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説明員(濱本英輔君) ただいまのお尋ねでございますが、例えば夫婦だけの世帯と夫婦
子供二人の世帯を比較していただきました場合に、生計費にはおのずから差異があるわけでございます。所得税はその担税力に即した税
負担をお願いするという建前の税でございまして、
扶養控除制度といいますものは、そういった側面でこれにこたえようとしておるわけでございますが、実際所得税の計算をいたしますときには、先生御承知のように、
扶養控除以外に基礎控除でございますとか配偶者控除でございますとか、諸控除を積み上げましたものを所得から控除し、さらにそれに一定の累進税率を適用いたしました累進構造の中で税額が定まってまいります。したがいまして、そういうふうに全体を眺望していただきますと、
扶養控除といいますものは相互に
関連いたします税体系の構成要素の一つのキーになっておるということでございますから、その
部分だけを取り出しましてどうこう論じますことは、税体系との
関連では非常に難しい問題を生ずるということは容易に御想像いただけると存じます。
ところで、基礎的な生計費には踏み込まないという今の所得税の控除
制度の基本的な考え方と、ただいま御議論にございます
児童手当の考え方というのは、やはり側面をやや異にしている面があるというふうに私ども思うわけでございますけれども、例えば
子供さんをたくさん持っていらっしゃる、
児童をたくさん抱えていらっしゃる
家庭については、
扶養控除を廃止するということになりますと、その分だけ課税最低限は下がるわけでございますから、当該世帯にとりまして税
負担は重くなるわけでございますね。そうして納付されました税金をまとめまして今度は
児童手当という形で逆
給付する。その結果、所得再分配の形がどのような形に定着するのかということを見定めますことは、非常に難しい問題がそこにあろうと思います。
扶養控除といいましても、いろいろな扶養
対象者に対して控除されるわけでございますが、その中から特にそういった特定の
子供だけを抜き出した税体系というのは構成できるのかどうかという問題でございます。
それからまた、歴史的に振り返って見ますと、今御
指摘がございましたように、
扶養控除制度が所得控除
制度に改まりましたのは、たしか
昭和二十五年のシャウプ
税制でございますね。その後、基礎控除、配偶者控除、
扶養控除の額がそれぞれ違っておる時期がございましたけれども、
昭和四十九年でございましたか、この三控除の額を統一しましたときには、わかりやすい
税制にしろというのが一番大きな御要請であったと思います。やっと確立されたわかりやすい
税制でございまして、これをもし今御
指摘のような形に改めるというようなことになりました場合に、少なくとも税体系としては今よりわかりにくくなることは確実であろうと思います。その場合に、それが公平のバランスを失することになるおそれというものもなしとしないということを恐れるわけでございます。そういった
観点から、従来
政府の
税制調査会におきましても、この
児童手当制度と
扶養控除制度との
関係につきまして、ただいまの御所論のような形の処理にいたしますことにつきましては問題が提起されてまいったいきさつがございます。
以上でございます。