産業の活力といっても、みずから活力なんというのはなかなか難しい、特に先見性は非常に難しい。だから、通産省がそういうふうな面にもっとこれからひとつさらに一層重点を置いていただいて、そういう面についての適切なひとつ指導等お願いをいたしたい。また、活力がさらに一層出るように御指導願いたいと、こう思うんです。  そこで、最後にもう一つ要望でありますが、もう既に国会、本会議あるいはいろんなところで通産省にも十分御承知いただいているわけでありますけれども、今、中曽根内閣が税制大綱の見直しということを盛んに言っておる。大きな方針であろうと、こう思いますが、現在御承知のように企業の税の実効税率は五一%ですね、もう半分超えているわけです。だから、これではやはり民間活力云々と言われても、働いてもうければもうけるほど税金が多くなって、実は残るのが少ないんだということになれば、経営者だけじゃありませんで、やはり働いておる従業員、労働者も意欲減退するわけですね。だから、やはりそういうふうなことも税の大綱見直しの中で通産省としても大いにひとつ主張をしていただきたいというふうに思います。また同時に、やはり活力を出していくために投資減税のさらに拡充であるとか、あるいはまた今行われておる特別措置法でメカトロ減税、俗に言うメカトロ減税が時限立法ですから大体六十年度で一応切れますが、これは絶対的な延長もお考えいただかなくちゃいかぬと思いますし、さらに耐用年数の短縮等についても、さらに一層ひとつ御努力をちょうだいをいたしたいというお願いであります。  そこでこの席をかりて最後にひとつお礼を申し上げておきますが、耐用年数の短縮については、通産大臣初め通産省また関係の皆さん方が大変御努力いただいて、この厳しい財政状態でありますけれども、新年度から印刷と製本と写真製版の三機種の短縮が行われることになりました。私も関係者の一員として心から感謝をしております。同時に、一年ではありますけれども、短縮がされるということが決定したことによって非常に活力出てきたんですね。つい先日、一週間前でありますが、大阪で印刷、製本、写真製版の総合機材展、恒例ですがことしも機材展が行われました。非常に制約が多いのですね。だからやはりこれはもう民間投資促進という面に大変寄与しておると、こう思います。数多くの業界が実は非常に耐用年数の短縮を望んでおるわけでありますから、通産省としてはやはり産業界の指導と同時に民間活力のさらに一層のこういう面についても御努力をいただきたい。この席をかりてお礼を申し上げて、さらにひとつ要望をしておきます。大臣何かお答えいただければありがとうございます。
  161. 村田敬次郎

    国務大臣村田敬次郎君) 井上委員から非常に適切な御要望という形で御激励をいただいたと存じます。投資減税、メカトロ減税あるいは耐用年数の問題、その他非常に重要な問題ばかりでございます。また通産行政に大きな衝撃を与えると申しますか、時代の変革というものが非常に大きいわけで、新語辞典の例を引いて申されたわけでございますが、私も一、二だけちょっと申し上げますと、例えば産業構造審議会の総合部会で「我が国産業に係る技術開発の現状と課題」という、これは大変よくまとまっていると思いますが、この報告の中に、「はじめに 我々は今や新技術文明の幕あげの時代を迎えようとしている」、「新技術文明の幕あげの時代」という表現がございますが、私はまさに技術文明、そしてまた先ほど来お話しはなっております情報化時代、この言葉が時代を象徴する言葉であると思うのでございまして、まさにこれから迎えようとしておる二十一世紀に対応する新しい幕あけの時代という予告を現実にひしひしと感じますし、まだ通産大臣に就任いたしましてから半年足らずでございますが、毎日毎日の仕事を通じてそのことを肌で感じております。  ぜひひとつ新しい時代に対応することのできる通産行政でなければならない。また、そういった意味で、通産行政の非常に幅の広いシェアというものを勉強をすればするほど、これは大変はやることが多いのじゃないかという使命感を持っておりまして、ただいま賜りました御激励をよくかみしめまして努力をいたしたいと存じます。
  162. 井上計

    井上計君 どうもありがとうございました。終わります。
  163. 木本平八郎

    木本平八郎君 私はガソリンの問題についてお聞きしたいわけです。それで、これにつきましては、去年の終わり以来何回も質問主意書でいろいろお聞きしたんですけれども、余り的確な御答弁をいただけないというのでこの際少しお聞きしたいと思うわけです。  その前に一つ、おととい判決がありました鶴岡の灯油裁判ですね。逆転裁判になりましたですね。それで、消費者、主婦たちの消費者運動が勝訴になったわけですね。業界はこれで当然控訴するだろうと思うんですけれども、この判決に対するまず御所見をお伺いしたいんですが、どういうふうに通産省としては受けとめておられるかという点。
  164. 柴田益男

    政府委員(柴田益男君) 先生御質問の判決につきましては、これは民事裁判でございますので、私人間の争いということで、行政庁としては従来からコメントを控えているわけでございますけれども、ただ我々の石油行政に対する指導につきましては、独禁法上抜かりのないように十分注意してやってまいりたいと、こういうふうに考えているところでございます。
  165. 木本平八郎

    木本平八郎君 ああいう判決がまさか出るとは思っておられなかったと思うのですね。ところが、最近これちょっと話が違いますけれども、タクシーで大阪でいわゆるMKタクシーの勝訴の問題が出てきたとか、非常に消費関係の裁判でちょっと今までの常識を覆すような事象が出てきているわけですね。この点は非常に重要だと思うのです。重要だと思うのは、司法の方の判断がどんどんどんどん進んでいっている。これは私の感覚では、やはり消費者とともに司法が向いているという感じなのですね。それで結論的にちょっと皮肉って申し上げますと、行政とかあるいは立法もそうかもしれませんけれども、どうもその辺が非常におくれているのではないかという感じがするわけですね。この問題ちょっと非常に重要なので後でなにしたいのです。  その前に一つ、相模原の業者が年末にシンガポールからガソリンを三千キロリッター輸入しようとしていろいろごたごたがありました。結果的には日本石油がリフォーメートナフサですか、ということで引き取って、あれをどこへ売ったのですかね。それであれをいつごろ通関して、どこで通関して、どういうふうに、どこの業者へ売ったのか、その辺ちょっとまずお聞きしたいのですが。
  166. 畠山襄

    政府委員(畠山襄君) あれは、十二月の二十四日に石油審議会を今御指摘のように開きまして、石油業法の十二条三項に基づきます通産大臣の勧告をいたしたわけでございます。それを受諾します際に、先方からその持ってきた貨物の買い取りをあっせんしてくれという要請がありましたので、日石にあっせんをいたしまして、日石は日本鉱業株式会社の知多工場に販売をしたということでございます。
  167. 木本平八郎

    木本平八郎君 そのときのこの品名はリフォーメートナフサだったですね。
  168. 畠山襄

    政府委員(畠山襄君) 品名はリフォーメートということでございました。
  169. 木本平八郎

    木本平八郎君 そのときに、通関ですから当然日本石油が税関に対してIVいわゆる輸入申告書、それから船の方からのマニフェストがあると思うのですね。それからセーラー、シッパーからのインボイスが送られていると思うのですけれども、そういうインボイスはリフォーメートナフサになっていたわけですか。
  170. 剣持宣揚

    説明員(剣持宣揚君) インボイスあるいは申告書上の品名は、九七ロン・モーターガソリン、それからリフォーメートと両方書いてございました。
  171. 木本平八郎

    木本平八郎君 九七ロン・モーターガソリンですね。そのモーターガソリンとりフォーメートナフサとの違いはどういうことなのか、ひとつ御説明いただきたいのです。
  172. 畠山襄

    政府委員(畠山襄君) このリフォーメートというものは、ナフサをリフォーマーというものにかけましてつくった半製品でございます。セミプロダクトでございます。それでモーターガソリンといいますのは、当然自動車用のガソリンと、こういうことでございますけれども、普通のモーターガソリンでございますと、これはリフォーメートのような半製品ではございませんで、それに直留ガソリンを加えましたりあるいはFCCという分解装置から出てきましたガソリンを加えましたりしまして、ガソリンに調製するものでございまして、その九七ロンというのはよくわかりませんけれども、モーターガソリンというのは今申し上げたようなものであるというふうに考えております。
  173. 木本平八郎

    木本平八郎君 大蔵省にお聞きしたいのですけれども、この場合関税でリフォーメートナフサとモーターガソリン、これはどういうふうに違うわけですか。
  174. 剣持宣揚

    説明員(剣持宣揚君) 関税の分類上はリフォーメートという表記はございません。したがいまして、私どもの関税分類、これは国際的な条約に準拠したものでございますけれども、それによりますと、一つは分類番号で申しますと二七・〇七、これが一つ該当する可能性がございます。それから、通常の自動車用の燃料でございますと、関税分類の番号で申しますと二七・一〇の一部ということになるかと思います。
  175. 木本平八郎

    木本平八郎君 詳しいことはいいですけれども、どっちの方が関税高いわけですか。
  176. 剣持宣揚

    説明員(剣持宣揚君) 二七・〇七の方が関税率は、特恵の場合フリーになっております。
  177. 木本平八郎

    木本平八郎君 そこで、余りしつこく言うと気の毒なんですけれども、これは非常に重要なんで申し上げるんですけれども、シンガポールからまずは神戸へ入ってきたときの品物がこれなんですよ。(資料を示す)これは、業者によるといわゆるモーターガソリンとして入れてきているわけですね。それが日本の中であんまりリファイナリーというか、工場に入らずに、ちょっと移しただけでリフォーメートナフサになったわけですな。ナフサになりますと、これもう関税なくなっちゃうんですね。ガソリンだと、今おっしゃった非常に高いガソリン税がかかるわけですよ。私、これけしからぬとかなんとかいうんじゃないんですけれども、要するにこれは、私なんかのような長い間商社で輸出入をやっていますと、明らかな密輸になるんですね、こういう行動というのは。その辺をどういうふうに日石が手続されたか、その品名の変更その他、その辺ちょっとお聞きしたいんです。大蔵省の書類、通関の書類、どうなっています。
  178. 剣持宣揚

    説明員(剣持宣揚君) 日石の書類がどうなっているかというお尋ねでございますけれども、個別の話にわたりますのでその書類そのものにつきましては控えさしていただきたい、こう思います。後ほど制度についてもし御質問があれば御説明したいと思います。
  179. 畠山襄

    政府委員(畠山襄君) 今の御指摘の点について若干私どもの考えを申し述べますと、このライオンズが持ってきたものは、そのお示しのものでございますけれども、その中には芳香族が五〇%を超えて入っているわけでございます。それで、芳香族が五〇%を超えて入っておりますと、先ほどの二七・〇七という関税分類になるわけでございまして、それで通常のモーターガソリン、自動車用のガソリンは芳香族が五〇%以下でございますものですから二七・一〇になるわけでございまして、ですから、待ってきたものが芳香族を五〇%を超えておるか、超えていないかということで、二七・〇七に該当するか、二七・一〇に該当するかということが区分されるわけでございまして、たまたまその業者の方がリフォーメートと言ったか、あるいはモーターガソリンと言ったかということとはとりあえず無関係に、そういうふうにになるわけでございます。  それで、一たん二七・〇七に、そういうふうに該当いたしますと、だれが入れようとも特恵地域から入れれば特恵無税ということになるというふうに理解をしております。
  180. 木本平八郎

    木本平八郎君 そうすると、これはガソリンじゃなくてナフサだというわけですね。
  181. 畠山襄

    政府委員(畠山襄君) 通常のガソリンではなくて、リフォーメートであったかというふうに思っております。
  182. 木本平八郎

    木本平八郎君 いや、それ言うんなら、私これ芳香族が何%入っているか分析してもいいんですけれども、これは通産省でやっていただいてもいいんですけれども、そのくらい信用しますけれども。  僕はそこでこの問題についてけしからぬということを言うつもりじゃないからもうこの辺でやめますけれども、もっとやった方がおもしろいのかもしれないけれども、あんまりそういうこと僕の趣味じゃないですから。  そこで私が申し上げたいのは、まず今回は非常に通産省も困って、苦し紛れにいろいろな手を打たれたと思うんですよ。打たれたというのは、まあ打たざるを得なかったと思いますよ。しかし、こういう事態がなぜ起こったかというのが問題なんです。問題だというのは、要するに、当然自由化されておるガソリンが入ってきて、それ入ってきたら困るということで抑えなきゃいかぬというところにまず一番初めのボタンのかけ間違いがあったわけですな。それの矛盾を解決しようと思って四苦八苦しちゃったということだと思うんですね。  もう一つ念のために言いますと、今ここにあるもの、これならどんどん輸入してもいいのかということになっちゃうわけですね。これを持ってきて、そして通関しちゃって、後で自動車用に使うときにガソリン税だけ払えばいいわけでしょう、理論上は。その点はどうなんですか。
  183. 畠山襄

    政府委員(畠山襄君) そのものをリフォーメートでございまして、石化用に使いますときは石油化学製品の扱いにいたしております。したがいまして、そのときは入れていいわけでございますが、ただそれは明らかに石化用ということが判明いたしませんと石化製品の扱いをいたしておりません。したがいまして、自動車用その他に使います場合は、石油業法上の対象の品目になりますので、ですからどんどん入れてもいいということじゃなくて、御異議があろうかと思いますが、この間のような手続になってくる、こういうことでございます。
  184. 木本平八郎

    木本平八郎君 そういうことで、今のところ私は結論的ははやっぱりもうはっきり法的に措置をとらなければだめだと思うんです。こういういつまでもごまかしをやっているということになると、かえって国民の政治不信を招くんじゃないかということを非常に心配している。これはちょっと後においておきまして、それで、例えば、十二月の二十七日に石審の答申に基づいて大臣が勧告を出されましたね、これは輸入するのは好ましくないと。その勧告に業者は従ってギブアップしたわけですね。ところが、あの勧告自身も本当言えば聞かなくていいわけですよね。いやそれは勧告は受けられませんと言えば、もうそれ以上罰則も何もないわけでしょう。その辺どうなんですか。
  185. 柴田益男

    政府委員(柴田益男君) 昨年暮れに村田大臣勧告を出したのでございますけれども、それは石油業法の十二条三項で準用しています石油業法十条二項の規定に基づいて出したわけでございまして、これは勧告ですから強制力はございません。やはり勧告を受けた方の理解と協力というものを得て初めて実効性が出てくる、そういうものではございます。
  186. 木本平八郎

    木本平八郎君 そうすると、今後どんどんそういう業者がやってきて、今これは非常に小さい零細業者だから金融上の問題がいろいろありましたけれども、もっと有力な業者がやれば、勧告無視されたらどうしようもないわけでしょう、今の石油業法でいけば。どうなんですかその点、念のために。
  187. 畠山襄

    政府委員(畠山襄君) 石油業法上は、今長官が申し上げましたように十条を引用いたしておりまして、そこでは通産大臣は輸入計画の変更を勧告することができるというふうに書いてあるだけでございますので、御指摘のように、私どもの説得に応じていただかなければそれは入るということになりますが、私ども一生懸命説得をして、いろいろ御理解をいただきたいというふうに思っております。
  188. 木本平八郎

    木本平八郎君 その問題ちょっとおきまして、それでもう一つ消費者の立場からぜひガソリンスタンドの問題について改めてお聞きしたいわけです。  これは去年の四月にもやったんですけれども、このガソリンスタンドの問題、まず第一、日曜日にガソリンスタンドが休業ですね、半分かなんか。私もまだ自分でも運転するんですけれども、休みの日に休業されると困るわけですね。一番被害を受けるのはサラリーマンなんですね、遊びに行こうと思ったらだめだと。どうしてああいうことをいまだにお続けになっているのか、その辺ちょっとお聞きしたいんですがね。
  189. 畠山襄

    政府委員(畠山襄君) あれは省エネルギーという目的で行っておりまして、そういうことで具体的措置をとっておりますけれども、先般、この二十五日でございますけれども資源エネルギー庁長官の私的諮問機関と申しますか、研究機関での御意見がございまして、そこでは、ああいうものについては今後弾力的に考えていくようにという御指摘もありましたので、今後十分検討してまいりたいと思っております。
  190. 木本平八郎

    木本平八郎君 十分検討はいいんですけれども、そういう諮問の答申が出れば、すぐにでもこれおやりになっていいと思うんですけれどもね、その辺、何か支障があるんですか、すぐやれないという。
  191. 畠山襄

    政府委員(畠山襄君) 一定の規則に基づいて実施をいたしておりますので、関係方面の意見も十分聞きながら研究を進めてまいりたいと思っております。
  192. 木本平八郎

    木本平八郎君 いや、これは省エネと、初めは確かにそういうことがあったかもしれませんね。ところが、もう今や要するに石油がだぶついちゃって、不当競争になってかなわないから、少し供給を制限して業界の秩序を保とう、ガソリンスタンド間の不当競争を防ごうということで残されているというのが、これは率直な国民の理解だと思うんですよ。その辺はどういうふうに受けとめておられますか。
  193. 畠山襄

    政府委員(畠山襄君) ガソリンスタンドの利益のためにとかいうことでは私ども受けとめておりませんが、省エネという政策目的のためにやっておるものでございますので、省エネルギーの定着状況、そういったものも十分関係方面の意見も今後聞きながら判断をしていきまして、研究を推し進めてまいりたいと思っております。
  194. 木本平八郎

    木本平八郎君 いや、それが説得力がないと思うんですよ。今、省エネだからガソリンスタンドを日曜日に閉鎖するといったって、だれもそんなもの聞きやしないんですよ。そのために消費者が物すごく迷惑こうむっているわけですよ。省エネの必要性と消費者の不便とどっちが大きいかということですね。それが先ほど言ったように、あっちこっちに爆発してくるのが、やはりさきの灯油裁判なんかもそうなんですね。一人当たり六千円かなんかでしょう、利益がリターンされるのは。それなのに、やっぱり国民がこういうエネルギー政策に対して相当うっぷん持っているわけですね。  それの一つが例えば日曜日なんですね。こんなもの、もうあの時分から見たら死法――完全に廃案にすればいいんです。それをいつまでもやっていない。やっていないというのは、業界保護のためにやっていないんだとしか思えないんですよ。こういう簡単なことはどんどんおやりになった方が私はいいんじゃないかと思うんですが、大臣、いかがですかね。
  195. 村田敬次郎

    国務大臣村田敬次郎君) 今、日曜日のガソリンスタンドの問題について御質問をいただきました。これは御指導を十分頭において研究を進めたいと思います。  また、この際木本委員に、先ほど来の御質問承っておりまして、私からもぜひひとつ申し上げたいということがございます。  というのは、昨年のライオンズ石油の輸入の問題でございますが、このことについては、今柴田資源エネルギー庁長官なり畠山石油部長から答弁のあった経過でございます。また、委員しばしば内閣の方に質問書を提出していただいておりまして、実はあれ、私詳細に読みまして、これは一回ぜひ木本委員政府としての考え方も御理解をいただきたいなと思っておりました。これはもう賢明な委員はよく御承知のとおりでございますが、現在の石油業法によりますれば、いわゆる連産品ということで、ガソリンなりナフサなり灯油なり軽油、重油といったような区分をつけておりますね。その中で、消費地精製方式というものが確立をいたしておりまして、したがって、今の建前としては消費地精製でございますから、ガソリンのある程度価格負担において、灯油その他が国民に安く供給をされるというようなシステムがとられておるかと思います。  木本委員が御指摘になっておる消費者の立場から見て、消費者の利益を保護するんだという御趣旨はまことにこれ私はよくわかります。私どもも家に帰れば消費者でございますからよくわかるのでございますが、現在の石油業法の建前がそういうふうになっていない面があって、しかも、御承知のように、石油は九九・数%外国輸入に頼っておる。そして、これは国家保安のためにも、また産業のためにも、もうなくてならない最も基本的なものでございまして、したがって、消費者のお立場に立ちながら立案をされたり御意見を賜っていることは大変ありがたいことだと思いますが、このライオンズ石油輸入問題についてはぜひこの機会によく御理解をいただいて、また、御協力をいただきたい点があるわけであります。  私どもとしては、石油の安定供給、そしてまた国民の安全その他いろいろな立場から考えまして、現在のこの方針というものは正しいと信じておりますが、今後石油部会その他にも諮問をいたしまして、そして中長期的なビジョンは従来から、こうしたライオンズの事件が起こる前からいろいろと言われておるところでございますから、中長期的にどういう考え方でやっていったらよいかということも基本的に考えなければならないと思います。ぜひひとつ専門家としていろいろ御協力が賜りたいと存じます。
  196. 木本平八郎

    木本平八郎君 いや、私はそういう専門家じゃないものですからね。  それで、今大臣がそういうなにがありましたので、もう時間も余りないようですから、きょうの結論だけ先急ぎますとね、消費地精製主義というもの自身がもう時代に合わなくなっているのじゃないかという気がするんですね。これはきのうも環境特別委員会で私は、ディーゼルも、あんなに排気ガスがどうしようもなければ、もうディーゼルをやめてもいいんじゃないか。経済性には劣るけれども、むしろガソリンに切りかえた方がいいし、長距離輸送のあれは、国鉄の貨物があんなに苦しんでいるのだから、少々高くても電気機関車で運ぶ方がいいんじゃないかということを言ったわけですね。消費地精製主義も、私はこれもう時代に合わなくなってきているんじゃないかと思うんですが、この問題はまた次になにしますけれども。  それから、石油業法が合わなくなったと今おっしゃったけれども、合わなくなったらやっぱり変えた方がいいと思うんですよ。私は、これもだめだと思うんです。というのは、昭和三十七年の五月何日だったですかね、石油業法ができたのは。消費地精製主義も、昭和三十年代でしょう。あの時分というのは、やはりエネルギーを獲得しなきゃいかぬというふうなこととか、高度成長に合わせてどんどんその需要が膨れ上がっているとか。石油業法というのは、昭和三十七年五月十一日の法律百二十八号ですね。消費地精製主義というのもこの時分に確立されて、要するに日本の産業がまだ未発達で、高度成長でどんどんエネルギーが要る。しかも日本には今おっしゃいましたように資源がないから、どんどん確保しなきゃいかぬ。そのためにはということで成り立っていたと思うんですね。ところが、今もう世界的にもだぶついちゃってどうしようもないという状況ですね。これが、全面的にというより、やっぱり手直しがされなきゃいけないんじゃないか。これがあるために変なところで縛られているという感じがするわけですね。  そこで、一つ、先ほどおっしゃいました連産品の問題でちょっとお聞きしたいんですが、連産品が確かに出てきますね。ところが、私の理解では、よく通産省なんかの説明でもおっしゃるのは、要するにガソリンを下げると灯油が高くなるとおっしゃるわけですね。今の石油の値段というんですか、その価格を、平均を一とすると、要するにガソリンが一・四だ、それからナフサが〇・七五、灯油が一・〇四で、一よりも上ですね。それから軽油が一・〇五、C重油が〇・八というふうな配分になっているわけですね。これはどういうことでこういうふうに決められているわけですか。どなたが決められている、どういう法律的な根拠があるのか。その辺、私も法律がよくわからないんですがね。
  197. 畠山襄

    政府委員(畠山襄君) 今御指摘の価格体系は、若干今までの市場メカニズムその他を通じて形成されてきたものでございまして、現在石油業法に基づく標準価格というものは設定をいたしておりませんので、ですから、法律上そういった価格体系にしているということではございません。これまでの一定の競争原則その他から形成されてきたものでございます。  ただ、灯油につきましては、さっき大臣からも若干御説明申し上げましたように、在庫を九月末までに六百七十万キロリットルという、非常に大きな量を確保してもらっておるということがございますものですから、価格の直接の指導はいたしておりませんけれども、その荷もたれ感でございますとか、そういったことで安くなっておるということは事実であろうかと思います。
  198. 木本平八郎

    木本平八郎君 それが自然に一・四とか一・〇三とか、こういうふうになるというふうにはちょっと考えられないんですね。今通産省は指導なさってないかもしれぬけれども、業界の中でやっぱり何か話し合いがあるんじゃないかという気がするわけですね。  私、実はきょう公取呼んでないんですよ。これ、ほんとにやるつもりなら公取を呼んでやるところなんですけれども、私は呼んでないんですね。それは、こんなことをごたごた言うつもりがないから呼んでないんですがね。  ただ、いいですか、今民生用とおっしゃったけれども、ここで一以下のはナフサとC重油だけなんですよ。ほかはみんな一以上なんですね。ということは産業用だけを安くしていると普通は解釈するわけですね。そういう時代は確かにあったと思うんですよ。あったと思うんだけれども、現在の日本経済はもうそんなに産業を保護しなくても一般でいいんじゃないか。むしろ消費者の方が、サラリーマンの税金が高いとは今では言いませんけれども、物価もなにしているから少しでもやっぱり安い方がいいんじゃないかと思うんですけれども、その辺は政策的にどうなんでしょうね。
  199. 畠山襄

    政府委員(畠山襄君) ガソリンが高くて重油が安いという御指摘中心であったかと思いますけれども、物の価値といたしまして、重油は、言葉は悪うございますが、ガソリン、灯油、軽油、そういったものをとった残りでございますので、価値といたしましてそれが安くなるというのは、政策的な指導ということとは関係なしに、物の価値として安くなるという傾向は日本のみならず世界的にございます。したがって安くなるわけでございまして、産業用だからそれを政策的に安くしているというようなことはございません。  ただ、たまたまガソリンの分野でございますとかというものは代替物がない、ガソリンにかわる有力な代替物がないということから比較的値上げはしやすい。それに反して重油等はLNGであるとか原子力であるとか石炭でありますとか、そういう代替物がございますし、それからナフサの場合は確かに代替物的なものはないんですが、ただこれは石油化学製品というものが御案内のように国際商品なものでございますから、ですから一定の価格で供給をしませんとナフサの供給自体ができなくなってしまうということで、現実にも輸入比率が六割を超えるというような事態になっておりまして、そういうことで値段が安くなっているわけでございまして、私ども政策的にそちらの方を、産業用を昔のように安くするという政策をとっているわけではございません。
  200. 木本平八郎

    木本平八郎君 いや、今政策をとっているわけじゃないとおっしゃったけれども、先ほど要するに自然形成的に、自然に成り立った価格だとおっしゃったわけですね。その辺非常に何か矛盾を感ずるんですけれども、この辺余り突っ込んでもしようがないからなにしますけれども。  したがって、今おっしゃったように、ガソリンを輸入したら灯油が上がるぞというふうな、全くおどしみたいな感じがするわけですね。そういうメカニズムじゃないと思うんですよね。もう一つは、ガソリンを輸入して灯油が高くなるんならまた灯油を輸入すればいいわけですね、我々の立場からいえばね。その辺がもう非常に今、通産省としては、エネルギー庁としては苦しい立場に追い込まれてきていて、もう何とかせざる得ない状況に来ていると思うんですが、その辺は中長期的にどういうふうなビジョンというか、政策をお持ちになっているか。将来のことはわからぬとか、中途半端な返事じゃなくて、皆さん方考えておられることをはっきり言っていただいた方がいいと思うんですけれどもね。
  201. 畠山襄

    政府委員(畠山襄君) まず先ほど申し上げましたように、ガソリンとか灯油とかいうものは代替物がございませんために、ほかでコストを回収できなければ、そこで回収をするという動きに企業が、企業の論理として出てくるということは当然あるわけでございます。  ただ、私どもは灯油については、先ほど申し上げましたように、供給確保のために在庫はたくさん持つように、そういう指導を石油業法に基づいていたしておりますものですから、灯油については安く、ガソリンについては高くということになっておるわけでございます。  そこで、そうであれば灯油も輸入したらいいじゃないかという御指摘でございますが、灯油は我が国は非常に特殊な使われ方をいたしておりまして、室内で使いますとかということでございますので、あれに相当する灯油というものが世界でなかなか見つからないというのが実情でございます。灯油の緊急輸入というのを、一昨年でしたか、その前でしたか、やったこともございますが、それはそう銘を打っただけでございまして、実際は輸入したものはジェット燃料油というものでございまして、それを輸入いたしまして、国内で灯油につくり直したというようなことでございまして、ですから、そう世界に製品があふれているということではないということでございます。  将来どうするのかという御指摘でございますが、これは先ほど大臣から申し上げましたように、審議会の石油部会に小委員会を設けまして、国際化の問題の一環として検討をしていくということでございます。
  202. 木本平八郎

    木本平八郎君 時間がありませんので、きょうのところはこれで終わりたいんです。これ続きやりますけれども。  最後に一つ、ぜひお聞きしたいのは、石油流通ビジョン研究会の報告が三月に出ていますね、あれをちょっとサマリーだけ読ましていただいたのですけれども、私はあれ非常に大賛成なんです。あれは少しまだ矛盾したようなところも一、二カ所ありますけれども、あれを私は大賛成なんです。あれは長官の諮問機関みたいのものですね、研究機関ですね。今後これは、長官としては相当前向きに実現していくというお考えなのかどうかだけ承って、質問を終わりたいんです。
  203. 柴田益男

    政府委員(柴田益男君) 研究会でビジョンがまとめられまして、私も読んでいるところでございますけれども、基本的にはこの考え方を尊重いたしまして、行政に反映していきたいと思っております。  特に流通業界、スタンド業界の構造改善を積極的に進めていく、経営の多角化あるいは転廃業を積極的に進めていくということを指摘されているわけでございまして、消防法との関係もございますが、その辺につきましても消防庁とよく相談をいたしまして、その提言を積極的に取り入れていきたい、そういうふうに考えているところでございます。
  204. 降矢敬義

    委員長降矢敬義君) 本件に対する質疑はこの程度にとどめます。     ─────────────
  205. 降矢敬義

    委員長降矢敬義君) 次に、特許法等の一部を改正する法律案及び中小企業倒産防止共済法の一部を改正する法律案を便宜一括して議題といたします。  まず、特許法等の一部を改正する法律案について趣旨説明を聴取いたします。村田通商産業大臣
  206. 村田敬次郎

    国務大臣村田敬次郎君) 特許法等の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由及び要旨を御説明申し上げます。  この法律案は、特許法その他の工業所有権関係法律について、一九七〇年六月十九日にワシントンで作成された特許協力条約に基づく国際出願制度の一層の利用の促進を図るとともに、最近の技術開発の進展に対応し得るよう制度の改善を図るため、所要の改正を行うものであります。  なお、本件につきましては、昭和五十八年十二月から工業所有権審議会において慎重な審議が重ねられた結果、昨年十一月に「特許協力条約(PCT)の改正に伴う法制整備及びその利用促進等のための制度のあり方に関する答申」が提出されており、本法律案はこの答申に基づいて作成したものであります。  次に、この法律案の要旨を御説明申し上げます。  第一は、特許協力条約の規定の変更等に伴い出願手続の改善を図るものであります。複数の国に対する特許等の出願を国際的に統一された方式による一つの出願で行うことを認める国際出願制度について、その利用の促進を図るとの観点から、昨年二月、条約の規定の変更等が行われましたが、これに伴い、国際出願制度を利用した外国からの出願について、我が国への出願の翻訳文の提出の期限の変更、翻訳文の範囲の限定等出願手続の改善を図ることとしております。  第二は、特許出願等に関し優先権制度を導入するものであります。最近の技術開発の進展に対応するため、先にされた特許出願等に係る発明を含めてされた出願について、当該先にされた特許出願等に係る発明に相当する部分の出願日につき優先的な取り扱いを認めることとしております。  なお、優先権制度を採用することに伴い、補正却下後の新出願の制度及び追加の特許制度を廃止するとともに、それらに伴い関連する規定を整備することとしております。  第三は、国際出願制度の利用を促進するために、国際出願について、特許庁以外の他の国際調査機関等による国際調査等を受けられる制度を採用するものであります。  以上がこの法律案の提案理由及びその要旨であります。何とぞ、慎重御審議の上御賛同くださいますようお願い申し上げます。
  207. 降矢敬義

    委員長降矢敬義君) 次に、中小企業倒産防止共済法の一部を改正する法律案について趣旨説明を聴取いたします。村田通商産業大臣
  208. 村田敬次郎

    国務大臣村田敬次郎君) 中小企業倒産防止共済法の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由及び要旨を御説明申し上げます。  昭和五十三年四月に発足した中小企業倒産防止共済制度は、中小企業の連鎖倒産を防止するため、取引先企業の倒産により売掛金等の回収が困難となった共済契約者に対し、その積み立てた掛金の十倍の範囲内で、共済金を簡易迅速に貸し付ける制度であります。  最近の中小企業を取り巻く経営環境には依然として厳しいものがあり、その中で倒産件数が高水準で推移しております。このため、中小企業の実情に即した制度の改善を行い、共済契約者の利便の増進及び利用者の増加を図ることにより、中小企業の連鎖倒産の防止を積極的に図ることが必要となっております。  かかる観点から、今般、中小企業倒産防止共済法の改正を提案することとした次第であります。  次に本法律案の要旨につきまして御説明申し上げます。  第一は、共済金の貸付限度額を引き上げることであります。  最近の中小企業者の取引先企業の倒産により生ずる回収困難額の実情にかんがみ、共済金の貸付限度額を二千百万円から三千二百万円に引き上げることとし、このため、共済契約者が積み立てることができる掛金総額の限度を二百十万円から三百三十万円に引き上げることとしております。また、掛金月額の限度を五万円から八万円に引き上げ、より早期に掛金の積み立てを行い得ることとしております。  第二に、共済契約者が蹄時に事業資金の調達が必要となった場合に、積み立てた掛金の範囲内で簡易迅速に貸し付けを受けられる貸付制度を創設し、解約の防止と加入促進を図ることとしております。  第三に、共済契約者相互間の公平性を確保し、制度の運営体制の整備を図る観点から、解約手当金の取り扱い及び掛金滞納者に関する共済金の算定方法等について所要の規定の整備を行うこととしております。  以上が、この法律案の提案理由及びその要旨であります。何とぞ、慎重御審議の上御賛同くださいますようお願い申し上げます。
  209. 降矢敬義

    委員長降矢敬義君) 以上で両案の趣旨説明聴取は終わりました。  両案に対する質疑は後日に行うこととし、本日はこれにて散会いたします。    午後四時四十四分散会